説明

タービン制御装置

【課題】タービン低回転速度を回転速度パルス信号の間隔を計測して速度検出する際に、確実で高精度の低回転速度検出方式を実現する。
【解決手段】タービン低回転速度をパルス信号間隔を計測して算出する際に、検出器から入力された回転速度信号から周期信号を発生する周期信号発生手段と、前記周期信号を計測する第一周期信号測定手段および第二周期信号測定手段と、前記第一周期信号測定手段及び第二周期信号測定手段の出力を加算して低回転速度出力信号を連続的に出力する加算手段により、冗長性のある高精度の検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン回転速度を検出器のパルス信号間隔で計測し、タービンの低回転速度を検出する低回転速度検出回路を備えたタービン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン等を停止させる場合において、急速な冷却によるタービンシャフト、ブレードの変形等のダメージを避けるために、数rpm程度の低速回転制御を行いタービンを徐冷する。このときのタービン低回転速度検出については検出信号のばらつきが大きく測定が困難なため種々の方式が提案されている。特許文献1には、大型蒸気タービンの低速回転検出にタービン軸端の歯車を感知装置で検出し、検出信号間隔をカウンタ(フリップフロップ)でカウントし、回転数が低下してカウンタが所定値を越えた際に論理出力1を出力し、タービン軸を再駆動する構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には水力発電所の水車等において、回転軸の低回転時の回転数を確実に検出可能とする構成として、軸回転数の入力パルスを分周し基準パルスと比較して、所定時間内に所定パルス入力がない時にリレー回路信号を出力し、水車の回転を制御する構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭46−5198号公報
【特許文献2】特開昭59−174714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のタービン回転速度の計測方式は、歯車検出信号のオンパルスの間隔を単一のカウンタでカウントしているため、測定精度の信頼性および回路の冗長性に欠けるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タービンの回転を検出する検出器と、前記検出器から出力される検出信号間隔を計測して速度検出を行う低回転速度検出回路を有し、タービンの低回転速度での回転を制御するタービン制御装置において、前記低回転速度検出回路は、前記検出器から入力された回転速度信号から周期信号を発生する周期信号発生手段と、前記周期信号を計測する第一周期信号測定手段および第二周期信号測定手段と、前記第一周期信号測定手段及び第二周期信号測定手段に交互に周期信号を供給する周期測定切替手段と、前記第一周期信号測定手段及び第二周期信号測定手段の出力を加算して低回転速度出力信号を連続的に出力する加算手段を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記第一周期信号測定手段及び第二周期信号測定手段は、所定のサンプリング周期毎に積算を行って回転速度信号間隔の測定を行う積分手段と、前記積分手段の積分値を比較する比較手段であって、所定の低回転速度周期に対応する積分値を越えない基準値を有する比較手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、前記第一周期信号測定手段及び第二周期信号測定手段は、回転速度信号の1周期にわたって積分した前記積分手段の積分値を、次の1周期の間保持する保持手段を有することを特徴とする。
【0009】
さらに、前記低回転速度検出回路と並列に前記比較手段と異なる基準値を有する比較手段を設け、該比較手段の出力を前記低回転速度検出回路の出力に加算して出力し、低回転速度出力信号の検出精度を向上したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タービン回転速度の検出において、パルス信号によるタービン回転の低回転速度を確実かつ高精度に検出可能で、かつ冗長性を備えた低回転速度検出回路を有するタービン制御装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明実施例を図面について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に再熱型の蒸気タービンの系統図を示す。蒸気タービンTにおいて、ボイラ1で発生した蒸気は主蒸気管2に導かれ、加減弁3を通って高圧タービン4でトルクを発生させる。この高圧タービン4から出た蒸気は再びボイラ1に戻り、再加熱器5で再び加熱される。再加熱された蒸気は再蒸気管6に導かれ、インターセプト弁7を通り、低圧タービン8でトルクを発生させる。高圧タービン4及びこの低圧タービン8は発電機9において電力を発生する。低圧タービン8から出た蒸気はコンデンサ10で凝結され、水となり、復水ポンプ11、低圧ヒータ12、吸水ポンプ13、高圧ヒータ14を通り、再びボイラ1に送られる。ボイラ1に送られた水は火炉水壁15で加熱され、蒸気を発生する。発生した蒸気はドラム16から過熱器17でさらに過熱され、ボイラ1から送り出される。
【0013】
タービン制御装置200は、タービンに直結した歯車Gの回転を検出する電磁検出器55から、ON/OFFパルスの形で入力されるタービン回転速度信号20を取り込み、加減弁開度指令18、及びインターセプト弁開度指令19を算出し、加減弁3、インターセプト弁7の弁開度を調節することで、高圧タービン4、及び低圧タービン8を制御する。また、タービン回転速度信号20から、蒸気タービンTの低回転速度の検出を行う。
【0014】
図2は、本発明によるタービンの低回転速度検出回路を示す。低回転速度検出回路201は前記タービン制御装置200の一部を構成する。図2において歯車Gに対向する電磁検出器55からON/OFFパルス信号の形で出力されたタービン回転速度信号20を検出回路201に入力し、タービン回転速度が一定の値以下であることを検出した場合に作動を開始し、低回転速度検出信号40をONとして出力する。検出信号40を用いて、例えば図示しない駆動装置により歯車Gを駆動してタービンTを低回転駆動し、タービンTの急速な停止によるシャフト、ブレードの変形等の熱的ダメージを防止する。
【0015】
次に低回転速度検出回路201の詳細について説明する。図2において、周期信号発生手段はワンショットタイマ23からなり、タービン回転速度信号20のONパルスを入力すると一定時間Tsの間ON信号を出力した後、次にONパルスが入力されるまでOFF信号を出力する。
【0016】
周期測定切替手段はS端子とR端子を持つフリップフロップ24から構成され、S端子(セット端子)にON信号が入力されるとR端子(リセット端子)にON信号が入力されるまでON信号を出力し、その他の場合はOFF信号を出力する。
【0017】
第一周期信号測定手段は、切替スイッチ25、積分器26、保持スイッチ27、比較器28を有する。また第二周期信号測定手段は切替スイッチ29、積分器30、保持スイッチ31、比較器32を有する。切替スイッチ25、29はc端子に入力された信号がONの場合はa端子に入力された信号[1]を出力し、c端子に入力された信号がOFFの場合はb端子に入力された信号[0]を出力する。積分手段としての積分器26、30はc端子に入力された信号がONの場合はa端子に入力された信号を適当なサンプリング周期毎に積分演算して出力する。c端子に入力された信号がOFFの場合は[0]を出力する。
【0018】
保持手段としての保持スイッチ27、31はc端子に入力された信号がONの場合はON信号を入力する直前のa端子の入力値を保持して出力し、c端子に入力された信号がOFF信号の場合はa端子の入力値をそのまま出力する。比較手段としての比較器28、32は入力値と任意に設定された基準値Kとを比較し、入力値がKよりも大きい場合にON信号を出力する。
【0019】
また、41は論理積、42、43は論理否定を表す論理素子である。論理積41はワンショットタイマ23とフリップフロップ24の出力をフリップフロップ24のリセット端子に入力する。論理否定42は、フリップフロップ24の出力を反転して保持スイッチ27に入力する。論理否定43は、フリップフロップ24の出力を反転して、切替スイッチ29、積分器30に入力する。50は論理和を表す論理素子であり、比較手段28及び32の出力を加算する加算手段として用いられる。
【0020】
次に、低回転速度検出回路201の動作について説明する。図3は、タービン回転速度信号20が入力されたときの低回転速度検出回路201の回路動作を示すタイムチャートである。図3において、タービン回転速度信号の周期をTaとする。時刻T1でタービン回転速度信号20のONパルスが入力されると、ワンショットタイマ23は周期Tsの間ON信号を出力し、その後OFF信号を出力する。フリップフロップ24はワンショットタイマ23からのON信号を入力してON信号を出力する。
【0021】
論理積41はワンショットタイマ23とフリップフロップ24の論理積を出力する。時刻T1の時、その演算順序から、ワンショットタイマ23の出力はON、フリップフロップ24の出力はOFFである。時刻T1からTs経過後はワンショットタイマ23の出力はOFF、フリップフロップ24の出力はONであるため、論理積41は、次にワンショットタイマ23がONを出力する時刻T3まで、OFFを持続して出力する。従ってフリップフロップ24もR端子の入力がOFFであるため、T3まではONを持続して出力する。本実施例のサンプリング周期はTsとしている。
【0022】
フリップフロップ24のON信号が持続している間、切替スイッチ25は[1]を出力し、積分器26はサンプリング周期Ts毎に[1]を積分演算して出力する。保持スイッチ27はC端子の入力が論理否定42の作用によりOFFとなるため、入力値をそのまま出力する。比較器28は入力値が基準値K以上であることを検出した後、ON信号を出力する。
【0023】
時刻T3でタービン回転速度信号20のONパルスが再び入力されると、ワンショットタイマ23はTsの間ON信号を出力し、論理積41の作用によりフリップフロップ24はR端子にON信号が入力されるので、OFF信号を出力する。それにより切替スイッチ25は出力を[0]に切替え、積分器26も[0]を出力する。
【0024】
保持スイッチ27は論理否定42の作用によりフリップフロップ24からのOFF出力がONに変わるため、C端子の入力がONからOFFに変わる直前の入力値を保持し、出力する。 比較器28は保持スイッチ27の動作により入力値が変わらず基準値K以上であることから、ON信号を持続して出力する。
【0025】
第二周期信号測定手段の切替スイッチ29、積分器30、保持スイッチ31、及び比較器32は、フリップフロップ24の出力と論理否定43の作用により、時刻T3以降タービン回転速度信号20がT1〜T3間と比較して変化しない場合、前記T1からT3における切替スイッチ25、積分器26、保持スイッチ27、比較器28と同様にT3からT5までの間、動作する。上記第一周期信号測定手段と第二信号測定手段により、低回転速度検出信号40が加算されて連続的に出力される。
【0026】
比較器28がON信号を出力した後、タービン回転速度信号20に変化がなければ、比較器32の出力がONになり、論理和50により低回転速度検出信号40はON信号を継続して出力する。タービン回転速度信号20の周期Taが若干ばらついた場合でも、周期Taが基準値Kで決まる比較器28出力より大きい限り、タービンの回転が所定の低回転速度内にあると判断する。比較が積分器からのアナログ値と基準値の比較でなされるため、回路の冗長性が高く、安定した制御が可能となる。
【0027】
つぎに検出される回転速度に関連する比較器28、及び32の基準値Kの決定方法について説明する。ここで以下のように規定すると、タービン回転速度信号周期Taは式(1)で表される。
Ta:タービン回転速度信号周期(s)
Ts:サンプリング周期(s)
N:歯車の歯数
R:タービン回転数(rpm)
K:基準値
【0028】
【数1】

【0029】
一方
【0030】
【数2】

【0031】
であるから、設定されるKの最大値は次のように求められる。
【0032】
【数3】

【0033】
式(3)でR=1、N=60とすると
【0034】
【数4】

【実施例2】
【0035】
図4は、低回転速度検出回路に比較器35を追加した低回転速度検出回路の別の実施例を示す。すなわち、タービン回転速度信号20は、低回転速度検出回路202に入力されるとともに、分岐されて比較器35に入力する。比較器35は実施例1の比較器28,32の基準値Kと異なる基準値K'を設定する。比較器35の出力を論理積回路51により低回転速度検出回路202の内部回路出力に加算して出力する。これにより異なるサンプリング周期Ts'を用いてTaを測定することにより、冗長性が高く、ダブルチェックによる確実で高精度の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明実施例の発電機の再加熱タービンの系統図である。
【図2】本発明の実施例1によるタービンの低回転速度検出回路である。
【図3】実施例1のパルス信号計測のタイムチャートである。
【図4】本発明の実施例2のタービンの低回転速度検出回路である。
【符号の説明】
【0037】
20:タービン回転速度信号
23:ワンショットタイマ
24:フリップフロップ
25:切替スイッチ
26:積分器
27:保持スイッチ
28:比較器
29:切替スイッチ
30:積分器
31:保持スイッチ
32:比較器
35:比較器
40:低回転速度検出信号
50:論理和
55:電磁検出器
200:タービン制御装置
201:低回転速度検出回路
202:低回転速度検出回路
T:タービン
G:歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンの回転を検出する検出器と、前記検出器から出力される検出信号間隔を計測して速度検出を行う低回転速度検出回路を有し、タービンの低回転速度での回転を制御するタービン制御装置において、
前記低回転速度検出回路は、前記検出器から入力された回転速度信号から周期信号を発生する周期信号発生手段と、前記周期信号を計測する第一周期信号測定手段および第二周期信号測定手段と、前記第一周期信号測定手段及び第二周期信号測定手段に交互に周期信号を供給する周期測定切替手段と、前記第一周期信号測定手段及び第二周期信号測定手段の出力を加算して低回転速度出力信号を連続的に出力する加算手段を有することを特徴とするタービン制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたタービン制御装置において、前記第一周期信号測定手段及び第二周期信号測定手段は、所定のサンプリング周期毎に積算を行って回転速度信号間隔の測定を行う積分手段と、前記積分手段の積分値を比較する比較手段であって所定の低回転速度周期に対応する積分値を越えない基準値を有する比較手段を設けたことを特徴とするタービン制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたタービン制御装置において、前記第一周期信号測定手段及び第二周期信号測定手段は、回転速度信号の1周期にわたって積分した前記積分手段の積分値を次の1周期の間保持する保持手段を有することを特徴とするタービン制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載されたタービン制御装置において、前記低回転速度検出回路と並列に前記比較手段と異なる基準値を有する比較手段を設け、該比較手段の出力を前記低回転速度検出回路の出力に加算して出力し、低回転速度出力信号の検出精度を向上したことを特徴とするタービン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−270477(P2009−270477A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121058(P2008−121058)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】