説明

チップ割り無端ベルト

【課題】 小チップの歩留まりを従来よりも向上させることができるチップ割り無端ベルトを提供しようとするもの。
【解決手段】 芯体として織布1を有すると共にチップ2との接触面3はゴムないし樹脂により被覆・補強が施され、前記チップ2をベルト相互間の屈曲部位7で分割する方式であって、前記織布1を構成するベルト周方向及び幅方向の糸の太さは33〜240dtexで且つ織り密度が50〜190本/inchに設定した。芯体として芯線コードではなく織布を有するのでより柔軟に湾曲可能なものであり、プーリ径がより小径になってもベルトは小径のプーリに沿って巻き付き易く、チップの割れ不良は発生し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チップ抵抗器等のチップを所定の寸法に分割する際に使用されるチップ割り無端ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、セラミックス製のチップ抵抗器のサイズは技術の進歩とともに小型化が進んでいる。
【0003】
現在の主流サイズは1.0×0.5mmであるが、このサイズ以上のチップは上下一対のベルト間に通して分割するベルト方式が採用されている。例えば、特許文献1のチップ粉砕ベルト51は、図4に示すように、ベルトの略中央に芯線52が埋設されており、その両側にはゴム層53、54を付着積層した帆布55が積層されて駆動面56および粉砕面57を形成している。そして図5に示すように、ベルトとベルトの間にチップを通して両方のベルトで挟み込んで粉砕するものであり、一対のベルトが複数のプーリPに駆動面56で巻きかけられて粉砕面57を向かい合わせに当接した状態で走行するようになっている。
【0004】
一方、前記1.0×0.5mmのチップよりも小さい0.6×0.3mm以下の小チップは刃物で切断するダイサー方式が採用されているが、生産性があまり高くない。
【0005】
よって、前記0.6×0.3mmの小チップも上記のようなベルト方式で分割しようとするとプーリ径をより小径にする必要があってベルトが小径のプーリに沿って巻き付きにくくなり、チップが適正な形状に分割されず割れ不良が発生してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2004―42020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこでこの発明は、小チップの歩留まりを従来よりも向上させることができるチップ割り無端ベルトを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明のチップ割り無端ベルトは、芯体として織布を有すると共にチップとの接触面はゴムないし樹脂により被覆・補強が施され、前記チップをベルト相互間の屈曲部位で分割する方式であって、前記織布1を構成するベルト周方向及び幅方向の糸の太さは33〜240dtexで且つ織り密度が50〜190本/inchに設定したことを特徴とする。
【0008】
このチップ割り無端ベルトは、芯体として芯線コードではなく織布を有するのでより柔軟に湾曲可能なものであり、プーリ径がより小径になってもベルトは小径のプーリに沿って巻き付き易く、チップの割れ不良は発生し難い。
【0009】
また、織布を構成するベルト周方向及び幅方向の糸の太さは33〜240dtexで且つ織り密度が50〜190本/inchに設定しており、チップとの接触面にゴムないし樹脂により被覆・補強が施された織布を構成する糸の太さを前記のような細く適正な範囲に規定し、且つ織り密度を前記のような細かく適正な範囲に規定したことにより、ベルト周方向の湾曲に対して非常に追随し易いのでプーリ径がより小径になってもベルトは小径のプーリに沿って巻き付き易く、分割すべきチップはベルト相互間の屈曲部位で織布のベルト幅方向の凹部に沈み込みにくく割れ不良は発生し難い。
【0010】
ここで、ゴムないし樹脂による被覆・補強は、ディップ処理(ディッピング)やコーティング処理とすることができる。また、前記織布を構成するベルト周方向・幅方向の糸は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、綿糸からなる群より選択される少なくとも1種類とすることができる。
【0011】
(2) 前記チップとの接触面は、ウレタンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、天然ゴム、ミラブルウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、塩化ビニル、フェノールレジン、ポリイミド、ポリエステル、フッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種により被覆・補強されたこととしてもよい。
【0012】
このようにチップとの接触面を前記のようなゴムや樹脂によって被覆・補強すると、チップによる織布へのダメージが軽減されてベルトの耐久性が向上する。
【0013】
(3) 前記織布を構成するベルト周方向の糸は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、綿糸からなる群より選択される少なくとも1種類としてもよい。
【0014】
このように構成することで、ベルトの抗張芯体としての機能を付与することができる。
【0015】
(4) 前記織布を構成するベルト幅方向の糸は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、綿糸からなる群より選択される少なくとも1種類としてもよい。
【0016】
このように構成することで、チップとの摺動による磨耗を低くでき、ベルト耐久性の向上が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0018】
チップの割れ不良は発生し難いので、小チップの歩留まりを従来よりも向上させることができるチップ割り無端ベルトを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1乃至図3に示すように、この実施形態のチップ割り無端ベルトは、芯体として織布1を有すると共にチップ2との接触面3と駆動面4(プーリ5と当接する面)にはウレタンゴム6の被覆・補強が施され、前記チップ2を上下一対の無端環状ベルト相互間の屈曲部位7で分割する方式である。
【0021】
図2に示すチップ割りマシンのレイアウトのように、前記屈曲部位7には下方ベルトに小プーリ5を配している。そして、図3のように、切れ目が入った複数チップ2のボード8を先ず1方向に分割(分断)して列状体9とする。次いで、前記と直行する方向に分割(分断)し、1個1個のチップ2とする(図示せず)。
【0022】
ところで、前記織布1のチップ2との接触面3はウレタンゴム6の他に、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコンゴム、天然ゴム、ミラブルウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、塩化ビニル、フェノールレジン、ポリイミド、ポリエステル、フッ素樹脂などで被覆・補強してもよい。
【0023】
前記織布1を構成するベルト周方向及び幅方向の糸の太さは33〜240dtexで且つ織り密度が50〜190本/inchに設定している。前記織布1を構成するベルト幅方向の糸は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、綿糸から選択した。
【0024】
次に、この実施形態のチップ割り無端ベルトの使用状態を説明する。
【0025】
このチップ割り無端ベルトは、芯体として芯線コードではなく織布1を有するのでより柔軟に湾曲可能なものであり、プーリ径がより小径になってもベルトは小径のプーリ5に沿って巻き付き易く、チップ2の割れ不良は発生し難く、小チップの歩留まりを従来よりも向上させることができるという利点がある。
【0026】
また、織布1を構成するベルト周方向及び幅方向の糸の太さは33〜240dtexで且つ織り密度が50〜190本/inchとしており、チップ2との接触面3に被覆・補強が施された織布1を構成する糸の太さを前記のような細く適正な範囲に規定し、且つ織り密度を前記のような細かく適正な範囲に規定したことにより、ベルト周方向の湾曲に対して非常に追随し易いのでプーリ径がより小径になってもベルトは小径のプーリ5に沿って巻き付き易く、分割すべきチップ2はベルト相互間の屈曲部位7で織布1のベルト幅方向の凹部に沈み込みにくく割れ不良は発生し難いという利点がある。
【0027】
また、前記織布1を構成するベルト周方向及び幅方向の糸を、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、綿糸からなる群より選択される少なくとも1種類としたので、ベルトの抗張芯体としての機能を付与することができる。
【0028】
さらに、前記織布1のチップ2との接触面3は、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコンゴム、天然ゴム、ミラブルウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、塩化ビニル、フェノールレジン、ポリイミド、ポリエステル、フッ素樹脂から選択して被覆・補強することで、チップによる織布へのダメージが軽減されベルトの耐久性が向上するという利点がある。
【実施例】
【0029】
次に、この発明の構成をより具体的に説明する。
【0030】
図1に示すチップ割り無端ベルトを作成した。
【0031】
織布1を構成するベルト幅方向の糸はアラミド繊維とし、その太さは210dtexで織り密度が60本/inchとした。前記織布1を構成するベルト周方向の糸は、140dtexのポリエチレンテレフタレート糸とし、織り密度は55本/inchとした。前記織布1は、ウレタンゴム6を被覆・補強した。
【0032】
そして、図2に示すチップ割りマシンを用い(大プーリφ40mm、小プーリ6φ3mm)、0.6×0.3mmのチップ2を分割しベルトを評価した。
【0033】
100枚のチップ分割試験を行ったところ(図3参照)、実施例では不良率は1%程度であった。一方、従来のチップ割りベルトでは、不良率が50%程度であった。このように、この実施例のチップ割り無端ベルトは、0.6×0.3mmのチップ2をベルト方式で分割する際のチップの歩留まりを向上(安定化)させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
プーリ径がより小径になってもベルトは小径のプーリに沿って巻き付き易く、チップの割れ不良は発生し難いので、従来よりも小チップの歩留まりを向上させることができ種々のチップ割り無端ベルトの用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明のチップ割り無端ベルトの実施形態を説明する縦断面図。
【図2】チップ割りマシンのレイアウトを説明する図。
【図3】チップが分割される状況を説明する図。
【図4】従来のチップ粉砕ベルトの断面図。
【図5】図4のチップを粉砕するレイアウトを示す概念図。
【符号の説明】
【0036】
1 織布
2 チップ
3 接触面
6 ウレタンゴム
7 屈曲部位


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯体として織布(1)を有すると共にチップ(2)との接触面(3)はゴムないし樹脂により被覆・補強が施され、前記チップ(2)をベルト相互間の屈曲部位(7)で分割する方式であって、前記織布(1)を構成するベルト周方向及び幅方向の糸の太さは33〜240dtexで且つ織り密度が50〜190本/inchに設定したことを特徴とするチップ割り無端ベルト。
【請求項2】
前記チップ(2)との接触面(3)は、ウレタンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、天然ゴム、ミラブルウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、塩化ビニル、フェノールレジン、ポリイミド、ポリエステル、フッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種により被覆・補強された請求項1記載のチップ割り無端ベルト。
【請求項3】
前記織布(1)を構成するベルト周方向の糸は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、綿糸からなる群より選択される少なくとも1種類とした請求項1又は2記載のチップ割り無端ベルト。
【請求項4】
前記織布(1)を構成するベルト幅方向の糸は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、綿糸からなる群より選択される少なくとも1種類とした請求項1乃至3のいずれかに記載のチップ割り無端ベルト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−62141(P2006−62141A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245418(P2004−245418)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】