説明

テーパープーリの製造方法、およびテーパープーリ製造装置

【課題】形状の異なるテーパープーリを容易に製造する。
【解決手段】テーパープーリ製造装置10は、表層シート型11と成型台30とを備える。表層シート型11は内周面が下端11Dに向かうに従って小径となるように形成された筒状シート体である。また、表層シート型11の内周面にプライマー処理を、外周面に所定の表面処理を施す。成型台30は、複数の互いに孔径の異なる第1〜第4の孔36A〜36Dを有する第1〜第4の支持プレート33A〜33Dを備える。第1〜第4の支持プレート33A〜33Dは各孔が同心的にかつ下方に向かうに従って径が小さくなるように、軸方向に配列される。表層シート型11を第1〜第4の支持プレート33A〜33Dの各孔内に挿通し、第1〜第4の支持プレート33A〜33Dが表層シート型11を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーブコンベヤ等に使用されるテーパープーリの製造方法、及びテーパープーリ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送ラインにおいて、搬送物をスムーズかつ正確に方向転換するためにカーブコンベヤが使用されている。カーブコンベヤは、一般的に、1対のテーパープーリにカーブ状にコンベヤベルトが掛け回され、そのカーブ状に掛け回されたコンベヤベルトの面上に搬送物が載置され搬送される。
【0003】
従来、テーパープーリは、例えば、内周面がテーパー面に形成された筒状の金型の内部に、芯体が配置されると共に未加硫ゴムが充填され、プレス成型により加圧成形されて製造されることが知られている。また、内周面がテーパー面に形成された筒状の金型内部に、芯体が配置されると共に成型樹脂が注入され、成型樹脂が硬化されてテーパープーリが製造される方法も知られている。
【0004】
さらには、円筒状ローラが研磨加工され、外周面がテーパー面にされ、テーパープーリが製造される方法も知られている。この場合、円筒状ローラは、例えば金属芯金シャフトに1枚以上の未加硫ゴムシートを巻き付けた後、表面に布テープを巻き付けて締め付け、蒸気窯内で蒸気により加熱し、加硫反応させて製造される。また、例えば特許文献1に記載されるように、内部に芯体が配設された筒状金型内部に成型樹脂が注入され硬化されて製造される場合もある。
【特許文献1】特開2000−326358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カーブコンベヤ用のテーパープーリは、カーブコンベヤのカーブ半径により、テーパープーリのテーパー角度が決定されると共に、ベルト幅によりテーパープーリの軸長さが決定される。カーブコンベヤは、搬送物の大きさや設置場所等により、カーブ半径やベルト幅が多岐にわたるので、テーパープーリのテーパー角度及び軸長さも多岐にわたることとなる。
【0006】
従来の製造方法のように、内周面にテーパー面が形成された金型を用いて多種のテーパープーリを生産すれば、各テーパープーリに応じて多数の金型が必要とされる。しかし、各金型の製造には多大な時間とコストを要するので、多数の種類のテーパープーリを少量生産すると、製造が非効率的になる。また、研磨加工により、テーパープーリを製造すれば、材料ロスが多くなるという問題がある。
【0007】
また、テーパープーリの表面には、用いるコンベヤの用途に応じた表面処理また用途に応じた表面材により覆われる必要がある。それゆえ、テーパープーリの成形後にテーパープーリの表面に所定の表面処理や表面材の被覆がされていた。しかし、成形後の表面処理などにはさらなる時間とコストを要していた。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、テーパー角度や軸長さ等のサイズや形状が異なり、表面処理などの施されたテーパープーリを効率的に製造することが可能なテーパープーリの製造方法、及びテーパープーリ製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るテーパープーリの製造方法は、内周面が一端に向かうに従って小径となるように形成された筒形シート状の表層シート型の内部に、表層シート型の軸方向に沿うようにロールシャフトを配置させると共に硬化型樹脂を注入し、硬化型樹脂を硬化させ、表層シート型と一体化させることによりテーパープーリを得ることを特徴とする。
【0010】
なお、表層シート型の内周面に硬化型樹脂を注入する前に硬化型樹脂との接合性を強化させる所定の処理を施すか、または硬化型樹脂と表層シート型との接合性を強化させる所定の処理を施すことが好ましい。
【0011】
さらに、表層シート型の外周面に硬化型樹脂を注入する前に所定の表面処理を施すか、または表層シート型はテーパープーリの表面に求められる所定の物性を有する表層部材によって形成されることが好ましい。
【0012】
このとき、互いに孔径の異なる孔を有する複数の支持プレートを、複数の孔が同心的にかつ一端側に向かうに従って径が小さくなるように、軸方向に配列させ、複数の支持プレートの各孔内に表層シート型を挿通し、表層シート型を複数の支持プレートに支持させることが好ましい。
【0013】
本発明に係るテーパープーリ製造装置は、製造するテーパープーリの表層部材によって内周面が一端に向かうに従って小径となる筒状シート状に形成された表層シート型と、表層シート型内部にロールシャフトを配置させると共に表層シート型内部に硬化型樹脂を注入可能なように表層シート型を支持する支持機構とを備えることを特徴とする。
【0014】
表層シート型の内周面には硬化型樹脂との接合性を強化させる所定の処理が施されていることが好ましい。さらに、表層シート型の外周面には所定の表面処理が施されていることが好ましい。
【0015】
支持機構は、複数の互いに孔径の異なる孔を有する支持プレートを備えることが好ましい。そして、複数の支持プレートは、孔が同心的にかつ一端側に向かうに従って径が小さくなるように、軸方向に配列され、表層シート型は、複数の支持プレートの各孔内に挿通され、これら支持プレートに支持される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、テーパープーリが表層シート型によって成型されるので、サイズや形状の異なるテーパープーリが効率的に製造することができる。さらに、表層シート型がそのままテーパープーリの表層となるので、テーパープーリの成型後の表面処理などが不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るテーパープーリ製造装置を示す図である。図2は本発明の一実施形態における成型台を示す図である。
【0018】
テーパープーリ製造装置10は、テーパープーリを成型するための表層シート型11と、成型台30(支持機構)とを備える。成型台30は、表層シート型11およびロールシャフト20を保持する。なお、表層シート型11はテーパープーリの表層となる部材であり、ロールシャフト20はテーパープーリの芯体となる部材である。
【0019】
成型台30は、上部基板31A及び下部基板31Bと、これら基板31A、31Bを接続する第1〜第4の支柱32A〜32Dと、これら第1〜第4の支柱32A〜32Dに保持される第1〜第4の支持プレート33A〜33D、遮蔽プレート(遮蔽部材)38、上部プレート37A、及び下部プレート37Bとを備える。
【0020】
上部基板31Aは、成型台30を立設させるための基台となり、上部基板31Aの下面及び下部基板31Bの上面それぞれは略方形に形成される。第1〜第4の支柱32A〜32Dそれぞれは、下部基板31Bの上面の4隅に固定するとともに、そこから上方に向けて延び、上部基板31Aの下面の4隅に接続される。
【0021】
第1、第2、第3、及び第4の支持プレート33A、33B、33C、33Dは、上方からこの順に第1〜第4の支柱32A〜32Dに支持されている。第1の支持プレート33Aは、対向して設けられる第1及び第2の保持板34A、34Bと、これらの上に固定される接続板34Cを備える。第1及び第2の保持板34A、34B並びに接続板34Cは金属から形成されると共に、矩形板状を呈し、上下方向(鉛直方向)Vに対して垂直に配置される。
【0022】
第1の保持板34Aには、長手方向における両端部近傍それぞれに孔42、42が設けられ、これら孔42、42には、互いに隣接する第1及び第2の支柱32A、32Bが挿通される。第2の保持板34Bにも同様に2つの孔42、42が設けられ、これら孔42、42には、互いに隣接する第3及び第4の支柱32C、32Dが挿通される。第1及び第2の保持板34A、34Bの上面には、これらを跨るように接続板34Cが載せられており、接続板34Cの長手方向における両端部は、それぞれ第1及び第2の保持板34A、34Bの上面に固定されている。接続板34Cの略中央部には、円形を呈する第1の孔36Aが形成されている。
【0023】
第2〜第4の支持プレート33B〜33Dも、第1の支持プレート33Aと同様の構成を有し、接続板34Cの略中央部には、それぞれ円形を呈する第2、第3、第4の孔36B、36C、36Dが形成されている。但し、各孔36A、36B、36C、36Dの孔径は、互いに異なり、下側に向かうに従って小さくなる。すなわち、第1の孔36Aの孔径が最も大きくなり、第4の孔36Dの孔径が最も小さくなる。
【0024】
第4の支持プレート33Dの下側には遮蔽プレート38が配置される。遮蔽プレート38は、第1の支持プレート33Aと同様に、第1及び第2の保持板34A、34Bと、これらの上に固定される接続板34Cから成り、接続板34Cの略中央部には、円形を呈する第5の孔36Eが形成されている。第5の孔36Eの孔径は、第4の孔36Dの孔径よりさらに小さい。第1〜第5の孔36A〜36Eは、同心的に上下方向Vに沿って配置され、上方から見ると、各孔の中心が一致している。
【0025】
遮蔽プレート38の上には、注入成型時の表層シート型11の下端11Dを遮蔽するとき、そのシール性を向上するために、孔が形成されたシールパッキン41が配置される。シールパッキン41は、例えば、厚さ3〜5mm程度のシート形状を呈し、軟質の弾性物質で形成されることが好ましく、軟質の弾性物質としては軟質ゴム、軟質ゴムスポンジ、軟質シールフォーム、軟質エラストマー等が使用される。シールパッキン41の孔は、その孔内部に配置されるロールシャフト20(下部細径部20F)の外周の径と同一の孔径を有し、第5の孔36Eの上に重なるように配置される。
【0026】
上部プレート37Aは、第1の支持プレート33Aのさらに上側において、対角線上に設けられる第1の支柱32Aから第4の支柱32Dまで延設される。上部プレート37Aの長手方向における両端部近傍それぞれには、孔44、44が設けられ、各孔44、44それぞれには第1及び第4の支柱32A、32Dが挿通されている。下部プレート37Bは、遮蔽プレート38のさらに下側において、対角線上に設けられる第1の支柱32Aから第4の支柱32Dまで延設される。下部プレート37Bの長手方向における両端部それぞれには、孔45、45が設けられ、各孔45、45それぞれには第1及び第4の支柱32A、32Dが挿通されている。
【0027】
第1〜第4の支持プレート33A〜33D、及び遮蔽プレート38それぞれは、これらプレートに設けられた4つの孔42の内部に挿通された第1〜第4の支柱32A〜32Dに沿って、上下方向にスライド変位可能である。また、各プレート33A〜33D、38における、第1及び第2の保持板34A、34Bそれぞれには、第1及び第4の支柱32A、32Dを内部に挿通する管状のストッパー39(図2においては不図示)が設けられ、第1及び第2の保持板34A、34B(すなわち、各プレート33A〜33D、38)はストッパー39によって第1及び第4の支柱32A、32Dに固定可能である。
【0028】
同様に、上部プレート37A及び下部プレート37Bそれぞれは、これらプレートに設けられた2つの孔44(又は45)の内部に挿通された第1及び第4の支柱32A、32Dに沿ってスライド変位可能である。上部プレート37A及び下部プレート37Bそれぞれにも、第1及び第4の支柱32A、32Dに挿通する管状のストッパー39(図2においては不図示)が設けられ、これらはストッパー39によって第1及び第4の支柱32A、32Dに固定可能である。
【0029】
上部プレート37Aの下面の中央部には、上部コックピン43Aが設けられると共に、下部プレート37Bの上面の中央部には、下部コックピン43Bが固定されている。これらコックピン43A、43Bは上方(又は下方)から見ると、第1〜第5の孔36A〜36Eの中心に一致するように配置される。
【0030】
ロールシャフト20は、相対的に径が大きい太径部20Aと、その太径部20Aより径が小さく、太径部20Aの上方端面20B、下方端面20Cそれぞれに接続された上部細径部20E、下部細径部20Fから成る。各細径部20E、20Fの上端面20U及び下端面20Dそれぞれの中心には、上部コックピン43A、下部コックピン43Bが嵌入されるための穴(不図示)が設けられている。
【0031】
太径部20Aの外周面には、液状硬化型樹脂が接着されやすいように、シランカップリング材を用いてプライマー処理が施され、さらにウレタン接着剤が塗布され、乾燥される。
【0032】
表層シート型11は中空円錐台形の展開形状に裁断された材料シートの両端部が突き合わし接合されて中空円錐台形に形成される。したがって、表層シート型11は、内周面12が下端11Dに向かうに従って小径となるようにテーパー面に形成された筒形シート形状を呈する。表層シート型11の下端11Dの径は、ロールシャフト20の太径部20Aの径より大きく形成される。
【0033】
なお、材料シートには、製造するテーパープーリの表層部材が用いられる。例えば、ゴムシート、ウレタンシート、ナイロンシート、およびポリエチレンシートなどが、材料シートに用いられる。また、表層シート型11の外周面となる材料シートの表面には、製造するテーパープーリの用途に応じた表面処理が施される。さらに、表層シート型11の内周面となる材料シートの表面には、液状硬化型樹脂との接合性が強化されるように、多価イソシアネートを用いたプライマー処理が施される。
【0034】
次に、成型台30への表層シート型11の取付方法について説明する。ロールシャフト20及び表層シート型11が取り付けられるとき、まず、上部プレート37Aが上方にスライド変位される。次いで、第1〜第4の支持プレート33A〜33D並びに遮蔽プレート38は、適宜上下にスライド変位された後、第1の支持プレート33A及び遮蔽プレート38は、これらの離間距離が、表層シート型11の軸X方向の長さより短くなる位置で、第1及び第4の支柱32A、32Dに固定される。また、第2〜第4の支持プレート33B〜33Dも互いに適宜間隔が開けられた位置で固定されている。
【0035】
次に、表層シート型11は第1〜第4の孔36A〜36Dの内部をこの順で挿通して、成型台30内部に配置される。その後、第1〜第4の支持プレート33A〜33Dは下方向にスライド変位され、表層シート型11は、その外周が第1〜第4の孔36A〜36Dの内周に係合支持されず、前後左右に移動可能な状態にされる。このとき、表層シート型11の下端11Dは遮蔽プレート38の接続板34Cの上面に載せられている。
【0036】
次いで、第1の支持プレート34Aは、上方向にスライド変位され、第1の孔36Aの内周が、その孔36Aの内側に配置された表層シート型11の外周に係合させられる。そして、その係合した位置で、第1の支持プレート34Aは第1及び第4の支柱32A、32Dに固定される。第2〜第4の支持プレート34B〜34Dも、同様にスライド変位され、その内周が表層シート型11の外周に係合する位置で、第1及び第4の支柱32A、32Dに固定される。すなわち、各支持プレート34A〜34Dは、各孔36A〜36Dの孔径が、各孔の内側に配置された表層シート型11の外周の径と略一致する位置で固定され、これにより表層シート型11は前後左右に実質的に移動することができない。
【0037】
このように、各第1〜第4の孔36A〜36Dの内周が表層シート型11の外周に係合することにより、表層シート型11は第1〜第4の支持プレート34A〜34Dによって支持される。なお、第1〜第4の支持プレート34A〜34Dは、第1〜第4の孔36A〜36Dが同心的に並べられるように上下方向Vに配列されるので、孔36A〜36Dの内周面に係合される表層シート型11は、その軸X方向が上下方向Vに延びる。
【0038】
次いで、遮蔽プレート38は、上方向にスライド変位され、表層シート型11の下端11Dが遮蔽プレート38の接続板34Cの上面に、シールパッキン41を介して密着させられる。そして、その密着された状態で、遮蔽プレート38は、第1及び第4の支柱32A、32Dに固定される。
【0039】
なお表層シート型11が、孔36A〜36Dの内周に係合支持され、かつ下端11Dが遮蔽プレート38に密着されるならば、上記方法と異なる方法で、第1〜第4の支持プレート34A〜34D、及び遮蔽プレート38の固定位置が調整されても良い。
【0040】
次に、表層シート型11内部へのロールシャフト20の配置方法について説明する。ロールシャフト20は、表層シート型11の上端11Uから、表層シート型11の内部に挿入される。このとき、ロールシャフト20の上端部(すなわち、上部細径部20E)は、上端11Uより上側に突出している。また、下部細径部20Fは下端11Dの内側及び遮蔽プレート38の第5の孔36Eを挿通し、表層シート型11の下側に突出する。そして、ロールシャフト20(下部細径部20F)の下端面20Dに設けられた穴が、下部コックピン43Bに嵌入される。このとき、下部プレート37Bは適宜上下にスライド変位され、固定位置が調整されても良い。
【0041】
その後、上部プレート37Aは下方向にスライド変位され、上部プレート37Aに設けられた上部コックピン43Aは、ロールシャフト20(上部細径部20E)の上端面20Uに設けられた穴に嵌入される。これにより、ロールシャフト20は、上部コックピン43A及び下部コックピン43Bによって固定支持される。
【0042】
上部コックピン43A、下部コックピン43Bは上方から見ると、重ねられて設けられる。したがって、上部コックピン43A、下部コックピン43Bに両端が固定支持されるロールシャフト20の軸X’方向は上下方向Vに延びる。また、上部コックピン43A、下部コックピン43Bの中心は、上述したように上方又は下方から見ると、各孔35A〜35Eの中心に一致している。したがって、ロールシャフト20の軸X’は、表層シート型11の軸Xに一致する。
【0043】
なお、このとき、ロールシャフト20の太径部20Aの下方端面20Cは遮蔽プレート38の上面にシールパッキン41を介して密着されていると共に、下部細径部20Fの外周にシールパッキン41の孔の内周が密着されている。また、上述したように、表層シート型11(下端11D)は、遮蔽プレート38に密着されている。すなわち、表層シート型11の下端11D側は、遮蔽プレート38で遮蔽されると共に、シールパッキン41によりシールされている。
【0044】
ロールシャフト20が取り付けられた後、液体硬化型樹脂25が表層シート型11の内部に上端11Uから注入され、液体硬化型樹脂25は表層シート型11の下端11Dから上端11Uの近傍まで充填される。なお、表層シート型11の下端11D側は、シールパッキン41によりシールされており、注入された液体硬化型樹脂25は下端11D側から漏れることはない。
【0045】
液体硬化型樹脂としては、例えばウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和ビニール樹脂、エポキシ樹脂等であって、常温で反応硬化する樹脂、又は加熱して反応硬化する樹脂が使用可能であるが、常温で反応硬化する樹脂が好適に使用される。液体硬化型樹脂がウレタン樹脂である場合、1液反応型、2液反応型いずれも使用することが可能であるが、2液反応型であることが好ましく、例えばウレア反応発泡系の樹脂が使用される。
【0046】
充填された液体硬化型樹脂25は、常温で、又は場合によっては加熱されることにより硬化される。液体硬化型樹脂25は硬化され、外周面がテーパー面に形成された筒状の樹脂硬化物25’に成型される。樹脂硬化物25’は、その外周側を成型した表層シート型11およびその内周側に挿入されたロールシャフト20に接着して一体化される。
【0047】
その後、上部プレート37は上方向にスライド変位された後、表層シート型11およびロールシャフト20に一体化された樹脂硬化物25’は、第1〜第5の孔36A〜36Eから抜き取られ、成型台30から取り外される。
【0048】
樹脂硬化物25’は、所定温度で所定時間加熱されることにより2次反応が行われる。2次反応後、表層シート型11の上端11Uが裁断され、樹脂硬化物25’と端部が揃えられることにより、テーパープーリ26として形成される(図3参照)。
【0049】
以上のように本実施形態では、各支持プレート33A〜33Dは表層シート型11の軸X方向(上下方向)にスライド変位可能であるので、サイズ及び形状の異なる表層シート型を安定的に指示することが出来る。したがって、テーパープーリが金型に比べて製造が容易な表層シート型11を用いて成型することにより、サイズおよび形状が異なるテーパープーリを簡単に製造することが可能になる。
【0050】
また、本実施形態では、表層シート型がそのままテーパープーリの表層となるので、用途に応じた表面性能を有するテーパープーリを製造するのに、成型後の表面処理が不要である。成型後のテーパープーリに表面処理を施すより、材料シートに表面処理を施す方が時間もコストも低減化される。したがって、成型後の表面処理を省くことにより、テーパープーリの製造時間および製造コストを低減化可能である。
【0051】
なお、本実施形態では、多価イソシアネートを用いて材料シートの表面にプライマー処理を施す構成であるが、他の部材を用いてプライマー処理を施してもよい。または、硬化型樹脂25との接合性を強化させる他の表面処理を材料シートに施してもよい。また、表層シート型11を形成後であって液状硬化型樹脂25注入前に、内周面にこれらの処理を施してもよい。
【0052】
あるいは、液状硬化型樹脂の硬化後に、蒸気などの熱源を用いて、樹脂硬化物25’と表層シート型11とを溶着させることにより、硬化型樹脂25と表層シート型11とを一体化させてもよい。または、樹脂硬化物25’と表層シート型11との接合性を強化する他のいかなる処理を施してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、表層シート型11の外周面となる材料シートの表面には製造するテーパープーリの用途に応じた表面処理、例えば目付け処理、クレープ処理、エンボス処理などが施される構成であるが、テーパープーリの表面に求められる所定の物性を有する表層部材を用いて表層シート型11を形成して、材料シートに表面処理を施さなくてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、表層シート型11の軸X及びロールシャフト20の軸X’は上下方向(鉛直方向)Vに一致するが、上下方向に対して傾いていても良い。また、本実施形態では、支持プレートは4枚設けられたが、その枚数は限定されるわけではなく、2枚以上あれば良い。
【0055】
また、本実施形態では、ロールシャフト20は、相対的に径が太い太径部と相対的に径が細い細径部から成るが、ロールシャフト20の径は一端から多端にわたって一定であってもよい。この場合も、ロールシャフトの端部の周りにはシールパッキン41に密着されるので、表層シート型11の下端11Dにおいて、ロールシャフト20の外周面と遮蔽プレート38の間から液体硬化型樹脂25が漏れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態におけるテーパープーリ製造装置を示す側面図であって、表層シート型及びその内部を断面的に示した図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるテーパープーリ製造装置の成型台を示す斜視図である。
【図3】テーパープーリの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 テーパープーリ製造装置
11 表層シート型
20 ロールシャフト
25 液体硬化型樹脂
26 テーパープーリ
30 成型台
33A〜33D 第1〜第4の支持プレート
36A〜36D 第1〜第4の孔
38 遮光プレート(遮光部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面が一端に向かうに従って小径となるように形成された筒形シート状の表層シート型の内部に、前記表層シート型の軸方向に沿うようにロールシャフトを配置させると共に硬化型樹脂を注入し、前記硬化型樹脂を硬化させ、前記表層シート型と一体化させることによりテーパープーリを得るテーパープーリの製造方法。
【請求項2】
前記表層シート型の内周面に、前記硬化型樹脂を注入する前に前記硬化型樹脂との接合性を強化させる所定の処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のテーパープーリの製造方法。
【請求項3】
前記硬化型樹脂と前記表層シート型との接合性を強化させる所定の処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のテーパープーリの製造方法。
【請求項4】
前記表層シート型の外周面に、前記硬化型樹脂を注入する前に所定の表面処理を施すことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のテーパープーリの製造方法。
【請求項5】
前記表層シート型は、前記テーパープーリの表面に求められる所定の物性を有する表層部材によって形成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のテーパープーリの製造方法。
【請求項6】
互いに孔径の異なる孔を有する複数の支持プレートを、前記複数の孔が同心的にかつ前記一端側に向かうに従って径が小さくなるように、前記軸方向に配列させ、前記複数の支持プレートの各孔内に前記表層シート型を挿通し、前記表層シート型を前記複数の支持プレートに支持させることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のテーパープーリの製造方法。
【請求項7】
製造するテーパープーリの表層部材によって、内周面が一端に向かうに従って小径となる筒状シート状に形成された表層シート型と、
前記表層シート型内部にロールシャフトを配置させると共に、前記表層シート型内部に硬化型樹脂を注入可能なように前記表層シート型を支持する支持機構と
を備えることを特徴とするテーパープーリ製造装置。
【請求項8】
前記表層シート型の内周面には、前記硬化型樹脂との接合性を強化させる所定の処理が施されていることを特徴とする請求項7に記載のテーパープーリ製造装置。
【請求項9】
前記表層シート型の外周面には、所定の表面処理が施されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のテーパープーリ製造装置。
【請求項10】
前記支持機構は、複数の互いに孔径の異なる孔を有する支持プレートを備え、
前記複数の支持プレートは、前記孔が同心的にかつ前記一端側に向かうに従って径が小さくなるように、前記軸方向に配列され、
前記表層シート型は、前記複数の支持プレートの各孔内に挿通され、これら支持プレートに支持されることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載のテーパープーリ製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−184193(P2009−184193A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25328(P2008−25328)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【出願人】(393024603)旭化工株式会社 (12)
【Fターム(参考)】