説明

ディジタル画像を強調する方法及びシステム

ディジタル画像を強調するシステムと方法について説明する。ディジタル画像を周波数帯毎または異なる分解能の格子の一連の分解画像に変換する。分解画像では、ノイズは抑制され、コントラストは強調される。各々の画素代表値は、近傍の画素の信号に対する寄与に基づいて計算される。参照表を画素値に適用して、予め定められた範囲の信号強度内で選択的に信号を強調する。他の1組の参照表を分解画像に適用して、画素値に含まれるノイズ成分を抑制する。随意に、操作を分解画像に適用して、特に、量子ノイズを抑制するか、オブジェクトエッジを強調するか、または、全体のコントラストを強調する。これらの分解画像は、信号強調およびノイズ抑制の後に、再合成され、結果として強調画像となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にディジタル画像処理の分野に関する。具体的には、本発明は、ディジタル画像を強調するための方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル画像の分野、より具体的には、医学画像の分野において、往々にして2つの寄与要因により、関心のある対象物は必ずしも十分に視覚化されていない。1つは、過剰なノイズの存在である。ノイズは、磁気共鳴画像(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波画像およびX線画像などの医学画像に常に存在する。一般に、信号対ノイズ比、したがって画像可視性は、患者の照射もしくは線量、またはその両方の増加により改善することができる。しかしながら、この種の増加は、往々にして、患者の健康に悪影響を与える傾向があるため、従って、可能であれば常に回避されるべきである。このように、患者への照射および線量と画像ノイズの間にはトレードオフが存在する。
【0003】
ディジタル画像、特に医学画像においては、低いコントラストは、往々にして、画像における関心対象物の可視性を低める他の寄与要因である。ノイズおよび低コントラストの双方の存在により、往々にして更に画像の対象構造の可視性が損なわれる。コントラストの問題はまた、大部分の医用画像装置のダイナミックレンジと、画像レンダリング装置のダイナミックレンジ間の不一致を原因としても生じる。通常、ディジタル画像のダイナミックレンジは、大部分のフィルムおよび表示装置のダイナミックレンジより非常に大きい傾向がある。例えば、X線は容易に肺を透過するが、縦隔によって大幅に減衰されるので、胸部X線画像は非常に幅広い範囲の画素値を有する。従って、表示機器の制約のため、1つの画像で、同時に肺および縦隔を観察することは難しい。ダイナミックレンジを圧縮する単純な方法は、全体のコントラストの低下および/または微妙な細部の損失を招く。コントラストおよび輝度の単純な対話的調節を可能とすることにより、この課題に対処するのが一般的である。しかし、この種の調整は、同時に画像全体を通して許容可能なコントラストを通常はもたらすことはできず、また、いずれにせよ、臨床状況では、あまりに時間がかかると考えられている。
【0004】
したがって、疾患の診断に関するする詳細などの対象物の全ての関連する詳細が強調される、即ち、許容可能なコントラストで同時に視覚化されるように、ディジタル画像を、特に医用画像をフィルムまたはコンピュータ画面上に表示することが急務となっている。
【0005】
ヒストグラム平坦化、アンシャープマスキングおよびノイズ平滑化を含む、多くの異なる画像処理技術がこのニーズに応えるために開発されてきた。しかしながら、この種の方法は、限られた効果を挙げたに過ぎなかった。
【0006】
さらに近年では、画像強調の問題について多重スケール法が導入及び適用され、有意に良好な成果を挙げている。しかしながら、提案されている解決策が、完全に満足のいくものであるというわけではない。例えば、米国特許第5,461,655号明細書は、多重スケール法を開示するが、コントラストまたはエッジの強調では無く、主にノイズ低減に関する。この方法によれば、局所的な標準偏差を使用してノイズが推定されるが、それは、撮像された対象物のエッジを含む領域、すなわち、画像信号強度が大きく変動する領域において、信頼性の低い結果を与える傾向がある。米国特許第5,467,404号明細書および同第5,805,721号明細書は、多重スケール分解の各々のサブバンド画像に適用される非線形参照表によるコントラスト強調について記載している。しかしながら、各画素値は、画像内での位置や近傍の画素値を考慮せずに、画素の現在の値に基づいて修正される。この方法は、信号とノイズの2つを区別しないので、この方法は信号と同時にノイズを強調する傾向がある。同様に、米国特許第5,960,123号明細書は、米国特許第5,467,404号明細書および同第5,805,721号明細書に非常に類似したアルゴリズムを記載する。それゆえに、その中で開示される方法もまた、ノイズおよび信号の両方を強調する傾向がある。
【特許文献1】米国特許第5,461,655号明細書
【特許文献2】米国特許第5,467,404号明細書
【特許文献3】米国特許第5,805,721号明細書
【特許文献4】米国特許第5,960,123号明細書
【特許文献5】米国特許第5,467,404号明細書
【特許文献6】米国特許第5,805,721号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した不利な点のうちの少なくとも1つを緩和するかまたは取り除くことが、本発明の目的である。
【0008】
本発明は、ディジタル画像を強調するシステム及び方法を提供する。ディジタル画像は、周波数帯または異なる分解能のグリッド内で一連の分解画像に変換される。分解画像においては、ノイズは抑制され、コントラストは強調される。画像の少なくとも一部の、各々の画素での信号の代表値は、その画素の近傍の画素の信号に対する寄与に基づいて計算される。参照表を信号の代表値に適用して、予め定められた範囲の信号強度において、選択的に信号強調する。近傍の代表値に決まる他の1組の参照表を画素値に適用して、それに含まれるノイズ成分を抑制する。随意に、分解画像に操作を加えて、特に、量子ノイズを抑制するか、オブジェクトエッジを強調するか、または、全体のコントラストを強調する。これらの分解画像は、信号強調およびノイズ抑制の後に再合成され、強調画像となる。
【0009】
本発明の第1の態様においては、ディジタル画像を処理する方法が提供される。この方法は、ディジタル画像を、一連の異なる空間的分解能の画像に分解するステップと、一連の画像の中の少なくとも1つの画像を修正するステップであって、その修正は、それぞれの画素の近傍の画素の画素値から計算した近傍値の推定値に基づいて、1つの画像の少なくとも一部のそれぞれの画素の画素値を選択的に変換することを含むステップと、修正後に一連の画像を処理済ディジタル画像に再合成するステップとを含む。
【0010】
本発明の本態様の1つの特徴において、推定値は、最少分散方向または最少分散経路に沿った画素値の1次元畳み込み演算から計算され、強調関数を推定値に適用して、各画素について選択的に変換された画素値を得る。
【0011】
別の態様においては、ディジタル画像を処理するシステムが提供される。このシステムは、ディジタル画像取得のための画像検索モジュールと、ディジタル画像を異なる空間分解能の一連の画像に分解するための分解モジュールと、前記一連の画像のうちの少なくとも1つの画像を修正するためのフィルタと、修正後に前記一連の画像を処理済ディジタル画像に再合成するための再構成モジュールを含み、前記修正は、前記1つの画像の少なくとも一部の各画素の画素値を、前記各画素の近傍にある画素の画素値から計算した近傍値の評価に基づいて、選択的に変換することを含む。
【0012】
本発明の本態様の1つの特徴において、このシステムは更に、振幅推定子を含む。振幅推定子は、近傍における最小分散方向に沿って画素値の1次元畳み込み演算を計算するように構成される。計算された評価は、画素値の1次元畳み込み演算と比例している。
【0013】
本発明の本態様の他の特徴において、システムは更に、補助画像Imedを得るために少なくとも1つの画像に適用するための予め定められたカーネル半径の中間値フィルタと、Imedのロバストな標準偏差を計算するためのノイズ推定モジュールを含む。推定は、それぞれの画素における、Imedの画素値の絶対値の、ロバストな標準偏差に対する比率の定数倍値として計算される。
【0014】
別の態様においては、ディジタル画像のノイズを抑制する方法が提供される。ディジタル画像は、空間的に関連した画素により構成されており、それらの画素値は、ディジタル画像を表す成分及びノイズ成分を有している。この方法は、画像の少なくとも一部の各画素における信号成分の代表値を、各画素の近傍の画素から信号成分に対する寄与に基づいて求めるステップと、画素の補助画像のロバストな標準偏差から各画素におけるノイズ値を推定するステップと、抑制関数を画素値に適用して、画素に対する代替の画素値を得るステップとを含む。代表値に対するノイズ値の比率が増加するにつれて、抑制関数は単調に減少する。
【0015】
本発明の更に別の態様において、ディジタル画像の画質を向上させる方法が提供される。ディジタル画像は、空間的に関連した画素で構成され、画素値はディジタル画像を表している信号成分を有する。この方法は、画像の少なくとも一部の各画素における画素値の最少分散経路を識別するステップと、この経路に沿った画素の画素値から計算される各画素の信号成分の代表値を求めるステップと、変換関数を代表値に適用して、各画素に対して信号強調された画素値を求めるステップとを含む。変換関数は、信号のレンジを強調する。
【0016】
他の態様において、本発明は、上で記載されている態様のさまざまな結合および部分的な組合せを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
例示的であるが非限定的に、説明のために、本発明の前述した態様及び他の態様について、添付の図を用いてより詳細に説明する。
【0018】
以下の説明及びそこで示される実施例は、本発明の原理の具体的な実施形態として例示的に提供されるものである。それらの原理および発明の実施例は、非限定的に説明目的において提供される。以下の説明の中で、明細書および図面を通じて、同様の部位は各々同一の参照番号において示される。
【0019】
図1を参照する。対象物の画像データを得て、画像データから画像対象構造を強調し、そのような構造を表示するシステムを、全体として番号100で示す。実施例は、医療画像システムによって得られた画像からの対象構造の強調を参照しつつ説明されるが、これを、地質調査画像システムから得られた画像等の他のシステムからの画像対象構造の他のタイプの強調に適用することもできる。
【0020】
図1に戻ると、システム100は、患者に問診して、画像を作成できるコンピュータ104に画像データを供給する医療画像システム102を含む。コンピュータ104は、コンピュータ上で実行され、画像システムから得られたデータを操作および表示するためのプログラム106を含む。通常、撮像セッションの間に、医療画像システム102は患者を走査し、患者の体について、一連の画像を生成する。これらの画像は、各々が、例えば密度値のような、測定可能な予め定められたパラメータに対応する画素により構成される。
【0021】
プログラム106は、データベースシステム110に、データセット108として画像を保存する。無論、プログラム106は、また、以下で詳述するような更なる強調のような、更なる処理のための前走査画像をデータベースシステム110から取り出すことができる。画像データは、密度値のような予め定められたパラメータにおける変化を表す1組の空間的に関連したデータポイントとして格納される。データポイントは、例えば、撮像された生体組織の密度変化のような、パラメータにおける変化を示すために画面表示112に示されても良い。それらは、カラーまたはグレースケールにおける変化として示されることができる。
【0022】
データベースシステム110に保存されるデータおよび結果として生じる画像は、ディスプレイ112上への表示のためにユーザインタフェース114を経てアクセスされる。表示112がタッチセンサー方式である場合には、表示112そのものをユーザインタフェース114として用いることができる。典型的には、ユーザからの入力を受け取るために、ユーザインタフェース114は、キーボード、マウス、音声認識プログラムに連結された音声検出装置または他の適切な装置等の入力装置を含む。ユーザインタフェース114は、操作者がシステムと対話するために、より具体的には、処理されるべき構造を識別するために、表示画像116の領域を選択し、または、操作者が多様なシステムパラメータを設定する設備を提供する。
【0023】
プログラム106は、コンピュータが読み込み可能な媒体上に保存することのできる1組の機械可読命令を含む。この種の媒体には、ハードウェアおよび/またはソフトウェア、例えば、磁気ディスク、磁気テープ、CD ROM等の光学的に読み込み可能な媒体およびPCMCIAカード等の半導体メモリなどを含めることができる。いずれの場合においても、媒体は、小型ディスク、フロッピーディスケット、カセット等の携帯機器という形をとることができ、または、比較的コンピュータ104に備えられている、ハードディスクドライブ、固体メモリカードまたはRAM等の大型すなわち携帯不可能な機器という形をとることができる。上に例示した媒体が単独でまたは組み合わせて用いられることができる点に留意する必要がある。
【0024】
図2を参照する。ディジタル画像を強調するための、画像強調方法200が概略的に示される。ディジタル画像Iが、そこに含まれる画像構造を強調するために、プロセスの開始時に提供される。このディジタル画像は、画像処理システム102によって直接供給されてもよく、またはデータベースシステム110からコンピュータプログラム106の画像検索モジュール(図示せず)によって検索されてもよい。処理200は、コンピュータプログラム106の共同モジュールとして実行され、図2に示す各ステップはコンピュータプログラム106のモジュールに対応する。しかし、この処理はコンピュータプログラム106のモジュールによって実行されるとされているが、同様にして、この処理をファームウェアとしても実行できるということは明らかである。適切な適応により、異なる分解能帯への分解、局所的なノイズ抑制、局所的なコントラスト強調、および全体的なコントラスト強調などの、プロセスのいくつか(または、全ての)ステップをハードウェア要素として実行することができる。例えば、下に詳述するような推定値を計算するためのソフトウェア処理を実行することに代えて、同じ目的を達成するためにハードウェアの推定装置を構築してもよい。換言すれば、ここに記載されている方法は、ソフトウェア実行に制限されない。
【0025】
一般に、プロセス200は、分解、修正および再構成処理である。各々のステップを、画像全体または分解画像の全てに適用される操作として説明したが、実際には、操作が画像の一部分のみまたは複数の部分に対して、全てのステップまたはいくつかのステップで適用できることは理解されよう。また、各々のステップが、必ずしも元画像の同じ領域に対応する部分に適用されるというわけではない。例えば、局所的なノイズ抑制ステップを、よりノイズが多いとみなされる領域にのみ適用し、一方、局所的コントラスト強調操作を、信号強度が弱い他の領域にのみ適用することもできる。当然、分解が画像の1つの領域に適用される場合には、対応する再構成は通常、画像の同じ領域に適用される。
【0026】
ディジタル画像は最初に、異なる空間的分解能の一連の画像に分解される(ステップ220)。多くの異なるノイズ抑制操作およびコントラスト強調操作(ステップ230〜270)の後、一連の分解画像を再合成する(ステップ280)ことで、一連の分解画像から強調化されたディジタル画像が再構成される。再合成に先立って適用されるノイズ抑制及びコントラスト強調操作は、構造に基づくノイズ抑制(ステップ240)および局所コントラスト強調操作(ステップ250)を含む。ステップ240で、近傍値の推定に依存する抑制関数が、小領域(すなわち撮像対象物のエッジ)における信号の大きな変化を不必要に抑制することなくノイズを抑制するために、分解画像の画素値に適用される。同様に、分解画像の画素値は、局所的なコントラストを強調するために、選択的に強調される(ステップ250)。これは、各画素について第2近傍値を推定し、強調関数を前記第2近傍値に適用することによって達成される。随意に、若干の前処理及び後処理のステップを、画像の品質に更なる向上を行うために、適用することができる。これらのステップの各々は、図2を参照して、以下に詳細に記載されている。
【0027】
方法200は、随意的な前処理ブロック210から始まる。これは、更なる処理により適しているものに画像を変換するためのステップである。概して、画像をこのステップで前処理して、任意の高周波ノイズを抑制することができる。ある典型的な実施例において、画像は、画像の最頻成分を抑制するように設計された小型カーネルによってたたみ込み演算される。記号的には、
【数1】

ここで、I及びI´は、それぞれ元画像および修正された画像である。Kはカーネルである、そして、演算子「°」は畳み込み演算を示す。小さいカーネル半径を有するいかなる任意のカーネルも、特定されることができる。概して、半径1または2画素のガウスカーネルが使われる。この種のカーネルは、高周波雑音を抑制できることで知られている。通常、画像が強い高周波ノイズを含む場合、上記の畳み込み演算が画像に適用される。
【0028】
画像画素値は、また、再配列されることができる。例えば、対数またはべき変換を画素値に適用し、異なる強度範囲において圧縮および伸張を行うことができる。透過X線画像において、測定された放射線信号は、横断した目的密度の総計の指数関数である。往々にして、画素値が、信号強度それ自体よりは、むしろ撮像された材料の目的密度を表すことが、より望ましい。対数変換を適用して、目標密度自体を得ることができる。若干の画像取得装置は、この種の変換を実行することができる。この変換が画像取得装置によって適用されない場合、この変換ステップを画像強調の前に適用することができる。
【0029】
有利には、参照表(「LUT」)を、対数関数的変換を適用する際に用いて、画像Iの各々の画像画素値Pを新しい画素値P´に変換してもよく、変換関数は、
【数2】

であり、α、β、γは定数である。一般に、上の変換関数におけるα、β、γは、出力画像の画素値の範囲が入力画像の画素値と適合するように選択される。すなわち、
【数3】

ここで、minおよびmaxは画像I(参照表が適用される前)のそれぞれ最小および最大の画素値である。
【0030】
次に、分解ステップ220で、画像は分解され、すなわち一連の画像に変換され、その一連の画像の各々は、空間分解能に対応し、または、空間分解能により特徴付けられる。当業者には公知であるように、種々の方法を用いて元の画像を分解することができる。これらの方法は、とりわけ、ウェーブレット分解、フーリエ変換、サブバンド変換を含む。例えば、元画像を、異なる格子サイズの一連のイメージに分解することができる。または、元画像を一連の周波数帯フィルタに送り、異なる周波数帯に分解することができる。ここで、周波数帯は、空間的周波数、すなわち、時間周波数では無く空間的分解能に関連する周波数を指す。各々のバンド、すなわち、バンドによって選択された各々の画像は、バンドの中心周波数によって特徴づけられる。フーリエ変換において、各々の分解画像は、フーリエ周波数によって特徴づけられる。
【0031】
適切な分解方法の1つは、ラプラシアンピラミッド分解である。ラプラシアンピラミッド分解は、以下の通りに進行する。まず、補助画像Iauxは、元画像Iをぼかし、結果を2倍にダウンサンプリングすることによって作られる。画像をぼかす1つの方法は、例えば、以下のような形の3×3カーネルを用いて画像を畳み込み演算することである。
【数4】

カーネルの正確な形は、重要ではない。画像において高周波ノイズを抑制するか、誘発しないあらゆるカーネルが適当である。最後に、補助画像Iauxを2倍でアップサンプリングしたものが、元画像Iから減算される。結果Iは、第1段階のピラミッドを構成する。それは、元画像Iと同一サイズを有するが、高周波の、すなわち、微細な格子の情報だけを含む。
【0032】
ピラミッドIの第2の画像は、一連の同様の操作を上述の補助画像Iauxに適用することによって構成される。従って、この画像は、第1のピラミッド画像Iの4分の1の大きさであり、周波数の低い波長帯を含んでいる。この過程は、ピラミッドの後続の各段階について繰り返される。より多くの段階へ元画像Iを分解するとより良好な画像強調が得られる傾向があるが、好適には、強調の向上と計算需要の間のトレードオフとして、4または5段階の分解のみが実行される。これらのピラミッド画像Iは、直接次のノイズ抑制ステップに供給される。明らかなように、これらのピラミッドおよび補助画像を、永久的または一時的な記憶装置に保存しても良い。
【0033】
有利には、高輝度ノイズ抑制ステップ230を、全てまたはいくつかのピラミッド画像Iに適用しても良い。これは、X線画像のような画像の量子ノイズの抑制により効果的である。量子ノイズは、基底となる信号強度Sの平方根と比例している、測定されたX線信号に不規則変動を生じさせる。通常は、X線画像が処理および表示される前に、対数変換をX線画像に適用する。よって、X線画像の画素値は、典型的には、信号強度の対数関数値によって変化する。従って、量子ノイズは往々にして、低信号強度で1/S1/2として拡散する。図3aは、低信号値におけるノイズレベルの予想される増加を図式的に示す。従来は、X線画像は、反転したパレットにより表示され、すなわち、低信号値が表示画像内の明るい領域に対応していたので、量子ノイズはX線画像の明るい領域においてより顕著であったことはいうまでもない。
【0034】
量子ノイズを抑制するように設計された技術は、ピラミッド画像Iのフィルタリングを含むので、強度は、閾値tより大きいときは不変であるが、強度が閾値tよりも小さいときは倍数因子により減じられる。倍数因子、すなわちフィルタ関数は、速度量子ノイズが低信号強度において拡散するよりも早く、または、少なくともそれよりも遅いことは無く、零に近づく。換言すれば、信号強度が零に近づくにつれて、倍数因子および予想される量子ノイズの産物は、一定値に近づくかまたは拡散しない。これは、量子ノイズが低信号強度で拡散するのを抑制する。ある実施例では、フィルタ関数は、以下の形を有する。
【数5】

【0035】
ここで、s(r)は、信号強度S(r)、すなわち位置rにおけるSの推定である。任意の合理的な推定を用いることができる。好適には、s(r)は、rの近傍の画素からのS(r)に対する寄与を含めた推定であることが好ましい。例えば、s(r)の推定を、ダウンサンプリングし、かつ、ぼかした状態の、位置rにおける元画像Iの画素値として得ることができる。元画像Iを、最初にピラミッド画像Iの大きさにダウンサンプリングし、続いて、下記のカーネルによりぼかす。
【数6】

ダウンサンプリングし、ぼかした結果として生じた画像の、位置rにおける画素値は、フィルタ関数においてs(r)の役割を果たす。
【0036】
明らかなように、フィルタ関数M(r)のこの関数形式が選択されているので、想定されたノイズを伴うその積は、量子ノイズが支配的であろう低信号強度において、比較的一定した輝度を与える。M(r)を適用することによって達成された、このノイズ低減および抑制を図3bに示す。明らかなように、M(r)のこの特定の形においては、tは、ノイズ低減の量およびノイズ低減が適用される閾値信号値の双方を制御するパラメータである。一般に、別々のパラメータを用いて、別々にノイズ低減量および閾値信号値を制御することができる。
【0037】
次に、構造に基づくノイズ抑制ステップ240をピラミッド画像に実行する。ノイズ抑制関数をピラミッド画像の画素値に適用して、画素値に含まれるノイズ成分を抑制する。このステップは、関心のある画像構造をぼかしたり、抑えたりすること無く、ノイズを抑制することを試みる。各画素で、ノイズ抑制関数は、画素の近傍における画素値に基づいた信号の推定を用いて構築される。明らかなように、画素値は、一般に信号成分およびノイズ成分を有する。画像のノイズが多い領域において、画素値のノイズ成分は、強さの点で信号成分にまさる。例えば、分解ステップから得られるラプラシアンピラミッド画像は、典型的には、構造の大振幅信号の小領域(すなわち、撮像対象物のエッジ)によりを区切られた、小振幅ノイズの広い領域を有する。ノイズが多い領域を画像の信号領域から切り離して、それからノイズが多い地方の画素値を抑制することは、全体のノイズレベルを減らす傾向がある。ノイズが多い領域と信号領域の分離が成し遂げられると、画素値は選択的に変更される。すなわち、ノイズが多い領域の画素値は抑制されるが、信号領域の画素値は修正されない。
【0038】
ノイズ成分の抑制を異なる方法で成し遂げることができる。ノイズが多い領域からの信号領域の分離を成し遂げることができる任意の方法を用いることができる。1つの方法において、画素の小さい近傍の画素値を代表する値が最初に評価される。この代表的な値を、例えば近傍の画素値の中央値に基づいて評価することができる。この代表的な値は、近傍における典型的な信号振幅と考えられることができる。例えば、ノイズ振幅を、全画像にわたる代表的な値の中央値を評価することによって得ることができる。ノイズが多い領域を、ノイズの寄与が信号の寄与を上回る、すなわちノイズが画素値の大幅な成分を形成する領域をとして識別することができる。ノイズ領域から信号領域を分離するための他の方法は、近傍における画素値の標準偏差を評価することによって、各々の近傍における典型的な信号振幅を推定して、画像全体にわたる代表的な値の標準偏差を求めることによってノイズ振幅を推定することである。ノイズが多い領域の画素値は抑制されるが、信号領域の画素値は修正されない。
【0039】
図4は、信号領域からのノイズが多い領域の分離に基づいてノイズを抑制する方法において行われるステップを詳細に示す。ステップ242において、補助画像は最初に構築される。補助画像の画素値は、中間値フィルタをピラミッド画像Iに適用することによって得られる。結果として生じる画像(Imed)は、画素の近傍において評価される際に画素値が元画素の信号強度を表す画素から成る。中間値フィルタのカーネル半径は、調節可能である。典型的には、それは、1〜5画素の範囲である。ある好適な実施において、カーネル半径は3画素である。
【0040】
ステップ244において、Imed中のノイズの振幅は、ロバスト標準偏差法を使用して推定される。N(ノイズの振幅)を推定するために、Imedのロバスト標準偏差は、以下の式を用いて算出される。
【数7】

式中、Imed(r)は補助画像Imed中の位置rの画素値である。
【0041】
上記の如く、分解ステップから得られるラプラシアンピラミッド画像は、概して、大振幅の構造の小領域(すなわち、撮像対象物のエッジ)により区切られた、小振幅ノイズの大領域を有する。このような状況において、非ロバスト計算は、撮像された構造により生じる大振幅の変動、すなわち大振幅の信号を誤ってノイズとして扱ってしまうことがあることが分かっている。このように、非ロバスト計算は、ノイズを過剰に見積もる傾向がある。ロバスト標準偏差に基づく方法は、一般に、画像構造の小領域によって生じる大振幅信号変動を考慮することに、より良くなる傾向がある。
【0042】
ノイズの推定値が得られると、信号ノイズ比SNの推定値が計算できる。通常、Imed(r)は、rの近傍における典型的な画素値の尺度と考えることができる。ステップ246でSNを推定するための1つの方法は、SNをSN=|Imed(r)|/(κ*N)から、信号ノイズ比の推定値として計算することであり、このときκは調節可能なパラメータである。
【0043】
次に、ステップ248で、抑制関数fがピラミッド画像の画素値I(r)に適用される。ノイズの推定値が増加するにつれて、抑制関数は減少する。例えば、それは、局所的な近傍のノイズからの寄与が、近傍の信号からの寄与をはるかに上回るときに、0に近づく形をとることができる。ある実施例において、各画素の位置rで、画素値I(r)は、因子
【数8】

または、等価に、
【数9】

により乗算される。
【0044】
したがって、κ*Nが|Imed(r)|に比べて大きく、すなわち、SN<<1である場合、rはおそらく、主にノイズを含む領域であり、よってI(r)は抑制されなくてはならない。(κ*N)が|Imed(r)|よりもはるかに大きい場合には、因子fは、常に1よりもはるかに小さいので、そのような抑制を実行する。逆にいえば、(κ*N)が|Imed(r)|に比べて小さい場合、rはおそらく対象構造物を含む領域にあり、よってI(r)は抑制されるべきではない。SN>>1のときはつねにf≒1であるので、これは達成される。fの特定の関数形式がここに示されるが、抑制関数fの具体的な形は重要ではない。任意の単調増加関数を用いることができる。好適には、0および1の間に境界されることが望ましい。しかし、SN<<1とSN>>1の範囲内のfの相対値だけが有意であるが、このような境界は必然ではなく、ただの正規化の慣習に過ぎない。図5は、fの変化をSNの関数として示しており、SNを対数座標で表す。
【0045】
図2に戻る。ステップ250で、局所的なコントラストが強調される。局所的なコントラストを強調するために、まず各画素で、信号強度の代表的な値を、画素の近傍の画素からの寄与に基づいて評価する。画素を強調するか否かを代表値によって決定する。代表的な値が予め定められた範囲内となる場合には画素を強調し、そうでない場合には抑制する。これは、画像内のノイズ成分を不必要に増幅することなく、局所的なコントラスト、すなわち、信号強度を強調する傾向にある。
【0046】
明らかなように、撮像された対象物の局所的エッジ境界にわたって、画像信号強度は顕著に変化する傾向がある。この大きな信号強度の変化は、撮像された対象物の構造を反映する。振幅変化の大きい画素を代表的な値の推定に含むと、エッジ境界を平滑化してしまう傾向があるが、これは望ましくない。従って、局所的な近傍の画素値から代表的な画素値を評価する場合に、信号強度における大きな振幅変化に寄与する近傍の画素を除外することが望ましい。これらの画素を除外することによって、近傍の残余の画素は、通常、その代表的な信号強度が計算される画素と境界線の同じ側にある。
【0047】
ある実施例では、この除外は、最小分散経路Pに沿うまたは最小分散方向nにある画素のみを推定値の計算のために選択することで達成される(図7)。エッジ境界線の近くで、最小分散方向または最小分散経路は、エッジ境界線と交差しない。最小分散経路または最小分散方向に沿って評価される推定値は、大振幅の構造(即ち、エッジ)の画素からの寄与を除外し、従って、エッジ境界の同じ側からの画素の寄与を受けた信号を表す傾向がある。このように、エッジ境界にわたる変化に起因するいかなるアーティファクトも回避される。
【0048】
最小分散経路または方向に沿って推定値を評価することをここに例示するが、近傍における大振幅の構造の画素による寄与を推定値から除外する限り、他のいかなる方法も用いることができる。例えば、他の実施態様で、その近傍の画素値に基づいて画素のための代表的な値を計算する場合に、近傍において、撮像された対象物のエッジを表す画素を最初に識別する。エッジ境界の反対側に属する近傍の画素は計算から除外されるので、エッジ境界の同じ側に属する画素から代表値は計算される。
【0049】
以下の説明においては、ラプラシアンピラミッド画像を参照するが、ここで説明する方法は、一般に、分解されていない元のディジタル画像を含む、いかなる画像にもあてはまる。本法が特に、局所的なエッジ境界を含んでいる領域において適切であることが分かる。
【0050】
図6は、画像の局所的なコントラストを強調するための、典型的な実施例において行われる詳細なステップを示す。各画素すなわちポイントrで、まず最小分散方向を、ステップ252において求める。例えば、この方向を、最初にいくつかの等間隔の方向における変化Vを算出することによって求める。
【数10】

式中、I(r)は位置rの画像輝度であり、nは方向ベクトルのうちの1つであり(典型的には、8方向が使われるが、実際の数は調節可能なパラメータである)、Lは畳み込み演算カーネルの半径であり、これもまた、調節可能なパラメータである。最小分散方向nは、それに沿うVが最も小さい方向である。
【0051】
次に、ステップ254で、rにおける信号強度を代表している値が計算される。これは、ガウスカーネルを用いて、方向nに沿って1次元畳み込み演算を実行することによって計算することができる。これは、信号強度I(r)の推定値を提供する。カーネルのサイズは、調節可能である。好適には、カーネル半径は1または2画素である。このサイズのガウスカーネルを用いた畳み込み演算は、画像において最も高い周波数を抑制する傾向がある。信号強度の良好な推定を提供するならば、他の適切なカーネルも用いることができることはいうまでもない。換言すれば、信号の良好な推定を提供し、なおかつ、ノイズを抑制するような、あらゆるカーネルまたは方法を用いることができる。より大きいカーネルが使われる場合、好ましくは、rを通る最小分散経路Pに沿って畳み込み演算が実行される。明らかなように、画素のごく近傍の範囲内で、最小分散経路Pは最小分散方向nによって画定される直線と一致する。
【0052】
信号強度の推定値I(r)が得られると、推定値I(r)の関数としての局所的コントラスト強調関数fは、ステップ256で推定値I(r)に適用される。通常、局所的なコントラスト強調関数fを選択して、局所的なコントラストを改善するために、選択された強度範囲の画素値I(r)を選択された強度範囲外の画素値に対して強調する。これは改良された新しい画素値IE,i(r)を与え、この画素値は強調画像IE,iのrにおける画素値になる。ここで、IE,iはピラミッドのi番目のレベルの強調画像を表し、局所的なコントラスト強調ステップ250がピラミッドのi番目のレベルIに適用された後にIから得られる。
【0053】
図8は、強調関数fを示す。図8に示される強調関数fは、3つの区間から成る区分的線形曲線をスムージングすることによって構成される。区分的線形曲線は、点線で示される。区分的線形曲線をより見やすくするために、左に僅かに位置をずらしてある。区分的線形曲線の3つの区間は、以下の通りである(1)下の閾値T未満の画素値に対して、区間傾斜がSであり、(2)Tと上の閾値Tの間の画素値に対して、区間傾斜がS(例えば1)であり、(3)そして、Tより大きい画素値に対して、区間傾斜がSである。T、T、S、SおよびSの値は全て、ユーザによって調節可能なパラメータである。典型的には、S≠Sであるが、これは必須ではない。選択された範囲、すなわち、閾値TおよびT間の領域の画素値は、選択された範囲外の画素値に対して強調される。中間域または強調領域の傾斜Sを強調領域外の傾斜SおよびSより大きくして、選択的強調を与える。
【0054】
好都合には、強調関数fを参照表として実行して、計算効率および速度を改善することができる。参照表を、特定の画像型に対して適切に構築または選択することができる。ピラミッドの各々のレベルは、また、それ自身の参照表、すなわちfを有することができる。画像の全ての画素が処理され、強調画像IE,iが得られるまで、ステップ252〜256を画像の各画素について繰り返す。
【0055】
理解されるように、この局所的なコントラスト強調を全てのラプラシアンピラミッド画像に、またはいくつかのラプラシアンピラミッド画像だけに適用することができる。局所的なコントラスト強調を、全てのラプラシアンピラミッド画像に適用するか、幾つかのみ(または、1つだけ)に適用するかについては、パフォーマンスと強調画像の画質とのトレードオフである。更に、特に多くのレベルのラプラシアンピラミッドがある際に、具体的なが、どのラプラシアンビラミッド画像に対して局所的コントラスト強調が適用されるかは予め決めていてもよいが、これをユーザの選択として残しても良い。
【0056】
同様にして、局所的なコントラスト強調を、ラプラシアンピラミッド画像に適用される操作として説明したが、操作を元画像に適用しても良いということが理解される。実際、前記の局所的ノイズ抑制ステップ240、局所的コントラスト強調ステップ250、および、以下に詳述するエッジ強調ステップ270のような、いかなる変更態様のステップの全てを、必ずしもラプラシアンピラミッド画像でない、元画像を含む任意の画像にも適用することができる。ディジタル化画像を強調するために、各々を独立型フィルタとして行うことができる、または、これらを組み合わせてマルチパスフィルタを構築することができる。加えて、前述のように、この種の各々のフィルタを、ファームウェアとして実行し、または、ここで説明した特性を提供するハードウェアフィルタを備えるハードウェア部品から実行しても良い。
【0057】
ステップ260において、ノイズを抑制するか、または、局所的なコントラストを強調するかにより、ラプラシアンピラミッドの各々のレベルを処理して、エッジ境界を強調することができる。種々の方法を、エッジ強調を達成するために適用できる。ある単純な方法は、全てのラプラシアンピラミッド画像に1以上の重み付け係数を掛け合わせることである。これは、各画像のそれぞれの周波数帯(すなわち格子分解能)のエッジを強調する効果を有する。例えば、ピラミッドの第1レベルIに1よりも大きい係数を掛け合わせることは、撮像された画像のエッジを1〜2画素程度増幅する。ピラミッドの第2レベルIに1よりも大きい係数を掛け合わせることは、撮像された画像のエッジを2〜4画素程度増幅し、以下同様である。重みは、調節可能なパラメータである。有利には、より良好なエッジ強調のために、それらを特定の各画像型のために調整することができて、かつ/または、ユーザの選択パラメータとして残すことができる。ピラミッドの最終的なレベル、すなわち、最も粗い格子に対応するピラミッド画像のための重み付け係数を1.0に固定する。明らかなように、各レベルの重み付け係数の相対値だけが、エッジ強調の結果に影響を及ぼす。ピラミッドの最終的なレベルで重み付け係数を固定することは、正規化の慣習に過ぎない。
【0058】
分解画像の再構成に先立って、大規模な、全体のコントラストを、全体のコントラスト強調ステップ270において強調しても良い。これは、任意のステップである。概して、このステップを、他の強調またはノイズ抑制ステップからは独立して適用しも良い。この任意のステップにおいて、アンシャープマスキングを用いて、画像の全体のコントラストを強調する。アンシャープマスキングは、ガウスぼかしした画像を画像自体から減算することによって行われる。
【数11】

式中、G(σ)は幅σのガウスカーネルであり、そして、λはコントラスト強調量を制御する、0と1の間のパラメータである。λおよびσは、調節可能なパラメータである。
【0059】
この全体のコントラスト強調ステップが大規模なコントラスト変化だけに影響を及ぼす傾向があるので、有利には、このステップを最終的なレベル、即ちIaux´だけに適用することができる。これは、コントラスト強調に対する改善に重大な損失を起こすこと無く、パフォーマンスを高める傾向がある。パラメータσは、通常、非常に大きい(画像の10分の1程度)。
【0060】
再構成ステップ280は、分解ステップ220に対応する逆アルゴリズムを適用して、個々に強調され、ノイズ抑制された一連の画像から、強調されノイズ抑制された画像を再構成する。分解画像の再合成に用いる逆アルゴリズムは、分解方法により決定される。ステップ230〜270で記載されている介在変更態様が分解画像に適用されなければ、ステップ220で得られた一連の分解画像に逆アルゴリズムを適用することは、分解及び再構成操作の間にあらゆる情報損失を受ける元の入力画像Iまたは元画像に非常に近い画像を提供する。
【0061】
ラプラシアンピラミッド法が元画像を分解するために用いられる場合、ラプラシアンピラミッドの総和は、修正されたラプラシアンピラミッド画像から、強調およびノイズ抑制された画像を再構成する。このステップでは、ラプラシアンピラミッドの修正されたレベルは、単純にアップサンプリングおよび合算されて、結果として生じる被処理画像を提供する。ピラミッドデータ構造は、このステップで廃棄されてもよい。明らかなように、分解手順の詳細に依存して再構成手順は選択される。一実施例では、ステップ220で記載されているラプラシアンピラミッド分解に続いて分解された画像の再構成は、以下の通りに行われても良い。
【0062】
(1)ピラミッドの特定レベルIの画像を、前のピラミッドレベルIi-1と寸法の等しい格子上へ再サンプリングする。この再サンプリングは、例えば、線形補間か最近隣補間によりなされる。明らかなように、速度および画質の間のトレードオフに基づいて、各々の画像について補間型が選択される。一般に、最近隣補間法はより速いが、品質においてはより劣る傾向がある。他の適切な再サンプリング方法も用いることができる。再サンプリング方法は、分解プロセスで用いられるものと同じものでなければならない。
【0063】
(2)結果として生じる画像Iは、3×3カーネル畳み込み演算される。
【数12】

これは、分解プロセスで用いられたものと同じカーネルである。
【0064】
(3)結果を前のピラミッドレベルIi-1に加算する。これらのステップを、Iaux´から始まり、分解されたピラミッドレベルが全て加算されるまで、分解された全てのピラミッドレベルについて繰り返す。
【0065】
ダイナミックレンジの伸張をするステップ290は、再構成された画像のダイナミックレンジを入力画像の画素範囲にマッピングする。この任意のステップにおいて、ステップ280により得られた再構成画像の画素値範囲を、入力画像の画素値範囲に合致するように、伸張または圧縮する。単純な線形縮尺の代わりに、シグモイド形の参照表を用いることができる。シグモイド曲線の下または上の閾値を、望ましい範囲へのマッピングを達成するために、調節可能なパラメータとすることができる。
【0066】
主観的な画質を改善するために、ガンマ変換を、最終ステップ294として、任意に画像に適用しても良い。ガンマ変換は、以下の形をとることができる。
【数13】

γはシステムまたはユーザにより調節可能なパラメータである。一般に、γは、0.5〜2の範囲から選択される値である。しかしながら、γを、ユーザが調節可能なパラメータとすることができる。結果として生じた画像の、ユーザが認知できる主観的な画質に基づいて、ユーザは、他のいかなる値も選ぶことができる。
【0067】
前述のガンマ変換は、特定の関数形式、すなわちy=xγに基づいた、画像画素値の再マッピングである。他の多くの関数形式も可能であり、そして、一般に、いかなる任意の単調な参照表も、画像コントラストを改善するための最終ステップとして適用することができる。
【0068】
本発明の各種実施形態を詳述してきた。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、多数の修正、適合、および変更を実施例に加えることができることは明らかである。本発明の基本、精神または範囲から逸脱することなく、上に述べた最良の形態への変更または追加が可能であるので、本発明はこれらの詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、画像の取得および処理システムの構成を表している概略図である。
【図2】図2は、図1に示したシステムにより取得または処理されたディジタル画像の画質を向上するためのプロセスのステップを示す。
【図3a】図3aは、X線画像における、信号強度と予想されるノイズレベルの関係を概略的に示す。
【図3b】図3bは、信号強度と、ディジタルX線画像に図2に示すプロセスの一部分を適用した後のノイズとの関係を概略的に示す。
【図4】図4は、図2に示すプロセスのステップに対応する、ノイズを抑制するための詳細なステップを示す。
【図5】図5は、図4に示すプロセスで用いることができる、抑制関数(すなわち参照表)を示す。
【図6】図6は、図2に示される方法のステップに対応する、ディジタル画像の局所的なコントラストを強調するための詳細なステップを示す。
【図7】図7は、ディジタル画像の画素における、最小分散経路および最小分散方向を示す概略図である。
【図8】図8は、図6に示したプロセスで用いることができる強調関数を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタル画像の処理方法において、該方法は、
ディジタル画像を異なる空間的分解能の一連の画像に分解するステップと、
前記一連の画像の中の少なくとも一つの画像を修正するステップであって、該修正は、前記各画素の近傍の画素の画素値から計算した近傍値の推定値に基づいて、前記1つの画像の少なくとも一部のそれぞれの画素の画素値を選択的に変えることを含むステップと、
前記一連の画像を修正後に処理済ディジタル画像に再合成するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記推定値は、前記近傍の他の画素の値を著しく超える大きさの画素値を有する前記近傍の画素からの寄与を除外する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記推定値は、最小分散方向に沿う画素値の1次元畳み込演算により計算され、強調関数を前記推定値に適用して、選択的に変えられた前記各画素の画素値を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記推定値は、最小分散経路に沿う画素値の1次元畳み込演算により計算され、強調関数を前記推定値に適用して、選択的に変えられた前記各画素の画素値を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記強調関数は、予め定められた範囲の信号強度において単調に増加し、前記予め定められた範囲において該予め定められた範囲外よりも大きい変化率を有することを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記推定値は、信号対ノイズ比であり、前記推定値に依存する抑制関数を前記画素値に適用して、選択的に変更した前記各画素の画素値を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記修正に先立ち、予め定められたカーネル半径の中間値フィルタを前記少なくとも1つの画像に適用し、補助画像Imedを得るステップと、
medのロバストな標準偏差を計算するステップを更に含み、
前記推定値は、前記各画素における前記ロバストな標準偏差に対する、前記各画素におけるImedの画素値の絶対値の比の定数倍値として計算され、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抑制関数は、信号対ノイズ比と共に減少することを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
フィルタ関数を前記一連の画像に適用して、前記一連の画像に含まれるノイズの寄与を抑制するステップをさらに含み、前記フィルタ関数の前記適用は、信号強度が閾値を下回る場合に前記ノイズ寄与が拡散することを防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一連の画像のうちの1つの画像内の対象物のエッジ構造を強調するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
アンシャープマスキングを前記一連の画像のうちの1つの画像に適用して、前記処理済ディジタル画像の全体のコントラストを強調するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記処理済ディジタル画像の画素値の範囲を再マッピングして、前記ディジタル画像と適合させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記処理済ディジタル画像に、ガンマ変換を適用するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記一連の画像への分解に先立ち、前記ディジタル画像に対数変換を適用するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記一連の画像への分解に先立ち、前記ディジタル画像を畳み込み演算して、高周波成分を抑制するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ディジタル画像を処理するシステムにおいて、該システムは、
ディジタル画像を受信するための画像検索モジュールと、
ディジタル画像を空間的分解能の異なる一連のイメージに分解するための分解モジュールと、
前記一連の画像の少なくとも1つの画像を修正するためのフィルタであって、該修正は前記各画素の近傍の画素の画素値から計算した近傍値の推定値に基づいて選択的に画素の画素値を変えることを含むフィルタと、
修正後に、前記一連の画像を処理済ディジタル画像に再合成するための再構成モジュール、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項17】
前記近傍の最小分散方向に沿って1次元畳み込み演算を計算するよう構成された振幅推定子を更に含み、前記推定値は、前記1次元畳み込み演算に比例している、請求項16のシステム。
【請求項18】
前記推定値に適用して、予め定められた信号強度の範囲内において画素値を選択的に強調する参照表を更に含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの画像に適用して、補助画像Imedを得るための、予め定められたカーネル半径の中間値フィルタと、
medのロバストな標準偏差を計算するためのノイズ推定モジュールと、
を更に含み、前記推定値は、前記各画素における、前記ロバストな標準偏差に対するImedの画素値の絶対値の比率の定数倍値として計算される、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記推定値から、選択的に変えられた前記各画素の画素値を得るための、前記推定値の関数として参照表であって、前記推定値と共に減少する参照表を更に含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
ディジタル画像を取得するための画像装置を更に含み、画像検索モジュールは、前記画像装置からディジタル画像を取得する、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
予め獲得したディジタル画像のデータベースシステムを更に含み、画像検索モジュールは、前記データベースシステムからディジタル画像を受け取る、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
ディジタル画像のノイズを抑制する方法であり、ディジタル画像は空間的に関連した画素で構成され、各画素は画素値を有し、各々の前記画素値は前記ディジタル画像およびノイズ成分を表している信号成分を有している方法において、該方法は、
前記各画素の近傍の画素からの信号成分への寄与に基づいて、少なくとも一部分のディジタル画像における前記各画素における信号成分の代表値を求めるステップと、
補助画像のロバストな標準偏差から前記各画素におけるノイズ値を推定するステップと、
前記画素値に抑制関数を適用して、前記画素における代替画素値を得るステップと、
を含み、前記抑制関数は、前記ノイズ値の前記代表値に対する比率が増加すると共に、単調に減少することを特徴とする方法。
【請求項24】
前記補助画像は、中間値フィルタを前記ディジタル画像に適用することによって得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ディジタル画像を強調する方法であって、ディジタル画像は空間的に関連した画素で構成され、各画素は画素値を有し、各々の前記画素値は前記ディジタル画像において撮像された対象物を表している信号成分を有している方法において、該方法は、
少なくともディジタル画像の一部分の各画素の画素値の最小分散方向を識別するステップと、
前記方向に沿った画素の画素値から計算した前記各画素における信号成分の代表値を求めるステップと、
前記代表値に変換関数を適用して、前記各画素について信号強調された画素値を求めるステップと、
を含み、変換関数は、信号範囲を強調することを特徴とする方法。
【請求項26】
信号範囲は、閾値と上限間の間である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記閾値および前記上限は、ユーザにより調節可能である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
画像処理システムのためのフィルタであって、画像処理システムは、フィルタリングのために、ディジタル画像を一連の空間分解能の異なる画像に分解し、フィルタリング後に前記一連の画像を処理済ディジタル画像に再合成するフィルタにおいて、該フィルタは、
前記一連の画像の少なくとも一部分の各画素における近傍値の推定値を提供するための近隣値推定子であって、該近隣値は、前記各画素の近隣における画素の画素値から推定される推定子と、
前記1つの画像の前記部分の前記各画素値を修正するための画素修正子であって、該修正は、前記推定値に基づいて前記各画素値を選択的に変えることを含む修正子を含むことを特徴とするフィルタ。
【請求項29】
参照表を更に含み、予め定められた信号強度範囲において、前記画素修正子は、前記参照表を前記推定値に適用して、前記各画素値を選択的に強調する、請求項28に記載のフィルタ。
【請求項30】
前記1つの画像に適用して、前記各画素値を選択的に強調する、予め定められたカーネル半径の中間値フィルタと、
medのロバストな標準偏差を計算するためのノイズ推定子と、
を更に含み、前記推定値は、前記各画素における、Imedの画素値の絶対値の前記ロバストな標準偏差に対する比率の定数倍値として計算される、請求項28に記載のフィルタ。
【請求項31】
前記推定値から前記各画素の選択的に変えられた画素値を得るための、前記推定値の関数として参照表(を更に含み、該参照表は前記推定値と共に減少する、請求項30に記載のフィルタ。
【請求項32】
前記近傍において、最小分散方向に沿った画素値の1次元畳み込み演算を計算する振幅推定子を更に含み、前記推定値は前記1次元畳み込み演算に比例する、請求項28に記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−516882(P2009−516882A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541554(P2008−541554)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001707
【国際公開番号】WO2007/059602
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(505325073)セダラ ソフトウェア コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】