説明

テープ材の繰り出し長さの補正方法

【課題】テープ材の種類変更などの条件変更後であっても、自動で切断箇所の長さを正確に検出する。
【解決手段】テープ材供給装置の制御部は、入力部から入力された必要長さから繰り出し装置の駆動量の基となる基準繰り出し長さを算出し、基準繰り出し長さを繰り出すべく繰り出し装置を制御してテープ材を繰り出した後に、接離部にて挟持部をテープ材に対して徐々に移動させ、その移動の度に挟持部を駆動し、挟持部がテープ材を挟持したか否かを挟持センサで検知し、挟持センサがテープ材を挟持した状態と挟持してない状態とが切り替わったときの位置センサの検出結果に基づいて挟持部の挟持位置から繰り出し装置の繰り出し出口位置までの間隔距離を算出し、間隔距離をテープ材の実際繰り出し長さとし、基準繰り出し長さと実際繰り出し長さとの差異から、実際の繰り出し長さが必要長さと一致するように基準繰り出し長さを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ材の繰り出し長さの補正方法に係り、特にテープ材供給装置におけるテープ材の繰り出し長さの補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ズボン等の縫製物の腰部に、ベルトが挿通される多数のベルトループを縫い付けることのできるベルトループ縫い付けミシンが知られている。このようなミシンにおいては、ベルトループとなるテープ材をミシン本体に供給するテープ材供給装置が設けられている。
テープ材供給装置には、テープ材を繰り出す繰り出し装置と、繰り出し装置により繰り出されたテープ材を引き出す引き出し装置とが設けられている。繰り出し装置と引き出し装置との協働によって所定長さのテープ材が供給されるようになっている。繰り出されたテープ材は、カッターにより切断され、その切断片がミシン本体へとベルトループの素材として供給される。
【0003】
また、テープ材供給装置においては、テープ材を安定供給するために、テープ材の繰り出し長さを検出する必要があるが、繰り出し装置の繰り出しローラでは、テープ材を繰り出す際にローラ上をテープ材が滑ってしまう場合もあり、正確な長さ測定が困難であった。この滑りを無効化して正確な繰り出し長さを検出することが望まれている。このため、近年においては、例えば、テープ材検出センサを、繰り出し装置における繰り出しローラの前方に設置して、当該ローラによるテープ材の実際の繰り出し量を直接検出することで、滑り等の誤差を無効化したテープ材供給装置が知られている(例えば特許文献1参照)。また、引き出し装置によってテープ材に張力が大きく付与されていると、ローラ上で滑りが発生する可能性も高いので、繰り出し装置と引き出し装置とを制御することによって、テープ材の張力を抑制し、滑り量を無効化して一定長さのテープ材供給を可能としたテープ材供給装置も知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−201886号公報
【特許文献2】特開2000−237481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1記載の技術では、テープ材検出センサが繰り出しローラとカッターとの間に設けられているために、センサからカッターまでの間のテープ材長さを検出することはできず、その部分で誤差を生じ、正確な長さでテープ材を切断できないのが実状であった。
一方、特許文献2記載の技術では、繰り出し装置と引き出し装置との駆動タイミングを調整することでテープ材に対する張力を抑制している。しかしながら、例えば、繰り出し装置側の繰り出し量と引き出し装置側の引き出し量とが同一であると、繰り出し装置側で滑りが生じてしまうので、その滑り量分だけ引き出し装置にて引っ張られ、結局テープ材に張力が生じてしまう。この張力を抑制するべく、滑り量を考慮して繰り出し量を増加させて補正する必要がある。この補正量は、テープ材の種類や、ローラとの接触面が表面か裏面か等の条件によって変化するために、条件が変わる度に補正量を手動にて調整しなければならず、調整作業が繁雑になってしまっていた。
【0006】
本発明の課題は、テープ材の種類変更などの条件変更後であっても、自動で切断箇所の長さを正確に補正することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係るテープ材の繰り出し長さの補正方法は、
テープ材を繰り出す繰り出し装置と、
前記繰り出し装置から繰り出された前記テープ材を挟持する挟持部と、
前記挟持部が閉じた状態で前記テープ材を挟持したか否かを検知する挟持センサと、
前記挟持部を前記繰り出し装置に対して接離移動させる接離部と、
前記テープ材の必要長さが入力される入力部と、
前記繰り出し装置の繰り出し出口位置から、前記挟持部の挟持位置までの間隔距離を検出するための位置センサと、
少なくとも前記繰り出し装置、前記挟持部及び前記接離部を駆動制御し、前記挟持センサ及び前記位置センサから前記検知に関する信号を受信する制御部とを備えたテープ材供給装置のテープ材の繰り出し長さの補正方法であって、
前記制御部は、前記入力部から入力された前記必要長さから前記繰り出し装置の駆動量の基となる基準繰り出し長さを算出し、前記基準繰り出し長さを繰り出すべく前記繰り出し装置を制御して前記テープ材を繰り出した後に、前記接離部にて前記挟持部を前記テープ材に対して徐々に移動させ、その移動の度に前記挟持部を駆動し、前記挟持部が前記テープ材を挟持したか否かを前記挟持センサで検知し、前記挟持センサが前記テープ材を挟持した状態と挟持してない状態とが切り替わったときの前記位置センサの検出結果に基づいて前記挟持部の挟持位置から前記繰り出し装置の繰り出し出口位置までの間隔距離を算出し、前記間隔距離を前記テープ材の実際繰り出し長さとし、前記基準繰り出し長さと前記実際繰り出し長さとの差異から、前記実際の繰り出し長さが前記必要長さと一致するように前記基準繰り出し長さを補正することを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のテープ材の繰り出し長さの補正方法において、
前記制御部は、前記実際の繰り出し長さを検出する際に、前記接離部を制御することで前記挟持部を前記繰り出し出口位置から徐々に離れるように移動させ、前記挟持センサが前記テープ材を検出した状態から、前記テープ材を検出していない状態に切り替わることで、前記テープ材の先端位置を検知することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載のテープ材の繰り出し長さの補正方法において、
前記制御部は、前記実際の繰り出し長さを検出する際に、前記接離部を制御することで前記挟持部を前記繰り出し出口位置に徐々に接近するように移動させ、前記挟持センサが前記テープ材を検出していない状態から、前記テープ材を検出した状態に切り替わることで、前記テープ材の先端位置を検知することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、制御部が、入力部から入力された必要長さから繰り出し装置の駆動量の基となる基準繰り出し長さを算出し、基準繰り出し長さを繰り出すべく繰り出し装置を制御してテープ材を繰り出した後に、接離部にて挟持部をテープ材に対して徐々に移動させ、その移動の度に挟持部を駆動し、挟持部がテープ材を挟持したか否かを挟持センサで検知し、挟持センサがテープ材を挟持した状態と挟持してない状態とが切り替わったときの位置センサの検出結果に基づいて挟持部の挟持位置から繰り出し装置の繰り出し出口位置までの間隔距離を算出し、間隔距離をテープ材の実際繰り出し長さとし、基準繰り出し長さと、実際繰り出し長さの差異から、実際の繰り出し長さが必要長さと一致するように基準繰り出し長さを補正するので、テープ材の条件が変更される度に、入力部に必要長さを入力すれば、自動で補正することができる。したがって、テープ材の種類変更などの条件変更後であっても、自動で切断箇所の長さの補正を正確に検出することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、実際の繰り出し長さを検出する際に、挟持部は繰り出し出口位置から徐々に離れるように移動し、挟持センサがテープ材を検出した状態から、テープ材を検出していない状態に切り替わることで、テープ材の先端位置を検知しているので、テープ材を挟持していない状態に切り替わるまでは、テープ材は幾度か挟持部により挟持されることになる。つまり、テープ材が撓んでいたとしても、挟持部による挟持によってテープ材の先端が伸ばされることになり、より正確な長さを検出することが可能となる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、実際の繰り出し長さを検出する際に、挟持部は前記繰り出し出口位置に徐々に接近するように移動し、挟持センサがテープ材を検出していない状態から、テープ材を検出した状態に切り替わることで、テープ材の先端位置を検知している。ここで、挟持センサがテープ材を検出した状態からテープ材を検出していない状態に切り替わることでテープ材の先端位置を検知する場合であると、一度テープ材を確実に挟持することのできる位置まで挟持部を移動させてから、繰り出し出口位置から徐々に離していく必要がある。つまり、確実に挟持できる位置を予め認識していなければいけないが、請求項3記載の発明では、確実に挟持できる位置が不明であってもテープ材を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態のテープ材供給装置を搭載したベルトループ付けミシンの全体図を示す斜視図である。
【図2】本実施形態のテープ材供給装置の概略構成を示す正面図である。
【図3】図2のテープ材供給装置に備わる挟持部の概略構成を示す正面図である。
【図4】図3の挟持部の動作を示す正面図である。
【図5】図2のテープ材供給装置の主制御構成を示すブロック図である。
【図6】図2のテープ材供給装置で実行される補正値算出プログラムのフローチャートである。
【図7】図2のテープ材供給装置で実行される不足量算出処理のフローチャートである。
【図8】図7の不足量算出処理中のテープ材及び挟持部の関係を示す説明図である。
【図9】図7の不足量算出処理の変形例におけるテープ材及び挟持部の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態のテープ材供給装置を搭載したベルトループ付けミシンの全体図を示す斜視図である。
図1に示すように、ベルトループ付けミシン1は、縫い針11を上下動させる図示しない針上下動機構と、所定方向に向けられたベルトループとしてのテープ材Bを挟持する可動部としてのループクランプ31を備えるクランプ機構30と、テープ材Bをクランプ機構30に供給するテープ材供給装置100と、布地(図示省略)が載置される載置台51と当該載置台51への下降動作によりテープ材Bを押さえつけるループ押さえ52とを備えるループ押さえ機構50と、布地を保持する布押さえ機構70と、ミシンフレーム2と、図示しない釜機構とを備えている。
【0015】
ミシンフレーム2は、釜機構を内蔵したミシンベッド部2aと、ミシンベッド部2aの一端部から立設した縦胴部2bと、針上下動機構を内蔵したミシンアーム部2cとを備えている。そして、ミシンアーム部2cはミシンベッド部2aと同じ方向に延出されている。以下の説明において、水平であってミシンベッド部2a及びミシンアーム部2cの長手方向に平行な方向をY軸方向、水平であってY軸方向に直交する方向をX軸方向、鉛直上下方向をZ軸方向とし、説明の必要に応じて、Y軸方向における一端部側であってミシンアーム部2cの面部側を「手前側」、Y軸方向における他端部側であって縦胴部2b側を「奥側」いうものとする。
【0016】
クランプ機構30は、ミシンフレーム2に対して手前側(面部側)から奥側を向いた状態で見て右側に配置されている。以下の説明において、「右」というときには、X軸方向に平行な方向であって手前側(面部側)から奥側を向いた状態で見て右となる方向を示すものとし、単に「左」というときには、X軸方向に平行な方向であって手前側(面部側)から奥側を向いた状態で見て左となる方向を示すものとする。
クランプ機構30は、テープ材Bを挟持するループクランプ31と、ループクランプ31を保持する保持ブロック32と、保持ブロック32をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向について移動可能に支持する支持台34と、ループクランプ31に対してY軸方向に沿って隣接したフォーク部材38とが設けられている。
フォーク部材38は、X軸方向に沿って延出された基部の先端部(左端部)からさらに二本の棒状体が左方に延出されて二叉状に形成されており、当該二本の棒状体の間にテープ材Bを通して基部をX軸回りに回転させることにより、テープ材Bの端部を折り返すことを可能としている。かかるフォーク部材38は、X軸方向に沿って進退移動可能に保持ブロック32に支持されており、前進時にループクランプ31と並ぶ位置となり、後退時にはループクランプ31より右方に退避するようにフォーク用エアシリンダ(図示省略)によって進退動作が付与される。また、フォーク部材38のX軸回りの回転動作はロータリーアクチュエータ(図示省略)により付与される。
【0017】
図2は、本発明に係るテープ材供給装置100の概略構成を示す正面図である。図2に示す通り、テープ材供給装置100には、ミシンフレーム2及びクランプ機構30を挟むように、互いに対向して配置された繰り出し装置110と、引き出し装置140とが設けられている。
【0018】
繰り出し装置110は、ミシンフレーム2及びクランプ機構30の手前側に配置されていて、テープ材BをY方向に沿うように引き出し装置140に向けて繰り出すものである。繰り出し装置110には、外周面にテープ材Bを繰り出すための多数の送り歯が全周にわたって形成されたほぼ円板状の繰り出しローラ111が設けられている。繰り出しローラ111の下方には、テープ材Bをガイドするガイド部112が設けられており、このガイド部112に載置されたテープ材B上を繰り出しローラ111が回転することにより、テープ材Bが繰り出されるようになっている。
【0019】
また、繰り出し装置110には、繰り出されたテープ材Bを切断する切断部120が、繰り出しローラ111の下流側に配設されている。この切断部120には、常にテープ材Bの走行経路の上方に位置し、上下方向に移動可能とされた可動刃121と、この可動刃121とほぼ対向するようにしてテープ材Bの走行経路の下方に当該走行経路に臨むようにして配設された固定刃122とが設けられている。この可動刃121と、固定刃122との合わせ位置、すなわち切断位置が、テープ材Bの繰り出し長さを検出する際の繰り出し出口位置Kとなる。
【0020】
引き出し装置140は、ミシンフレーム2及びクランプ機構30の奥側に配置されていて、繰り出し装置110から繰り出されたテープ材Bを引き出すものである。引き出し装置140は、テープ材Bの先端部を挟持する挟持部141を有している。
【0021】
図3は挟持部141の概略構成を示す正面図であり、図4は挟持部141の動作を示す正面図である。図3,4に示すように、挟持部141には、下方に配置された固定アーム142と、上方に配置されたくちばしなどと称される可動アーム143とが設けられている。
【0022】
固定アーム142は、テープ材Bの送出方向に沿ってほぼ水平に配設された平板状の基部144と、この基部144の先端側から一旦上方に向かって延出された後ほぼ水平とされるとともにその先端が下方に向かって折り曲げるように延出成形されたつかみ部145とを有する。つかみ部145は、その上に繰り出し装置110から繰り出されたテープ材Bが乗るように、テープ材Bの下面とほぼ面一か或いは若干低く形成されている。
また、固定アーム142は、基部144の後端側から上方に向かって延出形成された取付部146と、基部144の長手方向中央部よりやや後端側の側面から上方に向かって延出形成された一対の側板部147とを有しており、全体としてほぼL字形状に形成されている。
そして、固定アーム142の取付部146の下部側には、挟持部141をテープ材Bの先端縁に向かってほぼ水平に進退させるための駆動ロッド148の先端部が取着されている。
【0023】
可動アーム143は、テープ材Bの送出方向に沿ってほぼ水平に配設された平板状の基部149と、この基部149の先端側からほぼ下方に向かって延出形成されたフック状のつかみ部150と、基部149の後端側から上方に向かって延出形成された取付部151と、基部149の長手方向中央部から後端部の側面に先端側上端縁部の一部が接続され後端側に向かって延出形成された一対のリンク部152とを有しており、全体としてほぼL字形状に形成されている。そして、可動アーム143のリンク部152の基端部は、アーム支軸153に回転自在に取着されている。このアーム支軸153は、その軸方向がテープ材Bの送出方向に対して直交する方向となっていて、固定アーム142の側板部147の高さ方向ほぼ中央部に両端が支持されている。
【0024】
可動アーム143の取付部151の自由端部には、固定アーム142の取付部146上端部近傍に取着されたエアシリンダ154の出力軸155がアームブラケット156を介して接続されている。このエアシリンダ154の出力軸155を進退させることにより、図4に示すように、可動アーム143がアーム支軸153を中心として回動する。この回動によって、可動アーム143のつかみ部150が固定アーム142のつかみ部145に対して接離するように開閉する。また、エアシリンダ154の出力軸155は、図3に示すように、常時は後退した後退端に位置しており、可動アーム143のつかみ部145を固定アーム142のつかみ部145から離間した位置に保持して挟持部141を開状態に保持することができる。
【0025】
挟持部141には、当該挟持部141がテープ材Bの先端部を挟持したか否かを検出する挟持センサ157が設けられている。この挟持センサ157は、固定アーム142の基部144の上面に固定配置された近接スイッチ158と、この近接スイッチ158を動作させるためばね材により弾性変形可能にして全体としてほぼねじりコイルばね状に形成された検知部材159とを有している。近接スイッチ158の検知部160は、可動アーム143の下面に対向するようにして配設されている。
【0026】
検知部材159は、固定アーム142に回転自在に支持されており、エアシリンダ154の出力軸155の進退動作、つまり挟持部141の開閉動作に連動して、固定アーム142に支持された検知支持軸161を中心に回転して近接スイッチ158の検知部160に接離可能に形成されている。
【0027】
さらに、挟持部141が閉状態となって挟持部141がテープ材Bの先端部を挟持した場合、検知部材159の先端部は、可動アーム143の先端部から離間してテープ材Bの上面に当接して弾性変形し、図4の二点鎖線Q1にて示す位置を保持している。また、挟持部141が閉状態となっても挟持部141がテープ材Bをつかんでいないミスが生じた場合には、検知部材159の先端部は、可動アーム143の先端部から離間して弾性変形せずに固定アーム142の先端部に設けたスリット142aを上方から下方に通過して固定アーム142の先端部の下方に位置し、図4の二点鎖線Q2にて示す位置を保持している。このとき、近接スイッチ158の検知部160に検知部材159の先端部が接近して近接スイッチ158を動作させるようになっている。
【0028】
つまり、エアシリンダ154の出力軸155の前進時において、近接スイッチ158が検知部材159の先端部を検出していない場合には、挟持部141がテープ材Bを挟持したことが検出される。また、エアシリンダ154の出力軸155の進退時において、近接スイッチ158が検知部材159の先端部を検出した場合には、つかみミスにより挟持部141がテープ材Bを挟持していないことが検出される。
また、エアシリンダ154の出力軸155の後退時においては、近接スイッチ158の出力内容に関係なく、挟持部141がテープ材Bを挟持していないことが検出される。
【0029】
また、図2に示すように、駆動ロッド148は、基台170に装着された2つの軸受け171によってテープ材Bの送出方向と平行な軸方向に往復移動可能に支持されている。また、基台170には、駆動ロッド148を往復移動させて、挟持部141と繰り出し装置110とを接離させるロッド駆動機構172が設置されている。また、ロッド駆動機構172は、駆動源としてステッピングモータ171を有していて、このステッピングモータ171が回転駆動することにより駆動ロッド148が往復移動するようになっている。これら駆動ロッド148、ロッド駆動機構172及びステッピングモータ171が本発明に係る接離部である。
【0030】
また、ステッピングモータ171にはエンコーダ180が設けられており、挟持部141の現在位置を検知する位置センサとして機能する。挟持部141の位置が特定されることにより、後述する制御部190は、繰り出し装置110の繰り出し出口位置から、挟持部141の挟持位置までの間隔を算出する。なお、エンコーダ180が設けられていない場合は、制御部190はステッピングモータ171への駆動指令値を基に挟持部141の位置を特定し、繰り出し装置110の繰り出し出口位置から、挟持部141の挟持位置までの間隔を算出する。
【0031】
次に、テープ材供給装置100の主制御構成について図5を参照して説明する。図5はテープ材供給装置100の主制御構成を示すブロック図である。図5に示すように、テープ材供給装置100には、種々の駆動源を制御する制御部190が設けられている。制御部190は、例えば、CPU、ROM、RAM(いずれも図示せず)からなり、ROMに記録された処理プログラムをRAMに展開してCPUによりこの処理プログラムを実行して、種々の駆動源を制御する。具体的に、制御部190には、縫製に必要なテープ材Bの長さや、テープ材供給工程の開始指示などで操作が入力される操作パネルなどである入力部191と、種々の情報を報知する報知部194と、繰り出しローラ111を駆動する繰り出しローラ駆動源192と、可動刃121を駆動する可動刃駆動源193と、エアシリンダ154と、ステッピングモータ171と、近接スイッチ158と、エンコーダ180とが電気的に接続されている。制御部190は、入力部191に入力された操作や、近接スイッチ158及びエンコーダ180から入力された検出結果等に基づいて、繰り出しローラ駆動源192、可動刃駆動源193、報知部194、エアシリンダ154及びステッピングモータ171を制御する。
【0032】
ROMに記録された処理プログラムとしては、テープ材Bを所定の長さだけ繰り出して切断する切断プログラムや、テープ材Bの条件が変わったことにより繰り出し長さの補正値を算出する補正値算出プログラム等がある。ここで、テープ材Bの条件が変わるとは、テープ材Bの種類が変わることや、同一種類でもテープ材Bの表裏面が変わること、テープ材Bの厚みや太さが変わることなどである。つまり、繰り出しローラ111に対するテープ材Bの摩擦力の変化を誘発することが、テープ材Bの条件が変わるということである。
【0033】
以下、本実施形態に係るテープ材の繰り出し長さの補正方法を実行するための補正値算出プログラムについて図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、作業者によって、テープ材Bの必要長さが操作パネルなどの入力部191に入力され、さらに入力部191に補正値算出を開始する操作が入力されると、制御部190は補正値算出プログラムを実行する。補正値算出プログラムが実行されると、制御部190は、入力部191に入力された必要長さから、繰り出し装置を駆動する際の駆動量の基となる基準繰り出し長さを算出する。この時点で算出される基準繰り出し長さは、繰り出し装置110でテープ材Bを繰り出す際の繰り出しローラ111とテープ材Bの滑りを考慮してテープ材Bの必要長さより長めの値に設定しても良いし、テープ材Bの必要長さと同一としても良い。続いて制御部190は、基準繰り出し長さをROMに記録するとともに、予めROMに記録されている補正値を「1」にリセットする(ステップS1)。
【0034】
補正値算出プログラムが実行されると、制御部190は、入力部191に入力された基準繰り出し長さをROMに記録するとともに、予めROMに記録されている補正値を「1」に設定する(ステップS1)。
【0035】
ステップS2では、設定された補正値を基に繰り出し長さの不足量を計測する。この不足量算出処理については図7のフローチャートを参照して説明する。
不足量算出処理では、まず制御部190は、繰り出し装置110の繰り出し出口位置Kから挟持部141の挟持位置までの間隔が、「基準繰り出し長さ×補正値−α」となるように、エンコーダ180の検出結果に基づいてステッピングモータ171を制御して、ロッド駆動機構172及び駆動ロッド148を駆動させて挟持部141を前進させる(ステップS201)。なお、繰り出し装置110でテープ材Bを繰り出す際に、繰り出しローラ111ではテープ材Bが滑ってしまい、「基準繰り出し長さ×補正値」の値を目標としていても実際にはその目標値まで繰り出されないのが実状である。このため、前記間隔を「基準繰り出し長さ×補正値−α」とすることで、目標値に満たないテープ材Bであっても挟持できる位置に挟持部141を移動させることが可能となる。つまり、αの値は、目標値に満たないテープ材Bを確実に挟持できる値とする必要があり、テープ材Bの各条件に対応するように種々の実験やシミュレーション等により求められていることが好ましい。
【0036】
ステップS202では、制御部190は、繰り出し装置110の繰り出し出口位置Kからテープ材Bが基準繰り出し長さ分繰り出されるように、繰り出しローラ駆動源192を制御する。このとき、テープ材Bと挟持部141とは、図8(a)に示す状態となっている。
【0037】
ステップS203では、制御部190は、エアシリンダ154を制御して、挟持部141を閉状態とする。このとき、テープ材Bと挟持部141とは、図8(b)に示す状態となっている。
【0038】
ステップS204では、制御部190は、近接スイッチ158の検出結果に基づいて、挟持部141がテープ材Bを挟持しているか否かを判断し、挟持している場合はステップS205に移行して(ステップS204;YES)、挟持していない場合はステップS209に移行する(ステップS204;NO)。
【0039】
ステップS205では、制御部190は、制御部190は、エアシリンダ154を制御して、挟持部141を開状態として、テープ材Bを開放する。
ステップS206では、制御部190は、挟持部141が所定単位長さLだけ繰り出し出口位置Kから遠ざけるように、ステッピングモータ171を制御し、ロッド駆動機構172及び駆動ロッド148を駆動させて挟持部141を後退させる。このとき、テープ材Bと挟持部141とは、図8(c)に示す状態となっている。
【0040】
ステップS207では、制御部190は、挟持部141の後退量をエンコーダ180により得る。
ステップS208では、制御部190は、挟持部141の後退領域が限界か否かを判断し、限界でない場合にはステップS203に移行し(ステップS208;NO)、限界である場合にはステップS214に移行する(ステップS208;YES)。
【0041】
このステップS203からステップS208を繰り返して、図8(e)に示すように挟持部141がテープ材Bの先端を挟持しない状態になると、ステップS204では挟持してないことが判断される。そして、制御部190は、ステップS207で得た総後退量と、「基準繰り出し長さ×補正値−α」とを加算した値を実際のテープ材Bの繰り出し長さとして算出する。つまり、近接スイッチ158、接離部及びエンコーダ180の協働によって、テープ材Bの実際の繰り出し長さが検出される。これら近接スイッチ158、接離部及びエンコーダ180が本発明に係る繰り出しセンサである。
【0042】
ステップS209では、制御部190は、エアシリンダ154を制御して、挟持部141を開状態とするとともに、挟持部141が待機位置まで移動するように、ステッピングモータ171を制御し、ロッド駆動機構172及び駆動ロッド148を駆動させて挟持部141を後退させる。
【0043】
ステップS210では、制御部190は、可動刃駆動源193を制御して、可動刃121を動作させて、繰り出されているテープ材Bを切断する。
ステップS211では、制御部190は、新補正値を算出する。具体的に説明すると、「実際のテープ材Bの繰り出し長さ」をF、「基準繰り出し長さ×補正値−α」をG、新補正値をHとすると、H=G/Fで表される。
【0044】
ステップS212では、制御部190は、新補正値が許容範囲内に収まっているか否かを判断し、許容範囲内に収まっている場合にはステップS213に移行し(ステップS212;YES)、許容範囲外である場合にはステップS214に移行する(ステップS212;NO)。
【0045】
ステップS213では、制御部190は計測成功であることをROMに記録し、補正値算出プログラムを終了する。
ステップS214では、制御部190は計測失敗であることをROMに記録し、補正値算出プログラムを終了する。
【0046】
補正値算出プログラムの終了後、図6に示すステップS3では、制御部190は、ROMの記録内容から、補正値の計測が成功したか否かを判断し、成功した場合にはステップS4に移行して(ステップS3;YES)、失敗した場合にはステップS7に移行する(ステップS3;NO)。
【0047】
ステップS4では、制御部190は、予め設定されていた補正値による「実際のテープ材Bの繰り出し長さ(初期値は0)」と、新補正値の算出時による「実際のテープ材Bの繰り出し長さ」とが一致しているか否かを判断し、不一致の場合はステップS5に移行し(ステップS4;YES)、一致の場合はステップS6に移行する(ステップS4;NO)。
【0048】
ステップS5では、制御部190は、新補正値を補正値としてROMに記録し、ステップS2に移行する。これにより、再度不足量算出処理が実行される。
【0049】
ステップS6では、制御部190は、新補正値を正式な補正値として確定し、補正値算出プログラムを終了する。
【0050】
ステップS7では、制御部190は、報知部194を制御して、計測が失敗したことを報知し、補正値算出プログラムを終了する。
【0051】
そして、ベルトループの縫製時においては、制御部190は、テープ材Bを繰り出す際に、取得した正式な補正値を基準繰り出し長さに積算した値を補正された基準繰り出し長さとし、補正された基準繰り出し長さを基に繰り出しローラ駆動源192を制御すれば、実際の繰り出し長さが必要長さと一致するようになる。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、制御部190が、入力部191から入力された必要長さから繰り出し装置110の駆動量の基となる基準繰り出し長さを算出し、基準繰り出し長さを繰り出すべく繰り出し装置110を制御してテープ材Bを繰り出した後に、接離部にて挟持部141をテープ材Bに対して徐々に移動させ、その移動の度に挟持部141を駆動し、挟持部141がテープ材Bを挟持したか否かを挟持センサ157で検知し、挟持センサ157がテープ材Bを挟持した状態と挟持してない状態とが切り替わったときのエンコーダ180の検出結果に基づいて挟持部141の挟持位置から繰り出し装置110の繰り出し出口位置Kまでの間隔距離を算出し、間隔距離をテープ材Bの実際繰り出し長さとし、基準繰り出し長さと、実際繰り出し長さの差異から、実際の繰り出し長さが必要長さと一致するように基準繰り出し長さを補正するので、テープ材Bの条件が変更される度に、入力部191に必要長さを入力すれば自動で補正することができる。したがって、テープ材Bの種類変更などの条件変更後であっても、自動で切断箇所の長さの補正を正確に検出することができる。
【0053】
また、テープ材Bの実際の繰り出し長さを検出する繰り出しセンサが、従来からテープ材供給装置に搭載されている近接スイッチ158、接離部及びエンコーダ180を有していて、これらを協働させることにより、実際の繰り出し長さを検出しているので、専用のセンサ等を設けなくとも、実際の繰り出し長さを検出することができる。
【0054】
また、実際の繰り出し長さを検出する際に、挟持部141は繰り出し出口位置Kから徐々に離れるように移動し、挟持センサ157がテープ材Bを検出した状態から、テープ材Bを検出していない状態に切り替わることで、テープ材Bの先端位置を検知しているので、テープ材Bを挟持していない状態に切り替わるまでは、テープ材Bは幾度か挟持部141により挟持されることになる。つまり、テープ材Bが撓んでいたとしても、挟持部141による挟持によってテープ材Bの先端が伸ばされることになり、より正確な長さを検出することが可能となる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、本実施形態では、近接スイッチ158がテープ材Bの先端を挟持したことを検出した状態から、当該先端を挟持してないことを検出した状態に切り替わるように、繰り出し出口位置Kから、挟持部141の挟持位置までの間隔を広げていく場合を例示して説明したが、例えば、実際の繰り出し長さを検出する際に、挟持部141は繰り出し出口位置Kに徐々に接近するように移動し、挟持センサ157がテープ材Bを検出していない状態から、テープ材Bを検出した状態に切り替わることで、テープ材Bの先端位置を検知することも可能である。
【0056】
また、テープ材Bの繰り出しによって検出の有無を切り替えることも可能である。例えば、図9(a)に示すように、実際の繰り出し長さを検出する際、まず制御部190は、エンコーダ180の検出結果に基づいて接離部により挟持部141を移動させて、繰り出し出口位置Kから挟持部141の挟持位置までの間隔を基準繰り出し長さ以上の間隔に固定する。次いで、制御部190は、図9(b)に示すように、エアシリンダ154を制御して、挟持部141を閉状態として、近接スイッチ158の検出結果に基づいてテープ材Bを挟持しているか否かを判断する。挟持していないことを検出した場合、図9(c)に示すように、制御部190は、繰り出し装置110の繰り出しローラ駆動源192を制御して、テープ材Bの先端部が所定単位長さLだけ繰り出し出口位置Kから遠ざけるように、テープ材Bを繰り出す。所定単位長さだけ繰り出した後、制御部190は、図9(d)に示すように、再度エアシリンダ154を制御して、挟持部141を閉状態として、近接スイッチ158の検出結果に基づいてテープ材Bを挟持しているか否かを判断する。このように、繰り出し装置110がテープ材Bを所定長さL毎に繰り出して、所定長さL繰り出される度に、制御部190は挟持部141の挟持動作を実行して、テープ材Bを挟持しているか否かを判断する。そして、制御部190は、近接スイッチ158がテープ材Bの先端を挟持していないことを検出した状態と、当該先端を挟持したことを検出した状態とが切り替わったとき(図9(e)参照)の繰り出し装置110の総繰り出し長さを実際の繰り出し長さとして算出する。
【0057】
この場合においても、テープ材Bの実際の繰り出し長さを検出する繰り出しセンサが、従来からテープ材供給装置100に搭載されている近接スイッチ158、接離部、エンコーダ180及び繰り出し装置110を有していて、これらを協働させることにより、実際の繰り出し長さを検出しているので、専用のセンサ等を設けなくとも、実際の繰り出し長さを検出することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ミシン
2 ミシンフレーム
11 縫い針
30 クランプ機構
50 ループ押さえ機構
70 布男さえ機構
100 テープ材供給装置
110 繰り出し装置
111 繰り出しローラ
120 切断部
140 引き出し装置
141 挟持部
154 エアシリンダ
157 挟持センサ
158 近接スイッチ
171 ステッピングモータ
172 ロッド駆動機構
180 エンコーダ(位置センサ)
190 制御部
191 入力部
192 繰り出しローラ駆動源
193 可動刃駆動源
194 報知部
B テープ材
K 繰り出し出口位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ材を繰り出す繰り出し装置と、
前記繰り出し装置から繰り出された前記テープ材を挟持する挟持部と、
前記挟持部が閉じた状態で前記テープ材を挟持したか否かを検知する挟持センサと、
前記挟持部を前記繰り出し装置に対して接離移動させる接離部と、
前記テープ材の必要長さが入力される入力部と、
前記繰り出し装置の繰り出し出口位置から、前記挟持部の挟持位置までの間隔距離を検出するための位置センサと、
少なくとも前記繰り出し装置、前記挟持部及び前記接離部を駆動制御し、前記挟持センサ及び前記位置センサから前記検知に関する信号を受信する制御部とを備えたテープ材供給装置のテープ材の繰り出し長さの補正方法であって、
前記制御部は、前記入力部から入力された前記必要長さから前記繰り出し装置の駆動量の基となる基準繰り出し長さを算出し、前記基準繰り出し長さを繰り出すべく前記繰り出し装置を制御して前記テープ材を繰り出した後に、前記接離部にて前記挟持部を前記テープ材に対して徐々に移動させ、その移動の度に前記挟持部を駆動し、前記挟持部が前記テープ材を挟持したか否かを前記挟持センサで検知し、前記挟持センサが前記テープ材を挟持した状態と挟持してない状態とが切り替わったときの前記位置センサの検出結果に基づいて前記挟持部の挟持位置から前記繰り出し装置の繰り出し出口位置までの間隔距離を算出し、前記間隔距離を前記テープ材の実際繰り出し長さとし、前記基準繰り出し長さと前記実際繰り出し長さとの差異から、前記実際の繰り出し長さが前記必要長さと一致するように前記基準繰り出し長さを補正することを特徴とするテープ材の繰り出し長さの補正方法。
【請求項2】
請求項1記載のテープ材の繰り出し長さの補正方法において、
前記制御部は、前記実際の繰り出し長さを検出する際に、前記接離部を制御することで前記挟持部を前記繰り出し出口位置から徐々に離れるように移動させ、前記挟持センサが前記テープ材を検出した状態から、前記テープ材を検出していない状態に切り替わることで、前記テープ材の先端位置を検知することを特徴とするテープ材の繰り出し長さの補正方法。
【請求項3】
請求項1記載のテープ材の繰り出し長さの補正方法において、
前記制御部は、前記実際の繰り出し長さを検出する際に、前記接離部を制御することで前記挟持部を前記繰り出し出口位置に徐々に接近するように移動させ、前記挟持センサが前記テープ材を検出していない状態から、前記テープ材を検出した状態に切り替わることで、前記テープ材の先端位置を検知することを特徴とするテープ材の繰り出し長さの補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−55919(P2011−55919A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206580(P2009−206580)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】