説明

チプラナビル及びGW695634を共に投与することを含むHIV感染症の治療方法

チプラナビル及びGW695634を共に投与することによるHIV感染症を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チプラナビル及びGW695634を共に投与することによりHIV感染症を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チプラナビルは、PNU 140690としても知られているが、HIV感染症の治療に有用な非ペプチド系HIVプロテアーゼ阻害剤である。チプラナビルは以下の構造式で表される。
【0003】
【化1】

【0004】
チプラナビルは以下の化学名で知られている:
2-ピリジンスルホンアミド, N-[3-[(1R)-1-[(6R)-5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-2-オキソ-6-(2-フェニルエチル)-6-プロピル-2H-ピラン-3-イル]プロピル]フェニル]-5-(トリフルオロメチル)-
(好ましいCA索引名)
2-ピリジンスルホンアミド, N-[3-[1-[5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-2-オキソ-6-(2- フェニルエチル)-6-プロピル-2H-ピラン-3-イル]プロピル]フェニル]-5-(トリフルオロメチル)-, [R-(R*,R*)]-
(他のCA索引名)
3'-[(1R)-1-[(6R)-5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-2-オキソ-6-フェニルエチル-6-プロピル-2H-ピラン-3イル]プロピル]-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジンスルホンアニリド
(USP Dictionary of USAN and International Drug Names, 2004版)。
チプラナビルの合成及びチプラナビルをHIV感染症の治療に使用し得る方法は、米国特許第5,852,195号明細書及び国際公開WO9530670号公報に記載されている。
【0005】
GW695634は、それ自体非ヌクレオシド系HIV逆転写酵素阻害剤(NNRTI)として知られており、HIV感染症の治療に有用である。
リトナビルはHIVプロテアーゼ阻害剤である。化学的には、((2S,3S,5S)-5-(N-(N-((N-メチル-N-((2-イソプロピル-4-チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)バリニル)アミノ)-2-(N-((5-チアゾリル)メトキシカルボニル)アミノ)-1,6-ジフェニル-3-ヒドロキシヘキサン)と呼ばれ、以下の構造式で表される。







【0006】
【化2】

【0007】
リトナビルは現在、ノービア(登録商標)カプセル及び経口液剤として、唯一アボットラボラトリーズから販売されている。リトナビルの合成は米国特許第5,541,206号明細書及び登録欧州特許EP 0 674 513 B1号公報に記載されている。リトナビルは、公知のチトクロームP450モノオキシゲナーゼ(以降、“CYP”と称する)阻害剤である。その目的では承認されていないが、リトナビルを使用することにより、CYPにより代謝される他の薬剤の薬物動態を向上させることができる。そのような用途については米国特許第6,037,157号明細書及び対応の国際公開WO9701349号公報に記載されている。チプラナビルの薬物動態を向上させるという目的でリトナビルを使用することについては、米国特許第6,147,095号明細書及び対応の国際公開WO0025784号公報に記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、チプラナビル及びGW695634を共に投与することを含む、HIV感染症、特にHIV-1感染症を治療するための改良方法を提供する。本発明はまた、チプラナビルとGW695634とを共に含む単一剤型の形態の医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明により、HIV感染症患者、HIV-1感染症患者を、チプラナビルとGW695634とを共に投与することにより治療する。チプラナビルとGW695634とに加えて抗ウイルス剤を投与してもよい。
本発明を行うために、チプラナビル及び及びGW695634は、別個の剤型により投与することもできるし、単一剤型に一緒にしてもよいし、このような手段により同時に投与することもできる。
本発明により、チプラナビルは、GW695634だけでなく、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ(以降、“CYP”と称する)の阻害剤と共に投与するのが好ましい。CYP阻害剤の投与量は、CYPによるチプラナビルの代謝を阻害し、それによりチプラナビルの治療上有効な血中濃度を容易に達成するのに充分な量であるべきである。この目的に好ましいCYP阻害剤はリトナビルであり、米国特許第6,147,095号明細書及び対応の国際公開WO0025784号公報に記載されているようにして使用することができる。
本発明はまた、チプラナビルとGW695634とを共に含む医薬組成物に関する。該組成物はさらにCYP 阻害剤、好ましくはリトナビルを単一剤型として含んでいても良い。本発明はさらに、一つのパーツがチプラナビル、もう一つのパーツがGW695634を含む、少なくとも2つの剤型を含むキットに関する。該キットはさらにCYP 阻害剤、好ましくはリトナビルを含む第三の剤型を含んでいても良い。
【0010】
当業者であれば、チプラナビル、GW695634及びCYP 阻害剤、特にリトナビルを適当な医薬製剤に処方する方法を知っているであろう。そのような剤型の例としては、例えば、錠剤又はカプセル剤等の経口製剤や、滅菌溶液等の非経口製剤があげられる。
チプラナビルに関し、最も便利でありそれ故好ましい投与ルートは経口ルートである。チプラナビルの経口投与に適当な剤型はそれ自体で公知であるが、米国特許第5,852,195号明細書及び国際公開WO9530670公報に記載されている。ソフトゼラチンカプセル用の充填組成物(fill formulation)の例は、米国特許第6,231,887号明細書、WO9906024、WO9906043及びWO9906044に記載されている。
チプラナビルを経口投与する場合、有効量は、体重1kgあたり約0.1mg〜100mg/日である。成人の場合、チプラナビルは、200mg低用量リトナビルと同時に一日二回投与し、経口投与量が500mgであるのが好ましい。商業的に入手できるリトナビル、例えば、アボットラボラトリーから商品名ノービア(登録商標)で販売されているものを使用できる。
GW695634に関し、最も便利でありそれ故好ましい投与ルートは経口ルートである。GW695634を経口投与するのに適当な剤型はそれ自体公知であり、国際出願公報に記載されている。この医薬に関する臨床経験については、Saxが、http://www.thebody.com/confs/icaac2004/sax1.htmlにおいて説明している。一般的に、本発明を実施するために効果的なGW695634の経口投与量は100mg〜400mg BID、好ましくは200mg〜300mg BIDである。高耐性ウイルスの場合、投与量は400mg BIDとするのが良い。
【0011】
チプラナビル(リトナビル等のCYP阻害剤と同時に投与する場合)及びGW695634の正確な投与ルート、用量、投与頻度、並びに更に同時に投与してもよい任意の抗ウイルス剤は、年齢、体重、全身の身体状態又は治療対象たる患者に特有の他の臨床上の兆候に依存し、当業者であれば容易に決めることができるであろう。
本発明によりチプラナビル、CYP阻害剤及びGW695634を同時に投与する場合、更に抗ウイルス剤と共に投与してもよい。他の抗レトロウイルス化合物としては、公知の抗レトロウイルス化合物、例えばヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、ジドブジン(3'-アジド-3'-デオキシチミジン, AZT)、ジダノシン(ジデオキシイノシン; ddI)、ザルシタビン(ジデオキシシチジン, ddC)又はラミブジン(3'-チア-2'-3'-ジデオキシシチジン, 3TC)等;非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、スラミン、ペンタミジン、チモペンチン(thymopentin)、カスタノスペルミン、エファビレンツ、デキストラン(デキストランサルフェート)、フォスカーネットナトリウム(trisodium phosphono formate)、ネビラピン(nevirapine)(11-シクロプロピル-5,11-ジヒドロ-4-メチル-6H-ジピリド[3,-2-b:2',3'-e][1,4]ジアゼピン-6-オン)、タクリン(テトラヒドロアミノアクリジン)等;TIBO化合物(テトラヒドロ-イミダゾ[4,5,1-jk][1,4]-ベンゾジアゼピン-2(1H)-オン及びチオン)-タイプ、例えば(S)-8-クロロ-4,5,6,7-テトラヒドロ-5--メチル-6-(3-メチル-2-ブテニル)イミダゾ-[4,5,1-jk][1,4]ベンゾジアゼピン-2(1H)-チオン;α-APA化合物(α-アニリノフェニルアセトアミド)タイプ、例えばα-[(2-ニトロ-フェニル)アミノ]-2,6-ジクロロベンゼン-アセトアミド等;TAT-阻害剤、例えばRO-5-3335等;プロテアーゼ阻害剤、例えばインジナビル、サキノビル(saquinovir)、ABT-378等;又は免疫調節剤、例えばレバミソール等があげられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チプラナビル及びGW695634を共に投与することを含む、HIV感染症を治療するための改良方法。
【請求項2】
HIV感染症治療用医薬を製造するためのチプラナビルとGW695634との組み合わせの使用。
【請求項3】
GW695634と組み合わせた、HIV感染症治療用医薬を製造するためのチプラナビルの使用。
【請求項4】
チプラナビルと組み合わせた、HIV感染症治療用医薬を製造するためのGW695634の使用。

【公表番号】特表2008−521896(P2008−521896A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544367(P2007−544367)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/041376
【国際公開番号】WO2006/060159
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】