説明

テレメータの無線送信機

【課題】無線送信機100および無線受信機200の間の無線通信において電磁波ノイズに対する影響を受け難くする。
【解決手段】無線送信機100において、デジタル変調回路20が発振回路10から出力される発振信号をASK方式でデジタル変調により変調する。そして、デジタル変調方式により変調された被変調信号が送信アンテナ30から送信されるので、無線送信機100および無線受信機200の間の無線通信において電磁波ノイズに対する影響を受け難くすることができる。また、無線送信機100において、アナログ/デジタル変換回路を用いていないため、回路規模が大きくなるといった問題が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出対象の物理量を検出して無線にて送信するためのテレメータ無線送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサにより被検出対象の物理量を検出して検出信号を無線にて送信する無線送信機と、この無線送信機から送信される検出信号を受信する無線受信機とを備えるテレメータ(以下、第1のテレメータという)が提案されている。
【0003】
このものにおいては、センサから出力される検出信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換回路と、アナログ/デジタル変換回路から出力されるデジタル信号をデジタル変調する変調回路とを備え、この変調回路から出力される被変調信号が送信されるようになっている。
【0004】
また、特許文献1に記載の送信機において、センサから出力される検出信号をデジタル信号に変換するのではなく、アナログ信号のままFM変調して被変調信号を送信するテレメータ(以下、第2のテレメータという)が提案されている。
【特許文献1】特開平3−18240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の第1のテレメータでは、無線送信機がデジタル変調による被変調信号を送信しているため、伝送路に電磁波ノイズが混入しても、無線送信機および無線受信機の間の無線通信としては電磁波ノイズの影響を比較的受け難くすることができるが、アナログ/デジタル変換回路などが必要となり、無線送信機の回路規模が大きくなるといった問題が生じる。
【0006】
これに対して、上述の第2のテレメータでは、無線送信機がアナログ信号をそのまま変調して送信しているため、アナログ/デジタル変換回路などが不必要となるが、無線送信機および無線受信機の間の無線通信としては電磁波ノイズの影響を受け易く、無線受信機において復調信号、ひいては被検出対象の物理量を得ることができなくなる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、回路規模の増加を抑えつつ、電磁波ノイズに対する影響を受け難くするようにしたテレメータの無線送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、センサによって検出される物理量の変化に伴って周期が変化する発振信号を出力する発振回路と、発振回路から出力される発振信号をデジタル変調方式により変調するデジタル変調回路と、を備え、デジタル変調回路から出力される被変調信号が、検出信号として送信されるようになっていることを特徴とする。
【0009】
したがって、デジタル変調方式により変調された被変調信号が検出信号として送信されるので、電磁波ノイズに対する影響を受け難くすることができる。また、無線送信機において、アナログ/デジタル変換回路を用いていないため、回路規模の増加を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1、図2に本発明のテレメータの第1実施形態を示す。図1はテレメータの無線送信機の回路構成を示す回路図であり、図2はテレメータの無線受信機の回路構成を示す回路図である。
【0011】
テレメータは、センサにより被検出対象の物理量を検出してこの検出された物理量を示す検出信号を送信する無線送信機と、この無線送信機から送信される検出信号を受信する無線受信機とから構成されている。本実施形態のセンサは、歪みゲージや白金測温体等、被検出対象の物理量の変化により抵抗値が変化するものである。
【0012】
以下、本実施形態の無線送信機および無線受信機のそれぞれの具体的な電子回路構成について説明する
まず、無線送信機について説明すると、図1に示すように、無線送信機100は、発振回路10、デジタル変調回路20、および送信アンテナ30から構成されている。
【0013】
発振回路10は、コンデンサ11a、11b、抵抗素子12、NOTゲート13a、13b、13cおよびセンサ14からなるRC発振回路であって、センサ14の抵抗値に応じて発振周期が変化する。
【0014】
デジタル変調回路20は、発振回路10から出力される発振信号をASK(Amplitude shift keying)方式でデジタル変調する。送信アンテナ30は、デジタル変調回路20により変調された被変調信号を電磁波を媒体として送信する。
【0015】
次に、無線受信機について説明すると、図2に示すように、無線受信機200は、受信アンテナ40a、デジタル復調回路40、分周器50、カウンタ60、ANDゲート61、NOTゲート62、クロック発生器70、および電子制御装置80から構成されている。
【0016】
デジタル復調回路40は、受信アンテナ40aを介して受信した無線送信機100からの被変調信号をデジタル復調する。分周器50は、デジタル復調回路40により復調された発振信号の周波数を1/N(Nは2以上の整数)に縮小する。クロック発生器70は、後述するように、分周器50の出力信号のハイレベル期間を計測するためのクロック信号を発生する。
【0017】
ANDゲート61は、クロック信号、分周器50の出力信号、および後述するNOTゲート62の出力信号を入力として論理積の演算を行う。カウンタ60は、ANDゲート61から出力されるクロック信号のクロック数をカウントして、nビットでカウント結果を出力する。NOTゲート62は、後述するようにカウンタ60から出力されるオーバーフロー信号を入力として論理否定の演算を行う。
【0018】
電子制御装置80は、カウンタ60のクロック数と被検出対象の物理量との対応関係を示す物理量変換データを記憶して、この物理量変換データに基づいて、カウンタ60によってカウントされたクロック数を被検出対象の物理量に変換する。
【0019】
以下に、本実施形態の無線送信機100および無線受信機200の具体的な作動について説明する。
【0020】
まず、無線送信機100の発振回路10について説明する。図1中のA点がローレベルであり、NOTゲート13bの出力レベルがハイレベルになっている場合を想定する。この状態を受動素子のみで示すと、図3に示す等価回路になる。
【0021】
すなわち、電源およびグランドの間で、スイッチSW、コンデンサ11b、センサ14、コンデンサ11a、抵抗素子12が直列接続されており、スイッチSWをオンすると、このときのNOTゲート13cの入力電圧をV(t)の過度応答は、下記の数式1に示すようになる。
【0022】
V(t)=V・exp(−t/τ)…(数式1)
ここで、τは、センサ14の抵抗成分Rおよび容量Cによって決まる時定数である(τ=R×C)。
【0023】
このため、V(t)が、時間経過に伴って指数関数的に減少して、NOTゲート13cの入力基準値よりも小さくなると、NOTゲート13cの出力レベル(すなわち、図1中のA点)は、ローレベルからハイレベルに遷移する。この状態を受動素子のみで示すと、図4に示す等価回路になる。
【0024】
ここで、スイッチSWをオンすると、コンデンサ11a側からコンデンサ11b側に電荷が移動する。これに伴って、V(t)の過度応答は、下記の数式2に示すようになり、V(t)は、時間経過に伴って指数関数的に増加することになる。
【0025】
V(t)=V・{1−exp(−t/τ)}…(数式2)
その後、V(t)がNOTゲート13cの入力基準値よりも大きくなると、NOTゲート13cの出力レベル(すなわち、図1中のA点)は、ハイレベルからローレベルに遷移する。この状態を受動素子のみで示すと、図5に示す等価回路になる。図5の回路は、図3の回路と同一であるが、コンデンサ11a、11bに電荷が蓄積されている。
【0026】
したがって、スイッチSWをオンすると、コンデンサ11b側からコンデンサ11a側に電荷が移動する。これに伴って、V(t)の過度応答は、上記の数式1示すようになり、V(t)は、時間経過に伴って指数関数的に減少することになる。
【0027】
このため、V(t)が減少してNOTゲート13cの入力基準値よりも小さくなると、再び、NOTゲート13cの出力レベルは、ローレベルからハイレベルに遷移する。
【0028】
以上のようにV(t)の増加、減少が繰り返され、NOTゲート13aが発振信号を出力することになる。V(t)の過度応答は、上述のexp(−t/τ)に依存する。このため、センサ14の抵抗成分Rが大きくなるほどτが大きくなり、V(t)の過度応答に遅れが生じるため、発振信号の周期が長くなる。
【0029】
このような発振信号がデジタル変調回路20に入力されると、デジタル変調回路20が発振信号をASK方式でデジタル変調して被変調信号を出力し、この被変調信号は、送信アンテナ30から送信される。
【0030】
その後、送信アンテナ30から送信された被変調信号が、無線受信機200の受信アンテナ40aによって受信されると、この受信された被変調信号をデジタル復調回路40が復調して図6(a)に示す発振信号を出力する。
【0031】
次に、分周器50は、図6(b)に示すように、分周信号を出力する。この分周信号は、ANDゲート61に入力される。ANDゲート61には、分周信号以外に、クロック発生器70からのクロック信号と、NOTゲート62の出力信号としてハイレベル信号が入力される。
【0032】
ここで、NOTゲート62の出力信号は、カウンタ60がオーバーフロー状態か否かを示す信号であり、カウンタ60が非オーバーフロー状態であるときには、NOTゲート62がハイレベル信号を出力するようになっている。
【0033】
このようなハイレベル信号とともに、分周信号、クロック信号がANDゲート61に入力されると、分周信号のハイレベル期間に限り、ANDゲート61が、クロック信号を出力することになる。
【0034】
これに伴い、カウンタ60が、ANDゲート61から出力されるクロック信号のクロック数をカウントする。そして、電子制御装置80は、カウンタ60の出力信号および分周器50の出力信号に基づいて、カウンタ60によるクロック数をカウントし、さらに物理量変換データに基づいてカウンタ60によるクロック数を被検出対象の物理量に変換する。
【0035】
また、何らかの原因で、無線送信機100および無線受信機200の間の無線通信が中断すると、通常の無線通信が行われる場合に比べて、図7(a)、(b)に示すように、分周信号のハイレベル期間が長期化する。これに伴い、カウンタ60が、クロック信号のクロック数のカウントを終了する前に、図7(c)に示すようにオーバーフロー状態になり、カウンタ60が、図7(e)に示すように、オーバーフロー信号としてハイレベル信号を出力する。
【0036】
ここで、NOTゲート62がオーバーフロー信号としてのハイレベル信号を受けると、NOTゲート62の出力レベルがハイレベルからローレベルに変化するため、図7(c)に示すように、ANDゲート61の出力レベルがローレベルになる。また電子制御装置80がオーバーフロー信号としてのハイレベル信号を受けると、図7(f)に示すように、リセット信号としてハイレベル信号をカウンタ60に出力するため、カウンタ60がリセットする。
【0037】
以上説明した本実施形態によれば、無線送信機100において、デジタル変調回路20が発振回路10から出力される発振信号をASK方式でデジタル変調により変調する。そして、デジタル変調方式により変調された被変調信号が送信アンテナ30から送信されるので、無線送信機100および無線受信機200の間の無線通信において電磁波ノイズに対する影響を受け難くすることができる。また、無線送信機100において、アナログ/デジタル変換回路を用いていないため、回路規模が大きくなるといった問題が生じない。
【0038】
上述の第1実施形態では、デジタル変調回路20のデジタル変調の方式として、ASK(Amplitude shift keying)を用いた例について説明したが、これに代えてFSK(Frequency shift keying)、或いはPSK(Phase shift keying)を用いてもよい。
【0039】
上述の第1実施形態では、発振回路として図1に示す回路構成の回路を用いたが、これに限らず、センサによって検出される物理量の変化に伴って発振周期が変化するものであるならば、どのような回路を用いても良い。
【0040】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、無線送信機100に1つのセンサ14を設けた例について説明したが、これに代えて、本第2実施形態では、無線送信機100に3つのセンサ14を設けた例について説明する。この場合の無線送信機100の回路構成を図8に示す。
【0041】
本第2実施形態の無線送信機100は、デジタル変調回路20、送信アンテナ30、発振回路10A、10B、10C、接続・遮断回路101、102、103、エンコーダ110、カウンタ120、およびクロック発生器130を有している。
【0042】
デジタル変調回路20は、上述の第1実施形態のデジタル変調回路20と同一であり、送信アンテナ30は、上述の第1実施形態の送信アンテナ30と同一である。また、発振回路10A、10B、10Cは、それぞれ、上述の第1実施形態の発振回路10と同様にセンサ14の抵抗値の変化に応じて、発振周期が変化する。
【0043】
接続・遮断回路101は、発振回路10Aおよびデジタル変調回路20の間を接続、或いは遮断する。接続・遮断回路102は、発振回路10Bおよびデジタル変調回路20の間を接続、或いは遮断する。また、接続・遮断回路103は、発振回路10Cおよびデジタル変調回路20の間を接続、或いは遮断する。なお、接続・遮断回路101、102、103は、特許請求項に記載の接続・遮断手段を構成している。
【0044】
エンコーダ110は、後述するように、カウンタ120によるクロックのカウント数に基づいて、接続・遮断回路101、102、103をそれぞれ制御する。カウンタ120は、クロック発生器130から出力されるクロックをカウントする。なお、エンコーダ110は、特許請求の範囲に記載の制御手段に相当する。
【0045】
次に、本実施形態の無線受信機200について図9を用いて説明する。
【0046】
無線受信機200は、受信アンテナ40a、デジタル復調回路40、分周器50、カウンタ60、250、ANDゲート61、クロック発生器70、電子制御装置80、接続・遮断回路210、220、ANDゲート230、クロック発生器231、およびワンショットマルチ回路240から構成されている。図9において、図3中と同一のものには同一符号を付して、説明を簡素化する。
【0047】
ワンショットマルチ回路240は、ANDゲート241、242、NOTゲート243、244、10進カウンタ245、およびクロック発生器246から構成され、後述するように、デジタル復調回路40から出力される発振信号に応じて、パルス信号を出力する。接続・遮断回路210は、カウンタ60および電子制御装置80の間を接続、遮断する。接続・遮断回路210は、カウンタ250および電子制御装置80の間を接続、遮断する。
【0048】
ANDゲート230は、クロック発生器231から出力されるクロック信号とワンショットマルチ回路240から出力される出力信号との論理積を演算する。カウンタ250は、ANDゲート230から出力されるクロック信号のクロック数をカウントする。
【0049】
本実施形態の電子制御装置80は、後述するように、カウンタ60によるクロック数に基づいて被検出対象の物理量を求めたり、その物理量が発振回路10A、10B、10Cのうちいずれにより検出されたかについて判別したりするための処理を実行する。
【0050】
以下に、本実施形態の無線送信機100および無線受信機200の具体的な作動について説明する。
【0051】
無線送信機100においてクロック発生器130が、図10(a)に示すように、クロック信号を発生すると、カウンタ120が、クロック発生器130から出力されるクロック信号のカウント数Kをカウントする。
【0052】
ここで、エンコーダ110は、図11に示すフローチャートにしたがって、コンピュータプログラムを実行する。
【0053】
まず、ステップS100において、内蔵カウンタのカウント数nをリセットして(n=0)、次のステップ110において、カウンタ120によるカウント数Kが「0」{n(=0)×15}に等しいか否かを判定する。カウント数K=“0”であるときにはYESと判定して、ステップS120に移行する。ここで、図10(c)に示すように、カウント数K=「0」「1」の期間に、接続・遮断回路101に向けてハイレベル信号を出力する。
【0054】
次に、ステップ130において、カウンタ120によるカウント数Kが「4」{n(=0)×15+4}に等しいか否かを判定する。カウント数K≠「4」であるときにはカウント数K=「4」になるまでステップ130の判定処理を繰り返す。その後、カウント数K=「4」になるとステップ130においてYESと判定して、次のステップ140に進む。
【0055】
ここで、図10(d)に示すように、カウント数K=「4」「5」の期間に、接続・遮断回路102に向けてハイレベル信号を出力する。
【0056】
次に、ステップ150において、カウンタ120によるカウント数Kが「9」{n(=0)×15+9}に等しいか否かを判定する。カウント数K≠「9」であるときにはカウント数K=「9」になるまでステップ150の判定処理を繰り返す。その後、カウント数K=「9」になるとステップ150においてYESと判定して、次のステップ160に進む。ここで、図10(e)に示すように、カウント数K=「9」「10」の期間に、接続・遮断回路103に向けてハイレベル信号を出力する。
【0057】
その後、内蔵カウンタのカウント数nをインクリメントして(n=n+1)、ステップS110に戻る。このため、カウント数判定(ステップS110)、ハイレベル出力(ステップS120)、カウント数判定(ステップS130)、ハイレベル出力(ステップS140)、カウント数判定(ステップS150)、ハイレベル出力(ステップS160)、および、インクリメント(ステップS170)の各々の処理を繰り返す。
【0058】
以上のようにエンコーダ110が各処理を繰り返すと、カウントK={「0」、「1」}、{「15」、「16」}、{「30」、「31」}…{「n×15」、「n×15+1」}のそれぞれの期間(以下、送信期間という)に接続・遮断回路101に向けてハイレベル信号を出力することになる。これに伴い、接続・遮断回路101は、それぞれの送信期間において、発振回路10Aおよびデジタル変調回路20の間を接続する。
【0059】
また、カウントK={「4」、「5」}、{「19」、「20」}、{「34」、「35」}…{「n×15+4」、「n×15+5」}のそれぞれの送信期間に接続・遮断回路102に向けてハイレベル信号を出力することになる。これに伴い、接続・遮断回路102は、それぞれの送信期間において、発振回路10Bおよびデジタル変調回路20の間を接続する。
【0060】
さらに、カウントK={「9」、「10」}、{「24」、「25」}、{「39」、「40」}…{「n×15+9」、「n×15+10」}のそれぞれの送信期間に接続・遮断回路103に向けてハイレベル信号を出力する。これに伴い、接続・遮断回路103は、それぞれの送信期間において、発振回路10Cおよびデジタル変調回路20の間を接続する。
【0061】
以上により、発振回路10A、10B、10Cの1つの発振回路だけがデジタル変調回路20に接続し、その接続される発振回路が発振回路10A、10B、10C、10A…の順番で切り替わることになる。
【0062】
ここで、発振回路10Aおよびデジタル変調回路20の間を接続終了後、発振回路10Bおよびデジタル変調回路20の間の接続が開始されるまでに、送信停止期間T1が設けられている。送信停止期間T1は、クロック発生器130のクロック数2個分に相当し、センサ回路Aの識別情報を示す。
【0063】
また、発振回路10Bおよびデジタル変調回路20の間を接続終了後、発振回路10Cおよびデジタル変調回路20の間の接続が開始されるまでに、送信停止期間T2が設けられている。送信停止期間T2は、クロック発生器130のクロック数3個分に相当し、センサ回路Bの識別情報を示す。
【0064】
さらに、発振回路10Cおよびデジタル変調回路20の間を接続終了後、発振回路10Aおよびデジタル変調回路20の間の接続が開始されるまでに、送信停止期間T3が設けられている。送信停止期間T3は、クロック発生器130のクロック数4個分に相当し、センサ回路Cの識別情報を示す。なお、送信停止期間T1、T2、T3は、特許請求項の範囲に記載の所定期間に相当する。
【0065】
以上のようにデジタル変調回路20に対して発振回路10A、10B、10Cのいずれかが接続され、かつ送信期間の間に送信停止期間T1、T2、T3が設けられると、デジタル変調回路20には、図10(f)に示すように、センサ回路10A、10B、10Cからの発振信号が入力される。
【0066】
このように発振信号がデジタル変調回路20に入力されると、デジタル変調回路20が発振信号をASK方式でデジタル変調して被変調信号を出力し、この被変調信号は、送信アンテナ30から送信される。
【0067】
次に、無線受信機200の作動について説明する。まず、無線送信機100から送信される被変調信号が、無線受信機200の受信アンテナ40aによって受信されると、この受信された被変調信号をデジタル復調回路40が復調して発振信号を出力する。分周器50には、図12(a)に示す発振信号が入力され、分周器50が、図12(c)に示す分周信号をANDゲート61に出力する。
【0068】
ここで、クロック発生器70がクロック信号をANDゲート61に出力しているので、ANDゲート61は、分周信号のハイレベル期間に限り、クロック発生器70からのクロック信号を出力する。すると、カウンタ60は、ANDゲート61から出力されるクロック信号のクロック数をカウントする。
【0069】
また、ワンショットマルチ回路240は、上述のデジタル復調回路40からの発振信号に基づいて、図12(b)に示すパルス出力信号を出力する。
【0070】
具体的には、発振回路Aの発振信号の受信開始タイミングにおいて、ワンショットマルチ回路240のパルス出力信号がローレベルになり、発振回路Aの発振信号の受信後一定期間Td経過すると、ワンショットマルチ回路240のパルス出力信号がハイレベルになる。
【0071】
その後、発振回路Bの発振信号の受信開始タイミングにおいて、ワンショットマルチ回路240のパルス出力信号がローレベルになり、発振回路Bの発振信号の受信後一定期間Td経過すると、ワンショットマルチ回路240のパルス出力信号がハイレベルになる。
【0072】
さらにその後、発振回路Cの発振信号の受信開始タイミングにおいて、ワンショットマルチ回路240のパルス出力信号がローレベルになり、発振回路Cの発振信号の受信後一定期間Td経過すると、ワンショットマルチ回路240のパルス出力信号がハイレベルになる。なお、ワンショットマルチ回路240の内部回路の作動は後述する。
【0073】
このようなワンショットマルチ回路240からのパルス出力信号とクロック発生器231から出力されるクロック信号とがANDゲート230に入力され、ANDゲート230は、当該パルス出力信号のハイレベル期間に限り、クロック発生器231からのクロック信号を出力する。これに伴い、カウンタ250がANDゲート230から出力されるクロック信号のクロック数をカウントする。
【0074】
次に、電子制御装置80は、カウンタ250およびカウンタ60のそれぞれのカウント数をカウントするとともに、そのカウント数に基づいて被検出対象の物理量などを求める。以下に、電子制御装置80の具体的な処理について図13、図14を用いて説明する。
【0075】
図13は、データ検出処理を示すフローチャートであり、図14はデータ変換処理を示すフローチャートである。データ検出処理およびデータ変換処理は交互に実施される。
【0076】
先ず、データ検出処理について説明すると、ステップS200で、カウンタ60、250を初期化する。次に、ステップS210において、接続・遮断回路210を制御して、カウンタ60および当該電子制御装置80の間を接続するとともに、接続・遮断回路220を制御して、カウンタ250および当該電子制御装置80の間を遮断する。
【0077】
次のステップS220において、カウンタ60によりカウントされたカウント数を取り込み、この取り込んだカウント数および分周信号に応じて、分周信号のハイレベル期間におけるカウント数Kavを求める。
【0078】
その後、上述のワンショットマルチ回路240のパルス出力信号がローレベルからハイレベルに変化すると、発振回路(この発振回路は、10A、10B、10Cのいずれの回路である)の一回目の送信期間T(すなわち、デジタル変調回路20および発振回路の間の1回目の接続)が終了したとして、ステップS230においてYESと判定する。
【0079】
次に、ステップS240にいて、接続・遮断回路210を制御して、カウンタ60および当該電子制御装置80の間を遮断するとともに、接続・遮断回路220を制御して、カウンタ250および当該電子制御装置80の間を接続する。
【0080】
次のステップS250において、カウンタ250によりカウントされたカウント数を取り込む。その後、ワンショットマルチ回路240のパルス出力信号がローレベルになると、送信停止期間が終了したとして(すなわち、カウンタ250によるカウントが終了したとして)、ステップS260においてYESと判定して、カウンタ250によりカウントされたカウント数K2を記憶する。
【0081】
次に、データ変換処理について説明する。
【0082】
先ず、ステップS300において、物理量変換データに基づいて、カウント数Kavに対応する被検出対象の物理量を求める。
【0083】
次に、カウンタ250によるカウント数K2に基づいて、上述の送信停止期間がいずれの発振回路の識別情報を示しているかを判別する。具体的には、K2がα1よりも大きいか否かを判定する(ステップS310)。
【0084】
そして、K2がα1よりも大きいときには、YESと判定する。この場合、ステップS350に移行して、上述の送信停止期間が発振回路10cの識別情報を示していると判定する。すなわち、上述の被検出対象の物理量は、発振回路10cにより検出されたものであると判定されたことになる。
【0085】
また、ステップS310において、K2がα1よりも小さいときにはNOと判定して、K2がα2(<α1)よりも大きいか否かを判定する(ステップS320)。
【0086】
ここで、K2がα2よりも大きいときには、YESと判定する。この場合、ステップS330に移行して、上述の送信停止期間が発振回路10bの識別情報を示していると判定する。すなわち、上述の被検出対象の物理量は、発振回路10bにより検出されたものであると判定されたことになる。
【0087】
また、ステップS320において、K2がα2よりも小さいときにはNOと判定して、ステップS340に移行して、上述の送信停止期間が発振回路10aの識別情報を示していると判定する。すなわち、上述の被検出対象の物理量は、発振回路10aにより検出されたものであると判定されたことになる。
【0088】
次に、無線受信機200のワンショットマルチ回路240の具体的な動作について図15を用いて説明する。図15(a)〜(d)は、発振信号、ANNDゲート241、242、10進カウンタ245の動作を示す。
【0089】
まず、クロック発生器246がクロック信号をANDゲート241に出力し、ANDゲート241に、NOTゲート244からのハイレベル信号が入力されると、ANDゲート241がクロック発生器246からのクロック信号を10進カウンタ245に出力することになる。
【0090】
10進カウンタ245は、デジタル復調回路40からの発振信号の立ち下がりを検出するとリセットする。このため、発振回路10Aの送信期間内では、10進カウンタ245が、クロック信号の立ち下がりを繰り返し検出するが、その都度リセットすることになる。
【0091】
その後、発振回路10Aの送信期間が終了し、10進カウンタ245が、クロック信号の最終の立ち下がりTsaを検出すると、リセットしてクロック発生器246からのクロック信号のカウントを開始する。
【0092】
これに伴い、10進カウンタ245が、4ビットデータ「Q0、Q1、Q2、Q3」を出力する。この4ビットデータ「Q0、Q1、Q2、Q3」は、10進カウンタ245のカウント動作に伴って、「0、0、0、0」、「1、0、0、0」、「0、1、0、0」…の順で変化する(「1」はハイレベル信号を示し、「0」はローレベル信号を示す)。
【0093】
その後、カウントの開始から一定期間tdを経過すると、10進カウンタ245がクロック発生器246からのクロック信号の7個目のパルスをカウントして、4ビットデータ「Q0、Q1、Q2、Q3」として「1、1、1、0」を出力する。ここで、一定期間tdは、発振信号の発振周期Th×k(>1、例えばk=1.5)に相当する。
【0094】
このとき、ビットデータ「Q3」(=0)がNOTゲート243に入力されるので、NOTゲート243がハイレベル信号をANDゲート242に向けて出力する。このため、「Q0、Q1、Q2」およびNOTゲート243からのハイレベル信号(「1」)がANDゲート242に入力され、ANDゲート242の出力信号のレベルがローレベルからハイレベルに変化する。これに伴い、NOTゲート244の出力信号のレベルがハイレベルからローレベルに変化する。
【0095】
したがって、ANDゲート241には、クロック発生器246からのクロック信号のレベルが変化しても、ANDゲート241の出力信号は、ローレベルが維持される。
【0096】
これに伴い、10進カウンタ245によるクロック動作は停止して10進カウンタ245は4ビットデータ「Q0、Q1、Q2、Q3」として「1、1、1、0」を出力し続けることになる。このため、NOTゲート243の出力信号はローレベルに維持されるので、ANDゲート242の出力信号はローレベルに維持される。
【0097】
その後、発振回路10Bの送信期間が開始され、10進カウンタ245が送信期間の最初のクロック信号の立ち下がりを検出すると10進カウンタ245はリセットする。
【0098】
これに伴い、10進カウンタ245が、4ビットデータ「Q0、Q1、Q2、Q3」として「0、0、0、0」を出力する。このとき、ビットデータ「Q3」(=0)がNOTゲート243に入力されるので、NOTゲート243がハイレベル信号をANDゲート242に向けて出力する。
【0099】
このとき、「Q0、Q1、Q2」およびNOTゲート243からのハイレベル信号がANDゲート242に入力され、ANDゲート242の出力信号のレベルがハイレベルからローレベルに変化する。
【0100】
その後、発振回路10Bの送信期間の終了時期(図15中Tsa)まで10進カウンタ245はリセットを繰り返す。このとき、10進カウンタ245によるカウント数は「7」未満であるため、4ビットデータ「Q0、Q1、Q2、Q3」≠「1、1、1、0」となり、ANDゲート242の出力信号はローレベルに維持される。
【0101】
以上説明した動作が繰り返され、発振回路の送信期間が終了してクロック信号の最終の立ち下がりの時期Tsaになると、ANDゲート242の出力信号のレベルがローレベルからハイレベルに変化する。すなわち、ワンショットマルチ回路240がローレベル信号に代えてハイレベル信号を出力することになる。
【0102】
その後、発振回路の送信期間が開始してクロック信号の最初の立ち下がりの時期Tenになると、ANDゲート242の出力信号のレベルがハイレベルからローレベルに変化する。すなわち、ワンショットマルチ回路240がハイレベル信号に代えてローレベル信号を出力することになる。
【0103】
以上説明した本実施形態によれば、無線送信機100において、ある発振回路とデジタル変調回路20との間の接続を終了後、送信停止期間(所定期間)を開けて、次の発振回路とデジタル変調回路20との間の接続を開始し、送信停止期間は、ある発振回路の識別情報を示すようになっている。
【0104】
また、無線受信機200は、無線送信機100から送信される発振信号に基づいて被検出対象の物理量を求める。これに加えて、無線受信機200は、送信停止期間の時間長を計時することにより、当該被検出対象の物理量がいずれの発振回路により検出されたかを判別することができる。
【0105】
上述の第2実施形態では、ある発振回路の送信期間の終了後、送信停止期間を開けて、次の発振回路の送信期間を開始し、当該送信停止期間が、ある発振回路の識別情報を示すようした例について説明したが、これに限らず、当該送信停止期間が、次の発振回路の発振回路の識別情報を示すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係る第1実施形態のテレメータの無線送信機の電気回路構成を示す電気回路図である。
【図2】上述の第1実施形態のテレメータの無線受信機の電気回路構成を示す電気回路図である。
【図3】上述の第1実施形態のテレメータの無線送信機において発振回路の作動を説明するための回路図である。
【図4】上述の第1実施形態のテレメータの無線送信機において発振回路の作動を説明するための回路図である。
【図5】上述の第1実施形態のテレメータの無線送信機において発振回路の作動を説明するための回路図である。
【図6】上述の第1実施形態のテレメータの作動を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】上述の第1実施形態のテレメータの作動を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】本発明に係る第2実施形態のテレメータの無線送信機の電気回路構成を示す電気回路図である。
【図9】上述の第2実施形態のテレメータの無線受信機の電気回路構成を示す電気回路図である。
【図10】上述の第2実施形態のテレメータの無線送信機の作動を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】上述の第2実施形態の無線送信機のエンコーダの制御処理を示すフローチャートである。
【図12】上述の第2実施形態のテレメータの無線受信機の作動を説明するためのタイミングチャートである。
【図13】上述の第2実施形態の無線受信機のエンコーダの制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図14】上述の第2実施形態の無線受信機のエンコーダの制御処理の残りを示すフローチャートである。
【図15】上述の第2実施形態の無線受信機のワンショットマルチ回路作動を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0107】
10…発振回路、20…デジタル変調回路、30…送信アンテナ、
100…無線送信機、200…無線受信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出対象の物理量を検出するセンサを有して、このセンサによって検出される物理量を示す検出信号を送信するテレメータの無線送信機であって、
前記センサによって検出される物理量の変化に伴って周期が変化する発振信号を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力される発振信号をデジタル変調方式により変調するデジタル変調回路と、を備え、
前記デジタル変調回路から出力される被変調信号が前記検出信号として送信されるようになっていることを特徴とするテレメータの無線送信機。
【請求項2】
前記発振回路を複数備えており、
前記複数の発振回路と前記デジタル変調回路との間を接続、或いは遮断するための接続・遮断手段と、
前記デジタル変調回路に対して前記複数の発振回路のうち1つの発振回路だけを接続し、かつこの接続される1つの発振回路を順次切り替えるように前記接続・遮断手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のテレメータの無線送信機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記接続・遮断手段を制御して、前記複数の発振回路のうち1つの発振回路と前記デジタル変調回路との間の接続を終了後、所定時間を開けて、次の発振回路と前記デジタル変調回路との間の接続を開始するようになっており、
前記所定時間は、前記1つの発振回路と前記次の発振回路とのうちいずれか一方の識別情報を示していることを特徴とする請求項2に記載のテレメータの無線送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−115084(P2007−115084A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306676(P2005−306676)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】