説明

チロキシンを含む化合物の分析方法

本発明の教示は、アイソバリック標識および親・娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を用いて1つ以上のサンプルにおいて1つ以上のチロキシン化合物を分析するための方法を提供する。種々の実施形態では、この方法は以下の工程を包含する:(a)1つ以上のチロ キシン化合物を、1セットのアイソバリックタグ由来の異なるアイソバリックタグで標識する工程と;(b)このアイソバリックに標識されたチロキシン化合物の各々の少なくとも一部を合わせて、合わされたサンプルを生成する工程と;(c)この合わせたサンプルの少なくとも一部をPDITMに供する工程と; (d)伝送レポーターイオンの1つ以上のイオンシグナルを測定する工程と;(e)標準化合物の1つ以上の測定されたイオンシグナルとレポーターイオンの測定されたイオンシグナルとの比較に少なくとも基づくアイソバリックに標識されたチロキシン化合物の1つ以上の濃度を決定する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年2月8日に出願された、表題「Amine−containing Compound Analysis Methods」の米国出願第11/350,147号の一部継続であり、かつその利益およびそれへの優先権を主張する。米国出願第11/350,147号は、2005年2月9日に出願された、表題「Amine−containing Compound Analysis Methods」の米国仮出願第60/651,734号の利益およびそれへの優先権を主張する。これらの各々の全体の開示は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
導入
アミン含有化合物は、重要な生物学的および医薬化合物である。アミン含有化合物の例としては、タンパク質、ペプチド、ポリアミン、アミノ酸、カテコールアミンおよびニトロフラン代謝物が挙げられる。アミン含有化合物の定量のための現在の方法としては、市外(UV)蛍光または電気化学的検出によるハイパフォーマンス液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィーと質量分析の組み合わせ(LC/MS)、およびタンデム型質量分析(MS/MS)が挙げられる。
【0003】
上述の方法によるアミン含有化合物の絶対的定量は、問題があり得る。例えば、HPLCによって多くのアミン含有化合物を分析するために、困難かつ時間を浪費する誘導体化工程は、分析を行う前に行わなければならない。さらに、HPLCは、長い分析時間、泳動間の偏差の高さ、多重化能力の欠如、および非特異性という欠点を有する。
【0004】
アミン含有化合物の検出および定量のためのLC/MSおよびMS/MSのさらに近年の使用によって、増大した感度および特異性、ならびに1サンプルで複数のアミン含有化合物を迅速に測定する能力という利点がもたらされる;しかし、これらの技術はまた、多重化能力を欠く。絶対的な定量を行うために、高価な同位体濃縮化合物を内部標準として用いるが、これはいくつかのタンデム質量分析法とは適合しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明の教示は、アイソバリック標識および親・娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を用いる1つ以上のサンプル中の1つ以上のアミン含有化合物の分析のための方法を提供する。種々の局面では、本発明の教示は、1つ以上のサンプル中の1つ以上のアミン含有化合物の相対的な濃度、絶対的な濃度またはその両方を決定するための方法を提供する。種々の実施形態では、本発明の教示は、サンプル中の複数のアミン含有化合物、複数のサンプル中の1つ以上のアミン含有化合物、またはその組み合わせの相対的濃度、絶対的濃度、またはその両方が複数の方式で決定され得る方法を提供する。
【0006】
アミン含有化合物(本発明の教示の種々の実施形態が提供され得る)は、広範な種々の供給源、例えば、生理学的な流体サンプル、細胞または組織溶解サンプル、タンパク質サンプル、細胞培養サンプル、ファーメンテーションブロス培地サンプル、農産物サンプル、畜産物サンプル、動物給餌サンプル、ヒト消費のための食品または飲料のサンプル、およびそれらの組み合わせなどから生じ得る。本発明の教示は、種々の実施形態では、限定はしないが、アミノ酸、カテコールアミン、ニトロフラン代謝物、ポリアミン、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド、およびそれらの組み合わせを含む広範な種々の一級アミン含有化合物に適用され得る。
【0007】
「アイソバリック標識のセット(set of isobaric labels)」、「アイソバリックタグのセット(set of isobaric tags)」という句は交換可能に用いられて、例えば、試薬または化学部分のセットであって、このセットのメンバー(すなわち、個々の「アイソバリック標識」または「アイソバリックタグ」)が実質的に同じ質量を有するが、このセットの各々のメンバーが、イオンフラグメンテーション(例えば、衝突誘起解離(CID)、光誘起解離(PID)などによる)に供される際に異なる娘イオンシグナルを生じ得るセットをいう。セットのメンバーの間を識別するために用いられ得るアイソバリックタグまたは標識の娘イオンは、アイソバリックタグまたは標識のレポーターイオンと呼ばれ得る。種々の実施形態では、1セットのアイソバリックタグは、フラグメンテーションの非存在において実質的にクロマトグラフィーとして識別可能であり、かつ実質的に識別不能な質量分析であり、ただしCID後に強力な低質量MS/MSサインのイオンを生じる、アミン誘導体化アミン含有化合物を含む。
【0008】
「親・娘イオン遷移モニタリング」または「PDITM」という用語は、例えば、質量分析を用いる測定であって、それによって、第一の質量分離器(しばしば第一次元の質量分析と呼ばれる)の伝送質量対電荷(m/z)範囲は、イオン分裂器(fragmentor)(例えば、衝突セル、光解離領域など)に分子イオン(しばしば、「親イオン」または「前駆体イオン」と呼ばれる)を伝送してフラグメントイオン(しばしば「娘イオン」と呼ばれる)を生じるように選択され、第二の質量分離器(しばしば第二次元の質量分析と呼ばれる)の伝送m/z範囲は、検出器(これが娘イオンシグナルを測定する)に対して1つ以上の娘イオンを伝送するように選択される、測定のことをいう。モニターされた親イオンおよび娘イオンの質量の組み合わせは、モニターされた「親・娘イオン遷移」と呼ばれてもよい。モニターされる所定の親イオン−娘イオンの組み合わせについての検出器での娘イオンシグナルは、「親・娘イオン遷移シグナル」と呼ばれてもよい。本発明の教示の種々の実施形態では、親のイオンは、アイソバリックタグで標識されたアミン含有化合物であって、娘イオンは、アイソバリックタグのレポーターイオンである;従って、所定のアイソバリック標識されたアミン含有化合物親イオンについての検出器で測定されるレポーターイオンのイオンシグナルは、「アミン含有化合物−レポーターイオン遷移シグナル」と呼ばれてもよい。同様に、所定のアイソバリック標識された標準化合物についての検出器で測定されるレポーターイオンのイオンシグナルは、「標準化合物−レポーターイオン遷移シグナル」と呼ばれてもよい。
【0009】
例えば、親・娘イオン遷移モニタリングの1実施形態は、多重反応モニタリング(MEM)(選択反応モニタリングとも呼ばれる)である。MRMの種々の実施形態では、所定の親・娘イオン遷移のモニタリングは、目的の親イオンを伝送するために第一の質量分離器(例えば、目的の親イオンm/zに置かれた第一の四重極)として用いる工程と、目的の1つ以上の娘イオンを伝送するために第二の質量分離器(例えば、目的の娘イオンm/zに置かれた第二の四重極)を用いる工程とを包含する。種々の実施形態では、親イオンを伝送するために第一の質量分離器(例えば、目的の親イオンm/zに停留された四重極)を用いること、および目的の1つ以上の娘イオンのm/z値を含むm/z範囲にわたって第二の質量分離器をスキャンすることによって、PDITMを行ってもよい。
【0010】
例えば、タンデム質量分析(MS/MS)装置、またはさらに一般的には、多次元質量分析(MS)装置を用いて、PDITM、例えば、MRMを行ってもよい。適切な質量分析システムの例としては、限定はしないが、トリプル四重極、四重極線形イオントラップ、四重極TOFおよびTOF−TOFのうちの1つ以上を含むシステムが挙げられる。
【0011】
種々の局面では、本発明の教示は、アイソバリック標識および親・娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を用いて1つ以上のサンプル中で1つ以上のアミン含有化合物を分析するための方法を提供する。種々の実施形態では、この方法は、以下の工程を包含する:(a)1セットのアイソバリックタグ由来の異なるアイソバリックタグで1つ以上のアミン含有化合物を標識する工程であって、アイソバリックタグのセット由来の各々のアイソバリックタグがレポーターイオン部分を含む工程と;(b)このアイソバリックに標識されたアミン含有化合物の各々の少なくとも一部を合わせて、合わされたサンプルを生成する工程と;(c)この合わせたサンプルの少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程と;(d)1つ以上の遷移されたレポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程と;(e)標準化合物の1つ以上の測定されたイオンシグナルに対する、対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較に少なくとも基づいた、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の1つ以上の濃度を決定する工程と。従って、種々の実施形態では、複数のアミン含有化合物の濃度は、多重方式で、例えば、2つ以上のアイソバリックに標識されたアミン含有化合物を合わせて、合わされたサンプルを生成すること、およびこの合わされたサンプルをPDITM(ここで2つ以上のアイソバリックに標識されたアミン含有化合物の2つ以上のレポーターイオンがモニターされる)に供することによって決定され得る。
【0012】
種々の局面では、以下の工程を含む1つ以上のサンプル中で1つ以上のアミン含有化合物を分析するための方法が提供される:(a)標準化合物を提供する工程と;(b)1セットのアイソバリックタグ由来のアイソバリックタグでこの標準化合物を標識する工程と;(c)このセットのアイソバリックタグ由来の異なるアイソバリックタグで1つ以上のチロキシン化合物を標識する工程と;(d)このアイソバリックに標識された標準化合物の少なくとも一部と、このアイソバリックに標識されたアミン含有化合物の各々の少なくとも一部とを合わせて、合わされたサンプルを生成する工程と;(e)この合わせたサンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムにロードする工程と;(f)このクロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程と;(g)1つ以上の伝送レポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程と;(h)アイソバリックに標識された標準化合物に対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに対する、対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較に少なくとも基づいた、目的のアミン含有化合物の1つ以上の濃度を決定する工程。
【0013】
種々の局面では、以下の工程を包含する1つ以上のサンプル中で1つ以上のアミン含有化合物を分析するための方法が提供される:(a)1セットのアイソバリックタグ由来の種々のアイソバリックタグで1つ以上のアミン含有化合物の各々を標識する工程と;(b)このアイソバリックに標識されたアミン含有化合物の各々の少なくとも一部を合わせて、合わされたサンプルを生成する工程と;(c)この合わせたサンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムにロードする工程と;(d)このクロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程と;(e)1つ以上の伝送レポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程と;(f)標準化合物の濃度曲線に対する対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較に少なくとも基づいた、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の1つ以上の濃度を決定する工程。
【0014】
種々の局面では、以下の工程を包含する1つ以上のサンプル中で1つ以上のアミン含有化合物を分析するための方法が提供される:(a)1セットのアイソバリックタグ由来の種々のアイソバリックタグで1つ以上のアミン含有化合物の各々を標識する工程と;(b)このアイソバリックに標識されたアミン含有化合物の各々の少なくとも一部を合わせて、合わされたサンプルを生成する工程と;(c)この合わせたサンプルの少なくとも一部をマトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いる、親・娘イオン遷移モニタリングに供する工程と;(d)1つ以上の伝送レポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程と;(e)標準化合物の測定されたイオンシグナルに対する対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較に少なくとも基づいた、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の1つ以上の濃度を決定する工程。
【0015】
種々の実施形態では、標準化合物の濃度曲線は、以下の工程によって生成されてもよい:(a)第一の濃度を有する標準化合物を提供する工程と;(b)イソバリックタグのセット由来のイソバリックタグで標準化合物を標識する工程と;(c)このアイソバリックに標識された標準化合物の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムにロードする工程と;(d)このクロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程と;(e)この伝送レポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程と;(f)1つ以上の異なる標準化合物濃度について、工程(a)〜(e)を反復する工程と;(g)2つ以上の標準化合物濃度で伝送レポーターイオンの測定されたイオンシグナルに少なくとも基づいて、標準化合物について濃度曲線を作成する工程。
【0016】
種々の実施形態では、1つ以上のアイソバリックに標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程は、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物のうち1つ以上の絶対濃度を決定する工程を包含する。
【0017】
例えば、同位体濃縮アミノ酸を、アミノ酸濃度の絶対値定量のための内部標準として用いてもよいが、MALDI質量分析におけるアミノ酸の安定な同位体アナログを用いることの1つの欠点は、ある場合には、マトリックス関連シグナルが、目的のアミノ酸のm/z領域で干渉し得るということである。例えば、ほぼm/z=147でのシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)関連シグナルは、リジンおよびその安定な同位体アナログを妨げ得、同様に、ジヒドロキシ安息香酸(DHB)関連シグナルは約m/z=175で、アルギニンおよびその安定な同位体アナログを妨げ得る。種々の実施形態では、本発明の教示は、アイソバリックタグおよびPDITMを用いる方法を提供し、これによって、内部標準または目的のアミン含有化合物由来のシグナルでのマトリックス関連シグナルの妨害を軽減することが容易になる。
【0018】
種々の実施形態では、目的の1つ以上のアミン含有化合物は、1つ以上のリジン、リジンの異性体および翻訳後修飾リジンを含み、そしてこのマトリックスは、シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)を含む。種々の実施形態では、目的の1つ以上のアミン含有化合物は、1つ以上のアルギニン、異性体またはアルギニン、翻訳後修飾アルギニンおよびそれらの組み合わせを含み、このマトリックスは、ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を含む。
【0019】
種々の局面では、1つ以上のサンプル中の目的のアミン含有化合物の存在を決定するように設計されたアッセイが提供される。このアッセイは、例えば、薬物開発または診断アッセイのために、種々の生化学的経路の開発を補助するために用いられるバイオマーカー・バリデーション・アッセイであってもよい。このアッセイは、例えば、疾患もしくは状態の診断、疾患もしくは状態の予後予測、またはその両方であり得る。
【0020】
種々の局面では、本発明の教示は、コンピューター読み取り可能な媒体、例えば、限定はしないが、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、CD−ROMまたはDVD−ROM上でコンピューター読み取り可能な指示として本発明の教示の方法の機能が組み込まれる、製造業者の品目を提供する。
【0021】
教示の前述および他の局面、実施形態および特徴は、添付の図面と組み合わせて以下の説明からより完全に理解され得る。この図面では、同様の参照文字は一般に、種々の図面全体を通じて同様の特徴および構造的要素を指す。図面は、必ずしも尺度はないが、本教示の原理を図示する際に代わりに強調される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】1つ以上のサンプル中で1つ以上のアミン含有化合物を分析する方法の種々の実施形態の模式図である。
【図2】アイソバリックタグの種々の実施形態を模式的に図示する。
【図3】複数のサンプルタイプを用いる種々の実施形態の模式図である。
【図4A】iTRAQ(商標)ブランド試薬を用いる、アイソバリックに標識する工程の種々の実施形態を図示する。
【図4B】iTRAQ(商標)ブランド試薬を用いる、アイソバリックに標識する工程の種々の実施形態を図示する。
【図5】合わせたサンプル中で標準化合物を用いる種々の実施形態の模式図である。
【図6A】未標識のプトレシン(putrescine)およびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたプトレシンの構造を模式的に示す。
【図6B】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたプトレセン(putrescene)の質量スペクトルを示す。
【図6C】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたプトレセン(putrescene)の質量スペクトルを示す。
【図7A】未標識のカドベリンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたカドベリンの構造を模式的に示す。
【図7B】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたカドベリンの質量スペクトルを示す。
【図7C】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたカドベリンの質量スペクトルを示す。
【図8A】未標識の1,7−ジアミノヘプタンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識された1,7−ジアミノヘプタンの構造を模式的に示す。
【図8B】PDITMの前後のアイソバリックに標識された1,7−ジアミノヘプタンの質量スペクトルを示す。
【図8C】PDITMの前後のアイソバリックに標識された1,7−ジアミノヘプタンの質量スペクトルを示す。
【図9A】未標識のスペルミジンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたスペルミジンの構造を模式的に示す。
【図9B】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたスペルミジンの質量スペクトルを示す。
【図9C】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたスペルミジンの質量スペクトルを示す。
【図9D】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたスペルミジンの質量スペクトルを示す。
【図10A】未標識のスペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたスペルミンの構造を模式的に示す。
【図10B】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたスペルミンの質量スペクトルを示す。
【図10C】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたスペルミンの質量スペクトルを示す。
【図10D】PDITMの前後のアイソバリックに標識されたスペルミンの質量スペクトルを示す。
【図11】1セットのアイソバリックタグ由来の種々のアイソバリックタグで各々標識された各ポリアミンの混合物の液体クロマトグラフィーを模式的に示す。
【図12】図12Aは、iTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたプトレセン(putrescene)のクロマトグラムを模式的に示す。図12Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたカドベリンのクロマトグラムを模式的に示す。図12Cは、iTRAQ(商標)ブランド試薬で標識された1,7−ジアミノヘプタンのクロマトグラムを模式的に示す。
【図13】1セットのアイソバリックタグ由来の種々のアイソバリックタグで各々標識されたポリアミンの混合物のクロマトグラムを模式的に示す。
【図14】ACNおよびHCCAを含むマトリックスのサンプルの直交MALDI(O−MALDI)バックグラウンド質量スペクトルを示す。
【図15】ACNおよびHCCAのマトリックスにおける実施例4の4つのポリアミンのO−MALDI質量スペクトルを示す。
【図16A】未標識のプトレセン(putrescene)およびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたプトレセンの構造を模式的に示す。
【図16B】PDITMの後のアイソバリックに標識されたプトレセンのO−MALDI質量スペクトルを示す。
【図17A】未標識のカドベリンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたカドベリンの構造を模式的に示す。
【図17B】PDITMの後のアイソバリックに標識されたカドベリンのO−MALDI質量スペクトルを示す。
【図18A】未標識の1,7−ジアミノヘプタンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識された1,7−ジアミノヘプタンの構造を模式的に示す。
【図18B】PDITMの後のアイソバリックに標識された1,7−ジアミノヘプタンのO−MALDI質量スペクトルを示す。
【図19A】未標識のスペルミジンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたスペルミジンの構造を模式的に示す。
【図19B】PDITMの後のアイソバリックに標識されたスペルミジンのO−MALDI質量スペクトルを示す。
【図20A】未標識のスペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたスペルミンの構造を模式的に示す。
【図20B】PDITMの後のアイソバリックに標識されたスペルミンのO−MALDI質量スペクトルを示す。
【図21A】未標識のスペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたスペルミンの構造を模式的に示す。
【図21B】PDITMの後のO−MALDI質量スペクトルを示す。
【図21C】PDITMの後のO−MALDI質量スペクトルを示す。
【図22A】未標識のスペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識されたスペルミンの構造を模式的に示す。
【図22B】PDITMの後のアイソバリックに標識されたスペルミンのO−MALDI質量スペクトルを示す。
【図23】図23は標識アミノ酸の混合物のクロマトグラムを模式的に示す。
【図24】図24は実施例5の標識されたアミノ酸の混合物のサンプルの総イオン電流(TIC)クロマトグラムを模式的に示す。
【図25A】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25B】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25C】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25D】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25E】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25F】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25G】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25H】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25I】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25J】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25K】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25L】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25M】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25N】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25O】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25P】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25Q】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25R】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25S】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25T】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図25U】実施例5で測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルを模式的に示す。
【図26】図26Aは、理論および種々の他の測定システムに対して、実施例5の測定されたアミノ酸濃度を比較するデータを示す。図26Bは、理論および種々の他の測定システムに対して、実施例5の測定されたアミノ酸濃度を比較するデータを示す。
【図27A】アミノ酸濃度の決定のための本発明の教示の種々の実施形態のダイナミック・レンジおよび応答に対するデータを示す。
【図27B】アミノ酸濃度の決定のための本発明の教示の種々の実施形態のダイナミック・レンジおよび応答に対するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
種々の実施形態の説明
種々の局面では、本発明の教示は、アイソバリック標識および親・娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を用いて1つ以上のサンプル中で1つ以上のアミン含有化合物を分析するための方法を提供する。種々の実施形態では、本発明の教示は、1つ以上のアミン含有化合物の濃度を決定するための方法を提供する。例えば、図1を参照すれば、種々の実施形態では、ある方法は、1セットのアイソバリックタグ由来の異なるアイソバリックタグで1つ以上のアミン含有化合物を各々標識する工程(工程110)であって、アイソバリックタグのセット由来の各々のアイソバリックタグが、レポーターイオン部分を含む工程と;このアイソバリックに標識されたアミン含有化合物の各々の少なくとも一部を合わせて、合わされたサンプルを生成する工程(工程120)と、この合わせたサンプルの少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程(ここでこの伝送親イオンm/z範囲はこのアイソバリックに標識されたアミン含有化合物のm/z値を含み、かつこの伝送娘イオンm/z範囲がこのアイソバリックに標識されたアミン含有化合物のアイソバリックタグに対応するレポーターイオンのm/z値を含む)と、この伝送レポーターイオンの1つ以上のイオンシグナルを測定する工程(工程130)と;次いで、標準化合物の1つ以上の測定されたイオンシグナルに対する対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較に少なくとも基づいた、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の1つ以上の濃度を決定する工程(工程140)と、を包含する。このイオンシグナルは、例えば、イオンピーク、イオンピークの領域、またはそれらの組み合わせの強度(平均、平均値、最大値など)に基づいてもよい。
【0024】
種々の実施形態では、PDITMは、第一の質量分離器、ならびにイオン分裂器および第二の質量分離器を備える質量分析システムで行われてもよい。PDITMスキャンの伝送親イオンm/z範囲(第一の質量分離器によって選択される)は、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の1つ以上のm/z値を含むように選択し、PDITMスキャンの伝送娘イオンm/z範囲(第二の質量分離器によって選択される)は、伝送アミン含有化合物に対応するレポーターイオンの1つ以上のm/z値を含むように選択する。
【0025】
種々の実施形態では、1つ以上のアミン含有サンプルを、例えば、1つの実験的測定の中で以下が可能となるように1セットのアイソバリックタグから選択された1つ以上のアイソバリックタグで標識する:(i)異なるサンプル(例えば、コントロール、処理サンプル)からの複数のアミン含有化合物が比較され得る;(ii)複数の濃度測定が、同じサンプル由来の同じアミン含有化合物で決定され得る;(iii)ガン組織の種々の単離物が、正常な組織に対して評価され得る;(iv)抗生物質の混入した食物または飲料を、抗生物質の混入していない食物または飲料に対して評価し得る;(v)食物または飲料の種々のサンプルの間の香味の傾向を比較し得る;(vi)ファーメンテーションの進行がモニタリングされ得る。
【0026】
再度図1を参照すれば、種々の実施形態では、上記の合わせたサンプルの少なくとも一部をPDITMに対して供する工程は、この合わせたサンプルを、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源を用いるこの合わせたサンプルの適切な溶液中に導入、この合わせたサンプルと適切なマトリックスとを混合すること、および適切なマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)イオン源を用いてサンプルを導入することによって、質量分析システム中に直接導入する工程(ワークフロー経路121および工程130)を包含する。
【0027】
再度図1を参照すれば、種々の実施形態では、上記の合わせたサンプルの少なくとも一部をPDITMに対して供する工程は、この合わせたサンプルの一部を、クロマトグラフィーカラム(例えば、LCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラム、またはその組み合わせ)にロードする工程(ワークフロー経路122および工程125)と、このクロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程と、1つ以上の伝送レポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程(ワークフロー経路123および工程130)と、を包含する。
【0028】
種々の実施形態では、この合わせたサンプルを、浄化して(例えば、干渉サンプル、緩衝液アーチファクトなどを例えば除去する;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分画、陽イオン交換、高分解能陽イオン交換など、およびそれらの組み合わせによって)、その後に、これを用いてレポーターイオンシグナルを測定する。
【0029】
種々の実施形態では、アミン含有化合物の濃度は、対応するアミン含有化合物−レポーターイオン遷移の測定されたイオンシグナル(アミン含有化合物−レポーターイオン遷移シグナル)を以下のうちの1つ以上に対して比較することによって決定される:
(i)標準化合物−レポーターイオン遷移についての濃度曲線;および
(ii)アミン含有化合物を含む合わせたサンプル中の標準化合物についての標準化合物−レポーターイオン遷移シグナル。
【0030】
再度図1を参照すれば、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の1つ以上の濃度を決定するという工程(工程140)で用いられる標準化合物の1つ以上の測定されたイオンシグナルを、多くの方法で提供してもよい。種々の実施形態では、1つ以上の標準化合物を、アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグで標識し、1つ以上のアイソバリックに標識された標準化合物の1つ以上の少なくとも一部を、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の各々の少なくとも一部と合わせて、合わせたサンプルを生成する(工程150);続いて、この合わせたサンプルの少なくとも一部をPDITMに供し、伝送レポーターイオンのうちの1つ以上のイオンシグナルを測定する(工程130)。
【0031】
次いで、この合わせたサンプル中のアイソバリックに標識された標準化合物のうち1つ以上のうちの1つ以上に対応するレポーターイオンの1つ以上の測定されたイオンシグナルを、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物のうちの1つ以上の濃度を決定するのに用いてもよい。従って、種々の実施形態では、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程は、この合わせたサンプル中のアイソバリックに標識された標準化合物の1つ以上のうちの1つ以上に対応する1つ以上のレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに対する、対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較(工程140)に少なくとも基づいている。この合わせたサンプルの少なくとも一部をPDITMに対して供する工程は、例えば、質量分析システムへの直接導入(ワークフロー経路152および工程130);この合わせたサンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムへ最初にロードする工程(ワークフロー経路153および工程125)、続いてクロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部をPDITMに対して供する工程と、1つ以上の伝送レポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程(ワークフロー経路123および工程130);またはそれらの組み合わせを包含し得る。
【0032】
種々の実施形態では、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の1つ以上の濃度を決定する工程(工程140)は、1つ以上の標準化合物の1つ以上の濃度曲線に対応する1つ以上のレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに対する、対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較に少なくとも基づく。種々の実施形態では、第一の濃度を有する標準化合物が提供され(工程160)、アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグで標識される(工程170)。アイソバリックに標識された標準化合物の少なくとも一部を、親・娘イオン遷移モニタリング(ここで伝送親イオンm/z範囲は、アイソバリックに標識された標準化合物のm/z値を含み、伝送娘イオンm/z範囲は、アイソバリックに標識された標準化合物のアイソバリックタグに対応するレポーターイオンのm/z値を含む)に供し、レポーターイオンのイオンシグナルが測定される(工程180)。標識の工程(工程170)およびPDITMの工程および伝送レポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程(工程180)を、第一の濃度とは異なる少なくとも一つ以上の標準化合物濃度について繰り返して、標準化合物についての濃度曲線を作成する(工程190)。
【0033】
アイソバリックに標識された標準化合物の少なくとも一部をPDITMに対して供する工程は、例えば、質量分析システムへの直接導入(ワークフロー経路171および工程180)(例えば、ESIイオン源を用いる適切な溶液中への合わせたサンプルの導入、この合わせたサンプルと適切なマトリックスと混合すること、および適切なMALDIイオン源を用いてサンプルを導入することによる)と;この合わせたサンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに最初にロードする工程(ワークフロー経路172および工程175)、続いてクロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部をPDITMに対して供する工程と、1つ以上の伝送レポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程(ワークフロー経路173および工程180);またはそれらの組み合わせを包含する。
【0034】
種々の実施形態では、標準化合物に対するPDITMを、第一の質量分離器、およびイオン分裂器および第二の質量分離器を備える質量分析系で行ってもよい。PDITMスキャンの伝送親イオンm/z範囲(第一質量分離器によって選択される)を、アイソバリックに標識された標準化合物の1つ以上のm/z値を含むように選択し、PDITMスキャンの伝送娘イオンm/z範囲(第二質量分離器によって選択される)を、伝送標準化合物に対応するレポーターイオンの1つ以上のm/z値を含むように選択する。
【0035】
種々の実施形態では、濃度曲線の作成には、例えば、濃度決定を促進し、注射容積における相違を説明するためなどのために、標準化合物の少なくとも一部に含まれる1つ以上の内部標準を用いてもよい。
【0036】
種々の実施形態では、濃度曲線は、対応する標準化合物と関連するレポーターイオンのイオンシグナルを測定するためにPDITMを用いること、および濃度ゼロがレポーターイオンシグナルゼロに対応するような、測定された濃度の線形外挿法によって濃度曲線を作成することによって生成され得る。種々の実施形態では、濃度曲線は、PDITMを用いて2つ以上の既知の濃度で対応する標準化合物と関連するレポーターイオンのイオンシグナルを測定すること、および測定されたレポーターイオンシグナルに対して関数をフィッティングさせることにより濃度曲線を作成することによって、作成してもよい。適切なフィッティング関数は、例えば、検出器の応答(例えば、検出器飽和、非線形性)に依存し得る。種々の実施形態では、このフィッティング関数は一次関数である。
【0037】
種々の実施形態では、1つ以上のアイソバリックに標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程(工程140)は、以下の両方に少なくとも基づく:(i)1つ以上の標準化合物の1つ以上の濃度曲線に対応する1つ以上のレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに対する、対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較;および(ii)アイソバリックに標識されたアミン含有化合物と合わされた1つ以上のアイソバリックに標識された標準化合物に対応する1つ以上のレポーターイオンの測定されたイオンシグナルに対する、対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較。種々の実施形態では、第一の濃度を有する標準化合物が提供され(工程160)、1つ以上のアミン含有化合物(例えば、工程120の)を標識するために用いられる、アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグで標識される(工程170)。アイソバリックに標識された標準化合物の一部を、アイソバリックに標識されたアミン含有化合物の各々の少なくとも一部と合わせて、合わせたサンプルを生成し(ワークフローパス176および工程150)、次いで、この合わせたサンプルを本明細書に記載のとおりさらに分析してもよい。種々の実施形態では、合わせたサンプルを生成するために用いられる同じアイソバリックに標識された標準化合物の一部はまた、本明細書に記載のような濃度曲線を作成するのに用いられる。
【0038】
レポーターイオンシグナルを測定するために用いられる同じ標準化合物部分、または別の部分を用いて、質量分析器について親・娘イオン遷移モニタリング条件を決定してもよい。例えば、質量分析システムが液体クロマトグラフィー(LC)構成要素を備える場合、標準化合物を用いてクロマトグラフィー保持時間を決定してもよい。種々の実施形態では、標準化合物を用いて、アミン含有化合物についてイオン源中でそのイオン化効率を、および種々の条件下においてイオン分裂器で分裂効率を決定してもよい。
【0039】
アミン含有化合物
本発明の教示の方法は、限定はしないが、アミノ酸、カテコールアミン、ニトロフラン代謝物、ポリアミン、ペプチド、タンパク質、ポリペプチドおよびそれらの組み合わせを含む広範な種々の一級および二級アミン含有化合物に適用され得る。
【0040】
種々の実施形態では、目的のアミン含有化合物は、アミノ酸を含む。アミノ酸の例としては限定はしないが、ロイシン、プロリン、アラニン、バリン、グリシン、セリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、イソロイシン、トレオニン、システイン、チロシン、ヒスチジン、リジン、アルギニンおよびその異性体、ならびにその翻訳後修飾アミノ酸が挙げられる。例えば、種々の実施形態では、アミン含有化合物としては、例えば、チロキシンのようなアミノ酸誘導体が挙げられる。チロキシンは、チロシンの誘導体であって、疾患をモニターするために用いられ得る重要なクラスの化合物を含む。チロキシンの例としては限定はしないが、チロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3)および「リバースT3」が挙げられる。
【0041】
【化1】

種々の実施形態では、目的のアミン含有化合物は、1つ以上のカテコールアミンを含む。カテコールアミンの例としては限定はしないが、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。種々の実施形態では、目的のアミン含有化合物は、ポリアミンを含む。ポリアミンの例としては、限定はしないが、スペルミン、N−アセチルスペルミン、スペルミジン、N−アセチルスペルミジン、プトレシン(1,4−ジアミノブタン)、2−ヒドロキシプトレシン、カドベリン(1,5−ジアミノペンタン)、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,10−ジアミノドデカン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。種々の実施形態では、目的のアミノ含有化合物は、タンパク質またはポリペプチドを含む。タンパク質およびポリペプチドの例としては限定はしないが、チトクロムP450イソ型、アンギオテンシン、ならびに乳漿タンパク質および乳タンパク質、例えば、βラクトグロブリンが挙げられる。
チトクロムP450イソ型の例としては限定はしないが、Cypla2、Cyp1b1、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b10、Cyp2c29、Cyp2c37、Cyp2c39、Cyp2c40、Cyp2d9、Cyp2d22、Cyp2d26、Cyp2j5、Cyp2el、Cyp3a11、Cyp4a10、Cyp4a14、およびそれらの組み合わせが挙げられる。種々の実施形態では、目的のアミン含有化合物は、ニトロフラン代謝物を含む。ニトロフラン代謝物の例としては限定はしないが、3−アミノ−2−オキサゾリジノン(AOZ)、5−モルホリノメチル−3−アミノ−オキサゾリジノン(AMOZ)、セミカルバジド(SEM)、1−アミノヒダントイン(AHD)およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
【化2】

本発明の教示の種々の実施形態が適用され得るアミン含有化合物は、広範な種々の供給源タイプ、例えば、生理学的な流体サンプル、細胞もしくは組織溶解液サンプル、合成ペプチドサンプル、ポリペプチドサンプル、タンパク質サンプル、細胞培養サンプル、ファーメンテーションブロス培地サンプル、農産物サンプル、畜産品サンプル、動物食餌サンプル、ヒト消費のための食品もしくは飲料のサンプル、およびそれらの組み合わせに由来し得る。このサンプルは、種々の供給源、状態またはその両方に由来し得る;例えば、コントロール対実験、異なる時点由来のサンプル(例えば、配列を形成するため)、疾患対正常、実験対疾患(混入対非混入など)。生理学的液体の例としては、限定はしないが、血液、血清、血漿、汗、涙、尿、腹水、リンパ液、膣分泌物、精液、脊髄液、腹水、唾液、喀痰、乳房浸出液およびそれらの組み合わせが挙げられる。ヒト消費のための食物または飲料の例としては限定はしないが、ワイン、ハチミツ、ショウユ、家禽、ブタ肉、牛肉、魚、甲殻類およびそれらの組み合わせが挙げられる。種々の実施形態では、目的のアミン含有化合物は、アミノ酸であって、アミノ酸の供給源は、タンパク質を含み、これは、例えば、加水分解、消化されて、アミノ酸を生成する。種々の実施形態では、目的のアミン含有化合物は合成ペプチドである。
【0043】
標準化合物
広範な種々の化合物を標準化合物として用いてもよい。種々の実施形態では、標準化合物は、目的のアミン含有化合物のうち1つを含む。種々の実施形態では、標準化合物は、1つ以上のコントロールサンプル、既知濃度のサンプル、またはそれらの組み合わせ由来である。種々の実施形態では、標準化合物は、分析物中で目的の各々のアミン含有化合物について提供される。
【0044】
種々の実施形態では、標準化合物の濃度曲線は、2つ以上の公知の濃度で標準化合物と会合されたレポーターイオンのイオンシグナルを測定するように、PDITMを用いて作成され得る。
【0045】
アイソバリックタグ
種々の実施形態では、アイソバリックタグは、一般式(I):
R−L−ARG(I)
によって示され得、ここでRは、切断可能なリンカー基(L)を通じてアミン反応性基(ARG)に共有結合されたレポーター基(R)であって、このリンカー基は、R+Lの質量がアイソバリックタグのセットの各々のアイソバリックタグについてと実質的に同じになるような重量を有するバランス基を含む。例えば、種々の実施形態では、リンカー基Lは、一般式(II):
X−B−Y(II)
によって示され得、ここでXは、バランス基とレポーター基との間の結合に相当し、この結合Xは、中性ガスでの標識された分析物の衝突の際に壊れ(例えば、衝突誘発性の解離を介する)、Yは、分析物反応性基が分析物と反応されてこの分析物を標識するとき、バランス基と分析物との間の結合であって、Bは、バランス基である。分析物は、その分析物と式(I)の試薬、その塩、および/またはその水和物との反応によって標識されてもよい。
【0046】
アミン反応性基
アミン反応性基の例としては、アミン官能性基と選択的に反応して、特定の部位でのアミン含有化合物との共有結合または非共有結合を形成する基が挙げられるがこれらに限定されない。このアミン反応性基は、事前に存在してもよいし、またはインサイチュで調製されてもよい。アミン反応性基のインサイチュ調製は、分析物の非存在下で進行されてもよく、または分析物の存在下で進行されてもよい。例えば、カルボン酸基は、水溶性カルボジイミド(例えば、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩;EDC)を用いてインサイチュで修飾されて、これによってアルキルまたはアリールアミン基のような求核試薬と反応され得る求電子基が調製されてもよい。種々の実施形態では、EDCを用いた標識試薬のカルボン酸基の活性化は、分析物を含むアミン(求核試薬)の存在下で行われてもよい。種々の実施形態では、アミン(求核試薬)含有分析物はまた、EDCが行われる最初の反応後に添加されてもよい。種々の実施形態では、この反応基は、保護基のインサイチュの除去によってインサイチュで生成され得る。結果として、求核試薬および/または求電子基の反応による分析物の誘導体化をもたらし得る、任意の既存のまたは新規に作成された試薬(単数または複数)が考慮される。
【0047】
種々の実施形態では、適切なアミン反応性基は、活性エステルを含む。活性なエステルは、ペプチド合成において周知であって、ペプチド合成において通常用いられる条件下でアミノ酸のN−αアミンと容易に反応する特定のエステルをいう。アミン反応性活性エステルは、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル(Pfp)、2−ニトロフェニルエステル、4−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、または2,4−ジハロフェニルエステルであってもよい。種々の実施形態では、アミン反応性基は、混合無水物であってもよい。なぜなら混合無水物は、アミン基と効率的に反応し、それによってアミド結合を生成し得るからである。
【0048】
レポーター基
本発明の教示の種々の実施形態で用いられるアイソバリックタグ(単数または複数)のレポーター基は、決定され得る固有の質量(または質量対電荷比)を有する基であってもよい。例えば、各々のレポーターのセットは、固有の総重量を有してもよい。異なるレポーターは、その固有の質量を達成するために1つ以上の重原子同位体を含んでもよい。例えば、同位体の炭素(12C、13C、および14C)、窒素(14Nおよび15N)、酸素(16Oおよび18O)または水素(水素、重水素および三重水素)が存在し、レポーター部分の多様な基の調製で用いられ得る。適切な重原子同位体の例としては限定はしないが、13C、15N、18Oおよび重水素が挙げられる。
【0049】
固有のレポーターを目的のサンプルと会合させ、それによって、そのサンプルの1つまたは複数の分析物をこのレポーターで標識してもよい。この方式では、例えば、このレポーターについての情報は、このサンプルの分析物の1つまたは全てについての情報と関連され得る。しかし、このレポーターが決定される場合、このレポーターは分析物と物理的に連結される必要はない。そうではなく、レポーターの固有の総重量は、標識された分析物のイオンがフラグメント化され、それによって娘フラグメントイオンおよび検出可能なレポーターが生成された後、例えば、タンデム質量分析器の第二の質量分析で決定されてもよい。この決定されたレポーターは、決定された分析物が由来するサンプルを特定するために用いられ得る。さらに、他のレポーターまたは較正標準(例えば、特定のレポーターで標識された分析物)のいずれかの量に対する、固有のレポーターの量を用いて、サンプルまたはサンプル中の分析物の相対量または絶対量(しばしば、濃度および/または量として表現される)を決定してもよい。従って、特定のサンプル中の1つ以上の分析物の量のような情報を、各々の特定のサンプルを標識するために用いられるレポーター部分と関連させてもよい。分析物(単数または複数)の同一性がまた決定される場合、その情報を、種々のレポーターに関与する情報と関連させ、それによってサンプルの1つまたは複数における各々の標識された分析物の同一性および量の決定を促進してもよい。
【0050】
このレポーターは、固定の電荷を含んでもよく、またはイオン化されてもよい。レポーターが固定電荷を含んでもよく、またはイオン化されてもよいので、標識試薬は、単離されてもよく、反応性の分析物を塩(または塩の混合物)または双性イオンの形態で標識するために用いられてもよい。レポーターのイオン化によって、質量分析計におけるその決定が容易になる。従って、レポーターは、時には識別イオン(signature ion)と呼ばれるイオンとして決定され得る。イオン化される場合、レポーターは、1つ以上の正味の正または負の家電を含み得る。従って、レポーターは、1つ以上の酸性基または塩基性基を含んでもよい。なぜなら、このような基は、質量分析計で容易にイオン化され得るからである。例えば、レポーターは、1つ以上の塩基性窒素原子(正の電荷)または1つ以上のイオン化可能な酸性基、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、またはリン酸基(負の電荷)を含んでもよい。塩基性窒素を含むレポーターの非限定的な例としては、置換または非置換のモルホリン、ピペリジンまたはピペラジンが挙げられる。
【0051】
レポーターは、置換または非置換の酢酸部分(ここにN−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を通じて分析物が連結される)とN−アルキル化された環窒素原子を含む5員、6員または7員の複素環であってもよく、ここで各々の異なる標識が1つ以上の重原子同位体を含む。この複素環は、置換されても非置換であってもよい。この複素環は、脂肪族であっても芳香族であってもよい。複素環部分の可能な置換基としてはアルキル、アルコキシおよびアリール基が挙げられる。この置換基は、支持体に対する分析物の連結に適切である、保護基または非保護基、例えば、アミン、ヒドロキシルまたはチオール基を含んでもよい。複素環は、さらなるヘテロ原子、例えば、1つ以上の窒素、酸素またはイオウ原子を含んでもよい。
【0052】
レポーターは、分析物の分析のための代表的な条件下で実質的にサブフラグメントでないように選択され得る。このレポーターは、質量分析計における標識された分析物の選択されたイオンの少なくとも一部の結合XおよびYの両方のフラグメンテーションを生じるように適用された解離エネルギーの条件下で実質的にサブフラグメントでないように選択され得る。「実質的にサブフラグメントでない」とは、本発明者らは、このレポーターのフラグメントは、目的の分析物の首尾よい分析に適用されるとき、バックグラウンドノイズを超えて検出することが困難または不可能であるということを意味する。レポーターの総重量は、決定しようと努める分析物、または分析物の任意の予想フラグメントと比較して異なるように意図的に選択され得る。例えば、タンパク質またはペプチドが分析物である場合、レポーターの総重量は、任意の天然に存在するアミノ酸もしくはペプチド、またはその予想フラグメントの量と比較して異なるように選択され得る。これによって、分析物の決定が容易になり得る。なぜなら、分析物次第で、同じ同時質量(coincident mass)を有するサンプルの潜在的な成分がなければ、任意の分析物の結果に信頼が加わり得るからである。
【0053】
リンカー基
本教示の種々の実施形態で用いられる標識試薬(単数または複数)のリンカーは、分析物との反応が生じたか否かに依存して、分析物に対してレポーターを、または分析物反応基(ARG)に対してレポーターを連結させる。このリンカーは、結合XおよびYの両方がフラグメント化される(例えば、結合XおよびYの両方のフラグメンテーションの際に中性の損失を受ける)とき中性種を生成するように選択され得る。このリンカーは、カルボニルまたはチオカルボニル基のように極めて小さくてもよい。このリンカーは、それより大きい部分であってもよい。このリンカーは、ポリマーまたはバイオポリマーであってもよい。このリンカーは、解離性エネルギーレベルに供された場合サブフラグメントになるように設計され得る;これには、リンカーの中性のフラグメントのみを生じるサブフラグメント化が挙げられる。
【0054】
このリンカー基は、その質量が、混合物の各々の標識された分析物について、またはアイソバリック試薬のセットについてレポーターの間の総重量の相違について補償するように、1つ以上の重原子同位体を含んでもよい。さらに、レポーター/リンカーの組み合わせの総重量(すなわち、全体としてとった総重量)は、混合物の各々の標識された分析物について、または試薬のセットおよび/もしくはキットについて実質的に同じであってもよい。リンカーは、標識試薬におけるレポーターについての質量バランスとして作用し得るので、レポーター/リンカーの組み合わせの総重量は全ての試薬のセットまたはキットについて同じであり、リンカー基はまた、バランス基(B)を含むと言われる。リンカーのバランス基(B)における原子の数が多いほど、異なる異性体/アイソバリックな標識試薬のセットおよび/またはキットの可能な数が多くなる。
【0055】
結合XおよびY
Xは、レポーターの原子とリンカーの原子との間の結合である。Yはリンカーの原子といずれかのアミン反応基の原子との間の結合であるか、または標識試薬が分析物と反応させられる場合は分析物である。標識された分析物(例えば、R−X−B−Y−分析物)の選択されたイオンの少なくとも一部において、十分な解離性エネルギーレベルに供されるとき、結合Xが破壊するように、結合Xは選択される。種々の実施形態では、標識された分析物(例えば、R−X−B−Y−分析物)の選択されたイオンの少なくとも一部において、十分な解離性エネルギーレベルに供されるとき、結合Yが破壊するように、結合Yはまた選択される。結合X,結合Yまたは結合XおよびYの両方が、標識された分析物の選択されたイオンの少なくとも一部で破壊するように、解離性エネルギーレベルは、質量分析計において調節されてもよい。レポーターが分析物から独立して決定され得るように、結合Xの破壊によって分析物からレポーターを遊離させる。結合Xがすでに破壊されているかいないかに依存して、結合Yの破壊は、分析物からレポーター/リンカーの組み合わせを、または分析物からリンカーを遊離させる。種々の実施形態では、結合Yは結合Xよりも不安定であってもよく、結合Xは結合Yよりも不安定であってもよく、または結合XおよびYは、実質的に同じ反応不安定性であってもよい。
【0056】
例えば、目的の分析物がタンパク質またはペプチドである場合、結合XおよびYの相対的な不安定性は、アミド(ペプチド)結合に関して調節され得る。結合X、結合Yまたは結合XおよびYの両方は、代表的なアミド(ペプチド)結合と比較してさらに不安定であっても、等しく不安定であっても、または不安定さが少なくてもよい。例えば、解離性エネルギーの条件下で、結合Xおよび/または結合Yは、Z−proまたはZ−asp二量体のペプチド結合(ここでZは、天然のアミノ酸であり、Proはプロリンであり、aspはアスパラギン酸である)と比較して、破壊(フラグメンテーション)する傾向が少なくてもよい。種々の実施形態では、結合XおよびYは、代表的なアミド結合とほぼ同じレベルの解離性エネルギーで破壊する。
【0057】
結合XおよびYはまた、結合Yの破壊が結合Xの破壊を生じる(逆も同様)ように存在してもよい。種々の実施形態では、実体量の分析物またはその娘フラグメントイオンが、第二の質量分析における部分的標識を含まないように、結合XおよびYの両方が、本質的に同時にフラグメント化してもよい。「実体量の分析物(substantial amount of analyte)」とは、約25%未満、好ましくは約10%未満、部分的に標識された分析物がMS/MSスペクトルで決定され得るということを本発明者らは意味する。
【0058】
図2Aを参照して、アイソバリックタグの模式図を図示する。各々のタグは、各々のタグの名目上の質量が実質的に等しいように、レポーター基12、アミン反応基214、およびバランス基218(例えば、レポーター基の間の質量の相違を相殺する)から構成される。
【0059】
種々の実施形態では、1セットのアイソバリックタグが、アミン誘導体化アミン含有化合物(フラグメンテーションの非存在下では、実質的にはクロマトグラフィーで識別不能であり、かつ実質的には質量分析で識別不能であるが、CID後、強力な低質量のMS/MSの兆候的イオン(signature ion)を生じる)を含む。
【0060】
種々の実施形態では、1セットのアイソバリックタグは、一般式(IIIa)−(IIId)によってそれぞれ示される、タグQ114、Q115、Q116およびQ117を含む:
【0061】
【化3】

本発明の教示の種々の実施形態での使用に適切なレポーター基、リンカー基、バランス基、アミン反応基、アイソバリックタグおよびアイソバリックタグのセットのさらなる例は、米国特許出願公開第2004/0219686号;同第2004/0220412号;同第20050147982号;同第2005/0147985号;同第2005/0148087号;同第2005/0148771号;同第2005/0148773号;同第2005/0148774号および同第2005/0208550号(その全ての内容全体が参照によって本明細書に援用される)に見出され得る。
【0062】
合わせたサンプル
任意の適切な組み合わせの1つ以上のアイソバリックに標識された標準化合物、1つ以上のアイソバリックに標識されたアミン含有化合物、またはその組み合わせを、本発明の教示の方法で用いてもよい。例えば、一般には、合わせたサンプル中の種々のアイソバリックに標識された化合物Nの数は、アイソバリックタグのセットにおけるアイソバリックタグの数T以下である。任意の1つの合わせたサンプルでは、可能な組み合わせのアイソバリックに標識された標準化合物、1つ以上のアイソバリックに標識されたアミン含有化合物は以下:
(S+C)≦T(1)
のように表現されてもよく、ここでTは、アイソバリックタグのセットにおけるアイソバリックタグの数に相当し;Sは、種々のアイソバリック標識でアイソバリックに標識された標準化合物の数に相当して、0〜T(包括的)におよび;Cは、種々のアイソバリック標識でアイソバリックに標識されたアミン含有化合物の数に相当し、0〜T(包括的)におよぶ。
【0063】
例えば、種々の実施形態では、1つ以上のアイソバリック標識された標準化合物(例えば、コントロールサンプル由来、濃度既知のサンプル由来、など)を、目的の1つ以上のアイソバリックに標識されたアミン含有試験化合物と合わせ、この1つ以上のアイソバリックに標識された標準化合物は、1つ以上のレポーターイオンシグナルを提供し、これが例えば、内部濃度標準として機能し得る。種々の実施形態では、アイソバリックに標識された標準化合物の追加は、合わせたサンプル中の目的の1つ以上のアミン含有化合物についての内部標準として機能し得る。種々の実施形態では、種々のアイソバリックに標識された標準化合物が、合わせたサンプル中の目的の各々の異なるアミン含有化合物について付加され(例えば、S=C)、各々の異なるアイソバリックに標識された標準化合物が、例えば、目的の種々のアミン含有化合物についての内部標準として機能する。
【0064】
種々の実施形態では、この合わせたサンプル中で分析されるべきアミン含有化合物のうち2つ以上が、目的の同じアミン含有化合物を含む。例えば、アミン含有化合物#1〜#X(ここでX>1)は、目的の同じアミン含有化合物を、ただし、例えば、異なるサンプル(異なるアイソバリック標識が異なるサンプル由来のアミン含有化合物について用いられている)から、含んでもよい。例えば、異なるサンプルは、同じ系(例えば、患者、場所など)の異なる時点に由来してもよく、いくつかのプロセス、例えば、疾患、ファーメンテーションなどの進行をモニターするために用いられてもよい。
【0065】
種々の実施形態では、サンプルを、同じアミン含有化合物について用いられる異なるアイソバリックタグで処理する。例えば、サンプルを三連で処理し、ここでは異なるアイソバリックタグが、3つの部分の各々について用いられており、ここで次いで、合わせたサンプルの少なくとも一部を組み合わせる(これはまた、1つ以上の標準化合物を含み得る);これによって、この合わせたサンプルの単一の実験分析においてアミン含有化合物の濃度の3つの測定値を得る。三連、または一般には多重の測定は、しばしば、実質的に有意な、および/または正確な結果を得るのに必要である。例えば、伝統的なアプローチを用いるアミノ酸分析結果は、代表的には、これらの伝統的な技術が通常遭遇する泳動間の変動およびバックグラウンドの干渉のせいで、同じサンプルの三連の分析に基づく。本発明の教示に種々の実施形態が、単一の実験的泳動においてアミン含有化合物の濃度の複数の測定をもたらす能力によって、このような泳動間の変動に起因する不正確性を減じることが容易になり得る。
【0066】
種々の実施形態では、アイソバリックに標識された標準化合物は、合わせたサンプルに添加されず、種々の実施形態では、例えば、目的の1つ以上のアミン含有化合物の濃度は、標準化合物の濃度曲線に対するアミン含有化合物の対応するレポーターイオンシグナルの比較に少なくとももとづいて決定され得る。
【0067】
種々の実施形態では、合わせたサンプルを浄化し(例えば、干渉するサンプル、干渉アーチファクト、などを除去するため;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分画、陽イオン交換、高解像陽イオン交換など、およびそれらの組み合わせによって)、その後にそれを用いて、レポーターイオンシグナルを測定する。
【0068】
質量分析器
広範な種々の質量分析システムを本発明の教示で用いてPDITMを行ってもよい。適切な質量分析器システムは、2つの質量分析器の間のイオン飛行経路に配置されたイオン分離器を備える2つの質量分離器を包含する。適切な質量分析器の例としては、限定はしないが、四重極、RF多重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)、および時限イオン選別器(timed ion selector)と組み合わせたTOFが挙げられる。適切なイオン分離器としては限定はしないが、以下の原理で作動するものが挙げられる:衝突誘起解離(CID(衝突支援解離(CAD)とも呼ばれる))、光誘起解離(PID)、表面誘起解離(SID)、ポスト・ソース分解、またはそれらの組み合わせ。
【0069】
質量分析器のための適切な質量分析シシステムの例としては、限定はしないが、3つ組の四重極、四重極線形イオントラップ(例えば、4000Q TRAP(登録商標)LC/MS/MSシステム、Q TRAP(登録商標)LC/MS/MSシステム)、四重極TOF(例えば、QSTAR(登録商標)LC/MS/MSシステム)およびTOF−TOFのうちの1つ以上を備えるシステムが挙げられる。
【0070】
質量分析計システムに適切なイオン源としては限定はしないが、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、大気圧化学イオン化(APCI)、および大気圧光イオン化(APPI)のイオン源が挙げられる。たとえば、ESIイオン源は、LCカラムに由来するイオン化サンプルを質量分析装置へ導入するための手段として機能し得る。ESIのいくつかの所望の特徴のうちの1つは、クロマトグラフィーカラム由来の画分が、このカラムからESIイオン源へ直接進行し得るというということである。
【0071】
種々の実施形態では、質量分析装置システムは、MALDIイオン源を備える。種々の実施形態では、合わせたサンプルの少なくとも一部は、MALDIマトリクス材と混合されて、MALDIイオン化源を有する質量分析器を用いる親・娘イオン遷移モニタリングに供される。種々の実施形態では、合わせたサンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラム上にロードし、この溶離液の少なくとも一部をMALDIマトリクス材と混合して、MALDIイオン源を備える質量分析器を用いる親・娘イオン遷移モニタリングに供する。MALDIマトリクス材の例としては限定はしないが、表1に列挙されるものが挙げられる。
【0072】
【表1】

種々の実施形態では、質量分析器システムは、親イオンを選択するため、およびそのフラグメント娘イオンを検出するためのトリプル四重極質量分析計を備える。種々の実施形態では、第一の四重極は、親イオンを選択する。第二の四重極は、十分に高い圧力および電圧で維持され、その結果複数の低エネルギー衝突が、親イオンのいくつかをフラグメントにさせる。第三の四重極は、選択された娘イオンを検出器に伝送するように選択される。種々の実施形態では、トリプル四重極質量分析計は、イオン源とトリプル四重極との間に位置するイオン・トラップを備え得る。このイオントラップは、イオン(例えば、全てのイオン、特定のm/z範囲を有するイオンなど)を衝突させ得、充填時間後、この選択されたイオンを第一の四重極に対して末端電極をパルス化することによって伝送して、この選択されたイオンがイオントラップから出ることを可能にする。所望の充填時間は、例えば、イオンの数、イオントラップ内の電荷密度、種々の兆候的ペプチドの溶出の間の時間、デューティ・サイクル、励起状態の化学種の崩壊率、または多価イオン、またはそれらの組み合わせに基づいて決定され得る。
【0073】
種々の実施形態では、三重の四重極質量分析計における1つ以上の四重極は、線形イオンとして設定可能であり得る(例えば、四重極内の実質的に細長い円柱状トラップ容積をもたらすための末端電極の付加によって)。種々の実施形態では、第一の四重極は親イオンを選択する。第二の四重極は、十分に高い衝突ガス圧および電圧で維持され、その結果複数の低エネルギー衝突が親イオンのいくつかをフラグメントにさせる。この第三の四重極は、フラグメントイオンをトラップするように、充填時間後、末端電極をパルスして、この選択された娘イオンがイオントラップを出ることを可能にすることによって、選択された娘イオンを検出器に伝送するように選択される。所望の充填時間は、例えば、フラグメントイオンの数、イオントラップ内の電荷密度、種々の兆候的ペプチドの溶出の間の時間、デューティ・サイクル、励起状態の化学種の崩壊率、または多価イオン、またはそれらの組み合わせに基づいて決定され得る。
【0074】
種々の実施形態では、質量分析計システムは、親イオンを選択するため、およびそのフラグメント娘イオンを検出するために、2つの四重極質量分析計およびTOF質量分析計を備える。種々の実施形態では、第一の四重極は、親イオンを選択する。第二の四重極は、十分に高い圧力および電圧で維持され、その結果複数の低エネルギー衝突が、このイオンのいくつかをフラグメントにさせ、TOF質量分析計は、例えば、質量範囲(目的の娘イオンおよび抽出された作成されたイオンクロマトグラムを包含する)にまたがってイオンをモニタリングすることによって、検出器から離れた選択されたイオンの時間ウインドウの外側に現れるイオンを偏向させることによって、選択された娘イオンの時間ウインドウに達するように検出器を時間ゲートすること、またはそれらの組み合わせによって、検出のための娘イオンを選択する。
【0075】
種々の実施形態では、質量分析システムは、2つのTOF質量分析器およびイオン分離器(例えば、CIDまたはSIDなど)を備える。種々の実施形態では、第一のTOFは、イオン分裂器における導入のために親イオンを選択し(例えば、分裂器から離れて選択された親イオンの時間ウインドウの外側に出現するイオンを偏向させることによって)第二のTOF質量分析器は、検出のための娘イオンを選択する(例えば、目的の娘イオンおよび作成された抽出されたイオンクロマトグラムを包含する質量範囲にまたがってイオンをモニタリングすることによって、検出器から離れて選択された娘イオンの時間ウインドウの外側に出現するイオンを偏向させることによって、選択された娘イオンの時間ウインドウに達するように検出器を時間ゲートすることによって、またはそれらの組み合わせによって)。TOF分析器は線形であってもよくまたは分析器を反映する。
【0076】
種々の実施形態では、質量分析システムは、飛行時間質量分析計およびイオンレフレクターを備える。このイオンレフレクターは、TOFのフィールド・フリードリフト領域の末端に位置し、これを用いてイオンの飛行経路を改変することによって初期運動エネルギー分布の効果を補償する。種々の実施形態では、イオンレフレクターは、加速電圧よりもわずかに大きいレベルまで増大させる電位で偏向された一連のリングからなる。作動中、イオンは、レフレクターに浸透するので、それらは、その電場の方向の速度がゼロになるまで減速される。ゼロの速度ポイントで、そのイオンは方向を反転して、レフレクターを通じて加速し戻される。このイオンは、所得エネルギーと同一のエネルギーであって、ただし反対方向の速度でこのレフレクターを出る。より大きいエネルギーを有するイオンは、このレフレクターにさらに深く浸透して、結果としてさらに長時間このレフレクター内に残る。このレフレクターに用いられる電位は、イオンの飛行経路を改変するように選択され、その結果質量および電荷が同様のイオンは、実質的に同じ時間で検出器に達する。
【0077】
種々の実施形態では、質量分析計システムは、タンデムMS−MS装置を備え、この装置は、目的の親イオンを選択するための時限イオン選別器を有する第一のフィールドフリードリフト領域と、娘イオンを生じるための分裂チャンバ(またはイオン分裂器)と、検出のために選択された娘イオンを伝送するための質量分離器とを備える。種々の実施形態では、この時限イオン選別器は、パルスイオンデフレクターを備える。種々の実施形態では、このイオンデフレクターは、パルスイオンデフレクターとして用いられてもよい。この質量分離器は、イオンレフレクターを備えてもよい。種々の実施形態では、分裂チャンバは、イオンのフラグメンテーションを生じて、抽出を遅らせるように設計された衝突セルである。種々の実施形態では、この分裂チャンバはまた、飛行時間分光測定によるフラグメントイオンの分析のための遅延抽出イオン源として機能し得る。
【0078】
種々の実施形態では、質量分析計システムは、タンデムTOF−MSを備え、これはパスルイオン源によって作成される複数のイオンの経路に沿って配置された第一、第二および第三のTOF質量分離器を有する。この第一の質量分離器は、パルスイオン源によって発生される複数のイオンを受容するように配置される。この第一の質量分離器は、パルスイオン源によって発生される複数のイオンを加速して、その質量対電荷比に応じてこの複数のイオンを分離して、この複数のイオンからその質量対電荷比に基づいてイオンの第一の群を選択する。この第一の質量分離器はまた、イオンの第一の群の少なくとも一部をフラグメント化させる。この第二の質量分離器は、第一の質量分離器によって発生された第一の群のイオンおよびそのフラグメントを受容するように配置される。この第二の質量分離器は、イオンの第一の群およびそのフラグメントを加速して、その質量対電荷比に応じてこのイオンの第一の群およびそのフラグメントを分離して、その質量対電荷比に基づいてイオンの第一の群およびそのフラグメントからイオンの第二の群を選択する。この第二の質量分離器はまた、イオンの第二の群の少なくとも一部をフラグメント化させる。この第一および/または第二の質量分離器はまた、イオンガイド、イオン集束エレメント、および/またはイオンステアリングエレメントを備え得る。種々の実施形態では、第二のTOF質量分離器は、イオンの第一の群およびそのフラグメントを加速する。種々の実施形態では、第二のTOF質量分離器は、フィールド・フリー領域およびイオン選別器を備え、この選別器は実質的に第二の所定の範囲内である質量対電荷比を有するイオンを選択する。種々の実施形態では、第一および第二のTOF質量分離器のうちの少なくとも1つは、フラグメント化したイオンを選択する時限イオン選別器を備える。種々の実施形態では、第一および第二の質量分離器のうちの少なくとも1つは、イオン分離器を備える。この第三の質量分離器は、第二の質量分離器によって発生されるイオンの第二の群およびそのフラグメントを受容するように配置されている。この第三の質量分離器は、イオンの第二の群およびそのフラグメントを加速して、その質量対電荷比に応じてこのイオンの第二の群およびそのフラグメントを分離する。種々の実施形態では、この第三の質量分離器は、イオンの第二の群およびそのフラグメントを、パルス加速を用いて加速する。種々の実施形態では、イオン検出器が、イオンの第二の群およびそのフラグメントを受容するように配置される。種々の実施形態では、イオンレフレクターは、イオンの第一および第二の群ならびにそのフラグメントのうちの少なくとも1つのエネルギーを、それらがイオン検出器に達する前に補正するためにフィールド・フリー領域に配置される。
【0079】
種々の実施形態では、質量分析計システムは、TOF質量分析器を備え、これは複数の飛行経路、時間内に同時に行われ得る複数の作動方式、または両方を有する。このTOF質量分析器は、経路選択イオンデフレクターを備え、このイオンデフレクターは、第一のイオン経路、第二のイオン経路または第三のイオン経路のいずれかにそって質量分析器に入るサンプルイオンのポケットから選択されたイオンを指向させる。いくつかの実施形態では、さらに多くのイオン経路が使用されてもよい。種々の実施形態では、第二のイオンデフレクターを、イオンデフレクターを選択する経路として用いてもよい。時間依存性の電圧を、経路選択イオンデフレクターに加えて、利用可能なイオン経路のなかから選択し、所定の質量対電荷比の範囲内の質量対電荷比を有するイオンを、選択されたイオン経路にそって伝えることを可能にさせる。
【0080】
例えば、複数の飛行経路を有するTOF質量分析器の作動の種々の実施形態では、第一の所定の電圧を、第一の所定の質量対電荷比の範囲に相当する第一の所定の時間間隔について経路選択イオンデフレクターに与え、これによって第一の質量対電荷比の範囲内のイオンを、第一のイオン経路にそって伝えさせる。種々の実施形態では、この第一の所定の電圧は、ゼロであって、これによって、イオンが最初の経路にそって伝え続けることが可能になる。第二の所定の電圧を、第二の所定の質量対電荷比の範囲に相当する第二の所定の時間範囲について経路選択イオンデフレクターに与え、これによって第二の質量対電荷比の範囲内のイオンを、第二のイオン経路にそって伝えさせる。さらなる時間範囲および電圧(第三、第四などを含む)を使用して、特定の測定について必要なできるだけ多くのイオン経路を適合させてもよい。第一の所定の電圧の振幅および極性を選択して、第一のイオン経路中にイオンを偏向させて、第二の所定の電圧の振幅および極性を選択して、第二のイオン経路中にイオンを偏向させる。この第一の時間間隔は、第一の所定の質量対電荷比の範囲内のイオンが経路選択イオンデフレクターを通じて伝わっている時間に相当するように選択され、この第二の時間間隔は、第二の所定の質量対電荷比の範囲内のイオンが経路選択イオンデフレクターを通じて伝わっている時間に相当するように選択される。第一のTOF質量分離器は、第一のイオン経路にそって伝わる第一の質量対電荷比の範囲内のイオンのパケットを受容するように配置されている。この第一のTOF質量分離器は、第一の質量対電荷比の範囲内のイオンをその質量に応じて分ける。第一の検出器は、第一のイオン経路にそって伝えられているイオンの第一の群を受容するように配置されている。この第二のTOF質量分離器は、第二のイオン経路にそって伝わるイオンのパケットの一部を受容するように配置されている。この第二のTOF質量分離器は、第二の質量対電荷比の範囲内のイオンをその質量に応じて分ける。第二の検出器は、第二のイオン経路にそって伝えられているイオンの第二の群を受容するように配置されている。いくつかの実施形態では、さらなる質量分離器および検出器(第三、第四などを含む)を、対応する経路にそって指向されるイオンを受容するように配置してもよい。1実施形態では、第三の所定の質量範囲内のイオンを破棄する第三のイオン経路を使用する。第一および第二の質量分離器は、任意のタイプの質量分離器であってもよい。例えば、第一および第二の質量分離器のうちの少なくとも1つは、フィールド・フリードリフト領域、イオン加速器、イオン分裂器、または時限イオン選別器を備えてもよい。この第一および第二の質量分離器はまた、複数の質量分離デバイスを備えてもよい。種々の実施形態では、イオンレフレクターが、イオンの第一の群を受容するように含まれかつ配置され、それによってイオンレフレクターは、イオンの第一の群についてTOF質量分析器の解像力を向上させる。種々の実施形態では、イオンレクレクターが、イオンの第二の群を受容するように含まれかつ配置され、それによってイオンレフレクターは、イオンの第二の群についてTOF質量分析器の解像力を向上させる。
【0081】
本発明の教示の別の局面では、本明細書に記載される方法の機能は、一般的な目的のコンピューターでコンピューター読み取り可能な装置として実行され得る。このコンピューターは、質量分析システムから隔てられても、それから取り外し可能でも、またはそれに組み込まれてもよい。このコンピューター読み取り可能な装置は、例えば、FORTRAN、PASCAL、C、C++またはBASICなどの多数の高レベル言語のうちのいずれか1つで書かれてもよい。さらにコンピューター読み取り可能な装置は、EXCELまたはVISUAL BASICのような、市販のソフトウェアに組み込まれたスクリプト、マクロまたは機能で書かれてもよい。さらに、コンピューター読み取り可能な装置は、コンピューター上に存在するマイクロプロセッサーに指向されるアセンブリ言語で実行され得る。例えば、コンピューター読み取り可能な装置は、IBM PCまたはPC単独で行うように構成されている場合、Intel80×86アセンブリ言語で実行されてもよい。1実施形態では、コンピューター読み取り可能な装置は、限定はしないが、コンピューター読み取り可能なプログラム媒体、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光学ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、CD−ROM、DVD−ROMなどを含む、製造業者の品目に組み込まれる。
【実施例】
【0082】
本発明の教示の局面は、排他的ではなく、本発明の教示の範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない以下の実施例に照らしてさらに理解され得る。
【0083】
実施例1:種々のサンプルのタイプ由来の化合物
以下の実施例は、種々のサンプルタイプの使用を図示する。この実施例の教示は、排他的ではなく、かつこれらの実験または本発明の教示の範囲を限定するものではない。
【0084】
本発明の教示の方法を用いる種々のサンプルタイプ由来の1つ以上のアミン含有化合物の分析の種々の実施形態が図示される。種々の実施形態では、目的の1つ以上のアミン含有化合物は、この実施例において、1つ以上の多様なサンプルタイプ、例えば、血漿、ワイン、タンパク質、ペプチドおよびアミノ酸に由来し得る。一般には、サンプル中の目的の化合物が、例えば、一級アミンおよび二級アミンのようなアイソバリックタグでの標識のために適切な1つ以上のアミン基を含むようにサンプルを処理してもよい。
【0085】
図3を参照すれば、種々の実施形態では、血漿(ブロック305)のサンプルに含まれる1つ以上のアミン含有化合物の標識は、目的のアミン含有化合物のうちの1つ以上を沈殿させる工程(工程325)、続いてこの上清の遠心分離および少なくとも一部の収集(工程340)を包含する。広範な種々のアプローチを用いて、限定はしないが、7〜10%のスルホサリチル酸(SSA)溶液、エタノール、イソプロパノールおよびそれらの組み合わせを含む、目的のアミン含有化合物を沈殿させてもよい。次いで、この上清の少なくとも一部を1セットのアイソバリックタグ(例えば、iTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1つ以上のアイソバリックタグと合わせて(工程350)、血漿サンプルから目的のアイソバリック標識されたアミン含有化合物を調製する。
【0086】
種々の実施形態では、ワインのサンプル(ブロック310)に含まれる1つ以上のアミン含有化合物の標識は、7〜10%のSSA溶液を含む、目的のアミン含有化合物の1つ以上を沈殿させる工程(工程330)、続いて、この上清の少なくとも一部の遠心分離および収集(工程345)を包含する。次いで、この上清の少なくとも一部を1セットのアイソバリックタグ(例えば、iTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1つ以上のアイソバリックタグと合わせて(工程350)、ワインサンプルから目的のアイソバリック標識されたアミン含有化合物を調製する。
【0087】
種々の実施形態では、タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドのサンプル(ブロック315)に含まれる1つ以上のアミン含有化合物の標識は、サンプルの少なくとも一部を(例えば、6モル(M)の塩酸(HCl)で)加水分解する工程、消化する工程(例えば、トリプシンで)、またはその両方(工程325)(例えば、ペプチドおよび/またはアミノ酸のフラグメントを生成するため)、およびこの処理されたサンプルと1セットのアイソバリックタグ(例えば、iTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1つ以上のアイソバリックタグと合わせて(工程350)、タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドサンプルから目的のアイソバリック標識されたアミン含有化合物を調製する工程を包含する。
【0088】
種々の実施形態では、このサンプルは、アミノ酸またはアミノ酸の混合物(ブロック320)を含み、アミノ酸のうち1つ以上が目的のアミン含有化合物を含む。種々の実施形態では、アミノ酸サンプルを、1セットのアイソバリックタグ(例えば、iTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1つ以上のアイソバリックタグと合わせて(工程350)、アミノ酸サンプルから目的のアイソバリック標識されたアミン含有化合物を調製してもよい。iTRAQ(商標)ブランド試薬を用いる種々の実施形態では、目的のアイソバリックに標識されたアミン含有化合物を、1つ以上の翻訳後修飾を実質的に変化させることなく調製し得る。
【0089】
実施例2
サンプル調製およびiTRAQ(商標)ブランド試薬での標識
以下の実施例は、iTRAQ(商標)ブランド試薬を用いる1つ以上のアイソバリックタグで、1つ以上のタンパク質またはペプチドを含む1つ以上のサンプルを調製して標識する種々の実施形態の例を図示する。この実施例の教示は、排他的ではなく、かつこれらの実験または本発明の教示の範囲を限定するものではない。
【0090】
タンパク質またはペプチドのサンプルの還元ならびにシステインのブロック
図4Aを参照して、種々の実施形態では、少なくとも1つおよび最大4つのサンプル試験管の各々(各々が5〜100μgのタンパク質を含む)に対して、20μLの溶解緩衝液および1μLの変性剤を添加し、続いてボルテックスによって混合する(工程405)。各々のサンプル試験管に対して、2μLの還元試薬を添加し、続いてボルテックスによって混合し60℃で1時間インキュベーションする(工程410)。各々のサンプル試験管をスピンさせた後、各々のサンプル試験管に1μLのシステインブロック試薬を添加し、次いでボルテックスによって混合し、スピニングして、室温で10分間インキュベーションする(工程415)。
【0091】
トリプシンによるタンパク質またはペプチドのサンプルの消化
図4Aを参照して、種々の実施形態では、少なくとも1つおよび最大2つのサンプル試験管(各々が5〜100μgの還元および標識されるべきシステインブロックタンパク質を含む)種々の実施形態において、1バイアルのトリプシンを25μLのMillQ(登録商標)Waterまたはその等価物で再構成する。例えば、少なくとも1つおよび最大4つのサンプル試験管(各々が5〜100μgの還元および標識されるべきシステインブロックタンパク質を含む)他の実施形態では、2バイアルのトリプシンを25μLのMillQ(登録商標)Waterまたはその等価物で再構成する。トリプシンの希釈されたバイアルの各々を、ボルテックスおよびスピニングによって混合する(工程420)。
【0092】
少なくとも1つおよび最大4つのサンプル試験管(各々が5〜100μgの還元および標識されるべきシステインブロックタンパク質を含む)の各々に、10μLのトリプシン溶液を添加する。各々のサンプル試験管をボルテックスによって混合し、次いでスピンさせて、37℃で少なくとも12時間および最大16時間までインキュベートする。次いで、各々のサンプル試験管中のサンプル消化液をスピンさせる(工程425)。
【0093】
タンパク質またはペプチドサンプルの加水分解
種々の実施形態では、タンパク質またはペプチドのサンプルを加水分解による分析のために調製する。従って、種々の実施形態では、還元工程(例えば、工程410)および消化工程(例えば、工程420)は用いない。図4Bを参照、種々の実施形態では、タンパク質および/またはペプチドを含むサンプルを、例えば、酸を用いて加水分解する(工程427)。本発明の教示での使用に適切であるタンパク質およびペプチドの加水分解には広範な種々の技術が当該分野で利用可能である。加水分解を、例えば、強力な酸加水分解を用いて行って(例えば、減圧下で100℃で6Nの塩酸を用いる処理による)、遊離のアミノ酸を生成する。いくつかの加水分解条件で、いくつかのアミド(例えば、Asn、Gln)をその酸に変換し得、他のアミノ酸を分解し得ると理解される。従って、種々の実施形態では、強力な酸加水分解以外の加水分解法を用いてもよい。
【0094】
iTRAQ(商標)ブランド試薬を用いるアミノ酸の標識
図4Aおよび4Bを参照、種々の実施形態では、少なくとも1つのバイアルiTRAQ(商標)ブランドのアイソバリック試薬、および最大4バイアルの種々のiTRAQ(商標)ブランドのアイソバリック試薬を室温まで温めて、iTRAQ(商標)ブランドのアイソバリック試薬の各々のバイアルに、70μLのエタノールを添加し、続いてボルテックスによって混合し、スピニングする(工程430)。1つのバイアルiTRAQ(商標)ブランドのアイソバリック試薬を、例えば、消化されたタンパク質、加水分解されたタンパク質など由来のアミノ酸の各々のサンプル試験管について用いる。
【0095】
アミノ酸の1つのサンプル試験管に、エタノール中の1つのiTRAQ(商標)ブランドのアイソバリック試薬を含む1バイアルの内容物を添加し、続いてボルテックスによる混合、スピニングおよび室温で1時間のインキュベーションをする(工程435)。種々の実施形態では、各々の標識されたアミノ酸の少なくとも一部を浄化し(工程440)、(例えば、干渉するサンプル、干渉アーチファクト、などを除去するため;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分画、陽イオン交換、高解像陽イオン交換など、およびそれらの組み合わせによって)、その後にそれを用いて、レポーターイオンシグナルを測定する。浄化された標識されたアミノ酸の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムにロードする(工程445)(例えば、LCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラム、またはその組み合わせ)。次いで、このクロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を質量分析計システムに向け(工程450)、1つ以上のアミン含有化合物のアミン含有化合物レポーターイオン遷移シグナルを測定する。種々の実施形態では、アミン含有化合物レポーターイオン遷移シグナルは観察されない(工程455)。アミン含有化合物レポーターイオン遷移シグナルが観察されない種々の実施形態では、標識されたアミノ酸のサンプルについて、アミノ酸を標識する工程を繰り返す(工程460)。
【0096】
分析のためにiTRAQ(商標)ブランド試薬標識アミノ酸を組み合わせる
図4Aおよび4Bを参照、種々の実施形態では、各々の標識されたアミノ酸サンプル試験管の全内容物を、1つの新しいサンプル試験管に移して、合わせたサンプルを得て、これをボルテックスして混合し、次いでスピンする(工程465)。標識された消化されたタンパク質の各々の少なくとも一部を浄化し(工程470)、(例えば、干渉するサンプル、干渉アーチファクト、などを除去するため;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分画、陽イオン交換、高解像陽イオン交換など、およびそれらの組み合わせによって)、その後にそれを用いて、レポーターイオンシグナルを測定する(工程475)。浄化された標識されたアミノ酸サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムにロードする(例えば、LCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラム、またはその組み合わせ)。次いで、このクロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を質量分析計システムに向け(工程480)、1つ以上のアミン含有化合物のアミン含有化合物レポーターイオン遷移シグナルを、PDITM(例えば、MRM)を用いて測定する。次いで、合わせたサンプル中の目的の1つ以上のアミン含有化合物の濃度(例えば、相対、絶対または両方)を決定する(工程485)。
【0097】
実施例3
標準化合物との組み合わせ
図5を参照、種々の実施形態では、1つ以上のサンプル中の1つ以上のアミン含有化合物の濃度の決定を、限定はしないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、ニトロフラン代謝物、ポリアミンおよびカテコールアミンを含む1つ以上のアミン含有化合物を得て進行させてもよい。種々の実施形態では、アイソバリックに標識された標準化合物(工程505)(例えば、コントロールサンプル由来の目的のアミン含有化合物、濃度が既知のサンプル由来の目的のアミン含有化合物など)を、分析されるべき2つ以上のアイソバリックに標識されたアミン含有試験化合物、例えば、試験化合物#1(工程510)、試験化合物#2(工程520)、および試験化合物#3(と例えば、組み合わせて)内部標準として用いる(工程525)。
【0098】
種々の実施形態では、分析されるべき2つ以上のアミン含有試験化合物は、目的の同じアミン含有化合物を含む。例えば、試験化合物#1、試験化合物#2、および試験化合物#3は、目的の同じアミン含有化合物(例えば、リジン)を、ただし、3つの異なるサンプルから(例えば、時点1、時点2、時点3など、例えば、いくつかのプロセス、例えば、疾患、ファーメンテーションなどの進行をモニターするため)、同じサンプル(例えば、サンプルの1つの実験試行において三連の分析物を得るため)、またはその組み合わせを含んでもよい。
【0099】
1つ以上のアミン含有化合物の濃度の決定は、標準化合物および各々のアミン含有試験化合物を1セットのアイソバリックタグ由来の異なるアイソバリックタグ(例えば、iTRAQ(商標)ブランド試薬)で標識して、進行し得る。例えば、標準化合物を、アイソバリックタグのセット由来の第一のアイソバリックタグで標識し(工程530)、試験化合物#1をアイソバリックタグのセット由来の第二のアイソバリックタグで標識し(工程535)、試験化合物#2をアイソバリックタグのセット由来の第三のアイソバリックタグで標識し(工程540)、試験化合物#3をアイソバリックタグのセット由来の第四のアイソバリックタグで標識してもよい(工程545)。
【0100】
種々の実施形態では、アイソバリックに標識された標準化合物の少なくとも一部およびアイソバリックに標識された試験化合物の一部を合わせて(工程550)、合わせたサンプルを生成し、この合わせたサンプルの少なくとも一部をPDITMに供する。
【0101】
種々の実施形態では、アイソバリックに標識された標準化合物を添加することで、合わせたサンプル中で目的の1つ以上のアミン含有化合物について内部標準として機能し得る。種々の実施形態では、種々のアイソバリックに標識された標準化合物を、合わせたサンプル中の目的の各々の異なるアミン含有化合物について添加して、各々の異なるアイソバリックに標識された標準化合物が、例えば、目的の種々のアミン含有化合物について内部標準として機能する。
【0102】
実施例4
アミン含有化合物濃度の多重決定
以下の実施例は、1セットのiTRAQ(商標)ブランド試薬由来のアイソバリックタグを用いる4つのポリアミンの濃度の多重決定を例示する。本実施例の教示は、排他的ではなく、かつこれらの実験または本発明の教示の範囲を限定するものではない。
【0103】
材料および方法:
本実施例のスペクトルは、図6B〜図10DのスペクトルのAPI2000トリプル四重極LC/MS/MSシステム、および図11〜図13のスペクトルについてはHILCカラムを装備したHPLCシステムに連結されたAPI2000トリプル四重極装置を用いて得た。このクロマトグラフィー設定は、オートサンプラー、150×2.1mmC18逆相カラムおよびカラムヒーターを装備した二成分勾配のHPLCシステムを含む。アミン含有化合物は、メタノール中にそれらを溶解すること、次いで標準的な標識プロトコールを用いてそれらをiTRAQ試薬と反応させることによって調製した。標準のアミンをFlukaから得た。
【0104】
スペクトル:
実施例4は、合わせたサンプルを用いる複数のアミン含有化合物の濃度の決定を図示する。図6A〜図10Dは、未標識のおよび1セットのアイソバリックタグ由来のアイソバリックで標識された両方の個々のアミン含有化合物の質量スペクトルを示す。この実施例では、アイソバリックタグは、iTRAQ(商標)ブランド試薬であった。図11および図13は、合わせたサンプルについてのクロマトグラムを示す。本実施例の合わせたサンプル中の目的のアミン含有化合物は、1,4ジアミノブタン(プトレセン(putrescene))、1,5ジアミノペンタン(カドベリン)、N−(3−アミノプロピル)−ブタン−1,4−ジアミン(スペルミジン)および1,7ジアミノヘプタンであった。図12A〜図12Cは、それぞれ、1,4ジアミノブタン(プトレセン(putrescene))、1,5ジアミノペンタン(カドベリン)、および1,7ジアミノヘプタンについてのクロマトグラムを示す。
【0105】
図6A〜図6Cを参照、未標識(602)およびアイソバリックタグで一級アミンで標識した(604)両方のプトレセン(putrescene)の質量スペクトルを得た。本実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬のアイソバリックタグのセット由来の114アイソバリックタグQ114を用いて、プトレセン(putrescene)の一級アミンを標識した。図6Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬のアイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ114を用いて標識したプトレセン(putrescene)のESI−TOF質量スペクトルを示す。主要なピークは、標識されたプトレセン(putrescene)に対応する635を観察した(m/z約377)が、マイナーなピークは、標識されたプトレセン(putrescene)−ナトリウム付加物(m/z約399)に、および溶媒630(m/z約375)、610(m/z約245)に存在する低質量不純物に相当し、ピーク615、620、625のクラスター(約319〜321の間のm/z)も観察された。
【0106】
図6Cは、CIDに供された標識されたプトレセンのESI TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察された主要なピーク650は、114アイソバリックタグのレポーターイオンに対応したが、標識されたプトレセン(m/z約377)670に、およびプトレセン構造特異的なフラグメント660(m/z約233)に対応するピークも観察された。
【0107】
図7A〜7Cを参照、カドベリンの質量スペクトル(未標識702およびアイソバリックタグを用いて一級アミンで標識された704の両方)を得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の115アイソバリックタグQ115を用いてカドベリンの一級アミンを標識した。図7Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ115を用いて標識したカドベリンのESI−TOF質量スペクトルを示す。730で観察されるピークは、標識されたカドベリン(m/z約391)に相当したが、溶媒710(m/z約102)および725(m/z約248)のバックグラウンドに、およびiTRAQ(商標)反応副産物715(m/z約163)および720(m/z約191)に対応するピークも観察された。
【0108】
図7Cは、CIDに供された標識されたカドベリンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察される主要ピーク740は、115アイソバリックタグのレポーターイオンに対応するが、標識カドベリン760(m/z約391)に、およびカドベリン構造特異的フラグメント750(m/z約247)に対応するピークも観察された。
【0109】
図8A〜8Cを参照、1,7−ジアミノヘプタンの質量スペクトル(未標識802およびアイソバリックタグを用いる一級アミンでの標識804の両方)が得られた。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の116アイソバリックタグQ116を用いて1,7−ジアミノヘプタンの一級アミンを標識した。図8Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ116を用いて標識した1,2−ジアミノヘプタンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察されるピーク825は、標識された1,7−ジアミノヘプタン(m/z約419)に相当したが、溶媒バックグラウンド810(m/z約102)に、およびiTRAQ(商標)反応副産物815(m/z約163)および820(m/z約191)に対応するピークも観察された。
【0110】
図8Cは、CIDに供された標識された1,7−ジアミノヘプタンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察される主要ピーク830は、116アイソバリックタグのレポーターイオンに対応するが、標識された1,7−ジアミノヘプタン850(m/z約419)に、および構造特異的フラグメント840(m/z約275)に対応するピークも観察された。
【0111】
図9A〜9Dを参照、スペルミジン(未標識902およびアイソバリックタグを用いる一級アミンでの標識904の両方)の質量スペクトルを得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の114アイソバリックタグQ114を用いてスペルミジンの一級アミンを標識した。図9Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ114を用いて標識したスペルミジンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察されるピーク925は、標識されたスペルミジン(m/z約434)に相当したが、iTRAQ(商標)反応副産物908(m/z約163)、916(m/z約217)、918(m/z約245)、930(m/z約458)に、および部分的に標識された二級アミン935(m/z約578)に対応するピークも観察された。
【0112】
図9Cは、CIDに供された標識されたスペルミジンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されるピーク945は、114アイソバリックタグのレポーターイオンに対応するが、標識されたスペルミジン980(m/z約434)、構造特異的なフラグメント940(m/z約97)、955(m/z約202)、および970(m/z約290)に、iTRAQ(商標)標識950(m/z約145)に、および溶媒構造フラグメント960(m/z約216)に対応するピークも観察された。
【0113】
図9Dは、CIDに供された標識されたスペルミジンのESI TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されるピーク985は、114アイソバリックタグのレポーターイオンに対応するが、標識されたスペルミジン995(m/z約434)に、および二次標識されたアミン990(m/z約578)に対応するピークも観察された。
【0114】
図10A〜10Dを参照、スペルミジン(未標識1002およびアイソバリックタグを用いる一級アミンでの標識1004の両方)の質量スペクトルを得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の117アイソバリックタグQ117を用いてスペルミジンの一級アミンを標識した。図10Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ117を用いて標識したスペルミジンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察されるピーク1035は、標識されたスペルミジン(m/z約491)に相当したが、溶媒バックグラウンド1008(m/z約177)、1020(m/z約248)、および1022(m/z約248)に、iTRAQ(商標)反応副産物1010(m/z約185)、および1012(m/z約191)に、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ114で標識されたスペルミジン1030(m/z約434)に、標準のスペルミジンにおける不純物1040(m/z約535)、1045(m/z約738)、および1050(m/z約754)に対応するピークも観察された。
【0115】
図10Cは、CIDに供された標識されたスペルミンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されるピーク1060は、117アイソバリックタグのレポーターイオンに対応するが、標識されたスペルミン1075(m/z約491)に、構造特異的なフラグメント1055(m/z約100)、1058(m/z約202)、および1070(m/z約273)に対応するピークも観察された。
【0116】
図10Dは、CIDに供された標識されたスペルミンのESI TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されるピーク1080は、117アイソバリックタグのレポーターイオンに対応するが、標識されたスペルミン1090(m/z約491)に、一級アミンで標識を有する、構造特異的フラグメント1082(m/z約202)に、構造特異的フラグメント1085(m/z約273)に、および全てのアミンが標識されたインタクトなアミン1095(m/z約635)に対応するピークも観察された。
【0117】
図11は、合わせたサンプルについてのクロマトグラムを示しており、これは、HILCカラムを装備したHPLCシステムに連結されたAPI2000トリプル四重極装置上のMRMモードで分析された、1,4ジアミノブタン(プトレセン)1120、1,5ジアミノペンタン(カドベリン)1110、および1,7ジアミノヘプタン1105についてのクロマトグラムを示す。
【0118】
図12A〜図12Cを参照、アイソバリックタグを有する一級アミンで標識されたプトレセン、カドヘリンおよび1,7−ジアミノヘプタンのクロマトグラムを得た。図12Aは、図11で示されるLC/MS/MS試行から得られたiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の114アイソバリックタグQ114で標識されたプトレセンの抽出されたイオンクロマトグラムを示す。観察されるピーク1205は、標識プトレセン(保持時間約8.9分)に対応する。図12Bは、図11で示されるLC/MS/MS試行から得られたiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の115アイソバリックタグQ115で標識されたカドベリンの抽出されたイオンクロマトグラムを示す。観察されるピーク1215は、標識カドベリン(保持時間約8.8分)に対応した。図12Cは、図11で示されるLC/MS/MS試行から得られたiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の116アイソバリックタグQ116で標識された1,7−ジアミノヘプタンの抽出されたイオンクロマトグラムを示す。観察されるピーク1225は、標識された1,7−ジアミノヘプタン(保持時間約8.4分)に対応した。
【0119】
図13は、合わせたサンプルについてのクロマトグラムを示しており、これは、1,7−ジアミノヘプタン1305、カドベリン1310、およびプトレセン1320についてのクロマトグラムを示す。
【0120】
図14A〜図14Cを参照、マトリックスシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を用いて95%アセトニトリルのバックグラウンドO−MALDI質量スペクトルを得た。同じスペクトルの3つの質量範囲にみられるほとんどのイオンは、溶媒に由来する化学的バックグラウンドおよび4−ヒドロキシ桂皮酸由来のマトリックスイオンから生じる。
【0121】
図15は、95%アセトニトリル(ACN)およびシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)中のアイソバリックタグを用いて一級アミンで標識された、プトレセン、カドベリンおよび1,7−ジアミノヘプタンの混合物のO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。標識されたプトレセン1512(m/z約379)、標識されたカドベリン1520(m/z約391)、標識された1,7−ジアミノヘプタン1525(m/z約419)、および標識されたスペルミジン1530(m/z約434)に対応する観察されたピーク、ただし、標準における化学的不純物1502(m/z約359)、1504(m/z約361)、1508(m/z約377)、および1515(m/z約380)に対応するピークも観察された。
【0122】
図16A〜16Bを参照、プトレセンの質量スペクトル(未標識1602およびアイソバリックタグを用いる一級アミンでの標識1604の両方)の質量スペクトルを得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の114アイソバリックタグQ114を用いてプトレセンの一級アミンを標識した。図16Bは、CIDに供された、マトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中の標識されたプトレセンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察される主要なピーク1608は、114アイソバリックタグのレポーターイオンに対応するが、標識されたプトレセン1640(m/z約377)に、インタクトな標識1610(m/z約145)に、構造特異的フラグメント1615(m/z約172)、1620(m/z約233)、1630(m/z約331)、および1635(m/z約359)に対応するピークも観察された。
【0123】
図17A〜図17Bを参照、カドベリンの質量スペクトル(未標識1702およびアイソバリックタグを用いる一級アミンでの標識1704の両方)の質量スペクトルを得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の115アイソバリックタグQ115を用いてカドベリンの一級アミンを標識した。図17Bは、マトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中のiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ115で標識されたカドベリンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察された主なピーク1708は、115アイソバリックタグのレポーターイオンに対応したが、標識されたカドベリン1730(m/z約391)に、インタクトな標識1712(m/z約145)に、および構造特異的フラグメント1720(m/z約247)に対応するピークも観察された。
【0124】
図18A〜18Bを参照、1,7−ジアミノヘプタン(未標識1802およびアイソバリックタグを用いる一級アミンでの標識1804の両方)の質量スペクトルを得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の116アイソバリックタグQ116を用いてカドベリンの一級アミンを標識した。図18Bは、マトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中のiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ116を用いて標識した1,7−ジアミノヘプタンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察されるピーク1815は、116アイソバリックタグのレポーターイオンに相当したが、標識された1,7−ジアミノヘプタン1845(m/z約419)に、iTRAQ(商標)標識フラグメント1810(m/z約101)に、および構造特異的フラグメント1825(m/z約275)および1835(m/z約381)に対応するピークも観察された。
【0125】
図19A〜19Bを参照、スペルミジン(未標識1902およびアイソバリックタグを用いる一級アミンでの標識1904の両方)の質量スペクトルを得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の114アイソバリックタグQ114を用いてスペルミジンの一級アミンを標識した。図19Bは、マトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中のiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ114を用いて標識したスペルミジンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察される主要なピーク1908は、114アイソバリックタグのレポーターイオンに相当したが、標識されたスペルミジン1965(m/z約434)に、インタクトなiTRAQ(商標)標識1912(m/z約145)に、および構造特異的フラグメント1915(m/z約156)、1918(m/z約175)、1925(m/z約184)、1930(m/z約202)、1935(m/z約220)、1940(m/z約273)、1945(m/z約290)および1960(m/z約414)に対応するピークも観察された。
【0126】
図20A〜20Bを参照、スペルミン(未標識2002およびアイソバリックタグを用いる一級アミンでの標識2004の両方)の質量スペクトルを得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の117アイソバリックタグQ117を用いてスペルミジンの一級アミンを標識した。図20Bは、95%アセトニトリルおよびCHCA中のiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ117を用いて標識されたスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察される主要なピーク2015は、標識されたスペルミン(m/z約491)に対応するが、構造特異的フラグメント2008(m/z約379)、および2030(m/z約535)に対応するピークも観察された。
【0127】
図21A〜図21Cを参照、スペルミン(未標識2102およびアイソバリックタグを用いる一級アミンでの標識2104の両方)の質量スペクトルを得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の117アイソバリックタグQ117を用いてスペルミンの一級アミンを標識した。図21Bは、4−ヒドロキシ桂皮酸マトリックス中のiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ114で標識されたスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク2110は、117アイソバリックタグのレポーターイオンに対応したが、標識されたスペルミン2140(m/z約491)に、および構造特異的フラグメント2120(m/z約202)、2130(m/z約275)、および2135(m/z約473)に対応するピークも観察された。
【0128】
図21Cは、4−ヒドロキシ桂皮酸マトリックス中のiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ117で標識されたスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク2150は、117アイソバリックタグのレポーターイオンに対応したが、標識されたスペルミン2180(m/z約491)に、および構造特異的フラグメント2160(m/z約202)、および2170(m/z約275)に対応するピークも観察された。
【0129】
図22A〜22Bを参照、スペルミン(未標識2202およびアイソバリックタグを用いる一級アミンで標識2204の両方)の質量スペクトルを得た。この実施例では、iTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来の117アイソバリックタグQ117を用いてスペルミンの一級アミンを標識した。図22Bは、4−ヒドロキシ桂皮酸マトリックス中のiTRAQ(商標)ブランド試薬アイソバリックタグのセット由来のアイソバリックタグQ117を用いて標識したスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察される主要なピーク2210は、117アイソバリックタグのレポーターイオンに相当したが、標識されたスペルミン2250(m/z約491)に、構造特異的フラグメント2220(m/z約202)、2230(m/z約271)、および2235(m/z約273)に、およびフラグメンテーションについて選択された前駆体イオン2260(m/z約635)に対応するピークも観察された。
【0130】
図23は、種々のアミノ酸:2310、2320、2330、2340、2350および2360についてのタンパク質加水分解産物にみられるアミノ酸を含む、iTRAQ(商標)115標識アミノ酸標準のMRM分析のクロマトグラムを示す。
【0131】
実施例5
ウシ血清アルブミン(BSA)サンプル
以下の実施例は、遊離アミノ酸を生成するために加水分解に供したタンパク質サンプルのアミノ酸の濃度の決定を例示する。本実施例の教示は、排他的ではなく、これらの実験または本発明の教示の範囲を限定するものではない。
【0132】
材料および方法:
タンパク質またはペプチド加水分解産物を、標準的な加水分解方法によって調製する。詳細には、1μgを含むウシ血清サンプルを6NのHClを用いて110℃で17時間加水分解した。次いで、この加水分解したサンプルを緩衝液、イソプロパノールおよびiTRAQブランド試薬と混合して、室温で反応させる。次いで、このサンプルを乾燥して、分析のための所望の濃度まで再溶解するかまたは直接希釈する(代表的には、0.2μgのペプチドまたはタンパク質が各々の分析に必要)。標準(すなわち、ノルロイシン、ノバリン)を、サンプルに添加し、その後、加水分解および/または標識して、実験手順を通じてサンプルを回収する。サンプル標識の詳細はまた、プロトコール形式で表2に示す。
【0133】
複数のサンプルについては(内部標準を含む場合は最大4または最大3まで)、上記のように各々のサンプルを調製し、種々のiTRAQ試薬(114、115、116または117)で標識する。標識反応後、標識されたサンプルと種々の試薬を一緒に混合する。別々のバイアル中で(ただし、異なるタグ付け試薬を用いて)アミンまたはアミノ酸標準混合物について同じプロセスを行って、標識された標準を用いて外部較正曲線を生成してもよい。標識された標準をまた、サンプルと混合してもよく、これによって各々のアミンまたはアミノ酸についての内部標準を得る(図1を参照のこと)。HPLC分離は、1ml/分の流速で検出器まで200μL/分のスプリットで、50℃に加熱したC18カラム(15%炭素をロードして完全末端キャップした)を用いて行う。勾配、洗浄および平衡は全部で20分かかる。
【0134】
アミノ酸濃度の定量は、HPLC分離、続いてMRMモードで作動するトリプル四重極またはQ TRAP MA/MSシステムのいずれかでESI MRM分析を用いて行う。MRM分析のために、MRM遷移は、アミノ酸の標識量からなり、MS/MSで用いられる特定の試薬について、例えば117試薬について生成されるレポーターイオンのフラグメントグリシンは、220.1>117.1の遷移を用いてモニターする。モニターするのに必要なすべてのアミノ酸についてのMRM遷移がこの方法に入る。遷移の1つはサンプル中でスパイクされる内部標準について正常には逆転される。あらゆるアミノ酸についての内部標準は、検出応答およびクロマトグラフィー分離における任意の変動について補正する。定量は、Analyst(商標)ソフトウェアおよびアミノ酸分析を支持するために特に設計されたツールを用いて行う。
【0135】
【表2】

本実施例のデータの作成のためのサンプルホールディングおよびLC/MS/MS設定のさらなる詳細は以下のとおりである。LCカラム上のローディングの前に、各々のサンプルを、iTRAQ試薬114で標識した6pmole/μLのアミノ酸標準を含有する25μLの3%ギ酸を用いて再構成した。次いで5μLの溶液を、製造業者の推奨する手順を用いてApplied Biosystems/MDS Sciex API2000LC/MS/MS装置に注入した。装置の作動条件に対する詳細は、表3〜11に示す。表3および表4の示す条件は、装置のLC部分に関連し、表5〜11に示す条件は、その装置のMS/MS部分に関連した。
【0136】
【表3】

【0137】
【表4】

本実施例では、全ての遷移を施行中連続してスキャンしないように、MS/MSデータ取得においては複数のピリオド(ピリオド1〜3)を用いる。あるピリオド中の遷移のみをそのピリオドの間にスキャンする。これによって、1ピークあたりより多くのデータポイントが可能になり、これでより良好な獲得が得られる。
【0138】
【表5】

【0139】
【表6】

【0140】
【表7】

【0141】
【表8】

【0142】
【表9】

【0143】
【表10】

【0144】
【表11】

スペクトルおよび結果:
本発明の実施例では、20アミノ酸の濃度を決定した。表12は、各々のアミノ酸(第2列に列挙)について得たデータをまとめる。第3列は、LCカラム上のアミノ酸の保持時間を列挙する。第四列は、濃度が未知のサンプルのアミノ酸と関連したピークの面積を列挙しており、第五列は、アミノ酸標準サンプルと関連したピークの面積を列挙しており、第六列は、標準サンプル中のアミノ酸の濃度を列挙しており、第七列は、本発明の教示を用いるこの実施例におけるアミノ酸について決定した濃度を列挙した。未知のサンプル中のアミノ酸の濃度は、未知のサンプルのアミノ酸に関連するピークの領域を標準サンプルに関連するピークの領域で割ること、およびこの比に公知のサンプルの濃度を掛けることによって決定した。
【0145】
スペクトルの例を図24、および25A〜25Uに示す。
【0146】
図24は、iTRAQ(商標)114標識したアミノ酸標準、および117標識したサンプルのMRM分析のクロマトグラムを示す。図24に示される種々の保持時間に対応するアミノ酸を表12に列挙する。図25A〜図25Uは、測定した種々のアミノ酸についてのMRMデータを模式的に示す。図25A〜図25Uの各々の右パネルは、内部標準(IS)114標識アミノ酸のイオンシグナルを、左パネルは、117標識サンプルのイオンシグナルを示している。いずれか面積が由来するピークには影をつけている。Cyaについて注記すべきであるが、サンプルのシグナルは検出されておらず、従って影付きのピークは、図25Aの左パネルにはみられない。
【0147】
図26A〜Bは、Beckmanでのカラム誘導体化の前後の標準アミノ酸分析方法/装置に対してアミノ酸の測定濃度を比較する。この結果は、これらの方法と極めて一致している。
【0148】
図26Aおよび図26Bは、理論、およびBeckman Goldシステムに対して代表的なタンパク質加水分解産物サンプルについて、結果を比較する。図26Aは、各々のアミノ酸の理論上のモルパーセント(所定のアミノ酸について最も左のバー)と、Beckman Goldシステムで決定したモルパーセント(所定のアミノ酸について真ん中のバー)およびLC/MS/MSを用いてこの実施例で測定したモルパーセント(所定のアミノ酸について最も右のバー)とを比較する。図26Bは、Beckman Goldシステムで行ったタンパク質加水分解サンプルについての理論値からの変動(所定のアミノ酸について左のバー)およびLC/MS/MSを用いてこの実施例で測定した値(所定のアミノ酸について右のバー)とを比較する。本実施例からのチロシンの値(LC/MS/MSシステム)は低い。なぜなら、このサンプルは、ヒドロキシルアミンでは処理されなかったからである(ヒドロキシアミンは、チロシンから望ましくない第二のiTRAQ試薬標識を除去し得る)。
【0149】
【表12】

実施例6:体液サンプル
以下の実施例は、生物学的サンプル中の遊離アミノ酸の濃度の決定を例示する。本実施例のデータは血漿サンプルに対してであるが、本発明の実施例の教示は、限定はしないが尿を含む他の体液に供され得る。本実施例の教示は、排他的ではなく、これらの実験または本発明の教示の範囲を限定するものではない。本実施例では、血漿サンプル中の48の遊離のアミノ酸をモニターした。このモニターされたアミノ酸を表13に列挙する。
【0150】
【表13】

血漿中の1つ以上の遊離アミノ酸のモニタリングは、例えば、新生児における疾患の検出および/またはモニタリング、バイオマーカーの検出などを含むいくつかの実際的な適用を有する。例えば、新生児における特定の遊離アミノ酸は、暗示的な新生児の代謝性疾患、例えば、メチルマロン酸血症およびプロピオン酸血症などであってもよい。特定の一般的アミノ酸病(aminoacidopathies)に関連するアミノ酸の上昇の例も表14に列挙する。
【0151】
【表14】

このような代謝性障害は、遺伝子障害のまれな群であるが、それらは、罹患した乳幼児に重篤な結果を有し得る。未処置のままであれば、これらの障害は、不可逆性の精神遅滞(軽度から重度におよぶ)、身体障害、神経学的障害、さらには致死を生じ得る。早期の検出(出生後すぐ)および正確な診断が、急速かつ有益な処置を達成するには極めて重要である。
【0152】
材料および方法:
体液(例えば、血漿、血清、尿)については、1部のサンプルを4部のイソプロパノールまたはエタノールと混合して、サンプル中のほとんどのタンパク質を沈殿させる。緩衝液を上清に加えて、標識反応のために塩基性pHを維持する。次いで、iTRAQブランド試薬を添加して、室温で反応させる。次いで、このサンプルを乾燥して再溶解するか、または分析のために所望の濃度まで直接希釈する(代表的には100nLの体液が各々の分析に必要である)。サンプル標識の詳細はまた、プロトコール形式で表15に示す。
【0153】
【表15】

本実施例のデータの作成のためのサンプルホールディングおよびLC/MS/MS設定のさらなる詳細は以下のとおりである。LCカラム上のローディングの前に、各々のサンプルを、iTRAQ試薬117で標識した10pmole/μLのアミノ酸標準を含有する40μLの3%ギ酸を用いて再構成した。次いで2μLの容積を、製造業者の推奨する手順を用いてApplied Biosystems/MDM Sciex API32000LC/MS/MS装置に注入した。装置の作動条件に対する詳細は、表16〜26に示す。表16および表17の示す条件は、その装置のLC部分に関連し、表18〜26に示す条件は、その装置のMS/MS部分に関連した。
【0154】
【表16】

【0155】
【表17】

本実施例では、全ての遷移を施行中連続してスキャンしないように、MS/MSデータ取得においては複数のピリオド(ピリオド1〜4)を用いる。あるピリオド中の遷移のみをそのピリオドの間にスキャンする。これによって、1ピークあたりより多くのデータポイントが可能になり、これでより良好な獲得が得られる。
【0156】
【表18】

【0157】
【表19】

【0158】
【表20】

【0159】
【表21】

【0160】
【表22】

【0161】
【表23】

【0162】
【表24】

【0163】
【表25】

【0164】
【表26】

スペクトルおよび結果:
本実施例では、48アミノ酸をモニターした。表27は、各々の検出されたアミノ酸について得られたデータをまとめる。第2列は、内部標準におけるアミノ酸の量を列挙し、第3列は、外部標準スパイクにおける量、第四列は、サンプル中の測定したアミノ酸のレベルを列挙しており、第五列は、血漿コントロールの範囲を列挙する。
【0165】
【表27】

実施例7;カテコールアミン
本実施例は、iTRAQ標識されたカテコールアミン(CAT)のクロマトグラム分離を考察する。CATはしばしば、尿、血漿およびCSF(脳脊髄液)のサンプルの臨床分析における目的である。血漿および尿中の慣用的な臨床分析は、例えば、腫瘍(神経芽細胞腫、フェアチトクロマ(pheacytochroma)など)ならびにその年齢および位置を診断するために行う。CATはまたしばしば神経伝達物質であって、CSF中で、例えば、高血圧の薬の薬物開発における製薬産業においてモニターされる。
【0166】
カテコールアミンおよび関連の化合物は、重要な心血管系および代謝のエフェクターである。種々の体液中のこれらの化合物の濃度を決定することは、臨床および薬物開発の研究室において重大である。現在では、標準的な分析方法は、種々の化学的およびクロマトグラフィー干渉である傾向である。ここでは、本発明者らは、iTRAQ化学、1セットの4アミン反応性アイソバリック複数標識試薬を用いる単一分析におけるカテコールアミン、関連化合物およびアミノ酸の高感度の定量のための新規な方法を示す。この誘導体をMRM(複数反応モニタリング)モードにおいてLC−MS/MSを用いて、分析して定量し、これによって極めて高い程度の感度および特異性を得た。
【0167】
本発明の実施例では、CAT類 ヒスタミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、メタネフリン、ドーパミンおよびセロトニンをモニターする。さらに、アミノ酸であるgluおよびtyrをモニターする。
【0168】
材料および方法
カテコールアミン、関連の化合物およびいくつかのアミノ酸の標準混合物を調製して、標準的なプロトコールを用いてiTRAQ試薬で標識した。誘導体は、C18逆相カラムで、揮発性イオン対合試薬を含む水−アセトニトリル勾配を用いて、1mL/分の流速で分離した。誘導体化された標準の一連の希釈物を注入して、LOD(検出限界)および較正曲線を種々の成分について決定した。体液サンプル(尿、CSF、血漿)(標準の添加は有無)を、公開されたプロトコールに従って調製して、標識して分析し、この方法の感度および正確性に対するマトリクス効果を決定した。サンプルを、Applied Biosystems/MDS SCIEX API−4000トリプル四重極質量分析計、ESI+、MRMモードで分析した。
【0169】
結果
この結果は、以下のカテコールアミン、関連化合物およびアミノ酸を標識および定量する実現可能性を示す:ドーパ(3,4−ジヒドロキシ−DL−フェニルアラニン)、ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、メタネフリン、ノルメタネフリン、メチルドーパ、3−メトキシチラミン、セラトニン(Seratonin)、ヒスタミン、ABA(アミノ酪酸)、チロシンおよびグルタミン酸。LODは、抽出物提出の時点で0.004ピコモル/μLである。種々のサンプルについての直線性は、(R=0.9000〜0.9998)におよぶ。正確性および精度に取り組む。ベースラインの分離が、カテコールアミン異性体のドーパ(342/117)およびメタネフリン(342/117)について、ならびにエピネフリン(328/117)およびノルメタネフリン(328/117)について達成されている。
【0170】
実施例8
ドーパミン範囲
図27Aおよび図27Bは、アミノ酸濃度の決定のための本発明の教示の種々の実施形態の動的な範囲および応答に対するデータを示す。図27Aは、約10〜約990ピコモル(pmole)というノルバリンの濃度についての応答に対するデータを示す。各々の実験(データポイント)は、30pmoleの内部標準および3通りの注射を用いる。漸増量のアミノ酸をLC/MS/MSシステムに注射して、それらの応答に対してプロットした。図27Aによって、その応答は、3ケタの大きさの濃度について線形であるということが示される。
【0171】
図27Bは、約10〜約990ピコモル(pmole)というロイシンの濃度についての応答に対するデータを示す。各々の実験(データポイント)は、30pmoleの内部標準および3通りの注射を用いる。漸増量のアミノ酸をLC/MS/MSシステムに注射して、それらの応答に対してプロットした。図29Bによって、その応答は、3ケタの大きさの濃度について線形であるということが示される。
【0172】
実施例9
生理学的な流体中のチロキシンおよび構造的に関連する甲状腺ホルモンの多重の絶対的および相対的な定量
以下の実施例は、iTRAQブランド試薬のセット由来のアイソバリックタグを用いるチロキシンの定量のための方法を例示する。本実施例の方法では、チロキシンは、一般式IV:
【0173】
【化4】

によって示され得、ここで各々のRは独立してヨウ素または水素であり;かつ
はカルボキシル、ヒドロキシルまたはメチルである。
【0174】
チロキシン化合物は、甲状腺ホルモンであってもよく、それらの血中の値は、例えば、疾患の診断および予測指標として機能し得る。例えば、以下の3つのチロキシン化合物(式(IVa)−(IVc))がしばしば疾患状態をモニタリングするために用いられる:
【0175】
【化5】

本実施例は、本教示の場合種々の実施形態を用いてサンプル中のチロキシンを分析するための方法を例示する。例えば、提供され得る分析物としては、限定はしないが以下が挙げられる:
1.外部較正曲線を用いる1サンプル中のチロキシンの絶対的定量。例えば、チロキシンは、iTRAQブランド試薬のセット由来の114、115または116アイソバリックタグで別々に標識されてもよく、アミノ酸標準で作成された外部較正は、iTRAQブランド試薬のセット由来の117アイソバリックタグで標識されてもよい。
【0176】
2.(1)において上で記載されたような外部較正曲線、ならびにiTRAQブランド試薬のセット由来の117アイソバリックタグで標識されたチロキシンからなる内部標準および分析されるべきサンプルに直接添加された標識された標準を用いる1サンプル中のチロキシンの絶対的定量。
【0177】
3.外部較正曲線を用いる2つの異なるサンプル中のチロキシンの絶対的定量。各々のチロキシンサンプルは例えば、iTRAQブランド試薬のセット由来の114、115、または116アイソバリックタグで別々に標識されてもよい。iTRAQブランド試薬のセット由来の117アイソバリックタグで標識されたチロキシン標準を用いて、外部較正曲線を作成してもよい。2つのサンプルは、例えば、同じであって、二連のサンプルで処理されても、または異なるサンプルでもよい。
【0178】
4.外部較正および内部標準を用いる2つの異なるサンプル中のチロキシンの絶対的定量。チロキシン標準は、iTRAQブランド試薬のセット由来の117アイソバリックタグで標識されて、内部標準としてサンプルに添加されてもよい。2つのサンプルは、例えば、同じであって、二連のサンプルで処理されても、または異なるサンプルであってもよい。
【0179】
5.外部較正を用いる3つのサンプル中のチロキシンの絶対的定量。各々のチロキシンサンプルは、iTRAQブランド試薬のセット由来の117アイソバリックタグで標識されたチロキシン標準を用いて、iTRAQブランド試薬のセット由来の114、115、または116アイソバリックタグで別々に標識されてもよい。この3つのサンプルは、例えば、同じであって、三連のサンプルで処理されても、または3つのサンプルのうち2つが同じであって二連で処理されても、2つ以上の異なるサンプルであっても、またはその組み合わせでもよい。
【0180】
6.外部較正および内部標準を用いる3つのサンプル中のチロキシンの絶対的定量。チロキシン標準は、iTRAQブランド試薬のセット由来の117アイソバリックタグで標識されて、このサンプルに直接添加されてもよい。この3つのサンプルは、例えば、同じであって、三連で処理されても、または3つのサンプルのうち2つが同じであって二連で処置されても、2つ以上の異なるサンプルであっても、またはその組み合わせでもよい。
【0181】
7.外部較正曲線を用いる4つのサンプル中のチロキシンの絶対的定量。各々のチロキシンサンプルは、iTRAQブランド試薬のセット由来の114、115、116または117アイソバリックタグで別々に標識されてもよい。この4つのサンプルは、例えば、同じであって、四連で処理されても、または4つのサンプルのうち3つが同じであって三連で処理されても、3つのサンプルのうち2つが同じであって二連で処理されても、2つ以上の異なるサンプルであっても、またはその組み合わせでもよい。
【0182】
8.iTRAQブランド試薬のセット由来の114、115、116または117アイソバリックタグで標識された最大4つのサンプルにおけるチロキシンの相対的定量。この4つのサンプルは、例えば、同じであって、四連で処理されても、4つのサンプルのうち3つが同じであって三連で処理されても、3つのサンプルのうち2つが同じであって二連で処理されても、2つ以上の異なるサンプルであっても、またはその組み合わせでもよい。
【0183】
材料および方法
以下の構成要素が、生理学的な流体中でチロキシン(IVa)の絶対的定量を決定するのに用いられ得る:チロキシン標準、iTRAQブランド試薬のセット由来の1〜4アイソバリックタグ、オートサンプラーおよびカラムヒーター、150×2.1mmのC18逆相カラム、トリプル四重極またはQ Trapテクノロジーに基づくLC/MS/MSシステムを装備したバイナリーHPLCシステム。
【0184】
チロキシン標準サンプルを、塩基性緩衝液(0.5Mの重炭酸トリエチルアンモニウムまたはホウ酸ナトリウム、pH8.5)に溶解し、ここにエタノールに溶解されたiTRAQブランド試薬セット由来のアイソバリックタグのうちの1つを添加する(例えば、117アイソバリックタグ)。目的のサンプルを、塩基性緩衝液に添加して、iTRAQブランド試薬セット由来の異なるアイソバリックタグ(例えば、114、115または116アイソバリックタグ)をこのサンプルに添加する。サンプル中の総アミン含量よりも約3倍〜5倍過剰のiTRAQブランド試薬を用いる。両方のサンプルをそれぞれのiTRAQ試薬と30分間、室温で反応させ、その後に適切な溶媒(例えば、0.1%ギ酸+10mMのトルエンスルホン酸または10mMのトルエンスルホン酸または10mMのスルホン酸水素ナトリウム)に希釈して、PDITM(例えば、MRM分析)に供する。
【0185】
サンプルの絶対定量は、例えば、117アイソバリックタグで標識された標準を用いる、較正曲線を作成するための、外部標準の使用、内部標準を得るために目的のサンプルに添加された117アイソバリックタグで標識された標準サンプルの使用、またはその両方によって提供され得る。
【0186】
LC−MRM分析
本明細書に考察されるとおり、広範な種々の装置を用いてもよい。例えば、種々の実施形態では、実験設定は、バイナリーHPLCポンプ、オートサンプラー、カラムヒーターおよびC18カラムを備える。HPLCは、勾配条件下で200μl/mlの流速で作動させて、チロキシンおよび誘導体のベースライン解像を得る。HPLCは、トリプル四重極または線形イオントラップ質量分析計のいずれかと、MRM方式で干渉して、サンプル中のチロキシンのPDTIMおよび定量が得られる。
【0187】
限定はしないが、特許、特許出願、記事、本、論文およびウェブページを含む本出願に引用される全ての文献および同様の資料は、このような文献および同様の資料の形式にかかわらず、その全体が参照によって明らかに援用される。組み込まれる文献および同様の資料のうちの1つ以上が、限定はしないが規定される用語、用語の用法、記載される技術などを含む本出願と異なるかまたは矛盾する事象では、本出願が支配する。
【0188】
本明細書に用いられる見出しは、組織化の目的に過ぎず、記載される主題を限定するとは決して解釈されるべきではない。
【0189】
本発明の教示は、種々の実施形態および実施例と組み合わせて記載してきたが、本発明の教示は、このような実施形態または実施例に限定されるものではない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるとおり、種々の代替、改変および等価物を包含する。
【0190】
本教示は、特定の例示的実施例を参照して特に示されかつ記載されてきたが、形態および詳細における種々の変化が、本教示の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得るということが理解されるべきである。例えば、任意の開示された工程を、任意の他の開示された工程と組み合わせて、本発明の種々の実施形態に従ってアミン含有化合物を分析する方法を得てもよい。従って、本教示の趣旨および範囲内の全ての実施形態、ならびにその等価物が特許請求される。本教示の方法、システムおよびアッセイの説明および図表は、その効果について言及するのでない限り、構成要素の記載された順序を限定すると判断されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のサンプルにおいて1つ以上のチロキシン化合物を分析するための方法であって、該チロキシン化合物が、一般式(IV):
【化6】

によって示され得、
ここでRの各々が独立してヨウ素または水素であり;かつ
がカルボキシ、ヒドロキシまたはメチルであり、
該方法は、以下の工程:
チロキシンを含む標準化合物を提供する工程と;
1セットのアイソバリックタグ由来のアイソバリックタグで該標準化合物を標識する工程と;
該セットのアイソバリックタグ由来の異なるアイソバリックタグで1つ以上のチロキシン化合物を各々標識する工程と;
該アイソバリックに標識された標準化合物の少なくとも一部と該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物の各々の少なくとも一部とを合わせて、合わされたサンプルを生成する工程と;
該合わせたサンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムにロードする工程と;
該クロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程であって、
第一の伝送親イオンm/z範囲が該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物の1つ以上のm/z値を含み、かつ第一の伝送娘イオンm/z範囲が該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物のアイソバリックタグの少なくとも1つに相当する少なくとも1つのレポーターイオンのm/z値を含み;
第二の伝送親イオンm/z範囲がアイソバリック標準化合物の1つ以上のm/z値を含み、かつ第二の伝送娘イオンm/z範囲が該アイソバリックに標識された標準化合物のアイソバリックタグに対応するレポーターイオンのm/z値を含む、工程と;
該伝送レポーターイオンの1つ以上のイオンシグナルを測定する工程と;
該アイソバリックに標識された標準化合物に対応するレポーターイオンの該測定されたイオンシグナルに対する、対応するレポーターイオンの該測定されたイオンシグナルの比較に少なくとも基づいた、該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物の1つ以上の濃度を決定する工程と;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、一般式(IVa):
【化7】

によって示される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、一般式(IVb):
【化8】

によって示される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、一般式(IVc):
【化9】

によって示される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルの1つ以上が生理学的な流体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、2つ以上のサンプル由来の実質的に同じチロキシン化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記クロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程が、トリプル四重極、四重極/飛行時間質量分析計、線形イオントラップ質量分析計、またはタンデム飛行時間質量分析計のうちの1つ以上を用いる工程を包含する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記クロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程が、マトリックス中で前記合わせたサンプルを混合する工程と、マトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いて、該親・娘イオン遷移モニタリングのためにイオンを生成する工程とを包含する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記アイソバリックに標識されたチロキシン化合物のうち1つ以上の濃度を決定する工程が、該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物のうち1つ以上の絶対濃度を決定する工程を包含する、方法。
【請求項10】
1つ以上のサンプルにおいて1つ以上のチロキシン化合物を分析するための方法であって、該チロキシン化合物が、一般式(IV):
【化10】

によって示され得、
ここでRの各々が独立してヨウ素または水素であり;かつ
がカルボキシ、ヒドロキシまたはメチルであり、
該方法は、以下の工程:
1セットのアイソバリックタグ由来の異なるアイソバリックタグを各々用いて1つ以上のチロシン化合物を標識する工程と;
該アイソバリックに標識された標準化合物の各々の少なくとも一部を合わせて、合わされたサンプルを生成する工程と;
該合わせたサンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムにロードする工程と;
該クロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程であって、ここで伝送親イオンm/z範囲が該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物の1つ以上のm/z値を含み、かつ伝送娘イオンm/z範囲が該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物のアイソバリックタグの少なくとも1つに相当する少なくとも1つのレポーターイオンのm/z値を含む、工程と;
該伝送レポーターイオンの1つ以上のイオンシグナルを測定する工程と;
標準化合物の濃度曲線に対する対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較に少なくとも基づいた、アイソバリックに標識されたチロキシン化合物の1つ以上の濃度を決定する工程と;
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記標準化合物の濃度曲線が:
(a)チロキシン化合物を含み、かつ第一の濃度を有する標準化合物を提供する工程と;
(b)1セットのアイソバリックタグ由来のアイソバリックタグを用いて該標準化合物を標識する工程と;
(c)該アイソバリックに標識された標準化合物の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムにロードする工程と;
(d)該クロマトグラフィーカラムからの溶離液の少なくとも一部を親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程であって、ここで伝送親イオンm/z範囲が該アイソバリックに標識された標準化合物のm/z値を含み、かつ伝送娘イオンm/z範囲が該アイソバリックに標識された標準化合物のアイソバリックタグに相当する1つのレポーターイオンのm/z値を含む、工程と;
(e)該伝送レポーターイオンのイオンシグナルを測定する工程と;
(f)1つ以上の異なる標準化合物濃度について、工程(a)〜(e)を反復する工程と;
(g)2つ以上の標準化合物濃度で該伝送レポーターイオンの測定されたイオンシグナルに少なくとも基づいて、該標準化合物について濃度曲線を作成する工程と;
によって生成される、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記アイソバリックに標識されたチロキシン化合物のうち1つ以上の濃度を決定する工程が、該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物のうち1つ以上の絶対濃度を決定する工程を包含する、方法。
【請求項13】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、一般式(IVa):
【化11】

によって示される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、一般式(IVb):
【化12】

によって示される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、一般式(IVc):
【化13】

によって示される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上のサンプルにおいて1つ以上のチロキシン化合物を分析するための方法であって、該チロキシン化合物が、一般式(IV):
【化14】

によって示され得、
ここでRの各々が独立してヨウ素または水素であり;かつ
がカルボキシ、ヒドロキシまたはメチルであり、
該方法は、以下の工程:
1セットのアイソバリックタグ由来の異なるアイソバリックタグを各々用いて1つ以上のチロシン化合物を標識する工程と;
該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物の各々の少なくとも一部を合わせて、合わされたサンプルを生成する工程と;
該合わせたサンプルの少なくとも一部を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いる親・娘イオン遷移モニタリングに対して供する工程であって、ここで第一の伝送親イオンm/z範囲が該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物の1つ以上のm/z値を含み、かつ第一の伝送娘イオンm/z範囲が該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物のアイソバリックタグの少なくとも1つに相当する少なくとも1つのレポーターイオンのm/z値を含む、工程と;
該伝送レポーターイオンの1つ以上のイオンシグナルを測定する工程と;
チロキシン化合物を含む標準化合物の測定されたイオンシグナルに対する対応するレポーターイオンの測定されたイオンシグナルの比較に少なくとも基づいた、該アイソバリックに標識されたチロキシン化合物の1つ以上の濃度を決定する工程と;
を包含する、方法。
【請求項17】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、一般式(IVa):
【化15】

によって示される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、一般式(IVb):
【化16】

によって示される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上のチロキシン化合物が、一般式(IVc):
【化17】

によって示される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図25E】
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【図25F】
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【図25G】
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【図25H】
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【図25I】
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【図25J】
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【図25K】
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【図25L】
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【図25M】
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【図25N】
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【図25O】
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【図25P】
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【図25Q】
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【図25R】
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【図25S】
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【図25T】
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【図25U】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【公表番号】特表2010−500579(P2010−500579A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524025(P2009−524025)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/076016
【国際公開番号】WO2008/022205
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(509130413)アプライド バイオシステムズ, エルエルシー (48)
【Fターム(参考)】