説明

ターボチャージャ

【課題】ローラピンとノズルリンク板との干渉を防止することができるターボチャージャを提供する。
【解決手段】リンク機構20は、複数のローラピン30によって周方向に回動可能に支持された駆動リング21と、駆動リング21の周方向に配置された複数のリンク板22と、を備え、リンク板22の各々は、一端部が駆動リング21に回動可能に連結され、他端部がノズルベーン10の各々の支持軸9にそれぞれ連結され、駆動リング21の内縁または外縁の少なくとも一方には、周方向に凹部21bが形成され、ローラピン30は、駆動リング21の凹部21bを支持し、駆動リング21のリンク板22側に突出しないように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクロール流路内からタービンインペラ側に供給される排気ガスの圧力を調整する排気ノズルを備えた可変容量型のターボチャージャが知られている。このようなターボチャージャには、周方向に回動するリング状の駆動リングと、駆動リングの周方向に配置されたノズルリンク板とを備えたリンク機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、開閉レバー(ノズルリンク板)の一端部がリングプレート(駆動リング)に回動可能に連結され、他端部がノズルベーンの軸に連結されている。そして、駆動リングを周方向に回動させることでノズルリンク板が搖動し、このノズルリンク板の搖動によってノズルベーンの軸が回転してノズルベーンが開閉される。
【特許文献1】特許第3473469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のターボチャージャでは、駆動リングを回動可能に支持するローラピン部材が、搖動するノズルリンク板の間に配置されているため、ノズルベーンの開閉時にノズルリンク板とローラピン部材が干渉するという課題がある。ノズルリンク板とローラピン部材が干渉すると、ノズルベーンの開閉角度が制限されてしまう。
また、ローラピン部材は、先端部がネジ穴に螺合されたりキリ穴に圧入されたりすることで固定されている。そのため、リンク機構が高温に達するとローラピンが脱落する虞がある。
【0005】
そこで、この発明は、ローラピンとノズルリンク板との干渉を防止することができるターボチャージャを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のターボチャージャは、タービンインペラを回転可能に支持する軸受けハウジングと、前記タービンインペラに排気ガスを供給するスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、前記スクロール流路内から前記タービンインペラ側に供給される前記排気ガスの圧力を調整する排気ノズルと、を備えた可変容量型のターボチャージャにおいて、前記排気ノズルは、前記タービンインペラの周囲に支持軸によって回動可能に支持された複数のノズルベーンと、前記支持軸を回動させるリンク機構と、を備え、前記リンク機構は、複数のローラピンによって周方向に回動可能に支持された駆動リングと、該駆動リングの周方向に配置された複数のリンク板と、を備え、前記リンク板の各々は、一端部が前記駆動リングに回動可能に連結され、他端部が前記ノズルベーンの各々の前記支持軸にそれぞれ連結され、前記駆動リングの内縁または外縁の少なくとも一方には、前記周方向に凹部が形成され、前記ローラピンは、前記駆動リングの前記凹部を支持し、前記駆動リングの前記リンク板側に突出しないように設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のターボチャージャは、前記凹部は、前記駆動リングの内縁に設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のターボチャージャは、前記凹部は、前記ローラピンの位置と前記駆動リングの回動範囲とに対応して、複数設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のターボチャージャは、前記排気ノズルは、前記排気ガスの流路を形成する排気導入壁を備え、前記ローラピンは、前記排気導入壁に形成された貫通孔に挿通され、前記ローラピンの前記流路側の端部には、前記貫通孔の内径よりも外径が大きく形成された係止部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のターボチャージャは、前記貫通孔の前記流路側には、前記貫通孔の内径よりも内径が大きく形成され、前記係止部を収容する拡径部が設けられ、前記係止部の前記流路側の面は、前記排気導入壁の前記流路側の面と面一に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のターボチャージャは、前記ローラピンは、前記排気導入壁に固定されたピン部材と、前記ピン部材に挿通され前記ピン部材に回転自在に装着されたローラ部材とを備え、前記ローラ部材の側面には溝部が形成され、該溝部に前記駆動リングの前記凹部が挟持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リンク機構を構成する駆動リングの内縁または外縁の少なくとも一方には、駆動リングの周方向に凹部が形成されている。そして、駆動リングを回動可能に支持するローラピンは、駆動リングの凹部を支持して駆動リングのリンク板側に突出しないように設けられている。したがって、リンク機構を駆動させてリンク板が回動した場合であっても、ローラピンとリンク板とが干渉することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施形態のターボチャージャは、例えば自動車のエンジンの回転数の増減に基づいてタービンインペラに供給する排気ガスの圧力を調整可能な可変容量型のターボチャージャである。
【0014】
図1はこの実施の形態におけるターボチャージャの断面図であり、図2は図1の部分拡大図である。なお、図1及び図2では、ローラピンの構造を分かりやすくするために、同一の断面に含まれないローラピンを断面視で表している。
図3は、図1に示すターボチャージャが備える駆動リングの平面図である。
図4は、図1に示すターボチャージャのタービンハウジングをベアリングハウジング側から見た平面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のターボチャージャ1は、タービンインペラ2を回転可能に支持するベアリングハウジング(軸受けハウジング)3を備えている。ベアリングハウジング3の片側には、複数のボルト4によりタービンハウジング5が一体的に取り付けられている。また、ベアリングハウジング3のタービンハウジング5と反対側には、複数のボルト6によりコンプレッサハウジング7が一体的に取り付けられている。
【0016】
図1及び図2に示すように、タービンハウジング5は、タービンインペラ2に排気ガスを供給するスクロール流路5aと、スクロール流路5a内からタービンインペラ2側に供給される排気ガスの圧力を調整する排気ノズル8と、を備えている。スクロール流路5aには、例えばエンジンのシリンダ等に接続された排気ガス取入口(図示略)が設けられている。
【0017】
排気ノズル8は、図4に示すように、タービンインペラ2の周囲を取り囲むように配置された複数のノズルベーン10を備えている。また、排気ノズル8は、排気ガスの流路を形成する一対の排気導入壁12a,12bを備えている。
【0018】
ノズルベーン10は、図4に示す平面視で流線型の翼状の板材により形成され、図1及び図2に示すように、タービンインペラ2の周囲にタービンインペラ2の軸2aと略平行に設けられた支持軸9によって回動可能に支持されている。
支持軸9はノズルベーン10に固定され、ノズルベーン10と一体的に設けられている。また、支持軸9は、アクチュエータの動力を支持軸9に伝達して回動させるリンク機構20に連結されている。
【0019】
対向する一対の排気導入壁12a,12bは、連結ピン13により一体的に連結されている。また、排気導入壁12a,12bには、ノズルベーン10の支持軸9を回動可能に支持する支持穴11a,11bが形成されている。また、タービンハウジング5側に配置された排気導入壁12bは、取付ボルト14a及びナット14bにより、タービンハウジング5に固定されている。
【0020】
リンク機構20は、ノズルベーン10のベアリングハウジング3側に配置され、周方向に回動可能に設けられた駆動リング21を備えている。駆動リング21の周方向には、複数のリンク板22が配置されている。駆動リング21及びリンク板22を含むリンク機構20は、例えばステンレス鋼等により形成されている。
【0021】
駆動リング21は、図3に示すようにリング状の形状に形成され、外周部には複数の貫通孔21aが形成されている。貫通孔21aの各々には、図1及び図2に示すようにリンクピン24が挿通されている。
【0022】
リンク板22は、図4に示すように平面視で一方の端部が二股に分かれたフォーク状の形状を有し、二股の爪の間には略U字型のスライド溝22aが中央部から先端部へ向けて形成されている。リンク板22のスライド溝22aが形成された側と反対側の端部には、ノズルベーン10の支持軸9が貫通している。図1及び図2に示すように、リンク板22を貫通した支持軸9の端部はかしめられて、リンク板22と支持軸9とは一体的に連結されて固定されている。
【0023】
リンクピン24は、図4に示すようにリンク板22に対応して駆動リング21の周方向に複数配置されている。そして、図1及び図2に示すように、駆動リング21を貫通した先端部を塑性変形させてかしめることで、駆動リング21に固定されている。
また、リンクピン24は筒状に形成されたスライド部材25に挿通され、スライド部材25はリンクピン24に回転自在に装着されている。また、リンクピン24は、鍔状に形成された頭部24aと駆動リング21との間に、スライド部材25を回転自在に保持している。
【0024】
スライド部材25は、平面視で矩形の筒状に形成され、各々がリンク板22の各々のスライド溝22aにスライド可能に嵌合している。
リンク板22の各々は、スライド溝22aがスライド部材25とスライド可能に嵌合することで、駆動リング21に回動可能に連結されている。
【0025】
図3に示すように、駆動リング21の内縁には、駆動リング21の周方向に複数の凹部21bが形成されている。駆動リング21は、図2に示すように、凹部21bがローラピン30によって支持されることで、周方向に回動可能に設けられている。
駆動リング21の凹部21bの各々は、図4に示すように、駆動リング21の周方向に複数設けられたローラピン30の位置と、駆動リング21の回動範囲、すなわち駆動リング21の許容回転角度θに対応して設けられている。
【0026】
ローラピン30は、ピン状のピン部材31と、ピン部材31に回転自在に装着されたローラ部材32とにより構成されている。
ピン部材31には、図2に示すように軸部31aよりも径が拡大された頭部31bと、軸部31aよりも径が縮小された縮径部31cが形成されている。ピン部材31の縮径部31cは、ベアリングハウジング3側に配置された排気導入壁12aに形成された貫通孔15に挿通されている。また、ピン部材31の縮径部31cの先端部には、貫通孔15の内径よりも外径が大きく形成された係止部31dが設けられている。
【0027】
排気導入壁12aの貫通孔15には、対向する排気導入壁12b側の開口の近傍に、貫通孔15よりも内径が拡大された拡径部15aが設けられている。
拡径部15aは、ピン部材31の縮径部31cをかしめて(塑性変形させて)係止部31dを形成する際に、係止部31dを拡径部15a内に収容することができるように設けられている。また、拡径部15aと係止部31dは、係止部31dの排気ガスの流路側(排気導入壁12b側)の面と、排気導入壁12aの排気ガスの流路側の面とが、段差なく面一になるように設けられている。
【0028】
ローラ部材32は、筒状に形成されてピン部材31の軸部31aに挿通され、ピン部材31の頭部31bと排気導入壁12aとにより挟持されて、ピン部材31に回転自在に装着されている。ローラ部材32は、図1及び図2に示すように、駆動リング21よりもリンク板22側に突出しないように設けられている。すなわち、ローラ部材32のリンク板22側の面は、駆動リング21のリンク板22側の面と段差なく面一になるように形成されている。
【0029】
また、ローラ部材32のリンク板22側には、ピン部材31が駆動リング21よりもリンク板22側に突出しないように、ピン部材31の頭部31bを収容する収容部32aが形成されている。収容部32aは、ローラ部材32のリンク板22側の面と、ピン部材31の頭部31bのリンク板22側の面とが、段差なく面一になるように形成されている。
このように、ピン部材31とローラ部材32の双方を、駆動リング21よりもリンク板22側に突出しないように設けることで、ローラピン30が駆動リング21のリンク板22側に突出しないようになっている。
【0030】
また、ローラ部材32の側面には、ローラ部材32の全周に亘って駆動リング21の凹部21bを挟持して支持するための溝部32bが形成されている。
駆動リング21は、この溝部32bに嵌合して挟持されることで、周方向に回動可能に支持されている。
【0031】
図4に示すように、一対のリンク板22,22の間で、ベアリングハウジング3側には、駆動リンク板28が配置されている。駆動リンク板28は、リンク板22のスライド溝22aと同様の駆動スライド溝28aを備えている。駆動リンク板28の駆動スライド溝28aと反対側の端部には、駆動軸29が連結されて固定されている。駆動リンク板28の駆動スライド溝28aには、スライド部材25と同様の矩形筒状に形成された駆動スライド部材27が、駆動スライド溝28aの延在方向にスライド可能に嵌合している。
駆動スライド部材27には、リンクピン24と同様の駆動リンクピン26が挿通されている。
【0032】
駆動リンクピン26は、図1に示すように、駆動リンク板28のタービンハウジング5側に配置された一対のリンクピン24,24を連結する連結板26b(図4では図示略)を貫通するように設けられている。そして、駆動リンクピン26は、連結板26bを貫通した端部をかしめることで連結板26bに一体的に固定されている。また、駆動リンクピン26は、リンクピン24の頭部24aと同様の頭部26aを有し、頭部26aと連結板26bとの間に駆動スライド部材27を回転自在に保持している。
【0033】
駆動リンク板28の駆動スライド溝28aと反対側の端部には、例えばアクチュエータ等の動力源により軸回りに回転する駆動軸29が固定されている。これにより、駆動リンク板28は、駆動軸29を中心として回動するようになっている。
【0034】
図1に示すように、タービンインペラ2の軸2aのコンプレッサハウジング7側には、コンプレッサインペラ16が軸2aに一体的に連結されている。
コンプレッサハウジング7は、コンプレッサインペラ16へ供給する空気を取り入れる空気取入口7aを備えている。コンプレッサハウジング7とベアリングハウジング3との間で、コンプレッサインペラ16の周囲には、コンプレッサインペラ16側から供給された空気を昇圧する環状のディフューザ流路7bが形成されている。
【0035】
ディフューザ流路7bの周囲には、ディフューザ流路7bの外周部に連通するコンプレッサスクロール流路7cが形成されている。コンプレッサスクロール流路7cには、コンプレッサスクロール流路7c内の空気を、例えばエンジンのシリンダに供給するための空気排出口(図示略)が設けられている。
【0036】
以上の構成により、本実施形態のターボチャージャ1は、例えばエンジンのシリンダから排出された排気ガスをタービンハウジング5のスクロール流路5aに取り込んで、排気ノズル8を介してタービンインペラ2に供給する。これにより、タービンインペラ2が回転して、軸2aを回転させ、コンプレッサインペラ16が回転する。
【0037】
空気取入口7aから取り入れられ、コンプレッサインペラ16の回転により圧縮された空気は、ディフューザ流路7bを通過する過程で昇圧され、コンプレッサスクロール流路7cに供給される。そして、コンプレッサスクロール流路7c内の昇圧された空気は、空気排出口から、例えばエンジンのシリンダに供給される。
【0038】
ここで、本実施形態のターボチャージャ1は、例えばエンジンの回転数等に基づいて、タービンインペラ2に供給する排気ガスの圧力を調整する排気ノズル8を備えている。排気ノズル8により排気ガスの圧力を調整する際には、まず、アクチュエータ等の動力源により、駆動軸29を所定の角度、軸回りに回転させる。これにより、駆動リンク板28が駆動軸29を中心として回動する。
【0039】
駆動リンク板28が回動すると、駆動リンク板28の駆動スライド溝28aに、駆動スライド部材27を介して嵌合した駆動リンクピン26が、駆動スライド溝28aの延在方向にスライドしつつ駆動リング21の周方向に回動する。これにより、連結板26bに連結された一対のリンクピン24,24が駆動リング21の周方向に回動し、駆動リング21を周方向に回動させる。
【0040】
駆動リング21が周方向に回動すると、リンクピン24の各々にスライド部材25を介して連結されたリンク板22の各々が、ノズルベーン10の支持軸9を中心として同期して回動する。これにより、支持軸9が各々回転してノズルベーン10の各々が開閉するようになっている。
そして、ノズルベーン10の開度を調整することで、タービンインペラ2に供給する排気ガスの圧力を調整することができる。
【0041】
次に、この実施の形態の作用について説明する。
本実施形態のターボチャージャ1は、リンク機構20を構成する駆動リング21の内縁の周方向に凹部21bが形成され、ローラピン30は凹部21bを挟持することで駆動リング21を回動可能に支持している。そして、ローラピン30を構成するピン部材31とローラ部材32のリンク板22側の面が、駆動リング21のリンク板22側の面と段差なく面一に形成されている。これにより、ローラピン30は、駆動リング21のリンク板22側に突出しないように設けられている。したがって、リンク機構20が駆動して、リンク板22がノズルベーン10の支持軸9を中心として駆動リング21の周方向に回動した場合であっても、ローラピン30とリンク板22とが干渉することを防止できる。
【0042】
また、凹部21bは駆動リング21の内縁に設けられているので、ローラピン30は駆動リング21の内縁の内側に配置されている。したがって、凹部21bを駆動リング21の外縁に設け、ローラピン30を駆動リング21の外縁の外側に配置する場合と比較して、リンク機構20を径方向に小型化させることができる。
【0043】
また、凹部21bは、例えば周方向に均等に配置された3つのローラピン30の位置と、駆動リング21の回動範囲、すなわち駆動リング21の回転許容角度θに対応して駆動リング21の周方向の3箇所に形成されている。したがって、凹部21bの幅を調整することで、駆動リング21の回転許容角度θを調整することができる。回転許容角度θを調整することで、ノズルベーン10同士が開閉時に衝突したり、ノズルベーン10が必要以上に回転したりすることを防止できる。
【0044】
また、ローラピン30のピン部材31は、図2に示すように、排気導入壁12aの貫通孔15に縮径部31cが挿通され、縮径部31cの先端部がかしめられて係止部31dが設けられている。そのため、例えば排気ガスの熱によりリンク機構20が高温に達した場合であっても、従来ようにローラピンをネジ穴に螺合させたりキリ穴に圧入したりする場合と比較して、ローラピン30が脱落することをより確実に防止することができる。
【0045】
また、貫通孔15の排気ガスの流路側には、貫通孔15の内径よりも内径が大きく形成され、ピン部材31の係止部31dを収容する拡径部が設けられている。そして、係止部31dの流路側の面と、排気導入壁12aの流路側の面とが、段差なく面一に形成されている。したがって、一対の排気導入壁12a,12bの間に形成される排気ガスの流路の流路抵抗を減少させ、排気ガスの圧力損失を低減することができる。これにより、タービンインペラ2を排気ガスによって、より効率よく回転させることができる。
【0046】
また、ローラピン30は、排気導入壁12aに固定されたピン部材31と、ピン部材31に挿通されピン部材31に回転自在に装着されたローラ部材32とにより構成されている。また、ローラ部材32の側面には溝部32bが形成され、溝部32bに駆動リング21の凹部21bが挟持されている。これにより、駆動リング21が周方向に回動する際の抵抗を低減し、より円滑にリンク機構20を駆動させることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のターボチャージャ1によれば、リンク機構20を駆動させてリンク板22が駆動リング21の周方向に回動した場合であっても、ローラピン30とリンク板22とが干渉することを防止できる。したがって、リンク板22の回動がローラピン30によって制限されることを防止することができ、リンク板22をより大きな角度で回動させることができる。そのため、ノズルベーン10の開閉角度が制限されることを防止できる。これにより、スクロール流路5aからタービンインペラ2側に供給される排気ガスの圧力の調整範囲を拡大させることができる。
【0048】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、駆動リングの凹部を駆動リングの外縁に設け、ローラピンを駆動リングの外縁に配置してもよい。また、駆動リングの凹部は、内縁と外縁の少なくとも一方の全周に亘って連続的に形成してもよい。また、各部材の連結方法はかしめに限られず、例えば溶接等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態におけるターボチャージャの断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1に示すターボチャージャが備える駆動リングの平面図である。
【図4】図1に示すターボチャージャが備えるタービンハウジングの平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ターボチャージャ、2 タービンインペラ、2a 軸、3 ベアリングハウジング(軸受けハウジング)、5 タービンハウジング、5a スクロール流路、8 排気ノズル、9 支持軸、10 ノズルベーン、12a 排気導入壁、12b 排気導入壁、15 貫通孔、15a 拡径部、20 リンク機構、21 駆動リング、21b 凹部、22 リンク板、22a スライド溝、30 ローラピン、31 ピン部材、32 ローラ部材、32b 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンインペラを回転可能に支持する軸受けハウジングと、前記タービンインペラに排気ガスを供給するスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、前記スクロール流路内から前記タービンインペラ側に供給される前記排気ガスの圧力を調整する排気ノズルと、を備えた可変容量型のターボチャージャにおいて、
前記排気ノズルは、前記タービンインペラの周囲に支持軸によって回動可能に支持された複数のノズルベーンと、前記支持軸を回動させるリンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、複数のローラピンによって周方向に回動可能に支持された駆動リングと、該駆動リングの周方向に配置された複数のリンク板と、を備え、
前記リンク板の各々は、一端部が前記駆動リングに回動可能に連結され、他端部が前記ノズルベーンの各々の前記支持軸にそれぞれ連結され、
前記駆動リングの内縁または外縁の少なくとも一方には、前記周方向に凹部が形成され、
前記ローラピンは、前記駆動リングの前記凹部を支持し、前記駆動リングの前記リンク板側に突出しないように設けられていることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記凹部は、前記駆動リングの内縁に設けられていることを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記凹部は、前記ローラピンの位置と前記駆動リングの回動範囲とに対応して、複数設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記排気ノズルは、前記排気ガスの流路を形成する排気導入壁を備え、
前記ローラピンは、前記排気導入壁に形成された貫通孔に挿通され、
前記ローラピンの前記流路側の端部には、前記貫通孔の内径よりも外径が大きく形成された係止部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記貫通孔の前記流路側には、前記貫通孔の内径よりも内径が大きく形成され、前記係止部を収容する拡径部が設けられ、
前記係止部の前記流路側の面は、前記排気導入壁の前記流路側の面と面一に形成されていることを特徴とする請求項4記載のターボチャージャ。
【請求項6】
前記ローラピンは、前記排気導入壁に固定されたピン部材と、前記ピン部材に挿通され前記ピン部材に回転自在に装着されたローラ部材とを備え、
前記ローラ部材の側面には溝部が形成され、該溝部に前記駆動リングの前記凹部が挟持されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−65591(P2010−65591A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232279(P2008−232279)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】