説明

テーパ杭の圧入施工方法と圧入施工装置

【課題】 テーパ杭12の配置や本数について施工時にその適否を判定する。
【解決手段】杭頭16から杭の先端18に向かう方向に外径を漸減させる部分を有するテーパ杭12の杭頭16を駆動装置に固定して、杭の軸26を中心に回転させながら杭頭16から杭の先端18に向かう方向に圧力を加えて杭を地中28に圧入する場合に、杭の先端18が、最終目標の深さに満たない、予め定めた所定の深さに達したとき、杭の回転を一時停止して、杭を静止状態から回転させることなく、杭頭16から杭の先端18に向かって、杭が動き出すまで圧力を加えて、杭が動き出すまでに要した圧力を検出し、その後再び杭の圧入を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎に使用するテーパ杭を地盤構造を確認しながら圧入することができるテーパ杭の圧入施工方法と圧入施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テーパ杭は、上端から下端に向かうほど外径が細くなるように構成された建物の支持杭である。テーパ杭は、全体が均一な太さの杭に比べて、地面に打ち込む楔と同様の効果がある。従って、地中に打ち込み易く、摩擦杭としての機能が高い。全長にわたって均一な外径の杭の側面には、周辺の土の重力による土圧が加わる。従って、若干の摩擦力による支持力を有するが、杭先端の硬い地盤の支持力を主眼に設計される。一方、テーパ杭は地中に押し込まれるときに、側面で周辺の土を押しのけるようにするからその反力が杭側面に加わり、強い摩擦力が生じる。従って、先端が硬い地盤に達しなくても建物の支持杭として有効に機能する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−190116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
摩擦杭の支持力は地盤の地盤構造に大きく依存する。従って、建物の設計前に地盤調査をする。地盤調査では、敷地の数カ所をボーリングする。そして、その地盤構造に応じた支持杭の間隔や打ち込み本数を選定する。しかしながら、建物の支持杭は敷地内の特定の位置に集中的に打ち込まれる。複雑な地盤構造の敷地では、実際に杭を打ち込んだ場所での杭の支持力が設計値どおりか誤差があるかの確認が必要である。また、誤差が大きい場合には、その部分の地下構造を再度予測して、打ち込む杭数を最適化することが好ましい。
本発明では、摩擦杭の性質を利用して摩擦杭を地中に圧入しながら地盤構造を予測し、杭の配置や本数について、実測をしながらその適否を判定でき、必要に応じて杭の本数を増減できるテーパ杭の圧入施工方法と圧入施工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
杭頭から杭の先端に向かう方向に外径を漸減させる部分を有するテーパ杭の前記杭頭を駆動装置に固定して、杭の軸を中心に回転させながら杭頭から杭の先端に向かう方向に圧力を加えて前記杭を地中に圧入する場合に、前記杭の先端が、最終目標の深さに満たない、予め定めた所定の深さに達したとき、前記杭の回転を一時停止して、前記杭を静止状態から回転させることなく、前記杭頭から杭の先端に向かって、杭が動き出すまで圧力を加えて、杭が動き出すまでに要した前記圧力を検出し、その後再び杭の圧入を再開することを特徴とするテーパ杭の圧入施工方法。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載のテーパ杭の圧入施工方法において、前記杭が静止状態から動き出すまでに検出した前記圧力の最大値を、地表から前記所定の深さまでの地盤による杭の極限支持力と判定することを特徴とするテーパ杭の圧入施工方法。
【0007】
〈構成3〉
構成1または2に記載のテーパ杭の圧入施工方法において、前記最終目標の深さまで杭の圧入を完了したときに、前記杭の回転を停止して、前記杭を静止状態から回転させることなく、前記杭頭から杭の先端に向かって、設計値だけ圧力を加えたときに杭が動き出さなければ、設計上の基準を満たすと判定することを特徴とするテーパ杭の圧入施工方法。
【0008】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載のテーパ杭の圧入施工方法において、最終目標の深さに満たない、予め定めた2種以上の所定の深さに達したとき、前記検出した極限支持力の相関関係から、地盤構造を推測することを特徴とするテーパ杭の圧入施工方法。
【0009】
〈構成5〉
杭頭から杭の先端に向かう方向に外径を漸減させる部分を有するテーパ杭の前記杭頭を掴んで固定し、杭の軸を中心に回転させる回転駆動装置と、前記杭の杭頭から杭の先端に向かう方向に圧力を加えて前記杭を地中に圧入する加圧駆動装置と、前記杭の先端の圧入深さを検出する圧入深さ検出装置と、前記加圧駆動装置による前記圧力を検出して記録する圧入圧力検出装置と、前記回転駆動装置と前記加圧駆動装置とを起動して、前記圧入深さ検出装置の出力を監視し、最終目標の深さに満たない予め定めた所定の深さに達したとき、前記回転駆動装置と前記加圧駆動装置とを停止して、前記杭を静止状態とし、その後前記加圧駆動装置を起動して、前記圧入深さ検出装置の出力を監視し、前記所定の深さに対応する前記杭が動き出すまでに要した前記圧力を、記憶装置に記憶させ、その後再び前記回転駆動装置と前記加圧駆動装置とを起動するように制御する、圧入手順制御手段を備えたことを特徴とするテーパ杭の圧入施工装置。
【発明の効果】
【0010】
〈構成1の効果〉
テーパ杭を圧入する工事の途中でいったんテーパ杭の回転を止めて、杭頭から杭の先端に向かって圧力を加え、杭が動き出すまでに要した圧力を検出すると、その深さでの杭の極限支持力を検出できる。これにより、設計値と比較して、杭配置や杭の必要本数を最適化できる。
〈構成2の効果〉
杭を静止状態から動き出すまで圧力を加えたとき、動き始める直前が圧力の最大値を示す。これがその深さでの杭の極限支持力である。
〈構成3の効果〉
最終目標の深さまで杭の圧入を完了したときには、設計値だけ圧力を加えて、設計上の基準を満たすことを確認できる。
〈構成4の効果〉
2種以上の所定の深さで極限支持力を測定すれば、予め得ている地盤調査結果と比較して、正確に地盤構造を推測できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1のテーパ杭の圧入施工装置を示す側面図である。
【図2】加圧試験装置の正面図である。
【図3】一般の戸建て住宅の基礎構造を示す側面図である。
【図4】建物の敷地と基礎の部分を上方から見た平面図である。
【図5】本発明によるテーパ杭の圧入施工方法の説明図である。
【図6】テーパ杭の圧入施工装置の機能ブロック図である。
【図7】テーパ杭の圧入施工方法を実施するためのコンピュータの説明図である。
【図8】テーパ杭の圧入施工方法を実施した結果得られるデータの説明図である。
【図9】に示した圧入制御データと検出をした圧入圧力の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は実施例1のテーパ杭の圧入施工装置を示す側面図である。
テーパ杭12は、杭頭16から杭の先端18に向かう方向に外径を漸減させる部分を有する構造のものである。例えば、戸建て住宅用には、杭頭径は150mm〜200mm、杭の先端径は70mm〜100mm、杭長は6m〜11m程度のものが使用される。図の施工装置10は、回転駆動装置22と圧入駆動装置20とを備えている。
【0014】
テーパ杭12の杭頭16は、チャック24を介して回転駆動装置22の回転軸に固定される。回転駆動装置22は、テーパ杭12の軸26を中心にして、テーパ杭12を回転させるモータ等を備えている。圧入駆動装置20は、テーパ杭12に対して、杭頭16から杭の先端18に向かう方向に圧力を加えて、テーパ杭12を地中28に圧入する油圧装置を備えている。回転駆動装置22や圧入駆動装置20は、後で説明する制御装置により、所定の手順で所定のタイミングで駆動制御される。
【0015】
図2は、加圧試験装置30の正面図である。
加圧試験装置30は、テーパ杭12を最終目標の深さまで打ち込んだ後にその性能を評価するための装置である。この装置は、自走式で、打ち込まれたテーパ杭12の杭頭16の直上に配置される。そして、上面にウエイト34を乗せて荷重をかけ、ワイヤ32を使用して、アンカー36に加圧試験装置30を固定する。加圧試験装置30の下面には油圧シリンダ38が設けられ、テーパ杭12の杭頭16を垂直下方に加圧する。
【0016】
この装置は、最終目標の深さまでテーパ杭12の圧入を完了したときに使用される。杭の回転を停止して、杭を静止状態から回転させることなく、杭頭16から杭の先端18に向かって、設計値72だけ圧力を加える。このときに杭が動き出さなければ、設計上の基準を満たすと判定する。即ち、これで、打ち込んだテーパ杭12を1本ずつ性能判定する。
【0017】
図3は、一般の戸建て住宅の基礎構造を示す側面図である。図4は建物の敷地と基礎の部分を上方から見た平面図である。
図3のように、建物の基礎40の部分には、1〜2メートル間隔で地中に打ち込まれたテーパ杭12が一体に固定される。図4に示すように、この敷地42は、予め、地盤調査跡44の場所をボーリングして地盤構造を調査している。この調査の結果に従って地盤構造を予測して、建物の支持杭の間隔や打ち込み本数が選定される。この例では、3×4本で合計12本のテーパ杭12を、建物の基礎部分に打ち込むように設計されている。
【0018】
ところが、同じ敷地内でも、場所によって地盤構造が複雑に変化していることがある。図4の例の場合、右上の2箇所の地盤調査跡44だけが、テーパ杭12を打ち込む場所の地盤構造の確認に直接有効なものと言える。しかし、建物の配置等の設計が決まってから再度地盤調査をするにはコストがかかりすぎる。そこで、本発明では、テーパ杭12を打ち込みながら、その場所の地盤の状態を調査し、建物の直下の地盤の状態を正確に確認する。
【0019】
図5は、本発明によるテーパ杭の圧入施工方法の説明図である。
図は、時間の経過に従ったテーパ杭12の位置を、左から右に順番に示したものである。右端には、テーパ杭12を打ち込んだ場所の地盤断面図を示した。この方法では、テーパ杭12の先端18が、最終目標の深さに満たないL1とL2の深さに達したときに、図1に示した圧入駆動装置20と回転駆動装置22の動作を一時停止する。そして、テーパ杭12を静止状態から回転させることなく、杭頭16から杭の先端18に向かって、テーパ杭12が動き出すまで圧力を加えて、テーパ杭12が動き出すまでに要した圧力を連続的に検出する。そしてその結果を解析する。その後再び杭の圧入を再開する。
【0020】
テーパ杭12を圧入する工事の途中でいったんテーパ杭12の回転を止めて、杭頭16から杭の先端18に向かって圧力を加え、杭が動き出すまでに要した圧力を連続的に検出すると、その深さでの杭の極限支持力を求めることができる。即ち、杭が静止状態から動き出すまでに検出した圧力の最大値を、地表からその深さまでの地盤による杭の極限支持力と判定する。図の例では、L1の深さとL2の深さの杭の極限支持力が求められる。
【0021】
極限支持力は、その深さまでの杭の側面が接している地盤の性質をそのまま表している。予め行った地盤調査の結果から、L1とL2の深さまでテーパ杭12を打ち込んだときの極限支持力を、それぞれ予測計算しておく。実測した結果(測定値)とこの予測計算の結果(設計値)とを比較すると、地盤構造が地盤調査跡44から得たデータと比べて大きく変化しているかどうかを確認できる。例えば、測定値と設計値とが大きく違っていれば、この結果を利用して、その周辺の杭配置や杭の必要本数の設計を変更する見直しもできる。
【0022】
テーパ杭12を打ち込みながらその結果を利用できるので、追加の地盤調査を実行する必要がない。しかも、テーパ杭12の打ち込みと並行して比較的簡単な制御で精密な地盤調査ができる。この作業は全てのテーパ杭12について行う必要はない、代表として選んだものだけについて実施すればよい。他のテーパ杭はそのまま打ち込めばよい。もちろん、最後に図2の装置を使用して支持強度を確認することが好ましい。なお、テーパ杭12は全長にわたって均一な傾斜のテーパを備えていなくても構わない。テーパ部分は杭の一部だけに限られていてもよい。
【実施例2】
【0023】
図6は、テーパ杭の圧入施工装置の機能ブロック図である。
図において、図1で説明した圧入駆動装置20と回転駆動装置22と、地盤調査のためのデータを得る各種の検出装置は、制御装置46により制御される。装置の動作は、垂直測定装置48と圧入圧力検出装置50と圧入圧力最大値検出装置52と回転数検出装置54と圧入深さ検出装置56により監視される。垂直測定装置48はレーザ式の水準器等によりテーパ杭12が垂直に圧入されているかどうかを監視して記録するように動作する。圧入圧力検出装置50は、圧入駆動装置20によるテーパ杭12の圧入圧力を連続的に監視する装置である。例えば、油圧装置の油圧の変化を監視して記録するように動作するとよい。
【0024】
圧入圧力最大値検出装置52は、極限支持力を求めるたのものである。圧入圧力の最大値を検出して記録するように動作する。回転数検出装置54は回転駆動装置22によるテーパ杭12の回転数を検出して記録するように動作する。圧入深さ検出装置56は、テーパ杭12の地上に出ている部分の長さを検出して、テーパ杭12の圧入深さを計算して記録するように動作する。いずれの検出(測定)装置の出力も、記憶装置62に転送されて記憶される。各検出(測定)装置の出力は、必要に応じて圧入駆動装置20や回転駆動装置22の制御に利用される。また、計算装置60による地盤特性の演算に使用される。
【0025】
図7はテーパ杭の圧入施工方法を実施するためのコンピュータの説明図である。
上記のテーパ杭の圧入施工装置には、この図に示すようなコンピュータ64を搭載するとよい。コンピュータ64は、演算処理装置66と記憶装置62を備える。演算処理装置66は図6の制御装置46と計算装置60に相当する機能を持つ。コンピュータ64は、コンピュータプログラムを実行することにより、所定のタイミングで、演算処理装置66の部分に列挙した手段として機能する。コンピュータ64は、このコンピュータプログラムの実行中に、記憶装置62に記憶された必要なデータを読み取る。またあるいは、新たなデータを記憶装置62に書き込んで記憶させる。
【0026】
演算処理装置66には、図のように、圧入手順制御手段78、極限支持力計算手段80、地盤構造解析手段82、杭設計判定手段84等のコンピュータプログラムがインストールされている。また、演算処理装置66は、入出力インタフェース86を介して図6で説明した検出(測定)装置58と接続されている。演算処理装置66の部分に表示されたコンピュータプログラムが連携して演算処理を実行する。記憶装置62には、図のように、地盤調査データ68、杭データ70、設計値72、測定値74、圧入制御データ76、圧入手順制御手段78等のデータが記憶されている。圧入手順制御手段78は、図5を用いて説明したとおりの手順で、圧入駆動装置20や回転駆動装置22を動作させて制御を行う機能を持つ。また、さらに、この動作中に、検出(測定)装置58の出力を記憶装置62に記憶させる機能を持つ。
【0027】
極限支持力計算手段80は、圧入深さ検出装置56(図6)の出力によりテーパ杭12の圧入深さが予め定めた所定の深さに達したときに、その後の圧入圧力検出装置50の出力と圧入圧力最大値検出装置52(図6)の出力を監視して、その出力データを取得し、極限支持力を演算処理する機能を持つ。地盤構造解析手段82は、既知の地盤調査データ68と極限支持力とを比較して、テーパ杭12を圧入した地盤構造を解析する機能を持つ。例えば、図8に示したようなデータを生成する機能を持つ。杭設計判定手段84は、地盤構造解析手段82の計算結果をコンピュータ64のディスプレイ等に出力するとともに、例えば、テーパ杭12の本数や配置が適切かどうかの総合判定を行う機能を持つ。
【0028】
地盤調査データ68は、予め地盤調査をした結果を示すデータで、例えば、図5の右側に示したような地盤構造を示すデータである。杭データ70は、使用する全てのテーパ杭12について、その仕様と圧入場所等を示すデータを含む。設計値72は、各杭について、それぞれ、予め定めた所定の深さにおける計算上の極限支持力を具体的に予測したデータである。測定値74は、この設計値に対応する実測されたデータである。設計値と測定値との関係は図8でさらに説明する。圧入制御データ76は圧入速度や停止タイミング等の全ての手順を示す制御データである。判定結果77は、杭設計判定手段84が設計値72と測定値74とを比較して、適否の判定をした総合判定結果を示すデータである。
【0029】
図8はテーパ杭の圧入施工方法を実施した結果得られるデータの説明図である。
図のように、施工される全てのテーパ杭12は、杭番号により区別される。例えば4本だけ上記の測定をしたときには、「02」「05」「08」「11」というように、4本分の杭番号が表示される。そして、それぞれ深さL1とL2の極限支持力と、最終深さLでの設計上の基準となる支持力をが測定される。この表では、その測定値と設計値とを一覧表にして比較している。この一覧表は、図7に示したコンピュータ64のディスプレイに表示されるとよい。この結果の評価は設計者が独自の基準で行えばよい。しかし、例えば、自動的に適否判定をするには、全ての設計値と測定値の差分を計算して、その差分の累積値が許容値を越えるかどうかといった処理をすればよい。例えば、最終深さLでの支持力が基準を満たしていたとしても、設定の基礎となった地盤構造が違っていれば、支持力の基準そのものも変更しなければならない。この一覧表からこうした情報も取得できる。
【0030】
図9は、図7に示した圧入制御データと、検出をした圧入圧力の関係を示す説明図である。
この図により、具体的なデータの取得方法と判定方法を説明する。図の(a)において、縦軸は圧入圧力とテーパ杭12の回転速度を示す。横軸は時間を示す。圧入圧力は実線で示した。テーパ杭12の回転速度は破線で示した。テーパ杭12を回転させながら圧力を加えて、深さL1まで圧入したら回転を停止し、その後再び圧入圧力を漸増させる。テーパ杭12が動き出したタイミングがその状態での極限支持力である。図のタイミングt1〜t3では、テーパ杭12が回転を停止し、その後圧力だけが加えられる。タイミングt1とt2では、さらにその後、回転と圧入が再開される。
【0031】
(a)のグラフの円内の部分は、それぞれ(b)〜(c)に拡大をして示した。(b)のタイミングt1では、圧入圧力を漸増させたとき、T1時間後の圧力F2になってテーパ杭12が動きだした。このときの極限支持力はF1である。(c)のタイミングt2では、圧入圧力を漸増させたとき、T2時間後の圧力F2になってテーパ杭12が動きだした。このときの極限支持力はF2である。(d)のタイミングt3では、圧入圧力を漸増させてT3時間後の圧力F3で加圧を終了する。圧力F3でテーパ杭12が動き出さなければ、基準を満たすと判断できる。
【0032】
例えば、F1が設計値に近くて、F2が設計値よりかなり低く、F3は設計値に近いという場合、深さがL1からL2にいたる部分の地盤が予想よりも弱いと考えられる。このときは、この周辺のテーパ杭12の支持力をもっと高めておくべきという判断ができる。その結果、テーパ杭12の本数を増減したり、テーパ杭12の打ち込み場所を前後左右にシフトさせたりする変更ができる。設計当初から、実測値がどういう場合にはどう変更するかを決めておけば、図8の出力から自動的に変更指示を生成して出力することもできる。
【符号の説明】
【0033】
10 テーパ杭の圧入施工装置
12 テーパ杭
16 杭頭
18 杭の先端
20 圧入駆動装置
22 回転駆動装置
24 チャック
26 杭の軸
28 地中
30 加圧試験装置
32 ワイヤ
34 ウエイト
36 アンカー
38 油圧シリンダ
40 建物の基礎
42 敷地
44 地盤調査跡
46 制御装置
48 垂直測定装置
50 圧入圧力検出装置
52 圧入圧力最大値検出装置
54 回転数検出装置
56 圧入深さ検出装置
58 検出(測定)装置
60 計算装置
62 記憶装置
64 コンピュータ
66 演算処理装置
68 地盤調査データ
70 杭データ
72 設計値
74 測定値
76 圧入制御データ
78 圧入手順制御手段
80 極限支持力計算手段
82 地盤構造解析手段
84 杭設計判定手段
86 入出力インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭から杭の先端に向かう方向に外径を漸減させる部分を有するテーパ杭の前記杭頭を駆動装置に固定して、杭の軸を中心に回転させながら杭頭から杭の先端に向かう方向に圧力を加えて前記杭を地中に圧入する場合に、
前記杭の先端が、最終目標の深さに満たない、予め定めた所定の深さに達したとき、前記杭の回転を一時停止して、前記杭を静止状態から回転させることなく、前記杭頭から杭の先端に向かって、杭が動き出すまで圧力を加えて、杭が動き出すまでに要した前記圧力を検出し、その後再び杭の圧入を再開することを特徴とするテーパ杭の圧入施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のテーパ杭の圧入施工方法において、
前記杭が静止状態から動き出すまでに検出した前記圧力の最大値を、地表から前記所定の深さまでの地盤による杭の極限支持力と判定することを特徴とするテーパ杭の圧入施工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のテーパ杭の圧入施工方法において、
前記最終目標の深さまで杭の圧入を完了したときに、前記杭の回転を停止して、
前記杭を静止状態から回転させることなく、前記杭頭から杭の先端に向かって、設計値だけ圧力を加えたときに杭が動き出さなければ、設計上の基準を満たすと判定することを特徴とするテーパ杭の圧入施工方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のテーパ杭の圧入施工方法において、
最終目標の深さに満たない、予め定めた2種以上の所定の深さに達したとき、前記検出した極限支持力の相関関係から、地盤構造を推測することを特徴とするテーパ杭の圧入施工方法。
【請求項5】
杭頭から杭の先端に向かう方向に外径を漸減させる部分を有するテーパ杭の前記杭頭を掴んで固定し、杭の軸を中心に回転させる回転駆動装置と、
前記杭の杭頭から杭の先端に向かう方向に圧力を加えて前記杭を地中に圧入する加圧駆動装置と、
前記杭の先端の圧入深さを検出する圧入深さ検出装置と、
前記加圧駆動装置による前記圧力を検出して記録する圧入圧力検出装置と、
前記回転駆動装置と前記加圧駆動装置とを起動して、前記圧入深さ検出装置の出力を監視し、最終目標の深さに満たない予め定めた所定の深さに達したとき、前記回転駆動装置と前記加圧駆動装置とを停止して、前記杭を静止状態とし、その後前記加圧駆動装置を起動して、前記圧入深さ検出装置の出力を監視し、前記所定の深さに対応する前記杭が動き出すまでに要した前記圧力を、記憶装置に記憶させ、その後再び前記回転駆動装置と前記加圧駆動装置とを起動するように制御する、圧入手順制御手段を備えたことを特徴とするテーパ杭の圧入施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−12386(P2011−12386A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154582(P2009−154582)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】