説明

ダイオキシン類除去法及び除去剤

【課題】 本発明は、ダイオキシン類と重金属類を1バッチ(1工程)で処理でき固形分の沈降速度が速く分離水のみ膜処理する方法で、先行例より簡素化できるダイオキシン除去法及び除去剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 廃棄物焼却炉の解体時に排出される汚水に、浮遊物質量に応じて、粉末活性炭、Y型又はX型ゼオライトを添加し、さらにNa−P1型ゼオライトを塩化カルシウム飽和液で処理したCa型ゼオライト、硫酸バンド及び水酸化カルシウム及びポリアクリルアミドアニオン系高分子凝集剤からなるゼオライト凝集剤を混合し、上記添加及び混合とを1バッチで処理することを特徴とするダイオキシン類除去法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物焼却炉設備の解体等に際して発生する汚水中のダイオキシン類を除去する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物焼却炉設備の除染や解体時に排出される排水は、重金属処理剤を添加して重金属を処理した後、吸着剤を添加してダイオキシン類を吸着処理し、さらに吸着処理水を膜により固液分離する処理方法が開発されている。
【0003】
しかし、上記吸着処理に用いられる吸着剤は活性炭、活性コークス等の炭素系吸着剤、及びゼオライト、珪藻土等の無機系吸着剤等の1又は2種以上が用いられ、
さらに膜による固液分離を必要とし、セラミック膜又は高分子膜が用いられた(例えば特許文献1、2)。
【0004】
しかしながら上記従来技術は次の3工程よりなり、それぞれの工程が単独で存在し、処理設備及び処理時間が多くかかった。
【0005】
(1)重金属処理剤で重金属処理する工程(2)吸着剤を添加して吸着処理する工程(3)上記処理水を膜により固液分離する工程
【0006】
【特許文献1】特開2002−177902号
【特許文献2】特開2003−53343号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ダイオキシン類と重金属類を1バッチ(1工程)で処理でき固形分の沈降速度が速く分離水のみ膜処理する方法で、先行例より簡素化できるダイオキシン除去法及び除去剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、
第1に廃棄物焼却炉の解体時に排出される汚水に、浮遊物質量に応じて、粉末活性炭、Y型又はX型ゼオライトを添加し、さらにゼオライト凝集剤を混合し、上記添加及び混合を1バッチで処理することを特徴とするダイオキシン類除去法、
第2に上記ゼオライト凝集剤が、Na−P1型ゼオライトを塩化カルシウム飽和液で処理したCa型ゼオライト、硫酸バンド及び水酸化カルシウム及びポリアクリルアミドアニオン系高分子凝集剤からなる上記第1発明記載のダイオキシン類除去法、
第3に上記処理による汚水を固液分離した後、液分を高分子フィルターで濾過する上記第1又は第2発明記載のダイオキシン類除去法、
第4にフライアッシュをアルカリ処理し、さらに熱処理を施し、攪拌してなるY型又はX型ゼオライトと、Na−P1型ゼオライトを塩化カルシウム飽和液で処理したCa型ゼオライト、硫酸バンド及び水酸化カルシウム及びポリアクリルアミドアニオン系高分子凝集剤からなるゼオライト凝集剤とよりなるダイオキシン類除去剤、
によって構成する。
【0009】
焼却炉の燃焼過程において有機塩素化合物からダイオキシン類が生成する。焼却炉解体に際しては炉壁、煙道に付着する灰にダイオキシン類や重金属類が残留している。焼却炉の解体は、汚染除去作業時に発生する発塵防止のため高圧水による洗浄で焼却炉設備内の付着物を除去し、その際にダイオキシン類を含む排水(汚水)が排出される。
【0010】
上記汚水中のポリ塩化ジベンゾパラジオキシン及びコプラナポリ塩化ビフェニルを粉末活性炭が吸着し、
上記汚水中のポリ塩化ジベンゾフラン及びコプラナポリ塩化ビフェニルを上記ゼオライト凝集剤が吸着し、
又、同時に上記活性炭及び上記凝集剤は重金属類を吸着する。
【0011】
さらに上記活性炭および上記凝集剤が汚水中の浮遊物質を凝集して低減する。
【0012】
上述のようにダイオキシン類除去法及び除去剤で処理したダイオキシン汚水は上述のように吸着、凝集した固形分と液体とを固液分離した後、
液体のみを高分子フィルターで濾過処理して放流される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述の除去法及び除去剤によったもので、ダイオキシン類とY型ゼオライト及び又はX型ゼオライトとの接触面積が大で、ダイオキシン類及び重金属の吸着能を増加し、かつダイオキシン類及び重金属を1バッチ(1工程)で処理することができ、急速沈降による固液分離後の液分のみフィルター処理し、処理時間の短縮と装置の簡略化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は従来活性炭で処理できなかったダイオキシン類の除去ができることに特徴がある。そのメカニズムは以下の通りである。
・ダイオキシン類は疎水性の性質からおもに懸濁物質に吸着されている。そこで、懸濁物
質を飛灰排水から除去することがダイオキシン類の削減になると考えた。
・活性炭はミクロポアからマクロポアサイズの径を有する。懸濁物質は優先的に大きなポ
アに吸着され細孔容積が満たされる。そして、その際に吸着されずに残存している微細
粒子に含まれるダイオキシン類が処理されずに残る。
・そこで、細孔径11Å前後を有するY型及びX型もしくはフライアッシュから生成し
たY型もしくはX型と併用することで活性炭で処理できないダイオキシン類(異性体)
を除去する。ダイオキシン類の分子サイズは約10Å、残存している微細粒子に含まれる
ダイオキシン類は吸着除去できる。
・重金属類は飛灰に含まれていることから懸濁物質を上記処理により同時に除去すること
ができる。
・処理水の固液分離は、ゼオライト凝集剤により汚泥が分離できる。後処理のろ過を考慮
し、当該凝集剤の添加量は500ppmとすることに特徴がある。
【0015】
廃棄物等の焼却炉の除染又は解体時には大量の洗浄水(通常水道水、地下水)を散水し、ダイオキシン汚染となって汚水槽A(図1)に流入される。
【0016】
上記汚水には粉末活性炭及びY型及び又はX型ゼオライトを添加する。
【0017】
添加濃度は上記汚水の浮遊物質量が100〜1000mg/リットルに対して、粉末活性炭41.5重量%、Y型もしくはX型ゼオライト41.5重量%及びゼオライト凝集剤17重量%の割合で添加する。
【0018】
上記汚水のPHは6〜8に調整する。
【0019】
上記ゼオライト凝集剤はNa−P1型ゼオライトを塩化カルシウム飽和液で処理したCa型ゼオライト20重量%、硫酸バンド60重量%、水酸化カルシウム19重量%及びポリアクリルアミドアニオン系高分子凝集剤1.0重量%よりなり、
添加混合順序は上記粉末活性炭、Y型もしくはX型ゼオライト、上記ゼオライト凝集剤の順序であって、
上記添加混合によって上記汚水は1個のバッチ内において攪拌、静止により自然沈降固液分離する。
【0020】
分離した上澄液(液体)は高分子フィルター(膜孔径0.45μm)で濾過処理後放流される。
【0021】
又上記汚水中の重金属類は鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、水銀及びその化合物、フッ素及びその化合物等であって、
これらの重金属類は上記粉末活性炭、Y型、X型ゼオライト、ゼオライト凝集剤に
取り込まれてダイオキシン類と共に又は同時に除去される。
【0022】
上記Y型及びX型ゼオライトは高純度のシリカとアルナミあるいは、石炭をエネルギー源とする発電所等において発生する多量の石炭灰を有効利用するもので煙突に向かう微粒溶融球型粒子(フライアッシュ)を電気収塵機で捕集し、これをアルカリ(苛性ソーダ)処理し、かつ熱処理を施して表1の反応条件でもえられる。
【0023】
【表1】

【実施例1】
【0024】
以下に実施例を上げて本発明を具体的に説明する。焼却炉飛灰排水を懸濁濃度約1000mg/lに調整する。この排水にまず、活性炭を2000mg/l添加して30分攪拌、攪拌後Y型もしくはX型またはフライアッシュから生成するY型もしくX型ゼオライトを2000mg/l添加して30分攪拌、その後ゼオライト凝集剤を500mg/l添加して30分攪拌したのち30分間静沈して固液分離する。静沈後0.45μmの高分子フィルターで分離液分を濾過処理する。処理した水質は表2に示す通りである。
【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0027】
以上の通り本発明のダイオキシン処理方法では、
・本処理方法により従来技術より焼却炉の飛灰排水のダイオキシン類及び重金属類を簡便
に短時間で処理できる。
・処理水は環境基準レベルまで清浄化することができ放流することができる。
・飛灰排水の汚泥量が5%まで減容化できるとともに産業廃棄物の減量とともに処理費用
が1/10まで低コスト化できる。
・処理水は再利用することができ、焼却炉解体時の洗浄水(水道水、地下水)の使用量削
減ができる。
・現場で直接処理できるため運搬費用の削減にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のダイオキシン類除去法の系統図である。
【図2】(イ)図はダイオキシン汚水の攪拌状態の写真である、(ロ)図は濃縮固形分の凝集沈澱状態の写真である。
【符号の説明】
【0029】
A 汚水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却炉の解体時に排出される汚水に、浮遊物質量に応じて、
粉末活性炭、Y型又はX型ゼオライトを添加し、
さらにゼオライト凝集剤を混合し、
上記添加及び混合を1バッチで処理することを特徴とするダイオキシン類除去法。
【請求項2】
上記ゼオライト凝集剤が、Na−P1型ゼオライトを塩化カルシウム飽和液で処理したCa型ゼオライト、硫酸バンド及び水酸化カルシウム及びポリアクリルアミドアニオン系高分子凝集剤からなる請求項1記載のダイオキシン類除去法。
【請求項3】
上記処理による汚水を固液分離した後、液分を高分子フィルターで濾過する請求項1又は2記載のダイオキシン類除去法。
【請求項4】
フライアッシュをアルカリ処理し、さらに熱処理を施し、攪拌してなるY型又はX型ゼオライトと、
Na−P1型ゼオライトを塩化カルシウム飽和液で処理したCa型ゼオライト、硫酸バンド及び水酸化カルシウム及びポリアクリルアミドアニオン系高分子凝集剤からなるゼオライト凝集剤とよりなるダイオキシン類除去剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−14870(P2007−14870A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198197(P2005−198197)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【特許番号】特許第3869451号(P3869451)
【特許公報発行日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(501331142)九電産業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】