説明

テンプレート処理方法、プログラム、コンピュータ記憶媒体、テンプレート処理装置及びインプリントシステム

【課題】テンプレートの表面に離型剤を適切に成膜しつつ、テンプレート処理のスループットを向上させる。
【解決手段】テンプレートの表面に離型剤を成膜するテンプレート処理では、先ず、テンプレートの表面を洗浄する(工程A2)。その後、塗布ユニットにおいて、テンプレートの表面に離型剤を塗布する(工程A3)。その後、テンプレート上の離型剤を乾燥させる(工程A4)。その後、テンプレート上の離型剤にアルコールを塗布して、テンプレートの表面に離型剤を密着させ、さらに離型剤の未反応部分を除去する(工程A5)。その後、テンプレート上のアルコールを乾燥除去する(工程A6)。こうしてテンプレートの表面に離型剤が所定の膜厚で成膜される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に転写パターンが形成されたテンプレート上に離型剤を成膜するテンプレート処理方法、プログラム、コンピュータ記憶媒体、テンプレート処理装置及びインプリントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造工程では、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)にフォトリソグラフィー処理を行い、ウェハ上に所定のレジストパターンを形成することが行われている。
【0003】
上述したレジストパターンを形成する際には、半導体デバイスのさらなる高集積化を図るため、当該レジストパターンの微細化が求められている。一般にフォトリソグラフィー処理における微細化の限界は、露光処理に用いる光の波長程度である。このため、従来より露光処理の光を短波長化することが進められている。しかしながら、露光光源の短波長化には技術的、コスト的な限界があり、光の短波長化を進める方法のみでは、例えば数ナノメートルオーダーの微細なレジストパターンを形成するのが困難な状況にある。
【0004】
そこで、近年、ウェハにフォトリソグラフィー処理を行う代わりに、いわゆるインプリントと呼ばれる方法を用いてウェハ上に微細なレジストパターンを形成することが提案されている。この方法は、表面に微細なパターンを有するテンプレート(モールドや型と呼ばれることもある。)をウェハ上に形成したレジスト表面に圧着させ、その後剥離し、当該レジスト表面に直接パターンの転写を行うものである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−43998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のインプリント方法で用いられるテンプレートの表面には、テンプレートをレジストから剥離し易くするため、通常、レジストに対して撥液性を有する離型剤が成膜されている。
【0007】
テンプレートの表面に離型剤を成膜する際には、先ず、テンプレートの表面を洗浄した後、当該テンプレートの表面に離型剤を塗布する。このとき、テンプレート上の離型剤の接触角は、例えば77度〜80度になっている。次に、成膜される離型剤が所定の接触角、例えば110度程度を有してレジストに対する撥液性機能を発揮できるようにするため、離型剤をテンプレートの表面に密着させる。具体的には、離型剤とテンプレートの表面を化学反応させて、離型剤中に含まれる成分のうち、レジストに対して撥液性を有する成分、例えばフッ化物成分をテンプレートの表面に吸着させる。その後、離型剤の未反応部を除去して、テンプレートの表面に所定の膜厚の離型剤が成膜される。なお、離型剤の未反応部とは、離型剤がテンプレートの表面と化学反応して密着する部分以外をいう。
【0008】
しかしながら、上述のように離型剤を成膜する場合、テンプレート上の離型剤をテンプレートの表面に密着させるのに時間がかかる。例えば常温雰囲気下でテンプレートを放置した場合、離型剤をテンプレートに密着させるのに約24時間かかってしまう。
【0009】
そこで、発明者らは、離型剤とテンプレートの表面との化学反応を促進させるため、テンプレート上の離型剤を加熱して焼成することを試みた。この場合、離型剤をテンプレートに密着させる時間を短縮することができた。例えば離型剤を60℃に加熱した場合、離型剤をテンプレートに密着させるのに必要な時間は約1時間であり、また離型剤を200℃に加熱した場合、離型剤をテンプレートに密着させるのに必要な時間は約3分であった。
【0010】
しかしながら、この場合、一旦加熱したテンプレートを冷却するのに時間がかかる。したがって、テンプレート処理のスループットを向上させるには至らなかった。また、離型剤を加熱すると当該離型剤は熱膨張するため、テンプレートの表面に離型剤を所定の膜厚で成膜することができない。そして、このように離型剤が成膜されたテンプレートを用いてインプリント処理を行った場合、ウェハ上に数ナノメートルオーダーの微細なレジストパターンを形成することは困難であった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、テンプレートの表面に離型剤を適切に成膜しつつ、テンプレート処理のスループットを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明は、表面に転写パターンが形成されたテンプレート上に離型剤を成膜するテンプレート処理方法であって、前記テンプレートの表面に離型剤を塗布する離型剤処理工程と、その後、前記テンプレート上の離型剤にアルコールを塗布して、前記テンプレートの表面と前記離型剤との密着性を向上させるアルコール処理工程と、を有することを特徴としている。
【0013】
発明者らが調べたところ、テンプレート上の離型剤にアルコールを塗布すると、テンプレートの表面と離型剤との化学反応が促進され、当該テンプレートの表面と離型剤との密着性が向上することが分かった。すなわち、離型剤にアルコールを塗布すると、テンプレートの表面に離型剤を短時間で密着させることができ、テンプレート上に成膜される離型剤の接触角を所定の角度にして、当該離型剤の離型機能を発揮させることができる。このように短時間で離型剤をテンプレートの表面に密着させることができるので、テンプレート処理全体のスループットを向上させることができる。しかも、この場合、従来のように離型剤を加熱する必要がないため、離型剤が熱膨張することもない。したがって、テンプレートの表面に離型剤を所定の膜厚で適切に成膜することができる。
【0014】
前記アルコール処理工程において、前記アルコールによって前記テンプレートの表面と前記離型剤との密着性を向上させた後、当該アルコールによって前記テンプレート上の離型剤の未反応部を除去してもよい。なお、離型剤の未反応部とは、離型剤がテンプレートの表面と化学反応して密着する部分以外をいう。
【0015】
少なくとも前記アルコール処理工程中又は前記アルコール処理工程後において、前記テンプレート上の離型剤に光を照射して、前記テンプレートの表面と前記離型剤との密着性をさらに向上させてもよい。かかる場合、前記光の波長は、350nm〜2500nmであるのが好ましい。
【0016】
前記テンプレート処理方法は、前記アルコール処理工程後に、リンス液によって前記テンプレート上の離型剤の未反応部を除去するリンス工程を有していてもよい。
【0017】
前記テンプレート処理方法は、前記離型剤処理工程前に、前記テンプレートの表面を洗浄する洗浄工程を有していてもよい。
【0018】
別な観点による本発明によれば、前記テンプレート処理方法をテンプレート処理装置によって実行させるために、当該テンプレート処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0019】
また別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【0020】
また別な観点による本発明は、表面に転写パターンが形成されたテンプレート上に離型剤を成膜するテンプレート処理装置であって、前記テンプレートを保持して回転させる回転保持部材と、前記テンプレートの表面に離型剤を供給する離型剤ノズルと、前記テンプレート上の離型剤にアルコールを供給するアルコールノズルと、を備えた塗布ユニットを有することを特徴としている。
【0021】
前記塗布ユニットは、前記テンプレート上の離型剤に光を照射する光照射部を備えていてもよい。かかる場合、前記塗布ユニットは、350nm〜2500nmの波長を有する前記光のみを透過させる光フィルタをさらに備えていてもよい。
【0022】
前記塗布ユニットは、前記テンプレート上の離型剤にリンス液を供給するリンス液ノズルを備えていてもよい。また、前記テンプレート処理装置は、前記塗布ユニットで前記テンプレートの表面に塗布された前記離型剤の未反応部をリンス液によって除去するリンスユニットを有していてもよい。
【0023】
前記テンプレート処理装置は、前記塗布ユニットで前記離型剤が塗布される前のテンプレートの表面を洗浄する洗浄ユニットを有していてもよい。
【0024】
さらに別な観点による本発明は、前記テンプレート処理装置を備えたインプリントシステムであって、前記テンプレート処理装置で表面に離型剤が成膜された前記テンプレートを用いて、前記転写パターンを基板上に形成される塗布膜に転写し、当該塗布膜に所定のパターンを形成するインプリントユニットを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、テンプレートの表面に離型剤を適切に成膜しつつ、テンプレート処理のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態にかかるテンプレート処理装置の構成の概略を示す平面図である。
【図2】本実施の形態にかかるテンプレート処理装置の構成の概略を示す側面図である。
【図3】本実施の形態にかかるテンプレート処理装置の構成の概略を示す側面図である。
【図4】テンプレートの斜視図である。
【図5】塗布ユニットの構成の概略を示す縦断面図である。
【図6】保持部材の構成の概略を示す平面図である。
【図7】塗布ユニットの構成の概略を示す横断面図である。
【図8】洗浄ユニットの構成の概略を示す縦断面図である。
【図9】洗浄ユニットの構成の概略を示す横断面図である。
【図10】テンプレート処理の各工程を示したフローチャートである。
【図11】テンプレート処理の各工程におけるテンプレートの状態を模式的に示した説明図であり、(a)はテンプレートの表面が洗浄された様子を示し、(b)はテンプレートの表面に離型剤が塗布された様子を示し、(c)はテンプレート上の離型剤にアルコールが塗布された様子を示し、(d)はテンプレート上に離型剤が成膜された様子を示す。
【図12】他の実施の形態にかかる塗布ユニットの構成の概略を示す縦断面図である。
【図13】他の実施の形態にかかる塗布ユニットの構成の概略を示す横断面図である。
【図14】他の実施の形態にかかるテンプレート処理装置の構成の概略を示す側面図である。
【図15】リンスユニットの構成の概略を示す縦断面図である。
【図16】本実施の形態にかかるインプリントシステムの構成の概略を示す平面図である。
【図17】インプリントユニットの構成の概略を示す縦断面図である。
【図18】インプリントユニットの構成の概略を示す横断面図である。
【図19】インプリント処理の各工程を示したフローチャートである。
【図20】インプリント処理の各工程におけるテンプレートとウェハの状態を模式的に示した説明図であり、(a)はウェハ上にレジスト液が塗布された様子を示し、(b)はウェハ上のレジスト膜を光重合させた様子を示し、(c)はウェハ上にレジストパターンが形成された様子を示し、(d)はウェハ上の残存膜が除去された様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかるテンプレート処理装置1の構成の概略を示す平面図である。図2及び図3は、テンプレート処理装置1の構成の概略を示す側面図である。
【0028】
本実施の形態のテンプレート処理装置1では、図4に示すように直方体形状を有し、表面に所定の転写パターンCが形成されたテンプレートTが処理される。以下、転写パターンCが形成されているテンプレートTの面を表面Tといい、当該表面Tと反対側の面を裏面Tという。なお、テンプレートTには、可視光、近紫外光、紫外線などの光を透過可能な透明材料、例えばガラスが用いられる。
【0029】
テンプレート処理装置1は、図1に示すように複数、例えば5枚のテンプレートTをカセット単位で外部とテンプレート処理装置1との間で搬入出したり、テンプレートカセットCに対してテンプレートTを搬入出したりするテンプレート搬入出ステーション2と、テンプレートTに所定の処理を施す複数の処理ユニットを備えた処理ステーション3とを一体に接続した構成を有している。
【0030】
テンプレート搬入出ステーション2には、カセット載置台10が設けられている。カセット載置台10は、複数のテンプレートカセットCをX方向(図1中の上下方向)に一列に載置自在になっている。すなわち、テンプレート搬入出ステーション2は、複数のテンプレートTを保有可能に構成されている。
【0031】
テンプレート搬入出ステーション2には、X方向に延伸する搬送路11上を移動可能なテンプレート搬送体12が設けられている。テンプレート搬送体12は、鉛直方向及び鉛直周り(θ方向)にも移動自在であり、テンプレートカセットCと処理ステーション3との間でテンプレートTを搬送できる。
【0032】
処理ステーション3には、その中心部に搬送ユニット20が設けられている。この搬送ユニット20の周辺には、各種処理ユニットが多段に配置された、例えば4つの処理ブロックG1〜G4が配置されている。処理ステーション3の正面側(図1のX方向負方向側)には、テンプレート搬入出ステーション2側から第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2が順に配置されている。処理ステーション3の背面側(図1のX方向正方向側)には、テンプレート搬入出ステーション2側から第3の処理ブロックG3、第4の処理ブロックG4が順に配置されている。処理ステーション3のテンプレート搬入出ステーション2側には、テンプレートTの受け渡しを行うためのトランジションユニット21が配置されている。
【0033】
搬送ユニット20は、テンプレートTを保持して搬送し、且つ水平方向、鉛直方向及び鉛直周りに移動自在な搬送アームを有している。そして、搬送ユニット20は、処理ブロックG1〜G4内に配置された後述する各種処理ユニット、及びトランジションユニット21に対してテンプレートTを搬送できる。
【0034】
第1の処理ブロックG1には、図2に示すように複数の液処理ユニット、例えばテンプレートTに液体状の離型剤とアルコールを塗布する塗布ユニット30、31が下から順に2段に重ねられている。第2の処理ブロックG2も同様に、塗布ユニット32、33が下から順に2段に重ねられている。また、第1の処理ブロックG1及び第2の処理ブロックG2の最下段には、前記塗布ユニット30〜33に離型剤を供給するためのケミカル室34、35がそれぞれ設けられている。
【0035】
第3の処理ブロックG3には、図3に示すようにテンプレートTに対して紫外線を照射し、テンプレートT上に離型剤が成膜される前の表面Tを洗浄する洗浄ユニット40、41が下から順に2段に重ねられている。
【0036】
第4の処理ブロックG4にも、第3の処理ブロックG3と同様に、洗浄ユニット42、43が下から順に2段に重ねられている。
【0037】
次に、上述した塗布ユニット30〜33の構成について説明する。塗布ユニット30は、図5に示すように側面にテンプレートTの搬入出口(図示せず)が形成された処理容器110を有している。
【0038】
処理容器110内の中央部には、テンプレートTを保持して回転させる回転保持部材111が設けられている。回転保持部材111の中央部分は下方に窪み、テンプレートTを収容する収容部112が形成されている。収容部112の下部には、テンプレートTの外形より小さい溝部112aが形成されている。したがって、収容部112内では、溝部112aによってテンプレートTの下面内周部は回転保持部材111と接しておらず、テンプレートTの下面外周部のみが回転保持部材111に支持されている。収容部112は、図6に示すようにテンプレートTの外形に適合した略四角形の平面形状を有している。収容部112には、側面から内側に突出した突出部113が複数形成され、この突出部113により、収容部112に収容されるテンプレートTの位置決めがされる。また、搬送ユニット20の搬送アームから収容部112にテンプレートTを受け渡す際に、当該搬送アームが収容部112と干渉するのを避けるため、収容部112の外周には、切欠き部114が4箇所に形成されている。
【0039】
回転保持部材111は、図5に示すようにカバー体115に取り付けられ、回転保持部材111の下方には、シャフト116を介して回転駆動部117が設けられている。この回転駆動部117により、回転保持部材111は鉛直周りに所定の速度で回転でき、且つ昇降できる。
【0040】
回転保持部材111の周囲には、テンプレートTから飛散又は落下する離型剤を受け止め、回収するカップ120が設けられている。カップ120の下面には、回収した離型剤を排出する排出管121と、カップ120内の雰囲気を排気する排気管122が接続されている。
【0041】
図7に示すようにカップ120のX方向負方向(図7の下方向)側には、Y方向(図7の左右方向)に沿って延伸するレール130が形成されている。レール130は、例えばカップ120のY方向負方向(図7の左方向)側の外方からY方向正方向(図7の右方向)側の外方まで形成されている。レール130には、例えば2本のアーム131、132が取り付けられている。
【0042】
第1のアーム131には、テンプレートT上に離型剤を供給する離型剤ノズル133が支持されている。第1のアーム131は、ノズル駆動部134により、レール130上を移動自在である。これにより、離型剤ノズル133は、カップ120のY方向正方向側の外方に設置された待機部135からカップ120内のテンプレートTの中心部上方まで移動できる。また、第1のアーム131は、ノズル駆動部134によって昇降自在であり、離型剤ノズル133の高さを調整できる。なお、離型剤の材料には、後述するウェハ上のレジスト膜に対して撥液性を有する材料、例えばフッ素炭素系化合物等が用いられる。また、本実施の形態では液体状の離型剤を用いているが、気体状の離型剤を用いてもよい。
【0043】
第2のアーム132には、テンプレートT上の離型剤に常温のアルコール、例えばエタノールを供給するアルコールノズル140が支持されている。第2のアーム132は、ノズル駆動部141によってレール130上を移動自在である。これにより、アルコールノズル140は、カップ122のY方向負方向側の外方に設けられた待機部142からカップ122内のテンプレートTの中心部上方まで移動できる。また、第2のアーム132は、ノズル駆動部141によって昇降自在であり、アルコールノズル140の高さを調節できる。なお、アルコールはアルコール類であればよく、エタノール以外の他のアルコールを用いてもよい。例えばメタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールを用いてもよく、あるいはこれらのアルコールの混合物を用いてもよい。また、アルコールの濃度は特に限定されないが、100%であることが好ましい。また、本実施の形態では常温のアルコールを用いているが、アルコールが結露するのを抑制するため、例えば70℃以下に加熱したアルコールを用いてもよい。さらに、本実施の形態では液体状のアルコールを用いているが、気体状のアルコールを用いてもよい。
【0044】
なお、以上の構成では、離型剤ノズル133とアルコールノズル140が別々のアーム131、132に支持されていたが、同じアームに支持され、そのアームの移動の制御により、離型剤ノズル133とアルコールノズル140の移動と供給タイミングを制御してもよい。また、例えば回転保持部材111の溝部112a内に、洗浄液、例えば有機溶剤を噴射する洗浄液ノズルを設けてもよい。この洗浄液ノズルからテンプレートTの裏面Tに洗浄液を噴射することによって、当該裏面Tを洗浄することができる。
【0045】
なお、塗布ユニット31〜33の構成は、上述した塗布ユニット30の構成と同様であるので説明を省略する。
【0046】
次に、上述した洗浄ユニット40〜43の構成について説明する。洗浄ユニット40は、図8に示すように側面にテンプレートTの搬入出口(図示せず)が形成された処理容器140を有している。
【0047】
処理容器140内には、テンプレートTを吸着保持するチャック141が設けられている。チャック141は、テンプレートTの表面Tが上方を向くように、その裏面Tを吸着保持する。チャック141の下方には、チャック駆動部142が設けられている。このチャック駆動部142は、処理容器150内の底面に設けられ、Y方向に沿って延伸するレール143上に取付けられている。このチャック駆動部142により、チャック141はレール143に沿って移動できる。
【0048】
処理容器140内の天井面であって、レール143の上方には、チャック141に保持されたテンプレートTに紫外線を照射する紫外線照射部144が設けられている。紫外線照射部144は、図9に示すようにX方向に延伸している。そして、テンプレートTがレール143に沿って移動中に、紫外線照射部144から当該テンプレートTの表面Tに紫外線を照射することで、テンプレートTの表面T全面に紫外線が照射される。
【0049】
なお、洗浄ユニット41〜43の構成は、上述した洗浄ユニット40の構成と同様であるので説明を省略する。
【0050】
以上のテンプレート処理装置1には、図1に示すように制御部200が設けられている。制御部200は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、テンプレート搬入出ステーション2と処理ステーション3との間のテンプレートTの搬送や、処理ステーション3における駆動系の動作などを制御して、テンプレート処理装置1における後述するテンプレート処理を実行するプログラムが格納されている。なお、このプログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部200にインストールされたものであってもよい。
【0051】
本実施の形態にかかるテンプレート処理装置1は以上のように構成されている。次に、そのテンプレート処理装置1で行われるテンプレート処理について説明する。図10は、このテンプレート処理の主な処理フローを示し、図11は、各工程におけるテンプレートTの状態を示している。
【0052】
先ず、テンプレート搬送体12によって、カセット載置台10上のテンプレートカセットCからテンプレートTが取り出され、処理ステーション3のトランジションユニット21に搬送される(図10の工程A1)。このとき、テンプレートカセットC内には、テンプレートTは、転写パターンCが形成された表面Tが上方を向くように収容されており、この状態でテンプレートTはトランジションユニット21に搬送される。
【0053】
その後、搬送ユニット20によって、テンプレートTは、洗浄ユニット40に搬送され、チャック141に吸着保持される。続いて、チャック駆動部142によってテンプレートTをレール143に沿って移動させながら、紫外線照射部144から当該テンプレートTに紫外線が照射される。こうして、テンプレートTの表面T全面に紫外線が照射され、図11(a)に示すようにテンプレートTの表面Tの有機汚染物やパーティクル等の不純物が除去され、当該表面Tが洗浄される(図10の工程A2)。
【0054】
その後、搬送ユニット20によって、テンプレートTは塗布ユニット30に搬送され、回転保持部材111に受け渡される。続いて、第1のアーム131により離型剤ノズル133をテンプレートTの中心部上方まで移動させると共に、テンプレートTを回転させる。そして、テンプレートTを例えば10秒間回転させると共に、回転中のテンプレートT上に離型剤を供給し、遠心力により離型剤をテンプレートT上で拡散させる。こうして、図11(b)に示すようにテンプレートTの表面T全面に離型剤Sが塗布される(図10の工程A3)。
【0055】
その後、離型剤ノズル133からの離型剤Sの供給を停止すると共に、テンプレートTをさらに例えば20秒間回転させる。このテンプレートTの回転により、当該テンプレートT上の離型剤Sを乾燥させる(図10の工程A4)。このように離型剤Sを乾燥させている間に、離型剤ノズル133がテンプレートTの中心部上方から移動すると共に、第2のアーム132により待機部142のアルコールノズル140がテンプレートTの中心部上方まで移動する。
【0056】
テンプレートT上の離型剤Sが乾燥すると、引き続きテンプレートTを例えば10秒間回転させると共に、回転中のテンプレートT上の離型剤Sにアルコールを供給する。供給されたアルコールは、遠心力により離型剤S上を拡散し、テンプレートTの表面T全面に塗布される(図10の工程A5)。こうして塗布されたアルコールによって、図11(c)に示すように離型剤SがテンプレートTの表面Tと強固且つ密に化学反応し、当該テンプレートTの表面Tに離型剤Sが密着する。また、このようにテンプレートTの表面Tに離型剤Sが密着した後、さらに離型剤S上のアルコールによって離型剤Sの未反応部のみ、すなわち離型剤SがテンプレートTの表面Tと化学反応して当該表面Tと密着する部分以外のみが除去される。このとき、テンプレートTの表面Tに離型剤Sが密着しているので、テンプレートTの表面Tから所定の距離の離型剤Sが剥離することはない。また、テンプレートT上の離型剤Sの接触角は所定の角度、例えば108度になっており、離型剤Sは後述するレジスト膜に対して十分な撥液性を有し、その離型機能を発揮することができる。こうして、図11(d)に示すようにテンプレートT上に転写パターンCに沿った離型剤Sが所定の膜厚で成膜される。
【0057】
その後、アルコールノズル140からのアルコールの供給を停止すると共に、テンプレートTをさらに例えば20秒間回転させる。このテンプレートTの回転により、当該テンプレートT上のアルコールを乾燥させて除去する(図10の工程A6)。
【0058】
その後、搬送ユニット20によって、テンプレートTはトランジションユニット21に搬送され、テンプレート搬送体12によってテンプレートカセットCに戻される(図10の工程A7)。こうしてテンプレート処理装置1における一連のテンプレート処理が終了し、テンプレートTの表面Tに、転写パターンCの形状に沿った離型剤Sが所定の膜厚で成膜される。
【0059】
以上の実施の形態によれば、工程A5においてテンプレートT上の離型剤Sにアルコールを塗布しているので、テンプレートTの表面Tと離型剤Sとの化学反応が促進され、当該テンプレートTの表面Tと離型剤Sの密着性が向上する。すなわち、テンプレートTの表面Tに離型剤Sを短時間で密着させることができる。これによって、工程A1〜工程A7のテンプレート処理のスループットを向上させることができる。
【0060】
また、工程A5においてアルコールによってテンプレートTの表面Tに離型剤Sを密着させた後、さらに離型剤S上のアルコールによって離型剤Sの未反応部分のみが除去される。このようにテンプレートTの表面Tと離型剤Sとの密着と、離型剤Sの未反応部分の除去を同じ工程で行っているので、テンプレート処理のスループットをさらに向上させることができる。
【0061】
また、工程A5においてテンプレートTの表面Tに離型剤Sが密着するので、当該テンプレートT上の離型剤Sの接触角を所定の角度にすることができる。これによって、離型剤Sはレジスト膜に対して十分な撥液性を有し、その離型機能を発揮することができる。
【0062】
また、工程A5においてテンプレートTの表面Tと離型剤Sを密着させる際、従来のように離型剤を加熱していないので、離型剤Sが熱膨張することがない。したがって、テンプレートTの表面Tに離型剤Sを所定の膜厚で適切に成膜することができる。
【0063】
また、工程A4〜工程A6、すなわち離型剤Sの塗布及び乾燥とアルコールの塗布及び乾燥を一の塗布ユニット30で行っているので、テンプレートTの表面Tと離型剤Sとを密着させるための処理を行う処理ユニットを別途設ける必要がない。このため、テンプレート処理装置1を小型化することができる。
【0064】
また、工程A2においてテンプレートTの表面Tを洗浄しているので、その後工程S3においてテンプレートTの表面Tに離型剤Sを所定の膜厚で塗布することができる。なお、この工程A2は、テンプレートTの表面Tが予め十分に洗浄されている場合には省略してもよい。
【0065】
なお、以上の実施の工程では、工程A4と工程A6において、テンプレートTを回転させることにより、テンプレートT上の離型剤Sとアルコールを乾燥させていたが、例えば窒素等の不活性ガスや乾燥空気などのガスをテンプレートTの表面Tに吹き付けて、テンプレートT上の離型剤Sとアルコールを積極的に乾燥させてもよい。かかる場合、塗布ユニット30には、前記ガスをテンプレートTの表面Tに吹き付けるガスノズルが別途設けられる。
【0066】
以上の実施の形態の塗布ユニット30において、テンプレートT上の離型剤Sに光を照射してもよい。かかる場合、図12に示すように塗布ユニット30の処理容器110内の天井面であって、回転保持部材111の上方には、テンプレートTに光を照射する光照射部210が設けられている。光照射部210は、回転保持部材111に保持されたテンプレートTの表面Tに対向し、当該表面T全面を覆うように配置されている。なお、光照射部210には、例えばメタルハイドランプが用いられる。
【0067】
回転保持部材111と光照射部210との間には、所定の波長の光のみを透過させる光フィルタ211が配置されている。光フィルタ211は、回転保持部材111に保持されたテンプレートTの表面Tに対向し、当該表面T全面を覆うように配置されている。なお、光フィルタ211は、光照射部210における光の照射面に配置してもよい。また、光照射部210と光フィルタ211は、回転保持部材111に対して斜め上方に配置してもよい。
【0068】
上述した光フィルタ211が透過させる光の所定の波長は、例えば350nm〜2500nmである。発明者らが調べたところ、かかる波長の光をテンプレートT上の離型剤Sに照射すると、テンプレートTの表面Tと離型剤Sの化学結合を促進させることができ、テンプレートTの表面Tと離型剤Sとの密着性が向上することが分かった。すなわち、上述したアルコールによるテンプレートTの表面Tと離型剤Sの化学結合をさらに促進させることができ、より短時間でテンプレートTの表面Tに離型剤Sを密着させることができることが分かった。また、350nmより短い波長の光を離型剤Sに照射すると、離型剤Sが破壊されてその離型機能が損なわれる場合があることが分かった。さらに、2500nmより長い波長の光を離型剤Sに照射すると、離型剤Sが加熱され熱膨張する場合があることが分かった。そこで、テンプレートTの表面Tに離型剤Sを所定の膜厚で適切に成膜するため、光の所定の波長を上述のように350nm〜2500nmとした。なお、光フィルタ211は、350nmより短い波長の光を遮断するフィルタと、2500nmより長い波長の光を遮断するフィルタを重ね合わせて形成してもよい。
【0069】
なお、塗布ユニット30のその他の構成は、前記実施の形態の塗布ユニット30の構成と同様であるので説明を省略する。
【0070】
かかる場合、工程A5においてテンプレートT上の離型剤Sにアルコールを塗布すると共に、光照射部210から下方に光が照射される。照射された光のうち、350nmより短い波長の光と2500nmより長い波長の光は、光フィルタ211によってその進行を遮断される。そして、350nm〜2500nmの波長の光のみが光フィルタ211を透過し、テンプレートT上の離型剤Sに照射される。そしてこれらアルコールと光によって、テンプレートTの表面Tと離型剤Sの化学結合が促進され、テンプレートTの表面Tに離型剤Sを短時間、例えば5秒間で密着する。このようにテンプレートTの表面Tと離型剤Sをさらに短時間で密着させることができるので、テンプレート処理のスループットをさらに向上させることができる。なお、工程A1〜A4、工程A6、A7は、前記実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0071】
以上の実施の形態では、工程A5においてテンプレートT上の離型剤Sにアルコールを塗布すると共に、当該離型剤Sに光を照射していたが、工程A6においてテンプレートT上のアルコールを乾燥除去した後、離型剤Sに光を照射してもよい。また、工程A5から工程A6の後まで、連続して離型剤Sに光を照射してもよい。いずれの場合でも、テンプレートTの表面Tに離型剤Sを短時間で密着させることができる。
【0072】
以上の実施の形態の塗布ユニット30は、図13に示すようにテンプレートT上の離型剤Sにリンス液、例えば離型剤Sの溶剤を供給するリンス液ノズル220をさらに有していてもよい。リンス液ノズル220は、第3のアーム221に支持されている。第3のアーム221は、ノズル駆動部222により、レール130上を移動自在である。これにより、リンス液ノズル220は、待機部142とカップ120との間に設置された待機部223から、カップ120内のテンプレートTの中心部上方を通り、待機部135とカップ120との間に設置された待機部224まで移動できる。また、第3のアーム221は、ノズル駆動部222によって昇降自在であり、リンス液ノズル220の高さを調整できる。なお、塗布ユニット30のその他の構成については、前記実施の形態と同様であるので説明を省略する。また、以上の構成では、リンス液ノズル220は第3のアーム221に支持されていたが、離型剤ノズル133とアルコールノズル140と共に同じアームに支持されてもよい。
【0073】
かかる場合、工程A6においてテンプレートT上のアルコールを乾燥させている間に、アルコールノズル140がテンプレートTの中心部上方から移動すると共に、第3のアーム221により待機部224のリンス液ノズル220がテンプレートTの中心部上方まで移動する。そして、回転中のテンプレートT上にリンス液を供給し、テンプレートTの表面T全面をリンスする。所定時間経過すると、離型剤Sの未反応部のみが剥離し、テンプレートT上に転写パターンCに沿った離型剤Sが成膜される。その後、リンス液の供給を停止した後、さらにテンプレートTを回転させ続け、その表面Tを振り切り乾燥させる。このようにして、テンプレートT上の離型剤Sがリンスされる。離型剤Sのリンス処理が終了すると、工程A7においてテンプレートTはテンプレートカセットCに戻される。なお、工程A1〜A7は、前記実施の形態と同様であるので説明を省略する。また、以上の構成では、テンプレートTを回転させることによりリンス液を乾燥させていたが、例えば窒素等の不活性ガスや乾燥空気などのガスをテンプレートTの表面Tに吹き付けて、テンプレートT上のリンス液を積極的に乾燥させてもよい。
【0074】
以上の実施の形態によれば、工程A5でアルコールによって離型剤Sの未反応部分を除去しきれない場合でも、この離型剤Sの未反応部分をリンス液によって確実に除去することができる。したがって、テンプレートT上の離型剤Sをより確実に所定の膜厚で成膜することができる。
【0075】
以上の実施の形態では、塗布ユニット30にリンス液ノズル220を設けたが、これに代えて、リンス液によってテンプレートT上の離型剤Sの未反応部を除去するリンスユニットをテンプレート処理装置1内にさらに設けてもよい。かかる場合、図14に示すように第1の処理ブロックG1には、図2に示した塗布ユニット31に代えて、リンスユニット230が配置される。同様に、第2の処理ブロックG2にも、塗布ユニット33に代えて、リンスユニット231が配置される。また、リンスユニット230、231には、それぞれケミカル室34、35からリンス液が供給される。
【0076】
リンスユニット230は、図15に示すように側面にテンプレートTの搬入出口(図示せず)が形成された処理容器240を有している。
【0077】
処理容器240内の底面には、テンプレートTを浸漬させる浸漬槽241が設けられている。浸漬槽241内には、テンプレートT上の離型剤Sをリンスするためのリンス液が貯留されている。
【0078】
処理容器240内の天井面であって、浸漬槽241の上方には、テンプレートTを保持する保持部242が設けられている。保持部242は、テンプレートTの裏面Tの外周部を吸着保持するチャック243を有している。テンプレートTは、その表面Tが上方を向くようにチャック243に保持される。チャック243は、昇降機構244により昇降できる。そして、テンプレートTは、保持部242に保持された状態で浸漬槽241に貯留されたリンス液に浸漬され、当該テンプレートT上の離型剤Sがリンスされる。
【0079】
保持部242は、チャック243に保持されたテンプレートTの上方に設けられたガス供給部245を有している。ガス供給部245は、例えば窒素等の不活性ガスや乾燥空気などのガスを下方、すなわちチャック243に保持されたテンプレートTの表面Tに吹き付けることができる。これにより、浸漬槽241でリンスされたテンプレートTの表面Tを乾燥させることができる。なお、リンスユニット230には、内部の雰囲気を排気する排気管(図示せず)が接続されている。
【0080】
なお、リンスユニット231の構成は、上述したリンスユニット230の構成と同様であるので説明を省略する。
【0081】
かかる場合、工程A6においてテンプレートT上のアルコールを乾燥除去した後、テンプレートTはリンスユニット230に搬送され、保持部242に保持される。続いて、保持部242を下降させ、テンプレートTを浸漬槽241に貯留されたリンス液に浸漬させる。所定時間経過すると、離型剤Sの未反応部のみが剥離する。その後、保持部242を上昇させ、ガス供給部245からガスをテンプレートTに吹き付け、その表面Tを乾燥させる。こうしてリンスユニット230での処理が終了すると、工程A7においてテンプレートTはテンプレートカセットCに戻される。なお、工程A1〜A7は、前記実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0082】
以上の実施の形態においても、工程A5でアルコールによって離型剤Sの未反応部分を除去しきれない場合に、この離型剤Sの未反応部分をリンス液によって確実に除去することができる。したがって、テンプレートT上の離型剤Sをより確実に所定の膜厚で成膜することができる。
【0083】
以上の実施の形態では、洗浄ユニット40において、テンプレートTを移動させながら、当該移動中のテンプレートTに紫外線を照射していたが、例えば図12に示した塗布ユニット30と同様に、テンプレートTの表面T全面を覆う紫外線照射部を用いて、テンプレートTに紫外線を照射してもよい。かかる場合、一度の照射でテンプレートTの表面T全面に紫外線を照射することができるので、テンプレートTの表面Tの洗浄を迅速に行うことができる。また、この場合、テンプレートTを回転させ、当該回転中のテンプレートTの表面T全面に紫外線を照射してもよい。
【0084】
以上の実施の形態のテンプレート処理装置1は、図16に示すようにインプリントシステム300に配置されていてもよい。インプリントシステム300は、テンプレートTを用いて基板としてのウェハW上にレジストパターンを形成するインプリントユニット310と、複数、例えば25枚のウェハWをカセット単位で外部とインプリントシステム300との間で搬入出したり、ウェハカセットCに対してウェハWを搬入出したりするウェハ搬入出ステーション311とを有している。また、テンプレート処理装置1とインプリントユニット310との間には、テンプレートTの受け渡しを行うインターフェイスステーション312が配置されている。インプリントシステム300は、これらテンプレート処理装置1、インターフェイスステーション312、インプリントユニット310、ウェハ搬入出ステーション311を一体に接続した構成を有している。
【0085】
ウェハ搬入出ステーション311には、カセット載置台320が設けられている。カセット載置台320は、複数のウェハカセットCをX方向(図16中の上下方向)に一列に載置自在になっている。すなわち、ウェハ搬入出ステーション311は、複数のウェハWを保有可能に構成されている。
【0086】
ウェハ搬入出ステーション311には、X方向に延伸する搬送路321上を移動可能なウェハ搬送体322が設けられている。ウェハ搬送体322は、鉛直方向及び鉛直周り(θ方向)にも移動自在であり、ウェハカセットCとインプリントユニット310との間でウェハWを搬送できる。
【0087】
ウェハ搬入出ステーション311には、ウェハWの向きを調整するアライメントユニット323がさらに設けられている。アライメントユニット323では、例えばウェハWのノッチ部の位置に基づいて、ウェハWの向きが調整される。
【0088】
インターフェイスステーション312には、X方向に延伸する搬送路330上を移動するテンプレート搬送体331が設けられている。また、搬送路330のX方向正方向側には、テンプレートTの表裏面を反転させる反転ユニット332が配置され、搬送路330のX方向負方向側には、複数のテンプレートTを一時的に保管するバッファカセット333が配置されている。テンプレート搬送体331は、鉛直方向及び鉛直周り(θ方向)にも移動自在であり、処理ステーション3、反転ユニット332、バッファカセット333、インプリントユニット310との間でテンプレートTを搬送できる。
【0089】
テンプレート処理装置1の処理ステーション3には、搬送ユニット20のインターフェイスステーション312側に、テンプレートTの受け渡しを行うためのトランジションユニット334が配置されている。
【0090】
次に、上述したインプリントユニット310の構成について説明する。インプリントユニット310は、図17に示すように側面にテンプレートTの搬入出口(図示せず)とウェハWの搬入出口(図示せず)が形成された処理容器340を有している。
【0091】
処理容器340内の底面には、ウェハWが載置されて保持されるウェハ保持部341が設けられている。ウェハWは、その被処理面が上方を向くようにウェハ保持部341の上面に載置される。ウェハ保持部341内には、ウェハWを下方から支持し昇降させるための昇降ピン342が設けられている。昇降ピン342は、昇降駆動部343により上下動できる。ウェハ保持部341の上面には、当該上面を厚み方向に貫通する貫通孔344が形成されおり、昇降ピン342は、貫通孔344を挿通するようになっている。また、ウェハ保持部341は、当該ウェハ保持部341の下方に設けられた移動機構345により、水平方向に移動可能で、且つ鉛直周りに回転自在である。
【0092】
図18に示すようにウェハ保持部341のX方向負方向(図18の下方向)側には、Y方向(図18の左右方向)に沿って延伸するレール350が設けられている。レール350は、例えばウェハ保持部341のY方向負方向(図18の左方向)側の外方からY方向正方向(図18の右方向)側の外方まで形成されている。レール350には、アーム351が取り付けられている。
【0093】
アーム351には、ウェハW上にレジスト液を供給するレジスト液ノズル352が支持されている。レジスト液ノズル352は、例えばウェハWの直径寸法と同じかそれよりも長い、X方向に沿った細長形状を有している。レジスト液ノズル352には、例えばインクジェット方式のノズルが用いられ、レジスト液ノズル352の下部には、長手方向に沿って一列に形成された複数の供給口(図示せず)が形成されている。そして、レジスト液ノズル352は、レジスト液の供給タイミング、レジスト液の供給量等を厳密に制御できる。
【0094】
アーム351は、ノズル駆動部353により、レール350上を移動自在である。これにより、レジスト液ノズル352は、ウェハ保持部341のY方向正方向側の外方に設置された待機部354からウェハ保持部341上のウェハWの上方まで移動でき、さらに当該ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できる。また、アーム351は、ノズル駆動部353によって昇降自在であり、レジスト液ノズル352の高さを調整できる。
【0095】
処理容器340内の天井面であって、ウェハ保持部341の上方には、図17に示すようにテンプレートTを保持するテンプレート保持部360が設けられている。すなわち、ウェハ保持部341とテンプレート保持部360は、ウェハ保持部341に載置されたウェハWと、テンプレート保持部360に保持されたテンプレートTが対向するように配置されている。また、テンプレート保持部360は、テンプレートTの裏面Tの外周部を吸着保持するチャック361を有している。チャック361は、当該チャック361の上方に設けられた移動機構362により、鉛直方向に移動自在で、且つ鉛直周りに回転自在になっている。これにより、テンプレートTは、ウェハ保持部341上のウェハWに対して所定の向きに回転し昇降できる。
【0096】
テンプレート保持部360は、チャック361に保持されたテンプレートTの上方に設けられた光源363を有している。光源363からは、例えば可視光、近紫外光、紫外線などの光が発せられ、この光源363からの光は、テンプレートTを透過して下方に照射される。
【0097】
本実施の形態にかかるインプリントシステム300は以上のように構成されている。次に、そのインプリントシステム300で行われるインプリント処理について説明する。図19は、このインプリント処理の主な処理フローを示し、図20は、このインプリント処理の各工程におけるテンプレートTとウェハWの状態を示している。
【0098】
先ず、テンプレート搬送体12によって、テンプレート搬入出ステーション2から処理ステーション3にテンプレートTが搬送される(図19の工程B1)。処理ステーション3では、テンプレートTの表面Tの洗浄(図19の工程B2)、表面Tへの離型剤Sの塗布(図19の工程B3)、離型剤Sの乾燥(図19の工程B4)、テンプレートT上の離型剤Sへのアルコールの塗布(図19の工程B5)、アルコールの乾燥除去(図19の工程B6)が順次行われ、テンプレートTの表面Tに離型剤Sが成膜される。なお、これら工程B2〜B6は、前記実施の形態における工程A2〜A6と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0099】
離型剤Sが成膜されたテンプレートTは、トランジションユニット334に搬送される。続いて、テンプレートTは、インターフェイスステーション312のテンプレート搬送体331によって、反転ユニット332に搬送されて、テンプレートTの表裏面が反転される。すなわち、テンプレートTの裏面Tが上方に向けられる。その後、テンプレートTは、テンプレート搬送体331によってインプリントユニット310に搬送され、テンプレート保持部360のチャック361に吸着保持される。
【0100】
このように処理ステーション3においてテンプレートTに所定の処理を行い、インプリントユニット310へテンプレートTを搬送中に、ウェハ搬入出ステーション311では、ウェハ搬送体322により、カセット載置台320上のウェハカセットCからウェハWが取り出され、アライメントユニット323に搬送される。そして、アライメントユニット323において、ウェハWのノッチ部の位置に基づいて、ウェハWの向きが調整される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送体322によってインプリントユニット310に搬送される(図19の工程B7)。なお、ウェハ搬入出ステーション311において、ウェハカセットC内のウェハWは、その被処理面が上方を向くように収容されており、この状態でウェハWはインプリントユニット310に搬送される。
【0101】
インプリントユニット310に搬入されたウェハWは、昇降ピン342に受け渡され、ウェハ保持部341上に載置され保持される。続いて、ウェハ保持部341に保持されたウェハWを水平方向の所定の位置に移動させて位置合わせをした後、レジスト液ノズル352をウェハWの径方向に移動させ、図20(a)に示すようにウェハW上にレジスト液が塗布され、塗布膜としてのレジスト膜Rが形成される(図19の工程B8)。このとき、制御部200により、レジスト液ノズル352から供給されるレジスト液の供給タイミングや供給量等が制御される。すなわち、ウェハW上に形成されるレジストパターンにおいて、凸部に対応する部分(テンプレートTの転写パターンCにおける凹部に対応する部分)に塗布されるレジスト液の量は多く、凹部に対応する部分(転写パターンCにおける凸部に対応する部分)に塗布されるレジスト液の量は少なくなるように塗布される。このように転写パターンCの開口率に応じてウェハW上にレジスト液が塗布される。
【0102】
ウェハW上にレジスト膜Rが形成されると、ウェハ保持部341に保持されたウェハWを水平方向の所定の位置に移動させて位置合わせを行うと共に、テンプレート保持部360に保持されたテンプレートTを所定の向きに回転させる。そして、図20(a)の矢印に示すようにテンプレートTをウェハW側に下降させる。テンプレートTは所定の位置まで下降し、テンプレートTの表面TがウェハW上のレジスト膜Rに押し付けられる。なお、この所定の位置は、ウェハW上に形成されるレジストパターンの高さに基づいて設定される。続いて、光源363から光が照射される。光源363からの光は、図20(b)に示すようにテンプレートTを透過してウェハW上のレジスト膜Rに照射され、これによりレジスト膜Rは光重合する。このようにして、ウェハW上のレジスト膜RにテンプレートTの転写パターンCが転写され、レジストパターンPが形成される(図19の工程B9)。
【0103】
その後、図20(c)に示すようにテンプレートTを上昇させて、ウェハW上にレジストパターンPを形成する。このとき、テンプレートTの表面Tには離型剤Sが塗布されているので、ウェハW上のレジストがテンプレートTの表面Tに付着することはない。その後、ウェハWは、昇降ピン342によりウェハ搬送体322に受け渡され、インプリントユニット310からウェハ搬入出ステーション311に搬送され、ウェハカセットCに戻される(図19の工程B10)。なお、ウェハW上に形成されたレジストパターンPの凹部には、薄いレジストの残存膜Lが残る場合があるが、例えばインプリントシステム300の外部において、図20(d)に示すように当該残存膜Lを除去してもよい。
【0104】
以上の工程B7〜B10(図19中の点線で囲った部分)を繰り返し行い、一のテンプレートTを用いて、複数のウェハW上にレジストパターンPをそれぞれ形成する。この間、上述した工程B1〜B6を繰り返し行い、複数のテンプレートTの表面T上に離型剤Sを成膜する。離型剤Sが成膜されたテンプレートTは、インターフェイスステーション312のバッファカセット333に保管される。
【0105】
そして、所定枚数のウェハWに対して工程B7〜B10が行われると、ウェハ搬送体331によって、使用済みのテンプレートTがインプリントユニット310から搬出され、反転ユニット332に搬送される(図19の工程B11)。続いて、ウェハ搬送体331によって、バッファカセット333内のテンプレートTがインプリントユニット310に搬送される。こうして、インプリントユニット310内のテンプレートTが交換される。なお、テンプレートTを交換するタイミングは、テンプレートTの劣化等を考慮して設定される。また、ウェハWに異なるパターンPを形成する場合にも、テンプレートTが交換される。例えばテンプレートTを1回使用する度に当該テンプレートTを交換してもよい。また、例えば1枚のウェハW毎にテンプレートTを交換してもよいし、例えば1ロット毎にテンプレートTを交換してもよい。
【0106】
反転ユニット332に搬送された使用済みのテンプレートTは、その表裏面が反転される。その後、ウェハ搬送体331、搬送ユニット20、ウェハ搬送体12によって、テンプレートTはテンプレートカセットCに戻される。このようにして、インプリントシステム300において、テンプレートTを連続的に交換しつつ、複数のウェハWに対して所定のレジストパターンPが連続的に形成される。
【0107】
以上の実施の形態のインプリントシステム300はテンプレート処理装置1を有しているので、インプリントシステム300において、テンプレートT上に離型剤Sを成膜しつつ、当該テンプレートTをインプリントユニット310に連続的に供給できる。これによって、例えばテンプレートTが劣化する前、あるいは複数のウェハW上に異なるレジストパターンPを形成する場合でも、インプリントユニット310内のテンプレートTを連続して効率よく交換することができる。したがって、複数のウェハWに対して所定のレジストパターンPを連続的に形成することができる。また、これによって、半導体デバイスの量産化を実現することも可能となる。
【0108】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、表面に転写パターンが形成されたテンプレート上に離型剤を成膜する際に有用であり、また当該離型剤が成膜されたテンプレートを用いて基板上に所定のパターンを形成する際に有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 テンプレート処理装置
30〜33 塗布ユニット
40〜43 洗浄ユニット
111 回転保持部材
133 離型剤ノズル
140 アルコールノズル
200 制御部
210 光照射部
211 光フィルタ
220 リンス液ノズル
230、231 リンスユニット
300 インプリントシステム
310 インプリントユニット
C 転写パターン
P レジストパターン
R レジスト膜
S 離型剤
T テンプレート
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に転写パターンが形成されたテンプレート上に離型剤を成膜するテンプレート処理方法であって、
前記テンプレートの表面に離型剤を塗布する離型剤処理工程と、
その後、前記テンプレート上の離型剤にアルコールを塗布して、前記テンプレートの表面と前記離型剤との密着性を向上させるアルコール処理工程と、を有することを特徴とする、テンプレート処理方法。
【請求項2】
前記アルコール処理工程において、前記アルコールによって前記テンプレートの表面と前記離型剤との密着性を向上させた後、当該アルコールによって前記テンプレート上の離型剤の未反応部を除去することを特徴とする、請求項1に記載のテンプレート処理方法。
【請求項3】
少なくとも前記アルコール処理工程中又は前記アルコール処理工程後において、前記テンプレート上の離型剤に光を照射して、前記テンプレートの表面と前記離型剤との密着性をさらに向上させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のテンプレート処理方法。
【請求項4】
前記光の波長は、350nm〜2500nmであることを特徴とする、請求項3に記載のテンプレート処理方法。
【請求項5】
前記アルコール処理工程後に、リンス液によって前記テンプレート上の離型剤の未反応部を除去するリンス工程を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のテンプレート処理方法。
【請求項6】
前記離型剤処理工程前に、前記テンプレートの表面を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のテンプレート処理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のテンプレート処理方法をテンプレート処理装置によって実行させるために、当該テンプレート処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。
【請求項9】
表面に転写パターンが形成されたテンプレート上に離型剤を成膜するテンプレート処理装置であって、
前記テンプレートを保持して回転させる回転保持部材と、
前記テンプレートの表面に離型剤を供給する離型剤ノズルと、
前記テンプレート上の離型剤にアルコールを供給するアルコールノズルと、を備えた塗布ユニットを有することを特徴とする、テンプレート処理装置。
【請求項10】
前記塗布ユニットは、前記テンプレート上の離型剤に光を照射する光照射部を備えたことを特徴とする、請求項9に記載のテンプレート処理装置。
【請求項11】
前記塗布ユニットは、350nm〜2500nmの波長を有する前記光のみを透過させる光フィルタを備えたことを特徴とする、請求項10に記載のテンプレート処理装置。
【請求項12】
前記塗布ユニットは、前記テンプレート上の離型剤にリンス液を供給するリンス液ノズルを備えたことを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載のテンプレート処理装置。
【請求項13】
前記塗布ユニットで前記テンプレートの表面に塗布された前記離型剤の未反応部をリンス液によって除去するリンスユニットを有することを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載のテンプレート処理装置。
【請求項14】
前記塗布ユニットで前記離型剤が塗布される前のテンプレートの表面を洗浄する洗浄ユニットを有することを特徴とする、請求項9〜13のいずれかに記載のテンプレート処理装置。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれかに記載のテンプレート処理装置を備えたインプリントシステムであって、
前記テンプレート処理装置で表面に離型剤が成膜された前記テンプレートを用いて、前記転写パターンを基板上に形成される塗布膜に転写し、当該塗布膜に所定のパターンを形成するインプリントユニットを有することを特徴とする、インプリントシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−104910(P2011−104910A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263562(P2009−263562)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】