説明

ダイシング方法、ワイヤソー及びダイシング装置

【課題】ウエハから矩形(長方形)のチップを精度よく、しかもコンパクトな装置構成で切り出す。
【解決手段】ワイヤソーは、ガイドローラ10A,10B間に張設されるワイヤ群としてワイヤピッチが互いに異なる第1、第2のワイヤ群3A,3Bを有する。制御装置30は、ワーク保持部24により保持したウエハWを第1ワイヤ群3Aに対向する位置に配置して切り込み送りする工程と、第1ワイヤ群3AからウエハWを引き離してウエハWを90°回転させると共に当該ウエハWを第2ワイヤ群3Bに対向する位置に配置する工程と、第2ワイヤ群3Bに対してウエハWを切り込み送りする工程と、第2ワイヤ群3BからウエハWを引き離して搬出する工程とを、順次実行すべくヘッド20等を駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを格子状に切断することによりチップを切り出すダイシング方法、ワイヤソー及びダイシング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集積回路が形成された半導体ウエハ(以下、ウエハと略す)からチップを切り出すウエハダイシング方法(装置)としては、従来、ダイシングテーブル上にウエハを固定し、砥石車からなる円形刃(ダイシングブレード)をウエハ上でスクライブラインに沿って移動させる方法が一般的であった。
【0003】
しかし、この方法では、円形刃の厚みを薄くすることが難しいためにウエハのうち切り代(スクライブライン幅)として無駄になる部分が多く、また、円形刃の摩耗が激しいために頻繁に円形刃を交換する必要があるといった課題がある。
【0004】
そこで、近年では、円形刃を用いたウエハダイシング方向に代えてワイヤソーを用いたウエハダイシング方法(装置)が考えられている(例えば特許文献1)。これによれば、切り代(スクライブライン幅)を細くでき、又線長の長いワイヤを用いることで摩耗による交換頻度も軽減することが可能となる。
【特許文献1】特開平11−40521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイヤソーを用いて矩形(長方形)のチップを切り出す場合には、次のような課題がある。すなわち、ワイヤソーにおけるワイヤピッチは通常一定であり、そのため、ワイヤソーを用いて矩形のチップを切り出す場合には、ワイヤピッチがそれぞれチップの短辺、長辺にそれぞれ対応する2台のワイヤソーを用い、例えば一方側のワイヤソーでまずチップの短辺に沿ってウエハを切断した後、ウエハを他方側のワイヤソーに移し替えてチップの長辺に沿ってウエハを切断することが必要となる。従って、矩形のチップを切り出す装置についてはその大型化を伴い易く、また、ウエハ移し替え時の位置決め誤差を伴うことも考えられるため切り出し精度を確保することも難しい。よってこの点を解決することが望まれる。
【0006】
なお、ワイヤソーを用いて矩形(長方形)チップを切り出す点については上記特許文献1にも記載があるが、特許文献1には、ウエハ表面に格子状に印刷されたスクライブラインに沿ってワイヤを走行させてチップを切り出す旨の記載があるだけで、上記のような課題を何ら解決し得るものではなかった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ウエハから矩形(長方形)のチップを精度よく、しかもコンパクトな装置構成で切り出すことができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、一対のガイドローラ間に互いに平行に並んだ状態で張設されかつ軸方向に駆動される切断用ワイヤからなるワイヤ群を有するワイヤソーを用いて、第1の辺とこれと長さの異なる第2の辺とを有する矩形チップをウエハから切り出す方法であって、前記ワイヤ群として前記矩形チップの第1の辺の寸法に対応するピッチで切断用ワイヤが配列される第1ワイヤ群と前記第2の辺の寸法に対応するピッチで切断用ワイヤが配列される第2ワイヤ群とが前記ガイドローラの軸方向に並んだワイヤソーを用意する工程と、前記ウエハをその面が第1ワイヤ群に対向するように配置し、前記第1ワイヤ群に対して前記ウエハをその厚み方向と平行な方向に相対的に切り込み送りすることにより前記ウエハを矩形チップの前記第2の辺に沿って切断する第1切断工程と、この第1切断工程の後、前記切り込み送りの方向と逆方向に前記ウエハを移動させて第1ワイヤ群からウエハを引き離し、前記ウエハをその面に直交する軸回りに90°回転させると共に当該ウエハをその面が第2ワイヤ群に対向するように配置するウエハ搬送工程と、このウエハ搬送工程の後、前記第2ワイヤ群に対して前記ウエハをその厚み方向と平行な方向に相対的に切り込み送りすることにより矩形チップの前記第1の辺に沿ってウエハを切断する第2切断工程と、この第2切断工程の後、前記切り込み送りの方向と逆方向に前記ウエハを移動させることにより前記第2ワイヤ群からウエハを引き離して搬出するウエハ搬出工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
このように一対のガイドローラ間にワイヤピッチの異なる第1、第2のワイヤ群を備えたワイヤソーを用いてウエハをダイシングする方法によれば、矩形(長方形)のチップを単一のワイヤソーだけで容易に切り出すことが可能となる。そのため、2台のワイヤソーを要する従来方法に比べると少ない設備で矩形チップを切り出すことができる。また、装置(ワイヤソー)間でウエハの移し替えが不要となるため、当該移し替えにより切り出し精度が損なわれるといった不都合も回避することができる。
【0010】
なお、請求項の記載において「矩形チップの第1の辺(又は第2の辺)の寸法に対応するピッチ」とは、ウエハを前記第1の辺(又は第2の辺)の寸法で切断できる寸法、詳しくは第1の辺(又は第2の辺)の寸法に切断用ワイヤによる切断代を加えた寸法を意味するものである。
【0011】
一方、本発明に係るワイヤソーは、第1の辺とこれと長さの異なる第2の辺とを有する矩形チップをウエハから切り出すために用いられるワイヤソーであって、一対のガイドローラ間に互いに平行に並んだ状態で張設されかつ軸方向に駆動される切断用ワイヤからなるワイヤ群を有し、当該ワイヤ群として、前記矩形チップの第1の辺の寸法に対応する第1のピッチで前記切断用ワイヤが配列される第1ワイヤ群と、前記第2の辺の寸法に対応する第2のピッチで前記切断用ワイヤが配列される第2ワイヤ群とが前記一対のガイドローラ間にそれらの軸方向に並ぶように設けられているものである。
【0012】
そして、本発明に係るダイシング装置は、第1の辺とこれと長さの異なる第2の辺とを有する矩形チップをウエハから切り出すためのダイシング装置であって、上記のワイヤソーと、前記ウエハをその回路形成面とは反対から吸着して保持する保持手段を具備しかつ前記ワイヤソーのワイヤ群に対して前記ウエハを相対的に移動させる移動手段と、この移動手段を駆動制御する制御手段と、を含み、前記制御手段は、前記ウエハをその面が前記第1ワイヤ群に対向するように配置し、前記第1ワイヤ群に対してウエハをその厚み方向と平行な方向に相対的に切り込み送りすることにより当該ウエハを前記矩形チップの第2の辺に沿って切断する動作と、前記切り込み送りの方向と逆方向に前記ウエハを移動させて第1ワイヤ群からウエハを引き離し、前記ウエハをその面に直交する軸回りに90°回転させると共に当該ウエハをその面が第2ワイヤ群に対向するように配置する動作と、第2ワイヤ群に対して前記ウエハをその厚み方向と平行な方向に相対的に切り込み送りすることにより前記矩形チップの第1の辺に沿ってウエハを切断する動作と、前記切り込み送りの方向と逆方向に前記ウエハを移動させることにより第2ワイヤ群からウエハを引き離して搬出する動作と、を順次実行するように前記移動手段の駆動を制御するものである。
【0013】
このようなダイシング装置によれば、上記ダイシング方法に基づいた矩形チップの切り出しを自動化して実施することが可能となる。
【0014】
なお、上記ワイヤソーの具体的な構成として、前記ワイヤソーの各ワイヤ群は、水平方向に張設された前記切断用ワイヤからなるものであり、前記保持手段は、前記ワイヤ群の上方において前記ウエハをその面がワイヤ並び方向と平行となるように保持し、前記移動手段は、前記保持手段を垂直軸回りに回転させる回転機構と、前記保持手段を昇降させる昇降機構と、前記保持手段を前記ガイドローラの軸方向に水平移動させる水平移動機構と、を含むものである。
【0015】
このような構成によれば、ワイヤ群に対して保持手段側を移動させるため、比較的少ない駆動力でワイヤ群に対してウエハを相対移動させることができる。また、移動手段が回転機構と直動機構(昇降機構、水平移動機構)とにより構成されるので、簡単な構成でワイヤ群に対してウエハを移動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、矩形(長方形)のチップを単一のワイヤソーだけで容易にウエハから切り出すことが可能となる。そのため、2台のワイヤソーを要する従来方法(装置)に比べると、コンパクトな設備で矩形チップを切り出すことが可能となり、また、ウエハの移し替えに伴う位置決め誤差等の発生を回避できる分、より精度良く矩形チップを切り出すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1〜図3は本発明に係るダイシング装置を示しており、図1は正面図で、図2は平面図で、図3は側面図でそれぞれワイヤソーを概略的に示している。
【0019】
これらの図に示すダイシング装置は、集積回路が形成された半導体ウエハ(以下、ウエハと略す)をダイシングすることにより矩形(長方形)のチップを切り出すもので、以下のように、基本構造はワイヤソーと共通している。つまり一台のワイヤソーを含んだ構成となっている。
【0020】
同図に示すように、ダイシング装置は基台1を有している。この基台1上には、前後方向(図1の紙面に対して上下方向)に対向する一対の支持板12,12が所定間隔を隔てて立設されている。これら支持板12,12の間には、当該支持板12,12に回転可能に支持されかつ前後方向に互いに平行に延びる一対のガイドローラが上下二段に配置されている。
【0021】
各ガイドローラ10A〜10Dの外周面上には、ローラ軸方向(前後方向)に並ぶ多数本の溝が形成されており、これらの溝に嵌め込むようにして切断用ワイヤ2(以下、ワイヤ2と略す)がガイドローラ10A〜10Dに巻回されている。これにより各ガイドローラ間に前後方向にワイヤ2が並んだワイヤ群が形成されている。
【0022】
なお、各ガイドローラ10A〜10Dにおける前記溝間のピッチは、ローラ軸方向中間部を境にして前側よりも後側が広く設定されている。これにより前記ワイヤ群としてガイドローラ10A〜10Dの軸方向に並びかつワイヤピッチが互いに異なる第1ワイヤ群3Aと第2ワイヤ群3Bとが設けられている。ここで、各ワイヤ群3A,3Bのワイヤピッチは、半導体ウエハW(以下、単にウエハWという)から切り出すべきチップの一辺に対応している。すなわち、ウエハWから切り出すチップは上記の通り矩形(長方形)のチップであり、第1ワイヤ群3Aのワイヤピッチ(第1のピッチ)はチップの短辺(第1の辺)寸法に対応する寸法、つまりウエハWをチップの短辺寸法で切断できる寸法、より詳しくはチップの短辺寸法に切断用ワイヤ2による切断代を加えた寸法に設定されており、第2ワイヤ群3Bのワイヤピッチ(第2のピッチ)はチップの長辺(第2の辺)寸法に対応する寸法、つまりウエハWをチップの長辺寸法で切断できる寸法、より詳しくはチップの長辺寸法に切断用ワイヤ2による切断代を加えた寸法に設定されている。
【0023】
前記ワイヤ2の両端は、それぞれ基台1上に設けられる図外の繰出し・巻取りボビンにそれぞれ巻き付けられている。そして、これらボビンが図外の駆動モータにより回転駆動されると共に前記ガイドローラ10A〜10Dがそれぞれ駆動モータ11A〜11Dにより回転駆動され、さらにこれらの駆動方向が切り替えられることにより、一方側のボビンからワイヤ2が繰出されつつ他方側のボビンに巻き取られる状態とその逆の状態とに切換わるように構成されている。つまり、ガイドローラ10A〜10D間に形成される前記ワイヤ群3A,3Bが正方向及び逆方向に往復駆動(往復走行)されるようになっている。
【0024】
4つのガイドローラ10A〜10Dのうち上側の一対のガイドローラ10A,10B(本発明の一対のガイドローラに相当する)の間は作業領域とされ、その上方には、ウエハWを保持して前記ワイヤ群3A,3Bに対して切り込み送りするためのヘッド20が移動可能に配置されている。
【0025】
ヘッド20は、ウエハWを保持するためのワーク保持部24及びこれを回転駆動するための回転用モータ22等を含んでいる。前記ワーク保持部24は、ウエハWをその面で吸着保持する所謂バキュームチャックからなり、吸着面を下向きにした状態でヘッド20に対して垂直軸回りに回転可能に支持されかつ前記モータ22により駆動されるようになっている。
【0026】
前記ヘッド20は、所謂ねじ送り機構からなる駆動機構により上下方向(昇降)および前後方向の移動が可能に設けられており、前後方向においては、図3に示すように前記ガイドローラ10A〜10Dの外側(前側)に位置する所定の待機位置PSから所定の作業位置に亘って、具体的には第1ワイヤ群3A上方の第1作業位置P1及び第2ワイヤ群3B上方の第2作業位置P2に亘って移動可能とされている。
【0027】
前記ヘッド20の駆動機構は、当実施形態では次のよう構成されている。すなわち、前記基台1上であってガイドローラ10A〜10D等の側方部(図1では右側)にコラム14が立設されている。コラム14には上下方向に延びる固定レール16と当該レール16と平行なねじ軸とが設けられており、前記固定レール16に可動テーブル18が装着されると共にこの可動テーブル18に設けられる図外のナット部分に前記ねじ軸が螺合挿入され、コラム14に固定された昇降用モータ15が前記ねじ軸に対して連結されている。また、可動テーブル18に前後方向に延びる固定レール19と当該レール19と平行なねじ軸とが設けられており、前記固定レール19にヘッド20が装着されると共にこのヘッド20に設けられる図外のナット部分に前記ねじ軸が螺合挿入され、当該ねじ軸に前記可動テーブル18に固定された前後送り用モータ17が連結されている。
【0028】
つまり、前後送り用モータ17の駆動によりヘッド20が可動テーブル18に対して前後方向に移動する一方、昇降用モータ15の駆動により可動テーブル18がコラム14に対して昇降することにより、前記ヘッド20が昇降し、又前後方向に移動するように構成されている。なお、この実施形態では、前記ワーク保持部24が本発明に係る保持手段に相当し、前記可動テーブル18、固定レール16,19及び各モータ15,17,22等が本発明に係る移動手段に相当する。
【0029】
なお、このワイヤソーには、NC装置等からなる制御装置30が設けられており、前記各モータ11A〜11D,15,17及び22等は全てこの制御装置30に電気的に接続されている。そして、ウエハWのダイシング作業時には、前記各モータ11A〜11D,15,17及び22等がこの制御装置30により統括的に制御されることにより、次のようにしてウエハWのダイシング作業が実行される。以下、前記制御装置30の制御に基づくウエハWのダイシング動作について説明する。
【0030】
まず、準備工程として、ヘッド20にウエハWをセットする。具体的には、図3の一点鎖線に示すようにヘッド20を待機位置PSに配置し、ウエハWをその回路形成面が下向きとなるように前記ワーク保持部24により吸着保持させる。この際、オリフラを基準にしてウエハWをワーク保持部24の所定位置に所定の向きで保持させる。
【0031】
なお、この準備作業は、例えば前記待機位置PSにウエハ受渡しテーブルを設けて当該テーブル上にウエハWを載置しておき、このウエハWをヘッド20の昇降動作に伴いワーク保持部24に保持させることにより自動化するようにしてもよい。
【0032】
この作業の後、図外のスタートスイッチを操作するとダイシング動作が開始される。
【0033】
このダイシング動作では、まず、ガイドローラ10A〜10Dの駆動によりワイヤ群3A,3Bが軸方向に駆動される。また、ヘッド20がウエハ搬送用の所定の高さ位置に移動した後、待機位置PSから後方に向かって移動し、これによりウエハWが第1ワイヤ群3A上方の第1作業位置P1に配置される。この際、ワーク保持部24の駆動により、ウエハWが第1ワイヤ群3Aに対して所定の向き、つまり、チップの長辺に沿ったダイシング(スクライブ)ラインが第1ワイヤ群3Aのワイヤ2と平行となるようにウエハWの向きがセットされる。
【0034】
そして、前記ヘッド20が下降することにより第1ワイヤ群3Aに対してウエハWがその厚み方向と平行な方向に切り込み送りされ、これによって第のワイヤ群3Aのワイヤ2によりウエハWが前記ダイシングラインに沿って短冊状に切断される(図4(a)参照;第1切断工程)。
【0035】
設定量だけウエハWが切り込み送りされるとヘッド20が上昇に転じ、ウエハWを第1ワイヤ群3Aから上方に引き離してウエハ搬送用の所定の高さ位置に配置する。そして、ヘッド20が第1作業位置P1から後方に向かって移動し、これによりウエハWが第2ワイヤ群3B上方の第2作業位置P2に配置される(ウエハ搬送工程)。移動中、ワーク保持部24の駆動によりウエハWが90°だけ回転し、これによりチップの短辺に沿ったダイシングラインが第2ワイヤ群3Bのワイヤ2と平行となるようにウエハWの向きがセットされる。
【0036】
その後、前記ヘッド20が下降することにより第2ワイヤ群3Bに対してウエハWが切り込み送りされ、第2ワイヤ群3Bのワイヤ2によりウエハWが前記ダイシングラインに沿って切断される。これによってウエハWが格子状に切断されて複数の矩形のチップが切り出される(図4(b)参照;第2切断工程)。
【0037】
設定量だけウエハWが切り込み送りされるとヘッド20が上昇に転じ、ウエハWを第2ワイヤ群3Bから上方に引き離してウエハ搬送用の所定の高さ位置に配置する。そして、ヘッド20が第2作業位置P2から前方に向かって移動し、これによりウエハWが第2作業位置P2から待機位置PSに搬出される(ウエハ搬出工程)。
【0038】
その後、ワーク保持部24からウエハWが取り外されることにより一連のダイシング作業が終了することとなる。
【0039】
以上説明したダイシング装置(ウエハのダイシング方法)によると、一台のワイヤソーのみを含むダイシング装置によってウエハWから矩形チップを切り出すことができる。そのため、従来のように2台のワイヤソーを用いる場合に比べると、ワーク保持部及びその駆動機構等を共通化できる分、装置全体をコンパクト化できる。特に、上述したようないわゆる回転機構及び直動機構(昇降機構、水平移動機構)といった簡単な機構でワーク保持部24を移動させる構成であるため、この点でも装置全体をコンパクト化できる。
【0040】
しかも、2台のワイヤソーを用いる場合のような装置(ワイヤソー)間でのウエハの移し替えも不要となるため、当該移し替えに伴う位置決め誤差等の発生を回避することができ、これによってより精度良く矩形チップを切り出すことが可能となる。
【0041】
また、上記のダイシング装置によると、共通のガイドローラ10A,10Bにワイヤ群3A,3Bが前後に並ぶように設けられており、第1ワイヤ群3Aによるダイシング作業後、ウエハWを前後方向に移動(スライド)させることでウエハWを速やかに第2ワイヤ群3B上方の第2作業位置P2に配置することができるため、第1ワイヤ群3Aによるダイシング作業の後、第2ワイヤ群3Bによるダイシング作業へ速やかに移行することができる。従って、矩形チップのダイシング作業を効率良く実施することもできる。
【0042】
なお、上述したワイヤソー(ウエハのダイシング方法)では、ワイヤ群として第1、第2の2つのワイヤ群3A,3Bをガイドローラ10A〜10Dの軸方向に並べているが、例えばワイヤピッチの異なる3つ以上のワイヤ群を前記軸方向に並べて設けておき、制御装置30による前記ヘッド20等の制御に基づき、ウエハWの種類に対応した(つまり切り出すべき矩形チップの各辺の寸法に対応した)2つのワイヤ群を選択的に用いてウエハWをダイシングするように構成してもよい。このような構成によれば、一台のワイヤソーのみを含むダイシング装置で、寸法の異なる複数種類の矩形チップをウエハWから切り出すことが可能となり、汎用性を高める上で有利となる。
【0043】
また、上記ワイヤソーでは、4つのガイドローラ10A〜10Dにワイヤ2が巻き掛けられることにより前記ワイヤ群3A,3Bが形成されているが、ガイドローラの数は3本又は2本であってもよい。なお、ガイドローラ3本の場合には、隣接する2本のガイドローラが本発明の「一対のガイドローラ」に相当することとなる。
【0044】
また、上記ワイヤソーは、4つのガイドローラ10A〜10Dのうち上側の一対のガイドローラ10A,10Bの間を作業領域として当該ガイドローラ10A,10B間に水平に張設されたワイヤ群3A,3Bに対してウエハWを切り込み送りするように構成されているが、勿論、上下一対のガイドローラ10A,10C間(又は10B,10D間)を作業領域として当該ガイドローラ10A,10C間(又は10B,10D間)に垂直に張設されたワイヤ群3A,3Bに対してウエハWを切り込み送りするように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るダイシング装置(本発明に係るダイシング方法が実施されるダイシング装置)の概略構成を示す正面図である。
【図2】ダイシング装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】ダイシング装置の概略構成を示す側面図である。
【図4】半導体ウエハのダイシングの状態を示す模式図であり、(a)は第1ワイヤ群により半導体ウエハを切断している状態、(b)は第2ワイヤ群により半導体ウエハを切断している状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0046】
2 切断用ワイヤ
3A 第1ワイヤ群
3B 第2ワイヤ群
10A〜10D ガイドローラ
20 ヘッド
24 ワーク保持部
30 制御装置
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のガイドローラ間に互いに平行に並んだ状態で張設されかつ軸方向に駆動される切断用ワイヤからなるワイヤ群を有するワイヤソーを用いて、第1の辺とこれと長さの異なる第2の辺とを有する矩形チップをウエハから切り出す方法であって、
前記ワイヤ群として前記矩形チップの第1の辺の寸法に対応するピッチで切断用ワイヤが配列される第1ワイヤ群と前記第2の辺の寸法に対応するピッチで切断用ワイヤが配列される第2ワイヤ群とが前記ガイドローラの軸方向に並んだワイヤソーを用意する工程と、
前記ウエハをその面が第1ワイヤ群に対向するように配置し、前記第1ワイヤ群に対して前記ウエハをその厚み方向と平行な方向に相対的に切り込み送りすることにより前記ウエハを矩形チップの前記第2の辺に沿って切断する第1切断工程と、
この第1切断工程の後、前記切り込み送りの方向と逆方向に前記ウエハを移動させて第1ワイヤ群からウエハを引き離し、前記ウエハをその面に直交する軸回りに90°回転させると共に当該ウエハをその面が第2ワイヤ群に対向するように配置するウエハ搬送工程と、
このウエハ搬送工程の後、前記第2ワイヤ群に対して前記ウエハをその厚み方向と平行な方向に相対的に切り込み送りすることにより矩形チップの前記第1の辺に沿ってウエハを切断する第2切断工程と、
この第2切断工程の後、前記切り込み送りの方向と逆方向に前記ウエハを移動させることにより前記第2ワイヤ群からウエハを引き離して搬出するウエハ搬出工程と、を含むことを特徴とするダイシング方法。
【請求項2】
第1の辺とこれと長さの異なる第2の辺とを有する矩形チップをウエハから切り出すために用いられるワイヤソーであって、
一対のガイドローラ間に互いに平行に並んだ状態で張設されかつ軸方向に駆動される切断用ワイヤからなるワイヤ群を有し、
当該ワイヤ群として、前記矩形チップの第1の辺の寸法に対応する第1のピッチで前記切断用ワイヤが配列される第1ワイヤ群と、前記第2の辺の寸法に対応する第2のピッチで前記切断用ワイヤが配列される第2ワイヤ群とが前記一対のガイドローラ間にそれらの軸方向に並ぶように設けられていることを特徴とするワイヤソー。
【請求項3】
第1の辺とこれと長さの異なる第2の辺とを有する矩形チップをウエハから切り出すためのダイシング装置であって、
請求項2に記載のワイヤソーと、前記ウエハをその回路形成面とは反対から吸着して保持する保持手段を具備しかつ前記ワイヤソーのワイヤ群に対して前記ウエハを相対的に移動させる移動手段と、この移動手段を駆動制御する制御手段と、を含み、
前記制御手段は、前記ウエハをその面が前記第1ワイヤ群に対向するように配置し、前記第1ワイヤ群に対してウエハをその厚み方向と平行な方向に相対的に切り込み送りすることにより当該ウエハを前記矩形チップの第2の辺に沿って切断する動作と、
前記切り込み送りの方向と逆方向に前記ウエハを移動させて第1ワイヤ群からウエハを引き離し、前記ウエハをその面に直交する軸回りに90°回転させると共に当該ウエハをその面が第2ワイヤ群に対向するように配置する動作と、
第2ワイヤ群に対して前記ウエハをその厚み方向と平行な方向に相対的に切り込み送りすることにより前記矩形チップの第1の辺に沿ってウエハを切断する動作と、
前記切り込み送りの方向と逆方向に前記ウエハを移動させることにより第2ワイヤ群からウエハを引き離して搬出する動作と、を順次実行するように前記移動手段の駆動を制御することを特徴とするダイシング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のダイシング装置において、
前記ワイヤソーの各ワイヤ群は、水平方向に張設された前記切断用ワイヤからなるものであり、前記保持手段は、前記ワイヤ群の上方において前記ウエハをその面がワイヤ並び方向と平行となるように保持し、前記移動手段は、前記保持手段を垂直軸回りに回転させる回転機構と、前記保持手段を昇降させる昇降機構と、前記保持手段を前記ガイドローラの軸方向に水平移動させる水平移動機構と、を含むことを特徴とするダイシング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−80766(P2010−80766A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248820(P2008−248820)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】