説明

チェック弁、液圧制御装置、車両用ブレーキ液圧制御装置およびチェック弁の製造方法

【課題】部品点数を最小限とすることができ、組立時の作業性に優れたチェック弁、液圧制御装置、車両用ブレーキ液圧制御装置およびチェック弁の製造方法を提供する。
【解決手段】チェック弁Cのスプリング34は、一端側34aが小径とされ、他端側34bが大径とされた略円錐状のコイルスプリングであり、ばね受け部36は、スプリング34の一端側34aよりも大径で、かつ、他端側34bよりも小径の開口部36bと、開口部36bの開口縁に設けられ、スプリング34の他端側34bが当接される受け部36aと、を有しており、弁座部35とばね受け部36とは、一枚のシート状部材にプレス加工を施して形成したプレス成形品に設けられている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェック弁、液圧制御装置、車両用ブレーキ液圧制御装置およびチェック弁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液圧制御装置としての車両用ブレーキ液圧制御装置には、一方向へ流体の流れを許容して逆方向への流れを阻止するチェック弁が液圧回路中に用いられている。このようなチェック弁では、一般的に、ボール状の弁体と、弁座部材と、ばね受けと、スプリングとで構成されたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−314719号公報
【特許文献2】特開2006−322521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたチェック弁は、弁座部材とばね受けとが別体で構成されていることから、部品点数の増加につながってしまうという問題があった。
また、弁座部材とばね受けとの組み付けは、かしめ等の別工程によって行う必要があるため、組立時の作業性があまりよくないという問題があった。
【0005】
このような観点から、本発明は、部品点数を最小限とすることができ、組立時の作業性に優れたチェック弁、液圧制御装置、車両用ブレーキ液圧制御装置およびチェック弁の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために創案された本発明のチェック弁は、弁室の一端側に設けられた弁座部と、前記弁座部に着座する弁体と、一端側が前記弁体に当接し、前記弁座部へ向けて前記弁体を付勢するスプリングと、前記弁室の他端側に設けられ、前記スプリングの他端側を受けるばね受け部と、を備えたチェック弁であって、前記スプリングは、一端側が小径とされ、他端側が大径とされた略円錐状のコイルスプリングであり、前記ばね受け部は、前記スプリングの一端側よりも大径で、かつ、他端側よりも小径の開口部と、前記開口部の開口縁に設けられ、前記スプリングの他端側が当接される受け部と、を有しており、前記弁座部と前記ばね受け部とは、一枚のシート状部材にプレス加工を施して形成したプレス成形品に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明のチェック弁によると、弁座部とばね受け部とを別部材で構成することなく、これらが、一枚のシート状部材からなるプレス成形品に一体的に設けられているので、部品点数を最小限とすることができ、部品点数の減少によるコストダウンおよび組立時の作業性の向上を図ることができる。
また、スプリングは、略円錐状のコイルスプリングであり、ばね受け部は、スプリングの一端側よりも大径で、かつ、他端側よりも小径の開口部と、開口部の開口縁に設けられ、スプリングの他端側が当接される受け部と、を有している。このように構成すると、ばね受け部の開口部にスプリングの一端側を挿入した後、スプリングを回転させることにより、スプリングの全体を挿入することができる。そして、挿入後は、スプリングの他端がプレス成形品のばね受け部に内側から当接するようになる。
したがって、スプリングの組付作業が簡単であり、組立時の作業性の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明のチェック弁は、前記スプリングのピッチが、前記シート状部材の厚さよりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0009】
このチェック弁によると、スプリングを回転させることによりスプリングを挿入する際の組み付けをスムーズに行うことができ、スプリングのセットが容易となる。
【0010】
また、本発明のチェック弁は、前記スプリングの他端側の終端部が、当該スプリングの径方向に向けて延設されていることを特徴とする。
【0011】
このチェック弁によると、ばね受け部の開口からスプリングを挿入する際に、スプリングを回転操作するための回転治具等をスプリングの他端側の終端部に装着することができ、組立時の作業性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の液圧制御装置は、チェック弁を流路内に備えてなる液圧制御装置であって、前記弁座部よりも他端側における前記プレス成形品の最大径部分が、前記流路内に圧接されて固定されることを特徴とする。
【0013】
この液圧制御装置によると、弁座部よりも他端側におけるプレス成形品の最大径部分が、流路内に圧接されて固定されるので、圧接によって弁座部に影響を与えることなく、流路内の固定箇所においてシール性を有しつつチェック弁を良好に固定することができる。
【0014】
また、本発明の車両用ブレーキ液圧制御装置は、チェック弁を流路内に備えてなる車両用ブレーキ液圧制御装置であって、ブレーキ液を吸引および吐出するポンプを備え、前記ポンプの吸入弁および吐出弁が前記チェック弁で構成されていることを特徴とする。
【0015】
この車両用ブレーキ液圧制御装置によると、ポンプの吸入弁および吐出弁が前記チェック弁で構成されているので、ポンプの部品点数を最小限とすることができ、部品点数の減少によるコストダウンおよびポンプの組立時の作業性の向上を図ることができる。このことは、車両用ブレーキ液圧制御装置のコストダウンおよび組立時の作業性の向上に寄与する。
【0016】
また、本発明のチェック弁の製造方法は、一枚のシート状部材にプレス加工を施し、円筒状のプレス成形品を形成する工程と、前記プレス成形品の一端側の開口を塞ぐように前記プレス成形品の内部に弁体を挿入する工程と、略円錐状のコイルスプリングの小径側を前記プレス成形品の他端側の開口部から前記プレス成形品内に挿入し、当該コイルスプリングを回転させて前記プレス成形品の内側に挿入する工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
このチェック弁の製造方法によると、一枚のシート状部材にプレス加工を施して円筒状のプレス成形品を形成し、その一端側の開口を塞ぐようにプレス成形品の内部に弁体を挿入し、プレス成形品の他端側の開口部からコイルスプリングをプレス成形品内に挿入し、コイルスプリングを回転させて前記プレス成形品の内側に挿入することで、チェック弁を製造することができる。
したがって、部品点数を最小限とすることができ、部品点数の減少によるコストダウンおよび組立時の作業性の向上を図ることができる。
また、スプリングの組付作業が簡単であり、組立時の作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、部品点数を最小限とすることができ、組立時の作業性に優れたチェック弁、液圧制御装置、車両用ブレーキ液圧制御装置およびチェック弁の製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るチェック弁が備わる液圧制御装置としての車両用ブレーキ液圧制御装置の要部を示した側断面図である。
【図2】チェック弁の配置されるポンプ周りの構造を示した側断面図である。
【図3】(a)はチェック弁の分解斜視図、(b)はチェック弁の斜視図である。
【図4】(a)はスプリング装着前の平面図、(b)はスプリング装着前の側断面図、(c)はスプリング装着途中の側断面図、(d)はスプリング装着後の平面図、(e)はスプリング装着後の側断面図である。
【図5】(a)〜(c)はチェック弁の組み付け手順を示す側断面図である。
【図6】(a)〜(c)は回転治具を用いたスプリングの装着の様子を示す説明図である。
【図7】チェック弁の変形例を示す説明図であり、(a)は弁体装着前の側断面図、(b)はスプリング装着前の側断面図、(c)はスプリング装着途中の側断面図、(d)はスプリング装着後の平面図、(e)はスプリング装着後の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態においては、液圧制御装置としての車両用ブレーキ液圧制御装置に用いられるチェック弁を例示するが、本発明に係るチェック弁の用途をこれに限定する趣旨ではない。
【0021】
本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」という。)は、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)、自動四輪車などの車両に好適に用いられるものであり、アンチロック制御やトラクション制御等、車両の車輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するものである。
【0022】
図1に示すように、ブレーキ制御装置は、チェック弁Cを含むポンプP、図示しない電磁弁等が装着された基体10と、電動モータ11と、電磁弁の開閉や電動モータ11の作動を制御する図示しない制御ユニットが収容されたコントロールハウジング12と、を主に備えている。
【0023】
基体10は、略直方体に形成される金属部品である。基体10の内部には、流体であるブレーキ液の流路(油路、一部図示)が形成されている。
基体10の各面には、図示せぬマスタシリンダからの管材が接続される入口ポート10aや図示せぬ車輪ブレーキに至る管材が接続される四つの出口ポート10b(一つのみ図示)のほか、図示しない電磁弁や圧力センサといった電子機器が装着される穴(孔、省略)が形成されている。また、ポンプPが装着されるポンプ穴(孔)10cや、リザーバ13として機能する各種部品が装着されるリザーバ穴(孔)10dが形成されている。なお、各穴同士は、直接に、あるいは基体10の内部に形成された図示せぬ流路を介して互いに連通している。
【0024】
また、チェック弁Cは、ポンプPを構成する吸入弁および吐出弁として備わり、リザーバ孔10dに連通している吸入路R1、および吐出路R2(図2参照)にそれぞれ配置されている。なお、リザーバ孔10dは、本実施形態では基体10の下面に開口形成されている。
【0025】
リザーバ孔10dは、ブレーキ液を一時的に貯溜する機能を備えた有底円筒状の孔である。リザーバ孔10dには、リザーバ13が収容される。リザーバ13は、リザーバ孔10dに装着される略有底円筒状のリザーバピストン13aと、このリザーバピストン13aをリザーバ孔10dの底面側(上側)に付勢するリザーバばね13bと、リザーバ孔10dの開口部を塞ぐ略有底円筒状ばね受け部材13cとを主として備えて構成される。
【0026】
リザーバピストン13aは、その外周面がリザーバ孔10dの内周面に沿って摺動自在となっており、流入路R3(図1参照)を通じてブレーキ液が流入したときに、ばね受け部材13c側に移動してこのブレーキ液を貯溜する。
【0027】
リザーバ孔10dは、図2に示すように、チェック弁Cが装着される吸入路R1を通じてポンプ孔10cと連通している。ここで、吸入路R1は、リザーバ孔10dからポンプ孔10cに向けて段状に順次縮径する段付円筒状の貫通孔である。吸入路R1は、リザーバ孔10dの底面に開口する大径部14aと、この大径部14aよりも小径とされた小径部14bとを備えている。小径部14bは、大径部14aよりもポンプ孔10c側に位置している。大径部14aと小径部14bとの間には、テーパ状の段差部14cが形成されている。
【0028】
吸入路R1に装着されるチェック弁Cは、リザーバ孔10dからポンプ孔10cへのブレーキ液の流入のみを許容するように機能する。チェック弁Cの詳細は後記する。
【0029】
ポンプPは、プランジャポンプであり、前記した2つのチェック弁Cを含む他、ポンプ孔10c内に摺動自在に装着されるプランジャ21と、プランジャ21に外嵌されたシール部材22と、ポンプ孔10cの開口部23を封止する蓋部材24と、プランジャ21を軸受穴10e側に向けて押圧するコイルばね25と、を備えている。
このポンプPは、ポンプ孔10c内でプランジャ21が往復動することにより、吸入路R1からポンプ孔10cのポンプ室10c1に吸入されたブレーキ液を吐出路R2からチェック弁Cを通じて吐出するように構成されている。
【0030】
ポンプ孔10cは、基体10の側面10fから軸受穴10eに向けて貫通形成された円形断面の横孔である。プランジャ21には、樹脂製のバックアップリング21aが組み付けられている。シール部材22の側方には、ポンプ孔10cの内方へ突出する抜け止め部21bが形成されている。この抜け止め部21bは、シール部材22の脱落を防止する。
【0031】
プランジャ21は、ポンプ孔10c内に挿入される円形断面の金属部品である。プランジャ21の先端21cは、軸受穴10eに突出し、プランジャ21の後端21dは、ポンプ室10c1に位置している。先端21cは、偏心カム11aのカム面11bに当接している。偏心カム11aは、電動モータ11(図1参照)の出力軸の軸回りに偏心して回転するため、出力軸を回転させたときには、プランジャ21はカム面11bに押されてポンプ室10c1側に向けて移動する。
プランジャ21の後端21dには、コイルばね25の先端部25aを受ける、有底円筒状の受け部材27が装着されている。
【0032】
コイルばね25の先端部25aは、受け部材27に当接し、コイルばね25の後端部25bは、蓋部材24の内面に当接している。すなわちコイルばね25は、蓋部材24と受け部材27と間に圧縮状態で配置されている。これにより、プランジャ21が偏心カム11aに押圧される状態が維持されている。
【0033】
蓋部材24は、外周面が段付きの有底円筒状を呈しており、ポンプ孔10cの開口23からポンプ孔10cに挿入されている。蓋部材24の外周には、ポンプ孔10cの内面に弾発的に接触するOリング24aが装着されている。開口23には、内周溝24cが形成されており、この内周溝24cには、止め輪24bが装着されている。止め輪24bは、蓋部材24に係合し、蓋部材24のポンプ孔10cからの離脱を阻止する。
蓋部材24の底部24dには、コイルばね25の後端部25bが当接する。
【0034】
ポンプ室10c1に連通する吐出路R2は、円筒状の貫通孔であり、ポンプ室10c1に近い小径部15bと、この小径部15bよりも大径とされた大径部15aとを備えている。小径部15bと大径部15aとの間には、テーパ状の段差部15cが形成されている。
【0035】
吐出路R2に装着されるチェック弁Cは、ポンプ室10c1からのブレーキ液の流出のみを許容するように機能する。
【0036】
吐出路R2の装着されるチェック弁Cと、吸入路R1に装着されるチェック弁Cとは、同様のものを用いているので、ここでは、主として吐出路R2に装着されるチェック弁Cについて説明する。
チェック弁Cは、内部に弁室31が形成されたケーシング32と、ケーシング32内に配置される弁体33およびスプリング34と、を備えて構成されている。ケーシング32は、円筒状を呈しており、胴部32aと、胴部32aの一端側(図2では下部側)に連続して設けられた弁座部35と、胴部32aの他端側(図2では上部側)に連続して設けられたばね受け部36と、を備えている。
このようなケーシング32は、一枚の金属製シート状部材(板材)に板金加工の一つであるプレス加工を施すことで形成されたプレス成形品である。つまり、胴部32a、弁座部35およびばね受け部36は、プレス加工によって一体的に形成された一つの部品からなる。
【0037】
弁座部35は、胴部32aの一端側(下部側)に連続して設けられており、下方へ向けて漏斗状に窄まる内側斜面35aを備えてなる。弁座部35の内側斜面35aには、球状の弁体33が着座するようになっている。
弁座部35の外周面(周囲となる部位)は、吐出路R2の段差部15cに当接するようになっている。
また、弁座部35の他端側(弁座部35の最大径部分)に連続している胴部32aは、ケーシング32の中で最も外径の大きい部分である。胴部32aは、吐出路R2の大径部15aに圧入され、これによって、チェック弁Cが吐出路R2に固定されるようになっている。
【0038】
なお、吸入路R1に配置されるチェック弁Cにおいても、胴部32aが吸入路R1の大径部14aに圧入されることで、チェック弁Cが吸入路R1に固定されるようになっている。
【0039】
ばね受け部36は、胴部32aの他端側に連続して設けられている。ばね受け部36は、胴部32aの他端側を内側に折り返すようにして形成される。
ばね受け部36は、開口部36bと、受け部36aとを備える。開口部36bは、スプリング34の一端側34aよりも大径で、かつ、他端側34bよりも小径とされている。
受け部36aは、開口部36bの開口縁となる部分であり、スプリング34の他端側34bが当接可能な大きさを備えている。
【0040】
ばね受け部36の厚さL2は、図4(b)に示すように、スプリング34のピッチL1よりも小さくなっている。つまり、ケーシング32を形成しているシート状部材の厚みL2よりも、スプリング34のピッチL1が大きく設定されている。
【0041】
弁体33は、球状を呈しており、ケーシング32の弁座部35の内側斜面35aに対して着座可能に設けられている。本実施形態の弁体33は、図4(b)に示すように、ばね受け部36の開口部36bの内径D1よりも小さい外径D(直径D)を有するものを用いている。
【0042】
スプリング34は、一端側34aが小径とされ、他端側34bが一端側34aよりも大径とされている。すなわち、スプリング34は、略円錐状のコイルスプリングである(図3(a)参照)。
スプリング34は、図3(b)、図4(e)に示すように、ケーシング32内に圧縮された状態で配設されており、一端側34aが弁体33に当接し、他端側34bがばね受け部36の受け部36aに当接する。すなわち、スプリング34は、弁座部35の内側斜面35aへ向けて弁体33を付勢する。
スプリング34の他端側34bの終端部34cは、図4(a)に示すように、スプリング34の径方向に向けて延設されている。終端部34cの長さL3は、図4(b)に示すように、ばね受け部36の開口部36bの内径D1よりも小さく設定されている。スプリング34の組み付け(装着)の詳細は後記する。
【0043】
このような構成よりなるチェック弁Cは、次のように機能する。すなわち、吸入路R1において、チェック弁Cは、吸入路R1の上流側(リザーバ13側)のブレーキ液圧から下流側(ポンプ孔10c側)のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、開弁圧(スプリング34の付勢力)以上になったときに、スプリング34の付勢力に抗して、弁体33が弁座部35の内側斜面35aから離座して開弁する。
また、吐出路R2において、チェック弁Cは、吐出路R2の上流側(小径部15b側、ポンプ孔10c側)のブレーキ液圧から下流側(大径部15a側)のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、開弁圧(スプリング34の付勢力)以上になったときに、スプリング34の付勢力に抗して、弁体33が弁座部35の内側斜面35aから離座して開弁する。
【0044】
次に、図4各図を参照して、チェック弁Cを形成する工程(組立工程)を説明する。
図4(b)に示すように、ケーシング32内に弁体33を挿入する。ここで、ばね受け部36の開口部36bの内径D1よりも弁体33の外径Dが小さいので、プレス加工によって一枚のシート状の部材からケーシング32を成形する工程を経た後に、ばね受け部36の開口部36bを通じて弁体33をケーシング32内に挿入する(弁体33を弁座部35にセットする工程)。
なお、開口部36bを通じて弁体33をケーシング32内に挿入しておいてから、ばね受け部36の開口部36bを成形してもよい。
【0045】
その後、図4(b)に示すように、スプリング34の一端側34aをばね受け部36の開口部36bからケーシング32内の弁体33へ向けて挿入する(図4(c)参照)。
そして、スプリング34の他端側34bを指等でつまんで中心軸周りに回転させながら、開口部36bを通じてケーシング32の内側にスプリング34を挿入する(ばね受け部の内側に挿入する工程)。
これにより、図4(d)(e)に示すように、スプリング34は、一端側34aが弁体33に当接し、他端側34bがばね受け部36の受け部36aに当接した状態でケーシング32の弁室31内に圧縮された状態で収容される。
なお、スプリング34の他端側34bの終端部34cの長さL3(図4(a)参照)は、ケーシング32のばね受け部36の開口部36bの内径D1(図4(b)参照)よりも小さく設定されているので、スプリング34の他端側34bを開口部36bに通す際に、これをスムーズに通すことができる。
【0046】
このようにして組み立てられたチェック弁Cは、図5に示すように、基体10の上面側から開口15dを通じて吐出路R2の大径部15aに挿入されて固定される。
はじめに、吐出路R2にチェック弁Cを挿入する。なお、図5(a)に示すように、装着治具60で押し込むことで、ケーシング32の弁座部35が吐出路R2の段差部15cに当接する位置まで挿入することもできる(図5(b)参照)。
【0047】
挿入後、装着治具60の先端突部61をケーシング32のばね受け部36の開口部36bに挿入して、装着治具60でケーシング32を押圧する。これにより、ケーシング32の胴部32aが大径部15aにかしめられ、吐出路R2内にチェック弁Cが固定される。
【0048】
その後、図示しない封止装置により吐出路R2の開口15dに球状の封止部材65を圧入し、開口15dを封止部材65で封止する。これにより、吐出路R2の大径部15aと、この大径部15aに開口する流路R11とがブレーキ液の通流可能に連通される。
【0049】
ここで、前記したスプリング34の装着にあたっては、図6各図に示すように、回転治具50を用いることができる。
図6(a)に示すように、回転治具50は、略円柱状を呈しており、先端部には、スプリング34の他端側34bの終端部34cに装着可能な溝部51が形成されている。
このような回転治具50を用いた装着では、まず、スプリング34の終端部34cに回転治具50の溝部51を係合させて、回転治具50を回転させつつ下降させる。これにより、回転治具50を用いてケーシング32内にスプリング34を挿入することができる(ばね受け部の内側に挿入する工程)。
また、回転治具50を用いた装着では、前記した図4(c)に示したように、ケーシング32内にスプリング34を先に挿入しておいてから、終端部34cに回転治具50の溝部51を係合させて(治具をセットする工程)、回転治具50でケーシング32内にスプリング34を挿入するようにしてもよい(ばね受け部の内側に挿入する工程)。
【0050】
以上説明したチェック弁によれば、弁座部35とばね受け部36とを別部材で構成することなく、これらが、一枚のシート状の部材をプレス加工して一体的に形成されているので、部品点数を最小限とすることができ、部品点数の減少によるコストダウンおよび組立時の作業性の向上を図ることができる。
【0051】
また、スプリング34は、一端側34aが小径とされ、他端側34bが大径とされた略円錐状のコイルスプリングであり、ばね受け部36は、スプリング34の一端側34aよりも大径で、かつ、他端側34bよりも小径の開口部36bと、開口部36bの開口縁に設けられ、スプリング34の他端側34bが当接される受け部36aと、を有しているので、ばね受け部36の開口部36bからスプリング34の一端側34aを回転させながら弁体33へ向けて挿入することができ、全体を挿入したスプリング34の他端側34bを開口部36bの開口縁に設けられた受け部36aに内側から当接して組み付けることができる。
したがって、スプリング34の組付作業が簡単であり、組立時の作業性の向上を図ることができる。
【0052】
また、スプリング34のピッチL1が、シート状の部材の厚さL2よりも大きく設定されているので、ばね受け部36の開口部36bからスプリング34の一端側34aを回転させながら挿入する際の組み付けをスムーズに行うことができ、スプリング34のセットが容易となる。
【0053】
また、スプリング34の他端側34bの終端部34cが、スプリング34の径方向に向けて延設されているので、ばね受け部36の開口部36bからスプリング34の一端側34aを回転させながら挿入する際に、スプリング34を回転操作するための回転治具50等をスプリング34の他端側34bの終端部34cに装着することができ、組立時の作業性の向上を図ることができる。
【0054】
また、このようなチェック弁Cが用いられる液圧制御装置としての車両用ブレーキ制御装置によると、弁座部35の周囲の部位が流路(吸入路R1、吐出路R2)内に形成された段差部14c(15c)に当接されるとともに、弁座部35の他端側において弁座部35よりも拡径された胴部32aが流路(吸入路R1、吐出路R2)内に圧入されて固定されるので、圧入によって弁座部35に影響を与えることなく、流路内の固定箇所においてシール性を有しつつチェック弁Cを良好に固定することができる。
【0055】
図7はチェック弁Cの変形例を示す説明図である。
このチェック弁Cは、ばね受け部36が4つの折曲げ片36dで形成されているものである。この変形例では、図7(b)に示すように、ばね受け部36の開口部36bの内径D1よりも大きい外径D3(直径D3)を有する弁体33を用いている。なお、図7(a)に示すように、ケーシング32の開口の内径D4は、弁体33の外径D3(直径D3)よりも大きくなっている。つまり、ケーシング32の開口の内径D4と弁体の外径D3とばね受け部36の開口部36bの内径D1とは、D4>D3>D1の関係となっている。
【0056】
図7(a)に示すように、折曲げ片36dは、胴部32aの他端側(上部側)に胴部32aと一体的に設けられており、図7(b)に示すように、折曲げ形成されることで、ばね受け部36として機能する。折曲げ片36dは、ケーシング32の軸方向から見て90度間隔で配置されており、その内側には、開口部36bが形成されるように折曲げ形成されている。
【0057】
チェック弁Cを形成する工程(組立工程)では、プレス加工によって一枚のシート状の部材からケーシング32を一体的に形成する工程の途中で(図7(a)参照)、弁体33をケーシング32内に挿入する。すなわち、弁座部35と胴部32aを形成した後、ばね受け部36を折曲げ形成する前の段階で、胴部32aの他端側の開口から弁体33をケーシング32内に挿入する(弁体33を弁座部35にセットする工程)。
そして、弁体33の挿入後に、折曲げ加工によって折曲げ片36dをそれぞれ折曲げてばね受け部36を形成し、ケーシング32を形成する(ケーシング32を一体的に形成する工程)。
【0058】
このようなチェック弁Cにおいても、図7(a)〜(d)に示すように、スプリング34を回転させながら開口部36bを通じてケーシング32の内側に挿入することができる。
このチェック弁Cでは、折曲げ片36dを折曲げ加工することでばね受け部36として機能させることができるので、折曲げ加工が簡単であり、生産性に優れる。
なお、折曲げ片36dは、4つ形成したものを示したが、これに限られることはなく、2つ形成したものや3つ形成したもので、5つ以上形成したものであってもよい。また、折曲げ片36dの形状は、本実施形態に限定されない。
また、弁体33の挿入後に、続けてスプリング34をケーシング32内に挿入し、この状態で折曲げ加工によって折曲げ片36dをそれぞれ折曲げてばね受け部36を形成してもよい。
【0059】
ケーシング32のばね受け部36の開口部36bは、円形状(略円形状)であるものに限られることはなく、スプリング34を挿入することができるものであれば、三角形状、四角形状、多角形状、楕円形状等、種々の形状とすることができる。
【0060】
また、弁体33は、内側斜面35aに着座可能であればよく、弁体33の外径は、ばね受け部36の開口部36bの内径よりも大きく形成されていてもよいし、開口部36bの内径と同じか、これよりも小さく形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
14c,15c 段差部
31 弁室
32 ケーシング
32a 胴部(拡径部)
33 弁体
34 スプリング
34a 一端側
34b 他端側
34c 終端部
35 弁座部
35a 内側斜面
36 ばね受け部
36a 受け部
36b 開口部
36d 折曲げ片
50 回転治具
C チェック弁
L1 ピッチ
L2 厚さ
R1 吸入路
R2 吐出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室の一端側に設けられた弁座部と、前記弁座部に着座する弁体と、一端側が前記弁体に当接し、前記弁座部へ向けて前記弁体を付勢するスプリングと、前記弁室の他端側に設けられ、前記スプリングの他端側を受けるばね受け部と、を備えたチェック弁であって、
前記スプリングは、一端側が小径とされ、他端側が大径とされた略円錐状のコイルスプリングであり、
前記ばね受け部は、前記スプリングの一端側よりも大径で、かつ、他端側よりも小径の開口部と、前記開口部の開口縁に設けられ、前記スプリングの他端側が当接される受け部と、を有しており、
前記弁座部と前記ばね受け部とは、一枚のシート状部材にプレス加工を施して形成したプレス成形品に設けられていることを特徴とするチェック弁。
【請求項2】
前記スプリングのピッチは、前記シート状部材の厚さよりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のチェック弁。
【請求項3】
前記スプリングの他端側の終端部は、当該スプリングの径方向に向けて延設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェック弁。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチェック弁を流路内に備えてなる液圧制御装置であって、
前記弁座部よりも他端側における前記プレス成形品の最大径部分が、前記流路内に圧接されて固定されることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチェック弁を備えてなる車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
ブレーキ液を吸引および吐出するポンプを備え、
前記ポンプの吸入弁および吐出弁が前記チェック弁で構成されていることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
一枚のシート状部材にプレス加工を施し、円筒状のプレス成形品を形成する工程と、
前記プレス成形品の一端側の開口を塞ぐように前記プレス成形品の内部に弁体を挿入する工程と、
略円錐状のコイルスプリングの小径側を前記プレス成形品の他端側の開口部から前記プレス成形品内に挿入し、当該コイルスプリングを回転させながら前記プレス成形品の内側に挿入する工程と、
を含むことを特徴とするチェック弁の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−215241(P2012−215241A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80881(P2011−80881)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】