説明

ダクトの配設構造

【課題】ダクトの吸気口をシートバックの側方に大きく開口させて形成することができると共に、シートバックを保持するストライカの強度を向上させることができるダクトの配設構造を提供すること。
【解決手段】ダクト1の配設構造は、シートバック23と、シートバック23に設けられ、車体側壁3に支持されたストライカ5に係合してシートバック23を起立位置でロックするロック機構4とを有する車両用シート2と、シートバック23の側方に設けられて、上下方向に延び、空気を流通するダクト1と、を備えている。ストライカ5は、シートバック23のロック機構4と係合する係合位置から車幅方向の外側で、かつ、車両後方に向けて延びる傾斜部51を備えている。ダクト1は、シートバック23の側方でかつストライカ5の傾斜部51よりも前側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気を吸入する吸気口が車両用シートのシートバックの側部に設けられたダクトの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド車や燃料電池車には、駆動源に電気を供給して駆動するための電池が搭載されている。その電池は、充放電が行なわれる際に熱を発生する。このため、そのような電池を搭載した車両では、車室内の空気を送風ファンによって取り込んで、電池に供給して冷却している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された自動車用電池の冷却構造では、ラゲージスペースの床下に搭載した電池を冷却するために、吸気ダクトの吸気口をトノカバーに設けて、その吸気口から送風ファンを介在してラゲージスペース内の空気を電池に送って冷却している。
【0004】
しかしながら、ラゲージスペースは、車両後端部にあるので、太陽の日射光受けてラゲージスペースの室内の空気が暖められると共に、冷房の冷気が流れ込み難いため、客室内側の気温よりも気温が高くなっている。
この問題点を解消して、客室内側の冷気を取り入れるようにしたものとしては、特許文献2に記載されたバッテリの冷却風取入構造が知られている。
【0005】
図5は、従来のバッテリの冷却風取入構造におけるダクトの吸気口の設置状態を示す図であり、異物侵入防止用のフィンフィルタ等を取り除いたときの状態を示す要部斜視図である。図6は、従来のバッテリの冷却風取入構造におけるストライカとロック機構の取付状態を示す要部拡大横断面図である。図7は、従来のバッテリの冷却風取入構造におけるストライカの取付状態を示す図であり、異物侵入防止用のフィンフィルタ等を取り除いたときの状態を示す要部拡大横断面図である。
【0006】
図5に示すように、前記特許文献1に記載されたバッテリの冷却風取入構造は、電池(図示省略)を冷却するための空気を取り入れるダクト100の吸気口110が、冷房装置によって冷却された空気が吐出される客室R側から取り入れるために、リヤシート200の上部側部210と、車体側壁300(図6及び図7参照)との間に配置されている。リヤシート200の上部側部210には、車体側壁300から車幅方向に向けて水平に突出した略U字形状のストライカ400をロックするためのロック機構500が内設されている(図6及び図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−1686号公報(図1、図2及び図5)
【特許文献2】特開2009−154599号公報(図1〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたバッテリの冷却風取入構造では、ダクト100の吸気口110が設置された箇所に、リヤシート200の上部側部210を車体側壁300に固定するためのストライカ400が、吸気口110の上側部位を貫通した状態で設置されている。このため、ダクト100は、吸気口110を上下方向に長く形成したとしても、ストライカ400が邪魔となるので、ダクト100内のストライカ400の設置付近の断面積が狭く、空気の流れが悪いため、空気の吸い込み量を大きくすることができなかった。つまり、従来のバッテリの冷却風取入構造では、ストライカ400によってリヤシート200の上部側部210付近のスペースが規制されて使用できない。このため、吸気口110は、ストライカ400よりも低い位置の下側部位120でしか客室内の空気を吸入できないという問題点があった。
【0009】
また、ストライカ400は、図6及び図7に示すように、垂直方向へ延在する車体側壁300に対して、車幅方向に水平に設けられているので、後続車が追突した際、車両が急発進した際及び車両が急停止した際に、剥離方向(図6の矢印A,Bの前後方向)の荷重を受け易い構造であるという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、前記問題点を解消すべく発明されたものであり、ダクトの吸気口をシートバックの側方に大きく開口させて形成することができると共に、シートバックを保持するストライカの強度を向上させることができるダクトの配設構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のダクトの配設構造の発明は、シートバックと、該シートバックに設けられ、車体側壁に支持されたストライカに係合して該シートバックを起立位置でロックするロック機構と、を有する車両用シートと、前記シートバックの側方に設けられて、上下方向に延び、空気を流通するダクトと、を備えたダクトの配設構造において、前記ストライカは、前記シートバックの前記ロック機構と係合する係合位置から車幅方向の外側でかつ車両後方に向けて延びる傾斜部を備え、前記ダクトを、前記シートバックの側方でかつ前記ストライカの傾斜部よりも前側に配置したことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、ストライカは、シートバックのロック機構と係合する係合位置から車幅方向の外側で、かつ、車両後方に向けて延びる傾斜部を備えていることにより、そのストライカを車両前後方向に対して斜めの方向に向けて配置することができる。このため、ストライカは、車両前後方向の荷重に対して強度が向上されて、リヤシートのシートバックに前後方向の大きな荷重がかかったとしても受け止めることができる。これにより、ストライカは、シートバックから受ける荷重によって、変形したり、車両側壁から剥離したりするのを抑制することができる。
また、ダクトは、シートバックの側方で、かつ、ストライカの傾斜部よりも前側に配置したことにより、ストライカが空気の流れを邪魔することがなく、シートバックの上部側方のスペース(吸気口から奥行き方向のスペース)が自由に使用できるようになる。このため、ダクトの吸気口は、シートバックの上部側方と車体側壁との間全体のスペースに配置することが可能となり、吸気口及び入口部分を大きく形成して、空気の流れをスムーズにすることができる。その結果、客室側の空気を大量に取り込み易くすることができると共に、ダクトの空気吸引能力を向上させることができる。
【0013】
請求項2に記載のダクトの配設構造の発明は、請求項1に記載のダクトの配設構造であって、前記車体側壁に車両前方方向を向いた支持面を設け、該支持面に前記傾斜部を支持する支持台座を備えたことを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、車体側壁に車両前方方向を向いた支持面に、ストライカの傾斜部を支持する支持台座を備えたことにより、ストライカに加わった車両前方から車両後方に向けてかかる荷重を支持台座でしっかりと受け止めることができる。このため、ストライカに車両前後方向の大きな荷重が負荷されても、ストライカがその荷重によって車体側壁から剥離したり、曲がったりするのを抑制して、ストライカの固定強度を向上させることができる。
【0015】
請求項3に記載のダクトの配設構造の発明は、請求項1または請求項2に記載のダクトの配設構造であって、前記ダクトと連通し、前記シートバックの側部と前記車体側壁との間に車室内の空気を取り込む吸気口を設け、該吸気口を前記ストライカの前記係合位置よりも上方及び下方の両方に設けたことを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、吸気口を、ストライカの係合位置よりも上方及び下方の両方に設けたことによって、吸気口を大きく形成して空気を大量に取り込むことが可能となる。その結果、例えば、その空気によって電池等の被冷却媒体を冷却する冷却能力が向上されて、被冷却媒体を効率よく冷却することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ダクトの吸気口を広く取ることができると共に、ストライカの強度を向上させることができるダクトの配設構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るダクトの配設構造の一例を示す図であり、ダクト及びストライカの設置状態を示す後方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るダクトの配設構造の一例を示す図であり、ダクト及びストライカの設置状態を示す前方から見た要部拡大分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るダクトの配設構造の一例を示す図であり、トタンクサイドライニング及びフィンフィルタを離脱したときのダクト及びストライカの設置状態を示す前方から見た要部拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るダクトの配設構造の一例を示す図であり、ダクト及びストライカの設置状態を示す要部拡大平面図である。
【図5】従来のバッテリの冷却風取入構造におけるダクトの吸気口の設置状態を示す図であり、異物侵入防止用のフィンフィルタ等を取り除いたときの状態を示す要部斜視図である。
【図6】従来のバッテリの冷却風取入構造におけるストライカとロック機構の取付状態を示す要部拡大横断面図である。
【図7】従来のバッテリの冷却風取入構造におけるストライカの取付状態を示す図であり、異物侵入防止用のフィンフィルタ等を取り除いたときの状態を示す要部拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係るダクトの配設構造を説明する。以下、便宜上、車両の前進方向を前、車両の後退方向を後、車幅方向を左右として説明する。なお、本発明のダクト1を説明する前に、ダクト1が搭載される車両と、ダクト1によって送風される空気が送られる電池7と、について説明する。
【0020】
≪車両の構成≫
図1に示すように、ダクト1が搭載される車両は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車等の自動車であって、前記ダクト1と、駆動源に電気を供給して駆動させるための電池7と、乗員が着座する車両用シート2と、が搭載されている。なお、車両は、ダクト1と、電池7と、車両用シート2とを搭載したものであればよく、型式や車種等は特に限定されない。以下、車両用シート2としてリヤシート21を有する乗用車を例に挙げて説明する。
車両は、リヤシート21の車両前方に乗員が乗車するスペースである客室Rを有し、リヤシート21の後方に荷物等を載置するスペースであるラゲージスペースL(荷室)を有している。
【0021】
≪客室及びラゲージスペースの構成≫
客室Rには、例えば、運転席及び助手席の前席(図示省略)と、リヤシート21と、インストルメントパネル(図示省略)等が設置されている。客室Rには、インストルメントパネルに設けられた吐出口(図示省略)から車両後方のリヤシート21の方向へ向けて、空調装置によって冷却された冷気等の空気が吐出されている。
ラゲージスペースL(ラゲージルームともいう)には、荷物等を載置する床面と、床下に搭載された電池7と、客室R側の空気を電池7に送るためのダクト1と、ラゲージスペースLの左右にそれぞれ設けられた車体側壁3と、ラゲージスペースLの後側に開閉自在に設置されたバックドア(図示省略)と、が設けられている。
【0022】
≪車体側壁の構成≫
図1に示すように、車体側壁3は、ラゲージスペースLの左右に設けられた内壁であり、それぞれ垂直に設けられている。車体側壁3には、この車体側壁3等を覆うトランクサイドライニング31(図2参照)と、車体側壁3に車両斜め内側前方方向を向いた状態に形成された支持面32と、この支持面32に取付座部52を介して傾斜部51を支持する支持台座33と、前記支持面32を補強する補強プレート34と、車体側壁3に内設されたシートベルト用のリトラクタ(図示省略)と、が設けられている。車体側壁3は、例えば、鋼板等をプレス加工して形成されて、車体フレーム(図示省略)に固定されている。車体側壁3の前端部には、この車体側壁3に沿って設けられたリヤサイドドア(図示省略)が開閉自在に設けられると共に、その前端部の客室R内側方向にダクト1(ダクト1を設置するスペース)を介在してリヤシート21が設置されている。
【0023】
<トランクサイドライニングの構成>
図2に示すように、トランクサイドライニング31は、ラゲージスペースLの内壁を形成する内装部材である。トランクサイドライニング31は、車体側壁3、支持台座33、補強プレート34、ダクト1、枠部材12等を覆っている。トランクサイドライニング31の前面部31aには、吸気口11に合致するように形成された開口部31bと、フィンフィルタ6が装着される係合部31cと、が形成されている。
【0024】
<支持面の構成>
支持面32は、車体側壁3に支持台座33を介在してストライカ5を支持する面である。支持面32は、車体側壁3の前端部を客室R側に膨らませて略凸状に形成されて、ストライカ5を車両斜め内側前方方向に向けて設置し易いように形成されている。
【0025】
<支持台座の構成>
支持台座33は、支持面32を覆うようにして設けられる金属製板部材からなり、斜め内側前方方向に向いて凸状に膨らむようにして形成されている。支持台座33の中央部は、車両斜め内側前方方向に直交する平らな面に形成されると共に、その面にストライカ5の取付座部52が溶接手段等によって固定されている。支持台座33の外周部は、支持台座33を補強プレート34に溶接手段または締結手段によって固定するための固定片33aが、外周方向に向けて複数突設されている。
【0026】
<補強プレートの構成>
補強プレート34は、シートバック23からストライカ5に大きな荷重が負荷された際に、支持面32が変形しないように、支持面32の強度を向上させるための部材である。補強プレート34は、金属製板部材からなり、車体側壁3に溶接手段等によって固定されている。
【0027】
≪電池の構成≫
図1に示すように、前記電池7は、充放電が行なわれる際に熱を発生する蓄電池であり、ラゲージスペースLの床下に配置されている。電池7は、客室R内の空気を送風ファン(図示省略)の吸引力を利用してダクト1の吸気口11から取り込んで、その空気を電池7に当てることによって熱交換して充放電の際に発した熱を冷却している。電池7の冷却に使用した空気は、不図示の排気ダクトによって大気中に排気される。
【0028】
≪車両用シートの構成≫
車両用シート2は、例えば、リヤシート21であり、左側の席と右側の席とが一体なベンチシートタイプの座席からなる。車両用シート2は、シートクッション22と、シートバック23と、シートクッション22に対してシートバック23を傾倒させるための傾動装置(図示省略)と、シートバック23を左右の車体側壁3に固定するための一対のロック機構4と、を備えている。また、車両用シート2のシートバック23は、左右の側部上部23aの少なくともいずれか一方に、ダクト1の吸気口11が隣設されている。
【0029】
車両用シート2は、例えば、一列シートの車両に搭載される場合はフロントシートであり、二列シートの車両に搭載される場合はリヤシート21、三列以上のシートの車両に搭載される場合は最も後側に配置されるシートである。以下、車両用シート2として、二列シートの車両に搭載される場合のリヤシート21を例に挙げて説明する。なお、車両用シート2は、左側の席と右側の側とに分離したセパレートタイプの座席であってもよく、そのタイプは特に限定されない。
【0030】
<シートクッション構成>
図2に示すように、シートクッション22は、乗員の臀部を載せて保持する部位であり、例えば、前後方向に移動可能になっている。なお、シートクッション22は、車体に対してスライド機構(図示省略)を介在して前後方向等に摺動可能な可動式であっても、また、車体に対して固定された固定式であっても構わない。
【0031】
<シートバックの構成>
図2及び図3に示すように、シートバック23は、乗員の背中を支持する背もたれであり、シートクッション22に対して、このシートバック23を傾倒可能に支持する傾動機構(図示省略)によって連結されている。シートバック23の左右の側部上部23aには、それぞれロック機構4と、このロック機構4にロックされたストライカ5を解除する解除ノブ41と、が設けられている。
【0032】
≪ロック機構の構成≫
図4に示すように、ロック機構4は、車体側壁3に支持されたストライカ5に係合してシートバック23を起立位置の状態にロックする保持装置である。ロック機構4は、ストライカ5がストライカ挿入穴23b(図2及び図3参照)内に挿入されることによって自動的にロックされて、解除ノブ41を引き上げ操作することによって前記ロック状態を解除し、シートバック23を傾動することを可能にする。
解除ノブ41は、この解除ノブ41を引き上げることによってロック機構4をアンロック状態にし、解除ノブ41から手を離せば元のロック状態にする自動復帰式の操作レバーからなる。
【0033】
≪ストライカの構成≫
図1及び図4に示すように、ストライカ5は、シートバック23のロック機構4と係合する係合位置から車幅方向の外側で、かつ、車両後方に向けて延びる傾斜部51を有する金属製丸棒状部材を略U字形状に形成されてなる。ストライカ5は、基端部に設けた取付座部52を支持台座33に固定することによって、車体側壁3から斜め前方方向に向けて突出して取り付けられて、ダクト1及び吸気口11と交差しないように避けて設置されている。
【0034】
傾斜部51は、車体側壁3(車体の前後方向)に対して斜め前方方向に向けて形成された部位である。傾斜部51は、U字状に折曲したストライカ5の一端側と他端側の直線部分からなり、側面視して水平に形成されて(図2及び図3参照)、平面視して略平行四辺形の形状に形成されている(図4参照)。
取付座部52は、ストライカ5の基端部を固定した金属製板部材からなり、支持台座33に溶接手段等によってしっかりと固定されている。
【0035】
≪ダクトの構成≫
図1及び図4に示すように、ダクト1は、客室R内の空気を吸気口11から吸入して電池7の冷却媒体としてその電池7に送るための吸気用配管であり、例えば、合成樹脂材料によって形成されている。ダクト1は、シートバック23の側部上部23aの側方に車両前方方向に向けて開口して形成された吸気口11が設けられた入口部分1aと、略L字状に折曲して形成された中間部分1bと、電池7の外周部に設置されて、電池7の外周部に空気を吹き付ける吐出口が形成された出口部分1cと、から主に形成されている。
【0036】
図1及び図3に示すように、ダクト1の一端側の入口部分1aは、背面視して(正面視して)、シートバック23の側部上部にある吸気口11からストライカ5を避けるようにしてストライカ5の下側を潜らせて斜め下側後方向に向けて延設されている。
図4に示すように、その入口部分1aは、車体側壁3とシートバック23の側方との間に、シートバック23側に隙間を介して配置されて、ストライカ5の傾斜部51及び取付座部52の下方からその傾斜部51及び取付座部52の車両前方方向に向けて延びるように配置されている。
【0037】
ダクト1の中間部分1bは、平面視して、シートバック23の左側側部のストライカ5の下方からシートバック23の背面に沿ってL字状に折曲して形成されている。その中間部分1bの後側には、ダクト1を車体側壁3に取り付けられた固定部材35に、締結部材Tによって固定するためのブラケット部13が一体形成されている。
図1に示すように、ダクト1の他端側の出口部分1cは、シートクッション22の後端部のラゲージスペースLの床面上に、左端から中央部に亘って水平に設置されている。
【0038】
<吸気口の構成>
図1に示すように、前記吸気口11は、ストライカ5がロック機構4にロックされる係合位置よりも上方から下方に亘って上下方向に長く開口して形成されると共に、シートバック23側に切欠部11aが形成されて、客室Rの内側方向(矢印F方向)からも空気を取り込めるように形成されている。図3に示すように、吸気口11の車外側の内側周縁には、吸気口11の内側半分を補強する略コ字状の枠部材12が取り付けられている。
図4に示すように、吸気口11の開口端の前面と、吸気口11の前面に配置されるフィンフィルタ6と、トランクサイドライニング31の前面部31a(図2参照)は、車両前方向に対して客室Rの内側方向を向くように斜めに設けられている。
【0039】
<ブラケット部の構成>
ブラケット部13は、ダクト1を車体側壁3あるいは床下等に固定するための部位であり、ダクト1の複数箇所に一体形成されている(一部省略)。ブラケット部13は、ダクト1の外周面に突出形成された突片からなり、ボルト等からなる締結部材Tを挿入するU字溝13aまたは挿入孔が形成されている。
【0040】
<フィンフィルタの構成>
図2に示すように、フィンフィルタ6は、吸気口11から異物がダクト1内に侵入するのを阻止するための部材であり、枠部61と、フィン62と、を樹脂材料によって一体形成されてなる。枠部61は、上下方向に長く、略長方形に形成されている。フィン62は、枠部61の内側に格子状に形成されている。
【0041】
≪作用≫
次に、図1〜図4を参照しながら本発明の実施形態に係るダクト1の配設構造の作用を説明する。
図4に示すように、例えば、後続車両が追突して、乗員がシートバック23に対して後方向(矢印C方向)に押圧する力が加えられた場合や、車両が急発進して乗員の慣性力がシートバック23に対して後方向(矢印C方向)へ押圧する力として加えられた場合、シートバック23を介してストライカ5に、後方向(矢印D方向)の押圧力がかかる。
【0042】
ストライカ5は、シートバック23の車幅方向の外側にある車体側壁3に車両前方方向に対して斜めに形成された支持面32から客室Rの内側方向に向けて斜めの方向に向けて突設されて、車体に対して傾斜状態に固定されている。このため、ストライカ5は、車両前後方向に対する荷重に対して強度が向上されて、リヤシート21のシートバック23に前後方向の大きな荷重がかかったとしても受け止めることができる。
【0043】
車体側壁3の支持面32には、ストライカ5の基端部の取付座部52を保持する支持台座33と、支持面32を補強する補強プレート34が設置されている。このため、ストライカ5に加わった車両前方方向(矢印D方向)の荷重を支持台座33でしっかりと受け止めることができる。したがって、ストライカ5に車両前後方向(矢印D方向)の大きな荷重が負荷されても、ストライカ5がその荷重によって車体側壁3から剥離したり、曲がったりするのを抑制して、ストライカ5の固定強度を向上させることができる。
【0044】
ストライカ5が車体側壁3に対して車両前方方向へ傾斜状態に設置されると共に、ダクト1の吸気口11が、シートバック23の左側側方で、かつ、ストライカ5の傾斜部51及び取付座部52よりも前側に配置されている。このため、シートバック23の上部左側側方のスペースは、従来のように、ダクト100(図6参照)の奥行き方向に邪魔なストライカ400(図6及び図7参照)がないので、自由に使用できるようになる。このため、ダクト1の吸気口11は、シートバック23の上部左側側方と車体側壁3との間の全体のスペースに配置することができるようになる。その結果、吸気口11の吸入面積を大きく形成して、空気の流れをスムーズにし、車室前方の空気を大量に取り込むことが可能となると共に、ダクト1の空気吸引能力を向上させることができる。
【0045】
また、図1に示すように、ダクト1の入口部分1a及び吸気口11は、ストライカ5を避けるようにして配置されている。このため、吸気口11は、ストライカ5がロック機構4にロックされる係合位置よりも上方から下方に亘って上下方向に長く形成することができる。さらに、ダクト1の入口部分1aの断面積を大きく取れるようになる。また、吸気口11は、客室Rの内側方向の側面に切欠部11aを有しているので、車室前方方向(矢印E方向)及び車幅方向の内側方向(矢印F方向)の二方向から空気を吸入することができる。
【0046】
その結果、吸気口11を大きく形成して、空調装置(図示省略)から吐出された冷たい空気を大量に取り込むことができるため、電池7を冷却する冷却能力及び冷却効率を向上させて、効率よく電池7を冷却することができる。
【0047】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0048】
前記実施形態では、ダクト1の吸気口11をリヤシート21のシートバック23の左側の側部上部23aに設けた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。ダクト1の吸気口11は、車両用シート2の側部であればよく、右側に設けても、左右両方に設置しても構わない。
【0049】
また、前記実施形態では、ダクト1を利用して電池7を冷却する場合を説明したが、これに限定されるものではない。本発明のダクト1は、車両に搭載されて熱を発生する被冷却媒体を冷却するものであればよく、例えば、モータやエンジン等の動力原や、電気装置を冷却するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 ダクト
1a 入口部分
2 車両用シート
3 車体側壁
4 ロック機構
5 ストライカ
7 電池
11 吸気口
23 シートバック
32 支持面
33 支持台座
51 傾斜部
L ラゲージスペース
R 客室(車室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、
該シートバックに設けられ、車体側壁に支持されたストライカに係合して該シートバックを起立位置でロックするロック機構と、を有する車両用シートと、
前記シートバックの側方に設けられて、上下方向に延び、空気を流通するダクトと、を備えたダクトの配設構造において、
前記ストライカは、前記シートバックの前記ロック機構と係合する係合位置から車幅方向の外側でかつ車両後方に向けて延びる傾斜部を備え、
前記ダクトを、前記シートバックの側方でかつ前記ストライカの傾斜部よりも前側に配置したことを特徴とするダクトの配設構造。
【請求項2】
前記車体側壁に車両前方方向を向いた支持面を設け、該支持面に前記傾斜部を支持する支持台座を備えたことを特徴とする請求項1に記載のダクトの配設構造。
【請求項3】
前記ダクトと連通し、前記シートバックの側部と前記車体側壁との間に車室内の空気を取り込む吸気口を設け、該吸気口を前記ストライカの前記係合位置よりも上方及び下方の両方に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダクトの配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−84181(P2011−84181A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238961(P2009−238961)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】