説明

チャージポンプ回路およびPLL回路

【課題】 広い範囲にわたって良好な特性のチャージポンプ電流の得られるチャージポンプ回路を提供する。
【解決手段】 第1のチャージポンプ部14Aに、定電流源Q1から出力される定電流を、スイッチ回路SW1、SW2の直列回路と、スイッチ回路SW3、SW4の直列回路とに振り分ける制御信号が供給する。残るチャージポンプ部14B、14Cには、定電流源Q1から出力される定電流を、スイッチ回路SW1、SW2の直列回路と、スイッチ回路SW3、SW4の直列回路とに振り分ける制御信号と、スイッチ回路SW1〜SW4をオフにする電位とが、スイッチ回路SWA〜SWDを通じて供給される。必要とするチャージポンプ電流に大きさに対応して、スイッチ回路SW11BA〜SW14Cを制御するとともに、定電流源Q1、Q2の出力電流の大きさを変更することにより、出力端子T3に、必要とする大きさのチャージポンプ電流を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チャージポンプ回路およびこれを使用したPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーヘテロダイン方式の受信機をシンセサイザ方式に構成した場合、その局部発振信号はPLL回路により形成されるが、そのPLL回路は、一般に図2に符号10により示すように構成されている。すなわち、PLL回路10において、VCO11の発振信号SVCOが可変分周回路12に供給されて1/N(Nは正の整数)の周波数の分周信号SDIVに分周され、この分周信号SDIVが位相比較回路13に供給される。また、基準となる周波数fREFの基準信号SREFが位相比較回路13に供給される。
【0003】
そして、位相比較回路13において、分周信号SDIVが基準信号SREFと位相比較され、その比較出力がチャージポンプ回路14に供給されて分周信号SDIVと基準信号SREFとの位相差に対応してパルス幅の変化する位相比較出力が取り出される。そして、この比較出力がループフィルタ15に供給され、分周信号SDIVと、基準信号SREFとの位相差に対応してレベルの変化する直流電圧VCが取り出され、この直流電圧VCがVCO11に発振周波数fVCOの制御電圧として供給される。
【0004】
したがって、定常状態では、VCO11の発振周波数fVCOは、
fVCO=N・fREF
となり、分周比Nを変更すれば、VCO11の発振周波数fVCOを変更することができる。したがって、VCO11の発振信号SVCO(あるいはその分周信号)を局部発振信号として使用して受信信号の周波数変換を行うとともに、分周比Nを変更すれば、受信周波数を変更することができる。すなわち、シンセサイザ方式の受信を行うことができる。
【0005】
この場合、上述のようなチャージポンプ型のPLL回路10のループ特性は、そのPLL回路10のオープンループ時の伝達関数G(s)により決まる。すなわち、図2において、可変分周回路12から位相比較回路13に至る信号ラインをX点でカットしてPLL回路10をオープンループとし、位相比較回路13の基準信号SREFの入力端から可変分周回路32の出力端(分周信号SDIVの出力端)までの伝達関数を求めると、これは図3に(1)式で示す伝達関数G(s)となる。したがって、発振周波数fVCOを変更するために分周比Nを変更すると、伝達関数G(s)が変化するので、結果として、PLL回路10の安定度が変化してしまう。
【0006】
したがって、分周比Nを変更しても、伝達関数G(s)が変化しないようにする必要があるが、そのためには、(1)式において、例えば分周比Nが2倍になったら、チャージポンプ電流ICPも2倍にすればよい。つまり、チャージポンプ電流ICPの大きさを分周比Nに対応して変更すれば、分周比Nを変更しても、PLL回路10のループ特性を一定に保持することができる。
【0007】
また、VCO11の制御感度KVCOは、VCO11の発振周波数fVCOにより変化するが、これもチャージポンプ電流ICPの大きさを変更することにより一定の感度に補正することができる。さらに、PLL回路10の帯域の変更は伝達関数G(s)の変更により可能であるが、これもチャージポンプ電流ICPにより変更することができる。
【0008】
そこで、チャージポンプ回路14として、カレントステアリング型と呼ばれるチャージポンプ回路が一般に使用されている。このカレントステアリング型のチャージポンプ回路14は、例えば図4に示すように構成されている。
【0009】
すなわち、電源端子T1と、接地端子T2との間に、吐き出し型の定電流源Q1と、スイッチ回路SW1、SW2と、吸い込み型の定電流源Q2とが直列接続され、スイッチ回路SW1、SW2の直列回路に、スイッチ回路SW3、SW4の直列回路が並列接続される。また、スイッチ回路SW1、SW2の接続点が、ボルテージフォロワ、すなわち、利得が1倍のアンプG1を通じてスイッチ回路SW3、SW4の接続点DNに接続されるとともに、スイッチ回路SW1、SW2の接続点から出力端子T3が引き出され、これに次段のループフィルタ15が接続される。
【0010】
この場合、定電流源Q1、Q2は、チャージポンプ電流ICPの供給源であり、これら定電流源Q1、Q2の出力電流(チャージポンプ電流ICP)の大きさは連動して制御されるものである。
【0011】
また、位相比較回路13から、分周信号SDIVが基準信号SREFよりも位相が進んでいるとき“H”レベルになり、遅れているとき“L”レベルになるパルスであって、そのパルス幅τが信号SDIVと信号SREFとの位相差に対応したパルスPUPが取り出される。そして、このパルスPUPがスイッチ回路SW1にその制御信号として供給され、PUP=“H”のとき、スイッチ回路SW1はオンとされる。
【0012】
同様に、位相比較回路13から、分周信号SDIVが基準信号SREFよりも位相が遅れているとき“H”レベルになり、進んでいるとき“L”レベルになるパルスであって、そのパルス幅が信号SDIVと信号SREFとの位相差に対応したパルスPDNが取り出される。そして、このパルスPDNがスイッチ回路SW2にその制御信号として供給され、PDN=“H”のとき、スイッチ回路SW2はオンとされる。
【0013】
さらに、位相比較回路13から、パルスPUP、PDNのレベル反転したパルスPUPB、PDNBが取り出され、これらパルスPUPB、PDNBがスイッチ回路SW3、SW4にそれらの制御信号として供給され、スイッチ回路SW3、SW4はパルスPUPB、PDNBにより同様にオンオフ制御される。
【0014】
したがって、PUP=“H”、PDN=“L”のときには、定電流源Q1からスイッチ回路SW1を通じて端子T3にチャージポンプ電流ICPが流れ出し、PDN=“H”、PUP=“L”のときには、端子T3からスイッチ回路SW4を通じて定電流回路Q2にチャージポンプ電流ICPが流れ込む。なお、このとき、パルスPUP、PDNのパルス高が一定であれば、端子T3を流れるチャージポンプ電流ICPの大きさは、定電流源Q1、Q2の出力電流の大きさにより決まる。
【0015】
そして、パルスPUPによりスイッチ回路SW1がオフのときには、パルスPUPBによりスイッチ回路SW3はオンとなっているので、定電流源Q1とスイッチ回路SW1との接続点の電位は、アンプG1により端子T3と等しい電位に保たれる。つまり、スイッチ回路SW1の両端は同電位となり、スイッチ回路SW1にリーク電流は流れない。
【0016】
また、パルスPDNによりスイッチ回路SW2がオフのときには、同様の理由により、スイッチ回路SW2と定電流源Q2との接続点の電位は、端子T3と等しい電位に保たれ、スイッチ回路SW2にリーク電流は流れない。
【0017】
したがって、このチャージポンプ回路14によれば、安定なチャージポンプ電流ICPを得ることができるとともに、そのチャージポンプICPの大きさを定電流源Q1、Q2により変更することができる。
【0018】
また、出力端子T3と接続点DNとはアンプG1により同電位に保持されるので、スイッチ回路SW1〜SW4が切り換わっても、端子T3および接続点DNの電位が変化することがなく、したがって、いわゆるチャージ・シェアリング効果がなく、定電流源Q1の定電流と定電流源Q2の定電流とのマッチング特性がよくなる。さらに、定電流源Q1、Q2自身がオンオフ動作をすることがないので、チャージポンプ回路として高速で動作をさせることができる。
【0019】
図5は、図4に示したチャージポンプ回路14をMOS−FETにより実現した場合の例を示す。なお、以下においては、簡単のため、「MOS−FET」を単に「FET」と記載する。
【0020】
すなわち、NチャンネルのFET(N1〜N4)のドレイン・ソース間と、PチャンネルのFET(P1〜P4)のソース・ドレイン間との並列回路によりスイッチ回路SW1〜SW4がそれぞれ構成される。
【0021】
また、電源端子T1と、スイッチ回路SW1、SW3との間に、PチャンネルのFET(P12)のソース・ドレイン間が接続され、スイッチ回路SW2、SW4と接地端子T2との間に、NチャンネルのFET(N22)のドレイン・ソース間が接続される。
【0022】
この場合、FET(P12、N22)は、定電流源Q1、Q2として動作するものである。このため、FET(P11、P12)により、電源端子T1を基準電位点とし、FET(P11)を入力側としてカレントミラー回路CM1が構成される。また、FET(N21〜N23)により、接地端子T2を基準電位点とし、FET(N21)を入力側としてカレントミラー回路CM2が構成される。
【0023】
また、FET(N23)のドレインがFET(P11)のドレインに接続され、可変定電流源QCPからFET(N21)に定電流ICPが供給される。さらに、スイッチ回路SW1とスイッチ回路SW2との接続点が、出力端子T3に接続されるとともに、ボルテージフォロワ用のアンプG1を通じてスイッチ回路SW3とスイッチ回路SW4との接続点DNに接続される。
【0024】
そして、スイッチ回路SW1、SW3のFET(N1、P3)のゲートに、位相比較回路13から出力パルスPUPが供給され、スイッチ回路SW1、SW3のFET(P1、N3)のゲートに、位相比較回路13から出力パルスPUPBが供給される。さらに、スイッチ回路SW2、SW4のFET(N2、P4)のゲートに、位相比較回路13から出力パルスPDNが供給され、スイッチ回路SW2、SW4のFET(P2、N4)のゲートに、位相比較回路13から出力パルスPDNBが供給される。
【0025】
したがって、可変定電流源QCPからFET(N21)に電流ICPが供給されるので、FET(P12)のドレインからはチャージポンプICPが流し出され、FET(N22)のドレインにはチャージポンプ電流ICPが流れ込む。そして、スイッチ回路SW1〜SW4は、パルスPUP〜PDNBに対応してオンオフ制御されるので、この回路は図4において説明したチャージポンプ回路14として動作する。
【0026】
また、可変定電流源QCPの出力定電流ICPの大きさを変更すれば、FET(P12、N22)を流れるチャージポンプ電流ICPの大きさを同時に変更することができる。
【0027】
さらに、このチャージポンプ回路14によれば、スイッチ回路SW1〜SW4が、それぞれNチャンネルのFET(N1〜N4)と、PチャンネルのFET(P1〜P4)とのペアにより構成されているので、スイッチ回路SW1〜SW4の切り換え時に発生するゲート・ドレイン間の寄生容量(オーバーラップ容量)を通じて流れる電流のピーク値を抑えることができる。
【0028】
この寄生容量に起因する電流は、スイッチ回路SW1〜SW4がオンからオフになるとき、およびオフからオンになるときの両方で発生する。この寄生容量による電流がチャージポンプ電流ICPに比べて無視できない大きさの場合には、チャージポンプ回路14の線形性やマッチング特性を悪化させる。したがって、PLL10をIC化する場合、スイッチ回路SW1〜SW4は、チャージポンプ電流ICPの大きさに応じて必要最小限のサイズとされる。
【0029】
ところが、図5に示すカレントステアリング型のチャージポンプ回路14においては、定電流源となるFET(P12、N22)のサイズおよびスイッチ回路SW1〜SW4を構成するFET(N1〜N4、P1〜P4)のサイズにより、チャージポンプ電流ICPの最大値が決定され、大きなチャージポンプ電流ICPを必要とする場合には、それらFETのサイズを大きくする必要がある。
【0030】
また、チャージポンプ電流ICPが最大値のときでも、十分な出力電圧範囲を確保するためには、やはりFET(P12、N22)のサイズおよびスイッチ回路SW1〜SW4を構成するFET(N1〜N4、P1〜P4)のサイズを大きくする必要がある。
【0031】
しかし、FET(N1〜N4、P1〜P4)のサイズを大きくすると、それらのゲート・ドレイン間の寄生容量が大きくなり、この寄生容量による電流がチャージポンプ電流ICPに比べて無視できない大きさのとき、すなわち、チャージポンプ電流ICPの可変範囲が広くい場合に、最小電流付近にしたとき、ゲート・ドレイン間の寄生容量を流れる電流が本来のチャージポンプ電流ICPよりも大きくなり、チャージポンプ回路14としての性能が悪化してしまう。
【0032】
そこで、例えば図6に示すように、スイッチ回路SW1、SW2のサイズを電気的に変更することが考えられている。すなわち、スイッチ回路SW5、SW6が、NチャンネルのFET(N5、N6)とPチャンネルのFET(P5、P6)とによりスイッチ回路SW1〜SW4と同様に構成される。なお、このとき、FET(N5、N6、P5、P6)は、チャージポンプ電流ICPの最大値に対応して十分な大きさとされる。
【0033】
そして、スイッチ回路SWA〜SWDを図6とは逆の状態に接続した場合には、スイッチ回路SW5、SW6はスイッチ回路SW1〜SW4などに接続されないので、チャージポンプ回路14は図5の場合と等しくなり、スイッチ回路SW1〜SW4により構成される。したがって、スイッチ回路SW1〜SW4におけるFET(N1〜N4、P1〜P4)を、それらの寄生容量を無視できるサイズとしておくことができ、チャージポンプ電流ICPが小さくても対応できる。
【0034】
一方、スイッチ回路SWA〜SWDを図6の状態に接続した場合には、スイッチ回路SW5、SW6はスイッチ回路SW1、SW2に並列接続されるので、チャージポンプ回路14は電気的には図5の場合と等しくなるが、より大きなチャージポンプ電流ICPを扱うことができるようになる。
【0035】
したがって、チャージポンプ電流ICPの大きさに対応してスイッチ回路SW11〜SW14を切り換えることにより最適な特性のチャージポンプ回路14とすることができる。
【0036】
なお、先行技術文献として例えば以下のものがある。
【特許文献1】特開2004−208142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
上述のように、図5のチャージポンプ回路14は、チャージポンプ電流ICPの変化範囲が広いとき、これに対応することができない。その点、図6のチャージポンプ回路14は、スイッチ回路SWA〜SWDを切り換えることによりチャージポンプ電流ICPの変化範囲が広くても、対応することができる。
【0038】
しかし、図6のチャージポンプ回路14においては、チャージポンプ電流ICPが小さい場合、すなわち、スイッチ回路SW11〜SW14が図6とは逆の状態に接続されている場合、スイッチ回路SW1、SW3の接続点Aと電源端子T1との間に、スイッチ回路SW5のFET(P5)のゲート・ソース間の寄生容量が接続される。また、スイッチ回路SW2、SW4の接続点Bと接地端子T2との間に、スイッチ回路SW6のFET(N6)のゲート・ソース間の寄生容量が接続される。
【0039】
また、FET(P12、N22)は定電流源Q1、Q2として動作しているが、このFET(P12、N22)からチャージポンプ電流ICPが流れるので、大きなチャージポンプ電流ICPを扱うためには、FET(P12、N22)のサイズが大きくなければならず、それらのゲート・ドレイン間の寄生容量も大きくなる。
【0040】
そこで、このとき、アンプG1のオフセット電圧により、端子T3と接続点NDとの間に電位差を生じていると、接続点A、Bの電位は、チャージポンプ電流ICPの出力時には、端子T3と等しくなり(SW回路の抵抗を無視する)、チャージポンプ電流ICPの停止時には、接続点DNと等しい電位になる。
【0041】
このため、その電位差×寄生容量の電荷をSW回路のオンオフ時に充放電する(チャージ・シェアリング効果)ことになるので、チャージポンプ電流ICPの小さい電流域では特性を悪くなってしまう。
【0042】
この発明は、以上のような問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0043】
この発明においては、
複数のチャージポンプ部のそれぞれが、
ブリッジ接続された第1〜第4のスイッチ回路と、
上記第1および上記第3のスイッチ回路の接続点に接続された吐き出し型の定電流源と、
上記第2および上記第4のスイッチ回路の接続点に接続された吸い込み型の定電流源と
を有するとともに、
上記複数のチャージポンプ部のすべてに対して共通であって、上記第1および上記第2のスイッチ回路の接続点から上記第3および上記第4のスイッチ回路の接続点に接続されたボルテージフォロワと、
上記複数のチャージポンプ部のすべてに対して共通であって、上記第1および上記第2のスイッチ回路の接続点に接続された出力端子と
を有し、
上記複数のチャージポンプ部のうち、第1のチャージポンプ部には、上記吐き出し型の定電流源から出力される定電流を、上記第1および上記第2のスイッチ回路の直列回路と、上記第3および上記第4のスイッチ回路の直列回路とに振り分ける制御信号が供給され、
上記複数のチャージポンプ部のうち、残るチャージポンプ部には、上記吐き出し型の定電流源から出力される定電流を、上記第1および上記第2のスイッチ回路の直列回路と、上記第3および上記第4のスイッチ回路の直列回路とに振り分ける制御信号と、上記第1〜第4のスイッチ回路をオフにする電位とが、第1〜第4の切り換え用のスイッチ回路を通じて供給され、
必要とするチャージポンプ電流に大きさに対応して、上記第1〜第4の切り換え用のスイッチ回路を制御するとともに、上記吐き出し型の定電流源および上記吸い込み型定電流の出力電流の大きさを変更することにより、上記出力端子に、上記必要とする大きさのチャージポンプ電流を得る
ようにしたチャージポンプ回路
とするものである。
【発明の効果】
【0044】
この発明によれば、広い範囲にわたって変化するチャージポンプ電流に対して、良好な特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1において、符号14は、この発明によるカレントステアリング型のチャージポンプ回路の一例を示す。この例においては、チャージポンプ電流ICPの大きさを、10μA、300μA、1mAの3段階に分け、これに対応してチャージポンプ回路14を、3つのチャージポンプ部、すなわち、メインのチャージポンプ部14Aと、サブのチャージポンプ部14B、14Cとに分けた場合である。
【0046】
すなわち、スイッチ回路SW1〜SW4がブリッジ接続されるとともに、電源端子T1と、スイッチ回路SW1およびスイッチ回路SW3の接続点との間に、吐き出し型の定電流源Q1が接続され、スイッチ回路SW2およびスイッチ回路SW4の接続点と、接地端子T2との間に、吸い込み型の定電流源Q2が接続される。また、スイッチ回路SW1およびスイッチ回路SW2の接続点が、ボルテージフォロワとして動作する利得が1倍のアンプG1を通じてスイッチ回路SW3、SW4の接続点DNに接続されるとともに、スイッチ回路SW1、SW2の接続点が出力端子T3に接続される。
【0047】
この場合、定電流源Q1、Q2は、チャージポンプ電流ICPの供給源であり、これら定電流源Q1、Q2の出力電流(チャージポンプ電流ICP)の大きさは連動して制御されるものである。以上により、メインのチャージポンプ回路となる第1のチャージポンプ部14Aが構成される。
【0048】
また、位相比較回路13から、分周信号SDIVが基準信号SREFよりも位相が進んでいるとき“H”レベルになり、遅れているとき“L”レベルになるパルスであって、そのパルス幅τが信号SDIVと信号SREFとの位相差に対応したパルスPUPが取り出される。そして、このパルスPUPが、チャージポンプ部14Aのスイッチ回路SW1にその制御信号として供給され、PUP=“H”のとき、スイッチ回路SW1はオンとされる。
【0049】
同様に、位相比較回路13から、分周信号SDIVが基準信号SREFよりも位相が遅れているとき“H”レベルになり、進んでいるとき“L”レベルになるパルスであって、そのパルス幅が信号SDIVと信号SREFとの位相差に対応したパルスPDNが取り出される。このパルスPDNが、チャージポンプ14Aのスイッチ回路SW2にその制御信号として供給され、PDN=“H”のとき、スイッチ回路SW2はオンとされる。
【0050】
さらに、位相比較回路13から、パルスPUP、PDNのレベル反転したパルスPUPB、PDNBが取り出され、これらパルスPUPB、PDNBがチャージポンプ部14Aのスイッチ回路SW3、SW4にそれらの制御信号として供給され、スイッチ回路SW3、SW4は同様にオンオフ制御される。
【0051】
また、サブのチャージポンプ回路となる第2のチャージポンプ部14Bが、スイッチ回路SW1〜SW4および定電流源Q1、Q2により第1のチャージポンプ部14Aと同様に構成され、第3のチャージポンプ部14Cも同様に構成される。
【0052】
ただし、この場合、第1のチャージポンプ部14A〜第3のチャージポンプ部14Cにおいて、アンプG1および出力端子T3は共通とされる。また、チャージポンプ電流ICPは、第1のチャージポンプ部14Aにおいては、最小電流付近に対応した大きさとされ、第2のチャージポンプ部14Bにいては、中域の電流付近に対応した大きさとされ、第3のチャージポンプ部14Cにおいては、最大電流付近に対応した大きさとされる。
【0053】
例えば、
第1のチャージポンプ回路14Aの定電流源Q1、Q2の定電流ICP=10μA
第2のチャージポンプ回路14Bの定電流源Q1、Q2の定電流ICP=300μA
第1のチャージポンプ回路14Cの定電流源Q1、Q2の定電流ICP=1mA
とされる。
【0054】
したがって、スイッチ回路SW1〜SW4をFETにより構成するとき、そのサイズは、第1のチャージポンプ部14Aでは小さく、第3のチャージポンプ部14Cでは大きく、第2のチャージポンプ部14Bでは中間の大きさとされる。
【0055】
さらに、パルスPUPと、端子T2の“L”レベルとが、スイッチ回路SW11Bにより選択され、その選択出力が、チャージポンプ部14Bのスイッチ回路SW1にその制御信号として供給される。また、パルスPDNと、端子T2の“L”レベルとが、スイッチ回路SW12Bにより選択され、その選択出力が、チャージポンプ部14Bのスイッチ回路SW2にその制御信号として供給される。
【0056】
また、パルスPUPB、PDNBと、端子T2の“L”レベルとが、スイッチ回路SW13B、SW14Bによりそれぞれ選択され、チャージポンプ部13Bのスイッチ回路SW3、SW4にそれらの制御信号として供給される。さらに、第3のチャージポンプ回路14Cについても、スイッチ回路SW11C〜SW14Cを通じて同様に制御信号が供給される。
【0057】
このような構成において、チャージポンプ電流ICPが小さくてもよい場合(ICP≦10μAの場合)には、スイッチ回路SW11B〜SW14B、SW11C〜SW14Cは、すべて図に示すように、端子T2側に接続され、“L”レベルが出力される。したがって、チャージポンプ部14B、14Cにおけるスイッチ回路SW1〜SW4はすべてオフであり、チャージポンプ部14B、14Cからは出力電流(チャージポンプ電流ICP)は取り出されない。
【0058】
しかし、この場合、チャージポンプ部14Aは有効に動作している。そして、PUP=“H”、PDN=“L”のときには、定電流源Q1からスイッチ回路SW1を通じて端子T3にチャージポンプ電流ICPが流れ出し、PDN=“H”、PUP=“L”のときには、端子T3からスイッチ回路SW4を通じて定電流回路Q2にチャージポンプ電流ICPが流れ込む。
【0059】
なお、このとき、パルスPUP、PDNのパルス高が一定であれば、端子T3を流れるチャージポンプ電流ICPの大きさは、定電流源Q1、Q2の出力電流の大きさにより決まる。
【0060】
また、チャージポンプ電流ICPとして中くらいの大きさを必要とする場合(10μA<ICP≦310μA)には、スイッチ回路SW11B〜SW14Bは、すべて図1とは逆の状態に接続され、パルスPUP〜PDNBがそれぞれ出力され、第2のチャージポンプ部14Bに供給される。
【0061】
したがって、第2のチャージポンプ部14Bにおいても、第1のチャージポンプ部14Aと同様の動作が行われ、第2のチャージポンプ部14Bの出力電流(チャージポンプ電流ICP)が出力端子T3に出力される。なお、このとき、出力端子T3には、第1のチャージポンプ部14Aの出力電流も出力されているので、両方の出力電流が加算されることになる。
【0062】
さらに、チャージポンプ電流ICPとして大きい電流を必要とする場合(310μA<ICP≦1310μAの場合)には、スイッチ回路SW11B〜SW14Bに加えてスイッチ回路SW11C〜SW14Cも、すべて図1とは逆の状態に接続され、パルスPUP〜PDNBが第3のチャージポンプ部14Cにも供給される。
【0063】
したがって、第3のチャージポンプ部14Cにおいても、第1のチャージポンプ部14Aと同様の動作が行われ、第3のチャージポンプ部14Cの出力電流(チャージポンプ電流ICP)が出力端子T3に出力される。なお、このとき、出力端子T3には、第1のチャージポンプ部14Aおよび第2のチャージポンプ部14Bの出力電流も出力されているので、これらの出力電流が加算されて出力されることになる。
【0064】
こうして、図1に示すチャージポンプ回路14によれば、必要とするチャージポンプ電ICPの大きさに対応してチャージポンプ部14A〜14Cを選択している。例えば、必要とするチャージポンプ電流ICPが小さいときには、チャージポンプ回路14Aから他のチャージポンプ回路14B、14Cを切り離している。
【0065】
そして、チャージポンプ部14A〜14Cは、それらが扱うチャージポンプ電流ICPの大きさに対応してスイッチ回路SW1〜SW4を構成するFETのサイズ、および定電流源Q1、Q2を構成するFETのサイズを設定できる。したがって、チャージポンプ電流ICPが小さくても大きくてもスイッチ回路SW1、SW2の寄生容量に起因する電流誤差などに影響されることがなく、最適な特性を得ることができる。
【0066】
また、チャージポンプ電流ICPの可変範囲を広くすることができるので、PLL回路10におけるループフィルタ15の特性を切り換えなくても、PLL回路10の帯域や基準周波数fREFの選択範囲を広くすることができる。
【0067】
なお、図1スイッチ回路SW1〜SW4は、図4および図5の場合と同様、NチャンネルのFETと、PチャンネルのFETとを並列接続して構成することができ、チャージポンプ部14B、14Cにおいて、スイッチ回路SW1〜SW4を定常的にオフにする場合には、NチャンネルのFETには“L”レベルの電位を供給し、PチャンネルのFETには“H”レベルの電位を供給すればよい。
【0068】
また、定電流源Q1、Q2も、図4および図5の場合と同様、カレントミラー回路により構成することができる。さらに、上述においては、チャージポンプ回路14を、3つのチャージポンプ部14A〜14Cにより構成した場合であるが、2つ以上であればよい。
【0069】
〔略語の一覧〕
FET:Field Effect Transistor
MOS:Metal Oxide Semiconductor
PLL:Phase Locked Loop
VCO:Voltage Controlled Oscillator
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の一形態を示す接続図である。
【図2】この発明を説明するための系統図である。
【図3】PLLの特性を説明するための数式を示す図である。
【図4】この発明を説明するための接続図である。
【図5】この発明を説明するための接続図である。
【図6】この発明を説明するための接続図である。
【符号の説明】
【0071】
10…PLL回路、11…VCO、12…可変分周回路、13…位相比較回路、14…チャージポンプ回路、14A〜14C…チャージポンプ部、15…ループフィルタ、G1…アンプ、Q1、Q2…定電流源、SW1〜SW4…スイッチ回路、SW11B〜SW14C…スイッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャージポンプ部のそれぞれが、
ブリッジ接続された第1〜第4のスイッチ回路と、
上記第1および上記第3のスイッチ回路の接続点に接続された吐き出し型の定電流源と、
上記第2および上記第4のスイッチ回路の接続点に接続された吸い込み型の定電流源と
を有するとともに、
上記複数のチャージポンプ部のすべてに対して共通であって、上記第1および上記第2のスイッチ回路の接続点から上記第3および上記第4のスイッチ回路の接続点に接続されたボルテージフォロワと、
上記複数のチャージポンプ部のすべてに対して共通であって、上記第1および上記第2のスイッチ回路の接続点に接続された出力端子と
を有し、
上記複数のチャージポンプ部のうち、第1のチャージポンプ部には、上記吐き出し型の定電流源から出力される定電流を、上記第1および上記第2のスイッチ回路の直列回路と、上記第3および上記第4のスイッチ回路の直列回路とに振り分ける制御信号が供給され、
上記複数のチャージポンプ部のうち、残るチャージポンプ部には、上記吐き出し型の定電流源から出力される定電流を、上記第1および上記第2のスイッチ回路の直列回路と、上記第3および上記第4のスイッチ回路の直列回路とに振り分ける制御信号と、上記第1〜第4のスイッチ回路をオフにする電位とが、第1〜第4の切り換え用のスイッチ回路を通じて供給され、
必要とするチャージポンプ電流に大きさに対応して、上記第1〜第4の切り換え用のスイッチ回路を制御するとともに、上記吐き出し型の定電流源および上記吸い込み型定電流の出力電流の大きさを変更することにより、上記出力端子に、上記必要とする大きさのチャージポンプ電流を得る
ようにしたチャージポンプ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のチャージポンプ回路において、
上記第1〜第4のスイッチ回路、上記吐き出し型の定電流源および上記吸い込み型の定電流源をそれぞれFETにより構成するとともに、
上記FETを、上記チャージポンプ部が扱うチャージポンプ電流の大きさに対応した必要最小限のサイズとする
ようにしたチャージポンプ回路。
【請求項3】
VCOと、
このVCOの発振信号を1/N(Nは整数)の周波数の分周信号に分周する可変分周回路と、
上記分周信号を、基準となる周波数の信号と位相比較する位相比較回路と、
この位相比較回路の比較出力が供給されるチャージポンプ回路と、
このチャージポンプ回路の出力が供給されるとともに、上記分周信号と上記基準となる周波数の信号との位相差に対応してレベルの変化する直流電圧を出力して上記VCOの上記発振周波数を制御するループフィルタと
を有するPLL回路であって、
上記チャージポンプ回路が複数のチャージポンプ部を有し、
このチャージポンプ部のそれぞれが、
ブリッジ接続された第1〜第4のスイッチ回路と、
上記第1および上記第3のスイッチ回路の接続点に接続された吐き出し型の定電流源と、
上記第2および上記第4のスイッチ回路の接続点に接続された吸い込み型の定電流源と
を有するとともに、
上記複数のチャージポンプ部のすべてに対して共通であって、上記第1および上記第2のスイッチ回路の接続点から上記第3および上記第4のスイッチ回路の接続点に接続されたボルテージフォロワと、
上記複数のチャージポンプ部のすべてに対して共通であって、上記第1および上記第2のスイッチ回路の接続点に接続された出力端子と
を有し、
上記複数のチャージポンプ部のうち、第1のチャージポンプ部には、上記吐き出し型の定電流源から出力される定電流を、上記第1および上記第2のスイッチ回路の直列回路と、上記第3および上記第4のスイッチ回路の直列回路とに振り分ける制御信号が、上記位相比較回路から供給され、
上記複数のチャージポンプ部のうち、残るチャージポンプ部には、上記吐き出し型の定電流源から出力される定電流を、上記第1および上記第2のスイッチ回路の直列回路と、上記第3および上記第4のスイッチ回路の直列回路とに振り分ける制御信号と、上記第1〜第4のスイッチ回路をオフにする電位とが、第1〜第4の切り換え用のスイッチ回路を通じて供給され、
必要とするチャージポンプ電流に大きさに対応して、上記第1〜第4の切り換え用のスイッチ回路を制御するとともに、上記吐き出し型の定電流源および上記吸い込み型定電流の出力電流の大きさを変更することにより、上記出力端子に、上記必要とする大きさのチャージポンプ電流を得る
ようにしたPLL回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−246606(P2009−246606A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89372(P2008−89372)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】