説明

ディーゼルエンジン

【課題】燃料噴射ポンプにエンジンオイルが進入する不具合を抑制することができるディーゼルエンジンを提供する。
【解決手段】噴射ポンプ収容ケース1に燃料噴射ポンプ2が収容され、この燃料噴射ポンプ2の下方に燃料噴射カム軸3が架設され、エンジンオイル14が噴射ポンプ収容ケース1の内底部に流れ込むようにした、ディーゼルエンジンにおいて、噴射ポンプ収容ケース1の内周面にオイル切り部18が形成され、このオイル切り部18が燃料噴射カム34の周面に沿い、燃料噴射カム34の周面で燃料噴射ポンプ2側に持ち上げられようとするエンジンオイル14の一部がオイル切り部18でオイル切りされるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンに関し、詳しくは、燃料噴射ポンプにエンジンオイルが進入する不具合を抑制することができるディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンとして、本発明と同様、噴射ポンプ収容ケースに燃料噴射ポンプが収容され、この燃料噴射ポンプの下方に燃料噴射カム軸が架設され、エンジンオイルが噴射ポンプ収容ケースの内底部に流れ込むようにしたものがある。
この種のディーゼルエンジンによれば、噴射ポンプ収容ケースの内底部に流れ込んだエンジンオイルが燃料噴射カムで燃料噴射ポンプ側に持ち上げられ、燃料噴射カムと燃料噴射ポンプとの摺動部を潤滑できる利点がある。
しかし、この従来技術では、燃料噴射カムによるエンジンオイルの持ち上げを制限する手段がないため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−104592号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 燃料噴射ポンプにエンジンオイルが進入する不具合がある。
燃料噴射カムによるエンジンオイルの持ち上げを制限する手段がないため、燃料噴射カムによって大量のエンジンオイルが燃料噴射ポンプ側に持ち上げられ、燃料噴射ポンプにオイルが進入する不具合がある。
【0005】
本発明の課題は、燃料噴射ポンプにエンジンオイルが進入する不具合を抑制することができるディーゼルエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1、図2(A)(B)に例示するように、噴射ポンプ収容ケース(1)に燃料噴射ポンプ(2)が収容され、この燃料噴射ポンプ(2)の下方に燃料噴射カム軸(3)が架設され、エンジンオイル(14)が噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に流れ込むようにした、ディーゼルエンジンにおいて、
噴射ポンプ収容ケース(1)の内周面にオイル切り部(18)が形成され、このオイル切り部(18)が燃料噴射カム(34)の周面に沿い、燃料噴射カム(34)の周面で燃料噴射ポンプ(2)側に持ち上げられようとするエンジンオイル(14)の一部がオイル切り部(18)でオイル切りされるようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 燃料噴射ポンプにエンジンオイルが進入する不具合を抑制することができる。
図1、図2(A)(B)に例示するように、燃料噴射カム(34)の周面で燃料噴射ポンプ(2)側に持ち上げられようとするエンジンオイル(14)の一部がオイル切り部(18)でオイル切りされるようにしたので、燃料噴射カム(34)によって燃料噴射ポンプ(2)側に持ち上げられるエンジンオイル(14)の量が制限され、燃料噴射ポンプ(2)にエンジンオイル(14)が進入する不具合を抑制することができる。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 オイル受け渡し口とオイル切り凹部とを一連に加工することができる。
図2(B)に例示するように、隔壁(17)と連続する噴射ポンプ収容ケース(1)の周壁(1a)にオイル切り部(18)を構成するオイル切り凹部(21)が凹設され、オイル受け渡し口(64)とオイル切り凹部(21)とが一連に形成されたので、一連の型抜きや一連の切削等によって、オイル受け渡し口(64)とオイル切り凹部(21)とを一連に加工することができる。
【0009】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 フィードポンプ室へのエンジンオイルの進入が防止される。
図2(A)に例示するように、噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部とロッカアーム挿入通路(54)との境界に形成される突条(58)が横向きのオイル通過溝(59)で除肉されているので、噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部のエンジンオイル(14)がポンプ連動部収容通路(52)に進入しても、このエンジンオイル(14)は噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に直ぐに戻り、フィードポンプ室(51)へのエンジンオイル(14)の進入が防止される。
【0010】
突条(58)が横向きのオイル通過溝(59)で除肉されていない場合には、エンジンの振動により、噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部のエンジンオイル(14)がポンプ連動部収容通路(52)に進入すると、噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に戻りにくく、ポンプ連動部収容通路(52)でのエンジンオイル(14)の油面が上がり、エンジンオイル(14)がフィードポンプ室(51)に進入する不具合が発生するが、突条(58)が横向きのオイル通過溝(59)で除肉されると、ポンプ連動部収容通路(52)に進入したエンジンオイル(14)が噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に直ぐに戻り、このような不具合が生じない。横向きのオイル通過溝(59)によって、ポンプ連動部収容通路(52)から噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部へのエンジンオイル(14)の戻りが助けられるためと推定される。
【0011】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 オイル流出通路の形成と噴射ポンプ収容ケースの内底部との連通が容易に行える。
図1、図2(A)(B)に例示するように、噴射ポンプ収容ケース(1)のオイル流出通路(20)が噴射ポンプ収容ケース(1)の端壁(23)から噴射ポンプ収容ケース(1)の内底面に沿って直進するキリのキリ加工で噴射ポンプケース(1)の底壁(28)内に設けられたオイル流出孔(20a)を備え、このオイル流出孔(20a)が噴射ポンプ収容ケース(1)の底壁(28)に設けられた横向きのオイル通過溝(59)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部と連通しているので、オイル流出通路(20)の形成と噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部との連通が容易に行える。
【0012】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 燃料噴射カムのエンジンオイルの持ち上げによる燃料噴射ポンプへのエンジンオイルの進入が抑制される。
図1、図2(A)(B)に例示するように、噴射ポンプ収容ケース(1)のオイル流出通路(20)が前記オイル流出孔(20a)と横並びに並設された第2のオイル流出孔(20b)を備え、この第2のオイル流出孔(20b)が噴射ポンプ収容ケース(1)の端壁(23)から噴射ポンプ収容ケース(1)の内底面に沿って直進するキリのキリ加工で噴射ポンプケース(1)の底壁(28)内に設けられているので、エンジンが左右に傾斜した場合でも、一対のオイル流出孔(20a)(20b)のいずれか低い方から噴射ポンプ収容ケース(1)のエンジンオイル(14)を調時伝動ギヤケース(11)に流出させることができ、噴射ポンプ収容ケース(1)内にエンジンオイル(14)が大量に溜まることがない。このため、燃料噴射カム(34)がエンジンオイル(14)に深く浸かることがなく、このカムのエンジンオイル(14)の持ち上げによる燃料噴射ポンプ(2)へのエンジンオイル(14)の進入が抑制される。
【0013】
《効果》 オイル流出通路の形成と噴射ポンプ収容ケースの内底部との連通が容易に行える。
図1、図2(A)(B)に例示するように、噴射ポンプ収容ケース(1)のオイル流出通路(20)が前記オイル流出孔(20a)と横並びに並設された第2のオイル流出孔(20b)を備え、この第2のオイル流出孔(20b)が噴射ポンプ収容ケース(1)の端壁(23)から噴射ポンプ収容ケース(1)の内底面に沿って直進するキリのキリ加工で噴射ポンプケース(1)の底壁(28)内に設けられ、この第2のオイル流出孔(20b)が噴射ポンプ収容ケース(1)の底壁(28)に設けられた横向きの第2のオイル通過溝(61)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部と連通しているので、オイル流出通路(20)の形成と噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部との連通が容易に行える。
【0014】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 横向きのオイル通過溝の形成ミスを防止することができる。
図2(A)に例示するように、横向きのオイル通過溝(59)と第2のオイル通過溝(61)とが、噴射ポンプ収容ケース(1)の外側からロッカアーム挿入通路(54)内を経て噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に向けて直進するキリの一連のキリ加工で形成されたものであるため、キリ加工時には、キリの先が第2のオイル通過溝(61)のある噴射ポンプ収容ケース(1)の底壁(28)に当たるまで、キリを進入させる必要があり、キリの進入不足で横向きのオイル通過溝(59)が開通しないというオイル通過溝(59)の形成ミスを防止することができる。
【0015】
《効果》 キリ加工の工程が少なくて済む。
図2(A)に例示するように、横向きのオイル通過溝(59)と第2のオイル通過溝(61)とが、噴射ポンプ収容ケース(1)の外側からロッカアーム挿入通路(54)内を経て噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に向けて直進するキリの一連のキリ加工で形成されたものであるため、キリ加工の工程が少なくて済む。
【0016】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明は、請求項1から6のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンが転がり軸受側に下り傾斜した場合でも、燃料噴射カムが潤滑不足となるのを防止することができる。
図1に例示するように、噴射ポンプ収容ケース(1)の端部に転がり軸受(41)を介して燃料噴射カム軸(3)の端部が軸受されるようにするに当たり、転がり軸受(41)の端面に沿ってオイル遮断壁(24)が設けられ、エンジンが転がり軸受(41)側に下り傾斜した場合に、噴射ポンプ収容ケース(1)から転がり軸受(41)のレース間隙間(41a)を介して流出しようとするエンジンオイル(14)がオイル遮断壁(24)で堰き止められるようにしたので、エンジンが転がり軸受(41)側に下り傾斜した場合でも、燃料噴射カム(34)が潤滑不足となるのを防止することができる。
【0017】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 燃料噴射カムのエンジンオイルの持ち上げによる燃料噴射ポンプへのエンジンオイルの進入が抑制される。
図1に例示するように、燃料噴射カム軸(3)の端部寄りにオイル跳ね上げ手段(26)が設けられ、エンジンが前記転がり軸受(41)側に下り傾斜した場合に、噴射ポンプ収容ケース(1)の端部寄りに溜まるエンジンオイル(14)がオイル跳ね上げ手段(26)で噴射ポンプ収容ケース(1)内に跳ね上げられるようにしたので、噴射ポンプ収容ケース(1)の端部にエンジンオイル(14)が大量に溜まることがない。このため、燃料噴射カム(34)がエンジンオイル(14)に深く浸かることがなく、この燃料噴射カム(34)のエンジンオイル(14)の持ち上げによる燃料噴射ポンプ(2)へのエンジンオイル(14)の進入が抑制される。
【0018】
(請求項9に係る発明)
請求項8に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 燃料噴射カム軸へのオイル跳ね上げ手段の取り付けが容易である。
図7、8に例示するように、オイル跳ね上げ手段(26)が、燃料噴射カム軸(3)の前記端部寄りに取り付けられたサークリップ(26a)の外周縁部に複数設けられたオイル跳ね上げ羽根(26b)であるため、燃料噴射カム軸(3)へのオイル跳ね上げ手段(26)の取り付けが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンで用いる燃料噴射ポンプユニット縦断側面図である。
【図2】図1の燃料噴射ポンプユニットの断面図で、図2(A)は図1のIIA−IIA線断面図、図2(B)は図2(A)のIIB−IIB線断面図である。
【図3】図1の燃料噴射ポンプユニットで用いるメカニカルガバナの説明図で、図3(A)は縦断正面図、図3(B)はガバナレバーの枢支部の縦断正面拡大図である。
【図4】図1の燃料噴射ポンプユニットで用いる噴射ポンプ収容ケースを説明する図で、図4(A)は正面図、図4(B)は側面図である。
【図5】図1の燃料噴射ポンプユニットで用いる噴射ポンプ収容ケースの背面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの模式平面図である。
【図7】図6のエンジンが前側に下り傾斜した場合の要部の縦断側面図である。
【図8】図1の燃料噴射ポンプユニットで用いるオイル跳ね上げ手段を説明する図で、図8(A)は正面図、図8(B)は図8(A)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図8は本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンを説明する図で、この実施形態では、立形多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0021】
本発明の実施形態の概要は、次の通りである。
図6に示すように、シリンダブロック(30)の上部にシリンダヘッド(31)が取り付けられ、シリンダブロック(30)の前部に調時伝動ギヤケース(11)が取り付けられている。調時伝動ギヤケース(11)の横端部(31)はシリンダブロック(30)の横側面(32)よりも横側に張り出され、この横端部(31)の後壁(48)に燃料噴射ポンプユニット(33)が取り付けられている。
【0022】
本発明の実施形態の概要は、次の通りである。
図6に示すように、シリンダブロック(30)の上部にシリンダヘッド(31)が取り付けられ、シリンダブロック(30)の前部に調時伝動ギヤケース(11)が取り付けられている。調時伝動ギヤケース(11)の横端部(31)はシリンダブロック(30)の横側面(32)よりも横側に張り出され、この横端部(31)の後壁(48)に燃料噴射ポンプユニット(33)が取り付けられている。
【0023】
燃料噴射ポンプユニットの構成は、次の通りである。
燃料噴射ポンプユニット(33)は、噴射ポンプ収容ケース(1)とガバナ収容ケース(4)とその内部部品と燃料噴射カムギヤ(12)からなる。
図1に示すように、噴射ポンプ収容ケース(1)に燃料噴射ポンプ(2)が収容され、この燃料噴射ポンプ(2)の下方に燃料噴射カム軸(3)が架設され、噴射ポンプ収容ケース(1)の後端側にガバナ収容ケース(4)が設けられ、このガバナ収容ケース(4)内にメカニカルガバナ(5)が収容され、燃料噴射カム軸(3)の後端側にガバナウェイト(6)が取り付けられ、このガバナウェイト(6)にガバナレバー(7)のガバナ力入力部(8)が連携され、ガバナレバー(7)の出力部(9)に燃料噴射ポンプ(2)の燃料調量部(10)が連動連結され、噴射ポンプ収容ケース(1)の前端側が調時伝動ギヤケース(11)に取り付けられ、燃料噴射カム軸(3)の前端側に燃料噴射カムギヤ(12)が取り付けられ、この燃料噴射カムギヤ(12)が調時伝動ギヤケース(11)内に収容されている。
【0024】
図1に示すように、燃料噴射ポンプ(2)はプランジャを備えた列形噴射ポンプであり、燃料噴射カム軸(3)は4枚の燃料噴射カム(34)と1枚の燃料フィードカム(35)とを備えている。燃料噴射カム軸(3)の後端部は、ガバナ収容ケース(4)内に突出され、この後端部にウェイトホルダ(36)を介してガバナウェイト(6)が揺動自在に取り付けられるとともに、ガバナスリーブ(37)が前後摺動自在に取り付けられ、ガバナウェイト(6)の揺動がガバナスリーブ(37)の前後摺動を介してガバナレバー(7)のガバナ力入力部(8)に伝達されるようになっている。ガバナレバー(7)の出力部(9)には連動板(38)を介して燃料噴射ポンプ(2)の燃料調量部(10)が連動連結されている。燃料調量部(10)は燃料調量ラックである。燃料噴射カムギヤ(12)は燃料噴射カム軸(3)の前端部に外嵌固定され、クランク軸(図外)のクランクギヤ(図外)からアイドルギヤ(39)を介して駆動される。クランクギヤとアイドルギヤ(39)と燃料噴射カムギヤ(12)とを含む調時伝動ギヤトレイン(29)は、調時伝動ギヤケース(11)内に収容されている。
【0025】
図4(A)(B)に示すように、噴射ポンプ収容ケース(1)の前側の端壁(23)には、円環状の嵌入部(65)が設けられ、図1に示すように、この円環状の嵌入部(65)が調時伝動ギヤケース(11)の後壁(48)の嵌合孔(66)に嵌合され、燃料噴射ポンプユニット(33)は所定の傾きで調時伝動ギヤケース(11)の後壁(48)に固定されている。
図2に示すように、この実施形態の燃料噴射ポンプユニット(33)は燃料フィードポンプ(25)側に傾けて固定されている。
【0026】
図3に示すように、オイルパン(13)内のエンジンオイル(14)がオイルポンプ(15)の圧送力でガバナレバー(7)に供給されるようにし、図1に示すように、ガバナ収容ケース(4)と噴射ポンプ収容ケース(1)との隔壁(17)にガバナ収容ケース(4)のオイル受け渡し口(64)が設けられ、噴射ポンプ収容ケース(1)と調時伝動ギヤケース(11)との間にポンプ収容ケース(1)のオイル流出通路(20)が設けられている。
図1に示すように、ガバナレバー(7)からガバナ収容ケース(4)の内底部に落下したエンジンオイル(14)が、図2に示すガバナ収容ケース(4)のオイル受け渡し口(64)や図1に示す後側の転がり軸受(40)のレース間隙間(40a)を介してポンプ収容ケース(1)の内底部に流れ込んだ後、ポンプ収容ケース(1)のオイル流出通路(20)を介して調時伝動ギヤケース(11)内に流れ込み、オイルパン(13)内に戻るようにしている。
【0027】
図2に示すように、ガバナ収容ケース(1)のオイル受け渡し口(64)は、燃料噴射カム軸(3)を軸受けする後側の転がり軸受(40)の両側に設けられている。図1の符号(41)は燃料噴射カム軸(3)を軸受けする前側の転がり軸受である。これら前後の転がり軸受(40)(41)はいずれもボールベアリングである。
【0028】
ガバナレバーの潤滑構造は、次の通りである。
図3(A)に示すように、ガバナ収容ケース(4)内にガバナレバー枢軸(42)が架設され、ガバナレバー(7)にボス(45)が取り付けられ、ボス(45)の左右両側にブッシュ(49)が内嵌され、ボス(45)がガバナレバー枢軸(42)に外嵌され、枢支部(16)が構成されている。図3(B)に示すように、ガバナレバー枢軸(42)にはその中心軸に沿う軸内オイル通路(43)が設けられ、オイルパン(13)内のエンジンオイル(14)がオイルポンプ(15)の圧送力で軸内オイル通路(43)に供給されるようになっている。ガバナレバー枢軸(42)の軸長方向中央部は小径部(44)とされ、この小径部(44)とボス(45)との間に給油隙間(46)が設けられ、小径部(44)の径方向にオイル流出孔(47)が設けられ、オイル流出孔(47)で軸内オイル通路(43)と給油隙間(46)が連通され、軸内オイル通路(43)からオイル流出孔(47)を経て給油隙間(46)に給油が行われるようにしてある。この給油隙間(46)に供給されたエンジンオイル(14)は、ガバナレバー枢軸(42)とブッシュ(49)との隙間を通過して、ガバナ収容ケース(4)の内底部に落下する。
【0029】
ガバナレバー(7)は第1のレバー(7a)と第2のレバー(7b)とで構成され、第1のレバー(7a)はガバナレバー(7c)と連結され、第2のレバー(7b)はガバナ力を受ける。ボス(45)はガバナレバー枢軸(42)に摺動自在に枢支され、ブッシュ(49)はボス(45)に締まり嵌めで固定され、ガバナレバー枢軸(42)とは接触していない。第1のレバー(7a)はボス(45)に締まり嵌めで固定され、第2のレバー(7b)はブッシュ(49)に摺動自在に枢支されている。
【0030】
図1、図2(A)(B)に示すように、噴射ポンプ収容ケース(1)の内周面にオイル切り部(18)が形成され、このオイル切り部(18)が燃料噴射カム(34)の周面に沿い、燃料噴射カム(34)の周面で燃料噴射ポンプ(2)側に持ち上げられようとするエンジンオイル(14)の一部がオイル切り部(18)でオイル切りされるようにしている。
【0031】
図2(A)(B)に示すように、噴射ポンプ収容ケース(1)に隣接してオイル溜め室(19)が設けられ、オイル溜め室(19)と噴射ポンプ収容ケース(1)との隔壁(17)にオイル受け渡し口(64)が設けられ、オイル溜め室(19)に溜まったエンジンオイル(14)がオイル受け渡し口(64)から噴射ポンプ収容ケース(1)に受け渡されるように構成するに当たり、隔壁(17)と連続する噴射ポンプ収容ケース(1)の周壁(1a)にオイル切り部(18)を構成するオイル切り凹部(21)が凹設され、オイル受け渡し口(64)とオイル切り凹部(21)とが一連に形成されている。オイル溜め室(19)はガバナ収容ケース(4)で構成されている。
オイル受け渡し口(64)とオイル切り凹部(21)とは、鋳造時の一連の型抜きによって一連に形成されている。
【0032】
図2に示すように、燃料噴射カム軸(3)の架設方向と平行な向きに見て、噴射ポンプ収容ケース(1)の横に燃料噴射ポンプ(2)に燃料を供給する燃料フィードポンプ(25)が配置され、この燃料フィードポンプ(25)のフィードポンプ室(51)の下方にポンプ連動部収容通路(52)が配置され、ポンプ連動部収容通路(52)の横にロッカアーム取り付け通路(53)が配置され、ロッカアーム取り付け通路(53)の横に噴射ポンプ収容ケース(1)のロッカアーム挿入通路(54)が配置され、ポンプ連動部収容通路(52)がロッカアーム取り付け通路(53)と噴射ポンプ収容ケース(1)のロッカアーム挿入通路(54)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部と連通されている。
【0033】
図2に示すように、ロッカアーム取り付け通路(53)に取り付けられたロッカアーム(55)がロッカアーム挿入通路(54)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)内に挿入され、燃料噴射カム軸(3)の燃料フィードカム(35)からロッカアーム(55)とポンプ連動部収容通路(52)内のポンプ連動部(56)を介してフィードポンプ室(51)のポンプ作動部(57)が駆動される。
このようにするに当たり、噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部とロッカアーム挿入通路(54)との境界に形成される突条(58)が横向きのオイル通過溝(59)で除肉されている。
【0034】
横向きのオイル通過溝(59)と第2のオイル通過溝(61)とは、噴射ポンプ収容ケース(1)の外側からロッカアーム挿入通路(54)内を経て噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に向けて直進するキリの一連のキリ加工で形成されたものである。
【0035】
図1、図2(A)(B)に示すように、噴射ポンプ収容ケース(1)のオイル流出通路(20)が噴射ポンプ収容ケース(1)の端壁(23)から噴射ポンプ収容ケース(1)の内底面に沿って直進するキリのキリ加工で噴射ポンプケース(1)の底壁(28)内に設けられたオイル流出孔(20a)を備え、このオイル流出孔(20a)が噴射ポンプ収容ケース(1)の底壁(28)に設けられた横向きのオイル通過溝(59)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部と連通している。
【0036】
図1、図2(A)(B)に示すように、噴射ポンプ収容ケース(1)のオイル流出通路(20)が前記オイル流出孔(20a)と横並びに並設された第2のオイル流出孔(20b)を備え、この第2のオイル流出孔(20b)が噴射ポンプ収容ケース(1)の端壁(23)から噴射ポンプ収容ケース(1)の内底面に沿って直進するキリのキリ加工で噴射ポンプケース(1)の底壁(28)内に設けられ、この第2のオイル流出孔(20b)が噴射ポンプ収容ケース(1)の底壁(28)に設けられた横向きの第2のオイル通過溝(61)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部と連通している。
【0037】
図2(A)に示すように、横向きのオイル通過溝(59)と第2のオイル通過溝(61)とは、噴射ポンプ収容ケース(1)の外側からロッカアーム挿入通路(54)内を経て噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に向けて直進するキリの一連のキリ加工で形成されたものである。
【0038】
図1に示すように、噴射ポンプ収容ケース(1)の端部に転がり軸受(41)を介して燃料噴射カム軸(3)の端部が軸受されるようにするに当たり、転がり軸受(41)の端面に沿ってオイル遮断壁(24)が設けられ、エンジンが転がり軸受(41)側、すなわち調時伝動ギヤケース(11)側に下り傾斜した場合に、噴射ポンプ収容ケース(1)から転がり軸受(41)のレース間隙間(41a)を介して調時伝動ギヤケース(11)に流出しようとするエンジンオイル(14)がオイル遮断壁(24)で堰き止められるようにしている。
【0039】
図1に示すように、燃料噴射カム軸(3)の端部寄りにオイル跳ね上げ手段(26)が設けられ、エンジンが転がり軸受(41)側、すなわち調時伝動ギヤケース(11)側に下り傾斜した場合に、噴射ポンプ収容ケース(1)の端部寄りに溜まるエンジンオイル(14)がオイル跳ね上げ手段(26)で噴射ポンプ収容ケース(1)内に跳ね上げられるようにしている。
図7、8に示すように、オイル跳ね上げ手段(26)は、燃料噴射カム軸(3)の前記端部に取り付けられたサークリップ(26a)の外周縁部に複数設けられたオイル跳ね上げ羽根(26b)である。
【符号の説明】
【0040】
(1) 噴射ポンプ収容ケース
(2) 燃料噴射ポンプ
(3) 燃料噴射カム軸
(14) エンジンオイル
(17) 隔壁
(18) オイル切り部
(19) オイル溜め室
(20) オイル流出通路
(20a) オイル流出孔
(20b) 第2のオイル流出孔
(21) オイル切り溝
(23) 端壁
(24) オイル遮断壁
(25) 燃料フィードポンプ
(26) オイル跳ね上げ手段
(26a) サークリップ
(26b) オイル跳ね上げ羽根
(34) 燃料噴射カム
(35) 燃料フィードカム
(41) 転がり軸受
(41a) レース間隙間
(51) フィードポンプ室
(52) ポンプ連動部収容通路
(53) ロッカアーム取り付け通路
(54) ロッカアーム挿入通路
(55) ロッカアーム
(56) ポンプ連動部
(57) ポンプ作動部
(58) 突条
(59) 横向きのオイル通過溝
(61) 横向きの第2のオイル通過溝
(64) オイル受け渡し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ポンプ収容ケース(1)に燃料噴射ポンプ(2)が収容され、この燃料噴射ポンプ(2)の下方に燃料噴射カム軸(3)が架設され、エンジンオイル(14)が噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に流れ込むようにした、ディーゼルエンジンにおいて、
噴射ポンプ収容ケース(1)の内周面にオイル切り部(18)が形成され、このオイル切り部(18)が燃料噴射カム(34)の周面に沿い、燃料噴射カム(34)の周面で燃料噴射ポンプ(2)側に持ち上げられようとするエンジンオイル(14)の一部がオイル切り部(18)でオイル切りされるようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
噴射ポンプ収容ケース(1)に隣接してオイル溜め室(19)が設けられ、オイル溜め室(19)と噴射ポンプ収容ケース(1)との隔壁(17)にオイル受け渡し口(64)が設けられ、オイル溜め室(19)に溜まったエンジンオイル(14)がオイル受け渡し口(64)から噴射ポンプ収容ケース(1)に受け渡されるように構成するに当たり、
隔壁(17)と連続する噴射ポンプ収容ケース(1)の周壁(1a)にオイル切り部(18)を構成するオイル切り凹部(21)が凹設され、オイル受け渡し口(64)とオイル切り凹部(21)とが一連に形成された、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
燃料噴射カム軸(3)の架設方向と平行な向きに見て、噴射ポンプ収容ケース(1)の横に燃料噴射ポンプ(2)に燃料を供給する燃料フィードポンプ(25)が配置され、この燃料フィードポンプ(25)のフィードポンプ室(51)の下方にポンプ連動部収容通路(52)が配置され、ポンプ連動部収容通路(52)の横にロッカアーム取り付け通路(53)が配置され、ロッカアーム取り付け通路(53)の横に噴射ポンプ収容ケース(1)のロッカアーム挿入通路(54)が配置され、ポンプ連動部収容通路(52)がロッカアーム取り付け通路(53)と噴射ポンプ収容ケース(1)のロッカアーム挿入通路(54)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部と連通され、
ロッカアーム取り付け通路(53)に取り付けられたロッカアーム(55)がロッカアーム挿入通路(54)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)内に挿入され、燃料噴射カム軸(3)の燃料フィードカム(35)からロッカアーム(55)とポンプ連動部収容通路(52)内のポンプ連動部(56)を介してフィードポンプ室(51)のポンプ作動部(57)が駆動されるに当たり、
噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部とロッカアーム挿入通路(54)との境界に形成される突条(58)が横向きのオイル通過溝(59)で除肉されている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
噴射ポンプ収容ケース(1)のオイル流出通路(20)が噴射ポンプ収容ケース(1)の端壁(23)から噴射ポンプ収容ケース(1)の内底面に沿って直進するキリのキリ加工で噴射ポンプケース(1)の底壁(28)内に設けられたオイル流出孔(20a)を備え、このオイル流出孔(20a)が噴射ポンプ収容ケース(1)の底壁(28)に設けられた横向きのオイル通過溝(59)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部と連通している、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項5】
請求項4に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
噴射ポンプ収容ケース(1)のオイル流出通路(20)が前記オイル流出孔(20a)と横並びに並設された第2のオイル流出孔(20b)を備え、この第2のオイル流出孔(20b)が噴射ポンプ収容ケース(1)の端壁(23)から噴射ポンプ収容ケース(1)の内底面に沿って直進するキリのキリ加工で噴射ポンプケース(1)の底壁(28)内に設けられ、
この第2のオイル流出孔(20b)が噴射ポンプ収容ケース(1)の底壁(28)に設けられた横向きの第2のオイル通過溝(61)を介して噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部と連通している、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項6】
請求項5に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
横向きのオイル通過溝(59)と第2のオイル通過溝(61)とは、噴射ポンプ収容ケース(1)の外側からロッカアーム挿入通路(54)内を経て噴射ポンプ収容ケース(1)の内底部に向けて直進するキリの一連のキリ加工で形成されたものである、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載されたディーゼルエンジンにおいて、
噴射ポンプ収容ケース(1)の端部に転がり軸受(41)を介して燃料噴射カム軸(3)の端部が軸受されるようにするに当たり、
転がり軸受(41)の端面に沿ってオイル遮断壁(24)が設けられ、エンジンが上記転がり軸受(41)側に下り傾斜した場合に、噴射ポンプ収容ケース(1)から転がり軸受(41)のレース間隙間(41a)を介して流出しようとするエンジンオイル(14)がオイル遮断壁(24)で堰き止められるようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項8】
請求項7に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
燃料噴射カム軸(3)の端部寄りにオイル跳ね上げ手段(26)が設けられ、エンジンが前記転がり軸受(41)側に下り傾斜した場合に、噴射ポンプ収容ケース(1)の端部寄りに溜まるエンジンオイル(14)がオイル跳ね上げ手段(26)で噴射ポンプ収容ケース(1)内に跳ね上げられるようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項9】
請求項8に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
オイル跳ね上げ手段(26)が、燃料噴射カム軸(3)の端部に取り付けられたサークリップ(26a)の外周縁部に複数設けられたオイル跳ね上げ羽根(26b)である、ことを特徴とするディーゼルエンジン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−185130(P2011−185130A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50053(P2010−50053)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】