説明

デジタル信号入力装置

【課題】動作が安定するとともに、後段に接続されるCMOSのLSIの安定な動作を実現するデジタル信号入力装置を提供する。
【解決手段】外部から入力された信号を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された信号を波形整形する波形整形部と、オフセット電圧を保持するコンデンサと、前記波形整形部の出力をハイレベル状態に固定するように、前記コンデンサの充電と放電を制御して前記オフセット電圧を決定する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号を入力する装置に関し、特に、入力にオフセット電圧を設けた波形整形回路を用いたデジタル信号入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル信号入力装置として、CMOSインバーターを用いた飽和増幅器と、それに縦続接続され波形整形機能を有するCMOSインバーターを持つものが知られている。
【0003】
特許文献1では、入力された信号を増幅させるとともに、波形整形して出力する音声駆動制御装置が開示されている。
【0004】
このように、従来のデジタル信号入力装置は、飽和増幅機能と波形整形機能を使うことにより、振幅の小さいデジタル信号を増幅、波形整形して後段に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3062172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のデジタル信号入力装置は、入力信号が無い場合には飽和増幅器の出力ならびに波形整形器の出力が共にCMOSインバーターのしきい値電圧付近に固定されるため、(1)デジタル入力信号回路全体が大きな増幅度を持つアナログ増幅器となり、回路が不安定で発振しやすくなる、(2)後段に用いられることが多いCMOSのLSIの入力がデジタル的に不定となり、外来のノイズに対して誤動作しやすくなるとともに、入力部に貫通電流が流れる危険性が生じるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解決すべく、入力信号が無い場合にも安定で、後段に用いられることの多いCMOSのLSIに対して安定した信号を供給できるデジタル信号入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のデジタル信号入力装置は、波形整形器の入力に加えるためのオフセット電圧を保持するためのコンデンサと、前記コンデンサに充電と放電を行う手段を設けたことを特徴とするデジタル信号入力装置としたものである。
【0009】
このような構成をとることにより、デジタル信号入力回路自体が安定であるとともに、後段のCMOSのLSIの安定な動作を実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、入力信号が無い場合でも自ら安定で、後段のMOSのLSIの安定な動作を実現する信号を供給することのできる、デジタル信号入力装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1にかかる音楽再生装置のブロック図
【図2】実施の形態1にかかるデジタル信号入力装置のブロック図
【図3】実施の形態2にかかるデジタル信号入力装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態として、デジタル入力信号装置を利用する音楽再生装置を挙げて、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1に、本発明が使用されている音楽再生装置のブロック図を示す。
【0013】
音楽再生装置100は、デジタル信号入力装置101と、LSI102と、DAコンバーター103と、増幅器104と、スピーカー105で構成される。
【0014】
デジタル信号入力装置101は、音楽再生装置100に接続される他の機器から供給されるデジタル信号を受ける。
【0015】
LSI102は、デジタル信号入力装置2から出力されたデジタル信号に対してデジタル信号処理並びに復号処理を行う。
【0016】
DAコンバーター103は、LSI102で処理されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0017】
増幅器104は、DAコンバーター103で変換されたアナログ信号を増幅する。
【0018】
スピーカー105は、増幅器104で増幅されたアナログ信号を音声に変換して出力する。
【0019】
次に、音楽再生装置100の動作を説明する。
【0020】
音楽再生装置100に接続される外部機器から供給されたデジタル信号は、デジタル信号入力装置101で増幅と波形整形され、LSI102に供給される。LSI102は、入力された信号に必要な処理と復号を行い、DAコンバーター103に供給する。DAコンバーター103は、入力されたデジタル信号をアナログ音楽信号に変換し、増幅器104に供給する。増幅器104は、入力されたアナログ音楽信号を増幅し、スピーカー105に供給する。スピーカー105は、入力されたアナログ音楽信号を再生する。
【0021】
図2に、実施の形態1にかかるデジタル信号入力装置のブロック図を示す。
【0022】
デジタル信号入力装置2は、第1のコンデンサ201と、第1の抵抗202と、第2のコンデンサ203と、第2の抵抗204と、第1のCMOSインバーター205と、第3のコンデンサ207と、第3の抵抗208と、ダイオード209と、第2のCMOSインバーター210で構成される。ダイオード209は通常第2のCMOSインバーター210の内部に保護用として設けられている。
【0023】
第1のコンデンサ201の静電容量はCinF、第1の抵抗202の抵抗値はRinΩ、第1のコンデンサ203の静電容量はC1F、第2の抵抗204の抵抗値はR1Ω、第2のコンデンサ207の静電容量はC2F、第3の抵抗208の抵抗値はR2Ωである。
【0024】
第1のコンデンサ201と第1の抵抗202は、音楽再生装置1に接続される外部機器から供給されたデジタル信号の直流成分を除去するとともに、入力インピーダンスを設定する。
【0025】
第2のコンデンサ203と第2の抵抗204と第1のCMOSインバーター205は、飽和増幅器206として動作し、デジタル信号を飽和増幅する。
【0026】
第3のコンデンサ207はDC電圧を保持する。
【0027】
第3の抵抗208とダイオード209は、第3のコンデンサ207にDC電圧を充電するとともに、放電する。
【0028】
第2のCMOSインバーター210は、飽和増幅されたデジタル信号を波形整形する。
【0029】
以上のように構成された音楽再生装置におけるデジタル入力信号装置について、以下にその動作を説明する。
【0030】
外部機器から供給されたデジタル信号は第1の入力コンデンサ201で直流成分を除かれる。直流成分が除かれたデジタル信号は、第1の抵抗202で規定の入力インピーダンスで接地され、第2のコンデンサ203と第2の抵抗204を持つ第1のCMOSインバーター205による飽和増幅器206に供給される。飽和増幅器206は、第1のCMOSインバーターのしきい値電圧を基準電圧として、入力されたデジタル信号の高周波成分を飽和増幅する。従って、飽和増幅器206の出力信号は、第1のCMOSインバーター205のしきい値電圧を基準としてデジタル入力信号の振幅を上側と下側の飽和電圧まで増幅される。第3のコンデンサ207は、第3の抵抗208による充電時定数C2R2がデジタル入力信号の周波数の周期よりも大きい場合には、第3の抵抗を介して第1のCMOSインバーター205による飽和増幅器の出力電圧の平均電圧に充電しようとする。しかし第1のCMOSインバーター205による飽和増幅器の出力が下側の飽和電圧になった時には、第2のCMOSインバーター210の入力電圧がグランド電圧より大きく下がろうとするために、第2のCMOSインバーター210のダイオード209を介して瞬時にダイオード209の順方向電圧まで放電する。即ち、第3の抵抗208による充電時定数C2R2がデジタル入力信号の周波数の周期よりも大きい場合には、第3のコンデンサ207はダイオード209の順方向電圧が保持される。従って、第2のCMOSインバーターによる波形整形器には、第1のCMOSインバーターによる飽和増幅器の出力からダイオード209の順方向電圧を引いた電圧が加わることになる。この場合、第1のCMOSインバーターによる飽和増幅器の出力は、十分飽和しているので、第2のCMOSインバーターによる波形整形器の出力は、第1のCMOSインバーターによる飽和増幅器の出力と同じになる。
【0031】
もしデジタル信号入力装置の入力が無くなった場合、第1のCMOSインバーターによる飽和増幅器の出力は、第1のCMOSインバーターのしきい値電圧に固定される。その場合、第3のコンデンサの充電電圧は、ダイオード209の順方向電圧から第3の抵抗を介して第1のCMOSインバーターのしきい値電圧に徐々に充電される。このとき、第2のCMOSインバーターによる波形整形器の入力電圧は、第1のCMOSインバーターのしきい値電圧からダイオード209の順方向電圧を引いた電圧から、0に向かって下がってゆくことになる。
【0032】
通常、第1のCMOSインバーター205と第2のCMOSインバーター210は、同じ半導体スライス上に作られ、同一パッケージ内に封止されているので、第1のCMOSインバーター205と第2のCMOSインバーター210のしきい値電圧は、ほぼ等しい。この場合、第2のCMOSインバーター210の入力電圧は、しきい値よりも確実に低くなるので、出力電圧は確実にHレベルが確保される。
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2にかかるデジタル信号入力装置のブロック図を示す。実施の形態2のデジタル信号入力装置は、実施の形態1のデジタル信号入力装置に、第3のコンデンサ207にDC電圧を充電するとともに放電することが可能なR3Ωの抵抗値を持つ第4の抵抗301を追加したものである。それ以外の構成は、実施の形態1と同様であるため、各構成の説明は省略する。
【0033】
以上のように構成されたデジタル入力信号装置について、以下にその動作を説明する。
【0034】
外部機器から供給されたデジタル信号は第1の入力コンデンサ201で直流成分を除かれる。直流成分が除かれたデジタル信号は、第1の抵抗202で規定の入力インピーダンスで接地され、第2の入力コンデンサ203と第2の抵抗204を持つ第1のCMOSインバーター205による飽和増幅器206に供給される。飽和増幅器206は、第1のCMOSインバーター205のしきい値電圧を基準電圧として、入力されたデジタル信号の高周波成分を飽和増幅する。従って、飽和増幅器206の出力信号は第1のCMOSインバーター205しきい値電圧を基準としてデジタル入力信号の振幅を上側と下側の飽和電圧まで増幅される。第3の抵抗208と第4の抵抗301による充電と放電の時定数C2×(R2とR3の並列抵抗値)がデジタル入力信号の周波数の周期よりも大きい場合には、第3のコンデンサ207には第3の抵抗208と第4の抵抗301を介して、第1のCMOSインバーター205による飽和増幅器206の出力電圧の平均電圧の抵抗分圧比に応じた電圧が充電される。
【0035】
従って第2のCMOSインバーター210による波形整形器には第1のCMOSインバーター205による飽和増幅器206の出力から、第3のコンデンサ207に充電された電圧を引いた電圧が加わることになる。この場合、第1のCMOSインバーター205による飽和増幅器206の出力は、十分飽和しているので、第2のCMOSインバーター210による波形整形器の出力は、第1のCMOSインバーター205による飽和増幅器206の出力と同じになる。
【0036】
もしデジタル信号入力装置の入力が無くなった場合、第1のCMOSインバーター205による飽和増幅器206の出力は、第1のCMOSインバーター205のしきい値電圧に固定される。その場合、第3のコンデンサC207の充電電圧は、第3の抵抗208と第4の抵抗301を介して、第1のCMOSインバーター205のしきい値電圧の抵抗分圧比に応じた電圧に徐々に変化する。通常CMOSインバーターのしきい値電圧は出力電圧のほぼ中心と考えて良いので、信号が有る場合と無くなった場合で第3のコンデンサ207に保持される電圧はほぼ等しい。
【0037】
通常、第1のCMOSインバーター205と第2のCMOSインバーター210は、同じ半導体スライス上に作られ、同一パッケージ内に封止されているので、第1のCMOSインバーター205と第2のCMOSインバーター210のしきい値電圧は、ほぼ等しい。この場合、第2のCMOSインバーター210の入力電圧は、しきい値電圧よりも第2のCMOSインバーター210に保持された電圧分だけ確実に低くなるので、出力電圧は確実にHレベルが確保されることになる。
【0038】
なお、実施の形態1において、第3のコンデンサ207の放電用として第2のCMOSインバーターの内部保護抵抗を用いたが、CMOSインバーターに内部保護抵抗が無い場合や内部保護抵抗を使えない場合は、外部にあらたなダイオードを設けることで、同等の効果が得られる。この場合は、ダイオードの正方向電圧の異なるデバイスを用いれば、コンデンサC2に保持される電圧を変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、デジタル信号を入力する装置に関し、特に、入力にオフセット電圧を設けた波形整形回路を用いたデジタル信号入力装置に関するものであって、動作が安定するとともに、後段に接続されるCMOSのLSIの安定な動作を実現するデジタル信号入力装置を提供できる。そのため、本発明は、このようなデジタル信号入力装置で構成される音声再生装置に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
100 音楽再生装置
101 デジタル信号入力装置
102 LSI
103 DAコンバーター
104 増幅器
105 スピーカ
201 第1の入力コンデンサ
202 →第1の抵抗
203 第2のコンデンサ
204 第2の抵抗
205 第1のCMOSインバーター
206 飽和増幅器
207 第3のコンデンサ
208 第3の抵抗
209 ダイオード
210 第2のCMOSインバーター
301 第4の抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力された信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部で増幅された信号を波形整形する波形整形部と、
オフセット電圧を保持するコンデンサと、
前記波形整形部の出力をハイレベル状態に固定するように、前記コンデンサの充電と放電を制御して前記オフセット電圧を決定する制御部とを備えることを特徴とするデジタル信号入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−193095(P2011−193095A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55734(P2010−55734)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】