説明

ダイヤモンド状カーボンフィルム

【課題】本発明は基材との付着力が強く、磨損と腐食に耐えることができる多層フィルム構造を提供する。
【解決手段】本発明のダイヤモンド状カーボンフィルムは、n層構造を有する多層フィルムであって、前記nの値は6〜30であって、各層の成分は、カーボン、水素及びX元素を含むダイヤモンド状カーボンであって、前記Xは、クロム、チタニウム、クロムとチタンの合金、又は窒化クロムの一つであって、且つ第一層から第n層まで、各層のX成分の原子パーセンテージは次第に減少する。前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの第m層の成分は、a−C:H:(n−m+1)Xであって、mの値は、1〜nである。前記ダイヤモンド状カーボンフィルムは保護フィルムとして、鋳型、カッター、磁気記録媒体などの領域に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム構造に関するものであり、特に鋳型、カッター或は磁気記録媒体に用いられるダイヤモンド状カーボンフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド状カーボン(Diamond−Like Carbon,DLC)は、十九世紀七十年代初期にAisenberg等の人物によってイオン・ビームをスパッタ堆積する技術を使って製造された。また、ダイヤモンド状カーボンの性質及び応用に関する研究が前後して展開された。
【0003】
知られているように、カーボン同素体(Allotropes)の化学結合として、SP鎖状構造、SP石墨層状構造及びSP共有結合のダイヤモンド立方構造などの3種類の形式を持っているので、カーボンは、多種の結晶及び非結晶の固体形式がある。換言すれば、それは、多種の単純結合又は混合結合から構成されるカーボン材料を持ち、且つ異なる結合の混合は、カーボン材料の電気的、光学的、化学的及び機械的性質に影響する。ダイヤモンド状カーボンと言われるものは、SP1、SP2、SP3結合がランダム混合的に配列された一連の非晶態カーボンであって、その中でSP3結合の含有量は割合に高く、且つ依然としてダイヤモンドの特性を持つ。その水素原子含有量に基づいて、それを非結晶質で水素を含むダイヤモンド状カーボン(Amorphous Hydrogenerated Diamond−Like Carbon,略記a−C:H)と、非結晶質ダイヤモンド状カーボン(Amorphous Diamond−Like Carbon,略記a−C)に分けることができる。その中で、a−C:Hは、水素原子を20〜60%含む。さらに、a−Cの中で、SP3結合含有量が割合に高い非結晶質ダイヤモンド状カーボンを四面体非結晶質ダイヤモンド状カーボン(tetrahedral Amorphous Diamond−Like Carbon,略記ta−C)と呼ぶ。各種カーボンフィルムの構造は大きく異なるから、従って、その性能も大きく異なる。
【0004】
研究者たちは、ダイヤモンド状カーボンフィルムがダイヤモンドのような優れた特性を持っているのを発見した。例えば、高い硬度、高い熱伝導性、幅広い光学透過範囲、優れた電学性能、高い表面平滑度及び優れた磨損に耐える性能などであって、且つダイヤモンドに比べて、それは割合に低い温度(例えば室温)でフィルムになることができるので、フィルムになることを、いっそう容易に行なえる。だから、ダイヤモンド状カーボンは、最も良好に磨損に耐える材料の一つとして、光学的、電子的、機械的工程などの領域全体において、割合に高い応用背景が有って、例えば、鋳型、カッター、歯車及び光学記録媒体(例えば、ハードディスク、ディスクケット)などの摩擦しやすい部材において摩擦に耐える層に用いられる。
【0005】
前記部材の摩擦に耐える性能、耐久性及び信頼性を高めるために、従来の方法は、基材の表面に、ダイヤモンド状カーボンフィルムを一層スパッタリングして保護層とする。しかし、ダイヤモンド状カーボンフィルムと基材の間は、堅く結び付けることができず、脱落しやすい。それには二つの原因がある。一つの原因は、ダイヤモンド状カーボンフィルムの性能は安定で、あらゆる基材と全て化学反応が発生せず、前記ダイヤモンド状カーボンフィルムと基材の間の連接は分子間の力に属しており、付着力は弱い。もう一つの原因は、前記ダイヤモンド状カーボンフィルムと基材の間の熱膨張係数は大きく異なるから、基材とダイヤモンド状カーボンフィルムの間に応力を残留し及びダイヤモンド状カーボンフィルムの高い内部応力を引き起こす。これは、ダイヤモンド状カーボンフィルムをさらに応用することを制限する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記課題を解決し、基材と堅く結び付けることができ、磨損に耐えることができ、腐食に耐えることができる多層フィルム構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係るダイヤモンド状カーボンフィルムは、n層構造を有する多層フィルムであって、前記nの値は6〜30であって、各層の成分は、カーボン、水素及びX元素を含むダイヤモンド状カーボンであって、前記Xは、クロム、チタニウム、クロムとチタンの合金、又は窒化クロムの一つであって、且つ第一層から第n層まで、各層のX成分の原子パーセンテージは次第に減らす。前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの第m層の成分は、a−C:H:(n−m+1)Xであって、mの値は、1〜nである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダイヤモンド状カーボンフィルムの第n層は、Xが金属又はその合金を代表するため、その磨損に耐える性能、腐食に耐える性能は、ダイヤモンド状カーボンより非常に低いが、それは多層フィルム構造を強めることができる強度を持つため、金属又は合金を含まないダイヤモンド状カーボンフィルムに比べて、其の強度は高く、且つ其の含有量は少ないほど、磨損に耐える性能、腐食に耐える性能はもっと優れるから、使用寿命を延長することができる。多層フィルム構造の第一層の金属の含有量が高ければ、多層フィルム構造と基材との結合力を増やすことに有利で、それは脱落し難いことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明のダイヤモンド状カーボンフィルム10の構成を示す図である。該ダイヤモンド状カーボンフィルム10は、多層構造を持ち、非結晶質で水素を含むダイヤモンド状カーボンフィルムである。該ダイヤモンド状カーボンフィルム10の層数はnで表示されており、nの値は6〜30の整数であって、各層の成分は、全て他の層と異なる。その中で、基材と結び付ける一端は第一層11と設定されており、それと相対する別の一端は第n層16と設定する。ある一層を第m層、且つmは1−nの整数と設定すれば、第m層の成分は、a−C:H:(n−m+1)Xである。換言すれば、第一層11の成分は、a−C:H:nXであって、第二層12の成分は、a−C:H:(n−1)Xであって、第三層13の成分は、a−C:H:(n−2)Xであって、……、第n−2層14の成分は、a−C:H:3Xであって、第n−1層15の成分は、a−C:H:2Xであって、第n層16の成分は、a−C:H:Xである。前記表現式から、第一層11から第n層16まで、各層のX成分の原子パーセンテージは次第に減少していることを見出すことができ、換言すれば、第一層11の中のX成分の原子パーセンテージは最も多く、第n層16の中のX成分の原子パーセンテージは最も少ない。
【0010】
本実施形態において、前記Xは、クロム、又はチタニウム、又はクロムとチタンの合金、又は窒化クロムを表しており、第一層から第n層に向かって、各層のX成分の原子パーセンテージは次第に減少して、0.2%〜1%である。
【0011】
前記Xは、金属又はその合金を代表するため、その磨損に耐える性能、腐食に耐える性能は、ダイヤモンド状カーボンに比べて非常に低いが、それはダイヤモンド状カーボンフィルム10を強めることができる強度を持つため、金属又は合金を含まないダイヤモンド状カーボンに比べて、其の強度は高く、且つ其の含有量は少ないほど、磨損に耐える性能、腐食に耐える性能はもっと優れるから、使用寿命を延長することができる。だから、X含有量が最も少ない第n層16は、加工対象となる部品と通常直接的に接触する。
【0012】
第一層11のX成分の原子パーセンテージは最も多く、基材は通常では金属であるから、ダイヤモンド状カーボンフィルムの金属の含有量が高ければ、ダイヤモンド状カーボンフィルムと基材との結合力を増やすことに有利で、それは脱落し難いことになる。
【0013】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルム10において、各層の厚さは全て0.1nm〜30nmである。全体の厚さは、0.6nm〜900nmである。且つ異なる基材材質に基いて、各層の厚さは異なる。例えば、もし基材がディスクなどの磁気記録媒体ならば、各層の厚さは0.2〜0.5nmであって、多層ナノ構造から構成されるダイヤモンド状カーボンフィルムの全体の厚さは、1.2〜15nmであって、良ければ1.5〜3nmである。前記磁気記録媒体の磨損に耐える性能、腐食に耐える性能及び結合力を増やすのを条件として、ダイヤモンド状カーボンフィルムの厚さは薄いほど、磁気記録機能はもっと強くなる。もし基材が、鋳型又はカッターであるならば、各層のナノ構造の厚さは1〜30nmであって、多層ナノ構造から構成されるダイヤモンド状カーボンフィルムの全体の厚さは、6nm〜900nmであって、良ければ30〜450nmである。
【0014】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの第1の実施形態として、該ダイヤモンド状カーボンフィルムは6層構造であって、第一層の成分は、a−C:H:6Xであって、第二層の成分は、a−C:H:5Xであって、第三層の成分は、a−C:H:4Xであって、第四層の成分は、a−C:H:3Xであって、第五層の成分は、a−C:H:2Xであって、第六層の成分は、a−C:H:Xである。前記ダイヤモンド状カーボンフィルムは、ディスク表面の保護フィルムとして用いられ、各層の厚さは0.2nmであって、ダイヤモンド状カーボンフィルムの総括的な厚さは、1.2nmである。
【0015】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの第2の実施形態として、該ダイヤモンド状カーボンフィルムは30層構造であって、第一層の成分は、a−C:H:30Xであって、第二層の成分は、a−C:H:29Xであって、第三層の成分は、a−C:H:28Xであって、……、第二十八層の成分は、a−C:H:3Xであって、第二十九層の成分は、a−C:H:2Xであって、第三十層の成分は、a−C:H:Xである。前記ダイヤモンド状カーボンフィルムは、鋳型表面の保護フィルムとして用いられ、各層の厚さは30nmであって、ダイヤモンド状カーボンフィルムの総括的な厚さは、900nmである。
【0016】
本実施形態において、前記ダイヤモンド状カーボンフィルムは、他の部品、例えば、ディスク、カッター、鋳型などの保護フィルムとして用いられることができ、それは上述の最適化設計を経った多層構造であって、最適化設計の目的は、多層フィルム構造としての整体性能を向上するためである。
【0017】
図2は、ダイヤモンド状カーボンフィルムをディスクなどの磁気記録媒体、カッター、鋳型などの基材に用いられることの第1の実施形態を示す図である。ダイヤモンド状カーボンフィルム10は、基材20の表面に付着されており、基材を保護することに用いられる。
【0018】
前記基材20は、鋳型、カッターなどでもよく、ディスクなどの磁気記録媒体でもよい。
【0019】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルム10の第一層11は、基材20に最も接近しており、第n層16は、基材20から最も遠い。
【0020】
前記Xは、金属又はその合金を表しており、基材20の材質も金属又は半導体であるから、基材20に近いダイヤモンド状カーボンのX成分の含有量が多ければ、ダイヤモンド状カーボンフィルム10と基材20の結合力を増やすことに有利で、両者は強金属結合で結び付けられ、従って、ダイヤモンド状カーボンフィルム10は、脱落し難いことになる。
【0021】
基材20から遠く離れた第n層16は、表層に位置されており、加工しようとする部品と直接的に接触する。ダイヤモンド状カーボンは、高い摩擦係数、優れた磨損に耐える性能、高い腐食に耐える性能などの優れた特性を持つため、且つXから代表する金属又は合金成分が適量的に存在するため、金属成分を全く含まないダイヤモンド状カーボンに比べて、その強度は高められる。だから、第n層16の中に含むX成分の原子パーセンテージは割合に少なく、基材と加工しようとする部品の表層の摩擦性能、腐食に耐える性能及び強度は全て高まる。
【0022】
上述したように、ダイヤモンド状カーボンフィルム10は、優れた磨損に耐える性能、腐食に耐える性能を持ち、さらに、連続的な生産に適合されており、且つ基材20との結合力は強く、脱落し難いことになる。
【0023】
もし基材20が磁気記録媒体ならば、各層のナノ構造のダイヤモンド状カーボンの厚さは0.2〜0.5nmであって、多層ナノ構造のダイヤモンド状カーボンから構成されるダイヤモンド状カーボンフィルム10の総括的な厚さは、1.2〜15nmであって、良ければ1.5〜3nmである。ダイヤモンド状カーボンフィルムの厚さは薄いほど、磁気記録機能はさらに強くなる。もし基材20は鋳型又はカッターならば、各層のナノ構造のダイヤモンド状カーボンの厚さは1〜30nmで有って、多層ナノ構造のダイヤモンド状カーボンから構成されるダイヤモンド状カーボンフィルムの総括的な厚さは、6nm〜900nmであって、良ければ30〜450nmである。
【0024】
図3は、ダイヤモンド状カーボンフィルムをディスクなどの磁気記録媒体、鋳型、カッターなどの基材に用いられることの第2の実施形態を示す図である。本実施形態において、前記ダイヤモンド状カーボンフィルム10及び基材20の間に中間介在層30を設けることができる。
【0025】
前記中間介在層30は各種機能性物質であってもよく、具体的に言えば、もし基材20が磁気記録媒体であるならば、前記中間介在層30は磁性層であって、成分は、コバルト-クロム-タンタル(CoCrTa)、コバルト-クロム-プラチナ-タンタル(CoCrPtTa)などの合金である。もし基材20が鋳型又はカッターであるならば、前記中間介在層30は鏡面研磨層であって、成分は、鉄、クロム、炭素、モリブデン、ケイ素、バナジウムなどの合金である。
【0026】
だから、前記中間介在層30は、それぞれダイヤモンド状カーボンフィルム10及び基材20と強い結合力で、例えば、金属結合で結び付けられ、多層フィルム40と基材20がしっかり結び付けることに有利である。同時に、鋳型、カッター領域において、前記中間介在層30から形成された金属的緻密な構造は、生産過程中で基材20が加工成型製品の中に拡散して入ることを防止することができる。
【0027】
同時に、前記ダイヤモンド状カーボンフィルム10の特別な構造は、表面の磨損に耐える性能、腐食に耐える性能を高めることができ、従来のダイヤモンド状カーボンに比べても、その性能は大幅に高められる。
【0028】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルム10は、マルチターゲット平行スパッタシステムによって、スパッタリングを完成することができる。図4と図5を同時に参照されたい。これらの図は、マルチターゲット平行スパッタシステム(Multi−target Co−sputter Syestem)の構成を示す図である。前記マルチターゲット平行スパッタシステム100を真空環境に置いて、それはイオン源110と、回転台座130及びダイヤモンド状カーボンフィルム122を堆積しようとする基材120とを備え、前記回転台座130は回転軸aを備え、前記回転台座130は回転軸aを中心として回転することができ、前記回転台座130は、三つのターゲットを積載されており、第一ターゲット132及び第二ターゲット136は、全てカーボン材料であって、第三ターゲット134はXターゲットであって、Xは、クロム、又はチタン、又はクロムとチタンの合金、又は窒化クロムを代表する。その中、イオン源110から生じるイオンは、ターゲットに衝突することにより、スパッタ粒子(原子又は分子)を生じる。各ターゲット132、134、136の外部にリング140を全て直接にかぶせて、前記環状物は、複数の拡散孔142を備え、前記拡散孔142は、特定な気体が前記ターゲットを巡らせることに用いられ、特定の気体とスパッタ粒子が一緒に反応性プラズマを形成させ、基材120の表面にスパッタ堆積されており、従って、ダイヤモンド状カーボンフィルム122を堆積することができる。
【0029】
第一ターゲット132及び第二ターゲット136にとって、スパッタリング気体は、アルゴンガスとメタンの混合気体(その中で、メタンの体積含有量は5%〜20%である)でもよく、アルゴンガスと水素ガスの混合気体(その中で、水素ガスの体積含有量は5%〜20%である)でもよく、アルゴンガスとエタンの混合気体(その中で、エタンの体積含有量は5%〜20%である)でもよく、クリプトン気体とメタンの混合気体(その中で、メタンの体積含有量は5%〜20%である)でもよく、クリプトン気体と水素ガスの混合気体(その中で、水素ガスの体積含有量は5%〜20%である)又はクリプトン気体とエタンの混合気体(その中で、エタンの体積含有量は5%〜20%である)でもよい。
【0030】
第三ターゲット134にとって、スパッタリング気体は、アルゴンガスでもよく、又はアルゴンガスと窒素の混合気体(その中で、窒素の体積含有量は3%〜15%である)でもよい。
【0031】
製造する時、ダイヤモンド状カーボンフィルム122を堆積しようとする基材120を指定された位置に置いて、背景圧力を6×10−6 Torrまで引き出した後、それぞれ上述の特定気体流を入れることにより、真空度を0.6〜5mTorrに調製されており、カーボンを含む空気流量は、テストを通じて必要な要求に達した場合、スパッタリングを行って、スパッタリングエネルギーを制御することにより、成分が漸進的に変化する多層フィルム構造のダイヤモンド状カーボンフィルムを獲得することができる。具体的な実施形態として、例えば、カーボンを含む空気流量は0.4標準的ミリリットル/分(sccm)、基材の温度は室温である。
【0032】
また、まず基材20の表面に中間介在層30を堆積することができ、それから、前記中間介在層30が堆積された基材を図4に示す基材120の位置に置いて、さらに上述の同じ方法で、ダイヤモンド状カーボンフィルム122を堆積することができる。
【0033】
直流マグネトロンスパッタリング、交流マグネトロンスパッタリング、又は無線周波マグネトロンスパッタリングによって、前記中間介在層30を基材20の表面に形成することができる。
【0034】
従来の技術に比べて、前記ダイヤモンド状カーボンフィルムは、第一層のXと表示する金属又は合金成分の原子パーセンテージが割合に多いことから、前記ダイヤモンド状カーボンフィルムと基材及び中間介在層の付着力を高めることに有利で、脱落を防止する。しかし、第n層のXと表示する金属又は合金成分の原子パーセンテージが割合に少ないことから、多層フィルム構造の硬度と強度を増やすことができるとともに、磨損に耐える性能、腐食に耐える性能を高めることができる。前記多層フィルム構造は、鋳型、カッター、磁気記録媒体などの領域に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の多層フィルム構造の構成を示す図である。
【図2】本発明の多層フィルム構造を、鋳型、カッター、磁気記録媒体に用いられる場合の第1の実施形態の構成を示す図である。
【図3】本発明の多層フィルム構造を、鋳型、カッター、磁気記録媒体に用いられる場合の第2の実施形態の構成を示す図である。
【図4】本発明のマルチターゲット平行スパッタシステムの構成を示す図である。
【図5】図4に示すマルチターゲット平行スパッタシステムにおいて、ターゲットと回転台座の相対位置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
10、122 ダイヤモンド状カーボンフィルム
11 第一層
12 第二層
13 第三層
14 第n−2層
15 第n−1層
16 第n層
20、120 基材
30 中間介在層
a 回転軸
100 マルチターゲット平行スパッタシステム
130 回転台座
110 イオン源
132 第一ターゲット
134 第三ターゲット
136 第二ターゲット
140 リング
142 拡散孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n層構造を有する多層フィルムであって、前記nの値は6〜30であって、各層の成分は、カーボン、水素及びX元素を含むダイヤモンド状カーボンであって、前記Xは、クロム、チタニウム、クロムとチタンの合金、又は窒化クロムの一つであって、且つ第一層から第n層まで、各層のX成分の原子パーセンテージは上側の層ほど減少していることを特徴とするダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項2】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの第m層の成分は、a−C:H:(n−m+1)Xであって、mの値は、1〜nであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項3】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの各層の中で、X成分の原子パーセンテージは0.2%〜1%であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項4】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの各層の厚さは0.1nm〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項5】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの厚さは、0.6nm〜900nmであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項6】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムは、鋳型、又はカッターの表面に用いられることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項7】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの各層の厚さは、1nm〜30nmであることを特徴とする請求項6に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項8】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの厚さは、6nm〜900nmであることを特徴とする請求項6に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項9】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムは、磁気記録媒体の表面に用いられることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項10】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの各層の厚さは、0.2nm〜0.5nmであることを特徴とする請求項9に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。
【請求項11】
前記ダイヤモンド状カーボンフィルムの厚さは、1.2〜15nmであることを特徴とする請求項9に記載のダイヤモンド状カーボンフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−119920(P2007−119920A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293142(P2006−293142)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(503023069)鴻富錦精密工業(深▲セン▼)有限公司 (399)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】