テネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)並びにこれらに関連する方法および使用
本発明は、生物学的に活性な神経ペプチドの新規のファミリーおよび前述のものをコードする核酸分子を提供する。ペプチドは、テネウリンファミリーペプチド(Ten M1〜4)のC末端に由来する。テネウリンC末端の関連ペプチド(TCAP)と称されるこれらの新規のペプチドは、ニューロン連絡の際に活性であり、多くの神経病理に関係する。これらは、特にストレス応答および不安の調整に、並びに癌の治療に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年5月3日に出願された表題「テネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)」の米国仮特許出願第60/377,231号および2002年11月6日に出願された表題「テネウリンC末端関連ペプチド1(TCAP-1)を使用するストレスを調節するための方法」の米国仮特許出願第60/42,4016号の恩典および優先権を主張する。また、本出願は、2002年5月2日に出願された、表題「視床下部の不死化ニューロン細胞株」の米国仮特許出願第60/376,879号の優先権を主張する。これらの参照の全ては、参照としてその全体が組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明はテネウリン(teneurin)分子のC末端領域と関係したペプチドの新規ファミリー、該ペプチドをコードする核酸分子、並びにこれらに関連する方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
あらゆる神経病理における病因は、遺伝的、生理学的、および環境的因子の複雑な相互作用による。これらの症状の有効な治療は、最終的には、同族の遺伝子およびこれらの産物の理解に依存する。近年、関連した遺伝子の大規模なファミリーが不安原性(anxiogenic)ペプチドを含む神経病理における調節に関与していることが明らかになった。これらの遺伝子ファミリーおよびこれらが相互作用する方法の同定および特徴付けは、最終的に病体を効率的に治療することに向けて必須の工程である。ニューロン増殖の調節異常は、年齢によって、種々の病的状態として現れ得る。胎児または新生児の動物におけるニューロン増殖の欠陥は、学習欠陥、精神遅滞、自閉症、または分裂病などの疾患を引き起こし得る。若年の個体の後半の年齢では、成人後半に恐慌性障害、欝病、拒食症、強迫神経障害などの情動障害が現れる可能性がある。成体において、このようなニューロン増殖の問題は、アルツハイマー病またはパーキンソン病などの神経変性疾病に至る可能性がある。
【0004】
鬱病または心的外傷後ストレス精神障害などの気分障害の発症は、感情性、記憶、および意欲を調節する脳の多くの座位における機能変化が関与する(Manjiら、2001;Drevets, 2001;Nestlerら、2002)。しかし、これらの領域内および領域間の連絡を介する細胞シグナリング分子の多くは知られておらず、このような障害の原因の完全な理解には至っていない。
【0005】
多くの神経ペプチドは、ニューロペプチドY(NPY)(Larhammar、1996a、b)、プロオピオメラノコルチン(POMC)(Danielson、2000)、および最近のコルチコトロピン放出因子(コルチコトロピン放出因子)ファミリー(Valeら、1981、Vaughanら、1995;LovejoyおよびBalment, 1999; Lewisら、2001 Reyesら、2001;HsuおよびHseuh, 2001)によって証明されたように、3つまたは4つのパラロガスな構造が存在することを示す。
【0006】
主に、神経系に発現するニューロン細胞表面タンパク質ファミリーが同定された。これらのタンパク質は、テネウリン(teneurin)と名づけられた(Rubinら、Developmental Biology 216, 195-209 (1999))。4つの基本的テネウリンのTen M1、Ten M2、Ten M3、およびTen M4が同定された。Ten-MまたはOdzタンパク質は、当初ショウジョウバエ(Drosophilia)において発見され(Levineら、1994; Baumgartnerら、1994)、転写制御因子でないペアルール遺伝子の現在唯一知られた例である。Ten-M遺伝子は、初めに胚盤葉段階の間に活性化され、次いで、後期段階で発現される前に下方制御される。中枢神経系においてTen-Mが最も高レベルに生じ、ここではタンパク質が軸索の表面上に優先して生じる(Levineら、1994; Levineら、1997)。Ten-M/Odz遺伝子の突然変異は、胚性致死となる(Baumgartnerら、1994; Levineら、1994)。
【0007】
テネウリンと呼ばれている4つのTen-Mのパラロガス遺伝子が脊椎動物に存在し、タンパク質のカルボキシ末端が細胞の細胞外表面に示されるタイプII膜貫通タンパク質をコードする(Oohashiら、1999)。テネウリンタンパク質は、約2800の長さのアミノ酸である。アミノ末端の後ろの300〜400アミノ酸において疎水性残基の短い配列があり、膜にまたがる部位として作用するものと思われる。細胞質のN末端部分には、保存されたプロリンリッチなSH3結合部位があり、これらがその他のタンパク質に結合する場合の潜在的な部位を示す。このタンパク質は、テネウリン2の残基528の周辺に位置するフリン(Furin)様の切断モチーフ(RERR)で膜から切断されるであろうことを証拠が示唆する(Rubinら、1999)。しかし、このモチーフは、その他のパラログには存在せず、したがって、タンパク質の可溶型が全てのパラログについて生じ得るというわけではない。一連のシステインリッチなEGF様の反複カルボキシ末端が、これには存在する。ホモ二量体化は、EGF様のモジュール2および5(Oohashiら、1999)の間の相互作用を介してTen M1形態間で生じる。
【0008】
Ten-M遺伝子は、ストレスによって上方制御されるものと思われる。 Wangら、(1998)は、DOC4(downstream of chop)と名付けられた哺乳類細胞のTen-M様の転写産物が、転写制御因子GADD153/CHOPによって上方制御されることを示した。この転写制御因子は、紫外光、アルキル化剤、または小胞体(ER)ストレス応答を引き起こす条件(酸素の欠乏、グルコースもしくはアミノ酸、またはER膜を超えるカルシウム流入の妨害など)を含む細胞ストレスのいくつかのタイプによって誘導される(Zinsznerら、1998)。GADD153は、転写制御因子のC/EBPファミリーのメンバーと共に二量体化する小さな核タンパク質である(RonおよびHabener, 1992)。これは、ホモ二量体化しないと思われる。GADD153は、p38型MAPキナーゼによってストレス誘導性のリン酸化を受け、これはまた、GADD153の転写活性化を増強する(Wangら、1996)。GADD153の高発現は、細胞周期の停止を引き起こすと考えられる(Zhanら、1994)。これらの研究は、テネウリン遺伝子がニューロンおよびその他の細胞のストレス応答の調節において有意な役割を果たすであろうことを示唆する。
【0009】
マウス神経芽腫細胞(Nb2a)内でのテネウリン2の過剰発現により、神経突起成長の量が増大し、成長円錐が拡大する傾向があった。また、テネウリン2を過剰発現する細胞において、フィラメントアクチンを含有する糸状偽足の数が増強された(Rubinら、1999)。テネウリン遺伝子の発現を胎児のゼブラフィッシュ(Miedaら、1999)、ニワトリ(Rubinら、1999)、およびマウス(Ben-Zurら、2000)において検査したが、これらの発現パターンは微細に解決されなかった。転写産物は、多くの末梢組織で見出されるが、主に中枢神経系において見出される。胎生期のニワトリ脳において、テネウリン1および2は、網膜、終脳、視蓋、および間脳に発現される。テネウリン1のmRNAは、主に背側視床の中間帯に見出されたが、テネウリン2は、視床の中間帯に見出された(Rubinら、1999)。ゼブラフィッシュでは、テネウリン4は、原腸形成の全体にわたってわずかに発現されるが、テネウリン3の発現はない。テネウリン3の発現は、終末芽段階のあたりで脊索および体節において開始する。後期段階(受精の14時間後)では、テネウリン3は、体節、脊索、および脳において発現されるが、テネウリン4の発現は、脳に限定される。テネウリン3は、眼胞並びに尾側間脳および中脳をカバーする領域内に限定され、前中脳において最も強く発現する。テネウリン4は、中脳後脳辺縁の方でその最も強い発現をもたらす。受精23時間後までに、テネウリン3は、蓋原基の背側の一部および腹側中脳に発現されるが、テネウリン4は、腹側原基に発現される(Miedaら、1999)。
【0010】
神経病理学的な症状は、複雑でよく理解されていない傾向がある。従って、関係する機構をよく理解し、該症状の診断および治療の方法を開発する必要がある。また、該症状のための治療的な化合物を同定および設計する必要がある。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、Ten-M1、2、3、または4のC末端エキソンの40〜41残基の配列として存在し、対応してTCAP1、2、3、および4と名付けられたテネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)を提供する。別の態様において、本発明は、類似体、種相同体、誘導体、変異体、対立遺伝子変異体のために、これらと実質的に配列同一性を有する配列のために、およびこれらと明らかに化学的に相当するもののために、テネウリン1〜4ペプチドのC末端に位置する40または41アミノ酸の配列からなるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。別の態様において、本発明のTCAPペプチドは、カルボキシ末端にアミド化シグナル配列をさらに含むことができる(以下に「preTCAP」と称する)。このようなアミド化シグナルのアミノ酸配列は、GKRおよびGRRを含むことができるが、これらに限定されない。また、本発明は、標識TCAPペプチドのために、および1〜10のアミノ酸の隣接するアミノ酸配列を含むペプチドのための、上記のTCAPペプチドを含む融合タンパク質を提供する。
【0012】
1つの態様において、本発明は、ニューロン連絡活性(neuronal communication activity)を有するTCAPペプチドを提供する。別の態様において、本発明は、TCAPペプチド、同様の活性を有する類似体、誘導体、変異体、相同体を提供する。1つの態様において、活性はニューロン連絡である。別の態様において、活性は細胞増殖の阻害であり、さらに別の態様において、活性はストレス応答の調整である。
【0013】
1つの態様において、TCAP配列は、ニジマス、ゼブラフィッシュ、ヒト、マウス、ニワトリ(G.gallus)、またはキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)のTCAPである。別の態様において、TCAP配列は、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103を含むか、またはからなり、さらに別の態様において、TCAPは、マウスまたはヒトTCAPである。1つの態様において、TCAPは、配列番号:69、70、77、78、85、86、93、94(ヒト)または配列番号:37、38、45、46、53、54、61、62(マウス)からなる群より選択される配列のうちの1つを有する。
【0014】
1つの局面において、本発明は、上記の配列番号のいずれか1つおよびカルボキシ末端のアミド化シグナル配列からなるTCAPを提供する。好ましくは、アミド化シグナル配列は、15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96などの、GRRまたはGKRからなる群より選択される。
【0015】
本発明の別の態様は、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103に示したとおりのアミノ酸配列を有する単離されたテネウリンC末端関連ペプチド;または、その断片、類似体、相同体、誘導体、もしくは模倣体に関する。好ましい態様において、本発明のTCAPペプチドは、不安原性活性を有する。また、本発明は、本発明のTCAPペプチドに結合することができる抗体を含む。
【0016】
別の態様において、本発明のペプチドは、配列番号:37、38、45、46、53、54、61、62のアミノ酸配列を有するTCAPマウスペプチドである。
【0017】
別の態様において、本発明のペプチドは、配列番号:69、70、77、78、85、86、93、または94のアミノ酸配列を有するTCAPヒトペプチドである。
【0018】
別の態様において、ペプチドのTCAPヒトおよびマウスのペプチドは、C末端にアミド化シグナル配列を有する。
【0019】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-1であり、配列番号:37、38、69、または70のアミノ酸配列を有する。
【0020】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-2であり、配列番号:46、47、77、または78のアミノ酸配列を有する。
【0021】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-3であり、以下のアミノ酸配列モチーフを有する:
配列中、Xaa1は、G、S、またはAであり;Xaa2は、GまたはRであり;Xaa3は、LまたはQであり;Xaa4およびXaa5は、独立してVまたはIである。別の態様において、TCAP-3は、ヒトまたはマウスTCAP-3である。別の態様において、TCAP-3は、配列番号:85、86、53、または54を有する。別の態様において、TCAP-3配列は、配列番号:13、14、21、または22である。
【0022】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-4であり、配列番号:29、30、61、62、93、または94のアミノ酸配列を有する。
【0023】
別の態様において、ペプチドTCAP1〜TCAP4は、C末端にアミド化シグナル配列を有する。
【0024】
さらに別の態様において、本明細書に述べたとおり、本発明は、本発明のテネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)をコードする単離された核酸分子を提供する。さらに別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、以下からなる:
(a)配列番号:18〜20、25〜28、33〜36、41〜44、49〜52、57〜60、65〜68、73〜76、81〜84、89〜92、97〜100に示される核酸配列、またはTがUであってもよいその核酸配列、または、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチド、もしくは該ペプチドのカルボキシ末端にアミド化シグナル配列(好ましくはGKRまたはGRR)をさらに有するペプチド、もしくは配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96を有するペプチドをコードする核酸配列;
(b)核酸配列(a)に相補的な核酸配列;
(c)核酸配列(a)、または(b)に実質的な配列相同性を有する核酸配列;
(d)核酸配列(a)、(b)、または(c)の類似体である核酸配列;あるいは
(e)核酸配列(a)、(b)、(c)、または(d)に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列。
【0025】
好ましい態様において、本発明の核酸分子は、不安原性活性を有するテネウリンC末端関連ペプチドをコードする。
【0026】
また、本発明は、本発明の核酸分子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、並びに本発明の核酸配列を含む発現ベクターおよび上述した発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を包含する。
【0027】
本発明のさらなる局面は、テネウリンC末端関連ペプチドと結合することができる物質を同定する方法であって、テネウリンC末端関連ペプチドと試験物質との間で複合体を形成させる条件下で、テネウリンC末端関連ペプチドおよび試験物質をインキュベートする工程、並びにテネウリンC末端関連ペプチドと試験物質の複合体について、遊離の物質について、または複合体化されていないテネウリンC末端関連ペプチドについてアッセイする工程を含み、複合体の存在によって、試験物質がテネウリンC末端関連ペプチドに結合できることが示される方法に関する。
【0028】
また、本発明は、ニューロン増殖の調節に影響を及ぼす化合物を同定するための方法であって、テネウリンC末端関連ペプチド、またはテネウリンC末端関連ペプチドをコードする核酸と試験化合物とをインキュベートする工程、およびテネウリンC末端関連ペプチドタンパク質の活性または発現の量を決定し、対照と比較する工程を含み、対照と比較したTCAPペプチドの活性または発現の変化によって、試験化合物がニューロン増殖の調節に対して効果を有することが示される方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、細胞増殖を阻害する方法であって、細胞増殖を阻害するテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を細胞に投与する工程を含む方法を提供する。好ましい態様において、阻害される細胞は、ニューロンまたは線維芽細胞からなる群より選択される。
【0030】
本発明の別の局面は、ニューロン増殖の調節異常に関連する症状を検出する方法であって、テネウリンC末端関連ペプチドもしくはその断片をコードする核酸分子、またはテネウリンC末端関連ペプチドもしくはその断片に対して試料をアッセイする工程を含む方法に関する。
【0031】
また、本発明は、ニューロン増殖の調節異常に関連した症状、たとえば癌を治療する方法であって、それを必要とする細胞または動物に、テネウリンC末端関連ペプチドまたはテネウリンC末端関連ペプチドの発現および/もしくは活性を調整する薬剤の有効量を投与する工程を含む方法に関する。
【0032】
TCAP-1配列を含むテネウリン1のmRNAは、ストレス応答および不安を調節する前脳および辺縁系の領域に発現される。TCAPは、不死化ニューロンにおいて、細胞周期および増殖を修飾する特異的なcAMP依存的なGタンパク質結合受容体を介してシグナルを伝える。ラットの側脳室または扁桃体への合成TCAP-1の投与により、聴覚の驚愕反応が正常化した。したがって、これらのペプチドは、神経のストレス応答において不可欠な部分であると思われ、一部の精神医学的疾患の病因において役割を担っている可能性がある。
【0033】
別の態様において、本発明は、動物の、好ましくは哺乳類、好ましくはヒトのストレス応答を調整する方法であって、該動物のストレス応答を調整するために、該動物に対して、TCAP、好ましくはTCAP-1ペプチド、該ペプチドをインサイチューで発現することができる形態の該TCAPペプチドをコードする核酸分子、またはTCAPの発現もしくは活性のアンタゴニストまたはアゴニストの有効量を投与することによる方法を提供する。1つの態様において、ストレス応答は、不安反応である。
【0034】
別の態様において、本発明は、動物のストレスまたは不安反応を正常化するための方法を提供する。別の態様において、本発明は、低不安動物において不安原性反応を誘導するための、および高不安動物において抗不安作用を誘導するための方法を提供する。
【0035】
別の態様において、本発明は、動物のTCAP発現の効果を調整することによって動物のストレス応答を調整する方法であって、該動物に対して該TCAP発現または活性のモジュレーターを投与することによる方法を提供する。1つの態様において、該モジュレーターは、TCAPの発現および/または活性の阻害剤であり、別の態様において、該モジュレーターは、TCAP発現または活性のアンタゴニストである。1つの態様において、該TCAPは、TCAP-1である。
【0036】
さらに別の態様において、本発明は、高い、正常な、または低いストレス応答症状を有する動物を診断する方法であって、該動物に対してTCAP-1などのTCAPを投与して、動物のストレス応答に対して抗不安、不安原性、または中和効果がもたらされるかどうかをモニタリングすることによる方法を提供する。
【0037】
本発明のその他の局面は、対象に不安原性反応を誘導する方法、生理的ストレスによって引き起こされる損傷を阻止する方法、および細胞死を阻害する方法であって、それぞれ、所望の結果をもたらすために、対象に対してテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を投与する工程を含む方法に関する。
【0038】
本発明のその他の特徴および効果は、以下の詳細な説明から明らかになると考えられる。しかし、本発明の趣旨および範囲内での種々の改変および変更態様は、この詳細な説明から当業者には明らかとなるため、本発明の好ましい態様を示す詳細な説明および具体例は、例示することのみを目的として与えられることが理解されるべきである。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明者らは、Ten Mタンパク質またはテネウリンとしてすでに同定されたタンパク質よりも大きなタンパク質の一部として存在する新規のペプチド配列を同定した。新規のペプチドは、テネウリンC末端ペプチドまたはTCAPと称する。いくつかの脊椎動物および無脊椎動物の種のゲノムまたは遺伝子転写物を相同的なプローブハイブリダイゼーションによって、またはPCRによってスクリーニングした。ゲノムシーケンシングプログラムからの配列データにより、ヒトおよびマウスのこのファミリーから4つのパラロガスなペプチド、ゼブラフィッシュから2つのパラロガスなペプチド、ニジマスおよびショウジョウバエから1つの補完的役割をするペプチド(配列番号:103)を同定することができた。合成TCAPペプチドは、ニューロンの連絡活性を有し、動物のストレス応答および不安のモジュレーターであることが示された。また、TCAPは、細胞増殖を調整する。1つの態様において、これは、細胞増殖を阻害することができる。別の態様において、TCAPは、ラットにおいて強力な不安原性ペプチドであり、ストレスのない細胞のニューロン増殖の阻害に非常に有効であり、かつ生理的ストレスから細胞を保護する。したがって、TCAPおよび/またはTCAPのモジュレーターは、ニューロンの連絡および/または細胞の増殖に関連したもの、たとえば、癌、ストレス不安、摂食障害および/または肥満症などの食品関連の障害を含む癌および神経病理学的な症状の治療に使用することができる。
【0040】
TCAP配列は、アミノ末端のPC7様切断モチーフおよびカルボキシ末端のアミド化モチーフに隣接する40アミノ酸の長さの切断可能なペプチドをコードする。N末端のPC7様切断部位の切断に応じて、生じる成熟TCAPペプチドは、40〜41アミノ酸長である。カルボキシ末端のアミド化モチーフを有するTCAP配列は、本明細書においてプレTCAPと称する。ヒト、マウス、ゼブラフィッシュ、およびショウジョウバエの相同分子種、並びに3つのさらなるパラロガスな配列が同定された。ニジマスペプチドの合成型では、有意に驚愕反射が増大し、ラットにおける自己投与の脳刺激が減少した。これらの知見は、哺乳類およびヒトにおいて不安を誘導することが知られているペプチドの作用と一致する。また、ペプチドは、ストレスのないニューロンおよび線維芽細胞の培養での増殖を強力に阻害し、高pHストレスに供されたこれらの培養の細胞死を強力に阻害する。これらの知見は、TCAPが、発生、および成人の脳の調整において役割を担い、ニューロンの増殖および代謝を保護し、したがって分裂病、パーキンソン病、およびその他の精神的症状を含む多くの病態に関係することを示す。成体の脳では、本ペプチドは、不安原性刺激を調整するように作用する可能性があり、鬱病、拒食症、およびその他の情動障害において役割を果たすことができるであろう。
【0041】
本明細書に用いる「単離された」という用語は、天然の状態から「人の手によって変化した」ことを意味する。組成物または物質が天然に存在する場合、単離された形態は、その本来の環境から変化しているか、もしくは取り除かれている、または両方の状態である。たとえば、天然に生きている動物に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離され」ていないが、その天然の状態の共存する物質から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本明細書に用いる用語として、「単離され」ている。したがって、組換え宿主細胞内に産生されおよび/または含まれるポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、本発明の目的において単離されたとみなされる。また、「単離されたポリペプチド」または「単離されたポリヌクレオチド」は、組換え宿主細胞から、または天然の供与源から、部分的にまたは実質的に精製されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドであることが企図される。たとえば、TCAPペプチドの組換えで産生された型およびこれらの誘導体は、SmithおよびJohnson, Gene 67:31-40 (1988)に記載されている一段法などの当技術分野において既知の方法によって実質的に精製することができる。
【0042】
本発明の核酸分子
本発明は、テネウリンC末端関連ペプチドをコードする配列からなる単離された核酸分子を提供する。このペプチドは、本明細書において、一般に「TCAP」と呼ぶ。また、本発明は、カルボキシ末端にアミド化モチーフを有するTCAPペプチドをコードする単離された核酸分子を提供し、該ペプチドは、本明細書において「プレTCAP」と呼ぶ。
【0043】
本発明には、組換えDNA技術によって産生されたときは、実質的に細胞成分もしくは培地フリーの単離された核酸を、または化学的に合成されたときは、化学的前駆体もしくはその他の化学物質を含む。
【0044】
好ましい態様において、本発明は、以下を含むか、または以下からなる単離された核酸配列を提供する:
(a)配列番号:18〜20、25〜28、33〜36、41〜44、49〜52、57〜60、65〜68、73〜76、81〜84、89〜92、97〜100に示される核酸配列、またはTがUであってもよいその核酸配列、または、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチド、もしくは配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96などの該ペプチドのカルボキシ末端にさらにアミド化シグナル配列(好ましくは、GKRまたはGRR)を有するペプチドをコードする核酸配列;
(b)核酸配列(a)に相補的な核酸配列;
(c)核酸配列(a)または(b)に実質的な配列相同性を有する核酸配列;
(d)核酸配列(a)、(b)、または(c)の類似体である核酸配列;あるいは
(e)核酸配列(a)、(b)、(c)、または(d)に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列;
(f)TがUである(a)〜(e)の核酸配列。
【0045】
「実質的な配列相同性を有する配列」という用語は、(a)もしくは(b)の配列からはわずかな、または重要でない配列の変異を有する核酸配列、すなわち実質的に同じ様式で機能する配列を意味する。変異は、局部的な突然変異または構造修飾に起因していてもよい。実質的な相同性を有する核酸配列は、上記の(a)に一覧を示した核酸配列と、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも85%、および最も好ましくは90〜95%の同一性を有する核酸配列を含む。「ハイブリダイズする配列」という用語は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で一連の(a)、(b)、(c)、または(d)にハイブリダイズすることができる核酸配列を意味する。DNAハイブリダイゼーションを促進する適切な「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、当業者に既知であり、または「Molecular Biology」、John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6において見出されるであろう。たとえば、以下を使用してもよい:6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)を約45℃で、続いて2.0×SSCを50℃で;0.2×SSCを50℃〜65℃で;または2.0×SSCを44℃〜50℃で洗浄する。ストリンジェンシーは、洗浄工程に使用される条件に基づいて選択されてもよい。たとえば、洗浄工程の塩濃度は、50℃で約0.2×SSCの高ストリンジェンシーから選択されうる。加えて、洗浄工程の温度は、約65℃での高ストリンジェンシー条件であってもよい。
【0046】
「核酸」という用語は、DNAおよびRNAを含むことが企図され、二重鎖または一本鎖のいずれであることもができる。
【0047】
「類似体である核酸配列」の用語は、(a)、(b)、または(c)の配列と比較して修飾された核酸配列であって、本明細書に記載されるように、修飾は配列の有用性を変えない核酸配列を意味する。修飾された配列または類似体は、(a)、(b)、または(c)に示した配列よりも改善された性質を有していてもよい。類似体を調製するための修飾の1つの例は、以下のような修飾塩基によって、配列の天然に存在する塩基(すなわち、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミジン)のうちの1つを置換することである:キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル、2-プロピル、およびその他のアルキルアデニン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、6-アザウラシル、6-アザシトシン、および6-アザチミン、プソイドウラシル(pseudo uracil)、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、およびその他の8-置換アデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、およびその他の8-置換グアニン、その他のアザおよびデアザウラシル、チミジン、シトシン、アデニン、またはグアニン、5-トリフルオロメチルウラシル、および5-トリフルオロシトシン。
【0048】
修飾の別の例は、上記(a)〜(e)に一覧を示した核酸分子の、リン酸骨格における修飾された亜リン酸もしくは酸素ヘテロ原子、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルの糖間結合、または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環の糖間結合を含む。たとえば、核酸配列は、ホスホロチオエート、リン酸トリエステル、メチルホスホネート、およびホスホロジチオエートを含んでもよい。
【0049】
本発明の核酸分子の類似体のさらなる例は、DNA(またはRNA)のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格がペプチドにおいて見られるものと同様のポリアミド骨格で置換された、ペプチド核酸(PNA)である(P. E. Nielsenら、Science 1991, 254, 1497)。PNA類似体は、酵素による分解に耐性であること、並びにインビボおよびインビトロでの生存が延長されることが示されている。また、PNA鎖とDNA鎖の間には電荷相反がないため、PNAsは、相補的なDNA配列により強く結合する。その他の核酸類似体は、ポリマー骨格、環状骨格、または非環式の骨格を含むヌクレオチドを含んでもよい。たとえば、ヌクレオチドは、モルホリノ骨格構造(米国特許第5,034,506号)を有していてもよい。また、類似体は、レポーター基(核酸配列の薬物動態学的または薬力学的な性質を改善するための基)などの基を含んでいてもよい。
【0050】
また、遺伝暗号の縮重のために本発明の核酸配列とは異なる配列を有する単離されおよび精製された核酸分子は、本発明の範囲内である。このような核酸は、機能的に同等のペプチドをコードするが、遺伝暗号の縮重のために上述の配列とは配列が異なる。
【0051】
DNAからなる本発明の単離された核酸分子は、本発明の核酸配列の全部または一部に基づいて標識核酸プローブを調製すること、および適切なDNAライブラリー(たとえば、cDNAまたはゲノムDNAライブラリー)をスクリーニングするためにこの標識核酸プローブを使用することによって単離することができる。たとえば、単離されたゲノムライブラリーを使用する際には、標準的な技術を使用して、標識プローブでライブラリーをスクリーニングすることにより、本発明の新規のペプチドをコードするDNAを単離することができる。cDNAまたはゲノムDNAライブラリーのスクリーニングによって単離された核酸は、標準的な技術によってシーケンスすることができる。
【0052】
また、DNAである本発明の単離された核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)方法およびcDNAまたはゲノムDNAを使用して本発明の新規のペプチドをコードする核酸を選択的に増幅することによって単離することができる。PCRに使用するために、本発明の核酸配列から合成オリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。核酸は、これらのオリゴヌクレオチドプライマーおよび標準的なPCR増幅技術を使用して、cDNAまたはゲノムDNAから増幅することができる。こうして増幅された核酸は、適切なベクターにクローニングすることができ、DNA配列解析によって特徴付けることができる。cDNAは、種々の技術によって、たとえば、Chirgwinら、Biochemistry, 18, 5294-5299 (1979)のチオシアン酸グアニジニウム(guanidinium-thiocyanate)抽出法を使用することによって、全細胞mRNAを単離することにより、mRNAから調製してもよい。次いで、逆転写酵素(例えば、Invitrogen, Carlsbad, CAから入手可能なモロニーMLV逆転写酵素またはSeikagaku America, Inc., St. Petersburg, FLから入手可能なAMV逆転写酵素)を使用して、mRNAからcDNAを合成する。
【0053】
RNAである本発明の単離された核酸分子は、適切なベクターに本発明の新規のペプチドをコードするcDNAをクローニングすることによって単離することができ、これにより、cDNAを転写して本発明のタンパク質をコードするRNA分子を産生することができる。たとえば、cDNAは、ベクターのバクテリオファージプロモータの下流にクローニングすることができ(たとえば、T7プロモータ)、cDNAは、インビトロにおいてT7ポリメラーゼで転写することができ、生じるRNAは、標準的な技術によって単離することができる。
【0054】
また、本発明の核酸分子は、標準的な技術を使用して化学的に合成されてもよい。ポリデオキシヌクレオチドを化学的に合成する種々の方法が既知であり、ペプチド合成のように、商業的に入手可能なDNA合成装置に完全に自動化された固相合成を含む(たとえば、Itakuraら、米国特許第4,598,049号;Caruthersら、米国特許第4,458,066号;並びにItakura米国特許第4,401,796号および第4,373,071号を参照されたい)。
【0055】
特定の核酸分子が本発明の新規ペプチドをコードするかどうかの決定は、標準的な技術によって適切な宿主細胞にcDNAを発現すること、および本明細書に記述した方法を使用してペプチドの活性を試験することによって達成されてもよい。こうして単離された本発明の新規ペプチドの活性を有するcDNAは、コードされたペプチドの核酸配列および予測されるアミノ酸配列を決定するために、ジデオキシヌクレオチド鎖集結またはマクサム-ギルバートの化学シーケンスなどの標準的な技術によってシーケンスすることができる。
【0056】
本発明の核酸分子の開始コドンおよび非翻訳配列は、PC/Gene(IntelliGenetics Inc., Calif.)などの本目的のために設計された現在利用できるコンピュータ・ソフトウェアを使用して決定してもよい。調節エレメントは、従来の技術を使用して同定することができる。エレメントの機能は、エレメントに作用可能に結合されたリポーター遺伝子を発現するようにこれらのエレメントを使用して確認することができる。これらの構築物は、標準的な手順を使用して培養細胞に導入してもよい。DNA中の調節エレメントを同定することに加えて、このような構築物はまた、当技術分野において既知の技術を使用して、エレメントと相互作用するタンパク質を同定するために使用されてもよい。
【0057】
本発明の核酸分子の配列は、本明細書にさらに完全に記載されているアンチセンス核酸分子を産生するために、転写についてその通常の提示に関して逆にしてもよい。特に、本発明の核酸分子またはこれらの断片に含まれる核酸配列は、アンチセンス核酸分子を産生するために、転写についてその通常の提示に関して逆にしてもよい。
【0058】
また、本発明は、本発明の新規タンパク質、および選択タンパク質、または選択可能なマーカータンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する(下記を参照されたい)。
【0059】
また、TCAPペプチドの断片、機能的なドメイン、または抗原決定基の部分をコードする核酸配列が提供される。また、本発明は、TCAPのためのプローブおよびPCRプライマーとしての、並びに配列の機能的な側面を決定するための配列の部分の使用を提供する。
【0060】
当業者は、当技術分野の現在の標準的なハイブリダイゼーションスクリーニングまたはPCR技術を使用して、開示された配列の対立遺伝子変異体であるTCAPをコードする核酸またはcDNA同定しおよび単離することができる。
【0061】
II.本発明の新規タンパク質
本発明は、単離されたTCAPペプチドをさらに広く想定する。本明細書に用いられる「TCAPペプチド」という用語は、TCAPペプチドの全ての相同体、類似体、断片、または誘導体を含む。
【0062】
ペプチドに関して、「類似体」という用語は、本明細書に特異的に示したヒトまたはマウスTCAP配列と実質的に同一のアミノ酸残基残基配列を有するあらゆるペプチドであって、1つまたは複数の残基が機能的に同様の残基で保存的に置換され、本明細書に記載されたようなTCAPを模倣する能力を示すものを含む。保存的な置換の例は、アラニン、イソロイシン、バリン、ロイシン、もしくはメチオニンなどの1つの非極性(疎水性の)残基を別の残基に置換すること、アルギニンとリジンの間、グルタミンとアスパラギンの間、グリシンとセリンの間などの、1つの極性(親水性の)残基を別の残基に置換すること、リジン、アルギニン、もしくはヒスチジンなどの1つの塩基性残基を別の残基に置換すること、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸などの1つの酸性残基を別の残基に置換することを含む。「保存的な置換」という語句は、このようなポリペプチドが必要な活性を示すことを条件として、非誘導体化された残基の代わりに化学的に誘導体化された残基を使用することを含む。
【0063】
ペプチドに関して、「誘導体」という用語は、機能的な側鎖の反応によって化学的に誘導体化された1つまたは複数の残基を有するペプチドをいう。このような誘導体化された分子は、たとえば遊離のアミノ基が誘導体化されて、アミンヒドロクロリド、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基、またはホルミル基を形成する分子を含む。遊離のカルボキシル基は、塩、メチルエステルおよびエチルエステル、もしくは他のタイプのエステル、またはヒドラジドを形成するように誘導体化してもよい。遊離のヒドロキシル基は、O-アシルまたはO-アルキル誘導体に誘導体化してもよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導体化してN-im-ベンジルヒスチジンを形成させてもよい。また、誘導体としては、20個の標準的なアミノ酸の1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含むペプチドが含まれる。たとえば、4-ヒドロキシプロリンは、プロリンに対して置換されてもよく;5-ヒドロキシリジンは、リジンに対して置換されてもよく;3-メチルヒスチジンは、ヒスチジンに対して置換されてもよく;ホモセリンは、セリンに対して置換されてもよく;およびオルニチンは、リジンに対して置換されてもよい。また、本発明のポリペプチドは、必要な活性が維持される限り、配列が本明細書に示されているポリペプチドの配列に関して、1つまたは複数の付加および/または欠失を有する任意のポリペプチドまたは残基を含む。
【0064】
1つの態様において、単離されたTCAPペプチドは、カルボキシ末端のアミド化シグナルの有無にかかわらず、テネウリン様のタンパク質のカルボキシ末端の38〜41アミノ酸残基からなる。1つの態様において、アミド化シグナルは、アミノ酸配列GKRまたはGRRからなる(プレTCAP)。別の態様において、TCAPペプチドは、上記のペプチドと実質的に一致する配列、またはこれらの明らかな化学的相当物を含む。また、これは、上記のTCAPペプチド配列のアミノ末端および/またはカルボキシ末端に、ペプチド配列+/-アミノ酸を含む。さらに別の態様において、本発明は、TCAPペプチド、標識TCAPペプチド、これらの類似体、相同体、および変異体を含む融合タンパク質を含む。
【0065】
1つの態様において、TCAPペプチドは、ニジマス、ゼブラフィッシュ、ヒト、マウス、ニワトリ、またはキイロショウジョウバエTCAPである。別の態様において、TCAPペプチドは、以下からなる群より選択される配列を有する:配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103、または該ペプチドのカルボキシ末端にさらにアミド化シグナル配列(好ましくは、GKRまたはGRR)を有する15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96など。
【0066】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-3であり、以下のアミノ酸配列モチーフを有する:
配列中、Xaa1は、G、S、またはAであり;Xaa2は、GまたはRであり;Xaa3は、LまたはQであり;Xaa4およびXaa5は、独立してVまたはIである。1つの態様において、TCAP-3は、ヒトまたはマウスTCAP-3である。別の態様において、TCAP-3は、配列番号:13、21、53、または85を有する。
【0067】
本発明の関連内において、本発明のペプチドは、生物活性を保持する一次ペプチドの種々の構造形態を含んでもよい。たとえば、本発明のペプチドは、酸性塩もしくは塩基性塩の形態で、または中性の形態であってもよい。加えて、個々のアミノ酸残基は、酸化または還元によって修飾されてもよい。
【0068】
全長アミノ酸配列に加えて、本発明のペプチドはまた、本明細書に記載されているように、ペプチドの切断型(truncation)、類似体、および相同体、並びにこれらの切断型を含んでもよい。切断されたペプチドまたは断片は、上記に一覧を示した配列の少なくとも5個、および好ましくは10個、およびより好ましくは15個のアミノ酸残基のペプチドを含んでもよい。
【0069】
本発明は、TCAPペプチドの少なくとも1つの機能的なドメインを含むポリペプチドまたは少なくとも1つの抗原決定基をさらに提供する。
【0070】
本明細書に記載されているように、本発明のタンパク質の類似体および/またはこれらの切断型は、1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入、欠失、および/または突然変異を含むアミノ酸配列に含んでもよいが、これに限定されない。アミノ酸置換は、保存的または非保存的な性質であってもよい。保存的アミノ酸置換は、同様の電荷、大きさ、および/または疎水性の特徴のアミノ酸で本発明のペプチドの1つまたは複数のアミノ酸を置換することを含む。保存的置換のみが作製されるときは、生じる類似体は機能的に同等物であるはずである。非保存的置換は、異なる電荷、大きさ、および/または疎水性の特徴を有する1つまたは複数のアミノ酸でアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸を置換することを含む。
【0071】
1つまたは複数のアミノ酸の挿入が本発明のアミノ酸配列に導入されてもよい。アミノ酸の挿入は、単一のアミノ酸残基または長さが2〜15アミノ酸の範囲の一連のアミノ酸からなってもよい。たとえば、アミノ酸の挿入は、ペプチドが活性ではなくなるように、標的配列を破壊するために使用してもよい。この手順は、インビボで本発明のペプチドの活性を阻害するために使用してもよい。
【0072】
欠失は、TCAPペプチドのアミノ酸配列からの1つまたは複数のアミノ酸の除去または分離した部分からなってもよい。欠失するアミノ酸は、隣接していても、または隣接していなくてもよい。
【0073】
本発明のタンパク質の類似体は、ペプチドをコードするヌクレオチド配列の突然変異を導入することによって調製されてもよい。突然変異は、天然の配列の断片に対するライゲーションを可能にする制限部位に隣接して変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって、特定の遺伝子座に導入されてもよい。ライゲーションに続いて、生じる再構築された配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換、または欠失を有する類似体をコードする。
【0074】
または、必要とされる置換、欠失、または挿入にしたがって変更された特定のコドンを有する変更された遺伝子を提供するために、オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異法を使用してもよい。また、本発明のペプチドの欠失または切断型は、所望の欠失に隣接する制限エンドヌクレアーゼ部位を利用することによって構築されてもよい。制限後に、突出を埋めて、DNAを結合してもよい。上述した変更を作製する典型的な方法は、Sambrookら(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)によって開示されている。
【0075】
また、本発明のペプチドは、本明細書に記載されているように、TCAPペプチドのアミノ酸配列の相同体、変異されたTCAPペプチド、および/またはこれらの切断型を含む。このような相同体は、本発明のペプチドを得るために使用されるプローブとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(本明細書のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の議論を参照)下でハイブリダイズするアミノ酸配列から構成されるアミノ酸配列のタンパク質である。本発明のペプチドの相同体は、タンパク質の特徴と同じ領域を有するであろう。
【0076】
相同的なペプチドは、TCAPペプチドのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは80〜95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
【0077】
また、本発明は、本発明のペプチドのアイソフォームを想定する。アイソフォームは、本発明のペプチドと同じアミノ酸の数および種を含むが、アイソフォームは、異なる分子構造を有する。本発明によって想定されるアイソフォームは、本明細書に記載されているように、本発明のペプチドと同じ性質を有するものである。
【0078】
本発明のタンパク質(たとえば、切断型、類似体、その他を含む)は、組換えDNA法を使用して調製してもよい。したがって、ペプチドの良好な発現を確実にする適切な発現ベクターに、本発明のペプチドをコードする配列を有する本発明の核酸分子を当技術分野において既知の手順に従って組み込んでもよい。可能な発現ベクターは、ベクターが使用される宿主細胞と適合性を持つ限り、コスミド、プラスミド、または修飾されたウイルス(たとえば、複製欠損のレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を含むが、これらに限定されない。「宿主細胞のトランスフォーメーションのために適切な発現ベクター」とは、本発明の核酸分子および制御配列を含み、発現のために使用される宿主細胞を基礎として選択され、これらが機能的に核酸分子に結合されている発現ベクターを意味する。「機能的に結合される」とは、核酸が核酸を発現できる方法で制御配列に結合されることを意味することが企図される。
【0079】
したがって、本発明は、本発明の核酸分子またはこれらの断片、並びに挿入されたペプチド配列の転写および翻訳に必要な制御配列を含む本発明の組換え発現ベクターを想定する。適切な制御配列は、細菌、真菌の、またはウイルスの遺伝子を含む種々の供与源に由来してもよい(たとえば、Goeddel、「Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185」、Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている制御配列を参照されたい)。適切な制御配列の選択は、選択される宿主細胞に依存的であり、当技術分野の当業者によって容易に達成されるであろう。このような制御配列の例は、転写プロモータおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、および翻訳開始シグナルを含むリボソーム結合配列を含む。その上、選択される宿主細胞および使用されるベクターに応じて、複製開始点、さらなるDNA制限部位、エンハンサー、および転写誘導能を与える配列などのその他の配列を発現ベクターに組み込んでもよい。また、必要な制御配列が天然のペプチドおよび/またはそのフランキング領域によって供給されてもよいことが認識されるであろう。
【0080】
本発明は、アンチセンス方向で発現ベクターにクローニングした本発明のDNA核酸分子を含む組換え発現ベクターをさらに提供する。すなわち、DNA分子は、本発明のヌクレオチド配列に対してアンチセンスであるRNA分子のDNA分子の転写によって発現することができる方法で、制御配列に機能的に結合される。アンチセンス核酸に機能的に結合された制御配列を選択して、アンチセンスRNA分子を持続的に発現させることができる。
【0081】
また、本発明の組換え発現ベクターは、本発明の組換え分子を形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞の選択を容易にする選択可能なマーカー遺伝子を含んでもよい。選択可能なマーカー遺伝子の例は、特定の薬物に対する耐性を与える、G418およびハイグロマイシンなどのタンパク質、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはホタルルシフェラーゼをコードする遺伝子である。選択可能なマーカー遺伝子の転写は、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはホタルルシフェラーゼなどの選択可能なマーカータンパク質の濃度の変化によってモニターされる。選択可能なマーカー遺伝子が、ネオマイシン耐性などの抗生物質耐性を与えるタンパク質をコードする場合、形質転換体細胞は、G418によって選択することができる。選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞は、生存すると考えられるが、その他の細胞は死滅する。これにより、本発明の組換え発現ベクターを視覚化およびアッセイすること、特に発現および表現型に対する突然変異の効果を決定することが可能となる。選択可能なマーカーは、関心対象の核酸とは別のベクターに導入することができる。
【0082】
組換え発現ベクターは、形質転換された宿主細胞を作製するために宿主細胞に導入することができる。したがって、本発明は、本発明の組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含む。「形質転換された宿主細胞」という用語は、本発明の組換え発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた原核細胞および真核細胞を含むことが企図される。「で形質転換され」、「でトランスフェクトされ」「形質転換」、および「トランスフェクション」という用語は、当技術分野において既知の多くの可能な技術のうちの1つによって、細胞に核酸(たとえば、ベクター)を導入することを含むことが企図される。たとえば、原核細胞は、電気穿孔法または塩化カルシウムによるトランスフォーメーションによって核酸で形質転換することができる。核酸は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAEデキストランによるトランスフェクション、リポフェクチン、電気穿孔法、または微量注入などの従来の技術を介して哺乳類細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換し、トランスフェクトするための適切な方法は、Sambrookら、(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory press (1989))およびその他のこのような研究教科書に見出すことができる。
【0083】
適切な宿主細胞は、多種多様な原核生物および真核生物の宿主細胞を含む。たとえば、本発明のペプチドは、大腸菌、シュードモナス属(Pseudomonas)、枯草菌(Bacillus subtillus)などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルスを使用する)、酵母細胞、または哺乳類細胞に発現されてもよい。その他の適切な宿主細胞は、Goeddel、「Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185」、Academic Press, San Diego, CA (1991)において見出すことができる。
【0084】
例として、組換えTCAPペプチドを産生するために、たとえば、2つのプラスミドを使用するT7 RNAポリメラーゼ/プロモーター系を使用して、またはプラスミドをコードするタンパク質のラベリングによって、またはM13ファージGPI-2での感染による発現によって、大腸菌を使用することができる。また、大腸菌ベクターは、融合タンパク質ベクター(たとえば、IacZおよびtrpE)により、マルトース結合タンパク質融合により、並びにグルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質により、ファージラムダ制御配列と共に使用することができる。
【0085】
または、TCAPペプチドは、バキュロウイルスのベクターを使用して昆虫細胞において、またはワクシニアウイルスを使用して哺乳類細胞において発現させることができる。哺乳類細胞の発現のためには、cDNA配列を異種のプロモーターに結合してもよく、一過性または長期の発現を達成するためにCOS細胞などの細胞に導入してもよい。ネオマイシンおよびマイコフェノール酸(mycophoenolic acid)などの生化学的な選択によって、哺乳類細胞におけるキメラ遺伝子構築物の安定組込みを維持させてもよい。
【0086】
TCAP DNA配列は、制限酵素消化、DNAポリメラーゼによる充填、エキソヌクレアーゼによる欠失、ターミナル・デオキシヌクレオチド・トランスフェラーゼによる伸張、合成またはクローニングしたDNA配列のライゲーション、PCRと共に特異的なオリゴヌクレオチドを使用する部位特異的な配列変化などの手順を使用して変更することができる。
【0087】
cDNA配列もしくはこれらの部分、またはイントロンおよびそれ自体のプロモーターを有するcDNAからなるミニ遺伝子を、従来技術によって真核生物の発現ベクターに導入する。これらのベクターは、cDNAの転写を開始および増強する制御配列を提供することによって真核細胞中でのcDNAの転写を可能にし、その適当なスプライシングおよびポリアデニル化を確実にする。また、内因性のTCAP遺伝子プロモーターを使用することができる。ベクター内の異なるプロモーターは、異なる活性を有し、cDNAの発現レベルを変更させる。加えて、特定のプロモーターは、また、マウス乳癌ウイルス由来の糖質コルチコイド応答性プロモーターなどの機能を調整することができる。
【0088】
一覧を示したいくつかのベクターは、化学的な選択によって細胞の単離を可能にする選択可能なマーカーまたはネオ細菌遺伝子を含む。安定な長期ベクターは、エピソームとして細胞に維持し、ウイルスの調節エレメントを使用することによって自由に存在物を複製することができる。また、ゲノムDNAにベクターを組み込んだ細胞株を作製することができる。このように、遺伝子産物は、連続する塩基に対して産生される。
【0089】
ベクターは、リン酸カルシウム、リン酸ストロンチウム、電気穿孔法、リポフェクション、DEAEデキストラン、微量注入を含む種々の方法によって、またはプロトプラスト融合によって受容細胞に導入される。または、cDNAは、ウイルスベクターを使用する感染によって導入することができる。
【0090】
また、TCAPペプチドは、ペプチドが正常に発現される哺乳類の細胞または組織を含む細胞または組織から単離されてもよい。
【0091】
タンパク質は、クロマトグラフィー方法、高性能液体クロマトグラフィー法、または沈澱などの当技術分野において既知の従来の精製法によって精製されてもよい。
【0092】
たとえば、TCAPペプチドを単離するために、抗TCAP抗体(後述するとおり)を使用してもよく、次いで、これを標準的な方法によって精製する。
【0093】
また、本発明のペプチドは、固相合成(Merrifield, 1964, J. Am. Chem. Assoc. 85:2149-2154)または同種の溶液(Houbenweyl, 1987, 「Methods of Organic Chemistry」、E. Wansch編、 Vol. 15 I および II, Thieme, Stuttgart)などのタンパク質化学において周知の技術を使用する化学合成によって調製されてもよい。
【0094】
III.使用
本発明は、抗体およびアンチセンスオリゴヌクレオチドの調製、TCAPを研究するための実験系の調製、TCAPに結合するか、または発現および/または活性を調整することができる物質の単離、並びに診断および治療的な適用における、TCAP核酸配列およびこれらのペプチドおよびモジュレーターの使用を含む(しかし、これらに限定されない)、本発明の核酸分子、TCAPペプチド、およびプレTCAPペプチドの全ての使用を含む。いくつかの使用は、さらに以下に記載してある。
【0095】
(a)抗体
TCAPペプチドの単離により、TCAPに特異的な抗体の調製が可能となる。したがって、本発明は、TCAPペプチドに結合する抗体および/またはプレTCAPなどの、TCAPペプチドを含むタンパク質を提供する。
【0096】
抗体を調製するために、従来の方法を使用することができる。たとえば、TCAPを使用して、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を標準的な方法を使用して作製することができる。哺乳類(たとえば、マウス、ハムスター、またはウサギ)に、哺乳類に抗体反応を引き出すペプチドの形態の免疫原で免疫することができる。ペプチドに免疫原性を与えるための技術は、キャリアとの抱合または当技術分野において周知のその他の技術を含む。たとえば、タンパク質またはペプチドをアジュバントの存在下において投与することができる。免疫化の過程は、プラズマまたは血清中の抗体力価の検出によってモニターすることができる。抗体のレベルを評価するために、標準的なELISAまたはその他の免疫アッセイ手順では、抗原として免疫原を使用することができる。免疫化に続いて、抗血清を得ることができ、必要であれば、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。
【0097】
モノクローナル抗体を産生するためには、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫した動物から収集し、標準的な体細胞融合手順によって骨髄腫細胞と融合させることによって、これらの細胞を不死化し、ハイブリドーマ細胞を産生することができる。このような技術は、当技術分野において周知である(たとえば、当初Kohler および Milstein (Nature 256, 495-497 (1975))によって開発されたハイブリドーマ技術、並びにヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、Immunol. Today 4, 72 (1983))、ヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies in Cancer Therapy (1985) Allen R. Bliss, Inc., 77-96ページ)、およびコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニング(Huseら、Science 246, 1275 (1989))などのその他の技術)。ペプチドと特異的に反応する抗体の産生について、ハイブリドーマ細胞を免疫化学的にスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体を単離することができる。したがって、本発明はまた、TCAPに対する特異性を有するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を想定する。
【0098】
本明細書に用いられる「抗体」という用語は、TCAPと特異的に反応するこれらの断片も含むことが企図される。上記のものと同じ方法で利用するために、従来技術使用して抗体を断片化し、断片をスクリーニングすることができる。たとえば、F(ab')2断片は、ペプシンで抗体を処理して作製することができる。生じるF(ab')2断片をさらに処理してFab'断片を産生することができる。
【0099】
キメラ抗体誘導体、すなわちヒト以外の動物の可変領域とヒトの定常領域を組み合わせた抗体分子も、本発明の範囲内において想定される。キメラ抗体分子は、たとえば、ヒト定常領域を有する、マウス、ラット、またはその他の種の抗体に由来する抗原結合ドメインを含むことができる。本発明のTCAP抗原の遺伝子産物を認識する免疫グロブリン可変領域を含むキメラ抗体を作製するために、従来法を使用してもよい(たとえば、Morrisonら、Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A. 81, 6851 (1985); Takedaら、Nature 314, 452 (1985), Cabillyら、米国特許第4,816,567号; Bossら、米国特許第4,816,567号; Tanaguchiら、欧州特許公報第171496号;欧州特許公報第0173494号,英国特許第2177096B号を参照されたい)。キメラ抗体は、ヒト被験者において対応する非キメラ抗体よりも免疫原性が少ないと考えられる。
【0100】
特に、本発明のペプチドと反応するモノクローナル抗体またはキメラ抗体は、本明細書に記載されているものとして、可変領域の一部、特に抗原結合ドメインの保存されたフレームワーク領域が、ヒト起源であり、かつ高頻度可変領域だけが非ヒト起源である、ヒト定常領域キメラを産生することによって、さらにヒト化することができる。このような免疫グロブリン分子は、当技術分野において既知の技術によって作製されてもよい(たとえばTengら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80, 7308-7312 (1983); Kozborら、Immunology Today, 4, 7279 (1983); Olssonら、Meth. Enzymol., 92, 3-16 (1982))、およびPCT公報国際公開公報第92/06193号または欧州特許第0239400号)。また、ヒト化抗体は、商業的に産生され得る(Scotgen Limited, 2 Holly Road, Twickenham, Middlesex, Great Britain)。
【0101】
特異的な抗体、またはTCAPペプチドに反応性の抗体断片は、TCAPをコードする核酸分子から産生されるペプチドで、細菌に発現した免疫グロブリン遺伝子、またはこれらの部分をコードする発現ライブラリーをスクリーニングすることによって作製されてもよい。たとえば、完全Fab断片、VH領域、およびFV領域は、ファージ発現ライブラリーを使用して、細菌に発現させることができる(Wardら、Nature 341, 544-546(1989);Huseら、Science 246, 1275-1281 (1989);および McCaffertyら、Nature 348, 552-554 (1990)を参照されたい)。または、SCID-huマウス、たとえばGenpharmによって開発されたモデル)を、抗体またはこれらの断片を産生するために使用することができる。
【0102】
(b)アンチセンスオリゴヌクレオチド
TCAPをコードする核酸分子の単離により、TCAPの発現および/または活性を調整することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドの産生が可能となる。したがって、本発明は、TCAPをコードする核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0103】
本明細書に用いられる「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、その標的に相補的なヌクレオチド配列を意味する。
【0104】
「オリゴヌクレオチド」の用語は、天然に存在する塩基、糖、および糖間(骨格)結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオシドの単量体のオリゴマーまたは重合体をいう。また、本用語は、天然に存在しない単量体または同様の機能のこれらの部分を含む修飾され、または置換されたオリゴマーを含む。このような修飾され、または置換されたオリゴヌクレオチドは、細胞の取込みの増強またはヌクレアーゼの存在下における安定度の増大などの性質のために、天然に存在する形態以上に好ましいであろう。また、本用語は、2つ以上の化学的に異なった領域を含むキメラオリゴヌクレオチドを含む。たとえば、キメラオリゴヌクレオチドは、有益な性質(たとえば、ヌクレアーゼ耐性の増大、細胞への取込みの増大)を与える修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つの領域を含んでもよく、または本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドは、キメラオリゴヌクレオチドの形態に結合されていてもよい。
【0105】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボ核酸またはデオキシリボ核酸であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む天然に存在する塩基を含んでいてもよい。また、オリゴヌクレオチドは、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル、2-プロピル、およびその他のアルキルアデニン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、6-アザウラシル、6-アザシトシン、および6-アザチミン、プソイドウラシル、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオールアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、およびその他の8-置換アデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオールアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、およびその他の8-置換グアニン、その他のアザおよびデアザウラシル、チミジン、シトシン、アデニン、またはグアニン、5-トリフルオロメチルウラシル、および5-トリフルオロシトシン)などの修飾塩基を含んでもよい。
【0106】
本発明のその他のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リン酸骨格における修飾された亜リン酸、酸素ヘテロ原子、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルの糖間結合、または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環の糖間結合を含む。たとえば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、リン酸トリエステル、メチルホスホネート、およびホスホロジチオエートを含んでもよい。本発明のある態様において、4〜6の間の3'末端塩基を形成するホスホロチオエート結合のリンクがある。別の態様において、ホスホロチオエート結合は、全てのヌクレオチドを結合する。
【0107】
また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、治療的なまたは実験的な試薬としてより適しているであろうヌクレオチド類似体を含んでもよい。オリゴヌクレオチド類似体の例は、DNA(またはRNA)のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格がペプチドにおいて見られるものと同様のポリアミド骨格で置換された、ペプチド核酸(PNA)である(P.E. Nielsenら、Science 1991, 254, 1497)。PNA類似体は、酵素による分解に耐性であること、並びにインビボおよびインビトロでの生存が延長されることが示されている。PNA鎖とDNA鎖の間には電荷相反がないため、PNAは、相補的なDNA配列により強く結合する。その他のオリゴヌクレオチドは、重合体骨格、環状骨格、または非環式の骨格を含むヌクレオチドを含んでもよい。たとえば、ヌクレオチドは、モルホリノ骨格構造(米国特許第5,034,506号)を有していてもよい。また、オリゴヌクレオチドは、レポーター基、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的な性質を改善するための基、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬力学的な性質を改善するための基などの基を含んでいてもよい。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、糖模倣体を有していてもよい。
【0108】
アンチセンス核酸分子は、当技術分野において既知の手順を使用する化学合成および酵素結合反応を使用して構築されてもよい。本発明のアンチセンス核酸分子またはこれらの断片は、天然に存在するヌクレオチドを使用して、化学的に合成されてもよく、または分子の生物学的な安定度を増大するように、またはmRNAもしくは天然の遺伝子と形成される二重鎖の物理的な安定度を増大するように設計された種々の修飾ヌクレオチド、たとえばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドであってもよい。アンチセンス配列は、その中でアンチセンス配列が高効率制御領域の制御下で産生され、その活性は、ベクターが導入された細胞種によって決定される、組換えプラスミド、ファージミド、または弱毒ウイルスの形態で細胞に導入される発現ベクターを使用して生物学的に産生されてもよい。
【0109】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、微量注入などの当技術分野においてベクター(レトロウイルスのベクター、アデノウイルスのベクターおよびDNAウイルスベクター)を含む技術または物理的な技術を使用して、組織または細胞に導入されてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、インビボで直接投与されてもよく、またはインビボで細胞にトランスフェクトし、次いでインビトロで投与するために使用されてもよい。1つの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リポソーム製剤においてマクロファージおよび/または内皮細胞に送達されてもよい。
【0110】
(c)診断アッセイ法
TCAPが、ニューロン細胞増殖の阻害に、不安原性反応の誘導に、およびストレスを受けた細胞の細胞死の阻害に関与するという本発明者による発見により、特にニューロン増殖の調節異常に関連する症状のための診断アッセイ法の開発が可能となる。
【0111】
したがって、本発明は、TCAPまたはプレTCAP発現と関連した症状を検出する方法であって、(a)TCAPペプチドをコードする核酸分子もしくはその断片、または、(b)TCAPタンパク質もしくはその断片について試料をアッセイする工程を含む方法を提供する。TCAPペプチドは、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103として示された配列を備えることが望ましい。本発明の1つの特定の態様において、症状は、ニューロン増殖の調節異常に関連する。ニューロン増殖は、体細胞およびプロセスの発生、有糸分裂誘発、または遊走を含んでもよい。ニューロン増殖の調節異常は、介在ニューロンの連絡および関連したシグナル分子の撹乱を介して生じるであろう。このような症状の例は、学習欠陥、精神遅滞、自閉症、分裂病、アルツハイマー病、パーキンソン病、並びに恐慌性障害、鬱病、拒食症、および強迫神経障害などの情動障害を含む。
【0112】
i)核酸分子
本明細書に記載されているTCAPをコードする核酸分子またはこれらの断片により、当業者が、試料中、好ましくは細胞、組織、および体液などの生体試料中のTCAPをコードするヌクレオチド配列またはこれらの断片の検出に使用するためのヌクレオチドプローブを構築することができる。プローブは、TCAP発現と関係する症状の存在を検出またはこのような症状の進行をモニターするために有用であり得る。したがって、本発明は、TCAPをコードする核酸分子を検出するための方法であって、核酸分子にハイブリダイズすることができるヌクレオチドプローブと試料を、ハイブリダイゼーション産物を形成できる条件下で、好ましくはストリンジェントな条件下で接触させてハイブリダイゼーション産物を形成させる工程、およびハイブリダイゼーション産物をアッセイする工程を含む方法を提供する。
【0113】
上記の方法に使用してもよいプローブの例は、配列番号:18〜20、25〜28、33〜36、41〜44、49〜52、57〜60、65〜68、73〜76、81〜84、89〜92、97〜100に示した核酸配列、またはTがUであってもよい核酸配列、または、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103、もしくは該ペプチドのカルボキシ末端にさらにアミド化シグナル配列(好ましくは、GKRまたはGRR)を有する配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96など、からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする核酸配列を含む。ヌクレオチドプローブは、32P、3H、14Cなどの適切なシグナルを提供し、十分な半減期を有する放射性標識などの、検出可能な物質で標識されてもよい。使用されうるその他の検出可能な物質は、特異的に標識抗体、蛍光化合物、酵素、標識抗原に特異的な抗体、および化学発光によって認識される抗原を含む。適切な標識は、検出される核酸に対するプローブのハイブリダイゼーションおよび結合の速度、並びにハイブリダイゼーションに利用できる核酸の量を考慮して選択されてもよい。標識プローブは、一般に、Sambrookら、1989、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」(第2版)に記載されているように、ニトロセルロースフィルタまたはナイロン膜などの固体担体上の核酸にハイブリダイズさせてもよい。ヌクレオチドプローブは、本発明の核酸分子にハイブリダイズする、好ましくはヒト細胞の遺伝子、好ましくは本明細書に記載されているストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本発明の核酸分子にハイブリダイズする核酸分子を検出するために使用されてもよい。
【0114】
TCAPペプチドをコードする核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)およびcDNAまたはゲノムDNAを使用して、試料中で選択的に増幅することができる。図1〜5に示したヌクレオチド配列から、PCRに使用する合成オリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。核酸は、オリゴヌクレオチドプライマーおよび標準的なPCR増幅技術を使用して、cDNAまたはゲノムDNAから増幅することができる。増幅された核酸は、適切なベクターにクローニングして、DNA配列の解析によって特徴付けることができる。cDNAは、種々の技術によって、たとえばChirgwinら、Biochemistry, 18, 5294-5299 (1979)のグアニジウム-チオシアネート抽出手順を使用することによって全細胞mRNAを単離して、mRNAから調製してもよい。次いで、逆転写酵素(たとえば、Gibco/BRL, Bethesda, MDから入手可能なモロニーMLV逆転写酵素、Seikagaku America, Inc., St. Petersburg, FLから入手可能なAMV逆転写酵素)を使用して、mRNAからcDNAを合成する。
【0115】
患者は、種々の技術によって、TCAP遺伝子の存在を検出するためのプローブを使用してルーチンでスクリーニングしてもよい。診断に使用されるゲノムDNAは、血液、組織生検、外科検体、または剖検材料に存在するものなどの体細胞から得てもよい。DNAは、特異的な配列の検出のために直接単離され、および使用されてもよく、または解析前にPCR増幅されてもよい。また、RNAまたはcDNAを使用してもよい。特異的なオリゴヌクレオチドを使用する特異的なDNA配列ハイブリダイゼーションを検出するために、直接的DNAシーケンシング、制限酵素消化、RNase保護、化学的開裂、およびリガーゼを介した検出は、利用できる全ての方法である。変異体配列に特異的なオリゴヌクレオチドは、化学的に合成し、同位元素で放射性に、またはビオチンタグを使用して非放射性に標識し、電気泳動法後にゲルからドットブロットもしくは転写によって膜またはその他の固体支持体に固定された個々のDNA試料にハイブリダイズさせることができる。次いで、これらの変異体配列の有無は、オートラジオグラフィ、蛍光定量法、または比色反応法などを使用して視覚化される。例えば、同定された突然変異を含む対象配列の一部を増幅する際に有用である適切なPCRプライマーを作製することができる。その他のヌクレオチド配列増幅技術には、ライゲーションを介したPCRなどの、アンカーPCR(anchored PCR)、および酵素増幅を使用してもよいことは、当業者によく理解されているであろう。
【0116】
また、配列の変化により偶然生じた制限酵素認識部位は、適切な酵素消化、続くゲル-ブロットハイブリダイゼーションの使用によって明らかにすることができる。部位(正常または変異体)を有するDNA断片は、これらの大きさの増加もしくは減少によって、または対応する制限酵素断片数の増加もしくは減少によって検出される。また、ゲノムDNA試料は、適切な制限酵素で処理する前にPCRによって増幅されてもよく、異なる大きさの断片は、ゲル電気泳動後に臭化エチジウムの存在下において紫外光下で視覚化してもよい。
【0117】
DNA配列の相違に基づく遺伝子試験は、ゲル中のDNA断片の電気泳動易動度の変化を検出することによって達成されてもよい。小さな配列の欠失および挿入は、高解像度ゲル電気泳動によって視覚化することができる。また、小さな欠失は、非変性ゲル電気泳動におけるDNAヘテロ二重鎖の移動パターンの変化によって検出してもよい。または、一塩基置換突然変異は、PCRにおけるプライマー長さの差異に基づいて検出してもよい。正常および突然変異遺伝子のPCR産物は、アクリルアミドゲルで差次的に検出することができる。
【0118】
また、ヌクレアーゼ保護アッセイ法(S1またはリガーゼを介する)により、特異的な位置の配列変化を明らかにする。または、制限マッピングの変化の多型を確認または検出するために、結合PCR(ligated PCR)、ASO、REF-SSCP、およびSSCPを使用してもよい。REF-SSCPおよびSSCPは、突然変異による高次構造の変化に基づいた移動度変化アッセイ法である。
【0119】
また、DNA断片は、個々のDNA試料が膜に固定されない方法によって視覚化されてもよい。プローブおよび標的配列は、溶液中にあってもよく、またはプローブ配列は、固定されていてもよい。また、特異的な個々の遺伝形質を同定するために、オートラジオグラフィ、放射性崩壊、分光光度法、および蛍光定量法を使用してもよい。
【0120】
ii)タンパク質
TCAPタンパク質は、上記に詳細に記載したように、タンパク質に結合する抗体を使用して試料中で検出されてもよい。したがって、本発明は、TCAPタンパク質を検出するための方法であって、TCAPに結合し、かつこれが試料中のTCAPに結合した後に検出することができる抗体と試料を接触させることを含む方法を提供する。
【0121】
特に、酵素複合体または標識誘導体などの、TCAPまたはその誘導体と反応性の抗体を、種々の生物材料中のTCAPを検出するために使用してもよく、たとえば、TCAPと抗体との抗原決定基間の結合相互作用に依存する任意の既知の免疫アッセイにこれらを使用してもよい。このようなアッセイ法の例は、放射免疫アッセイ法、酵素免疫測定法(たとえばELISA)、免疫蛍光、免疫沈降法、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集法、および組織化学的試験である。したがって、このような病理学的な状態を検出し、特定の細胞の事象または病理学的状態におけるその役割を決定するために、抗体を使用して試料中の変異TCAPを定量し、診断し、治療してもよい。
【0122】
特に、本発明の抗体は、免疫組織化学的な解析において、たとえば、細胞のおよび細胞の細胞下のレベルで、TCAPを検出するために、特異的な細胞および組織に並びに特定の細胞下の位置にこれを局在化させるために、並びに発現レベルを定量するために使用してもよい。
【0123】
光学および電子顕微鏡法を使用する、局在化する抗原のために当技術分野において既知の細胞化学的な技術を、TCAPを検出するために使用してもよい。通常、本発明の抗体は、検出可能な物質で標識してもよく、TCAPを、検出可能な物質の存在に基づいて組織に局在化させてもよい。検出可能な物質の例は、種々の酵素、蛍光物質、発光物質、および放射性物質を含む。適切な酵素の例は、西洋わさびペルオキシダーゼ、ビオチン、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンを含み;発光材料の例は、ルミノールを含み;および適切な放射性物質の例は、放射性のヨウ素I-125、I-131、または3-Hを含む。また、抗体は、フェリチンまたはコロイド金などの電子高密度物質に結合されてもよく、これは電子顕微鏡法によって容易に視覚化される。
【0124】
また、一次抗原-抗体反応が、TCAPに対して反応性の抗体に特異性を有する二次抗体の導入によって増幅される間接的な方法を使用してもよい。例として、TCAPに対して特異性を有する抗体がウサギIgG抗体である場合、本明細書に記載されているように、二次抗体は、検出可能な物質で標識されたヤギ抗ウサギγグロブリンであってもよい。
【0125】
放射性標識が検出可能な物質として使用される場合は、TCAPは、オートラジオグラフィによって局在化されてもよい。オートラジオグラフィの結果は、種々の光学方法によって、またはグレインを計数することによって、オートラジオグラフの粒子密度を決定することによって定量してもよい。
【0126】
(d)実験系
真核生物の発現系が好ましく、TCAPをコードする遺伝子および遺伝子産物の多くの研究のために使用することができ、ペプチドに対して生じた抗体の機能的なアッセイ系としてTCAPペプチドを発現する細胞を使用するために、または薬理学的薬剤の有効性を試験するために、または正常な完全ペプチド、ペプチドの特異的な部分、もしくは天然に存在し、および人工的に産生された変異体ペプチドの機能を研究するために、単離および精製するための大量のペプチドを産生することを含む。
【0127】
言及した技術を使用して、TCAPペプチドcDNA配列またはこれらの部分を含む発現ベクターを、その他の種に由来する種々の哺乳類細胞に、または非哺乳類細胞に導入することができる。
【0128】
本発明に従った組換えクローニングベクターは、適切な宿主での発現のために、本発明のDNA配列の選択されたDNAを含む。DNAは、TCAPペプチドタンパク質を発現することができるように、組換えDNA分子の発現制御配列に対してベクターに操作可能に結合される。発現制御配列は、真核細胞およびこれらのウイルスの遺伝子の発現を制御する配列、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。発現制御配列は、lac系、trp系、tac系、trc系、λファージの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、TCAPの初期および後期プロモーター、ポリオーマに由来するプロモーター、アデノウイルス、レトロウイルス、バキュロウイルス、シミアンウイルス、3-ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、酵母酸性ホスファターゼプロモーター、酵母α接合因子、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0129】
また、異種細胞系でのTCAPペプチドの発現は、構造-機能の相関を示すために、並びに薬物スクリーニングの目的で細胞株を提供するために使用してもよい。細胞にトランスフェクトするためのプラスミド発現ベクターにTCAP DNA配列を挿入することは、基質並びに遺伝子の活性化因子および阻害剤の同定を含む種々の細胞の生化学パラメーターに対するペプチドの影響を試験するために有用な方法である。TCAPの、またはこれらの部分の全てのコード配列のいずれかを含むプラスミド発現ベクターは、インビトロでの突然変異誘発実験に使用することができ、これにより、機能に重要なタンパク質部分が同定されると考えられる。DNA配列は、遺伝子およびその産物の発現を理解するための研究において操作することができる。配列の変化は、相対的な量、組織特異性、および機能的特性に関して発現パターンを変化させるかもしれず、または変化させないかもしれない。
【0130】
また、本発明は、本発明の核酸分子によってコードされるTCAPペプチドの機能を検査するための方法を提供する。ペプチドの発現を欠如する、または発現を部分的に欠如する細胞、組織、および非ヒト動物は、本発明の核酸分子に特定の欠失または挿入の変異を有する本発明の組換え分子を使用して発生されてもよい。組換え分子を、相同組換えによって内因性の遺伝子を不活性化または変化するために使用し、これにより欠損した細胞、組織、または動物を作製してもよい。このような突然変異した細胞、組織、または動物は、通常、本発明の核酸分子によってコードされるタンパク質に応じて、特定の細胞群、発生的パターン、およびインビボ・プロセスを定義するために使用してもよい。
【0131】
また、TCAP応答性の不死化細胞株は、実施例13に記載するようにTCAPモジュレーターを同定するために使用することができる。また、特定のマーカーに対するTCAPおよびTCAPモジュレーターの効果を同定するために使用することができる。これらのマーカーが医学的な症状の調節と関係する限り、TCAPおよび/またはTCAPモジュレーターを、該医学的な症状の診断、調節、および/または治療に使用してもよい。
【0132】
(e)TCAPモジュレーター
上記の抗体およびアンチセンスオリゴヌクレオチドに加えて、TCAPの発現または活性を調整するその他の物質も同定されると思われる。
【0133】
i)TCAPを結合/調整する物質
TCAP活性に影響を及ぼす物質は、TCAPに結合する能力に基づいて同定することができる。
【0134】
本発明のTCAPと結合することができる物質は、潜在的にTCAPに結合する物質とTCAPを反応させる工程と、遊離の物質について、または複合体を形成していないTCAPについて、またはTCAPの活性について、複合体をアッセイする工程とによって同定されうる。特に、TCAPと相互作用するタンパク質を同定するために、酵母ツー・ハイブリッド・アッセイ系を使用してもよい(Fields, S.およびSong, O., 1989, Nature, 340; 245-247)。また、使用してもよい解析系には、ELISAを含む。
【0135】
したがって、本発明は、TCAPと結合することができる物質を同定する方法であって、
1.TCAPと試験物質との間で複合体を形成することができる条件下で、TCAPおよび試験物質を反応させる工程、並びに
2.遊離の物質について、または複合体を形成していないTCAPについて、TCAPと試験物質の複合体をアッセイする工程を含み、複合体の存在によって、試験物質がTCAPに結合できることが示される方法を提供する。
【0136】
別の態様において、本発明は、TCAPまたはTCAP基質に結合することなどによって、TCAP活性を調整することができ、したがって、潜在的にTCAP/基質の相互作用と競合する(すなわち、TCAP活性を阻害する)、または増強する(すなわち、TCAP活性を増強する)ことができる物質を同定する方法であって、本方法は、
1.TCAPとTCAP基質との間で複合体を形成することができる条件下で、TCAPとTCAP基質と試験物質とを反応させる工程、並びに
2.遊離の物質について、または複合体を形成していないTCAPおよびTCAP基質について、TCAPと試験物質、TCAPとTCAP基質、TCAP基質と試験物質の複合体をアッセイする工程を含み、試験物質との複合体の存在によって、場合によっては、試験物質がTCAPまたはTCAP基質に結合できることが示される方法を提供する。
【0137】
別の態様において、TCAPのモジュレーターを同定する方法は、TCAPに対する応答が既知である細胞株の使用を含み、TCAPおよび潜在的モジュレーターの存在下において、該反応をモニターすること、およびモニタリングすることができる。
【0138】
アッセイ法に使用されるTCAPペプチドは、配列番号:14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103に示したアミノ酸配列を有してもよく、または本明細書に記載されているこれらの断片、類似体、誘導体、相同体、または模倣体であってもよい。
【0139】
物質とTCAP複合体の形成を可能にする条件は、物質およびペプチドの性質並びに量などの因子を考慮して選択されてもよい。
【0140】
物質-ペプチド複合体、遊離の物質、または複合体を形成しないペプチドは、従来の単離技術、たとえば、塩析、クロマトグラフィー、電気泳動法、ゲル濾過、分画、生体吸収、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、凝集、またはこれらの組み合わせによって単離してもよい。成分、TCAPもしくは物質に対する抗体、または標識TCAP、または標識物質を、アッセイ法を容易にするために利用してもよい。抗体、タンパク質、または物質は、上記のような検出可能な物質で標識してもよい。
【0141】
本発明の方法に使用されるTCAPまたは物質は、不溶化させてもよい。たとえば、TCAPまたは物質は、適切なキャリアに結合されてもよい。適切なキャリアの例は、アガロース、セルロース、デキストラン、セファデックス、セファロース、カルボキシメチルセルロースポリスチレン、濾紙、イオン交換樹脂、プラスチック・フィルム、プラスチック・チューブ、ガラスビーズ、ポリアミン-メチルビニル-エーテル-マレイン酸コポリマー、アミノ酸コポリマー、エチレン-マレイン酸コポリマー、ナイロン、絹、その他である。キャリアは、たとえば、チューブ、試験プレート、ビーズ、盤、球、その他の形態であってもよい。
【0142】
不溶化されたペプチドまたは物質は、既知の化学的または物理的な方法、たとえば、臭化シアンカップリングを使用して、適切な不溶性キャリアと材料を反応させることによって調製してもよい。
【0143】
また、ペプチドまたは物質は、本明細書に記載されている方法を使用して細胞の表面上に発現させてもよい。
【0144】
また、本発明は、TCAPの作用のアンタゴニストまたはアゴニストのためのアッセイを想定する。
【0145】
本発明の方法を使用してアッセイすることができるアゴニストおよびアンタゴニストは、アゴニスト結合部位、競合的アンタゴニスト結合部位、非競合的アンタゴニスト結合部位、またはアロステリック部位を含む、1つもしくは複数のタンパク質または物質の結合部位に対して作用してもよいことが理解されるであろう。
【0146】
また、本発明によれば、TCAPのアゴニストの効果を阻害するアンタゴニストをスクリーニングすることが可能になる。したがって、本発明は、TCAPの同じ結合部位に競合する物質についてアッセイするために使用してもよい。
【0147】
ii)ペプチド模倣体
また、本発明は、TCAPのペプチド模倣体を含む。「ペプチド模倣体」は、分子間の相互作用においてペプチドの代用として役立つ構造である(総説については、Morganら、(1989), Ann. Reports Med. Chem. 24:243-252を参照されたい)。ペプチド模倣体は、アミノ酸および/またはペプチド結合を含んでも、または含まなくてもよいが、ペプチド、または本発明のエンハンサーもしくは阻害剤の構造上および機能的な特徴を保持する合成構造を含む。また、ペプチド模倣体は、ペプトイド、オリゴペプトイド(Simonら、(1972) Proc. Natl. Acad, Sci USA 89:9367);およびペプチドライブラリーは、本発明のペプチドに対応するアミノ酸の可能性のある全ての配列を表す長さに設計されたペプチドを含む。
【0148】
ペプチド模倣体は、Dアミノ酸によるLアミノ酸の系統的置換、異なる電子的性質を有する基と側鎖の置換によって、およびアミド結合の置換によるペプチド結合の系統的置換によって得られる情報に基づいて設計されてもよい。また、候補となるペプチド模倣体の活性についての高次構造上の要求を決定するために、局部的な高次構造上の制約を導入することができる。模倣体は、逆向ターンの高次構造を安定化もしくは促進し、および分子の安定化を助けるために、等配電子のアミド結合またはDアミノ酸を含んでもよい。特定の高次構造の状態にアミノ酸残基を拘束するために、環状アミノ酸類似体を使用してもよい。また、模倣体には、ペプチドの二次構造の阻害剤の模倣体を含むことができる。これらの構造では、既知のタンパク質の二次高次構造内のアミノ酸残基の3次元的な向きをモデル化することができる。また、N置換されたアミノ酸のオリゴマーであるペプトイドを使用してもよく、新規分子の化学的に多様なライブラリーを作製するためのモチーフとして使用することができる。
【0149】
また、本発明のペプチドは、薬剤開発のためのリード化合物を同定するために使用してもよい。本明細書に記載されたペプチドの構造は、NMRおよびX線結晶学などの多くの方法によって容易に決定することができる。配列は類似するが、これらが標的分子に誘発する生物活性が異なるペプチドの構造を比較すると、標的の構造-活性の相関についての情報を提供することができる。構造-活性の相関の調査から得られる情報は、修飾されたペプチド、または標的分子に関して予測される性質を試験することができるその他の小分子またはリード化合物のいずれかを設計するために使用することができる。リード化合物の活性は、本明細書に記載されているものと同様のアッセイ法を使用して評価することができる。
【0150】
また、構造-活性の相関についての情報は、共同結晶化研究から得てもよい。これらの研究では、所望の活性を有するペプチドを標的分子と結合させて結晶化し、複合体のX線構造を決定する。次いで、構造をその天然の状態の標的分子の構造と比較することができ、このような比較からの情報を、活性を有することが予想される化合物を設計するために使用してもよい。
【0151】
iii)薬物のスクリーニング方法
1つの態様に従って、本発明では、TCAPの活性および/または発現を増減する能力について候補化合物をスクリーニングするための方法が可能となる。本方法は、TCAP活性をアッセイするため、候補または試験化合物の存在下または非存在下における活性をアッセイするため、および化合物がTCAP活性の増減をもたらすかどうかを決定するためのアッセイ系を提供することを含む。このような化合物は、ニューロン増殖の調節異常に関連した症状を治療するためにも有用であろう。
【0152】
したがって、本発明は、TCAP活性または発現に影響を及ぼす化合物を同定するための方法であって、
(a)TCAPペプチドまたはTCAPペプチドをコードする核酸と共に試験化合物をインキュベートする工程;および、
(b)TCAPペプチドの活性または発現の量を決定し、対照(すなわち、試験物質の非存在下のもの)と比較する工程を含み、対照と比較したTCAP活性または発現の変化によって、試験化合物がTCAPの活性または発現に対して効果を有することが示される方法を提供する。
【0153】
さらなる態様に従って、本発明では、TCAPペプチドの発現を増減する能力について候補化合物をスクリーニングするための方法が可能となる。本方法は、候補化合物と共に細胞(本細胞は、リポーター遺伝子コード領域に操作可能な状態で連結されたTCAPをコードする遺伝子の制御領域を含む)を置くことと、およびリポーター遺伝子の発現の変化を検出することとを含む。
【0154】
このような化合物は、培地に添加されるタンパク質化合物、化学薬品、および種々の薬物から選択することができる。選択された試験化合物の存在下でのインキュベーション期間後、変異TCAPの発現を、本明細書に含まれる実施例において説明したように、標準的なノーザンブロット法手順を使用してTCAP mRNAのレベルを定量することによって検査して、試験化合物の結果として発現の任意の変化を決定することができる。また、タンパク質発現を修飾するために開発された化合物の機能を試験するために、TCAPを発現する構築物をトランスフェクトした細胞株が使用できる。
【0155】
(f)治療的な用途
前述のように、本発明のTCAPは、cAMP、cGMPの活性、ニューロンの増殖、および神経病の発生に関与する。したがって、本発明は、cAMP、cGMP、ニューロンの増殖、ニューロンの連絡、またはニューロンの細胞増殖の調節異常に関連した症状を治療する方法であって、それを必要とする細胞または動物に対し、TCAPの発現および/または活性を調整する薬剤の有効量を投与する工程を含む方法を提供する。
【0156】
「TCAPの発現および/または活性を調整する薬剤」の用語は、TCAPの発現および/または活性を変えることができる任意の物質を意味する。投与に使用してもよい薬剤の例は、TCAPをコードする核酸分子;TCAPペプチド、並びにその断片、類似体、誘導体、または相同体;抗体;アンチセンス核酸;ペプチド模倣体;および本明細書に記載したスクリーニング法を使用して単離された物質であって、症状のない人と同様のTCAPレベルおよび/または機能にすることができるものを含む。
【0157】
本明細書に用いられる「有効量」という用語は、所望の結果を達成するために必要な用量および期間について有効な量を意味する。
【0158】
本明細書に用いられる「動物」という用語は、TCAPに反応する動物界の全てのメンバー、好ましくはヒトおよび非ヒト動物を含む哺乳類、より好ましくはヒトを含む。別の態様において、動物は、ウシ、ウマ、ブタ、およびヒツジなどの家畜化された動物を含み、別の態様において、動物は、トリのファミリーに由来し、ニワトリを含む。
【0159】
別の態様に従って、本発明は、症状に対する潜在的な治療手段としての遺伝子治療であって、TCAP遺伝子の正常なコピーが、いくつかの異なった発症した細胞種の正常なTCAPペプチドをうまくコードするように患者に導入される治療を可能にする。
【0160】
レトロウイルスのベクターは、これらが高い効率で感染し、かつ安定な組込みおよび発現をするので、特に体細胞遺伝子治療に使用することができる。しかし、ターゲットとされた細胞は、分裂することができなければならず、正常タンパク質またはペプチドのレベルの発現は、高いはずである。TCAPをコードする遺伝子は、レトロウイルスのベクターにクローニングすることができ、その内因性のプロモーターからまたはレトロウイルスの末端反復配列から、または関心対象の標的細胞タイプ(リンパ球など)に特異的なプロモーターから駆動させることができる。使用することができるその他のウイルスのベクターは、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、またはエプスタイン-バーウイルスなどのヘルペスウイルスを含む。また、遺伝子導入は、インビトロでの感染に必要とされる非ウイルス手段を使用して達成することもできる。これは、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、電気穿孔法、陽イオン性または陰イオン性の脂質製剤(リポソーム)、およびプロトプラスト融合法を含む。これらの方法は、利用できるものの、より低い効率であることが多い。
【0161】
TCAP遺伝子の機能を阻害するために、および治療薬の設計の基礎として、アンチセンスに基づいた戦略を使用することができる。原理は、mRNAと相補アンチセンス種の間の細胞内ハイブリダイゼーションによって、遺伝子発現の配列特異的な抑制を達成することができるという仮説に基づく。RNAまたはDNAの有意鎖に高い特異性で結合するアンチセンス鎖ヌクレオチドは、合成することが可能である。ハイブリッドRNA二重鎖の形成は、標的mRNAのプロセシング/輸送/翻訳、および/または安定性を妨げると思われる。
【0162】
ハイブリダイゼーションは、アンチセンス効果を生じさせるために必要とされる。アンチセンス効果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用、アンチセンスRNA、DNAの注入、およびアンチセンスRNA発現ベクターのトランスフェクションを含む種々のアプローチを使用して記載されている。
【0163】
治療的なアンチセンスヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドまたは発現ヌクレオチドとして作製することができる。オリゴヌクレオチドは、通常15〜20核酸塩基の長さであるDNAの短い一本鎖である。発現ヌクレオチドは、アデノウイルス、レトロウイルス、またはプラスミドベクターなどの、発現ベクターを使用して作製される。ベクターは、培養の細胞に、または患者に投与され、次いで、その細胞がアンチセンスヌクレオチドを作製する。発現ベクターは、アンチセンスRNAを産生するように設計することができ、塩基の長さを数ダース〜数千まで変化させることができる。
【0164】
アンチセンス効果は、制御(センス)配列によって誘導することができる。表現型の変化の範囲は、非常に変わりやすい。アンチセンスによって誘導される表現型の効果は、生物学的なエンドポイント、タンパク質レベル、タンパク質活性化の測定、および標的mRNAレベルなどの基準の変化に基づく。
【0165】
(g)ストレス応答、関連した症状、および不安の調整のための方法およびTCAPの使用
本発明はまた、該動物に対するTCAPの効果をモニターすることによって、動物の不安障害を検出する方法を提供する。不安反応がベースラインのレベルと比較して減少する(抗不安)場合、動物は、高度な不安関連障害を有するであろう。動物の不安反応がTCAPの投与に応答して増大する場合、動物は、低不安障害を有するであろう。
【0166】
本発明は、該動物にTCAPを投与する工程、または該動物のTCAP発現を上方制御する工程によって、動物の不安状態を正常化するための方法を提供する。
【0167】
また、本発明は、動物において所望の不安状態を誘導する方法であって、
(a)動物が低または高不安動物であるかどうかを決定する工程;並びに
(b)(i)低不安動物の不安を増大し、および高不安動物の不安を減少させるために、TCAPまたはTCAPアゴニスト(TCAP発現を上方制御する物質もしくは核酸分子を含む)の有効量を投与する工程;または
(ii)高不安動物の不安を増大し、および低不安動物の不安を減少させるために、TCAPまたはTCAPアンタゴニストの阻害剤(TCAPアンチセンス核酸分子などの、TCAP発現を下方制御する物質または核酸分子を含む)を投与する工程による方法を提供する。
【0168】
また、本発明は、TCAP活性のモジュレーターを検出する方法であって、既知の不安状態(高または低不安)の動物にTCAPを投与する工程と、該動物に潜在的なモジュレーターを投与し、該物質の存在下および非存在下におけるTCAPに対する反応を比較する工程とを含む方法を提供する。TCAPに対する動物の反応が、ベースライン(TCAP単独、および物質なしの動物)のものと異なる場合、該物質は、TCAP活性のモジュレーターである。このような化合物は、望まれないストレスまたは不安レベルの動物を治療するために使用してもよい。
【0169】
1つの態様において、TCAPは、TCAP-1、または同様の生物活性を有するこれらの類似体、誘導体、もしくは断片である。
【0170】
別の態様において、TCAPのモジュレーターは、動物のストレス応答を調整するまたは調節するために投与される。
【0171】
本明細書に用いられるストレスとは、ホメオスタシスまたは代謝バランスがない任意の状態である。また、ストレスは、ストレス応答を引き起こすストレス要因の一般的な状態をいうために使用される(Sapolsky, 1992)。ホメオスタシスは、内部環境の正常な安定度をいう(Sapolsky, 1992)。ストレス要因は、生理学的なバランスを崩壊させるものとして定義され、物理的または心理的なものである(Sapolsky, 1992)。たとえば、本明細書の行動に関する実験(実施例10および11)でのストレス要因は、聴覚の驚愕試験(startle test)を使用した120dBの音として定義される。
【0172】
本明細書に用いられるストレス応答とは、ストレス要因に対する生理学的または行動の反応である。たとえば、行動に関する実験(実施例10および11)において、ストレス応答は、120dBの緊張度の提示に続く聴覚の驚愕試験装置(Med Associates, St. Albans, VT)によって測定される驚愕反応である。
【0173】
本明細書に用いられる不安原性とは、一般に認められた試験での不安の行動に関する測定値を増加させる内部または外部の刺激を意味する。本明細書の実施例10および11において、不安の行動に関する測定は、120dBの音の提示に続く聴覚の驚愕試験装置(Med Associates, St. Albans, VT)によって測定される驚愕反応である。不安原性反応は、驚愕反応の増加である。
【0174】
本明細書に用いられる抗不安とは、一般に認められた試験での不安の行動に関する測定値を減少させる内部または外部の刺激を意味する。本明細書の実施例10および11において、120dBの音の提示に続く聴覚の驚愕試験装置(Med Associates, St. Albans, VT)によって測定される驚愕反応である。抗不安反応は、驚愕反応の減少である。
【0175】
不安は、一般化された、非特異的なキュー(cue)によって促進されるであろう障害の一般化された状態であって、生理学的な覚醒を含むが、しばしば組織化された機能的な行動を伴わない状態をいう(Langら、2000)。不安の動物モデルでは、これらの障害の原因、総体症状、または治療の一部の局面を表すことが試みられる(MenardおよびTreit, 1999)。本研究では、聴覚の驚愕反応を不安の測定として使用した(Franklandら、1996, 1997)。この試験では、大きく予想外の聴覚刺激によって誘導される単純な反射を測定し、標準化された装置(Med Associates, St. Albans, Vermont)を使用して測定することができる。
【0176】
本明細書に用いられる高不安とは、媒体注射後にベースライン反応よりも大きな驚愕反応を有する動物、たとえばラットを意味する。平均驚愕反応は、ベースラインの試行および注射(治療)後の試験期間に対して算出する。次いで、それぞれの動物、たとえばラットについて、治療/ベースライン比を算出する。この比が1よりも大きい場合、動物は高不安として分類される。
【0177】
本明細書に用いられる低不安とは、媒体注射後にベースライン反応未満の驚愕反応を有する動物、たとえばラットを意味する。上記のように、それぞれの動物、たとえばラットについて、治療/ベースライン比を算出する。この比が1未満の場合、動物、たとえばラットは、低不安として分類される。
【0178】
本明細書に用いられる通常の不安とは、媒体注射後にベースライン反応と同様の驚愕反応を有するラットなどの動物を意味する。上記のように、それぞれのラットについて、治療/ベースライン比を算出する。この比が1に等しい場合、動物、たとえばラットは、通常の不安として分類される。
【0179】
(h)細胞増殖の調節および癌治療におけるTCAPの役割
1つの態様において、本発明は、それを必要とする動物に対し、TCAPの有効量を投与することによって細胞増殖を調節する方法を提供する。別の態様において、TCAPは、細胞増殖を減少および/または阻害するために、インビボでまたはインビトロで投与される。1つの態様において、細胞は癌である。別の態様において、細胞はニューロン腫瘍細胞である。
【0180】
1つの態様において、TCAPまたはこれらのモジュレーターは、神経芽細胞腫またはその他のニューロンの腫瘍などの癌の治療に使用することができる。
【0181】
(i)薬学的組成物
TCAP、TCAPペプチド、抗体、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする核酸、並びにTCAPの活性または発現を調整するその他の薬剤を含む上記記載の物質は、インビボでの投与に適した生物学的に適合性を有する形態で対象に投与するための薬学的組成物中に処方してもよい。「インビボでの投与に適した生物学的に適合性を有する形態」とは、治療的な効果が任意の有毒作用を上回って投与されるような物質の形態を意味する。物質は、ヒト、および動物を含む生きている生物に投与されうる。
【0182】
したがって、1つの態様において、本発明は、TCAPに関連し、またはTCAPで調節される医学的な症状を治療するための医薬の調製における、TCAPまたはそのモジュレーターの使用を提供する。たとえば、細胞増殖(たとえば、癌)、ストレス、不安、またはニューロンの連絡障害の調節において提供される。
【0183】
本発明の薬学的組成物の治療的に有効な量の投与とは、所望の治療的な結果を達成するために必要な用量および期間での有効量として定義される。たとえば、物質の治療的な有効な量は、個々の疾病状態、年齢、性、および重量、並びに個々に所望の反応を引き出すための物質の能力などの因子によって変更してもよい。投与法は、最適な治療反応を提供するように調整してもよい。たとえば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよく、または用量は、治療的状況の緊急性に代表されるように、比例して減らしてもよい。
【0184】
作用物質は、注射(皮下の、静脈内の、その他)、経口投与、吸入、経皮適用、または直腸投与などによって、便利な方法で投与してもよい。投与の経路に応じて、作用物質は、酵素、酸、および化合物を不活性化させうるその他の天然の条件による作用から化合物を保護する材料中に被覆してもよい。作用物質が、たとえば、TCAPペプチドをコードする核酸である場合、当技術分野における既知の技術を使用して送達することができる。
【0185】
本明細書に記載されている組成物は、薬学的に許容される組成物の調製のためのそれ自体既知の方法によって調製することができ、作用物質の有効量を薬学的に許容される媒体と混合物中に組み合わせるようにして対象に投与することができる。適切な媒体は、例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA 1985)または「Handbook of Pharmaceutical Additives」(MichaelおよびIrene Ash編、Gower Publishing Limited, Aldershot, England (1995))に記載されている。これに基づいて、組成物は、もっぱら1つまたは複数の薬学的に許容される媒体または希釈液と合わせた物質の溶液を含み、適切なpHを有する緩衝化された溶液に含まれていてもよく、および/または生理液によって等浸透圧にしてもよい。この点に関しては、米国特許第5,843,456号を参照することができる。また、当業者に認識されるように、本明細書に記載されている物質の投与は、不活性ウイルスキャリアによるものであってもよい。1つの態様において、TCAPは、塩類溶液および酢酸を含む媒体中に投与されうる。
【0186】
(j)キット
本発明の方法を実施するために適した試薬は、適切な容器に詰められ必要な材料を提供する便利なキットに梱包されていてもよい。このようなキットは、本発明の核酸分子もしくはペプチドまたは本発明の核酸分子もしくはペプチドの抱合体を検出するために必要とされる全ての試薬、TCAPの潜在的なモジュレーターなどの別の物質、および/または本明細書に記載されている方法によって試料中のcAMPまたはcGMPなどのTCAP活性の指標を検出するための物質、および本発明の方法を実施する際に有用な任意の適切な補助物質を含んでもよい。
【0187】
本発明の1つの態様において、キットは、本発明の核酸分子またはこれらの予め定められたオリゴヌクレオチド断片を増幅することができるプライマー、ポリメラーゼ連鎖反応法において増幅された核酸分子またはこれらの予め定められた断片を産生するために必要とされる全ての試薬、および増幅された配列をアッセイするための手段を含む。1つの態様において、プライマーは、TCAPタンパク質、好ましくは配列番号:…のタンパク質をコードする核酸を増幅することができる。
【0188】
また、キットは、PCR産物を消化するための制限酵素を含んでもよい。本発明の別の態様において、キットは、本発明の核酸分子とハイブリダイズするヌクレオチドプローブ、核酸分子とヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションのために必要とされる試薬、およびその使用説明書を含む。本発明のさらなる態様において、キットは、本発明の抗体、および試料中において本発明のTCAPペプチドに抗体を結合させるために必要とされる試薬を含む。
【0189】
本明細書に記載されている方法に従って試料を試験する前に、試料は、遠心分離および濾過などの当技術分野における既知の技術を使用して濃縮してもよい。本明細書に記載されているハイブリダイゼーションおよび/またはPCRに基づいた方法については、核酸は、当技術分野において既知の技術を使用して試験試料の細胞抽出物から抽出してもよい。
【0190】
以下の限定されない実施例は、本発明の例示である。
【0191】
実施例
実施例1 テネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)の同定
A.TCAP mRNAの同定
mRNAのクローニング。一方向性のベクター(Unizap, Stratagene, La Jolla CA)を使用して、以前に記載された(Barsyteら、1999)ように、ニジマス視床下部のcDNAライブラリーを構築した。合計600,000クローンを、ランダムに標識した305bpのハムスターウロコルチンcDNAプローブ(Robinsonら、1999)
を使用してスクリーニングした。一次、二次、および三次スクリーンでは、全て同じプローブを利用した。最終的なスクリーニングの後、陽性クローンのサイズを制限解析によって決定し、次いで、自動化されたBig Dye法を使用してシーケンスした。
【0192】
5つの陽性クローンが、ニジマス視床下部のライブラリーから単離された。これらのうちで、1つが、推定ニジマスTen-m3相同体の部分配列を示した(図1)。クローンは、769塩基の翻訳部分をカバーする2986塩基長であった。配列番号1は、これらの756塩基部分[配列番号:2および734塩基の3'非翻訳の領域を示す。終止コドンおよび翻訳される部分は、マウス(アクセッション番号AB025412)[配列番号:132]、ヒト(アクセッション番号AK027474)[配列番号:133]、およびゼブラフィッシュ(アクセッション番号AB026976)[配列番号:134]のTen M3相同分子種と共に整列化させて同定した。NICBサーバ上のLocus Linkを使用してヒト遺伝子配列(Locus Link ID# 10178)に基づくと、ニジマス配列は、遺伝子の末端の6エキソンを含んでいた。最後の3'エキソンは、生理活性ペプチドを示唆する40〜41残基のカルボキシ末端配列[それぞれ、配列番号:13および14]を有する251アミノ酸残基の配列[配列番号:3]をコードした。推定上のアミド化シグナルは、40〜41残基のカルボキシ末端配列およびTAA終止コドンにすぐ隣接したGKRアミノ酸モチーフによって示された。40残基上流で、PC-7様の切断シグナル、直後にグルタミンが存在し、推定上の遊離ペプチドがピログルタミン酸から開始するであろうことを示唆する。この切断部位は、必ずしも通常の方法でプロセシングされるというわけではなく、40または41アミノ酸残基の成熟したペプチド(終止コドンから43または44アミノ酸残基上流で始まる)が生じうる。
【0193】
B.遊離TCAPペプチドの抽出
組織収集:マウス脳(Mus musculus;n=10;1.8g)を収集し、-80℃で1か月間貯蔵し、その時点で、これらを取り出して、直ちに液体窒素に入れた。脳組織は、液体窒素の存在下で乳鉢および乳棒を使用して圧壊し、粉砕した。
【0194】
C18充填材の活性化:Bondpack(登録商標)C18バルク充填材(1g;125A;37〜55μm;Waters Corporation, Milord, MA, USA)を100%のメタノール(5ml)で活性化し、ボルテックスして、静置した(5分)。過剰なメタノールを除去した。次いで、C18をPBS(5ml、pH7.6)で2回洗浄した。さらにPBSの一定分量を添加して(5ml)、ボルテックスし、遠心し(5000rpm;5分);上清を捨てた。
【0195】
組織抽出:アセトニトリル(90%)およびTFA(0.05%)を5:1の重量に対する体積の比で粉末状の脳に添加し、一定分量攪拌振盪機で1時間混合した。混合物を遠心し(8000rpm×20分);上清を除去して保存した。残りの固形物を最初の抽出に使用した40%の溶媒体積のアセトニトリル(90%)およびTFA(0.05%)で逆抽出し、すでに記載したようにボルテックスして、遠心した。上清をプールし、活性化C18パッキング材と組み合わせて、ボルテックスし、混合し(1時間)、遠心した(8000rpm×10分)。上清を捨てて、一方でペレットをそれぞれ20%、50%、および90%の独立した3回連続のアセトニトリル抽出に供した。アセトニトリル(5ml)をペレットに添加し、ボルテックスして、混合し(20分)、遠心した(6000rpm×10分)。生じた上清を保存し、HPLC解析のために減圧濃縮器(Brinkman Instruments)で800μlに濃縮し、一方でペレットを同様に再抽出した。
【0196】
脳抽出物中の遊離TCAPのHPLC精製
マウス脳(n=10)から抽出したTCAPペプチドを精製するために、UV検出器モジュール168およびC18カラム(3.5μm粒径;Waters Inc)に取り付けられたベックマンモデル126 HPLC システムゴールド(Beckman model 126 HPLC System Gold:Beckman, Palo Alto, CA)を使用した。
【0197】
単一の注射(800μl)で、1ml注射ループを通してカラムに適用し、二重溶媒系(A:0.05%のトリフルオロ酢酸(TFA);B:80%のアセトニトリル、0.05%のTFA)を使用して1ml/分の流速でカラムに送った。10分の初期のアイソクラチック(isocratic)期間に続いて、移動相Bを75分かけて10%から60%に増大し、5分間アイソクラチックに保持し、5分かけて10%に戻した。画分を収集し(1ml/画分)、一定分量を取り(500μl)、質量分析を使用して解析するために50μlに濃縮した。
【0198】
実施例2 細胞および組織抽出物中の切断されたTCAPの検出
実施例1に記載したように、TCAPを検出するためにHPLCを使用することができる。また、質量分光法を使用することもできる。また、その他の検査法は、HPLC、質量分光法との組み合わせ、または放射性免疫アッセイ法、ELISA、キャピラリー電気泳動法、免疫蛍光共焦点顕微鏡観察法など、これらを単独で使用することもできる。質量分析法は、電荷を持った分子(イオン)の質量電荷比に基づいて分子を同定する。次いで、分子質量の正確な測定が決定されることにより、分子の同定ができる。より大きなペプチドは、衝突チャンバー内でペプチドをその後に断片化することによってシーケンスすることができる。これによって、ペプチド結合の優先的な切断が生じる。アミノ酸およびペプチド断片は、これらの質量電荷比によって同定される。放射免疫アッセイまたは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)は、関心対象の分子に特異的な抗血清を利用する。分子(TCAP)は、タグが付けられた構造的に同様の参照分子が抗体に結合することと競合する。結合画分と未結合画分を互いに分離して、残りのタグが付けられたTCAPの量を測定する。この測定は、存在する標識されていないTCAPの量に比例する。また、キャピラリー電気泳動法は、抗体反応を使用して、TCAPを同定するために使用することができる。この方法では、未結合の成分を電場において移動させることによって、結合した成分から分離させる。免疫蛍光共焦点顕微鏡観察法では、TCAPに特異的に結合する抗体および一次抗体に結合する二次抗体を利用する。二次抗体は、適切な基質の導入によって蛍光反応を触媒する酵素に効率的に結合されている。蛍光量は、TCAPの量に比例し、デジタル画像分析を使用して測定される。
【0199】
ペプチドの質量分析検出
試料は、5μlの1:1(vol/vol)アセトニトリル:水(プラス0.1%(vol/vol)のギ酸)に溶解した。典型的には、それぞれ2〜3μlの試料をガラス毛管プローブ先端部に充填し、Micromass Q-TOF(ハイブリッド4重飛行時間)質量分析計(Micromass, Manchester, UK)で解析した。全てのスペクトルは、ナノスプレー(nanospray)、陽イオンモード下で後天性(acquired)であった。MS測定については、4重RF値を0.5に設定した。走査領域(m/z)は、200〜2000の間で、1sの走査時間、および0.1sのドウェル(dwell)時間であった。データは、MassLynxプログラム(Micromass, Manchester, UK)を使用して解析した。
【0200】
実施例3 ペプチドの合成および可溶化
ニジマスTCAP-3[配列番号:13]であって、末端イソロイシン(I)がアミド化されたもの[配列番号:15を得るために]を自動化ペプチド合成機Model Novayn Crystal (NovaBiochem, UK Ltd. Nottingham, UK)で、連続的フローのFmoc化学(Calbiochem-Novabiochem Group, San Diego, CA)を使用して、PEG-PS樹脂上で合成した。8倍過剰のジイソプロピルエチルアミン(Sigma Aldrich Canada Ltd)、およびHATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート, Applied Biosystems, Foster City, CA)によって活性化した4倍過剰なFmoc-アミノ酸を1:1(モル/モル)の比でカップリング反応の際に使用した。反応時間は、1時間であった。20%のピペリジン(Sigma-Aldrich Canada Ltd)のN,N-ジメチルホルムアミド(dimethylformide)(DMF;Caledon Laboratories Ltd, Canada)溶液を合成サイクルの脱保護工程に使用した。DMFは、社内で精製し、合成のための溶剤としていつも新たに使用した。最終的なペプチドの切断/脱保護は、トリフルオロ酢酸(TFA)、チオアニソール、1,2エタンジチオール、m-クレソール、トリイソプロピルシラン、およびブロモトリメチルシラン(Sigma-Aldrich Canada Ltd)で40:10:5:1:1:5の比で行った。最後に、これを水性0.1%のTFA溶液を使用してSephadex G-10カラムの上で脱塩し、凍結乾燥した。ペプチド構造は、逆相HPLC、アミノ酸分析、および大気圧イオン化質量分析によって確認した。HPLCおよび質量分光測定は、本明細の実施例1および2にて説明したように行うことができる。上記の方法を参照されたい。同法は、マウスTCAP-1を合成するために使用した。
【0201】
ペプチドは多くの異なる方法を使用して可溶化されたが、最高の結果は、αシクロデキストリンを使用して得られた。酢酸(1μl)を室温で乾燥TCAPに添加し、ボルテックスして、静置した(30分)。次いで、αシクロデキストリン(company)を4:1の乾燥重量に対する体積の比(0.25μg/μl)で添加し、ボルテックスして、残りのプロセスのために2時間および室温でエッペンドルフバキュフュージ(Eppendorf Vacufuge)において30℃でもとの体積の10%に濃縮した。次いで、蒸留した脱イオン水および生理食塩水を独立してそれぞれ1:1および3:1の濃縮した体積に対する体積の比で添加した。この溶液(0.5μg/μl)をボルテックスして、遠心した(11,000rpm;3分)。上清を一定分量とって、4℃で保存した。同法は、マウスTCAP-1を含むその他のTCAPSを合成し、可溶化するためにも使用した。
【0202】
実施例4 ペプチド配列の関係および系統発生学
TCAP部分を含むニジマステネウリン3エキソンは、ゼブラフィッシュ、マウス、およびヒトのその相同分子種間で高度な保存を示す(図2)。しかし、マス配列も、テネウリン1〜4として示される4つのマウステネウリンタンパク質パラログ(図3)、および同様に配列データベースにおいて見出された4つのヒトパラログ(図4)との高い配列類似性を示した。全てが、タンパク質ファミリーのメンバー間で高度な類似性を有する。テネウリンタンパク質ファミリーは、カルボキシ末端が原形質膜の細胞外面上に示されるタイプII膜貫通のタンパク質を表す(図6AおよびB)。TCAP部分は、タンパク質のC末端残基のみを表す。TCAP配列は、脊椎動物の種全体において非常に保存されており、ショウジョウバエ型でさえ約60%の配列同一性を有する(アクセッション番号AF008228)(図7AおよびB)。
【0203】
図5は、終止コドンをプラスしたヒト、マウス、ゼブラフィッシュ、およびニジマスのプレTCAPヌクレオチドコード配列を図示する。TCAPのコード配列(40および41アミノ酸残基の配列)は、図から容易に決定することができる。
【0204】
TCAPファミリーおよびCRFファミリーの一次構造内で保存されたモチーフの比較では、マッチを示す(図9)。アミノ末端のI/L-S-X-X(X)-L/V[配列番号:129]、中央のL/V-L/I-X-V/脂肪性残基[配列番号:130]、およびカルボキシ末端のモチーフN-I/A-H/塩基性残基-I/L/F-脂肪性残基[配列番号:131]の保存されたモチーフ。しかし、類似性のより強制的な基準は、二次構造予測によって示される(図10)。TCAPは、ペプチドスーパーファミリーのその他のものと比較して非常に類似した極性プロファイルを示す。カイト-ドゥーリトル・プロットの使用によって、疎水性は、中央およびカルボキシ末端領域内に一般的な類似性が示されるが、より疎水性の領域がアミノ末端領域に示される。
【0205】
CRFおよびウロコルチンは、お互いに高い配列類似性を示し、またウロコルチン2および3は、高い類似性を示すが、これらの2つのパラロガスな系統間の同一性のレベルは、約11%だけである。TCAPメンバー間の同一性のレベルは、約60%である(図8)。また、CRFおよびTCAPは、昆虫利尿薬ペプチドを含む非常に大きなペプチドファミリーに属する(図11)。鍵となるモチーフは、図9に概説してあり、昆虫利尿薬ペプチドが含まれるときのアラインメントを示す。
【0206】
実施例5 テネウリンmRNAのPCR発現
脳抽出物中および細胞株におけるテネウリンタンパク質の存在は、PCRを使用して確認した。この実験に利用するプライマーは、マウスTen-M1、2、3、および4の公表された配列の3'末端[配列番号:4〜7]から設計した。TCAP-1のフォワードプライマー
[配列番号:121]は、テネウリン1のヌクレオチド7938〜7962に相補的である。テネウリン1リバースプライマー
[配列番号:122]は、テネウリン1のヌクレオチド8262〜8288に特異的である。プライマーは、351bpのTen-M1 PCR産物を生じることが予測される。テネウリン2フォワードプライマー
[配列番号:123]は、テネウリン2のヌクレオチド7920〜7944に相補的である。テネウリン2リバースプライマー
[配列番号:124]は、テネウリン2のヌクレオチド8354〜8379に相補的である。本プライマーは、テネウリン2の460bpのPCR産物を生じることが予測される。テネウリン3のフォワードプライマー
[配列番号:12]5は、テネウリン3のヌクレオチド7681〜7705に相補的である。テネウリン3リバースプライマー
[配列番号:126]は、ヌクレオチド8139〜8159に特異的である。テネウリン3プライマーについて予測されるPCR産物は、479bpである。テネウリン4のフォワードプライマー
[配列番号:127]は、テネウリン4のヌクレオチド7868〜7890に相補的である。テネウリン4リバースプライマー
[配列番号:128]は、テネウリン4のヌクレオチド8446〜8469に相補的である。プライマーは、602bpのテネウリン4 PCR産物を生じることが予測される。
【0207】
Gn11細胞の総RNAは、RNeasyミニ・キット(Qiagen)を使用して単離した。第1ストランドの合成は、ファースト・ストランド・ビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して行った。簡単には、2μgの総RNAを第1ストランド反応ビーズ(緩衝液、dNTPs、マウス逆転写酵素、RNAguard、およびRNase/DNase不含BSAを含む)および33μlの体積の0.2μgのランダムpd(N)6と混合した。伸張は、37℃において60分間行った。
【0208】
テネウリン1、2、3、および4のPCRは、それぞれ、1μlのcDNAを使用して、0.2mMの各dNTP、5μlの10×緩衝液、1.5mMのMgCl、1μlのTaq DNAポリメラーゼ、0.2μMの各テネウリンプライマー、および0.1μMの各GAPDHプライマー(フォワードおよびリバースプライマー;予想されるGAPDH DNA〜200bp)を含む50μlの最終反応体積で行った。最初の変性は、94℃で3分間の間隔にわたって設定した。94℃で1分、60℃で1分、および72℃で1分を35サイクル後、72℃で5分間の伸張を行った。PCR産物は、1.5%のアガロースゲル電気泳動によって検査した。適切なサイズのテネウリン1、2、および4のDNAを、DNA抽出キット(MBI-Fermentas)を使用してゲルから抽出した。ゲルから回収されたテネウリン1、2、および4 DNAは、TOPO TAクローニングキット(TOPO TAクローニングキット)(Invitrogen Corporation)を使用することによってサブクローニングした。簡単には、テネウリン1、2、または4 DNAを有するpCR(登録商標)2.1-TOPOプラスミドを化学的に形質転換受容性にした大腸菌に形質転換し、LB寒天板上で、および連続的に液状のLB培地で培養した。産物は、パーフェクトプレップ・プラスミド・ミディ・キット(Perfectprep Plasmid Midi Kit:Eppendorf)を使用して精製した。制限エンドヌクレアーゼEcoRlを使用してプラスミドを消化することによって、次いで電気泳動法によって、陽性結果のものを選択した。陽性プラスミドを商業的なT7シーケンシングプライマー(AGTC Corp, Toront, Canada)を使用してシーケンスした。
【0209】
結果
陽性の増幅産物は、PCRを使用して、テネウリン1、2、および4の成体マウス細胞から得られた(図12)。同様に、不死化ニューロン株Gn11から抽出したmRNAを使用して、同じ産物を得た。同じ腫瘍から単離した神経細胞株NLTでは、テネウリン2および4のみの発現を示した。しかし、神経芽細胞腫細胞株Neuro2aでは、テネウリン遺伝子ファミリーの4つ全てを発現するようにみえた。Neuro2aは、使用した細胞株で最も分化していないものである。また、ラット線維芽細胞細胞株(TGR1)では、パラログ1、2、および4の存在を示した(データ示さず)。増幅シグナルの同一性は、配列解析によって確認した。TCAP-1プライマーは、351bpの配列を生じ、テネウリン1 DNAと99.43%の一致を示した。TCAP-2プライマーは、455bpの配列を生じ、テネウリン2 DNAと99.56%の一致を示した。TCAP-4プライマーは、602bpの配列を生じ、Tenuerin 4 DNAと99.83%の一致を示した。TCAP-3プライマーは、マウス神経芽細胞腫Neuro2a細胞から306bpの配列を増幅した。増幅された配列は、TCAP切断シグナルの上流に173bpの欠失を有する。この知見は、TCAP-3プライマーは特異的であるが、Neuro2a細胞がテネウリン3の変異体を有するようであることを示す。
【0210】
実施例6 細胞増殖実験
TCAPを評価することができるモデル系を確立するために、初めにいくつかの細胞株を利用した。最初に、マウス神経芽細胞腫細胞株Neuro2a、ヒト乳がん細胞株MCF-7、マウスGnRHを分泌する不死化ニューロン株NLTおよびGn11 COS-7細胞、並びにラット線維芽細胞細胞株TGR1。予備研究では、細胞が細胞増殖の減少を示したという点で(データ示さず)、細胞がTCAPニジマスTCAP-3、配列番号:13:アミド化されたもの[配列番号:15]の効果に応答することを示した。研究は、以下の細胞増殖研究に従って本質的に行った。Gn11およびTGR1細胞をさらなる研究に使用するために選択した。
【0211】
繊維芽細胞株TGR1およびHO16.4cに対するTCAPの薬理学的試験:3×104のTGR1細胞/ウェルを含む2つのプレート、および3×104 HO16.4c細胞/ウェルを含む2つのプレートを完全な血清培地中に、試験のために調製した。プレートのそれぞれ6ウェルを試験群として設計した。24時間後に、薬物の一定分量(20μl)を、12時間の間隔で、新しい完全な血清DMEMを使用して培地を交換した後に添加した。細胞を4時間ごとに顕微鏡で観察した。2つの細胞株の数は、48時間および72時間の段階でTCAP群において有意に低いことが見出された。細胞は、処理の48時間および72時間後に計数した。完全な血清培地中の3×104 Gn11細胞/ウェルを含む2つのプレートを試験のために調製した。プレートのそれぞれ6ウェルを試験群として設計した。24時間後に、薬物(媒体:生理食塩水+酢酸;10-6MのTCAP-3)の一定分量(20μl)を、12時間の間隔で、新しい完全な血清DMEMを使用して培地を交換した後に添加した。細胞を4時間ごとに顕微鏡で観察した。細胞は、処理の48時間および72時間後に計数した。
【0212】
0、12、24、および36時間における10-6MのTCAPの濃度の投与では、マウスニューロン細胞株(Gn11)の増殖を減少させ(図13A−48時間および13B−72時間)、48時間(図14)では50〜60%にラット線維芽細胞細胞株(TGR1)の増殖を減少させ、および媒体処理した細胞と比較して48時間ではHO16.4c細胞(図15)の増殖を減少させた。
【0213】
TCAPが上記の細胞株の細胞増殖を阻害する能力は、癌の治療において腫瘍増殖を抑え、転移を阻害するためにTCAPを使用することができるなどの、細胞増殖および関連した医学的な症状の調節にペプチドが有用であろうことを示す。好ましい態様において、TCAPは、ニューロンの腫瘍の治療に使用することができる。
【0214】
実施例7 環状ヌクレオチド実験
I.A.cAMPおよびcGMPアッセイ法
約106のGn11細胞を20μLの10-9、10-8、または10-7、または10-6 MのTCAP-1またはTCAP-3で処理し、10分間、37℃でインキュベートした。培地およびペプチドを除去して350μLの0.1MのHCl、0.1%トリトンX-100溶液を使用して細胞を溶解した。同じ濃HClおよびトリトンX-100溶液並びに提供された標準的な濃縮物を使用して、5つの規準液を200、50、12.5、3.12、および0.78pmol/mlの濃度に作製した。全ての反応は3回行った。ブランク、非特異的な結合、総活性(TA)、ゼロ結合、5つの標準、および12個の試料についてウェルを準備した。96ウェルのIgG被覆プレートを使用して、50μLの中和試薬をブランクを除くそれぞれのウェルにピペットで移した。150μLの0.1MのHCl/0.1%のトリトン溶液をNSBウェルにピペットで移し、100μLのこの溶液をゼロ結合ウェルにピペットで移した。100μLの標準および100μLの試料をこれらのそれぞれのウェルにピペットで移した。50μLの複合物を、TAおよびブランクのウェルを除くそれぞれのウェルにピペットで移した。50μLのcAMP抗体をTA、ブランク、およびNSBウェルを除くそれぞれのウェルにピペットで移した。プレートを一晩振盪させた。次の朝、ウェルを10倍希釈した洗浄緩衝液で3回リンスした。50μLの複合物をTAウェルに添加し、200μLのp-Npp基質をそれぞれのウェルに添加した。プレートを再びカバーして、1時間室温でインキュベートした。この時点で、50μLの停止液を全てのウェルに添加し、吸光度をSpectramax分光光度計を使用して405nmで読み込んだ。3つのレベルの対照を利用した:p-Npp基質とIgG被覆したウェルとの間の任意の反応の測定を提供する空のチューブ、;Ta:もしあれば、複合物中のアルカリホスファターゼ活性の測定;NSB:プレートに対する、または抗体に対する複合物の結合の測定;Bo:抗体に対する複合物の結合の測定(試料なし、および複合物の競合)。
【0215】
B.結果
第1の実験セットにおいて、Gn11細胞を、10-6 MのrtTCAP-3(配列番号:13)、アミド化したもの[配列番号:15](上記を参照されたい)、ラットのウロコルチンまたは媒体(上記のとおり)で処理した(図16A)。TCAPでは、細胞におけるcAMP蓄積が、媒体処理した細胞の58.9±4.8%まで減少した(p<0.01)。ウロコルチンでは、対照細胞の89.2±6.3%まで、有意ではない減少がもたらされた。cGMPの蓄積実験において、TCAPでは、対照細胞の38.5±8.8%までcGMP蓄積が減少したが(p<0.01)、ウロコルチンでは、対照細胞の50.0±8.5%までの減少が生じた(図16B)。
【0216】
II.A.cAMPアッセイ法
Gn11細胞を、70%コンフルエントに達したときに処理した。細胞を10-9、10-8、または10-7MのTCAP、ウロコルチン、および媒体で処理し、分離して37℃においてインキュベーター内でインキュベートした。(以下に詳細)培地を除去して、細胞をPBSで1回洗浄し、次いで600μlの0.1M HCl溶液を使用して溶解した。凍結/融解を3回行った後、試料をマイクロ遠心チューブに移した。同時に、3mlのシリンジおよび22Gの針で20回、細胞を圧迫した。4000rpm×5分で遠心し、それぞれの試料の上清を吸引して、cAMPまたはcGMPアッセイを行うまで-20℃で保存した。同じ濃HClを使用して、標準的な濃度を提供し、5つの標準溶液を200、50、12.5、3.12、および0.78pmol/mlの濃度で作製した。全ての反応は2回行った。ブランク、非特異的結合(NSB)、総活性(TA)、ゼロ結合(B0)、5つの標準、および全ての試料について、ウェルをセットアップした。96ウェルのIgG被覆したプレートを使用して、50μLの中和試薬をブランクおよびTAを除くそれぞれのウェルにピペットで取った。150μLの0.1M HCLをNSBウェルにピペットでとり、100μLのこの溶液をゼロ結合ウェルにピペットで取った。100μLの標準および100μLの試料をこれらのそれぞれのウェルにピペットで取った。50μLの抱合体をTAおよび空のウェルを除くそれぞれのウェルにピペットで取った。50μLのcAMP抗体をTA、ブランク、およびNSBウェルを除くそれぞれのウェルにピペットで取った。プレートを4℃において200rpmで一晩(18時間)振盪させた。翌日、ウェルを10倍希釈した洗浄緩衝溶液で3回リンスした。それぞれのウェルを徹底的に乾燥させた後、5μLの抱合体をTAウェルに添加し、200μLのp-Npp基質をそれぞれのウェルに添加した。プレートを再びカバーして、室温で振盪せずに1時間インキュベートした。この時点で、50μLの停止液を全てのウェルに添加して、吸光度をSpectramax分光光度計を使用して405nmおよび580nmで読み込んだ。580nmのデータは、それぞれのウェルのバックグラウンドを提供し、これを405nmのデータから差し引いた。
【0217】
B.結果
10-8 M TCAPは、ペプチド導入の15分後にcAMP蓄積の有意な増大を誘導し、処理の30分以内に通常の限界に落ちた(図17A)。ウロコルチンを陽性対照の目的で使用した。図17Bは、10-4M 3-イソブチル-1メチルキサンチン(IBMX)、10-8 M TCAPまたはウロコルチン処理によって誘導されるcAMPを上昇させるために使用するホスホジエステラーゼ阻害剤の存在下における、Gn11細胞のcAMPレベルを図示する。図17Cは、IBMXの存在下における種々の濃度のTCAPまたはウロコルチンの投与による、Gn11細胞の30分にわたるcAMP蓄積を図示する棒グラフである。図17Dは、10-6 Mのフォルスコリンで刺激されたcAMPの、10-8 MのTCAPまたはウロコルチンによる阻害を図示する棒グラフである。
【0218】
実施例8 行動に関する研究
A.脳刺激報酬行動実験
ラットには、橋被蓋のコリン作動性の核を活性化し、前脳のドーパミン作動性の経路に対するこれらの投射を活性化する視床下部外側の電気刺激に対して、バーを押すように訓練することができる。一旦、所与の電流に対して信頼性の高いベースラインのバーを押す割合が確立されれば、このコリン作動性のドーパミン作動系の活性に対する種々の薬物の結果を、頭蓋内に物質を注射すること、および次いで自己刺激する行動の割合に対するこれらの効果を観察することによって評価することができる。1nMの濃度で生理食塩水に調製したTCAP-3配列番号:13、アミド化されたもの、[配列番号:15](上記参照されたい)をガイド・カニューレで側後(laterodorsal)被蓋の細胞核へカニューレによって注入した。バーを押す割合を媒体処理したラットと比較した。
【0219】
B.結果
1nM(4.2pg/μl)のTCAPをラットの尾側中脳に注入したときに、自己報酬刺激の強い阻害が生じた(図18)。前脳(側脳室)および中脳注射では、効果は可逆的であり、ラットの行動は、約60分後に正常の限度に戻った。
【0220】
実施例9 予備的インサイチューハイブリダイゼーションの結果
第1のインサイチューハイブリダイゼーションのデータは、テネウリン1遺伝子(TCAP-1)が成体ラットの脳に高度に発現されていることを示す。最も多くの発現領域は、外側中隔、視床下部の線条末端腹面内側核のベッド核、および腹側のプレ乳頭体(premammilary)核に生じる。より少ない発現は、海馬および扁桃体に生じる。この発現パターンは、情動障害および気分障害のストレス応答(上記を参照されたい)を調節するペプチドと一致する。これらのデータは、TCAPが神経形成および神経変性のうちの1つ以外に、ストレスおよび不安調節においても主要な役割を果たすことを示す。テネウリン4(TCAP-4)の発現も、成体の脳に生じるが、テネウリン1よりも強い。
【0221】
A.方法
本方法は、35S標識したアンチセンスおよびセンス(対照)プローブを、より高ストリンジェンシー条件(60℃において0.2 SSCで最終的な洗浄を伴う50%のホルムアミド)で使用して、前述したように行った(Simmonsら、1989; Ericssonら、1995)。35S標識したcRNAプローブは、TCAP部分を含むエキソン33の350bpのcDNAから適切なポリメラーゼ(アンチセンスのためのT3およびセンスのためのT7)でのインビトロ転写によって作製した。
【0222】
B.結果
結果は、図20に示してある。左欄は、アンチセンスプローブを使用するTCAP-1 mRNAの発現であり、右欄は、センスプローブである。A〜B:扁桃体の中核(CeA);C〜D:線条末端、内側(BSTM)のベッド細胞核;E〜F:プレ乳頭体(premammilary)腹側核(PMV)。
略語:3V(第三脳室);fx(脳弓);ic(内包);LV(側脳室);MeA(扁桃体の内側核);opt(視索);st(分界条)。バー=300μm(A〜B)および500μm(C〜F)
【0223】
インサイチューハイブリダイゼーションのデータは、TCAP-1遺伝子が成体ラット脳において高度に発現されていることを示す。TCAP-1領域を含むC末端のテネウリン1エキソンの発現は、視床下部および辺縁系の領域に制限された(図20A〜F)。最も多く発現する領域は、外側中隔、視床下部の線条末端腹面内側核のベッド核、および腹側プレ乳頭体核に生じる。より少ない発現は、海馬および扁桃体に生じる。この分布は、情動、不安、および動機づけに対するモジュレーターの役割を果たすTCAPと一致する。この領域(Liら、2002)に見出される既知のCRF受容体はないため、腹側プレ乳頭体核にTCAP-1発現があることは、特に関心が持たれる。エキソンを含むTCAPが、側脳室の嗅脳または上衣下層などの神経形成と関係する領域に発現されるという証拠はなかった。テネウリンタンパク質のこれまでの認識にもかかわらず、成体の脳におけるこれらの発現は、これまで検査されていなかった。しかし、テネウリン1および4の発現は、マウス、ニワトリ、およびゼブラフィッシュの脳の間脳の発達の際に観察された(Rubinら、1999; Ben-Zurら、2000; Miedaら、1999)。
【0224】
これらのデータは、TCAPの主要な役割がストレスおよび不安の調節の1つであるという仮説を支持する。
【0225】
実施例10 慢性TCAPの研究:ストレス応答を調整する際のTCAPの役割
A.方法
1. ウィスターラットは、ベースライン反応のための聴覚による驚愕を試験し(60回の聴覚驚愕刺激、120dB、刺激が60秒の間隔からなる1時間の試験)、TCAP-1(10nmolのマウスTCAP-1、アミド化されたもの[配列番号:40]、3μlの媒体を脳室内に)または媒体(たとえば、塩類溶液および酢酸)を与えるために、一致させた群に分けた。
2. 2日後に、ラットは25回の聴覚による驚愕刺激をベースライン(120dB、刺激間の間隔が60秒)で試験して、次いで10nmolのTCAP-1または媒体でICV注射し、急性反応を1時間測定した(60回の刺激、120dB、刺激間の間隔が60秒)。
3. 25日後、ラットには、TCAP-1(10nmolの3μl)または担体(3μl)のいずれかを、5日連続してICVに1日1回投与した。
4. ラットを10日間単独のままとした。
5. 10日目に、TCAP-1なしで、ラットの聴覚驚愕反応を試験した。
【0226】
11日目に、再びTCAP-1なしで、60分間(60回の刺激、刺激間の間隔が60秒、120dB)ラットの驚愕反応を再試験した。驚愕について13日および28日目に再試験した。TCAP-1を、媒体である塩類溶液および酢酸の混合物に溶解した。媒体という場合、これはTCAP-1の付加を伴わない溶液をいう。
【0227】
B.結果
結果は、媒体(21A)またはTCAP-1(21B)の5日連続のICV投与後における0、10、および12日間について、図21に示してある。慢性研究での動物の驚愕反応は、図22に示してある。慢性のTCAP処理前の、1日目の2つの群(TCAP-1および媒体)の平均驚愕反応を図22Aに示してある。図22Bは、慢性TCAPの処理後、10日目のセッションの60回の試行にわたったTCAPおよび媒体群についての平均驚愕反応を示す。図22Cは、60回の試行全体にわたって平均したTCAPおよび媒体群の全ての動物についての平均ベースライン驚愕反応を示す。
【0228】
実施例11 急性TCAP研究聴覚驚愕測定
A.方法
雄のウィスターラット(250〜275g)には、扁桃体の側底核内に、両側にカニューレ(23ゲージ)によって外科的に移植した(AP−2.8、ML+/-5.0、DV−7.2mm、十字縫合から)。1週後に、動物は、刺激間の間隔が55〜65秒で、30m秒の期間、および5000Hzの振動数のランダムに示される120dB刺激の25回の試行からなる聴覚驚愕反射(ASR)のチャンバー(MED Associates、格子棒ケージ7.5''×3.6''×4.2'')に慣れた。25回の試行のベースライン、マウスTCAP-1(アミド化シグナルを有する)[配列番号:40]または媒体(0.25μ/side、流速0.5μl/分)の注射、および薬剤後のさらに60回の試行を試験することからなる、同じ刺激条件を試験日についても使用した。それぞれのラットには、試験初日に媒体処理を、次いで翌試験日にTCAP-1(たとえば、マウスTCAP-1)をランダムにおよび釣り合わせた様式(balanced fashion)で与えて、48時間間隔を置いた。試験最終日に、すべてのラットには、再び媒体処理を与えた。カニューレ設置の組織学的な解析に続いて、8匹のラットのデータを統計学的解析のために記録した。
【0229】
データから、ラットを、これらの媒体についての処理/ベースライン比に応じて高いおよび低い不安の群に分けた。一方よりも低くスコアリングされた動物は、低不安であるとみなし、一方よりも高くスコアリングされた動物は、高不安であるとみなした。それぞれの不安群において、4匹の動物であった。
【0230】
結果を図23および24に示してある。図23は、すべての濃度のマウスTCAP-1について、両群の平均の治療/ベースライン値を例示する棒グラフである。繰り返し測定ANOVAでは、2種の不安群の間の有意差のレベルは、P=0.0078であったことを示した。TCAP-1処理の後、低不安の治療/ベースライン比は、初期の高不安の値と同様であり、逆もまた同じであった。効果がTCAP-1によるものであり、注射の実験によるものではないことを示すために、媒体の注射は研究の最後に行った。TCAP-1濃度は、3、30、300pモルであった。扁桃体に注射したTCAP-1の効果の概要を図24に示してある。これにより、驚愕反応に対するTCAP-1による効果は、ベースライン驚愕反応とは逆比例することが示された。このようなTCAP-1は、驚愕行動またはストレス応答を規準化するために使用することができる。
【0231】
考察
本機構にもかかわらず、合成TCAPペプチドは、インビボでのラットの行動反応を強力に誘発する。視床下部および辺縁系の領域におけるTCAPの強力な発現を考慮して、ラットの聴覚驚愕に対する効果を決定するために、アミド化シグナルを有する合成的マウスTCAP-1ペプチドを側底の扁桃体に微量注入した。ベースラインに対する処理の比が高い(>1)動物は、驚愕の程度に有意な(p<0.05)減少を示したが、ベースラインに対する処理の比が低い(<1)動物は、驚愕の程度に有意な(p、0.05)および容量依存的な増大を示した(図23)。これらのデータは、TCAP-1が、特定の動物のベースライン反応性に応じて、驚愕反応に対する効果を調整するように作用し、聴覚驚愕と関係する行動を正常化することができることを示す。聴覚驚愕を増大することが示されているその他の神経ペプチドは、CRF(Liangら、1992)、CCK(Franklandら、1997)、およびSP(Kraseら、1994/1999)である。聴覚驚愕の概念図式は、薬物の不安原性または不安を緩解する効果を評価するために周知であり、かつ広範に使用される概念図式である。驚愕反射は、歩行運動、学習、記憶、またはいかなる種類の行動にも動機を与えなかったので(これは、おそらく結果の解読を混乱させ得る)、これは、新規の化合物を試験するための理想的な概念図式となる。
【0232】
示されたデータは、TCAPが前脳および辺縁系の鍵となる領域のニューロンの機能を調節することによって、不安の調節と関係する神経ペプチドの新たなファミリーを表すことを示す。また、以前の研究では、神経の調節を伴ったテネウリン遺伝子の役割を示差していた。ヒトTen-M1は、X染色体の位置Xq25にマップされる(Ben-Zurら、1999)。これは、Xに連鎖された精神遅滞遺伝的症候群と関係する領域である(Minetら、1999)。この部位にマップされる症状は、重度の精神遅滞によって特徴づけられ、運動感覚神経障害、聴覚障害、並びに時に発作および視覚障害に関与する可能性がある。
【0233】
TCAPの調節は、神経病学的機能障害および精神医学疾患の病因を理解するための新たな標的を示す。実施例では、TCAPがストレス関連障害およびその他の神経病理学的症状の治療に使用することができることを示す。
【0234】
実施例12 不死化ニューロンに対するTCAPの活性
A.インビトロアッセイ法
Gn11不死化ニューロンは、以前の報告(Tellamら、1998)のとおりに培養した。直接cAMP測定は、商業的なキット(Assay Designs, Ann Arbor, MI)のアセチル化されていない型によって行った。無血清のDMEMによって1時間飢餓状態にし、血清のない新しいDMEMで置換した後、細胞をTCAP、ウロコルチン、または媒体±CRFR1アンタゴニストPD171729、フォルスコリン(1_M)およびIBMX(100_M)の持続的な存在下において15分間処理した。タンパク質アッセイ法:総タンパク質は、BCAタンパク質アッセイ法(Pierce Co)を使用して決定した。MTTアッセイ法:Gn11細胞を96ウェルプレートにまいて、細胞が30%コンフルエントになるまで完全な血清DMEM中で培養した。媒体、1nM、10nM、または100nMのTCAP-1をそれぞれの群(n=8)に添加した(図25A)。MTTアッセイ法(Sigma Chemicals)を0、6、12、24、および48時間において行った。フローサイトメトリー:Gn11細胞のDNA含量は、ヨウ化プロピジウムで染色することによって定量し、FACSCANフローサイトメーター(Beckman Instruments)で解析した。
【0235】
B.結果
マウスTCAP-1は、15分後にマウス不死化ニューロンのcAMP蓄積の用量依存的な変化を誘導した。1nMの用量では、媒体処理した細胞全体で45%のcAMPレベルを増加させた(p<0.05)。対照的に、100nMのTCAP-1では、対照細胞から40%のcAMP蓄積を減少させた(p<0.05)(図25A)。しかし、特異的なCRF1型受容体アンタゴニストで同時に処理すると、PD171729は、TCAPのcAMP蓄積の効果を完全になくすことはできなかった。対照的に、同じ濃度のアンタゴニストは、これらの細胞のウロコルチンで刺激されるcAMP蓄積の完全な阻害を誘導した(p<0.01)(図25B)。我々は、これらの細胞がR2受容体(データ示さず)ではなく、CRF-R1受容体(Tellamら、1998)を有することをすでに確立している。1、10、および100nMの濃度のTCAP-1では、同じ細胞における120分以後の総タンパク質濃度の有意な増大を誘導した(図25C)。これらの細胞をマウスTCAP-1で処理しても、細胞代謝に対して用量依存的な効果を誘導した。ミトコンドリア活性(MTTアッセイ法)として示される細胞活性は、1nMの濃度で有意な(p<0.05)活性の増大を示したが、100nMの濃度(図25D)では、減少を示した。同様に、1nMのTCAPでは、24時間後のG1期の出現率が減少した(p<0.05)が、100nMの用量では、DNA含量解析によって決定されるG1期が増大した(p<0.05)。
【0236】
従って、αヘリックスのCRF(9〜41)アンタゴニストは、TCAPのストレス応答調整活性を調整することができる。
【0237】
実施例13 プロテオミック・プロファイリングおよびマイクロアレイ研究
TCAPの効果を決定し、TCAPモジュレーターのスクリーニングのための細胞モデル系、TCAPに関連する診断および症状、並びに医療処置の方法を開発するために、TCAP応答性の細胞株をプロテオミック・プロファイリングおよびマイクロアレイ解析に供した。これは、表1に示したマーカー・プロファイルを有する非腫瘍性由来(non-tumorgenic-deribed)の不死化マウス視床下部細胞株、N38を使用して行った。その他の不死化細胞株に対するTCAPの効果は、下記に述べた方法を適応させることによって実施することができる。
【0238】
A.TCAP応答性の不死化視床下部細胞株
使用したTCAP応答性の不死化細胞株は、トロント大学のDenise Belshamによって、以下により調整した:培養胚視床下部細胞を調製し;該培養物を、機能的にプロモーターおよび選択可能なマーカーを結合したウイルスの癌遺伝子のラージT抗原をコードするレトロウイルスに感染させ;トランスフェクトされていない細胞からトランスフェクトされた細胞を単離して不死化視床下部細胞の培養物を得;該不死化細胞をサブクローニング集団にサブクローニングし;特異的なニューロンマーカーの発現についてサブクローニングした集団をスクリーニングし;特異的な集団を選択し、さらにクローニングした。次いで、不死化細胞株をTCAP応答性についてスクリーニングすることができる。
【0239】
TCAP応答性は、不死化したサブクローンの、TCAPに対する機能的なcAMP反応を測定することによってスクリーニングした。結果は、図26に示してある。N-15-1、#7(N7)、N-18-1、#11(N22)、およびN-15-14、#29(N29)をペプチド刺激に対するcAMP反応について解析した。サブクローンを24ウェルのプレートに分けた。細胞をFBSのないDMEM中で1時間飢餓状態にし、次いで、培地を示したとおりの化合物を含む新しい0.5mlのDMEM(FBSなし)と置き換えた。図26では、ニューロンを10-7M(100nM)のTCAPペプチドに曝露した。全てのペプチドは、IBMX(100μM)を含むDMEMに希釈した。37℃で15分間インキュベートした後、1mlの氷冷エタノールをそれぞれのウェルに添加した。細胞をプレートから剥がし、細胞内のcAMPの量は、製造業者の説明書に記載のRIA(Biotechnologies Inc., Stoughton, MA)を3回実施して決定した。測定までは-20℃に保持しておいた。
【0240】
B.TCAP3を使用するプロテオミック・プロファイリング
NPY17(N38)不死化ニューロンを100nMのTCAP-3で処理し、プロテオミック・プロファイリングに供した。この手法では、細胞の核を単離してタンパク質を抽出した。この方法では、所与の処理によって上方制御または下方制御されるタンパク質の指標を提供する。プロテオミック・プロファイルでは、上方制御される大部分のタンパク質が、細胞周期、代謝、およびストレス応答に関係することを示した。また、多くの細胞骨格タンパク質も上方制御された。多くの抗うつ薬は、脊椎密度およびニューロンプロセスの分枝を増大させることが示されているため、この観察は特に重要である。このような事象は、細胞骨格タンパク質によって調節される。
【0241】
プロテオミック・プロファイリング
12時間で上方制御された
【0242】
B.マイクロアレイ研究
I.方法
RNAの単離
総RNA(tRNA)は、製造業者のプロトコルに従い、トリゾール試薬(GIBCO/BRL)を利用して、3回独立に処理したN38視床下部細胞培養および未処置のN38視床下部細胞培養から単離し、プールした(ノイズを減らすために)。総RNAの品質は、Agilent 2100バイオアナライザー(バージョンA. 02.01S1232, Agilent Technologies)を使用して評価した。260/280のOD比1.99〜2.0を有するRNAのみを使用した。
【0243】
オリゴヌクレオチドアレイ(ハイブリダイゼーション、染色、および走査)
ハイブリダイゼーションは、マウスMU74Av2 GeneChipセット(Affymetrix, Santa Clara, CA)で行った。Affymetrixの説明書に従って、ハイブリダイゼーションのための試料を調製した。簡単には、オリゴ-dT17を結合したT7 RNAポリメラーゼプロモータをコードするプライマーを使用して、それぞれのmRNA試料からSuperscript II RNAase H-逆転写酵素(Life Technologies, Rockville, MD)を使用して二本鎖cDNA合成を開始した。それぞれの精製した(Qiaquickキット, Qiagen)二本鎖cDNAをT7 RNAポリメラーゼ(T7キット; Enzo)、ビオチン-UTPおよびビオチン-CTP(Enzo Biochemicals, New York, NY)を使用してcRNAsにインビトロ転写し、続いてRNEasy(Qiagen)を使用して精製し、260nm/280nmの吸光度を測定することによって定量した。試料を断片化し、45℃で16時間チップにハイブリダイズさせて、走査した(GeneArray scanner, Affymetrix)。150の蛍光ユニットのGenechips全体の強度を測るために、かつチップ上のそれぞれの遺伝子の発現値を決定するために、MicroArray Suite Version 5(MASv5; Affymetrix)を使用した。それぞれの遺伝子の発現値は、遺伝子に使用するプローブ対の差(完全なマッチ強度からミスマッチ強度を差し引いた)の平均値を算出することによって決定した。
【0244】
データ解析
遺伝子解析ソフトウェア:データ解析は、2つの独立したソフトウェア、GeneChipおよびGeneSpringを使用して行った。差次的に発現した転写産物を同定するために、対比較解析をMicroArray Suite Version 5(MASv5; Affymetrix)によって行った。マン-ホイットニー対比較試験(Mann-Whitney pairwise comparison test)に基づくこのアプローチにより、一致による結果の格付、並びにそれぞれの同定された遺伝子発現の変化の有意差(P値)の計算を行うことができる。統計学的に有意な遺伝子(P<0.05)をさらなる解析のために選択した。さらに、平均発現値の統計学的に有意な変化は、GeneSpring 5(Silicon Genetics, Redwood City, CA)にMASv5からのデータを取り入れることによって決定した。段階的なプロセスでは、第1に規格化を行った。生物学的差異の直接的な比較を容易にするために、チップ毎に、遺伝子毎の規格化を続けた。次に、Affymetrixデータおよびカットオフ値P<0.005でのp値を使用する第2のフィルター方法により、4,841個の遺伝子が生じ、これを階層的クラスター化(Hierarchical Clustering)、k-平均、Gene Spring 5.0による自己機構マップ(Self Organization Map:SOM)を利用する次の解析のために使用した。
【0245】
II.結果
さらに、細胞株が、TCAPの応答性、調整を研究するためのモデルとして使用でき、かつTCAPモジュレーターのスクリーニングに使用できることを証明するために、マイクロアレイ研究を、1nMのTCAP-1[C末端にアミド化シグナルGRRをプラスした配列番号:5]で処理したN38視床下部細胞(いずれのCRF受容体サブタイプも有しない)に対して行った(表4)。処理および未処理の細胞から単離したRNAを、12,884個のマウス遺伝子を表すオリゴヌクレオチドアレイ(Affymetrix、http://www.affymetrix.com)で解析した。標準的なフィルタリング(p<0.005)および階層的クラスター化アルゴリズム(平均整列法(average linage method):GeneSpring software-Silicon Genetics)により、4,841/12,885個の遺伝子の発現に有意な変化が同定され、未処置の細胞と比較して、TCAP-1処理した細胞のうち、166個の遺伝子は、1.5倍の下方制御を示し、35個の遺伝子は、上方制御を示した。治療後16時間では、有意な減少がいくつかの遺伝子で、特に、増殖停止またはアポトーシスの事象に関係しているGAS5、SDPR、およびCD95で生じた(45-47)。対照的に、MK167、MOP3、およびGDAP10を含む上方制御された遺伝子は、細胞増殖および細胞周期調整と関係していた(48-50)。Gタンパク結合受容体関連のシグナル伝達経路は、CREM、AKAP8、AKAP95、およびPDE6Aの遺伝子の調節によって示される。また、EFK1およびRGLなどのRASの下流のエフェクターも下方制御された。タンパク質AKAP95をアンカーするAキナーゼが下方制御され、しかしAKAP8が上方制御されたことは、一つには、TCAPがPKAのターゲティングパターンを変えることによって作用しうることを示唆する(51)。誘導性の一酸化窒素(INOS)、細胞内の電位開口型の塩素イオンチャネル(CLCN3)、およびセロトニントランスポーター(SLC6A4)の上方制御は、cAMPを介したシグナルカスケードの下流の作用を反映し、TCAPがニューロン情報伝達系に関与するであろうことを示す。また、TCAPによる介在ニューロン連絡の役割は、小胞輸送の調節に関係する遺伝子の調整によって示される。したがって、増殖、分化、および連絡に影響を及ぼすニューロン機能のモジュレーターをスクリーニングするために、TCAP応答性の細胞株を使用することができる。
【0246】
実験結果の概要
テネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)は、既知の4つ全てのテネウリン(Ten M)タンパク質の40〜41残基を表す。4つ全てのテネウリンにおいて、TCAPは、全てのエキソンの中で最も高い配列相同性を示し、これは、タンパク質で最もストリンジェントな生理学的な制約下にあることを示唆する。TCAPは、おそらく細胞周期を停止することによる、ニューロンのおよび線維芽細胞の増殖の強力な阻害剤である。ラット脳に注入されたときに、TCAPは、驚愕反射を増大させ、自己投与の報酬行動を減少させ、ストレス応答を調整することが示された。これらのデータは、TCAPがニューロンの増殖および発生と関係する新規の神経ホルモン系を表すことを示す。
【0247】
タイプII膜貫通タンパク質のカルボキシ末端にTCAP様のペプチドは通常見出されない。タンパク質が細胞の細胞外表面上に発現するだけであると仮定するならば、ペプチドは、周囲の細胞を調節するためにパラ分泌の様式で作用する可能性が高い。全てのTen Mタンパク質は、推定上のペプチドからの切断部位から位置-1および-8上流域に塩基性の残基を有する。このような塩基性残基の配置は、ペプチドプロホルモンのプロセシングのためのプロテアーゼのプロホルモンコンバターゼ7(PC7)ファミリーによって認識される(SaidehおよびChretien, 1997)。この場合を想定すると、必須のPC7様タンパク質は、細胞の細胞外表面に、またはおそらく隣接細胞の細胞外表面に発現することも必要であろう。または、プロテアーゼは、より可動性の様式で分泌され、作用してもよい。いずれにせよ、切断されたペプチドの放出は、小胞性放出に見られる大量瞬時投与の際には生じそうにない。Ten-Mタンパク質が調節を受けた経路の小胞に発現し、ここで小胞内プロテアーゼが開口分泌前にペプチドを切断することができることも考えられる。しかし、合成ペプチドは、2μg/μlよりも高濃度で、凝集および沈降する傾向を強く示す。これは、ペプチド内にロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、およびフェニルアラニンの数が多い(15)ためである可能性が高い。ウロコルチン様のペプチド、サウバギンなどの小胞濃度が高いペプチドは、新熱帯区のカエル(Phyllomedusa sauvagei)の皮膚において見出され、疎水性の残基の比率が低い傾向にある(Pallaiら、1983)。したがって、TCAPペプチドのこの物理的な特徴は、形質膜の細胞外表面から切断されることから、その優先的な放出を裏付ける。
【0248】
Ten-Mタンパク質のTCAP部分は、タンパク質の末端エキソンで最も高度に保存されるように見える。このような高レベルの保存は、変化を阻害する配列による多くの生理学的、生化学的な制約作用があるときに生じる。このような変化に対する耐性は、必須のプロセシングまたは分解酵素、受容体、および/または輸送タンパク質との相互作用によって生じ得る。脊椎動物のパラログ間での90%の保存レベルは、TCAPが最も密接に関連すると思われるCRF群のペプチドと比較して高い。
【0249】
いずれにせよ、多くのその他の生理活性ペプチドも、初めにTCAPと同様に発現され、プロセシングされる。腫瘍壊死因子(TNF)(Utsumら、1995)、Apo-2リガンド(Pittiら、1996)、およびフラクタルカイン(fractalkine)(Gartonら、2001)などのその他の生理活性ペプチドもこのようにプロセシングされる。これらのペプチドは、細胞外表面上のC末端の終わりが外部に向いている。このようにプロセシングされて発現したペプチドは、種々の内分泌または近傍分泌(juxtacrine)における役割を有する可能性がある。たとえば、これらは、適切な受容体を示す細胞の接着分子として作用する可能性がある。このような作用は、脳の発達の際のニューロンの遊走時に特に重要である可能性があり、ニューロンを特異的な標的に向けることができる。または、ペプチドは、膜結合または細胞外基質結合プロテアーゼを経て切断されて、周りの細胞の作用を調整するためのパラ分泌/自己分泌因子として作用する可能性がある。このような機構は、虚血の際に生じる低酸素ストレスから細胞を守るために重要であろう。3つ全てのサイトカインは、腫瘍壊死因子α変換酵素(TACE、ADAM17)によってプロセシングされるように見える。また、この酵素は、アミロイドβ前駆体タンパク質(Skovronskyら、2001)の細胞表面外部ドメインを切断することができ、したがってアミロイドβの生成を減少させることから、これはアルツハイマー病因にも役割を有する可能性が示唆される。
【0250】
TCAPペプチドは、生理学的ないくつかの事象を調節するものと思われる。マウス神経細胞株Gn11、およびラット線維芽細胞細胞株TGR1において、10-9〜10-6 Mの濃度のTCAP処理では、用量依存的な様式で増殖を阻害することができ、最大約60%の阻害を生じる。細胞のアポトーシスまたはネクローシスの証拠はなく、形態は処理した細胞と未処理の細胞の間で異ならなかった。
【0251】
このストレス関連の研究では、虚血またはおそらく種々の神経変性疾患の期間中に生じると考えられる細胞に対する環境ストレスによってもたらされる損傷を阻止するというTCAPペプチドの能力を示す。ストレスのない細胞において見られる増殖速度の減少およびストレスを受けた細胞での明らかな増大を考慮すると、TCAPは、一部において、細胞の代謝活性を減少させるように作用する可能性が示唆される。その他の関連ペプチドも同様の効果を有する。たとえば、ウロコルチンは、p42/p44分裂促進因子活性タンパク質(MAP)キナーゼ経路を刺激することによって初代心臓筋細胞培養の細胞死を防止することができる(Latchman、2001)。熱ショック(Okosiら、1998)または虚血(Brarら、1999)などのストレス性条件下で、ウロコルチンmRNAは、培養心臓細胞において上方制御され、培地にも分泌されることから(Brarら、1999)、これもパラ分泌機能で作用して、細胞代謝を調節することを示唆する。この効果は、CRFよりもウロコルチンによるほうが大きい。CRFファミリーのウロコルチンパラログがCRFよりも進化的に古い配列を表すと思われるので(LovejoyおよびBalment, 1999)、これには特に関心がもたれる。そして、細胞代謝に対するこのようなパラ分泌作用は、TCAPおよびCRF/ウロコルチン/利尿群の双方のペプチド上昇を生じる祖先遺伝子の初期の重要な機能のうちの1つであろう。
【0252】
これまでに得られたデータは、TCAPの機構のための仮のモデルを詳細に描写するために使用することができる(図19)。初めに、pH、温度、もしくはO2レベルの変化などのストレス要因、または代わりに、ストレス誘発性のリガンドは、Ten-Mタンパク質の上方制御をトリガーする。このようなストレス要因は、アデニル酸シクラーゼおよびグアニル酸シクラーゼを含む多くのシグナル伝達経路を介して作用する可能性が高い。また、ストレス要因は、TACEまたはPC7などのTen-M切断酵素を上方制御することも考えられる。次いで、TCAPリガンドは、そのタンパク質から切断され、遊離して自己分泌およびパラ分泌の様式で作用する。これは、Gタンパク質結合受容体に結合し、その後にG抑制性タンパク質と相互作用する。これがcAMPおよびcGMP産生を阻害して、細胞の活性化を阻害する。分裂するニューロンでは、これは増殖または遊走を阻害するように作用し、成熟した非分裂ニューロンでは、シナプスにおけるアウトプットの減少として現れ、これにより脳細胞の活性化した核における神経性の反応を阻害することができる。
【0253】
本発明は、好ましい実施例であると現在みなされるものに関して記載したが、本発明は、開示された実施例に限定されないことは理解されるはずである。対照的に、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる種々の変更および等価物の改変を包含することが意図される。
【0254】
全ての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個々に、その全体が参照として組み入れられることを示したのと同じ範囲で、これらの全体が本明細書に参照として組み入れられる。
【0255】
(表1)細胞株スクリーニング
以下の略語は、標準的で科学的な省略を有する:T-Ag、ラージT抗原;NSE、ニューロン特異的エノラーゼ;GFAP、グリア原線維酸性タンパク質;SNTX、シンタキシン;ER、エストロゲン受容体;AR、アンドロゲン受容体;LepR、レプチン受容体b;Glp-2R(G2Rも)、グルカゴン様ペプチド2受容体;SOCS-3、サイトカインシグナリング3のサプレッサー;NPY、ニューロペプチドY;AGRP、アグーチ関連ペプチド;POMC、プロオピオメラノコルチン;CART、コカインおよびアンフェタミンで調節される転写産物;MCH、メラニン凝集ホルモン;Ucn、ウロコルチン;NT、ニューロテンシン;Gal、ガラニン;Orx、オレキシン;DAT、ドーパミン輸送体;CRFR、コルチコトロピン放出因子受容体;proGlu、プログルカゴン;GHRH、成長ホルモン放出ホルモン;GnRH、ゴナドトロピン放出ホルモン;GnRHR、ゴナドトロピン放出ホルモン受容体;CRF、コルチコトロピン放出因子;TRH、甲状腺放出ホルモン;AVP、アルギニンバソプレッシン;OXY、オキシトシン;Arom、アロマターゼ;TPH、トリプトファンヒドロキシラーゼ;TH、チロシンヒドロキシラーゼ;TenM-1(New-1も);TenM-2、(New-2も);TenM-3(New-3も);およびTenM-4(New-4も)、テネウリン1〜4;GHS-R、成長ホルモンセクラトーグ(secratogue)受容体;Lep、レプチン;SOM、ソマトスタチン;NTR、ニューロテンシン受容体;MC3R、メラノコルチン受容体3;MC4R、メラノコルチン受容体4;NPY-Y1、NPY受容体Y1;NPY-Y2、NPY受容体Y2;CRLR、カルシトニン受容体様受容体;nd、行っていない;na、行っていない;w、弱い発現
【0256】
(表2)16時間におけるTCAP-1によって調節される遺伝子
発現レベルの変化は、同じ16時間の時点での未処理の対照細胞と比較して示した。値>1.5倍または<0.70倍を有意であるとみなした。
【0257】
本明細書において参照した参考文献の全引用
【図面の簡単な説明】
【0258】
本発明を、以下図面に関して記載する。
【図1】ニジマステネウリン3遺伝子[配列番号:2]の推定上の3'エキソンをイントロン領域[配列番号:1]と共に示す(1490bp)。ヒトTen M1遺伝子との配列比較によって確立したエキソン/イントロンの境界をゲノムデータベースに示してある(LocusLink ID#;10178)。イントロン配置は、その後にPCRによって確認した。エキソンは、タンパク質のカルボキシ末端の251残基をコードする(配列番号:3)。切断シグナルは、太字にした灰色の領域に示される。末端のGKRモチーフは、通常翻訳後アミド化シグナルを示す。テネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)は、アミノ酸208〜248位の間に含まれる配列[配列番号:13および14]によって示される。
【図2】遺伝子の末端エキソンによってコードされるアミノ酸配列(ニジマス(O.mykiss)(配列番号:3)、ゼブラフィッシュ(R.danio)(配列番号:12)、マウス(M.musculus)(配列番号:6)、およびヒト(H.sapiens)(配列番号:10))のアラインメントを示す。全体において、58位にさらなるセリンの挿入を有する。全体では、マスとゼブラフィッシュの間で約94%、ニジマスとマウスの間で83%、およびニジマスとヒトの間で83%の高い配列類似性を示す。TCAP部分自体では、ニジマス(配列番号:13または14)は、ゼブラフィッシュ(配列番号:21または22)と90%の配列同一性、マウス(配列番号:53または54)と90%、およびヒト(配列番号:85または86)と88%の配列同一性を有する。アミド化シグナルを含むプレTCAP配列は、配列番号:15〜16(ニジマス)、23〜24(ゼブラフィッシュ)、55〜56(マウス)、および87〜88(ヒト)である。
【図3】マウステネウリン1、2、3、および4の遺伝子の末端エキソンによってコードされるアミノ酸配列のアラインメントを示す(配列番号:4、5、6、7)。最も高いレベルの配列類似は、タンパク質のTCAP部分をコードする配列に存在する。TCAP-1(配列番号:37または38)は、TCAP-2(配列番号:45または46)と68%同一、TCAP-3(配列番号:53または54)と76%同一、およびTCAP-4(配列番号:61または62)と85%同一である。TCAP-2は、TCAP-3と75%同一、TCAP-4と68%同一である。TCAP-3は、TCAP-4と71%の同一性を有する。テネウリン3は、TCAP-3のアミノ末端で、二塩基性の切断部位を有するが、1、2および4は全て一塩基部位を有し、切断されたペプチドがTCAP-3では40残基であるが、TCAP-1、2、および4では41残基であることを示唆する。しかし、ある態様において、41および40アミノ酸残基のTCAPは両者とも活性を有する。
【図4】ヒトテネウリン1、2、3、および4の最後のエキソンによってコードされるアミノ酸配列のアラインメントを示す(タンパク質の配列番号:8、9、10、11)。マウス配列の様に、最も高い程度の配列類似は、エキソンのTCAP部分に存在する。TCAP-3は、二塩基の離れたシグナルを所有するが、その他は一塩基部位を有する。最も大きな可変領域は、エキソンの最初の70〜80残基に存在する。TCAP部分自体では、TCAP-1(配列番号:69または70)は、TCAP-2(配列番号:77または78)と73%の同一性を有し、TCAP-3(配列番号:85または86)と83%の同一性を有し、およびTCAP-4(配列番号:93または94)と88%の同一性を有する。TCAP-2は、TCAP-3と76%の同一性を有し、TCAP-4と71%の同一性を有する。TCAP-3は、TCAP-4と76%の同一性を有する。
【図5】ヒト(配列番号:76、84、92、および100)、およびマウス(配列番号:44、52、60、および68)のプレTCAP-1〜4、ゼブラフィッシュのプレTCAP-3および4(配列番号:28および36)、並びに終止コドンを有するニジマスのプレTCAP-3(配列番号:20)のプレTCAPヌクレオチドコード配列を示してある。対応する成熟TCAPペプチドのコード領域は、末端アミド化および終止コドンをコードする配列(たとえば、それぞれの配列について示した最後の12ヌクレオチド塩基)を欠いていると思われる。示した配列は、終止コドンを有する44アミノ酸残基のプレTCAP配列をコードする。しかし、43アミノ酸のTCAPコード配列は、最初の3つのヌクレオチドが存在しないこと以外は同一である。
【図6】図6Aは、テネウリンタンパク質内の機能的ドメインの概略図である。図6Bは、ヒトテネウリン1のエキソンの概略図およびC末端エキソンの位置およびその上のTCAPの位置の分解図である。保存されたプロホルモンコンバターゼ様の切断モチーフは、灰色の四角として示してある。これは、テネウリンC末端関連ペプチドの構造並びにテネウリンのタンパク質および遺伝子上のこれらの位置を図示する。
【図7】図7Aは、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、ニジマス、ゼブラフィッシュ、およびショウジョウバエのTCAP配列(配列番号:69、78、85、94、37、46、53、66、78、101、136、13、21、30、および103)のアラインメントを示し、7Bは、哺乳類、鳥類、昆虫、および線虫のTCAP配列(図7B、配列番号:37、101(N末端のQはない)、69、61、93、53、85、13、21、77、30、および103)のアラインメントを示す。図7Bにおいて、非相同的なアミノ酸置換は、薄い灰色の陰影をつけてある。相同的な残基は、濃い灰色で陰影をつけてある。
【図8】ヒトCRFファミリーのアミノ酸配列(配列番号:104〜107)のアラインメントを、ヒトTCAPファミリーのアミノ酸配列(配列番号:70、78、85、94)と共に示す。全体的な配列同一性は、約20〜25%だけであるが、その他の置換の多くは、プロリンからセリン、ロイシン、もしくはスレオニンなどの潜在的な一塩基コドン変化、またはロイシンからバリンもしくはイソロイシン、アスパラギン酸からグルタミン酸、およびアスパラギンからグルタミンなどの保存的なアミノ酸置換を反映する。
【図9】CRFファミリー間の配列同一性を、TCAPメンバー間の同一性と比較して示す。CRFおよびU3およびU2の間の34%、CRFおよびウロコルチンの間の43%、並びにウロコルチン1および3の間の21%といったCRFファミリーと比較して、TCAPファミリーメンバーでは68%の非常に大きな配列同一性を示す。
【図10】TCAP(ニジマスTCAP-3)の二次構造の予測およびCRF様のペプチドとの比較を示す。図10Aは、グランサム極性予測であり、図10Bは、カイト-ドゥーリトル疎水性予測である。TCAPは、非常に類似した極性プロファイルを示すが、アミノ末端に高レベルで全体的な疎水性を有するように見える。
【図11】TCAPペプチドの代表的なアミノ酸配列のアラインメントを、昆虫利尿ペプチドおよびCRFスーパーファミリー(配列番号:13、22、104、107〜110)と共に示す。全てのスーパーファミリーは、アミノ末端部、中間部、およびカルボキシ末端部を含む3つの一般的な領域に分割することができる。全てのペプチドは、各々の別々の部分内に保存されたモチーフの存在によって整列化することができる。
【図12】テネウリンのマウス脳および細胞株NLT、Gn11、およびNero2aにおける発現を図示する。テネウリン1〜4に対応するPCR増幅産物は、全脳および細胞株において見出された。TenM1、2、および4は、全脳においておよびGnRHを発現する不死化ニューロン株のGn11において見出された。テネウリン2および4だけは、GnRHを発現する別の細胞NLTにおいて見出されたが、しかし、4つの形態の全てが、Neuro2a神経芽細胞腫細胞株において見出された。上部のバンドは、テネウリン転写産物の陽性シグナルを示す。下部のバンドは、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)の陽性シグナルを示し、RNAの存続度を示す。100bpのDNAラダーを全てのPCRゲルの左に示してある。
【図13】48時間(図13A)における、および72時間(図13B)における、10-6MのTCAP(ニジマスTCAP-3)によるGn11ニューロン細胞の細胞増殖の阻害を図示する棒グラフである。
【図14】TGR1(野生型)線維芽細胞細胞の細胞増殖の阻害を図示する棒グラフである。
【図15】48時間における、10-6MのTCAP(ニジマスTCAP-3)によるHO16(c-mycを構成的に発現した細胞)(14B)の細胞増殖の阻害を図示する棒グラフである。
【図16】rtTCAP-3(ニジマスTCAP-3)によるGn11細胞のcAMP(16A)およびcGMP(16B)の蓄積の阻害を図示する棒グラフである。A.10-6MのTCAPは、媒体処理した細胞と比較して、有意な(p<0.01)cAMP濃度の減少を誘導した。反復:媒体(n=10);ウロコルチン(n=8);TCAP(n=11)。B.10-6MのTCAPは、Gn11細胞におけるcGMP蓄積の有意な(p<0.01)減少を誘導した。同じ濃度のラットウロコルチンも、cGMP濃度の有意な(p<0.05)減少を誘導した。各々の処理群について、3回繰り返して使用した。有意差は、ダネットの事後検定により一元分散分析法を使用して評価した。演繹的な有意水準は、p=0.05で確立した。オリジナルデータを転換して、媒体処理した細胞と比較したパーセント濃度を示した。
【図17】Gn11細胞におけるTCAP(ニジマスTCAP-3)のcAMP調節を図示する。17Aは、10-8MのTCAPまたはウロコルチンで30分にわたって処理したGn11細胞におけるcAMPレベルを図示する。17Bは、10-4Mの3-イソブチル-1メチルキサンチン(IBMX)、10-8MのTCAPまたはウロコルチンの処理によって誘導されるcAMPをブーストするために使用するホスホジエステラーゼ阻害剤の存在下における、Gn11細胞のcAMPレベルを図示する。17Cは、IBMXの存在下における、種々の濃度のTCAPまたはウロコルチンの投与による、Gn11細胞での30分にわたるcAMP蓄積を図示する棒グラフである。17Dは、10-6Mのフォルスコリンで刺激されるcAMPの、10-8MのTCAPまたはウロコルチンによる阻害を図示する棒グラフである。
【図18】図18Aおよび18Bは、自己報酬行動の投与に対するTCAP(ニジマスTCAP-3)の効果を図示する直線グラフである。行動は、心地よい刺激(25〜100Hz)の範囲以上で30秒あたりのバーを押す回数によって示した。図18A:ベースライン、TCAPペプチド(0.001mg/mlの1.Oμl、左)、注射後(約90分)、850μA。図18B:ベースライン、TCAPペプチド(0.001mg/mlの1.Oμl、右)、注射後(約60分)、550μA。100nMのTCAPでは、神経インパルスによる自己投与報酬に対するラット欲望が有意に減少した。
【図19】図19Aは、TCAP調節の模式的細胞モデルである。A.低酸素もしくはpH変化などの生理学的な条件の形態ストレス、または不安原性リガンドにより、細胞の代謝活性化がトリガーされる。B.これによって、テネウリンタンパク質およびその切断酵素の上方制御が生じる。C.酵素は、テネウリンからTCAPを解放し、そこでは、これが自己分泌およびパラ分泌の様式で作用し、Gタンパク質結合受容体を介したcAMPおよびcGMPの産生を阻害する。
【図20】実施例9で述べたように、ラット脳核におけるTCAP-1 mRNAの分布を図示する。
【図21】本明細書の実施例10に説明したように、(A)媒体処理したICV注射ラット、(B)TCAP-1のICV注射ラット、における慢性的なヒトTCAP-1応答を図示する棒グラフである。
【図22】実施例10の全ての動物における平均ベースライン驚愕反応を図示するグラフである。図22Aは、TCAP注射の1日後の平均驚愕反応であり、図22Bは、慢性的なTCAP研究の終了後の平均驚愕であり、図22Cは、TCAP-1による平均驚愕反応である。
【図23】本明細書の実施例11において論議したように、高度および低度の不安反応動物両者に対して種々の用量のTCAP-1を処理した、相互作用バー・プロットである。
【図24】本明細書の実施例11において論議したように、ラットの驚愕反応に対する扁桃体に注射したTCAP-1の効果をプロットした。
【図25】不死化ニューロンのTCAPの活性を図示する。(A)Gn11細胞におけるcAMP蓄積。1nMのTCAPは、cAMPを増加させた(p<0.05)が、100nmのTCAPはcAMPを減少させた(p<0.05)。中間の濃度(10nM)では無効であった。(B)cAMP蓄積に対するCRF-R1アンタゴニストの作用。1nMのマウスTCAP-1、またはマウスウロコルチンは、Gn11細胞のcAMP蓄積を増加させた。CRF R1受容体アンタゴニストのPD171729は、これらの細胞に対するウロコルチンの作用を消失させた(p<0.01)が、しかしTCAPを介したcAMP蓄積に対しては効果を有さなかった。(C)タンパク質アッセイ法。1〜100nMの濃度のTCAPは、Gn11細胞におけるタンパク質合成を刺激した。(D)MTTアッセイ法。1nMのマウスTCAP-1は、48時間後のGn11細胞におけるMTT活性を増大させた(p<0.05)。対照的に、100nMのマウスTCAP-1は、同じ時間におけるMTT活性を減少させた(p<0.05)。(E)DNA含量解析。マウスTCAP-1では、1nMの最も低い濃度でG1期の発生率が減少したが、100nMの最も高い用量では、G1期の細胞の数が増大した。有意水準は、A、B、およびEについて一元分散分析を使用して決定し、並びにCおよびDについて二元分散分析を使用して決定した。
【図26】TCAP(ニジマスTCAP-3)ペプチド刺激に対する、マウス視床下部の不死化細胞株の機能的なcAMP反応を図示する。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年5月3日に出願された表題「テネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)」の米国仮特許出願第60/377,231号および2002年11月6日に出願された表題「テネウリンC末端関連ペプチド1(TCAP-1)を使用するストレスを調節するための方法」の米国仮特許出願第60/42,4016号の恩典および優先権を主張する。また、本出願は、2002年5月2日に出願された、表題「視床下部の不死化ニューロン細胞株」の米国仮特許出願第60/376,879号の優先権を主張する。これらの参照の全ては、参照としてその全体が組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明はテネウリン(teneurin)分子のC末端領域と関係したペプチドの新規ファミリー、該ペプチドをコードする核酸分子、並びにこれらに関連する方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
あらゆる神経病理における病因は、遺伝的、生理学的、および環境的因子の複雑な相互作用による。これらの症状の有効な治療は、最終的には、同族の遺伝子およびこれらの産物の理解に依存する。近年、関連した遺伝子の大規模なファミリーが不安原性(anxiogenic)ペプチドを含む神経病理における調節に関与していることが明らかになった。これらの遺伝子ファミリーおよびこれらが相互作用する方法の同定および特徴付けは、最終的に病体を効率的に治療することに向けて必須の工程である。ニューロン増殖の調節異常は、年齢によって、種々の病的状態として現れ得る。胎児または新生児の動物におけるニューロン増殖の欠陥は、学習欠陥、精神遅滞、自閉症、または分裂病などの疾患を引き起こし得る。若年の個体の後半の年齢では、成人後半に恐慌性障害、欝病、拒食症、強迫神経障害などの情動障害が現れる可能性がある。成体において、このようなニューロン増殖の問題は、アルツハイマー病またはパーキンソン病などの神経変性疾病に至る可能性がある。
【0004】
鬱病または心的外傷後ストレス精神障害などの気分障害の発症は、感情性、記憶、および意欲を調節する脳の多くの座位における機能変化が関与する(Manjiら、2001;Drevets, 2001;Nestlerら、2002)。しかし、これらの領域内および領域間の連絡を介する細胞シグナリング分子の多くは知られておらず、このような障害の原因の完全な理解には至っていない。
【0005】
多くの神経ペプチドは、ニューロペプチドY(NPY)(Larhammar、1996a、b)、プロオピオメラノコルチン(POMC)(Danielson、2000)、および最近のコルチコトロピン放出因子(コルチコトロピン放出因子)ファミリー(Valeら、1981、Vaughanら、1995;LovejoyおよびBalment, 1999; Lewisら、2001 Reyesら、2001;HsuおよびHseuh, 2001)によって証明されたように、3つまたは4つのパラロガスな構造が存在することを示す。
【0006】
主に、神経系に発現するニューロン細胞表面タンパク質ファミリーが同定された。これらのタンパク質は、テネウリン(teneurin)と名づけられた(Rubinら、Developmental Biology 216, 195-209 (1999))。4つの基本的テネウリンのTen M1、Ten M2、Ten M3、およびTen M4が同定された。Ten-MまたはOdzタンパク質は、当初ショウジョウバエ(Drosophilia)において発見され(Levineら、1994; Baumgartnerら、1994)、転写制御因子でないペアルール遺伝子の現在唯一知られた例である。Ten-M遺伝子は、初めに胚盤葉段階の間に活性化され、次いで、後期段階で発現される前に下方制御される。中枢神経系においてTen-Mが最も高レベルに生じ、ここではタンパク質が軸索の表面上に優先して生じる(Levineら、1994; Levineら、1997)。Ten-M/Odz遺伝子の突然変異は、胚性致死となる(Baumgartnerら、1994; Levineら、1994)。
【0007】
テネウリンと呼ばれている4つのTen-Mのパラロガス遺伝子が脊椎動物に存在し、タンパク質のカルボキシ末端が細胞の細胞外表面に示されるタイプII膜貫通タンパク質をコードする(Oohashiら、1999)。テネウリンタンパク質は、約2800の長さのアミノ酸である。アミノ末端の後ろの300〜400アミノ酸において疎水性残基の短い配列があり、膜にまたがる部位として作用するものと思われる。細胞質のN末端部分には、保存されたプロリンリッチなSH3結合部位があり、これらがその他のタンパク質に結合する場合の潜在的な部位を示す。このタンパク質は、テネウリン2の残基528の周辺に位置するフリン(Furin)様の切断モチーフ(RERR)で膜から切断されるであろうことを証拠が示唆する(Rubinら、1999)。しかし、このモチーフは、その他のパラログには存在せず、したがって、タンパク質の可溶型が全てのパラログについて生じ得るというわけではない。一連のシステインリッチなEGF様の反複カルボキシ末端が、これには存在する。ホモ二量体化は、EGF様のモジュール2および5(Oohashiら、1999)の間の相互作用を介してTen M1形態間で生じる。
【0008】
Ten-M遺伝子は、ストレスによって上方制御されるものと思われる。 Wangら、(1998)は、DOC4(downstream of chop)と名付けられた哺乳類細胞のTen-M様の転写産物が、転写制御因子GADD153/CHOPによって上方制御されることを示した。この転写制御因子は、紫外光、アルキル化剤、または小胞体(ER)ストレス応答を引き起こす条件(酸素の欠乏、グルコースもしくはアミノ酸、またはER膜を超えるカルシウム流入の妨害など)を含む細胞ストレスのいくつかのタイプによって誘導される(Zinsznerら、1998)。GADD153は、転写制御因子のC/EBPファミリーのメンバーと共に二量体化する小さな核タンパク質である(RonおよびHabener, 1992)。これは、ホモ二量体化しないと思われる。GADD153は、p38型MAPキナーゼによってストレス誘導性のリン酸化を受け、これはまた、GADD153の転写活性化を増強する(Wangら、1996)。GADD153の高発現は、細胞周期の停止を引き起こすと考えられる(Zhanら、1994)。これらの研究は、テネウリン遺伝子がニューロンおよびその他の細胞のストレス応答の調節において有意な役割を果たすであろうことを示唆する。
【0009】
マウス神経芽腫細胞(Nb2a)内でのテネウリン2の過剰発現により、神経突起成長の量が増大し、成長円錐が拡大する傾向があった。また、テネウリン2を過剰発現する細胞において、フィラメントアクチンを含有する糸状偽足の数が増強された(Rubinら、1999)。テネウリン遺伝子の発現を胎児のゼブラフィッシュ(Miedaら、1999)、ニワトリ(Rubinら、1999)、およびマウス(Ben-Zurら、2000)において検査したが、これらの発現パターンは微細に解決されなかった。転写産物は、多くの末梢組織で見出されるが、主に中枢神経系において見出される。胎生期のニワトリ脳において、テネウリン1および2は、網膜、終脳、視蓋、および間脳に発現される。テネウリン1のmRNAは、主に背側視床の中間帯に見出されたが、テネウリン2は、視床の中間帯に見出された(Rubinら、1999)。ゼブラフィッシュでは、テネウリン4は、原腸形成の全体にわたってわずかに発現されるが、テネウリン3の発現はない。テネウリン3の発現は、終末芽段階のあたりで脊索および体節において開始する。後期段階(受精の14時間後)では、テネウリン3は、体節、脊索、および脳において発現されるが、テネウリン4の発現は、脳に限定される。テネウリン3は、眼胞並びに尾側間脳および中脳をカバーする領域内に限定され、前中脳において最も強く発現する。テネウリン4は、中脳後脳辺縁の方でその最も強い発現をもたらす。受精23時間後までに、テネウリン3は、蓋原基の背側の一部および腹側中脳に発現されるが、テネウリン4は、腹側原基に発現される(Miedaら、1999)。
【0010】
神経病理学的な症状は、複雑でよく理解されていない傾向がある。従って、関係する機構をよく理解し、該症状の診断および治療の方法を開発する必要がある。また、該症状のための治療的な化合物を同定および設計する必要がある。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、Ten-M1、2、3、または4のC末端エキソンの40〜41残基の配列として存在し、対応してTCAP1、2、3、および4と名付けられたテネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)を提供する。別の態様において、本発明は、類似体、種相同体、誘導体、変異体、対立遺伝子変異体のために、これらと実質的に配列同一性を有する配列のために、およびこれらと明らかに化学的に相当するもののために、テネウリン1〜4ペプチドのC末端に位置する40または41アミノ酸の配列からなるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。別の態様において、本発明のTCAPペプチドは、カルボキシ末端にアミド化シグナル配列をさらに含むことができる(以下に「preTCAP」と称する)。このようなアミド化シグナルのアミノ酸配列は、GKRおよびGRRを含むことができるが、これらに限定されない。また、本発明は、標識TCAPペプチドのために、および1〜10のアミノ酸の隣接するアミノ酸配列を含むペプチドのための、上記のTCAPペプチドを含む融合タンパク質を提供する。
【0012】
1つの態様において、本発明は、ニューロン連絡活性(neuronal communication activity)を有するTCAPペプチドを提供する。別の態様において、本発明は、TCAPペプチド、同様の活性を有する類似体、誘導体、変異体、相同体を提供する。1つの態様において、活性はニューロン連絡である。別の態様において、活性は細胞増殖の阻害であり、さらに別の態様において、活性はストレス応答の調整である。
【0013】
1つの態様において、TCAP配列は、ニジマス、ゼブラフィッシュ、ヒト、マウス、ニワトリ(G.gallus)、またはキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)のTCAPである。別の態様において、TCAP配列は、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103を含むか、またはからなり、さらに別の態様において、TCAPは、マウスまたはヒトTCAPである。1つの態様において、TCAPは、配列番号:69、70、77、78、85、86、93、94(ヒト)または配列番号:37、38、45、46、53、54、61、62(マウス)からなる群より選択される配列のうちの1つを有する。
【0014】
1つの局面において、本発明は、上記の配列番号のいずれか1つおよびカルボキシ末端のアミド化シグナル配列からなるTCAPを提供する。好ましくは、アミド化シグナル配列は、15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96などの、GRRまたはGKRからなる群より選択される。
【0015】
本発明の別の態様は、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103に示したとおりのアミノ酸配列を有する単離されたテネウリンC末端関連ペプチド;または、その断片、類似体、相同体、誘導体、もしくは模倣体に関する。好ましい態様において、本発明のTCAPペプチドは、不安原性活性を有する。また、本発明は、本発明のTCAPペプチドに結合することができる抗体を含む。
【0016】
別の態様において、本発明のペプチドは、配列番号:37、38、45、46、53、54、61、62のアミノ酸配列を有するTCAPマウスペプチドである。
【0017】
別の態様において、本発明のペプチドは、配列番号:69、70、77、78、85、86、93、または94のアミノ酸配列を有するTCAPヒトペプチドである。
【0018】
別の態様において、ペプチドのTCAPヒトおよびマウスのペプチドは、C末端にアミド化シグナル配列を有する。
【0019】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-1であり、配列番号:37、38、69、または70のアミノ酸配列を有する。
【0020】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-2であり、配列番号:46、47、77、または78のアミノ酸配列を有する。
【0021】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-3であり、以下のアミノ酸配列モチーフを有する:
配列中、Xaa1は、G、S、またはAであり;Xaa2は、GまたはRであり;Xaa3は、LまたはQであり;Xaa4およびXaa5は、独立してVまたはIである。別の態様において、TCAP-3は、ヒトまたはマウスTCAP-3である。別の態様において、TCAP-3は、配列番号:85、86、53、または54を有する。別の態様において、TCAP-3配列は、配列番号:13、14、21、または22である。
【0022】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-4であり、配列番号:29、30、61、62、93、または94のアミノ酸配列を有する。
【0023】
別の態様において、ペプチドTCAP1〜TCAP4は、C末端にアミド化シグナル配列を有する。
【0024】
さらに別の態様において、本明細書に述べたとおり、本発明は、本発明のテネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)をコードする単離された核酸分子を提供する。さらに別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、以下からなる:
(a)配列番号:18〜20、25〜28、33〜36、41〜44、49〜52、57〜60、65〜68、73〜76、81〜84、89〜92、97〜100に示される核酸配列、またはTがUであってもよいその核酸配列、または、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチド、もしくは該ペプチドのカルボキシ末端にアミド化シグナル配列(好ましくはGKRまたはGRR)をさらに有するペプチド、もしくは配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96を有するペプチドをコードする核酸配列;
(b)核酸配列(a)に相補的な核酸配列;
(c)核酸配列(a)、または(b)に実質的な配列相同性を有する核酸配列;
(d)核酸配列(a)、(b)、または(c)の類似体である核酸配列;あるいは
(e)核酸配列(a)、(b)、(c)、または(d)に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列。
【0025】
好ましい態様において、本発明の核酸分子は、不安原性活性を有するテネウリンC末端関連ペプチドをコードする。
【0026】
また、本発明は、本発明の核酸分子に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、並びに本発明の核酸配列を含む発現ベクターおよび上述した発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を包含する。
【0027】
本発明のさらなる局面は、テネウリンC末端関連ペプチドと結合することができる物質を同定する方法であって、テネウリンC末端関連ペプチドと試験物質との間で複合体を形成させる条件下で、テネウリンC末端関連ペプチドおよび試験物質をインキュベートする工程、並びにテネウリンC末端関連ペプチドと試験物質の複合体について、遊離の物質について、または複合体化されていないテネウリンC末端関連ペプチドについてアッセイする工程を含み、複合体の存在によって、試験物質がテネウリンC末端関連ペプチドに結合できることが示される方法に関する。
【0028】
また、本発明は、ニューロン増殖の調節に影響を及ぼす化合物を同定するための方法であって、テネウリンC末端関連ペプチド、またはテネウリンC末端関連ペプチドをコードする核酸と試験化合物とをインキュベートする工程、およびテネウリンC末端関連ペプチドタンパク質の活性または発現の量を決定し、対照と比較する工程を含み、対照と比較したTCAPペプチドの活性または発現の変化によって、試験化合物がニューロン増殖の調節に対して効果を有することが示される方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、細胞増殖を阻害する方法であって、細胞増殖を阻害するテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を細胞に投与する工程を含む方法を提供する。好ましい態様において、阻害される細胞は、ニューロンまたは線維芽細胞からなる群より選択される。
【0030】
本発明の別の局面は、ニューロン増殖の調節異常に関連する症状を検出する方法であって、テネウリンC末端関連ペプチドもしくはその断片をコードする核酸分子、またはテネウリンC末端関連ペプチドもしくはその断片に対して試料をアッセイする工程を含む方法に関する。
【0031】
また、本発明は、ニューロン増殖の調節異常に関連した症状、たとえば癌を治療する方法であって、それを必要とする細胞または動物に、テネウリンC末端関連ペプチドまたはテネウリンC末端関連ペプチドの発現および/もしくは活性を調整する薬剤の有効量を投与する工程を含む方法に関する。
【0032】
TCAP-1配列を含むテネウリン1のmRNAは、ストレス応答および不安を調節する前脳および辺縁系の領域に発現される。TCAPは、不死化ニューロンにおいて、細胞周期および増殖を修飾する特異的なcAMP依存的なGタンパク質結合受容体を介してシグナルを伝える。ラットの側脳室または扁桃体への合成TCAP-1の投与により、聴覚の驚愕反応が正常化した。したがって、これらのペプチドは、神経のストレス応答において不可欠な部分であると思われ、一部の精神医学的疾患の病因において役割を担っている可能性がある。
【0033】
別の態様において、本発明は、動物の、好ましくは哺乳類、好ましくはヒトのストレス応答を調整する方法であって、該動物のストレス応答を調整するために、該動物に対して、TCAP、好ましくはTCAP-1ペプチド、該ペプチドをインサイチューで発現することができる形態の該TCAPペプチドをコードする核酸分子、またはTCAPの発現もしくは活性のアンタゴニストまたはアゴニストの有効量を投与することによる方法を提供する。1つの態様において、ストレス応答は、不安反応である。
【0034】
別の態様において、本発明は、動物のストレスまたは不安反応を正常化するための方法を提供する。別の態様において、本発明は、低不安動物において不安原性反応を誘導するための、および高不安動物において抗不安作用を誘導するための方法を提供する。
【0035】
別の態様において、本発明は、動物のTCAP発現の効果を調整することによって動物のストレス応答を調整する方法であって、該動物に対して該TCAP発現または活性のモジュレーターを投与することによる方法を提供する。1つの態様において、該モジュレーターは、TCAPの発現および/または活性の阻害剤であり、別の態様において、該モジュレーターは、TCAP発現または活性のアンタゴニストである。1つの態様において、該TCAPは、TCAP-1である。
【0036】
さらに別の態様において、本発明は、高い、正常な、または低いストレス応答症状を有する動物を診断する方法であって、該動物に対してTCAP-1などのTCAPを投与して、動物のストレス応答に対して抗不安、不安原性、または中和効果がもたらされるかどうかをモニタリングすることによる方法を提供する。
【0037】
本発明のその他の局面は、対象に不安原性反応を誘導する方法、生理的ストレスによって引き起こされる損傷を阻止する方法、および細胞死を阻害する方法であって、それぞれ、所望の結果をもたらすために、対象に対してテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を投与する工程を含む方法に関する。
【0038】
本発明のその他の特徴および効果は、以下の詳細な説明から明らかになると考えられる。しかし、本発明の趣旨および範囲内での種々の改変および変更態様は、この詳細な説明から当業者には明らかとなるため、本発明の好ましい態様を示す詳細な説明および具体例は、例示することのみを目的として与えられることが理解されるべきである。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明者らは、Ten Mタンパク質またはテネウリンとしてすでに同定されたタンパク質よりも大きなタンパク質の一部として存在する新規のペプチド配列を同定した。新規のペプチドは、テネウリンC末端ペプチドまたはTCAPと称する。いくつかの脊椎動物および無脊椎動物の種のゲノムまたは遺伝子転写物を相同的なプローブハイブリダイゼーションによって、またはPCRによってスクリーニングした。ゲノムシーケンシングプログラムからの配列データにより、ヒトおよびマウスのこのファミリーから4つのパラロガスなペプチド、ゼブラフィッシュから2つのパラロガスなペプチド、ニジマスおよびショウジョウバエから1つの補完的役割をするペプチド(配列番号:103)を同定することができた。合成TCAPペプチドは、ニューロンの連絡活性を有し、動物のストレス応答および不安のモジュレーターであることが示された。また、TCAPは、細胞増殖を調整する。1つの態様において、これは、細胞増殖を阻害することができる。別の態様において、TCAPは、ラットにおいて強力な不安原性ペプチドであり、ストレスのない細胞のニューロン増殖の阻害に非常に有効であり、かつ生理的ストレスから細胞を保護する。したがって、TCAPおよび/またはTCAPのモジュレーターは、ニューロンの連絡および/または細胞の増殖に関連したもの、たとえば、癌、ストレス不安、摂食障害および/または肥満症などの食品関連の障害を含む癌および神経病理学的な症状の治療に使用することができる。
【0040】
TCAP配列は、アミノ末端のPC7様切断モチーフおよびカルボキシ末端のアミド化モチーフに隣接する40アミノ酸の長さの切断可能なペプチドをコードする。N末端のPC7様切断部位の切断に応じて、生じる成熟TCAPペプチドは、40〜41アミノ酸長である。カルボキシ末端のアミド化モチーフを有するTCAP配列は、本明細書においてプレTCAPと称する。ヒト、マウス、ゼブラフィッシュ、およびショウジョウバエの相同分子種、並びに3つのさらなるパラロガスな配列が同定された。ニジマスペプチドの合成型では、有意に驚愕反射が増大し、ラットにおける自己投与の脳刺激が減少した。これらの知見は、哺乳類およびヒトにおいて不安を誘導することが知られているペプチドの作用と一致する。また、ペプチドは、ストレスのないニューロンおよび線維芽細胞の培養での増殖を強力に阻害し、高pHストレスに供されたこれらの培養の細胞死を強力に阻害する。これらの知見は、TCAPが、発生、および成人の脳の調整において役割を担い、ニューロンの増殖および代謝を保護し、したがって分裂病、パーキンソン病、およびその他の精神的症状を含む多くの病態に関係することを示す。成体の脳では、本ペプチドは、不安原性刺激を調整するように作用する可能性があり、鬱病、拒食症、およびその他の情動障害において役割を果たすことができるであろう。
【0041】
本明細書に用いる「単離された」という用語は、天然の状態から「人の手によって変化した」ことを意味する。組成物または物質が天然に存在する場合、単離された形態は、その本来の環境から変化しているか、もしくは取り除かれている、または両方の状態である。たとえば、天然に生きている動物に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離され」ていないが、その天然の状態の共存する物質から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本明細書に用いる用語として、「単離され」ている。したがって、組換え宿主細胞内に産生されおよび/または含まれるポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、本発明の目的において単離されたとみなされる。また、「単離されたポリペプチド」または「単離されたポリヌクレオチド」は、組換え宿主細胞から、または天然の供与源から、部分的にまたは実質的に精製されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドであることが企図される。たとえば、TCAPペプチドの組換えで産生された型およびこれらの誘導体は、SmithおよびJohnson, Gene 67:31-40 (1988)に記載されている一段法などの当技術分野において既知の方法によって実質的に精製することができる。
【0042】
本発明の核酸分子
本発明は、テネウリンC末端関連ペプチドをコードする配列からなる単離された核酸分子を提供する。このペプチドは、本明細書において、一般に「TCAP」と呼ぶ。また、本発明は、カルボキシ末端にアミド化モチーフを有するTCAPペプチドをコードする単離された核酸分子を提供し、該ペプチドは、本明細書において「プレTCAP」と呼ぶ。
【0043】
本発明には、組換えDNA技術によって産生されたときは、実質的に細胞成分もしくは培地フリーの単離された核酸を、または化学的に合成されたときは、化学的前駆体もしくはその他の化学物質を含む。
【0044】
好ましい態様において、本発明は、以下を含むか、または以下からなる単離された核酸配列を提供する:
(a)配列番号:18〜20、25〜28、33〜36、41〜44、49〜52、57〜60、65〜68、73〜76、81〜84、89〜92、97〜100に示される核酸配列、またはTがUであってもよいその核酸配列、または、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチド、もしくは配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96などの該ペプチドのカルボキシ末端にさらにアミド化シグナル配列(好ましくは、GKRまたはGRR)を有するペプチドをコードする核酸配列;
(b)核酸配列(a)に相補的な核酸配列;
(c)核酸配列(a)または(b)に実質的な配列相同性を有する核酸配列;
(d)核酸配列(a)、(b)、または(c)の類似体である核酸配列;あるいは
(e)核酸配列(a)、(b)、(c)、または(d)に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列;
(f)TがUである(a)〜(e)の核酸配列。
【0045】
「実質的な配列相同性を有する配列」という用語は、(a)もしくは(b)の配列からはわずかな、または重要でない配列の変異を有する核酸配列、すなわち実質的に同じ様式で機能する配列を意味する。変異は、局部的な突然変異または構造修飾に起因していてもよい。実質的な相同性を有する核酸配列は、上記の(a)に一覧を示した核酸配列と、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも85%、および最も好ましくは90〜95%の同一性を有する核酸配列を含む。「ハイブリダイズする配列」という用語は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で一連の(a)、(b)、(c)、または(d)にハイブリダイズすることができる核酸配列を意味する。DNAハイブリダイゼーションを促進する適切な「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、当業者に既知であり、または「Molecular Biology」、John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6において見出されるであろう。たとえば、以下を使用してもよい:6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)を約45℃で、続いて2.0×SSCを50℃で;0.2×SSCを50℃〜65℃で;または2.0×SSCを44℃〜50℃で洗浄する。ストリンジェンシーは、洗浄工程に使用される条件に基づいて選択されてもよい。たとえば、洗浄工程の塩濃度は、50℃で約0.2×SSCの高ストリンジェンシーから選択されうる。加えて、洗浄工程の温度は、約65℃での高ストリンジェンシー条件であってもよい。
【0046】
「核酸」という用語は、DNAおよびRNAを含むことが企図され、二重鎖または一本鎖のいずれであることもができる。
【0047】
「類似体である核酸配列」の用語は、(a)、(b)、または(c)の配列と比較して修飾された核酸配列であって、本明細書に記載されるように、修飾は配列の有用性を変えない核酸配列を意味する。修飾された配列または類似体は、(a)、(b)、または(c)に示した配列よりも改善された性質を有していてもよい。類似体を調製するための修飾の1つの例は、以下のような修飾塩基によって、配列の天然に存在する塩基(すなわち、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミジン)のうちの1つを置換することである:キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル、2-プロピル、およびその他のアルキルアデニン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、6-アザウラシル、6-アザシトシン、および6-アザチミン、プソイドウラシル(pseudo uracil)、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、およびその他の8-置換アデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、およびその他の8-置換グアニン、その他のアザおよびデアザウラシル、チミジン、シトシン、アデニン、またはグアニン、5-トリフルオロメチルウラシル、および5-トリフルオロシトシン。
【0048】
修飾の別の例は、上記(a)〜(e)に一覧を示した核酸分子の、リン酸骨格における修飾された亜リン酸もしくは酸素ヘテロ原子、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルの糖間結合、または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環の糖間結合を含む。たとえば、核酸配列は、ホスホロチオエート、リン酸トリエステル、メチルホスホネート、およびホスホロジチオエートを含んでもよい。
【0049】
本発明の核酸分子の類似体のさらなる例は、DNA(またはRNA)のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格がペプチドにおいて見られるものと同様のポリアミド骨格で置換された、ペプチド核酸(PNA)である(P. E. Nielsenら、Science 1991, 254, 1497)。PNA類似体は、酵素による分解に耐性であること、並びにインビボおよびインビトロでの生存が延長されることが示されている。また、PNA鎖とDNA鎖の間には電荷相反がないため、PNAsは、相補的なDNA配列により強く結合する。その他の核酸類似体は、ポリマー骨格、環状骨格、または非環式の骨格を含むヌクレオチドを含んでもよい。たとえば、ヌクレオチドは、モルホリノ骨格構造(米国特許第5,034,506号)を有していてもよい。また、類似体は、レポーター基(核酸配列の薬物動態学的または薬力学的な性質を改善するための基)などの基を含んでいてもよい。
【0050】
また、遺伝暗号の縮重のために本発明の核酸配列とは異なる配列を有する単離されおよび精製された核酸分子は、本発明の範囲内である。このような核酸は、機能的に同等のペプチドをコードするが、遺伝暗号の縮重のために上述の配列とは配列が異なる。
【0051】
DNAからなる本発明の単離された核酸分子は、本発明の核酸配列の全部または一部に基づいて標識核酸プローブを調製すること、および適切なDNAライブラリー(たとえば、cDNAまたはゲノムDNAライブラリー)をスクリーニングするためにこの標識核酸プローブを使用することによって単離することができる。たとえば、単離されたゲノムライブラリーを使用する際には、標準的な技術を使用して、標識プローブでライブラリーをスクリーニングすることにより、本発明の新規のペプチドをコードするDNAを単離することができる。cDNAまたはゲノムDNAライブラリーのスクリーニングによって単離された核酸は、標準的な技術によってシーケンスすることができる。
【0052】
また、DNAである本発明の単離された核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)方法およびcDNAまたはゲノムDNAを使用して本発明の新規のペプチドをコードする核酸を選択的に増幅することによって単離することができる。PCRに使用するために、本発明の核酸配列から合成オリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。核酸は、これらのオリゴヌクレオチドプライマーおよび標準的なPCR増幅技術を使用して、cDNAまたはゲノムDNAから増幅することができる。こうして増幅された核酸は、適切なベクターにクローニングすることができ、DNA配列解析によって特徴付けることができる。cDNAは、種々の技術によって、たとえば、Chirgwinら、Biochemistry, 18, 5294-5299 (1979)のチオシアン酸グアニジニウム(guanidinium-thiocyanate)抽出法を使用することによって、全細胞mRNAを単離することにより、mRNAから調製してもよい。次いで、逆転写酵素(例えば、Invitrogen, Carlsbad, CAから入手可能なモロニーMLV逆転写酵素またはSeikagaku America, Inc., St. Petersburg, FLから入手可能なAMV逆転写酵素)を使用して、mRNAからcDNAを合成する。
【0053】
RNAである本発明の単離された核酸分子は、適切なベクターに本発明の新規のペプチドをコードするcDNAをクローニングすることによって単離することができ、これにより、cDNAを転写して本発明のタンパク質をコードするRNA分子を産生することができる。たとえば、cDNAは、ベクターのバクテリオファージプロモータの下流にクローニングすることができ(たとえば、T7プロモータ)、cDNAは、インビトロにおいてT7ポリメラーゼで転写することができ、生じるRNAは、標準的な技術によって単離することができる。
【0054】
また、本発明の核酸分子は、標準的な技術を使用して化学的に合成されてもよい。ポリデオキシヌクレオチドを化学的に合成する種々の方法が既知であり、ペプチド合成のように、商業的に入手可能なDNA合成装置に完全に自動化された固相合成を含む(たとえば、Itakuraら、米国特許第4,598,049号;Caruthersら、米国特許第4,458,066号;並びにItakura米国特許第4,401,796号および第4,373,071号を参照されたい)。
【0055】
特定の核酸分子が本発明の新規ペプチドをコードするかどうかの決定は、標準的な技術によって適切な宿主細胞にcDNAを発現すること、および本明細書に記述した方法を使用してペプチドの活性を試験することによって達成されてもよい。こうして単離された本発明の新規ペプチドの活性を有するcDNAは、コードされたペプチドの核酸配列および予測されるアミノ酸配列を決定するために、ジデオキシヌクレオチド鎖集結またはマクサム-ギルバートの化学シーケンスなどの標準的な技術によってシーケンスすることができる。
【0056】
本発明の核酸分子の開始コドンおよび非翻訳配列は、PC/Gene(IntelliGenetics Inc., Calif.)などの本目的のために設計された現在利用できるコンピュータ・ソフトウェアを使用して決定してもよい。調節エレメントは、従来の技術を使用して同定することができる。エレメントの機能は、エレメントに作用可能に結合されたリポーター遺伝子を発現するようにこれらのエレメントを使用して確認することができる。これらの構築物は、標準的な手順を使用して培養細胞に導入してもよい。DNA中の調節エレメントを同定することに加えて、このような構築物はまた、当技術分野において既知の技術を使用して、エレメントと相互作用するタンパク質を同定するために使用されてもよい。
【0057】
本発明の核酸分子の配列は、本明細書にさらに完全に記載されているアンチセンス核酸分子を産生するために、転写についてその通常の提示に関して逆にしてもよい。特に、本発明の核酸分子またはこれらの断片に含まれる核酸配列は、アンチセンス核酸分子を産生するために、転写についてその通常の提示に関して逆にしてもよい。
【0058】
また、本発明は、本発明の新規タンパク質、および選択タンパク質、または選択可能なマーカータンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する(下記を参照されたい)。
【0059】
また、TCAPペプチドの断片、機能的なドメイン、または抗原決定基の部分をコードする核酸配列が提供される。また、本発明は、TCAPのためのプローブおよびPCRプライマーとしての、並びに配列の機能的な側面を決定するための配列の部分の使用を提供する。
【0060】
当業者は、当技術分野の現在の標準的なハイブリダイゼーションスクリーニングまたはPCR技術を使用して、開示された配列の対立遺伝子変異体であるTCAPをコードする核酸またはcDNA同定しおよび単離することができる。
【0061】
II.本発明の新規タンパク質
本発明は、単離されたTCAPペプチドをさらに広く想定する。本明細書に用いられる「TCAPペプチド」という用語は、TCAPペプチドの全ての相同体、類似体、断片、または誘導体を含む。
【0062】
ペプチドに関して、「類似体」という用語は、本明細書に特異的に示したヒトまたはマウスTCAP配列と実質的に同一のアミノ酸残基残基配列を有するあらゆるペプチドであって、1つまたは複数の残基が機能的に同様の残基で保存的に置換され、本明細書に記載されたようなTCAPを模倣する能力を示すものを含む。保存的な置換の例は、アラニン、イソロイシン、バリン、ロイシン、もしくはメチオニンなどの1つの非極性(疎水性の)残基を別の残基に置換すること、アルギニンとリジンの間、グルタミンとアスパラギンの間、グリシンとセリンの間などの、1つの極性(親水性の)残基を別の残基に置換すること、リジン、アルギニン、もしくはヒスチジンなどの1つの塩基性残基を別の残基に置換すること、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸などの1つの酸性残基を別の残基に置換することを含む。「保存的な置換」という語句は、このようなポリペプチドが必要な活性を示すことを条件として、非誘導体化された残基の代わりに化学的に誘導体化された残基を使用することを含む。
【0063】
ペプチドに関して、「誘導体」という用語は、機能的な側鎖の反応によって化学的に誘導体化された1つまたは複数の残基を有するペプチドをいう。このような誘導体化された分子は、たとえば遊離のアミノ基が誘導体化されて、アミンヒドロクロリド、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基、またはホルミル基を形成する分子を含む。遊離のカルボキシル基は、塩、メチルエステルおよびエチルエステル、もしくは他のタイプのエステル、またはヒドラジドを形成するように誘導体化してもよい。遊離のヒドロキシル基は、O-アシルまたはO-アルキル誘導体に誘導体化してもよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導体化してN-im-ベンジルヒスチジンを形成させてもよい。また、誘導体としては、20個の標準的なアミノ酸の1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含むペプチドが含まれる。たとえば、4-ヒドロキシプロリンは、プロリンに対して置換されてもよく;5-ヒドロキシリジンは、リジンに対して置換されてもよく;3-メチルヒスチジンは、ヒスチジンに対して置換されてもよく;ホモセリンは、セリンに対して置換されてもよく;およびオルニチンは、リジンに対して置換されてもよい。また、本発明のポリペプチドは、必要な活性が維持される限り、配列が本明細書に示されているポリペプチドの配列に関して、1つまたは複数の付加および/または欠失を有する任意のポリペプチドまたは残基を含む。
【0064】
1つの態様において、単離されたTCAPペプチドは、カルボキシ末端のアミド化シグナルの有無にかかわらず、テネウリン様のタンパク質のカルボキシ末端の38〜41アミノ酸残基からなる。1つの態様において、アミド化シグナルは、アミノ酸配列GKRまたはGRRからなる(プレTCAP)。別の態様において、TCAPペプチドは、上記のペプチドと実質的に一致する配列、またはこれらの明らかな化学的相当物を含む。また、これは、上記のTCAPペプチド配列のアミノ末端および/またはカルボキシ末端に、ペプチド配列+/-アミノ酸を含む。さらに別の態様において、本発明は、TCAPペプチド、標識TCAPペプチド、これらの類似体、相同体、および変異体を含む融合タンパク質を含む。
【0065】
1つの態様において、TCAPペプチドは、ニジマス、ゼブラフィッシュ、ヒト、マウス、ニワトリ、またはキイロショウジョウバエTCAPである。別の態様において、TCAPペプチドは、以下からなる群より選択される配列を有する:配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103、または該ペプチドのカルボキシ末端にさらにアミド化シグナル配列(好ましくは、GKRまたはGRR)を有する15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96など。
【0066】
別の態様において、本発明のペプチドは、TCAP-3であり、以下のアミノ酸配列モチーフを有する:
配列中、Xaa1は、G、S、またはAであり;Xaa2は、GまたはRであり;Xaa3は、LまたはQであり;Xaa4およびXaa5は、独立してVまたはIである。1つの態様において、TCAP-3は、ヒトまたはマウスTCAP-3である。別の態様において、TCAP-3は、配列番号:13、21、53、または85を有する。
【0067】
本発明の関連内において、本発明のペプチドは、生物活性を保持する一次ペプチドの種々の構造形態を含んでもよい。たとえば、本発明のペプチドは、酸性塩もしくは塩基性塩の形態で、または中性の形態であってもよい。加えて、個々のアミノ酸残基は、酸化または還元によって修飾されてもよい。
【0068】
全長アミノ酸配列に加えて、本発明のペプチドはまた、本明細書に記載されているように、ペプチドの切断型(truncation)、類似体、および相同体、並びにこれらの切断型を含んでもよい。切断されたペプチドまたは断片は、上記に一覧を示した配列の少なくとも5個、および好ましくは10個、およびより好ましくは15個のアミノ酸残基のペプチドを含んでもよい。
【0069】
本発明は、TCAPペプチドの少なくとも1つの機能的なドメインを含むポリペプチドまたは少なくとも1つの抗原決定基をさらに提供する。
【0070】
本明細書に記載されているように、本発明のタンパク質の類似体および/またはこれらの切断型は、1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入、欠失、および/または突然変異を含むアミノ酸配列に含んでもよいが、これに限定されない。アミノ酸置換は、保存的または非保存的な性質であってもよい。保存的アミノ酸置換は、同様の電荷、大きさ、および/または疎水性の特徴のアミノ酸で本発明のペプチドの1つまたは複数のアミノ酸を置換することを含む。保存的置換のみが作製されるときは、生じる類似体は機能的に同等物であるはずである。非保存的置換は、異なる電荷、大きさ、および/または疎水性の特徴を有する1つまたは複数のアミノ酸でアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸を置換することを含む。
【0071】
1つまたは複数のアミノ酸の挿入が本発明のアミノ酸配列に導入されてもよい。アミノ酸の挿入は、単一のアミノ酸残基または長さが2〜15アミノ酸の範囲の一連のアミノ酸からなってもよい。たとえば、アミノ酸の挿入は、ペプチドが活性ではなくなるように、標的配列を破壊するために使用してもよい。この手順は、インビボで本発明のペプチドの活性を阻害するために使用してもよい。
【0072】
欠失は、TCAPペプチドのアミノ酸配列からの1つまたは複数のアミノ酸の除去または分離した部分からなってもよい。欠失するアミノ酸は、隣接していても、または隣接していなくてもよい。
【0073】
本発明のタンパク質の類似体は、ペプチドをコードするヌクレオチド配列の突然変異を導入することによって調製されてもよい。突然変異は、天然の配列の断片に対するライゲーションを可能にする制限部位に隣接して変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって、特定の遺伝子座に導入されてもよい。ライゲーションに続いて、生じる再構築された配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換、または欠失を有する類似体をコードする。
【0074】
または、必要とされる置換、欠失、または挿入にしたがって変更された特定のコドンを有する変更された遺伝子を提供するために、オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異法を使用してもよい。また、本発明のペプチドの欠失または切断型は、所望の欠失に隣接する制限エンドヌクレアーゼ部位を利用することによって構築されてもよい。制限後に、突出を埋めて、DNAを結合してもよい。上述した変更を作製する典型的な方法は、Sambrookら(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)によって開示されている。
【0075】
また、本発明のペプチドは、本明細書に記載されているように、TCAPペプチドのアミノ酸配列の相同体、変異されたTCAPペプチド、および/またはこれらの切断型を含む。このような相同体は、本発明のペプチドを得るために使用されるプローブとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(本明細書のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の議論を参照)下でハイブリダイズするアミノ酸配列から構成されるアミノ酸配列のタンパク質である。本発明のペプチドの相同体は、タンパク質の特徴と同じ領域を有するであろう。
【0076】
相同的なペプチドは、TCAPペプチドのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは80〜95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
【0077】
また、本発明は、本発明のペプチドのアイソフォームを想定する。アイソフォームは、本発明のペプチドと同じアミノ酸の数および種を含むが、アイソフォームは、異なる分子構造を有する。本発明によって想定されるアイソフォームは、本明細書に記載されているように、本発明のペプチドと同じ性質を有するものである。
【0078】
本発明のタンパク質(たとえば、切断型、類似体、その他を含む)は、組換えDNA法を使用して調製してもよい。したがって、ペプチドの良好な発現を確実にする適切な発現ベクターに、本発明のペプチドをコードする配列を有する本発明の核酸分子を当技術分野において既知の手順に従って組み込んでもよい。可能な発現ベクターは、ベクターが使用される宿主細胞と適合性を持つ限り、コスミド、プラスミド、または修飾されたウイルス(たとえば、複製欠損のレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を含むが、これらに限定されない。「宿主細胞のトランスフォーメーションのために適切な発現ベクター」とは、本発明の核酸分子および制御配列を含み、発現のために使用される宿主細胞を基礎として選択され、これらが機能的に核酸分子に結合されている発現ベクターを意味する。「機能的に結合される」とは、核酸が核酸を発現できる方法で制御配列に結合されることを意味することが企図される。
【0079】
したがって、本発明は、本発明の核酸分子またはこれらの断片、並びに挿入されたペプチド配列の転写および翻訳に必要な制御配列を含む本発明の組換え発現ベクターを想定する。適切な制御配列は、細菌、真菌の、またはウイルスの遺伝子を含む種々の供与源に由来してもよい(たとえば、Goeddel、「Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185」、Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている制御配列を参照されたい)。適切な制御配列の選択は、選択される宿主細胞に依存的であり、当技術分野の当業者によって容易に達成されるであろう。このような制御配列の例は、転写プロモータおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、および翻訳開始シグナルを含むリボソーム結合配列を含む。その上、選択される宿主細胞および使用されるベクターに応じて、複製開始点、さらなるDNA制限部位、エンハンサー、および転写誘導能を与える配列などのその他の配列を発現ベクターに組み込んでもよい。また、必要な制御配列が天然のペプチドおよび/またはそのフランキング領域によって供給されてもよいことが認識されるであろう。
【0080】
本発明は、アンチセンス方向で発現ベクターにクローニングした本発明のDNA核酸分子を含む組換え発現ベクターをさらに提供する。すなわち、DNA分子は、本発明のヌクレオチド配列に対してアンチセンスであるRNA分子のDNA分子の転写によって発現することができる方法で、制御配列に機能的に結合される。アンチセンス核酸に機能的に結合された制御配列を選択して、アンチセンスRNA分子を持続的に発現させることができる。
【0081】
また、本発明の組換え発現ベクターは、本発明の組換え分子を形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞の選択を容易にする選択可能なマーカー遺伝子を含んでもよい。選択可能なマーカー遺伝子の例は、特定の薬物に対する耐性を与える、G418およびハイグロマイシンなどのタンパク質、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはホタルルシフェラーゼをコードする遺伝子である。選択可能なマーカー遺伝子の転写は、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはホタルルシフェラーゼなどの選択可能なマーカータンパク質の濃度の変化によってモニターされる。選択可能なマーカー遺伝子が、ネオマイシン耐性などの抗生物質耐性を与えるタンパク質をコードする場合、形質転換体細胞は、G418によって選択することができる。選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞は、生存すると考えられるが、その他の細胞は死滅する。これにより、本発明の組換え発現ベクターを視覚化およびアッセイすること、特に発現および表現型に対する突然変異の効果を決定することが可能となる。選択可能なマーカーは、関心対象の核酸とは別のベクターに導入することができる。
【0082】
組換え発現ベクターは、形質転換された宿主細胞を作製するために宿主細胞に導入することができる。したがって、本発明は、本発明の組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含む。「形質転換された宿主細胞」という用語は、本発明の組換え発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた原核細胞および真核細胞を含むことが企図される。「で形質転換され」、「でトランスフェクトされ」「形質転換」、および「トランスフェクション」という用語は、当技術分野において既知の多くの可能な技術のうちの1つによって、細胞に核酸(たとえば、ベクター)を導入することを含むことが企図される。たとえば、原核細胞は、電気穿孔法または塩化カルシウムによるトランスフォーメーションによって核酸で形質転換することができる。核酸は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAEデキストランによるトランスフェクション、リポフェクチン、電気穿孔法、または微量注入などの従来の技術を介して哺乳類細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換し、トランスフェクトするための適切な方法は、Sambrookら、(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory press (1989))およびその他のこのような研究教科書に見出すことができる。
【0083】
適切な宿主細胞は、多種多様な原核生物および真核生物の宿主細胞を含む。たとえば、本発明のペプチドは、大腸菌、シュードモナス属(Pseudomonas)、枯草菌(Bacillus subtillus)などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルスを使用する)、酵母細胞、または哺乳類細胞に発現されてもよい。その他の適切な宿主細胞は、Goeddel、「Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185」、Academic Press, San Diego, CA (1991)において見出すことができる。
【0084】
例として、組換えTCAPペプチドを産生するために、たとえば、2つのプラスミドを使用するT7 RNAポリメラーゼ/プロモーター系を使用して、またはプラスミドをコードするタンパク質のラベリングによって、またはM13ファージGPI-2での感染による発現によって、大腸菌を使用することができる。また、大腸菌ベクターは、融合タンパク質ベクター(たとえば、IacZおよびtrpE)により、マルトース結合タンパク質融合により、並びにグルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質により、ファージラムダ制御配列と共に使用することができる。
【0085】
または、TCAPペプチドは、バキュロウイルスのベクターを使用して昆虫細胞において、またはワクシニアウイルスを使用して哺乳類細胞において発現させることができる。哺乳類細胞の発現のためには、cDNA配列を異種のプロモーターに結合してもよく、一過性または長期の発現を達成するためにCOS細胞などの細胞に導入してもよい。ネオマイシンおよびマイコフェノール酸(mycophoenolic acid)などの生化学的な選択によって、哺乳類細胞におけるキメラ遺伝子構築物の安定組込みを維持させてもよい。
【0086】
TCAP DNA配列は、制限酵素消化、DNAポリメラーゼによる充填、エキソヌクレアーゼによる欠失、ターミナル・デオキシヌクレオチド・トランスフェラーゼによる伸張、合成またはクローニングしたDNA配列のライゲーション、PCRと共に特異的なオリゴヌクレオチドを使用する部位特異的な配列変化などの手順を使用して変更することができる。
【0087】
cDNA配列もしくはこれらの部分、またはイントロンおよびそれ自体のプロモーターを有するcDNAからなるミニ遺伝子を、従来技術によって真核生物の発現ベクターに導入する。これらのベクターは、cDNAの転写を開始および増強する制御配列を提供することによって真核細胞中でのcDNAの転写を可能にし、その適当なスプライシングおよびポリアデニル化を確実にする。また、内因性のTCAP遺伝子プロモーターを使用することができる。ベクター内の異なるプロモーターは、異なる活性を有し、cDNAの発現レベルを変更させる。加えて、特定のプロモーターは、また、マウス乳癌ウイルス由来の糖質コルチコイド応答性プロモーターなどの機能を調整することができる。
【0088】
一覧を示したいくつかのベクターは、化学的な選択によって細胞の単離を可能にする選択可能なマーカーまたはネオ細菌遺伝子を含む。安定な長期ベクターは、エピソームとして細胞に維持し、ウイルスの調節エレメントを使用することによって自由に存在物を複製することができる。また、ゲノムDNAにベクターを組み込んだ細胞株を作製することができる。このように、遺伝子産物は、連続する塩基に対して産生される。
【0089】
ベクターは、リン酸カルシウム、リン酸ストロンチウム、電気穿孔法、リポフェクション、DEAEデキストラン、微量注入を含む種々の方法によって、またはプロトプラスト融合によって受容細胞に導入される。または、cDNAは、ウイルスベクターを使用する感染によって導入することができる。
【0090】
また、TCAPペプチドは、ペプチドが正常に発現される哺乳類の細胞または組織を含む細胞または組織から単離されてもよい。
【0091】
タンパク質は、クロマトグラフィー方法、高性能液体クロマトグラフィー法、または沈澱などの当技術分野において既知の従来の精製法によって精製されてもよい。
【0092】
たとえば、TCAPペプチドを単離するために、抗TCAP抗体(後述するとおり)を使用してもよく、次いで、これを標準的な方法によって精製する。
【0093】
また、本発明のペプチドは、固相合成(Merrifield, 1964, J. Am. Chem. Assoc. 85:2149-2154)または同種の溶液(Houbenweyl, 1987, 「Methods of Organic Chemistry」、E. Wansch編、 Vol. 15 I および II, Thieme, Stuttgart)などのタンパク質化学において周知の技術を使用する化学合成によって調製されてもよい。
【0094】
III.使用
本発明は、抗体およびアンチセンスオリゴヌクレオチドの調製、TCAPを研究するための実験系の調製、TCAPに結合するか、または発現および/または活性を調整することができる物質の単離、並びに診断および治療的な適用における、TCAP核酸配列およびこれらのペプチドおよびモジュレーターの使用を含む(しかし、これらに限定されない)、本発明の核酸分子、TCAPペプチド、およびプレTCAPペプチドの全ての使用を含む。いくつかの使用は、さらに以下に記載してある。
【0095】
(a)抗体
TCAPペプチドの単離により、TCAPに特異的な抗体の調製が可能となる。したがって、本発明は、TCAPペプチドに結合する抗体および/またはプレTCAPなどの、TCAPペプチドを含むタンパク質を提供する。
【0096】
抗体を調製するために、従来の方法を使用することができる。たとえば、TCAPを使用して、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を標準的な方法を使用して作製することができる。哺乳類(たとえば、マウス、ハムスター、またはウサギ)に、哺乳類に抗体反応を引き出すペプチドの形態の免疫原で免疫することができる。ペプチドに免疫原性を与えるための技術は、キャリアとの抱合または当技術分野において周知のその他の技術を含む。たとえば、タンパク質またはペプチドをアジュバントの存在下において投与することができる。免疫化の過程は、プラズマまたは血清中の抗体力価の検出によってモニターすることができる。抗体のレベルを評価するために、標準的なELISAまたはその他の免疫アッセイ手順では、抗原として免疫原を使用することができる。免疫化に続いて、抗血清を得ることができ、必要であれば、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。
【0097】
モノクローナル抗体を産生するためには、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫した動物から収集し、標準的な体細胞融合手順によって骨髄腫細胞と融合させることによって、これらの細胞を不死化し、ハイブリドーマ細胞を産生することができる。このような技術は、当技術分野において周知である(たとえば、当初Kohler および Milstein (Nature 256, 495-497 (1975))によって開発されたハイブリドーマ技術、並びにヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、Immunol. Today 4, 72 (1983))、ヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies in Cancer Therapy (1985) Allen R. Bliss, Inc., 77-96ページ)、およびコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニング(Huseら、Science 246, 1275 (1989))などのその他の技術)。ペプチドと特異的に反応する抗体の産生について、ハイブリドーマ細胞を免疫化学的にスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体を単離することができる。したがって、本発明はまた、TCAPに対する特異性を有するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を想定する。
【0098】
本明細書に用いられる「抗体」という用語は、TCAPと特異的に反応するこれらの断片も含むことが企図される。上記のものと同じ方法で利用するために、従来技術使用して抗体を断片化し、断片をスクリーニングすることができる。たとえば、F(ab')2断片は、ペプシンで抗体を処理して作製することができる。生じるF(ab')2断片をさらに処理してFab'断片を産生することができる。
【0099】
キメラ抗体誘導体、すなわちヒト以外の動物の可変領域とヒトの定常領域を組み合わせた抗体分子も、本発明の範囲内において想定される。キメラ抗体分子は、たとえば、ヒト定常領域を有する、マウス、ラット、またはその他の種の抗体に由来する抗原結合ドメインを含むことができる。本発明のTCAP抗原の遺伝子産物を認識する免疫グロブリン可変領域を含むキメラ抗体を作製するために、従来法を使用してもよい(たとえば、Morrisonら、Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A. 81, 6851 (1985); Takedaら、Nature 314, 452 (1985), Cabillyら、米国特許第4,816,567号; Bossら、米国特許第4,816,567号; Tanaguchiら、欧州特許公報第171496号;欧州特許公報第0173494号,英国特許第2177096B号を参照されたい)。キメラ抗体は、ヒト被験者において対応する非キメラ抗体よりも免疫原性が少ないと考えられる。
【0100】
特に、本発明のペプチドと反応するモノクローナル抗体またはキメラ抗体は、本明細書に記載されているものとして、可変領域の一部、特に抗原結合ドメインの保存されたフレームワーク領域が、ヒト起源であり、かつ高頻度可変領域だけが非ヒト起源である、ヒト定常領域キメラを産生することによって、さらにヒト化することができる。このような免疫グロブリン分子は、当技術分野において既知の技術によって作製されてもよい(たとえばTengら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80, 7308-7312 (1983); Kozborら、Immunology Today, 4, 7279 (1983); Olssonら、Meth. Enzymol., 92, 3-16 (1982))、およびPCT公報国際公開公報第92/06193号または欧州特許第0239400号)。また、ヒト化抗体は、商業的に産生され得る(Scotgen Limited, 2 Holly Road, Twickenham, Middlesex, Great Britain)。
【0101】
特異的な抗体、またはTCAPペプチドに反応性の抗体断片は、TCAPをコードする核酸分子から産生されるペプチドで、細菌に発現した免疫グロブリン遺伝子、またはこれらの部分をコードする発現ライブラリーをスクリーニングすることによって作製されてもよい。たとえば、完全Fab断片、VH領域、およびFV領域は、ファージ発現ライブラリーを使用して、細菌に発現させることができる(Wardら、Nature 341, 544-546(1989);Huseら、Science 246, 1275-1281 (1989);および McCaffertyら、Nature 348, 552-554 (1990)を参照されたい)。または、SCID-huマウス、たとえばGenpharmによって開発されたモデル)を、抗体またはこれらの断片を産生するために使用することができる。
【0102】
(b)アンチセンスオリゴヌクレオチド
TCAPをコードする核酸分子の単離により、TCAPの発現および/または活性を調整することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドの産生が可能となる。したがって、本発明は、TCAPをコードする核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0103】
本明細書に用いられる「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、その標的に相補的なヌクレオチド配列を意味する。
【0104】
「オリゴヌクレオチド」の用語は、天然に存在する塩基、糖、および糖間(骨格)結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオシドの単量体のオリゴマーまたは重合体をいう。また、本用語は、天然に存在しない単量体または同様の機能のこれらの部分を含む修飾され、または置換されたオリゴマーを含む。このような修飾され、または置換されたオリゴヌクレオチドは、細胞の取込みの増強またはヌクレアーゼの存在下における安定度の増大などの性質のために、天然に存在する形態以上に好ましいであろう。また、本用語は、2つ以上の化学的に異なった領域を含むキメラオリゴヌクレオチドを含む。たとえば、キメラオリゴヌクレオチドは、有益な性質(たとえば、ヌクレアーゼ耐性の増大、細胞への取込みの増大)を与える修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つの領域を含んでもよく、または本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドは、キメラオリゴヌクレオチドの形態に結合されていてもよい。
【0105】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボ核酸またはデオキシリボ核酸であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む天然に存在する塩基を含んでいてもよい。また、オリゴヌクレオチドは、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル、2-プロピル、およびその他のアルキルアデニン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、6-アザウラシル、6-アザシトシン、および6-アザチミン、プソイドウラシル、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオールアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、およびその他の8-置換アデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオールアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、およびその他の8-置換グアニン、その他のアザおよびデアザウラシル、チミジン、シトシン、アデニン、またはグアニン、5-トリフルオロメチルウラシル、および5-トリフルオロシトシン)などの修飾塩基を含んでもよい。
【0106】
本発明のその他のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リン酸骨格における修飾された亜リン酸、酸素ヘテロ原子、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルの糖間結合、または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環の糖間結合を含む。たとえば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、リン酸トリエステル、メチルホスホネート、およびホスホロジチオエートを含んでもよい。本発明のある態様において、4〜6の間の3'末端塩基を形成するホスホロチオエート結合のリンクがある。別の態様において、ホスホロチオエート結合は、全てのヌクレオチドを結合する。
【0107】
また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、治療的なまたは実験的な試薬としてより適しているであろうヌクレオチド類似体を含んでもよい。オリゴヌクレオチド類似体の例は、DNA(またはRNA)のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格がペプチドにおいて見られるものと同様のポリアミド骨格で置換された、ペプチド核酸(PNA)である(P.E. Nielsenら、Science 1991, 254, 1497)。PNA類似体は、酵素による分解に耐性であること、並びにインビボおよびインビトロでの生存が延長されることが示されている。PNA鎖とDNA鎖の間には電荷相反がないため、PNAは、相補的なDNA配列により強く結合する。その他のオリゴヌクレオチドは、重合体骨格、環状骨格、または非環式の骨格を含むヌクレオチドを含んでもよい。たとえば、ヌクレオチドは、モルホリノ骨格構造(米国特許第5,034,506号)を有していてもよい。また、オリゴヌクレオチドは、レポーター基、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的な性質を改善するための基、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬力学的な性質を改善するための基などの基を含んでいてもよい。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、糖模倣体を有していてもよい。
【0108】
アンチセンス核酸分子は、当技術分野において既知の手順を使用する化学合成および酵素結合反応を使用して構築されてもよい。本発明のアンチセンス核酸分子またはこれらの断片は、天然に存在するヌクレオチドを使用して、化学的に合成されてもよく、または分子の生物学的な安定度を増大するように、またはmRNAもしくは天然の遺伝子と形成される二重鎖の物理的な安定度を増大するように設計された種々の修飾ヌクレオチド、たとえばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドであってもよい。アンチセンス配列は、その中でアンチセンス配列が高効率制御領域の制御下で産生され、その活性は、ベクターが導入された細胞種によって決定される、組換えプラスミド、ファージミド、または弱毒ウイルスの形態で細胞に導入される発現ベクターを使用して生物学的に産生されてもよい。
【0109】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、微量注入などの当技術分野においてベクター(レトロウイルスのベクター、アデノウイルスのベクターおよびDNAウイルスベクター)を含む技術または物理的な技術を使用して、組織または細胞に導入されてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、インビボで直接投与されてもよく、またはインビボで細胞にトランスフェクトし、次いでインビトロで投与するために使用されてもよい。1つの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リポソーム製剤においてマクロファージおよび/または内皮細胞に送達されてもよい。
【0110】
(c)診断アッセイ法
TCAPが、ニューロン細胞増殖の阻害に、不安原性反応の誘導に、およびストレスを受けた細胞の細胞死の阻害に関与するという本発明者による発見により、特にニューロン増殖の調節異常に関連する症状のための診断アッセイ法の開発が可能となる。
【0111】
したがって、本発明は、TCAPまたはプレTCAP発現と関連した症状を検出する方法であって、(a)TCAPペプチドをコードする核酸分子もしくはその断片、または、(b)TCAPタンパク質もしくはその断片について試料をアッセイする工程を含む方法を提供する。TCAPペプチドは、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103として示された配列を備えることが望ましい。本発明の1つの特定の態様において、症状は、ニューロン増殖の調節異常に関連する。ニューロン増殖は、体細胞およびプロセスの発生、有糸分裂誘発、または遊走を含んでもよい。ニューロン増殖の調節異常は、介在ニューロンの連絡および関連したシグナル分子の撹乱を介して生じるであろう。このような症状の例は、学習欠陥、精神遅滞、自閉症、分裂病、アルツハイマー病、パーキンソン病、並びに恐慌性障害、鬱病、拒食症、および強迫神経障害などの情動障害を含む。
【0112】
i)核酸分子
本明細書に記載されているTCAPをコードする核酸分子またはこれらの断片により、当業者が、試料中、好ましくは細胞、組織、および体液などの生体試料中のTCAPをコードするヌクレオチド配列またはこれらの断片の検出に使用するためのヌクレオチドプローブを構築することができる。プローブは、TCAP発現と関係する症状の存在を検出またはこのような症状の進行をモニターするために有用であり得る。したがって、本発明は、TCAPをコードする核酸分子を検出するための方法であって、核酸分子にハイブリダイズすることができるヌクレオチドプローブと試料を、ハイブリダイゼーション産物を形成できる条件下で、好ましくはストリンジェントな条件下で接触させてハイブリダイゼーション産物を形成させる工程、およびハイブリダイゼーション産物をアッセイする工程を含む方法を提供する。
【0113】
上記の方法に使用してもよいプローブの例は、配列番号:18〜20、25〜28、33〜36、41〜44、49〜52、57〜60、65〜68、73〜76、81〜84、89〜92、97〜100に示した核酸配列、またはTがUであってもよい核酸配列、または、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103、もしくは該ペプチドのカルボキシ末端にさらにアミド化シグナル配列(好ましくは、GKRまたはGRR)を有する配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96など、からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする核酸配列を含む。ヌクレオチドプローブは、32P、3H、14Cなどの適切なシグナルを提供し、十分な半減期を有する放射性標識などの、検出可能な物質で標識されてもよい。使用されうるその他の検出可能な物質は、特異的に標識抗体、蛍光化合物、酵素、標識抗原に特異的な抗体、および化学発光によって認識される抗原を含む。適切な標識は、検出される核酸に対するプローブのハイブリダイゼーションおよび結合の速度、並びにハイブリダイゼーションに利用できる核酸の量を考慮して選択されてもよい。標識プローブは、一般に、Sambrookら、1989、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」(第2版)に記載されているように、ニトロセルロースフィルタまたはナイロン膜などの固体担体上の核酸にハイブリダイズさせてもよい。ヌクレオチドプローブは、本発明の核酸分子にハイブリダイズする、好ましくはヒト細胞の遺伝子、好ましくは本明細書に記載されているストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本発明の核酸分子にハイブリダイズする核酸分子を検出するために使用されてもよい。
【0114】
TCAPペプチドをコードする核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)およびcDNAまたはゲノムDNAを使用して、試料中で選択的に増幅することができる。図1〜5に示したヌクレオチド配列から、PCRに使用する合成オリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。核酸は、オリゴヌクレオチドプライマーおよび標準的なPCR増幅技術を使用して、cDNAまたはゲノムDNAから増幅することができる。増幅された核酸は、適切なベクターにクローニングして、DNA配列の解析によって特徴付けることができる。cDNAは、種々の技術によって、たとえばChirgwinら、Biochemistry, 18, 5294-5299 (1979)のグアニジウム-チオシアネート抽出手順を使用することによって全細胞mRNAを単離して、mRNAから調製してもよい。次いで、逆転写酵素(たとえば、Gibco/BRL, Bethesda, MDから入手可能なモロニーMLV逆転写酵素、Seikagaku America, Inc., St. Petersburg, FLから入手可能なAMV逆転写酵素)を使用して、mRNAからcDNAを合成する。
【0115】
患者は、種々の技術によって、TCAP遺伝子の存在を検出するためのプローブを使用してルーチンでスクリーニングしてもよい。診断に使用されるゲノムDNAは、血液、組織生検、外科検体、または剖検材料に存在するものなどの体細胞から得てもよい。DNAは、特異的な配列の検出のために直接単離され、および使用されてもよく、または解析前にPCR増幅されてもよい。また、RNAまたはcDNAを使用してもよい。特異的なオリゴヌクレオチドを使用する特異的なDNA配列ハイブリダイゼーションを検出するために、直接的DNAシーケンシング、制限酵素消化、RNase保護、化学的開裂、およびリガーゼを介した検出は、利用できる全ての方法である。変異体配列に特異的なオリゴヌクレオチドは、化学的に合成し、同位元素で放射性に、またはビオチンタグを使用して非放射性に標識し、電気泳動法後にゲルからドットブロットもしくは転写によって膜またはその他の固体支持体に固定された個々のDNA試料にハイブリダイズさせることができる。次いで、これらの変異体配列の有無は、オートラジオグラフィ、蛍光定量法、または比色反応法などを使用して視覚化される。例えば、同定された突然変異を含む対象配列の一部を増幅する際に有用である適切なPCRプライマーを作製することができる。その他のヌクレオチド配列増幅技術には、ライゲーションを介したPCRなどの、アンカーPCR(anchored PCR)、および酵素増幅を使用してもよいことは、当業者によく理解されているであろう。
【0116】
また、配列の変化により偶然生じた制限酵素認識部位は、適切な酵素消化、続くゲル-ブロットハイブリダイゼーションの使用によって明らかにすることができる。部位(正常または変異体)を有するDNA断片は、これらの大きさの増加もしくは減少によって、または対応する制限酵素断片数の増加もしくは減少によって検出される。また、ゲノムDNA試料は、適切な制限酵素で処理する前にPCRによって増幅されてもよく、異なる大きさの断片は、ゲル電気泳動後に臭化エチジウムの存在下において紫外光下で視覚化してもよい。
【0117】
DNA配列の相違に基づく遺伝子試験は、ゲル中のDNA断片の電気泳動易動度の変化を検出することによって達成されてもよい。小さな配列の欠失および挿入は、高解像度ゲル電気泳動によって視覚化することができる。また、小さな欠失は、非変性ゲル電気泳動におけるDNAヘテロ二重鎖の移動パターンの変化によって検出してもよい。または、一塩基置換突然変異は、PCRにおけるプライマー長さの差異に基づいて検出してもよい。正常および突然変異遺伝子のPCR産物は、アクリルアミドゲルで差次的に検出することができる。
【0118】
また、ヌクレアーゼ保護アッセイ法(S1またはリガーゼを介する)により、特異的な位置の配列変化を明らかにする。または、制限マッピングの変化の多型を確認または検出するために、結合PCR(ligated PCR)、ASO、REF-SSCP、およびSSCPを使用してもよい。REF-SSCPおよびSSCPは、突然変異による高次構造の変化に基づいた移動度変化アッセイ法である。
【0119】
また、DNA断片は、個々のDNA試料が膜に固定されない方法によって視覚化されてもよい。プローブおよび標的配列は、溶液中にあってもよく、またはプローブ配列は、固定されていてもよい。また、特異的な個々の遺伝形質を同定するために、オートラジオグラフィ、放射性崩壊、分光光度法、および蛍光定量法を使用してもよい。
【0120】
ii)タンパク質
TCAPタンパク質は、上記に詳細に記載したように、タンパク質に結合する抗体を使用して試料中で検出されてもよい。したがって、本発明は、TCAPタンパク質を検出するための方法であって、TCAPに結合し、かつこれが試料中のTCAPに結合した後に検出することができる抗体と試料を接触させることを含む方法を提供する。
【0121】
特に、酵素複合体または標識誘導体などの、TCAPまたはその誘導体と反応性の抗体を、種々の生物材料中のTCAPを検出するために使用してもよく、たとえば、TCAPと抗体との抗原決定基間の結合相互作用に依存する任意の既知の免疫アッセイにこれらを使用してもよい。このようなアッセイ法の例は、放射免疫アッセイ法、酵素免疫測定法(たとえばELISA)、免疫蛍光、免疫沈降法、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集法、および組織化学的試験である。したがって、このような病理学的な状態を検出し、特定の細胞の事象または病理学的状態におけるその役割を決定するために、抗体を使用して試料中の変異TCAPを定量し、診断し、治療してもよい。
【0122】
特に、本発明の抗体は、免疫組織化学的な解析において、たとえば、細胞のおよび細胞の細胞下のレベルで、TCAPを検出するために、特異的な細胞および組織に並びに特定の細胞下の位置にこれを局在化させるために、並びに発現レベルを定量するために使用してもよい。
【0123】
光学および電子顕微鏡法を使用する、局在化する抗原のために当技術分野において既知の細胞化学的な技術を、TCAPを検出するために使用してもよい。通常、本発明の抗体は、検出可能な物質で標識してもよく、TCAPを、検出可能な物質の存在に基づいて組織に局在化させてもよい。検出可能な物質の例は、種々の酵素、蛍光物質、発光物質、および放射性物質を含む。適切な酵素の例は、西洋わさびペルオキシダーゼ、ビオチン、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンを含み;発光材料の例は、ルミノールを含み;および適切な放射性物質の例は、放射性のヨウ素I-125、I-131、または3-Hを含む。また、抗体は、フェリチンまたはコロイド金などの電子高密度物質に結合されてもよく、これは電子顕微鏡法によって容易に視覚化される。
【0124】
また、一次抗原-抗体反応が、TCAPに対して反応性の抗体に特異性を有する二次抗体の導入によって増幅される間接的な方法を使用してもよい。例として、TCAPに対して特異性を有する抗体がウサギIgG抗体である場合、本明細書に記載されているように、二次抗体は、検出可能な物質で標識されたヤギ抗ウサギγグロブリンであってもよい。
【0125】
放射性標識が検出可能な物質として使用される場合は、TCAPは、オートラジオグラフィによって局在化されてもよい。オートラジオグラフィの結果は、種々の光学方法によって、またはグレインを計数することによって、オートラジオグラフの粒子密度を決定することによって定量してもよい。
【0126】
(d)実験系
真核生物の発現系が好ましく、TCAPをコードする遺伝子および遺伝子産物の多くの研究のために使用することができ、ペプチドに対して生じた抗体の機能的なアッセイ系としてTCAPペプチドを発現する細胞を使用するために、または薬理学的薬剤の有効性を試験するために、または正常な完全ペプチド、ペプチドの特異的な部分、もしくは天然に存在し、および人工的に産生された変異体ペプチドの機能を研究するために、単離および精製するための大量のペプチドを産生することを含む。
【0127】
言及した技術を使用して、TCAPペプチドcDNA配列またはこれらの部分を含む発現ベクターを、その他の種に由来する種々の哺乳類細胞に、または非哺乳類細胞に導入することができる。
【0128】
本発明に従った組換えクローニングベクターは、適切な宿主での発現のために、本発明のDNA配列の選択されたDNAを含む。DNAは、TCAPペプチドタンパク質を発現することができるように、組換えDNA分子の発現制御配列に対してベクターに操作可能に結合される。発現制御配列は、真核細胞およびこれらのウイルスの遺伝子の発現を制御する配列、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。発現制御配列は、lac系、trp系、tac系、trc系、λファージの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、TCAPの初期および後期プロモーター、ポリオーマに由来するプロモーター、アデノウイルス、レトロウイルス、バキュロウイルス、シミアンウイルス、3-ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、酵母酸性ホスファターゼプロモーター、酵母α接合因子、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0129】
また、異種細胞系でのTCAPペプチドの発現は、構造-機能の相関を示すために、並びに薬物スクリーニングの目的で細胞株を提供するために使用してもよい。細胞にトランスフェクトするためのプラスミド発現ベクターにTCAP DNA配列を挿入することは、基質並びに遺伝子の活性化因子および阻害剤の同定を含む種々の細胞の生化学パラメーターに対するペプチドの影響を試験するために有用な方法である。TCAPの、またはこれらの部分の全てのコード配列のいずれかを含むプラスミド発現ベクターは、インビトロでの突然変異誘発実験に使用することができ、これにより、機能に重要なタンパク質部分が同定されると考えられる。DNA配列は、遺伝子およびその産物の発現を理解するための研究において操作することができる。配列の変化は、相対的な量、組織特異性、および機能的特性に関して発現パターンを変化させるかもしれず、または変化させないかもしれない。
【0130】
また、本発明は、本発明の核酸分子によってコードされるTCAPペプチドの機能を検査するための方法を提供する。ペプチドの発現を欠如する、または発現を部分的に欠如する細胞、組織、および非ヒト動物は、本発明の核酸分子に特定の欠失または挿入の変異を有する本発明の組換え分子を使用して発生されてもよい。組換え分子を、相同組換えによって内因性の遺伝子を不活性化または変化するために使用し、これにより欠損した細胞、組織、または動物を作製してもよい。このような突然変異した細胞、組織、または動物は、通常、本発明の核酸分子によってコードされるタンパク質に応じて、特定の細胞群、発生的パターン、およびインビボ・プロセスを定義するために使用してもよい。
【0131】
また、TCAP応答性の不死化細胞株は、実施例13に記載するようにTCAPモジュレーターを同定するために使用することができる。また、特定のマーカーに対するTCAPおよびTCAPモジュレーターの効果を同定するために使用することができる。これらのマーカーが医学的な症状の調節と関係する限り、TCAPおよび/またはTCAPモジュレーターを、該医学的な症状の診断、調節、および/または治療に使用してもよい。
【0132】
(e)TCAPモジュレーター
上記の抗体およびアンチセンスオリゴヌクレオチドに加えて、TCAPの発現または活性を調整するその他の物質も同定されると思われる。
【0133】
i)TCAPを結合/調整する物質
TCAP活性に影響を及ぼす物質は、TCAPに結合する能力に基づいて同定することができる。
【0134】
本発明のTCAPと結合することができる物質は、潜在的にTCAPに結合する物質とTCAPを反応させる工程と、遊離の物質について、または複合体を形成していないTCAPについて、またはTCAPの活性について、複合体をアッセイする工程とによって同定されうる。特に、TCAPと相互作用するタンパク質を同定するために、酵母ツー・ハイブリッド・アッセイ系を使用してもよい(Fields, S.およびSong, O., 1989, Nature, 340; 245-247)。また、使用してもよい解析系には、ELISAを含む。
【0135】
したがって、本発明は、TCAPと結合することができる物質を同定する方法であって、
1.TCAPと試験物質との間で複合体を形成することができる条件下で、TCAPおよび試験物質を反応させる工程、並びに
2.遊離の物質について、または複合体を形成していないTCAPについて、TCAPと試験物質の複合体をアッセイする工程を含み、複合体の存在によって、試験物質がTCAPに結合できることが示される方法を提供する。
【0136】
別の態様において、本発明は、TCAPまたはTCAP基質に結合することなどによって、TCAP活性を調整することができ、したがって、潜在的にTCAP/基質の相互作用と競合する(すなわち、TCAP活性を阻害する)、または増強する(すなわち、TCAP活性を増強する)ことができる物質を同定する方法であって、本方法は、
1.TCAPとTCAP基質との間で複合体を形成することができる条件下で、TCAPとTCAP基質と試験物質とを反応させる工程、並びに
2.遊離の物質について、または複合体を形成していないTCAPおよびTCAP基質について、TCAPと試験物質、TCAPとTCAP基質、TCAP基質と試験物質の複合体をアッセイする工程を含み、試験物質との複合体の存在によって、場合によっては、試験物質がTCAPまたはTCAP基質に結合できることが示される方法を提供する。
【0137】
別の態様において、TCAPのモジュレーターを同定する方法は、TCAPに対する応答が既知である細胞株の使用を含み、TCAPおよび潜在的モジュレーターの存在下において、該反応をモニターすること、およびモニタリングすることができる。
【0138】
アッセイ法に使用されるTCAPペプチドは、配列番号:14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103に示したアミノ酸配列を有してもよく、または本明細書に記載されているこれらの断片、類似体、誘導体、相同体、または模倣体であってもよい。
【0139】
物質とTCAP複合体の形成を可能にする条件は、物質およびペプチドの性質並びに量などの因子を考慮して選択されてもよい。
【0140】
物質-ペプチド複合体、遊離の物質、または複合体を形成しないペプチドは、従来の単離技術、たとえば、塩析、クロマトグラフィー、電気泳動法、ゲル濾過、分画、生体吸収、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、凝集、またはこれらの組み合わせによって単離してもよい。成分、TCAPもしくは物質に対する抗体、または標識TCAP、または標識物質を、アッセイ法を容易にするために利用してもよい。抗体、タンパク質、または物質は、上記のような検出可能な物質で標識してもよい。
【0141】
本発明の方法に使用されるTCAPまたは物質は、不溶化させてもよい。たとえば、TCAPまたは物質は、適切なキャリアに結合されてもよい。適切なキャリアの例は、アガロース、セルロース、デキストラン、セファデックス、セファロース、カルボキシメチルセルロースポリスチレン、濾紙、イオン交換樹脂、プラスチック・フィルム、プラスチック・チューブ、ガラスビーズ、ポリアミン-メチルビニル-エーテル-マレイン酸コポリマー、アミノ酸コポリマー、エチレン-マレイン酸コポリマー、ナイロン、絹、その他である。キャリアは、たとえば、チューブ、試験プレート、ビーズ、盤、球、その他の形態であってもよい。
【0142】
不溶化されたペプチドまたは物質は、既知の化学的または物理的な方法、たとえば、臭化シアンカップリングを使用して、適切な不溶性キャリアと材料を反応させることによって調製してもよい。
【0143】
また、ペプチドまたは物質は、本明細書に記載されている方法を使用して細胞の表面上に発現させてもよい。
【0144】
また、本発明は、TCAPの作用のアンタゴニストまたはアゴニストのためのアッセイを想定する。
【0145】
本発明の方法を使用してアッセイすることができるアゴニストおよびアンタゴニストは、アゴニスト結合部位、競合的アンタゴニスト結合部位、非競合的アンタゴニスト結合部位、またはアロステリック部位を含む、1つもしくは複数のタンパク質または物質の結合部位に対して作用してもよいことが理解されるであろう。
【0146】
また、本発明によれば、TCAPのアゴニストの効果を阻害するアンタゴニストをスクリーニングすることが可能になる。したがって、本発明は、TCAPの同じ結合部位に競合する物質についてアッセイするために使用してもよい。
【0147】
ii)ペプチド模倣体
また、本発明は、TCAPのペプチド模倣体を含む。「ペプチド模倣体」は、分子間の相互作用においてペプチドの代用として役立つ構造である(総説については、Morganら、(1989), Ann. Reports Med. Chem. 24:243-252を参照されたい)。ペプチド模倣体は、アミノ酸および/またはペプチド結合を含んでも、または含まなくてもよいが、ペプチド、または本発明のエンハンサーもしくは阻害剤の構造上および機能的な特徴を保持する合成構造を含む。また、ペプチド模倣体は、ペプトイド、オリゴペプトイド(Simonら、(1972) Proc. Natl. Acad, Sci USA 89:9367);およびペプチドライブラリーは、本発明のペプチドに対応するアミノ酸の可能性のある全ての配列を表す長さに設計されたペプチドを含む。
【0148】
ペプチド模倣体は、Dアミノ酸によるLアミノ酸の系統的置換、異なる電子的性質を有する基と側鎖の置換によって、およびアミド結合の置換によるペプチド結合の系統的置換によって得られる情報に基づいて設計されてもよい。また、候補となるペプチド模倣体の活性についての高次構造上の要求を決定するために、局部的な高次構造上の制約を導入することができる。模倣体は、逆向ターンの高次構造を安定化もしくは促進し、および分子の安定化を助けるために、等配電子のアミド結合またはDアミノ酸を含んでもよい。特定の高次構造の状態にアミノ酸残基を拘束するために、環状アミノ酸類似体を使用してもよい。また、模倣体には、ペプチドの二次構造の阻害剤の模倣体を含むことができる。これらの構造では、既知のタンパク質の二次高次構造内のアミノ酸残基の3次元的な向きをモデル化することができる。また、N置換されたアミノ酸のオリゴマーであるペプトイドを使用してもよく、新規分子の化学的に多様なライブラリーを作製するためのモチーフとして使用することができる。
【0149】
また、本発明のペプチドは、薬剤開発のためのリード化合物を同定するために使用してもよい。本明細書に記載されたペプチドの構造は、NMRおよびX線結晶学などの多くの方法によって容易に決定することができる。配列は類似するが、これらが標的分子に誘発する生物活性が異なるペプチドの構造を比較すると、標的の構造-活性の相関についての情報を提供することができる。構造-活性の相関の調査から得られる情報は、修飾されたペプチド、または標的分子に関して予測される性質を試験することができるその他の小分子またはリード化合物のいずれかを設計するために使用することができる。リード化合物の活性は、本明細書に記載されているものと同様のアッセイ法を使用して評価することができる。
【0150】
また、構造-活性の相関についての情報は、共同結晶化研究から得てもよい。これらの研究では、所望の活性を有するペプチドを標的分子と結合させて結晶化し、複合体のX線構造を決定する。次いで、構造をその天然の状態の標的分子の構造と比較することができ、このような比較からの情報を、活性を有することが予想される化合物を設計するために使用してもよい。
【0151】
iii)薬物のスクリーニング方法
1つの態様に従って、本発明では、TCAPの活性および/または発現を増減する能力について候補化合物をスクリーニングするための方法が可能となる。本方法は、TCAP活性をアッセイするため、候補または試験化合物の存在下または非存在下における活性をアッセイするため、および化合物がTCAP活性の増減をもたらすかどうかを決定するためのアッセイ系を提供することを含む。このような化合物は、ニューロン増殖の調節異常に関連した症状を治療するためにも有用であろう。
【0152】
したがって、本発明は、TCAP活性または発現に影響を及ぼす化合物を同定するための方法であって、
(a)TCAPペプチドまたはTCAPペプチドをコードする核酸と共に試験化合物をインキュベートする工程;および、
(b)TCAPペプチドの活性または発現の量を決定し、対照(すなわち、試験物質の非存在下のもの)と比較する工程を含み、対照と比較したTCAP活性または発現の変化によって、試験化合物がTCAPの活性または発現に対して効果を有することが示される方法を提供する。
【0153】
さらなる態様に従って、本発明では、TCAPペプチドの発現を増減する能力について候補化合物をスクリーニングするための方法が可能となる。本方法は、候補化合物と共に細胞(本細胞は、リポーター遺伝子コード領域に操作可能な状態で連結されたTCAPをコードする遺伝子の制御領域を含む)を置くことと、およびリポーター遺伝子の発現の変化を検出することとを含む。
【0154】
このような化合物は、培地に添加されるタンパク質化合物、化学薬品、および種々の薬物から選択することができる。選択された試験化合物の存在下でのインキュベーション期間後、変異TCAPの発現を、本明細書に含まれる実施例において説明したように、標準的なノーザンブロット法手順を使用してTCAP mRNAのレベルを定量することによって検査して、試験化合物の結果として発現の任意の変化を決定することができる。また、タンパク質発現を修飾するために開発された化合物の機能を試験するために、TCAPを発現する構築物をトランスフェクトした細胞株が使用できる。
【0155】
(f)治療的な用途
前述のように、本発明のTCAPは、cAMP、cGMPの活性、ニューロンの増殖、および神経病の発生に関与する。したがって、本発明は、cAMP、cGMP、ニューロンの増殖、ニューロンの連絡、またはニューロンの細胞増殖の調節異常に関連した症状を治療する方法であって、それを必要とする細胞または動物に対し、TCAPの発現および/または活性を調整する薬剤の有効量を投与する工程を含む方法を提供する。
【0156】
「TCAPの発現および/または活性を調整する薬剤」の用語は、TCAPの発現および/または活性を変えることができる任意の物質を意味する。投与に使用してもよい薬剤の例は、TCAPをコードする核酸分子;TCAPペプチド、並びにその断片、類似体、誘導体、または相同体;抗体;アンチセンス核酸;ペプチド模倣体;および本明細書に記載したスクリーニング法を使用して単離された物質であって、症状のない人と同様のTCAPレベルおよび/または機能にすることができるものを含む。
【0157】
本明細書に用いられる「有効量」という用語は、所望の結果を達成するために必要な用量および期間について有効な量を意味する。
【0158】
本明細書に用いられる「動物」という用語は、TCAPに反応する動物界の全てのメンバー、好ましくはヒトおよび非ヒト動物を含む哺乳類、より好ましくはヒトを含む。別の態様において、動物は、ウシ、ウマ、ブタ、およびヒツジなどの家畜化された動物を含み、別の態様において、動物は、トリのファミリーに由来し、ニワトリを含む。
【0159】
別の態様に従って、本発明は、症状に対する潜在的な治療手段としての遺伝子治療であって、TCAP遺伝子の正常なコピーが、いくつかの異なった発症した細胞種の正常なTCAPペプチドをうまくコードするように患者に導入される治療を可能にする。
【0160】
レトロウイルスのベクターは、これらが高い効率で感染し、かつ安定な組込みおよび発現をするので、特に体細胞遺伝子治療に使用することができる。しかし、ターゲットとされた細胞は、分裂することができなければならず、正常タンパク質またはペプチドのレベルの発現は、高いはずである。TCAPをコードする遺伝子は、レトロウイルスのベクターにクローニングすることができ、その内因性のプロモーターからまたはレトロウイルスの末端反復配列から、または関心対象の標的細胞タイプ(リンパ球など)に特異的なプロモーターから駆動させることができる。使用することができるその他のウイルスのベクターは、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、またはエプスタイン-バーウイルスなどのヘルペスウイルスを含む。また、遺伝子導入は、インビトロでの感染に必要とされる非ウイルス手段を使用して達成することもできる。これは、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、電気穿孔法、陽イオン性または陰イオン性の脂質製剤(リポソーム)、およびプロトプラスト融合法を含む。これらの方法は、利用できるものの、より低い効率であることが多い。
【0161】
TCAP遺伝子の機能を阻害するために、および治療薬の設計の基礎として、アンチセンスに基づいた戦略を使用することができる。原理は、mRNAと相補アンチセンス種の間の細胞内ハイブリダイゼーションによって、遺伝子発現の配列特異的な抑制を達成することができるという仮説に基づく。RNAまたはDNAの有意鎖に高い特異性で結合するアンチセンス鎖ヌクレオチドは、合成することが可能である。ハイブリッドRNA二重鎖の形成は、標的mRNAのプロセシング/輸送/翻訳、および/または安定性を妨げると思われる。
【0162】
ハイブリダイゼーションは、アンチセンス効果を生じさせるために必要とされる。アンチセンス効果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用、アンチセンスRNA、DNAの注入、およびアンチセンスRNA発現ベクターのトランスフェクションを含む種々のアプローチを使用して記載されている。
【0163】
治療的なアンチセンスヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドまたは発現ヌクレオチドとして作製することができる。オリゴヌクレオチドは、通常15〜20核酸塩基の長さであるDNAの短い一本鎖である。発現ヌクレオチドは、アデノウイルス、レトロウイルス、またはプラスミドベクターなどの、発現ベクターを使用して作製される。ベクターは、培養の細胞に、または患者に投与され、次いで、その細胞がアンチセンスヌクレオチドを作製する。発現ベクターは、アンチセンスRNAを産生するように設計することができ、塩基の長さを数ダース〜数千まで変化させることができる。
【0164】
アンチセンス効果は、制御(センス)配列によって誘導することができる。表現型の変化の範囲は、非常に変わりやすい。アンチセンスによって誘導される表現型の効果は、生物学的なエンドポイント、タンパク質レベル、タンパク質活性化の測定、および標的mRNAレベルなどの基準の変化に基づく。
【0165】
(g)ストレス応答、関連した症状、および不安の調整のための方法およびTCAPの使用
本発明はまた、該動物に対するTCAPの効果をモニターすることによって、動物の不安障害を検出する方法を提供する。不安反応がベースラインのレベルと比較して減少する(抗不安)場合、動物は、高度な不安関連障害を有するであろう。動物の不安反応がTCAPの投与に応答して増大する場合、動物は、低不安障害を有するであろう。
【0166】
本発明は、該動物にTCAPを投与する工程、または該動物のTCAP発現を上方制御する工程によって、動物の不安状態を正常化するための方法を提供する。
【0167】
また、本発明は、動物において所望の不安状態を誘導する方法であって、
(a)動物が低または高不安動物であるかどうかを決定する工程;並びに
(b)(i)低不安動物の不安を増大し、および高不安動物の不安を減少させるために、TCAPまたはTCAPアゴニスト(TCAP発現を上方制御する物質もしくは核酸分子を含む)の有効量を投与する工程;または
(ii)高不安動物の不安を増大し、および低不安動物の不安を減少させるために、TCAPまたはTCAPアンタゴニストの阻害剤(TCAPアンチセンス核酸分子などの、TCAP発現を下方制御する物質または核酸分子を含む)を投与する工程による方法を提供する。
【0168】
また、本発明は、TCAP活性のモジュレーターを検出する方法であって、既知の不安状態(高または低不安)の動物にTCAPを投与する工程と、該動物に潜在的なモジュレーターを投与し、該物質の存在下および非存在下におけるTCAPに対する反応を比較する工程とを含む方法を提供する。TCAPに対する動物の反応が、ベースライン(TCAP単独、および物質なしの動物)のものと異なる場合、該物質は、TCAP活性のモジュレーターである。このような化合物は、望まれないストレスまたは不安レベルの動物を治療するために使用してもよい。
【0169】
1つの態様において、TCAPは、TCAP-1、または同様の生物活性を有するこれらの類似体、誘導体、もしくは断片である。
【0170】
別の態様において、TCAPのモジュレーターは、動物のストレス応答を調整するまたは調節するために投与される。
【0171】
本明細書に用いられるストレスとは、ホメオスタシスまたは代謝バランスがない任意の状態である。また、ストレスは、ストレス応答を引き起こすストレス要因の一般的な状態をいうために使用される(Sapolsky, 1992)。ホメオスタシスは、内部環境の正常な安定度をいう(Sapolsky, 1992)。ストレス要因は、生理学的なバランスを崩壊させるものとして定義され、物理的または心理的なものである(Sapolsky, 1992)。たとえば、本明細書の行動に関する実験(実施例10および11)でのストレス要因は、聴覚の驚愕試験(startle test)を使用した120dBの音として定義される。
【0172】
本明細書に用いられるストレス応答とは、ストレス要因に対する生理学的または行動の反応である。たとえば、行動に関する実験(実施例10および11)において、ストレス応答は、120dBの緊張度の提示に続く聴覚の驚愕試験装置(Med Associates, St. Albans, VT)によって測定される驚愕反応である。
【0173】
本明細書に用いられる不安原性とは、一般に認められた試験での不安の行動に関する測定値を増加させる内部または外部の刺激を意味する。本明細書の実施例10および11において、不安の行動に関する測定は、120dBの音の提示に続く聴覚の驚愕試験装置(Med Associates, St. Albans, VT)によって測定される驚愕反応である。不安原性反応は、驚愕反応の増加である。
【0174】
本明細書に用いられる抗不安とは、一般に認められた試験での不安の行動に関する測定値を減少させる内部または外部の刺激を意味する。本明細書の実施例10および11において、120dBの音の提示に続く聴覚の驚愕試験装置(Med Associates, St. Albans, VT)によって測定される驚愕反応である。抗不安反応は、驚愕反応の減少である。
【0175】
不安は、一般化された、非特異的なキュー(cue)によって促進されるであろう障害の一般化された状態であって、生理学的な覚醒を含むが、しばしば組織化された機能的な行動を伴わない状態をいう(Langら、2000)。不安の動物モデルでは、これらの障害の原因、総体症状、または治療の一部の局面を表すことが試みられる(MenardおよびTreit, 1999)。本研究では、聴覚の驚愕反応を不安の測定として使用した(Franklandら、1996, 1997)。この試験では、大きく予想外の聴覚刺激によって誘導される単純な反射を測定し、標準化された装置(Med Associates, St. Albans, Vermont)を使用して測定することができる。
【0176】
本明細書に用いられる高不安とは、媒体注射後にベースライン反応よりも大きな驚愕反応を有する動物、たとえばラットを意味する。平均驚愕反応は、ベースラインの試行および注射(治療)後の試験期間に対して算出する。次いで、それぞれの動物、たとえばラットについて、治療/ベースライン比を算出する。この比が1よりも大きい場合、動物は高不安として分類される。
【0177】
本明細書に用いられる低不安とは、媒体注射後にベースライン反応未満の驚愕反応を有する動物、たとえばラットを意味する。上記のように、それぞれの動物、たとえばラットについて、治療/ベースライン比を算出する。この比が1未満の場合、動物、たとえばラットは、低不安として分類される。
【0178】
本明細書に用いられる通常の不安とは、媒体注射後にベースライン反応と同様の驚愕反応を有するラットなどの動物を意味する。上記のように、それぞれのラットについて、治療/ベースライン比を算出する。この比が1に等しい場合、動物、たとえばラットは、通常の不安として分類される。
【0179】
(h)細胞増殖の調節および癌治療におけるTCAPの役割
1つの態様において、本発明は、それを必要とする動物に対し、TCAPの有効量を投与することによって細胞増殖を調節する方法を提供する。別の態様において、TCAPは、細胞増殖を減少および/または阻害するために、インビボでまたはインビトロで投与される。1つの態様において、細胞は癌である。別の態様において、細胞はニューロン腫瘍細胞である。
【0180】
1つの態様において、TCAPまたはこれらのモジュレーターは、神経芽細胞腫またはその他のニューロンの腫瘍などの癌の治療に使用することができる。
【0181】
(i)薬学的組成物
TCAP、TCAPペプチド、抗体、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする核酸、並びにTCAPの活性または発現を調整するその他の薬剤を含む上記記載の物質は、インビボでの投与に適した生物学的に適合性を有する形態で対象に投与するための薬学的組成物中に処方してもよい。「インビボでの投与に適した生物学的に適合性を有する形態」とは、治療的な効果が任意の有毒作用を上回って投与されるような物質の形態を意味する。物質は、ヒト、および動物を含む生きている生物に投与されうる。
【0182】
したがって、1つの態様において、本発明は、TCAPに関連し、またはTCAPで調節される医学的な症状を治療するための医薬の調製における、TCAPまたはそのモジュレーターの使用を提供する。たとえば、細胞増殖(たとえば、癌)、ストレス、不安、またはニューロンの連絡障害の調節において提供される。
【0183】
本発明の薬学的組成物の治療的に有効な量の投与とは、所望の治療的な結果を達成するために必要な用量および期間での有効量として定義される。たとえば、物質の治療的な有効な量は、個々の疾病状態、年齢、性、および重量、並びに個々に所望の反応を引き出すための物質の能力などの因子によって変更してもよい。投与法は、最適な治療反応を提供するように調整してもよい。たとえば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよく、または用量は、治療的状況の緊急性に代表されるように、比例して減らしてもよい。
【0184】
作用物質は、注射(皮下の、静脈内の、その他)、経口投与、吸入、経皮適用、または直腸投与などによって、便利な方法で投与してもよい。投与の経路に応じて、作用物質は、酵素、酸、および化合物を不活性化させうるその他の天然の条件による作用から化合物を保護する材料中に被覆してもよい。作用物質が、たとえば、TCAPペプチドをコードする核酸である場合、当技術分野における既知の技術を使用して送達することができる。
【0185】
本明細書に記載されている組成物は、薬学的に許容される組成物の調製のためのそれ自体既知の方法によって調製することができ、作用物質の有効量を薬学的に許容される媒体と混合物中に組み合わせるようにして対象に投与することができる。適切な媒体は、例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA 1985)または「Handbook of Pharmaceutical Additives」(MichaelおよびIrene Ash編、Gower Publishing Limited, Aldershot, England (1995))に記載されている。これに基づいて、組成物は、もっぱら1つまたは複数の薬学的に許容される媒体または希釈液と合わせた物質の溶液を含み、適切なpHを有する緩衝化された溶液に含まれていてもよく、および/または生理液によって等浸透圧にしてもよい。この点に関しては、米国特許第5,843,456号を参照することができる。また、当業者に認識されるように、本明細書に記載されている物質の投与は、不活性ウイルスキャリアによるものであってもよい。1つの態様において、TCAPは、塩類溶液および酢酸を含む媒体中に投与されうる。
【0186】
(j)キット
本発明の方法を実施するために適した試薬は、適切な容器に詰められ必要な材料を提供する便利なキットに梱包されていてもよい。このようなキットは、本発明の核酸分子もしくはペプチドまたは本発明の核酸分子もしくはペプチドの抱合体を検出するために必要とされる全ての試薬、TCAPの潜在的なモジュレーターなどの別の物質、および/または本明細書に記載されている方法によって試料中のcAMPまたはcGMPなどのTCAP活性の指標を検出するための物質、および本発明の方法を実施する際に有用な任意の適切な補助物質を含んでもよい。
【0187】
本発明の1つの態様において、キットは、本発明の核酸分子またはこれらの予め定められたオリゴヌクレオチド断片を増幅することができるプライマー、ポリメラーゼ連鎖反応法において増幅された核酸分子またはこれらの予め定められた断片を産生するために必要とされる全ての試薬、および増幅された配列をアッセイするための手段を含む。1つの態様において、プライマーは、TCAPタンパク質、好ましくは配列番号:…のタンパク質をコードする核酸を増幅することができる。
【0188】
また、キットは、PCR産物を消化するための制限酵素を含んでもよい。本発明の別の態様において、キットは、本発明の核酸分子とハイブリダイズするヌクレオチドプローブ、核酸分子とヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションのために必要とされる試薬、およびその使用説明書を含む。本発明のさらなる態様において、キットは、本発明の抗体、および試料中において本発明のTCAPペプチドに抗体を結合させるために必要とされる試薬を含む。
【0189】
本明細書に記載されている方法に従って試料を試験する前に、試料は、遠心分離および濾過などの当技術分野における既知の技術を使用して濃縮してもよい。本明細書に記載されているハイブリダイゼーションおよび/またはPCRに基づいた方法については、核酸は、当技術分野において既知の技術を使用して試験試料の細胞抽出物から抽出してもよい。
【0190】
以下の限定されない実施例は、本発明の例示である。
【0191】
実施例
実施例1 テネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)の同定
A.TCAP mRNAの同定
mRNAのクローニング。一方向性のベクター(Unizap, Stratagene, La Jolla CA)を使用して、以前に記載された(Barsyteら、1999)ように、ニジマス視床下部のcDNAライブラリーを構築した。合計600,000クローンを、ランダムに標識した305bpのハムスターウロコルチンcDNAプローブ(Robinsonら、1999)
を使用してスクリーニングした。一次、二次、および三次スクリーンでは、全て同じプローブを利用した。最終的なスクリーニングの後、陽性クローンのサイズを制限解析によって決定し、次いで、自動化されたBig Dye法を使用してシーケンスした。
【0192】
5つの陽性クローンが、ニジマス視床下部のライブラリーから単離された。これらのうちで、1つが、推定ニジマスTen-m3相同体の部分配列を示した(図1)。クローンは、769塩基の翻訳部分をカバーする2986塩基長であった。配列番号1は、これらの756塩基部分[配列番号:2および734塩基の3'非翻訳の領域を示す。終止コドンおよび翻訳される部分は、マウス(アクセッション番号AB025412)[配列番号:132]、ヒト(アクセッション番号AK027474)[配列番号:133]、およびゼブラフィッシュ(アクセッション番号AB026976)[配列番号:134]のTen M3相同分子種と共に整列化させて同定した。NICBサーバ上のLocus Linkを使用してヒト遺伝子配列(Locus Link ID# 10178)に基づくと、ニジマス配列は、遺伝子の末端の6エキソンを含んでいた。最後の3'エキソンは、生理活性ペプチドを示唆する40〜41残基のカルボキシ末端配列[それぞれ、配列番号:13および14]を有する251アミノ酸残基の配列[配列番号:3]をコードした。推定上のアミド化シグナルは、40〜41残基のカルボキシ末端配列およびTAA終止コドンにすぐ隣接したGKRアミノ酸モチーフによって示された。40残基上流で、PC-7様の切断シグナル、直後にグルタミンが存在し、推定上の遊離ペプチドがピログルタミン酸から開始するであろうことを示唆する。この切断部位は、必ずしも通常の方法でプロセシングされるというわけではなく、40または41アミノ酸残基の成熟したペプチド(終止コドンから43または44アミノ酸残基上流で始まる)が生じうる。
【0193】
B.遊離TCAPペプチドの抽出
組織収集:マウス脳(Mus musculus;n=10;1.8g)を収集し、-80℃で1か月間貯蔵し、その時点で、これらを取り出して、直ちに液体窒素に入れた。脳組織は、液体窒素の存在下で乳鉢および乳棒を使用して圧壊し、粉砕した。
【0194】
C18充填材の活性化:Bondpack(登録商標)C18バルク充填材(1g;125A;37〜55μm;Waters Corporation, Milord, MA, USA)を100%のメタノール(5ml)で活性化し、ボルテックスして、静置した(5分)。過剰なメタノールを除去した。次いで、C18をPBS(5ml、pH7.6)で2回洗浄した。さらにPBSの一定分量を添加して(5ml)、ボルテックスし、遠心し(5000rpm;5分);上清を捨てた。
【0195】
組織抽出:アセトニトリル(90%)およびTFA(0.05%)を5:1の重量に対する体積の比で粉末状の脳に添加し、一定分量攪拌振盪機で1時間混合した。混合物を遠心し(8000rpm×20分);上清を除去して保存した。残りの固形物を最初の抽出に使用した40%の溶媒体積のアセトニトリル(90%)およびTFA(0.05%)で逆抽出し、すでに記載したようにボルテックスして、遠心した。上清をプールし、活性化C18パッキング材と組み合わせて、ボルテックスし、混合し(1時間)、遠心した(8000rpm×10分)。上清を捨てて、一方でペレットをそれぞれ20%、50%、および90%の独立した3回連続のアセトニトリル抽出に供した。アセトニトリル(5ml)をペレットに添加し、ボルテックスして、混合し(20分)、遠心した(6000rpm×10分)。生じた上清を保存し、HPLC解析のために減圧濃縮器(Brinkman Instruments)で800μlに濃縮し、一方でペレットを同様に再抽出した。
【0196】
脳抽出物中の遊離TCAPのHPLC精製
マウス脳(n=10)から抽出したTCAPペプチドを精製するために、UV検出器モジュール168およびC18カラム(3.5μm粒径;Waters Inc)に取り付けられたベックマンモデル126 HPLC システムゴールド(Beckman model 126 HPLC System Gold:Beckman, Palo Alto, CA)を使用した。
【0197】
単一の注射(800μl)で、1ml注射ループを通してカラムに適用し、二重溶媒系(A:0.05%のトリフルオロ酢酸(TFA);B:80%のアセトニトリル、0.05%のTFA)を使用して1ml/分の流速でカラムに送った。10分の初期のアイソクラチック(isocratic)期間に続いて、移動相Bを75分かけて10%から60%に増大し、5分間アイソクラチックに保持し、5分かけて10%に戻した。画分を収集し(1ml/画分)、一定分量を取り(500μl)、質量分析を使用して解析するために50μlに濃縮した。
【0198】
実施例2 細胞および組織抽出物中の切断されたTCAPの検出
実施例1に記載したように、TCAPを検出するためにHPLCを使用することができる。また、質量分光法を使用することもできる。また、その他の検査法は、HPLC、質量分光法との組み合わせ、または放射性免疫アッセイ法、ELISA、キャピラリー電気泳動法、免疫蛍光共焦点顕微鏡観察法など、これらを単独で使用することもできる。質量分析法は、電荷を持った分子(イオン)の質量電荷比に基づいて分子を同定する。次いで、分子質量の正確な測定が決定されることにより、分子の同定ができる。より大きなペプチドは、衝突チャンバー内でペプチドをその後に断片化することによってシーケンスすることができる。これによって、ペプチド結合の優先的な切断が生じる。アミノ酸およびペプチド断片は、これらの質量電荷比によって同定される。放射免疫アッセイまたは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)は、関心対象の分子に特異的な抗血清を利用する。分子(TCAP)は、タグが付けられた構造的に同様の参照分子が抗体に結合することと競合する。結合画分と未結合画分を互いに分離して、残りのタグが付けられたTCAPの量を測定する。この測定は、存在する標識されていないTCAPの量に比例する。また、キャピラリー電気泳動法は、抗体反応を使用して、TCAPを同定するために使用することができる。この方法では、未結合の成分を電場において移動させることによって、結合した成分から分離させる。免疫蛍光共焦点顕微鏡観察法では、TCAPに特異的に結合する抗体および一次抗体に結合する二次抗体を利用する。二次抗体は、適切な基質の導入によって蛍光反応を触媒する酵素に効率的に結合されている。蛍光量は、TCAPの量に比例し、デジタル画像分析を使用して測定される。
【0199】
ペプチドの質量分析検出
試料は、5μlの1:1(vol/vol)アセトニトリル:水(プラス0.1%(vol/vol)のギ酸)に溶解した。典型的には、それぞれ2〜3μlの試料をガラス毛管プローブ先端部に充填し、Micromass Q-TOF(ハイブリッド4重飛行時間)質量分析計(Micromass, Manchester, UK)で解析した。全てのスペクトルは、ナノスプレー(nanospray)、陽イオンモード下で後天性(acquired)であった。MS測定については、4重RF値を0.5に設定した。走査領域(m/z)は、200〜2000の間で、1sの走査時間、および0.1sのドウェル(dwell)時間であった。データは、MassLynxプログラム(Micromass, Manchester, UK)を使用して解析した。
【0200】
実施例3 ペプチドの合成および可溶化
ニジマスTCAP-3[配列番号:13]であって、末端イソロイシン(I)がアミド化されたもの[配列番号:15を得るために]を自動化ペプチド合成機Model Novayn Crystal (NovaBiochem, UK Ltd. Nottingham, UK)で、連続的フローのFmoc化学(Calbiochem-Novabiochem Group, San Diego, CA)を使用して、PEG-PS樹脂上で合成した。8倍過剰のジイソプロピルエチルアミン(Sigma Aldrich Canada Ltd)、およびHATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート, Applied Biosystems, Foster City, CA)によって活性化した4倍過剰なFmoc-アミノ酸を1:1(モル/モル)の比でカップリング反応の際に使用した。反応時間は、1時間であった。20%のピペリジン(Sigma-Aldrich Canada Ltd)のN,N-ジメチルホルムアミド(dimethylformide)(DMF;Caledon Laboratories Ltd, Canada)溶液を合成サイクルの脱保護工程に使用した。DMFは、社内で精製し、合成のための溶剤としていつも新たに使用した。最終的なペプチドの切断/脱保護は、トリフルオロ酢酸(TFA)、チオアニソール、1,2エタンジチオール、m-クレソール、トリイソプロピルシラン、およびブロモトリメチルシラン(Sigma-Aldrich Canada Ltd)で40:10:5:1:1:5の比で行った。最後に、これを水性0.1%のTFA溶液を使用してSephadex G-10カラムの上で脱塩し、凍結乾燥した。ペプチド構造は、逆相HPLC、アミノ酸分析、および大気圧イオン化質量分析によって確認した。HPLCおよび質量分光測定は、本明細の実施例1および2にて説明したように行うことができる。上記の方法を参照されたい。同法は、マウスTCAP-1を合成するために使用した。
【0201】
ペプチドは多くの異なる方法を使用して可溶化されたが、最高の結果は、αシクロデキストリンを使用して得られた。酢酸(1μl)を室温で乾燥TCAPに添加し、ボルテックスして、静置した(30分)。次いで、αシクロデキストリン(company)を4:1の乾燥重量に対する体積の比(0.25μg/μl)で添加し、ボルテックスして、残りのプロセスのために2時間および室温でエッペンドルフバキュフュージ(Eppendorf Vacufuge)において30℃でもとの体積の10%に濃縮した。次いで、蒸留した脱イオン水および生理食塩水を独立してそれぞれ1:1および3:1の濃縮した体積に対する体積の比で添加した。この溶液(0.5μg/μl)をボルテックスして、遠心した(11,000rpm;3分)。上清を一定分量とって、4℃で保存した。同法は、マウスTCAP-1を含むその他のTCAPSを合成し、可溶化するためにも使用した。
【0202】
実施例4 ペプチド配列の関係および系統発生学
TCAP部分を含むニジマステネウリン3エキソンは、ゼブラフィッシュ、マウス、およびヒトのその相同分子種間で高度な保存を示す(図2)。しかし、マス配列も、テネウリン1〜4として示される4つのマウステネウリンタンパク質パラログ(図3)、および同様に配列データベースにおいて見出された4つのヒトパラログ(図4)との高い配列類似性を示した。全てが、タンパク質ファミリーのメンバー間で高度な類似性を有する。テネウリンタンパク質ファミリーは、カルボキシ末端が原形質膜の細胞外面上に示されるタイプII膜貫通のタンパク質を表す(図6AおよびB)。TCAP部分は、タンパク質のC末端残基のみを表す。TCAP配列は、脊椎動物の種全体において非常に保存されており、ショウジョウバエ型でさえ約60%の配列同一性を有する(アクセッション番号AF008228)(図7AおよびB)。
【0203】
図5は、終止コドンをプラスしたヒト、マウス、ゼブラフィッシュ、およびニジマスのプレTCAPヌクレオチドコード配列を図示する。TCAPのコード配列(40および41アミノ酸残基の配列)は、図から容易に決定することができる。
【0204】
TCAPファミリーおよびCRFファミリーの一次構造内で保存されたモチーフの比較では、マッチを示す(図9)。アミノ末端のI/L-S-X-X(X)-L/V[配列番号:129]、中央のL/V-L/I-X-V/脂肪性残基[配列番号:130]、およびカルボキシ末端のモチーフN-I/A-H/塩基性残基-I/L/F-脂肪性残基[配列番号:131]の保存されたモチーフ。しかし、類似性のより強制的な基準は、二次構造予測によって示される(図10)。TCAPは、ペプチドスーパーファミリーのその他のものと比較して非常に類似した極性プロファイルを示す。カイト-ドゥーリトル・プロットの使用によって、疎水性は、中央およびカルボキシ末端領域内に一般的な類似性が示されるが、より疎水性の領域がアミノ末端領域に示される。
【0205】
CRFおよびウロコルチンは、お互いに高い配列類似性を示し、またウロコルチン2および3は、高い類似性を示すが、これらの2つのパラロガスな系統間の同一性のレベルは、約11%だけである。TCAPメンバー間の同一性のレベルは、約60%である(図8)。また、CRFおよびTCAPは、昆虫利尿薬ペプチドを含む非常に大きなペプチドファミリーに属する(図11)。鍵となるモチーフは、図9に概説してあり、昆虫利尿薬ペプチドが含まれるときのアラインメントを示す。
【0206】
実施例5 テネウリンmRNAのPCR発現
脳抽出物中および細胞株におけるテネウリンタンパク質の存在は、PCRを使用して確認した。この実験に利用するプライマーは、マウスTen-M1、2、3、および4の公表された配列の3'末端[配列番号:4〜7]から設計した。TCAP-1のフォワードプライマー
[配列番号:121]は、テネウリン1のヌクレオチド7938〜7962に相補的である。テネウリン1リバースプライマー
[配列番号:122]は、テネウリン1のヌクレオチド8262〜8288に特異的である。プライマーは、351bpのTen-M1 PCR産物を生じることが予測される。テネウリン2フォワードプライマー
[配列番号:123]は、テネウリン2のヌクレオチド7920〜7944に相補的である。テネウリン2リバースプライマー
[配列番号:124]は、テネウリン2のヌクレオチド8354〜8379に相補的である。本プライマーは、テネウリン2の460bpのPCR産物を生じることが予測される。テネウリン3のフォワードプライマー
[配列番号:12]5は、テネウリン3のヌクレオチド7681〜7705に相補的である。テネウリン3リバースプライマー
[配列番号:126]は、ヌクレオチド8139〜8159に特異的である。テネウリン3プライマーについて予測されるPCR産物は、479bpである。テネウリン4のフォワードプライマー
[配列番号:127]は、テネウリン4のヌクレオチド7868〜7890に相補的である。テネウリン4リバースプライマー
[配列番号:128]は、テネウリン4のヌクレオチド8446〜8469に相補的である。プライマーは、602bpのテネウリン4 PCR産物を生じることが予測される。
【0207】
Gn11細胞の総RNAは、RNeasyミニ・キット(Qiagen)を使用して単離した。第1ストランドの合成は、ファースト・ストランド・ビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して行った。簡単には、2μgの総RNAを第1ストランド反応ビーズ(緩衝液、dNTPs、マウス逆転写酵素、RNAguard、およびRNase/DNase不含BSAを含む)および33μlの体積の0.2μgのランダムpd(N)6と混合した。伸張は、37℃において60分間行った。
【0208】
テネウリン1、2、3、および4のPCRは、それぞれ、1μlのcDNAを使用して、0.2mMの各dNTP、5μlの10×緩衝液、1.5mMのMgCl、1μlのTaq DNAポリメラーゼ、0.2μMの各テネウリンプライマー、および0.1μMの各GAPDHプライマー(フォワードおよびリバースプライマー;予想されるGAPDH DNA〜200bp)を含む50μlの最終反応体積で行った。最初の変性は、94℃で3分間の間隔にわたって設定した。94℃で1分、60℃で1分、および72℃で1分を35サイクル後、72℃で5分間の伸張を行った。PCR産物は、1.5%のアガロースゲル電気泳動によって検査した。適切なサイズのテネウリン1、2、および4のDNAを、DNA抽出キット(MBI-Fermentas)を使用してゲルから抽出した。ゲルから回収されたテネウリン1、2、および4 DNAは、TOPO TAクローニングキット(TOPO TAクローニングキット)(Invitrogen Corporation)を使用することによってサブクローニングした。簡単には、テネウリン1、2、または4 DNAを有するpCR(登録商標)2.1-TOPOプラスミドを化学的に形質転換受容性にした大腸菌に形質転換し、LB寒天板上で、および連続的に液状のLB培地で培養した。産物は、パーフェクトプレップ・プラスミド・ミディ・キット(Perfectprep Plasmid Midi Kit:Eppendorf)を使用して精製した。制限エンドヌクレアーゼEcoRlを使用してプラスミドを消化することによって、次いで電気泳動法によって、陽性結果のものを選択した。陽性プラスミドを商業的なT7シーケンシングプライマー(AGTC Corp, Toront, Canada)を使用してシーケンスした。
【0209】
結果
陽性の増幅産物は、PCRを使用して、テネウリン1、2、および4の成体マウス細胞から得られた(図12)。同様に、不死化ニューロン株Gn11から抽出したmRNAを使用して、同じ産物を得た。同じ腫瘍から単離した神経細胞株NLTでは、テネウリン2および4のみの発現を示した。しかし、神経芽細胞腫細胞株Neuro2aでは、テネウリン遺伝子ファミリーの4つ全てを発現するようにみえた。Neuro2aは、使用した細胞株で最も分化していないものである。また、ラット線維芽細胞細胞株(TGR1)では、パラログ1、2、および4の存在を示した(データ示さず)。増幅シグナルの同一性は、配列解析によって確認した。TCAP-1プライマーは、351bpの配列を生じ、テネウリン1 DNAと99.43%の一致を示した。TCAP-2プライマーは、455bpの配列を生じ、テネウリン2 DNAと99.56%の一致を示した。TCAP-4プライマーは、602bpの配列を生じ、Tenuerin 4 DNAと99.83%の一致を示した。TCAP-3プライマーは、マウス神経芽細胞腫Neuro2a細胞から306bpの配列を増幅した。増幅された配列は、TCAP切断シグナルの上流に173bpの欠失を有する。この知見は、TCAP-3プライマーは特異的であるが、Neuro2a細胞がテネウリン3の変異体を有するようであることを示す。
【0210】
実施例6 細胞増殖実験
TCAPを評価することができるモデル系を確立するために、初めにいくつかの細胞株を利用した。最初に、マウス神経芽細胞腫細胞株Neuro2a、ヒト乳がん細胞株MCF-7、マウスGnRHを分泌する不死化ニューロン株NLTおよびGn11 COS-7細胞、並びにラット線維芽細胞細胞株TGR1。予備研究では、細胞が細胞増殖の減少を示したという点で(データ示さず)、細胞がTCAPニジマスTCAP-3、配列番号:13:アミド化されたもの[配列番号:15]の効果に応答することを示した。研究は、以下の細胞増殖研究に従って本質的に行った。Gn11およびTGR1細胞をさらなる研究に使用するために選択した。
【0211】
繊維芽細胞株TGR1およびHO16.4cに対するTCAPの薬理学的試験:3×104のTGR1細胞/ウェルを含む2つのプレート、および3×104 HO16.4c細胞/ウェルを含む2つのプレートを完全な血清培地中に、試験のために調製した。プレートのそれぞれ6ウェルを試験群として設計した。24時間後に、薬物の一定分量(20μl)を、12時間の間隔で、新しい完全な血清DMEMを使用して培地を交換した後に添加した。細胞を4時間ごとに顕微鏡で観察した。2つの細胞株の数は、48時間および72時間の段階でTCAP群において有意に低いことが見出された。細胞は、処理の48時間および72時間後に計数した。完全な血清培地中の3×104 Gn11細胞/ウェルを含む2つのプレートを試験のために調製した。プレートのそれぞれ6ウェルを試験群として設計した。24時間後に、薬物(媒体:生理食塩水+酢酸;10-6MのTCAP-3)の一定分量(20μl)を、12時間の間隔で、新しい完全な血清DMEMを使用して培地を交換した後に添加した。細胞を4時間ごとに顕微鏡で観察した。細胞は、処理の48時間および72時間後に計数した。
【0212】
0、12、24、および36時間における10-6MのTCAPの濃度の投与では、マウスニューロン細胞株(Gn11)の増殖を減少させ(図13A−48時間および13B−72時間)、48時間(図14)では50〜60%にラット線維芽細胞細胞株(TGR1)の増殖を減少させ、および媒体処理した細胞と比較して48時間ではHO16.4c細胞(図15)の増殖を減少させた。
【0213】
TCAPが上記の細胞株の細胞増殖を阻害する能力は、癌の治療において腫瘍増殖を抑え、転移を阻害するためにTCAPを使用することができるなどの、細胞増殖および関連した医学的な症状の調節にペプチドが有用であろうことを示す。好ましい態様において、TCAPは、ニューロンの腫瘍の治療に使用することができる。
【0214】
実施例7 環状ヌクレオチド実験
I.A.cAMPおよびcGMPアッセイ法
約106のGn11細胞を20μLの10-9、10-8、または10-7、または10-6 MのTCAP-1またはTCAP-3で処理し、10分間、37℃でインキュベートした。培地およびペプチドを除去して350μLの0.1MのHCl、0.1%トリトンX-100溶液を使用して細胞を溶解した。同じ濃HClおよびトリトンX-100溶液並びに提供された標準的な濃縮物を使用して、5つの規準液を200、50、12.5、3.12、および0.78pmol/mlの濃度に作製した。全ての反応は3回行った。ブランク、非特異的な結合、総活性(TA)、ゼロ結合、5つの標準、および12個の試料についてウェルを準備した。96ウェルのIgG被覆プレートを使用して、50μLの中和試薬をブランクを除くそれぞれのウェルにピペットで移した。150μLの0.1MのHCl/0.1%のトリトン溶液をNSBウェルにピペットで移し、100μLのこの溶液をゼロ結合ウェルにピペットで移した。100μLの標準および100μLの試料をこれらのそれぞれのウェルにピペットで移した。50μLの複合物を、TAおよびブランクのウェルを除くそれぞれのウェルにピペットで移した。50μLのcAMP抗体をTA、ブランク、およびNSBウェルを除くそれぞれのウェルにピペットで移した。プレートを一晩振盪させた。次の朝、ウェルを10倍希釈した洗浄緩衝液で3回リンスした。50μLの複合物をTAウェルに添加し、200μLのp-Npp基質をそれぞれのウェルに添加した。プレートを再びカバーして、1時間室温でインキュベートした。この時点で、50μLの停止液を全てのウェルに添加し、吸光度をSpectramax分光光度計を使用して405nmで読み込んだ。3つのレベルの対照を利用した:p-Npp基質とIgG被覆したウェルとの間の任意の反応の測定を提供する空のチューブ、;Ta:もしあれば、複合物中のアルカリホスファターゼ活性の測定;NSB:プレートに対する、または抗体に対する複合物の結合の測定;Bo:抗体に対する複合物の結合の測定(試料なし、および複合物の競合)。
【0215】
B.結果
第1の実験セットにおいて、Gn11細胞を、10-6 MのrtTCAP-3(配列番号:13)、アミド化したもの[配列番号:15](上記を参照されたい)、ラットのウロコルチンまたは媒体(上記のとおり)で処理した(図16A)。TCAPでは、細胞におけるcAMP蓄積が、媒体処理した細胞の58.9±4.8%まで減少した(p<0.01)。ウロコルチンでは、対照細胞の89.2±6.3%まで、有意ではない減少がもたらされた。cGMPの蓄積実験において、TCAPでは、対照細胞の38.5±8.8%までcGMP蓄積が減少したが(p<0.01)、ウロコルチンでは、対照細胞の50.0±8.5%までの減少が生じた(図16B)。
【0216】
II.A.cAMPアッセイ法
Gn11細胞を、70%コンフルエントに達したときに処理した。細胞を10-9、10-8、または10-7MのTCAP、ウロコルチン、および媒体で処理し、分離して37℃においてインキュベーター内でインキュベートした。(以下に詳細)培地を除去して、細胞をPBSで1回洗浄し、次いで600μlの0.1M HCl溶液を使用して溶解した。凍結/融解を3回行った後、試料をマイクロ遠心チューブに移した。同時に、3mlのシリンジおよび22Gの針で20回、細胞を圧迫した。4000rpm×5分で遠心し、それぞれの試料の上清を吸引して、cAMPまたはcGMPアッセイを行うまで-20℃で保存した。同じ濃HClを使用して、標準的な濃度を提供し、5つの標準溶液を200、50、12.5、3.12、および0.78pmol/mlの濃度で作製した。全ての反応は2回行った。ブランク、非特異的結合(NSB)、総活性(TA)、ゼロ結合(B0)、5つの標準、および全ての試料について、ウェルをセットアップした。96ウェルのIgG被覆したプレートを使用して、50μLの中和試薬をブランクおよびTAを除くそれぞれのウェルにピペットで取った。150μLの0.1M HCLをNSBウェルにピペットでとり、100μLのこの溶液をゼロ結合ウェルにピペットで取った。100μLの標準および100μLの試料をこれらのそれぞれのウェルにピペットで取った。50μLの抱合体をTAおよび空のウェルを除くそれぞれのウェルにピペットで取った。50μLのcAMP抗体をTA、ブランク、およびNSBウェルを除くそれぞれのウェルにピペットで取った。プレートを4℃において200rpmで一晩(18時間)振盪させた。翌日、ウェルを10倍希釈した洗浄緩衝溶液で3回リンスした。それぞれのウェルを徹底的に乾燥させた後、5μLの抱合体をTAウェルに添加し、200μLのp-Npp基質をそれぞれのウェルに添加した。プレートを再びカバーして、室温で振盪せずに1時間インキュベートした。この時点で、50μLの停止液を全てのウェルに添加して、吸光度をSpectramax分光光度計を使用して405nmおよび580nmで読み込んだ。580nmのデータは、それぞれのウェルのバックグラウンドを提供し、これを405nmのデータから差し引いた。
【0217】
B.結果
10-8 M TCAPは、ペプチド導入の15分後にcAMP蓄積の有意な増大を誘導し、処理の30分以内に通常の限界に落ちた(図17A)。ウロコルチンを陽性対照の目的で使用した。図17Bは、10-4M 3-イソブチル-1メチルキサンチン(IBMX)、10-8 M TCAPまたはウロコルチン処理によって誘導されるcAMPを上昇させるために使用するホスホジエステラーゼ阻害剤の存在下における、Gn11細胞のcAMPレベルを図示する。図17Cは、IBMXの存在下における種々の濃度のTCAPまたはウロコルチンの投与による、Gn11細胞の30分にわたるcAMP蓄積を図示する棒グラフである。図17Dは、10-6 Mのフォルスコリンで刺激されたcAMPの、10-8 MのTCAPまたはウロコルチンによる阻害を図示する棒グラフである。
【0218】
実施例8 行動に関する研究
A.脳刺激報酬行動実験
ラットには、橋被蓋のコリン作動性の核を活性化し、前脳のドーパミン作動性の経路に対するこれらの投射を活性化する視床下部外側の電気刺激に対して、バーを押すように訓練することができる。一旦、所与の電流に対して信頼性の高いベースラインのバーを押す割合が確立されれば、このコリン作動性のドーパミン作動系の活性に対する種々の薬物の結果を、頭蓋内に物質を注射すること、および次いで自己刺激する行動の割合に対するこれらの効果を観察することによって評価することができる。1nMの濃度で生理食塩水に調製したTCAP-3配列番号:13、アミド化されたもの、[配列番号:15](上記参照されたい)をガイド・カニューレで側後(laterodorsal)被蓋の細胞核へカニューレによって注入した。バーを押す割合を媒体処理したラットと比較した。
【0219】
B.結果
1nM(4.2pg/μl)のTCAPをラットの尾側中脳に注入したときに、自己報酬刺激の強い阻害が生じた(図18)。前脳(側脳室)および中脳注射では、効果は可逆的であり、ラットの行動は、約60分後に正常の限度に戻った。
【0220】
実施例9 予備的インサイチューハイブリダイゼーションの結果
第1のインサイチューハイブリダイゼーションのデータは、テネウリン1遺伝子(TCAP-1)が成体ラットの脳に高度に発現されていることを示す。最も多くの発現領域は、外側中隔、視床下部の線条末端腹面内側核のベッド核、および腹側のプレ乳頭体(premammilary)核に生じる。より少ない発現は、海馬および扁桃体に生じる。この発現パターンは、情動障害および気分障害のストレス応答(上記を参照されたい)を調節するペプチドと一致する。これらのデータは、TCAPが神経形成および神経変性のうちの1つ以外に、ストレスおよび不安調節においても主要な役割を果たすことを示す。テネウリン4(TCAP-4)の発現も、成体の脳に生じるが、テネウリン1よりも強い。
【0221】
A.方法
本方法は、35S標識したアンチセンスおよびセンス(対照)プローブを、より高ストリンジェンシー条件(60℃において0.2 SSCで最終的な洗浄を伴う50%のホルムアミド)で使用して、前述したように行った(Simmonsら、1989; Ericssonら、1995)。35S標識したcRNAプローブは、TCAP部分を含むエキソン33の350bpのcDNAから適切なポリメラーゼ(アンチセンスのためのT3およびセンスのためのT7)でのインビトロ転写によって作製した。
【0222】
B.結果
結果は、図20に示してある。左欄は、アンチセンスプローブを使用するTCAP-1 mRNAの発現であり、右欄は、センスプローブである。A〜B:扁桃体の中核(CeA);C〜D:線条末端、内側(BSTM)のベッド細胞核;E〜F:プレ乳頭体(premammilary)腹側核(PMV)。
略語:3V(第三脳室);fx(脳弓);ic(内包);LV(側脳室);MeA(扁桃体の内側核);opt(視索);st(分界条)。バー=300μm(A〜B)および500μm(C〜F)
【0223】
インサイチューハイブリダイゼーションのデータは、TCAP-1遺伝子が成体ラット脳において高度に発現されていることを示す。TCAP-1領域を含むC末端のテネウリン1エキソンの発現は、視床下部および辺縁系の領域に制限された(図20A〜F)。最も多く発現する領域は、外側中隔、視床下部の線条末端腹面内側核のベッド核、および腹側プレ乳頭体核に生じる。より少ない発現は、海馬および扁桃体に生じる。この分布は、情動、不安、および動機づけに対するモジュレーターの役割を果たすTCAPと一致する。この領域(Liら、2002)に見出される既知のCRF受容体はないため、腹側プレ乳頭体核にTCAP-1発現があることは、特に関心が持たれる。エキソンを含むTCAPが、側脳室の嗅脳または上衣下層などの神経形成と関係する領域に発現されるという証拠はなかった。テネウリンタンパク質のこれまでの認識にもかかわらず、成体の脳におけるこれらの発現は、これまで検査されていなかった。しかし、テネウリン1および4の発現は、マウス、ニワトリ、およびゼブラフィッシュの脳の間脳の発達の際に観察された(Rubinら、1999; Ben-Zurら、2000; Miedaら、1999)。
【0224】
これらのデータは、TCAPの主要な役割がストレスおよび不安の調節の1つであるという仮説を支持する。
【0225】
実施例10 慢性TCAPの研究:ストレス応答を調整する際のTCAPの役割
A.方法
1. ウィスターラットは、ベースライン反応のための聴覚による驚愕を試験し(60回の聴覚驚愕刺激、120dB、刺激が60秒の間隔からなる1時間の試験)、TCAP-1(10nmolのマウスTCAP-1、アミド化されたもの[配列番号:40]、3μlの媒体を脳室内に)または媒体(たとえば、塩類溶液および酢酸)を与えるために、一致させた群に分けた。
2. 2日後に、ラットは25回の聴覚による驚愕刺激をベースライン(120dB、刺激間の間隔が60秒)で試験して、次いで10nmolのTCAP-1または媒体でICV注射し、急性反応を1時間測定した(60回の刺激、120dB、刺激間の間隔が60秒)。
3. 25日後、ラットには、TCAP-1(10nmolの3μl)または担体(3μl)のいずれかを、5日連続してICVに1日1回投与した。
4. ラットを10日間単独のままとした。
5. 10日目に、TCAP-1なしで、ラットの聴覚驚愕反応を試験した。
【0226】
11日目に、再びTCAP-1なしで、60分間(60回の刺激、刺激間の間隔が60秒、120dB)ラットの驚愕反応を再試験した。驚愕について13日および28日目に再試験した。TCAP-1を、媒体である塩類溶液および酢酸の混合物に溶解した。媒体という場合、これはTCAP-1の付加を伴わない溶液をいう。
【0227】
B.結果
結果は、媒体(21A)またはTCAP-1(21B)の5日連続のICV投与後における0、10、および12日間について、図21に示してある。慢性研究での動物の驚愕反応は、図22に示してある。慢性のTCAP処理前の、1日目の2つの群(TCAP-1および媒体)の平均驚愕反応を図22Aに示してある。図22Bは、慢性TCAPの処理後、10日目のセッションの60回の試行にわたったTCAPおよび媒体群についての平均驚愕反応を示す。図22Cは、60回の試行全体にわたって平均したTCAPおよび媒体群の全ての動物についての平均ベースライン驚愕反応を示す。
【0228】
実施例11 急性TCAP研究聴覚驚愕測定
A.方法
雄のウィスターラット(250〜275g)には、扁桃体の側底核内に、両側にカニューレ(23ゲージ)によって外科的に移植した(AP−2.8、ML+/-5.0、DV−7.2mm、十字縫合から)。1週後に、動物は、刺激間の間隔が55〜65秒で、30m秒の期間、および5000Hzの振動数のランダムに示される120dB刺激の25回の試行からなる聴覚驚愕反射(ASR)のチャンバー(MED Associates、格子棒ケージ7.5''×3.6''×4.2'')に慣れた。25回の試行のベースライン、マウスTCAP-1(アミド化シグナルを有する)[配列番号:40]または媒体(0.25μ/side、流速0.5μl/分)の注射、および薬剤後のさらに60回の試行を試験することからなる、同じ刺激条件を試験日についても使用した。それぞれのラットには、試験初日に媒体処理を、次いで翌試験日にTCAP-1(たとえば、マウスTCAP-1)をランダムにおよび釣り合わせた様式(balanced fashion)で与えて、48時間間隔を置いた。試験最終日に、すべてのラットには、再び媒体処理を与えた。カニューレ設置の組織学的な解析に続いて、8匹のラットのデータを統計学的解析のために記録した。
【0229】
データから、ラットを、これらの媒体についての処理/ベースライン比に応じて高いおよび低い不安の群に分けた。一方よりも低くスコアリングされた動物は、低不安であるとみなし、一方よりも高くスコアリングされた動物は、高不安であるとみなした。それぞれの不安群において、4匹の動物であった。
【0230】
結果を図23および24に示してある。図23は、すべての濃度のマウスTCAP-1について、両群の平均の治療/ベースライン値を例示する棒グラフである。繰り返し測定ANOVAでは、2種の不安群の間の有意差のレベルは、P=0.0078であったことを示した。TCAP-1処理の後、低不安の治療/ベースライン比は、初期の高不安の値と同様であり、逆もまた同じであった。効果がTCAP-1によるものであり、注射の実験によるものではないことを示すために、媒体の注射は研究の最後に行った。TCAP-1濃度は、3、30、300pモルであった。扁桃体に注射したTCAP-1の効果の概要を図24に示してある。これにより、驚愕反応に対するTCAP-1による効果は、ベースライン驚愕反応とは逆比例することが示された。このようなTCAP-1は、驚愕行動またはストレス応答を規準化するために使用することができる。
【0231】
考察
本機構にもかかわらず、合成TCAPペプチドは、インビボでのラットの行動反応を強力に誘発する。視床下部および辺縁系の領域におけるTCAPの強力な発現を考慮して、ラットの聴覚驚愕に対する効果を決定するために、アミド化シグナルを有する合成的マウスTCAP-1ペプチドを側底の扁桃体に微量注入した。ベースラインに対する処理の比が高い(>1)動物は、驚愕の程度に有意な(p<0.05)減少を示したが、ベースラインに対する処理の比が低い(<1)動物は、驚愕の程度に有意な(p、0.05)および容量依存的な増大を示した(図23)。これらのデータは、TCAP-1が、特定の動物のベースライン反応性に応じて、驚愕反応に対する効果を調整するように作用し、聴覚驚愕と関係する行動を正常化することができることを示す。聴覚驚愕を増大することが示されているその他の神経ペプチドは、CRF(Liangら、1992)、CCK(Franklandら、1997)、およびSP(Kraseら、1994/1999)である。聴覚驚愕の概念図式は、薬物の不安原性または不安を緩解する効果を評価するために周知であり、かつ広範に使用される概念図式である。驚愕反射は、歩行運動、学習、記憶、またはいかなる種類の行動にも動機を与えなかったので(これは、おそらく結果の解読を混乱させ得る)、これは、新規の化合物を試験するための理想的な概念図式となる。
【0232】
示されたデータは、TCAPが前脳および辺縁系の鍵となる領域のニューロンの機能を調節することによって、不安の調節と関係する神経ペプチドの新たなファミリーを表すことを示す。また、以前の研究では、神経の調節を伴ったテネウリン遺伝子の役割を示差していた。ヒトTen-M1は、X染色体の位置Xq25にマップされる(Ben-Zurら、1999)。これは、Xに連鎖された精神遅滞遺伝的症候群と関係する領域である(Minetら、1999)。この部位にマップされる症状は、重度の精神遅滞によって特徴づけられ、運動感覚神経障害、聴覚障害、並びに時に発作および視覚障害に関与する可能性がある。
【0233】
TCAPの調節は、神経病学的機能障害および精神医学疾患の病因を理解するための新たな標的を示す。実施例では、TCAPがストレス関連障害およびその他の神経病理学的症状の治療に使用することができることを示す。
【0234】
実施例12 不死化ニューロンに対するTCAPの活性
A.インビトロアッセイ法
Gn11不死化ニューロンは、以前の報告(Tellamら、1998)のとおりに培養した。直接cAMP測定は、商業的なキット(Assay Designs, Ann Arbor, MI)のアセチル化されていない型によって行った。無血清のDMEMによって1時間飢餓状態にし、血清のない新しいDMEMで置換した後、細胞をTCAP、ウロコルチン、または媒体±CRFR1アンタゴニストPD171729、フォルスコリン(1_M)およびIBMX(100_M)の持続的な存在下において15分間処理した。タンパク質アッセイ法:総タンパク質は、BCAタンパク質アッセイ法(Pierce Co)を使用して決定した。MTTアッセイ法:Gn11細胞を96ウェルプレートにまいて、細胞が30%コンフルエントになるまで完全な血清DMEM中で培養した。媒体、1nM、10nM、または100nMのTCAP-1をそれぞれの群(n=8)に添加した(図25A)。MTTアッセイ法(Sigma Chemicals)を0、6、12、24、および48時間において行った。フローサイトメトリー:Gn11細胞のDNA含量は、ヨウ化プロピジウムで染色することによって定量し、FACSCANフローサイトメーター(Beckman Instruments)で解析した。
【0235】
B.結果
マウスTCAP-1は、15分後にマウス不死化ニューロンのcAMP蓄積の用量依存的な変化を誘導した。1nMの用量では、媒体処理した細胞全体で45%のcAMPレベルを増加させた(p<0.05)。対照的に、100nMのTCAP-1では、対照細胞から40%のcAMP蓄積を減少させた(p<0.05)(図25A)。しかし、特異的なCRF1型受容体アンタゴニストで同時に処理すると、PD171729は、TCAPのcAMP蓄積の効果を完全になくすことはできなかった。対照的に、同じ濃度のアンタゴニストは、これらの細胞のウロコルチンで刺激されるcAMP蓄積の完全な阻害を誘導した(p<0.01)(図25B)。我々は、これらの細胞がR2受容体(データ示さず)ではなく、CRF-R1受容体(Tellamら、1998)を有することをすでに確立している。1、10、および100nMの濃度のTCAP-1では、同じ細胞における120分以後の総タンパク質濃度の有意な増大を誘導した(図25C)。これらの細胞をマウスTCAP-1で処理しても、細胞代謝に対して用量依存的な効果を誘導した。ミトコンドリア活性(MTTアッセイ法)として示される細胞活性は、1nMの濃度で有意な(p<0.05)活性の増大を示したが、100nMの濃度(図25D)では、減少を示した。同様に、1nMのTCAPでは、24時間後のG1期の出現率が減少した(p<0.05)が、100nMの用量では、DNA含量解析によって決定されるG1期が増大した(p<0.05)。
【0236】
従って、αヘリックスのCRF(9〜41)アンタゴニストは、TCAPのストレス応答調整活性を調整することができる。
【0237】
実施例13 プロテオミック・プロファイリングおよびマイクロアレイ研究
TCAPの効果を決定し、TCAPモジュレーターのスクリーニングのための細胞モデル系、TCAPに関連する診断および症状、並びに医療処置の方法を開発するために、TCAP応答性の細胞株をプロテオミック・プロファイリングおよびマイクロアレイ解析に供した。これは、表1に示したマーカー・プロファイルを有する非腫瘍性由来(non-tumorgenic-deribed)の不死化マウス視床下部細胞株、N38を使用して行った。その他の不死化細胞株に対するTCAPの効果は、下記に述べた方法を適応させることによって実施することができる。
【0238】
A.TCAP応答性の不死化視床下部細胞株
使用したTCAP応答性の不死化細胞株は、トロント大学のDenise Belshamによって、以下により調整した:培養胚視床下部細胞を調製し;該培養物を、機能的にプロモーターおよび選択可能なマーカーを結合したウイルスの癌遺伝子のラージT抗原をコードするレトロウイルスに感染させ;トランスフェクトされていない細胞からトランスフェクトされた細胞を単離して不死化視床下部細胞の培養物を得;該不死化細胞をサブクローニング集団にサブクローニングし;特異的なニューロンマーカーの発現についてサブクローニングした集団をスクリーニングし;特異的な集団を選択し、さらにクローニングした。次いで、不死化細胞株をTCAP応答性についてスクリーニングすることができる。
【0239】
TCAP応答性は、不死化したサブクローンの、TCAPに対する機能的なcAMP反応を測定することによってスクリーニングした。結果は、図26に示してある。N-15-1、#7(N7)、N-18-1、#11(N22)、およびN-15-14、#29(N29)をペプチド刺激に対するcAMP反応について解析した。サブクローンを24ウェルのプレートに分けた。細胞をFBSのないDMEM中で1時間飢餓状態にし、次いで、培地を示したとおりの化合物を含む新しい0.5mlのDMEM(FBSなし)と置き換えた。図26では、ニューロンを10-7M(100nM)のTCAPペプチドに曝露した。全てのペプチドは、IBMX(100μM)を含むDMEMに希釈した。37℃で15分間インキュベートした後、1mlの氷冷エタノールをそれぞれのウェルに添加した。細胞をプレートから剥がし、細胞内のcAMPの量は、製造業者の説明書に記載のRIA(Biotechnologies Inc., Stoughton, MA)を3回実施して決定した。測定までは-20℃に保持しておいた。
【0240】
B.TCAP3を使用するプロテオミック・プロファイリング
NPY17(N38)不死化ニューロンを100nMのTCAP-3で処理し、プロテオミック・プロファイリングに供した。この手法では、細胞の核を単離してタンパク質を抽出した。この方法では、所与の処理によって上方制御または下方制御されるタンパク質の指標を提供する。プロテオミック・プロファイルでは、上方制御される大部分のタンパク質が、細胞周期、代謝、およびストレス応答に関係することを示した。また、多くの細胞骨格タンパク質も上方制御された。多くの抗うつ薬は、脊椎密度およびニューロンプロセスの分枝を増大させることが示されているため、この観察は特に重要である。このような事象は、細胞骨格タンパク質によって調節される。
【0241】
プロテオミック・プロファイリング
12時間で上方制御された
【0242】
B.マイクロアレイ研究
I.方法
RNAの単離
総RNA(tRNA)は、製造業者のプロトコルに従い、トリゾール試薬(GIBCO/BRL)を利用して、3回独立に処理したN38視床下部細胞培養および未処置のN38視床下部細胞培養から単離し、プールした(ノイズを減らすために)。総RNAの品質は、Agilent 2100バイオアナライザー(バージョンA. 02.01S1232, Agilent Technologies)を使用して評価した。260/280のOD比1.99〜2.0を有するRNAのみを使用した。
【0243】
オリゴヌクレオチドアレイ(ハイブリダイゼーション、染色、および走査)
ハイブリダイゼーションは、マウスMU74Av2 GeneChipセット(Affymetrix, Santa Clara, CA)で行った。Affymetrixの説明書に従って、ハイブリダイゼーションのための試料を調製した。簡単には、オリゴ-dT17を結合したT7 RNAポリメラーゼプロモータをコードするプライマーを使用して、それぞれのmRNA試料からSuperscript II RNAase H-逆転写酵素(Life Technologies, Rockville, MD)を使用して二本鎖cDNA合成を開始した。それぞれの精製した(Qiaquickキット, Qiagen)二本鎖cDNAをT7 RNAポリメラーゼ(T7キット; Enzo)、ビオチン-UTPおよびビオチン-CTP(Enzo Biochemicals, New York, NY)を使用してcRNAsにインビトロ転写し、続いてRNEasy(Qiagen)を使用して精製し、260nm/280nmの吸光度を測定することによって定量した。試料を断片化し、45℃で16時間チップにハイブリダイズさせて、走査した(GeneArray scanner, Affymetrix)。150の蛍光ユニットのGenechips全体の強度を測るために、かつチップ上のそれぞれの遺伝子の発現値を決定するために、MicroArray Suite Version 5(MASv5; Affymetrix)を使用した。それぞれの遺伝子の発現値は、遺伝子に使用するプローブ対の差(完全なマッチ強度からミスマッチ強度を差し引いた)の平均値を算出することによって決定した。
【0244】
データ解析
遺伝子解析ソフトウェア:データ解析は、2つの独立したソフトウェア、GeneChipおよびGeneSpringを使用して行った。差次的に発現した転写産物を同定するために、対比較解析をMicroArray Suite Version 5(MASv5; Affymetrix)によって行った。マン-ホイットニー対比較試験(Mann-Whitney pairwise comparison test)に基づくこのアプローチにより、一致による結果の格付、並びにそれぞれの同定された遺伝子発現の変化の有意差(P値)の計算を行うことができる。統計学的に有意な遺伝子(P<0.05)をさらなる解析のために選択した。さらに、平均発現値の統計学的に有意な変化は、GeneSpring 5(Silicon Genetics, Redwood City, CA)にMASv5からのデータを取り入れることによって決定した。段階的なプロセスでは、第1に規格化を行った。生物学的差異の直接的な比較を容易にするために、チップ毎に、遺伝子毎の規格化を続けた。次に、Affymetrixデータおよびカットオフ値P<0.005でのp値を使用する第2のフィルター方法により、4,841個の遺伝子が生じ、これを階層的クラスター化(Hierarchical Clustering)、k-平均、Gene Spring 5.0による自己機構マップ(Self Organization Map:SOM)を利用する次の解析のために使用した。
【0245】
II.結果
さらに、細胞株が、TCAPの応答性、調整を研究するためのモデルとして使用でき、かつTCAPモジュレーターのスクリーニングに使用できることを証明するために、マイクロアレイ研究を、1nMのTCAP-1[C末端にアミド化シグナルGRRをプラスした配列番号:5]で処理したN38視床下部細胞(いずれのCRF受容体サブタイプも有しない)に対して行った(表4)。処理および未処理の細胞から単離したRNAを、12,884個のマウス遺伝子を表すオリゴヌクレオチドアレイ(Affymetrix、http://www.affymetrix.com)で解析した。標準的なフィルタリング(p<0.005)および階層的クラスター化アルゴリズム(平均整列法(average linage method):GeneSpring software-Silicon Genetics)により、4,841/12,885個の遺伝子の発現に有意な変化が同定され、未処置の細胞と比較して、TCAP-1処理した細胞のうち、166個の遺伝子は、1.5倍の下方制御を示し、35個の遺伝子は、上方制御を示した。治療後16時間では、有意な減少がいくつかの遺伝子で、特に、増殖停止またはアポトーシスの事象に関係しているGAS5、SDPR、およびCD95で生じた(45-47)。対照的に、MK167、MOP3、およびGDAP10を含む上方制御された遺伝子は、細胞増殖および細胞周期調整と関係していた(48-50)。Gタンパク結合受容体関連のシグナル伝達経路は、CREM、AKAP8、AKAP95、およびPDE6Aの遺伝子の調節によって示される。また、EFK1およびRGLなどのRASの下流のエフェクターも下方制御された。タンパク質AKAP95をアンカーするAキナーゼが下方制御され、しかしAKAP8が上方制御されたことは、一つには、TCAPがPKAのターゲティングパターンを変えることによって作用しうることを示唆する(51)。誘導性の一酸化窒素(INOS)、細胞内の電位開口型の塩素イオンチャネル(CLCN3)、およびセロトニントランスポーター(SLC6A4)の上方制御は、cAMPを介したシグナルカスケードの下流の作用を反映し、TCAPがニューロン情報伝達系に関与するであろうことを示す。また、TCAPによる介在ニューロン連絡の役割は、小胞輸送の調節に関係する遺伝子の調整によって示される。したがって、増殖、分化、および連絡に影響を及ぼすニューロン機能のモジュレーターをスクリーニングするために、TCAP応答性の細胞株を使用することができる。
【0246】
実験結果の概要
テネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)は、既知の4つ全てのテネウリン(Ten M)タンパク質の40〜41残基を表す。4つ全てのテネウリンにおいて、TCAPは、全てのエキソンの中で最も高い配列相同性を示し、これは、タンパク質で最もストリンジェントな生理学的な制約下にあることを示唆する。TCAPは、おそらく細胞周期を停止することによる、ニューロンのおよび線維芽細胞の増殖の強力な阻害剤である。ラット脳に注入されたときに、TCAPは、驚愕反射を増大させ、自己投与の報酬行動を減少させ、ストレス応答を調整することが示された。これらのデータは、TCAPがニューロンの増殖および発生と関係する新規の神経ホルモン系を表すことを示す。
【0247】
タイプII膜貫通タンパク質のカルボキシ末端にTCAP様のペプチドは通常見出されない。タンパク質が細胞の細胞外表面上に発現するだけであると仮定するならば、ペプチドは、周囲の細胞を調節するためにパラ分泌の様式で作用する可能性が高い。全てのTen Mタンパク質は、推定上のペプチドからの切断部位から位置-1および-8上流域に塩基性の残基を有する。このような塩基性残基の配置は、ペプチドプロホルモンのプロセシングのためのプロテアーゼのプロホルモンコンバターゼ7(PC7)ファミリーによって認識される(SaidehおよびChretien, 1997)。この場合を想定すると、必須のPC7様タンパク質は、細胞の細胞外表面に、またはおそらく隣接細胞の細胞外表面に発現することも必要であろう。または、プロテアーゼは、より可動性の様式で分泌され、作用してもよい。いずれにせよ、切断されたペプチドの放出は、小胞性放出に見られる大量瞬時投与の際には生じそうにない。Ten-Mタンパク質が調節を受けた経路の小胞に発現し、ここで小胞内プロテアーゼが開口分泌前にペプチドを切断することができることも考えられる。しかし、合成ペプチドは、2μg/μlよりも高濃度で、凝集および沈降する傾向を強く示す。これは、ペプチド内にロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、およびフェニルアラニンの数が多い(15)ためである可能性が高い。ウロコルチン様のペプチド、サウバギンなどの小胞濃度が高いペプチドは、新熱帯区のカエル(Phyllomedusa sauvagei)の皮膚において見出され、疎水性の残基の比率が低い傾向にある(Pallaiら、1983)。したがって、TCAPペプチドのこの物理的な特徴は、形質膜の細胞外表面から切断されることから、その優先的な放出を裏付ける。
【0248】
Ten-Mタンパク質のTCAP部分は、タンパク質の末端エキソンで最も高度に保存されるように見える。このような高レベルの保存は、変化を阻害する配列による多くの生理学的、生化学的な制約作用があるときに生じる。このような変化に対する耐性は、必須のプロセシングまたは分解酵素、受容体、および/または輸送タンパク質との相互作用によって生じ得る。脊椎動物のパラログ間での90%の保存レベルは、TCAPが最も密接に関連すると思われるCRF群のペプチドと比較して高い。
【0249】
いずれにせよ、多くのその他の生理活性ペプチドも、初めにTCAPと同様に発現され、プロセシングされる。腫瘍壊死因子(TNF)(Utsumら、1995)、Apo-2リガンド(Pittiら、1996)、およびフラクタルカイン(fractalkine)(Gartonら、2001)などのその他の生理活性ペプチドもこのようにプロセシングされる。これらのペプチドは、細胞外表面上のC末端の終わりが外部に向いている。このようにプロセシングされて発現したペプチドは、種々の内分泌または近傍分泌(juxtacrine)における役割を有する可能性がある。たとえば、これらは、適切な受容体を示す細胞の接着分子として作用する可能性がある。このような作用は、脳の発達の際のニューロンの遊走時に特に重要である可能性があり、ニューロンを特異的な標的に向けることができる。または、ペプチドは、膜結合または細胞外基質結合プロテアーゼを経て切断されて、周りの細胞の作用を調整するためのパラ分泌/自己分泌因子として作用する可能性がある。このような機構は、虚血の際に生じる低酸素ストレスから細胞を守るために重要であろう。3つ全てのサイトカインは、腫瘍壊死因子α変換酵素(TACE、ADAM17)によってプロセシングされるように見える。また、この酵素は、アミロイドβ前駆体タンパク質(Skovronskyら、2001)の細胞表面外部ドメインを切断することができ、したがってアミロイドβの生成を減少させることから、これはアルツハイマー病因にも役割を有する可能性が示唆される。
【0250】
TCAPペプチドは、生理学的ないくつかの事象を調節するものと思われる。マウス神経細胞株Gn11、およびラット線維芽細胞細胞株TGR1において、10-9〜10-6 Mの濃度のTCAP処理では、用量依存的な様式で増殖を阻害することができ、最大約60%の阻害を生じる。細胞のアポトーシスまたはネクローシスの証拠はなく、形態は処理した細胞と未処理の細胞の間で異ならなかった。
【0251】
このストレス関連の研究では、虚血またはおそらく種々の神経変性疾患の期間中に生じると考えられる細胞に対する環境ストレスによってもたらされる損傷を阻止するというTCAPペプチドの能力を示す。ストレスのない細胞において見られる増殖速度の減少およびストレスを受けた細胞での明らかな増大を考慮すると、TCAPは、一部において、細胞の代謝活性を減少させるように作用する可能性が示唆される。その他の関連ペプチドも同様の効果を有する。たとえば、ウロコルチンは、p42/p44分裂促進因子活性タンパク質(MAP)キナーゼ経路を刺激することによって初代心臓筋細胞培養の細胞死を防止することができる(Latchman、2001)。熱ショック(Okosiら、1998)または虚血(Brarら、1999)などのストレス性条件下で、ウロコルチンmRNAは、培養心臓細胞において上方制御され、培地にも分泌されることから(Brarら、1999)、これもパラ分泌機能で作用して、細胞代謝を調節することを示唆する。この効果は、CRFよりもウロコルチンによるほうが大きい。CRFファミリーのウロコルチンパラログがCRFよりも進化的に古い配列を表すと思われるので(LovejoyおよびBalment, 1999)、これには特に関心がもたれる。そして、細胞代謝に対するこのようなパラ分泌作用は、TCAPおよびCRF/ウロコルチン/利尿群の双方のペプチド上昇を生じる祖先遺伝子の初期の重要な機能のうちの1つであろう。
【0252】
これまでに得られたデータは、TCAPの機構のための仮のモデルを詳細に描写するために使用することができる(図19)。初めに、pH、温度、もしくはO2レベルの変化などのストレス要因、または代わりに、ストレス誘発性のリガンドは、Ten-Mタンパク質の上方制御をトリガーする。このようなストレス要因は、アデニル酸シクラーゼおよびグアニル酸シクラーゼを含む多くのシグナル伝達経路を介して作用する可能性が高い。また、ストレス要因は、TACEまたはPC7などのTen-M切断酵素を上方制御することも考えられる。次いで、TCAPリガンドは、そのタンパク質から切断され、遊離して自己分泌およびパラ分泌の様式で作用する。これは、Gタンパク質結合受容体に結合し、その後にG抑制性タンパク質と相互作用する。これがcAMPおよびcGMP産生を阻害して、細胞の活性化を阻害する。分裂するニューロンでは、これは増殖または遊走を阻害するように作用し、成熟した非分裂ニューロンでは、シナプスにおけるアウトプットの減少として現れ、これにより脳細胞の活性化した核における神経性の反応を阻害することができる。
【0253】
本発明は、好ましい実施例であると現在みなされるものに関して記載したが、本発明は、開示された実施例に限定されないことは理解されるはずである。対照的に、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる種々の変更および等価物の改変を包含することが意図される。
【0254】
全ての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個々に、その全体が参照として組み入れられることを示したのと同じ範囲で、これらの全体が本明細書に参照として組み入れられる。
【0255】
(表1)細胞株スクリーニング
以下の略語は、標準的で科学的な省略を有する:T-Ag、ラージT抗原;NSE、ニューロン特異的エノラーゼ;GFAP、グリア原線維酸性タンパク質;SNTX、シンタキシン;ER、エストロゲン受容体;AR、アンドロゲン受容体;LepR、レプチン受容体b;Glp-2R(G2Rも)、グルカゴン様ペプチド2受容体;SOCS-3、サイトカインシグナリング3のサプレッサー;NPY、ニューロペプチドY;AGRP、アグーチ関連ペプチド;POMC、プロオピオメラノコルチン;CART、コカインおよびアンフェタミンで調節される転写産物;MCH、メラニン凝集ホルモン;Ucn、ウロコルチン;NT、ニューロテンシン;Gal、ガラニン;Orx、オレキシン;DAT、ドーパミン輸送体;CRFR、コルチコトロピン放出因子受容体;proGlu、プログルカゴン;GHRH、成長ホルモン放出ホルモン;GnRH、ゴナドトロピン放出ホルモン;GnRHR、ゴナドトロピン放出ホルモン受容体;CRF、コルチコトロピン放出因子;TRH、甲状腺放出ホルモン;AVP、アルギニンバソプレッシン;OXY、オキシトシン;Arom、アロマターゼ;TPH、トリプトファンヒドロキシラーゼ;TH、チロシンヒドロキシラーゼ;TenM-1(New-1も);TenM-2、(New-2も);TenM-3(New-3も);およびTenM-4(New-4も)、テネウリン1〜4;GHS-R、成長ホルモンセクラトーグ(secratogue)受容体;Lep、レプチン;SOM、ソマトスタチン;NTR、ニューロテンシン受容体;MC3R、メラノコルチン受容体3;MC4R、メラノコルチン受容体4;NPY-Y1、NPY受容体Y1;NPY-Y2、NPY受容体Y2;CRLR、カルシトニン受容体様受容体;nd、行っていない;na、行っていない;w、弱い発現
【0256】
(表2)16時間におけるTCAP-1によって調節される遺伝子
発現レベルの変化は、同じ16時間の時点での未処理の対照細胞と比較して示した。値>1.5倍または<0.70倍を有意であるとみなした。
【0257】
本明細書において参照した参考文献の全引用
【図面の簡単な説明】
【0258】
本発明を、以下図面に関して記載する。
【図1】ニジマステネウリン3遺伝子[配列番号:2]の推定上の3'エキソンをイントロン領域[配列番号:1]と共に示す(1490bp)。ヒトTen M1遺伝子との配列比較によって確立したエキソン/イントロンの境界をゲノムデータベースに示してある(LocusLink ID#;10178)。イントロン配置は、その後にPCRによって確認した。エキソンは、タンパク質のカルボキシ末端の251残基をコードする(配列番号:3)。切断シグナルは、太字にした灰色の領域に示される。末端のGKRモチーフは、通常翻訳後アミド化シグナルを示す。テネウリンC末端関連ペプチド(TCAP)は、アミノ酸208〜248位の間に含まれる配列[配列番号:13および14]によって示される。
【図2】遺伝子の末端エキソンによってコードされるアミノ酸配列(ニジマス(O.mykiss)(配列番号:3)、ゼブラフィッシュ(R.danio)(配列番号:12)、マウス(M.musculus)(配列番号:6)、およびヒト(H.sapiens)(配列番号:10))のアラインメントを示す。全体において、58位にさらなるセリンの挿入を有する。全体では、マスとゼブラフィッシュの間で約94%、ニジマスとマウスの間で83%、およびニジマスとヒトの間で83%の高い配列類似性を示す。TCAP部分自体では、ニジマス(配列番号:13または14)は、ゼブラフィッシュ(配列番号:21または22)と90%の配列同一性、マウス(配列番号:53または54)と90%、およびヒト(配列番号:85または86)と88%の配列同一性を有する。アミド化シグナルを含むプレTCAP配列は、配列番号:15〜16(ニジマス)、23〜24(ゼブラフィッシュ)、55〜56(マウス)、および87〜88(ヒト)である。
【図3】マウステネウリン1、2、3、および4の遺伝子の末端エキソンによってコードされるアミノ酸配列のアラインメントを示す(配列番号:4、5、6、7)。最も高いレベルの配列類似は、タンパク質のTCAP部分をコードする配列に存在する。TCAP-1(配列番号:37または38)は、TCAP-2(配列番号:45または46)と68%同一、TCAP-3(配列番号:53または54)と76%同一、およびTCAP-4(配列番号:61または62)と85%同一である。TCAP-2は、TCAP-3と75%同一、TCAP-4と68%同一である。TCAP-3は、TCAP-4と71%の同一性を有する。テネウリン3は、TCAP-3のアミノ末端で、二塩基性の切断部位を有するが、1、2および4は全て一塩基部位を有し、切断されたペプチドがTCAP-3では40残基であるが、TCAP-1、2、および4では41残基であることを示唆する。しかし、ある態様において、41および40アミノ酸残基のTCAPは両者とも活性を有する。
【図4】ヒトテネウリン1、2、3、および4の最後のエキソンによってコードされるアミノ酸配列のアラインメントを示す(タンパク質の配列番号:8、9、10、11)。マウス配列の様に、最も高い程度の配列類似は、エキソンのTCAP部分に存在する。TCAP-3は、二塩基の離れたシグナルを所有するが、その他は一塩基部位を有する。最も大きな可変領域は、エキソンの最初の70〜80残基に存在する。TCAP部分自体では、TCAP-1(配列番号:69または70)は、TCAP-2(配列番号:77または78)と73%の同一性を有し、TCAP-3(配列番号:85または86)と83%の同一性を有し、およびTCAP-4(配列番号:93または94)と88%の同一性を有する。TCAP-2は、TCAP-3と76%の同一性を有し、TCAP-4と71%の同一性を有する。TCAP-3は、TCAP-4と76%の同一性を有する。
【図5】ヒト(配列番号:76、84、92、および100)、およびマウス(配列番号:44、52、60、および68)のプレTCAP-1〜4、ゼブラフィッシュのプレTCAP-3および4(配列番号:28および36)、並びに終止コドンを有するニジマスのプレTCAP-3(配列番号:20)のプレTCAPヌクレオチドコード配列を示してある。対応する成熟TCAPペプチドのコード領域は、末端アミド化および終止コドンをコードする配列(たとえば、それぞれの配列について示した最後の12ヌクレオチド塩基)を欠いていると思われる。示した配列は、終止コドンを有する44アミノ酸残基のプレTCAP配列をコードする。しかし、43アミノ酸のTCAPコード配列は、最初の3つのヌクレオチドが存在しないこと以外は同一である。
【図6】図6Aは、テネウリンタンパク質内の機能的ドメインの概略図である。図6Bは、ヒトテネウリン1のエキソンの概略図およびC末端エキソンの位置およびその上のTCAPの位置の分解図である。保存されたプロホルモンコンバターゼ様の切断モチーフは、灰色の四角として示してある。これは、テネウリンC末端関連ペプチドの構造並びにテネウリンのタンパク質および遺伝子上のこれらの位置を図示する。
【図7】図7Aは、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、ニジマス、ゼブラフィッシュ、およびショウジョウバエのTCAP配列(配列番号:69、78、85、94、37、46、53、66、78、101、136、13、21、30、および103)のアラインメントを示し、7Bは、哺乳類、鳥類、昆虫、および線虫のTCAP配列(図7B、配列番号:37、101(N末端のQはない)、69、61、93、53、85、13、21、77、30、および103)のアラインメントを示す。図7Bにおいて、非相同的なアミノ酸置換は、薄い灰色の陰影をつけてある。相同的な残基は、濃い灰色で陰影をつけてある。
【図8】ヒトCRFファミリーのアミノ酸配列(配列番号:104〜107)のアラインメントを、ヒトTCAPファミリーのアミノ酸配列(配列番号:70、78、85、94)と共に示す。全体的な配列同一性は、約20〜25%だけであるが、その他の置換の多くは、プロリンからセリン、ロイシン、もしくはスレオニンなどの潜在的な一塩基コドン変化、またはロイシンからバリンもしくはイソロイシン、アスパラギン酸からグルタミン酸、およびアスパラギンからグルタミンなどの保存的なアミノ酸置換を反映する。
【図9】CRFファミリー間の配列同一性を、TCAPメンバー間の同一性と比較して示す。CRFおよびU3およびU2の間の34%、CRFおよびウロコルチンの間の43%、並びにウロコルチン1および3の間の21%といったCRFファミリーと比較して、TCAPファミリーメンバーでは68%の非常に大きな配列同一性を示す。
【図10】TCAP(ニジマスTCAP-3)の二次構造の予測およびCRF様のペプチドとの比較を示す。図10Aは、グランサム極性予測であり、図10Bは、カイト-ドゥーリトル疎水性予測である。TCAPは、非常に類似した極性プロファイルを示すが、アミノ末端に高レベルで全体的な疎水性を有するように見える。
【図11】TCAPペプチドの代表的なアミノ酸配列のアラインメントを、昆虫利尿ペプチドおよびCRFスーパーファミリー(配列番号:13、22、104、107〜110)と共に示す。全てのスーパーファミリーは、アミノ末端部、中間部、およびカルボキシ末端部を含む3つの一般的な領域に分割することができる。全てのペプチドは、各々の別々の部分内に保存されたモチーフの存在によって整列化することができる。
【図12】テネウリンのマウス脳および細胞株NLT、Gn11、およびNero2aにおける発現を図示する。テネウリン1〜4に対応するPCR増幅産物は、全脳および細胞株において見出された。TenM1、2、および4は、全脳においておよびGnRHを発現する不死化ニューロン株のGn11において見出された。テネウリン2および4だけは、GnRHを発現する別の細胞NLTにおいて見出されたが、しかし、4つの形態の全てが、Neuro2a神経芽細胞腫細胞株において見出された。上部のバンドは、テネウリン転写産物の陽性シグナルを示す。下部のバンドは、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)の陽性シグナルを示し、RNAの存続度を示す。100bpのDNAラダーを全てのPCRゲルの左に示してある。
【図13】48時間(図13A)における、および72時間(図13B)における、10-6MのTCAP(ニジマスTCAP-3)によるGn11ニューロン細胞の細胞増殖の阻害を図示する棒グラフである。
【図14】TGR1(野生型)線維芽細胞細胞の細胞増殖の阻害を図示する棒グラフである。
【図15】48時間における、10-6MのTCAP(ニジマスTCAP-3)によるHO16(c-mycを構成的に発現した細胞)(14B)の細胞増殖の阻害を図示する棒グラフである。
【図16】rtTCAP-3(ニジマスTCAP-3)によるGn11細胞のcAMP(16A)およびcGMP(16B)の蓄積の阻害を図示する棒グラフである。A.10-6MのTCAPは、媒体処理した細胞と比較して、有意な(p<0.01)cAMP濃度の減少を誘導した。反復:媒体(n=10);ウロコルチン(n=8);TCAP(n=11)。B.10-6MのTCAPは、Gn11細胞におけるcGMP蓄積の有意な(p<0.01)減少を誘導した。同じ濃度のラットウロコルチンも、cGMP濃度の有意な(p<0.05)減少を誘導した。各々の処理群について、3回繰り返して使用した。有意差は、ダネットの事後検定により一元分散分析法を使用して評価した。演繹的な有意水準は、p=0.05で確立した。オリジナルデータを転換して、媒体処理した細胞と比較したパーセント濃度を示した。
【図17】Gn11細胞におけるTCAP(ニジマスTCAP-3)のcAMP調節を図示する。17Aは、10-8MのTCAPまたはウロコルチンで30分にわたって処理したGn11細胞におけるcAMPレベルを図示する。17Bは、10-4Mの3-イソブチル-1メチルキサンチン(IBMX)、10-8MのTCAPまたはウロコルチンの処理によって誘導されるcAMPをブーストするために使用するホスホジエステラーゼ阻害剤の存在下における、Gn11細胞のcAMPレベルを図示する。17Cは、IBMXの存在下における、種々の濃度のTCAPまたはウロコルチンの投与による、Gn11細胞での30分にわたるcAMP蓄積を図示する棒グラフである。17Dは、10-6Mのフォルスコリンで刺激されるcAMPの、10-8MのTCAPまたはウロコルチンによる阻害を図示する棒グラフである。
【図18】図18Aおよび18Bは、自己報酬行動の投与に対するTCAP(ニジマスTCAP-3)の効果を図示する直線グラフである。行動は、心地よい刺激(25〜100Hz)の範囲以上で30秒あたりのバーを押す回数によって示した。図18A:ベースライン、TCAPペプチド(0.001mg/mlの1.Oμl、左)、注射後(約90分)、850μA。図18B:ベースライン、TCAPペプチド(0.001mg/mlの1.Oμl、右)、注射後(約60分)、550μA。100nMのTCAPでは、神経インパルスによる自己投与報酬に対するラット欲望が有意に減少した。
【図19】図19Aは、TCAP調節の模式的細胞モデルである。A.低酸素もしくはpH変化などの生理学的な条件の形態ストレス、または不安原性リガンドにより、細胞の代謝活性化がトリガーされる。B.これによって、テネウリンタンパク質およびその切断酵素の上方制御が生じる。C.酵素は、テネウリンからTCAPを解放し、そこでは、これが自己分泌およびパラ分泌の様式で作用し、Gタンパク質結合受容体を介したcAMPおよびcGMPの産生を阻害する。
【図20】実施例9で述べたように、ラット脳核におけるTCAP-1 mRNAの分布を図示する。
【図21】本明細書の実施例10に説明したように、(A)媒体処理したICV注射ラット、(B)TCAP-1のICV注射ラット、における慢性的なヒトTCAP-1応答を図示する棒グラフである。
【図22】実施例10の全ての動物における平均ベースライン驚愕反応を図示するグラフである。図22Aは、TCAP注射の1日後の平均驚愕反応であり、図22Bは、慢性的なTCAP研究の終了後の平均驚愕であり、図22Cは、TCAP-1による平均驚愕反応である。
【図23】本明細書の実施例11において論議したように、高度および低度の不安反応動物両者に対して種々の用量のTCAP-1を処理した、相互作用バー・プロットである。
【図24】本明細書の実施例11において論議したように、ラットの驚愕反応に対する扁桃体に注射したTCAP-1の効果をプロットした。
【図25】不死化ニューロンのTCAPの活性を図示する。(A)Gn11細胞におけるcAMP蓄積。1nMのTCAPは、cAMPを増加させた(p<0.05)が、100nmのTCAPはcAMPを減少させた(p<0.05)。中間の濃度(10nM)では無効であった。(B)cAMP蓄積に対するCRF-R1アンタゴニストの作用。1nMのマウスTCAP-1、またはマウスウロコルチンは、Gn11細胞のcAMP蓄積を増加させた。CRF R1受容体アンタゴニストのPD171729は、これらの細胞に対するウロコルチンの作用を消失させた(p<0.01)が、しかしTCAPを介したcAMP蓄積に対しては効果を有さなかった。(C)タンパク質アッセイ法。1〜100nMの濃度のTCAPは、Gn11細胞におけるタンパク質合成を刺激した。(D)MTTアッセイ法。1nMのマウスTCAP-1は、48時間後のGn11細胞におけるMTT活性を増大させた(p<0.05)。対照的に、100nMのマウスTCAP-1は、同じ時間におけるMTT活性を減少させた(p<0.05)。(E)DNA含量解析。マウスTCAP-1では、1nMの最も低い濃度でG1期の発生率が減少したが、100nMの最も高い用量では、G1期の細胞の数が増大した。有意水準は、A、B、およびEについて一元分散分析を使用して決定し、並びにCおよびDについて二元分散分析を使用して決定した。
【図26】TCAP(ニジマスTCAP-3)ペプチド刺激に対する、マウス視床下部の不死化細胞株の機能的なcAMP反応を図示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる、テネウリンC末端関連ペプチドをコードする単離された核酸分子:
(a)配列番号:18〜20、25〜28、33〜36、41〜44、49〜52、57〜60、65〜68、73〜76、81〜84、89〜92、97〜100に示される核酸配列、またはTがUであってもよいその核酸配列、または、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチド、もしくは該ペプチドのカルボキシ末端にアミド化シグナル配列をさらに有するペプチド、もしくは配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96を有するペプチドをコードする核酸配列;
(b)核酸配列(a)に相補的な核酸配列;
(c)核酸配列(a)または(b)に実質的な配列相同性を有する核酸配列;
(d)核酸配列(a)、(b)、または(c)の類似体である核酸配列;あるいは
(e)核酸配列(a)、(b)、(c)、または(d)に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列。
【請求項2】
アミド化シグナル配列がGKRまたはGRRである、請求項1記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
配列が、配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96からなる配列群より選択される、請求項2記載の核酸分子。
【請求項4】
ニューロンの連絡活性および/またはストレス調整活性および/または細胞増殖阻害活性を有する、TCAPペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項7】
請求項6記載の発現ベクターによって形質転換された宿主細胞。
【請求項8】
配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103に示されるアミノ酸配列を有する単離されたテネウリンC末端関連ペプチド、またはその断片、類似体、相同体、誘導体、もしくは模倣体、またはその生物学的に活性な断片。
【請求項9】
カルボキシ末端にアミド化シグナル配列をさらに含む、請求項8記載の単離されたテネウリンC末端関連ペプチド。
【請求項10】
不安原性活性を有する、請求項8または9記載のテネウリンC末端関連ペプチド。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項記載のペプチドに結合することができる抗体。
【請求項12】
以下の工程を含む、テネウリンC末端関連ペプチドと結合することができる物質を同定する方法:
(a)テネウリンC末端関連ペプチドと試験物質との間で複合体の形成が可能な条件下で、テネウリンC末端関連ペプチドおよび試験物質をインキュベートする工程;並びに
(b)複合体の存在によって、または遊離の物質もしくは複合体化していないテネウリンC末端関連ペプチドのレベルがその開始レベルと比較して減少していることによって、試験物質がテネウリンC末端関連ペプチドに結合できることが示される、テネウリンC末端関連ペプチドと試験物質の複合体について、遊離の物質について、または複合体化されていないテネウリンC末端関連ペプチドについてアッセイする工程。
【請求項13】
以下の工程を含む、テネウリンC末端関連ペプチドの活性または発現に影響を及ぼす化合物を同定するための方法:
(a)テネウリンC末端関連ペプチドまたはテネウリンC末端関連ペプチドをコードする核酸と試験化合物とをインキュベートする工程;および
(b)対照と比較したTCAPペプチドの活性または発現の変化によって、試験化合物がTCAPペプチドの活性または発現に対して効果を有することが示される、テネウリンC末端関連ペプチドタンパク質の活性または発現の量を決定し、対照と比較する工程。
【請求項14】
工程(a)において、ペプチドと基質との相互作用が可能な条件下で、試験化合物を、テネウリンC末端関連ペプチドおよびテネウリンC末端関連ペプチドの基質と共にインキュベートし、工程(b)において、基質のペプチド活性を決定する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
工程(a)において、テネウリンC末端関連ペプチドが活性な条件下で、テネウリンC末端関連ペプチドを発現するおよび活性のある細胞を、試験化合物と共にインキュベートし、工程(b)において、テネウリンC末端関連ペプチドの活性を決定する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
テネウリンC末端関連ペプチドの活性を、試験化合物とのインキュベーションの前後におけるcAMPおよびcGMPのレベルを検出することによって、または対照と比較して決定し、ベースラインまたは対照レベルと比較したcAMPまたはcGMPのレベルの大きさの変化によって、試験化合物がテネウリンC末端関連ペプチドの活性のモジュレーターであることが示される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
試験化合物の存在下、cAMPまたはcGMPの減少がTCAP活性の対照もしくはベースラインのレベルよりも少ないか、または対照もしくはベースラインのレベルよりも大きいことによって、試験化合物がテネウリンC末端関連ペプチドの活性の阻害剤であることが示される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
以下の工程を含む、ニューロン増殖の調節に影響を及ぼす化合物を同定する方法:
(a)テネウリンC末端関連ペプチドまたはテネウリンC末端関連ペプチドをコードする核酸と共に試験化合物をインキュベートする工程;および
(b)対照と比較したTCAPペプチド活性または発現の変化によって、試験化合物がニューロン増殖の調節に対して効果を有することが示される、テネウリンC末端関連ペプチドタンパク質の活性または発現の量を決定し、対照と比較する工程。
【請求項19】
細胞増殖を阻害するテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を細胞に投与する工程を含む、細胞増殖を阻害する方法。
【請求項20】
細胞がニューロンまたは線維芽細胞からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
(a)テネウリンC末端関連ペプチドもしくはその断片をコードする核酸分子、または、(b)テネウリンC末端関連ペプチドもしくはその断片について試料をアッセイする工程を含む、ニューロン増殖の調節異常に関連する症状を検出する方法。
【請求項22】
それを必要とする細胞または動物に、テネウリンC末端関連ペプチドまたはテネウリンC末端関連ペプチドの発現および/もしくは活性を調整する薬剤の有効量を投与する工程を含む、ニューロン増殖の調節異常に関連した症状を治療する方法。
【請求項23】
薬剤が以下からなる群より選択される、請求項22記載の方法:テネウリンC末端関連ペプチドをコードする核酸分子;テネウリンC末端関連ペプチド、並びにその断片、類似体、誘導体、または相同体;抗体;アンチセンス核酸;ペプチド模倣体;および請求項12〜20記載のスクリーニング方法を使用して単離された物質。
【請求項24】
対象にテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を投与して不安原性反応を誘導する工程を含む、対象の不安原性反応を誘導する方法。
【請求項25】
対象にテネウリンC末端関連ペプチドの阻害剤の有効量を投与して不安原性反応を阻害する工程を含む、対象の不安原性反応を阻害する方法。
【請求項26】
請求項13〜18のいずれか一項記載の方法に従って阻害剤を同定する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
生理的ストレスから細胞を保護するテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を細胞に投与する工程を含む、生理的ストレスによって引き起こされる損傷を阻止する方法。
【請求項28】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、動物のストレス応答を調整する方法。
【請求項29】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、動物の不安反応を調整する方法。
【請求項30】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、低不安動物の不安を増加させる方法。
【請求項31】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、高不安動物の不安を減少させる方法。
【請求項32】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、動物の不安反応を正常化する方法。
【請求項33】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、動物の癌を治療する方法。
【請求項34】
TCAPおよび薬学的に許容される媒体を含む薬学的組成物。
【請求項1】
以下からなる、テネウリンC末端関連ペプチドをコードする単離された核酸分子:
(a)配列番号:18〜20、25〜28、33〜36、41〜44、49〜52、57〜60、65〜68、73〜76、81〜84、89〜92、97〜100に示される核酸配列、またはTがUであってもよいその核酸配列、または、配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチド、もしくは該ペプチドのカルボキシ末端にアミド化シグナル配列をさらに有するペプチド、もしくは配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96を有するペプチドをコードする核酸配列;
(b)核酸配列(a)に相補的な核酸配列;
(c)核酸配列(a)または(b)に実質的な配列相同性を有する核酸配列;
(d)核酸配列(a)、(b)、または(c)の類似体である核酸配列;あるいは
(e)核酸配列(a)、(b)、(c)、または(d)に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列。
【請求項2】
アミド化シグナル配列がGKRまたはGRRである、請求項1記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
配列が、配列番号:15、16、23、24、31、32、39、40、47、48、55、56、63、64、71、72、79、80、97、88、95、96からなる配列群より選択される、請求項2記載の核酸分子。
【請求項4】
ニューロンの連絡活性および/またはストレス調整活性および/または細胞増殖阻害活性を有する、TCAPペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項7】
請求項6記載の発現ベクターによって形質転換された宿主細胞。
【請求項8】
配列番号:13、14、21、22、29、30、37、38、45、46、53、54、61、62、69、70、77、78、85、86、93、94、101、103に示されるアミノ酸配列を有する単離されたテネウリンC末端関連ペプチド、またはその断片、類似体、相同体、誘導体、もしくは模倣体、またはその生物学的に活性な断片。
【請求項9】
カルボキシ末端にアミド化シグナル配列をさらに含む、請求項8記載の単離されたテネウリンC末端関連ペプチド。
【請求項10】
不安原性活性を有する、請求項8または9記載のテネウリンC末端関連ペプチド。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項記載のペプチドに結合することができる抗体。
【請求項12】
以下の工程を含む、テネウリンC末端関連ペプチドと結合することができる物質を同定する方法:
(a)テネウリンC末端関連ペプチドと試験物質との間で複合体の形成が可能な条件下で、テネウリンC末端関連ペプチドおよび試験物質をインキュベートする工程;並びに
(b)複合体の存在によって、または遊離の物質もしくは複合体化していないテネウリンC末端関連ペプチドのレベルがその開始レベルと比較して減少していることによって、試験物質がテネウリンC末端関連ペプチドに結合できることが示される、テネウリンC末端関連ペプチドと試験物質の複合体について、遊離の物質について、または複合体化されていないテネウリンC末端関連ペプチドについてアッセイする工程。
【請求項13】
以下の工程を含む、テネウリンC末端関連ペプチドの活性または発現に影響を及ぼす化合物を同定するための方法:
(a)テネウリンC末端関連ペプチドまたはテネウリンC末端関連ペプチドをコードする核酸と試験化合物とをインキュベートする工程;および
(b)対照と比較したTCAPペプチドの活性または発現の変化によって、試験化合物がTCAPペプチドの活性または発現に対して効果を有することが示される、テネウリンC末端関連ペプチドタンパク質の活性または発現の量を決定し、対照と比較する工程。
【請求項14】
工程(a)において、ペプチドと基質との相互作用が可能な条件下で、試験化合物を、テネウリンC末端関連ペプチドおよびテネウリンC末端関連ペプチドの基質と共にインキュベートし、工程(b)において、基質のペプチド活性を決定する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
工程(a)において、テネウリンC末端関連ペプチドが活性な条件下で、テネウリンC末端関連ペプチドを発現するおよび活性のある細胞を、試験化合物と共にインキュベートし、工程(b)において、テネウリンC末端関連ペプチドの活性を決定する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
テネウリンC末端関連ペプチドの活性を、試験化合物とのインキュベーションの前後におけるcAMPおよびcGMPのレベルを検出することによって、または対照と比較して決定し、ベースラインまたは対照レベルと比較したcAMPまたはcGMPのレベルの大きさの変化によって、試験化合物がテネウリンC末端関連ペプチドの活性のモジュレーターであることが示される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
試験化合物の存在下、cAMPまたはcGMPの減少がTCAP活性の対照もしくはベースラインのレベルよりも少ないか、または対照もしくはベースラインのレベルよりも大きいことによって、試験化合物がテネウリンC末端関連ペプチドの活性の阻害剤であることが示される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
以下の工程を含む、ニューロン増殖の調節に影響を及ぼす化合物を同定する方法:
(a)テネウリンC末端関連ペプチドまたはテネウリンC末端関連ペプチドをコードする核酸と共に試験化合物をインキュベートする工程;および
(b)対照と比較したTCAPペプチド活性または発現の変化によって、試験化合物がニューロン増殖の調節に対して効果を有することが示される、テネウリンC末端関連ペプチドタンパク質の活性または発現の量を決定し、対照と比較する工程。
【請求項19】
細胞増殖を阻害するテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を細胞に投与する工程を含む、細胞増殖を阻害する方法。
【請求項20】
細胞がニューロンまたは線維芽細胞からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
(a)テネウリンC末端関連ペプチドもしくはその断片をコードする核酸分子、または、(b)テネウリンC末端関連ペプチドもしくはその断片について試料をアッセイする工程を含む、ニューロン増殖の調節異常に関連する症状を検出する方法。
【請求項22】
それを必要とする細胞または動物に、テネウリンC末端関連ペプチドまたはテネウリンC末端関連ペプチドの発現および/もしくは活性を調整する薬剤の有効量を投与する工程を含む、ニューロン増殖の調節異常に関連した症状を治療する方法。
【請求項23】
薬剤が以下からなる群より選択される、請求項22記載の方法:テネウリンC末端関連ペプチドをコードする核酸分子;テネウリンC末端関連ペプチド、並びにその断片、類似体、誘導体、または相同体;抗体;アンチセンス核酸;ペプチド模倣体;および請求項12〜20記載のスクリーニング方法を使用して単離された物質。
【請求項24】
対象にテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を投与して不安原性反応を誘導する工程を含む、対象の不安原性反応を誘導する方法。
【請求項25】
対象にテネウリンC末端関連ペプチドの阻害剤の有効量を投与して不安原性反応を阻害する工程を含む、対象の不安原性反応を阻害する方法。
【請求項26】
請求項13〜18のいずれか一項記載の方法に従って阻害剤を同定する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
生理的ストレスから細胞を保護するテネウリンC末端関連ペプチドの有効量を細胞に投与する工程を含む、生理的ストレスによって引き起こされる損傷を阻止する方法。
【請求項28】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、動物のストレス応答を調整する方法。
【請求項29】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、動物の不安反応を調整する方法。
【請求項30】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、低不安動物の不安を増加させる方法。
【請求項31】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、高不安動物の不安を減少させる方法。
【請求項32】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、動物の不安反応を正常化する方法。
【請求項33】
動物にTCAPの有効量を投与する工程を含む、動物の癌を治療する方法。
【請求項34】
TCAPおよび薬学的に許容される媒体を含む薬学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2006−511194(P2006−511194A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−501444(P2004−501444)
【出願日】平成15年5月2日(2003.5.2)
【国際出願番号】PCT/CA2003/000622
【国際公開番号】WO2003/093305
【国際公開日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【出願人】(504407538)
【出願人】(504407572)
【出願人】(504407550)
【出願人】(504407527)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年5月2日(2003.5.2)
【国際出願番号】PCT/CA2003/000622
【国際公開番号】WO2003/093305
【国際公開日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【出願人】(504407538)
【出願人】(504407572)
【出願人】(504407550)
【出願人】(504407527)
【Fターム(参考)】
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