ディーゼルエンジンの燃料弁ノズル
内燃エンジン、特に2ストローククロスヘッドエンジン、の燃料弁ノズル(1)が、合金鋼のコア部分(4)を備えた弁ヘッド(3)及び燃焼室に向かうノズルの表面を形成する外側面(5)を有する。外側面(5)は、ニッケルベース、クロムベース及びコバルトベースでの高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成される。この微粒子種材料は、粘着性の層に結合される。少なくともコア部分(4)への遷移区域において、外側面(5)の微粒子材料内の粒子は、外側面及びコア部分を鍛造することにより生じるせん断歪によって卵形状又は細長い形状へと変形され、鍛造された外側面(5)は、少なくとも98.0%の密度を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジン、特に2ストローククロスヘッドエンジン、の燃料弁ノズル(nozzle for a fuel valve)に関する。燃料弁ノズルは、合金鋼のコア部分と、燃焼室の方に向かうノズルの表面を形成する外側面(outer facing)とを有し、この外側面は、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金(hot-corrosion-resistant alloy)の微粒子種材料(particulate starting material)から形成され、この微粒子種材料は、粘着層(coherent layer)に結合されている。
【背景技術】
【0002】
引用文献1(WO2004/030850)は、この種の既知の燃料弁ノズルを記載しており、そこでは、腐食抵抗外側面は、粉末冶金処理によりコア部分上に設けられ、この場合、腐食抵抗合金の微粒子材料は、コア部分上のモールド(mould;鋳型)内に配置され、HIP(Hot Isostatic Pressure;高温等静圧)プロセスによりコア部分と一体化される。モールドは、空気又はガスをできる限り除去するために真空化される。
【0003】
HIPプロセスは、圧力下で加熱及び設定できる室内で遂行される。有効な方法で室を利用するために、室は、ノズル又は他の部品でできる限り満たされ、これらの物体は、すべて、室内で同じHIP処理を受ける。処理が開始されたときは、室は、HIP状態に加熱及び加圧され、次いで、このような状態は、必要な期間、典型的には少なくとも8乃至12時間、維持される。
【0004】
HIP処理中、圧力は、等静圧(すべての方向において完全に均一な圧力)で微粒子材料に影響を及ぼし、微粒子材料の体積は、コア部分上で圧縮されるので、すべての方向において均一に減少する。生じた外側面のマイクロ構造において、粒子は、完成したノズルから取り出され研磨(ground and polished)されたサンプルにおいて見たときに、円形の輪郭を伴った球状形状として留まるように見える。図1及び図10は、このようなサンプルの写真である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2004/030850(国際公開パンフレット)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HIPプロセスは、外側面の高質のマイクロ構造及び優れた粘着性を提供することで知られているが、HIPプロセスは、極めて長い時間を消費し、上昇した温度での長いプロセス時間はまた、1つの合金から他の合金への成分の拡散に似た、望ましくない冶金的なプロセスを生じさせうる。本発明は、外側面の高強度を得ること、及び外側面の、特にコア部分への遷移区域の近傍で、強靭な構造を持つマイクロ構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明に係る燃料弁ノズルの特徴とするところは、少なくともコア部分への遷移区域において、外側面の微粒子材料内の粒子が、外側面及びコア部分を鍛造することによって生じるせん断歪(shear strain)により、卵形状(oval)又は細長い形状へと変形され、鍛造された外側面が少なくとも98.0%の密度を有することである。
【0008】
鍛造により誘起された歪は、他の粉末粒子に対する粉末粒子の変位を生じさせ、粒子が、互いに擦れ合い、粒子の表面上に存在し得る酸化フィルムの層を貫通する。歪は、特にせん断歪となることがある。微粒子材料が典型的には無酸素ガス内での微粒化により製造されるので、どんな酸化フィルム層も薄いが、貯蔵中にある酸化物が粒子上に形成されるのは不可避である。歪は、卵形状又は細長い形状として特徴づけられることのある非球形形状へと粒子を変形させる。鍛造中、微粒子材料は、密度の高い層へと圧縮され、粒子は、隣接する層に接着される粘着性材料として結合する。この隣接する層は、微粒子材料がコア部分上に直接的に位置する場合は、コア部分である。
【0009】
鋳造により誘起されたせん断歪(shear strain)は、少なくとも外側面の材料とコア部分の材料との間の遷移区域に沿った方向に微粒子材料を流れさせる。せん断歪及びその結果としての遷移区域の近傍における材料内での運動は、材料間の有効な接着の発生を保証し、変形中の粒子の相互の擦れ合いの極めて有効な方法に関連して、結果としてのマイクロ構造は、マイクロ構造内での極めて少数の内部欠陥地点のみを有する。従って、遷移区域内での材料の一緒の結合は、強靭なマイクロ構造を有し、外側面とコア部分との間の幾何学的な係止を完全に不要にすることができる。
【0010】
鍛造は、微粒子材料及びコア部分を取り囲む囲いの組立て、真空化及び加熱に続く工程として適用される。HIP処理のような中間の工程が存在しないことが重要であると考えられる。その理由は、このような処理が長引き、材料間の拡散を生じさせることがあるからである。
【0011】
外側面は、コア部分上に直接位置することが可能である。代わりとして、合金の少なくとも1つのバッファ層(buffer layer)がコア部分と外側面との間に位置する。このようなバッファ層を使用した場合、バッファ層の合金は、コア部分の合金鋼とは異なり、且つ、外側面の高温腐食抵抗合金とは異なる組成を有する第3の合金である。
【0012】
組成の差(difference in composition)は、バッファ層の合金の分析が合金化成分において又は合金化成分の1又はそれ以上の量(重量%)において異なることを意味する。バッファ層は、異なる量の炭素又は異なる量のクロム、鉄又はニッケルのような他の成分を伴った合金鋼とすることができる。
【0013】
従って、組成という用語は、合金の分析を意味するものとして考えることができる。合金鋼のコア部分と外側面との間でのバッファ層の位置は、合金鋼がバッファ層の金属のみと直接接触し、外側層(面)の腐食抵抗合金と接触しないという効果を有する。バッファ層は、外側面からコア部分への及びコア部分から外側面への合金化成分の拡散を減少させ又は阻止するように作用する。
【0014】
好ましくは、バッファ層は、鋼、オーステナイト鋼、ニッケルベースの合金、及び不可避の不純物を除く鉄又はニッケル合金からなるグループから選択される。このような合金は、コア部分の鋼及び外側面の合金の双方と両立できるものと考えられる。
【0015】
1つの実施の形態においては、コア部分の合金鋼は、オーステナイトステンレス鋼である。ステンレス鋼は、高強度を有し、特に2ストローククロスヘッドエンジンにおいて概して極めて良好に働くものと考えられる。しかし、ステンレス鋼は、幾分高い炭素含有量を有する。バッファ層は、拡散した炭素を吸収し、そのため、ノズルの大半の部分に対してステンレス鋼を利用する利点は、高温腐食抵抗及び完成したノズルの長期間の柔軟性のための高い要求により損なわれない。
【0016】
好ましい実施の形態においては、バッファ層は、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.75mmのような、少なくとも0.3mmの厚さを有する。厚さは、バッファ層がカーバイド形成能力(この場合、層内へ拡散する炭素は、カーバイドに変換され、従って、層の炭素活性化の増大を生じさせることができない)を示す合金のものである場合でさえも、バッファ層を横切る炭素の拡散を妨げる。
【0017】
本発明は、また、内燃エンジンの燃料弁ノズルを製造する方法に関し、この場合、燃料弁ノズルは、合金鋼のコア部分を有する弁ヘッドと、燃焼室の方へ向いたノズルの表面を形成する外側面と、を有し、この外側面は、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成される。
【0018】
本発明に従えば、方法の特徴は、高温腐食抵抗合金の微粒子材料がコア部分において囲い内に保持されている間、微粒子材料が鍛造され、それによって、微粒子材料が粒子を細長い形状又は卵形状へと変形させる歪を受け、この鍛造は、少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面をコア部分に又はバッファ層及びコア部分に結合することである。
【0019】
鍛造は、HIP処理に比べて極めて迅速に生じ、従って、合金化成分は、弁部品が上昇した鍛造温度にある間に、1つの合金から隣接する合金への拡散のためのほんの短い時間を有する。上述したように、鍛造は、微粒子材料を一緒に押圧し、せん断歪は、遷移区域に平行な方向に粒子を移動させ、微粒子材料内の粒子を互いに擦り合わせ、溶合させる。移動、擦合及び溶合中、粒子上に最初に存在するいかなる酸化フィルムもが、分解し、任意の1つの粒子内部のグレン(粒)からの真新しい合金材料は、他の粒子内部のグレンからの真新しい合金材料と直接接触し、従って、グレンは、マイクロ構造レベルで有効に接続することができる。
【0020】
1つの例においては、囲い内の微粒子材料は、コア部分の円筒状の外側表面に沿って延びる領域において、実質上均一な厚さの層となって提供される。微粒子材料の層が囲い内で実質上均一の厚さのものであり、実質上均一の鍛造状態が適用された場合、結果としての外側面は、実質上均一な厚さを有する。
【0021】
本発明に係る更なる方法の特徴は、高温腐食抵抗合金の微粒子材料が予め形成された部品を造るために不活性雰囲気内で高温噴霧され、予め形成された部品及びコア部分が鍛造温度に加熱されて鍛造され、それによって、微粒子材料が細長い形状又は卵形状へと粒子を変形させるせん断歪を受け、鍛造が少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面をコア部分に又はバッファ層及びコア部分に結合することである。
【0022】
この方法により、微粒子材料は、十分に安定した形状の予め形成された部品として最初に形状づけられ、微粒子材料が単一の本体としてコア部分上に位置することを保証する。微粒子材料をコア部分上に直接噴霧することさえ可能である。微粒子材料が相互接続多孔度を有しない場合、囲いの使用を回避することが可能である。囲いを使用した場合は、鍛造の完了後に囲いを機械加工で除去しなければならない。予め造られた部品内の微粒子材料は、鍛造前に不規則な形状を有するが、鍛造は、第1に述べた方法に関連して説明したような効果を生じさせる。しかし、結果としての変形した粒子は、完全に不規則な形状を有する。
【0023】
どの方法が利用されても、鍛造前には、外側面の材料は、1×10−4バールよりも低い圧力に減圧されるのが好ましい。減圧は、鍛造すべき微粒子材料内の空洞からガスを除去し、これは材料の圧縮を容易にする。外側面の材料内に存在するガスは、典型的には不活性ガスのような酸素の無いものであるが、実践的にはできる限り少量のガスを存在させるのが、更に有利である。結果として、外側面の材料は、1×10−7バールよりも低い圧力に減圧されるのが好ましい。
【0024】
囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料は、鍛造前に、鍛造温度に加熱することができる。本発明に係る1つの鍛造方法においては、囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料は、流体を満たした室内に導入され、この場合、鍛造は、流体内の圧力を増大させることにより実行される。本発明に係る別の鍛造方法においては、囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料は、囲いの外径を減少させる工具を通して押圧されることにより、鍛造される。
【0025】
第3の合金のバッファ層を使用すべき場合、この第3の合金は、コア部分の合金鋼(第1の合金)とは異なり、且つ、外側面の高温腐食抵抗合金(第2の合金)とは異なる組成を有する。第3の合金は、好ましくは、外側面の材料がコア部分の表面に位置する前に、コア部分のその表面に適用される。代わりに、第3の合金は、外側面の材料に適用することができる。しかし、コア部分の表面は、通常、極めてよく制御された(特に量及び均一な方法での材料の散布に関してよく制御された)方法でその上に第3の合金を適用できるような規則的で円滑な表面である。
【0026】
遷移区域を横切る拡散を減少させるため、鍛造は、好ましくは10分以下で実行され、外側面を伴ったコア部分は、鍛造後直ちに冷却される。鍛造されたようなノズル及び/又は完成されたノズルへの機械加工後のノズルは、随意には、焼戻し又は焼なましのような最終の熱処理を受けることができる。熱処理は、遷移区域での合金化成分の拡散を生じさせることができ、材料間の冶金結合を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】外側面が従来のHIP処理により提供された場合のノズルから取り出され研磨されたサンプルの顕微鏡写真。
【図2】本発明に係るノズルの形をした燃料弁ノズルの断面部品図。
【図3a】本発明に係る弁ヘッドの鍛造を示す概略図。
【図3b】本発明に係る弁ヘッドの鍛造を示す概略図。
【図4】本発明に係る弁ヘッドの鍛造のために準備されたユニットを示す概略図。
【図5】本発明に係る弁ヘッドの鍛造のために準備されたユニットを示す概略図。
【図6】外側面が本発明に従って提供されたノズルから取り出され研磨されたサンプルの顕微鏡写真。
【図7】外側面が本発明に従って提供されたノズルから取り出され研磨されたサンプルの顕微鏡写真。
【図8】テストサンプルの頂面図。
【図9】テストサンプルの側面図。
【図10】外側面が従来のHIP処理により提供されたノズルから取り出され研磨されたサンプルの顕微鏡写真。
【図11a】本発明に係る弁ヘッドの別の鍛造を示す概略図。
【図11b】本発明に係る弁ヘッドの別の鍛造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る実施の形態の例を、極めて概略的な図面を参照して、以下に詳細に説明する。図1及び図10において、サンプルは、HIP圧縮(compacted)された微粒子材料から取り出され、粒子を通しての切断からの円形形状が示されている。これは、圧縮(compacting)中に粒子がその球形形状を維持することを示す。粒子が球形であることは、HIP圧縮の典型的な証(sign)であり、これは、圧縮中に適用された等静圧の結果である。
【0029】
等静圧は、粒子がプロセス中に材料内で動き回らないような方法で微粒子材料を縮ませる。これは、粒子間の相互位置が維持されるような極めて整然としたプロセスである。従来のマイクロ構造を一層明確に識別するために、写真内に現れた粒子の3つを輪郭づけるように3つの円を図10の写真に付加してある。
【0030】
図2は、各シリンダ上の2又は3個の燃料弁のような、各シリンダ上の2つ以上の燃料弁を有する2ストローククロスヘッドエンジン用の燃料弁ノズル1を概略的に示す。クロスヘッドエンジンは、典型的には、数ある理由の中でも、ノズルの寿命に対する厳格な要求を持つ。その理由は、エンジンがしばしば、硫黄を含むことさえある重燃料油で作動するからである。
【0031】
ノズルは、弁ハウジング2の端部における中央の穴を通して突出し、その環状の表面3は、鎖線で示すシリンダライナー内又はシリンダカバー内の対応する当接表面に対して押圧することができ、その結果、ノズルボア4を備えたノズルの先端は、燃焼室A内へ突出し、燃料弁が開いた場合に燃料を射出することができる。燃料弁は、弁ニードル6を備えた弁スライダ5と、図示の弁デザインでは、スライダガイド8の下端に位置する弁座7とを有する。スライダガイドは、ノズル1上の上方に向いた表面に対して押し下げられる。
【0032】
ノズルは、中央の長手方向のチャンネル9を有し、このチャンネルから、ノズルボア4がノズルの外側表面へ導かれる。ノズルは、腐食抵抗性の第1の合金の外側面10と、第2の合金のコア部分12とで形成される。外側面は、ノズル穴のまわりの領域において少なくともノズルの最外側領域を構成し、上方に延びることができ、弁ハウジング2から突出するノズルの全体部分にわたってノズルの外側表面を構成できる。
【0033】
ノズル上の外側面10は、ノズルからの材料の剥離を妨害する高温腐食抵抗材料の層である。高温腐食抵抗材料は、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである合金の微粒子種材料から形成される。燃料弁ノズルを利用する内燃エンジンは、4ストロークエンジン又は2ストローククロスヘッドエンジンとすることができる。2ストロークエンジンは、MC又はME形式のようなマン(MAN)製ディーゼルとすることができ、または、RTA−フレックス(RTA-flex)のRTA形式のようなワルトシーラ(Wartsila)製のものとすることができるか、または、三菱製のものとすることができる。このような2ストローククロスヘッドエンジンについては、ピストンの直径は250mmから1100mmまでの範囲とすることができ、各シリンダに対しては、典型的には、2又は3個の燃料弁が存在する。
【0034】
燃料弁ノズル1は、また、例えば中速又は高速形式の4ストロークエンジンのような一層小さなエンジンにおいて利用することができるが、燃料弁ノズルは、負荷が厳しく、故障を伴わない連続的な作動の要求が優勢であるような大きなエンジンである2ストロークエンジンに特に適用できる。
【0035】
1つの実施の形態においては、外側面10は、コア部分12の表面上に直接適用される。そこから図6、図7の写真に示す見本を取り出した燃料弁ノズルの別の実施の形態においては、バッファ層29は、コア部分12と外側面10との間に位置する。バッファ層29は、不可避の不純物は別として、コア部分の表面に適用された実質上純ニッケルの層とすることができる。
【0036】
ニッケル層は、コア部分上に置かれた微粒子材料として提供されるような、異なる方法で表面に適用することができる。ニッケル層は、また、バッファ層の頂部上に外側面の微粒子材料を配置する前に、別の手順で提供することができる。このような別の手順においては、コア部分は、めっき層内に配置することができ、ニッケルは、ニッケル電気めっきにより蒸着することができ、30μmから150μm、好ましくは、30μmから70μmまでの範囲の厚さ有する層を形成する。電気めっきされた層は、純ニッケルの極めて密度の高い層であるという利点を有する。
【0037】
別の実施の形態においては、バッファ層は、不可避の不純物は別として、鉄の層のものである。純粋な又はほぼ純粋な鉄又は、ニッケルのバッファ層を作る1つの利点は、バッファ層がカーバイド形成源を全く有しないか又はごく少量しか有しないことである。この場合、バッファ層内でのカーバイドの形成は抑制され、バッファ層内への炭素の拡散は、バッファ層内での炭素の活性度を増大させ、従って、層内への炭素の更なる拡散は、抵抗を受ける。炭素のみは鉄又はニッケル内で極めて小さな溶解度を有する。例として、500℃の温度でのニッケル内の炭素の溶解度は、0.1重量%よりも小さく、そのため、少量の炭素がバッファ層内で拡散した場合でさえ、バッファ層は、100%の炭素活性度を得ることができ、従って、層内への炭素の更なる拡散を実質上阻止する。
【0038】
別の例として、バッファ層29は、鋼又はオーステナイト鋼のものとすることができる。バッファ層は、鋼の板とすることができる。一層特定な例として、コア部分12は、鍛造された工具鋼(表1におけるH13工具鋼)のものであり、外側面10は、合金671のものであり、鋼の板は、合金W−表2の合金から選択されたNo.1.4332のものである。別の例として、バッファ層29は、合金UNS S31603の微粒子材料として提供することができ、外側面10は、合金671の微粒子材料のものとすることができる。コア部分12は、鍛造された鋼のものである。この場合、バッファ層の微粒子材料及び外側面の微粒子材料の双方は、鍛造中に、コア部分12上の粘着性材料に結合される。
【0039】
代替の実施の形態として、バッファ層は、ニッケルベースの合金のものとすることができる。この形式の合金は、外側面の合金との十分な結合のために特に適し、20乃至23%のクロムを有する合金IN625、19乃至23%のクロムを有する合金INCOLOY600又は10乃至25%のクロムを有する合金IN718又は約15%のクロムを有する合金NIMONIC合金105又は10乃至25%のクロムを有する合金Rene220の如き、25重量%よりも少ないクロム含有量のような、外側面よりもかなり少ないクロム含有量を有することができる。バッファ層は、また、一層多量のニッケルが炭素の拡散を阻止する傾向を有するので、一層ニッケルの豊富な合金のものとすることができる。
【0040】
微粒子材料は、当業界で周知のいくつかの異なる方法で製造することができる。たとえば、微粒子材料は、所望の組成の溶融合金の液体ジェットを不活性雰囲気の室内へ噴霧する(それによって、材料は、失活(quenched)し、極めて微細な樹枝状の構造を持つ粒子として固化する)ことにより製造することができる。微粒子材料は、また粉末と呼ぶこともできる。
【0041】
代替的に、微粒子材料は、所望の組成の溶融合金の液体ジェットを不活性雰囲気の室内へ噴霧する(この場合、噴霧された粒子のスプレーは、個体部品に衝突し、その上に蒸着するように導かれる)ことにより製造することができる。個体部品は、冷却することができ、この例では、粒子は、個体部品とは別個の予め形成された部品を作る。代わりに、粒子は、個体部品に結合することができ、コア部分12は、それとして使用することができ、そのため、予め形成された部品は、コア部分に直接接着される。
【0042】
コア部分12のための適当な材料は、工具鋼である。このような材料の例は次の表1に示す。ASTM No.は、合金のための米国規格名称である。コア部分のための他の材料は、合金のためのドイツの規格番号であるW.−No.で表1に示すステンレス鋼である。示される百分率は、重量%である。工具鋼(ASTM)は、その高強度、特にその高摩耗抵抗のために好ましい。重燃料油のための燃料射出システムに使用すべきノズルに対しては、高摩耗抵抗は、長い寿命を有するノズルを提供する。ガス燃料のための燃料システムに使用すべきノズルに対しては、摩耗抵抗のための要求は、燃料が重燃料油である場合よりも低くなることがある。
【表1】
【0043】
注:Cは炭素、Siはケイ素、Mnはマンガン、Crはクロム、Niはニッケル、Wはタングステン、Moはモリブデン、Nは窒素、Vはバナジウムである。随意のバッファ層のための適当な材料は次の表2に例示したような鋼である。W.−No.は、合金のためのドイツの規格番号である。示される百分率は、重量%である。
【表2】
【0044】
注:Cは炭素、Siはケイ素、Moはマンガン、Crはクロム、Niはニッケル、Nbはニオビウム、Moはモリブデンである。バッファ層のための別の適当な材料は、0.5−1.0%のマンガン、16.5−18%のクロム、11.5−14%のニッケル、2.5−3.0%のモリブデン、0−0.1%の窒素、0−0.025%の酸素、0−0.03%の炭素及びバランス鉄を含む合金UNS S31603である。
【0045】
バッファ層が板材料のものである場合、通常、窒素及び酸素の含有量に対するいかなる要求も存在しない。しかし、バッファ層が微粒子材料である場合は、窒素の含有量は、最大0.1%であることが好ましく、酸素の含有量は、最大0.03%であることが好ましい。
【0046】
外側面のための適当な材料は、ノズルの業界で周知であり、その例は、ステライト6、タイプ50%クロム及び50%ニッケルの合金、及び、48−52%のクロム、1.4−1.7%のニオビウム、最大0.1%の炭素、最大0.16%のチタン、最大0.2%の炭素+窒素、最大0.5%のケイ素、最大1.0%の鉄、最大0.3%のマグネシウム及びニッケルのバランスを含むタイプIN657の合金である。
【0047】
別の例は、40乃至51%のクロム、0乃至0.1%の炭素、1.0%以下のケイ素、0乃至5.0%のマンガン、1.0%以下のアルミニウム、0乃至1.5%のチタン、0乃至0.2%のジルコニウム、0.5乃至3.0%のニオビウム、最大5.0%のコバルト及び鉄の凝集含有物、最大0.2%の酸素、最大0.3%の窒素及びニッケルのバランスを含む組成を有する合金である。
【0048】
外側面として使用するのに適した他の面合金は、ロンドンの海洋技術者協会(The Institute of Marine Engineers)からの1990年に発行された「重燃料作動のためのディーゼルエンジン燃焼室材料(Diesel engine combustion chamber materials for heavy fuel operation)」という名称の本における論文「現在の弁材料での作動体験の報告(Review of operating experience with current valve materials)」に記載されている。
【0049】
鍛造は、鍛造位置に弁ヘッドのコア部分12を配置し、コア部分の表面へ(もしあるならば)バッファ層を適用することにより、準備される。外側面10の微粒子材料は、いくつかの異なる方法で提供することができる。図4に示す1つの例においては、外側面10は、コア部分12において囲い15内に保持された微粒子材料として提供され、一方、囲い及び微粒子材料を伴ったコア部分は、鍛造のための準備として鋳型部品内に配置される。コア部分上での囲い15及び微粒子材料の配置はいくつかの異なる方法で行うことができる。囲いは、コア部分のまわりで溶接シーム20を伴って溶接することができ、パイプスタッド17を具備することができ、このパイプスタッドは、囲い内へ微粒子材料を満たすために使用され、次いで、真空装置を接続するために使用され、次いで、鍛造前に除去又は閉鎖される。
【0050】
代替的に、囲い15は、微粒子材料が囲い内に置かれた後に、コア部分12のまわりで固定することができる。この固定は、溶接を使用することにより、又は他の例としては、真空ろう付けにより、行うことができる。更なる代わりとして、囲いは、コア部分のまわりで固定することができ、引き続いて、微粒子材料が囲い内に満たされ、最後に、ろう付けが遂行される。真空ろう付けを使用する場合、囲い15は、内部にネジ部を具備することができ、このネジ部は、コア部分のベース部分18上の外ネジ部と螺合する。ベース部分18は、コア部分の円筒状部分19よりも大きな直径を有する。ネジ部上にはんだを施す。次いで、真空オーブン内で加熱及び固定を生じさせることができる。別の例においては、外側面10の微粒子材料は、コア部分12上に位置する予め形成された部品として提供される。
【0051】
1つの例においては、鍛造の前に、外側面10の微粒子材料、及び、可能ならバッファ層29及び囲い15を伴ったコア部分12は、好ましくは950℃乃至1100℃の温度範囲内にある鍛造温度に加熱される。加熱された部品は、下方鋳型部分50、上方部分51及び機械的に駆動できるか又は液圧的に駆動できる駆動機構(図示せず)を有する鍛造プレス内に導入される。鍛造プレスの作動は、一方の鋳型部分を他方の鋳型部分の方へ変位させ、鋳型部分内に保持された材料は、この変位中に機械的に変形される。
【0052】
鍛造作動は、好ましくは2分以内、一層好ましくは1分以内で実行される。鍛造中、外側面10の微粒子材料は、典型的には、外側面の厚さが微粒子材料の初期の厚さの30乃至70%に減少するように、圧縮される。密度の高い予め形成された部品を使用した場合、密度は、鍛造前には、幾分高くすることができ、この例においては、外側面の厚さは、微粒子材料の初期の厚さの30乃至95%に減少させることができる。外側面の結果としての密度が少なくとも98.0%になるように、微粒子材料は、その厚さを減少させる。鍛造を使用してこの程度に圧縮されたとき、適当な密度の微粒子材料が得られる。もちろん、例えば、少なくとも99.0%の密度に、一層良好には、少なくとも99.5%の密度に、最も好ましくは、100%の密度に、微粒子材料を更に圧縮するのが一層好ましい。
【0053】
鍛造中、微粒子材料は、せん断歪を受け、このせん断歪は、粒子の位置を移動させ、材料を変形させる。歪は、材料内の粒子間の相対変位を表す変形の幾何学的な尺度である。せん断歪は、粒子の場所移動を生じさせ、粒子5の相互作用時に粒子を変形させる。せん断歪は、鍛造により影響を受ける表面に平行に作用する。鍛造は、外側面の外側表面に影響を及ぼし、せん断歪は、この表面に平行に作用する。外側層(面)の圧縮中、せん断歪は、粒子を半径方向に変位させ、粒子を互いに擦り合わせ、長方形形状、卵形状又は不規則形状のような非球形形状へと粒子を強制変形させる。鍛造が完了したとき、鍛造された弁ヘッドは、鋳型から取り出され、空冷されるか又は他の方法で冷却される。
【0054】
外側面の材料内の有効な歪の量は、少なくとも0.3であるのが好ましい。有効な歪は、2006年のプレンティス・ホール(Prentice Hall)の第5版におけるカルパクジャン及びシュミッド(Kalpakjian and Schmid)による「製造技術工学(Manufacturing engineering and technology)」又は1978年、ストックホルムの国立スエーデン技術大学(Royal Swedish Technical University)の刊行物104におけるゲルト・ヘドナー(Gert Hedner)による「Formelsamgling I Hallfasthetslare」(222−223頁)のような、基礎的な教本に開示された伝統的な方法で、計算される。一層好ましくは、有効な歪は、少なくとも0.4である。これは、外側面の粒子とコア部分又はバッファ層の材料との間の極めて有効で強固な結合を保証する。
【0055】
燃料弁ノズルを製造する第1の方法は、次の通りである。燃料弁ノズルは、合金鋼のコア部分と、燃焼室に向かうノズルの表面を形成する外側面とを有する。外側面を形成するための微粒子種材料が準備される。材料は、高温腐食抵抗合金のものである。微粒子種材料は、囲い15内に包まれ、この囲いの内部は、実質上外側面の外側表面+機械加工及び鍛造の公差の形状を有する。換言すれば、囲い15は、弁ヘッドが鍛造された後に除去されるように、準備される。高温腐食抵抗合金の微粒子材料がコア部分で囲い内に保持されている間、微粒子材料及びコア部分は、鍛造温度に加熱される。
【0056】
図3aに示すように、微粒子材料10を伴うコア部分12及び囲い15は、上方鋳型部分50に装着される。次いで、上方鋳型部分は、下方鋳型部分51の方へ部品を下方に移動させる。下方鋳型部分51は、3つの区分、即ち、鍛造したときに囲い15の外径に対応する直径を有する円筒状のボアとして形状づけられた下方区分、鍛造前の囲い15の外径よりも僅かに大きな直径を有する中間の円筒状区分、及び、上方の入口区分、を備えたボアを有する。環状の表面53は、中間の円筒状区分を下方区分に接続する。環状表面53は、円錐形である。囲い15の直径は、囲い15が円錐形の環状表面53を通過して押し下げられたときに、減少する。その理由は、円錐形の表面53が、少なくとも98.0%の密度へと粒子材料の圧縮を生じさせる鍛造力で、囲い15に作用し、コア部分12への遷移区域における微粒子材料内のせん断歪が粒子を卵形状に変形させるからである。図3bにおいては、コア部分の上方部分における肩部が下方の鋳型部分51のボアの上方の入口区分と中間の円筒状区分との間の遷移部において円錐形の環状表面54に当接するまで、上方鋳型部分50を下方に移動させることにより、鍛造工程が完了している。鍛造工程の完了後、上方鋳型部分50は、上方へ移動され、鍛造された見本を引き出す。
【0057】
代わりの鍛造方法を図11a、図11bに示す。上方鋳型部分50は、溶融ガラス又は溶融塩のような上昇した温度での流体で満たされた内部室と、下方鋳型部分の上方表面での環状の円錐形ガイド表面61とを有する下方鋳型部分60内へ、微粒子材料を伴ったコア部分及び囲い15を下方に移動させる。ガイド表面61は、円筒状ボアに関して囲いをセンタリングし、内部室内へ下方に導く。ガイド表面61は、また、コア部分の上方部分における肩部のための当接部として、従って、下方運動のためのストッパとして、作用する。囲い15が内部室内へ完全に導入されたとき、室内の圧力は、増大し、増大した圧力は、囲い15及びその中に収容された微粒子材料の鍛造を生じさせる。鍛造中、微粒子材料は、粒子を細長い形状又は卵形状に変形させるせん断歪を受ける。同時に、微粒子材料は、少なくとも98.0%の密度に圧縮され、コア部分又は、バッファ層及びコア部分に結合される。
【0058】
燃料弁ノズルを製造する更なる方法は、予め形成された部品を造るために高温腐食抵抗合金の微粒子材料を高温噴霧することである。予め形成された部品は、噴霧手順中にコア部分上に直接形成することができ、または、別個に形成して、コア部分上に配置し、鍛造温度に加熱することができる。次いで、予め形成された部品及びコア部分、及びまた、随意にはバッファ層は、ノズル部品として鍛造することができる。鍛造中、微粒子材料は、粒子を細長い形状又は卵形状に変形させるせん断歪を受け、この鍛造は、微粒子材料を少なくとも98.0%の密度に圧縮し、外側面をコア部分に又は、バッファ層及びコア部分に結合する。
【0059】
微粒子材料の高温噴霧は、溶融合金を伴った噴霧ドライヤーノズルを供給し、霧化した粒子をコア部分12上に噴霧することにより、行うことができ、この場合、粒子は、部分的に結合するが、密度の高くない状態に留まる。高温噴霧を適用された予め形成された部品を伴ったコア部分は、鍛造温度に加熱され、上述の説明で述べたような一方の鋳型部分内に配置され、次いで、密度の高い状態に鍛造される。外側面のために準備される微粒子材料は、粒子に存在する酸素の量を減少させるために、鍛造前に真空化するのが好ましい。このようにして、粒子上での酸化フィルムの形成が妨害される。
【0060】
鍛造において、外側面10は、初期の厚さに比べて約25%小さい厚さのような一層小さな厚さに圧縮される。同時に、外側面内の材料の密度は、約65%から約100%の近くまで増大する。結果としての密度は、少なくとも98.0%であるのが好ましい。上述の方法のうちの任意の方法で製造されたノズルは、燃焼室の方に向いた表面において外側面10を有する。鍛造により得られた強靭なマイクロ構造は、遷移区域において材料の強固な結合を生じさせる。本発明に従えば、この結合は試験することができる。せん断負荷による材料の引き裂きに対する強度を試験するため、ノズルから切断したサンプルに基づき、特別な試験片を準備する。試験片は、図8、図9に示すような形状を有する。試験片は、幅(w=)9.0mm、長さ(l=)40.0mm、引っ張り穴の中心間の距離(d=)25.4mm、コア部分の厚さ(t=)3.5mm及び外側面の厚さTを有する。外側面の厚さが測定され、厚さTに設定する。次いで、全体の材料を通して、いずれかの側から、少なくとも2mmの幅の溝g1、g2を切削し、長手方向におけるこのような相互分離により、層の相互結合による結果としての重なりは外側面の測定した厚さTよりも小さくなる。
【0061】
8つの例を実行し、その結果を表3に示す。得られたせん断強度が高いレベルにあることが明らかに分かる。このレベルは、固形材料のせん断強度に対応する。従って、本発明に従って得られた結合は、材料の弱化を生じさせない。
【表3】
【0062】
更なる実施の形態においては、高温腐食抵抗合金の微粒子材料は、セラミック材料ジルコニア(ZrO2)に似た隔離材料の粒子と混合される。隔離材料は、外側面の外側表面の近傍で一層大きな濃縮度を有することができ、好ましくは、外側面とコア部分との間の遷移区域には、隔離材料が存在しない。外側面の微粒子材料は、5乃至60重量%の隔離材料を含むことができるが、好ましくは、隔離材料の量は、外側面の40重量%を越えない。
【0063】
特許請求の範囲の要旨内で、上述の実施の形態の詳細を他の実施の形態として組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲の要旨内で、上述の実施の形態の詳細について変形を行うことが可能である。上述の実施の形態の任意のものは、焼戻し又は焼なましのような最終熱処理を受けることができる。たとえば、熱処理は、2乃至6時間の範囲の期間を有することができ、800乃至1050℃の範囲の温度で生じることができる。他の温度も可能である。
【0064】
燃料弁ノズルは、重要なエンジン部品であり、特定の燃料弁ノズルの特定及び可能な製造詳細の資料のための情報は、燃料弁ノズルに埋設したダグ内に記憶させることができる。好ましくは、タグは、遠隔的に読み書きできるRFID形式のものであり、更に好ましくは、追跡性を提供する個々の証明データを含む。所望なら、特定のスピンドルは、2つ以上のタグを具備することができる。タグは、熱及び他のタグ危害パラメータから十分にシールドされるような、燃料弁ノズル内の位置に位置決めできる。
【符号の説明】
【0065】
1:燃料弁ノズル、10:外側面、12:コア部分、15:囲い、29:バッファ層、50:上方鋳型部分、51:下方鋳型部分。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジン、特に2ストローククロスヘッドエンジン、の燃料弁ノズル(nozzle for a fuel valve)に関する。燃料弁ノズルは、合金鋼のコア部分と、燃焼室の方に向かうノズルの表面を形成する外側面(outer facing)とを有し、この外側面は、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金(hot-corrosion-resistant alloy)の微粒子種材料(particulate starting material)から形成され、この微粒子種材料は、粘着層(coherent layer)に結合されている。
【背景技術】
【0002】
引用文献1(WO2004/030850)は、この種の既知の燃料弁ノズルを記載しており、そこでは、腐食抵抗外側面は、粉末冶金処理によりコア部分上に設けられ、この場合、腐食抵抗合金の微粒子材料は、コア部分上のモールド(mould;鋳型)内に配置され、HIP(Hot Isostatic Pressure;高温等静圧)プロセスによりコア部分と一体化される。モールドは、空気又はガスをできる限り除去するために真空化される。
【0003】
HIPプロセスは、圧力下で加熱及び設定できる室内で遂行される。有効な方法で室を利用するために、室は、ノズル又は他の部品でできる限り満たされ、これらの物体は、すべて、室内で同じHIP処理を受ける。処理が開始されたときは、室は、HIP状態に加熱及び加圧され、次いで、このような状態は、必要な期間、典型的には少なくとも8乃至12時間、維持される。
【0004】
HIP処理中、圧力は、等静圧(すべての方向において完全に均一な圧力)で微粒子材料に影響を及ぼし、微粒子材料の体積は、コア部分上で圧縮されるので、すべての方向において均一に減少する。生じた外側面のマイクロ構造において、粒子は、完成したノズルから取り出され研磨(ground and polished)されたサンプルにおいて見たときに、円形の輪郭を伴った球状形状として留まるように見える。図1及び図10は、このようなサンプルの写真である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2004/030850(国際公開パンフレット)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HIPプロセスは、外側面の高質のマイクロ構造及び優れた粘着性を提供することで知られているが、HIPプロセスは、極めて長い時間を消費し、上昇した温度での長いプロセス時間はまた、1つの合金から他の合金への成分の拡散に似た、望ましくない冶金的なプロセスを生じさせうる。本発明は、外側面の高強度を得ること、及び外側面の、特にコア部分への遷移区域の近傍で、強靭な構造を持つマイクロ構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明に係る燃料弁ノズルの特徴とするところは、少なくともコア部分への遷移区域において、外側面の微粒子材料内の粒子が、外側面及びコア部分を鍛造することによって生じるせん断歪(shear strain)により、卵形状(oval)又は細長い形状へと変形され、鍛造された外側面が少なくとも98.0%の密度を有することである。
【0008】
鍛造により誘起された歪は、他の粉末粒子に対する粉末粒子の変位を生じさせ、粒子が、互いに擦れ合い、粒子の表面上に存在し得る酸化フィルムの層を貫通する。歪は、特にせん断歪となることがある。微粒子材料が典型的には無酸素ガス内での微粒化により製造されるので、どんな酸化フィルム層も薄いが、貯蔵中にある酸化物が粒子上に形成されるのは不可避である。歪は、卵形状又は細長い形状として特徴づけられることのある非球形形状へと粒子を変形させる。鍛造中、微粒子材料は、密度の高い層へと圧縮され、粒子は、隣接する層に接着される粘着性材料として結合する。この隣接する層は、微粒子材料がコア部分上に直接的に位置する場合は、コア部分である。
【0009】
鋳造により誘起されたせん断歪(shear strain)は、少なくとも外側面の材料とコア部分の材料との間の遷移区域に沿った方向に微粒子材料を流れさせる。せん断歪及びその結果としての遷移区域の近傍における材料内での運動は、材料間の有効な接着の発生を保証し、変形中の粒子の相互の擦れ合いの極めて有効な方法に関連して、結果としてのマイクロ構造は、マイクロ構造内での極めて少数の内部欠陥地点のみを有する。従って、遷移区域内での材料の一緒の結合は、強靭なマイクロ構造を有し、外側面とコア部分との間の幾何学的な係止を完全に不要にすることができる。
【0010】
鍛造は、微粒子材料及びコア部分を取り囲む囲いの組立て、真空化及び加熱に続く工程として適用される。HIP処理のような中間の工程が存在しないことが重要であると考えられる。その理由は、このような処理が長引き、材料間の拡散を生じさせることがあるからである。
【0011】
外側面は、コア部分上に直接位置することが可能である。代わりとして、合金の少なくとも1つのバッファ層(buffer layer)がコア部分と外側面との間に位置する。このようなバッファ層を使用した場合、バッファ層の合金は、コア部分の合金鋼とは異なり、且つ、外側面の高温腐食抵抗合金とは異なる組成を有する第3の合金である。
【0012】
組成の差(difference in composition)は、バッファ層の合金の分析が合金化成分において又は合金化成分の1又はそれ以上の量(重量%)において異なることを意味する。バッファ層は、異なる量の炭素又は異なる量のクロム、鉄又はニッケルのような他の成分を伴った合金鋼とすることができる。
【0013】
従って、組成という用語は、合金の分析を意味するものとして考えることができる。合金鋼のコア部分と外側面との間でのバッファ層の位置は、合金鋼がバッファ層の金属のみと直接接触し、外側層(面)の腐食抵抗合金と接触しないという効果を有する。バッファ層は、外側面からコア部分への及びコア部分から外側面への合金化成分の拡散を減少させ又は阻止するように作用する。
【0014】
好ましくは、バッファ層は、鋼、オーステナイト鋼、ニッケルベースの合金、及び不可避の不純物を除く鉄又はニッケル合金からなるグループから選択される。このような合金は、コア部分の鋼及び外側面の合金の双方と両立できるものと考えられる。
【0015】
1つの実施の形態においては、コア部分の合金鋼は、オーステナイトステンレス鋼である。ステンレス鋼は、高強度を有し、特に2ストローククロスヘッドエンジンにおいて概して極めて良好に働くものと考えられる。しかし、ステンレス鋼は、幾分高い炭素含有量を有する。バッファ層は、拡散した炭素を吸収し、そのため、ノズルの大半の部分に対してステンレス鋼を利用する利点は、高温腐食抵抗及び完成したノズルの長期間の柔軟性のための高い要求により損なわれない。
【0016】
好ましい実施の形態においては、バッファ層は、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.75mmのような、少なくとも0.3mmの厚さを有する。厚さは、バッファ層がカーバイド形成能力(この場合、層内へ拡散する炭素は、カーバイドに変換され、従って、層の炭素活性化の増大を生じさせることができない)を示す合金のものである場合でさえも、バッファ層を横切る炭素の拡散を妨げる。
【0017】
本発明は、また、内燃エンジンの燃料弁ノズルを製造する方法に関し、この場合、燃料弁ノズルは、合金鋼のコア部分を有する弁ヘッドと、燃焼室の方へ向いたノズルの表面を形成する外側面と、を有し、この外側面は、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成される。
【0018】
本発明に従えば、方法の特徴は、高温腐食抵抗合金の微粒子材料がコア部分において囲い内に保持されている間、微粒子材料が鍛造され、それによって、微粒子材料が粒子を細長い形状又は卵形状へと変形させる歪を受け、この鍛造は、少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面をコア部分に又はバッファ層及びコア部分に結合することである。
【0019】
鍛造は、HIP処理に比べて極めて迅速に生じ、従って、合金化成分は、弁部品が上昇した鍛造温度にある間に、1つの合金から隣接する合金への拡散のためのほんの短い時間を有する。上述したように、鍛造は、微粒子材料を一緒に押圧し、せん断歪は、遷移区域に平行な方向に粒子を移動させ、微粒子材料内の粒子を互いに擦り合わせ、溶合させる。移動、擦合及び溶合中、粒子上に最初に存在するいかなる酸化フィルムもが、分解し、任意の1つの粒子内部のグレン(粒)からの真新しい合金材料は、他の粒子内部のグレンからの真新しい合金材料と直接接触し、従って、グレンは、マイクロ構造レベルで有効に接続することができる。
【0020】
1つの例においては、囲い内の微粒子材料は、コア部分の円筒状の外側表面に沿って延びる領域において、実質上均一な厚さの層となって提供される。微粒子材料の層が囲い内で実質上均一の厚さのものであり、実質上均一の鍛造状態が適用された場合、結果としての外側面は、実質上均一な厚さを有する。
【0021】
本発明に係る更なる方法の特徴は、高温腐食抵抗合金の微粒子材料が予め形成された部品を造るために不活性雰囲気内で高温噴霧され、予め形成された部品及びコア部分が鍛造温度に加熱されて鍛造され、それによって、微粒子材料が細長い形状又は卵形状へと粒子を変形させるせん断歪を受け、鍛造が少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面をコア部分に又はバッファ層及びコア部分に結合することである。
【0022】
この方法により、微粒子材料は、十分に安定した形状の予め形成された部品として最初に形状づけられ、微粒子材料が単一の本体としてコア部分上に位置することを保証する。微粒子材料をコア部分上に直接噴霧することさえ可能である。微粒子材料が相互接続多孔度を有しない場合、囲いの使用を回避することが可能である。囲いを使用した場合は、鍛造の完了後に囲いを機械加工で除去しなければならない。予め造られた部品内の微粒子材料は、鍛造前に不規則な形状を有するが、鍛造は、第1に述べた方法に関連して説明したような効果を生じさせる。しかし、結果としての変形した粒子は、完全に不規則な形状を有する。
【0023】
どの方法が利用されても、鍛造前には、外側面の材料は、1×10−4バールよりも低い圧力に減圧されるのが好ましい。減圧は、鍛造すべき微粒子材料内の空洞からガスを除去し、これは材料の圧縮を容易にする。外側面の材料内に存在するガスは、典型的には不活性ガスのような酸素の無いものであるが、実践的にはできる限り少量のガスを存在させるのが、更に有利である。結果として、外側面の材料は、1×10−7バールよりも低い圧力に減圧されるのが好ましい。
【0024】
囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料は、鍛造前に、鍛造温度に加熱することができる。本発明に係る1つの鍛造方法においては、囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料は、流体を満たした室内に導入され、この場合、鍛造は、流体内の圧力を増大させることにより実行される。本発明に係る別の鍛造方法においては、囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料は、囲いの外径を減少させる工具を通して押圧されることにより、鍛造される。
【0025】
第3の合金のバッファ層を使用すべき場合、この第3の合金は、コア部分の合金鋼(第1の合金)とは異なり、且つ、外側面の高温腐食抵抗合金(第2の合金)とは異なる組成を有する。第3の合金は、好ましくは、外側面の材料がコア部分の表面に位置する前に、コア部分のその表面に適用される。代わりに、第3の合金は、外側面の材料に適用することができる。しかし、コア部分の表面は、通常、極めてよく制御された(特に量及び均一な方法での材料の散布に関してよく制御された)方法でその上に第3の合金を適用できるような規則的で円滑な表面である。
【0026】
遷移区域を横切る拡散を減少させるため、鍛造は、好ましくは10分以下で実行され、外側面を伴ったコア部分は、鍛造後直ちに冷却される。鍛造されたようなノズル及び/又は完成されたノズルへの機械加工後のノズルは、随意には、焼戻し又は焼なましのような最終の熱処理を受けることができる。熱処理は、遷移区域での合金化成分の拡散を生じさせることができ、材料間の冶金結合を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】外側面が従来のHIP処理により提供された場合のノズルから取り出され研磨されたサンプルの顕微鏡写真。
【図2】本発明に係るノズルの形をした燃料弁ノズルの断面部品図。
【図3a】本発明に係る弁ヘッドの鍛造を示す概略図。
【図3b】本発明に係る弁ヘッドの鍛造を示す概略図。
【図4】本発明に係る弁ヘッドの鍛造のために準備されたユニットを示す概略図。
【図5】本発明に係る弁ヘッドの鍛造のために準備されたユニットを示す概略図。
【図6】外側面が本発明に従って提供されたノズルから取り出され研磨されたサンプルの顕微鏡写真。
【図7】外側面が本発明に従って提供されたノズルから取り出され研磨されたサンプルの顕微鏡写真。
【図8】テストサンプルの頂面図。
【図9】テストサンプルの側面図。
【図10】外側面が従来のHIP処理により提供されたノズルから取り出され研磨されたサンプルの顕微鏡写真。
【図11a】本発明に係る弁ヘッドの別の鍛造を示す概略図。
【図11b】本発明に係る弁ヘッドの別の鍛造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る実施の形態の例を、極めて概略的な図面を参照して、以下に詳細に説明する。図1及び図10において、サンプルは、HIP圧縮(compacted)された微粒子材料から取り出され、粒子を通しての切断からの円形形状が示されている。これは、圧縮(compacting)中に粒子がその球形形状を維持することを示す。粒子が球形であることは、HIP圧縮の典型的な証(sign)であり、これは、圧縮中に適用された等静圧の結果である。
【0029】
等静圧は、粒子がプロセス中に材料内で動き回らないような方法で微粒子材料を縮ませる。これは、粒子間の相互位置が維持されるような極めて整然としたプロセスである。従来のマイクロ構造を一層明確に識別するために、写真内に現れた粒子の3つを輪郭づけるように3つの円を図10の写真に付加してある。
【0030】
図2は、各シリンダ上の2又は3個の燃料弁のような、各シリンダ上の2つ以上の燃料弁を有する2ストローククロスヘッドエンジン用の燃料弁ノズル1を概略的に示す。クロスヘッドエンジンは、典型的には、数ある理由の中でも、ノズルの寿命に対する厳格な要求を持つ。その理由は、エンジンがしばしば、硫黄を含むことさえある重燃料油で作動するからである。
【0031】
ノズルは、弁ハウジング2の端部における中央の穴を通して突出し、その環状の表面3は、鎖線で示すシリンダライナー内又はシリンダカバー内の対応する当接表面に対して押圧することができ、その結果、ノズルボア4を備えたノズルの先端は、燃焼室A内へ突出し、燃料弁が開いた場合に燃料を射出することができる。燃料弁は、弁ニードル6を備えた弁スライダ5と、図示の弁デザインでは、スライダガイド8の下端に位置する弁座7とを有する。スライダガイドは、ノズル1上の上方に向いた表面に対して押し下げられる。
【0032】
ノズルは、中央の長手方向のチャンネル9を有し、このチャンネルから、ノズルボア4がノズルの外側表面へ導かれる。ノズルは、腐食抵抗性の第1の合金の外側面10と、第2の合金のコア部分12とで形成される。外側面は、ノズル穴のまわりの領域において少なくともノズルの最外側領域を構成し、上方に延びることができ、弁ハウジング2から突出するノズルの全体部分にわたってノズルの外側表面を構成できる。
【0033】
ノズル上の外側面10は、ノズルからの材料の剥離を妨害する高温腐食抵抗材料の層である。高温腐食抵抗材料は、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである合金の微粒子種材料から形成される。燃料弁ノズルを利用する内燃エンジンは、4ストロークエンジン又は2ストローククロスヘッドエンジンとすることができる。2ストロークエンジンは、MC又はME形式のようなマン(MAN)製ディーゼルとすることができ、または、RTA−フレックス(RTA-flex)のRTA形式のようなワルトシーラ(Wartsila)製のものとすることができるか、または、三菱製のものとすることができる。このような2ストローククロスヘッドエンジンについては、ピストンの直径は250mmから1100mmまでの範囲とすることができ、各シリンダに対しては、典型的には、2又は3個の燃料弁が存在する。
【0034】
燃料弁ノズル1は、また、例えば中速又は高速形式の4ストロークエンジンのような一層小さなエンジンにおいて利用することができるが、燃料弁ノズルは、負荷が厳しく、故障を伴わない連続的な作動の要求が優勢であるような大きなエンジンである2ストロークエンジンに特に適用できる。
【0035】
1つの実施の形態においては、外側面10は、コア部分12の表面上に直接適用される。そこから図6、図7の写真に示す見本を取り出した燃料弁ノズルの別の実施の形態においては、バッファ層29は、コア部分12と外側面10との間に位置する。バッファ層29は、不可避の不純物は別として、コア部分の表面に適用された実質上純ニッケルの層とすることができる。
【0036】
ニッケル層は、コア部分上に置かれた微粒子材料として提供されるような、異なる方法で表面に適用することができる。ニッケル層は、また、バッファ層の頂部上に外側面の微粒子材料を配置する前に、別の手順で提供することができる。このような別の手順においては、コア部分は、めっき層内に配置することができ、ニッケルは、ニッケル電気めっきにより蒸着することができ、30μmから150μm、好ましくは、30μmから70μmまでの範囲の厚さ有する層を形成する。電気めっきされた層は、純ニッケルの極めて密度の高い層であるという利点を有する。
【0037】
別の実施の形態においては、バッファ層は、不可避の不純物は別として、鉄の層のものである。純粋な又はほぼ純粋な鉄又は、ニッケルのバッファ層を作る1つの利点は、バッファ層がカーバイド形成源を全く有しないか又はごく少量しか有しないことである。この場合、バッファ層内でのカーバイドの形成は抑制され、バッファ層内への炭素の拡散は、バッファ層内での炭素の活性度を増大させ、従って、層内への炭素の更なる拡散は、抵抗を受ける。炭素のみは鉄又はニッケル内で極めて小さな溶解度を有する。例として、500℃の温度でのニッケル内の炭素の溶解度は、0.1重量%よりも小さく、そのため、少量の炭素がバッファ層内で拡散した場合でさえ、バッファ層は、100%の炭素活性度を得ることができ、従って、層内への炭素の更なる拡散を実質上阻止する。
【0038】
別の例として、バッファ層29は、鋼又はオーステナイト鋼のものとすることができる。バッファ層は、鋼の板とすることができる。一層特定な例として、コア部分12は、鍛造された工具鋼(表1におけるH13工具鋼)のものであり、外側面10は、合金671のものであり、鋼の板は、合金W−表2の合金から選択されたNo.1.4332のものである。別の例として、バッファ層29は、合金UNS S31603の微粒子材料として提供することができ、外側面10は、合金671の微粒子材料のものとすることができる。コア部分12は、鍛造された鋼のものである。この場合、バッファ層の微粒子材料及び外側面の微粒子材料の双方は、鍛造中に、コア部分12上の粘着性材料に結合される。
【0039】
代替の実施の形態として、バッファ層は、ニッケルベースの合金のものとすることができる。この形式の合金は、外側面の合金との十分な結合のために特に適し、20乃至23%のクロムを有する合金IN625、19乃至23%のクロムを有する合金INCOLOY600又は10乃至25%のクロムを有する合金IN718又は約15%のクロムを有する合金NIMONIC合金105又は10乃至25%のクロムを有する合金Rene220の如き、25重量%よりも少ないクロム含有量のような、外側面よりもかなり少ないクロム含有量を有することができる。バッファ層は、また、一層多量のニッケルが炭素の拡散を阻止する傾向を有するので、一層ニッケルの豊富な合金のものとすることができる。
【0040】
微粒子材料は、当業界で周知のいくつかの異なる方法で製造することができる。たとえば、微粒子材料は、所望の組成の溶融合金の液体ジェットを不活性雰囲気の室内へ噴霧する(それによって、材料は、失活(quenched)し、極めて微細な樹枝状の構造を持つ粒子として固化する)ことにより製造することができる。微粒子材料は、また粉末と呼ぶこともできる。
【0041】
代替的に、微粒子材料は、所望の組成の溶融合金の液体ジェットを不活性雰囲気の室内へ噴霧する(この場合、噴霧された粒子のスプレーは、個体部品に衝突し、その上に蒸着するように導かれる)ことにより製造することができる。個体部品は、冷却することができ、この例では、粒子は、個体部品とは別個の予め形成された部品を作る。代わりに、粒子は、個体部品に結合することができ、コア部分12は、それとして使用することができ、そのため、予め形成された部品は、コア部分に直接接着される。
【0042】
コア部分12のための適当な材料は、工具鋼である。このような材料の例は次の表1に示す。ASTM No.は、合金のための米国規格名称である。コア部分のための他の材料は、合金のためのドイツの規格番号であるW.−No.で表1に示すステンレス鋼である。示される百分率は、重量%である。工具鋼(ASTM)は、その高強度、特にその高摩耗抵抗のために好ましい。重燃料油のための燃料射出システムに使用すべきノズルに対しては、高摩耗抵抗は、長い寿命を有するノズルを提供する。ガス燃料のための燃料システムに使用すべきノズルに対しては、摩耗抵抗のための要求は、燃料が重燃料油である場合よりも低くなることがある。
【表1】
【0043】
注:Cは炭素、Siはケイ素、Mnはマンガン、Crはクロム、Niはニッケル、Wはタングステン、Moはモリブデン、Nは窒素、Vはバナジウムである。随意のバッファ層のための適当な材料は次の表2に例示したような鋼である。W.−No.は、合金のためのドイツの規格番号である。示される百分率は、重量%である。
【表2】
【0044】
注:Cは炭素、Siはケイ素、Moはマンガン、Crはクロム、Niはニッケル、Nbはニオビウム、Moはモリブデンである。バッファ層のための別の適当な材料は、0.5−1.0%のマンガン、16.5−18%のクロム、11.5−14%のニッケル、2.5−3.0%のモリブデン、0−0.1%の窒素、0−0.025%の酸素、0−0.03%の炭素及びバランス鉄を含む合金UNS S31603である。
【0045】
バッファ層が板材料のものである場合、通常、窒素及び酸素の含有量に対するいかなる要求も存在しない。しかし、バッファ層が微粒子材料である場合は、窒素の含有量は、最大0.1%であることが好ましく、酸素の含有量は、最大0.03%であることが好ましい。
【0046】
外側面のための適当な材料は、ノズルの業界で周知であり、その例は、ステライト6、タイプ50%クロム及び50%ニッケルの合金、及び、48−52%のクロム、1.4−1.7%のニオビウム、最大0.1%の炭素、最大0.16%のチタン、最大0.2%の炭素+窒素、最大0.5%のケイ素、最大1.0%の鉄、最大0.3%のマグネシウム及びニッケルのバランスを含むタイプIN657の合金である。
【0047】
別の例は、40乃至51%のクロム、0乃至0.1%の炭素、1.0%以下のケイ素、0乃至5.0%のマンガン、1.0%以下のアルミニウム、0乃至1.5%のチタン、0乃至0.2%のジルコニウム、0.5乃至3.0%のニオビウム、最大5.0%のコバルト及び鉄の凝集含有物、最大0.2%の酸素、最大0.3%の窒素及びニッケルのバランスを含む組成を有する合金である。
【0048】
外側面として使用するのに適した他の面合金は、ロンドンの海洋技術者協会(The Institute of Marine Engineers)からの1990年に発行された「重燃料作動のためのディーゼルエンジン燃焼室材料(Diesel engine combustion chamber materials for heavy fuel operation)」という名称の本における論文「現在の弁材料での作動体験の報告(Review of operating experience with current valve materials)」に記載されている。
【0049】
鍛造は、鍛造位置に弁ヘッドのコア部分12を配置し、コア部分の表面へ(もしあるならば)バッファ層を適用することにより、準備される。外側面10の微粒子材料は、いくつかの異なる方法で提供することができる。図4に示す1つの例においては、外側面10は、コア部分12において囲い15内に保持された微粒子材料として提供され、一方、囲い及び微粒子材料を伴ったコア部分は、鍛造のための準備として鋳型部品内に配置される。コア部分上での囲い15及び微粒子材料の配置はいくつかの異なる方法で行うことができる。囲いは、コア部分のまわりで溶接シーム20を伴って溶接することができ、パイプスタッド17を具備することができ、このパイプスタッドは、囲い内へ微粒子材料を満たすために使用され、次いで、真空装置を接続するために使用され、次いで、鍛造前に除去又は閉鎖される。
【0050】
代替的に、囲い15は、微粒子材料が囲い内に置かれた後に、コア部分12のまわりで固定することができる。この固定は、溶接を使用することにより、又は他の例としては、真空ろう付けにより、行うことができる。更なる代わりとして、囲いは、コア部分のまわりで固定することができ、引き続いて、微粒子材料が囲い内に満たされ、最後に、ろう付けが遂行される。真空ろう付けを使用する場合、囲い15は、内部にネジ部を具備することができ、このネジ部は、コア部分のベース部分18上の外ネジ部と螺合する。ベース部分18は、コア部分の円筒状部分19よりも大きな直径を有する。ネジ部上にはんだを施す。次いで、真空オーブン内で加熱及び固定を生じさせることができる。別の例においては、外側面10の微粒子材料は、コア部分12上に位置する予め形成された部品として提供される。
【0051】
1つの例においては、鍛造の前に、外側面10の微粒子材料、及び、可能ならバッファ層29及び囲い15を伴ったコア部分12は、好ましくは950℃乃至1100℃の温度範囲内にある鍛造温度に加熱される。加熱された部品は、下方鋳型部分50、上方部分51及び機械的に駆動できるか又は液圧的に駆動できる駆動機構(図示せず)を有する鍛造プレス内に導入される。鍛造プレスの作動は、一方の鋳型部分を他方の鋳型部分の方へ変位させ、鋳型部分内に保持された材料は、この変位中に機械的に変形される。
【0052】
鍛造作動は、好ましくは2分以内、一層好ましくは1分以内で実行される。鍛造中、外側面10の微粒子材料は、典型的には、外側面の厚さが微粒子材料の初期の厚さの30乃至70%に減少するように、圧縮される。密度の高い予め形成された部品を使用した場合、密度は、鍛造前には、幾分高くすることができ、この例においては、外側面の厚さは、微粒子材料の初期の厚さの30乃至95%に減少させることができる。外側面の結果としての密度が少なくとも98.0%になるように、微粒子材料は、その厚さを減少させる。鍛造を使用してこの程度に圧縮されたとき、適当な密度の微粒子材料が得られる。もちろん、例えば、少なくとも99.0%の密度に、一層良好には、少なくとも99.5%の密度に、最も好ましくは、100%の密度に、微粒子材料を更に圧縮するのが一層好ましい。
【0053】
鍛造中、微粒子材料は、せん断歪を受け、このせん断歪は、粒子の位置を移動させ、材料を変形させる。歪は、材料内の粒子間の相対変位を表す変形の幾何学的な尺度である。せん断歪は、粒子の場所移動を生じさせ、粒子5の相互作用時に粒子を変形させる。せん断歪は、鍛造により影響を受ける表面に平行に作用する。鍛造は、外側面の外側表面に影響を及ぼし、せん断歪は、この表面に平行に作用する。外側層(面)の圧縮中、せん断歪は、粒子を半径方向に変位させ、粒子を互いに擦り合わせ、長方形形状、卵形状又は不規則形状のような非球形形状へと粒子を強制変形させる。鍛造が完了したとき、鍛造された弁ヘッドは、鋳型から取り出され、空冷されるか又は他の方法で冷却される。
【0054】
外側面の材料内の有効な歪の量は、少なくとも0.3であるのが好ましい。有効な歪は、2006年のプレンティス・ホール(Prentice Hall)の第5版におけるカルパクジャン及びシュミッド(Kalpakjian and Schmid)による「製造技術工学(Manufacturing engineering and technology)」又は1978年、ストックホルムの国立スエーデン技術大学(Royal Swedish Technical University)の刊行物104におけるゲルト・ヘドナー(Gert Hedner)による「Formelsamgling I Hallfasthetslare」(222−223頁)のような、基礎的な教本に開示された伝統的な方法で、計算される。一層好ましくは、有効な歪は、少なくとも0.4である。これは、外側面の粒子とコア部分又はバッファ層の材料との間の極めて有効で強固な結合を保証する。
【0055】
燃料弁ノズルを製造する第1の方法は、次の通りである。燃料弁ノズルは、合金鋼のコア部分と、燃焼室に向かうノズルの表面を形成する外側面とを有する。外側面を形成するための微粒子種材料が準備される。材料は、高温腐食抵抗合金のものである。微粒子種材料は、囲い15内に包まれ、この囲いの内部は、実質上外側面の外側表面+機械加工及び鍛造の公差の形状を有する。換言すれば、囲い15は、弁ヘッドが鍛造された後に除去されるように、準備される。高温腐食抵抗合金の微粒子材料がコア部分で囲い内に保持されている間、微粒子材料及びコア部分は、鍛造温度に加熱される。
【0056】
図3aに示すように、微粒子材料10を伴うコア部分12及び囲い15は、上方鋳型部分50に装着される。次いで、上方鋳型部分は、下方鋳型部分51の方へ部品を下方に移動させる。下方鋳型部分51は、3つの区分、即ち、鍛造したときに囲い15の外径に対応する直径を有する円筒状のボアとして形状づけられた下方区分、鍛造前の囲い15の外径よりも僅かに大きな直径を有する中間の円筒状区分、及び、上方の入口区分、を備えたボアを有する。環状の表面53は、中間の円筒状区分を下方区分に接続する。環状表面53は、円錐形である。囲い15の直径は、囲い15が円錐形の環状表面53を通過して押し下げられたときに、減少する。その理由は、円錐形の表面53が、少なくとも98.0%の密度へと粒子材料の圧縮を生じさせる鍛造力で、囲い15に作用し、コア部分12への遷移区域における微粒子材料内のせん断歪が粒子を卵形状に変形させるからである。図3bにおいては、コア部分の上方部分における肩部が下方の鋳型部分51のボアの上方の入口区分と中間の円筒状区分との間の遷移部において円錐形の環状表面54に当接するまで、上方鋳型部分50を下方に移動させることにより、鍛造工程が完了している。鍛造工程の完了後、上方鋳型部分50は、上方へ移動され、鍛造された見本を引き出す。
【0057】
代わりの鍛造方法を図11a、図11bに示す。上方鋳型部分50は、溶融ガラス又は溶融塩のような上昇した温度での流体で満たされた内部室と、下方鋳型部分の上方表面での環状の円錐形ガイド表面61とを有する下方鋳型部分60内へ、微粒子材料を伴ったコア部分及び囲い15を下方に移動させる。ガイド表面61は、円筒状ボアに関して囲いをセンタリングし、内部室内へ下方に導く。ガイド表面61は、また、コア部分の上方部分における肩部のための当接部として、従って、下方運動のためのストッパとして、作用する。囲い15が内部室内へ完全に導入されたとき、室内の圧力は、増大し、増大した圧力は、囲い15及びその中に収容された微粒子材料の鍛造を生じさせる。鍛造中、微粒子材料は、粒子を細長い形状又は卵形状に変形させるせん断歪を受ける。同時に、微粒子材料は、少なくとも98.0%の密度に圧縮され、コア部分又は、バッファ層及びコア部分に結合される。
【0058】
燃料弁ノズルを製造する更なる方法は、予め形成された部品を造るために高温腐食抵抗合金の微粒子材料を高温噴霧することである。予め形成された部品は、噴霧手順中にコア部分上に直接形成することができ、または、別個に形成して、コア部分上に配置し、鍛造温度に加熱することができる。次いで、予め形成された部品及びコア部分、及びまた、随意にはバッファ層は、ノズル部品として鍛造することができる。鍛造中、微粒子材料は、粒子を細長い形状又は卵形状に変形させるせん断歪を受け、この鍛造は、微粒子材料を少なくとも98.0%の密度に圧縮し、外側面をコア部分に又は、バッファ層及びコア部分に結合する。
【0059】
微粒子材料の高温噴霧は、溶融合金を伴った噴霧ドライヤーノズルを供給し、霧化した粒子をコア部分12上に噴霧することにより、行うことができ、この場合、粒子は、部分的に結合するが、密度の高くない状態に留まる。高温噴霧を適用された予め形成された部品を伴ったコア部分は、鍛造温度に加熱され、上述の説明で述べたような一方の鋳型部分内に配置され、次いで、密度の高い状態に鍛造される。外側面のために準備される微粒子材料は、粒子に存在する酸素の量を減少させるために、鍛造前に真空化するのが好ましい。このようにして、粒子上での酸化フィルムの形成が妨害される。
【0060】
鍛造において、外側面10は、初期の厚さに比べて約25%小さい厚さのような一層小さな厚さに圧縮される。同時に、外側面内の材料の密度は、約65%から約100%の近くまで増大する。結果としての密度は、少なくとも98.0%であるのが好ましい。上述の方法のうちの任意の方法で製造されたノズルは、燃焼室の方に向いた表面において外側面10を有する。鍛造により得られた強靭なマイクロ構造は、遷移区域において材料の強固な結合を生じさせる。本発明に従えば、この結合は試験することができる。せん断負荷による材料の引き裂きに対する強度を試験するため、ノズルから切断したサンプルに基づき、特別な試験片を準備する。試験片は、図8、図9に示すような形状を有する。試験片は、幅(w=)9.0mm、長さ(l=)40.0mm、引っ張り穴の中心間の距離(d=)25.4mm、コア部分の厚さ(t=)3.5mm及び外側面の厚さTを有する。外側面の厚さが測定され、厚さTに設定する。次いで、全体の材料を通して、いずれかの側から、少なくとも2mmの幅の溝g1、g2を切削し、長手方向におけるこのような相互分離により、層の相互結合による結果としての重なりは外側面の測定した厚さTよりも小さくなる。
【0061】
8つの例を実行し、その結果を表3に示す。得られたせん断強度が高いレベルにあることが明らかに分かる。このレベルは、固形材料のせん断強度に対応する。従って、本発明に従って得られた結合は、材料の弱化を生じさせない。
【表3】
【0062】
更なる実施の形態においては、高温腐食抵抗合金の微粒子材料は、セラミック材料ジルコニア(ZrO2)に似た隔離材料の粒子と混合される。隔離材料は、外側面の外側表面の近傍で一層大きな濃縮度を有することができ、好ましくは、外側面とコア部分との間の遷移区域には、隔離材料が存在しない。外側面の微粒子材料は、5乃至60重量%の隔離材料を含むことができるが、好ましくは、隔離材料の量は、外側面の40重量%を越えない。
【0063】
特許請求の範囲の要旨内で、上述の実施の形態の詳細を他の実施の形態として組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲の要旨内で、上述の実施の形態の詳細について変形を行うことが可能である。上述の実施の形態の任意のものは、焼戻し又は焼なましのような最終熱処理を受けることができる。たとえば、熱処理は、2乃至6時間の範囲の期間を有することができ、800乃至1050℃の範囲の温度で生じることができる。他の温度も可能である。
【0064】
燃料弁ノズルは、重要なエンジン部品であり、特定の燃料弁ノズルの特定及び可能な製造詳細の資料のための情報は、燃料弁ノズルに埋設したダグ内に記憶させることができる。好ましくは、タグは、遠隔的に読み書きできるRFID形式のものであり、更に好ましくは、追跡性を提供する個々の証明データを含む。所望なら、特定のスピンドルは、2つ以上のタグを具備することができる。タグは、熱及び他のタグ危害パラメータから十分にシールドされるような、燃料弁ノズル内の位置に位置決めできる。
【符号の説明】
【0065】
1:燃料弁ノズル、10:外側面、12:コア部分、15:囲い、29:バッファ層、50:上方鋳型部分、51:下方鋳型部分。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン、特に2ストローククロスヘッドエンジン、の燃料弁ノズルであって、
合金鋼のコア部分を備えた弁ヘッドと、燃焼室に向かう燃料弁ノズルの表面を形成し、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースの高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成された外側面と、を有し、
前記微粒子種材料が粘着性の層に結合され、
少なくともコア部分への遷移区域において、外側面の微粒子材料内の粒子が外側面及びコア部分を鍛造することにより生じるせん断歪によって卵形状又は細長い形状へと変形され、
鍛造された外側面が少なくとも98.0%の密度を有することを特徴とする燃料弁ノズル。
【請求項2】
前記コア部分と外側面との間に合金の少なくとも1つのバッファ層が位置し、該バッファ層の合金が、コア部分の合金鋼とは異なり且つ外側面の高温腐食抵抗合金とは異なる組成を有する第3の合金であることを特徴とする請求項1に記載の燃料弁ノズル。
【請求項3】
前記バッファ層が、鋼、オーステナイト鋼、ニッケルベースの合金、及び不可避な不純物は別とする鉄又はニッケルの合金からなるグループから選択されることを特徴とする請求項2に記載の燃料弁ノズル。
【請求項4】
前記コア部分の合金鋼が工具鋼であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料弁ノズル。
【請求項5】
前記バッファ層が少なくとも0.5mmの厚さを有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の燃料弁ノズル。
【請求項6】
合金鋼のコア部分、及び燃焼室に向かうノズルの表面を形成しニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースの高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成された外側面、を有する内燃エンジンの燃料弁ノズルを製造する方法であって、
前記高温腐食抵抗合金の微粒子材料がコア部分において囲い内に保持されている間、微粒子材料が鍛造され、それによって、微粒子材料が粒子を細長い形状又は卵形状へと変形させる歪を受け、前記鍛造が少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面をコア部分に又はバッファ層及びコア部分に結合することを特徴とする燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項7】
前記鍛造の前に、外側面の材料が、1×10−4バール以下、好ましくは1×10−7バール以下の圧力に減圧されることを特徴とする請求項6に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項8】
前記外側面の材料がコア部分の表面に位置する前に、コア部分の合金鋼と異なり且つ外側面の高温腐食抵抗合金と異なる組成を有する第3の合金が、コア部分の表面に適用されることを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項9】
前記鍛造が1分以内で実行され、外側面を伴ったコア部分が鍛造後に直ちに冷却されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項10】
前記囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料が、前記鍛造前に、鍛造温度に加熱されることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項11】
前記囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料が流体で満たされた室内に導入され、前記鍛造が流体の圧力を増大させることにより実行されることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項12】
前記囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料が、前記囲いの外径を減少させる工具を通過させることにより鍛造されることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項1】
内燃エンジン、特に2ストローククロスヘッドエンジン、の燃料弁ノズルであって、
合金鋼のコア部分を備えた弁ヘッドと、燃焼室に向かう燃料弁ノズルの表面を形成し、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースの高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成された外側面と、を有し、
前記微粒子種材料が粘着性の層に結合され、
少なくともコア部分への遷移区域において、外側面の微粒子材料内の粒子が外側面及びコア部分を鍛造することにより生じるせん断歪によって卵形状又は細長い形状へと変形され、
鍛造された外側面が少なくとも98.0%の密度を有することを特徴とする燃料弁ノズル。
【請求項2】
前記コア部分と外側面との間に合金の少なくとも1つのバッファ層が位置し、該バッファ層の合金が、コア部分の合金鋼とは異なり且つ外側面の高温腐食抵抗合金とは異なる組成を有する第3の合金であることを特徴とする請求項1に記載の燃料弁ノズル。
【請求項3】
前記バッファ層が、鋼、オーステナイト鋼、ニッケルベースの合金、及び不可避な不純物は別とする鉄又はニッケルの合金からなるグループから選択されることを特徴とする請求項2に記載の燃料弁ノズル。
【請求項4】
前記コア部分の合金鋼が工具鋼であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料弁ノズル。
【請求項5】
前記バッファ層が少なくとも0.5mmの厚さを有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の燃料弁ノズル。
【請求項6】
合金鋼のコア部分、及び燃焼室に向かうノズルの表面を形成しニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースの高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成された外側面、を有する内燃エンジンの燃料弁ノズルを製造する方法であって、
前記高温腐食抵抗合金の微粒子材料がコア部分において囲い内に保持されている間、微粒子材料が鍛造され、それによって、微粒子材料が粒子を細長い形状又は卵形状へと変形させる歪を受け、前記鍛造が少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面をコア部分に又はバッファ層及びコア部分に結合することを特徴とする燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項7】
前記鍛造の前に、外側面の材料が、1×10−4バール以下、好ましくは1×10−7バール以下の圧力に減圧されることを特徴とする請求項6に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項8】
前記外側面の材料がコア部分の表面に位置する前に、コア部分の合金鋼と異なり且つ外側面の高温腐食抵抗合金と異なる組成を有する第3の合金が、コア部分の表面に適用されることを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項9】
前記鍛造が1分以内で実行され、外側面を伴ったコア部分が鍛造後に直ちに冷却されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項10】
前記囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料が、前記鍛造前に、鍛造温度に加熱されることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項11】
前記囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料が流体で満たされた室内に導入され、前記鍛造が流体の圧力を増大させることにより実行されることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【請求項12】
前記囲い内に保持された高温腐食抵抗合金の微粒子材料が、前記囲いの外径を減少させる工具を通過させることにより鍛造されることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の燃料弁ノズルを製造する方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【公表番号】特表2012−510024(P2012−510024A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537848(P2011−537848)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050291
【国際公開番号】WO2011/050814
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(594140904)マン・ディーゼル・アンド・ターボ,フィリアル・アフ・マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー,ティスクランド (22)
【住所又は居所原語表記】Center Syd,161 Stamholmen,DK−2650 HVIDOVRE,Denmark
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050291
【国際公開番号】WO2011/050814
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(594140904)マン・ディーゼル・アンド・ターボ,フィリアル・アフ・マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー,ティスクランド (22)
【住所又は居所原語表記】Center Syd,161 Stamholmen,DK−2650 HVIDOVRE,Denmark
【Fターム(参考)】
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