説明

ダングリングポリシロキサン含有ポリマー鎖を有するプレポリマー

本発明は、ダングリングポリシロキサン含有ポリマー鎖を含有する新規なクラスのシリコーン含有プレポリマーを提供する。このクラスのシリコーン含有プレポリマーは、化学線により架橋されて、比較的高い酸素透過性、低減した弾性率、及び比較的高いイオン透過性を有するシリコーンヒドロゲル材料を形成する。本発明は、このクラスのシリコーン含有プレポリマーから製造されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、及びそのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダングリングポリシロキサン含有ポリマー鎖を有するシリコーン含有プレポリマーのクラス、及びそれらの使用に関する。特に、本発明は、このクラスのシリコーン含有プレポリマーから製造されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関する。
【0002】
背景技術
近年、その高い酸素透過性及び快適さを理由に、ソフトシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの人気が高まっている。「ソフト」コンタクトレンズは、目の形状にぴったりと合致するので、酸素はレンズを容易にくぐり抜けることができない。角膜は、他の組織のように血液供給から酸素を受け取らないため、ソフトコンタクトレンズは、周囲の空気(すなわち、酸素)からの酸素が角膜に達するようにしなければならない。十分な酸素が角膜に到達しないと、角膜の膨張が起こる。長期間の酸素の欠乏は、角膜中の血管の好ましくない成長を招く。高い酸素透過性を備えることにより、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、十分な酸素がレンズを透過して角膜に達するようにして、角膜の健康に及ぼす悪影響を最小限にする。
【0003】
しかし、全ての市販のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、使い捨てのプラスチックの型並びにモノマー及び/又はマクロマーの混合物が関与する従来のキャスト成形技術により製造されている。このような従来のキャスト成形技術には、幾つかの短所がある。例えば、伝統的なキャスト成形製造プロセスは、重合されなかったモノマーを有機溶媒を用いてレンズから除去しなければならないレンズ抽出を含む必要がある。このようなレンズ抽出は、製造コストを上げ、製造効率を下げる。さらに、使い捨てのプラスチックの型は、製造プロセスにおける変動(温度、圧力、材料特性)の結果、プラスチック型の射出成形中に型寸法に変動が生じ得るため、また、得られた型が、射出成形後に不均質に収縮し得るため、本質的に不可避的な寸法のばらつきを有する。このような型における寸法の変化は、製造されるコンタクトレンズのパラメーター(ピーク屈折率、直径、基本曲線、中心厚等)のばらつき及び複雑なレンズデザインの複製における低い正確さにつながり得る。
【0004】
従来のキャスト成形技術で遭遇する上記の短所は、米国特許第5,508,317号、第5,583,463号、第5,789,464号、及び第5,849,810号に記載されているような、(1)実質的にモノマーを含まず、エチレン性不飽和基を有する実質的に精製されたプレポリマーを含むレンズ形成組成物、(2)高い精度で製造された再使用可能な型、及び(3)化学線(例えばUV)照射の空間的制限下での硬化が関与する、いわゆるLightstream Technology(商標)(CIBA Vision)を使用することによって克服することができる。Lightstream Technology(商標)により、レンズは、比較的低いコストで製造でき、元のレンズデザインに対する高い一貫性及び高い正確さを有することができる。
【0005】
Lightstream Technology(商標)を十分に利用してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するために、Lightstream Technology(商標)により、所望の機械的強度及び所望の物理的性質を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するために適切な、新規な化学線架橋性のプレポリマーが依然必要である。
【0006】
発明の概要
本発明は、1つの局面において、化学線により架橋性のプレポリマーを提供する。本発明のプレポリマーは、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマー由来であり、エチレン性不飽和基を含まないダングリングポリシロキサン単位;(2)1つ以上の親水性のビニルモノマー由来の親水性単位;(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤由来の架橋単位;及び(4)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー由来の疎水性単位を含み、プレポリマーは、複数のエチレン性不飽和基を含み、1つ以上のモノマーの非存在下、化学線により架橋され、シリコーンヒドロゲル材料を形成することができる。
【0007】
もう1つの局面において、本発明は、ソフトコンタクトレンズを提供する。本発明のソフトコンタクトレンズは、型内のレンズ形成材料を硬化させることによって得たシリコーンヒドロゲル材料を含み、レンズ形成材料は、化学線架橋性のプレポリマーを含み、ビニルモノマー及び分子量1500ダルトン未満の架橋剤を実質的に含まず、プレポリマーは、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマー由来であり、エチレン性不飽和基を含まないダングリングポリシロキサン単位;(2)1つ以上の親水性のビニルモノマー由来の親水性単位;(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤由来の架橋単位;(4)複数のエチレン性不飽和基;及び(5)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー由来の疎水性単位を含む。
【0008】
さらなる局面において、本発明は、ソフトコンタクトレンズの製造方法を提供する。本方法は、コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の型半と、コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の型半とを備え、該第1及び第2の型半が、該第1及び第2の成形面の間にキャビティが形成されるように互いに受けて構成されるソフトコンタクトレンズ製造用型を提供する工程;1つ以上の化学線架橋性のプレポリマーを含み、ビニルモノマー及び/又は分子量1500ダルトン未満の架橋剤を実質的に含まず、該1つ以上のプレポリマーの各々は、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマー由来であり、エチレン性不飽和基を含まないダングリングポリシロキサン単位、(2)1つ以上の親水性のビニルモノマー由来の親水性単位、(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤由来の架橋単位、(4)複数のエチレン性不飽和基、及び(5)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー由来の疎水性単位を含むレンズ形成材料をキャビティに投入する工程;及び型内の組成物を化学線照射して、該1つ以上の架橋性プレポリマーを架橋させてコンタクトレンズを形成する工程を含む。
【0009】
本発明の実施態様の詳細な説明
他に記載のない限り、本明細書において使用されるすべての技術及び科学の用語は、本発明の属する分野における通常の知識を有する者に通常理解されるそれらと同義である。一般に、本明細書において使用される命名法及び試験方法は、当分野で周知であり、通常使用されているものである。これらの方法には、当分野及び様々な一般文献に記載されるような従来の方法が使用される。用語が単数で記載される場合、発明者らは、その用語の複数をも考慮にいれている。本明細書における命名法及び下記の試験方法は、当分野で周知であり、且つ通常使用されているものである。
【0010】
本明細書で用いる「眼用装置」は、目の上、目の付近又は眼球近傍で使用されるコンタクトレンズ(ハード又はソフト)、眼内レンズ、角膜アンレー、その他の眼用デバイス(例えば、ステント、緑内障シャント等)を意味する。
【0011】
「コンタクトレンズ」は、装着者の眼の上又は眼内に置くことができる構造物を意味す。コンタクトレンズは、使用者の視力を矯正、向上、又は変化させることができるが、そうである必要はない。コンタクトレンズは、当技術分野において公知の又は今後開発される任意の適切な材料から作ることができ、ソフトレンズでも、ハードレンズでも、又はハイブリッドレンズでもよい。「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」は、シリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズを意味する。
【0012】
「ヒドロゲル」又は「ヒドロゲル材料」は、十分水和させた場合、少なくとも10重量パーセントの水を吸収することができるポリマー材料を意味する。
【0013】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー又は少なくとも1つのシリコーン含有マクロマー又は少なくとも1つの架橋性のシリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物を共重合することによって得られるシリコーン含有ヒドロゲルを意味する。
【0014】
本明細書で用いる「親水性」とは、脂質とよりも水と容易に会合する材料又はその一部を表す。
【0015】
「モノマー」は、重合されることができる低分子量化合物を意味する。低分子量とは、通常、700ダルトン未満の平均分子量を意味する。
【0016】
「マクロマー」は、重合及び/又は架橋されることができる、中分子量及び高分子量の化合物を意味する。中分子量及び高分子量は、通常、700ダルトンより大きい平均分子量を意味する。
【0017】
「ポリシロキサン」は、
【化1】


(式中、R及びRは、独立して、一価のC−C10アルキル、C−C10エーテル、C−C10フルオロアルキル、C−C10フルオロエーテル、又はC−C18アリール基であり、ヒドロキシ基、第1級、第2級、もしくは第3級のアミン基、カルボキシ基、又はカルボン酸を含んでよく;nは、4以上の整数である)の部分を意味する。
【0018】
本明細書で用いる「ビニルモノマー」は、エチレン性不飽和基を1つだけ有し、及び化学線により又は熱により重合されることができるモノマーを意味する。
【0019】
本明細書で用いる、用語「オレフィン不飽和基」又は「エチレン性不飽和基」は、広義に使用され、>C=C<基を含有するあらゆる基を包含することを意図している。エチレン性不飽和基の例は、非制限的に、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル、又は他のC=C含有基を包含する。
【0020】
重合性組成物、プレポリマー又は材料の硬化、架橋又は重合との関連において、本明細書で用いる「化学線により」とは、硬化(例えば、架橋及び/又は重合)が、例えば、UV照射、電離放射線(例えば、ガンマ線又はX線照射)、マイクロ波照射等のような化学線照射によって行われることを意味する。熱硬化又は化学線硬化の方法は、当業者に周知である。
【0021】
本明細書で用いる用語「流体」とは、ある材料が、液体のように流れることができることを意味する。
【0022】
「親水性のビニルモノマー」は、重合して水溶性であるか、又は十分水和された場合、少なくとも10重量パーセントの水を吸収できるポリマーを形成することができるビニルモノマーを意味する。
【0023】
本明細書において「疎水性のビニルモノマー」は、重合して水に不溶性であるか、又は十分水和された場合、10重量パーセント未満の水を吸収できるポリマーを形成することができるビニルモノマー意味する。
【0024】
「プレポリマー」は、複数のエチレン性不飽和基を含有し、化学線により硬化(例えば架橋)して、出発ポリマーよりもはるかに多い分子量を有する架橋性のポリマー(例えば最終ポリマー)を得ることができる出発ポリマーを意味する。
【0025】
「複数の」エチレン性不飽和基は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのエチレン性不飽和基を意味する。
【0026】
「シリコーン含有プレポリマー」は、シリコーン及びエチレン性不飽和基を含有し、化学線により架橋して、出発ポリマーよりもはるかに大きい分子量を有する架橋されたポリマーを得ることができるプレポリマーを意味する。
【0027】
本明細書で用いる、ポリマー材料(モノマー又はマクロマーの材料を含む)の「分子量」は、他に具体的な記載がなければ、又は試験条件がそうでないことを示していなければ、数平均分子量を意味する。
【0028】
「ポリマー」は、1種以上のモノマーを重合することにより形成される材料を意味する。
【0029】
コポリマーに関して、本明細書で用いる用語「エチレン性官能化」は、カップリングプロセスに従い、1つ以上のエチレン性不飽和基が、コポリマーのペンダント基又は末端官能基を介してコポリマーに共有結合されていることを表すことを意図する。化合物に関して、「モノエチレン性官能化」は、化合物が化学的に変性されて、エチレン性不飽和基を1つだけ含有することを意味する。化合物に関して、「ジエチレン性官能化」は、化合物が化学的に変性されて、エチレン性不飽和基を2つだけ含有することを意味する。
【0030】
用語、プレポリマーの「ダングリングポリシロキサン単位」は、それぞれが、1つだけの共有結合(好ましくはポリシロキサン含有ポリマー鎖末端の1つで)を介してプレポリマーの主鎖に固定されているポリシロキサン含有ポリマー鎖を含む単位を意味することを意図する。
【0031】
「光開始剤」は、光の使用により、ラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を意味する。適切な光開始剤は、非限定的に、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocure(登録商標)タイプ、及びIrgacure(登録商標)タイプ、好ましくはDarocure(登録商標)1173及びIrgacure(登録商標)2959を包含する。
【0032】
「熱開始剤」は、熱エネルギーの使用により、ラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を意味する。適切な熱開始剤の例は、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、ベンゾイルペルオキシドのような過酸化物等を包含するが、これらに限定されない。好ましくは、熱開始剤は、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)である。
【0033】
「化学線照射の空間的制限」は、明確な周辺境界線を有する領域に、空間的に制限された方法で、光線の形態でのエネルギー放射が、例えば、マスク又はスクリーン又はそれらの組み合わせの手段によって導かれて作用する動き又はプロセスを意味する。例えば、紫外線照射の空間的制限は、(その全文が参照により本明細書に組み込まれる)米国特許第6,627,124号の図1−9に概略的に示されるように、紫外線不透過領域(マスクされた領域)に囲まれた、透明又は開口された領域(マスクされていない領域)を有するマスク又はスクリーンを使用することにより達成することができる。マスクされていない領域は、マスクされている領域と明確な周辺境界線を有する。架橋に使用されるエネルギーは、放射線エネルギー、特に紫外線放射、ガンマ線放射、電子線放射又は熱放射であり、放射線エネルギーは、一方では良好な制限及び他方ではエネルギーの効率的利用を達成するために、好ましくは、実質的に平行な光線の形態である。
【0034】
レンズに関して「視認性のためのティント」は、使用者が、レンズ保管、殺菌又は洗浄用の容器内の透明な溶液中のレンズの在り処を容易に確認できるようにするための、レンズの染色(又は着色)を意味する。レンズの視認性のためのティントに、染料及び/又は顔料を使用することができることは、当分野において周知である。
【0035】
「染料」とは、溶媒に可溶性であり、色を付与するのに使用される物質を意味する。染料は、通常半透明であり、光を吸収するが散乱させない。本発明において、任意の適切な生体適合性の染料を使用することができる。
【0036】
「顔料」とは、それが不溶である液体に懸濁された粉末物質を意味する。顔料は、蛍光顔料、リン光性顔料、真珠光沢顔料、又は従来の顔料であることができる。任意の適切な顔料を使用してよいが、顔料が、耐熱性、無毒性及び水溶液に不溶性であることが現在のところ好ましい。
【0037】
本明細書で用いる「表面変性」とは、物品が、物品の形成前又は後に、表面処理プロセス(又は表面変性プロセス)で処理されたことを意味し、その処理において、(1)物品の表面にコーティングが施されるか、(2)物品の表面に化学種が吸着されるか、(3)物品の表面の化学基の化学的性質(例えば、帯電性)が変更されるか、又は(4)物品の表面特性がその他の方法により変性されることを意味する。表面処理プロセスの例は、イオン化ガスを物品表面に適用するプラズマプロセス(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許第4,312,575号及び第4,632,844号参照);プラズマ以外のエネルギー(例えば、静電気、放射線照射、又はその他のエネルギー源)による表面処理;化学処理;親水性のモノマー又はマクロマーの物品表面へのグラフト;参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第6,719,929号に開示されているモールドトランスファーコーティングプロセス;(参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第4,045,547号、第4,042,552号、第5,198,477号、第5,219,965号、第6,367,929号及び第6,822,016号、第7,279,507号において提案されている、コンタクトレンズ製造用レンズ配合剤への湿潤剤の組み込み;PCT特許出願公報第WO2007/146137号(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)に開示されている補強モールドトランスファーコーティングプロセス;及び(参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる)米国特許シリアル番号第6,451,871号、第6,719,929号,第6,793,973号、第6,811,805号、第6,896,926号に記載されている方法に従って得ることができる一層ずつのコーティング(「LbLコーティング」)を包含するがこれらに限定されない。
【0038】
代表的なプラズマガス及びプロセス条件は、米国特許第4,312,575号及び4,632,844号に記載されている。プラズマガスは、好ましくは、低級アルカンと、窒素、酸素又は不活性ガスとの混合物である。
【0039】
本明細書で用いる「LbLコーティング」は、コンタクトレンズ又は型半に共有結合せず、レンズ又は型半上にポリイオン性(又は帯電した)及び/又は非帯電材料を一層ずつ(「LbL」)堆積することにより得られるコーティングを意味する。LbLコーティングは、1つ以上の層で構成することができる。
【0040】
本明細書で用いる「ポリイオン性材料」は、高分子電解質、p型及びn型ドープ導電ポリマーのような、複数の荷電基又はイオン性基を有するポリマー材料を意味する。ポリイオン性材料は、(正電荷を有する)ポリカチオン性及び(負電荷を有する)ポリアニオン性材料の両方を包含する。
【0041】
コンタクトレンズ又は型半上のLbLコーティングの形成は、例えば、(参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第6,451,871号、第6,719,929号、第6,793,973号、第6,811,805号、第6,896,926号に記載されるような様々な方法で行ってよい。
【0042】
本明細書で用いる「抗菌剤」は、この用語が当分野で公知のように、微生物の増殖を低減するか、除去するか、又は抑制することのできる化学物質を意味する。
【0043】
「抗菌性金属」は、そのイオンが、抗菌性効果を有し、且つ生体適合性である金属である。好ましい抗菌性金属は、Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Sn、Cu、Sb、Bi及びZnを包含するが、Agが最も好ましい。
【0044】
「抗菌性金属含有ナノ粒子」は、1ミクロメーター未満の粒径を有し、その1つ以上の酸化状態において存在する、少なくとも1つの抗菌性金属を含有する粒子を意味する。
【0045】
「抗菌性金属ナノ粒子」は、本質的に抗菌性金属で作られ、1ミクロメーター未満の粒径を有する粒子を意味する。抗菌性金属ナノ粒子中の抗菌性金属は、その1つ以上の酸化状態において存在することができる。例えば、銀含有ナノ粒子は、Ag、Ag1+及びAg2+のような、その1つ以上の酸化状態における銀を含有することができる。
【0046】
「安定化抗菌性金属ナノ粒子」は、それらの調製中に安定剤により安定化された抗菌性金属ナノ粒子を意味する。安定化抗菌性金属ナノ粒子は、ナノ粒子調製用の溶液に存在し、得られたナノ粒子を安定化させることができる材料(又はいわゆる安定剤)に大きく依存して、正荷電又は負荷電のいずれか又は電気的に中性であることができる。安定剤は、任意の公知の適切な材料であることができる。安定剤の例は、正荷電ポリイオン性材料、負荷電ポリイオン性材料、ポリマー、界面活性剤、サリチル酸、アルコール等を包含するがこれらに限定されない。
【0047】
本明細書で用いる、レンズの「酸素透過度」は、酸素が特定の眼用レンズを通過する割合である。酸素酸素透過度Dk/tは、従来、単位barrers/mmで表され、ここでtは、測定面積に対する材料の平均厚[単位mm]であり、「barrers/mm」は次のように定義される:
[(cm3酸素)/(cm2)(秒)(mm2Hg)]×10−9
【0048】
レンズ材料固有の「酸素透過性」Dkは、レンズ厚に依存しない。固有の酸素透過性は、酸素が材料を通過する率である。酸素透過性は、従来より、barrerの単位で表わされている。ここで、「barrer」は、以下のように定義される:
[(cm3酸素)(mm)/(cm2)(秒)(mm2Hg)]×10−10
【0049】
これらは、当分野で一般的に使用される単位である。そのため、当分野における使用との一貫性をもたせるため、単位「barrer」は、上記の定義のとおりの意味をもつ。例えば、90barrerのDk(「酸素透過性barrer」)及び90ミクロン(0.090mm)の厚さを有するレンズは、100barrer/mmのDk/t
【数1】


(酸素透過度barrer/mm)を有する。本発明によれば、材料又はコンタクトレンズに関連して、高い酸素透過性とは、実施例に記載の電量分析法に従って、100ミクロン厚のサンプル(フィルム又はレンズ)を用いて測定された、少なくとも40barrer以上の見掛けの酸素透過性を特徴とする。
【0050】
レンズを通過する「イオン透過性」は、イオノフラックス拡散係数及びイオノトン(Ionoton)イオン透過係数の両者と、相互に関連する。
【0051】
イオノフラックス拡散係数Dは、Fickの法則を適用することにより次のように求められる:
D=−n’/(A×dc/dx)
式中、n’=イオン輸送率[mol/min]
A=露出レンズ面積[mm
D=イオノフラックス拡散係数[mm/min]
dc=濃度差[mol/L]
dx=レンズ厚[mm]
【0052】
イオノトンイオン透過係数、Pは、よって、次式により求められる:
ln(1−2C(t)/C(0))=−2APt/Vd
式中:C(t)=受け入れセル内の時間tでのナトリウムイオン濃度
C(0)=供給セル内の初期濃度
A=膜面積、すなわち、セルに暴露したレンズ面積
V=セルコンパートメント容量(3.0ml)
d=露出領域における平均レンズ厚
P=透過係数
【0053】
約1.5×10−6mm/minより大きいイオノフラックス拡散係数Dが好ましく、約2.6×10−6mm/minより大がより好ましく、約6.4×10−6mm/minより大が最も好ましい。
【0054】
涙の良好な交換を確保し、最終的に、角膜の健康を確保するためには、レンズが眼上で動くことが必要であることは公知である。イオン透過性は、水の透過性に正比例すると考えられるため、イオン透過性は、レンズの眼上での動きの予測因子の1つである。
【0055】
第1のプレポリマーとダングリングポリシロキサンポリマー鎖とを架橋させることにより得たシリコーンヒドロゲルレンズの試験に関して、「低減弾性率」又は「低減係数」又は「低減ヤング率」は、レンズの弾性率(又は係数)が、ダングリングポリシロキサンポリマー鎖を有しないが(両第1及び第2のプレポリマー製造用組成物に基づき)実質的に同量(重量)のポリシロキサンを有する第2のプレポリマーから得た対照のレンズに比べて、より小さいことを表すことを意図する。
【0056】
レンズ「係数(ΔE)の低減」は、以下の式に基づいて計算される:
【数2】


(式中、Eは、ダングリングポリシロキサンポリマー鎖と第1のプレポリマーから得た試験レンズの係数であり、E対照は、実施例2に示すとおり、ダングリングポリシロキサンポリマー鎖を有しないが(両第1及び第2のプレポリマーの作成のための組成物に基づき)実質的に同量(重量)のポリシロキサンを有する第2のプレポリマーから得た対照レンズの係数である。
【0057】
レンズの「イオン透過性(Δ(IP))の増大」は、以下の式に基づいて計算される:
【数3】


(式中、IPは、ダングリングポリシロキサンポリマー鎖と第1のプレポリマーから得た試験レンズのイオン透過性であり、IP対照は、実施例2に示すとおり、ダングリングポリシロキサンポリマー鎖を有しないが(両第1及び第2のプレポリマーの作成のための組成物に基づき)実質的に同量(重量)のポリシロキサンを有する第2のプレポリマーから得た対照レンズのイオン透過性である。
【0058】
本発明は、全般的に、化学線架橋性のシリコーン含有プレポリマーの一種に関する。本発明は、一部には、ダングリングポリシロキサンポリマー鎖を、化学線架橋性のシリコーン含有プレポリマーに組み込むことにより、このようなプレポリマーを、低減弾性率及び実質的に同等の酸素透過性を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造に使用することができるという発見に基づいている。得られたレンズのイオン透過性は、ダングリングポリシロキサンポリマー鎖を組み込むことによって高めることができる。このようなプレポリマーは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの調製、特にLightstream Technology(商標)(CIBA Vision)による調製に使用することができる。
【0059】
本発明は、1つの局面において、化学線架橋性のプレポリマーを提供する。本発明のプレポリマーは、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマー由来の、エチレン性不飽和基を含まないダングリングポリシロキサン単位;(2)1つ以上の親水性のビニルモノマー由来の親水性単位;(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤由来の架橋単位;及び(4)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー由来の疎水性単位を含み、複数のエチレン性不飽和基を含み、1つ以上のモノマーの非存在下で化学線により架橋されてシリコーンヒドロゲル材料を形成することができる。
【0060】
プレポリマーのダングリングポリシロキサン含有単位各々は、如何なるエチレン性不飽和基も含むべきではない。
【0061】
本発明によれば、本発明のプレポリマーは、ペンダント基又は末端官能基を有する中間体コポリマーから、任意の共有結合カップリング法により、その中間体コポリマーを、エチレン性官能化して、複数のエチレン性不飽和基を含むようにすることによって得ることができる。
【0062】
一対の対応する反応基が、公知のカップリング反応条件下、例えば、酸化還元条件、脱水縮合条件、付加条件、置換(substitution又はdisplacement)条件、ディールス・アルダー反応条件、カチオン架橋条件、及びエポキシ硬化条件下で、共有結合(covalent bonds又はlinkage)を形成できることは、当分野で周知である。例えば、アミノ基は、アルデヒド基と反応して、シッフ塩基(Schiff base)を形成し、それがさらに還元される場合がある;アミノ基は、酸クロリドと反応し、アミド結合(−CO−N−)を形成し;アミノ基は、イソシアナートと反応し、ウレア結合を形成し;ヒドロキシルは、イソシアナートと反応し、ウレタン結合を形成し;ヒドロキシルは、エポキシと反応し、エーテル結合(−O−)を形成し;ヒドロキシルは、酸クロリドと反応し、エステル結合を形成する。
【0063】
架橋性基対の間に形成される共有結合(covalent bonds又はlinkage)の例は、非限定的に、エステル、エーテル、アセタール、ケタール、ビニルエーテル、カルバマート、尿素、ウレタン、アミン、アミド、エナミン、イミン、オキシム、アミジン、イミノエステル、カルボナート、オルソエステル、ホスホナート、ホスフィナート、スルホナート、スルフィナート、スルフィド、スルファート、ジスルフィド、スルフィンアミド、スルホンアミド、チオエステル、アリール、シラン、シロキサン、ヘテロ環、チオカルボナート、チオカルバマート、及びホスホンアミドを包含する。
【0064】
反応基の例は、ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、無水物基、スルフヒドリル基、−COOR(R及びR’は、水素又はC−Cアルキル基)、ハライド(クロリド、ブロミド、ヨージド)、アシルクロリド、イソチオシアナート、イソシアナート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ−又はジ−ハロゲン置換ピリジン、モノ−又はジ−ハロゲン置換ジアジン、ホスホルアミダイト(phosphoramidite)、マレイミド、アジリジン、スルホニルハライド、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アキシドニトロフェニル基、アジド、3−(2−ピリジルジチオ)プロプリオンアミド、グリオキサール、アルデヒド、エポキシを包含する。
【0065】
カップリング剤を使用してもよいことが理解される。例えば、カルボキシルとアミンのカップリングにおいて、カルボジイミドを使用して、カップリングされた分子間にアミド結合を形成することができる。カルボジイミドの例は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、又はそれらの混合物である。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はN−ヒドロキシスルホスクシンイミドは、望ましくは、カルボジイミド(例えば、EDC)−を介するカップリング反応に含まれて、カップリング(共役)効率を高めることができる。EDCは、NHSをカルボキシルにカップリングし、その結果、分子上にNHS活性化部位が生じる。形成されたNHS−エステルは、アミンと結合し、アミドを形成することができる。
【0066】
好ましくは、中間体コポリマーの官能基は、ヒドロキシル基(−OH)、第1級アミノ基(−NH)、第2級アミノ基(−NHR)、カルボキシル基(−COOH)、エポキシ基、アルデヒド基(−CHO)、アミド基(−CONH)、酸ハライド基(−COX、X=Cl、Br、又はI)、イソチオシアナト基、イソシアナト基、ハライド基(−X、X=Cl、Br、又はI)、酸無水物基、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0067】
好ましい実施態様において、ペンダント基又は末端官能基を有する中間体コポリマーは、(1)少なくとも1つのモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ポリシロキサン含有マクロマー、(2)少なくとも1つの親水性のビニルモノマー(例えば、1つのエチレン性不飽和基を有する)、(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤、及び(4)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマーを含むが、但し、(2)〜(4)の成分のうちの少なくとも1つは、得られた中間体コポリマーにそれを介してエチレン性不飽和基が共有結合することができる少なくとも1つの官能基をさらに含む、重合性組成物の共重合により得ることができる。
【0068】
別の好ましい実施態様において、ペンダント基又は末端官能基を有する中間体コポリマーは、(1)少なくとも1つのモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ポリシロキサン含有マクロマー、(2)少なくとも1つの親水性のビニルモノマー(例えば、1つのエチレン性不飽和基を有する)、(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤、(4)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー、及び(5)得られた中間体コポリマーにそれを介してエチレン性不飽和基が共有結合することができる官能基を有する少なくとも1つの連鎖移動剤を含む重合性組成物の共重合により得ることができる。
【0069】
ペンダント基又は末端官能基を有する中間体コポリマーの調製のための化学線重合性組成物において、任意の公知の適切なモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有のモノマー又はマクロマー(例えば、エチレン性不飽和基を1つだけ有するポリシロキサン含有のモノマー又はマクロマー)を使用することができる。
【0070】
モノエチレン性官能化ポリシロキサン含有のモノマー又はマクロマーの好ましいクラスは、式(I):
【化2】


[式中、Xは、−COO−、−CONR14−、−OCOO−、又は−OCONR14−(ここで、各R14は、独立して、H又はC−Cアルキルである)を表し;R11は、二価のC−C25アルキル又はC−C30アリール基を表し、−O−、−COO−、−CONR14−、−OCOO−又は−OCONR14−で中断されてよく、ヒドロキシ基、第1級、第2級もしくは第3級のアミン基、カルボキシ基、又はカルボン酸を含んでよく;R12は、一価のC−C25アルキル又はC−C30アリール基であり、−O−、−COO−、−CONR14−、−OCOO−又は−OCONR14−で中断されてよく、ヒドロキシ基、第1級、第2級もしくは第3級のアミン基、カルボキシ基、又はカルボン酸を含んでよく;R、R、R’、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、C−C−アルキル、C−Cアルキル−又はC−C−アルコキシ置換フェニル、フルオロ(C−C18−アルキル)、シアノ(C−C12−アルキル)、ヒドロキシ−C−C−アルキル又はアミノ−C−C−アルキルであり;xは、0又は1の数であり、m及びpは、互いに独立して、5〜700の整数であり、(m+p)は、5〜700である]によって定義されるそれらである。このようなモノマー又はマクロマーの好ましい例は、様々な分子量の、モノメタクリラート化又はモノアクリラート化されたポリジメチルシロキサン(例えば、モノ−3−メタクリルオキシプロピル末端、モノ−ブチル末端ポリジメチルシロキサン又はモノ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端、モノ−ブチル末端のポリジメチルシロキサン)である。あるいは、モノエチレン性官能化ポリシロキサンは、上記のように、モノ官能化ポリシロキサン(例えば、−NH、−OH、−COOH、エポキシ基等のような末端官能基を1つだけ有する)をエチレン性官能化することにより得ることができる。適切なモノ官能化ポリシロキサンは、例えば、Aldrich, ABCR GmbH & Co., Fluorochem, or Gelest, Inc, Morrisville, PA.から市販されている。
【0071】
ペンダント基又は末端官能基を有する中間体コポリマーの調製用の化学線重合性組成物において、ほぼあらゆる親水性のビニルモノマーを使用することができる。適切な親水性のビニルモノマーは、網羅的リストとしてではなく、ヒドロキシル置換C−Cアルキルアクリラート及びメタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、C−Cアルキルアクリルアミド、C−Cアルキルメタクリルアミド、エトキシル化アクリラート、エトキシル化メタクリラート、ヒドロキシル置換C−Cアルキルアクリルアミド、ヒドロキシル置換C−Cアルキルメタクリルアミド、ヒドロキシル置換低級アルキルビニルエーテル、ナトリウムビニルスルホナート、ナトリウムスチレンスルホナート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルピロール、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−ビニル−4,4’−ジアルキルオキサゾリン−5−オン、2−及び4−ビニルピリジン、合計3〜5個の炭素原子を有するビニル性不飽和カルボン酸、アミノ(低級アルキル)−(ここで用語「アミノ」は、例えば、第4級アンモニウムも包含する)、モノ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)及びジ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)アクリラート及びメタクリラート、アリルアルコール、N−ビニルアルキルアミド、N−ビニル−N−アルキルアミド等である。
【0072】
好ましい親水性のビニルモノマーは、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、2−ヒドロキシアクリラート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、トリメチルアンモニウム 2−ヒドロキシプロピルメタクリラート塩酸塩、アミノプロピルメタクリラート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリラート(DMAEMA)、グリセリンメタクリラート(GMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、アクリル酸、重量平均分子量200〜1500を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メタクリル酸、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、及びN−ビニルカプロラクタムである。
【0073】
本発明によれば、ポリシロキサン含有架橋剤は、2つ以上のエチレン性不飽和基を含む、ポリシロキサン含有の化合物、マクロマー又はプレポリマーを意味する。ポリシロキサン含有架橋剤の例は、非限定的に、様々な分子量のジメタクリラート化又はジアクリラート化ポリジメチルシロキサン;様々な分子量のビニル末端ポリジメチルシロキサン;メタクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン;アクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン;アクリラート末端ポリジメチルシロキサン;メタクリラート末端ポリジメチルシロキサン;ビス−3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン;N,N,N’,N’−テトラキス(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−α、ω−ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン;(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第5,760,100号に記載のマクロマーA、マクロマーB、マクロマーC、及びマクロマーDからなる群より選択されるポリシロキサン含有マクロマー;グリシジルメタクリラートとアミノ官能性ポリジメチルシロキサンとの反応生成物;米国特許第6,762,264号(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)に開示されているポリシロキサン含有プレポリマー;PCT特許出願公報第WO00/59970号(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)に開示されているプレポリマー;米国特許第7,091,283(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)に開示されているプレポリマー;(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第7,091,283に開示されているポリシロキサン架橋剤とポリシロキサン/ペルフルオロアルキルエーテルとのブロックコポリマー架橋剤;ポリジメチルシロキサン及びポリアルキレンオキシドからなるジ及びトリブロックマクロマー(例えば、メタクリラートエンドキャップポリエチレンオキシド−ブロック−ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリエチレンオキシド);並びにそれらの混合物を包含する。ペルフルオロアルキルエーテル架橋剤、例えば、(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)米国特許第7,091,283号に開示されているそれらも、本発明において架橋剤として使用できることが理解される。
【0074】
あるいは、ジ−又はマルチ−エチレン性官能化されたポリシロキサンは、ジ−又はマルチ−官能化ポリシロキサン(すなわち、例えば、−NH、−OH、−COOH、エポキシ基等のような、2つ以上の末端官能基を有するもの)をエチレン性官能化することにより得ることができる。適切なジ−又はマルチ−官能化されたポリシロキサンは、例えば、Aldrich, ABCR GmbH & Co., Fluorochem, or Gelest, Inc, Morrisville, PAから市販されている。
【0075】
本発明によれば、シリコーン不含有架橋剤は、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するビニル化合物、マクロマー、又はプレポリマーである。
【0076】
シリコーン不含有架橋剤の例は、非限定的に、テトラエチレングリコールジメタクリラート(TEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリラート(TrEGDMA)、エチレングリコールジメタクリラート(EGDMA)、エチレンジアミンジメチルアクリルアミド、グリセリンジメタクリラート及びそれらの組み合わせである。
【0077】
(シリコーン不含有架橋剤として)複数のアクリロイル又はメタクリロイル基を有する親水性プレポリマーの例は、米国特許第5,583,163号及び6,303,687記載の水溶性の架橋性ポリ(ビニルアルコール)プレポリマー;米国特許出願公報第2004/0082680号に記載の水溶性ビニル基末端ポリウレタンプレポリマー;米国特許第5,849,841号に開示されている、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン又はポリビニルアミンの誘導体;米国特許第6,479,587号及び米国公開出願第2005/0113549号に記載の水溶性の架橋性ポリウレアプレポリマー;架橋性ポリアクリルアミド;ビニルラクタム、MMA及びコモノマーの架橋性統計コポリマー(EP655,470号及び米国特許第5,712,356号に開示);ビニルラクタム、ビニルアセタート及びビニルアルコールの架橋性コポリマー(EP712,867号及び米国特許第5,665,840号に開示);EP932,635号及び米国特許第6,492,478号に開示されている架橋性側鎖を有するポリエーテル−ポリエステルコポリマー;EP958,315号及び米国特許第6,165,408号に開示されている分岐鎖ポリアルキレングリコール−ウレタンプレポリマー;EP961,941号及び米国特許第6,221,303号に開示されているポリアルキレングリコール−テトラ(メタ)アクリラートプレポリマー;及び国際出願第WO2000/31150号及び米国特許第6,472、489に開示されている架橋性ポリアリルアミングルコノラクトンプレポリマーを包含するが、これらに限定されない。
【0078】
ペンダント基又は末端官能基を有する中間体コポリマーの調製のための化学線重合性組成物において、ほぼあらゆる疎水性のビニルモノマーを使用することができる。適切な疎水性のビニルモノマーは、非限定的に、シリコーン含有ビニルモノマー、C−C18−アルキルアクリラート及び−メタクリラート、C−C18アルキルアクリルアミド及び−メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニル−C−C18−アルカノアート、C−C18−アルケン、C−C18−ハロ−アルケン、スチレン、C−C−アルキルスチレン、アルキル部分が、炭素原子1〜6個を有するビニルアルキルエーテル、C−C10−ペルフルオロアルキル−アクリラート及び−メタクリラート又は対応して部分的にフッ素化されたアクリラート及びメタクリラート、C−C12−ペルフルオロアルキル−エチル−チオカルボニルアミノエチル−アクリラート及び−メタクリラート、アクリルオキシ及びメタクリルオキシアルキルシロキサン、N−ビニルカルバゾール、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸等のC−C12−アルキルエステルを包含する。例えば、炭素原子3〜5個を有するビニル性不飽和カルボン酸のC−C−アルキルエステル又は炭素原子最大5個を有するカルボン酸のビニルエステルが優先される。
【0079】
好ましい疎水性のビニルモノマーの例は、メチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、イソプロピルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、プロピルメタクリラート、ビニルアセタート、ビニルプロピオナート、ビニルブチラート、ビニルバレラート、スチレン、クロロプレン、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ペルフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリラート、イソボルニルメタクリラート、トリフルオロエチルメタクリラート、ヘキサフルオロ−イソプロピルメタクリラート、及びヘキサフルオロブチルメタクリラートを包含する。
【0080】
連鎖移動剤は、1つ以上のチオール、例えば2つ又は最も好ましくは1つのチオールを含んでよい。適切な連鎖移動剤は、非限定的に、2−メルカプトエタノール、2−アミノエタンチオール、2−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸、又は他のヒドロキシメルカプタン、アミノメルカプタン、カルボキシル含有メルカプタン、及びそれらの混合物を包含する。連鎖移動剤が、1つ以上のチオールに加えて官能基を含む場合、得られた中間体コポリマーに組み込むことができ、続く中間体コポリマーへのエチレン性不飽和基の添加のための官能性を提供する。連鎖移動剤は、得られたコポリマーの分子量を制御するためにも使用できる。
【0081】
ペンダント基又は末端官能基を有する中間体コポリマーの調製のための化学線重合性組成物において、少なくとも1つの官能基を含有する任意の公知の適切なビニルモノマーを使用することができる。このようなビニルモノマー由来の単位の官能基を、中間体コポリマーをエチレン性官能化するのに使用することができる。このようなビニルモノマーの好ましい例は、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸、グリシジルメタクリラート、グリシジルアクリラート、HEMA、HEA、アミノプロピルメタクリラート塩酸塩、メタクリル無水物、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド(NHMA)、2−ブロモエチルメタクリラート、及びビニルベンジルクロリドを包含する。
【0082】
ペンダント基又は末端官能基を有する中間体コポリマーの調製のための化学線重合性組成物において、ビニルモノマーを、親水性のビニルモノマーとして及び官能化するビニルモノマーとしての両方に使用できることが理解される。好ましくは、親水性のビニルモノマーは、官能基(例えば、DMA、NVP)を含まない。
【0083】
別の好ましい実施態様において、本発明の中間体コポリマー製造用重合性組成物は、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有ビニルモノマーを含む。
【0084】
好ましいシリコーン含有ビニルモノマー(すなわち、エチレン性不飽和基1つだけを有するもの)の例は、非限定的に、3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、ビス(メタクリルオキシプロピル)テトラメチル−ジシロキサン、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、及びトリストリメチルシリルオキシシリルプロピルメタクリラート(TRIS)、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド(「TSMAA」)、N−[トリス(トリメチルシロキシ)−シリルプロピル]アクリルアミド(「TSAA」)、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン)、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリルオキシ−2−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、N−2−メタクリルオキシエチル−O−(メチル−ビス−トリメチルシロキシ−3−プロピル)シリルカルバマート、シリコーン含有ビニルカルボナート又はビニルカルバマートモノマー(例えば、1,3−ビス[4−ビニルオキシカルボニルオキシ)ブタ−1−イル]テトラメチル−ジシロキサン;3−(トリメチルシリル)プロピルビニルカルボナート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボナート、t−ブチルジメチルシロキシエチルビニルカルボナート;トリメチルシリルエチルビニルカルボナート、及びトリメチルシリルメチルビニルカルボナート)を包含する。
【0085】
中間体コポリマー調製のための重合性組成物は、溶融体か、すべての必要な成分が、好ましくは1つ以上の混合ビニルモノマー存在下で、一緒に混合されている無溶媒の液体か、又は、当業者に公知のように、すべての必要な成分が、溶媒、例えば水、有機溶媒、又はそれらの混合物に溶解している溶液である。
【0086】
有機溶媒の例は、非限定的に、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテルジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチルアセタート、ブチルアセタート、アミルアセタート、メチルラクタート、エチルラクタート、i−プロピルラクタート、メチレンクロリド、2−ブタノール、2−プロパノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール及びエキソノルボルネオール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール、t−ブタノール、t−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール、2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール及び3−エチル−3−ペンタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、t−アミルアルコール、イソプロパノール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリジノン、及びそれらの混合物を包含する。
【0087】
1つ以上の混合ビニルモノマーは、化学線重合性組成物の親水性の及び疎水性の両成分を溶解するのに十分な量である。「混合ビニルモノマー」は、化学線重合性組成物の親水性及び疎水性の成分両方を溶解する溶媒として、及び重合してシリコーンヒドロゲル材料を形成する重合性成分の1つとして、の両方として機能することができるビニルモノマーを意味する。好ましくは、混合ビニルモノマーは、化学線重合性組成物中約5%〜約30重量%の量で存在する。
【0088】
本発明の重合性組成物の親水性及び疎水性の成分両方を溶解し、溶液を形成することができる任意の適切なビニルモノマーを、本発明で使用することができる。混合ビニルモノマーの好ましい例は、非限定的に、芳香族ビニルモノマー、シクロアルキル含有ビニルモノマーを包含する。これらの好ましい混合モノマーは、これらの好ましい混合モノマーを含有する重合性組成物を硬化することにより調製したシリコーンヒドロゲル材料の主ガラス転移点を上昇させることができる。
【0089】
好ましい芳香族ビニルモノマーの例は、スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン(TMS)、t−ブチルスチレン(TBS)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、ベンジルメタクリラート、ジビニルベンゼン、及び2−ビニルナフタレンを包含する。これらのモノマーのうち、スチレン含有モノマーが好ましい。スチレン含有モノマーは、本明細書において、縮合環以外により、例えば、上記のように、1〜3つのC−Cアルキル基により置換され得るフェニル基に直接結合しているビニル基含有モノマーであると定義される。スチレン自体[HC=CH−C]は、特に好ましいスチレン含有モノマーである。
【0090】
シクロアルキル含有ビニルモノマーは、本明細書において、最大3つのC−Cアルキル基で置換され得るシクロアルキル含有ビニルモノマーであると定義される。好ましいシクロアルキル含有ビニルモノマーは、非限定的に、各々が、最大3つのC−Cアルキル基で置換され得る、シクロペンチルか、シクロヘキシルか、シクロヘプチルを含むアクリラート及びメタクリラートを包含する。好ましいシクロアルキル含有ビニルモノマーの例は、イソボルニルメタクリラート、イソボルニルアクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、シクロヘキシルアクリラート等を包含する。
【0091】
中間体コポリマー調製用重合性組成物における親水性モノマー、架橋剤及び連鎖移動剤の化学量は、広範囲から選択可能であり、使用目的に強く依存する。例えば、連鎖移動剤0.5〜5当量:モノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及びマクロマー(合わせて)1〜3当量:架橋剤(ポリシロキサン含有架橋剤及びシリコーン不含有架橋剤を含む)1当量:親水性モノマー5〜60当量のモル比が、生物医学的用途に使用可能であることが証明されている。好ましい範囲は、連鎖移動剤1〜3モル当量:モノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及びマクロマー(合わせて)1〜3当量:架橋剤(ポリシロキサン含有架橋剤及びシリコーン不含有架橋剤を含む)1当量:親水性モノマー10〜50モル当量である。
【0092】
得られるコポリマーの重量平均分子量は、例えば、使用する連鎖移動剤の量に強く依存し、好ましくは3000〜1000000、好ましくは5000〜500000、より好ましくは7000〜250000ダルトンである。
【0093】
中間体コポリマー調製用重合性組成物の共重合は、光化学的又は好ましくは熱的に誘発されてよい。適切な熱的重合開始剤は、当業者に公知であり、例えばペルオキシド、ヒドロペルオキシド、アゾ−ビス(アルキル−又はシクロアルキルニトリル)、ペルスルファート、ペルカルボナート又はそれらの混合物を包含する。例は、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ブチル−ジペルオキシフタラート、t−ブチルヒドロペルオキシド、アゾ−ビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、1,1−アゾジイソブチルアミジン、1,1’−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾ−ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等である。重合は、上記の溶媒中、高温、例えば25〜100℃及び好ましくは40〜80℃の温度で、好都合に実施される。反応時間は、広範囲に変化してよいが、好都合には、例えば、1〜24時間又は好ましくは2〜12時間である。重合反応に使用する成分及び溶媒を事前に脱気し、該共重合反応を、不活性雰囲気下、例えば、窒素又はアルゴン雰囲気下で実施するすることが有利である。共重合は、光学的に透明な明確なコポリマーを産生することができ、それらのコポリマーは、例えば抽出、沈殿、限外ろ過等の技術を用いて従来の方法で仕上げることができる。
【0094】
好ましい実施態様において、ダングリングポリシロキサン単位は、プレポリマーから製造されるレンズに、少なくとも約10%以上、好ましくは少なくとも約20%以上、さらにより好ましくは少なくとも約30%以上、最も好ましくは少なくとも約40%以上の係数における低減を付与するのに十分な量でプレポリマー中に存在する。
【0095】
別の好ましい実施態様において、ダングリングポリシロキサン単位は、プレポリマーから製造されるレンズに、少なくとも約20%以上、好ましくは少なくとも約40%以上、さらにより好ましくは少なくとも約60%以上のイオン透過性における増大を付与するのに十分な量でプレポリマー中に存在する。
【0096】
プレポリマー中のダングリングポリシロキサン単位の量は、全ポリシロキサン含有重合性成分の総重量パーセントを維持しながら、ペンダント基又は末端官能基を有する中間体コポリマーの調製のための重合性組成物における、1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマーの量を調整することにより、変化させることができる。
【0097】
好ましくは、本発明のプレポリマーは、:(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又はマクロマー由来のダングリングポリシロキサン単位約2〜約70重量%、好ましくは約5〜約40重量%;(2)1つ以上の親水性モノマー由来の親水性単位約10〜約70重量%、好ましくは約20〜60重量%;(3)ポリシロキサン含有架橋剤由来の架橋ポリシロキサン単位0〜約70重量%、好ましくは約1〜約60重量%、より好ましくは約5〜約50重量%;(4)シリコーン不含有架橋剤0〜約5重量%、より好ましくは0〜約2重量%;及び(5)1つ以上のシリコーン含有ビニルモノマー由来のシリコーン含有単位約0〜約35重量%、好ましくは約1〜約30重量%を含む。
【0098】
本発明によれば、中間体コポリマーのエチレン性官能化は、中間体コポリマーの官能基(例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル、イソシアナート、エポキシ基)にエチレン性不飽和基を共有結合することにより実施できる。カップリング剤(例えば、EDC、ジイソシアナート、又は二酸クロリド)の非存在下又は存在下で、中間体コポリマーのイソシアナート、アミン、ヒドロキシル、カルボキシ、又はエポキシ基と共反応性である、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、エポキシ、酸クロリド、イソシアナト基を有する任意のビニルモノマーを、中間体コポリマーのエチレン性官能化に使用することができる。このような、ビニルモノマーの例は、非限定的に、末端ヒドロキシ基との反応には、2−イソシアナトエチルメタクリラート、メタクリル無水物、3−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアナート、アクリロイルクロリド、又はメタクリロイルクロリド、グリシジルメタクリラート;末端アミン基との反応には、2−イソシアナトエチルメタクリラート、3−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアナート、メタクリル無水物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロイルクロリド、又はメタクリロイルクロリド;末端カルボキシ基との反応には、EDC存在下で、ビニルアミン、2−アミノエチルメタクリラート又は3−アミノプロピルメタクリルアミドを包含する。上記のリストは、網羅的ではなく説明的なものである。当業者であれば、中間体コポリマーのエチレン性官能化を行うためのビニルモノマーをどう選択すべきかが分かるはずである。
【0099】
本発明のプレポリマーは、好ましくはあらゆる親水性のビニルモノマーの非存在下で、高い酸素透過性(少なくとも40barrer、好ましくは少なくとも約60barrer、さらにより好ましくは少なくとも80barrersの見掛けの酸素透過性を特徴とする)及び好ましくは約1.5MPa以下、より好ましくは約1.2MPa以下、さらにより好ましくは約0.4MPa〜約1.0MPaの弾性率を有するシリコーンヒドロゲル又はコンタクトレンズを形成することができる。架橋されたポリシロキサン単位よりも高い割合のダングリングポリシロキサン単位を有することにより、本発明のプレポリマーを使用して、比較的高い酸素透過性を有する一方で比較的低い弾性率を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを調製することができる。
【0100】
シリコーンヒドロゲル材料又はコンタクトレンズは、好ましくは、(約1.5x10−6mm2/minより大きい、好ましくは約2.6x10−6mm2/minより大きい、より好ましくは約6.4x10−6mm2/minより大きいイオノフラックス拡散係数Dを特徴とする)高いイオン透過性を有する。シリコーンヒドロゲル材料又はコンタクトレンズは、十分水和された場合、好ましくは約18%〜約55重量%、より好ましくは約20%〜約38重量%の含水量を有する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの含水量は、米国特許第5,849,811号に開示されているバルク方式に従って測定することができる。
【0101】
好ましくは、本発明において使用されるプレポリマーは、例えば、アセトンのような有機溶媒での沈殿、ろ過及び洗浄、適切な溶媒中の抽出、透析又は限外ろ過(限外ろ過が特に好ましい)のようなそれ自体公知の方法で事前に精製する。このような精製プロセスによって、プレポリマーは、塩のような反応生成物、及び、例えば、非ポリマー構成要素のような出発材料を含まないか、又は少なくとも実質的に含まない純粋な形態、例えば濃縮溶液の形態で得ることができる。本発明によるプロセスで使用するプレポリマーの好ましい精製プロセスである限外ろ過は、それ自体公知の方法で実施することができる。限外ろ過を、繰り返し(例えば2〜10回)実施することが可能である。あるいは、限外ろ過は、選択した純度が達成されるまで、連続して実施することができる。選択純度は、原理上、望むだけ高くすることができる。純度の適切な尺度は、例えば、副産物として得られる溶解した塩の濃度であり、これは、公知の方法で容易に測定可能である。このように、重合後、装置は、その後の精製、例えば、費用がかかり複雑な、重合されなかったマトリックス形成材料の抽出を行う必要がない。さらに、プレポリマーの架橋は、溶媒の非存在下で又は水溶液中で行うことができるので、その後の溶媒の交換又は水和工程が必要でない。
【0102】
もう1つの局面において、本発明は、ソフトコンタクトレンズを提供する。本発明のソフトコンタクトレンズは、型内のレンズ形成材料を硬化させることによって得たシリコーンヒドロゲル材料を含み、レンズ形成材料は、化学線架橋性のプレポリマーを含み、ビニルモノマー及び分子量1500ダルトン未満の架橋剤を実質的に含まず、プレポリマーは、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマー由来であり、エチレン性不飽和基を含まないダングリングポリシロキサン単位;(2)1つ以上の親水性のビニルモノマー由来の親水性単位;(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤由来の架橋単位;(4)複数のエチレン性不飽和基;及び(5)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー由来の疎水性単位を含む。
【0103】
本発明によれば、レンズ形成材料は、組成物であり、溶液又は約20℃〜約85℃の温度の溶融体であることができる。好ましくは、レンズ形成材料は、水か、有機溶媒か、又は水と1つ以上の有機溶媒との混合物中の、本発明の少なくとも1つのプレポリマーと他の望ましい成分との溶液である。
【0104】
少なくとも1つのプレポリマーの溶液は、当業者に公知の任意の適切な溶媒中に、プレポリマー及び他の成分を溶解することにより調製できる。適切な溶媒の例は、上記のとおりである。
【0105】
上記の本発明のプレポリマーの様々な実施態様のすべてを、本発明のこの局面で使用することができる。
【0106】
レンズ形成材料は、場合により含むことも可能であるが、好ましくは、1つ以上のビニルモノマー及び/又は1つ以上の架橋剤(すなわち、2つ以上のエチレン性不飽和基及び分子量700ダルトン未満を有する化合物)を含まない。しかし、最終的な眼用装置が、許容されない濃度の未重合モノマー及び/又は架橋剤を含有しないように、これらの成分は低量でなくてはならない。許容されない濃度の未重合モノマー及び/又は架橋剤の存在は、それらを除去するための抽出を必要とし、これは高コストで非効率な追加の工程を必要とする。しかし、好ましくは、レンズ形成材料は、ビニルモノマー及び架橋剤を実質的に含まない(すなわち、好ましくは約2重量%以下、より好ましくは約1重量%以下、さらにより好ましくは約0.5重量%以下であるビニルモノマーと架橋剤との組み合わせ)。
【0107】
レンズ形成材料は、例えば、重合開始剤(例えば、光開始剤又は熱開始剤)、視認性のためのティント剤(例えば、染料、顔料、又はそれらの混合物)、UV遮断(吸収)剤、光増感剤、阻害剤、抗菌剤(例えば、好ましくは銀ナノ粒子又は安定化銀ナノ粒子)、生物活性剤、浸出性潤滑剤、充填剤等のような、当業者に公知の様々な成分も含むことができることが理解されるはずである。
【0108】
例えば、重合の分野においてこのような用途に周知の材料から選択された開始剤を、重合反応を促進するため及び/又は反応速度を高めるために、レンズ形成材料中に含んでよい。開始剤は、重合反応を開始させることのできる化学物質である。開始剤は、光開始剤又は熱開始剤であることができる。
【0109】
光開始剤は、光を使用することによって、ラジカル重合及び/又は架橋を開始することができる。適切な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びDarocur及びIrgacurタイプ、好ましくはDarocur 1173(登録商標)及びDarocur 2959(登録商標)である。ベンゾイルホスフィン開始剤の例は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−n−プロピルフェニルホスフィンオキシド;及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−n−ブチルフェニルホスフィンオキシドを包含する。例えば、マクロマーに組み込むことができるか、又は特定のモノマーとして使用できる反応性光開始剤もまた適切である。反応性光開始剤の例は、その全文が参照により本明細書に組み込まれるEP632329に開示されているそれらである。重合は、次に化学線照射、例えば光、特に適切な波長の紫外線により誘発することができる。スペクトル要件は、状況に応じて、適宜、適切な光開始剤を加えることにより制御することができる。
【0110】
適切な熱開始剤の例は、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、ベンゾイルペルオキシドのような過酸化物等を包含するが、これらに限定されない。好ましくは、熱開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
【0111】
好ましい顔料の例は、D&CブルーNo.6、D&CグリーンNo.6、D&CバイオレットNo.2、カルバゾールバイオレット、特定の銅錯体、特定の酸化クロム、種々の酸化鉄、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、二酸化チタン等のような、医療装置において許容され、FDAで認可されているあらゆる着色剤を包含する。本発明に使用してよい着色剤の一覧に関しては、Marmiom DM Handbook of U.S. Colorantsを参照されたい。より好ましい顔料の実施態様(C.I.は、カラーインデックス番号である)は、非限定的に、青色には、フタロシアニンブルー(顔料ブルー15:3、C.I.74160)、コバルトブルー(ピグメントブルー36、C.I.77343)、トナーシアンBG(Clariant)、パーマジェットブルーB2G(Clariant);緑色には、フタロシアニングリーン(ピグメントグリーン7、C.I.74260)及び三酸化二クロム;黄色、赤、褐色及び黒色には、様々な酸化鉄;PR122、PY154、バイオレットには、カルバゾールバイオレット;黒色には、モノリスブラックC−K(CIBA Specialty Chemicals)を包含する。
【0112】
ポリマーマトリックスに組み込まれる生物活性剤は、目の疾患を防ぐか、又は目の疾患の症状を緩和することができる任意の化合物である。生物活性剤は、薬剤、アミノ酸(例えば、タウリン、グリシン等)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、又はそれらの任意の組み合わせであることができる。本明細書において有用な薬剤の例は、レバミピド、ケトチフェン、オラプチジン、クロモグリコラート、シクロスポリン、ネドクロミル、レボカバスチン、ロドキサミド、ケトチフェン、又は医薬的に許容されるそれらの塩又はエステルを包含するが、これらに限定されない。生物活性剤の他の例は、2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)、α−ヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸及びクエン酸及びそれらの塩等)、リノール酸及びγ−リノール酸、並びにビタミン(例えば、B5、A、B6等)を包含する。
【0113】
浸出性潤滑剤の例は、ムチン様材料及び非架橋性の親水性ポリマー(すなわち、エチレン性不飽和基を含まない)を包含するが、これらに限定されない。ムチン様材料の例は、ポリグリコール酸、ポリラクチド、コラーゲン、ヒアルロン酸及びゼラチンを包含するが、これらに限定されない。
【0114】
如何なるエチレン性不飽和基も含まない任意の親水性のポリマー又はコポリマーを、浸出性潤滑剤として使用することができる。非架橋性の親水性ポリマーの好ましい例は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、ビニルラクタムのホモポリマー、1つ以上のビニルコモノマーの存在下又は非存在下の少なくとも1つのビニルラクタムのコポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドのホモポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドと1つ以上の親水性のビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド(すなわち、ポリエチレングリコール(PEG))、ポリオキシエチレン誘導体、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ2−エチルオキサゾリン、ヘパリンポリサッカライド、ポリサッカライド、及びそれらの混合物を包含するが、これらに限定されない。
【0115】
非架橋性の親水性ポリマーの分子量は、好ましくは約20,000〜約1,500,000ダルトン、より好ましくは約50,000〜1,200,000ダルトン、さらにより好ましくは100,000〜1,000,000ダルトンである。
【0116】
本発明によれば、レンズ形成材料は、任意の公知の方法による型で作られたキャビティの中に投入(分配)することができる。
【0117】
コンタクトレンズ製造用のレンズ型は、当業者に周知であり、例えば、キャスト成形又はスピンキャスティングで使用される。例えば、型(キャスト成形用)は、一般に、少なくとも2つの型セクション(又は部分)又は型半、すなわち第1及び第2の型半を含む。第1の型半は、第1の成形(又は、光学)面を画定し、第2の型半は、第2の成形(又は、光学)面を画定する。第1及び第2の型半は、レンズ形成キャビティが、第1の成形面及び第2の成形面の間に形成されるように互いを受けて構成されている。型半の成形面は、型のキャビティ形成面であり、レンズ形成材料と直接接触する。
【0118】
コンタクトレンズをキャスト成形するための型セクションの製造方法は、一般に当業者に周知である。本発明のプロセスは、如何なる特定の型成形方法にも限定されない。実際、本発明においては、任意の型成形方法を使用することができる。第1及び第2の型半は、射出成形又は旋盤加工(lathing)のような様々な技術で形成することができる。型半の適切な成形プロセスは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,444,711号(Schad);第4,460,534号(Boehmら);第5,843,346号(Morrill);及び第5,894,002号(Bonebergerら)に開示されている。
【0119】
当分野で型製造用として公知の材料はほぼすべて、眼用レンズ調製のための型製造用に使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、環状オレフィンコポリマー(例えば、Ticona GmbH of Frankfurt, Germany 及びSummit, New JerseyのTopas(登録商標)COC;Zeon Chemicals LP, Louisville, KY のZeonex(登録商標)及びZeonor(登録商標))のようなポリマー材料等を使用することができる。石英、ガラス、CaF、及びサファイアのような紫外線を透過させる他の材料を使用することができる。
【0120】
好ましい実施態様において、レンズ形成材料中の重合性成分が、実質的にプレポリマーからなる場合、再使用可能な型を使用することができる。石英又はガラス製の再使用可能な型の例は、その全文が参照により組み込まれる米国特許第6,627,124号に開示されている。この局面においては、レンズ形成材料が2つの型半からなる型に注入されるが、2つの型半は、互いに接触せず、それらの間に配された環状構造の細い隙間を有する。隙間は、型キャビティに繋がっているので、過剰のレンズ形成材料は、隙間に流れ込むことができる。1回のみ使用可能なポリプロピレン型の代わりに、再使用可能な石英、ガラス、サファイアの型を使用することができる。レンズの製造後に、これらの型は、水又は適切な溶媒を用いて、素早く洗浄し、未反応材料及び他の残留物を効果的に取り除くことができ、そして風乾させることができるためである。再使用可能な型は、また、例えば、Ticona GmbH of Frankfurt, Germany 及びSummit, New JerseyのTopas(登録商標)COC grade 8007-S10(エチレン及びノルボルネンの清澄な非晶質コポリマー)、Zeon Chemicals LP, Louisville, KYのZeonex(登録商標)及びZeonor(登録商標)のような、環状オレフィンコポリマーからなることもできる。型半が再使用可能であるため、極めて高い精度及び再現性を有する型を得るための製造時点で、比較的高い費用を支出することができる。型半は、レンズが製造される領域、すなわちキャビティ又は実際の型面において互いに接触しないので、接触による損傷がない。これが、型の高い耐用性を保証し、それが、特に、製造されるコンタクトレンズの高い再現性及びレンズ設計の高い正確さをも保証する。
【0121】
レンズ形成材料が型に分配されると、それが重合され、コンタクトレンズが製造される。架橋及び/又は重合は、UV照射、電離放射(例えば、ガンマ又はX線照射)のような化学線によって、型の中で開始することができる。本発明のプレポリマーが、レンズ形成材料中の重合性成分である場合、レンズ形成材料を含有する型を、空間的に制限された化学線に暴露し、プレポリマーを架橋することができる。
【0122】
本発明による架橋は、例えば、60分間以下、有利には、20分間以下、好ましくは10分間以下、最も好ましくは5分間以下、特に好ましくは1〜60秒及び特に最も好ましくは1〜30秒という極めて短時間に生じさせることができる。
【0123】
本発明によるコンタクトレンズは、従来技術に比べて、極めて簡単で効率的な方法で、本発明の1つ以上の放射線硬化性プレポリマーから製造できることである。これは、多くの要因に基づいている。1つには、出発材料が、安価に入手又は製造できることである。第2に、プレポリマーが、驚くべき安定性を有し、その結果、高度な精製を行うことができるという利点がある。特にレンズ硬化後の未重合成分の複雑な抽出のような、後工程での精製の必要性が事実上ない。さらに、所望の機械的及び物理的性質を有するコンタクトレンズを製造するための新規な重合方法が使用できる。最後に、光重合が短期間に行われるので、この視点からも、本発明によるコンタクトレンズ製造プロセスは、極めて経済的な方法で構成することができる。
【0124】
成形された物品を型から取り出すことができるように型を開くことは、それ自体公知の方法で行ってよい。
【0125】
成形コンタクトレンズが、本発明による既に精製されたプレポリマーから溶媒を含まずに製造された場合、成形されたレンズを取り出した後、抽出のようなその後の精製工程を行う必要は通常ない。これは、使用されたプレポリマーが、望ましくない低分子量の成分を一切含有しないためであり、その結果、架橋された生成物も、このような成分を含まないか、実質的に含まないので、その後の抽出を無しに済ますことができる。したがって、コンタクトレンズは、直接、通常の方法で、水和により、すぐ使用できるコンタクトレンズに変換することができる。水和の適切な実施態様は、当業者に公知であり、それにより、含水量の多様な、すぐに使用可能なコンタクトレンズが得られる。コンタクトレンズを、例えば、水、塩水溶液、特に1000ml中オスモル濃度約200〜450ミリオスモルの塩水溶液(単位:mOsm/ml)、好ましくは約250〜350mOsm/l及び特に約300mOsm/lの塩水溶液、又は水若しくは塩水溶液と、生理的に適合可能な極性有機溶媒、例えばグリセリン、との混合物中で膨張させる。水又は塩水溶液中での物品の膨張が好ましい。
【0126】
成形コンタクトレンズが、本発明による既に精製されたプレポリマーの水溶液から製造された場合、架橋された生成物も、問題となる不純物を一切含有しない。したがって、その後の抽出を実施する必要がない。架橋は、実質的に水溶液中で実施されるので、その後の水和をさらに行う必要はない。有利な実施態様によれば、抽出を行わなくても意図した用途に適切であることから、本プロセスで得られるコンタクトレンズは、したがって注目に値する。この文脈における意図された用途を理解するならば、コンタクトレンズをヒトの目に使用することができる。
【0127】
同様に、成形コンタクトレンズを、本発明による既に精製されたプレポリマーの溶媒溶液から製造する場合、その後の精製を行う必要はないが、水和プロセスの代わりに、溶媒を交換する必要がある。
【0128】
成形コンタクトレンズは、さらに、例えば、表面処理、殺菌等のような追加のプロセスに付すことができる。
【0129】
本発明のコンタクトレンズは、好ましくは少なくとも約40barrer、より好ましくは少なくとも約60barrer、さらにより好ましくは少なくとも約80barrerの酸素透過性;及び約1.5MPa以下、好ましくは約1.2MPa以下、より好ましくは約1.0MPa以下の弾性率を有する。本発明によれば、酸素透過性は、実施例に記載の手順による、見掛け(約100micron厚を有するサンプルを試験した際に直接測定)の酸素透過性である。
【0130】
本発明のコンタクトレンズは、さらに、好ましくは少なくとも約1.5×10−6mm/min、より好ましくは少なくとも約2.6×10−6mm/min、さらにより好ましくは少なくとも約6.4×10−6mm/minのイオノフラックス拡散係数Dを有することを特徴とするイオン透過性を有する。
【0131】
本発明のコンタクトレンズは、さらに、十分水和された場合、好ましくは約15重量%〜約55重量%、より好ましくは約20重量%〜約38重量%の含水量を有する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの含水量は、米国特許5,849,811号に開示されているバルク方式に従って測定することができる。
【0132】
上記プレポリマーの様々な実施態様のすべてを、本発明のこの局面において使用することができる。
【0133】
さらなる局面において、本発明は、ソフトコンタクトレンズの製造方法を提供する。本方法は、コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の型半と、コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の型半とを備え、該第1及び第2の型半が、該第1及び第2の成形面の間にキャビティが形成されるように互いに受けて構成される、ソフトコンタクトレンズ製造用型を提供する工程;1つ以上の化学線架橋性のプレポリマーを含み、ビニルモノマー及び/又は架橋剤を実質的に含まず、該1つ以上のプレポリマーの各々は、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマー由来であり、エチレン性不飽和基を含まないダングリングポリシロキサン単位、(2)1つ以上の親水性のビニルモノマー由来の親水性単位、(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤由来の架橋単位、(4)複数のエチレン性不飽和基、及び(5)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー由来の疎水性単位を含むレンズ形成材料をキャビティに投入する工程;及び型内の組成物を化学線照射して、該1つ以上の架橋性プレポリマーを架橋させてコンタクトレンズを形成する工程を含む。
【0134】
上記本発明のプレポリマー及びコンタクトレンズの様々な実施態様のすべてを、本発明のこの局面において使用することができる。
【0135】
前述の開示は、当業者が、本発明を実施することを可能にする。読者が、具体的実施態様およびそれらの利点をさらによく理解できるようにするために、以下の実施例を参照することを提言する。
【0136】
実施例1
酸素透過性の測定
レンズの酸素透過性及びレンズ材料の酸素透過度は、共に参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる米国特許第5,760,100号及びan article by Winterton et al.,(The Cornea: Transactions of the World Congress on the Cornea 111, H. D. Cavanagh Ed., Raven Press: New York 1988, pp273-280)に記載のものと同様の方法により測定される。Dk1000装置(Applied Design and Development Co., Norcross, GAから入手可)又は同様の分析機器を用いて、酸素フラックス(J)を、ウェットセル(すなわち、ガス流を相対湿度約100%に維持)中、34℃で測定した。既知の酸素百分率(例えば、21%)を有する空気流を、レンズの片面に約10〜20cm3/minの速度で通し、一方、窒素流をレンズの反対側に約10〜20cm3/minの速度で通した。サンプルを、測定に先立ち、試験媒体(すなわち、生理食塩水又は蒸留水)中、所定の試験温度で、少なくとも30分間、しかし45分間を超えない時間で平衡化させた。オーバーレイヤーとして用いる任意の試験媒体を、測定に先立ち、所定の試験温度で、少なくとも30分、しかし45分を超えない時間で平衡化させた。攪拌モーター速度は1200±50rpmに設定し、ステッピングモーターコントローラーで表示された設定400±15に対応させた。系を囲む大気圧P測定を測定した。試験用に暴露された領域のレンズの厚さ(t)は、MitotoyaマイクロメーターVL−50又は同様の機器で約10箇所測定し、測定値を平均することにより決定した。窒素流中の酸素濃度(すなわち、レンズを通って拡散する酸素)を、DK1000装置を用いて測定した。レンズ材料の見掛けの酸素透過性Dk見掛けを、次式より求めた。
Dk見掛け=Jt/(P酸素
(式中、J=酸素フラックス[マイクロリットルO2/cm2−分]
酸素=(P測定−P水蒸気)=(空気流中の%O2)[mmHg]=空気流中の酸素分圧
測定=気圧(mmHg)
水蒸気=34℃で0mmHg(ドライセル中)(mmHg)
水蒸気=34℃で40mmHg(ウェットセル中)(mmHg)
t=試験を受けた範囲のレンズの平均厚さ(mm)
ここでDk見掛けは、単位barrerで表される)
【0137】
材料の酸素透過度(Dk/t)は、酸素透過性(Dk見掛け)をレンズの平均厚さ(t)で割ることにより計算できる。
【0138】
イオン透過性の測定
レンズのイオン透過性は、(その全文が参照により本明細書に組み込まれる)米国特許第5,760,100号に記載されている手順に従って測定した。次の実施例で報告されるイオン透過の値は、基準材料としてのレンズ材料、Alsaconに関する相対イオノフラックス拡散係数(D/D基準)である。Alsaconのイオノフラックス拡散係数は、0.314×10-3mm2/分である。
【0139】
実施例2
開始溶液の調製
表1に示すとおり、所望量の開始剤をt−アミルアルコールに溶解することにより、開始溶液を調製した。得られた溶液を撹拌し、室温で2回、それぞれ50mbar未満で5分間脱気した。
【0140】
【表1】

【0141】
反応性溶液の調製
表2に示す様々な反応物を、真空及び窒素用装置を備えた500ml反応器に量り入れた。得られた溶液を撹拌し、4℃に冷まし、次に、窒素をバックフィル用に使用してそれぞれ5分間10回、1mbar未満で脱気した。
【0142】
【表2】

【0143】
プレポリマーの調製
上記で調製した反応性溶液の温度を68℃に急速に上げた。この温度で、酸素を系から排除するように注意しながら、開始溶液を注入した。この系を、温度が急速に室温に下がった時点で、5時間反応させた。
【0144】
冷却された反応溶液を、1−プロパノールですすぎながらPor 3フリットブフナー(Buchner)漏斗を介してろ過した。ろ過溶液に、ヒドロキシル−TEMPO 0.016gを加えた。溶液を45℃及び80〜100mbarでロトバップ(rotovap)し、アルコール類を3工程で除去した。その都度、除去したアルコールを、溶媒が〜5%未満で残るまで脱イオン水で置き換えた。このプロセスによって、エマルションが生じた。
【0145】
このエマルションの70%を、以下のアクリル化工程のために取った。エマルションを0℃まで冷やし、pHをNaOHで9.5に調整した。総量580μLのアクリロイルクロリド(純度96%)を、それぞれ290μLで2回加えた。溶液を、2NのHClを用いてpH7に中和した時点で少なくとも10℃に温めた。このエマルションをPor 3フリットブフナーを介してろ過した。次に、Millipore PLGC 10K再生セルロースカートリッジを用いて、透過物が3μS/cm未満の導電率を有するようになるまで限外ろ過した。それを限外ろ過装置上で、水中の固体が〜1%になるまで僅かに濃縮し、次に凍結乾燥させた。このプロセスで得た粉末をプレポリマーと呼ぶ。
【0146】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの調製
上記で調製したプレポリマーから、(全配合物に対して)65%のプレポリマーを0.16%のIrgacur 2959及び34.84%の1−プロパノールと混合することにより、レンズ配合物を調製した。溶解後、配合物をPP型に分配し、4mW/cm2のHamamatsu lamp下、それぞれ約44秒間(実施例2a)と約60秒間(実施例2b)硬化させた。
【0147】
得られたレンズを、室温で水を用いて型から脱型した。レンズは抽出しなかった。レンズを、リン酸緩衝生理食塩水中121℃で30分間オートクレーブした。レンズ特性を測定し、表3にまとめた。ポリシロキサン架橋剤約3.45%をモノメタクリラートPDMS(ダングリングポリシロキサンポリマー鎖を有するプレポリマー形成用)で置換することにより、得られたレンズが、係数において約44%
【数4】


の低減、IPにおいて約109%
【数5】


の増大、及び実質的に不変の酸素透過性(Dk)を有することが見出された。
【0148】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマー由来であり、エチレン性不飽和基を含まないダングリングポリシロキサン単位と;
(2)1つ以上の親水性のビニルモノマー由来の親水性単位と;
(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤由来の架橋単位と;
(4)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー由来の疎水性単位とを含むプレポリマーであって、
複数のエチレン性不飽和基を含み、1つ以上のモノマーの非存在下、化学線により架橋してシリコーンヒドロゲル材料を形成することができる、化学線架橋性のプレポリマー。
【請求項2】
ダングリングポリシロキサン単位が、係数における少なくとも約10%以上の低減及び/又はイオン透過性における少なくとも約20%以上の増大をシリコーンヒドロゲルレンズに付与するのに十分な量でプレポリマー中に存在する、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項3】
ダングリングポリシロキサン単位が、係数における少なくとも約30%以上の低減及び/又はイオン透過性における少なくとも約60%以上の増大をシリコーンヒドロゲルレンズに付与するのに十分な量でプレポリマー中に存在する、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項4】
プレポリマーが、ペンダント又は末端官能基及びダングリング親水性のポリマー鎖を有する中間体コポリマーから、化学線架橋性基をペンダント又は末端官能基を介して中間体コポリマーに共有結合することによって得られ、ペンダント又は末端官能基が、ヒドロキシ基、アミノ基(−NH)、カルボキシル基(−COOH)、エポキシ基、アルデヒド基(−CHO)、アミド基(−CONH)、酸ハライド基(−COX、X=Cl、Br、又はI)、イソチオシアナト基、イソシアナト基、ハライド基(−X、X=Cl、Br、又はI)、酸無水物基、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2記載のプレポリマー。
【請求項5】
中間体コポリマーが、化学線重合性組成物A又はBの共重合により得られ、
組成物Aは、成分:
(1)少なくとも1つのモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ポリシロキサン含有マクロマー、
(2)少なくとも1つの親水性のビニルモノマー、
(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤、及び
(4)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマーを含むが、但し、成分(2)〜(4)の少なくとも1つは、得られる中間体コポリマーにそれを介してエチレン性不飽和基が共有結合することができる少なくとも1つの官能基をさらに含み、
組成物Bは、成分:
(1)少なくとも1つのモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ポリシロキサン含有マクロマー、
(2)少なくとも1つの親水性のビニルモノマー、
(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤、
(4)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー、及び
(5)得られる中間体コポリマーにそれを介してエチレン性不飽和基が共有結合することができる官能基を有する少なくとも1つの連鎖移動剤を含む、請求項4記載のプレポリマー。
【請求項6】
少なくとも1つのモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ポリシロキサン含有マクロマーが、互いに独立して、
【化3】


[式中、Xは、−COO−、−CONR14−、−OCOO−、又は−OCONR14−(ここで、各R14は、独立して、H又はC−Cアルキルである)を表し;R11は、二価のC−C25アルキル又はC−C30アリール基を表し、−O−、−COO−、−CONR14−、−OCOO−又は−OCONR14−で中断されてよく、ヒドロキシ基、第1級、第2級もしくは第3級のアミン基、カルボキシ基、又はカルボン酸を含んでよく;R12は、一価のC−C25アルキル又はC−C30アリール基であり、−O−、−COO−、−CONR14−、−OCOO−又は−OCONR14−で中断されてよく、ヒドロキシ基、第1級、第2級もしくは第3級のアミン基、カルボキシ基、又はカルボン酸を含んでよく;R、R、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、C−C−アルキル、C−Cアルキル−又はC−C−アルコキシ置換フェニル、フルオロ(C−C18−アルキル)、シアノ(C−C12−アルキル)、ヒドロキシ−C−C−アルキル又はアミノ−C−C−アルキルであり;xは、0又は1の数であり、m及びpは、互いに独立して、5〜700の整数であり、(m+p)は、5〜700である]により定義される、請求項5記載のプレポリマー。
【請求項7】
少なくとも1つの親水性のビニルモノマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、トリメチルアンモニウム 2−ヒドロキシプロピルメタクリラート塩酸塩、アミノプロピルメタクリラート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリラート(DMAEMA)、グリセリンメタクリラート(GMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、N−(1,1ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、アクリル酸、重量平均分子量200〜1500を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メタクリル酸、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、N−ビニルカプロラクタム、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項6記載のプレポリマー。
【請求項8】
重合性組成物A又はBが、少なくとも1つのシリコーン含有ビニルモノマーをさらに含む、請求項7記載のプレポリマー。
【請求項9】
少なくとも1つのシリコーン含有ビニルモノマーが、3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、ビス(メタクリルオキシプロピル)テトラメチル−ジシロキサン、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリラート、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−メタクリルオキシ−2−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピルオキシ)プロピル−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、N−2−メタクリルオキシエチル−O−(メチル−ビス−トリメチルシロキシ−3−プロピル)シリルカルバマート、1,3−ビス[4−ビニルオキシカルボニルオキシ)ブタ−1−イル]テトラメチル−ジシロキサン、3−(トリメチルシリル)プロピルビニルカルボナート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボナート、t−ブチルジメチルシロキシエチルビニルカルボナート、トリメチルシリルエチルビニルカルボナート、トリメチルシリルメチルビニルカルボナート、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項6記載のプレポリマー。
【請求項10】
中間体コポリマーが、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又はマクロマー由来のダングリングポリシロキサン単位約2〜約70重量%;(2)1つ以上の親水性のモノマー由来の親水性単位約10〜約70重量%;(3)ポリシロキサン含有架橋剤由来の架橋ポリシロキサン単位0〜約70重量%;(4)シリコーン不含有架橋剤0〜約5重量%;及び(5)1つ以上のシリコーン含有ビニルモノマー由来のシリコーン含有単位約0〜約35重量%を含む、請求項8記載のプレポリマー。
【請求項11】
型内のレンズ形成材料を硬化させることによって得たシリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズであって、レンズ形成材料が、少なくとも1つの化学線架橋性のプレポリマーを含み、ビニルモノマー及び分子量1500ダルトン未満の架橋剤を実質的に含まず、プレポリマーが、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマー由来の、エチレン性不飽和基を含まないダングリングポリシロキサン単位;(2)1つ以上の親水性のビニルモノマー由来の親水性単位;(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤由来の架橋単位;(4)複数のエチレン性不飽和基;及び(5)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー由来の疎水性単位を含む、ソフトコンタクトレンズ。
【請求項12】
約1.2MPa以下の弾性率;少なくとも約40barrerの酸素透過性;少なくとも約1.5x10−6mm2/minのイオノフラックス拡散係数D;十分水和された場合、約15%〜約55%の含水量及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、少なくとも1つのレンズ特性を有する請求項11記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
少なくとも1つの化学線架橋性のプレポリマーが、有機溶媒での沈殿、ろ過及び洗浄、適切な溶媒中での抽出、透析又は限外ろ過により事前に精製される、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
ダングリングポリシロキサン単位が、係数における少なくとも約10%以上の低減及び/又はイオン透過性における少なくとも約20%以上の増大をシリコーンヒドロゲルレンズに付与するのに十分な量でプレポリマー中に存在する、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
中間体コポリマーが、化学線重合性組成物A又はBの共重合により得られ、
組成物Aは、成分:
(1)少なくとも1つのモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ポリシロキサン含有マクロマー、
(2)少なくとも1つの親水性のビニルモノマー、
(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤、及び
(4)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマーを含むが、但し、成分(2)〜(4)の少なくとも1つは、得られる中間体コポリマーにそれを介してエチレン性不飽和基が共有結合することができる少なくとも1つの官能基をさらに含み、
組成物Bは、成分:
(1)少なくとも1つのモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ポリシロキサン含有マクロマー、
(2)少なくとも1つの親水性のビニルモノマー、
(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤、
(4)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー、及び
(5)得られる中間体コポリマーにそれを介してエチレン性不飽和基が共有結合することができる官能基を有する少なくとも1つの連鎖移動剤を含む、請求項14記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
少なくとも1つのモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ポリシロキサン含有マクロマーが、互いに独立して、
【化4】


[式中、Xは、−COO−、−CONR14−、−OCOO−、又は−OCONR14−(ここで、各R14は、独立して、H又はC−Cアルキルである)を表し;R11は、二価のC−C25アルキル又はC−C30アリール基を表し、−O−、−COO−、−CONR14−、−OCOO−又は−OCONR14−で中断されてよく、ヒドロキシ基、第1級、第2級もしくは第3級のアミン基、カルボキシ基、又はカルボン酸を含んでよく;R12は、一価のC−C25アルキル又はC−C30アリール基であり、−O−、−COO−、−CONR14−、−OCOO−又は−OCONR14−で中断されてよく、ヒドロキシ基、第1級、第2級もしくは第3の級アミン基、カルボキシ基、又はカルボン酸を含んでよく;R、R、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、C−C−アルキル、C−Cアルキル−又はC−C−アルコキシ置換フェニル、フルオロ(C−C18−アルキル)、シアノ(C−C12−アルキル)、ヒドロキシ−C−C−アルキル又はアミノ−C−C−アルキルであり;xは、0又は1の数であり、m及びpは、互いに独立して、5〜700の整数であり、(m+p)は、5〜700である]により定義される、請求項15記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
少なくとも1つの親水性のビニルモノマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、トリメチルアンモニウム 2−ヒドロキシプロピルメタクリラート塩酸塩、アミノプロピルメタクリラート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリラート(DMAEMA)、グリセリンメタクリラート(GMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、アクリル酸、重量平均分子量200〜1500を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メタクリル酸、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、N−ビニルカプロラクタム、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
重合性組成物A又はBが、3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、ビス(メタクリルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリラート、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−メタクリルオキシ−2−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、N−2−メタクリルオキシエチル−O−(メチル−ビス−トリメチルシロキシ−3−プロピル)シリルカルバマート、1,3−ビス[4−ビニルオキシカルボニルオキシ)ブタ−1−イル]テトラメチル−ジシロキサン、3−(トリメチルシリル)プロピルビニルカルボナート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボナート、t−ブチルジメチルシロキシエチルビニルカルボナート、トリメチルシリルエチルビニルカルボナート、トリメチルシリルメチルビニルカルボナート、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのシリコーン含有ビニルモノマーをさらに含む、請求項17記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
中間体コポリマーが、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又はマクロマー由来のダングリングポリシロキサン単位約2〜約70重量%;(2)1つ以上の親水性のモノマー由来の親水性単位約10〜約70重量%;(3)ポリシロキサン含有架橋剤由来の架橋ポリシロキサン単位0〜約70重量%;(4)シリコーン不含有架橋剤0〜約5重量%;及び(5)1つ以上のシリコーン含有ビニルモノマー由来のシリコーン含有単位約0〜約35重量%を含む、請求項18記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
a)コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の型半と、コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の型半とを備え、該第1及び第2の型半が、該第1及び第2の成形面の間にキャビティが形成されるように互いに受けて構成されるソフトコンタクトレンズ製造用型を提供する工程;
b)1つ以上の化学線架橋性のプレポリマーを含み、ビニルモノマー及び/又は架橋剤を実質的に含まず、該1つ以上のプレポリマーの各々が、その分岐コポリマー鎖に、(1)1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有モノマー及び/又は1つ以上のモノエチレン性官能化ポリシロキサン含有マクロマー由来であり、エチレン性不飽和基を含まないダングリングポリシロキサン単位、(2)1つ以上の親水性のビニルモノマー由来の親水性単位、(3)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤及び/又は少なくとも1つのシリコーン不含有架橋剤由来の架橋単位、(4)複数のエチレン性不飽和基、及び(5)場合により、少なくとも1つの疎水性のビニルモノマー由来の疎水性単位を含むレンズ形成材料をキャビティに投入する工程;及びc)型内の組成物を化学線照射して、該1つ以上の架橋性プレポリマーを架橋させてコンタクトレンズを形成する工程、を含むソフトコンタクトレンズの製造方法。

【公表番号】特表2010−522265(P2010−522265A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554757(P2009−554757)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/057774
【国際公開番号】WO2008/116131
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】