説明

チェックバルブ

【課題】チェックバルブに関し、1つのバルブで3系統以上の入力圧に対応することができるようにする。
【解決手段】中心部空間RBと、中心部空間RBから外方に向けて等角度で放射状に形成された複数のシリンダ室RS1,RS2,RS3と、シリンダ室RS1,RS2,RS3の各外端部に設けられた流体入口ポート21,22,23と、中心部空間RBと連通し外部に開口する流体出口ポート24とを有するケーシング2と、中心部空間RBに収容されたボール3と、シリンダ室RS1,RS2,RS3に収容され受圧部11a,12a,13aを有するピストン11,12,13に加えて、連通隙間とシール部21a,22a,23aとをそなえ、ピストン11,12,13は何れもボール3を介在して互いに力を伝達可能であって、最大の流体圧を受圧部(例えば11a)に受けたピストン(例えば11)が他の全てのピストン(例えば12,13)を外方に付勢し、最大の流体圧が連通隙間を介して流体出口ポート24から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助制動装置が複数装備された車両のブレーキシステムの流体圧回路に好適に使用される、チェックバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、坂道発進補助装置やアンチスピンレギュレータ(ASR)や作業用補助制動装置(ロックブレーキ)や自動制動装置といった補助制動装置を多数装備する車両が増加している。
車両の制動装置は通常、圧縮エアや作動油等の作動流体の流体圧を利用して制動を実施するが、補助制動装置も装備されたブレーキシステムでは、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて制動するメインの制動装置の流体圧と各補助制動装置の流体圧とのうちの最も高い流体圧を制動に利用するように、流体圧回路を構成する必要がある。
【0003】
上記のような補助制動装置を2つ装備した車両において、ブレーキシステムのエア回路を構成する場合、例えば図7に示すように、ダブルチェックバルブ101が2個使用されている。ダブルチェックバルブ101は公知のバルブであって、図8に示すように、2系統の入力圧(エア圧)のうちの圧力が高いほうの入力ポート101aを開き、圧力が高いほうの入力圧を出力ポート101bへ出力するようになっている。
【0004】
図7に示すようなエア回路の構成によって、ブレーキペダル102の踏み込み量に応じてメインの制動装置のブレーキバルブ103が作動するとともに、各補助制動装置の制御用バルブ104,105が作動する場合、各制動装置の中の最も高いエア圧でホイールブレーキを作動させることが可能になっている。なお、図7において、符号106はエアタンクを示し、符号107はブレーキチャンバ又はブレーキブースタを示している。
【0005】
また、例えば特許文献1には、アンチスピンレギュレータ(ASR)を装備した車両のブレーキシステムのエア回路において、ダブルチェックバルブを使用した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−2236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように補助制動装置を複数装備する車両においては、ブレーキシステムのエア回路にダブルチェックバルブを複数個使用する必要があり、部品点数の増加や回路の煩雑化を招いている。
また、エア圧を利用したブレーキシステムに限らず、油圧を利用するブレーキシステムやブレーキシステム以外の流体圧回路においても、回路を簡素に構成することが望まれている。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みて案出されたもので、1つのバルブで3系統以上の入力圧に対応することができるようにした、チェックバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のチェックバルブは、中心部空間と、前記中心部空間から外方に向けて等角度で放射状に形成された少なくとも3つ以上の複数のシリンダ室と、前記複数のシリンダ室の各外端部にそれぞれ設けられ前記シリンダ室を外部に開口する流体入口ポートと、前記中心部空間と連通し外部に開口する流体出口ポートと、を有するケーシングと、前記中心部空間内に移動可能に収容されたボールと、前記複数のシリンダ室の各内部に移動可能に収容され、前記流体入口ポートに導入される流体圧を受ける受圧部を有するピストンと、をそなえると共に、前記シリンダ室と前記シリンダ室に収容された前記ピストンとの間に形成され、前記流体入口ポートと前記中心部空間とを連通する連通隙間と、前記流体入口ポートに形成され前記ピストンが外方に付勢された際に前記ピストンと密着して前記流体入口ポートを閉塞するシール部とをそなえ、前記複数のピストンは、何れも前記ボールを介在して互いに力を伝達可能であって、前記複数のピストンのうち前記受圧部に最大の流体圧を受けたピストンが前記ボールを介在して他の全てのピストンを外方に付勢し、前記最大の流体圧が前記連通隙間を介して前記流体出口ポートから出力されることを特徴としている。
【0010】
なお、前記連通隙間として、前記複数のピストンそれぞれの側面には、各ピストンの軸線方向に延びる溝が形成されていることが好ましい。また、前記複数のピストンそれぞれには、各ピストンの軸線方向の移動を案内するガイド部が形成されていることが好ましい。さらに、前記複数のシリンダ室として3つのシリンダ室をそなえるとともに、前記流体入口ポートと前記ピストンとをそれぞれ3つずつそなえていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチェックバルブによれば、1つのバルブで3系統以上の入力圧に対応することができる。したがって、例えば従来2個のダブルチェックバルブを必要とした3系統の入力がある流体圧回路において、1つのチェックバルブのみで対応することができる。その結果、従来の流体圧回路よりも配管やコネクタ類を削減することができ、部品点数削減,回路の簡素化,省スペース化,コスト低減,流体圧制御時の応答性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るチェックバルブを示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るチェックバルブを示す模式図であり、図1のA−A矢視断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るチェックバルブの寸法の制約を説明するための模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るチェックバルブの寸法の制約を説明するための模式図である。
【図5】(a),(b)ともに、本発明の一実施形態に係るチェックバルブの作動を説明するための模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るチェックバルブが介装されたブレーキシステムのエア回路を示す模式図である。
【図7】従来技術に係るダブルチェックバルブが介装されたブレーキシステムのエア回路を示す模式図である。
【図8】従来技術に係るダブルチェックバルブを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面により本発明のチェックバルブの実施の形態について説明する。
<構成>
図6に示すように、本実施形態のチェックバルブ1は、車両のブレーキシステムのエア回路(流体圧回路)に好適に使用されるものである。図6では、図7と同じ構成部材には同じ符号を付している。つまり、図6に示すエア回路は、3つのブレーキ系統があるエア回路であって、メインの制動装置のブレーキバルブ103から出力されるエア圧と、第1の補助制動装置の制御用バルブ104から出力されるエア圧と、第2の補助制動装置の制御用バルブ105から出力されるエア圧とが、各エア配管を通してチェックバルブ1の入力ポート(後述の入力ポート21,22,23)に入力され、各エア圧(後述の入力圧P1,P2,P3)のうちの最大の圧力が出力ポート(後述の出力ポート24)から出力されて、ブレーキチャンバ(又はブレーキブースタ)107に作用するように構成されている。
【0014】
チェックバルブ1は、図1に示すように、ケーシング2と、第1〜第3のピストン11,12,13と、ボール3とをそなえている。
ケーシング2は、正面視において、断面形状が略正三角形状に形成されている。より正確には、正三角形の各頂点が切り取られた略正三角形状に形成されている。また、ケーシング2は、ボール室(中心部空間)Rと、第1〜第3の3つのシリンダ室RS1,RS2,RS3と、第1〜第3の3つの入力ポート(流体入口ポート)21,22,23と、1つの出力ポート(流体出口ポート)24とを有している。
【0015】
ボール室Rは、ケーシング2の中心部に形成され、ボール3が移動可能に収容されるようになっている。
シリンダ室RS1,RS2,RS3は、ボール室Rの中心点から外方に向けて、等角度で放射状に形成されている。換言すれば、各シリンダ室RS1,RS2,RS3は、ボール室Rの中心点からケーシング2の各頂点(実際には頂点は切り取られているので、より正確に言うなら仮想頂点)へ向かって直線状に延びて形成されている。なお、ボール室Rの中心点はケーシング2の中心点と同一となっている。また、ここでは、円筒形状の各シリンダ室RS1,RS2,RS3の中心軸線と球状のボール室Rの中心点とはともに同一平面上に2次元的に配置されているが、3次元的に配置されるように構成されていても良い。ただし、2次元的に配置されたほうが、3次元的に配置された場合に比べて簡素に構成できて好ましい。
【0016】
各入力ポート21,22,23は、各シリンダ室RS1,RS2,RS3の外端部にそれぞれ設けられ、各シリンダ室RS1,RS2,RS3を外部(ケーシング外部)に開口するようになっている。換言すれば、各入力ポート21,22,23は、ケーシング2の各頂点に設けられ、シリンダ室RS1,RS2,RS3と外部とを連通するようになっている。また、入力ポート21,22,23は、シリンダ室RS1,RS2,RS3の軸線方向と同一方向に延びるように直線状に形成されている。
【0017】
出力ポート24は、ボール室Rと連通し、外部に開口するように設けられている。換言すれば、出力ポート24は、ボール室Rと外部とを連通するように直線状に形成されている。
第1〜第3のピストン11,12,13はそれぞれ、シリンダ室RS1,RS2,RS3の内部を移動可能に収容されている。また、各ピストン11,12,13は、受圧部11a,12a,13aと押圧面11b,12b,13bとを有している。
【0018】
各受圧部11a,12a,13aは、各ピストン11,12,13の外端部に設けられ、入力ポート21,22,23に導入されるエア圧(流体圧)P1,P2,P3を受ける受圧面を有している。そして、この受圧部11a,12a,13aに対向するように、入力ポート21,22,23にはシール部21a,22a,23aが形成されている。シール部21a,22a,23aは、環状の突起として形成されており、ピストン11,12,13が外方に付勢された際にピストン11,12,13の受圧部11a,12a,13aと密着して入力ポート21,22,23を閉塞することができるようになっている。
【0019】
各押圧面11b,12b,13bは、ボール室Rに面するように、すなわちボール室Rに収容されたボール3を押圧することができるように、各ピストン11,12,13の内端部に形成されている。押圧面11b,12b,13bは平面状に形成されていることが好ましいが、緩やかな曲面状に形成されていても良い。
また、図2に第1のピストン11を代表して図示するが、各ピストン11,12,13の側面には、エア溝(連通隙間)Cとガイド溝(ガイド部)Cとが凹状に形成されている。エア溝Cとガイド溝Cとはともに、各ピストン11,12,13の軸線方向に延びるように形成されている。
【0020】
エア溝Cは、各入力ポート21,22,23とボール室Rとを連通するエア通路として機能するようになっている。入力ポート21,22,23から導入されたエアは、エア溝Cを通ってボール室Rに入り、出力ポート24から外部に流出するようになっている。
ガイド溝Cは、ケーシング2の各シリンダ室RS1,RS2,RS3の内壁に凸状に形成されたガイド凸部2と嵌合して、各ピストン11,12,13を軸線方向にのみスムーズに移動させるガイド手段として機能している。
【0021】
本実施形態では、耐久性を考慮してピストン11,12,13を金属製としており、ピストン11,12,13の受圧部11a,12a,13aについては、シール性を確保するためにゴム等の弾性部材で形成している。ただし、ピストン11,12,13全体をゴム等の弾性部材で形成しても良い。この場合には、ピストン11,12,13が力を吸収しないように適宜の弾性率に設定される必要がある。
【0022】
ボール3は球状に形成されており、上述のように、ケーシング2のボール室Rに収容されている。なお、ボール3は完全な球状に限らず、例えば、ピストン11,12,13の押圧面11b,12b,13bが接触する部分が適宜に面取りされていても良い。
ボール3は、中立時にはボール室R内で自由に動ける状態となっている。一方、少なくとも何れか1つのピストン11,12,13の受圧部11a,12a,13aに入力圧P1,P2,P3が作用したときには、各ピストン11,12,13の押圧面11b,12b,13bに押圧され、拘束されるようになっている。このとき、3つのシリンダ室RS1,RS2,RS3がボール室Rから外方に向けて等角度で放射状に形成されているので、ボール3は、3つのシリンダ室RS1,RS2,RS3それぞれに収容された3つのピストン11,12,13によって均等な3方向から押圧される。
【0023】
3つのピストン11,12,13は、ボール3を介在して互いに力を伝達可能になっており、3つのピストン11,12,13のうち、受圧部11a,12a,13aに最大のエア圧P1(又はP2、又はP3)を受けたピストン11(又は12、又は13)が、ボール3を介在して残りのピストン12,13(又は、11,13、又は11,12)を外方に付勢するようになっている。
【0024】
ここで、ボール3の直径(以下、ボール径という)φと各ピストン11,12,13の直径(以下、ピストン径という)φとは、次の数式(1)の関係を満たしている。
φ>tan30°×φ …(1)
これは、図3に示すように、ボール径φがピストン径φに対して小さすぎて3つのピストン11,12,13同士が干渉してしまうことを防止するためである。
【0025】
また、ボール径φとピストン径φとピストン11,12,13のストローク量sとは、次の数式(2)の関係を満たしている。
φB>(2s+φ)×cos30°−φ×sin30° …(2)
これは、図4に示すように、ストローク量sがボール径φとピストン径φとに対して大きすぎてピストン11,12,13によるボール3の拘束ができなくなることを防止するため、換言すれば、ピストン11,12,13によるボールの拘束を維持して、ピストン11,12,13間の力の伝達を確実にするためである。
【0026】
なお、数式(1)及び(2)をそれぞれ数値化し、且つ、ピストン径φ又はストローク量sについての式に変形すると、次の数式(1′)及び(2′)のようになる。
φ<1.73φ …(1′)
s<0.08φ+0.29φ …(2′)
<作用・効果>
本発明の一実施形態に係るチェックバルブは上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
【0027】
各ピストン11,12,13は、受圧部11a,12a,13aに入力圧P1,P2,P3を受圧することにより、シリンダ室RS1,RS2,RS3内を軸線方向に移動するようになっている。
全ての入力圧P1,P2,P3がゼロである中立時には、各ピストン11,12,13は、シリンダ室RS1,RS2,RS3内で自由に移動可能な状態(フリー状態)にあり、ボール3も拘束されていない。
【0028】
そして、少なくとも何れか1つのピストン11,12,13の受圧部11a,12a,13aに入力圧P1,P2,P3が作用すると、3つのピストン11,12,13のうち、最大の圧力P1(又はP2、又はP3)を受圧部11a(又は12a、又は13a)に受けたピストン11(又は12、又は13)が内方(開放位置)に移動するとともに、ボール3を介在して他の2つのピストン11,12(又は11,13、又は11,12)を外方(閉鎖位置)へ移動させる。
【0029】
この結果、最大の圧力P1(又はP2、又はP3)が入力された入力ポート21(又は22、又は23)のみが、シール部21a(又は22a、又は23a)と受圧部11a(又は12a、又は13a)とが離隔することを通じて開放され、他の入力ポート21,22(又は21,23、又は21,22)は全て、シール部21a,22a(又は21a,23a、又は21a,22a)と受圧部11a,12a(又は11a,13a、又は11a,12a)とが密着することを通じて閉鎖されて、最大圧力P1(又はP2、又はP3)のエアが、入力ポート21(又は22、又は23)→エア溝C→ボール室R→出力ポート24の順に流通して、外部へ出力されるようになっている。つまり、チェックバルブ1は、第1〜第3の入力ポート21,22,23それぞれから入力された3つの入力圧P1,P2,P3のうちの最も高い圧力P1(又はP2、又はP3)を出力ポート24へ出力することができるようになっている。
【0030】
図5(a)に、全ての入力圧P1,P2,P3がゼロの状態(2点鎖線で示す状態)から、入力圧P1,P2,P3が「入力圧P1>入力圧P2,P3」の大きさで生じた場合のチェックバルブ1の作動を示す。
入力圧P1によって、第1のピストン11がボール3を介在して他のピストン12,13を付勢して閉鎖位置へ移動させるため、第1の入力ポート21のみが開き、第2及び第3の入力ポート22,23は閉じる。その結果、入力圧P1が出力圧として出力ポート24へ出力されるとともに、他の2つの入力側系統へ入力圧P1が流出するのを防止することができる。
【0031】
続いて、この図5(a)の状態から「入力圧P2>入力圧P1,P3」の状態へ移行した場合の作動を図5(b)に示す。
入力圧P1,P2により、第1のピストン11と第2のピストン12とからボール3に加わる力の関係が逆転し、第2のピストン12からの力が最大となるため、第2の入力ポート22が開き、第1の入力ポート21は閉じる。なお、第3の入力ポート23は閉じたままである。その結果、入力圧P2が出力圧として出力ポート24へ出力されるとともに、他の2つの入力側系統へ入力圧P2が流出するのを防止することができる。
【0032】
このようなチェックバルブ1であれば、1つのバルブで3系統の入力圧に対応することができ、したがって、従来2個のダブルチェックバルブを必要とした3系統の入力がある回路において、図6に示すように、1つのチェックバルブ1のみで対応することができる。そして、従来の流体圧回路よりも配管やコネクタ類を削減することができ、部品点数削減,回路の簡素化,省スペース化,コスト低減,流体圧制御時の応答性向上を図ることができる。
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態では、各入力ポート21,22,23とボール室Rとの間でエアを流通させる手段として各ピストン11,12,13の側面にエア溝Cが形成されているが、構成はこれに限定されず、少なくとも、入力ポート21,22,23とボール室Rとを連通する連通隙間が、シリンダ室RS1,RS2,RS3とシリンダ室RS1,RS2,RS3に収容されたピストン11,12,13との間に形成されていれば良い。
【0034】
また、上記実施形態では、ピストン11,12,13の側面に凹状に形成されたガイド溝Cとシリンダ室RS1,RS2,RS3の内壁に凸状に形成されたガイド凸部2とによって、各ピストン11,12,13の軸線方向の移動を案内するガイド手段が形成されているが、ガイド手段の構成はこれに限定されない。例えば、ピストン11,12,13の内部に軸線方向に延びるガイド孔(ガイド部)を穿設するとともに、シリンダ室RS1,RS2,RS3に軸線方向に延びるガイド棒を取り付けて、ガイド棒がガイド孔内を移動することにより、各ピストン11,12,13の軸線方向の移動を案内するようにしても良い。
【0035】
また、上記実施形態では、チェックバルブ1を3系統の入力圧が均等な方向から作用するトリプルチェックバルブとして説明したが、4系統の入力圧が立体的に均等な方向から作用するようなテトラチェックバルブとしても良い。
つまり、ケーシングを、正四面体形状に形成する。そして、上記実施形態と同様に、ケーシングが、ボールが移動可能に収容されるボール室と、ボール室から外方に向けて等角度で放射状に形成された4つのシリンダ室と、それらシリンダ室の各外端部にそれぞれ設けられシリンダ室を外部に開口する入力ポートと、ボール室と連通し外部に開口する出力ポートとを有するように形成する。
【0036】
また、4つのシリンダ室の各内部にピストンを移動可能に収容し、そのピストンを、入力ポートに導入される流体圧を受ける受圧部を有するように形成するとともに、シリンダ室とシリンダ室に収容されたピストンとの間に、入力ポートとボール室とを連通する連通隙間を形成する。さらに、ピストンが外方に付勢された際にピストンと密着して入力ポートを閉塞するシール部を入力ポートに形成する。
【0037】
そして、4つのピストンが何れもボールを介在して互いに力を伝達可能であって、4つのピストンのうち受圧部に最大の流体圧を受けたピストンがボールを介在して他の全てのピストンを外方に付勢するようにしても良い。
このように、正三角形状や正四面体形状のケーシングの各頂点に対応する位置に入力ポートを設け、入力ポートの軸線方向にピストンを配置するとともに中心部にボールを配置し、入力圧を受けて複数のピストンがボールを介在して相互に力を伝達して移動し、各入力ポートを開閉する構造とすれば、3系統以上の入力圧に適切に対応することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、チェックバルブ1は車両のブレーキシステムのエア回路に使用され、チェックバルブ1にはエアが流通するものとして説明したが、エアの替わりに油圧が流通するようにしても良い。また、チェックバルブ1は車両のブレーキシステムの回路に使用されると説明したが、車両のブレーキシステムの回路以外の流体圧回路に使用しても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 チェックバルブ
2 ケーシング
ガイド凸部(ガイド手段)
3 ボール
11,12,13 ピストン
11a,12a,13a 受圧部
11b,12b,13b 押圧面
21,22,23 入力ポート(流体入口ポート)
21a,22a,23a シール部
24 出力ポート(流体出口ポート)
エア溝(連通隙間)
ガイド溝(ガイド部;ガイド手段)
P1,P2,P3 入力圧(流体圧)
ボール室(中心部空間)
S1,RS2,RS3 シリンダ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部空間と、前記中心部空間から外方に向けて等角度で放射状に形成された少なくとも3つ以上の複数のシリンダ室と、前記複数のシリンダ室の各外端部にそれぞれ設けられ前記シリンダ室を外部に開口する流体入口ポートと、前記中心部空間と連通し外部に開口する流体出口ポートと、を有するケーシングと、
前記中心部空間内に移動可能に収容されたボールと、
前記複数のシリンダ室の各内部に移動可能に収容され、前記流体入口ポートに導入される流体圧を受ける受圧部を有するピストンと、をそなえると共に、
前記シリンダ室と前記シリンダ室に収容された前記ピストンとの間に形成され、前記流体入口ポートと前記中心部空間とを連通する連通隙間と、
前記流体入口ポートに形成され前記ピストンが外方に付勢された際に前記ピストンと密着して前記流体入口ポートを閉塞するシール部とをそなえ、
前記複数のピストンは、何れも前記ボールを介在して互いに力を伝達可能であって、前記複数のピストンのうち前記受圧部に最大の流体圧を受けたピストンが前記ボールを介在して他の全てのピストンを外方に付勢し、前記最大の流体圧が前記連通隙間を介して前記流体出口ポートから出力される
ことを特徴とする、チェックバルブ。
【請求項2】
前記連通隙間として、前記複数のピストンそれぞれの側面には、各ピストンの軸線方向に延びる溝が形成されている
ことを特徴とする、請求項1記載のチェックバルブ。
【請求項3】
前記複数のピストンそれぞれには、各ピストンの軸線方向の移動を案内するガイド部が形成されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のチェックバルブ。
【請求項4】
前記複数のシリンダ室として3つのシリンダ室をそなえるとともに、前記流体入口ポートと前記ピストンとをそれぞれ3つずつそなえている
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のチェックバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−112141(P2011−112141A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268628(P2009−268628)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】