説明

ターボエンジン用タービンブレードおよびその製造方法

ターボエンジン用タービンブレードおよびそのようなタービンブレードの製造方法が開示されている。作業工程によれば、タービンブレードは、高熱ストレスに耐えることができ、高作動温度でさえ十分な機械的強度を維持できるべきである。コア要素の表面で金属製連続気泡発泡体の断熱層が焼結によって該コア要素に一体的に結合するように、タービンブレードは設計される。タービンブレードの外部輪郭は、少なくとも一つのシェル要素で形成される。シェル要素は、焼結によって断熱層を形成する連続気泡発泡体に一体的に結合するニッケル系合金を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボエンジン用タービンブレードおよびその製造に適した方法に関する。本発明によるタービンブレードは、高作動温度での長時間の使用に適している。
【発明の背景】
【0002】
ターボエンジンのタービンブレードは、高熱ストレスに頻繁にさらされるので、1000℃に達する高作動温度でさえ十分な強度が維持されなければならない。そのうえ、タービンベアリングに作用する力と、個々のタービンブレードに直接作用する遠心力とをできる限り小さく保てるように、そのようなタービンブレードはできる限り小さい質量を有するべきである。
【0003】
したがって、タービンは、できる限り耐熱性があり、できる限り低い物理的密度を有する、金属または金属合金から製造される。しばしば、そのようなタービンブレードはまた表面被覆物を備え、高温安定性およびできる限り小さな熱伝導率の物質がこの目的のために用いられる。したがって、例えばそのようなタービンブレード上にセラミックスを溶射し、それによって断熱層を形成する、知られた方法がある。
【0004】
しかしながら、温度変化が起こるときに、特に表面被覆物が薄くはがれ落ちる傾向にあり、それによってタービンが損傷されまたはそれどころか完全に破壊されるので、そのような表面被覆物に関して問題が生じることは知られている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、高熱ストレスに耐えることができ、高作動温度でさえ十分な機械的強度を維持できる使用可能なターボエンジン用タービンブレードを製造することにある。
【発明の具体的説明】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有するタービンブレードを用いた本発明により成し遂げられる。そのタービンブレードは、請求項8に記載の方法によって製造することができる。
【0007】
本発明の有利な実施態様および成果が、従属項に記載される特徴で達成することができる。
【0008】
ここで、本発明によるタービンブレードは、焼結によって互いに一体的に結合され、それに対応して「複合部品」と称されるものを形成する、少なくとも三つの本質的な個々の要素から製造される。
【0009】
ここで、断熱層はコア要素の表面に適用され、該断熱層は少なくとも一つのシェル要素によって外側から再び囲まれ、該シェル要素は完成したタービンブレードの外部輪郭を予め決定し、それに対応して予め機械加工して成形される。
【0010】
コア要素は、適切な金属および金属合金から、むしろ好ましくはチタンアルミナイドから製造することができる。
【0011】
別の方法では、できるだけ連続気泡発泡体の全体の表面が、すなわち内部ウェブの表面ですら、ニッケル系合金またはTiAlで予め被覆されることで、断熱層はそれ自体既知の商業的に入手可能な連続気泡ニッケル発泡体から形成される。
【0012】
少なくとも一つまたは二つのシェル要素もまた、焼結によって外側から断熱層に一体的に結合され、ここでまた該シェル要素は、ニッケル系合金からなり、好ましい態様では、連続気泡発泡体の表面被覆に用いられるニッケル系合金はシェル要素と同じ合金組成を有するべきである。
【0013】
完成したタービンブレードにおいて、断熱層は、1〜5mmの厚さ、好ましくは2mm未満の厚さを有するべきであり、断熱層の個々の厚さは、使用時のタービンブレードの温度および個々の寸法を考慮して選択することができる。
【0014】
そのうえ、表面被覆された発泡体から形成される断熱層では、85〜95%の気孔率が好ましくは維持されるべきであり、さらには90〜95%の気孔率が好ましい。
【0015】
本発明によるタービンブレードに一体的な結合によって固定されるべきシェル要素は、例えば1mm以下の比較的小さい厚さを有することができる。これは、そのようなタービンブレードにおいて、シェル要素は流体素子工学の観点から有利な表面の機能を実質的に果たさなければならないためである。この目的のために、シェル要素は、事実上隙間なく、端部接触面に隣接するべきであり、および/または、隣接したシェル要素のそのような接触面は、ブレードが作動されるとき、流体素子工学の観点から臨界でない、またはほんのわずかに臨界であるタービンブレードの領域に配置されるべきである。
【0016】
隣接したシェル要素の互いに接触して隣接した端面は、事実上絶対的に完全な密封が外界の環境および断熱層間で達成されることができるように、それぞれ反対方向で面取りされることができる。
【0017】
しかしながら、バインダー除去工程の際に予め放出されたガスを外側に逃がすことができる通過穴が、焼結処理の際に隣接するシェル要素間に存在するように、切り込みまたはくぼみもそのような端面に形成することができる。しかしながら、これらの通過穴は、その後で焼結工程の際に再び閉じられることができるが、この点については、本発明によるタービンブレードの製造方法の説明で改めて述べるものとする。
【0018】
本発明によるそのようなタービンブレードの製造は、コア要素が用いられ、その外部輪郭が好ましくはタービンブレードの外部端輪郭と、対応の縮小寸法において調和するような方法で行うことができる。
【0019】
適切な等厚を有する連続気泡ニッケル発泡体のブランクは、予め用意され、
そして、コア要素の表面がそのようなブランクを用いた連続気泡ニッケル発泡体でできる限り完全に被覆されるように、切り抜かれる。
【0020】
このようにして製造された連続気泡ニッケル発泡体のブランクは、次にそれぞれの粉末ニッケル系合金またはTiAlと、バインダー溶液とを含む、懸濁液または混合物で被覆される。
【0021】
上述のように、ニッケル発泡体が被覆されることになる場合には、被覆物を形成するために懸濁液用の低ニッケル合金を用いることは有利である。ここで、合金は、炭素、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、およびニオブから選択される他の合金元素に加えて、20〜40質量%の割合のニッケルを含むべきである。この方法では、焼結工程の後に、ニッケル発泡体を合金化することによって、高割合のニッケルを含むニッケル合金から断熱層を得ることができる。
【0022】
しかしながら、純粋なニッケルの連続気泡発泡体の代わりとして、ニッケル系合金の連続気泡発泡体もまた断熱層システムのために用いられることができる。次に、そのようなニッケル系合金の連続気泡発泡体は、対応の粉末から懸濁液を製造するための好ましい使用について後述される要素から形成することができる。
【0023】
しかしながら、ニッケル系合金の連続気泡発泡体もまた懸濁液で被覆され、焼結によってコア要素およびシェル要素に一体的に結合され、そしてこの懸濁液は、粉末ニッケル系合金の代わりに、25〜75質量%のアルミニウム含有量を有するチタンアルミナイド粉末を含むことができる。チタンアルミナイドに加えて、クロム、ニオブ、モリブデン、マンガン、銅、シリコン、および/またはビスマスもまた追加の合金元素として含まれることができる。
【0024】
ニッケル系合金を用いた焼結によって製造される一体的な結合とは対照的に、後でより明らかとなるように、チタンアルミナイドを用いた焼結の場合には、下記のパラメーターが用いられる。
【0025】
焼結は、1250〜1330℃の温度で行われ、加熱速度は5K/minに、保持時間は20〜60分にすべきである。
【0026】
そのうえ、不活性雰囲気中または高真空下で焼結を行うことが有利である。
【0027】
好ましい被覆方法は、懸濁液中に連続気泡ニッケル発泡体を浸漬し、必要ならば、その後にニッケル発泡体の表面から余分な懸濁液を取り除くことである。
【0028】
懸濁液を用いた連続気泡ニッケル発泡体の表面被覆の均一性は、振動によって維持することができる。
【0029】
このようにして製造されたブランク、例えば連続気泡ニッケル発泡体のブランクは、次に、同様な懸濁液の薄層が、例えば溶射によって、予め付与されたコア要素の表面に配置されることができる。
【0030】
その後は、少なくとも一つまたは複数のシェル要素が利用され、その内部表面、すなわち連続気泡ニッケル発泡体から形成されるべき断熱層に向いた表面も、同様な懸濁液で被覆されており、これもまた溶射によって実現されることができる。
【0031】
このようにして製造された複合部品は、コア要素、表面被覆された連続気泡ニッケル発泡体、およびそれぞれのシェル要素から形成され、次に焼結され、たいてい1000℃を超える最高焼結温度に達するのに十分先立って、同時にバインダーが除去される。
【0032】
この工程では、少なくとも全ての有機成分が放出されるが、その時にシェル要素の端面の切り込みおよびくぼみによって形成される既述の通過穴を通してタービンブレードの内側からその有機成分を逃がすこともできる。
【0033】
温度が上昇するにつれて、表面被覆は、連続気泡ニッケル発泡体上の粉末ニッケル系合金から形成され、次いで焼結工程の際に、断熱層を形成するニッケル発泡体が、内側でコア要素に、外側でシェル要素に一体的に結合される。
【0034】
通過穴を形成するくぼみまたは切り込みを備えたシェル要素が用いられている場合には、これらもまた焼結工程の際に、粉末ニッケル系合金のケーキングによって閉じられた後、引き続きこれらの部位で、磨砕により、または研磨によってすら機械的後処理を行って表面を滑らかにすることができる。
【0035】
焼結は1150〜1250℃の温度で行うことができ、焼結工程の際に、5K/minの加熱速度と、最高焼結温度での20〜60分の保持時間とが順守されるべきである。
【0036】
そのうえ、還元性雰囲気中で、好ましくは水素中で、焼結を行うことが有利である。
【0037】
少なくとも50質量%のニッケルを含む粉末ニッケル系合金が、被覆物用懸濁液を製造するために用いられるべきである。追加の合金元素は、炭素、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、ニオブ、およびニッケルの元素から選択されることができる。
【0038】
少なくとも55質量%のニッケルに加えて、少なくとも15質量%のクロムおよび少なくとも5質量%のモリブデンを含むニッケル系合金を用いるのが有利である。
【0039】
以下、本発明を、本発明によるタービンブレードの製造例を通して説明する。
【0040】
58.6質量%のニッケル、0.1質量%の炭素、22.4質量%のクロム、10.0質量%のモリブデン、4.8質量%の鉄、0.3質量%のコバルト、および3.8質量%のニオブからなる粉末ニッケル系合金が、懸濁液を製造するために用いられる。粉末は35μmの平均粒子径を有していた。
【0041】
94%の初期気孔率および1.9mmの厚さを有した連続気泡ニッケル発泡体を被覆するために、ポリビニルピロリドンの1%水溶液を粉末ニッケル系合金に加えた。
【0042】
次に、連続気泡ニッケル発泡体を、懸濁液に浸漬した後、特にニッケル発泡体の連続気泡から、余分な懸濁液を除去するために、吸収性基材に押し付けたが、連続気泡ニッケル発泡体構造の内側にあるウェブの少なくともほとんど完全な湿潤は維持するべきである。
【0043】
しかしながら、他の方法としては、連続気泡ニッケル発泡体を、1%ポリビニルピロリドン水溶液のバインダー溶液にそのまま浸漬し、次いで押し付け、その時になってようやく、バインダー溶液を付与された連続気泡ニッケル発泡体の表面上に粉末ニッケル系合金を乾式で散在させ、振動によって粉末の均一な分布を実現できるような方法で、連続気泡ニッケル発泡体の表面の被覆もまた行うことができる。このようにして、粉末粒子は、ニッケル発泡体の気泡網を覆い、その結果また内部のウェブを少なくともほとんど完全に覆い、そして同時にニッケル発泡体の連続発泡の特性が保護される。
【0044】
その後、コア要素の外部表面および各シェル要素の内部表面が、粉末ニッケル系合金と、ポリビニルピロリドンの1%水溶液との懸濁液で溶射によって被覆される。この懸濁液の層の厚さは、50〜200μm、好ましくは150μmとするべきである。
【0045】
次に、表面被覆されたニッケル発泡体はコア要素の表面に配置され、続いて、シェル要素は、最終的な断熱層を形成する表面被覆されたニッケル発泡体がコア要素およびシェル要素の間に囲まれてそれらすべてに接するように、外側から押し付けられる。
【0046】
このようにして製造された複合部品の形態の半製品は、次に水素雰囲気が維持される焼結炉に導入される。
【0047】
この方法では、バインダーは約300〜600℃の温度で除去される。
【0048】
5K/minの加熱速度と、1150〜1250℃の温度範囲における30分の保持時間の焼結とを伴って本方法は行われた。バインダー除去工程の際に、上記温度範囲では約30分の保持時間もまた考慮されるべきである。
【0049】
焼結の後、表面被覆された連続気泡ニッケル発泡体から形成された断熱層は、タービンブレードの体積全体にわたって、極めて良好な断熱および均一な温度分布を達成できるように、依然として91%の気孔率を有している。
【0050】
このようにして製造されたタービンブレードの熱機械的疲労は、従来のタービンブレードと比較して耐用年数を増加できるほどに著しく低減した。そのうえ、強度、耐クリープ性、および靭性を高めながら、空気中での極めて良好な耐酸化性が、最大1050℃までの温度で達成された。
【0051】
さらに、焼結後で、本発明によってこのようにして製造されたタービンブレードを校正することも可能である。これは、焼結後に依然として存在するであろう寸法許容差を一様にするために、その後の圧縮型での成形によって行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボエンジン用タービンブレードであって、金属製連続気泡発泡体の断熱層が、焼結によってコア要素の表面に一体的に結合され、そして
前記タービンブレードの外部輪郭が、ニッケル系合金製の少なくとも一つのシェル要素を有して形成され、また、前記断熱層を形成する前記連続気泡発泡体に焼結によって一体的に結合される、タービンブレード。
【請求項2】
前記コア要素が、チタンアルミナイドから形成される、請求項1に記載のタービンブレード。
【請求項3】
前記断熱層が、1〜5mmの厚さを有する、請求項1または2に記載のタービンブレード。
【請求項4】
前記連続気泡発泡体が、ニッケル系合金から、またはニッケル系合金で表面被覆された連続気泡ニッケル発泡体から形成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項5】
前記断熱層が、TiAlで表面被覆された連続気泡ニッケル発泡体から、または前記同様の方法で被覆されたニッケル系合金の連続気泡発泡体から形成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項6】
前記表面被覆は、TiAlが、20〜75質量%のアルミニウム含有量と、クロム、ニオブ、モリブデン、マンガン、銅、シリコン、およびビスマスから選択される追加の合金元素とで形成される、請求項5に記載のタービンブレード。
【請求項7】
前記断熱層が、85〜98%の気孔率を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項8】
連続気泡金属製発泡体が、等厚のブランクとして、ウェブを備える前記発泡体の表面が湿潤するように、粉末ニッケル系合金またはTiAlと、バインダー溶液とから形成される懸濁液または混合物で被覆され、
コア要素の外部表面および少なくとも一つのシェル要素の内部表面が、前記タービンブレードの外部輪郭を予め決定し、同様な懸濁液で被覆され、次に被覆されたコア要素、前記発泡体、および前記シェル要素が、前記発泡体が前記コア要素および前記シェル要素間に囲まれて前記断熱層を形成するように、互いに接触され、そして
このようにして得られた複合部品が、前記コア要素、前記連続気泡の表面被覆された発泡体から形成された前記断熱層、および前記シェル要素が互いに一体的に結合されるように焼結されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のタービンブレードの製造方法。
【請求項9】
前記焼結が、外側から前記シェル要素へ圧縮力が加えられながら行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
粉末ニッケル系合金またはTiAlを含むポリビニルピロリドンの水溶液が用いられる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記連続気泡発泡体が、懸濁液中の浸漬およびその後の余分な懸濁液の除去によって被覆される、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記焼結が、1150〜1350℃の最高温度まで行われる、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記最高焼結温度が、20〜60分間にわたって維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記焼結が、還元性または不活性雰囲気中で行われる、請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも50質量%のニッケルと、炭素、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、ニオブ、およびニッケルから選択される追加の合金元素とを含んでなるニッケル系合金が、懸濁液に用いられる、請求項8〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
20〜40質量%の割合で、炭素、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、ニオブ、およびニッケルから選択される合金元素を有する低ニッケル合金が、懸濁液に用いられる、請求項5〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも55質量%のニッケル、少なくとも15質量%のクロム、および少なくとも5質量%のモリブデンを含んでなるニッケル系合金が用いられる、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2008−527236(P2008−527236A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549875(P2007−549875)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000279
【国際公開番号】WO2006/074949
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(591017261)シーブイアールディ、インコ、リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】CVRD Inco Limited
【出願人】(594102418)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ (63)
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D−80686 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】