説明

テレビドアホン装置

【課題】子機のカメラの露光制御機能に連動したγ補正処理機能により、親機のモニタに出画される映像の視認性を高める。
【解決手段】第1の子機のカメラ11aにて撮像される映像信号の1フレームの明るさをもとに、カメラの露光制御に連動させて当該映像信号を構成する輝度信号及びクロマ信号の当該信号毎にγ補正手段119a、121aにて行われるγ補正処理の補正係数を可変する。また、第2の子機のカメラ11bにて撮像される映像信号の中輝度レベルの明るさ及び高輝度レベルの明るさにそれぞれ対応する複数の変曲点を、γ補正手段119b、121bにて行われるγ補正処理で使用される補正カーブ上に設け、この複数の変曲点を、映像信号の明るさを示す横軸方向に変化させる、又はγ補正出力を示す縦軸方向にゲインを変化させ。この複数の変曲点と当該複数の変曲点が設けられる補正カーブの擬似データとを記憶手段My、Mcに記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子機のカメラにて撮像される被写体の映像を親機のモニタに出画するテレビドアホン装置に係り、特に、被写体の映像の明るさに対応させて当該映像の補正処理を行い、出画映像の視認性を高めたテレビドアホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学的に撮像された被写体の映像を光電変換し、この光電変換された電気信号としての映像信号を記憶するようにした電子カメラ等の映像撮像装置が広く普及している。このような映像撮像装置が有する撮像手段としては、CCD、CMOS等の各種のセンサ媒体が適用されている。
【0003】
この種の映像撮像装置としては、例えば、AGC回路を設け、CCD、CMOS等の各種のセンサ媒体により光電変換された映像信号についてのゲインの調整、当該映像信号を構成する輝度信号についてのγ補正、当該映像信号を構成するクロマ信号についての色バランス、γ補正等の補正処理のような、種々の信号処理機能を有している。
【0004】
ここで、前述の映像撮像装置が有する種々の信号処理機能を、子機のカメラにて撮像される被写体の映像を親機のモニタに出画するテレビドアホン装置に適用するにあたって、親機側で行われる輝度信号及びクロマ信号の当該信号毎のγ補正処理の補正係数γ102は、「γ102=2.2」に固定されており、例えば、NTSC方式のカラー映像信号を撮像・出画する態様においては、最終的な出力が「1」となるように、子機側で行われる輝度信号及びクロマ信号の当該信号毎のγ補正処理の補正係数γ101が、「γ101=1/γ102=0.45」に固定されていた(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−260351号公報(段落「0002」、「0003」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、背景技術に記載した特許文献1によれば、子機側で行われる輝度信号及びクロマ信号の当該信号毎のγ補正処理の補正係数γ101が、「γ101=0.45」で固定されていたため、その補正係数γ101について、例えば、子機が設置される周囲環境の相違やカメラの撮像時間の相違等に対応させて可変することができず、出画映像の視認性を十分に確保することが困難であった。
【0007】
本発明は、この難点を解消するためになされたもので、広範囲にわたり出現する被写体の映像の明るさに対応させて、子機のカメラの露光制御機能に連動したγ補正処理機能を能動とすることにより、親機のモニタにて出画される映像の視認性を高めたテレビドアホン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するため、本発明の第1の態様であるテレビドアホン装置は、被写体の映像を撮像するためのカメラを有する子機と、子機のカメラにて撮像された映像を出画するためのモニタを有する親機とを備えるテレビドアホン装置である。カメラは、被写体から入射される光線を光電変換するための撮像素子と、撮像素子にて光電変換された電気信号をデジタル信号処理し、被写体の映像信号を生成するための信号生成手段と、信号生成手段にて生成された映像信号を構成する輝度信号及びクロマ信号を当該信号毎にγ補正するためのγ補正手段と、撮像素子が有する撮像画面の光源の周囲に所定の検波枠を設けるための光検出手段と、光検出手段にて設けられる検波枠内のヒストグラムを算出するためのヒストグラム算出手段と、ヒストグラム算出手段により算出された映像信号の1フレームの明るさをもとにγ補正手段を制御するための補正制御手段とを備えている。補正制御手段は、明るさに対応させてγ補正手段によるγ補正処理の補正係数を可変するものである。
【0009】
また、本発明の第2の態様であるテレビドアホン装置は、被写体の映像を撮像するためのカメラを有する子機と、子機のカメラにて撮像された映像を出画するためのモニタを有する親機とを備えるテレビドアホン装置である。カメラは、被写体から入射される光線を光電変換するための撮像素子と、撮像素子にて光電変換された電気信号をデジタル信号処理し、被写体の映像信号を生成するための信号生成手段と、信号生成手段にて生成された映像信号を構成する輝度信号及びクロマ信号を当該信号毎にγ補正するためのγ補正手段と、撮像素子が有する撮像画面の光源の周囲に所定の検波枠を設けるための光検出手段と、光検出手段にて設けられる検波枠内のヒストグラムを算出するためのヒストグラム算出手段と、ヒストグラム算出手段にてピーク算出される中輝度レベルの明るさ及び高輝度レベルの明るさにそれぞれ対応する複数の変曲点を、映像信号の明るさを横軸に、γ補正出力を縦軸にとったγ補正手段によるγ補正処理で使用される補正カーブ上に設け、複数の変曲点の位置を横軸方向に変化させるための補正制御手段とを備えるものである。
【0010】
また、本発明の第3の態様であるテレビドアホン装置は、本発明の第2の態様において、補正制御手段は、補正カーブ上に設けられる複数の変曲点のゲインを縦軸方向に変化させるものである。
【0011】
また、本発明の第4の態様であるテレビドアホン装置は、本発明の第2の態様又は第3の態様において、γ補正手段は、複数の変曲点のパターンを記憶するための記憶手段を備えている。
【0012】
また、本発明の第5の態様であるテレビドアホン装置は、本発明の第2の態様又は第3の態様において、γ補正手段は、補正カーブの擬似データを記憶するための記憶手段を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のテレビドアホン装置によれば、子機のカメラにて撮像される映像信号の1フレームの明るさをもとに、カメラの露光制御に連動させて当該映像信号を構成する輝度信号及びクロマ信号の当該信号毎にγ補正手段にて行われるγ補正処理の補正係数を可変することができる。これにより、親機のモニタにて出画される被写体の映像の例えば、顔部が適切な明るさに収束され視認性が高められる。
【0014】
また、本発明のテレビドアホン装置によれば、子機のカメラにて撮像される映像信号の中輝度レベルの明るさ及び高輝度レベルの明るさにそれぞれ対応する複数の変曲点を、γ補正手段にて行われるγ補正処理で使用される補正カーブ上に設け、この複数の変曲点を、映像信号の明るさを示す横軸方向に変化させる、又はγ補正出力を示す縦軸方向にゲインを変化させることができる。これにより、親機のモニタにて出画される被写体の映像の例えば、顔部が適切な明るさに収束され視認性が高められる。
【0015】
さらに、本発明のテレビドアホン装置によれば、子機のカメラにて撮像される映像信号の中輝度レベルの明るさ及び高輝度レベルの明るさにそれぞれ対応する複数の変曲点と、この複数の変曲点が設けられる補正カーブの擬似データとを(γ補正手段の)記憶手段に記憶し、例えば、子機が設置される周囲環境の相違やカメラの撮像時間の相違等に対応させて適宜に読出して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1、第2の各実施例によるテレビドアホン装置の全体構成を示すシステム説明図である。
【図2】図2(A)は、本発明の第1の実施例によるテレビドアホン装置において、(第1の)子機のカメラが有する映像撮像・補正処理機能の具体的な構成を示すブロック図である。また、図2(B)は、本発明の第2の実施例によるテレビドアホン装置において、(第2の)子機のカメラが有する映像撮像・補正処理機能の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】図3(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第1の実施例によるテレビドアホン装置において、映像信号を構成する輝度信号及びクロマ信号の当該信号毎に行われるγ補正処理の遷移特性例を示すグラフ図である。
【図4】図4(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第2の実施例によるテレビドアホン装置において、映像信号を構成する輝度信号及びクロマ信号の当該信号毎に行われるγ補正処理の遷移特性例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のテレビドアホン装置を適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1、第2の各実施例によるテレビドアホン装置の全体構成を示すシステム説明図である。このテレビドアホン装置は、住戸外の例えば、住戸玄関に設置される第1、第2の各子機1a、1bと、住戸内に設置され、伝送路Lを経由して第1、第2の各子機1a、1bにそれぞれ接続される親機2とで構成されている。
【0019】
同図において、第1の子機1aは、本発明の第1の実施例に適用される当該子機であり、子機操作部10、カメラ11a、子機マイク12及び子機スピーカ13が備えられている。一方、第2の子機1bは、本発明の第2の実施例に適用される当該子機であり、子機操作部10、カメラ11b、子機マイク12及び子機スピーカ13が備えられている。
【0020】
これら第1、第2の各子機1a、1bにおいて、子機操作部10は、住戸外の例えば、住戸玄関に居る来訪者が住戸内に在室中の居住者を呼出すために所定の操作(呼出操作)を行うものであり、例えば、呼出ボタンにて構成されている。
【0021】
カメラ11a、11bはそれぞれ、前述の呼出時における呼出操作を行った来訪者の映像や自子機が設置される住戸外の周囲近傍の監視映像、例えば、不審者等の人物の映像を撮像するためのものである。
【0022】
子機マイク12及び子機スピーカ13は、来訪者が居住者との間で通話を成立させるための音声(送話音声、受話音声)を入出力するものである。
【0023】
また、同図に示す親機2には、モニタ20、親機マイク21、親機スピーカ22及び親機操作部23が備えられている。
【0024】
この親機2において、モニタ20は、第1、第2の各子機1a、1bのカメラ11a、11bにて撮像された映像を出画するためのものであり、例えば、LCD、有機ELディスプレイ等の各種の出画表示媒体にて構成されている。なお、モニタ20には、来訪者による第1、第2の各子機1a、1bからの呼出時において、その旨の文字メッセージや絵データ等を表示することもできる。
【0025】
親機マイク21及び親機スピーカ22は、居住者が来訪者との間で通話を成立させるための音声(送話音声、受話音声)を入出力するものである。なお、親機スピーカ22は、来訪者による第1、第2の各子機1a、1bからの呼出時において、その旨の呼出音や音声メッセージ等を出力することもできる。
【0026】
親機操作部23は、来訪者による第1、第2の各子機1a、1bからの呼出時において居住者が応答し、親機マイク21及び親機スピーカ22の使用による通話を開始するための応答操作と、前述の通話を終了するための終話操作と、住戸外の周囲近傍の監視する監視時において第1、第2の各子機1a、1bのカメラ11a、11b及びモニタ20をそれぞれ起動させるためのモニタ監視操作等を行うものであり、例えば、通話ボタンやモニタボタンにて構成されている。
【0027】
次に、第1、第2の各子機1a、1bのカメラ11a、11bが有する映像撮像・補正処理機能の具体的な構成について、図2(A)、(B)の各ブロック図をそれぞれ参照して説明する。
【0028】
図2(A)に示す第1の子機1aのカメラ11aには、レンズ110、撮像素子111、CDS/AGC回路112、A/D変換回路113、OPD回路114、ヒストグラム算出回路115、原色分離回路116、ホワイトバランス(WB)回路117、輝度プロセス回路118、第1の輝度補正回路119a、クロマプロセス回路120、第1のクロマ補正回路121a、露光(AE)制御回路122、ホワイトバランス制御回路123、加算回路124及びエンコーダ・ゲイン回路125が備えられている。また、図2(B)に示す第2の子機1bのカメラ11bには、レンズ110、撮像素子111、CDS/AGC回路112、A/D変換回路113、OPD回路114、ヒストグラム算出回路115、原色分離回路116、ホワイトバランス回路117、輝度プロセス回路118、第2の輝度補正回路119b、クロマプロセス回路120、第2のクロマ補正回路121b、露光制御回路122、ホワイトバランス制御回路123、加算回路124及びエンコーダ・ゲイン回路125が備えられている。
【0029】
なお、図2(A)、(B)にそれぞれ示すカメラ11a、11bにおいて、同一の符号を付加した構成各部/回路についての作用は同一なものとする。また、同図において、レンズ110、撮像素子111を除くカメラ11a、11bの構成各部/回路112〜125については、制御ICとして設けることができる。
【0030】
このカメラ11a、11bにおいて、レンズ110は、被写体からの光線が入射されるものである。
【0031】
撮像素子111は、レンズ110を通過した光線を受光し、撮像画素毎に結像される光線の光量に対応した電荷を電気信号に光電変換するためのものであり、例えば、CCD、CMOS等の各種のセンサ媒体にて構成されている。この撮像素子111には、前述の光電効果を行う際の蓄積時間量を可変するための電子アイリス機能が備えられている。
【0032】
CDS/AGC回路112は、撮像素子111の出力データである電気信号について、CDSにて例えば、相関二重サンプリング処理を行い、ノイズを除去した後、オートゲインコントロール(AGC)にてゲインを調整するためのものである。
【0033】
A/D変換回路113は、CDS/AGC回路112の出力データであるアナログ形式の電気信号をデジタル信号にデジタル処理し、被写体の映像信号を生成するためのものである。
【0034】
OPD回路114は、撮像素子111が有する撮像画面の光源の周囲に所定の検波枠140を設け、この検波枠140内においてA/D変換回路113の出力データである映像信号の輝度レベルを重み付け演算で検波し、その積分値を生成するためのものである。
【0035】
ヒストグラム算出回路115は、OPD回路114にて設けられる所定の検波枠140内において、A/D変換回路113の出力データである映像信号の1フレームを構成するR(赤)、G(緑)、B(青)の各原色信号の明るさを算出し、その明るさ毎に対応した積分値を生成するためのものである。
【0036】
原色分離回路116は、A/D変換回路113の出力データである映像信号からR、G、Bの各原色信号を分離するためのものである。
【0037】
ホワイトバランス回路117は、原色分離回路116の出力データであるR、G、Bの各原色信号に対応する増幅手段(図示せず。)によってゲインを調整することで、ホワイトバランスを得るためのものである。
【0038】
輝度プロセス回路118は、ホワイトバランス回路117の出力データをもとに、所定のマトリクス演算を行うことにより輝度信号を生成し、周波数特性及び信号レベルをそれぞれ調整するためのものである。
【0039】
第1の輝度補正回路119aは、輝度プロセス回路118の出力データである輝度信号についてγ補正を行うにあたり、γ補正処理の補正係数を可変するためものである。
【0040】
第2の輝度補正回路119bは、輝度プロセス回路118の出力データである輝度信号についてγ補正を行うにあたり、ヒストグラム算出回路115にて算出される値(積分値)をもとに中輝度レベルの明るさ及び高輝度レベルの明るさにそれぞれ対応する複数の変曲点を、映像信号の明るさを横軸に、γ補正出力を縦軸にとったγ補正処理で使用される補正カーブ上に設け、複数の変曲点の位置を横軸方向に変化させる補正処理、又は同補正カーブ上に設けられる複数の変曲点のゲインを縦軸方向に変化させる補正処理を行うものである。この第2の輝度補正回路119bには、前述の複数の変曲点のパターン及び補正カーブの擬似データをそれぞれ記憶するためのメモリ(以下、輝度補正用メモリという。)Myが備えられており、当該メモリは、例えば、RAM、EEPROM等の各種の記憶媒体にて構成されている。
【0041】
クロマプロセス回路120は、ホワイトバランス回路117の出力データであるR、G、Bの原色信号毎に所定の色補正処理、例えば、色相・色飽和度調整を行い、その色補正済みのクロマ信号を生成するためのものである。
【0042】
第1のクロマ補正回路121aは、クロマプロセス回路120の出力データであるクロマ信号についてγ補正を行うにあたり、γ補正処理の補正係数を可変するためのものである。
【0043】
第2のクロマ補正回路121bは、クロマプロセス回路120の出力データであるクロマ信号についてγ補正を行うにあたり、ヒストグラム算出回路115にて算出される値(積分値)をもとに中輝度レベルの明るさ及び高輝度レベルの明るさにそれぞれ対応する複数の変曲点を、映像信号の明るさを横軸に、γ補正出力を縦軸にとったγ補正処理で使用される補正カーブ上に設け、複数の変曲点の位置を横軸方向に変化させる補正処理、又は同補正カーブ上に設けられる複数の変曲点のゲインを縦軸方向に変化させる補正処理するものである。この第2のクロマ補正回路121bには、複数の変曲点のパターンを記憶するためのメモリ(以下、クロマ補正用メモリという。)Mcが備えられており、当該メモリは、例えば、RAM、EEPROM等の各種の記憶媒体にて構成されている。
【0044】
露光制御回路122は、ヒストグラム算出回路115の出力データをもとに、撮像素子111の蓄積時間量及びCDS/AGC回路112によるゲインをそれぞれ制御して当該カメラの露光量を可変するとともに、この露光制御に連動させて、第1、第2の各輝度補正回路119a、119b及び第1、第2の各クロマ補正回路121a、121bによる前述のγ補正処理をそれぞれ制御するためのものである。
【0045】
ホワイトバランス制御回路123は、ヒストグラム算出回路115の出力データをもとに、ホワイトバランス回路117を制御するためのものである。
【0046】
加算回路124は、第1、第2の各輝度補正回路119a、119bの出力データである輝度信号と第1、第2の各クロマ補正回路121a、121bの出力データであるクロマ信号とを加算して複合映像信号を生成するためのものである。
【0047】
エンコーダ・ゲイン回路125は、加算回路124の出力データである複合映像信号について、NTSC又はPAL等の所定の信号規格に沿う例えば、テレビジョン信号に変換した後、FM変調・増幅するためのものである。
【0048】
このように構成された本発明の第1、第2の各実施例によるテレビドアホン装置において、以下、具体的な動作について説明する。
【0049】
本発明の第1、第2の各実施例による共通の動作として、図1に示す第1、第2の各子機1a、1bの子機操作部10が来訪者により呼出操作されると、この操作を検出した親機2の親機スピーカ22から呼出音や音声メッセージ等が出力されるとともに、モニタ20及び当該第1、第2の各子機のカメラ11a、11bが能動となる。
【0050】
ここで、図2(A)、(B)にそれぞれ示す第1、第2の各子機1a、1bのカメラ11a、11bによれば、撮像素子111は、レンズ110を通過した被写体である来訪者からの光線を受光し、光電変換された電気信号を生成する。この電気信号は、CDS/AGC回路112を経由して一定のレベルでゲインが調整された後、A/D変換回路113に送出される。
【0051】
A/D変換回路113は、CDS/AGC回路112の出力データをデジタル処理し、被写体の映像信号を生成してOPD回路114及び原色分離回路116にそれぞれ送出する。
【0052】
OPD回路114は、A/D変換回路113の出力データをもとに、撮像素子111が有する撮像画面の光源の周囲に設けられる所定の検波枠140を設定し、この検波枠140内において映像信号の輝度レベルをフレーム毎に重み付けで検波し、その積分値を露光制御回路122に送出する。また、ヒストグラム算出回路115は、同様にOPD回路114にて設定される所定の検波枠140内において、映像信号を構成するR、G、Bの各原色信号に対して所定のマトリクス演算を行い、例えば、全てのマトリクスを加算して得られる平均値や重み付け値をもとに当該映像信号の1フレームの抽象化された明るさを算出し、その明るさ毎の積分値を露光制御回路122及びホワイトバランス制御回路123にそれぞれ送出する。
【0053】
原色分離回路116は、A/D変換回路113の出力データをもとにR、G、Bの原色信号毎に分離し、ホワイトバランス制御回路123により制御されるホワイトバランス回路117を経由してホワイトバランスが得られた当該原色信号を生成し、輝度プロセス回路118及びクロマプロセス回路120にそれぞれ送出する。
【0054】
クロマプロセス回路120は、ホワイトバランス回路117の出力データであるR、G、Bの原色信号毎に所定の色補正処理、例えば、式(1)に示すように、所定の色補正係数行列をそれぞれ掛け合わす色相・色飽和度調整を行い、その色補正済みのクロマ信号C(R1、G1、B1)を生成して第1、第2の各クロマ補正回路121a、121bに送出する。
【0055】
【数1】

【0056】
次に、本発明の第1の実施例における特有の動作について説明するにあたり、図2(A)に示す(第1の子機1aのカメラ11aを構成する)露光制御回路122は、OPD回路114の出力データである積分値及びヒストグラム算出回路115の出力データである積分値のうち、少なくともヒストグラム算出回路115の出力データである積分値と予め設定されている閾値とを比較して、これらの値に差があった場合、カメラ11aにて撮像される映像(映像信号)の明るさが最適となる、すなわち、前述の積分値が閾値となるように撮像素子111の蓄積時間量及びCDS/AGC回路112によるゲインをそれぞれ制御(露光制御)する。また、露光制御回路122は、前述の露光制御に連動して、第1の輝度補正回路119a及び第1のクロマ補正回路121aをそれぞれ制御し、当該第1の輝度補正回路にて行われるγ補正処理の式(2)に示す出力データY1が有する補正係数γ1及び当該第1のクロマ補正回路にて行われるγ補正処理の式(3)に示す出力データY2が有する補正係数γ2をそれぞれ可変させる。なお、同式(2)、(3)において、「E」は入力データ、「A、B」は所定の定数、をそれぞれ表すものである。
【0057】
【数2】

【0058】
【数3】

【0059】
具体的に、ヒストグラム算出回路115の出力データである積分値をもとに、例えば、被写体である来訪者の顔部の映像が暗いと露光制御回路122が判断した場合、この露光制御回路122は、第1の輝度補正回路119a及び第1のクロマ補正回路121aをそれぞれ制御し、その値が「0.45」に予め固定されている式(2)、(3)に示す補正係数γ1、γ2をそれぞれ、「γ1、γ2<0.45」となるように制御することにより、図3(A)、(B)の各グラフ図に示すように、映像信号の明るさを横軸に、γ補正出力を縦軸にとったγ補正処理で使用される補正カーブをプラス補正(同図においては、「γ1、γ2=0.40」を示す。)することができ、所謂、強めのγ補正が可能となる。
【0060】
一方、ヒストグラム算出回路115の出力データである積分値をもとに、例えば、被写体である来訪者の顔部の映像の明るさが過多と露光制御回路122が判断した場合、この露光制御回路122は、第1の輝度補正回路119a及び第1のクロマ補正回路121aをそれぞれ制御し、その値が「0.45」に予め固定されている式(2)、(3)に示す補正係数γ1、γ2をそれぞれ、「γ1、γ2>0.45」となるように制御することにより、図3(A)、(B)に示す同補正カーブをマイナス補正(同図においては、「γ1、γ2=0.50」を示す。)することができ、所謂、弱めのγ補正が可能となる。
【0061】
次に、本発明の第2の実施例における特有の動作について説明するにあたり、図2(B)に示す(第2の子機1bのカメラ11bを構成する)露光制御回路122は、OPD回路114の出力データである積分値及びヒストグラム算出回路115の出力データである積分値のうち、少なくともヒストグラム算出回路115の出力データである積分値と予め設定されている閾値とを比較して、これらの値に差があった場合、カメラ11bにて撮像される映像(映像信号)の明るさが最適となる、すなわち、前述の積分値が閾値となるように撮像素子111の蓄積時間量及びCDS/AGC回路112によるゲインをそれぞれ制御(露光制御)するとともに、第2の輝度補正回路119b及び第2のクロマ補正回路121bをそれぞれ制御し、ヒストグラム算出回路115にてピーク算出される複数の明るさ、ここでは、中輝度レベルの明るさ及び高輝度レベルの明るさにそれぞれ対応する複数の変曲点P(P1、P2、P3、P4)を、例えば、式(4)の演算式を用いて算出する。なお、同式(4)において、「H」は変曲点P(P1、P2、P3、P4)の位置に相当する補正の強さ、「A」は同変曲点P(P1、P2、P3、P4)のゲインに相当する補正の強さ、「x」は入力データ、をそれぞれ表すものである。
【0062】
【数4】

【0063】
また、第2の輝度補正回路119b及び第2のクロマ補正回路121bはそれぞれ、式(4)により得られた複数の変曲点P(P1、P2、P3、P4)について、図4(A)、(B)の各グラフ図に示すように、例えば、明るさを示す横軸方向の位置を固定したまま、γ補正出力を示す縦軸方向にゲインを可変することで、補正カーブをプラス補正又はマイナス補正することができ、補正係数が例えば、「γ1、γ2=0.40」の所謂、強めのγ補正、又は補正係数が例えば「γ1、γ2=0.50」の所謂、弱めのγ補正が可能となる。
【0064】
さらに、第2の輝度補正回路119b及び第2のクロマ補正回路121bはそれぞれ、ヒストグラム算出回路115の出力データである積分値として、中輝度レベルの映像が多い場合、例えば、変曲点P2、P4の位置を横軸方向に広げ、変曲点P1、P2間の距離Lw1、変曲点P3、P4間の距離Lw2をそれぞれ広げることにより、明るさのダイナミックレンジが確保され、γ補正出力のゲイン幅Lh1、Lh2をそれぞれ小さく抑えることもできる。
【0065】
なお、本発明の第2の実施例による前述までの動作によれば、映像信号の明るさを横軸に、γ補正出力を縦軸にとった補正カーブ上に設けられる複数の変曲点P(P1、P2、P3、P4)を、式(4)の演算結果をもとに算出したが、この態様に限定されるものではない。例えば、第2の子機1bが設置される周囲環境の相違やカメラ11bの撮像時間の相違等に対応させた複数の変曲点P、例えば、低輝度レベルの明るさ、中輝度レベルの明るさ及び高輝度レベルの明るさにそれぞれ対応させた複数の変曲点Pを、輝度補正用メモリMy及びクロマ補正用メモリMcに予め記憶させておくこともでき、これらのメモリMy、Mcから読出した複数の変曲点Pを補正カーブ上に設け、前述のように横軸方向又は縦軸方向に変化させることもでき、この変曲点Pは、複数であれば任意の数、設けることが可能である。
【0066】
また、前述の複数の変曲点Pが設けられる補正カーブについても、例えば、第2の子機1bが設置される周囲環境の相違やカメラ11bの撮像時間の相違等に対応させて輝度補正用メモリMy及びクロマ補正用メモリMcに予め記憶させておくこともでき、γ補正処理時に好適な補正カーブを読出して使用することが可能であり、その記憶内容である複数の変曲点P及び擬似データはそれぞれ、パーソナルコンピュータ(図示せず。)等を利用して書換えることも容易である。
【0067】
したがって、本発明の第1、第2の各実施例によれば、第1、第2の各子機1a、1bのカメラ11a、11bにおいて、第1、第2の各輝度補正回路119a、119bはそれぞれ、輝度プロセス回路118を経由して生成される輝度信号Yについて例えば、入力信号の信号レベルが低い側、すなわち、暗い部分について出力信号を下げ、入力信号の信号レベルが低い黒系をより暗くして暗部部分のコントラスト階調を広げたメリハリのあるγ補正処理を行うことができ、来訪者の顔部の映像のダイナミックレンジが確保される。また、第1、第2の各クロマ補正回路121a、121bはそれぞれ、クロマプロセス回路120を経由して生成されるクロマ信号Cについて例えば、入力信号の信号レベルが高い部分は黄色等の明るい発色で、出力信号の信号レベルを下げれば黒に近づき色を暗くする一方、その信号レベルを上げれば白に近づき明るくなるような色のγ補正処理を行うことにより、来訪者の顔部の映像に明暗差を加えることができる。
【0068】
この後、本発明の第1、第2の各実施例による共通の動作として、第1、第2の各子機1a、1bのカメラ11a、11bにおいて、第1、第2の各輝度補正回路119a、119bの出力データ及び第1、第2の各クロマ補正回路121a、121bの出力データは、加算回路124にて加算された後、エンコーダ・ゲイン回路125を経由して適宜に信号処理され、図1に示す伝送路Lを経由して親機2に伝送される。
【0069】
これにより、親機2のモニタ20の出画映像をもとに来訪者を確認する居住者にとっては、顔部が適切な明るさに収束された来訪者の映像を視認性が高められた状態で確認し、その後、親機操作部23の使用による応答操作が可能となり、呼出応答時の利便性が高められ、その映像を確認しながら通話を成立させることができる。
【0070】
なお、本発明の第1、第2の各実施例によれば、第1、第2の各子機1a、1bのカメラ11a、11bにおいて、第1の輝度補正回路119a及び第1のクロマ補正回路121aの組合わせ、第2の輝度補正回路119b及び第2のクロマ補正回路121bの組合わせでそれぞれγ補正処理される映像信号(輝度信号、クロマ信号)の撮像対象である被写体として、子機操作部10を使用して呼出操作を行った来訪者を適用したが、この態様に限定されるものではない。例えば、住戸内に在室中の居住者が住戸外の周囲近傍を監視するにあたり親機2の親機操作部23を使用してモニタ監視操作を行った場合、第1、第2の各子機1a、1bのカメラ11a、11bにて撮像される例えば、不審者等の人物を被写体として適用することもでき、このような不審者等の人物の映像信号についても同様なγ補正処理を行うことにより、顔部が適切な明るさに収束された視認性の高い映像を親機2のモニタ20に出画させることができ、モニタ監視時の利便性が高められ、セキュリティが向上する。
【0071】
またに、本発明の第1、第2の各実施例によれば、第1、第2の各子機1a、1bのカメラ11a、11bにおいて、第1の輝度補正回路119a及び第1のクロマ補正回路121aの組合わせ、第2の輝度補正回路119b及び第2のクロマ補正回路121bの組合わせでそれぞれ行われるγ補正処理、すなわち、補正係数を可変するγ補正処理と補正カーブ上に設けられる複数の変曲点Pの位置/ゲインを可変させるγ補正処理とを、露光制御回路122による直接的な制御で実行させたが、この態様に限定されるものではない。例えば、各補正回路119a、119b、121a、121b内に個別の制御回路を設け、これらの制御回路を露光制御回路122により能動とし、前述のγ補正処理を行うこともできる。
【0072】
本発明のテレビドアホン装置においては、特定の実施の形態をもって説明してきたが、この形態に限定されるものでなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成の当該装置であっても採用できるということはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0073】
1a、1b……第1、第2の各子機
11a、11b……カメラ
111……撮像素子
112……CDS/AGC回路(信号生成手段)
113……A/D変換回路(信号生成手段)
114……OPD回路(光検出手段)
140……検波枠
115……ヒストグラム算出回路(ヒストグラム算出手段)
119a……第1の輝度補正回路(γ補正手段)
119b……第2の輝度補正回路(γ補正手段)
My……輝度補正用メモリ(記憶手段)
121a……第1のクロマ補正回路(γ補正手段)
121b……第2のクロマ補正回路(γ補正手段)
Mc……クロマ補正用メモリ(記憶手段)
122……露光制御回路(補正制御手段)
2……親機
20……モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の映像を撮像するためのカメラを有する子機と、前記子機のカメラにて撮像された映像を出画するためのモニタを有する親機とを備えるテレビドアホン装置であって、
前記カメラは、
前記被写体から入射される光線を光電変換するための撮像素子と、
前記撮像素子にて光電変換された電気信号をデジタル信号処理し、前記被写体の映像信号を生成するための信号生成手段と、
前記信号生成手段にて生成された映像信号を構成する輝度信号及びクロマ信号を当該信号毎にγ補正するためのγ補正手段と、
前記撮像素子が有する撮像画面の光源の周囲に所定の検波枠を設けるための光検出手段と、
前記光検出手段にて設けられる前記検波枠内のヒストグラムを算出するためのヒストグラム算出手段と、
前記ヒストグラム算出手段により算出された前記映像信号の1フレームの明るさをもとに前記γ補正手段を制御するための補正制御手段とを備え、
前記補正制御手段は、前記明るさに対応させて前記γ補正手段によるγ補正処理の補正係数を可変することを特徴とするテレビドアホン装置。
【請求項2】
被写体の映像を撮像するためのカメラを有する子機と、前記子機のカメラにて撮像された映像を出画するためのモニタを有する親機とを備えるテレビドアホン装置であって、
前記カメラは、
前記被写体から入射される光線を光電変換するための撮像素子と、
前記撮像素子にて光電変換された電気信号をデジタル信号処理し、前記被写体の映像信号を生成するための信号生成手段と、
前記信号生成手段にて生成された映像信号を構成する輝度信号及びクロマ信号を当該信号毎にγ補正するためのγ補正手段と、
前記撮像素子が有する撮像画面の光源の周囲に所定の検波枠を設けるための光検出手段と、
前記光検出手段にて設けられる前記検波枠内のヒストグラムを算出するためのヒストグラム算出手段と、
前記ヒストグラム算出手段にてピーク算出される中輝度レベルの明るさ及び高輝度レベルの明るさにそれぞれ対応する複数の変曲点を、前記映像信号の明るさを横軸に、γ補正出力を縦軸にとった前記γ補正手段によるγ補正処理で使用される補正カーブ上に設け、前記複数の変曲点の位置を横軸方向に変化させるための補正制御手段とを備えることを特徴とするテレビドアホン装置。
【請求項3】
前記補正制御手段は、前記補正カーブ上に設けられる前記複数の変曲点のゲインを前記縦軸方向に変化させることを特徴とする請求項2記載のテレビドアホン装置。
【請求項4】
前記γ補正手段は、前記複数の変曲点のパターンを記憶するための記憶手段を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のテレビドアホン装置。
【請求項5】
前記γ補正手段は、前記補正カーブの擬似データを記憶するための記憶手段を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のテレビドアホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−70320(P2012−70320A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215148(P2010−215148)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】