説明

チューブ取り付け構造、チューブ及びクランプ

【課題】チューブの軸方向及び回転方向の位置を良好な作業性をもって固定可能なチューブ取り付け構造、チューブ及びクランプを提供すること。
【解決手段】外周40に複数の凸部を有するチューブ1と、チューブ1を固定するクランプ2とを有するチューブ取り付け構造10において、チューブ1は、第1外径R1の環状凸部11と、該チューブ1の軸方向の2つの環状凸部11i、11jの間に、第1外径R1よりも小さい第2外径R2の凸部であって一部に平面部A(12Ya)を有する環状の小径凸部12と、を有し、クランプ2は、小径凸部12を装着する腕部22の幅長L2が2つの環状凸部11i、11jの間の距離L1と同程度であって、腕部22に平面部A(12Ya)と対面する平面部B(2a)と、を有する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブと、該チューブを固定するクランプとを有するチューブ取り付け構造、チューブ及びクランプに関し、特に、軸方向の位置と回転方向の位置を固定するチューブ取り付け構造、チューブ及びクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
チューブ状の部材を所望の位置を固定する場合、チューブの両端の位置決めのためにチューブの軸方向を固定すると共に、屈曲したチューブ等であればさらに軸を中心にした回転方向の位置を固定する。このようにチューブを取り付けるため、チューブとチューブを固定するためのクランプのそれぞれに嵌合構造を形成し、該嵌合構造の嵌合によりチューブの軸方向及び回転方向の位置を固定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図5は特許文献1に記載された嵌合したチューブ101及びクランプ102の断面図を示す。特許文献1記載のチューブ101は外周の一部に凸リブ101a、101bを有し、クランプ102は凸リブ101a、101bと勘合する凹部102a、102bを有する。取り付け前のクランプ102はヒンジ102cにより図示の矢印方向に開閉可能で、凸リブ101a、101bが凹部102a、102と嵌合するようにヒンジ102cによりクランプ102を図示の如く閉じることで、クランプ102に対しチューブ101の回転が防止された状態が得られる。
【特許文献1】特開2000−337557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のチューブ取り付け構造は、クランプ102の腕部(チューブ101の外周と接する面)の一部に凹部102a、102bを形成するため、クランプ102をチューブ101に装着する際、凸リブ101a、101bと凹部102a、102の嵌合を目視しながら作業する必要がある。より正確には嵌合状態の凹部102a、102bを目視することはできず、実際には触感をもって嵌合の是非を判断しなければならないため作業性が悪いという問題がある。したがって、チューブ101とクランプ102の相対位置によっては容易に装着できなくなり、チューブ101の取り付けに時間がかかるという問題がある。
【0005】
また、嵌合状態を目視により確認できず、チューブ101とクランプ102が多少ずれて組み付けられたとしてもそのずれを察知することが困難であるため、回転方向の位置決めが不正確になるおそれがある、また、凸リブ101a、101bと凹部102a、102bの嵌合がずれた状態で装着した場合、チューブ101の凸部101a、101bがクランプ102の凹部102a、102b以外の部分(例えば、部位102d)と干渉し、チューブ101の凸部101a、101bが潰れ、流動体が流動する有効断面積が確保できない不具合が起きる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、チューブの軸方向及び回転方向の位置を良好な作業性をもって固定可能なチューブ取り付け構造、チューブ及びクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、外周に複数の凸部を有するチューブと、チューブを固定するクランプとを有するチューブ取り付け構造において、チューブは、第1外径の環状凸部と、該チューブの軸方向の2つの環状凸部の間に、第1外径よりも小さい第2外径の凸部であって一部に平面部Aを有する環状の小径凸部と、を有し、クランプは、小径凸部を装着する腕部の幅長が2つの環状凸部の間の距離と同程度であって、腕部に平面部Aと対面する平面部Bと、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、クランプの外観から明らかな平面部をチューブの平面部と対面させるので腕部を目視することなく容易に作業ができ、小径凸部に隣接した環状凸部をクランプ2が係止することで軸方向の位置を、互いの平面部が対向することで回転方向の位置をそれぞれ固定することができる。
【0009】
また、本発明の一形態において、チューブはコルゲートチューブである。コルゲートチューブであればその製造方法により、工程を増やさず小径凸部を形成することができ、また、コスト増を最小限に抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
チューブの軸方向及び回転方向の位置を良好な作業性をもって固定可能なチューブ取り付け構造、チューブ及びクランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0012】
図1はチューブ1の概略斜視図の一例を、図2は小径凸部12を含むチューブ1の一部とクランプ2の斜視図の一例をそれぞれ示す。チューブ1は、外周に複数の環状凸部11a〜11n(区別しない場合には単に環状凸部11という)を有するように構成され、この環状凸部11a〜11nの少なくとも1つを装着するクランプ2により、例えば燃料タンクまでの所定部にチューブ1が固定される。本実施形態では車載装置を例にして説明するが、本実施形態のチューブ取り付け構造10はチューブ1をクランプ2により被固定装置に固定させる場合の全てに適用可能である。
【0013】
チューブ1は、一部の環状凸部12X〜12Zの外径が他の環状凸部11よりも小さく設計されている。したがって、環状凸部12X〜12Zは環状凸部11の一部であるが、説明のため以下では環状凸部12X〜12Zを小径凸部12X〜12Z(区別しない場合には単に小径凸部12という)と称す。
【0014】
この小径凸部12をクランプ2が装着する(一部を除き取り囲む)ことで、小径凸部12と隣接した環状凸部11i及び11jがクランプ2と系止し、チューブ1の軸方向の位置が固定される。また、小径凸部12は環状形状の一部に平面部12Xa、12Xb、12Ya、12Yb、12Za、12Zbを有するように構成されるため、クランプ2が腕部(チューブ1と接する面)22に有する平面部12Xa等がチューブ1の平面部と対面することでチューブ1の回転が規制され回転方向の位置が固定される。
【0015】
クランプ2の平面部2aがどこにあるかはクランプ2の外観から明らかであるので、本実施形態のチューブ取り付け構造10では、腕部22を目視することなく容易に取付ができる。なお、チューブ1及びクランプ2は例えば樹脂で構成されるが、金属やセラミックなどどのような材質で構成してもよい。
【実施例1】
【0016】
図3(a)はチューブ1のAA線断面図及びBB線断面図を、図3(b)はCC線断面図を示す。チューブ1は環状凸部11が連続して形成された例えばコルゲートチューブであり、図3(a)に示すように環状凸部11と小径凸部12、又は、その有無に関わらず、流通路30の内径Mは共通となっている。また、クランプ2は固定用のねじ穴21を有し、被固定装置の例えばブラケットとボルト等により車両に固定される。
【0017】
チューブ1は、環状凸部11i〜11jの間に小径凸部12X〜12Zを有するように構成され、小径凸部12X〜12Zの外径R2は環状凸部11i及び11jの外径R1よりも小さい(R1>R2)。外径R1と外径R2の差異は好ましくはクランプ2の厚みd以上であるが、クランプ2が環状凸部11i及び11jと係止するための差異があればよい。
【0018】
環状凸部11iの小径凸部12側の端面から環状凸部11jの小径凸部12側の端面までの距離L1は、クランプ2の幅長L2と同程度であるので、クランプ2が小径凸部12を装着すると、クランプ2が環状凸部11i及び11jを系止するのでチューブ1の軸方向の位置を固定すると共に、軸方向の移動を防止することができる。
【0019】
また、図3(a)に示すように、小径凸部12は環状外周面40に平面部12Ya及び平面部12Yaと略平行な平面部12Ybを有する。同様の平坦部を小径凸部12X、12Zも有するが以下では平坦部12Ya、12Ybを用いて説明する。
【0020】
クランプ2は、腕部22に互いに平行な1対の平面部2a、2bを有する。クランプ2がチューブ1を装着する際、小径凸部12の平面部12Yaはクランプ2の平面部2aと、小径凸部12の平面部12Ybはクランプ2の平面部2bとそれぞれ対面するため、チューブ1の回転方向の位置を固定すると共に、回転を防止することができる。
【0021】
なお、クランプ2の2つの平面部2a、2b間の距離L3を、小径凸部12の2つの平面図12Ya、12Yb間の外径R3よりも若干短く設計することで(R3>L3)、クランプ2にチューブ1のしめ代を持たせることができ、確実に回転方向の位置を確実に固定できる(あそびがない)。
【0022】
このように、チューブ1の平面部12Ya、12Ybとクランプ2の平面部2a、2bをそれぞれ対面させるように装着するのであれば、クランプ2の腕部22を目視で確認しなくても作業できるため、作業性が大幅に向上する。また、小径凸部12の外径R2とR3を十分に異なるように設計すれば、クランプ2の誤装着の可能性が極めて小さくなるため、誤装着によるチューブ1の損傷や流通路30の変形等を防止できる。
【0023】
また、コルゲートチューブに必然的に形成される凸部(本実施形態では小径凸部12)に平面部12Ya,12Ybを設けるので、チューブ1の流通路30の有効断面積に影響を与えるおそれがない。
【0024】
図3(b)に示すように、小径凸部12の内側の流通路30は、環状凸部11と同じ有効断面積を容易に確保できる。これに対し、仮に、コルゲートチューブでないストレートチューブに平面部を設けることを想定すると、有効断面積に変化が生じ流動体の不測の流動抵抗を生じさせるおそれがある。
【0025】
また、コルゲートチューブは一般に押し出し成形されたストレートパイプにウォームギアのような円盤状の型を順に通過させストレートパイプの外周に環状凸部11を形成するが、一部の型の大きさを変えるだけで、その部分の環状凸部11の外径を調整できるため、コスト増を最小限に抑えて小径凸部12を製造できる。また、このようなコルゲートチューブの製造方法により、小径凸部12を形成するための工程を増やす必要もない。
【0026】
以上のように、本実施形態のチューブ取り付け構造10は、チューブ1にクランプ2を所定方向から装着するだけで軸方向及び回転方向の位置を固定でき、また、誤組み付けの可能性が極めて小さいため作業性を向上させることができる。
【0027】
なお、チューブ1はコルゲートチューブであることが好適となるが、チューブ1の全長にわたって環状凸部11a〜11nを有する必要はなく、チューブ1はクランプ2が系止するための少なくとも2つの環状凸部11i及び11jを有すればよい。また、小径凸部12は複数設けられる必要はなく、クランプ2の腕部22に接する1以上の小径凸部12があればよい。また、小径凸部12において2つの平面部12Ya、12Yb以外の環状外周面40の形状は円形でなくともよく、例えば、平面部12Ya、12Ybと共に多角形を構成するなどどのような形状であってもよい。
【実施例2】
【0028】
実施例1では、チューブ1及びクランプ2がそれぞれ2つの平面部を有することとしたが、チューブ1又はクランプ2の平面部は複数でなくてもよい。なお、本実施例において、小径凸部12の外径R2と環状凸部11i及び11jの外径R1の関係(R1>R2)、環状凸部11iと11j間の距離L1とクランプ2の幅長L2の関係、については実施例1と同じである。
【0029】
図4(a)は小径凸部12の、図4(b)はクランプ2の、図4(c)はチューブ1をクランプ2に装入した状態の、それぞれチューブ1の軸に垂直な断面図を示す。なお、図4において、図2と同一構成部分には同一の符号を付した。
【0030】
小径凸部12はその一部に1つの平面部12Yaを有し、クランプ2は腕部22に1つの平面部2aを有する。クランプ2がチューブ1を装着する際、小径凸部12の平面部12Yaとクランプ2の平面部2aとが対面するよう、図4(c)のように装着される。したがって、チューブ1の回転方向の位置を固定すると共に、回転を防止することができる。また、実施例1と同様に軸方向の位置を固定できる。
【0031】
ところで、平面部12Yaに垂直方向の外径R3は、クランプ2の開口部23の長さL4よりも長い(R3>L4)が、装着時にはクランプ2の弾性を利用して端部24を矢印方向に揺動することで開口部23を開拡し、小径凸部12を装着する。また、装着後は外径R3が開口部23の長さL4よりも長いことで、チューブ1がクランプ2から逸脱することが防止される。
【0032】
チューブ1の平面部12Yaとクランプ2の平坦部2aを対面させるように装着するので、クランプ2の腕部22を目視で確認しなくても作業でき、作業性が大幅に向上しまた誤装着を防止することができる。
【0033】
なお、仮に平面部12Yaと平面部2aが対面しない状態でクランプ2を装着しても、その場合は平面部12Yaと小径凸部12とが点接触となるためクランプ2は容易に回転可能であり、少しクランプ2を回転させるだけで平面部2aが平面部12Yaに対面する回転位置になるよう容易に修正することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態のチューブ取り付け構造10は、チューブ1の軸方向及び回転方向の位置を良好な作業性をもって固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】チューブ及びクランプの概略斜視図の一例である。
【図2】小径凸部を含むチューブの一部とクランプの斜視図の一例である。
【図3】チューブの断面図の一例である。
【図4】小径凸部及びクランプの軸に垂直な断面図の一例である。
【図5】従来のチューブ取り付け構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 チューブ
2 クランプ
2a、2b 平面部
10 チューブ取り付け構造
11、11a〜11n 環状凸部
12、12X〜12Z 小径凸部
12Xa、12Xb、12Ya,Yb、12Za、12Zb 平面部
21 ねじ穴
22 腕部
30 流通路
40 環状外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に複数の凸部を有するチューブと、前記チューブを固定するクランプとを有するチューブ取り付け構造において、
前記チューブは、
第1外径の環状凸部と、
該チューブの軸方向の2つの前記環状凸部の間に、第1外径よりも小さい第2外径の前記凸部であって一部に平面部Aを有する環状の小径凸部と、を有し、
前記クランプは、
前記小径凸部を装着する腕部の幅長が2つの前記環状凸部の前記間の距離と同程度であって、前記腕部に前記平面部Aと対面する平面部Bと、を有する、
ことを特徴とするチューブ取り付け構造。
【請求項2】
前記チューブはコルゲートチューブである、ことを特徴とする請求項1記載のチューブ取り付け構造。
【請求項3】
クランプの腕部に装着されることで所定部に取り付けられるチューブにおいて、
第1外径の環状凸部と、
該チューブの軸方向の2つの前記環状凸部の間に、第1外径よりも小さい第2外径の環状の凸部であって一部に平面部Aを有する環状の小径凸部と、を有し、
前記腕部の幅長が2つの前記環状凸部の前記間の距離と同程度であって、前記腕部に平面部Bを有する前記クランプにより、前記平面部Aと平面部Bが対面するように前記小径凸部が装着される、
ことを特徴とするチューブ。
【請求項4】
第1外径の環状凸部と、該チューブの軸方向の2つの前記環状凸部の間に、第1外径よりも小さい第2外径の前記凸部であって一部に平面部Aを有する環状の小径凸部と、を有するチューブを、
腕部に装着して所定部に取り付けるクランプにおいて、
前記腕部の幅長が2つの前記環状凸部の前記間の距離と同程度であって、前記腕部に平面部Bを有し、前記平面部Bが前記平面部Aと対面するよう前記小径凸部を装着する、
ことを特徴とするクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−196637(P2008−196637A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33993(P2007−33993)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】