説明

ダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法及び監視装置

【課題】ヒータ及びヒータ保護管の状態を簡易に監視することができるとともに、ヒータ保護管及びヒータの寿命を予測し、的確な保全を行うことが可能なダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法及び監視装置を提供する。
【解決手段】ダイカスト電気溶解炉D内部を加温するための複数のヒータ線を被覆するヒータ保護管41を備えたダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法が、ダイカスト電気溶解炉内部を加圧する第1の工程と、ヒータ保護管に配設された圧力測定手段42により、圧力を測定する第2の工程と、第2の工程により検出された圧力が一定値以上であるか否かを判定し、検出された圧力が一定値以上であった場合に異常報知を行う第3の工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法及び監視装置に係り、特に簡易な構成で、ダイカスト電気溶解炉ヒータの劣化を確実に検出することができるダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法及び監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト電気溶解炉においては、そのダイカスト鋳造工程において、電気式溶解・保持炉内に溶融材料が充填された状態が保たれている。
このように、溶融材料を溶解状態に保持するため、溶融材料(溶湯)を加熱するための熱電対で構成されたヒータが必要となる。
【0003】
溶湯を加熱する方法として、溶湯に浸漬するタイプのヒータを使用する場合には、高温状態の溶湯の熱エネルギーからヒータを保護するために、このヒータの溶湯浸漬部分を保護するための保護管が必要となる。
しかし、この保護管は、前述の通り、溶湯の高い熱エネルギーに曝されるため、高い耐久性が要求される。
【0004】
このため、構成材料を検討してより耐久性の高い保護管を開発したり、耐久性を向上させた構造の保護管が開発されている(例えば、特許文献1)。
また、電気溶解炉内部の温度等の状態は、常に監視されており、監視された温度でヒータへの通電を制御し、異常加熱を防止し、寿命低下や寿命時期の安定性が図られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−171012号公報
【特許文献2】特許第2989371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、ヒータを内蔵するヒータチューブの外周面を被覆する筒状剛性部材が開示されている。
このように、特許文献1の技術においては、筒状剛性部材を溶湯と接触する面に配設することにより、ヒータチューブを保護して、接触事故やスパーク、穴あきを等の発生を防止している。
また、特許文献2には、浸漬式棒状ヒータの通電制御方法が開示されている。
特許文献2の技術においては、溶湯の温度分布差による棒状ヒータの加熱を防止するための通電方法が開示されたものである。
つまり、棒状ヒータから離隔して配設される溶湯温度検出器と、先端感温部がヒータ保護管内部に挿入された局部温度検出器を備え、この溶湯温度検出器と局部温度検出器とはリレー接続されている。この溶湯温度検出器と局部温度検出器との検出値により、棒状ヒータのオンオフを行う。
このように、制御されるため、熱容量の大きな溶湯の熱対流の遅れに起因する溶湯温度検出器の感応遅れを補い、棒状ヒータ及びヒータ保護管の異常過熱を防止することができるので、異常過熱が原因となっていた棒状ヒータ及びヒータ保護管の寿命低下や寿命時期の不安定さを解消することができる。
【0007】
しかし、このように、ヒータ保護管を監視し、劣化を防止する工夫はされていても、ヒータ保護管は、常に高エネルギーに曝されているため、劣化は免れない。
例えば、ヒータ保護管に穴があくと、溶融材料(アルミニウム溶材等)が、この穴から浸入し、複数のヒータ線がショートし、電源ブレーカが切れて炉内温度が低下するという不具合が生じる。
このようにヒータ保護管が劣化した場合、このヒータ保護管を新たなものに交換する必要があるが、この交換作業は、保全工数(通常、8時間×3人程度)がかかり、設備稼働率の低下を招く。
また、このようなヒータ保護管の劣化による不具合は、突発的に発生するものであり、ライン稼働中に生じると問題が大きいが、劣化状態の定期的確認は、高温環境であることや開口部が狭小であるという環境から、実施困難であるのが実情である。
【0008】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、ヒータ及びヒータ保護管の状態を簡易に監視することができるとともに、ヒータ保護管及びヒータの寿命を予測し、的確な保全を行うことが可能なダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法及び監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、本発明に係るダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法によれば、ダイカスト電気溶解炉内部を加温するための複数のヒータ線を被覆して保護するヒータ保護管を備えたダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法であって、前記ダイカスト電気溶解炉内部を加圧する第1の工程と、前記ヒータ保護管に配設された圧力測定手段により、圧力を測定する第2の工程と、該第2の工程により検出された圧力が一定値以上であるか否かを判定し、前記検出された圧力が一定値以上であった場合に異常報知を行う第3の工程と、を備えることにより解決される。
【0010】
このように、本発明においては、ヒータ保護管からリークする圧力を検出することによって、ヒータ保護管の劣化を判定することができる。
つまり、ヒータ保護管に穴や亀裂等が形成されている場合には、この間隙から圧力がリークする。
このため、このリークした圧力を測定することにより、ヒータ保護管に形成された穴や亀裂等の有無、すなわちヒータ保護管の劣化状態を予測することができる。
また、このヒータ保護管の劣化度合いにより、リークする圧力の程度が異なるため、この圧力を測定することによって、ヒータ保護管の劣化度合もまた予測することができる。
更に、異常を検知した場合に、異常報知が行われるため、視覚的に確実に異常を捉えることができる。
【0011】
また、上記課題は、本発明に係るダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法によれば、ダイカスト電気溶解炉内部を加温するための複数のヒータ線を被覆して保護するヒータ保護管を備えたダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法であって、前記複数のヒータ線に流れる電流値を、三相交流各相の電流を計測する電流測定手段により検出する第1の工程と、前記電流値のばらつきが一定値以上であるか否かを判定し、前記電流値のばらつきが一定値以上であった場合に異常報知を行う第2の工程と、を備えることにより解決される。
【0012】
このように、本発明においては、ヒータ線の電流を測定してそのばらつきを検出することによって、ヒータ線の短絡を検出することができる。
つまり、ヒータ線が短絡している場合に生じる、三相交流各相のメータリレーのオン・オフのタイミングのズレを検出することにより、ヒータ線の短絡を検知することができる。
このため、ヒータ線の劣化状態を予測することができるとともに、このばらつきの程度によって、ヒータ線の短絡度合もまた予測することができる。
更に、異常を検知した場合に、異常報知が行われるため、視覚的に確実に異常を捉えることができる。
【0013】
更に、上記課題は、本発明にかかるダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法によれば、ダイカスト電気溶解炉内部を加温するための複数のヒータ線を被覆して保護するヒータ保護管を備えたダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法であって、前記ダイカスト電気溶解炉内部を加圧する第1の工程と、前記ヒータ保護管に配設された圧力測定手段により、圧力を測定するとともに、前記複数のヒータ線に流れる電流値を、三相交流各相の電流を計測する電流測定手段により検出する第2の工程と、該第2の工程により検出された圧力が一定値以上であるか否かを判定し、前記検出された圧力が一定値以上であった場合に異常報知を行うとともに、前記第2の工程により検出された前記電流値のばらつきが一定値以上であるか否かを判定し、前記電流値のばらつきが一定値以上であった場合に異常報知を行う第3の工程と、を備えることにより解決される。
【0014】
このように、本発明においては、ヒータ保護管からリークする圧力を検出することによって、ヒータ保護管の劣化を判定することができるとともに、ヒータ線の電流を測定してそのばらつきを検出することによって、ヒータ線の短絡を検出することができる。
このため、2つの指標から、ヒータの劣化状況を予測することができる。
すなわち、ヒータ保護管の劣化と、ヒータ線の短絡とを双方検出することができ、より確実に電気溶解炉ヒータの監視を行うことができる。
【0015】
このとき、前記第3の工程では、前記第2の工程により検出された圧力が一定値以上であって、前記第2の工程により検出された前記電流値のばらつきが一定値以上でない場合に、第1の異常報知を行い、前記第2の工程により検出された圧力が一定値以上であるとともに、前記第2の工程により検出された前記電流値のばらつきが一定値以上であった場合には、第2の異常報知を行うと好適である。
【0016】
例えば、第1の異常報知が行われる場合というのは、ヒータ保護管には穴や亀裂が生じているけれども、現時点ではヒータ線の短絡までには至っていない場合である。
つまり、ヒータ保護管は劣化しているけれども、若干の猶予がある段階である。
また、第2の異常報知が行われる場合というのは、ヒータ保護管には穴や亀裂が生じているとともに、ヒータ線の短絡まで起こっている場合である。
つまり、猶予のない状態である。
前者の場合には、緊急にラインを停止する必要はないと考えられるため、近日中にヒータ保護管若しくは電気溶解炉ヒータの交換を行うよう促せばよいが、後者の場合には、緊急にラインを停止してヒータ保護管若しくは電気溶解炉ヒータの交換を行う必要がある。
このように、本発明では、複数の指標により、電気溶解炉ヒータの劣化の緊急度を階層的に報知することができる。
【0017】
また、上記課題は、本発明に係る電気溶解炉ヒータ監視装置によれば、ダイカスト電気溶解炉内部を加温するための複数のヒータ線を被覆して保護するヒータ保護管を備えたダイカスト電気溶解炉ヒータの監視装置であって、前記ダイカスト電気溶解炉内部を加圧する加圧手段と、前記ヒータ保護管の一端部に配設され、前記ヒータ保護管の周壁を介して漏洩する圧力を計測する圧力測定手段と、前記複数のヒータ線に流れる三相交流各相の電流値を計測する電流測定手段と、前記圧力測定手段により検知された圧力値が一定値以上である場合と、前記電流値測定手段により検知された電流値のばらつきが一定値以上である場合の少なくとも一方が生じた場合に、異常報知を行う異常報知手段とを備えたことにより解決される。
【0018】
このように、本発明に係るダイカスト電気溶解炉ヒータ監視装置においては、ヒータ保護管からリークする圧力を検出することによって、ヒータ保護管の劣化を判定することができるとともに、ヒータ線の電流を測定してそのばらつきを検出することによって、ヒータ線の短絡を検出することができる。
更に、異常を検知した場合に、異常報知手段による報知が行われるため、視覚的に確実に異常を認知させることができる。
【0019】
このとき、前記圧力測定手段により検知された圧力を表示する圧力表示手段と、前記電流測定手段により検知された電流値を表示する電流値表示手段とを更に備え、前記異常報知手段は、前記圧力測定手段により検出された圧力値が一定値以上であって、前記電流値測定手段により検知された電流値のばらつきが一定値以上ではない場合に報知を行う第1の報知手段と、前記圧力測定手段により検出された圧力値が一定値以上であるとともに、前記電流値測定手段により検知された電流値のばらつきが一定値以上である場合に報知を行う第2の報知手段と、を少なくとも備えると好適である。
【0020】
このように構成されているため、緊急にラインを停止する必要はないと考えられることから、近日中にヒータ保護管若しくは電気溶解炉ヒータの交換を行うよう促す第1の異常報知手段による報知と、緊急にラインを停止してヒータ保護管若しくは電気溶解炉ヒータの交換を行う必要があることを示す第2の異常報知手段による報知とを行うことができる。
このように、本発明では、複数の報知手段により、電気溶解炉ヒータの劣化の緊急度を階層的に報知することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ヒータ及びヒータ保護管の状態を簡易に監視することができる。
また、その監視による結果より、ヒータ保護管及びヒータの寿命を予測し、的確な保全を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、ヒータ及びヒータ保護管の状態を簡易に監視することができるとともに、ヒータ保護管及びヒータの寿命を予測し、的確な保全を行うことが可能なダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法及び監視装置に関するものである。
【0023】
図1乃至図6は、本発明の一実施形態を示すものであり、図1はヒータ状態監視装置を示す説明図、図2及び図3はエアーリークの検出原理を示す説明図、図4は短絡検知部の構成を示す説明図、図5及び図6はヒータ状態監視装置の制御を示すフローである。
【0024】
はじめに、図1により、本実施形態に係るダイカスト電気溶解炉ヒータ監視装置としてのヒータ状態監視装置Sについて説明する。
本実施形態に係るヒータ状態監視装置Sは、ダイカスト電気溶解炉Dの状態のうち、特にヒータ4の状態を監視するための装置である。
本実施形態にかかるヒータ状態監視装置Sは、エアー検出部1、断線検知部2、警報報知部3、を有して構成されている。
本実施形態に係るエアー検出部1は、ヒータ4を構成するヒータ保護管41からのエアーリークを検知する圧力メータである。
このエアー検出部1では、検出されたエアー圧力がデジタル表示される。
【0025】
このエアーリークの検出原理を、図2及び図3により説明する。
図2に示すように、ダイカスト電気溶解炉Dには、溶融材料を加熱するためのヒータ4が挿入されている。このヒータ4がダイカスト電気溶解炉ヒータに相当する。
このヒータ4は、発熱源である複数のヒータ線43と、このヒータ線43を保護するためのヒータ保護管41とを有して構成されている。
なお、ヒータ線43は、ヒータ保護管41に被覆されており、外部より視認不可となっているため、図示は省略してある。
【0026】
そして、このヒータ保護管41の基端側(ダイカスト電気溶解炉D外部に配設される側の端部)には、圧力測定手段としてのエアーテスタ42が接続されている。
また、このエアーテスタ42は、ヒータ状態監視装置Sのエアー検出部1に接続されている。
この状態で、ダイカスト電気溶解炉DにエアーX1をかけることにより、ヒータ保護管41に形成された穴や亀裂等の有無が検出される。
本実施形態においては、エアーX1の圧力は、0.15kgf/cm(≒15KPa)に設定されている。
この場合、エアー検出部1の圧力レンジは、0〜0.1kgf/cmでデジタル表示できるように設定されている。
【0027】
このように構成されているので、ヒータ保護管41に穴41aが形成されていると、図3に示すように、エアーX1は、例えばエアーX2の軌跡を通り、穴41aよりヒータ保護管41内部に進入する(エアーX3)。
そして、このエアーX3の軌跡を通ったエアーは、エアーテスタ42に検出されることとなる。
エアーテスタ42にて検出されたエアーの圧力は、エアー検出部1にて検知されて報知される。
【0028】
つまり、エアー検出部1においては、ヒータ保護管41に穴41aが形成されている場合に、この穴41aからリークしたエアーの圧力が検出される。
仮に、ヒータ保護管41に穴41aが形成されてなければ、このエアー検出部1において、エアーの圧力が検出されることはなく、逆に、ヒータ保護管41に穴41aが形成されていれば、このエアー検出部1においてエアーの圧力が検出される。
また、エアー圧力には、一定の閾値が設定されており、エアー検出部1で検出されたエアー圧力が閾値以上となった場合には、ヒータ保護管41に穴41aが形成されていると推定される。
【0029】
更に、エアー検出部1において検出されたエアー圧力により、どの程度の大きさの穴41aが形成されているのかを予測することができる。
例えば、穴41aの大きさを変化させて、ヒータ保護管41に同一のエアー圧力をかけ、検出されるエアー圧力を各々計測して、穴41aの大きさと検出されるエアー圧力との相関式を作成する。この相関式より、回帰計算を行ない、穴41aの大きさを推測することができる。
【0030】
このように穴41aの大きさを推測することにより、ヒータ保護管41の交換時期を予測することができる。
つまり、ヒータ保護管41に穴41aが形成されると、溶融材料がその穴41aより浸入し、その内部に配設されたヒータ線43が短絡するのであるが、このヒータ保護管41に形成された穴41aが小さいものである場合には、溶融材料が高粘度であるため、すぐにヒータ保護管41内部に浸入して短絡を引き起こす可能性は低い。
【0031】
しかし、ヒータ保護管41に形成された穴41aが大きいものである場合には、その穴41aより溶融材料が浸入して、短期間内に短絡を引き起こす可能性が高い。
よって、この穴41aの大きさがわかれば、ヒータ保護管41の交換の緊急性を予測することができる。
例えば、この穴41aの大きさとヒータ保護管41の寿命の関係もまた、穴41aの大きさとヒータ保護管41の寿命との関係を示す相関式により推測する。
【0032】
なお、本実施形態においては、ヒータ保護管41外部よりエアー圧力をかけて、ヒータ保護管41内部に進入するエアーを検知したが、構成はこれに限られることはなく、ヒータ保護管41内部よりエアー圧力をかけて、ヒータ保護管外部にリークするエアーを検出するように構成されていてもよい。
【0033】
図1に戻り、本実施形態に係る断線検知部2は、ヒータ4を構成するヒータ線43の短絡を検知するためのものであって、三相交流各相の電流を計測する電流測定手段としてのメータリレー21、カウンタ22、を有して構成されている。
メータリレー21は、R相メータリレー21a、S層メータリレー21b、T層メータリレー21cで構成されている。
カウンタ22は、ヒータ4を構成するヒータ線43が瞬間的に短絡した際に生じる電流低下の回数をカウントして表示する。
【0034】
図4に示すように、各メータリレー21(R相メータリレー21a、S層メータリレー21b、T層メータリレー21c)は、ヒータ4の三相交流の各相をそれぞれモニタしてアナログ表示し、各相のオンオフのタイミングのズレにより短絡状態の有無と程度を示唆する。
【0035】
また、三相交流の各相のメータリレー21(R相メータリレー21a、S層メータリレー21b、T層メータリレー21c)のオンオフのタイミングのズレは、ヒータ線43が短絡状態にあることを示唆する。
つまり、エアーのリークが検出されたとしても、このメータリレー21(R相メータリレー21a、S層メータリレー21b、T層メータリレー21c)のオンオフのタイミングのズレが検出されなければ、ヒータ保護管41内部のヒータ線43には、現時点では短絡が生じていないことが推測される。
【0036】
逆に、エアーのリークが検出されるとともに、メータリレー21(R相メータリレー21a、S層メータリレー21b、T層メータリレー21c)のオンオフのタイミングのズレが検出された場合には、ヒータ保護管41に形成された穴41aが要因で内部に配設されたヒータ線43が短絡してしまっていることが推測される。
【0037】
よって、エアーのリークが検出されても、メータリレー21(R相メータリレー21a、S層メータリレー21b、T層メータリレー21c)のオンオフのタイミングのズレが検出されなければ、ヒータ保護管41の交換に緊急性を有することはなく、若干の日程的猶予があると考えられるが、エアーのリークが検出されるとともに、メータリレー21(R相メータリレー21a、S層メータリレー21b、T層メータリレー21c)のオンオフのタイミングのズレが検出された場合には、すでにヒータ線43の短絡が生じている可能性が高く、交換に緊急性を要すると考えられる。また、場合によっては、ラインを緊急停止する等の措置を講ずる必要もあると考えられる。
なお、本実施形態においては、このメータリレー21(R相メータリレー21a、S層メータリレー21b、T層メータリレー21c)のオンオフのタイミングのズレには、閾値が設定されており、この閾値を超えるズレが検出された場合に、ヒータ線43の短絡が生じていると判定される。
【0038】
図1に戻り、異常報知手段としての警報報知部3は、複数のランプで構成されている。
警報報知部3は、エアー検出部1、断線検知部2において、ヒータ保護管41及びヒータ線43に生じた異常を検知した場合に、その検知信号を受け、シーケンサを介して所定のランプを点灯させることによって、その異常を報知する。
なお、このランプの組合せにより、予測された寿命を報知してもよいし(例えば、色により「猶予有」「至急」「緊急」を区別する、点灯個数により「猶予有」「至急」「緊急」を区別する等)、デジタル表示器を配設して寿命をデジタル表示してもよい。
【0039】
なお、エアー検出部1でヒータ保護管41に異常が生じていることが検知され、断線検知部2においてヒータ線43の短絡が検知されない場合には、例えば、ヒータ交換を指示するランプ報知(例えば、警報報知部3のランプの色により「交換」の色を点灯する等)を行い、近日中のライン休止日等に、ヒータ4若しくはヒータ保護管41の交換を行うよう促す。この場合のランプ報知が第1の異常報知に相当する。
【0040】
この状態は、エアーはリークしているけれども、現時点ではヒータ線43の短絡までには至っていない場合であり、ヒータ保護管41は劣化しているけれども、若干の猶予がある段階である。この場合には、緊急にラインを停止する必要はないと考えられるため、近日中にヒータ保護管41若しくはヒータ4の交換を行うよう促す。
【0041】
また、エアー検出部1でヒータ保護管41に異常が生じていることが検知されるとともに、断線検知部2においてヒータ線43の短絡が検知されている場合には、例えば、ライン停止を指示するランプ報知(例えば、警報報知部3のランプの色により「交換」の色を点灯する、フリッカーさせる等)を行い、早急にラインを停止してヒータ交換を行うよう促す。なお、ラインが自動停止するように構成されていてもよい。この場合のランプ報知が第2の異常報知に相当する。
【0042】
この状態は、ヒータ保護管41には、穴41aが形成されているとともに、ヒータ線43が短絡状態となっていることが推測される。
この場合には、電源ブレーカが切れ、炉内温度の低下が突発的に起こる可能性があるため、直ちにラインを停止してヒータ4を交換する必要があると考えられる。
よって、ラインを停止してヒータ4を直ちに交換することを促すものである。
【0043】
次いで、図5及び図6により、ヒータ状態監視装置Sの制御の一例を示す。
なお、制御方法はこれに限られることはなく、本発明の趣旨の範囲内において、改変することができることはもちろんのことである。
また、本実施形態においては、タイマにおいて管理された一定時間毎にエアーの圧力をかける構成としたが、これに限られることはなく、例えば、常時エアー圧力をかける構成としてもよい。
【0044】
まず、ステップS1により、タイマをONする。
次いで、ステップS2によりタイマがアップしたか否かを判定する。
ステップS2により、タイマがアップしていないと判定した場合(ステップS2:No)、ステップS2に戻り、タイマがアップしたか否かを判定する。つまり、タイマがアップするのを待つ。
【0045】
ステップS2により、タイマがアップしたと判定した場合(ステップS2:Yes)、ステップS3で、エアー加圧をONする。
次いで、ステップS4でエアー検出部1においてエアーのリークが検出されたか否かを判定する。
【0046】
ステップS4でエアーのリークが検出されていないと判定した場合(ステップS4:No)、処理はAを解して、ステップS14に進み、ステップS14でエアー加圧をOFFしてリターンとなる。
ステップS4でエアーのリークが検出されたと判定した場合(ステップS4:Yes)、ステップS5でそのエアーリーク量が閾値以上であるか否かを判定する。
【0047】
ステップS5でエアーリーク量が閾値以上ではないと判定した場合(ステップS5:No)、処理はAを解して、ステップS14に進み、ステップS14でエアー加圧をOFFしてリターンとなる。
ステップS5でエアーリーク量が閾値以上であると判定した場合(ステップS5:Yes)、ステップS6でヒータ保護管41の寿命を算出して、ステップS7で警報及び寿命を報知する。
【0048】
この報知は、警報報知部3において、所定のランプを点灯させることによって実行される。
例えば、予測された寿命(例えば、上記相関式等による回帰計算により予測する)は、このランプの組合せにより(例えば、色により「猶予有」「至急」「緊急」を区別する、点灯個数により「猶予有」「至急」「緊急」を区別する等)報知する。
【0049】
次いで、処理はBを解して、図6のステップS8に進み、ステップS8で断線検知部2において短絡が検出されたか否かを判定する。
ステップS8で、短絡が検出されていないと判定した場合(ステップS8:No)、ステップS10で、ヒータ交換指示報知行い、ステップS14でエアー加圧をOFFしてリターンとなる。ヒータ交換指示報知は、警報報知部3において、所定のランプを点灯させることによって実行される。
【0050】
つまり、これは、エアーはリークしているけれども、現時点ではヒータ線43の短絡までには至っていない場合であり、若干の猶予がある段階である。この場合には、ヒータ交換を指示するランプ報知(例えば、警報報知部3のランプの色により「交換」の色を点灯する等)を行い、例えば、近日中のライン休止日等に、ヒータ4若しくはヒータ保護管41の交換を行うよう促す。
【0051】
ステップS8で、短絡が検出されていると判定した場合(ステップS8:Yes)、ステップS9でその値が閾値以上であるか否かを判定する。
ステップS9で、閾値以上ではないと判定した場合(ステップS9:No)、ステップS10で、ヒータ交換指示報知行い、ステップS14でエアー加圧をOFFしてリターンとなる。
ヒータ交換指示報知は、警報報知部3において、所定のランプを点灯させることによって実行される。
【0052】
ステップS9で、閾値以上であると判定した場合には(ステップS9:Yes)、ステップS11で寿命を算出して、ステップS12で警報及び寿命を報知する。
この報知は、警報報知部3において、所定のランプを点灯させることによって実行される。
例えば、予測された寿命(例えば、上記相関式等による回帰計算により予測する)は、このランプの組合せにより(例えば、色により「猶予有」「至急」「緊急」を区別する、点灯個数により「猶予有」「至急」「緊急」を区別する等)報知する。
次いで、ステップS13でライン停止指示の報知を行い、ステップS14でエアー加圧をOFFしてリターンとなる。
このライン停止指示の報知は、警報報知部3において、所定のランプを所定の態様で(所定の色、組合せ、フリッカー等)点灯させることによって実行される。
【0053】
つまり、この時点では、ヒータ保護管41には、穴41aが形成されているとともに、ヒータ線43が短絡状態となっていることが推測される。
この場合には、電源ブレーカが切れ、炉内温度の低下が突発的に起こる可能性があるため、直ちにラインを停止してヒータ4を交換する必要があると考えられる。
【0054】
以上のように、本発明では、ヒータ保護管41の状態とヒータ線43の劣化状態を段階的に検知することができる。
つまり、エアーのリークにより、ヒータ保護管41の劣化状態(穴41aが形成されているか否か)を知ることができるとともに、このヒータ保護管41の劣化により内部に配設されたヒータ線43が短絡しているか否かを判定することができる。
このように、本発明においては、段階的にヒータ4の劣化状態を知ることができ、ヒータ4の寿命及び保全の必要性を簡易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒータ状態監視装置を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエアーリークの検出原理を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るエアーリークの検出原理を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る短絡検知部の構成を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るヒータ状態監視装置の制御を示すフローである。
【図6】本発明の一実施形態に係るヒータ状態監視装置の制御を示すフローである。
【符号の説明】
【0056】
1‥エアー検出部、
2‥断線検出部、21‥メータリレー、
21a‥R相メータリレー、21b‥S層メータリレー、21c‥T層メータリレー
22‥カウンタ、
3‥警報報知部、
4‥ヒータ、41‥ヒータ保護管、41a‥穴、42‥エアーテスタ、43‥ヒータ線、
D‥ダイカスト電気溶解炉、S‥ヒータ状態監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカスト電気溶解炉内部を加温するための複数のヒータ線を被覆して保護するヒータ保護管を備えたダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法であって、
前記ダイカスト電気溶解炉内部を加圧する第1の工程と、
前記ヒータ保護管に配設された圧力測定手段により、圧力を測定する第2の工程と、
該第2の工程により検出された圧力が一定値以上であるか否かを判定し、前記検出された圧力が一定値以上であった場合に異常報知を行う第3の工程と、
を備えることを特徴とするダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法。
【請求項2】
ダイカスト電気溶解炉内部を加温するための複数のヒータ線を被覆して保護するヒータ保護管を備えたダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法であって、
前記複数のヒータ線に流れる電流値を、三相交流各相の電流を計測する電流測定手段により検出する第1の工程と、
前記電流値のばらつきが一定値以上であるか否かを判定し、前記電流値のばらつきが一定値以上であった場合に異常報知を行う第2の工程と、
を備えることを特徴とするダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法。
【請求項3】
ダイカスト電気溶解炉内部を加温するための複数のヒータ線を被覆して保護するヒータ保護管を備えたダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法であって、
前記ダイカスト電気溶解炉内部を加圧する第1の工程と、
前記ヒータ保護管に配設された圧力測定手段により、圧力を測定するとともに、前記複数のヒータ線に流れる電流値を、三相交流各相の電流を計測する電流測定手段により検出する第2の工程と、
該第2の工程により検出された圧力が一定値以上であるか否かを判定し、前記検出された圧力が一定値以上であった場合に異常報知を行うとともに、前記第2の工程により検出された前記電流値のばらつきが一定値以上であるか否かを判定し、前記電流値のばらつきが一定値以上であった場合に異常報知を行う第3の工程と、
を備えることを特徴とするダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法。
【請求項4】
前記第3の工程では、前記第2の工程により検出された圧力が一定値以上であって、前記第2の工程により検出された前記電流値のばらつきが一定値以上でない場合に、第1の異常報知を行い、
前記第2の工程により検出された圧力が一定値以上であるとともに、前記第2の工程により検出された前記電流値のばらつきが一定値以上であった場合には、第2の異常報知を行うことを特徴とする請求項3に記載のダイカスト電気溶解炉ヒータの監視方法。
【請求項5】
ダイカスト電気溶解炉内部を加温するための複数のヒータ線を被覆して保護するヒータ保護管を備えたダイカスト電気溶解炉ヒータの監視装置であって、
前記ダイカスト電気溶解炉内部を加圧する加圧手段と、
前記ヒータ保護管の一端部に配設され、前記ヒータ保護管の周壁を介して漏洩する圧力を計測する圧力測定手段と、
前記複数のヒータ線に流れる三相交流各相の電流値を計測する電流測定手段と、
前記圧力測定手段により検知された圧力値が一定値以上である場合と、前記電流値測定手段により検知された電流値のばらつきが一定値以上である場合の少なくとも一方が生じた場合に、異常報知を行う異常報知手段と、
を備えたことを特徴とするダイカスト電気溶解炉ヒータの監視装置。
【請求項6】
前記圧力測定手段により検知された圧力を表示する圧力表示手段と、
前記電流測定手段により検知された電流値を表示する電流値表示手段とを更に備え、
前記異常報知手段は、前記圧力測定手段により検出された圧力値が一定値以上であって、前記電流値測定手段により検知された電流値のばらつきが一定値以上ではない場合に報知を行う第1の報知手段と、前記圧力測定手段により検出された圧力値が一定値以上であるとともに、前記電流値測定手段により検知された電流値のばらつきが一定値以上である場合に報知を行う第2の報知手段と、を少なくとも備えることを特徴とする請求項5に記載のダイカスト電気溶解炉ヒータの監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−41858(P2009−41858A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208066(P2007−208066)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】