説明

ディスプレーパネル用基板及びその製造方法

【課題】微細化された電極パターンであっても、電極の剥離が生じにくいディスプレーパネル用基板を提供することを課題とする。
【解決手段】ガラス基板表面に100μm以下の線幅のパターン電極が形成されたディスプレーパネル用基板であり、電極が形成されたガラス基板表面の平均表面粗さが、0.8nm以下とし、好ましくは、ガラス基板をフロート法で得られたもの、より好ましくは、前記平均表面粗さ値をフロート法で得られたガラスのトップ面側に形成させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板表面にパターン電極が形成されたディスプレーパネル用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン等のカラー表示デバイスにおいて、プラズマディスプレーパネル(PDP)やフィールドエミッション(FED)等のディスプレーパネルは、大型で薄型のパネルを実現できるものとして注目され、特にPDPは、広く普及されるに至っている。
【0003】
PDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との対向する側の面にはストライプ状等のパターン電極が形成され、該電極には比較的容易に形成される銀電極が使用されている。そして、この銀電極は、製造コストを考慮して、厚膜法にて形成されることが多い。
【0004】
該厚膜法では、銀粒子、ガラスフリット、樹脂、溶剤等を含有する銀ペーストや銀粒子、ガラスフリット、樹脂等を含有するフィルム等の導電体材料を、スクリーン印刷法等やラミネート法等でガラス基板上に銀の厚膜を形成し、感光工程等を経てストライプ状等のパターンを得、ペースト、フィルム等に含まれる樹脂を分解除去するとともに、銀粒子、ガラスフリットを融着させるために、500℃以上で焼成される。
【0005】
そして、前記の銀電極の形成工程中に電極をガラス基板より剥離させないようにすることは、ディスプレーパネル製造の要素技術の一つであり、基板から膜の剥離を抑制する手段としては、基板と膜との親和性や接触面積を向上させる方法が通常とられる。そして、前記親和性や接触面積を向上させるための通常の方法は、ガラス基板表面を洗浄し、清浄化する方法である。例えば、特許文献1では、ガラスを清浄化する手段として、セリア研磨による方法を開示している。
【0006】
前記したディスプレーに使用されるガラス基板は、フロート法で成形されたガラス(フロートガラス)が使用されるので、該ガラス表面は比較的良好な平面度を有している。従って、通常基板上への膜形成前には、ガラス基板を洗浄する前にその表面が研磨されることはなく、研磨される場合であっても、ガラス基板上に膜を形成する前にガラス基板表面の清浄度を向上させるためにセリアを用いた研磨・洗浄するといったもので、研磨はあくまでもガラス基板表面の洗浄を助長のためになされるものであった。
【0007】
そして、電極のガラス基板からの剥離を改善するという観点からではないが、特許文献2及び3では、ガラス基板表面を研磨後に銀を含有する導電体材料でパターン電極が形成する方法が開示されている。
【特許文献1】特表2003−531737号公報
【特許文献2】特開平10−144208号公報
【特許文献3】特開平10−255669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年のテレビジョンの表示における高精細な表示に対する要求を満たすために前記したようなパターン電極の各電極の線幅を微細化することで、パターン化された電極の緻密化がなされるようになっている。そして、微細化された電極、例えば、線幅が200μm以下、好適には80又は30若しくは20μm以下の銀を含有する導電体材料等で形成された電極等の電極の形成は、前記したパターン電極の形成工程中で、電極がガラス基板から剥離しやすく、従来の方法で研磨、洗浄されたガラス基板上では、電極の剥離が生じやすいものとなっていた。従って、本発明では、微細化された電極パターンであっても、電極の剥離が生じにくいディスプレーパネル用基板、及び該基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになしたものである。すなわち本発明のディスプレーパネル用基板は、ガラス基板表面に200μm以下の線幅のパターン電極が形成されたディスプレーパネル用基板であり、電極が形成されたガラス基板表面の平均表面粗さが、0.8nm以下であることを特徴とする。
【0010】
前記平均表面粗さは、原子間力顕微鏡による観測で得られるもので、2.5μm×2.5μmの領域を走査して得られる凹凸データを、JISB0601(2001年)「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」に準拠して得られた値として定義される。
【0011】
そして本発明では、前記平均表面粗さは、該パネル用基板を表面視で矩形状に均等に6等分視した各領域の角部での半径10mm内毎に一つ任意に選択して得られる12点、及び前記6等分視された各領域を矩形状に均等に4分割して得られる各領域の中心部での半径10mm内毎に一つ任意に選択して得られる24点の合計36点を測定して得られる平均表面粗さの全点の値が、電極が形成されたガラス基板表面の平均表面粗さ値に相当するものとみなすことができる。
【0012】
図2で、前記で規定する平均表面粗さの測定点について説明する。矩形状のガラス基板を矩形状に均等に6分割視し、分割された各領域の角部の半径10mm内毎に任意点を1つ選択し、測定点12点を決める。次に各領域を矩形状のさらに均等に4分割視し、各領域中心部の半径10mm内毎の任意点を1つ選択肢、測定点24点を決める。前者12点と後者24点とを合計し、36点の測定箇所は決定される。
【0013】
本発明で使用されるガラス基板は、フロート法で得られたものであることが好ましく、又、本発明で規定するガラス基板の表面粗さ値は、フロート法で得られたガラスのトップ面側(ガラス製造時に錫浴に接する面とは反対側)が有していることが好ましく、さらには、前記ガラス基板は、BaOをガラス中に重量%表示で、6.0〜10.0%含有するガラス種であることが好ましい。
【0014】
そして前記ディスプレーパネル用基板は、矩形状の形状を有し、短辺が30cm以上300cm以下の長さを有することが好ましい。そしてこの大きさは、市場で特に必用とされるディスプレーパネルの大きさを考慮すると、本発明のガラス基板の大きさは、短辺が30cm以上100cm以下のものとすることが特に好ましい。
【0015】
本発明のパネル用基板について、電極が形成されたガラス基板表面の平均表面粗さを0.8nm以下とすることにより、ガラス基板上への電極形成時の剥離が生じ難くなる。そして、この平均表面粗さを、0.4nm以下とすると、電極とガラス基板との密着性がより向上するので、微細な電極パターンの形成に有利となるので好ましい。
【0016】
表面が粗い場合、次ぎの原因で電極の剥離が生じやすくなるものと考察される。第1には、電極とガラス基板表面との接触面積の低下があげられ、第2には、表面凹部に保水された微量な水の銀電極形成時の悪影響があげられる。本発明では、これらの影響を回避すれば、ガラス基板上へ微細化された電極を形成しても電極の剥離を抑制可能となる。
【0017】
前記平均表面粗さは、小さいことが好ましいが、小さくし過ぎると、ガラス基板製造時のコスト上昇をまねくおそれがあるので、電極の剥離と前記製造コストを考慮すると、0.1nm以上、好ましくは、0.2nm以上で実用上差し支えない。
【0018】
本発明のその表面にパターン電極が形成されるガラス基板は、例えば、その表面に厚膜法で、例えば、200μm以下、好ましくは80又は30若しくは20μm以下の線幅の微細な銀等を含有する導電体材料、すなわち、銀粉末、はんだガラス、ビヒクル等を含有する材料でいわゆる銀ペーストを焼成等の手段を経て形成される導電体でパターン形状を有する銀電極を形成することに適する。ガラス基板上に形成されるパターン電極の線幅は、実用を考慮すると0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上で差し支えない。
【0019】
前記ガラス基板は、好適には、研磨工程及び洗浄工程を有し、前記研磨工程にて平均表面粗さがいずれかの点で0.8nm超の値を有する板ガラスの表面を、10段階モース硬度において8.5以上の硬度を有する研磨剤で、前記板ガラスの表面から0.01nm〜80nmの深さ研磨する工程を有する製造方法で得られる。又、前記いずれかの点は、パターン電極が形成される点であることが好ましい。
【0020】
そして、前記研磨する工程において、スポンジ硬度が5〜20の研磨パッド、又は線径10μm以上300μm以下で、10段階モース硬度において、1〜2.5の硬度を有する材質によるディスクブラシで板ガラス表面を拭うことが好ましい。
【0021】
本発明のパネル用基板は、ディスプレーパネルに使用されるサイズと同一のものを想定したものである。しかしながら、前記ガラス基板の製造方法は、一枚の板ガラスから複数枚のガラス基板が取り出される板ガラスにも適用してもよい。その場合、前記製造方法にて複数のガラス基板を取り出し可能な半製品状態のガラス基板を製造し、パネル製造前に切断等が行われ、複数枚のディスプレー用ガラス基板が提供される。この取り出されたガラス基板の表面は、各ガラスにおいて、本発明で規定する平均表面粗さ値を有している必用がある。
【発明の効果】
【0022】
本発明のディスプレーパネル用基板は、電極とガラス基板との剥離が生じにくく、高精細な表示を有するプラズマディスプレーパネル等のディスプレーパネル製造のコストを低減することに奏功する。
【0023】
本発明のガラス基板は、その表面への電極密着性を高くできるので、銀電極以外の他の電極、例えば、ITO等の透明導電膜でも、線幅が微細化された場合、パターン電極のガラス基板への密着性の向上に効果を奏すことも可能で、プラズマディスプレーパネル、フィールドエミッションディスプレーパネル、液晶ディスプレーパネル、有機又は無機ELディスプレーパネル用のガラス基板として、顕著な効果を奏す。
【0024】
又、本発明の基板ガラスの製造方法は、そのサイズが大きくても表面物性のバラツキを小さくできるので、例えば、40又は50インチ以上のディスプレーパネル用の基板ガラスであっても、低コスト化を図れる等の利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のディスプレーパネル用基板は、平均表面粗さを特定の条件にすることで、その表面に電極が形成される際の電極剥離を抑制するものである。そして、ディスプレーパネルの製造工程の熱履歴を考慮すると、それに使用されるガラス基板は、その性状において、歪点が560℃以上、室温から 300℃における線膨張係数が84〜88 (×10−7/℃)、250℃における体積抵抗率が10Ω・cm以上である等の物性を有しているフロート法で製造された板ガラスからなることが好ましい。
【0026】
当該物性を有する板ガラスのガラス組成物としては、重量%表示でSiO 52〜62、Al 5〜12、CaO 3〜5.5、SrO 6〜9、MgO+CaO+SrO+BaO 7〜27、LiO+NaO+KO 7〜14、ZrO 0.2〜6の組成を有するガラスがある。
【0027】
又は、重量%表示で、SiO52〜56%、Al7〜11%、ZrO 0〜5%、MgO 1〜5%、CaO 5〜9%、SrO 0〜5%、BaO 8〜14%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜25%、TiO O〜1%、LiO 0〜5%、NaO 2〜6%、KO 7〜11%、及びLiO+NaO+KO 13〜15%の組成を有するガラスがある。
【0028】
前記ガラス系の中で、溶融条件、フロート法でのガラス成形性、歪点、熱膨張率、体積抵抗率を考慮すると、SiO52〜56%、Al7〜11%、ZrO 0〜5%、MgO 1〜5%、CaO 5〜9%、SrO 0〜5%、BaO 8〜14%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜25%、TiO O〜1%、LiO 0〜5%、NaO 2〜6%、KO 7〜11%、及びLiO+NaO+KO 13〜15%の組成を有するガラスを使用することが好ましい。
【0029】
上記で挙げた所謂高歪点ガラスと呼ばれる板ガラス以外にも、本発明のガラス基板には、車両用窓、建築物用窓の基板、又はディスプレー等に広く使用されているガラス組成物種も、その使用用途、又は素子の製造環境において、ガラス基板の高い歪点温度を要求されない場合には、使用してもよい。該ガラス種は少なくともSiO、NaO、KO、CaOを有し、さらに適宜、MgO、Al、Fe等を有するものである。そして、フロート法で製造されるガラス種のほとんどが、この種であることから、この種のガラスは、一般的にはフロートガラスと呼ばれている。本発明では、フロート法で製造された高歪点ガラスと区別するために、該ガラス種を軟質ガラスと称する。又、これらガラス以外にも無アルカリガラス種、石英ガラス等も使用されうる。
【0030】
フロート法で製造されたガラスは、比較的平滑なガラス表面を有しており、例えば、軟質ガラスは、製造直後には、平均表面粗さが、0.4nm〜0.5nmである。しかしながら、その後のパーティクル等のガラス表面への付着により、平均表面粗さ値が大きくなり、実際に使用する際には、多くの場合板ガラスのいずれかの点で0.8nm超の値を有し、0.4nm超5nm以下程度又は0.4nm超2nm以下程度となっていることが多い。
【0031】
又、前記したような高歪点ガラスは、フロート法でのガラスの製造時に、レアーで使用される亜硫酸ガスとガラス内のBaが反応し、硫酸バリウムとしガラス表面に付着する。従って、この付着物を除去することは、高歪点ガラスの電子材料用途への使用に必須である。
【0032】
本発明で提供するガラス基板の製造方法は、前記した付着物の除去も容易に達成し、且つガラス表面の超平滑性を達成し、本発明で規定するガラス表面の平均表面粗さを得ることに容易にせしめる。
【0033】
上記を考慮すると、本発明で使用する板ガラスは、フロート法で製造されるもので、BaOをガラス中で、重量%表示で、6.0〜10.0%、好ましくは、9.0%〜10.0%含有するガラス種で、特には、歪点が560℃以上、室温から 300℃における線膨張係数が84〜88 (×10−7/℃)、250℃における体積抵抗率が10Ω・cm以上である等の物性を有するものを使用することが好ましい。
【0034】
本発明のガラス基板の上記平均表面粗さとする調整は、洗浄工程前の研磨工程を工夫することでなすことができる。通常の研磨工程では、粗研磨工程、2次研磨工程、そして、光学研磨等の仕上げ研磨工程が行われる。しかしながら、本発明でいう研磨工程とは、前記光学研磨後の仕上げ研磨工程後に行う研磨のことを指す。又、フロート法で製造ガラスは、良好な平滑性と光学面を有しているため、粗研磨工程、2次研磨工程、そして、光学研磨等の仕上げ研磨工程は行われない。
【0035】
本発明では、もともと良好な平滑性と光学面を有しているガラス表面を、あえて、研磨を行い、そして、その研磨工程時の研磨剤の種類、ポリッシャーの種類がガラス基板の平均表面粗さ値に影響するとの新たな知見を得た。好適な研磨剤としては、10段階モース硬度において8〜10の硬度を有する平均1次粒子径が0.5μm〜4.0μm、好ましくは0.6μm〜2.0μmのものがあげられる。そして、該研磨剤は、略真球の形状を有していることが好ましい。
【0036】
本発明の研磨剤の平均1次粒子径は、JIS K 1150(1994年)「シリカゲル試験方法」に記載されている粒度分布の測定方法に準拠した方法で得られるもので、レ−ザ−光を粒子に照射し、得られる回折光強度分布を前記JIS規格に準拠して解析することで得られる。
【0037】
ポリッシャーには、研磨パッド、ディスクブラシ等があり、ポリッシャーとして研磨パッドを用いる場合は、スポンジ硬度が5〜20のものが好適であり、ディスクブラシを使用する場合は、線径300μm以下で、10段階モース硬度において、1〜2.5の硬度を有する材質によるディスクブラシが好適である。そして、前記線径については、実用を考慮すると、10μm以上、維持コスト等を考慮すると50μm以上、より好ましくは100μm以上とすることが好ましい。
【0038】
代表的な研磨剤のセリアは10段階モース硬度が6.5程度であることから、柔らかい研磨剤と言う事ができる。これに対し、本発明に好適な研磨剤は、硬い研磨剤と言うことができ、この硬い研磨剤を用いることで、本発明で規定する平均表面粗さを達成することが容易となる。
【0039】
前記硬度を有する研磨剤としては、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、ダイヤモンド等があげられ、研磨剤のコスト、洗浄工程後のガラス表面状態等を考慮すると、アルミナが特に好ましく、その表面がシランカップリング剤でコーティングされたものや、硬度を下げない程度に水酸化アルミニウム等を加えたものも使用できる。
【0040】
ポリッシャーに研磨パッドを使用する場合、比較的軟質なスポンジ状の樹脂が好ましく、ポリウレタン、ネオプレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等が使用でき、ディスクブラシを使用する場合、10段階モース硬度で2程度の硬度を有するナイロン等の軟質な樹脂を使用することが好ましい。
硬度の高い研磨剤と軟質なポリッシャーを組み合わせ、板ガラス表面から0.01〜80nm、好ましくは、0.01〜20nm深さまで研磨することにより、本発明で規定する平均表面粗さを有するガラス基板を容易に得ることが可能となる。
【0041】
前記研磨深さについて、研磨時の研磨する深さが、0.01nm未満とすると、研磨が不十分でガラス表面の本発明で規定するガラス表面の平均表面粗さを達成することが難しい。80nm超では、ガラスの平均表面粗さが大きくなる可能性が生じるので好ましくない。そして、生産時に得られる平均表面粗さの安定性を考慮すると、前記範囲は、0.01〜20nmとすることが好ましい。
【0042】
前記したような研磨工程で、本発明の目的とガラス基板の平均表面粗さを達成するためには、板ガラス表面は、相応の平滑性を有していることが好ましく、平均表面粗さ値において、電極が形成される部位が5nm以下で、好ましくは、3nm以下、より好ましくは、2nm以下であることが好ましい。そして、実状を考慮し、0.8nm超、又は、0.4nm超の平均表面粗さ値をいずれかの点で有している板ガラスであることが好ましい。
【0043】
この平均表面粗さ値について本発明では、板ガラスを表面視で矩形状に均等に6等分視した各領域の角部での半径10mm内毎に一つ任意に選択して得られる12点、及び前記6等分視された各領域を矩形状に均等に4分割して得られる各領域の中心部での半径10mm内毎に一つ任意に選択して得られる24点の合計36点を測定して得られる平均表面粗さの全点の値が、電極が形成される部位の板ガラス表面の平均表面粗さ値に相当するものとみなすことができる。
【0044】
このような板ガラスとしては、フロート法で製造されたガラスがある。その他に、CeOやFe等による軟質な研磨剤で表面が研磨された板ガラス等で、板ガラス製造時に起因する付着物のガラス表面への付着、パーティクル等による付着による経時変化でガラス表面の平均表面粗さが上記としたような値となったようなガラスがあげられる。前記した板ガラスの中で、フロート法で製造された前記したような高歪点ガラスを使用することが特に好ましい。
【0045】
そして、本発明で規定する平均表面粗さを有するガラス基板の得やすさ、不良の発生確率等を考慮すると、前記研磨は、フロート法で製造されたガラスのトップ面(ガラス製造時に錫浴に接する面とは反対側)に行うことが特に好ましい。そして、前記研磨は、板ガラスの表面に研磨剤、又は研磨剤が分散された研磨液、水を供給し、研磨パッド又はディスクブラシ等のポリッシャーでガラス表面を拭うことで行われる。
【0046】
そして、本発明のガラス基板は、前記研磨工程が行われた後、研磨剤のガラス表面からの除去、ブラシロールによる水洗浄、乾燥等が行われることで得られる。
【0047】
通常ディスプレーパネル用のガラス基板は、その表面に銀を含有する導電体材料でパターン電極が形成されることが多い。銀を含有する導電体材料は、特に好ましくは、銀ペーストと呼ばれる銀粉末、はんだガラス、及びビヒクル等を含有する材料を焼成等の手段を経て形成されるもので、その結果物は銀電極と呼ばれる。銀ペーストは、スクリーン印刷等の周知の方法でパターン状にガラス基板表面上に塗布され、そして、500℃〜600℃で焼成することでガラス基板上にパターン電極が形成される。
【実施例】
【0048】
1.板ガラスの準備
珪砂、長石、酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸カリウム、ドロマイト、石灰石、炭酸バリウムおよび珪酸ジルコニウムおよびガラスカレットよりなる調合原料を用い、商業規模のフロート法により厚み2.8mmの所謂高歪点ガラスと呼ばれる42インチサイズの板ガラスを作製した。そして、大気中、25℃の環境で3日間放置した。
【0049】
2.板ガラスの研磨及び洗浄
該板状のガラスのトップ面側表面(フロート法での作製時に錫浴接触側とは反対側)に、10段階モース硬度において9の硬度を有し、平均1次粒子径が1.2μmのAl(株式会社マイクロン製、AX1−15H)からなる硬質研磨剤、又は特級試薬の粉末状CeO(セリア)を有してなる軟質研磨剤が懸濁化された水溶液(研磨液)を配置し、研磨液が配置されたガラス側をスポンジ硬度が8のスポンジ製ポリッシャー(軟質パッド)、又はスポンジ硬度が30のスポンジ製ポリッシャー(硬質パッド)、又は線径が200μmのディスクブラシ(ナイロンブラシ)で拭い、ガラス表面から0.01〜2nmの深さ研磨した。その後、ブラシロールを用いる水洗を行い、ガラスを乾燥することでガラス基板を6種用意した。
【0050】
硬質研磨剤及び軟質パッドを用い作製されたガラス基板を実施例1、硬質研磨剤及び硬質パッドを用い作製されたガラス基板を実施例2、硬質研磨剤及びナイロンブラシを用い作製されたガラス基板を実施例3、軟質研磨剤及び硬質パッドを用い作製されたガラス基板を比較例1、軟質研磨剤及び軟質パッドで作製されたガラス基板を比較例2、そして、軟質研磨剤及びナイロンブラシで作製されたガラス基板を比較例3とする。
【0051】
3.ガラス基板の平均表面粗さの評価
実施例1乃至3、及び比較例1乃至3の各ガラス基板の平均表面粗さについて、原子間力顕微鏡(AFM)[SII社製SPA250-SPI3700]を用い、本発明で規定する36点について平均表面粗さを測定した。図1に各実施例のガラス基板の測定された平均表面粗さ値の分布の程度を示す。
【0052】
実施例1のガラス基板は、各領域での平均表面粗さ値は、全て0.4nm以下と小さくバラツキも小さかった。実施例2のガラス基板は、各領域での平均表面粗さ値は、全て0.8nm以下であったがバラツキが若干大きかった。実施例3のガラスは全て0.4nm以下と小さくばらつきも小さかった。実施例4、実施例5および実施例6のガラス基板は、0.8nm超の平均表面粗さ値が存在した。尚、研磨及び洗浄前の板ガラスの平均表面粗さ値は、0.6〜1.3nmの範囲で分布していた。
【0053】
4.ガラス基板表面への電極形成時の剥離性評価
ガラス基板上に銀を含有する導電体材料で80μm、又は30μmの線幅を有するストライプ状のパターン電極(間隔は、線幅と同じ)を形成するための模擬電極を作製した。感光性の銀ペースト(デュポン製;フォーデルDC212)をガラス基板表面にスクリーン印刷し、120℃で乾燥した。この乾燥後の電極膜の厚さは8μmであった。その後、上記パターンを形成するために、マスクを用いて、紫外線露光を行い、0.4%NaCO水溶液中にガラス基板を侵食させ、上記パターン形状を有する模擬電極をガラス基板上に形成した。そして本実施例では、この模擬電極形成時に電極の剥離が1箇所でも生じたものを不合格とした。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1及び3のガラス基板は、両方の線幅で全く剥離が生じず、実施例2は、80μmの線幅時は合格、比較例1乃至3は、両方の線幅共不合格であった。
【0056】
その後、剥離が生じなかったものについて、580℃で10分焼成することにより、上記パターンを有する銀電極によるパターン電極が形成されたディスプレーパネル用基板を得た。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】各実施例のガラス基板の平均表面粗さ値の分布の程度を示す図である。
【図2】基板の平均表面粗さ値の測定点を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ディスプレーパネル用ガラス基板
2 測定点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板表面に200μm以下の線幅のパターン電極が形成されたディスプレーパネル用基板であり、電極が形成されたガラス基板表面の平均表面粗さが、0.8nm以下であることを特徴とするディスプレーパネル用基板。
【請求項2】
ガラス基板は、フロート法で得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のディスプレーパネル用基板。
【請求項3】
前記平均表面粗さ値をフロート法で得られたガラスのトップ面側が有することを特徴とする請求項2に記載のディスプレーパネル用基板。
【請求項4】
前記ガラス基板は、BaOをガラス中に重量%表示で、6.0〜10.0%含有するガラス種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のディスプレーパネル用基板。
【請求項5】
前記パネル用基板は、矩形状の形状を有し、短辺が30cm以上300cm以下であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレーパネル用基板。
【請求項6】
前記平均表面粗さが0.4nm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のディスプレーパネル用基板。
【請求項7】
パターン電極は、銀を含有する導電体材料で形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のディスプレーパネル用基板。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のディスプレーパネル用基板に使用されるガラス基板。
【請求項9】
請求項8に記載のガラス基板の製造方法であり、該製造方法は、研磨工程及び洗浄工程を有し、前記研磨工程にて平均表面粗さがいずれかの点で0.8nm超の値を有する板ガラスの表面を、10段階モース硬度において8.5以上の硬度を有する研磨剤で、前記板ガラスの表面から0.01nm〜80nmの深さ研磨する工程を有することを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記研磨する工程において、スポンジ硬度が5〜20の研磨パッド、又は線径10μm以上300μm以下で、10段階モース硬度において、1〜2.5の硬度を有する材質によるディスクブラシで板ガラス表面を拭うことを特徴とする請求項9に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項11】
研磨剤の平均1次粒子径が0.1〜4.0μmであることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれかに記載のガラス基板の製造方法で得られたガラス基板上にパターン電極を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のディスプレーパネル用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−244747(P2006−244747A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55613(P2005−55613)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】