説明

ディスプレイ製造におけるシャドウマスクの洗浄方法(変形)および装置

【課題】高速化、洗浄温度の低下、極薄マスクの洗浄の質向上、マスクの初期形状の維持、および時間の短縮化による生産性の向上を達成する、OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイの製造工程で汚染されたシャドウマスクの洗浄方法および装置を提供する。
【解決手段】真空チャンバ1内においてイオン源2によりイオンビームを生成するステップと、チャンバ1内に、イオン源2の放射面3と対向させてマスク4を配置するステップとを含み、マスク4を配置した冷却ホルダ7を真空チャンバ1内に配置して、イオン源2の放射面3に面した、マスクの被処理面5を、リボンイオンビームを集束させることによりスキャンし、単一のイオンビームをこの面上に通過させている間にマスク面の要素が受け取るエネルギー線量が最大許容過熱に相当する熱量を超過しないように、スキャニングの速度を選択し、また、酸素または酸素との混合物をイオン生成ガスとして使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイの製造において有機および無機材料から層を形成することにより汚染されたシャドウマスクの面を、反応性イオンエッチングを用いることで真空洗浄する分野において使用する、シャドウマスク洗浄方法(変形)および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャドウマスクの面から既知の機械的な汚染物質を洗浄する方法があり、当該方法は、被洗浄面を、二酸化炭素、COの加圧ジェットにより処理することにあり、この二酸化炭素は、ドライアイスの微粒子になって、これらの粒子によりシャドウマスクの面から機械的な汚染有機混合物を効率的に洗浄する[1]。
【0003】
この方法の欠点は、二酸化炭素自体が、その化学的性質のために汚染物質になり、さらに、このように汚染物質そのものを著しく増加させて、炭化水素を含めて、多くの有機化合物を分解する。そのために、例えば、超大規模集積回路の面の洗浄効率は、二酸化炭素のために不十分になる。
【0004】
既知の極低温の噴霧剤を使用する表面洗浄方法もあり、この発明に係る方法では、プレートを高洗浄真空チャンバ内に配置し、液化ガス、すなわちアルゴンおよび窒素を強く噴射することにより、表面を処理し、その温度は、アルゴンの液化温度に近い。
【0005】
この場合、液体窒素の噴霧剤と固体のアルゴンの微粒子とにより、表面を処理し、これにより、反応性イオンエッチング後のミクロン以下の粒子および高分子残留物を含む機械的汚染物質が被処理面から効率的に洗浄される[2]。
【0006】
洗浄するプレートを真空チャンバ内へ配置するステップと、窒素およびアルゴンからなる極低温噴霧剤を強く噴射することによりプレートの表面を処理するステップと、を含む、既知の表面洗浄方法があり、この発明に係る方法では、酸素混合物が、窒素およびアルゴンからなる極低温噴霧剤中に導入され、洗浄する表面が、極低温噴霧剤の噴射による処理と同時に200nm未満の波長の紫外線を放射して、処理される[3]。
【0007】
さらに、既知の方法では、真空チャンバと、放射源と、紫外線照射により処理される面とを含む本装置が、説明されている[3]。
【0008】
しかしながら、既知の方法[2]および[3]と装置[3]とには以下の欠点がある。
・物品から有機汚染物質を洗浄するときの効率が低くなること
・極薄の物品を洗浄するとき、物品が変形してしまうこと
・洗浄の質が高くないこと
・無機混合物による洗浄に関連する問題が解決されていないこと
・生産性が低いこと
技術的本質に従って提案する本発明に最も近いのは、イオン源により物品を処理するための方法および装置である。
【0009】
この既知の方法は、真空チャンバ内のイオン源の放射面前に物品を配置して、真空チャンバ内においてイオン源によりイオンビームを生成するステップを含み、この場合、この発明によれば、物品からイオン源の放射面までの距離は、再印加プロセスに関連してイオンの自由行程より長くすべきである[4]。
【0010】
この方法を行うための装置は、真空チャンバと、イオン源と、真空チャンバ内のイオン源の放射面の前に配置された物品と、を含む。この場合、物品からイオン源の放射面までの距離は、再印加プロセスに関連してイオンの自由行程より長い[4]。
【0011】
しかしながら、既知のこの方法および装置では、高い生産性も、物品(例えば、マスク)の汚染面の洗浄の高い質も保証されず、あるいは極薄の物品を処理するときに、初期の物品の形状寸法からのずれも、保証されない。
【0012】
本発明に係る対象内において使用される物品とは、OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイの製造において使用するためのシャドウマスクと考えられる。
【0013】
このようなマスクは、非メッキの金属の枠に延ばした状態で溶接された薄い金属片である。このようなマスクの厚さは、15から60μmである。その領域には、気化材料が通り抜けて基板に衝突する貫通孔の規則的パターンがある。基板へのコーティングは、作動真空チャンバ内においてマスク上方を通って行われる。マスクを使用するサイクルをいくつか経た後、その表面から種々の有機および無機堆積物を洗浄する必要がある。このために、マスクを、作動真空チャンバから搬送チャンバへ、搬送チャンバから真空洗浄チャンバへ搬送して、真空洗浄チャンバにおいて、マスク表面を、基板にコーティングを行うための作動真空チャンバ内においてさらに使用し得るように洗浄する。
【0014】
OLEDディスプレイの一連の製造が特殊であるので、真空チャンバ内において、すなわちマスクをそこから取り出さずに、マスクを洗浄する必要がある。これについて、真空下でのイオンエッチングが、シャドウマスクの面から種々の堆積物を洗浄するのに最も許容し得るプロセスである。
【0015】
マスク表面のイオンエッチングを行う真空洗浄チャンバを、以後、真空チャンバと呼ぶ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここに提案する本発明の目的は、以下の通りである。
・物品の洗浄速度を上昇させること
・洗浄温度を低下させること
・物品の洗浄に要する時間を短縮すること
・極薄(15から60μm)の物品(マスク)からの有機および無機堆積物の洗浄の質を向上させること
・極薄の物品の初期形状を維持すること
・洗浄プロセスにおいて物品の損傷および変形を排除すること
・生産性を向上させること
【課題を解決するための手段】
【0017】
ここに提示した問題は、本発明に係る対象(本方法およびそれを実行するための装置の変形)により解決される。
【0018】
真空チャンバ内においてイオン源によりイオンビームを生成するステップと、チャンバ内のイオン源の放射面の前にマスクを配置するステップと、を含む、第1の変形に係る、ディスプレイ製造におけるシャドウマスク洗浄方法において、真空チャンバには、本発明によれば、冷却ホルダが設けられており、この冷却ホルダ内にマスクを配置し、この配置は、イオン源の放射面に面する、マスクの被処理面が、リボンイオンビームを集中させることによりスキャンされるようなものとし、また、スキャニングの接線速度を選択し、この選択は、マスクの面の上方に単一のイオンビームを通過させている間にこの面の要素が受け取るエネルギー線量が、最大許容過熱に相当する熱量を超えないものとし、酸素またはその混合物をイオン生成ガスとして使用する。
【0019】
その上、酸素を、Ar、He、Kr、Ne、N、CxHy、およびCxFyからなる群から選択される少なくとも1つのガスと混合し、混合物中の酸素含有量は、10%を超える。
【0020】
真空チャンバ内においてイオン源によりイオンビームを生成するステップと、前記チャンバ内の、イオン源の放射面の前にマスクを配置するステップと、を含む、第2の変形に係る、ディスプレイ製造時のシャドウマスク洗浄方法において、真空チャンバには、本発明によれば、冷却ホルダが設けられており、この冷却ホルダ内にマスクを配置し、このマスクは、冷却ホルダとマスクの非処理面との間の熱接触を保証するように、クランプ機構によりホルダに押し付けられ、次に、イオン源の放射面に面したマスク被処理面を、リボンイオンビームを集中させることによりスキャンし、その次に、スキャニングの接線速度を選択し、この選択は、マスクの面の上方に単一のイオンビームを通過させている間にこの面の要素が受け取るエネルギー線量が、最大許容過熱に相当する熱量を超えないようなものとし、酸素またはその混合物をイオン生成ガスとして使用する。
【0021】
本方法を行う第2の変形において、第1の変形と同様に、酸素を、Ar、He、Kr、Ne、N、CxHy、およびCxFyからなる群から選択される少なくとも1つのガスと混合し、混合物中の酸素含有量は、10%を超える。
【0022】
その上、本方法の第2の変形によって、磁界源により生じる磁界によりマスクを冷却ホルダの面に押し付け得る。
【0023】
両方の変形に係る本方法を行うための装置もまた、この問題を解決することを目的とする。
【0024】
真空チャンバを含み、少なくとも1つのイオン源と、被処理面がイオン源の放射面を向いたマスクとが内側に装着されたこの装置には、本発明によれば、真空チャンバ内に配置される冷却ホルダと、真空チャンバ上方にかつ/または真空チャンバ内に配置されるクランプ機構とがさらに設けられ、このクランプ機構は、マスクを冷却ホルダに押し付け、冷却ホルダとマスクの非処理(汚染されていない)面との間の熱接触を保証することを目的とする。イオン源の設計は、イオンビームと被処理マスク面との交差座標を変更し得るようなものとする。
【0025】
陽極層を有する線形加速器をイオン源として使用し、イオン源自体を、冷却ホルダに対してクリアランスを設けて位置調節部材内に配置する。
【0026】
位置調節部材には、位置調節部材がイオン源および冷却ホルダの長手方向軸線に平行に向けられるように、位置調節部材をイオン源とともに回転させ得る回転歯車が設けられる。
【0027】
この場合、位置調節部材とともにイオン源が回転する角度は、真空チャンバ内に配置されたイオン源の数とマスクの寸法(面積)とにより決定される。
【0028】
その上、本発明に係る装置は、2つ以上のイオン源を含み、イオン源が中に配置される複数の位置調節部材が、例えば平行である場合、マスクの平面と平行な同じ平面にあり、また平行でない(例えば、実質的に垂直である)場合、別の平面にある。
【0029】
提案する装置内の回転歯車は、位置調節部材の回転速度を変化させ得るように設計される。
【0030】
本装置の設計において使用するクランプ機構は、多重極磁気システムであって、このシステムは、冷却ホルダの、マスクと反対側に装着される。磁気システムは、磁気材料上に作製したマスクにより閉じられている。
【0031】
この場合、多重極磁気システムは、同じ磁石を一組にして示しており、マスクの被処理面の平面に垂直方向に移動し得るように装着されている。
【0032】
本発明による第1の変形に係る、ディスプレイ製造におけるシャドウマスク洗浄方法は、以下の通りである。
【0033】
汚染されたマスクを、設備内、例えば搬送マガジン内に配置し、真空チャンバ内に配置されたホルダ内に装着する。冷却ホルダには、冷水が供給され、マスクの汚染された面がイオン源の放射面の前の洗浄位置になるように、物品自体をホルダ上に配置する。
【0034】
真空チャンバは、真空ポンプにより排気して圧力を5・10−4Paから10−3Paに抑制する。
【0035】
ホルダの冷却は、洗浄プロセス全体についてマスクの過熱を妨げるために、すなわち、イオンビームにより面を二度連続してスキャンする合間にマスクの各領域が完全に冷却されるように、除熱を保証するために、必要である。
【0036】
次に、真空チャンバ内の圧力を、作動圧力の5・10−2Pa÷から10−1Paにして、酸素、または酸素と他のガスとの混合物を真空チャンバへ給送し、イオン源からイオンビームを放射することによる、汚染されたマスク面のスキャンシステムを始動させる。
【0037】
このために、放電するよりも、イオン源の陽極に正の電位をかける。この放電により、マスクの汚染された面の洗浄(エッチング)に必要なリボンイオンビームが生成される。
【0038】
ここで、洗浄速度を上げる、よってプロセス生産性を高くするために、酸素、または酸素とガスとの混合物を使用する。
【0039】
汚染された面を処理するために、集束リボンイオンビームをイオン源から形成し、単一のイオンビームをこの面上に通過させている間にマスク面の要素が受け取るエネルギー線量が、最大許容過熱に相当する熱量を超過しないように、これらのビームによるスキャニングの接線速度を選択する。この場合、この熱量の計算は、熱容量と材料のマスク厚とに基づいて行う。
【0040】
集束リボンビームを使用すると、面積が広い物品面を洗浄するプロセスを実施できる。
【0041】
イオンビームを物品の被洗浄面に対して角度をつけて動かしている間、イオンビームは、動かされた方向に選択的にエッチングを行い、垂直方向の領域と比較してマスクの水平方向の領域から汚染物質を選択的に除去することを保証する。
【0042】
このように、マスクの損傷、すなわち窓の開口部がエッチングされてしまうことが妨げられる。
【0043】
リボンイオンビームを集束させることにより物品の面を処理することによって、著しいヘッドの負荷を減少させ、マスクの過熱および変形、並びに初期の形状パラメータからのずれを妨げ得る。この場合、スキャニングの接線速度は、マスクの領域により吸収されるエネルギー線量、マスクの熱容量、この領域の許容可能な過熱温度によって決定される。
【0044】
V=Pi/Li・Cv・h・ΔT
ここで、Piは、イオンビームの出力、
Liは、イオン源の長さ、
Cvは、熱容量、
hは、マスク厚、
ΔTは、マスク面を一度スキャンしている間の許容可能な過熱である。
【0045】
酸素、または酸素とガスとの混合物を使用すると、洗浄速度が増すので、洗浄プロセスの生産性が著しく増加し得る。
【0046】
よって、本発明に係る方法を用いると、汚染物質の有機ベースが、酸素中で燃焼し、燃焼生成物は、真空ポンプにより排出される。この場合、全ての不揮発性物質は、不活性ガスのイオンを含有するイオンビームによりこれらの材料を叩き出すことにより、被処理面から除去される。
【0047】
洗浄(エッチング)プロセスの完了は、分光測光制御により判断される。洗浄されたマスク面がすべての要件を満たす場合、イオン源の電力供給システムおよびスキャンシステムのスイッチが切られ、ホルダ冷却システムへの冷水の供給、および真空チャンバへの作用ガスが遮断される。チャンバには空気が満たされ、圧力は大気圧の数値になり、洗浄されたマスクが、真空チャンバから、OLEDディスプレイの製造において堆積物を洗浄したマスクをさらに使用するための作動真空チャンバ内へ搬送される。
【0048】
第1の変形に係る、本発明に係るシャドウマスク洗浄方法を行っている間に、真空チャンバには、1つを超えるイオン源を含ませることができ、この場合、汚染された面は、いくつかのイオンビームにより同時にスキャンされる。
【0049】
これによって、一方から、面積が異なる(狭い、また広い)面を洗浄することができ、洗浄プロセスの速度および生産性を増し得る。
【0050】
第1の変形に係る方法の特定の実施例
寸法が(540×430mm)の汚染された物品(シャドウマスク)が、搬送マガジンとともに、OLEDディスプレイの製造用の、クラスタシステムの作動チャンバから真空搬送チャンバ内へ、そこから、真空洗浄チャンバ(以後、真空チャンバと呼ぶ)へ搬送される。
【0051】
案内機構によりマスクを冷却ホルダ内に配置し、この配置は、イオン源の放射面から前に100mmの間隔をおいた洗浄位置に、マスクの汚染された面が配置されるようにする。
【0052】
真空チャンバは、真空ポンプにより排気して、圧力を5・10−4Paから10−3Paに抑制し、冷水が、真空チャンバの外側から冷却ホルダに給送される。
【0053】
次に、酸素を65%、アルゴンを35%の割合にした混合物が、真空チャンバに給送され、正の電位4.0kVをイオン源の陽極にかける。放電すると、全電流が250mAのリボンイオンビームが、生じる。
【0054】
物品の汚染された面は、イオン源を140度の角度に回転させることによって、イオンビームによりスキャンされる。この回転は、イオンビームを位置決めする位置調節部材に配置した回転歯車により行われる。
【0055】
スキャニングの速度は、80cm/秒のレベルに設定され、これによって、マスクの過熱が、30Kを超えない値になって許容可能になることが、保証される。
【0056】
プロセスが完了すると、イオン源のスイッチが切れ、物品ホルダへの冷水の給送、および真空チャンバへの作用ガスの給送が、止まる。搬送マガジンとともに洗浄された物品(マスク)は、まず、クラスタシステムの真空搬送チャンバ内へ、それから、洗浄されたマスクから基板にコーティングを行うプロセスにおいてさらに使用するための作動真空チャンバ内へ、再度、搬送される。
【0057】
よって、マスクのあるマガジンは、洗浄前、洗浄中、洗浄後に、OLEDディスプレイ製造用のクラスタプラントの真空システムから出さない。
【0058】
第2の変形に係る方法を行う場合、マスクと冷却ホルダとの熱接触を密にするためにマスクを冷却ホルダに押し付けることを保証するクランプ機構を使用することを除いて、本方法の第2の変形は、第1の変形と全く同様に実現される。
【0059】
イオンビームをゼロにすることにより、物品の被処理(洗浄)面からの除熱が増加し、汚染された面のスキャンプロセスにおけるマスクの変形が減少する。
【0060】
物品(マスク)は、通常磁気材料からなるので、本システムは、同じ磁石の組であり、冷却ホルダをクランプ機構として使用して、物品(マスク)の非汚染面と冷却ホルダとの接触を保証する。この場合、物品(マスク)自体が、磁気システムの磁束を遮っている。
【0061】
さらに、同じ磁石の組であるクランプ機構は、マスクの被洗浄面の平面に垂直方向に動き得るように、真空チャンバ内に配置される。
【0062】
クランプ機構の移動プロセスは、磁気システムの磁極を遮り、マスクの非処理面と冷却ホルダとの熱接触を密にしまたそれらを離すことを保証するとともに、物品(マスク)を、真空洗浄チャンバから妨げられずに取り出し、基板にコーティングを行う際にさらに使用するためにクラスタシステム内の作動真空チャンバ内へ移動させることを保証することに必要である。
【0063】
したがって、本方法を実行するための第2の変形では、マスクをホルダ内に配置し真空チャンバ内に入れた後、非汚染マスク面を、磁気システム(例えば、同じ磁石のシステム)により冷却ホルダに押し付けて、磁気システムが、この面と冷却ホルダとの熱接触を密にすることを保証する。冷却ホルダは、洗浄プロセスにおいてイオンビームによりスキャンするときに、被処理面からの除熱を著しく増加させる。
【0064】
実行される第1の変形におけるように、第2の変形において、物品の汚染された面をスキャンするときに、真空チャンバ内に配置されたいくつかのイオン源から得られる1つを超えるイオンビームを使用し得る。
【0065】
それによって、
・面積が広いマスクを洗浄すること、
・面積が異なるマスクの高速洗浄を保証すること、
・被洗浄面の著しい加熱を減少させること、
・マスクの初期の形状寸法からのずれを減少させること、
・高い生産性および洗浄の質を保証すること、
が可能になる。
【0066】
発明として提案する装置は、同様の目的の既知の装置と著しく異なっており、発明としてクレームする方法を行うこと(それを実施する両変形)を目的とする。
【0067】
上述の各問題は、本発明に係る装置の構造的部品により解決される。
【0068】
冷却ホルダを使用すると、被処理面からの除熱に関する問題を解決できる。
【0069】
イオンビームにより物品の被処理面をスキャンするときに、冷却ホルダがない場合、物品は、局所的に加熱されてしまい、そのため、物品の形状パラメータが変化してしまうだけでなく、物品が変形してしまう。
【0070】
冷却ホルダを使用する場合、物品からの除熱は、物品が今処理されている領域および物品の非処理領域について等しく行われる。これは、極薄のマスクの非処理面は、冷却ホルダと接合しており、このようなマスクの熱容量は、無視してよい程小さいからである。実際のところ、これは、物品の面全体における温度が、実際に均一であり、よって、変形が排除されることを意味する。
【0071】
マスクの非処理面と冷却ホルダとの信頼性のある熱接触を保証するクランプ機構を使用することは、同じ問題を解決することを目的としている。
【0072】
この装置において、クランプ装置の機能は、多重極磁気システムにより実行され、このシステムは、同じ磁石の組として示し、例えば、真空チャンバ内の冷却ホルダの上方に装着される。
【0073】
このようなシステムは、冷却ホルダと物品の非処理面との熱接触を密にすることを保証し、これは、マスクが、磁気材料からなり、クランプ機構の多重極磁気システムを遮ることから保証される。
【0074】
よって、クランプ機構は、物品の面からの除熱をさらに増加させ、よって、その処理の質を高める。
【0075】
イオン源の設計は、イオンビームとマスクの被処理(汚染)面との交差座標が変更されて、イオンビームにより、面積が広い面の、すなわちシャドウマスクの広い面を均一にスキャン(処理)し得るように行う。
【0076】
本発明によれば、イオン源は、位置調節部材内に配置され、次に、位置調節部材には、位置調節部材がイオン源とともにある角度に回転することを保証する回転機構が、設けられている。その上、本装置の設計によって、位置調節部材の回転速度を変更し得る。
【0077】
この場合、位置調節部材とともにイオン源が回転する角度は、真空チャンバ内に配置されたイオン源の数と、物品の寸法(面積)とにより決定される。
【0078】
イオン源の回転角度を調節し得ることによって、イオンビームによる物品面のスキャニングの速度を変更し、これによって、次は、物品を処理するときにその加熱温度を制御することができ、すなわち、被処理面の加熱温度をさらに低くすることができ、マスクの過熱、損傷および変形が妨げられる。
【0079】
位置調節部材をイオン源および冷却ホルダの長手方向軸線に平行に設置することによって、面積が広い物品を均一に処理し得る。
【0080】
イオン源と冷却ホルダとの間にリアランスがあることは、この問題を解決することを目的とする。
【0081】
真空チャンバ内において物品処理のために使用するイオン源の量は、物品の寸法(面積)と、冷却ホルダとイオン源との間のクリアランスとにより決定される。そのクリアランスは、真空チャンバの容積と、装置の生産性に対する要件とにより異なる。
【0082】
本装置の上の構造上の全特徴は、洗浄速度を上げることに役立ち、また、被洗浄面の損傷および変形を妨げ、よって、汚染されたマスク面の洗浄の質および装置の生産性を改良する。
【0083】
提案した設計において、2つまたはそれ以上のイオン源を使用し得ることによって、面を異なる方向に均一に処理することができ、洗浄およびスキャニングの速度と、広い面積の物品の処理が向上する。
【0084】
2つまたはそれ以上のイオン源の位置調節部材を、物品の平面に平行な同じ平面の、平行な配置にし、また、2つまたはそれ以上のイオン源の位置調節部材を、別々の平面の、平行でない配置にすることによって、全てのマスクの壁を洗浄するときのマスクの孔の大きさに対応する厚さで水平方向および垂直方向を向いたマスクの壁の処理の質が著しく改善される。
【0085】
物品の平面に垂直な方向にクランプ機構を動かし得ることによって、冷却ホルダから物品を妨げられずに自由に離し、仕上げプロセスにおいて洗浄領域からマスクを取り外すことが、保証される。
【0086】
本発明に係る装置の設計は、本方法の両方の変形を実現し得るようなものにする。
【0087】
第1の変形に係る本方法を行う場合は、装置の設計において使用するクランプ機構を作動させず、物品と冷却ホルダの面との接触がまったく密にならないことのみが、相違している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
図1に、単一のイオン源を有する本装置全体の概略図を示す。図2に、イオン源を3つ有する本装置全体の概略図を示す。図3に、イオン源の1つを他の2つのイオン源に対して実質的に垂直方向に配置した本装置の概略図を示す。
【0089】
OLEDディスプレイの製造において、物品、例えばシャドウマスクを洗浄する方法を実施するための装置およびその変形は、真空チャンバ内へ物品を給送するための孔1’を有する真空チャンバ1と、放射面3を有するイオン源2と、被処理面5および非処理面12を有する物品(マスク)4と、冷却ホルダ7と、磁気システム9として設計されたクランプ機構8と、位置調節部材10と、回転歯車11と、を備える。
【0090】
この場合、位置調節部材10の出力部が、真空チャンバ1の外側に配置され、回転歯車11は、通常図1に示すように、真空チャンバの内側に配置される。他の全構成部品は、真空チャンバ1内に配置される。
【0091】
多重極磁気システム9として設計された、同じ磁石の組であるクランプ機構8は、初めに、冷却ホルダ7からいくらかの距離をおいて取り付けられている。
【0092】
しかしながら、本装置内に設けられた磁気材料からなるクランプ機構がマスク4の面に垂直方向に移動する設計にすることによって、多重極磁気システムの磁束を遮断し得る。したがって、クランプ機構8が冷却ホルダ7に近づくにつれて、物品4は、磁気システム9の磁場を遮断しながら、物品4の非処理面6が冷却ホルダ7の前面に押し付けられる(引き寄せられる)。このように押し付けられることによって、マスク4と冷却ホルダ7との間の信頼性のある密な熱接触が保証される。
【0093】
特許請求の範囲に記載された装置では、マスク4の被処理面5は、イオン源2の放射面3に向けられ、マスク4の非処理面6は、冷却ホルダ7に接合されている。
【0094】
イオン源2が配置された位置調節部材10は、回転歯車11が設けられ、この歯車11によって、位置調節部材10とともにイオン源2が回転することが保証される。
【0095】
本方法(変形)を実行する装置は、以下の通り作動する。
【0096】
物品、例えば、搬送マガジン内に配置されたシャドウマスクを、真空チャンバ1の孔1’から中へ入れる。
【0097】
マスク4を、冷却ホルダ7に入れ、この冷却ホルダ7の真空チャンバ1内における配置は、回転歯車11が設けられた位置調節部材10内に配置された、イオン源2の放射面3に、物品4の被処理面5が向けられるような配置にする。
【0098】
本明細書では、位置調節部材10を、イオン源2および冷却ホルダ7の長手方向軸線に平行に配置する。イオン源2を、冷却ホルダ7に対してクリアランスを設けて位置調節部材10内に配置する。
【0099】
冷却ホルダ7にマスク4を配置した後、クランプ機構8を、必要に応じて、垂直方向下向きに、すなわち冷却ホルダ7の面に向けて動かす。
【0100】
マスク4は磁気材料からなるので、磁気システム9の磁束を遮断し、クランプ機構8は、物品4と冷却ホルダ7との間の信頼性のある熱接触を保証するように、物品4を冷却ホルダ7に強固に押し付ける。
【0101】
真空チャンバ1内にマスク4を配置し、冷却ホルダ7に押し付けた後、真空チャンバ1の孔1’は、気密封止され、チャンバ内の圧力は、特定の作動値(例えば、5×10−4Paから10−3Pa)になる。
【0102】
次に、作用ガスの混合物をイオン源内に給送し、イオン源を始動させて、リボンイオンビームによりマスク4の被処理面(被汚染面)5のスキャンが開始される。
【0103】
同時に、冷却剤(例えば、冷水)を、外部から真空チャンバ1、冷却ホルダ7に給送し、物品4の被処理面5からの放熱が、保証される。
【0104】
物品4の被処理面5が過熱されないように、位置調節部材10内に配置されたイオン源2を、回転歯車11により回転させ、この回転は、イオンビームと、物品4の被処理面5との交差座標が変化するように行う。
【0105】
まず、面積がより広い、物品4の被処理面5の均一な処理が保証され、次に、イオンビームの作用下における特定の領域の加熱時間が、冷却を行うために変化するので、極薄の物品が、洗浄中に過熱されずに済むことが保証される。
【0106】
イオンビームをこのようなモードで移動させることによって、冷却ホルダ7が物品4の被処理面5からの均一な除熱を保証するので、被処理面5全体および個々のスポットが過熱されない。
【0107】
あるいは、同じ磁石の組として形成された多重極磁気システム9であるクランプ機構8は、冷却ホルダ7に物品4を押し付け、物品の被処理面5からの除熱をさらに増大させる(図1)。
【0108】
本装置をこのような設計にすることによって、以下のことが可能になる。
・物品の被処理面および非処理面から効率よく均一に除熱を行うこと、
・処理速度が増し処理に要する時間が短縮されること、
・過熱が妨げられ、したがって、物品の変形が妨げられること、
・垂直方向の部分に損傷を与えずに、物品の水平面の処理が効率よく高品質に行われること。
【0109】
提案した装置において、1つを超える、例えば3つ以上の(図2)イオン源を用いてよい。
【0110】
1つを超えるイオン源1を使用することによって、以下のことが可能になる。
・第1に、寸法がより大きいマスク面の洗浄速度が増し、このような洗浄の均一性が高まること、
・第2に、マスクを使用するOLEDディスプレイ製造設備の作動サイクルの時間に対して洗浄時間が短縮されること、
・第3に、マスクパターンの初期の形状パラメータの維持が保証され、材料のどんな細かい損傷でさえ回避されること。
【0111】
このような装置によって、有機および無機堆積物を、極薄(15から60μm)で1,200から3,600cmの面積であり得るシャドウマスクから洗浄し得る。
【0112】
本装置の特定の応用例
極薄(15から60μm)で、面積が2320cm(540×430mm)のシャドウマスクを、提案した装置内において洗浄した。この装置は、クラスタ型の、OLEDディスプレイ製造工場の一体型真空システム内に含まれる。
【0113】
まず、厚さが40μmの物品4(マスク)を、搬送マガジン内に配置して、マスクを通って基板への材料の堆積が行われる作動真空チャンバ内に入れる。
【0114】
いくつかの堆積サイクルを行った後、製造においてさらに使用するために、マスクの表面に形成された有機および無機堆積物をマスクから洗浄する。
【0115】
このために、搬送マガジンとともに汚染されたマスク面を、作動真空チャンバから真空搬送チャンバ内へ、そこから、真空洗浄チャンバ内へ搬送する。
【0116】
真空洗浄チャンバ(以後、真空チャンバと呼ぶ)内において、本発明に係る方法およびその変形を行う装置の作動について以下に説明する。
【0117】
汚染されたマスクを有する搬送マガジンを、真空チャンバ1の孔1’から中へ導入し、真空チャンバ1内に配置された冷却ホルダ7内に配置する。
【0118】
必要に応じて、クランプ機構8を、マスクが据えられたホルダの面と反対側の冷却ホルダ7の面へ下げる。そうすると、マスクの非処理面が、冷却ホルダ7に押し付けられる。
【0119】
クランプ機構8によりマスク4を冷却ホルダ7内に据えた後、チャンバ1内の圧力を10−3Paにする。
【0120】
ホルダ7内に配置すると、マスク4の被処理面5が、真空チャンバ1内に配置されたイオン源2の放射面3と対向して配置され、冷水が、外側の真空チャンバ1から冷却ホルダ7に給送される。
【0121】
次に、酸素、または酸素と不活性ガスとの混合物が、イオン源2に給送される。
【0122】
この特定の場合、それぞれ、酸素:アルゴンが65%:35%の割合の混合物が、給送されて、外側の真空チャンバ1から給送される水の温度は、15℃から18℃になる。
【0123】
次に、4kVと等しい正電位を、イオン源2の陽極にかけ、それによって、放電が生じ、イオン源2は、マスク4の面5を処理する線状のイオンビームを形成する。
【0124】
位置調節部材10内に配置されたイオン源2は、部品10に装着された回転歯車11により±60°の角度で回転する。この角度の数値は、被処理面5の面積(1200cm)と、真空チャンバ1内に配置されたイオン源2の数(この特定の場合、2つのイオン源)とにより決定される。
【0125】
本明細書では、イオンビームによる、マスク4の被処理面5のスキャニングの速度は、位置調節部材10の回転速度を変化させ得るように設計した回転歯車11により、調節される。
【0126】
概して、イオンビーム2とともに部品10が回転する角度は、90°から140°の範囲内であり、このような回転角度の範囲に対するマスク4の被処理面5のスキャニングの速度は、0.8m/秒から1.0m/秒である。
【0127】
マスク4の被処理面5が、完全に洗浄される時間は、3分から7分の範囲であり、これは、マスク4に堆積する有機材料の程度とマスク面積とにより異なる。
【0128】
マスクの孔の大きさがマスクの厚さに対応しているので、垂直方向の壁の均一な洗浄は、スキャンが単一の方向に行われた場合、問題となる。
【0129】
この問題を解決するために、真空チャンバに、3つのイオン源2を設け、各イオン源は、別個の位置調節部材10内に配置し、その配置は、そのうち2つのイオン源を相互に平行に配置し、三番目の1つのイオン源を、それらに垂直に配置する(図3)。したがって、2つのイオン源2が、同じ平面にかつ物品の面に相互に平行に配置され、また、三番目の1つのイオン源は、最初の2つのイオン源に垂直に配置される(図3)。3つの全てのイオン源2は、位置調節部材10とともに、マスク4の被処理面5に対して異なる面にある(マスクと異なる距離である)。
【0130】
それは、物品の面の洗浄を所望の質にする唯一の方法であり、1つを超えるイオン源2が真空チャンバ1内にある状態で、全てのプロセスパラメータ(マスク4の被処理面5のスキャン温度、速度、時間および角度)の最適値を保証する。
【0131】
クレームする本装置によるマスク洗浄のプロセスパラメータは、特定の制御装置およびプログラム可能な制御設備を使用することにより、モニターされ、管理される。
【0132】
OLEDディスプレイを製造するためのシャドウマスクを洗浄するときの、本発明に係る方法およびその変形、ならびに当該方法を行う装置は、万能だが、現在、同様の目的の方法も装置も知られていないので独特であって、マスク全体のまた特に極薄のマスクの洗浄に関する非常に高い出力パラメータを提供し得る、すなわち、
−真空チャンバ内におけるマスク洗浄時間が、3〜7分間であること、
−洗浄プロセスにおけるマスクの温度が、50℃未満であること、
−マスクを無傷にすること、
−マスクを変形させないこと、および
−さらに使用するためにマスクの面を洗浄する目的で、真空チャンバからマスクを取り出す必要がないこと、
である。
【0133】
本発明の全目的は、以下の通りである。
・物品の被処理面の加熱温度を下げること、
・イオンビームによる物品洗浄プロセスの生産性を向上させること、
・洗浄中における被処理面の損傷を排除すること、
・物品の変形(初期の形状パラメータからのずれ)を排除すること、
・面積が異なる物品を処理し得ること、
・表面処理プロセスを完了すると、妨げられずに、冷却ホルダから物品を離し得ること、および
・厚さの範囲が15〜60μmである極薄の物品の処理の質を高めること。
【0134】
後者を実現するための方法(変形)および装置は、工業上の条件において用いることができ、また、工業上の条件においてシャドウマスクを洗浄するプロセスを行うことが容易である。それらによって、マスク洗浄の高い質、マスクの高い再現性、製造増加が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明に係る第1の変形による方法を実施するための装置の図である。
【図2】本発明に係る変形による方法を実施するための装置の図である。
【図3】本発明に係る変形による方法を実施するための装置の図である。
【符号の説明】
【0136】
1: 真空チャンバ
1’: 孔
2: イオン源
3: 放射面
4: マスク
5: 被処理面
6: 非処理面
7: 冷却ホルダ
8: クランプ機構
9: 磁気システム
10: 位置調節部材
11: 回転歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ製造においてシャドウマスクを洗浄する方法であって、当該方法は、
真空チャンバ内においてイオン源によりイオンビームを生成するステップと、
前記チャンバ内に、イオン源の放射面と対向させて前記マスクを配置するステップと、
を含み、
前記マスクを配置した冷却ホルダを前記真空チャンバ内に配置して、前記イオン源の放射面に面した、前記マスクの被処理面を、リボンイオンビームを集束させることによりスキャンし、単一のイオンビームをこの面上に通過させている間に前記マスク面の要素が受け取るエネルギー線量が、最大許容過熱に相当する熱量を超過しないように、スキャニングの接線速度を選択し、また、酸素または酸素との混合物をイオン生成ガスとして使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
酸素を、Ar、Xe、Kr、Ne、N、CxHy、およびCxFyからなる群から選択される少なくとも1つのガスと混合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物中の酸素部分は、10%を超えることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ディスプレイ製造においてシャドウマスクを洗浄する方法であって、
真空チャンバ内においてイオン源によりイオンビームを生成するステップと、
前記チャンバ内に、前記イオン源の放射面と対向させて前記マスクを配置するステップと、
を含み、
前記マスクを配置した冷却ホルダを前記真空チャンバ内に配置し、
リボンイオンビームを集中させることにより、前記イオン源の放射面に面した、前記マスクの被処理面をスキャンしている間、前記冷却ホルダとマスクの非処理面との間の熱接触を保証するためのクランプ機構により、前記マスクを前記ホルダに押し付け、
単一のイオンビームをこの面上に通過させている間に前記マスク面の要素が受け取るエネルギー線量が、最大許容過熱に相当する熱量を超過しないように、スキャニングの接線速度を選択し、酸素またはその混合物をイオン生成ガスとして使用することを特徴とする方法。
【請求項5】
酸素を、Ar、Xe、Kr、Ne、N、CxHy、およびCxFyからなる群から選択される少なくとも1つのガスと混合することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物中の酸素部分は、10%を超えることを特徴とする請求項4、5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
磁界源により生じる磁界により、前記マスクを前記冷却ホルダの面に押し付けることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
請求項1、4のいずれかに記載の方法を実現する装置であって、
少なくとも1つのイオン源が中に配置され、前記イオン源の放射面に面した被処理面を有するマスクを有する真空チャンバを備え、
前記真空チャンバ内に配置される冷却ホルダと、
前記マスクを前記冷却ホルダに押し付けて、前記冷却ホルダと前記マスクの非処理面との間の熱接触を保証するように、前記真空チャンバの上方にかつ/またはその中に配置されるクランプ機構と、
がさらに設けられ、
前記イオン源は、前記イオンビームと前記マスクの被処理面との交差座標を変更し得るように設計されることを特徴とする装置。
【請求項9】
陽極層を有する線形加速器を、イオン源として使用することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記イオン源を、前記冷却ホルダに対してクリアランスを設けて位置調節部材内に配置することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記位置調節部材には、前記位置調節部材が前記イオン源とともに回転することを保証する回転歯車が設けられることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記イオン源とともに前記位置調節部材が回転する角度は、前記真空チャンバ内に配置されたイオン源の数と、前記マスクの面積とにより決定されることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記位置調節部材は、前記イオン源および冷却ホルダの長手方向軸線に平行に配置されることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記クランプ機構は、前記マスクの平面に垂直方向に移動し得るように装着されることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項15】
各前記位置調節部材内にそれぞれ配置されるイオン源を、2つまたはそれ以上含むことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項16】
前記イオン源の位置調節部材は、前記マスクの平面と平行であり、前記マスクの平面と平行な同じ平面にあることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記イオン源の位置調節部材は、平行ではなく、別の平面にあることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記回転歯車は、前記位置調節部材の回転速度を変更し得ることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記クランプ機構は、多重極磁気システムの形態に形成されることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項20】
前記多重極磁気システムは、同じ磁石を一組にして設計されることを特徴とする請求項19に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−7644(P2007−7644A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157099(P2006−157099)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(506193006)
【氏名又は名称原語表記】SHIRIPOV, Vladimir Yakovlevich
【住所又は居所原語表記】6−a, ul. Centralnaya, derevnya Mariyalivo, Minskij raion, 223054, Belarus
【出願人】(506192973)
【氏名又は名称原語表記】KHISAMOV, Airat, Khamitovich
【住所又は居所原語表記】3−120, ul. Bogdanovicha, 220040, Minsk, Belarus
【出願人】(506192984)
【氏名又は名称原語表記】MARYSHEV, Sergey, Pavlovich
【住所又は居所原語表記】26−39, pr. Pushkina, 220092, Minsk, Belarus
【Fターム(参考)】