テオフィリンによって標的特異的RNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイム
本発明は、テオフィリンによって標的特異的RNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを提供する。さらに詳しくは、癌に特異的なRNA転写体であるhTERT(human Telomerase reverse transcriptase)のmRNAを認知してトランス−スプライシングする能力が検証されたhTERT標的トランス−スプライシングリボザイムにテオフィリンアプタマーをコミュニケーションモジュールを介して結合させたテオフィリン依存性アロステリックトランス−スプライシングリボザイムを提供する。本発明に係るアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムは、テオフィリン依存的にRNA置換活性が調節されてトランス−スプライシング反応によって標的hTERT RNAを補正することにより、標的hTERT RNAを発現する癌細胞のみを選択的に診断し、或いは細胞死を誘導して治療することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テオフィリンによって標的特異的RNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子突然変異による人体の難治性疾患の分子遺伝学的原因と因子に関する研究により、そのような疾病の新しい治療技術として遺伝子治療技術が盛んに開発されている。ところが、現存する遺伝子治療技術にはまだ克服すべき問題点がある。
【0003】
遺伝病に主に用いられる遺伝子治療方法は、突然変異遺伝子に相応する正常遺伝子を患者の適切な細胞に伝達する方法を採用している(Morgan, R.A. and Anderson, W.F. 1993, Human gene therapy. Annu Rev Biochem. 62: 191-217)。
理論的に、このような治療方法によって効果を得るためには、所望の遺伝産物の生成を生体の正しい調節メカニズムの下で得なければならない。ところが、ウイルス粒子の伝達遺伝子サイズにおける制限性のため、殆ど全ての遺伝子治療方法は、様々な種類のプロモータ、またはそれらの断片における遺伝子自体のプロモータの調節下にcDNAの形で所望の遺伝子を伝達する方式を採用している。よって、伝達遺伝子の調節を自然そのままに調節することができる様々な遺伝子因子が含まれておらず、所望の疾病治療効果を極大化していない実情である。
【0004】
また、遺伝子発現のために用いるプロモータなどが他の種類のプロモータを活性化させるおそれがあるとともに、クロマチン構造を変化させることにより、遺伝子の伝達された細胞が持っている他の遺伝子の発現(例えば、プロトオンコジーン)を増加させるおそれがあるという問題点がある。また、正常な遺伝子の伝達が患者細胞内の突然変異遺伝子産物の減少には何の影響も及ぼすことができない。突然変異遺伝子産物がドミナントネガティブ(dominant negative)な機能を持つ場合、既存の方法では治療効果を極大化することができないであろう。よって、正常な遺伝子のよく調節された発現を誘導すると同時に、突然変異遺伝子の発現を抑制することが可能な新規の遺伝子治療法の開発が必要である(Lan, N., Howrey, R.P., Lee, S.W., Smith, C.A., and Sullenger, B.A. 1998, Ribozyme-Mediated Repair of Sickle b-Globin mRNAs in Erythrocyte Precursors. Science 280: 1593; Phylactou, L.A., Darrah, C., and Wood, M.J. 1998, Ribozyme-mediated trans-splicing of a trinucleotide repeat. Nat. Genet. 18: 378-381; Rogers, C.S., Vanoye, C.G., Sullenger, B.A., and George, A.L.Jr. 2002, Functional repair of a mutant chloride channel using a trans-splicing ribozyme, J. Clin. Invest. 110: 1783-1789; Shin, K.S., Sullenger, B.A., and Lee, S.W. 2004, Ribozyme-mediated induction of apoptosis in human cancer cells by targeted repair of mutant p53 RNA. Mol Ther.10: 365-372; Ryu, K.J., Kim, J.H., and Lee, S.W. 2003, Ribozyme-mediated selective induction of new gene activity in hepatitis C virus internal ribosome entry site-expressing cells by targeted trans-splicing. Mol. Ther. 7; 386-395)。
【0005】
テトラヒメナ好熱菌(Tetrahymena thermophila)からのグループIイントロンリボザイムが、実験管内だけでなく、バクテリア、ひいては人体細胞内でトランス−スプライシング反応を行うことにより、別途に存在する2つの転写体を互に連結させることができるという事実が報告された(Been, M. and Cech, T. 1986, One binding site determines sequence specificity of Tetrahymena pre-rRNA self-splicing, trans-splicing, and RNA enzyme activity. Cell 47: 207-216; Sullenger, B.A. and Cech, T.R. 1994, Ribozyme-mediated repair of defective mRNA by targeted, trans-splicing. Nature 371: 619-622; Jones, J.T., Lee, S.W., and Sullenger, B.A. 1996, Tagging ribozyme reaction sites to follow trans-splicing in mammalian cells. Nat Med. 2: 643-648)。したがって、グループIイントロンに基づいたトランス−スプライシングリボザイムによって、疾患に関連した遺伝子転写体または正常細胞では発現せず、疾病細胞でのみ特異的に発現する特定RNAが標的になった後、そのRNAが正常なRNAに補正されるか或いは新しい治療用遺伝子転写体に置換されるように、再びプログラムを誘発することにより、極めて疾患特異的で安全な遺伝子治療技術になれる。すなわち、標的遺伝子転写体の存在時にのみRNA置換が起るので、その結果として、適切な時間と空間でのみわれわれの所望する遺伝子産物が作られるであろう。特に、細胞内で発現するRNAを標的にした後、所望の遺伝子産物で代置する方法なので、導入しようとする遺伝子の発現量を調節することができる。また、トランス−スプライシングリボザイムは、疾患特異RNAを除去すると同時に、われわれの所望する治療用遺伝子産物の発現を誘導することができるので、治療効果を倍加させることができる。
【0006】
RNAは、人為的または自然的にスイッチとしての役割を果たすのに適した化学的、構造的特性を持っている(Mandal, M., Boese, B., Barrick, J.E., Winkler, W.C., and Breaker, R.R. 2003, Riboswitches control fundamental biochemical pathways in Bacillus subtilis and other bacteria. Cell113: 577-586)。このような特性を用いて、酵素活性を有するRNAとしてのリボザイムに小分子またはタンパク質の特定の構造または配列を認知し、特異的に結合するアプタマーを結合させたものをアプタザイムと称する(Breaker, R.R. 2002, Engineered allosteric ribozymes as biosensor components. Curr. Opin. Biotechnol. 13: 31-39)。アプタザイムは、リボザイムとアプタマーとが主にコミュニケーションモジュールを介して連結される。コミュニケーションモジュールは、アプタマーから発生した信号をリボザイムに伝達する中間媒介体の役割を果たす構造である(Kertsburg, A. and Soukup, G.A. 2002, A versatile communication module for controlling RNA folding and catalysis. Nucleic Acids Res. 30: 4599-4606)。
【0007】
アプタマーによってリガンドが感知されると、このような信号がコミュニケーションモジュールを介してリボザイムに伝達されるため、非活性状態で存在したリボザイムの活性がアロステリックに誘導または抑制される。すなわち、外部または内部の特定のリガンドによってリボザイムの活性が調節可能である。
【0008】
現在の癌治療方法では、癌細胞のみを特異的に除去することが可能な技術の開発が必要である。アロステリックリボザイム(allosteric ribozyme, aptazyme)は、RNAの構造が他のリガンドなどとの結合によって変わることを用いて、リボザイムとアプタマーとを結合させたものである。低分子をリガンドとするアロステリックリボザイムの正確なメカニズムは、解明されていないが、リガンド結合によってリボザイムが構造的に安定化または不安定化されることによると思われる(Kertsburg, A. and Soukup, G.A. 2002, A versatile communication module for controlling RNA folding and catalysis. Nucleic Acids Res. 30: 4599-4606; Jose, A.M., Soukup, G.A., and Breaker, R.R. 2001, Cooperative binding of effectors by an allosteric ribozyme. Nucleic Acids Res. 29: 1631. 1637; Koizumi, M., Soukup, G.A., Kerr, J.N., and Breaker, R.R. 1999, Allosteric selection of ribozymes that respond to the second messengers cGMP and cAMP. Nature Struct. Biol. 6: 1062.1071)。低分子がリガンドとして作用するアプタザイムが初期に研究され、最近ではタンパク質またはオリゴと相互作用するアプタザイムに関する研究が行われている。
【0009】
hTERT(human Telomerase reverse transciptase)は癌細胞の不死化(immortality)および増殖(proliferation)能力を調節する最も重要な酵素中の一つであって、このテロメラーゼは無限に複製される生殖細胞、造血細胞および癌細胞で80〜90%のテロメラーゼ活性を持っているが、癌細胞周辺の正常細胞はその活性を持っていない(Bryan, T.M. and Cech, T.R. 1999, Telomerase and the maintenance of chromosome ends. Curr. Opin. Cell Biol. 11; 318-324)。このようなテロメラーゼの特性を用いて、細胞成長に関与するテロメラーゼの抑制者を開発することにより、癌細胞の増殖を抑制しようとする試みが最近盛んに行われている(Bryan, T.M., Englezou, A., Gupta, J., Bacchetti, S., and Reddel, R.R. 1995, Telomere elongation in immortal human cells without detectable telomerase activity. Embo J. 14; 4240-4248; Artandi, S.E. and DePinho, R.A. 2000, Mice without telomerase: what can they teach us about human cancer Nat. Med. 6; 852-855)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、癌細胞特異的なターゲットであるhTERT RNAを特異的に認知してトランス−スプライシングする能力が検証されたhTERTターゲッティングトランス−スプライシングリボザイムに、テオフィリンに高い親和力を示すアプタマーを、普遍化されたコミュニケーションモジュールを介して結合させた様々なテオフィリン依存性アロステリックトランス−スプライシングリボザイムを開発した。
【0011】
また、本発明によって、このようなリボザイムが、試験管および細胞内でテオフィリンが存在する条件でのみhTERT RNAを選択的に認知して切断し、標的サイトの下端部位にリボザイムの3’エキソンを連結することを、インビトロ(in vitro)トランス−スプライシング分析、ルシフェラーゼ分析(Luciferase assay)、RT−PCRおよびMTT分析によって確認した。
【0012】
このようなアロステリックトランス−スプライシングリボザイムを活用して、外部因子である低分子化合物によってリボザイム機能を活性化させることにより、特定の疾患特異的なRNAを標的にした後、治療用遺伝子RNAへの置換を人為的に調節することが可能なシステムを開発することができる。また、疾患細胞特異的に治療用遺伝子発現を人為的に調節し、新しい概念の特異的で可逆的な遺伝子治療技術を開発することができる(図1)。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明の目的は、テオフィリンによって活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムの選別方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、hTERT RNAを特異的に標的化し、テオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムおよびその用途を提供することにある。
【0015】
また、本発明の別の目的は、アロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを発現する発現ベクターおよびその用途を提供することにある。
【0016】
本発明のある観点によれば、テオフィリンによって活性が調節されるアロステリックトランス−スプラインググループIリボザイムの選別方法を提供する。
【0017】
本発明の他の観点によれば、hTERT(human Telomerase reverse transcriptase)RNAを特異的に標的化し、テオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムおよびその用途を提供する。
【0018】
本発明の別の観点によれば、上述したアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを発現するベクターおよびその用途を提供する。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、本発明に係るアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムは、テオフィリンによって依存的に活性が調節されてトランス−スプライシング反応を介して標的hTERT RNAを補正することにより、標的hTERT RNAを発現する癌細胞のみを選択的に診断し、あるいは細胞死を誘導して治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるRNAへの置換調節に関する模式図である。
【図2】hTERTターゲッティングT/Sリボザイムを示す図である。
【図3】テオフィリン依存性アロステリックT/Sリボザイムを示す図である。
【図4】WT P9とMu−P9の3’末端配列を示す図である。
【図5】インビトロにおけるトランス−スプラシング反応を示す図である。
【図6】インビトロにおけるトランス−スプライシング反応産物の実時間PCR 分析を示す図である。
【図7】インビトロにおける拡張IGSを有するT/Sリボザイムによるトランス−スプライシング反応を示す図である。
【図8】インビトロにおけるアロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるトランス−スプライシング反応の適合性を示す図である。
【図9】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるテオフィリン依存性トランスジーン(transgene)の誘導を示す図である。
【図10】標的RNAに対する100ntアンチセンス配列を含むアロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるテオフィリン依存性トランスジーンの誘導を示す図である。
【図11】hTERT−細胞におけるアロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるトランスジーンの抑制を示す図である。
【図12】標的RNAに対する300ntアンチセンス配列を含むアロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるテオフィリン依存性トランスジーンの誘導を示す図である。
【図13】細胞におけるアロステリックリボザイムによるテオフィリン依存性トランス−スプライシング反応を示す図である。
【図14】テオフィリン依存性トランス−スプライシングリボザイムをエンコードする発現ベクターpAvQ−Theo−Rib21AS−TKとアデノウイルスベクター(Ad−TheoRib−TK、Ad−Theo−CRT)の基本構造である。
【図15】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるhTERT+HT−29細胞におけるテオフィリン依存性細胞消退を示す図である。
【図16】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるhTERT+HepG2細胞におけるテオフィリン依存性細胞消退を示す図である。
【図17】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるhTERT+Capan−1細胞におけるテオフィリン依存性細胞消退を示す図である。
【図18】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるhTERT−IMR90細胞における細胞消退が現れないことを示す図である。
【図19】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるHT−29細胞のトランス−スプライシング反応を示す図である。
【図20】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるHT−29細胞のトランス−スプライシング反応を実時間PCR分析によって示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、トランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイム、P9ドメインの一部が除去されたトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイム、またはP9ドメインの一部が変異されたトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイムを製作する段階と、
テオフィリンとカフェインを用いてインビトロで前記製作されたアプタザイムのアロステリック調節を比較することにより、テオフィリン依存性トランス−スプライシング有無を確認する段階と、
哺乳類の細胞で0.1〜1mMのテオフィリン存在下にルシフェラーゼ活性によってテオフィリ依存性トランスジーンの発現有無を確認する段階とを含むことを特徴とする、テオフィリンによって活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイム(allosteric trans-splicing group I ribozyme)の選別方法を提供する。
【0022】
この際、前記アプタザイム製作段階で、hTERT RNAに対するアンチセンス100〜300ntが付着しているアプタザイムをさらに製作する。
【0023】
また、本発明は、hTERT(human Telomerase reverse transcriptase)RNAを特異的に標的化し、3’エキソンには蛍由来ルシフェラーゼ受容体遺伝子を含有するテオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを提供する。
【0024】
この際、前記リボザイムは、好ましくは配列番号1で表されるAS300ΔP9 8T、配列番号2で表されるAS100 Mu−P9 6T8T、または配列番号3で表されるAS300 W−P9 6T8Tである。
【0025】
また、本発明は、前記リボザイムを発現するベクターを提供する。
【0026】
この際、前記発現ベクターは、好ましくは配列番号4で表されるpSEAPAS300 Delta P9 8T−Luci、配列番号5で表されるpSEAP AS100 Mu−P9 6T8T−Luci、または配列番号6で表されるpSEAP AS300 W−P9 6T8T−Luciである。
【0027】
また、本発明は、hTERT RNAを特異的に標的化し、3’−エキソンにはHSV−TK(herpes simplex virus thymidine kinase)細胞死遺伝子を含有するテオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを提供する。
【0028】
この際、前記リボザイムは、好ましくは配列番号7で表されるAS300 W−P9 6T8T−TKである。
【0029】
また、本発明は、前記リボザイムを哺乳類細胞で発現するベクターを提供する。
【0030】
この際、前記発現ベクターは、好ましくは配列番号8で表されるpAvQ−Theo−Rib21AS−TK(KCCM10935P)である。
【0031】
また、本発明は、前記リボザイムおよびテオフィリンを含有する遺伝子発現誘導剤, 癌診断剤または遺伝子し治療剤を提供する。
【0032】
また、本発明は、前記発現ベクターおよびテオフィリンを含有する遺伝子発現誘導剤, 癌診断剤または遺伝子し治療剤を提供する。
【0033】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0034】
本発明のアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムは、以下、「アプタザイム(aptazyme)」または「テオフィリン依存的アプタザイム」という。
【0035】
本明細書で言及されたテオフィリンアプタマーは、テオフィリンに特異的に結合するアプタマーを意味する。
【0036】
本発明のアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムは、リボザイムの基質結合部位および触媒コア部位にアプタマーのように特定のリガンドと結合する部位を連結する場合、特定のリガンドとアプタマーとが結合してリガンドが感知されると、このような信号がコミュニケーションモジュールを介してリボザイムに伝達されてリボザイムの構造的変異が発生することにより、リボザイムのトランス−スプライシング活性がアロステリックに増加または阻害できる分子である。
【0037】
本発明者らは、グループIイントロンに基づいて開発した既存のhTERTターゲッティングトランス−スプライシングリボザイムにテオフィリンアプタマーをコミュニケーションモジュールを介して結合させることにより、hTERTが在る癌細胞でのみトランス−スプライシングが誘導されるうえ、このようなトランス−スプライシングリボザイムの活性がテオフィリンによって調節可能なアプタザイムを開発した。
【0038】
この際、トランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーを結合させた、或いはP9ドメインを一部除去したトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーを結合させたアプタザイムを製作した(図3参照)。ここで、アプタマーとリボザイムとを連結する部位は、最も普遍化されたコミュニケーションモジュールを使用した。また、PCRを用いてクローニングする過程でP9ドメインが他の配列に変異されたmu−P9 6t8tを得たが、この構造体に対しても実験を行った(図4参照)。全ての実験は、テオフィリン、カフェインおよび同一体積の溶媒(dH2OまたはPBS)に対する結果を比較することにより行われた。ここで、カフェインは、テオフィリンとは一つの残基が異なり、テオフィリンに対する実験結果を確認するために使用し、溶媒は対照群として使用した。
【0039】
インビトロでアプタザイムのアロステリック調節を比較した結果、Mu−P9 6t8tとΔP9 6tがテオフィリンに依存的にトランス−スプライシングされることを確認することができた(図5参照)。また、Mu−P9 6t8tがΔP9 6tと比較するとき、PCRによるトランス−スプライシング産物の量が40%以上多いことが分かった。これを実時間PCRを用いてmu P9 6t8tでdH2Oと比較するとき、テオフィリンが在る条件で12倍以上のトランス−スプライシング産物が生成されることを確認した(図6参照)。また、拡張IGSを持つリボザイムに対してインビトロでアプタザイムのアロステリック調節を比較した結果、同一のリボザイム基本骨格を持っても、アンチセンス配列の存在有無によって活性に差異を示すことができることを確認した(図7参照)。
【0040】
哺乳類の細胞からも確認をしたが、インビトロと細胞内で各アプタザイムのアロステリック調節結果が一致しない可能性があることを考慮し、インビトロで行った全てのアプタザイムを検証した。
【0041】
この実験に先立ち、テオフィリンの最適濃度を細胞で確認するために、濃度別に細胞に処理した結果、テオフィリンの濃度が好ましくは0.1〜1.0mM、さらに好ましくは0.7mMであることを確認した(図9参照)。
【0042】
次いで、細胞内でトランス−スプライシング産物が発現し、発現したトランスジーンがその機能を行うか否かを確認するために、ルシフェラーゼ分析を行った。
【0043】
細胞実験では、全体的にテオフィリンまたはカフェインを入れず、同一体積のPBS(溶媒)のみを入れた条件でもルシフェラーゼが発現した。これは、トランス−スプライシングアプタザイムの3’−アクソンのルシフェラーゼ遺伝子がトランス−スプライシングなしでリーク(leaky)に発現すると予測し、ターゲットが存在しないものと知られている細胞(SK−LU I)でリボザイムをトランスフェクションして確認した結果、予測とおり、ターゲットのない条件でもリークにルシフェラーゼが発現することを確認した(図11参照)。
【0044】
このような背景を補完するためにアンチセンスを増加させたが、アンチセンスの増加によって非特異的発現は減少させ、効率はさらに増加させることができると予測し、リボザイムのアンチセンスを100個から300個に増加させる改質を行い、さらに細胞内でこれを確認した。その結果、全体的に効率が増加するパターンを示した。結果として、AS−100 Mu−P9 6t8t、AS−300 W−P9 6t8tおよびAS−300 ΔP9 8tの場合、hTERT+細胞内でテオフィリン依存的に効果的なルシフェラーゼ活性誘導を観察することができた(図10および図12参照)。細胞でトランス−スプライシングを検証するために細胞の総RNAを得てRNA水準でトランス−スプライシング産物を確認し、AS300 WT、およびテオフィリンが在る場合のAS300 W−P9 6T8Tでトランス−スプライシング産物バンドが現れることを確認した(図13参照)。
【0045】
3’−エキソンをルシフェラーゼからHSV−TK(herpes simplex virus thymidine kinase)に変えた、すなわちhTERT RNAを特異的に標的化し、3’−エキソンにはHSV−TK細胞死遺伝子を含有するアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを製作し、このリボザイムをエンコードする発現ベクター(pAvQ−Theo−Rib21AS−TK)を製作した後、これを用いてアデノウイルスを作って実験を行った。
【0046】
hTERT陽性細胞株(HT−29、HepG2、Capan−1)と陰性細胞株(IMR90)で多様なアデノウイルスを処理し、GCVとテオフィリンとカフェインを5日間処理した後、MTT分析によって細胞死を観察した。この際、陽性対照群としてAd−TK(CMVプロモータの下にHSVtkを発現するアデノウイルス性ベクター)を用い、hTERT+細胞における陽性対照群としてAd−Rib−TK(hTERT特異的でHSVtkが標識(tagging)されているアデノウイルス性ベクター)を用いた。陰性対照群としては、Ad−LacZ(CMVプロモータの下にLAcZを発現するアデノウイルス性ベクター)を用いた。その結果、hTERT+細胞株では、Ad−TKとAd−Rib−TKは調節化合物の有無に関係なくGCVを処理したときに死ぬが、Ad−TheoRib−TKはテオフィリンが在る場合にのみ特異的に細胞死が起ることを確認した(図15~図17参照)。そして、陰性対照群であるAd−LacZはいずれの場合でも細胞死が起っていない。
【0047】
このような特異的細胞死がターゲットRNAによって調節されるかを確認するために、hTERT−細胞株であるIMR90で実験した結果、Ad−TKは GCVを処理したときに細胞死が起ったが、Ad−Rib−TK、Ad−TheoRib−TKおよびAd−LacZは細胞死が起っていないことからみて、hTERTターゲットRNAによって細胞死が調節されるものと確認された(図18参照)。
【0048】
hTERT+細胞であるHT−29に、MTT分析によって最も細胞死がよく誘導されたアデノウイルス100M.O.I、化学物質100μMを処理し、総RNAを得た後、実時間PCRを行った。その結果、テオフィリン存在の際に、Ad−Theo−CRTが導入されたHT−29細胞でのみ測定されたトランス−スプライシング産物が現れ、特にトランス−スプライシング産物の量がAd−Rib−TKを処理した場合とほぼ同様であると確認された。カフェインではトランス−スプライシングの量がある程度現れたが、その量がテオフィリン処理の場合に比べて78%も少なかった(図20参照)。これはカフェインがテオフィリンアプタマーにテオフィリンよりも1000倍弱いがある程度結合をするためであると考えられる。このような結果より、本発明のアロステリックリボザイムによって誘発されたテオフィリン依存的標的特異的な細胞死誘導は、細胞内におけるテオフィリン依存的で標的RNA特異的なトランス−スプライシング反応によるものであることが分かった。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明したが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0050】
参照例1:基質(hTERT)RNAの製造
ターゲットRNAを製作するために、hTERTの−1から+218まで含まれているpCl−neoベクター(exon1〜2)を、配列番号9で表されるプライマー5’−GGGGAATTCTAATACGACTCACTATAGGGCAGGCAGCGCTGCGTCCT−3’と、配列番号10で表されるプライマー5’−CGGGATCCCTGGCGGAAGGAGGGGGCGGCGGG−3’を用いてPCRで増幅させ、hTERT RNAをコードするDNAを製造した。このように製造されたDNAからインビトロ転写を介してRNAを作るが、DNAテンプレート(3μg)、10×転写バッファ、10mM DTT(Sigma)、0.5mM ATP、GTP、CTP、UTP(Roche)、80U RNase抑制剤(Kosco)、200U T7 RNA重合酵素(Ambion)およびDEPC−H20を最終100μLまで入れて混ぜた後、37℃で3時間反応させ、5U DNaseI(Promega)を37℃で30分間さらに処理し、DNAテンプレートを完全に除去した後、フェノール抽出(pH7.0)およびエタノール沈殿によってRNAを精製し、しかる後に、RNAバンドを6%変性アクリルアミドゲル上で溶出した後、精製してTEバッファ(10mM Tris−HCl pH7.5、1mM EDTA)に溶かした。
【0051】
参照例2:テオフィリン依存性hTERTターゲッティングトランス−スプライシング(T/S)アプタザイムクローニング
アロステリックリボザイム開発のための基本トランス−スプライシングリボザイム骨格は、hTERTの+21nt部位を特異的に認知し、P1、P10および標的RNAに対する300個のアンチセンス配列が添加された拡張IGSを有するグループIイントロンリボザイムを用いた(Kwon, B.S., Jung, H.S., Song, M.S., Cho, K.S., Kim, S.C., Kimm, K., Jeong, J.S., Kim, I.H., and Lee, S.W. 2005, Specific regression of human cancer cells by ribozyme-mediated targeted replacement of tumor-specific transcript. Mol. Ther. 12: 824-834; Hong, S.H., Jeong, J.S., Lee, Y.J., Jung, H.I., Cho, K.S., Kim, C.M., Kwon, B.S., Sullenger, B.A., Lee, S.W.*, and Kim, I.H.* 2008, In vivo reprogramming of hTERT by trans-splicing ribozyme to target tumor cells. Mol Ther. 16: 74-80)。
【0052】
hTERTターゲッティングリボザイムのP6ドメインとP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーをコミュニケーションモジュールを介してクローニングした。また、リボザイムのP9ドメインを欠損させたΔP9リボザイムにも、前記と同様にP6、P8ドメインを改質した。テオフィリンアプタマーがコミュニケーションモジュールを介して連結された自己スプライシングリボザイムからhTERTをターゲットすることが可能なIGS含有の配列番号11(5’−GGGGAATTCTAATACGACTCACTATAGGCAGGAAAAGTTATCAGGCA−3’)のプライマーと、リボザイムの3’エキソンの前まで増幅することが可能な配列番号12(5’−CGAGTACTCCAAAACTAATCAA−3’)のプライマーを用いて、テオフィリンアプタマーが結合したhTERTターゲッティングトランス−スプライシングリボザイムをHindIIIとNruIを用いてSEAPプロモータベクターにクローニングした。その後、ルシフェラーゼ遺伝子を配列番号13(5’−CGATGATCACGAAGACGC−3’)のプライマーおよび配列番号14(5’−AAGGAAAAAAGCGGCCGCTTATTACAATTTGGACTTT−3’)のプライマーを用いてPCRし、NruIとXbaIを用いてリボザイムの後ろにクローニングした。ところが、PCRを用いたクローニング過程中にP9ドメインが非意図の配列に変異された構造体(construct)を得た。この構造体を含んでwild P9 6t、wild P9 8tの2個のwild構造体、ΔP9 6t、ΔP9 8t、ΔP9 6t8tの3個の欠損構造体、およびmu P9 6t8tを製作した。また、対照群としてアプタマーのないwild P9とΔP9を含んで総8種の構造体を製作した。
【0053】
製作されたテオフィリン依存性hTERTターゲッティングT/Sアプタザイムの塩基配列は、ターミネータレディー反応混合物(terminator ready reaction mixture)(PE applied Biosystems)3μL、定量されたDNA100ng、配列番号15(5’−CGGGATCCCTGGCGGAAGGAGGGGGCGGCGGG−3’)のプライマー3.2pmolを総10μLの反応で(96℃−10’、50℃−5’、60℃−4’)×25サイクル反応させた後、精製のために40μLのdH2Oを添加した後、3M NaOAC(1/10volume)、100% EtOH(2volume)を仕込み、vortexの後、13000rpm、4℃で30分間遠心分離し、70%EtOH(400μL)で洗浄した後、EtOHを除去し、真空乾燥機(speed-vacuum)で乾燥させた後、15μLのテンプレート抑制試薬(template suppression reagent)に溶かした。次に、vortexとスピンダウンの後、シーケンシングチューブに移して自動配列分析器(ABI310 Genetic Analyzer)でシーケンシングを確認した。
【0054】
参照例3:テオフィリン依存性hTERTターゲッティングT/SアプタザイムRNAの製造
T7重合酵素プロモータが含まれた配列番号16(5’−GGGGAATTCTAATACGACTCACTATAGGCAGGAAAAGTTATCAGGCA−3’)のプライマー、およびリボザイムの3’エキソンの中間を取る配列番号17(5’−CCCAAGCTTGCGCAACTGCAACTCCGATAA−3’)のプライマーを用いてPCRし、DNAテンプレート(3μg)、NTP量を1.5mMに増やして自己スプライシングを最大限防止し、1×スプライシングバッファ(40mM Tris−HCl pH7.5、5mM MgCl2、10mM DTT、4mMスペルミジン)、0.5mM ATP、GTP、CTP、UTP(Roche)、80U RNase抑制剤(Kosco)、200U T7 RNA重合酵素(Ambion)、DEPC−H20を最終100μLまで入れて混ぜた後、37℃で3時間転写させ、5U DNaseI(Promega)を37℃で30分間さらに処理することにより、DNAテンプレートを完全に除去した後、フェノール抽出(pH7.0)およびエタノール沈殿によってRNAを精製し、しかる後に、RNAバンドを4%変性アクリルアミドゲル上で溶出した後、精製してTEバッファ(10mM Tris−HCl pH7.5、1mM EDTA)に溶かした。
【0055】
参照例4:インビトロトランス−スプライシング反応
テオフィリン(500μM)、テオフィリンとは一つの残基が異なるカフェイン(500μM)、または同一体積のdH2Oそれぞれが存在する状態で、リボザイム(50nM)と基質RNAとしてのhTERT RNA(10nM)とをスプライシング条件(50mM HEPES、pH7.0/150mM NaCl/5mM MgCl2/100μMグアノシン)の下に37℃で3時間反応させ後、形成された産物をRT−PCR反応によって分析した。この際、RTのためのプライマーはルシフェラーゼ認知部位(5’−CCCAAGCTTGCGCAACTGCAACTCCGATAA−3’、配列番号18)を用い、PCRのための5’プライマーはhTERT RNAの5’末端(5’−GGAATTCGCAGCGCTGCGTCCTGCT−3’、配列番号19)を用い、3’プライマーはルシフェラーゼを認知する部位(5’−CCCAAGCTTTCACTGCATACGACGATT−3’、配列番号20)を用いた。
【0056】
参照例5:半定量的(Semi-quantitative)PCR
インビトロトランス−スプライシング反応の後、トランス−スプライシング産物に対して実時間PCRを用いて半定量的PCRを行った。それぞれのサンプルを三つぞろいで進行してそれらの平均値を求めたうえ、その融点を確認し、アガロースゲル上で確認した。この際、SYBRグリーンを用いて検出した。また、半定量的にサンプルを比較することができるように、RT反応から定量された標準対照群を使用した。補正のためにRT反応の際に、各サンプルに同量の任意のRNA(ras RNA)を仕込み、RTプライマー製作の際にトランス−スプライシング産物と内部対照群(internal control)のras RNAが一つのプライマーとしてRTできるようにデザインし、配列番号21(5’−GCCCAACACCGGCATAAAGTTACATAATTACACACTT−3’)のプライマーを製作した。よって、RTされたサンプルの定量的な比較において、ras CDNAの量でその値を補正した。
【0057】
PCR条件は、予熱(preheating)96℃10分、変性(denaturation)96℃5分、結合(annealing)60℃15秒、延長(extension)72℃30秒であった。この際、5’プライマーはhTERT認知部位(5’−CCCGAATTCTGCGTCCTGCTCGA、配列番号22)を使用し、3’プライマーはルシフェラーゼ認知部位(5’−CCCAAGCTTTCACTGCATACACGATT、配列番号23)を使用した。内部対照群であるras cDNAのPCRプライマーは、次のとおりである;5’プライマー(5’−ATGACTGAATATAAACTT、配列番号24)、3’プライマー(5;CCCAAGCTTTACATAATTACACACTT、配列番号25)。
【0058】
参照例6:特異性を増加させた特異T/Sアプタザイムの製作
hTRET配列上でIGSによって認知される部位から3’末端側に相補的な100ntのアンチセンス鎖を配列番号26(5’−AATTCAAGCTTCGTTTTGCGGCAGCAGGAAAAGTTATCAGGCATG−3’)および配列番号27(5’−CCTGATAACTTTTCCTGCCGCAAAACGAAGCTTG−3’)のプライマーを用い、300ntのアンチセンス鎖を配列番号28(5’−GGGAAGCTTGGGAAGCCCTGGCCC−3’)および配列番号29(5’−GGGAAGCTTAAGGCCAGCACGTTCTT−3’)のプライマーを用いてPCRした。これを製作したリボザイム構造体のリボザイムの前にHindIII酵素部位にクローニングした。
【0059】
参照例7:細胞培養
hTERT陽性細胞株は293(ヒト腎臓/normal)、HT−29(結腸/結腸直腸腺癌)、Capan−1(膵臓/腺癌)およびHepG2(肝/肝細胞癌)を参照し、hTERT陰性細胞株はIMR−90(肺/線維芽細胞/normal)、SK−LU1(肺/腺癌)ATCCを参照して37℃で5%CO--2インキュベータで培養した。
【0060】
参照例8:細胞株におけるトランス−スプライシングアプタザイムの特異性、効率性の検証
1)テオフィリンの最適濃度試験
293細胞を3×105で35mmディッシュにシードして80%程度成長したとき、Mu P9 6t8t構造体1μgをリポフェクタミン(Invitrogen)を用いてトランスフェクションし、テオフィリンまたはカフェインがそれぞれ0.1mM、0.3mM、0.5mM、0.7mM、1mMの条件で18時間培養した後、ルシフェラーゼ分析を行った。対照群として同一体積のPBSを使用した。
【0061】
2)デュアルルシフェラーゼの分析
35mmのディッシュにトランスフェクションしたそれぞれ細胞の培地を除去し、1×PBSでよく拭いた。ここで、1×不活性溶解バッファ(passive lysis buffer)を200μL入れて常温で15分間溶解させ、細胞を得た後、13000rpmで1分間遠心分離して上澄み液のみを新しいチューブに移した。発光試料測定装置(luminometer)のチューブにLARII(Luciferase assay reagentII)を100μL仕込み、ここに細胞破砕物20μLを仕込んで混ぜた後、発光試料測定装置で読み取った。さらに、ここにStop&Glo reagent mix(Stop&Glo20μL+Stop&Gloバッファ1mL)を100μL仕込んで混ぜた後、発光試料測定装置(TD+20/20)で読み取った。遅延時間は3秒、統合時間は12秒とし、感度はそれぞれの細胞に応じて45%に設定した。
【0062】
トランスフェクションの際に、テオフィリン、カフェインはPBSに溶かして細胞に処理した。また、細胞に対するトランスフェクション作業が終わり、MEM培地で取り替える段階で、各化学物質を処理して18時間培養した後、ルシフェラーゼ分析を行った。
【0063】
3)細胞内トランス−スプライシング反応
リボザイムベクター1μgを293細胞にリポフェクタミン4μLを用いてトランジェントにトランスフェクションした。トランスフェクション5時間後、0.7mMのテオフィリンまたはカフェイン入りの培地で取り替えた後、18時間後に細胞破砕物を獲得し、総RNAを精製した。この際、RNAを抽出するとき、インビトロにおけるトランス−スプライシング反応可能性を最小化するために、20mM EDTAが含まれたグアノシンイソシアネート細胞破砕物溶液(geanosine isocyanate cell lysate solution)を用いてRNAを抽出した。RNAを、ルシフェラーゼ部位を認知するプライマー(5’−CCCAAGCTTGCGCAACTGCAACTCCGATAA、配列番号30)を用いて逆転写反応の後、cDNAを、重畳ルシフェラーゼプライマー(nested luciferase primer)を3’プライマー(5’−CCCAAGCTTGCCCAACACCGGCATAAAG、配列番号31)として、hTERT5’末端を認知する部位を5’プライマーとして(5’−AGCGCTGCGTCCTGCT、配列番号32)それぞれ用いてPCR増幅した。PCR条件は、予熱96℃10分、変性96℃5分、結合58℃30秒、伸長72℃20秒を1サイクルとして40サイクルを繰り返し行った。この際、反応産物の反応対照群として抽出されたRNAをオリゴdTに逆転写した後、GAPDH5’プライマー(5’−TGACATCAAGAAGGTGGTGA、配列番号33)およびGAPDH3’プライマー(5’−TCCACCACCCTGTTGCTGTA、配列番号34)を用いてGAPDH RNA発現度を観察し、内部対照群として用いた。
【0064】
4)テオフィリン依存性hTERTターゲッティングT/Sエプタザイムを発現するアデノウイルスの製作
pAvQシャットルベクターにAS300 WT P9−TKとAS300 W−P9 6T8T−TKをBamHIとBstBIにクローニングしてリボザイムをCMVプロモータの下に哺乳類細胞で発現するベクターを製作した。製作されたベクターをPmeIで線形化(linearization)させ、5型アデノウイルスゲノムDNAプラスミドであるΔE1/E3 pAdenovector(Qbiogene)と共にBJ5183バクテリアにエレクトロポレーション法を用いてコトランスフェクションさせた。バクテリア細胞内で相同組換えを介して獲得した組換えアデノウイルス性ベクター構造体を分離、精製してminiprepで確認し、しかる後に、PacIで線形化した後、パッケージング細胞株である293細胞にトランスフェクションした。ウイルス増殖によって形成されるプラーククローン(plaque clone)を獲得した後、細胞残屑(cell debris)を除去したウイルス上澄み液を得て293細胞にもう1回感染させ、細胞の溶血が起るかを検証した。
【0065】
AS300 WT P9−TK(オリジナルT/Sリボザイム)とAS300 W−P9 6T8T−TK(アロステリックT/Sリボザイム)をCMVプロモータの下に発現するアデノウイルス性ベクターをそれぞれAd−Rib−TK、Ad−TheoRib−TKと命名した。
【0066】
組換えアデノウイルス(Ad−Rib−TK、Ad−TheoRib−TK)が成功裏に製作されたかは、組換えウイルスゲノムDNAがトランスフェクションされた293から得た上澄み液を293細胞に感染させた後、CPE観察によって検証した。また、細胞溶解を誘発するプラーククローンからのウイルス上澄み液からDNAを得てPCR実験(TKおよびウイルスITR部位)によって検証した。
【0067】
ウイルス感染した細胞の破砕物からRNAを抽出した後、RT−PCRを行って(TK RNA)組換えウイルス構造体が碌に形成され且つこのようなウイルスからトランスジーンが発現できることを検証した。各組換えアデノウイルスクローンを感染させた293細胞の上澄み液から得た組換えウイルスを多数回293細胞に再び感染させてウイルスの量を増幅し、Vivapure(登録商標) AdenoPACKTMを用いて組換えアデノウイルス性ベクターを分離、精製した。獲得した組換えウイルスを連続的に希釈した後、TCID50分析を行うことにより、各精製されたウイルスベクターのPFUタイターを決定した。
【0068】
5)MTT分析
細胞を96ウェルプレート(TPP)にシードした後、1日後にAd−TK(CMVプロモータの下にTK遺伝子を発現するアデノウイルス性ベクター)、Ad−Rib−TK、Ad−TheoRib−TK、Ad−LacZ(CMVプロモータの下にLacZを発現するアデノウイルス性ベクター)アデノウイルスをそれぞれ感染させた。ウイルス感染の翌日から5日間GCVと化学物質(テオフィリン、カフェイン)が含有された培地を2日に1回ずつ取り替えた。HT−29は3×103/well、HepG2は3×103/well、Capan−1は5×103/well、IMR90は5×103/wellの細胞数でそれぞれシードした。5日後、CellTiter96(登録商標)AQueous ONE Solution Cell Proliferation Assay(Promega)を各培地に20%添加して96ウェルに各ウェル当たり100μLで処理してMicroplate reader model550(BioRad)によって490nm波長で測定し、細胞の細胞生存率を観察した。
【0069】
6)半定量的PCR
35mmのディッシュにアデノウイルスを感染させてから24時間後、化学物質(テオフィリン、カフェイン)が含まれた培地で取り替え、さらに24時間後、細胞でTriZol反応試薬(Invitrogen)を用いてRNAを精製してRTした後、実時間PCRを用いてT/S産物に対する半定量的PCRを行った。T/S PCR産物の量を、GAPDHをPCRした量を用いて補正した。
【0070】
RNAをオリゴdTを用いて逆転写反応させた後、cDNAを、TKプライマーを3’プライマー(5’−CCCATGCACGTCTTTATCCTGGAT−3’、配列番号35)として、hTERT5’末端を認知する部位を5’プライマーとして(5’−GGAATTCGCAGCGCTGCGTCCTGCT−3’、配列番号36)それぞれ用いて実時間PCR増幅した。反応産物の反応対照群として抽出したRNAをオリゴdTで逆転写した後、GAPDH5’−プライマー(5’−TGACATCAAGAAGGTGGTGA、配列番号37)およびGAPDH3’−プライマー(5’−TCCACCACCCTGTTGCTGTA、配列番号38)を用いてGAPDH RNA発現度を観察し、内部対照群として用いた。
【0071】
実施例1:テオフィリンアプタマーが付着しており且つhTERT RNAを特異的に標的化するトランス−スプライシングリボザイムの製造
アロステリックリボザイム開発のための基本トランス−スプライシングリボザイム骨格は、hTERTの+21nt部位を特異的に認知し、P1、P10、そして標的RNAに対する300個のアンチセンス配列が添加された拡張IGSを有するグループIイントロンリボザイムを用いた(図2)。このようなリボザイムは、既に細胞および動物モデルでhTERT RNA特異的にトランスジーンを発現させることにより、hTERT発現癌細胞特異的な細胞死を誘導することを観察した(Mol. Ther. 2005;12:824, Mol Ther. 2008;16:74)。
【0072】
テオフィリン依存性アロステリックリボザイムを製作するために、テオフィリンの受容体ドメインとしてテオフィリンRNAアプタマー(Science 1994;263;1425)を、本研究チームで開発したhTERT−特異T/Sリボザイムの触媒機能のためのRNA折り畳みに重要な役割(Nucleic Acid Res. 2002;30:4599)を果たすP6またはP8ドメイン、あるいはP6+P8ドメインに付着させた。また、P9ドメインを最小化させたΔP9ドメインが置換されたリボザイム、またはP9が変異されているリボザイムのP6、P8、またはP6+P8ドメインにテオフィリンアプタマーを付着させたT/Sリボザイムを製造した。図3はトランス−スプライシングリボザイムの根幹構造であるグループIイントロンの構造および塩基配列、並びにテオフィリンアプタマーおよびアプタマーをリボザイムに連結させるコミュニケーションモジュール構造(Nucleic Acis Res.2002;30:4599)などを示す。
【0073】
製作したトランス−スプライシングリボザイム構造体は、次のとおりである。
−hTERT特異的トランス−スプライシングリボザイム(WT)
−WTのP6またはP8にアプタマーが付着しているリボザイム(W−P9 6t、WT−P9 8t)
−変異P9のP6とP8ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(Mu−P9 6t8t)
−WTリボザイムのP9部位がΔP9で置換されたリボザイム(ΔP9)
−ΔP9リボザイムにP6、P8、P6+P8にアプタマーが付着しているリボザイム(ΔP9 6t、ΔP 8t、ΔP9 6t8t)
−hTERTに対するアンチセンス300ntが付着しているWTリボザイム(AS−300 WT)
−P1、P10ヘリックスを含有し、P6+P8にアプタマーを含有しているWTリボザイム(IGS W−P9 6t8t)
−アンチセンス300ntが付着しており、P6+P8にアプタマーを含有しているWTリボザイム(AS−300 W−P9 6t8t)
−アンチセンス300ntが付着しており、P6+P8にアプタマーを含有しているMu−P9リボザイム(AS−300 Mu−P9 6t8t)
【0074】
変異P9の構造は、リボザイムベクターを製造するPCR過程中に偶然製作された構造体であって、インビトロ上における標的RNA(hTERT RNA)とのトランススプライシング反応を行った結果、リボザイムの活性には影響を及ぼさない部位であることが分かった。
【0075】
したがって、本発明におけるアロステリックリボザイム製作のための候補として、このような変異P9に基づいたリボザイム構造体も共に製作し、その機能を観察した。図4は野性型P9配列と変異P9(Mu−P9)配列を示した。他の部分は太字と下線で表示した。
【0076】
実施例2:リボザイムのテオフィリン依存性RNA置換機能を定量的に分析
前記で製作したリボザイムと基質RNAとしてのhTERT RNAをスプライシング条件の下に37℃で3時間反応させた後、形成された産物をRT−PCR反応によって分析した。スプライシング反応の際に、水または0.5mMカフェイン(テオフィリン構造類似体、アロステリック効果の特異性に対する陰性対照群)または0.5mMテオフィリンと共に反応させることにより、トランス−スプライシング反応がテオフィリン特異的にアロステリックにターンオン(turn on)されるかを観察した。図5はRT−PCR産物の結果を示している。
【0077】
図5を参照すると、WTおよびΔP9リボザイムの場合には予想とおりにカフェイン、テオフィリン、水を問わずに常にトランス−スプライシング反応が誘発され、W−P9 6tの場合にも化合物に関係なく反応が誘発されることが分かった。また、W−P9 8tの場合にもテオフィリン特異的にトランス−スプライシング反応が起らず、ΔP9 8tおよびΔP 6t8tの場合にはトランス−スプライシング反応自体が非常に非効率的に行われていることが分かった。これに対し、Mu−P9 6t8tとΔP9 6tリボザイムの場合にはテオフィリン特異的に319bpサイズのトランス−スプライシング産物がインビトロ上で生成されることが分かった。よって、 グループIイントロンのP6またはP8ドメインがリボザイムのP9配列または構造的性質によってテオフィリン依存的にアロステリックにリボザイム活性を調節することが可能な主要ドメインであることが分かった。
【0078】
アロステリックリボザイムによるテオフィリン依存性トランス−スプライシング反応の誘導調節の度合いを比較分析するために、トランス−スプライシング産物に対する実時間PCR分析(分析機器;Corbett Research RG6)を行った。前記トランス−スプライシング反応によってテオフィリン依存的に酵素活性が調節されるMu−P9 6t8tリボザイム、または低分子化合物とは関係なく構造的に酵素活性を持つWTリボザイムをhTERT RNAと共にスプライシング反応させた後、RT反応を行った。RTされたサンプルの定量的比較において、その値をras cDNAの量を用いて補正した。その結果を図6に示した。図6を参照すると、WTリボザイムの場合にはスプライシングバッファ上に水、テオフィリンおよびカフェインの存在を問わずに同量のトランス−スプライシング産物を生成することが分かった。また、ΔP9 6tリボザイムの場合、実時間で反応産物を定量分析した結果、テオフィリン依存性トランス−スプライシング反応結果を示さなかった。ところが、以前の実験によって確認したインビトロ上でテオフィリン依存的に調節されるMu−P9 6t8tリボザイムの場合、内部対照群で各RTサンプルの値を補正して比較したとき、カフェインに比べてテオフィリンが存在する条件で4.3倍の差異を示し、同一体積のdH2Oとは12.16倍の差異を示した。したがって、Mu−P9 6t8tリボザイムは、インビトロ上で効果的にテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応が調節できるアロステリックリボザイムであることが分かった。
【0079】
前記で分析したリボザイムのIGSは、6個のntのみを持っているので、細胞内における標的RNA特異的なトランス−スプライシング反応のためにはIGS基が拡張されたリボザイムを利用しなければならない(Nat. Biotechnol.1996;15:902, J. Mol. Biol. 1999;185:1935, Mol. Ther. 2003;7:386, Mol. Ther. 2004;10:365; Mol. Ther. 2005;12:824)。このように拡張されたIGSを持つリボザイムは、インビトロ転写を介して製造した後、hTERT RNAとのインビトロ上におけるトランス−スプライシング反応を行った。この際、トランス−スプライシング反応がテオフィリンに依存的であるかを観察した。製作したリボザイムは、hTERTに対するアンチセンス300ntが付着しているWTリボザイム(AS−300 WT)、P1、P10へリックスを含有し且つP6+P8にアプタマーを含有しているWTリボザイム(IGS W−P9 6t8t)、アンチセンス300ntが付着しており且つP6+P8にアプタマーを含有しているWTイボザイム(AS−300 W−P9 6t8t)、およびアンチセンス300ntが付着しており且つP6+P8にアプタマーを含有しているMu−P9リボザイム(AS−300 Mu−P9 6t8t)などであり、その反応結果(トランス−スプライシング産物のRT−PCR産物)は図7に示した。
【0080】
図7を参照すると、予想とおり、AS−300 WTの場合にはテオフィリンに関係なくスプライシング反応が誘発された。AS300 W−P9 6t8tの場合にも、インビトロ上ではテオフィリンに関係なくスプライシング反応が誘発されたが、AS300 Mu−P9 6t8tの場合には、AS300がない場合とは異なり、スプライシング反応自体がよく起らないことが分かった。これに対し、アンチセンスなしでP1とP10へリックスを持つIGS W−P9 6t8tの場合には、テオフィリンが存在する場合にのみトランス−スプライシング反応が誘発できることが分かった。このような結果は、6ntのIGSのみを持つリボザイムと拡張されたIGS配列を持つリボザイムとが同一のリボザイム基本骨格を持つとしても、アンチセンス配列の存在有無によって異なる活性を示すRNA構造的差異が存在しうることを示唆する。よって、これは各拡張IGSを有するリボザイムのインビトロ、ひいては細胞内におけるスプライシング活性をそれぞれ観察しなければならないことを示唆する。
【0081】
前記結果より、テオフィリンアプタマーが付着している一部のリボザイムはインビトロ上でテオフィリン依存的にトランス−スプライシング活性がアロステリックに調節できることが分かった。果たしてこのようなトランス−スプライシング産物が正確なトランス−スプライシング反応によって生成された産物であるかを検証するために、獲得したトランス−スプライシングRT−PCT産物をpUC19ベクターにクローニングした後、その塩基配列を決定した。図8に示すように、トランス−スプライシング反応産物の配列データより、標的RNAであるhTERT RNAの+21nt部位の下流域と、リボザイムの3’エキソンに付着している蛍ルシフェラーゼRNAとが正確に連結された産物であることが分かった。このような結果は、アロステリックトランス−スプライシングリボザイムの反応が非常に正確に起ることを意味する。
【0082】
実施例3:3’エキソンにレポーター遺伝子が付着しているアロステリックトランス−スプライシングリボザイムの製作
テオフィリン依存性アロステリックリボザイム発現ベクターを製作するために、テオフィリンの受容体ドメインとしてテオフィリンRNAアプタマー(Science1994;263:1425)を、本発明者らによって開発したhTERT−特異トランス−スプライシングリボザイムの触媒機能のためのRNA折り畳みに重要な役割(Nucleic Acis Res. 2002;30:4599)を果たすP6、P8、またはP6+P8ドメインに付着させた。また、P9ドメインを最小化させたΔP9ドメインが置換されたリボザイム、または変異P9を含有したリボザイムのP6、P8、またはP6+P8ドメインにテオフィリンアプタマーを付着させたトランス−スプライシングリボザイムを製造した。発現誘導のためのトランスジーンとして蛍ルシフェラーゼ遺伝子をリボザイムの3’エキソンに挿入し、SV40プロモータシステムを用いて細胞内リボザイムの発現を図った。製作したトランス−スプライシングリボザイム構造体は、次のとおりである。
【0083】
ベクターの製造は、インビトロスプライシング反応のために製造したアロステリックリボザイム構造体のリボザイム部位からルシフェラーゼ3’末端までPCR反応によって増幅した後、そのDNAを、SV40プロモータが含有されたpSEAPベクター(Clontech)のHindIIIとXbaI部位に挿入した後、HindIII部位にhTERT RNAに対するアンチセンス配列を挿入することにより行った。この際、リボザイムを増幅するための5’プライマーには、P1、P10へリックス、およびhTERT RNAの+21ntを認知するIGS配列を含有している(5’−GGGGAATTCTAATACGACTCACTATAGGCAGGAAAAGTTATCAGGCA−3’、配列番号39)。
【0084】
(1)hTERT RNAに対して100ntアンチセンスを含有するベクター;
−hTERT特異的リボザイム(AS−100 WT)発現ベクター、
−WTのP6、P8にアプタマーが付着しているリボザイム(AS−100 W−P9 6t、AS−100 WT−P9 8t)発現ベクター、
−変異P9のP6+P8ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(AS−100 Mu−P9 6t8t)発現ベクター(pSEAP AS100 Mu−P9 6T8T−Luci、配列番号5)、
−ΔP9リボザイムのP6、P8、P6+P8にアプタマーが付着しているリボザイム(AS−100 ΔP9 6t、AS−100 ΔP9 8t、AS−100 ΔP9 6t8t)発現ベクター、
(2)hTERT RNAに対して300ntアンチセンスを含有するベクター
−hTERT特異的リボザイム(AS−300 WT)発現ベクター、
−WTのP6+P8にアプタマーが付着しているリボザイム(AS−300 W−P9 6t8t)発現ベクター(pSEAP AS300 W−P9 6T8T−Luci、配列番号6)、
−変異P9のP6+P8ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(AS−300 Mu−P9 6t8t)発現ベクター、
−ΔP9リボザイムのP6ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(AS−300 ΔP9 6t)発現ベクター、
−ΔP9リボザイムのP8ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(AS−300 ΔP9 8t)発現ベクター(pSEAP AS300 Delta P9 8T−Luci、配列番号4)
【0085】
実施例4:リボザイムの細胞内における化合物依存性hTERT RNAの特異的置換機能の観察
1)テオフィリン依存性トランス−スプライシングトランスジーン誘導条件の確立
前記で製造した3’エキソンにルシフェラーゼが付着しているアロステリックリボザイムがどの細胞内でテオフィリン濃度条件の下で最もアロステリックにトランスジーン発現を誘導するかその条件をまず樹立した。
【0086】
インビトロ上におけるトランス−スプライシング反応によってテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応を誘導したMu−P9 6t8tリボザイム発現ベクターを293細胞にリポフェクタミンを用いてトランジェントにトランスフェクションした。この際、トランスフェクション効率を測定し、発現産物の活性を標準化するために、CMVプロモータの下にレニラルシフェラーゼ(renillar luciferase)を発現することが可能なベクターを共にコトランスフェクションした。トランスフェクション4時間後に新規の培地で取り替えたが、この際、新規の培地には0.1mM、0.3mM、0.5mM、0.7mMおよび1mMのカフェインまたはテオフィリンを添加し、果たしてどの程度のテオフィリン下で最もテオフィリン依存的にルシフェラーゼ活性が誘導されるかを検証した。新規の培地で取り替えてから18時間後、細胞破砕物を得た後、レニラルシフェラーゼ活性によって標準化させた蛍ルシフェラーゼ活性を照度計TD−20/20(Turner Designs Instrument)を用いて測定した。この際、測定されたルシフェラーゼ活性は、SV40プロモータの下でルシフェラーゼを発現するベクター(SV40−Luci)をトランスフェクションした後、生成されるルシフェラーゼ値に対する相対値(%)で図9のように示した。
【0087】
図9を参照すると、0.7mMのテオフィリン存在の際に0.7mMのカフェイン存在の場合と比較して最も細胞内におけるテオフィリン特異的ルシフェラーゼ活性の誘導が増加することが分かった。したがって、多様なリボザイム発現ベクターによるテオフィリン依存性遺伝子発現誘導のためのテオフィリン濃度条件を0.7mMに固定して次の実験を行った。
【0088】
2)100ntアンチセンス含有リボザイム発現ベクターによるテオフィリン依存性トランスジーン発現の誘導
hTERT RNAに対する100ntアンチセンス配列を持っており且つテオフィリンアプタマーが付着しているリボザイムによる細胞内トランスジーン活性誘導の有無をルシフェラーゼ分析によって観察した。
【0089】
この際、測定されたルシフェラーゼ活性は、PBSを処理した細胞破砕物から観察されるルシフェラーゼ値に対する相対値(%)で図10のように示した。
【0090】
図10を参照すると、インビトロデータと一致するように、AS−100 Mu−P9 6t8tリボザイムの場合、最もテオフィリン特異的にルシフェラーゼ活性の誘導を増進させることが分かった。ところが、インビトロデータとは異なり、AS−100 ΔP9 6tリボザイムよりはAS−100 ΔP9 8tリボザイムの場合がさらにテオフィリン特異的にトランスジーンの発現を誘導することが分かった。このような結果は、IGSの前にアンチセンス配列が100ntさらに付加されることにより引き起こされ得るリボザイム構造的変異、そして細胞内における環境がインビトロ上における環境と必ずしも一致しないためであると思われる。これに対し、WT、W−P9 6t、W−P9 8tおよびΔP9、ΔP9 6t8tリボザイムの場合は、テオフィリン特異的に細胞内におけるトランスジーン活性を誘導するとは見られなかった。
【0091】
3)hTERT−陰性細胞におけるアロステリックリボザイム活性
前記結果より、細胞内でテオフィリン依存的にアロステリックにトランスジーン活性を誘導することができるものと観察されたAS−100 Mu−P9 6t8tリボザイム、および細胞内ではアロステリック効果を示していないAS−100 ΔP9 6tリボザイムが、果たしてhTERT標的RNA特異的にトランスジーン活性を誘導するかを調べるために、hTERT陰性細胞であるSK−Lu−1細胞に各リボザイムベクターをDMRIE−Cを用いてトランジェントにトランスフェクションし、その4時間後、テオフィリン入りの培地で取り替えた。新規の培地で取り替えてから18時間の後、細胞破砕物を得た後、ルシフェラーゼ活性を測定してSV40−Luciベクターによるルシフェラーゼ発現値との相対値を図11のように測定した。
【0092】
図11を参照すると、AS−100 WTリボザイムと同様に、AS−100 Mu−P9 6t8tおよびAS−100 ΔP9 6tリボザイムの両方とも標的RNAが存在しなければ、テオフィリンの存在と関係なくトランスジーン発現誘導が抑制されることが分かった。すなわち、テオフィリン依存性アロステリックトランス−スプライシングリボザイムは、ターゲットRNA特異的にトランスジーン発現を誘導することができることが分かった。
【0093】
4)300ntアンチセンス含有リボザイム発現ベクターによるテオフィリン依存性トランス発現の誘導
アンチセンス配列の長さを増加させることにより、トランス−スプライシングリボザイムのアロステリックトランスジーン発現誘導効果がさらに増進できるかを観察するために、hTERT RNAに対して300ntのアンチセンス配列を含有したリボザイムベクターを製造した後、細胞内におけるテオフィリン依存的ルシフェラーゼ活性の誘導を比較観察した。
本実験のためのテオフィリン依存性対照群としてAS−300 WTリボザイムを用いた。インビトロでテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応を誘発し且つAS−100配列含有の際に細胞内でテオフィリン依存的トランスジーン活性を誘導した、Mu−P9 6t8tの基本骨格に300ntアンチセンスを含有したリボザイム(AS−300 Mu−P9 6t8t)、インビトロでテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応を誘発した、ΔP9 6tの基本骨格に300ntアンチセンスを含有したリボザイム(AS−300 ΔP9 6t)、AS-100配列含有の際に細胞内でテオフィリン依存的トランスジーン活性を誘導した、ΔP9 8tの基本骨格に300ntアンチセンスを含有したリボザイム(AS−300 ΔP9 8t)、および拡張されたIGS含有の際(P1+P10へリックス)にインビトロでテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応を誘発した、W−P9 6t8tの基本骨格に300ntアンチセンスを含有したリボザイム(AS−300 W−P9 6t8t)の発現ベクターを、それぞれhTERT陽性細胞としての293細胞にコトランスフェクションした後、ルシフェラーゼ活性を測定し、テオフィリン依存的遺伝子の活性誘導有無を相互比較し、観察した。この際、測定されたルシフェラーゼ活性はSV40プロモータの下で蛍ルシフェラーゼを発現するベクター(SV40−Luci)をトランスフェクションした後、生成されるルシフェラーゼ値に対する相対値(%)で図12のように示した。
【0094】
図12を参照すると、予想とおり、AS−300 WTリボザイムはテオフィリンの存在有無を問わずにルシフェラーゼ発現を効果的に誘導した。アンチセンス配列300ntを含有したリボザイムのうちAS−300 Mu−P9 6t8tとAS−300 ΔP9 6tリボザイムの場合、テオフィリン依存的トランスジーン活性誘導を観察することはできなかった。これに対し、AS−300 W−P9 6t8tとAS−300 ΔP9 8tの場合は、テオフィリン依存的に効果的なルシフェラーゼ活性誘導を観察することができ、リボザイムのIGSの前にアンチセンス配列100ntを挿入する場合よりアンチセンス配列300ntを挿入した場合が、さらにトランスジーン発現誘導を増加させることができることを観察することができた。
【0095】
5)アロステリックリボザイムによる細胞内トランス−スプライシング反応
前記実験によって、細胞内でテオフィリン依存的にトランスジーンの活性を誘導、増進させることが可能なリボザイム構造体を探索した。このようなテオフィリン依存性トランスジーンの誘導が、果たして細胞内トランス−スプライシング反応のアロステリック効果によって誘発されるかを検証するために、テオフィリンアプタマーが付着しているリボザイム発現ベクターを293細胞にトランジェントにトランスフェクションした後、細胞内トランス−スプライシング反応産物の存在有無を観察した。
【0096】
GAPDH RNA発現度を観察して内部対照群として用いた。RT−PCR産物をアガロースゲルで分析した結果は、図13に示した。
【0097】
図13を参照すると、予想とおり、陽性対照群であるWTリボザイム(AS−300 WT)の場合、hTERT特異的トランス−スプライシング反応物を得ることができた(lane3)。テオフィリンアプタマーが付着しているリボザイムは、ルシフェラーゼ活性の誘導結果と一致するように、AS−300 Mu−P9 6t8tリボザイムベクターの場合にはテオフィリン、カフェインおよびPBS存在の際に培地を問わずに全てトランス−スプライシング産物が生成されたが(lane7〜9)、これに対し、AS−300 W−P9 6t8tリボザイムベクターの場合には、ルシフェラーゼ活性の誘導結果と一致するように、テオフィリンを処理した細胞のみ311bpのトランス−スプライシング産物が生成されること(lane4)を観察することができた。このような結果はAS−300 W−P9 6t8tリボザイムのインビトロトランス−スプライシング結果とは異なるが、これはインビトロと細胞内における環境的相異によるものと思われる。このようなトランス−スプライシング産物が、RNA抽出過程中に誘発されるインビトロトランス−スプライシング反応ではなく、細胞内におけるトランス−スプライシング反応の結果であることを検証するために、293細胞とAS−300 W−P9 6t8tリボザイムベクターをトランスフェクションさせたSK−Lu−1細胞(hTERTネガティブ)を混合し、RNAを抽出した後、RT−PCR反応を行った。その結果、図13に示すように、何のトランス−スプライシング産物も発見されないことからみて(lane10)、テオフィリン存在の際にAS−300 W−P9 6t8tリボザイムがトランスフェクションされた293細胞でのみ測定されたトランス−スプライシング産物は、細胞におけるテオフィリン依存的で標的RNA特異的なトランス−スプライシング反応によるものであることが分かった。
【0098】
前記結果をまとめてみた結果、hTERT RNAを発現する細胞特異的に且つテオフィリン依存的にトランスジーン発現を調節することが可能な、すなわちテオフィリン依存的に細胞内で人為的にRNA置換反応を調節することが可能なアロステリックリボザイム候補としてAS−300 W−P9 6t8tとAS−300 ΔP9 8tなどを開発した。さらに、インビトロ上で効率的なアロステリックリボザイムとしてIGS W−P9 6t8tを発掘した。
【0099】
実施例5:アデノウイルス性ベクターによるhTERT発現癌細胞特異的な細胞死調節機能の観察
1)HT−29細胞(hTERT+)におけるテオフィリン依存性細胞死の誘導
開発したアロステリックリボザイムの3’エキソンに細胞死遺伝子としてのHSVチミジンキナーゼ遺伝子を挿入(AS300 W−P9 6T8T−TK)してCMVプロモータの下でリボザイムを哺乳類細胞で発現することが可能なベクター(pAvQ−Theo−Rib21AS−TK、配列番号8)を製作した後、組換えアデノウイルス性ベクターを製作した(図14)。
【0100】
前記pAvQ−Theo−Rib21AS−TKを韓国微生物保存センターに2008年3月21日付けで寄託し、寄託番号KCCM10935Pを与えられた。
【0101】
HSVtkを3’エキソンとして持っており、テオフィリン依存性アロステリックリボザイムを発現するアデノウイルス性ベクター(Ad−TheoRibTK)が果たして標的特異的に、そしてテオフィリン依存的にトランスジーン発現を誘導するかを観察するために、ウイルス処理の後、GCVと調節化合物を処理し、しかる後に、MTT分析によって大腸癌細胞としてのHT−29細胞の生存率を観察した。この際、陽性対照群としてAd−TK(CMVプロモータの下にHSVtkを発現するアデノウイルス性ベクター)を用い、hTERT+細胞における陽性対照群としてAd−Rib−TK(hTERT特異的であり、HSVtkが標識されているアデノウイルス性ベクター)を用いた。陰性対照群としては、Ad−LacZ(CMVプロモータの下にLacZを発現するアデノウイルス性ベクター)を用いた。Ad−TheoRib−TKを処理した場合、テオフィリン或いはカフェインを処理した後の生存率を相互比較し、その結果を図15に示した。
【0102】
図15を参照すると、Ad−TKおよびAd−Rib−TKの場合、GCV濃度が増加すると同時にアデノウイルス濃度が増加しながら細胞生存率が減少するが、化学物質の濃度には影響されないことが観察された。これに対し、Ad−LacZの場合はいずれの場合でも細胞生存率に影響を及ぼさなかった。注目すべき点は、アロステリックリボザイムであるAd−TheoRib TKを感染させた場合、カフェイン処理によっては細胞生存率がGCV、ウイルスおよび化学物質の濃度を増加させても細胞生存率に影響を及ぼさなかったが、テオフィリンを処理した場合には、陽性対照群と同様に、ウイルス濃度およびGCV濃度に比例するように細胞生存率が減少した。また、テオフィリン濃度が増加すると、それにより細胞生存率も一緒に減少することが観察された。これは、Ad−TheoRib−TKはテオフィリンによってその活性がアロステリックに調節されるので、テオフィリンを処理すればトランスジーン発現が誘導されることにより、癌細胞の細胞死が誘発されたことを示唆する。最もアロステリックに遺伝子発現が誘導される条件は、100moiアデノウイルス、100μMテオフィリン、10μM GCVを処理した場合である。
【0103】
2)HepG2細胞(hTERT+)におけるテオフィリン依存性細胞死の誘導
Ad−TheoRib−TKが果たして標的特異的に且つテオフィリン依存的にトランスジーン発現を誘導するかを観察するためにウイルス処理し、GCVと調節化合物を処理した後、MTT分析によって肝癌細胞としてのHepG2細胞における細胞生存率も観察した。この際、陽性対照群としてAd−TKを用い、hTERT+細胞における陽性対照群としてAd−Rib−TKを用いた。陰性対照群としてはAd−LacZを用いた。Ad−TheoRib−TKを処理した場合、テオフィリン或いはカフェインを処理した後の生存率を相互比較し、その結果を図16に示した。
【0104】
図16を参照すると、HT−29細胞と同様に、Ad−TKおよびAd−Rib−TKの場合、GCV濃度が増加すると同時にアデノウイルス濃度が増加しながら細胞生存率が減少するが、化学物質の濃度には影響されないことが観察された。これに対し、Ad−LacZの場合は、いずれの場合でも細胞生存率に影響を及ぼさなかった。注目すべき点は、アロステリックリボザイムであるAd−TheoRib−TKを感染させた場合、カフェイン処理によってはGCV、ウイルスおよび化学物質の濃度を増加させても細胞生存率に影響を及ぼさなかったが、テオフィリンを処理した場合には、陽性対照群と同様に、ウイルス濃度およびGCV濃度に比例するように細胞生存率が減少した。また、テオフィリン濃度が増加すると、それにより細胞生存率も一緒に減少することが観察された。これは、hTERT+であるHT−29以外にも、HepG2細胞においても、Ad−TheoRib−TKはテオフィリンによってその活性がアロステリックに調節されるので、テオフィリンを処理すればトランスジーン発現が誘導されることにより、癌細胞の細胞死が誘発されたことを示唆する。最もアロステリックに遺伝子発現が誘導される条件は、10moiアデノウイルス、10μMテオフィリン、10μM GCVを処理した場合である。
【0105】
3)Capan−1細胞(hTERT+)におけるテオフィリン依存性細胞 死の誘導
Ad−TheoRib−TKが果たして標的特異的に且つテオフィリン依存的にトランスジーン発現を誘導するかを観察するために、ウイルス処理し、GCVと調節化合物を処理した後、MTT分析によって膵臓癌細胞としてのCapan−1細胞における細胞生存率も観察し、その結果を図17に示した。
図17を参照すると、HT−29、HepG2細胞と同様に、Ad−TKおよびAd−Rib−TKの場合、GCV濃度が増加すると同時にアデノウイルス濃度が増加しながら細胞生存率が減少するが、化学物質の濃度には影響されないことが観察された。これに対し、Ad−LacZの場合はいずれの場合でも細胞生存率に影響を及ぼさなかった。注目すべき点は、アロステリックリボザイムであるAd−TheoRib−TKを感染させた場合、カフェイン処理によってはGCV、ウイルスおよび化学物質の濃度を増加させても細胞生存率に影響を及ぼさなかったが、テオフィリンを処理した場合には、陽性対照群と同様に、ウイルス濃度およびGCV濃度に比例するように細胞生存率が減少した。また、テオフィリン濃度が増加すると、それにより細胞生存率も一緒に減少することが観察された。これは、hTERT+であるHT−29、HepG2以外にも、Capan−1細胞においても、Ad−TheoRib−TKはテオフィリンによってその活性がアロステリックに調節されるので、テオフィリンを処理すればトランスジーン発現が誘導されることにより、癌細胞の細胞死が誘発されたことを示唆する。最もアロステリックに遺伝子発現が誘導される条件は、100moiアデノウイルス、500μMテオフィリン、50μM GCVを処理した場合である。
【0106】
4)IMR90細胞(hTERT−)におけるテオフィリン依存性細胞死誘導の観察
hTERT+細胞でAd−TheoRib−TK活性がテオフィリン依存的に調節されることが標的特異的であるかを観察するために、hTERT−であるIMR90細胞におけるウイルス感染後の細胞生存率を観察し、その結果を図18に示した。
図18を参照すると、Ad−TKの場合、ウイルスおよびGCVの濃度に比例するように細胞生存率が減少し、このような現象が化学物質の濃度とは関係ないことを観察した。ところが、リボザイムを発現するAd−Rib−TKおよびアロステリックなAd−TheoRib−TKの場合は、ウイルス、GCVおよび化学物質の濃度と関係なくその濃度を増加させても細胞生存率には影響を及ぼすことができなかった。これは、Ad−TheoRib−TKの場合、外部化合物によってその活性を人為的に調節することができるうえ、非常に標的特異的にトランスジーンを誘発することができることを示唆する。
【0107】
実施例6:アロステリックリボザイム発現アデノウイルス性ベクターによるテオフィリン依存性細胞内トランス−スプライシング反応の調節
テオフィリン依存性トランスジーン誘導が果たして細胞内トランス−スプライシング反応のアロステリック効果によって誘発されるかを検証するために、テオフィリンアプタマーが付着しているリボザイム発現アデノウイルス性ベクター(100moi)をHT−29細胞に感染させた後、前記実験で構築したアロステリック条件である0.1mMテオフィリンまたは非対象化合物としてのカフェインを同一の濃度で処理した後、細胞内トランス−スプライシング反応産物の存在有無を観察した。GAPDH RNA発現度を観察して内部対照群として用いた。RT−PCR産物をアガロースゲルで分析し、その結果を図19に示した。
【0108】
図19を参照すると、予想とおり、陰性対照群であるAd−LacZの場合、低分子化合物処理と関係なく、いずれのトランス−スプライシング産物の生成が観察されなかった。これに対し、Ad−TheoRib−TK(Ad−Theo−Rib2AS−TK)をhTERT発現癌細胞としてのHT−29細胞に導入した後、カフェイン処理の際にはトランス−スプライシング産物が殆ど形成されなかったが、MTT分析で観察されたように0.1mMテオフィリン処理の際に429ntの予想されたトランス−スプライシング産物が形成された。このようなトランス−スプライシング産物をクローニングし、シークエシングした結果、予想とおり、hTERTの+21部位がスプライシングされた産物であることを観察した。これに対し、このようなトランス−スプライシング産物は、同一条件の下でhTERTを発現しないIMR90細胞では形成されなかった。これは、本リボザイムが標的RNAの存在時にのみトランス−スプライシング機能を行うことができることを確認する結果である。このようなテオフィリン依存的トランス−スプライシング産物が、RNA抽出過程中に誘発されるインビトロトランス−スプライシング反応ではなく、細胞内におけるトランス−スプライシング反応の結果であることを検証するために、mockトランスフェクションしたHT−29細胞と、Ad TheoRib−TKの導入後にテオフィリンを処理したIMR90細胞(hTERTネガティブ)とを混合し、しかる後に、RNAを抽出してRT PCR反応を行った(mix)。その結果、予想されたトランス−スプライシング産物が発見されないことからみて、テオフィリン存在の際にAd−TheoRib−TKが導入されたHT−29細胞でのみ測定されたトランス−スプラシング産物および細胞死は、細胞内におけるテオフィリン依存的で標的RNA特異的なトランス−スプライシング反応によるものであることが分かった。
HT−29細胞におけるトランス−スプライシング反応産物の量を相対的に比較するために、RTの後、実時間PCRを行った。T/S PCR産物の量をGAPDHのPCR産物の量を用いて補正した後、グラフで示した(図20)。
【0109】
図20を参照すると、陰性対照群であるAd−LacZの場合、低分子化合物処理と関係なくいずれのT/S産物の生成も観察されなかった。これに対し、Ad−TheoRib−TKを細胞に導入した後でPBSを処理した場合、T/S産物が殆ど生成されず、カフェインを処理した場合は、PBS処理した場合より反応産物が若干増加したが、テオフィリン処理の場合に比べて78%その生成物が著しく減少した。これに対し、Ad−TheoRib−TKを細胞に導入した後でテオフィリンを処理した場合には、Ad−Rib−TKによって形成されるトランス−スプライシング産物と同様に効果的にトランス−スプライシング反応が誘発された。このような結果は、アロステリックリボザイムによって誘発されたテオフィリン依存的標的特異的な細胞死の誘導がテオフィリンによる標的特異的なトランス−スプライシング反応の活性化に起因することを示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0110】
上述したように、本発明は、テオフィリンによってその活性を調節することが可能なトランス−スプライシングリボザイムをモデルシステムとして構築することにより、疾患特異RNAを標的化して遺伝子発現を誘導することが可能な、非常に特異的な遺伝子治療技術であるトランス−スプライシングリボザイムと、外部因子によって遺伝子発現を調節することが可能な可逆的遺伝子技術との組み合わせにおいて実験的土台を提供する。本発明に係るアロステリックトランススプライシンググループIリボザイムは、多様な難治性疾患に使用できる汎用的遺伝子治療剤への活用が可能であり、診断剤の開発またはリボザイムの活性メカニズム研究のための道具としての活用も可能であろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、テオフィリンによって標的特異的RNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子突然変異による人体の難治性疾患の分子遺伝学的原因と因子に関する研究により、そのような疾病の新しい治療技術として遺伝子治療技術が盛んに開発されている。ところが、現存する遺伝子治療技術にはまだ克服すべき問題点がある。
【0003】
遺伝病に主に用いられる遺伝子治療方法は、突然変異遺伝子に相応する正常遺伝子を患者の適切な細胞に伝達する方法を採用している(Morgan, R.A. and Anderson, W.F. 1993, Human gene therapy. Annu Rev Biochem. 62: 191-217)。
理論的に、このような治療方法によって効果を得るためには、所望の遺伝産物の生成を生体の正しい調節メカニズムの下で得なければならない。ところが、ウイルス粒子の伝達遺伝子サイズにおける制限性のため、殆ど全ての遺伝子治療方法は、様々な種類のプロモータ、またはそれらの断片における遺伝子自体のプロモータの調節下にcDNAの形で所望の遺伝子を伝達する方式を採用している。よって、伝達遺伝子の調節を自然そのままに調節することができる様々な遺伝子因子が含まれておらず、所望の疾病治療効果を極大化していない実情である。
【0004】
また、遺伝子発現のために用いるプロモータなどが他の種類のプロモータを活性化させるおそれがあるとともに、クロマチン構造を変化させることにより、遺伝子の伝達された細胞が持っている他の遺伝子の発現(例えば、プロトオンコジーン)を増加させるおそれがあるという問題点がある。また、正常な遺伝子の伝達が患者細胞内の突然変異遺伝子産物の減少には何の影響も及ぼすことができない。突然変異遺伝子産物がドミナントネガティブ(dominant negative)な機能を持つ場合、既存の方法では治療効果を極大化することができないであろう。よって、正常な遺伝子のよく調節された発現を誘導すると同時に、突然変異遺伝子の発現を抑制することが可能な新規の遺伝子治療法の開発が必要である(Lan, N., Howrey, R.P., Lee, S.W., Smith, C.A., and Sullenger, B.A. 1998, Ribozyme-Mediated Repair of Sickle b-Globin mRNAs in Erythrocyte Precursors. Science 280: 1593; Phylactou, L.A., Darrah, C., and Wood, M.J. 1998, Ribozyme-mediated trans-splicing of a trinucleotide repeat. Nat. Genet. 18: 378-381; Rogers, C.S., Vanoye, C.G., Sullenger, B.A., and George, A.L.Jr. 2002, Functional repair of a mutant chloride channel using a trans-splicing ribozyme, J. Clin. Invest. 110: 1783-1789; Shin, K.S., Sullenger, B.A., and Lee, S.W. 2004, Ribozyme-mediated induction of apoptosis in human cancer cells by targeted repair of mutant p53 RNA. Mol Ther.10: 365-372; Ryu, K.J., Kim, J.H., and Lee, S.W. 2003, Ribozyme-mediated selective induction of new gene activity in hepatitis C virus internal ribosome entry site-expressing cells by targeted trans-splicing. Mol. Ther. 7; 386-395)。
【0005】
テトラヒメナ好熱菌(Tetrahymena thermophila)からのグループIイントロンリボザイムが、実験管内だけでなく、バクテリア、ひいては人体細胞内でトランス−スプライシング反応を行うことにより、別途に存在する2つの転写体を互に連結させることができるという事実が報告された(Been, M. and Cech, T. 1986, One binding site determines sequence specificity of Tetrahymena pre-rRNA self-splicing, trans-splicing, and RNA enzyme activity. Cell 47: 207-216; Sullenger, B.A. and Cech, T.R. 1994, Ribozyme-mediated repair of defective mRNA by targeted, trans-splicing. Nature 371: 619-622; Jones, J.T., Lee, S.W., and Sullenger, B.A. 1996, Tagging ribozyme reaction sites to follow trans-splicing in mammalian cells. Nat Med. 2: 643-648)。したがって、グループIイントロンに基づいたトランス−スプライシングリボザイムによって、疾患に関連した遺伝子転写体または正常細胞では発現せず、疾病細胞でのみ特異的に発現する特定RNAが標的になった後、そのRNAが正常なRNAに補正されるか或いは新しい治療用遺伝子転写体に置換されるように、再びプログラムを誘発することにより、極めて疾患特異的で安全な遺伝子治療技術になれる。すなわち、標的遺伝子転写体の存在時にのみRNA置換が起るので、その結果として、適切な時間と空間でのみわれわれの所望する遺伝子産物が作られるであろう。特に、細胞内で発現するRNAを標的にした後、所望の遺伝子産物で代置する方法なので、導入しようとする遺伝子の発現量を調節することができる。また、トランス−スプライシングリボザイムは、疾患特異RNAを除去すると同時に、われわれの所望する治療用遺伝子産物の発現を誘導することができるので、治療効果を倍加させることができる。
【0006】
RNAは、人為的または自然的にスイッチとしての役割を果たすのに適した化学的、構造的特性を持っている(Mandal, M., Boese, B., Barrick, J.E., Winkler, W.C., and Breaker, R.R. 2003, Riboswitches control fundamental biochemical pathways in Bacillus subtilis and other bacteria. Cell113: 577-586)。このような特性を用いて、酵素活性を有するRNAとしてのリボザイムに小分子またはタンパク質の特定の構造または配列を認知し、特異的に結合するアプタマーを結合させたものをアプタザイムと称する(Breaker, R.R. 2002, Engineered allosteric ribozymes as biosensor components. Curr. Opin. Biotechnol. 13: 31-39)。アプタザイムは、リボザイムとアプタマーとが主にコミュニケーションモジュールを介して連結される。コミュニケーションモジュールは、アプタマーから発生した信号をリボザイムに伝達する中間媒介体の役割を果たす構造である(Kertsburg, A. and Soukup, G.A. 2002, A versatile communication module for controlling RNA folding and catalysis. Nucleic Acids Res. 30: 4599-4606)。
【0007】
アプタマーによってリガンドが感知されると、このような信号がコミュニケーションモジュールを介してリボザイムに伝達されるため、非活性状態で存在したリボザイムの活性がアロステリックに誘導または抑制される。すなわち、外部または内部の特定のリガンドによってリボザイムの活性が調節可能である。
【0008】
現在の癌治療方法では、癌細胞のみを特異的に除去することが可能な技術の開発が必要である。アロステリックリボザイム(allosteric ribozyme, aptazyme)は、RNAの構造が他のリガンドなどとの結合によって変わることを用いて、リボザイムとアプタマーとを結合させたものである。低分子をリガンドとするアロステリックリボザイムの正確なメカニズムは、解明されていないが、リガンド結合によってリボザイムが構造的に安定化または不安定化されることによると思われる(Kertsburg, A. and Soukup, G.A. 2002, A versatile communication module for controlling RNA folding and catalysis. Nucleic Acids Res. 30: 4599-4606; Jose, A.M., Soukup, G.A., and Breaker, R.R. 2001, Cooperative binding of effectors by an allosteric ribozyme. Nucleic Acids Res. 29: 1631. 1637; Koizumi, M., Soukup, G.A., Kerr, J.N., and Breaker, R.R. 1999, Allosteric selection of ribozymes that respond to the second messengers cGMP and cAMP. Nature Struct. Biol. 6: 1062.1071)。低分子がリガンドとして作用するアプタザイムが初期に研究され、最近ではタンパク質またはオリゴと相互作用するアプタザイムに関する研究が行われている。
【0009】
hTERT(human Telomerase reverse transciptase)は癌細胞の不死化(immortality)および増殖(proliferation)能力を調節する最も重要な酵素中の一つであって、このテロメラーゼは無限に複製される生殖細胞、造血細胞および癌細胞で80〜90%のテロメラーゼ活性を持っているが、癌細胞周辺の正常細胞はその活性を持っていない(Bryan, T.M. and Cech, T.R. 1999, Telomerase and the maintenance of chromosome ends. Curr. Opin. Cell Biol. 11; 318-324)。このようなテロメラーゼの特性を用いて、細胞成長に関与するテロメラーゼの抑制者を開発することにより、癌細胞の増殖を抑制しようとする試みが最近盛んに行われている(Bryan, T.M., Englezou, A., Gupta, J., Bacchetti, S., and Reddel, R.R. 1995, Telomere elongation in immortal human cells without detectable telomerase activity. Embo J. 14; 4240-4248; Artandi, S.E. and DePinho, R.A. 2000, Mice without telomerase: what can they teach us about human cancer Nat. Med. 6; 852-855)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、癌細胞特異的なターゲットであるhTERT RNAを特異的に認知してトランス−スプライシングする能力が検証されたhTERTターゲッティングトランス−スプライシングリボザイムに、テオフィリンに高い親和力を示すアプタマーを、普遍化されたコミュニケーションモジュールを介して結合させた様々なテオフィリン依存性アロステリックトランス−スプライシングリボザイムを開発した。
【0011】
また、本発明によって、このようなリボザイムが、試験管および細胞内でテオフィリンが存在する条件でのみhTERT RNAを選択的に認知して切断し、標的サイトの下端部位にリボザイムの3’エキソンを連結することを、インビトロ(in vitro)トランス−スプライシング分析、ルシフェラーゼ分析(Luciferase assay)、RT−PCRおよびMTT分析によって確認した。
【0012】
このようなアロステリックトランス−スプライシングリボザイムを活用して、外部因子である低分子化合物によってリボザイム機能を活性化させることにより、特定の疾患特異的なRNAを標的にした後、治療用遺伝子RNAへの置換を人為的に調節することが可能なシステムを開発することができる。また、疾患細胞特異的に治療用遺伝子発現を人為的に調節し、新しい概念の特異的で可逆的な遺伝子治療技術を開発することができる(図1)。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明の目的は、テオフィリンによって活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムの選別方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、hTERT RNAを特異的に標的化し、テオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムおよびその用途を提供することにある。
【0015】
また、本発明の別の目的は、アロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを発現する発現ベクターおよびその用途を提供することにある。
【0016】
本発明のある観点によれば、テオフィリンによって活性が調節されるアロステリックトランス−スプラインググループIリボザイムの選別方法を提供する。
【0017】
本発明の他の観点によれば、hTERT(human Telomerase reverse transcriptase)RNAを特異的に標的化し、テオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムおよびその用途を提供する。
【0018】
本発明の別の観点によれば、上述したアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを発現するベクターおよびその用途を提供する。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、本発明に係るアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムは、テオフィリンによって依存的に活性が調節されてトランス−スプライシング反応を介して標的hTERT RNAを補正することにより、標的hTERT RNAを発現する癌細胞のみを選択的に診断し、あるいは細胞死を誘導して治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるRNAへの置換調節に関する模式図である。
【図2】hTERTターゲッティングT/Sリボザイムを示す図である。
【図3】テオフィリン依存性アロステリックT/Sリボザイムを示す図である。
【図4】WT P9とMu−P9の3’末端配列を示す図である。
【図5】インビトロにおけるトランス−スプラシング反応を示す図である。
【図6】インビトロにおけるトランス−スプライシング反応産物の実時間PCR 分析を示す図である。
【図7】インビトロにおける拡張IGSを有するT/Sリボザイムによるトランス−スプライシング反応を示す図である。
【図8】インビトロにおけるアロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるトランス−スプライシング反応の適合性を示す図である。
【図9】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるテオフィリン依存性トランスジーン(transgene)の誘導を示す図である。
【図10】標的RNAに対する100ntアンチセンス配列を含むアロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるテオフィリン依存性トランスジーンの誘導を示す図である。
【図11】hTERT−細胞におけるアロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるトランスジーンの抑制を示す図である。
【図12】標的RNAに対する300ntアンチセンス配列を含むアロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるテオフィリン依存性トランスジーンの誘導を示す図である。
【図13】細胞におけるアロステリックリボザイムによるテオフィリン依存性トランス−スプライシング反応を示す図である。
【図14】テオフィリン依存性トランス−スプライシングリボザイムをエンコードする発現ベクターpAvQ−Theo−Rib21AS−TKとアデノウイルスベクター(Ad−TheoRib−TK、Ad−Theo−CRT)の基本構造である。
【図15】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるhTERT+HT−29細胞におけるテオフィリン依存性細胞消退を示す図である。
【図16】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるhTERT+HepG2細胞におけるテオフィリン依存性細胞消退を示す図である。
【図17】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるhTERT+Capan−1細胞におけるテオフィリン依存性細胞消退を示す図である。
【図18】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるhTERT−IMR90細胞における細胞消退が現れないことを示す図である。
【図19】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるHT−29細胞のトランス−スプライシング反応を示す図である。
【図20】アロステリックトランス−スプライシングリボザイムによるHT−29細胞のトランス−スプライシング反応を実時間PCR分析によって示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、トランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイム、P9ドメインの一部が除去されたトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイム、またはP9ドメインの一部が変異されたトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイムを製作する段階と、
テオフィリンとカフェインを用いてインビトロで前記製作されたアプタザイムのアロステリック調節を比較することにより、テオフィリン依存性トランス−スプライシング有無を確認する段階と、
哺乳類の細胞で0.1〜1mMのテオフィリン存在下にルシフェラーゼ活性によってテオフィリ依存性トランスジーンの発現有無を確認する段階とを含むことを特徴とする、テオフィリンによって活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイム(allosteric trans-splicing group I ribozyme)の選別方法を提供する。
【0022】
この際、前記アプタザイム製作段階で、hTERT RNAに対するアンチセンス100〜300ntが付着しているアプタザイムをさらに製作する。
【0023】
また、本発明は、hTERT(human Telomerase reverse transcriptase)RNAを特異的に標的化し、3’エキソンには蛍由来ルシフェラーゼ受容体遺伝子を含有するテオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを提供する。
【0024】
この際、前記リボザイムは、好ましくは配列番号1で表されるAS300ΔP9 8T、配列番号2で表されるAS100 Mu−P9 6T8T、または配列番号3で表されるAS300 W−P9 6T8Tである。
【0025】
また、本発明は、前記リボザイムを発現するベクターを提供する。
【0026】
この際、前記発現ベクターは、好ましくは配列番号4で表されるpSEAPAS300 Delta P9 8T−Luci、配列番号5で表されるpSEAP AS100 Mu−P9 6T8T−Luci、または配列番号6で表されるpSEAP AS300 W−P9 6T8T−Luciである。
【0027】
また、本発明は、hTERT RNAを特異的に標的化し、3’−エキソンにはHSV−TK(herpes simplex virus thymidine kinase)細胞死遺伝子を含有するテオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを提供する。
【0028】
この際、前記リボザイムは、好ましくは配列番号7で表されるAS300 W−P9 6T8T−TKである。
【0029】
また、本発明は、前記リボザイムを哺乳類細胞で発現するベクターを提供する。
【0030】
この際、前記発現ベクターは、好ましくは配列番号8で表されるpAvQ−Theo−Rib21AS−TK(KCCM10935P)である。
【0031】
また、本発明は、前記リボザイムおよびテオフィリンを含有する遺伝子発現誘導剤, 癌診断剤または遺伝子し治療剤を提供する。
【0032】
また、本発明は、前記発現ベクターおよびテオフィリンを含有する遺伝子発現誘導剤, 癌診断剤または遺伝子し治療剤を提供する。
【0033】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0034】
本発明のアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムは、以下、「アプタザイム(aptazyme)」または「テオフィリン依存的アプタザイム」という。
【0035】
本明細書で言及されたテオフィリンアプタマーは、テオフィリンに特異的に結合するアプタマーを意味する。
【0036】
本発明のアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムは、リボザイムの基質結合部位および触媒コア部位にアプタマーのように特定のリガンドと結合する部位を連結する場合、特定のリガンドとアプタマーとが結合してリガンドが感知されると、このような信号がコミュニケーションモジュールを介してリボザイムに伝達されてリボザイムの構造的変異が発生することにより、リボザイムのトランス−スプライシング活性がアロステリックに増加または阻害できる分子である。
【0037】
本発明者らは、グループIイントロンに基づいて開発した既存のhTERTターゲッティングトランス−スプライシングリボザイムにテオフィリンアプタマーをコミュニケーションモジュールを介して結合させることにより、hTERTが在る癌細胞でのみトランス−スプライシングが誘導されるうえ、このようなトランス−スプライシングリボザイムの活性がテオフィリンによって調節可能なアプタザイムを開発した。
【0038】
この際、トランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーを結合させた、或いはP9ドメインを一部除去したトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーを結合させたアプタザイムを製作した(図3参照)。ここで、アプタマーとリボザイムとを連結する部位は、最も普遍化されたコミュニケーションモジュールを使用した。また、PCRを用いてクローニングする過程でP9ドメインが他の配列に変異されたmu−P9 6t8tを得たが、この構造体に対しても実験を行った(図4参照)。全ての実験は、テオフィリン、カフェインおよび同一体積の溶媒(dH2OまたはPBS)に対する結果を比較することにより行われた。ここで、カフェインは、テオフィリンとは一つの残基が異なり、テオフィリンに対する実験結果を確認するために使用し、溶媒は対照群として使用した。
【0039】
インビトロでアプタザイムのアロステリック調節を比較した結果、Mu−P9 6t8tとΔP9 6tがテオフィリンに依存的にトランス−スプライシングされることを確認することができた(図5参照)。また、Mu−P9 6t8tがΔP9 6tと比較するとき、PCRによるトランス−スプライシング産物の量が40%以上多いことが分かった。これを実時間PCRを用いてmu P9 6t8tでdH2Oと比較するとき、テオフィリンが在る条件で12倍以上のトランス−スプライシング産物が生成されることを確認した(図6参照)。また、拡張IGSを持つリボザイムに対してインビトロでアプタザイムのアロステリック調節を比較した結果、同一のリボザイム基本骨格を持っても、アンチセンス配列の存在有無によって活性に差異を示すことができることを確認した(図7参照)。
【0040】
哺乳類の細胞からも確認をしたが、インビトロと細胞内で各アプタザイムのアロステリック調節結果が一致しない可能性があることを考慮し、インビトロで行った全てのアプタザイムを検証した。
【0041】
この実験に先立ち、テオフィリンの最適濃度を細胞で確認するために、濃度別に細胞に処理した結果、テオフィリンの濃度が好ましくは0.1〜1.0mM、さらに好ましくは0.7mMであることを確認した(図9参照)。
【0042】
次いで、細胞内でトランス−スプライシング産物が発現し、発現したトランスジーンがその機能を行うか否かを確認するために、ルシフェラーゼ分析を行った。
【0043】
細胞実験では、全体的にテオフィリンまたはカフェインを入れず、同一体積のPBS(溶媒)のみを入れた条件でもルシフェラーゼが発現した。これは、トランス−スプライシングアプタザイムの3’−アクソンのルシフェラーゼ遺伝子がトランス−スプライシングなしでリーク(leaky)に発現すると予測し、ターゲットが存在しないものと知られている細胞(SK−LU I)でリボザイムをトランスフェクションして確認した結果、予測とおり、ターゲットのない条件でもリークにルシフェラーゼが発現することを確認した(図11参照)。
【0044】
このような背景を補完するためにアンチセンスを増加させたが、アンチセンスの増加によって非特異的発現は減少させ、効率はさらに増加させることができると予測し、リボザイムのアンチセンスを100個から300個に増加させる改質を行い、さらに細胞内でこれを確認した。その結果、全体的に効率が増加するパターンを示した。結果として、AS−100 Mu−P9 6t8t、AS−300 W−P9 6t8tおよびAS−300 ΔP9 8tの場合、hTERT+細胞内でテオフィリン依存的に効果的なルシフェラーゼ活性誘導を観察することができた(図10および図12参照)。細胞でトランス−スプライシングを検証するために細胞の総RNAを得てRNA水準でトランス−スプライシング産物を確認し、AS300 WT、およびテオフィリンが在る場合のAS300 W−P9 6T8Tでトランス−スプライシング産物バンドが現れることを確認した(図13参照)。
【0045】
3’−エキソンをルシフェラーゼからHSV−TK(herpes simplex virus thymidine kinase)に変えた、すなわちhTERT RNAを特異的に標的化し、3’−エキソンにはHSV−TK細胞死遺伝子を含有するアロステリックトランス−スプライシンググループIリボザイムを製作し、このリボザイムをエンコードする発現ベクター(pAvQ−Theo−Rib21AS−TK)を製作した後、これを用いてアデノウイルスを作って実験を行った。
【0046】
hTERT陽性細胞株(HT−29、HepG2、Capan−1)と陰性細胞株(IMR90)で多様なアデノウイルスを処理し、GCVとテオフィリンとカフェインを5日間処理した後、MTT分析によって細胞死を観察した。この際、陽性対照群としてAd−TK(CMVプロモータの下にHSVtkを発現するアデノウイルス性ベクター)を用い、hTERT+細胞における陽性対照群としてAd−Rib−TK(hTERT特異的でHSVtkが標識(tagging)されているアデノウイルス性ベクター)を用いた。陰性対照群としては、Ad−LacZ(CMVプロモータの下にLAcZを発現するアデノウイルス性ベクター)を用いた。その結果、hTERT+細胞株では、Ad−TKとAd−Rib−TKは調節化合物の有無に関係なくGCVを処理したときに死ぬが、Ad−TheoRib−TKはテオフィリンが在る場合にのみ特異的に細胞死が起ることを確認した(図15~図17参照)。そして、陰性対照群であるAd−LacZはいずれの場合でも細胞死が起っていない。
【0047】
このような特異的細胞死がターゲットRNAによって調節されるかを確認するために、hTERT−細胞株であるIMR90で実験した結果、Ad−TKは GCVを処理したときに細胞死が起ったが、Ad−Rib−TK、Ad−TheoRib−TKおよびAd−LacZは細胞死が起っていないことからみて、hTERTターゲットRNAによって細胞死が調節されるものと確認された(図18参照)。
【0048】
hTERT+細胞であるHT−29に、MTT分析によって最も細胞死がよく誘導されたアデノウイルス100M.O.I、化学物質100μMを処理し、総RNAを得た後、実時間PCRを行った。その結果、テオフィリン存在の際に、Ad−Theo−CRTが導入されたHT−29細胞でのみ測定されたトランス−スプライシング産物が現れ、特にトランス−スプライシング産物の量がAd−Rib−TKを処理した場合とほぼ同様であると確認された。カフェインではトランス−スプライシングの量がある程度現れたが、その量がテオフィリン処理の場合に比べて78%も少なかった(図20参照)。これはカフェインがテオフィリンアプタマーにテオフィリンよりも1000倍弱いがある程度結合をするためであると考えられる。このような結果より、本発明のアロステリックリボザイムによって誘発されたテオフィリン依存的標的特異的な細胞死誘導は、細胞内におけるテオフィリン依存的で標的RNA特異的なトランス−スプライシング反応によるものであることが分かった。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明したが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0050】
参照例1:基質(hTERT)RNAの製造
ターゲットRNAを製作するために、hTERTの−1から+218まで含まれているpCl−neoベクター(exon1〜2)を、配列番号9で表されるプライマー5’−GGGGAATTCTAATACGACTCACTATAGGGCAGGCAGCGCTGCGTCCT−3’と、配列番号10で表されるプライマー5’−CGGGATCCCTGGCGGAAGGAGGGGGCGGCGGG−3’を用いてPCRで増幅させ、hTERT RNAをコードするDNAを製造した。このように製造されたDNAからインビトロ転写を介してRNAを作るが、DNAテンプレート(3μg)、10×転写バッファ、10mM DTT(Sigma)、0.5mM ATP、GTP、CTP、UTP(Roche)、80U RNase抑制剤(Kosco)、200U T7 RNA重合酵素(Ambion)およびDEPC−H20を最終100μLまで入れて混ぜた後、37℃で3時間反応させ、5U DNaseI(Promega)を37℃で30分間さらに処理し、DNAテンプレートを完全に除去した後、フェノール抽出(pH7.0)およびエタノール沈殿によってRNAを精製し、しかる後に、RNAバンドを6%変性アクリルアミドゲル上で溶出した後、精製してTEバッファ(10mM Tris−HCl pH7.5、1mM EDTA)に溶かした。
【0051】
参照例2:テオフィリン依存性hTERTターゲッティングトランス−スプライシング(T/S)アプタザイムクローニング
アロステリックリボザイム開発のための基本トランス−スプライシングリボザイム骨格は、hTERTの+21nt部位を特異的に認知し、P1、P10および標的RNAに対する300個のアンチセンス配列が添加された拡張IGSを有するグループIイントロンリボザイムを用いた(Kwon, B.S., Jung, H.S., Song, M.S., Cho, K.S., Kim, S.C., Kimm, K., Jeong, J.S., Kim, I.H., and Lee, S.W. 2005, Specific regression of human cancer cells by ribozyme-mediated targeted replacement of tumor-specific transcript. Mol. Ther. 12: 824-834; Hong, S.H., Jeong, J.S., Lee, Y.J., Jung, H.I., Cho, K.S., Kim, C.M., Kwon, B.S., Sullenger, B.A., Lee, S.W.*, and Kim, I.H.* 2008, In vivo reprogramming of hTERT by trans-splicing ribozyme to target tumor cells. Mol Ther. 16: 74-80)。
【0052】
hTERTターゲッティングリボザイムのP6ドメインとP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーをコミュニケーションモジュールを介してクローニングした。また、リボザイムのP9ドメインを欠損させたΔP9リボザイムにも、前記と同様にP6、P8ドメインを改質した。テオフィリンアプタマーがコミュニケーションモジュールを介して連結された自己スプライシングリボザイムからhTERTをターゲットすることが可能なIGS含有の配列番号11(5’−GGGGAATTCTAATACGACTCACTATAGGCAGGAAAAGTTATCAGGCA−3’)のプライマーと、リボザイムの3’エキソンの前まで増幅することが可能な配列番号12(5’−CGAGTACTCCAAAACTAATCAA−3’)のプライマーを用いて、テオフィリンアプタマーが結合したhTERTターゲッティングトランス−スプライシングリボザイムをHindIIIとNruIを用いてSEAPプロモータベクターにクローニングした。その後、ルシフェラーゼ遺伝子を配列番号13(5’−CGATGATCACGAAGACGC−3’)のプライマーおよび配列番号14(5’−AAGGAAAAAAGCGGCCGCTTATTACAATTTGGACTTT−3’)のプライマーを用いてPCRし、NruIとXbaIを用いてリボザイムの後ろにクローニングした。ところが、PCRを用いたクローニング過程中にP9ドメインが非意図の配列に変異された構造体(construct)を得た。この構造体を含んでwild P9 6t、wild P9 8tの2個のwild構造体、ΔP9 6t、ΔP9 8t、ΔP9 6t8tの3個の欠損構造体、およびmu P9 6t8tを製作した。また、対照群としてアプタマーのないwild P9とΔP9を含んで総8種の構造体を製作した。
【0053】
製作されたテオフィリン依存性hTERTターゲッティングT/Sアプタザイムの塩基配列は、ターミネータレディー反応混合物(terminator ready reaction mixture)(PE applied Biosystems)3μL、定量されたDNA100ng、配列番号15(5’−CGGGATCCCTGGCGGAAGGAGGGGGCGGCGGG−3’)のプライマー3.2pmolを総10μLの反応で(96℃−10’、50℃−5’、60℃−4’)×25サイクル反応させた後、精製のために40μLのdH2Oを添加した後、3M NaOAC(1/10volume)、100% EtOH(2volume)を仕込み、vortexの後、13000rpm、4℃で30分間遠心分離し、70%EtOH(400μL)で洗浄した後、EtOHを除去し、真空乾燥機(speed-vacuum)で乾燥させた後、15μLのテンプレート抑制試薬(template suppression reagent)に溶かした。次に、vortexとスピンダウンの後、シーケンシングチューブに移して自動配列分析器(ABI310 Genetic Analyzer)でシーケンシングを確認した。
【0054】
参照例3:テオフィリン依存性hTERTターゲッティングT/SアプタザイムRNAの製造
T7重合酵素プロモータが含まれた配列番号16(5’−GGGGAATTCTAATACGACTCACTATAGGCAGGAAAAGTTATCAGGCA−3’)のプライマー、およびリボザイムの3’エキソンの中間を取る配列番号17(5’−CCCAAGCTTGCGCAACTGCAACTCCGATAA−3’)のプライマーを用いてPCRし、DNAテンプレート(3μg)、NTP量を1.5mMに増やして自己スプライシングを最大限防止し、1×スプライシングバッファ(40mM Tris−HCl pH7.5、5mM MgCl2、10mM DTT、4mMスペルミジン)、0.5mM ATP、GTP、CTP、UTP(Roche)、80U RNase抑制剤(Kosco)、200U T7 RNA重合酵素(Ambion)、DEPC−H20を最終100μLまで入れて混ぜた後、37℃で3時間転写させ、5U DNaseI(Promega)を37℃で30分間さらに処理することにより、DNAテンプレートを完全に除去した後、フェノール抽出(pH7.0)およびエタノール沈殿によってRNAを精製し、しかる後に、RNAバンドを4%変性アクリルアミドゲル上で溶出した後、精製してTEバッファ(10mM Tris−HCl pH7.5、1mM EDTA)に溶かした。
【0055】
参照例4:インビトロトランス−スプライシング反応
テオフィリン(500μM)、テオフィリンとは一つの残基が異なるカフェイン(500μM)、または同一体積のdH2Oそれぞれが存在する状態で、リボザイム(50nM)と基質RNAとしてのhTERT RNA(10nM)とをスプライシング条件(50mM HEPES、pH7.0/150mM NaCl/5mM MgCl2/100μMグアノシン)の下に37℃で3時間反応させ後、形成された産物をRT−PCR反応によって分析した。この際、RTのためのプライマーはルシフェラーゼ認知部位(5’−CCCAAGCTTGCGCAACTGCAACTCCGATAA−3’、配列番号18)を用い、PCRのための5’プライマーはhTERT RNAの5’末端(5’−GGAATTCGCAGCGCTGCGTCCTGCT−3’、配列番号19)を用い、3’プライマーはルシフェラーゼを認知する部位(5’−CCCAAGCTTTCACTGCATACGACGATT−3’、配列番号20)を用いた。
【0056】
参照例5:半定量的(Semi-quantitative)PCR
インビトロトランス−スプライシング反応の後、トランス−スプライシング産物に対して実時間PCRを用いて半定量的PCRを行った。それぞれのサンプルを三つぞろいで進行してそれらの平均値を求めたうえ、その融点を確認し、アガロースゲル上で確認した。この際、SYBRグリーンを用いて検出した。また、半定量的にサンプルを比較することができるように、RT反応から定量された標準対照群を使用した。補正のためにRT反応の際に、各サンプルに同量の任意のRNA(ras RNA)を仕込み、RTプライマー製作の際にトランス−スプライシング産物と内部対照群(internal control)のras RNAが一つのプライマーとしてRTできるようにデザインし、配列番号21(5’−GCCCAACACCGGCATAAAGTTACATAATTACACACTT−3’)のプライマーを製作した。よって、RTされたサンプルの定量的な比較において、ras CDNAの量でその値を補正した。
【0057】
PCR条件は、予熱(preheating)96℃10分、変性(denaturation)96℃5分、結合(annealing)60℃15秒、延長(extension)72℃30秒であった。この際、5’プライマーはhTERT認知部位(5’−CCCGAATTCTGCGTCCTGCTCGA、配列番号22)を使用し、3’プライマーはルシフェラーゼ認知部位(5’−CCCAAGCTTTCACTGCATACACGATT、配列番号23)を使用した。内部対照群であるras cDNAのPCRプライマーは、次のとおりである;5’プライマー(5’−ATGACTGAATATAAACTT、配列番号24)、3’プライマー(5;CCCAAGCTTTACATAATTACACACTT、配列番号25)。
【0058】
参照例6:特異性を増加させた特異T/Sアプタザイムの製作
hTRET配列上でIGSによって認知される部位から3’末端側に相補的な100ntのアンチセンス鎖を配列番号26(5’−AATTCAAGCTTCGTTTTGCGGCAGCAGGAAAAGTTATCAGGCATG−3’)および配列番号27(5’−CCTGATAACTTTTCCTGCCGCAAAACGAAGCTTG−3’)のプライマーを用い、300ntのアンチセンス鎖を配列番号28(5’−GGGAAGCTTGGGAAGCCCTGGCCC−3’)および配列番号29(5’−GGGAAGCTTAAGGCCAGCACGTTCTT−3’)のプライマーを用いてPCRした。これを製作したリボザイム構造体のリボザイムの前にHindIII酵素部位にクローニングした。
【0059】
参照例7:細胞培養
hTERT陽性細胞株は293(ヒト腎臓/normal)、HT−29(結腸/結腸直腸腺癌)、Capan−1(膵臓/腺癌)およびHepG2(肝/肝細胞癌)を参照し、hTERT陰性細胞株はIMR−90(肺/線維芽細胞/normal)、SK−LU1(肺/腺癌)ATCCを参照して37℃で5%CO--2インキュベータで培養した。
【0060】
参照例8:細胞株におけるトランス−スプライシングアプタザイムの特異性、効率性の検証
1)テオフィリンの最適濃度試験
293細胞を3×105で35mmディッシュにシードして80%程度成長したとき、Mu P9 6t8t構造体1μgをリポフェクタミン(Invitrogen)を用いてトランスフェクションし、テオフィリンまたはカフェインがそれぞれ0.1mM、0.3mM、0.5mM、0.7mM、1mMの条件で18時間培養した後、ルシフェラーゼ分析を行った。対照群として同一体積のPBSを使用した。
【0061】
2)デュアルルシフェラーゼの分析
35mmのディッシュにトランスフェクションしたそれぞれ細胞の培地を除去し、1×PBSでよく拭いた。ここで、1×不活性溶解バッファ(passive lysis buffer)を200μL入れて常温で15分間溶解させ、細胞を得た後、13000rpmで1分間遠心分離して上澄み液のみを新しいチューブに移した。発光試料測定装置(luminometer)のチューブにLARII(Luciferase assay reagentII)を100μL仕込み、ここに細胞破砕物20μLを仕込んで混ぜた後、発光試料測定装置で読み取った。さらに、ここにStop&Glo reagent mix(Stop&Glo20μL+Stop&Gloバッファ1mL)を100μL仕込んで混ぜた後、発光試料測定装置(TD+20/20)で読み取った。遅延時間は3秒、統合時間は12秒とし、感度はそれぞれの細胞に応じて45%に設定した。
【0062】
トランスフェクションの際に、テオフィリン、カフェインはPBSに溶かして細胞に処理した。また、細胞に対するトランスフェクション作業が終わり、MEM培地で取り替える段階で、各化学物質を処理して18時間培養した後、ルシフェラーゼ分析を行った。
【0063】
3)細胞内トランス−スプライシング反応
リボザイムベクター1μgを293細胞にリポフェクタミン4μLを用いてトランジェントにトランスフェクションした。トランスフェクション5時間後、0.7mMのテオフィリンまたはカフェイン入りの培地で取り替えた後、18時間後に細胞破砕物を獲得し、総RNAを精製した。この際、RNAを抽出するとき、インビトロにおけるトランス−スプライシング反応可能性を最小化するために、20mM EDTAが含まれたグアノシンイソシアネート細胞破砕物溶液(geanosine isocyanate cell lysate solution)を用いてRNAを抽出した。RNAを、ルシフェラーゼ部位を認知するプライマー(5’−CCCAAGCTTGCGCAACTGCAACTCCGATAA、配列番号30)を用いて逆転写反応の後、cDNAを、重畳ルシフェラーゼプライマー(nested luciferase primer)を3’プライマー(5’−CCCAAGCTTGCCCAACACCGGCATAAAG、配列番号31)として、hTERT5’末端を認知する部位を5’プライマーとして(5’−AGCGCTGCGTCCTGCT、配列番号32)それぞれ用いてPCR増幅した。PCR条件は、予熱96℃10分、変性96℃5分、結合58℃30秒、伸長72℃20秒を1サイクルとして40サイクルを繰り返し行った。この際、反応産物の反応対照群として抽出されたRNAをオリゴdTに逆転写した後、GAPDH5’プライマー(5’−TGACATCAAGAAGGTGGTGA、配列番号33)およびGAPDH3’プライマー(5’−TCCACCACCCTGTTGCTGTA、配列番号34)を用いてGAPDH RNA発現度を観察し、内部対照群として用いた。
【0064】
4)テオフィリン依存性hTERTターゲッティングT/Sエプタザイムを発現するアデノウイルスの製作
pAvQシャットルベクターにAS300 WT P9−TKとAS300 W−P9 6T8T−TKをBamHIとBstBIにクローニングしてリボザイムをCMVプロモータの下に哺乳類細胞で発現するベクターを製作した。製作されたベクターをPmeIで線形化(linearization)させ、5型アデノウイルスゲノムDNAプラスミドであるΔE1/E3 pAdenovector(Qbiogene)と共にBJ5183バクテリアにエレクトロポレーション法を用いてコトランスフェクションさせた。バクテリア細胞内で相同組換えを介して獲得した組換えアデノウイルス性ベクター構造体を分離、精製してminiprepで確認し、しかる後に、PacIで線形化した後、パッケージング細胞株である293細胞にトランスフェクションした。ウイルス増殖によって形成されるプラーククローン(plaque clone)を獲得した後、細胞残屑(cell debris)を除去したウイルス上澄み液を得て293細胞にもう1回感染させ、細胞の溶血が起るかを検証した。
【0065】
AS300 WT P9−TK(オリジナルT/Sリボザイム)とAS300 W−P9 6T8T−TK(アロステリックT/Sリボザイム)をCMVプロモータの下に発現するアデノウイルス性ベクターをそれぞれAd−Rib−TK、Ad−TheoRib−TKと命名した。
【0066】
組換えアデノウイルス(Ad−Rib−TK、Ad−TheoRib−TK)が成功裏に製作されたかは、組換えウイルスゲノムDNAがトランスフェクションされた293から得た上澄み液を293細胞に感染させた後、CPE観察によって検証した。また、細胞溶解を誘発するプラーククローンからのウイルス上澄み液からDNAを得てPCR実験(TKおよびウイルスITR部位)によって検証した。
【0067】
ウイルス感染した細胞の破砕物からRNAを抽出した後、RT−PCRを行って(TK RNA)組換えウイルス構造体が碌に形成され且つこのようなウイルスからトランスジーンが発現できることを検証した。各組換えアデノウイルスクローンを感染させた293細胞の上澄み液から得た組換えウイルスを多数回293細胞に再び感染させてウイルスの量を増幅し、Vivapure(登録商標) AdenoPACKTMを用いて組換えアデノウイルス性ベクターを分離、精製した。獲得した組換えウイルスを連続的に希釈した後、TCID50分析を行うことにより、各精製されたウイルスベクターのPFUタイターを決定した。
【0068】
5)MTT分析
細胞を96ウェルプレート(TPP)にシードした後、1日後にAd−TK(CMVプロモータの下にTK遺伝子を発現するアデノウイルス性ベクター)、Ad−Rib−TK、Ad−TheoRib−TK、Ad−LacZ(CMVプロモータの下にLacZを発現するアデノウイルス性ベクター)アデノウイルスをそれぞれ感染させた。ウイルス感染の翌日から5日間GCVと化学物質(テオフィリン、カフェイン)が含有された培地を2日に1回ずつ取り替えた。HT−29は3×103/well、HepG2は3×103/well、Capan−1は5×103/well、IMR90は5×103/wellの細胞数でそれぞれシードした。5日後、CellTiter96(登録商標)AQueous ONE Solution Cell Proliferation Assay(Promega)を各培地に20%添加して96ウェルに各ウェル当たり100μLで処理してMicroplate reader model550(BioRad)によって490nm波長で測定し、細胞の細胞生存率を観察した。
【0069】
6)半定量的PCR
35mmのディッシュにアデノウイルスを感染させてから24時間後、化学物質(テオフィリン、カフェイン)が含まれた培地で取り替え、さらに24時間後、細胞でTriZol反応試薬(Invitrogen)を用いてRNAを精製してRTした後、実時間PCRを用いてT/S産物に対する半定量的PCRを行った。T/S PCR産物の量を、GAPDHをPCRした量を用いて補正した。
【0070】
RNAをオリゴdTを用いて逆転写反応させた後、cDNAを、TKプライマーを3’プライマー(5’−CCCATGCACGTCTTTATCCTGGAT−3’、配列番号35)として、hTERT5’末端を認知する部位を5’プライマーとして(5’−GGAATTCGCAGCGCTGCGTCCTGCT−3’、配列番号36)それぞれ用いて実時間PCR増幅した。反応産物の反応対照群として抽出したRNAをオリゴdTで逆転写した後、GAPDH5’−プライマー(5’−TGACATCAAGAAGGTGGTGA、配列番号37)およびGAPDH3’−プライマー(5’−TCCACCACCCTGTTGCTGTA、配列番号38)を用いてGAPDH RNA発現度を観察し、内部対照群として用いた。
【0071】
実施例1:テオフィリンアプタマーが付着しており且つhTERT RNAを特異的に標的化するトランス−スプライシングリボザイムの製造
アロステリックリボザイム開発のための基本トランス−スプライシングリボザイム骨格は、hTERTの+21nt部位を特異的に認知し、P1、P10、そして標的RNAに対する300個のアンチセンス配列が添加された拡張IGSを有するグループIイントロンリボザイムを用いた(図2)。このようなリボザイムは、既に細胞および動物モデルでhTERT RNA特異的にトランスジーンを発現させることにより、hTERT発現癌細胞特異的な細胞死を誘導することを観察した(Mol. Ther. 2005;12:824, Mol Ther. 2008;16:74)。
【0072】
テオフィリン依存性アロステリックリボザイムを製作するために、テオフィリンの受容体ドメインとしてテオフィリンRNAアプタマー(Science 1994;263;1425)を、本研究チームで開発したhTERT−特異T/Sリボザイムの触媒機能のためのRNA折り畳みに重要な役割(Nucleic Acid Res. 2002;30:4599)を果たすP6またはP8ドメイン、あるいはP6+P8ドメインに付着させた。また、P9ドメインを最小化させたΔP9ドメインが置換されたリボザイム、またはP9が変異されているリボザイムのP6、P8、またはP6+P8ドメインにテオフィリンアプタマーを付着させたT/Sリボザイムを製造した。図3はトランス−スプライシングリボザイムの根幹構造であるグループIイントロンの構造および塩基配列、並びにテオフィリンアプタマーおよびアプタマーをリボザイムに連結させるコミュニケーションモジュール構造(Nucleic Acis Res.2002;30:4599)などを示す。
【0073】
製作したトランス−スプライシングリボザイム構造体は、次のとおりである。
−hTERT特異的トランス−スプライシングリボザイム(WT)
−WTのP6またはP8にアプタマーが付着しているリボザイム(W−P9 6t、WT−P9 8t)
−変異P9のP6とP8ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(Mu−P9 6t8t)
−WTリボザイムのP9部位がΔP9で置換されたリボザイム(ΔP9)
−ΔP9リボザイムにP6、P8、P6+P8にアプタマーが付着しているリボザイム(ΔP9 6t、ΔP 8t、ΔP9 6t8t)
−hTERTに対するアンチセンス300ntが付着しているWTリボザイム(AS−300 WT)
−P1、P10ヘリックスを含有し、P6+P8にアプタマーを含有しているWTリボザイム(IGS W−P9 6t8t)
−アンチセンス300ntが付着しており、P6+P8にアプタマーを含有しているWTリボザイム(AS−300 W−P9 6t8t)
−アンチセンス300ntが付着しており、P6+P8にアプタマーを含有しているMu−P9リボザイム(AS−300 Mu−P9 6t8t)
【0074】
変異P9の構造は、リボザイムベクターを製造するPCR過程中に偶然製作された構造体であって、インビトロ上における標的RNA(hTERT RNA)とのトランススプライシング反応を行った結果、リボザイムの活性には影響を及ぼさない部位であることが分かった。
【0075】
したがって、本発明におけるアロステリックリボザイム製作のための候補として、このような変異P9に基づいたリボザイム構造体も共に製作し、その機能を観察した。図4は野性型P9配列と変異P9(Mu−P9)配列を示した。他の部分は太字と下線で表示した。
【0076】
実施例2:リボザイムのテオフィリン依存性RNA置換機能を定量的に分析
前記で製作したリボザイムと基質RNAとしてのhTERT RNAをスプライシング条件の下に37℃で3時間反応させた後、形成された産物をRT−PCR反応によって分析した。スプライシング反応の際に、水または0.5mMカフェイン(テオフィリン構造類似体、アロステリック効果の特異性に対する陰性対照群)または0.5mMテオフィリンと共に反応させることにより、トランス−スプライシング反応がテオフィリン特異的にアロステリックにターンオン(turn on)されるかを観察した。図5はRT−PCR産物の結果を示している。
【0077】
図5を参照すると、WTおよびΔP9リボザイムの場合には予想とおりにカフェイン、テオフィリン、水を問わずに常にトランス−スプライシング反応が誘発され、W−P9 6tの場合にも化合物に関係なく反応が誘発されることが分かった。また、W−P9 8tの場合にもテオフィリン特異的にトランス−スプライシング反応が起らず、ΔP9 8tおよびΔP 6t8tの場合にはトランス−スプライシング反応自体が非常に非効率的に行われていることが分かった。これに対し、Mu−P9 6t8tとΔP9 6tリボザイムの場合にはテオフィリン特異的に319bpサイズのトランス−スプライシング産物がインビトロ上で生成されることが分かった。よって、 グループIイントロンのP6またはP8ドメインがリボザイムのP9配列または構造的性質によってテオフィリン依存的にアロステリックにリボザイム活性を調節することが可能な主要ドメインであることが分かった。
【0078】
アロステリックリボザイムによるテオフィリン依存性トランス−スプライシング反応の誘導調節の度合いを比較分析するために、トランス−スプライシング産物に対する実時間PCR分析(分析機器;Corbett Research RG6)を行った。前記トランス−スプライシング反応によってテオフィリン依存的に酵素活性が調節されるMu−P9 6t8tリボザイム、または低分子化合物とは関係なく構造的に酵素活性を持つWTリボザイムをhTERT RNAと共にスプライシング反応させた後、RT反応を行った。RTされたサンプルの定量的比較において、その値をras cDNAの量を用いて補正した。その結果を図6に示した。図6を参照すると、WTリボザイムの場合にはスプライシングバッファ上に水、テオフィリンおよびカフェインの存在を問わずに同量のトランス−スプライシング産物を生成することが分かった。また、ΔP9 6tリボザイムの場合、実時間で反応産物を定量分析した結果、テオフィリン依存性トランス−スプライシング反応結果を示さなかった。ところが、以前の実験によって確認したインビトロ上でテオフィリン依存的に調節されるMu−P9 6t8tリボザイムの場合、内部対照群で各RTサンプルの値を補正して比較したとき、カフェインに比べてテオフィリンが存在する条件で4.3倍の差異を示し、同一体積のdH2Oとは12.16倍の差異を示した。したがって、Mu−P9 6t8tリボザイムは、インビトロ上で効果的にテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応が調節できるアロステリックリボザイムであることが分かった。
【0079】
前記で分析したリボザイムのIGSは、6個のntのみを持っているので、細胞内における標的RNA特異的なトランス−スプライシング反応のためにはIGS基が拡張されたリボザイムを利用しなければならない(Nat. Biotechnol.1996;15:902, J. Mol. Biol. 1999;185:1935, Mol. Ther. 2003;7:386, Mol. Ther. 2004;10:365; Mol. Ther. 2005;12:824)。このように拡張されたIGSを持つリボザイムは、インビトロ転写を介して製造した後、hTERT RNAとのインビトロ上におけるトランス−スプライシング反応を行った。この際、トランス−スプライシング反応がテオフィリンに依存的であるかを観察した。製作したリボザイムは、hTERTに対するアンチセンス300ntが付着しているWTリボザイム(AS−300 WT)、P1、P10へリックスを含有し且つP6+P8にアプタマーを含有しているWTリボザイム(IGS W−P9 6t8t)、アンチセンス300ntが付着しており且つP6+P8にアプタマーを含有しているWTイボザイム(AS−300 W−P9 6t8t)、およびアンチセンス300ntが付着しており且つP6+P8にアプタマーを含有しているMu−P9リボザイム(AS−300 Mu−P9 6t8t)などであり、その反応結果(トランス−スプライシング産物のRT−PCR産物)は図7に示した。
【0080】
図7を参照すると、予想とおり、AS−300 WTの場合にはテオフィリンに関係なくスプライシング反応が誘発された。AS300 W−P9 6t8tの場合にも、インビトロ上ではテオフィリンに関係なくスプライシング反応が誘発されたが、AS300 Mu−P9 6t8tの場合には、AS300がない場合とは異なり、スプライシング反応自体がよく起らないことが分かった。これに対し、アンチセンスなしでP1とP10へリックスを持つIGS W−P9 6t8tの場合には、テオフィリンが存在する場合にのみトランス−スプライシング反応が誘発できることが分かった。このような結果は、6ntのIGSのみを持つリボザイムと拡張されたIGS配列を持つリボザイムとが同一のリボザイム基本骨格を持つとしても、アンチセンス配列の存在有無によって異なる活性を示すRNA構造的差異が存在しうることを示唆する。よって、これは各拡張IGSを有するリボザイムのインビトロ、ひいては細胞内におけるスプライシング活性をそれぞれ観察しなければならないことを示唆する。
【0081】
前記結果より、テオフィリンアプタマーが付着している一部のリボザイムはインビトロ上でテオフィリン依存的にトランス−スプライシング活性がアロステリックに調節できることが分かった。果たしてこのようなトランス−スプライシング産物が正確なトランス−スプライシング反応によって生成された産物であるかを検証するために、獲得したトランス−スプライシングRT−PCT産物をpUC19ベクターにクローニングした後、その塩基配列を決定した。図8に示すように、トランス−スプライシング反応産物の配列データより、標的RNAであるhTERT RNAの+21nt部位の下流域と、リボザイムの3’エキソンに付着している蛍ルシフェラーゼRNAとが正確に連結された産物であることが分かった。このような結果は、アロステリックトランス−スプライシングリボザイムの反応が非常に正確に起ることを意味する。
【0082】
実施例3:3’エキソンにレポーター遺伝子が付着しているアロステリックトランス−スプライシングリボザイムの製作
テオフィリン依存性アロステリックリボザイム発現ベクターを製作するために、テオフィリンの受容体ドメインとしてテオフィリンRNAアプタマー(Science1994;263:1425)を、本発明者らによって開発したhTERT−特異トランス−スプライシングリボザイムの触媒機能のためのRNA折り畳みに重要な役割(Nucleic Acis Res. 2002;30:4599)を果たすP6、P8、またはP6+P8ドメインに付着させた。また、P9ドメインを最小化させたΔP9ドメインが置換されたリボザイム、または変異P9を含有したリボザイムのP6、P8、またはP6+P8ドメインにテオフィリンアプタマーを付着させたトランス−スプライシングリボザイムを製造した。発現誘導のためのトランスジーンとして蛍ルシフェラーゼ遺伝子をリボザイムの3’エキソンに挿入し、SV40プロモータシステムを用いて細胞内リボザイムの発現を図った。製作したトランス−スプライシングリボザイム構造体は、次のとおりである。
【0083】
ベクターの製造は、インビトロスプライシング反応のために製造したアロステリックリボザイム構造体のリボザイム部位からルシフェラーゼ3’末端までPCR反応によって増幅した後、そのDNAを、SV40プロモータが含有されたpSEAPベクター(Clontech)のHindIIIとXbaI部位に挿入した後、HindIII部位にhTERT RNAに対するアンチセンス配列を挿入することにより行った。この際、リボザイムを増幅するための5’プライマーには、P1、P10へリックス、およびhTERT RNAの+21ntを認知するIGS配列を含有している(5’−GGGGAATTCTAATACGACTCACTATAGGCAGGAAAAGTTATCAGGCA−3’、配列番号39)。
【0084】
(1)hTERT RNAに対して100ntアンチセンスを含有するベクター;
−hTERT特異的リボザイム(AS−100 WT)発現ベクター、
−WTのP6、P8にアプタマーが付着しているリボザイム(AS−100 W−P9 6t、AS−100 WT−P9 8t)発現ベクター、
−変異P9のP6+P8ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(AS−100 Mu−P9 6t8t)発現ベクター(pSEAP AS100 Mu−P9 6T8T−Luci、配列番号5)、
−ΔP9リボザイムのP6、P8、P6+P8にアプタマーが付着しているリボザイム(AS−100 ΔP9 6t、AS−100 ΔP9 8t、AS−100 ΔP9 6t8t)発現ベクター、
(2)hTERT RNAに対して300ntアンチセンスを含有するベクター
−hTERT特異的リボザイム(AS−300 WT)発現ベクター、
−WTのP6+P8にアプタマーが付着しているリボザイム(AS−300 W−P9 6t8t)発現ベクター(pSEAP AS300 W−P9 6T8T−Luci、配列番号6)、
−変異P9のP6+P8ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(AS−300 Mu−P9 6t8t)発現ベクター、
−ΔP9リボザイムのP6ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(AS−300 ΔP9 6t)発現ベクター、
−ΔP9リボザイムのP8ドメインにアプタマーが付着しているリボザイム(AS−300 ΔP9 8t)発現ベクター(pSEAP AS300 Delta P9 8T−Luci、配列番号4)
【0085】
実施例4:リボザイムの細胞内における化合物依存性hTERT RNAの特異的置換機能の観察
1)テオフィリン依存性トランス−スプライシングトランスジーン誘導条件の確立
前記で製造した3’エキソンにルシフェラーゼが付着しているアロステリックリボザイムがどの細胞内でテオフィリン濃度条件の下で最もアロステリックにトランスジーン発現を誘導するかその条件をまず樹立した。
【0086】
インビトロ上におけるトランス−スプライシング反応によってテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応を誘導したMu−P9 6t8tリボザイム発現ベクターを293細胞にリポフェクタミンを用いてトランジェントにトランスフェクションした。この際、トランスフェクション効率を測定し、発現産物の活性を標準化するために、CMVプロモータの下にレニラルシフェラーゼ(renillar luciferase)を発現することが可能なベクターを共にコトランスフェクションした。トランスフェクション4時間後に新規の培地で取り替えたが、この際、新規の培地には0.1mM、0.3mM、0.5mM、0.7mMおよび1mMのカフェインまたはテオフィリンを添加し、果たしてどの程度のテオフィリン下で最もテオフィリン依存的にルシフェラーゼ活性が誘導されるかを検証した。新規の培地で取り替えてから18時間後、細胞破砕物を得た後、レニラルシフェラーゼ活性によって標準化させた蛍ルシフェラーゼ活性を照度計TD−20/20(Turner Designs Instrument)を用いて測定した。この際、測定されたルシフェラーゼ活性は、SV40プロモータの下でルシフェラーゼを発現するベクター(SV40−Luci)をトランスフェクションした後、生成されるルシフェラーゼ値に対する相対値(%)で図9のように示した。
【0087】
図9を参照すると、0.7mMのテオフィリン存在の際に0.7mMのカフェイン存在の場合と比較して最も細胞内におけるテオフィリン特異的ルシフェラーゼ活性の誘導が増加することが分かった。したがって、多様なリボザイム発現ベクターによるテオフィリン依存性遺伝子発現誘導のためのテオフィリン濃度条件を0.7mMに固定して次の実験を行った。
【0088】
2)100ntアンチセンス含有リボザイム発現ベクターによるテオフィリン依存性トランスジーン発現の誘導
hTERT RNAに対する100ntアンチセンス配列を持っており且つテオフィリンアプタマーが付着しているリボザイムによる細胞内トランスジーン活性誘導の有無をルシフェラーゼ分析によって観察した。
【0089】
この際、測定されたルシフェラーゼ活性は、PBSを処理した細胞破砕物から観察されるルシフェラーゼ値に対する相対値(%)で図10のように示した。
【0090】
図10を参照すると、インビトロデータと一致するように、AS−100 Mu−P9 6t8tリボザイムの場合、最もテオフィリン特異的にルシフェラーゼ活性の誘導を増進させることが分かった。ところが、インビトロデータとは異なり、AS−100 ΔP9 6tリボザイムよりはAS−100 ΔP9 8tリボザイムの場合がさらにテオフィリン特異的にトランスジーンの発現を誘導することが分かった。このような結果は、IGSの前にアンチセンス配列が100ntさらに付加されることにより引き起こされ得るリボザイム構造的変異、そして細胞内における環境がインビトロ上における環境と必ずしも一致しないためであると思われる。これに対し、WT、W−P9 6t、W−P9 8tおよびΔP9、ΔP9 6t8tリボザイムの場合は、テオフィリン特異的に細胞内におけるトランスジーン活性を誘導するとは見られなかった。
【0091】
3)hTERT−陰性細胞におけるアロステリックリボザイム活性
前記結果より、細胞内でテオフィリン依存的にアロステリックにトランスジーン活性を誘導することができるものと観察されたAS−100 Mu−P9 6t8tリボザイム、および細胞内ではアロステリック効果を示していないAS−100 ΔP9 6tリボザイムが、果たしてhTERT標的RNA特異的にトランスジーン活性を誘導するかを調べるために、hTERT陰性細胞であるSK−Lu−1細胞に各リボザイムベクターをDMRIE−Cを用いてトランジェントにトランスフェクションし、その4時間後、テオフィリン入りの培地で取り替えた。新規の培地で取り替えてから18時間の後、細胞破砕物を得た後、ルシフェラーゼ活性を測定してSV40−Luciベクターによるルシフェラーゼ発現値との相対値を図11のように測定した。
【0092】
図11を参照すると、AS−100 WTリボザイムと同様に、AS−100 Mu−P9 6t8tおよびAS−100 ΔP9 6tリボザイムの両方とも標的RNAが存在しなければ、テオフィリンの存在と関係なくトランスジーン発現誘導が抑制されることが分かった。すなわち、テオフィリン依存性アロステリックトランス−スプライシングリボザイムは、ターゲットRNA特異的にトランスジーン発現を誘導することができることが分かった。
【0093】
4)300ntアンチセンス含有リボザイム発現ベクターによるテオフィリン依存性トランス発現の誘導
アンチセンス配列の長さを増加させることにより、トランス−スプライシングリボザイムのアロステリックトランスジーン発現誘導効果がさらに増進できるかを観察するために、hTERT RNAに対して300ntのアンチセンス配列を含有したリボザイムベクターを製造した後、細胞内におけるテオフィリン依存的ルシフェラーゼ活性の誘導を比較観察した。
本実験のためのテオフィリン依存性対照群としてAS−300 WTリボザイムを用いた。インビトロでテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応を誘発し且つAS−100配列含有の際に細胞内でテオフィリン依存的トランスジーン活性を誘導した、Mu−P9 6t8tの基本骨格に300ntアンチセンスを含有したリボザイム(AS−300 Mu−P9 6t8t)、インビトロでテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応を誘発した、ΔP9 6tの基本骨格に300ntアンチセンスを含有したリボザイム(AS−300 ΔP9 6t)、AS-100配列含有の際に細胞内でテオフィリン依存的トランスジーン活性を誘導した、ΔP9 8tの基本骨格に300ntアンチセンスを含有したリボザイム(AS−300 ΔP9 8t)、および拡張されたIGS含有の際(P1+P10へリックス)にインビトロでテオフィリン依存的にトランス−スプライシング反応を誘発した、W−P9 6t8tの基本骨格に300ntアンチセンスを含有したリボザイム(AS−300 W−P9 6t8t)の発現ベクターを、それぞれhTERT陽性細胞としての293細胞にコトランスフェクションした後、ルシフェラーゼ活性を測定し、テオフィリン依存的遺伝子の活性誘導有無を相互比較し、観察した。この際、測定されたルシフェラーゼ活性はSV40プロモータの下で蛍ルシフェラーゼを発現するベクター(SV40−Luci)をトランスフェクションした後、生成されるルシフェラーゼ値に対する相対値(%)で図12のように示した。
【0094】
図12を参照すると、予想とおり、AS−300 WTリボザイムはテオフィリンの存在有無を問わずにルシフェラーゼ発現を効果的に誘導した。アンチセンス配列300ntを含有したリボザイムのうちAS−300 Mu−P9 6t8tとAS−300 ΔP9 6tリボザイムの場合、テオフィリン依存的トランスジーン活性誘導を観察することはできなかった。これに対し、AS−300 W−P9 6t8tとAS−300 ΔP9 8tの場合は、テオフィリン依存的に効果的なルシフェラーゼ活性誘導を観察することができ、リボザイムのIGSの前にアンチセンス配列100ntを挿入する場合よりアンチセンス配列300ntを挿入した場合が、さらにトランスジーン発現誘導を増加させることができることを観察することができた。
【0095】
5)アロステリックリボザイムによる細胞内トランス−スプライシング反応
前記実験によって、細胞内でテオフィリン依存的にトランスジーンの活性を誘導、増進させることが可能なリボザイム構造体を探索した。このようなテオフィリン依存性トランスジーンの誘導が、果たして細胞内トランス−スプライシング反応のアロステリック効果によって誘発されるかを検証するために、テオフィリンアプタマーが付着しているリボザイム発現ベクターを293細胞にトランジェントにトランスフェクションした後、細胞内トランス−スプライシング反応産物の存在有無を観察した。
【0096】
GAPDH RNA発現度を観察して内部対照群として用いた。RT−PCR産物をアガロースゲルで分析した結果は、図13に示した。
【0097】
図13を参照すると、予想とおり、陽性対照群であるWTリボザイム(AS−300 WT)の場合、hTERT特異的トランス−スプライシング反応物を得ることができた(lane3)。テオフィリンアプタマーが付着しているリボザイムは、ルシフェラーゼ活性の誘導結果と一致するように、AS−300 Mu−P9 6t8tリボザイムベクターの場合にはテオフィリン、カフェインおよびPBS存在の際に培地を問わずに全てトランス−スプライシング産物が生成されたが(lane7〜9)、これに対し、AS−300 W−P9 6t8tリボザイムベクターの場合には、ルシフェラーゼ活性の誘導結果と一致するように、テオフィリンを処理した細胞のみ311bpのトランス−スプライシング産物が生成されること(lane4)を観察することができた。このような結果はAS−300 W−P9 6t8tリボザイムのインビトロトランス−スプライシング結果とは異なるが、これはインビトロと細胞内における環境的相異によるものと思われる。このようなトランス−スプライシング産物が、RNA抽出過程中に誘発されるインビトロトランス−スプライシング反応ではなく、細胞内におけるトランス−スプライシング反応の結果であることを検証するために、293細胞とAS−300 W−P9 6t8tリボザイムベクターをトランスフェクションさせたSK−Lu−1細胞(hTERTネガティブ)を混合し、RNAを抽出した後、RT−PCR反応を行った。その結果、図13に示すように、何のトランス−スプライシング産物も発見されないことからみて(lane10)、テオフィリン存在の際にAS−300 W−P9 6t8tリボザイムがトランスフェクションされた293細胞でのみ測定されたトランス−スプライシング産物は、細胞におけるテオフィリン依存的で標的RNA特異的なトランス−スプライシング反応によるものであることが分かった。
【0098】
前記結果をまとめてみた結果、hTERT RNAを発現する細胞特異的に且つテオフィリン依存的にトランスジーン発現を調節することが可能な、すなわちテオフィリン依存的に細胞内で人為的にRNA置換反応を調節することが可能なアロステリックリボザイム候補としてAS−300 W−P9 6t8tとAS−300 ΔP9 8tなどを開発した。さらに、インビトロ上で効率的なアロステリックリボザイムとしてIGS W−P9 6t8tを発掘した。
【0099】
実施例5:アデノウイルス性ベクターによるhTERT発現癌細胞特異的な細胞死調節機能の観察
1)HT−29細胞(hTERT+)におけるテオフィリン依存性細胞死の誘導
開発したアロステリックリボザイムの3’エキソンに細胞死遺伝子としてのHSVチミジンキナーゼ遺伝子を挿入(AS300 W−P9 6T8T−TK)してCMVプロモータの下でリボザイムを哺乳類細胞で発現することが可能なベクター(pAvQ−Theo−Rib21AS−TK、配列番号8)を製作した後、組換えアデノウイルス性ベクターを製作した(図14)。
【0100】
前記pAvQ−Theo−Rib21AS−TKを韓国微生物保存センターに2008年3月21日付けで寄託し、寄託番号KCCM10935Pを与えられた。
【0101】
HSVtkを3’エキソンとして持っており、テオフィリン依存性アロステリックリボザイムを発現するアデノウイルス性ベクター(Ad−TheoRibTK)が果たして標的特異的に、そしてテオフィリン依存的にトランスジーン発現を誘導するかを観察するために、ウイルス処理の後、GCVと調節化合物を処理し、しかる後に、MTT分析によって大腸癌細胞としてのHT−29細胞の生存率を観察した。この際、陽性対照群としてAd−TK(CMVプロモータの下にHSVtkを発現するアデノウイルス性ベクター)を用い、hTERT+細胞における陽性対照群としてAd−Rib−TK(hTERT特異的であり、HSVtkが標識されているアデノウイルス性ベクター)を用いた。陰性対照群としては、Ad−LacZ(CMVプロモータの下にLacZを発現するアデノウイルス性ベクター)を用いた。Ad−TheoRib−TKを処理した場合、テオフィリン或いはカフェインを処理した後の生存率を相互比較し、その結果を図15に示した。
【0102】
図15を参照すると、Ad−TKおよびAd−Rib−TKの場合、GCV濃度が増加すると同時にアデノウイルス濃度が増加しながら細胞生存率が減少するが、化学物質の濃度には影響されないことが観察された。これに対し、Ad−LacZの場合はいずれの場合でも細胞生存率に影響を及ぼさなかった。注目すべき点は、アロステリックリボザイムであるAd−TheoRib TKを感染させた場合、カフェイン処理によっては細胞生存率がGCV、ウイルスおよび化学物質の濃度を増加させても細胞生存率に影響を及ぼさなかったが、テオフィリンを処理した場合には、陽性対照群と同様に、ウイルス濃度およびGCV濃度に比例するように細胞生存率が減少した。また、テオフィリン濃度が増加すると、それにより細胞生存率も一緒に減少することが観察された。これは、Ad−TheoRib−TKはテオフィリンによってその活性がアロステリックに調節されるので、テオフィリンを処理すればトランスジーン発現が誘導されることにより、癌細胞の細胞死が誘発されたことを示唆する。最もアロステリックに遺伝子発現が誘導される条件は、100moiアデノウイルス、100μMテオフィリン、10μM GCVを処理した場合である。
【0103】
2)HepG2細胞(hTERT+)におけるテオフィリン依存性細胞死の誘導
Ad−TheoRib−TKが果たして標的特異的に且つテオフィリン依存的にトランスジーン発現を誘導するかを観察するためにウイルス処理し、GCVと調節化合物を処理した後、MTT分析によって肝癌細胞としてのHepG2細胞における細胞生存率も観察した。この際、陽性対照群としてAd−TKを用い、hTERT+細胞における陽性対照群としてAd−Rib−TKを用いた。陰性対照群としてはAd−LacZを用いた。Ad−TheoRib−TKを処理した場合、テオフィリン或いはカフェインを処理した後の生存率を相互比較し、その結果を図16に示した。
【0104】
図16を参照すると、HT−29細胞と同様に、Ad−TKおよびAd−Rib−TKの場合、GCV濃度が増加すると同時にアデノウイルス濃度が増加しながら細胞生存率が減少するが、化学物質の濃度には影響されないことが観察された。これに対し、Ad−LacZの場合は、いずれの場合でも細胞生存率に影響を及ぼさなかった。注目すべき点は、アロステリックリボザイムであるAd−TheoRib−TKを感染させた場合、カフェイン処理によってはGCV、ウイルスおよび化学物質の濃度を増加させても細胞生存率に影響を及ぼさなかったが、テオフィリンを処理した場合には、陽性対照群と同様に、ウイルス濃度およびGCV濃度に比例するように細胞生存率が減少した。また、テオフィリン濃度が増加すると、それにより細胞生存率も一緒に減少することが観察された。これは、hTERT+であるHT−29以外にも、HepG2細胞においても、Ad−TheoRib−TKはテオフィリンによってその活性がアロステリックに調節されるので、テオフィリンを処理すればトランスジーン発現が誘導されることにより、癌細胞の細胞死が誘発されたことを示唆する。最もアロステリックに遺伝子発現が誘導される条件は、10moiアデノウイルス、10μMテオフィリン、10μM GCVを処理した場合である。
【0105】
3)Capan−1細胞(hTERT+)におけるテオフィリン依存性細胞 死の誘導
Ad−TheoRib−TKが果たして標的特異的に且つテオフィリン依存的にトランスジーン発現を誘導するかを観察するために、ウイルス処理し、GCVと調節化合物を処理した後、MTT分析によって膵臓癌細胞としてのCapan−1細胞における細胞生存率も観察し、その結果を図17に示した。
図17を参照すると、HT−29、HepG2細胞と同様に、Ad−TKおよびAd−Rib−TKの場合、GCV濃度が増加すると同時にアデノウイルス濃度が増加しながら細胞生存率が減少するが、化学物質の濃度には影響されないことが観察された。これに対し、Ad−LacZの場合はいずれの場合でも細胞生存率に影響を及ぼさなかった。注目すべき点は、アロステリックリボザイムであるAd−TheoRib−TKを感染させた場合、カフェイン処理によってはGCV、ウイルスおよび化学物質の濃度を増加させても細胞生存率に影響を及ぼさなかったが、テオフィリンを処理した場合には、陽性対照群と同様に、ウイルス濃度およびGCV濃度に比例するように細胞生存率が減少した。また、テオフィリン濃度が増加すると、それにより細胞生存率も一緒に減少することが観察された。これは、hTERT+であるHT−29、HepG2以外にも、Capan−1細胞においても、Ad−TheoRib−TKはテオフィリンによってその活性がアロステリックに調節されるので、テオフィリンを処理すればトランスジーン発現が誘導されることにより、癌細胞の細胞死が誘発されたことを示唆する。最もアロステリックに遺伝子発現が誘導される条件は、100moiアデノウイルス、500μMテオフィリン、50μM GCVを処理した場合である。
【0106】
4)IMR90細胞(hTERT−)におけるテオフィリン依存性細胞死誘導の観察
hTERT+細胞でAd−TheoRib−TK活性がテオフィリン依存的に調節されることが標的特異的であるかを観察するために、hTERT−であるIMR90細胞におけるウイルス感染後の細胞生存率を観察し、その結果を図18に示した。
図18を参照すると、Ad−TKの場合、ウイルスおよびGCVの濃度に比例するように細胞生存率が減少し、このような現象が化学物質の濃度とは関係ないことを観察した。ところが、リボザイムを発現するAd−Rib−TKおよびアロステリックなAd−TheoRib−TKの場合は、ウイルス、GCVおよび化学物質の濃度と関係なくその濃度を増加させても細胞生存率には影響を及ぼすことができなかった。これは、Ad−TheoRib−TKの場合、外部化合物によってその活性を人為的に調節することができるうえ、非常に標的特異的にトランスジーンを誘発することができることを示唆する。
【0107】
実施例6:アロステリックリボザイム発現アデノウイルス性ベクターによるテオフィリン依存性細胞内トランス−スプライシング反応の調節
テオフィリン依存性トランスジーン誘導が果たして細胞内トランス−スプライシング反応のアロステリック効果によって誘発されるかを検証するために、テオフィリンアプタマーが付着しているリボザイム発現アデノウイルス性ベクター(100moi)をHT−29細胞に感染させた後、前記実験で構築したアロステリック条件である0.1mMテオフィリンまたは非対象化合物としてのカフェインを同一の濃度で処理した後、細胞内トランス−スプライシング反応産物の存在有無を観察した。GAPDH RNA発現度を観察して内部対照群として用いた。RT−PCR産物をアガロースゲルで分析し、その結果を図19に示した。
【0108】
図19を参照すると、予想とおり、陰性対照群であるAd−LacZの場合、低分子化合物処理と関係なく、いずれのトランス−スプライシング産物の生成が観察されなかった。これに対し、Ad−TheoRib−TK(Ad−Theo−Rib2AS−TK)をhTERT発現癌細胞としてのHT−29細胞に導入した後、カフェイン処理の際にはトランス−スプライシング産物が殆ど形成されなかったが、MTT分析で観察されたように0.1mMテオフィリン処理の際に429ntの予想されたトランス−スプライシング産物が形成された。このようなトランス−スプライシング産物をクローニングし、シークエシングした結果、予想とおり、hTERTの+21部位がスプライシングされた産物であることを観察した。これに対し、このようなトランス−スプライシング産物は、同一条件の下でhTERTを発現しないIMR90細胞では形成されなかった。これは、本リボザイムが標的RNAの存在時にのみトランス−スプライシング機能を行うことができることを確認する結果である。このようなテオフィリン依存的トランス−スプライシング産物が、RNA抽出過程中に誘発されるインビトロトランス−スプライシング反応ではなく、細胞内におけるトランス−スプライシング反応の結果であることを検証するために、mockトランスフェクションしたHT−29細胞と、Ad TheoRib−TKの導入後にテオフィリンを処理したIMR90細胞(hTERTネガティブ)とを混合し、しかる後に、RNAを抽出してRT PCR反応を行った(mix)。その結果、予想されたトランス−スプライシング産物が発見されないことからみて、テオフィリン存在の際にAd−TheoRib−TKが導入されたHT−29細胞でのみ測定されたトランス−スプラシング産物および細胞死は、細胞内におけるテオフィリン依存的で標的RNA特異的なトランス−スプライシング反応によるものであることが分かった。
HT−29細胞におけるトランス−スプライシング反応産物の量を相対的に比較するために、RTの後、実時間PCRを行った。T/S PCR産物の量をGAPDHのPCR産物の量を用いて補正した後、グラフで示した(図20)。
【0109】
図20を参照すると、陰性対照群であるAd−LacZの場合、低分子化合物処理と関係なくいずれのT/S産物の生成も観察されなかった。これに対し、Ad−TheoRib−TKを細胞に導入した後でPBSを処理した場合、T/S産物が殆ど生成されず、カフェインを処理した場合は、PBS処理した場合より反応産物が若干増加したが、テオフィリン処理の場合に比べて78%その生成物が著しく減少した。これに対し、Ad−TheoRib−TKを細胞に導入した後でテオフィリンを処理した場合には、Ad−Rib−TKによって形成されるトランス−スプライシング産物と同様に効果的にトランス−スプライシング反応が誘発された。このような結果は、アロステリックリボザイムによって誘発されたテオフィリン依存的標的特異的な細胞死の誘導がテオフィリンによる標的特異的なトランス−スプライシング反応の活性化に起因することを示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0110】
上述したように、本発明は、テオフィリンによってその活性を調節することが可能なトランス−スプライシングリボザイムをモデルシステムとして構築することにより、疾患特異RNAを標的化して遺伝子発現を誘導することが可能な、非常に特異的な遺伝子治療技術であるトランス−スプライシングリボザイムと、外部因子によって遺伝子発現を調節することが可能な可逆的遺伝子技術との組み合わせにおいて実験的土台を提供する。本発明に係るアロステリックトランススプライシンググループIリボザイムは、多様な難治性疾患に使用できる汎用的遺伝子治療剤への活用が可能であり、診断剤の開発またはリボザイムの活性メカニズム研究のための道具としての活用も可能であろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイム、P9ドメインの一部が除去されたトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイム、またはP9ドメインの一部が変異されたトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイムを製作する段階と、
テオフィリンとカフェインを用いてインビトロで前記製作されたアプタザイムのアロステリック調節を比較してテオフィリン依存性トランス−スプライシング有無を確認する段階と、
哺乳類の細胞で0.1〜1mMのテオフィリン存在の下にルシフェラーゼ活性によってテオフィリン依存性トランスジーンの発現有無を確認する段階とを含むことを特徴とする、テオフィリンによって活性が調節されるアロステリックトランス−スプラインググループIリボザイムの選別方法。
【請求項2】
前記アプタザイムを製作する段階で、hTERT RNAに対するアンチセンス100〜300ntが付着しているアプタザイムをさらに製作することを特徴とする、請求項1に記載の選別方法。
【請求項3】
前記トランス−スプライシングリボザイムの変異されたP9ドメインの塩基配列は「CGAAAGGGAG」であることを特徴とする、請求項1に記載の選別方法。
【請求項4】
hTERT(human Telomerase reverse transcriptase)RNAを特異的に標的化し、3’エキソンには蛍由来ルシフェラーゼ受容体遺伝子を含有することを特徴とする、テオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプラインググループIリボザイム。
【請求項5】
前記リボザイムは、配列番号1で表されるAS300 ΔP9 8T、配列番号2で表されるAS100 Mu−P9 6T8T、または配列番号3で表されるAS300 W−P9 6T8Tであることを特徴とする、請求項4に記載のリボザイム。
【請求項6】
請求項4に記載のリボザイムをエンコードする発現ベクター。
【請求項7】
前記発現ベクターは、配列番号4で表されるpSEAP AS300 Delta P9 8T−Luci、配列番号5で表されるpSEAP AS100 Mu−P9 6T8T−Luci、または配列番号6で表されるpSEAP AS300 W−P9 6T8T−Luciであることを特徴とする、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項8】
hTERT(human Telomerase reverse transcriptase)RNAを特異的に標的化し、3’エキソンにはHSV−TK(herpes simple virus thymidine kinase)細胞死遺伝子を含有することを特徴とする、テオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプラインググループIリボザイム。
【請求項9】
前記リボザイムは、配列番号7で表されるAS300 W−P9 6T8T−TKであることを特徴とする、請求項8に記載のリボザイム。
【請求項10】
請求項8に記載のリボザイムを哺乳類細胞で発現する発現ベクター。
【請求項11】
前記発現ベクターは、配列番号8で表されるpAvQ−Theo−Rib21AS−TK(KCCM10935P)であることを特徴とする、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項12】
請求項4または請求項8に記載のリボザイムおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、遺伝子発現誘導剤。
【請求項13】
請求項6または請求項10に記載の発現ベクターおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、遺伝子発現誘導剤。
【請求項14】
請求項4または請求項8に記載のリボザイムおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、癌診断剤。
【請求項15】
請求項6または請求項10に記載の発現ベクターおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、癌診断剤。
【請求項16】
請求項4または請求項8に記載のリボザイムおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、 遺伝子治療剤。
【請求項17】
請求項6または請求項10に記載の発現ベクターおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、 遺伝子治療剤 。
【請求項1】
トランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイム、P9ドメインの一部が除去されたトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイム、またはP9ドメインの一部が変異されたトランス−スプライシングリボザイムのP6とP8ドメインのそれぞれまたは両方ともにテオフィリンアプタマーとコミュニケーションモジュールを結合させたアプタザイムを製作する段階と、
テオフィリンとカフェインを用いてインビトロで前記製作されたアプタザイムのアロステリック調節を比較してテオフィリン依存性トランス−スプライシング有無を確認する段階と、
哺乳類の細胞で0.1〜1mMのテオフィリン存在の下にルシフェラーゼ活性によってテオフィリン依存性トランスジーンの発現有無を確認する段階とを含むことを特徴とする、テオフィリンによって活性が調節されるアロステリックトランス−スプラインググループIリボザイムの選別方法。
【請求項2】
前記アプタザイムを製作する段階で、hTERT RNAに対するアンチセンス100〜300ntが付着しているアプタザイムをさらに製作することを特徴とする、請求項1に記載の選別方法。
【請求項3】
前記トランス−スプライシングリボザイムの変異されたP9ドメインの塩基配列は「CGAAAGGGAG」であることを特徴とする、請求項1に記載の選別方法。
【請求項4】
hTERT(human Telomerase reverse transcriptase)RNAを特異的に標的化し、3’エキソンには蛍由来ルシフェラーゼ受容体遺伝子を含有することを特徴とする、テオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプラインググループIリボザイム。
【請求項5】
前記リボザイムは、配列番号1で表されるAS300 ΔP9 8T、配列番号2で表されるAS100 Mu−P9 6T8T、または配列番号3で表されるAS300 W−P9 6T8Tであることを特徴とする、請求項4に記載のリボザイム。
【請求項6】
請求項4に記載のリボザイムをエンコードする発現ベクター。
【請求項7】
前記発現ベクターは、配列番号4で表されるpSEAP AS300 Delta P9 8T−Luci、配列番号5で表されるpSEAP AS100 Mu−P9 6T8T−Luci、または配列番号6で表されるpSEAP AS300 W−P9 6T8T−Luciであることを特徴とする、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項8】
hTERT(human Telomerase reverse transcriptase)RNAを特異的に標的化し、3’エキソンにはHSV−TK(herpes simple virus thymidine kinase)細胞死遺伝子を含有することを特徴とする、テオフィリンによってRNA置換活性が調節されるアロステリックトランス−スプラインググループIリボザイム。
【請求項9】
前記リボザイムは、配列番号7で表されるAS300 W−P9 6T8T−TKであることを特徴とする、請求項8に記載のリボザイム。
【請求項10】
請求項8に記載のリボザイムを哺乳類細胞で発現する発現ベクター。
【請求項11】
前記発現ベクターは、配列番号8で表されるpAvQ−Theo−Rib21AS−TK(KCCM10935P)であることを特徴とする、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項12】
請求項4または請求項8に記載のリボザイムおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、遺伝子発現誘導剤。
【請求項13】
請求項6または請求項10に記載の発現ベクターおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、遺伝子発現誘導剤。
【請求項14】
請求項4または請求項8に記載のリボザイムおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、癌診断剤。
【請求項15】
請求項6または請求項10に記載の発現ベクターおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、癌診断剤。
【請求項16】
請求項4または請求項8に記載のリボザイムおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、 遺伝子治療剤。
【請求項17】
請求項6または請求項10に記載の発現ベクターおよびテオフィリンを含むことを特徴とする、 遺伝子治療剤 。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2010−522572(P2010−522572A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506095(P2010−506095)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007440
【国際公開番号】WO2009/119965
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(509083153)インダストリー−アカデミック コーオペレーション ファウンデーション、ダンコック ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007440
【国際公開番号】WO2009/119965
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(509083153)インダストリー−アカデミック コーオペレーション ファウンデーション、ダンコック ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】
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