説明

テストピースおよび異物検出装置

【課題】テストピースを用いた動作確認を正確に行うことができるテストピースおよび異物検出装置を提供すること。
【解決手段】テストピースPは、試験用異物片11と、試験用異物片11を収納する収納部材12と、を備え、収納部材12が、試験用異物片11を識別する識別情報としてのテストピースIDを少なくとも含み光学的に読取り可能な情報であるテストピース情報が記録された情報記録部13を有する。また、異物検出装置1は、テストピースPからテストピースIDを光学的に読取るテストピース情報取得部8と、テストピース情報取得部8が読取ったテストピースIDに基づいてテストピースPの識別を行う動作確認処理部6と、動作確認処理部6の識別結果を報知する表示部7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物中に混入した異物を検出する異物検出装置およびテストピースに関し、特に、テストピースを用いて検出精度等を確認するための動作確認処理を行う異物検出装置およびテストピースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、生肉、魚、加工食品、医薬などの製造ラインにおいては、被検査物(製品)中に混入した異物を検出するために、X線異物検出装置や金属検出装置が異物検出装置として用いられている。
【0003】
X線異物検出装置は、搬送ライン上を搬送される被検査物にX線を照射し、このX線の照射に伴って被検査物を透過するX線の透過量から被検査物中に異物が混入しているか否かを検出している。
【0004】
また、金属検出装置は、搬送ラインに交番磁界を発生させておき、交番磁界中を各品種の被検査物を通過させ、磁界を通過しているときの検波出力から金属が混入しているか否かを検出したり、各品種の被検査物に対し、直流磁界を発生させて被検査物中の磁性物を磁化し、その磁気を磁気センサで検出することにより被検査物中に異物が混入しているか否かを検出している。
【0005】
従来、この種の異物検出装置としては、製造ラインの稼働前後に、装置を動作確認モード設定した上で、試験用異物片が収納されたテストピースを用いて検出精度等を確認する動作確認処理を行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−72885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の異物検出装置においては、複数の種類およびサイズがあるテストピースの中から誤って選択したテストピースを用いて動作確認を行ってしまう恐れがあるため、動作確認の結果を完全に信頼することができないという問題があった。
【0007】
また、使用すべきテストピースの種類やサイズ等の情報を規定のテストピースとして予め異物検出装置に入力しておき、X線や磁界を用いた異物検出手段の検出値に基づいて規定のテストピースを検出した場合に、異物としてではなくテストピースとして認識して動作確認をするようにした場合であっても、本当に規定のテストピースが用いられたか分からないことがあったり、規定以外のテストピースを規定のテストピースとして誤認識してしまったりする恐れがあるため、動作確認の結果を完全に信頼することができないという問題があった。
【0008】
また、テストピースにRFタグを装着して規定のテストピースであることを認識するようにした場合、電子回路であるRFタグがX線や磁界に影響を与えてしまうので、正確な動作確認を行うことができず、動作確認の結果を完全に信頼することができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、動作確認の信頼性を高めることができるテストピースおよび異物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るテストピースは、試験用異物片と、前記試験用異物片を収納する収納部材と、を備え、前記収納部材が、前記試験用異物片を識別する識別情報を少なくとも含み光学的に読取り可能な情報が記録された情報記録部を有することを特徴とする。
【0011】
この構成により、このテストピースを用いた異物検出装置は、異物検出装置が標準的に備える光学式の通過センサにより、テストピースの情報記録部に記録された識別情報を読取り、読取った識別情報によりテストピースに収納された試験用異物片の識別をすることができるため、テストピースと製品との間の誤認を防止したり、種々のテストピースの中から既定のテストピースを用いたか否かを判定することができ、動作確認の信頼性を高めることができる。
【0012】
本発明に係るテストピースは、前記収納部材に接続される接続部材を備え、前記接続部材に前記情報記録部が設けられたことを特徴とする。
【0013】
この構成により、収納部材に情報記録部が設けられていない場合や情報記録部を設けるのが困難な場合であっても、情報記録部を有する接続部材を収納部材に接続することによって、テストピースに収納された試験用異物片の識別をすることができる。
【0014】
本発明に係るテストピースは、前記情報記録部が、光を透過する透過部と、光を透過しない非透過部とを有することを特徴とする。
【0015】
この構成により、透過部および非透過部は、切欠き、塗装、貼り付け等の簡単な方法により作成することができ、また、電気的に情報の記録および読取りをする構成よりも故障する恐れが少ないので、製造コストが低く、耐久性を有するテストピースを提供することができる。
【0016】
本発明に係るテストピースは、前記識別情報に対応する透過部および非透過部が、前記識別情報以外の情報に対応する透過部および非透過部よりも大きく形成されたことを特徴とする。
【0017】
この構成により、識別情報に対応する透過部および非透過部が、光学的に確実に読取られる。
【0018】
本発明に係るテストピースは、前記収納部材が、中空構造を有する樹脂材料からなることを特徴とする。
【0019】
この構成により、X線により異物を検出する異物検出装置にテストピースを用いた場合でも、中空構造を有する樹脂材料からなる収納部材はX線を透過して試験用異物片の検出に影響を与えないので、精度の高い動作確認を行うことができる。
【0020】
本発明に係る異物検出装置は、搬送ライン上を搬送される被検査物の中に混入した異物を検出する異物検出装置において、前記テストピースから前記識別情報を光学的に読取る読取り手段と、前記読取り手段が読取った識別情報に基づいて前記テストピースの識別を行う識別手段と、前記識別手段の識別結果を報知する報知手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成により、異物検出装置が通常備える光学式の通過センサを読取り手段として用いて、テストピースから識別情報を読取り、この識別情報に基づいてテストピースを識別した結果を報知するので、報知内容を参照することにより、テストピースと製品との間の誤認の有無や、種々のテストピースの中から既定のテストピースを用いたか否かを知ることができ、動作確認の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、テストピースを用いた動作確認を正確に行うことができるテストピースおよび異物検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
まず構成について説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る異物検出装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係る異物検出装置の検出部が金属検出部として構成された例を示すブロック図である。また、図3は、本発明の実施の形態に係る異物検出装置の検出部がX線検出部として構成された例を示すブロック図である。また、図4(a)は、本発明の実施の形態に係る異物検出装置の搬送部を示す上面図であり、図4(b)、図4(c)は、表示部の表示例である。
【0026】
図1に示すように、異物検出装置1は、搬送部2と、検出部3と、設定部4と、異物判定部5と、動作確認処理部6と、表示部7とを備えている。
【0027】
この異物検出装置1は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物が搬送される図示しない製造ラインに組み込まれ、被検査物W中に混入した異物を検出するものであって、例えば図5に示すような構成のテストピースPを使用して異物検出が正しく行えるか否かを確認する機能(動作確認機能)を有している。
【0028】
搬送部2は、例えば、生肉、魚、加工食品、医薬などの様々な品種の中から予め設定部4で設定される品種の被検査物Wを順次搬送するもので、例えば装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアにより構成される。搬送部2は、図示しない駆動モータにより駆動され、予め設定された所定の搬送速度で、搬入された被検査物Wを図1の矢印方向に搬送するようになっている。
【0029】
検出部3は、被検査物Wに含まれる異物や、テストピースP内の試験用異物片11の種類やサイズに応じた検出信号を出力するようになっており、図2に示す構成の金属検出部3B、または図3に示す構成のX線検出部3Aから構成される。
【0030】
図2に示す金属検出部3Bは、信号発生器31、送信コイル32、2つの受信コイル33a、33bを有する磁界変化検出部33、検波部34を備えている。
【0031】
信号発生器31は、所定周波数の信号を出力する。送信コイル32は、信号発生器31からの信号を受けて被検査物W(またはテストピースP)に所定周波数の交番磁界を発生するようになっている。
【0032】
2つの受信コイル33a、33bは、送信コイル32が発生する交番磁界を等量ずつ受ける位置で被検査物Wの搬送方向に沿って配置され、互いに差動接続される。磁界変化検出部33は、交番磁界中を通過する物体による磁界の変化に対応した信号を発生するようになっている。
【0033】
検波部34は、磁界変化検出部33の出力信号を信号発生器31が発生する信号と同一周波数の信号によって同期検波するようになっている。
【0034】
このような構成による金属検出部3Bでは、被検査物Wが交番磁界中に存在していないときには、2つの受信コイル33a、33bに生起される信号の振幅が等しく位相が反転している平衡状態となるため、信号の振幅はゼロとなり、検波部34の出力もゼロになる(検波出力)。これに対し、被検査物Wが交番磁界中に存在している場合には、被検査物W自身およびその被検査物Wに混入している金属(またはテストピースP)の影響により、2つの受信コイル33a、33bに生起される両信号の平衡状態がくずれ、被検査物Wの移動に伴い、振幅および位相が変化する信号が検波部34から出力される(検波出力)。
【0035】
なお、図2に示した金属検出部3Bは、搬送部2を挟んで一方側に送信コイル32を配置し、他方側に2つの受信コイル33a、33bを送信コイル32に対向させるように配置したいわゆる対向型配置の構成を有しているが、送信コイル32と受信コイル33a、33bとが同軸上に配置された同軸型配置の構成を有していてもよい。
【0036】
一方、図3に示すX線検出部3Aは、X線発生器21とX線検出器22とを備えている。
【0037】
X線発生器21は、金属性の箱体内部に設けられる円筒形のX線管を絶縁油に浸漬したものから構成されており、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射してX線を生成している。X線管は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向と直交するように配置されている。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出器22に向けて、長手方向に沿ったスリットを介して、略円錐形状のX線を略三角形状のスクリーン状にして曝射するようになっている。
【0038】
X線検出器22は、被検査物Wに対してX線が曝射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線を検出し、この検出したX線の透過量に応じた電気信号を出力している。X線検出器22には、例えば搬送部2を構成するベルトコンベア上を搬送される被検査物Wの搬送方向と直交する方向にライン状に配列された複数のフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えたアレイ状のラインセンサが用いられている。
【0039】
このような構成によるX線検出部3Aでは、被検査物Wに対してX線発生器21からX線が曝射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線をX線検出器22のシンチレータで受けて光に変換する。さらにシンチレータで変換された光は、その下部に配置されるX線検出器22のフォトダイオードによって受光される。そして、各フォトダイオードは、受光した光を電気信号に変換して出力する(検出出力)ようになっている。
【0040】
設定部4は、搬送部2によって搬送させる被検査物Wの品種の設定操作や、装置が正しく動作するか否かを確認する動作確認モード時に使用するテストピースPの情報の入力操作を含め、被検査物Wの異物検出や動作確認処理に関する各種設定や指示を行うためのものであり、設定や指示のために操作する複数のキーやスイッチ等を備えている。なお、動作確認モード時に使用するテストピースPとして特定のテストピースP(以下、既定のテストピース)を指定するよう設定する場合は、既定のテストピースを設定部4により設定するようになっている。
【0041】
異物判定部5は、検出部3からの検出出力(検出信号)に基づいて、被検査物Wの中に異物が含まれているか否かの判定を行うとともに、判定結果を表示部7に表示させるようになっている。
【0042】
動作確認処理部6は、テストピース情報(詳しくはテストピースID)に基づいてテストピースPの識別を行ったり、テストピースPを用いて検出部3が正しく動作するか否かを判定する動作確認モードを実行し、その識別結果や判定結果を表示部7に表示させるようになっており、テストピース記憶部6aと、テストピース判定部6bと、照合部6cとを備えている。
【0043】
テストピース記憶部6aは、搬送部2によって搬送されているテストピースPを識別するための識別情報であるテストピースIDを含むテストピース情報を記憶している。テストピース情報には、テストピースID、種類、サイズの情報が含まれる他、動作確認モード時に用いられ得る各種のテストピースPの詳細な情報が含まれる。なお、テストピース記憶部6aは、テストピース情報を被検査物Wの品種毎に記憶している。ここで、テストピースIDとは、例えば、テストピースPの個体毎または種類毎に各テストピースPに割り当てて付与される番号等の情報であり、例えば、"001"、"002"や"A"、"B"といった情報である。すなわち、テストピースIDは、後述するようにテストピースPに設けられるとともに、テストピース記憶部6aにも記憶されている。ここで、テストピースPに設けられるテストピース情報は、図6(a)に示すように、テストピースID、種類、サイズ、パリティ等の基本的な情報であり、テストピース記憶部6aに記憶されるテストピース情報は、テストピースID、種類、サイズだけでなく動作確認モード時に用いられ得る他の情報を含んだ詳細な情報である。
【0044】
また、テストピース記憶部6aには、テストピースPの種類とサイズとこれらに応じて検出部3が出力すべき検出出力との対応関係を示す対応情報が記憶されており、この対応情報は、動作確認モードにおいて、検出部3が正しく動作するか否かを判定する際に参照される。
【0045】
テストピース判定部6bは、異物検査稼働中に順次搬送されてくる被検査物Wに対してテストピースIDの有無によって被検査物Wが製品であるかテストピースPであるかを判定し、判定結果を表示部7に表示させるとともに、判定結果に基づいて通常の異物検出モードと動作確認モードとの間での動作モードの切り替えを行うようになっている。
【0046】
また、テストピース判定部6bは、テストピースPを使用して検出部3が正しく動作するか否かを判定したり、テストピースPに設けられたテストピースIDに基づいて、そのテストピースPが、用いるべき規定のテストピースPとして設定部4を介して予め定められたものであるか否かを判定し、判定結果を表示部7に表示させるようになっている。
【0047】
具体的には、テストピース判定部6bは、通常の異物検出モードを実行中に、テストピース情報取得部8と照合部6cによりテストピースPに設けられたテストピース情報の読取りおよびテストピース情報内のテストピースIDの照合がなされ、テストピースPが搬送されていることが確認されたときに、通常の異物検出モードから動作確認モードに動作モードを切り替えてテストピースPを用いた動作確認処理を行うとともに、動作確認処理の結果と、読取ったテストピース情報を表示部7に表示させるようになっている。動作確認処理では、検出部3の検出出力がテストピースPの種類やサイズに応じた検出出力と一致するか否か(または許容範囲に収まっているか否か)に基づいて、検出部3が正しく動作するか否かが判定されるようになっている。
【0048】
また、テストピース判定部6bは、テストピースPから読取った基本的なテストピース情報に含まれるテストピースIDと一致するテストピースIDを有する詳細なテストピース情報をテストピース記憶部6aから抽出して、テストピースPから読取った基本的なテストピース情報とともに表示部7に表示させるようになっている。
【0049】
なお、テストピースPから取得した基本的なテストピース情報に対応する詳細なテストピース情報がテストピース記憶部6aに記憶されていない場合は、テストピース判定部6bは、テストピースPから取得した基本的なテストピース情報のみを表示部7に表示させるようになっている。
【0050】
また、照合部6cは、テストピースPから読取った基本的なテストピース情報に含まれるテストピースIDに基づいて、動作確認処理に用いるテストピースPが設定部4により予め設定された既定のテストピースPと一致するか否かを照合するようになっている。テストピース判定部6bは、照合部6cの照合結果を表示部7に表示させるようになっている。
【0051】
表示部7は、例えば液晶表示器等により構成され、設定部4で被検査物Wの品種の設定が行われるときの設定値、動作モードの切り替えに関する設定値の他、設定部4により設定される指示値、各種判定結果等、種々の表示を行い、これらの内容を報知するようになっている。
【0052】
表示部7には、例えば、図4(b)に示すように、管理番号が"No.0001"で、品名が"チョコレート"である被検査物Wに対して通常の異物検出モードを実行しているときに、テストピースPを検出し、そのテストピースPの種類が"Fe(鉄)"であり、サイズが"直径2.0mm"であるといった情報が表示される。また、表示部7には、例えば、図4(c)に示すように、テストピースPが搬送部2上に斜めに載置され、テストピースIDのみが取得できた場合に、"テストピースP検出"、"材質・サイズ不明"、"テストピースが斜めになっています"と表示されるようになっている。なお、"テストピースが斜めになっています"との表示は、実際にテストピースPが搬送部2上に斜めに載置されていることを検出した結果に基づいたものではなく、テストピースIDのみが取得できたという結果に対して、その原因となり得る状態を報知するものである。
【0053】
テストピース情報取得部8は、図4(a)に示すように、搬送部2上の被検査物Wの通過を検出する通過検出手段としても供される投光器8aおよび受光器8bにより構成され、テストピースPの情報記録部13を読取ってテストピースPの試験用異物片11の種類、サイズ等を示すテストピース情報を取得するようになっている。
【0054】
すなわち、本実施の形態においては、通過検出手段として従来から異物検出装置1が備えていた投光器8aおよび受光器8bを、通過検出手段としてだけでなく読取り手段としてのテストピース情報取得部8として用いるようになっている。
【0055】
照合部6cは、動作確認時に用いるべきテストピースPが既定のテストピースとして予め設定されているときに、テストピース情報取得部8がテストピースPから取得したテストピース情報と、テストピース記憶部6aに記憶された既定のテストピースのテストピース情報とを照合するようになっている。
【0056】
図5は、本発明の実施の形態に係るテストピースの斜視図である。また、図6(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るテストピースの側面図である。また、図7(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るテストピースの他の例を示す側面図である。また、図8(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るテストピースの斜視図である。また、図9(a)は、本発明の実施の形態に係るテストピースの斜視図であり、(b)、(d)は下面図であり、(c)、(e)は側面図である。
【0057】
図5、図6に示すように、テストピースPは、樹脂材料からなる直方体形状の収納部材12に1つの試験用異物片11を収納したものである。収納部材12の上面には凹部が形成されており、試験用異物片11はこの凹部に収納されるようになっている。この凹部は、試験用異物片11を収納した状態でシール部材14により閉じられている。
【0058】
テストピースPの収納部材12に収納される試験用異物片11としては、例えば、図6(a)に示すように直径3.0mmのステンレス球を用いたり、図6(b)に示すように、直径2.0mmの鉄球を用いるようになっている。試験用異物片11としては、様々な種類とサイズのものが用いられる。
【0059】
テストピースPの収納部材12の一方または両方の側面の下端部には、テストピースID、種別、サイズ、パリティ等からなるテストピース情報が記録された情報記録部13が形成されている。情報記録部13は、光を透過する透過部13aと、光を透過しない非透過部13bとから構成されており、投光器8aと受光器8bとからなるテストピース情報取得部8によって光学的に読取られるようになっている。テストピースPは、情報記録部13が形成された側面が投光器8aと受光器8bとの間の光束と直交するように搬送部2上に載置される。換言すると、テストピースPは、情報記録部13が形成された側面が搬送部2の搬送方向と直行する方向を向くように搬送部2上に載置される。
【0060】
テストピースPの収納部材12が、光を透過しない材料から構成されている場合、情報記録部13の透過部13aは、収納部材12の両側面を貫通する切欠きとして構成し、テストピースPの収納部材12が、透明樹脂等、光を透過する材料から構成されている場合は、情報記録部13は、収納部材12の一方または両方の側面に非透過部13bとして着色等したものから構成することができる。
【0061】
ここで、情報記録部13のテストピースIDとは、被検査物WがテストピースPであることを識別したり、あるテストピースPと他のテストピースPとを識別するための情報であり、種別とは、試験用異物片11の材質(鉄、ステンレス等)を表す情報であり、サイズとは、試験用異物片11の大きさ(直径2.0mm、3.0mm等)を表す情報であり、パリティとは、これらテストピースID、種別、サイズの情報が正確に読取れるように誤り訂正を行うための情報である。
【0062】
なお、これらテストピースID、種別、サイズ、パリティのテストピース情報のうち、テストピースIDに対応する透過部13aおよび非透過部13bは、種別、サイズ、パリティにそれぞれ対応する透過部13aおよび非透過部13bよりも大きく形成されている。このため、テストピースIDに対応する透過部13aおよび非透過部13bが、テストピース情報取得部8によって確実に読取られる。
【0063】
図7(a)に示すように、テストピースPの識別情報部13は、収納部材12の一方または両方の側面の下端に限らず、収納部材12の一方または両方の側面の下端から所定距離だけ上方に形成してもよい。情報記録部13の位置は、テストピース情報取得部8の光束の通る位置と一致するよう適宜決定するのが好ましい。
【0064】
図7(b)に示すように、テストピースPは、試験用異物片11を収納した収納部材12と、必要に応じて収納部材12に接続され、情報記録部13が形成された接続部材としてのアダプタ15とから構成してもよい。
【0065】
このように、収納部材12にアダプタ15を接続するように構成した場合、情報記録部13が形成されていない従来の収納部材12に対しても、情報記録部13を付加することができる。
【0066】
この場合、アダプタ15が収納部材12よりも大きいものであっても取り扱い上不都合がなく、アダプタ15のサイズを大きいものにすることができるため、情報記録部13を形成できる領域が大きく、より多くの情報を情報記録部13として形成することができる。
【0067】
また、アダプタ15のサイズが大きい場合、情報記録部13の透過部13aおよび非透過部13bの大きさを拡大することができるため、情報記録部13をテストピース情報取得部8の投光器8aと受光器8bにより正確に読取ることができる。
【0068】
図8(a)に示すように、テストピースPの収納部材12が透明樹脂等、光を透過する材料から構成されている場合は、テストピースPは、収納部材12の一方の側面に、情報記録部13が形成された板部材16を接着等の手段により固定したものから構成することができる。なお、テストピースPの収納部材12の一方の側面に板部材16を固定する場合、板部材16は、粘着剤が塗布されたシート状のものであってもよい。
【0069】
また、図8(b)に示すように、テストピースPの収納部材12が透明樹脂等、光を透過する材料から構成されている場合は、テストピースPは、収納部材12内の側面と平行な面に、情報記録部13が形成された板部材16を固定したものから構成することができる。
【0070】
図9(a)〜(e)に示すように、テストピースPは、収納部材12を中空構造の樹脂により構成し、サイズの異なる複数の試験用異物片11が固定されたシート17を、収納部材12内に収納したものから構成してもよい。
【0071】
図9(a)〜(e)に示すテストピースPの収納部材12は、収納部材12を樹脂により構成し、収納部材12を構成する樹脂の量を減らして収納部材12によるX線透過量の減衰を避けるよう中空構造にすることにより、異物検出装置1の検出部3がX線検出部3Aから構成されている場合に、収納部材12によりX線透過量が減衰して試験用異物片11の検出に影響を与えることを防止できる。
【0072】
なお、図9(a)は、中空構造の収納部材12の内部に試験用異物片11が収納された状態を説明するため、収納部材12の図面手前側の側面を取り外した状態を示している。また、複数の試験用異物片11が固定されたシート17は、図9(a)のように、収納部材12の1つの側面が取り外された状態で、収納部材12の側面の内壁に形成された溝にスライドして装着されるようになっている。
【0073】
また、テストピースPの情報記録部13は、図9(a)、(b)、(c)に示すように、収納部材12の一方の側面の下部に形成したり、図9(d)、(e)に示すように、収納部材12内の側面と平行な面の下部に形成してもよい。
【0074】
図9(a)〜(e)に示すテストピースPは、直径2.0mm、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mmの6つの金属球(例えば、アルミニウム球)を、大きさの異なる複数の試験用異物片11として所定間隔おきに一列に並べてシート17上に固定した例を示している。
【0075】
なお、テストピースPの収納部材12は、中空構造とすることに限定されるものではなく、収納部材12によるX線透過量の減衰を避けるために、可能な限り肉薄に成型して収納部材12を構成する樹脂の量を減らした構成としてもよい。
【0076】
次に、テストピースPを用いた異物検出装置1の動作について説明する。
【0077】
以下、被検査物Wを検査する通常モードを実行中にテストピースPを搬送部2上で搬送したときについて説明する。
【0078】
まず、設定部4にて被検査物Wの品種が設定され、この設定された品種の被検査物Wが搬送部2によって搬送されて検出部3により検査が行われている状態(通常の異物検出モード)では、異物判定部5は、検出部3の検出出力に基づいて被検査物Wの中に異物が含まれているか否かを判定し、判定結果を表示部7に表示させる。
【0079】
そして、テストピース情報取得部8が図4(a)に示すように被検査物Wとともに搬送されるテストピースPからテストピースID(テストピース情報に含まれる)を読取ると、テストピース判定部6bは、動作モードを通常の異物検出モードから検出部3の動作確認を行う動作確認モードに切り替える。すなわち、テストピース判定部6bは、異物検査稼働中に順次搬送されてくる被検査物Wに対し、テストピースIDの有無によって被検査物Wが製品であるかテストピースPであるかを判定する。
【0080】
テストピース判定部6bは、動作確認モードへ切替設定がなされると、テストピースPから読取ったテストピース情報を、図7(b)、(c)に例示した態様で表示部7に表示する。さらに、テストピース判定部6bは、テストピースPから読取った基本的なテストピース情報とテストピースIDが一致する詳細なテストピース情報がテストピース記憶部6aに記憶されていた場合は、テストピース記憶部6aに記憶されている詳細なテストピース情報を抽出し、表示部7に表示させる。このため、利用者は、動作確認に用いたテストピースPが所望のものであったか否かを確認することができる。
【0081】
次いで、テストピース判定部6bは、動作確認処理用に使用すべき既定のテストピースPが予め定められていた場合、すなわち、既定のテストピースPを用いることが設定部4により設定されるとともに、既定のテストピースのテストピースID、種類、サイズ等がテストピース記憶部6aに記憶されていた場合に、使用されたテストピースPが予め定められた規定のテストピースPと一致するか否かを判定し、判定結果を表示部7により"既定のテストピースです"または"既定のテストピースではありません"等のように表示させる。このため、利用者は、使用すべき規定のテストピースPが動作確認に実際に用いられたか否かを知ることができる。
【0082】
次いで、テストピース判定部6bは、テストピースPを対象とした検出部3の検出出力が、テストピース情報の"種別"、"サイズ"に応じた検出出力と一致するか否か(または許容範囲内に収まっているか否か)を、テストピース記憶部6aに予め記憶されたテストピースPの種類、サイズと検出出力の関係を示す対応情報を参照して判定し、判定結果を表示部7に表示させる。このため、利用者は、検出部3が正しく動作するか否かを確認することができる。
【0083】
次いで、テストピース判定部6bは、動作確認モードによる上記の動作確認処理が終了すると、動作確認モードから通常の異物検出モードに復帰するように動作モードを切り替える。
【0084】
上記の処理は、テストピース情報取得部8が被検査物Wとともに搬送されたテストピースPからテストピース情報を取得する毎に行われる。
【0085】
なお、テストピース記憶部6aは、テストピース判定部6bの判定結果に基づく被検査物Wの品種毎の判定結果を含む一連の動作確認履歴を記憶するようにしてもよい。この場合、テストピース記憶部6aに記憶された動作確認履歴は、設定部4からの指示により、例えばプリンタによる印刷出力をしたり、各種外部記憶媒体または外部端末装置に転送することができ、動作確認終了後であっても、判定結果を含む一連の動作内容を確認することができ、品質記録として品質管理に役立てることができる。
【0086】
以上のように、本実施の形態に係るテストピースPは、試験用異物片11と、試験用異物片11を収納する収納部材12と、を備え、収納部材12が、試験用異物片11を識別する識別情報としてのテストピースIDを少なくとも含み光学的に読取り可能な情報であるテストピース情報が記録された情報記録部13を有する。
【0087】
このため、このテストピースPを用いた異物検出装置1は、異物検出装置1が標準的に備える光学式の通過センサである投光器8aおよび受光器8bにより、テストピースPの情報記録部13に記録されたテストピースIDを読取り、読取ったテストピースIDによりテストピースPに収納された試験用異物片11の識別をすることができるため、テストピースPと製品との間の誤認を防止したり、種々のテストピースPの中から既定のテストピースPを用いたか否かを判定することができ、動作確認の信頼性を高めることができる。
【0088】
また、光学式の通過センサにより試験用異物片11を識別して自動的に異物検出モードから動作確認モードに切り替わるため、製品とテストピースPが混在して搬送部2上を順次搬送されても、検査個数、良品数、不良品数(異物混入個数)などの統計からテストピースPの数を除外することができ、製品のみについての正しい統計を行うことができる。
【0089】
また、本実施の形態に係るテストピースPは、収納部材12に接続されるアダプタ15(接続部材)を備え、アダプタ15に情報記録部13が設けられている。
【0090】
このため、収納部材12に情報記録部13が設けられていない場合や情報記録部13を設けるのが困難な場合であっても、情報記録部13を有するアダプタ15を収納部材12に接続することによって、テストピースPに収納された試験用異物片11の識別をすることができる。
【0091】
また、本実施の形態に係るテストピースPは、情報記録部13が、光を透過する透過部13aと、光を透過しない非透過部13bとを有する。
【0092】
このため、透過部13aおよび非透過部13bは、切欠き、塗装、貼り付け等の簡単な方法により作成することができ、また、電気的に情報の記録および読取りをする構成よりも故障する恐れが少ないので、製造コストが低く、耐久性を有するテストピースPを提供することができる。
【0093】
本実施の形態に係るテストピースPは、テストピースIDに対応する透過部13aおよび非透過部13bが、テストピースID以外の情報(種別、サイズ、パリティ)に対応する透過部13aおよび非透過部13bよりも大きく形成されたことを特徴とする。
【0094】
このため、テストピースIDに対応する透過部13aおよび非透過部13bが、光学的に確実に読取られる。
【0095】
また、本実施の形態に係るテストピースPは、収納部材12が、中空構造を有する樹脂材料からなる。
【0096】
このため、X線により異物を検出する異物検出装置1にテストピースPを用いた場合でも、中空構造を有する樹脂材料からなる収納部材12はX線を透過して試験用異物片11の検出に影響を与えないので、精度の高い動作確認を行うことができる。
【0097】
また、本実施の形態に係る異物検出装置1は、搬送部2上を搬送される被検査物Wの中に混入した異物を検出する異物検出装置1において、テストピースPからテストピースIDを光学的に読取るテストピース情報取得部8と、テストピース情報取得部8が読取ったテストピースIDに基づいてテストピースPの識別を行う動作確認処理部6と、動作確認処理部6の識別結果を報知する表示部7とを備えている。
【0098】
このため、異物検出装置1が通常備える光学式の通過センサである投光器8aおよび受光器8bをテストピース情報取得部8として用いて、テストピースPからテストピースIDを読取り、このテストピースIDに基づいてテストピースPを識別した結果を報知するので、報知内容を参照することにより、テストピースPと製品との間の誤認の有無や、種々のテストピースPの中から既定のテストピースPを用いたか否かを知ることができ、動作確認の信頼性を高めることができる。
【0099】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、本発明に係る異物検出装置およびテストピースは、動作確認を正確に行うことができるという効果を有し、生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物中に混入した異物を検出する異物検出装置およびテストピースとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態に係る異物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る異物検出装置の検出部が金属検出部として構成された例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る異物検出装置の検出部がX線検出部として構成された例を示すブロック図である。
【図4】(a)は、本発明の実施の形態に係る異物検出装置の搬送部を示す上面図であり、(b)、(c)は、表示部の表示例である。
【図5】本発明の実施の形態に係るテストピースの斜視図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るテストピースの側面図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るテストピースの他の例を示す側面図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るテストピースの斜視図である。
【図9】(a)は、本発明の実施の形態に係るテストピースの斜視図であり、(b)、(d)は下面図であり、(c)、(e)は側面図である。
【符号の説明】
【0102】
1 異物検出装置
2 搬送部(搬送ライン)
3 検出部
3A X線検出部
3B 金属検出部
4 設定部
5 異物判定部
6 動作確認処理部(識別手段)
6a テストピース記憶部
6b テストピース判定部
6c 照合部
7 表示部(報知手段)
8 テストピース情報取得部(読取り手段)
8a 投光器
8b 受光器
11 試験用異物片
12 収納部材
13 情報記録部
13a 透過部
13b 非透過部
14 シール部材
15 アダプタ(接続部材)
16 板部材
17 シート
21 X線発生器
22 X線検出器
31 信号発生器
32 送信コイル
33a、33b 受信コイル
34 検波部
P テストピース
W 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験用異物片(11)と、
前記試験用異物片を収納する収納部材(12)と、を備え、
前記収納部材(12)が、前記試験用異物片(11)を識別する識別情報を少なくとも含み光学的に読取り可能な情報が記録された情報記録部(13)を有することを特徴とするテストピース。
【請求項2】
前記収納部材に接続される接続部材(15)を備え、
前記接続部材に前記情報記録部(13)が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のテストピース。
【請求項3】
前記情報記録部(13)が、光を透過する透過部(13a)と、光を透過しない非透過部(13b)とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のテストピース。
【請求項4】
前記識別情報に対応する透過部(13a)および非透過部(13b)が、前記識別情報以外の情報に対応する透過部(13a)および非透過部(13b)よりも大きく形成されたことを特徴とする請求項3に記載のテストピース。
【請求項5】
前記収納部材(12)が、中空構造を有する樹脂材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のテストピース。
【請求項6】
搬送ライン(2)上を搬送される被検査物(W)の中に混入した異物を検出する異物検出装置(1)において、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のテストピースから前記識別情報を光学的に読取る読取り手段(8)と、
前記読取り手段(8)が読取った識別情報に基づいて前記テストピースの識別を行う識別手段(6)と、
前記識別手段(6)の識別結果を報知する報知手段(7)とを備えたことを特徴とする異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−107357(P2010−107357A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279688(P2008−279688)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】