説明

テルミサルタンとアムロジピンを含む二層錠剤

二層錠剤は、溶解性錠剤マトリックスからアンギオテンシンII受容体拮抗薬テルミサルタンが即放するように調合された第1層と崩壊性又は浸食性錠剤マトリックスからカルシウムチャンネル遮断薬アムロジピンが即放するように処方された第2層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解性錠剤マトリックス中にアンギオテンシンII受容体拮抗薬テルミサルタンを有する第1層と崩壊性又は浸食性錠剤マトリックス中にカルシウムチャンネル遮断薬アムロジピンを有する第2層を含む医薬錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テルミサルタンは、欧州特許出願第502314号に開示されるように、高血圧症及び他の医学的な適応症の治療に開発されたアンギオテンシンII受容体拮抗薬である。その化学名は、次の構造を有する4'-[2-n-プロピル-4-メチル-6-(1-メチルベンズイミダゾール-2-イル)ベンズイミダゾール-1-イルメチル]ビフェニル-2-カルボン酸である。
【0003】
【化1】

【0004】
テルミサルタンは、遊離酸の形で製造され供給される。pH1〜7の胃腸管の生理的pH範囲の水性系における難溶性を特徴とする。国際出願公開第00/43370号に開示される結晶性テルミサルタンは、融点が異なる2つの多形相で存在している。加熱と湿度の影響によって、より低い融点の多形Bはより高い融点の多形Aに不可逆的に変換する。
アムロジピンは、最初に欧州特許出願第89167号に開示された。これはカルシウムチャンネル遮断薬のグループに属し、化学名は3-エチル-5-メチル-2-(2-アミノエトキシメチル)-4-(2-クロロフェニル)-1,4-ジヒドロ-6-メチル-3,5-ピリジンジカルボキシレート、C20H25ClN2O5、MR 408,88であり、次の構造を有する。
【0005】
【化2】

【0006】
医薬的にアムロジピンは、マレイン酸(C24H29ClN2O9; MR 524,96)、ベンゼンスルホン酸又はベシル酸(C26H31ClN2O8S; MR 567,10; 欧州特許出願第244944号)及びメシル酸(C21H26ClN2O8S; MR 502,01)の塩として用いられる。
“カルシウムチャンネル遮断薬”は、“カルシウム拮抗薬”又は“カルシウムブロッカー”とも呼ばれている。これらは、心臓のポンピング強度を低下させ、血管を緩和する薬剤である。これらは、高血圧、狭心症(心筋への血液供給減少によって引き起こされる胸部痛又は不快感)、ある不整脈を治療するために用いられる。
【0007】
本発明の目的
テルミサルタンとアムロジピンの作用機序は、特に標的血圧が薬剤の1つだけで達成することができない患者における高血圧症治療において有利に協同するとみなされる。有効成分テルミサルタンとアムロジピンを含む多剤混合薬製剤がますます求められている。しかしながら、テルミサルタンとアムロジピンは共に、取り扱いが難しい化学化合物である。それ故、薬理学的効力、十分な薬剤安定性及び信頼性が高く強力な製造方法の特徴を合わせる経口多剤混合薬剤形は多くの技術的問題を克服しなければならない。本発明の目的は、このような多剤混合薬剤形を提供することである。
【0008】
種々の形の多剤混合薬剤形が考えられるが、これらのどの剤形が、製品安定性、薬理学的効力及び信頼性ある製造を最もよく併せ持っているかを予想することはできない。一般に、2つの活性薬剤成分の混合薬は、経口固体剤形又は経口液体剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、被覆錠剤又は糖衣錠、顆粒剤、経口液剤、乳剤又は懸濁液剤、シロップ剤、ロゼンジ剤として製剤化することができる。テルミサルタンの液体剤形に関する経験からみて、経口液体剤形は、本発明による好ましい実施態様とみなされない。2つの薬剤を含有する即放性経口固体剤形は、2つ有効成分と必要な賦形剤との粉末混合物か又は共造粒物をつくることによって調製することができる。しかしながら、テルミサルタンとアムロジピンの併用の場合、この方法は充分な製品安定性を有する剤形にならないことがわかる。許容しうる生体内性能を有するテルミサルタン製剤は、例えば、水酸化ナトリウム又はメグルミンなどの塩基性成分を含まなければならないが、アムロジピンは、驚くべきことに、テルミサルタン製剤に用いられる賦形剤と直接接触した場合に十分に安定でない。アムロジピン分子のエステル結合は、アルカリ環境にさらされた場合に加水分解しやすいと思われる。それ故、活性成分と必要な賦形剤とを直接混合する標準方法を、テルミサルタンとアムロジピンの多剤混合薬に当てはめることができず、アムロジピン薬剤物質から塩基性テルミサルタン製剤を分けるためにより精巧な技術が必要である。これらの状況下で、パーロンゲット(perlonget)技術、コーティング錠剤技術又は二層錠剤技術を用いることが可能である。
【0009】
パーロンゲット方法は、テルミサルタンとアムロジピンの別々のフィルムコーティング錠剤をこれらをカプセルに充填し得るサイズと形状で作成するものである。結果として患者の服薬遵守に関して好ましくない0サイズ以上の大きなカプセルサイズが多量の併用剤に必要とされることになる。
他の方法は、フィルムコートを純粋なアムロジピン薬剤物質に又はアムロジピンを含有する顆粒/ペレットに適用することである。驚くべきことに、そのように被覆された粒子は、テルミサルタン製剤のアルカリ性で吸湿性の環境において安定でない。
本発明は、十分な薬剤安定性、双方の有効成分の最適薬剤放出、薬理学的効力及び最良のテルミサルタンとアムロジピンの併用の信頼できる製造を合わせている剤形が二層錠剤である認識に基づく。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、テルミサルタンとアムロジピンを含む多剤混合薬の調製と関連している問題は、溶解性錠剤マトリックス中に好ましくは実質的にアモルファスな形態のテルミサルタンを有する第1層と、崩壊性又は浸食性錠剤マトリックス中にアムロジピンを有する第2層を含む二層医薬錠剤によって最良に取り扱うことができる。
本発明による錠剤は、難水溶性テルミサルタンが著しくpH非依存的に溶解し、それによって、生理的pHレベルでの薬剤の溶解、及びアムロジピンの十分な安定性及び薬剤放出が容易になる。錠剤構造は、また、アムロジピンとテルミサルタン製剤の塩基性成分との不適合性によって引き起こされる安定性の問題を克服する。
【0011】
定義
本明細書に用いられる“実質的にアモルファスな”という用語は、X線粉末回折計測によって定量された場合、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の割合でアモルファス成分を含む製品を意味する。
“溶解性錠剤マトリックス”という用語は、生理的水性媒体に容易に溶解する即放性(高速溶解)特性を有する医薬錠剤ベース製剤を意味する。
“崩壊性又は浸食性錠剤マトリックス”という用語は、生理的水性媒体に容易に崩壊又は浸食する即放性特性を有する医薬錠剤ベース製剤を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による多剤混合薬は、実質的にアモルファスな形態にあるテルミサルタンを有する第1層と崩壊性又は浸食性錠剤マトリックス中にアムロジピンを有する第2層を含む医薬二層錠剤である。
有効成分テルミサルタンは、一般的には遊離酸の形で供給されるが、ナトリウム塩などの薬学的に許容しうる塩も用いることができる。続く処理の間に、テルミサルタンは通常は溶解され実質的にアモルファスな形態に変換されるので、初期の結晶形態と粒径は、得られる二層錠剤製剤の物理的特性と生物薬剤特性にはほとんど重要でない。しかしながら、後続の処理の間に、湿潤と溶解を容易にするために、例えば、篩過によって、出発物質から集塊を除去することが好ましい。
実質的にアモルファスなテルミサルタンは、当業者に既知のあらゆる適切な方法によって、例えば、水溶液の凍結乾燥、流動床におけるキャリア粒子のコーティング、及び糖ペレット又は他の担体上の溶媒堆積によって、製造することができる。しかしながら、好ましくは、実質的にアモルファスなテルミサルタンは、国際出願公開第03/059327号に記載される特定の噴霧乾燥法によって調製される。
【0013】
本発明による二層錠剤は、一般的には10〜160mg、好ましくは20〜80mg又は40〜80mgのテルミサルタンと1〜20mg、好ましくは2.5〜10mgのアムロジピンを含有する。
テルミサルタンの好ましい投与力価は、20mg、40mg、80mgであり、アムロジピンの好ましい投与力価は、2.5mg、5mg、10mgである。
現在好ましい形態は、それぞれ20/10mg、40/10mg、80/10mg、20/5mg、40/5mg、80/5mg、20/2.5mg、40/2.5mg、80/2.5mgのテルミサルタンとアムロジピンを含む二層錠剤である。
【0014】
第1錠剤層は、即放性(高速溶解)特性を有する溶解性錠剤マトリックス中に分散された実質的にアモルファスな形態でテルミサルタンを含有する。
溶解性錠剤マトリックスは、中性又は塩基性の特性を有してもよいが、塩基性錠剤マトリックスが好ましい。
このような好ましい実施態様においては、テルミサルタン層の溶解性マトリックスは、塩基性物質、水溶性希釈剤及び、任意に、他の賦形剤及び補助剤を含む。
適切な塩基性物質の個々の例は、アルカリ金属水酸化物、例えば、NaOH、KOH; 塩基性アミノ酸、例えば、アルギニン、リジン; メグルミン(Nメチル-D-グルカミン)であり、NaOHとメグルミンが好ましい。
適切な水溶性希釈剤の個々の例は、炭水化物、グルコースなどの単糖類; スクロース、無水ラクトース、ラクトース一水和物などのオリゴ糖; ソルビトール、マンニトール、エリトロール及びキシリトールなどの糖アルコールである。ソルビトールは、好ましい希釈剤である。
その他の賦形剤及び/又は補助剤は、例えば、結合剤、担体、充填剤、潤滑剤、流動調整剤、結晶化抑制剤、可溶化剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤及び乳化剤より選ばれ、それらの第2錠剤層組成物に関連して以下に示される具体的な例である。第1錠剤層組成物のための賦形剤及び/又は補助剤は、好ましくは非酸性の高速溶解性錠剤マトリックスが得られるように選ばれる。
【0015】
第1錠剤層組成物は、一般的には、3〜50重量%、好ましくは5〜35重量%の有効成分; 0.25〜20重量%、好ましくは0.40〜15重量%の塩基性物質; 及び30〜95重量%、好ましくは60〜80重量%の水溶性希釈剤(充填剤)を含む。他の(任意)成分は、例えば、次の賦形剤及び/又は補助剤の1つ以上より指定された量で選ばれてもよい。
10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%の結合剤、担体及び充填剤、それにより、水溶性希釈剤が取り替えられる;
0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%の潤滑剤;
0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2重量%の流動調整剤;
1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の結晶化抑制剤;
1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の可溶化剤;
0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜0.8重量%の着色剤;
0.5〜10重量%、好ましくは2〜8重量%のpH調整剤;
0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%の界面活性剤及び乳化剤。
【0016】
第2錠剤層組成物は、即放性(高速溶解)特性を有する崩壊性又は浸食性錠剤マトリックス中に分散されたアムロジピンを含む。崩壊性又は浸食性錠剤マトリックスは、弱酸性、中性又は弱塩基性の特性を有してもよく、中性錠剤マトリックスが好ましい。
好ましい実施態様においては、崩壊性又は浸食性マトリックスは、1以上の充填剤、崩壊剤、滑沢剤及び、任意に、流動調整剤、結合剤又はポリマー、他の賦形剤及び補助剤を含む。
第2層のための好ましい充填剤は、アルファー化デンプン、ミクロクリスタリンセルロース、セルロース、マンニトール、エリスリトール、ラクトース一水和物、二塩基性リン酸カルシウム無水物、ソルビトール、及びキシリトールからなる群より選ばれる。アルファー化デンプン、ミクロクリスタリンセルロース、二塩基性リン酸カルシウム無水物及びラクトース一水和物が特に好ましい。
好ましい滑沢剤は、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムである。ステアリン酸マグネシウムが特に好ましい。
好ましい崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム(架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、コーンスターチ、アルファー化デンプン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース及びミクロクリスタリンセルロースからなる群より選ばれる。デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンが特に好ましい。
好ましい結合剤は、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドンと他のビニル誘導体(コポビドン)とのコポリマー、ミクロクリスタリンセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びアルファー化デンプンからなる群より選ばれる。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドンが特に好ましい。
第2錠剤層組成物の特に好ましい充填剤は、これらの充填剤は更に結合剤又は崩壊剤の目的にもかなうことができるのでアルファー化デンプン及び/又はミクロクリスタリンセルロースである。
好ましい流動調整剤は、コロイド二酸化ケイ素、タルクである。コロイド二酸化ケイ素が特に好ましい。
その他の賦形剤及び補助剤は、用いられる場合には、例えば、染料、酸化鉄などの顔料を含む着色剤である。
【0017】
第2錠剤層組成物は、一般的には0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%のアムロジピン及び50〜99.5重量%、好ましくは80〜99重量%の充填剤を含む。
その他の賦形剤及び/又は補助剤は、例えば、結合剤(0〜7重量%、好ましくは1〜5重量%)、崩壊剤(0〜10重量%、好ましくは1〜5重量%)、滑沢剤(0.25〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%)、流動調整剤(0.25〜3 重量%、好ましくは0.5〜2重量%)及び着色剤(0.05〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%)より選ばれ、それらの個々の例は以下に示される。第2錠剤層組成物のための賦形剤及び/又は補助剤は、好ましくは、中性の崩壊性又は浸食性錠剤マトリックスが得られるように選ばれる。
揮発性成分として、最終製品に残らない造粒液体の溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又は精製水を用いることができ; 好ましい溶媒は、エタノール、精製水である。
層は、種々の色を用いることにより区別することができる。
【0018】
本発明による二層錠剤を調製するために、第1及び第2錠剤層組成物は、二層タブレット成形機、例えば、二層打錠方式での高速ロータリプレスにおける通常の方法で圧縮することができる。しかしながら、第1錠剤層には過剰の圧縮力を使わないことを注意しなければならない。好ましくは、第1錠剤層の圧縮中に適用される圧縮力と第1錠剤層と第2錠剤層の圧縮中に適用される圧縮力との比は1:10〜1:2の範囲である。例えば、第1錠剤層は、4〜8kNの中程度の力で圧縮するのがよく、第1層と第2層の主な圧縮は、10〜20kNの力で行われる。二層錠剤圧縮の間、2層間の十分な結合形成は、距離引力(分子間力)と粒子間の機械的インターロッキングによって達成される。
得られた二層錠剤は、迅速に、かつ著しくpH非依存的な様式において有効成分を放出し、完全な放出は60分未満に生じ、主要な部分の放出は15分未満に生じる。
本発明によれば、有効成分、特に、テルミサルタンの実質的に増大した溶解速度が達成される。薬剤荷重の少なくとも通常は70%、典型的には少なくとも90%が30分後に溶解する。
本発明の二層錠剤は、わずかに吸湿性の傾向があり、それ故、好ましくは防湿包装材料、例えば、アルミニウムホイルブリスタパック、又は好ましくは乾燥剤を含有するポリプロピレンチューブやHDPEびんを用いて包装される。
【0019】
本発明の二層錠剤を製造する好ましい方法は、
(i) a)テルミサルタン、少なくとも1つの塩基性物質及び、任意に、可溶化剤及び/又は結晶化抑制剤の水溶液を調製する段階;
b)前記水溶液を噴霧乾燥して噴霧乾燥造粒物を得る段階;
c)前記噴霧乾燥造粒物と水溶性希釈剤とを混合してプレミックスを得る段階;
d)前記プレミックスと滑沢剤とを混合して第1層のための最終のブレンドを得る段階;
e)任意に、工程a)〜d)のいずれかにおいて他の賦形剤及び/又は補助剤を添加する段階
によって第1錠剤層組成物を提供する工程;
(ii) a)-ミキサーで有効成分アムロジピン又はその薬学的に許容しうる塩、1以上の充填剤、流動調整剤及び崩壊剤及び/又は他の賦形剤をブレンドする段階;
-任意に混合物を篩によって乾式篩過して凝集性粒子を分離するとともに含量均一性を改善する段階;
-ミキサーで混合物と残りの賦形剤、例えば滑沢剤をブレンドして最終の組成物を得る段階
を含む直接圧縮プロセス;
b)-ミキサーで有効成分アムロジピン又はその薬学的に許容しうる塩、1以上の充填剤、結合剤、崩壊剤及び任意に他の賦形剤をブレンドする段階;
-造粒液体、好ましくは水を添加することによって混合物を顆粒化する段階;
-顆粒を篩によって湿式篩過してより大きい集塊を分離する段階;
-流動床乾燥機又は真空棚型乾燥機において顆粒を乾燥する段階;
-任意に顆粒を篩によって乾式篩過して凝集性粒子を分離するとともに含量均一性を改善する段階;
-ミキサーで顆粒と残りの賦形剤、例えば1以上の滑沢剤をブレンドして最終組成物を得る段階
を含む湿式造粒プロセス;
c)-ミキサーで有効成分アムロジピン又はその薬学的に許容しうる塩と1以上の充填剤、1以上の崩壊剤、1以上の結合剤、1以上の流動調整剤及び1以上の滑沢剤の一部か又は賦形剤の全てとをブレンドする段階;
-混合物を適切なローラ圧縮機により圧縮する段階;
-前の段階で得られたリボンを適切なミリング又は篩分け段階によって小さな顆粒に小さくする段階;
-任意にミキサーで顆粒と残りの賦形剤をブレンドして最終組成物を得る段階
を含む乾式造粒プロセス
によって第2錠剤層組成物を準備する工程;
(iii)適切なタブレット成形機により段階(i)と(ii)からの第1と第2の錠剤層組成物を圧縮して二層錠剤を形成する工程
を含む。
【0020】
第1錠剤層組成物を準備するために、水酸化ナトリウム及びメグルミンなどの1以上の塩基性物質の援助により有効成分を精製水に溶解することによってテルミサルタンのアルカリ性水溶液が調製される。任意に、可溶化剤及び/又は再結晶化抑制剤を添加することができる。出発水溶液の乾燥物質含量は、一般的には10〜40重量%、好ましくは20〜30重量%である。その後、その水溶液は、室温で、又は好ましくは高温で、例えば、50〜100℃で、例えば、1〜4barの噴霧圧の並流又は向流噴霧乾燥器において噴霧乾燥される。一般的に言って、噴霧乾燥条件は、≦5重量%、好ましくは≦3.5重量%の残留湿度を有する噴霧乾燥造粒物が分離サイクロンにおいて得られるような方法で選ばれることが好ましい。そのために、噴霧乾燥器の出口気温は、好ましくは約80〜90℃の値で保持され、他のプロセスパラメータ、例えば、噴霧圧力、噴霧速度、入口気温等がそれに応じて調整される。
得られた噴霧乾燥造粒物は、好ましくは次の粒径分布を有する微粉末である。
d10 :≦20μm、好ましくは≦10μm
d50 :≦80μm、好ましくは20〜55μm
d90 :≦350μm、好ましくは50〜150μm
【0021】
噴霧乾燥後、噴霧乾燥造粒物に含まれる有効成分テルミサルタンと賦形剤は、実質的にアモルファス状態にあり、結晶性は検出されない。物理的観点から、噴霧乾燥造粒物は、固化溶液又は好ましくは> 50℃、より好ましくは> 80℃のガラス転移温度Tgを有するガラスである。
100質量部の有効成分テルミサルタンに基づいて、噴霧乾燥造粒物は、好ましくは、5〜200質量部の塩基性物質及び、任意に、可溶化剤及び/又は結晶化抑制剤を含有する。
水溶性希釈剤は、第1錠剤層組成物の質量に基づいて一般的には30〜95重量%、好ましくは60〜80重量%の量で使われる。
滑沢剤は、第1錠剤層組成物の質量に基づいて一般的には0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2重量%の量でプレミックスに添加される。
混合は、2段階で行われる。即ち、第1混合工程では、噴霧乾燥造粒物と希釈剤が、例えば、高剪断ミキサ又は重力式ブレンダを用いて混合され、第2混合工程では、滑沢剤が、好ましくは高剪断条件下でプレミックスとブレンドされる。しかしながら、本発明の方法は、これらの混合手順に限られず、一般的には、工程c)、d)で、続く工程f)とg)で、例えば、中間スクリーニングを有する容器混合などの代替的混合手順を使うことができる。
【0022】
アムロジピンを含む第2錠剤層組成物を準備するために、数種の異なる製造法、例えば、直接圧縮、湿式造粒又はローラ圧縮プロセスを使用し得る。
本発明は、好ましくは、直接圧縮プロセスによってアムロジピンを有する第2錠剤層組成物を製造する方法であって、
(1)有効成分アムロジピン又はその薬学的に許容しうる塩、例えばミクロクリスタリンセルロース、二塩基性リン酸カルシウム無水物又はアルファー化デンプンなどの1以上の充填剤、デンプングリコール酸ナトリウム又はクロスポビドンなどの崩壊剤、コロイド二酸化ケイ素などの流動調整剤及び/又は他の賦形剤からなる組成物を、成分をミキサーで混合することによって製造する工程;
(2)任意に篩によって工程(1)の組成物を乾式篩過して凝集性粒子を分離するとともに含量均一性を改善する工程; 及び
(3)工程(2)の組成物と残りの賦形剤、例えば、滑沢剤ステアリン酸マグネシウムをミキサで混合する工程
を含む、前記方法に関する。
【0023】
湿式造粒法の場合にはアムロジピン又はその薬学的に許容しうる塩は適切な充填剤、例えば、ミクロクリスタリンセルロース、ラクトース一水和物又は二塩基性リン酸カルシウム無水物及び湿式結合剤、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポビドン、崩壊剤、例えば、クロスポビドン及び任意に他の適切な賦形剤と高剪断造粒機において前もって混合される。粉末の凝集は、造粒液体(例えば、精製水又はエタノール)の添加によって促進される。高剪断造粒の後、造粒物を適切な篩によって湿式スクリーニングし、続いて、流動床乾燥機又は真空棚型乾燥機を用いて乾燥する。乾燥した顆粒は、適切な篩によって任意に乾式スクリーニングされる。滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)及び/又は他の賦形剤を添加した後、混合物は、重力式ブレンダ又は高剪断ミキサでブレンドされる。
【0024】
有効成分と賦形剤の造粒液体による湿式造粒の代替的方法は、流動床造粒又はワンポット造粒である。
ローラ圧縮、又は言い換えれば乾式造粒の場合には、アムロジピン又はその薬学的に許容しうる塩と直接圧縮プロセスに用いられる賦形剤の一部の混合物又は、又は全ての賦形剤を含有する完全な混合物が、従来のローラ圧縮機で処理されてリボンを形成し、その後、顆粒までスクリーニングされ、任意に、流動促進剤、滑沢剤、抗粘着剤などの他の賦形剤と混合される。
上記の第1及び第2の錠剤層組成物は、適切なタブレット成形機を用いて、適切なサイズと圧縮強さを有する標的錠剤質量の二層錠剤に圧縮することができる。任意にダイやパンチに適切な外部滑沢剤噴霧システムが、錠剤の製造の間、用いることができ潤滑を改善する。
本発明による二層錠剤の製造のために、別々の錠剤層組成物を上記の方法において二層タブレット成形機、例えば、二層打錠方式でのロータリプレスで圧縮することができる。錠剤層との間にあらゆる相互汚染を避けるために(アムロジピンの分解に生じ得る)、あらゆる造粒残留物は打錠チャンバ内のダイ錠剤の強い吸引によって打錠の間に注意深く除去されなければならない。
【0025】
上記方法は、高血圧症を単独で慢性安定狭心症、血管痙攣狭心症、脳卒中、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、うっ血性心不全、心臓血管疾患、糖尿病、インスリン抵抗、グルコース寛容減損、糖尿病前期、2型糖尿病、糖尿病性腎障害、代謝性症候群(X症候群)、肥満、異脂肪血症、過トリグリセリド血症、C反応性タンパク質の高血清濃度、リポタンパク(a)の高血清濃度、ホモシステインの高血清濃度、低密度リポタンパク質(LDL)-コレステロールの高血清濃度、リポタンパク関連のホスホリパーゼ(A2)の高血清濃度、高密度リポタンパク質(HDL)-コレステロールの低血清濃度、HDL(2b)-コレステロールの低血清濃度、アジポネクチンの低血清濃度、認識衰退及び痴呆からなる群より選ばれる症状の治療又は予防と組合わせて治療する本発明による錠剤の製造に用いることができる。
慢性安定狭心症、血管痙攣狭心症、脳卒中、心筋梗塞、うっ血性心不全、糖尿病、異脂肪血症又は痴呆の追加の治療又は予防が特に好ましい。
更に本発明を示すために、次の限定されない実施例を示す。
【実施例】
【0026】
製剤実施例
実施例 1: テルミサルタン 80 mg / アムロジピン 10 mg の2層錠剤

【0027】
実施例 2: テルミサルタン 80 mg / アムロジピン 5 mgの2層錠剤

【0028】
実施例 3: テルミサルタン 80 mg / アムロジピン 2.5 mgの2層錠剤

【0029】
実施例 4: テルミサルタン 40 mg / アムロジピン 10 mgの2層錠剤

【0030】
実施例 5: テルミサルタン 40 mg / アムロジピン 5 mgの2層錠剤

【0031】
実施例 6: テルミサルタン 40 mg / アムロジピン 2.5 mgの2層錠剤

【0032】
実施例 7: テルミサルタン 20 mg / アムロジピン 10 mgの2層錠剤

【0033】
実施例 8: テルミサルタン 20 mg / アムロジピン 5 mgの2層錠剤

【0034】
実施例 9: テルミサルタン 20 mg / アムロジピン 2.5 mgの2層錠剤

【0035】
実施例 10: テルミサルタン 40 mg / アムロジピン 10 mgの2層錠剤

【0036】
実施例 11: テルミサルタン 40 mg / アムロジピン 5 mgの2層錠剤

【0037】
実施例 12: テルミサルタン 40 mg / アムロジピン 2.5 mgの2層錠剤

【0038】
実施例 13: テルミサルタン 40 mg / アムロジピン 5 mgの2層錠剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性錠剤マトリックス中にテルミサルタンを有する第1層と崩壊性又は浸食性錠剤マトリックス中にアムロジピンを有する第2層を含む医薬錠剤。
【請求項2】
テルミサルタンが実質的にアモルファスな形態にある、請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
溶解性錠剤マトリックスが即放性特性を有する、請求項1記載の錠剤。
【請求項4】
溶解性錠剤マトリックスが、塩基性物質、水溶性希釈剤及び、任意に他の賦形剤及び補助剤を含む、請求項1記載の錠剤。
【請求項5】
塩基性物質が、アルカリ金属水酸化物、塩基性アミノ酸及びメグルミンより選ばれる、請求項4記載の錠剤。
【請求項6】
水溶性希釈剤が、グルコースなどの単糖類; スクロース及びラクトースなどのオリゴ糖類; 及びソルビトール、マンニトール、キシリトールなどの糖アルコールより選ばれる、請求項4記載の錠剤。
【請求項7】
他の賦形剤及び補助剤が、結合剤、担体、充填剤、滑沢剤、流動調整剤、結晶化抑制剤、可溶化剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤及び乳化剤より選ばれる、請求項4記載の錠剤。
【請求項8】
テルミサルタンを有する第1錠剤層組成物が、テルミサルタンと塩基性物質を含む水溶液を噴霧乾燥して噴霧乾燥造粒物を得、前記噴霧乾燥造粒物と水溶性希釈剤とを混合してプレミックスを得、前記プレミックスと滑沢剤とを混合して最終ブレンドを得ることにより製造される、請求項1記載の錠剤。
【請求項9】
第2層の崩壊性又は浸食性錠剤マトリックスが、1以上の充填剤、崩壊剤、滑沢剤及び、任意に、結合剤、流動調整剤又は他の賦形剤及び補助剤を含む、請求項1記載の錠剤。
【請求項10】
アムロジピンを有する第2錠剤層組成物が、直接圧縮、湿式造粒又はローラ圧縮プロセスによって製造される、請求項9記載の錠剤。
【請求項11】
第1層が、10-160mg、好ましくは20-80mg又は40-80mgのテルミサルタンを含有する、請求項1記載の錠剤。
【請求項12】
第2層が、1-20mg、好ましくは2.5-10mgのアムロジピンを含有する、請求項1記載の錠剤。
【請求項13】
アルミニウムホイルブリスター包装、又はポリプロピレンチューブ、HDPEびんなどの耐湿性包装材料に包装された、請求項1記載の錠剤。
【請求項14】
高血圧症を、単独で、又は、慢性安定狭心症、血管痙攣狭心症、脳卒中、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、うっ血性心不全、心臓血管疾患、糖尿病、インスリン抵抗、グルコース寛容減損、糖尿病前期、2型糖尿病、糖尿病性腎障害、代謝性症候群(X症候群)、肥満、異脂肪血症、過トリグリセリド血症、C反応性タンパク質の高血清濃度、リポタンパク(a)の高血清濃度、ホモシステインの高血清濃度、低密度リポタンパク質(LDL)-コレステロールの高血清濃度、リポタンパク関連のホスホリパーゼ(A2)の高血清濃度、高密度リポタンパク質(HDL)-コレステロールの低血清濃度、HDL(2b)-コレステロールの低血清濃度、アジポネクチンの低血清濃度、認識衰退及び痴呆からなる群より選ばれる症状の治療又は予防と組み合わせて、治療するための請求項1記載の錠剤の製造方法。
【請求項15】
治療又は予防される症状が慢性安定狭心症、血管痙攣狭心症、脳卒中、心筋梗塞、うっ血性心不全、糖尿病、異脂肪血症又は痴呆である、請求項14記載の方法。

【公表番号】特表2008−518888(P2008−518888A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538343(P2007−538343)
【出願日】平成17年10月29日(2005.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011596
【国際公開番号】WO2006/048208
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】