説明

チューブの製造方法、チューブ及びチューブポンプ

【課題】所定長さのチューブ本体の外周面上に係合凸部を設けたチューブを容易に製造できるチューブの製造方法を提供する。また、チューブポンプ毎の吸引能力差を小さくできるチューブ及びチューブポンプを提供する。
【解決手段】合わせ面50a,51aに、チューブ本体35の外径と対応する曲率半径にて断面円弧状をなすセット用凹部53が所定方向へ延びるように形成されるともに、各係合凸部形成部材36,37と個別対応する形状のキャビティ54,55がセット用凹部53の長手方向において所定間隔Lだけ離間した各位置でセット用凹部53の周方向に沿うように形成されてなる成形型52が用いられる。そして、セット工程では、チューブ本体35を成形型52のセット用凹部53内にセットした後、各キャビティ54,55内に溶化した材料を射出することにより、各キャビティ54,55内を材料で充填させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブポンプに用いられるチューブの製造方法、チューブ、及び該チューブを用いたチューブポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタは、ターゲットに向けてインク(液体)を吐出(噴射)するノズルが記録ヘッド(液体噴射ヘッド)のノズル形成面において開口していることから、ノズルからのインク溶媒の蒸発によりインク粘度が上昇してインクの噴射不良が発生することがある。このため、こうしたプリンタには、通常、記録ヘッドをメンテナンスするためのメンテナンスユニットが設けられている。
【0003】
このメンテナンスユニットは、記録ヘッドのノズル形成面を封止可能なキャップと、キャップ内に連通したインク排出路(液体排出路)中に設けられる吸引ポンプとを備えている。そして、記録ヘッドのノズル形成面をキャップにて封止した状態で吸引ポンプを駆動させ、キャップ内に負圧を発生させて各ノズルから増粘したインクを吸引することにより、記録ヘッドからのインクの吐出不良の抑制を図っている。
【0004】
このような吸引ポンプには、通常、チューブポンプが用いられている。このチューブポンプは、有底円筒形状をなすハウジング内に、可撓性材料よりなるチューブの長手方向の中間部と、該チューブの中間部をハウジングの内周面に沿って移動しながら順次押圧可能なローラ(押圧手段)とを収容している。チューブは、所定長さのチューブ本体を備え、該チューブ本体の外周面には、その長手方向において所定間隔だけ離間した二位置に係合凸部がそれぞれ一体形成されている。また、ハウジングには、チューブがその中間部をハウジング内に配設される場合に、チューブをハウジング内に引き入れるための導入部と、チューブをハウジング外へ引き出すための導出部が設けられており、導入部及び導出部の各近傍にはチューブの各係合凸部に個別対応した係合凹部が形成されている。
【0005】
そして、チューブが、その長手方向の中間部をハウジングの内周面に沿って、例えば半周、あるいは全周に渡って円弧を描くように配設される場合、チューブの各係合凸部がハウジングに形成された各係合凹部内にそれぞれ係合されるようになっている。そのため、チューブは、その中間部がハウジング内に予め設定された配設態様に位置決めされた状態で収容される結果、吸引ポンプの駆動時にはローラから適切な押圧力が付与されるようになり、製造されたチューブポンプ毎の吸引能力に差が生じてしまうことを抑制できるものとなっていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−61245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のチューブポンプに用いられるチューブは、チューブ本体の外周面上の二位置に各係合凸部が一体形成された構成をしている。すなわち、このチューブは、成形型のキャビティ内に溶化した材料(シリコーンなど)を充填させる、いわゆる射出成形にて製造されている。しかしながら、所定長さのチューブ本体の外周面上に係合凸部が一体形成されたチューブを射出成形にて大量生産することは、成形型の作成が非常に困難であると共に成形型を複数用意する必要があるため、生産性が低くなってしまう問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、所定長さのチューブ本体の外周面上に係合凸部を設けたチューブを容易に製造できるチューブの製造方法を提供することにある。また、第2の目的は、チューブポンプ毎の吸引能力差を小さくできるチューブ及びチューブポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のチューブの製造方法は、可撓性材料からなる所定長さのチューブ本体を有し、該チューブ本体の外周面上には複数の係合凸部が設けられてなるチューブの製造方法であって、合わせ面に、前記チューブ本体の外径と対応する曲率半径にて断面円弧状をなすセット用凹部が所定方向へ延びるように形成されるともに、前記各係合凸部と個別対応する形状のキャビティが前記セット用凹部の長手方向において所定間隔だけ離間した各位置で該セット用凹部の周方向に沿うように形成されてなる成形型を用い、前記チューブ本体を前記成形型のセット用凹部内にセットするセット工程と、該セット工程の実行後、前記各キャビティ内に溶化した材料を射出することにより、前記各キャビティ内を前記材料で充填させる射出工程と、を有する。
【0009】
この構成によれば、可撓性材料からなるチューブ本体を成形型のセット用凹部内にセットした後に、各キャビティ内に溶化した材料を射出することにより、チューブ本体の外周面上に複数の係合凸部が、チューブ本体の長手方向において所定間隔だけ離間した状態で形成される。しかも、各係合凸部は、チューブ本体の周方向に沿うように形成されているため、チューブ本体から抜脱することはほとんどない。したがって、各係合凸部とチューブ本体とを一体形成する射出成形によりチューブを製造する場合に比して、所定長さのチューブ本体の外周面上に係合凸部を設けたチューブを容易に製造できる。
【0010】
本発明のチューブの製造方法は、前記射出工程にて前記各キャビティ内に充填された前記材料を冷却する冷却工程をさらに有する。
この構成によれば、各キャビティ内に充填された材料を冷却工程にて冷却することにより、各係合凸部が収縮するため、各係合凸部によってチューブ本体を径方向内側へ締付ける効果が良好に発揮される。したがって、各係合凸部のチューブ本体からの抜脱が良好に抑制される。
【0011】
本発明のチューブの製造方法において、前記各係合凸部は、前記チューブ本体を形成する材料よりも冷却された際における収縮率が高い材料にて形成されている。
この構成によれば、各係合凸部は、チューブ本体を形成する材料よりも冷却された際における収縮率が高い材料にて形成される。そのため、各キャビティ内に充填された材料を冷却することにより、各係合凸部によってチューブ本体を径方向内側へ確実に締付けることが可能になる。
【0012】
また、本発明のチューブは、可撓性材料からなる所定長さのチューブ本体と、該チューブ本体の外周面上における予め設定された位置に取着される係合凸部形成部材とを備える。
【0013】
この構成によれば、チューブの一部をチューブポンプのハウジング内に収容する際に、該ハウジングに設けられた係合凹部に対してチューブ本体の外周面上に取着されている係合凸部形成部材を係合させることにより、容易にチューブの一部をハウジング内において位置決めすることが可能になる。
【0014】
本発明のチューブは、前記係合凸部形成部材が、前記チューブ本体とは別材質で形成されている。
この構成によれば、例えば係合凸部形成部材の材質の方がチューブ本体の材質よりも冷却された際における収縮率が高い場合、成形型を用いて係合凸部形成部材をチューブ本体の外周面上に射出成形にて形成した後に冷却すると、その係合凸部形成部材がチューブ本体を径方向内側へ締付けるように収縮する。したがって、係合凸部形成部材をチューブ本体の外周面上に位置決め状態にて取着することができる。
【0015】
本発明のチューブは、前記係合凸部形成部材が、前記チューブ本体の長手方向において所定間隔だけ離間した複数位置にそれぞれ取着されている。
この構成によれば、チューブポンプのハウジング内にチューブの一部を収容する際に、チューブ本体に取着された各係合凸部形成部材をハウジングに対応形成された各係合凹部に係合させると、チューブポンプ毎におけるハウジング内でのチューブの引き回し長さをばらつきなく一定にできるため、チューブポンプ毎の吸引能力差を小さくできる。
【0016】
本発明のチューブは、前記係合凸部形成部材が、前記チューブ本体の端面から該チューブ本体の長手方向へ所定距離だけ離間した位置に取着されている。
この構成によれば、チューブポンプのハウジング外へと引き出されたチューブの端部を他の部品(例えば、キャップなど)に接続する際において、そのチューブのハウジング外への引き出し長さを係合凸部形成部材を基準にして正確に規定することができる。そのため、チューブの端部を他の部品に対してチューブの折れ曲がりや他の部品からの抜け防止を図って正常に接続できるようになる。
【0017】
本発明のチューブは、前記係合凸部形成部材が、前記チューブ本体の外周面と対応する円弧状の内周面を有しており、その内周面の径寸法は前記チューブ本体の外周面の径寸法と同じ又はそれよりも小さくなるように形成されている。
【0018】
この構成によれば、チューブ本体の外周面上に係合凸部形成部材を取着した場合、その係合凸部形成部材によるチューブ本体の径方向内側への締付け効果が良好に発揮される。そのため、係合凸部形成部材のチューブ本体からの抜脱が良好に抑制される。
【0019】
さらに、本発明のチューブポンプは、上記構成のチューブと、該チューブの前記係合凸部形成部材と対応する係合凹部を有し、該係合凹部に前記係合凸部形成部材を係合させた状態で前記チューブの長手方向の中間部を収容するハウジングと、該ハウジング内に収容された状態で前記チューブの中間部をポンプ作動時にチューブの長手方向に沿って上流側から下流側へ移動しながら順次押圧する押圧部材とを備える。
【0020】
この構成によれば、チューブポンプを組み立てる場合には、該チューブの係合凸部形成部材をハウジングの対応する係合凹部に係合させるようにして、ハウジング内にチューブの中間部を収容させる。そのため、ハウジング内では、チューブの中間部は弛緩・伸張することはない。したがって、チューブポンプ毎の吸引能力差を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1及び図3に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、略矩形箱状をなす本体ケース12を備えている。本体ケース12内の下部には、その長手方向に沿う左右方向に沿ってプラテン13が架設されている。プラテン13は、用紙Pを支持する支持台であって、本体ケース12の後壁外側に設けられた紙送りモータ14の駆動力に基づき、図示しない紙送り機構が用紙Pを左右方向と直交する前後方向に沿って給送するようになっている。
【0023】
また、本体ケース12内においてプラテン13の上方にはガイド軸15が架設される。すなわち、キャリッジ16は左右方向に貫通形成された支持孔16aにガイド軸15が挿通されることにより、このガイド軸15の長手方向に沿って往復移動自在に支持されている。また、本体ケース12の後壁内面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17a及び従動プーリ17bが回転自在に支持されている。駆動プーリ17aにはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモータ18の出力軸が連結されるとともに、これら一対のプーリ17a,17b間には、キャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。したがって、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモータ18の駆動力により無端状のタイミングベルト17を介して左右方向に移動可能となっている。
【0024】
また、図1に示すように、キャリッジ16の下面側には、記録ヘッド19が設けられる一方、キャリッジ16上には記録ヘッド19に対してインクを供給するためのインクカートリッジ21が着脱可能に搭載されている。そして、このインクカートリッジ21内に収容された液体としてのインクは、図2に示すように、図示しない圧電素子の駆動により記録ヘッド19の下面にて構成されるノズル形成面19aに開口するノズル20に供給されるようになっている。
【0025】
また、本体ケース12内の一端部(図1では右端部)、すなわち、用紙Pと位置対応しない非印刷領域には、記録ヘッド19をメンテナンスする場合にキャリッジ16を位置させるためのホームポジションが設けられている。そして、このホームポジションに配置された状態のキャリッジ16の下方には、記録ヘッド19からの用紙Pに対するインク吐出が良好に維持されるように、各種のメンテナンス動作を行うメンテナンスユニット22が設けられている。
【0026】
次に、本実施形態のメンテナンスユニット22について図2に基づき以下説明する。
図2に示すように、メンテナンスユニット22は、記録ヘッド19のノズル形成面19a(具体的には、各ノズル20が形成された領域)を封止可能な上側が開口した有底四角箱状をなす合成樹脂製のキャップ23を備えている。キャップ23内には、該キャップ23の内底面全体を覆うように、可撓性を有する多孔質材料からなる四角板状のインク吸収材24が敷設されている。キャップ23の上面全体には、ゴム等の可撓性部材よりなる四角枠状のシール部材25が設けられている。
【0027】
また、キャップ23には、該キャップ23を昇降させるための昇降装置26が連結されている。そして、キャリッジ16を非印刷領域に移動させた状態で、キャップ23を昇降装置26によって上昇させることで、シール部材25の上面が記録ヘッド19のノズル形成面19aに当接され、該ノズル形成面19aがキャップ23により封止されるようになっている。なお、キャップ23がノズル形成面19aを封止した状態では、インク吸収材24の上面は、ノズル形成面19aから僅かに離間するようになっている。
【0028】
キャップ23の下面には、該キャップ23内からキャップ23外へインクを排出させる排出通路27aを内部に有する排出部27が下側に延びるように設けられている。排出部27には、可撓性材料(例えばシリコーン樹脂)よりなる所定長さの排出チューブ28の一端部(上流側の端部)28aが接続されるとともに、排出チューブ28の他端部(下流側の端部)28bは、直方体形状をなす廃インクタンク29内に挿入されている。したがって、キャップ23内と廃インクタンク29内とは、排出チューブ28を介して連通されている。また、排出チューブ28の中間部には、キャップ23内に吸引力を及ぼすために駆動されるチューブポンプ30が配設されている。
【0029】
そして、記録ヘッド19のノズル形成面19a(各ノズル20)をキャップ23により封止した状態でチューブポンプ30を駆動することで、各ノズル20から増粘したインクが気泡等とともに吸引され、キャップ23及び排出チューブ28を介して廃インクタンク29内に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。なお、廃インクタンク29内には、該廃インクタンク29内に排出されたインクを吸収保持する廃インク吸収材31が収容されている。
【0030】
次に、本実施形態のチューブポンプ30について図3〜図4に基づき以下説明する。
図3に示すように、チューブポンプ30は、本体ケース12に固定された有底略円筒形状のポンプケース(ハウジング)32を備えている。このポンプケース32内には、平面視円形状をなすポンプホイル33がポンプケース32の軸心に設けられたホイル軸34を中心に回動可能に収容されている。また、ポンプケース32内には、排出チューブ28の長手方向における中間部28cがポンプケース32の周壁32aの内面に沿うようにして収容されている。
【0031】
排出チューブ28は、図4(a)(b)に示すように、所定長さ(後述する所定間隔L以上の長さ)を有する円筒形状のチューブ本体35を備えている。このチューブ本体35は、押出成形にて成形された押出成型品(すなわち、長尺のチューブ)を所定長さに切断することにより形成されている。このチューブ本体35において排出チューブ28の中間部28cに対応する位置には、円環状をなす係合凸部としての第1係合凸部形成部材36がチューブ本体35を径方向内側へ締付けるように取着されている。具体的には、第1係合凸部形成部材36は、その円弧状をなす内周面36aがチューブ本体35の外周面35aに密接するように取着されている。そして、第1係合凸部形成部材36の内周面36aの径寸法はチューブ本体35の外周面35aの径寸法よりも小さくなるように形成されている。そのため、チューブ本体35において第1係合凸部形成部材36が取着された部位の外径は、チューブ本体35における第1係合凸部形成部材36の非取着部位の外径よりも「1〜2%」程度小さくなっている。
【0032】
また、チューブ本体35には、その長手方向において第1係合凸部形成部材36から予め設定された所定間隔Lだけ離間した位置に、円環状をなす係合凸部としての第2係合凸部形成部材37がチューブ本体35を径方向内側へ締付けるように取着されている。具体的には、第2係合凸部形成部材37は、その円弧状をなす内周面37aがチューブ本体35の外周面35aに密接するように取着されている。そして、第2係合凸部形成部材37の内周面37aの径寸法はチューブ本体35の外周面35aの径寸法よりも小さくなるように形成されている。そのため、チューブ本体35において第2係合凸部形成部材37が取着された部位の外径は、チューブ本体35における第2係合凸部形成部材37の非取着部位の外径よりも「1〜2%」程度小さくなっている。
【0033】
ポンプケース32の周壁32aには、排出チューブ28をポンプケース32内に導入するための導入部38が外方に向けて突出するように形成されている。この導入部38の内面は、チューブ本体35の外径と対応する曲率半径の断面円弧状をなしている。また、導入部38の内面側には、第1係合凸部形成部材36に対応した形状をなす第1係合凹部39が凹み形成されている。そして、この第1係合凹部39内には、第1係合凸部形成部材36が嵌入状態で係合されるようになっている。
【0034】
また、ポンプケース32の周壁32aには、導入部38の中心線(図3では二点鎖線で示す。)S1と略平行な中心線(図3では二点鎖線で示す。)S2を有する導出部40が外方に向けて突出するように形成されている。この導出部40の内面は、チューブ本体35の外径と対応する曲率半径の断面円弧状をなしている。そして、導出部40を介して排出チューブ28における中間部28cの下流側部位がポンプケース32内から外部に導出されている。また、導出部40の内面側には、第2係合凸部形成部材37に対応した形状をなす第2係合凹部41が凹み形成されている。そして、この第2係合凹部41内には、第2係合凸部形成部材37が嵌入状態で係合されるようになっている。
【0035】
この第2係合凹部41は、ポンプケース32の周方向において予め設定された所定間隔Lだけ第1係合凹部39とは離間した位置に形成されている。そのため、ポンプケース32内には、各係合凸部形成部材36,37を個別対応する各係合凹部39,41に係合させることにより、排出チューブ28の中間部28cがチューブポンプ30毎でのばらつきのない一定の配設長さでもって弛緩・伸張することなく略「U」字状をなした状態で収容されている。
【0036】
また、ポンプケース32の導入部38及び導出部40からは、排出チューブ28(チューブ本体35)の各端部28a,28bが引き出されている。これら排出チューブ28(チューブ本体35)の各端部28a,28bは、その端面からチューブ本体35の長手方向へ所定距離だけ離間した各位置に前述した各係合凸部形成部材36,37が取着されているため、これら各係合凸部形成部材36,37を基準にしてポンプケース32外への各引き出し長さが正確に規定されることになる。そのため、ポンプケース32外へと引き出された排出チューブ28(チューブ本体35)の各端部28a,28bを他の部品(例えばキャップ23の排出部27)に接続する場合、それらの端部28a,28bを排出チューブ28(チューブ本体35)の折れ曲がりや他の部品(キャップ23の排出部27)からの抜け防止を図って正常に接続できる。
【0037】
ポンプホイル33には、一対の外側に膨らむ円弧状をなすローラ案内溝42,43がホイル軸34を挟んで対向するように形成されている。各ローラ案内溝42,43は、それらの一端がポンプホイル33の外周側に位置するとともに、それらの他端がポンプホイル33の内周側に位置している。すなわち、両ローラ案内溝42,43は、それらの一端から他端に向かうほど、徐々にポンプホイル33の外周部から遠ざかるように延びている。両ローラ案内溝42,43内には、一対の押圧部材としてのローラ44,45が、回動軸44a,45aを挿通した状態でそれぞれ支持されている。なお、両回動軸44a,45aは、両ローラ案内溝42,43内をそれぞれ摺動自在になっている。
【0038】
各ローラ44,45は、ポンプホイル33が正方向(図3の矢印方向)に回動すると、各ローラ案内溝42,43の一端側(ポンプホイル33の外周側)に移動するようになっている。そして、ポンプホイル33が更に正方向に回動した場合には、各ローラ44,45が、排出チューブ28の中間部28cを上流側から下流側へ順次押し潰すようになっている。すなわち、記録ヘッド19のノズル形成面19a(各ノズル20)をキャップ23により封止した状態でポンプホイル33が正方向に回動した場合には、チューブポンプ30よりも上流側の排出チューブ28の内部が減圧され、キャップ23内に負圧が発生するようになっている。その結果、記録ヘッド19からは、各ノズル20内の増粘したインクが気泡等とともにキャップ23内に排出され、該排出されたインク(廃インク)が排出チューブ28を介して廃インクタンク29内に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。
【0039】
次に、本実施形態の排出チューブ28を製造する際に用いられる成形型について、図5及び図6に基づき以下説明する。
図5及び図6に示すように、成形型52は、上型50及び下型51を備えている。上型50及び下型51の合わせ面50a,51a側には、チューブ本体35の外径と略同一の曲率半径にて断面円弧状をなすセット用凹部53が所定方向(図5及び図6では左右方向)へ延びるように形成されている。すなわち、このセット用凹部53は、その断面形状が略円形状をなすように形成されている。そして、このセット用凹部53内には、その内周面53aとチューブ本体35の外周面35aとの間に隙間が形成されることなく、該チューブ本体35がセットされる。
【0040】
また、上型50及び下型51の合わせ面50a,51a側には、セット用凹部53内にセットされたチューブ本体35の各係合凸部形成部材36,37に個別に対応したキャビティ54,55が所定方向において所定間隔Lだけ離間した位置に形成されている。また、各キャビティ54,55は、各係合凸部形成部材36,37の形状に対応して、セット用凹部53の周方向に沿う円環状をなしている。また、上型50には、各キャビティ54,55内にチューブ本体35の成形材料(本実施形態ではシリコーン樹脂)とは別材質の溶化した材料(例えば、ポリオキシメチレン(POM))を射出するための射出用通路56がキャビティ54,55毎に対応するように形成されている。さらに、下型51には、冷却水が流通可能な冷却水用通路57が形成されており、該冷却水用通路57では、冷却装置58から供給された冷却水が流通するようになっている。
【0041】
次に、成形型52を用いた排出チューブ28の製造方法について図7に基づき以下説明する。
図7に示すように、セット工程では、図示しない加熱装置を駆動させることにより、上型50及び下型51が加熱され、その状態で下型51側のセット用凹部53内にチューブ本体35がセットされる(ステップS10)。そして、上型50を下降させることにより、上型50及び下型51からなるセット用凹部53内にチューブ本体35が収容される。続いて、射出工程では、溶化した材料(POM)が各キャビティ54,55内に射出されることにより、各キャビティ54,55内には、溶化した材料(POM)が充填される(ステップS11)。なお、各キャビティ54,55内に射出される場合の材料の温度は、その射出時にチューブ本体35を熱変形させない温度である、例えば約250℃に設定されている。
【0042】
そして、冷却工程では、上記加熱装置の駆動を停止させると共に、冷却装置58を駆動させて下型51内の冷却水用通路57内に冷却水を流通させる。すなわち、冷却工程では、下型51が冷却水によって直接冷却されるとともに、該下型51を介して上型50が間接的に冷却される(ステップS12)。すると、上型50及び下型51は、各キャビティ54,55内の材料と熱交換を行うことにより、該各キャビティ54,55内の材料(POM)を冷却させる。そして、各キャビティ54,55内の材料(POM)が硬化する結果、各係合凸部形成部材36,37がそれぞれ形成される。
【0043】
その後、各キャビティ54,55内の材料(POM)が完全に硬化したことが確認されると、脱型工程が実行される。この脱型工程では、上型50が上方に退避(移動)し、下型51のセット用凹部53内から排出チューブ28が脱型される(ステップS13)。
【0044】
このように製造された排出チューブ28では、各キャビティ54,55内で溶化していた材料(POM)が冷却工程にて硬化することにより、各係合凸部形成部材36,37は、径方向内側へそれぞれ収縮する。この際、チューブ本体35も冷却されるが、該チューブ本体35は、係合凸部形成部材36,37の成形材料であるポリオキシメチレン(POM)とは別材質の成形材料(シリコーン樹脂)により形成されているため、冷却によって収縮することはほとんどない。そのため、各係合凸部形成部材36,37は、その収縮によりチューブ本体35を径方向内側へそれぞれ締付ける。しかも、上述したように、チューブ本体35において係合凸部形成部材36,37が取着された部位の外径は、チューブ本体35における係合凸部形成部材36,37の非取着部位の外径よりも「1〜2%」程度小さくなるだけである。
【0045】
そのため、チューブ本体35において係合凸部形成部材36,37が取着された部位では、チューブ本体35内のインクの流通路の通路断面積が狭くなりすぎることはない。したがって、該インクの流通路の通路断面積が狭くなりすぎる場合とは異なり、該流通路内においてインクが詰まってしまったり、インクの円滑な流動に支障をきたしたりすることが抑制される。
【0046】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)可撓性材料からなるチューブ本体35を成形型52のセット用凹部53内にセットした後に、各キャビティ54,55内に溶化した材料が射出されると、各キャビティ54,55内は、溶化した材料にてそれぞれ充填された状態になる。その後、各キャビティ54,55内の溶化した材料が冷却されると、チューブ本体35の外周面35a上には、各係合凸部形成部材(係合凸部)36,37がチューブ本体35の長手方向において所定間隔Lだけ互いに離間した位置であって且つ排出チューブ28の各端部28a,28bの端面から所定距離だけ離間した各位置に形成される。しかも、各係合凸部形成部材36,37は、チューブ本体35の周方向に沿うように形成されているため、チューブ本体35から抜脱することはほとんどない。また、各係合凸部(各係合凸部形成部材36,37)とチューブ本体35とを一体形成する射出成形により排出チューブ28を製造する場合とは異なり、排出チューブ28を大量生産するために成形型を大量に用意する必要もない。したがって、所定長さのチューブ本体35の外周面35a上に各係合凸部形成部材36,37を設けた排出チューブ28を容易に製造できる。
【0047】
(2)各キャビティ54,55内に充填された材料を、下型51の冷却水用通路57内に冷却水を流通させることにより、冷却させている。この冷却工程により、各キャビティ54,55内に充填された材料が硬化するとともに、硬化することにより形成された各係合凸部形成部材(係合凸部)36,37が、径方向内側へ収縮する。そのため、各係合凸部形成部材36,37がチューブ本体35を径方向内側へ締付ける効果が良好に発揮される。したがって、各係合凸部形成部材36,37のチューブ本体35からの抜脱を良好に抑制できる。
【0048】
(3)各係合凸部形成部材(係合凸部)36,37は、ポリオキシメチレン(POM)で形成されており、該ポリオキシメチレンは、チューブ本体35を形成するシリコーン樹脂よりも冷却された際における収縮率が高い。そのため、各キャビティ54,55内に充填されたポリオキシメチレンを冷却することにより、各係合凸部形成部材36,37によってチューブ本体35を径方向内側へ締付ける効果を良好に発揮させることができる。
【0049】
(4)各係合凸部形成部材36,37は、円環状をなすように形成されているため、各係合凸部形成部材36,37によってチューブ本体35を径方向内側へ締付ける効果を良好に発揮できる。したがって、各係合凸部形成部材36,37のチューブ本体35からの抜脱を良好に抑制できる。
【0050】
(5)チューブ本体35において係合凸部形成部材36,37が取着された部位の外径は、チューブ本体35における係合凸部形成部材36,37の非取着部位の外径よりも「1〜2%」程度だけ小さくなる。そのため、チューブ本体35において係合凸部形成部材36,37が取着された部位の通路断面積は、チューブ本体35における係合凸部形成部材36,37の非取着部位の通路断面積とはほとんど変わらない。そのため、チューブ本体35の一部が潰れてしまうことにより、その部分の通路断面積が、他の部分の通路断面積の半分程度になってしまう場合とは異なり、チューブ本体35のインクの流通路内でインクが詰まってしまったり、該流通路内でインクの円滑な流動に支障をきたしたりすることを抑制できる。
【0051】
(6)本実施形態では、チューブ本体35は、押出成型にて形成されているため、チューブ本体35(排出チューブ28)を射出成形で形成する場合に比して、安価且つ速やかに製造することができる。
【0052】
(7)チューブポンプ30を組み立てる場合には、排出チューブ28の各係合凸部形成部材36,37をポンプケース(ハウジング)32の係合凹部39,41にそれぞれ係合させるようにして、ポンプケース32内に排出チューブ28の中間部28cをチューブポンプ30毎でのばらつきのない一定の配設長さでもって収容させている。そのため、ポンプケース32内では、チューブ本体35が弛緩・伸張することがないことから、チューブポンプ30の駆動時には各ローラ44,45から適切な押圧力がチューブ本体35にばらつきなく付与されるようになる。したがって、チューブポンプ30毎の吸引能力差を小さくできる。
【0053】
(8)また、ポンプケース32の係合凹部39,41内に排出チューブ28の各係合凸部形成部材36,37を係合させることにより、排出チューブ28の中間部28cを、弛緩・伸張することなくポンプケース32内に収容できる。すなわち、ポンプケース32において、排出チューブ28の中間部28cを、容易に位置決めすることができる。したがって、チューブポンプ30を効率良く製造できる。
【0054】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・実施形態において、チューブポンプ30は、ポンプケース32内において排出チューブ28の上流側と下流側とが交差するように形成されたポンプであってもよい。
【0055】
・実施形態において、チューブ本体35には、チューブ本体35を径方向内側へ締付け可能で且つポンプケース32に係合可能な構成であれば任意の形状をなす係合凸部形成部材であってもよい。例えば、図8に示すように、略「C」字状をなす係合凸部形成部材60が、チューブ本体35に設けられてもよい。
【0056】
・実施形態において、係合凸部形成部材を形成する材料は、溶化した状態から冷却する際に、収縮しつつ硬化する材料であれば任意の材料(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS))であってもよい。
【0057】
・実施形態において、チューブ本体35の外周面35a上に取着される係合凸部形成部材は、係合凸部形成部材36及び係合凸部形成部材37のうち何れか一つであってもよい。この場合は、ポンプケース32に設けられる係合凹部も係合凹部39及び係合凹部41のうち何れか一つとなる。
【0058】
・実施形態において、係合凸部形成部材36,37の内周面36a,37aの径寸法はチューブ本体35の外周面35aの径寸法と同じに設定されたものであってもよい。この場合、係合凸部形成部材36,37は、その内周面36a,37aがチューブ本体35の外周面35aに面接触することによる摩擦抵抗でもって、チューブ本体35に対し位置決め状態で取着されることになる。
【0059】
・実施形態において、排出チューブ28を製造する工程で、下型51の冷却水用通路内に冷却水を流通させる冷却工程を設けなくてもよい。すなわち、強制的に各キャビティ54,55内の溶化した材料を冷却させるのではなく、該各キャビティ54,55内の溶化した材料を、自然冷却させるようにしてもよい。
【0060】
・実施形態において、成形型52のセット用凹部53は、その内部にチューブ本体35全体がセット可能な構成ではなく、該チューブ本体35において各係合凸部形成部材36,37が取着される部位のみセットされる構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態におけるインクジェット式プリンタの概略斜視図。
【図2】本実施形態におけるメンテナンスユニットの模式図。
【図3】本実施形態におけるチューブポンプの概略平面図。
【図4】(a)は本実施形態における排出チューブの概略側面図、(b)は排出チューブの一部の概略側断面図。
【図5】本実施形態における成形型の概略断面図。
【図6】本実施形態における成形型の概略断面図。
【図7】排出チューブの製造工程を説明するフローチャート。
【図8】別の実施形態の係合凸部形成部材が取着された排出チューブの概略平面図。
【符号の説明】
【0062】
28…排出チューブ、28c…中間部、30…チューブポンプ、32…ポンプホイル(ハウジング)、35…チューブ本体、35a…外周面、36,37,60…係合凸部形成部材(係合凸部)、36a,37a…内周面、39,41…係合凹部、44,45…ローラ(押圧部材)、50a,51a…合わせ面、52…成形型、53…セット用凹部、54,55…キャビティ、L…所定間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料からなる所定長さのチューブ本体を有し、該チューブ本体の外周面上には複数の係合凸部が設けられてなるチューブの製造方法であって、
合わせ面に、前記チューブ本体の外径と対応する曲率半径にて断面円弧状をなすセット用凹部が所定方向へ延びるように形成されるともに、前記各係合凸部と個別対応する形状のキャビティが前記セット用凹部の長手方向において所定間隔だけ離間した各位置で該セット用凹部の周方向に沿うように形成されてなる成形型を用い、
前記チューブ本体を前記成形型のセット用凹部内にセットするセット工程と、
該セット工程の実行後、前記各キャビティ内に溶化した材料を射出することにより、前記各キャビティ内を前記材料で充填させる射出工程と、
を有するチューブの製造方法。
【請求項2】
前記射出工程にて前記各キャビティ内に充填された前記材料を冷却する冷却工程をさらに有する請求項1に記載のチューブの製造方法。
【請求項3】
前記各係合凸部は、前記チューブ本体を形成する材料よりも冷却された際における収縮率が高い材料にて形成されている請求項2に記載のチューブの製造方法。
【請求項4】
可撓性材料からなる所定長さのチューブ本体と、該チューブ本体の外周面上における予め設定された位置に取着される係合凸部形成部材とを備えるチューブ。
【請求項5】
前記係合凸部形成部材は、前記チューブ本体とは別材質で形成されている請求項4に記載のチューブ。
【請求項6】
前記係合凸部形成部材は、前記チューブ本体の長手方向において所定間隔だけ離間した複数位置にそれぞれ取着されている請求項4又は請求項5に記載のチューブ。
【請求項7】
前記係合凸部形成部材は、前記チューブ本体の端面から該チューブ本体の長手方向へ所定距離だけ離間した位置に取着されている請求項4〜請求項6のうち何れか一項に記載のチューブ。
【請求項8】
前記係合凸部形成部材は、前記チューブ本体の外周面と対応する円弧状の内周面を有しており、その内周面の径寸法は前記チューブ本体の外周面の径寸法と同じ又はそれよりも小さくなるように形成されている請求項4〜請求項7のうち何れか一項に記載のチューブ。
【請求項9】
請求項4〜請求項8のうち何れか一項に記載のチューブと、
該チューブの前記係合凸部形成部材と対応する係合凹部を有し、該係合凹部に前記係合凸部形成部材を係合させた状態で前記チューブの長手方向の中間部を収容するハウジングと、
該ハウジング内に収容された状態で前記チューブの中間部をポンプ作動時にチューブの長手方向に沿って上流側から下流側へ移動しながら順次押圧する押圧部材と
を備えるチューブポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−55773(P2008−55773A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235779(P2006−235779)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】