説明

チェーンの伸長度診断装置

【課題】移動手摺駆動用チェーンの伸長度を正確に診断することができ、予防保全を確実に実施することができると共に、保守時間を短縮することができるチェーンの伸長度診断装置を得る。
【解決手段】移動手摺駆動用チェーン6の鉛直方向の振れ幅を検出するマルチビームセンサー7と、マルチビームセンサー7によって検出された移動手摺駆動用チェーン6の鉛直方向の振れ幅を表示するインジケーター9とを設けた。マルチビームセンサー7は、移動手摺駆動用チェーン6を挟んで、マルチビーム投光部と、マルチビーム受光部とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレーターや、動く歩道(移動歩道)の移動手摺駆動用チェーンの伸長度を診断する為のチェーンの伸長度診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレーター移動手摺駆動用チェーンの伸び検出装置は、マイクロスイッチを使用して移動手摺駆動用チェーンの伸びが所定量を超えたことを検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−295479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の移動手摺駆動用チェーンの伸び検出装置は、移動手摺駆動用チェーンが所定量伸びないと検出することができなかった。従って、経時変化による伸長度を常時把握することができなかった。
【0005】
また、ゴミや異物が移動手摺駆動用チェーンに付着した場合、移動手摺駆動用チェーンが伸びた時と同様に検出し、誤動作の発生する恐れや、移動手摺駆動用チェーンが伸びた際、マイクロスイッチと干渉することにより異常音が発生する恐れがあった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、移動手摺駆動用チェーンの伸長度を正確に診断することができ、予防保全を確実に実施することができると共に、保守時間を短縮することができるチェーンの伸長度診断装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るチェーンの伸長度診断装置は、移動手摺駆動用チェーンの鉛直方向の振れ幅を検出するマルチビームセンサーと、前記マルチビームセンサーによって検出された移動手摺駆動用チェーンの鉛直方向の振れ幅を表示するインジケーターとを設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るチェーンの伸長度診断装置は、移動手摺駆動用チェーンの振れ幅を制御盤に設置したインジケーターに表示することにより、移動手摺駆動用チェーンの伸長度を常時診断することができると共に経時的な変化を連続して把握することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るチェーンの伸長度診断装置について図1から図3までを参照しながら説明する。
【0010】
図1は、この発明の実施の形態1に係るチェーンの伸長度診断装置を取り付けたエスカレーターの構成を側方からみた正面図である。また、図2は、この発明の実施の形態1に係るチェーンの伸長度診断装置を取り付けたエスカレーターの構成を上からみた平面図である。さらに、図3は、図1のA−A’からみた断面であって、マルチビームセンサーの拡大図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0011】
図1において、移動手摺1を駆動するためのプーリ2と、このプーリ2と同一シャフトに固定されている従動歯車3と、この従動歯車3に移動手摺駆動用チェーン6を介して動力を伝達する駆動歯車4と、エスカレーターを長時間運転すると移動手摺駆動用チェーン6が機械的に伸びてくるので移動手摺駆動用チェーン6を押し下げて所定の張力を与えている張力調整装置5とが設けられている。
【0012】
図1において、この実施の形態1に係るチェーンの伸長度診断装置は、エスカレーター運転中において移動手摺駆動用チェーン6が伸びそのチェーン6の振れ幅を検出するマルチビームセンサー7と、制御盤8に取り付けられ、このマルチビームセンサー7によって検出されたチェーン6の振れ幅を表示するインジケーター9とが設けられている。
【0013】
図2において、マルチビームセンサー7は、移動手摺駆動用チェーン6を挟んで、赤外線等を発光する複数の発光素子が鉛直方向に並べられたマルチビーム投光部71と、赤外線等を受光し、発光素子と同数の受光素子が鉛直方向に並べられたマルチビーム受光部72とから構成されている。
【0014】
インジケーター9は、白色、赤色、緑色、青色等を表示する複数の表示素子が鉛直方向に並べられて構成されている。表示素子は、マルチビーム受光部72の受光素子に対応して設けられている。例えば、受光素子が1個に対して表示素子が1個、あるいは受光素子が隣接した複数個に対して表示素子が1個に対応している。複数の表示素子が鉛直方向に並べられているのは、移動手摺駆動用チェーン6の振れ幅を直感できるためであるが、水平方向に複数の表示素子が並べられていてもよい。なお、インジケーター9は、液晶などの表示装置でもよい。このような表示装置では、経時変化による振れ幅を、波形としてグラフ表示できる。振れ幅を数字で表示してもよい。
【0015】
この実施の形態1に係るチェーンの伸長度診断装置は、チェーン6の伸長度をマルチビームセンサー7により検出できる構造とした。エスカレーターにマルチビームセンサー7を設け、移動手摺駆動用チェーン6を挟むようにマルチビームセンサー7を取り付け、移動手摺駆動用チェーン6の振れ幅を制御盤8に設置したインジケーター9に常時表示し、振れ幅の大きさにより移動手摺駆動用チェーン6の伸長度を診断できる構造にした。
【0016】
つぎに、この実施の形態1に係るチェーンの伸長度診断装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0017】
移動手摺駆動用チェーン6の伸びが正常なときは、図3に示す両矢印線WAのように、移動手摺駆動用チェーン6の振れ幅が小さくなり、この振れ幅がインジケーター9に例えば、白色で表示される。
【0018】
マルチビーム受光部72は、移動手摺駆動用チェーン6に遮られビームを受光することができなかった受光素子に対応したディジタルあるいはアナログの検出信号を制御盤8に設けられた表示制御器(図示せず)へ送信する。この表示制御器は、記憶装置を含むマイクロコンピュータなどから構成され、マルチビーム受光部72から送られてきた、移動手摺駆動用チェーン6の鉛直方向の位置(振れ幅)を示す検出信号に基づいて、マルチビーム受光部72の受光素子に対応した表示素子を例えば白色で表示させる。こうして、移動手摺駆動用チェーン6の鉛直方向の位置(振れ幅)がインジケーター9にリアルタイムで表示される。例えば、受光素子と表示素子が1対1で対応している場合、マルチビーム受光部72の中心(従動歯車3と駆動歯車4のそれぞれの下端を結ぶ線)から上に2個目の受光素子がビームを受光しないときには、インジケーター9の中心から上に2個目の表示素子が白色で表示する。
【0019】
また、表示制御器は、移動手摺駆動用チェーン6の鉛直方向の位置(振れ幅)を示す現在の検出信号に基づいて、表示素子をリアルタイムで白色表示させるだけでなく、記憶装置に記憶された移動手摺駆動用チェーン6の鉛直方向の位置(振れ幅)を示す過去の検出信号に基づいて、表示素子を緑色や青色で現在値と同時に表示させてもよい。現在値と過去値の表示素子が重なる場合は、現在値の色を優先させる。つまり、現在値を表示した表示素子は、その後一定時間緑色や青色で表示するともに、別の表示素子は、現在値を白色で表示する。さらに、表示制御器は、スイッチの切り替えにより、現在値だけ、あるいは過去値だけをインジケーター9に表示させてもよい。また、表示制御器は、記憶装置に記憶した過去値を、スイッチの操作により、プリンタ等に出力してもよい。
【0020】
移動手摺駆動用チェーン6の伸びが大きくなったときは、図3に示す両矢印線WBのように、移動手摺駆動用チェーン6の振れ幅が大きくなり、この振れ幅がインジケーター9に例えば、赤色で表示される。
【0021】
表示制御器は、検出手段に基づいて画像処理を行って、経時変化による振れ幅を、波形画像として表示してもよい。
【0022】
このように構成された、移動手摺駆動用チェーンの伸長度診断装置は、移動手摺駆動用チェーン6の伸長度を常時把握することができる。また、インジケーター9に表示された振れ幅を、遠隔監視装置により監視センターに表示するようにしても良い(図示せず)。
【0023】
上記のように、この実施の形態1によれば、マルチビームセンサー7により、常時、移動手摺駆動用チェーン6の伸び量を把握できるので、経時変化による振れ幅を記録することにより伸長度の調整時期が予測でき、予防保全を計画できると共に前もって作業計画をたてることができるので保守時間が低減できる。
【0024】
また、エスカレーター運転中の振れ幅を常時監視できるので、移動手摺駆動用チェーン6にゴミや異物が付着した場合は、インジケーター9の振れ幅が一瞬大きくなるのでゴミや異物が付着したことが容易に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態1に係るチェーンの伸長度診断装置を取り付けたエスカレーターの構成を側方からみた正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るチェーンの伸長度診断装置を取り付けたエスカレーターの構成を上からみた平面図である。
【図3】図1のA−A’からみた断面であって、マルチビームセンサーの拡大図である。
【符号の説明】
【0026】
1 移動手摺、2 プーリ、3 従動歯車、4 駆動歯車、5 張力調整装置、6 移動手摺駆動用チェーン、7 マルチビームセンサー、8 制御盤、9 インジケーター、71 マルチビーム投光部、72 マルチビーム受光部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動手摺駆動用チェーンの鉛直方向の振れ幅を検出するマルチビームセンサーと、
前記マルチビームセンサーによって検出された移動手摺駆動用チェーンの鉛直方向の振れ幅を表示するインジケーターと
を備えたことを特徴とするチェーンの伸長度診断装置。
【請求項2】
前記マルチビームセンサーは、前記移動手摺駆動用チェーンを挟んで、
鉛直方向に複数のビームを投光するマルチビーム投光部と、
鉛直方向に複数のビームを受光するマルチビーム受光部と
から構成されていることを特徴とする請求項1記載のチェーンの伸長度診断装置。
【請求項3】
前記インジケーターは、検出された移動手摺駆動用チェーンの鉛直方向の振れ幅の現在値をリアルタイムで表示する
ことを特徴とする請求項2記載のチェーンの伸長度診断装置。
【請求項4】
前記インジケーターは、検出された移動手摺駆動用チェーンの鉛直方向の振れ幅の現在値と過去値を同時に表示する
ことを特徴とする請求項2記載のチェーンの伸長度診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−219220(P2006−219220A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31721(P2005−31721)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】