説明

ダイヤフラムバルブ

【課題】中間伝動具の回転を防止して閉止部材との固定の緩みやダイヤフラムの損傷を防止し、中間伝動具と閉止部材との組付作業を容易にし、この固定を簡単に解除して個々の部品を容易に交換できるようにする。
【解決手段】閉止弁装着孔(14)内に、推進ネジ部材(16)と中間伝動具(17)とダイヤフラム(18)と閉止部材(19)とを外側から順に装着し、閉止部材(19)を閉止弁室(10)に収容する。閉止部材(19)と中間伝動具(17)とをダイヤフラム(18)を介して互いに固定し、ダイヤフラム(18)で閉止弁室(10)を中間伝動具収容空間(15)から保密状に区画する。開弁バネ(21)で中間伝動具(17)を開弁方向へ弾圧する。開弁バネ(21)の弾圧力を受けない位置に回転拘束手段(23)を配置し、ハウジング(2)に固定する。中間伝動具(17)を回転拘束手段(23)に、軸心(32)方向への移動は許容するが軸心(32)回りへは回転不能に、連係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造工程に用いる超高純度ガスなどの、ガス貯蔵容器や配管等に接続するダイヤフラムバルブに関し、さらに詳しくは、中間伝動具の回転を防止して閉止部材との固定を確りと維持できるとともに、ダイヤフラムの損傷を防止でき、しかも、中間伝動具とダイヤフラムと閉止部材との組付作業を容易にできるうえ、この閉止部材との固定を簡単に解除して個々の部品を容易に交換できるようにしたダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造過程で用いられる超高純度ガスは、僅かな不純物の混入も許容されない高い純度が要求されるうえ、腐食作用や引火性があるなど、その性質が極めて特殊であり、取り扱いには細心の注意が必要とされる。
【0003】
従来、上記の半導体用ガス等に用いるバルブ装置としては、閉止弁室の保密性を薄板状のダイヤフラムで確保したダイヤフラムバルブがある(例えば、特許文献1参照)。
即ちこのダイヤフラムバルブは、ハウジングに形成した閉止弁装着孔に、外側から内方に向けて順に中間伝動具収容空間と閉止弁室と閉止弁座とを設けてあり、上記の装着孔内に推進ネジ部材と中間伝動具とダイヤフラムと閉止部材とを外側から順に装着してある。上記の閉止部材は上記の閉止弁室に収容してあり、上記の推進ネジ部材の螺進により中間伝動具を介して進退移動することで、上記の閉止弁座に接離するように構成してある。
【0004】
上記の閉止部材には雄ネジ部が突設してあり、この雄ネジ部を上記のダイヤフラムに形成した挿通孔に挿通して、中間伝動具の雌ネジ部に螺着することにより、ダイヤフラムを介して互いに固定してある。また上記のダイヤフラムの周縁部は押圧スリーブでハウジングに固定してあり、これにより、上記の閉止弁室が上記の中間伝動具収容空間から保密状に区画してある。上記の押圧スリーブに形成したバネ受け部と上記の中間伝動具のバネ押え部との間には開弁バネが収容してあり、この開弁バネの弾圧力により上記の中間伝動具を介して閉止部材を前記閉止弁座から離隔する方向、即ち開弁方向へ弾圧してある。
【0005】
上記の推進ネジ部材と中間伝動具との間には、薄板等の滑り部材が配置されている。しかしながら、推進ネジ部材は、開弁バネの弾圧力で押圧される中間伝動具の付勢力を受止ながら開閉操作の度に回転する。このため、この回転時に滑り部材との摩擦で上記の中間伝動具に回転力が伝わって、この中間伝動具と上記の閉止部材との螺着固定に緩みを生じる虞がある。
【0006】
この中間伝動具と閉止部材との螺着固定に緩みを生じると、開閉操作時に進退移動する閉止部材のストロークが短くなり、閉止弁室に流入するガス流量が少なくなったり、場合によっては閉止部材が開弁移動せずガスが流れなくなる虞がある。
また、上記のダイヤフラムは、中央近傍で上記の閉止部材に溶接で固定され、中間伝動具と閉止部材との間に挟持される。しかし、上記の螺着固定に緩みを生じると、上記のダイヤフラムは中間伝動具による支持を失うので、閉止弁室内のガスに押圧されて溶接部近傍が損傷し、ガス漏れを生じる虞もある。
【0007】
そこで、上記の螺着固定に緩みを生じないように、従来は上記の雄ネジ部と雌ネジ部との間に接着剤を塗布して固定してあり、或いは螺着後に雄ネジ部を塑性変形させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、接着剤の塗布は乾燥に時間がかかるうえ、塗布ムラにより所定の接着強度が発揮されない虞がある。また、いずれの固定方法も、一旦組み付けると容易に分解できないため、例えばダイヤフラムなど一部の部品のみを交換することができず、また回収された部品を容易に再使用できない問題がある。
しかも、これらの方法で中間伝動具と閉止部材との固定強度を高めたとしても、推進ネジ部材からの回転力が中間伝動具に伝わることは防止できない。この回転力はダイヤフラムに伝わるがダイヤフラムの周縁部はハウジングに確りと固定されているため、上記の回転力でダイヤフラムの中央近傍にねじり力が加わることとなり、この結果、このねじり力で前記の溶接部近傍に歪みを生じて破損する虞がある。
【0009】
また、上記の回転力が中間伝動具へ伝わらないように、前記の押圧スリーブの内面と上記の中間伝動具の外面との間に直進ガイドを設けることが提案されている(上記の特許文献1、段落番号0021参照)。しかしこの場合は、押圧スリーブが開弁バネの弾圧力で中間伝動具とは反対側に弾圧されており、組付の途中でこの直進ガイドを噛み合わせなければならず、この組付作業が容易でない。さらに直進ガイドがかみ合った後は、中間伝動具の締付とともに押圧スリーブが開弁バネで押圧されながら共回りし、ダイヤフラム上を摺動する。このため、ダイヤフラムを変形や損傷する虞があり、この摺動抵抗等により中間伝動具を十分に締付できなくなる虞もある。
【0010】
また、この直進ガイドはダイヤフラム中央近傍の直上に位置しており、直進ガイドで中間伝動具が押圧スリーブに対し進退摺動すると、磨耗粉が発生してダイヤフラム上に落下する虞がある。この磨耗粉がダイヤフラムに噛み込まれると、ダイヤフラムに穿孔が形成される虞がある。さらに中間伝動具の先端は小径に形成してあるため、これに対応した直進ガイドを押圧スリーブに形成することは容易でない問題もある。
【0011】
【特許文献1】特開2001−263508号公報
【特許文献2】特開2004−257549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の技術的課題はこれらの問題点を解消し、中間伝動具の回転を防止して閉止部材との固定を確りと維持できるとともに、ダイヤフラムの損傷を防止でき、しかも、中間伝動具とダイヤフラムと閉止部材との組付作業を容易にできるうえ、この閉止部材との固定を簡単に解除して個々の部品を容易に交換できるようにした、ダイヤフラムバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図3に基づいて説明すると、ダイヤフラムバルブを次のように構成したものである。
即ち、本発明は、ハウジング(2)に形成した閉止弁装着孔(14)に、外側から内方に向けて順に中間伝動具収容空間(15)と閉止弁室(10)とを設けるとともに、この閉止弁室(10)に閉止弁座(20)を設け、上記の閉止弁装着孔(14)内に推進ネジ部材(16)と中間伝動具(17)とダイヤフラム(18)と閉止部材(19)とを外側から順に装着し、上記の閉止部材(19)の少なくとも一部を上記の閉止弁室(10)へ、上記の閉止弁座(20)に対し進退移動可能に収容し、上記の閉止部材(19)と中間伝動具(17)とを上記のダイヤフラム(18)を介して互いに固定するとともに、このダイヤフラム(18)により上記の閉止弁室(10)を上記の中間伝動具収容空間(15)から保密状に区画し、上記の閉止弁装着孔(14)内に開弁バネ(21)を配置して、この開弁バネ(21)の弾圧力により上記の中間伝動具(17)を開弁方向へ弾圧付勢したダイヤフラムバルブであって、上記の中間伝動具収容空間(15)内で上記の開弁バネ(21)の弾圧力を受けない位置に回転拘束手段(23)を配置して、この回転拘束手段(23)を上記のハウジング(2)に固定し、上記の中間伝動具(17)をこの回転拘束手段(23)に、中間伝動具(17)の軸心(32)方向への進退移動は許容するがこの軸心(32)回りへは回転不能に、連係したことを特徴とする。
【0014】
上記の回転拘束手段はハウジングに固定してあり、中間伝動具はこの回転拘束手段に、軸心方向へは進退移動できるが軸心回りへは回転できないように、連係してあるので、開閉操作のために推進ネジ部材を螺進させると、中間伝動具は回転拘束手段に規制されて軸心方向へのみ移動する。即ち、この推進ネジ部材の螺進のうち、回転力は上記の拘束手段に受け止められ、推進力のみが中間伝動具に伝わる。この結果、中間伝動具に回転を生じないので、閉止部材との固定に緩みを生じることがない。
【0015】
上記の回転拘束手段は、例えば装着孔内の開弁バネよりも外側寄り位置など、この開弁バネの弾圧力を受けない位置に配置されて中間伝動具と連係しており、組付作業時にこの回転拘束手段が開弁バネの弾圧力を受けることがなく、またこの回転拘束手段でダイヤフラムを押圧することがない。
【0016】
上記の中間伝動具と閉止部材とは、特定の固定方法に限定されないが、閉止弁の開閉操作中に中間伝動具に回転を生じないことから、簡単な螺着による固定構造を採用することができる。この場合、メンテナンス時などには、中間伝動具と閉止部材との螺着固定が簡単に緩められて個々の部品に分解され、必要に応じて新しい部品と交換される。
【0017】
上記の回転拘束手段に中間伝動具を、その軸心方向への進退移動は許容するが、軸心回りへは回転不能に連係する構成とは、具体的には、例えば回転拘束手段を環状に形成して内面を多角形に形成し、中間伝動具の外面をこれに嵌合する多角形に形成する構成や、環状の拘束手段の内面に舌片を突設してこれを中間伝動具に形成した縦溝に嵌合する構成、閉止弁装着孔の内面に棒状の回転拘束手段を突設して中間伝動具の外面や縦溝に連係する構成などがあげられるが、これらの構成に限定されない。
【0018】
ここで、上記の開弁バネは閉止弁室内に配置してもよいが、中間伝動具収容空間内に配置すると、閉止弁室を小形に形成できるうえ、開弁バネが閉止弁室内のガスと接触しないので、好ましい。一方、上記のダイヤフラムは、通常、中間伝動具収容空間に環状の押圧手段を配置して、この押圧手段で周縁部を押圧し、これにより上記の閉止弁室が中間伝動具収容空間から保密状に区画される。上記の開弁バネを中間伝動具収容空間内に配置する際には、この押圧手段の内面にバネ受け部を形成するとともに、上記中間伝動具の外面にバネ押え部を形成して、このバネ受け部とバネ押え部との間に上記の開弁バネを装着することができる。このとき、回転拘束手段を上記の押圧手段よりも中間伝動具収容空間内の外側寄り位置に配置すると、この回転拘束手段を中間伝動具収容空間内で開弁バネの弾圧力を受けない位置へ簡単に配置できるうえ、回転拘束手段と中間伝動具との間の摺動により磨耗粉が発生しても、これがダイヤフラム上に落下することが防止され、好ましい。
【0019】
上記の回転拘束手段は、ハウジングに固定されるとともに、中間伝動具が軸心方向へは進退移動できるが軸心回りへは回転できない状態に連係できればよく、特定の形状や構造に限定されない。但し、この回転拘束手段を環状に形成すると、中間伝動具収容空間内へ容易に配置できるうえ、中間伝動具に外嵌することでその回転を簡単に拘束できるので、好ましい。
【0020】
上記の回転拘束手段は、中間伝動具とダイヤフラムとの間から離脱できないように組み付けてもよく、この場合はこの回転拘束手段を中間伝動具や閉止部材、ダイヤフラム等と1つのユニットとして取り扱うことができる。
一方、この回転拘束手段を、上記の閉止部材と互いに固定した状態の中間伝動具に着脱可能に外嵌した場合は、この回転拘束手段を中間伝動具収容空間内へ簡単に装着することができ、好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0022】
(1) 中間伝動具は、回転拘束手段との連係により回転することなく進退移動することから、閉止弁の開閉操作に伴って中間伝動具と閉止部材との固定に緩みを生じることがなく、この固定状態を確りと維持することができる。この結果、この緩みに起因するダイヤフラムの損傷を防止できるとともに、ガスの流量低下等の、バルブの基本的な性能に影響する欠陥の発生を防止することができる。
【0023】
(2) 中間伝動具と閉止部材との固定に緩みを生じないことから、これらを強固に固定するために従来必要とされた接着剤の塗布などの措置が不要となり、組付作業を簡略にできる。特に接着剤の塗布によらないため、塗布ムラによる不良の発生がなく、歩留りを向上することができる。
【0024】
(3) 回転拘束手段は開弁バネの弾圧力を受けることがないので、中間伝動具とダイヤフラムと閉止部材との組付作業を容易に行うことができ、しかも、この回転拘束手段でダイヤフラムを損傷する虞がない。
【0025】
(4) 中間伝動具が回転しないことから、ダイヤフラムに回転力が伝わらず、従って、従来の接着剤などにより強固に固定する方法では生じる虞があった、ダイヤフラムの中央近傍でのねじり力による歪みや損傷の発生を防止することができる。
【0026】
(5) 中間伝動具と閉止部材とは、接着剤やネジ部の塑性変形で強固に固定する従来の方法と異なって、簡単に締緩される螺着固定の構造を採用することができる。このため、メンテナンス時などにはこの固定を簡単に解除することができ、必要に応じて個々の部品を容易に交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は本発明の実施形態を示し、図1はダイヤフラムバルブの縦断面図、図2は中間伝動具と閉止部材等とを組み付けた状態の一部破断斜視図である。
【0028】
図1に示すように、このダイヤフラムバルブ(1)はハウジング(2)が縦長に造られており、その下部に形成した脚ネジ部(3)がガスボンベ(4)の首部(5)に固定され、途中高さ部から横向きに突設した出口ノズル(6)にガス取出し金具(図示せず)が接続可能となっている。なお、この出口ノズル(6)はガスボンベ(4)にフレッシュガスを充填する際には、充填金具(図示せず)が接続できるようにもしてある。
【0029】
上記の脚ネジ部(3)の下面に入口穴(7)が開口してあり、出口ノズル(6)の端面に出口穴(8)が開口してある。上記のハウジング(2)内には、この入口穴(7)と出口穴(8)との間に、入口路(9)と閉止弁室(10)と出口路(11)とが順に形成してある。入口路(9)の途中部にはガス放出路(12)が分岐してあり、このガス放出路(12)に安全弁(13)が設けてある。
なお、この実施形態ではボンベバルブに適用した場合について説明するが、本発明のダイヤフラムバルブは、配管途中に設けたバルブにも適用することができ、ハウジングの形状や向き、入口穴、入口路、出口路、出口穴等の形成位置、安全弁の形式等も、この実施形態のものに限定されない。
【0030】
上記のハウジング(2)の上面には、下方に向けて閉止弁装着孔(14)が形成してあり、この閉止弁装着孔(14)内に、外側から内方に向けて順に中間伝動具収容空間(15)と上記の閉止弁室(10)とが形成してある。この閉止弁装着孔(14)内には、推進ネジ部材であるスピンドル(16)と中間伝動具(17)と金属製のダイヤフラム(18)と閉止部材(19)とが外方から順に装着してあり、この閉止部材(19)の本体部(19a)が上記の閉止弁室(10)に収容してある。この閉止弁室(10)内には、前記の入口路(9)の開口端の周囲に閉止弁座(20)が形成してあり、上記の閉止部材(19)の本体部(19a)がこの閉止弁座(20)に対向させてある。
【0031】
上記の中間伝動具収容空間(15)には、中間伝動具(17)の周囲に開弁バネ(21)と環状の押圧スリーブ(22)と環状の回転拘束部材(23)とが配置してある。上記のダイヤフラム(18)の周縁部は、この押圧スリーブ(22)とその上方に配置した回転拘束部材(23)とを介して、ハウジング(2)に螺着されるグランドナット(24)の締付固定により、閉止弁室(10)の周壁へ確りと押し付けてある。これにより、上記の閉止弁室(10)が中間伝動具収容空間(15)から保密状に区画してある。
なお、上記の中間伝動具収容空間(15)の周壁には、ガス漏れチェック用ポート(25)が透設してあり、六角穴付きボルト(26)で封止してある。
【0032】
上記のグランドナット(23)の内面には雌ネジが形成してあり、前記のスピンドル(16)の雄ネジ部(16a)がこれに螺合して回転自在に支持されている。このスピンドル(16)の上端には開閉操作用のハンドル(27)が固定してある。スピンドル(16)の下端は下方へ突出した湾曲面に形成してあり、薄板状の滑り部材(28)を介して上記の中間伝動具(17)の上面に当接してある。これにより、スピンドル(16)の螺進の際に、推力は中間伝動具(17)に伝わるが、回転力は中間伝動具(17)へ伝わり難いようにしてある。
【0033】
図1と図2に示すように、上記の閉止部材(19)の本体部(19a)には上面に凸部(19b)が突設してあり、この凸部(19b)がダイヤフラム(18)の中央部に形成された挿通孔(29)に挿通され、中間伝動具(17)の雌ネジ孔に螺着固定してある。上記のダイヤフラム(18)は複数枚の薄い金属板からなり、下側、即ち本体部(19a)側の1枚あるいは2枚は、挿通孔(29)の周縁部が上記の凸部(19b)の基端周面に溶接してある。なお、本発明では任意の複数枚あるいは全てのダイヤフラム(18)について、挿通孔(29)の周縁部を凸部(19b)の基端周面に溶接してもよい。
【0034】
上記の溶接したダイヤフラム(18)上に重ねられた他のダイヤフラム(18)はバックアップ材を構成しており、各ダイヤフラム(18)の挿通孔(29)の周縁部は、上記の凸部(19b)と中間伝動具(17)との螺着固定により、この中間伝動具(17)と閉止部材(19)の本体部(19a)との間に確りと挟持される。なお、この実施形態では閉止部材(19)に凸部を形成し、中間伝動具(17)に雌ネジ孔を形成したが、本発明では閉止部材に雌ネジ孔を形成し、中間伝動具(17)に凸部を形成してもよい。
【0035】
上記の押圧スリーブ(22)下部内面にはバネ受け部(30)が形成してあり、一方、上記の中間伝動具(17)の上部外面にはバネ押え部(31)が形成してある。このバネ受け部(30)とバネ押え部(31)との間に前記の開弁バネ(21)が装着してあり、この開弁バネ(21)の弾圧力により上記中間伝動具(17)が上方へ弾圧付勢される。なお、前記の回転拘束部材(23)は上記の押圧スリーブ(22)の上方に配置してあり、従って、この回転拘束部材(23)は上記の開弁バネ(21)の弾圧力を受けない位置に配置されている。
【0036】
図2に示すように、上記の中間伝動具(17)は上部外周面が六角柱状に形成してあり、一方、前記の回転拘束部材(23)の内周面は、平面視でこの中間伝動具(17)の外周面に外嵌される六角形状に形成してある。この中間伝動具(17)に外嵌された回転拘束部材(23)は、前記のグランドナット(24)の締付固定によりハウジング(2)に固定されており、この回転拘束部材(23)が外嵌された中間伝動具(17)は、上下方向、即ち中間伝動具(17)の軸心(32)方向への進退移動は許容されるが、軸心(32)回りへは回転することができない。
【0037】
次に、上記のダイヤフラムバルブ(1)の開閉操作について説明する。
上記のハンドル(27)を締付方向へ回転させるとスピンドル(16)が螺進し、その推力を受けた中間伝動具(17)が開弁バネ(21)の弾圧力に抗して下降する。この結果、ダイヤフラム(18)を介し閉止部材(19)も下降して閉止弁座(20)側へ移動し、閉止弁座(20)へ接当することにより閉弁される。
【0038】
一方、上記ハンドル(27)を緩み方向へ回転させると、スピンドル(16)が螺旋状に回転しながら上昇し、中間伝動具(17)に加えられていた上記の推力が除かれる。この結果、中間伝動具(17)は開弁バネ(21)の弾圧力により上方へ、即ち開弁方向へ弾圧され、この中間伝動具(17)とともにこれに固定された閉止部材(19)が上昇し、閉止弁座(20)から離隔して開弁される。
【0039】
上記のスピンドル(16)の下端は突出した湾曲面に形成してあり、中間伝動具(17)の上面との間に滑り部材(28)が配置してあるので、両者間の摩擦抵抗は小さく、上記の開閉操作の際に、スピンドル(16)の回転力は中間伝動具(17)に伝わり難い。しかし、この間の摩擦抵抗が大きくなった場合であっても、中間伝動具(17)は外嵌した回転拘束部材(23)に連係しているので、軸心(32)回りに回転することができない。このため、上記の開閉操作において、中間伝動具(17)は常に上下方向、即ち軸心(32)方向に沿って進退移動するだけであり、閉止部材(19)の凸部(19b)との螺着に緩みを生じたり、回転による歪みをダイヤフラム(18)に生じたりすることがない。
【0040】
上記バルブの使用により閉止部材(19)や他の部品に損耗等を生じると、バルブを交換する必要がある。このとき、ステンレス製など高価なハウジング(2)を再使用する場合は、必要に応じてハンドル(27)を取り外した後、グランドナット(24)をハウジング(2)から取り外す。これによりスピンドル(16)が閉止弁装着孔(14)から取り出され、次いで、回転拘束部材(23)と中間伝動具(17)とダイヤフラム(18)と閉止部材(19)と押圧スリーブ(22)と開弁バネ(21)とが閉止弁装着孔(14)から取り出される。上記の中間伝動具(17)等は1つのユニットとなっているが、回転拘束部材(23)は中間伝動具(17)に外嵌されているだけであるので、簡単に取外され、さらに、中間伝動具(17)は閉止部材(19)の凸部(19b)との螺着を簡単に緩めて取外すことができ、これにより個々の部品に簡単に分解される。
【0041】
ハウジング(2)を検査し、ベーキング等により不純成分の発生の虞れをなくしたのち、中間伝動具(17)等を閉止弁装着孔(14)に組み込む。この場合、損耗等を生じていない部品は再使用することができ、必要に応じて準備された新しい部品と組みつける。即ち、中間伝動具(17)とダイヤフラム(18)と閉止部材(19)とを互いに固定するとともに、押圧スリーブ(22)と開弁バネ(21)とをこれらに組み付けたのち、回転拘束部材(23)を中間伝動具(17)に外嵌して、一つのユニットに形成しておく。このユニットを上記の閉止弁装着孔(14)へ装着し、次いでこの閉止弁装着孔(14)へスピンドル(16)を装着してグランドナット(24)を螺着することにより、回転拘束部材(23)と押圧スリーブ(22)を介してダイヤフラム(18)を確りと押圧し、スピンドル(16)にハンドル(27)を装着する。そして、上記の閉止弁室(10)から中間伝動具収容空間(15)へのガス漏れが無いことを前記のガス漏れチェック用ポート(25)で確認したのち、このポート(25)を封止してダイヤフラムバルブ(1)の組付けを完了する。
【0042】
なお、この実施形態では、上記の中間伝動具(17)の外周面を平面視で六角形に形成してあるので、この中間伝動具(17)を上記の閉止部材(19)の凸部(19b)へ螺着固定する際に工具で掴み易く、好ましい。ただし、本発明では上記の中間伝動具(17)とこれに連係する回転拘束部材(23)は、例えば図3に示す各変形例のように、他の形状にすることができる。
【0043】
即ち、図3(a)、図3(b)および図3(c)に示す変形例1〜3では、それぞれ中間伝動具(17)の回転拘束部材(23)が外嵌される部位を、平面視で三角形、四角形、十角形にしたものであり、本発明では他の多角形に形成してもよい。
また、図3(d)に示す変形例4では、中間伝動具(17)の回転拘束部材(23)が外嵌される部位を平面視でD字形にしてある。即ち、本発明では中間伝動具(17)が回転拘束部材(23)により軸心回りに回転できない形状であればよく、正円以外の任意の形状にすることができる。
さらに、図3(e)に示す変形例5のように、中間伝動具(17)の外周面が平面視で正円である場合でも、この中間伝動具(17)に縦溝(33)を形成して、この縦溝(33)に嵌合する舌片(34)を回転拘束部材(23)に形成してもよい。
【0044】
上記の実施形態や変形例で説明したダイヤフラムバルブは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の形状や、構造、配置等を、これらの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものであることは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のダイヤフラムバルブは、中間伝動具の回転を防止して閉止部材との固定を確りと維持できるとともに、ダイヤフラムの損傷を防止でき、しかも、中間伝動具とダイヤフラム及び閉止部材の組付作業を容易にできるうえ、この閉止部材との固定を簡単に解除して個々の部品を容易に交換できるようにしたので、半導体の製造工程に用いる超高純度ガスなどの、ガス貯蔵容器や配管等に接続するバルブ装置に特に好適であるが、他の用途のガス種を扱うバルブ装置にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態を示す、ダイヤフラムバルブの縦断面図である。
【図2】中間伝動具と閉止部材等とを組み付けた状態の一部破断斜視図である。
【図3】実施形態の変形例を示し、図3(a)から図3(e)はそれぞれ変形例1から変形例5の、中間伝動具とこれに嵌合される回転拘束部材の平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…ダイヤフラムバルブ
2…ハウジング
10…閉止弁室
14…閉止弁装着孔
15…中間伝動具収容空間
16…推進ネジ部材(スピンドル)
17…中間伝動具
18…ダイヤフラム
19…閉止部材
20…閉止弁座
21…開弁バネ
22…押圧手段(押圧スリーブ)
23…回転拘束手段(回転拘束部材)
30…バネ受け部
31…バネ押え部
32…中間伝動具(17)の軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)に形成した閉止弁装着孔(14)に、外側から内方に向けて順に中間伝動具収容空間(15)と閉止弁室(10)とを設けるとともに、この閉止弁室(10)に閉止弁座(20)を設け、
上記の閉止弁装着孔(14)内に推進ネジ部材(16)と中間伝動具(17)とダイヤフラム(18)と閉止部材(19)とを外側から順に装着し、
上記の閉止部材(19)の少なくとも一部を上記の閉止弁室(10)へ、上記の閉止弁座(20)に対し進退移動可能に収容し、
上記の閉止部材(19)と中間伝動具(17)とを上記のダイヤフラム(18)を介して互いに固定するとともに、このダイヤフラム(18)により上記の閉止弁室(10)を上記の中間伝動具収容空間(15)から保密状に区画し、
上記の閉止弁装着孔(14)内に開弁バネ(21)を配置して、この開弁バネ(21)の弾圧力により上記の中間伝動具(17)を開弁方向へ弾圧付勢したダイヤフラムバルブであって、
上記の中間伝動具収容空間(15)内で上記の開弁バネ(21)の弾圧力を受けない位置に回転拘束手段(23)を配置して、この回転拘束手段(23)を上記のハウジング(2)に固定し、
上記の中間伝動具(17)をこの回転拘束手段(23)に、中間伝動具(17)の軸心(32)方向への進退移動は許容するがこの軸心(32)回りへは回転不能に、連係したことを特徴とする、ダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
上記の中間伝動具収容空間(15)に環状の押圧手段(22)を配置して、この押圧手段(22)で上記のダイヤフラム(18)の周縁部を押圧することにより上記の閉止弁室(10)を中間伝動具収容空間(15)から保密状に区画し、
上記の押圧手段(22)の内面にバネ受け部(30)を形成するとともに、上記中間伝動具(17)の外面にバネ押え部(31)を形成して、このバネ受け部(30)とバネ押え部(31)との間に上記の開弁バネ(21)を装着し、
上記の回転拘束手段(23)を上記の押圧手段(22)よりも中間伝動具収容空間(15)内の外側寄り位置に配置した、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
上記の回転拘束手段(23)を環状に形成し、上記の閉止部材(19)と互いに固定した状態の中間伝動具(17)に、この回転拘束手段(23)を着脱可能に外嵌した、請求項1または請求項2に記載のダイヤフラムバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−144950(P2006−144950A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337179(P2004−337179)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(591038602)株式会社ネリキ (54)
【Fターム(参考)】