説明

デジタル地図の位置情報伝達方法

【課題】受信装置側における位置特定の誤りを少なくするとともに効率的な位置特定を可能とし、かつ送信装置と受信装置間の効率的な位置情報の送受信を可能とする。
【解決手段】位置情報送受信装置10が、第1のデジタル地図上の対象道路区間を含む座標列データを、第2のデジタル地図上で対象道路区間を特定する位置情報送受信装置20に送信する。位置情報送受信装置10は、座標列データを生成する際、対象道路区間を近隣の交差点まで延伸し、交差点において少なくとも二つの道路が交差する角度である接続角度に応じて、対象道路区間が延伸される距離に相当する延伸距離を変動させる。一方、位置情報送受信装置20は、座標列データを受信し、受信した座標列データ中に、交差点において少なくとも二つの道路が交差する角度である接続角度が含まれている場合、接続角度に応じて、第2のデジタル地図上における対応する交差点を検索する範囲を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル地図上の位置情報を伝達する方法に関し、送信装置側のデジタル地図上の位置を受信装置側のデジタル地図上に正確に伝えるための技術(ロケーションリファレンス技術)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション車載機を搭載する車両が急激に増加している。ナビゲーション車載機は、デジタル地図データベースを保持し、交通情報センターなどから提供される渋滞情報や事故情報に基づいて、渋滞や事故位置を地図上に表示し、また、それらの情報を条件に加えて経路探索を実施する。
【0003】
市販されているデジタル地図データベースには多くの種類があり、基図及びデジタイズ技術、システム実装時のデータ変換処理等の違いから、各々の地図データには誤差が含まれており、その誤差は各社のデジタル地図データベースによって違っている。そのため、交通情報として、例えば事故位置を伝える場合、ある地図データ上で登録した事故位置の経度・緯度データを単独で送信すると、ナビゲーション車載機では、保持しているデジタル地図データベースが送信側と異なる場合、前記の地図の誤差によって、位置がズレたり、異なる道路上の位置を事故位置として識別してしまう虞がある。
【0004】
上記に鑑み、従来はデジタル地図上の道路網に存在する交差点などのノード、ノード間の道路区間を表すリンクに、それぞれノード番号、リンク番号を定義してデジタル地図の位置情報を伝達する方法が提示されていた。しかしこのような方法は、道路の新設や変更に伴ってデジタル地図の更新に多大な労力が必要となるため、特許文献1や特許文献2で開示されている方式が提案されている。
【0005】
上記文献の方式では、位置情報伝達時に、送信装置が渋滞や事故などの事象が発生した事象位置を含む所定長の道路区間の座標列を表す道路形状データと、道路形状データで表した道路区間内の相対的な位置により事象位置を表す事象位置データとを受信側に伝達する。道路形状データと事象位置データを受信した受信した受信装置は、道路形状データを用いて位置特定(形状マッチング)を行い、デジタル地図上での道路区間を特定し、事象位置データを用いて道路区間内の事象発生位置を特定する。
【0006】
上記文献の方式では、受信装置のマッチング精度を高めることが重要な課題となる。そのため、特許文献3では、送信装置が、道路形状データに対応したベクトル形状を受信装置に送信する際、ベクトル形状の端点として、受信装置側における位置特定の際に複数の候補点が発生しにくい箇所を選定し、当該箇所に端点を持つベクトル形状を受信装置に伝達するようにしている。
【特許文献1】特開2001−041757号公報
【特許文献2】特開2001−066146号公報
【特許文献3】特開2002−328032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記文献においては、例えば、ベクトル形状の始点または終点が交差点に近いとき、送信装置側において、予め当該交差点までベクトル形状の始点または終点が延伸される。当該ベクトル形状を受信した受信装置は、デジタル地図上で位置特定を行うが、予め交差点が端点として指定されているので、位置特定の誤り(誤マッチング)が生じにくい。
【0008】
一般的に、送信装置と受信装置各々のデジタル地図での交差点の位置のずれはそれ程大きくない。しかしながら、ジャンクションやインターチェンジ、立体交差における連絡道路などのように、なだらかに接続する接続点(浅い接続角度をもって接続した道路の接続点)については、送信装置と受信装置各々のデジタル地図間で、接続位置が所定の距離以上をもってずれている場合がある。
【0009】
送信装置が上記のような接続点をベクトル形状の端点として選んだ場合、このような接続点の位置は、送信装置のデジタル地図と受信装置のデジタル地図で大きくずれている可能性がある。このような場合、受信装置が、ベクトル形状の端点に対応したデジタル地図上の地点をうまく発見することができない可能性がある。
【0010】
例えば図11に示すように、送信装置が有する(a)のデジタル地図画像と、受信装置が有する(b)のデジタル地図画像は異なるものであり、これら二つのデジタル地図画像を重ね合わせた重畳画像を(c)に示す。(c)の重畳画像では、(a)のデジタル地図は実線で示され、(b)のデジタル地図は点線で示されている。(a)のデジタル地図画像上に存在する領域Bと、(b)のデジタル地図画像上に存在する領域B’は元々同じ位置に対応し、(c)の重畳画像上でもこれらの領域の位置は大きくずれてはいない。
【0011】
しかしながら、(a)のデジタル地図画像上に存在する領域Aと、(b)のデジタル地図画像上に存在する領域A’は元々同じ位置に対応しているにも拘らず、(c)の重畳画像上ではこれらの領域の位置は大きくずれている。従って、送信装置が(a)のデジタル地図上の領域Aに存在する接続点を道路区間の端点に選んだ場合、受信装置が(b)のデジタル地図上の領域A’に存在する接続点をうまく発見することができない可能性がある。
【0012】
本発明は、上述した問題を解決し、受信装置側の位置特定の精度をさらに高めることができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、送信装置が、第1のデジタル地図上の対象道路区間を含む座標列データを、第2のデジタル地図上で前記対象道路区間を特定する受信装置に送信する位置情報送信方法であって、前記送信装置は、前記座標列データの生成過程において、前記対象道路区間を近隣の交差点まで延伸する際、前記交差点において少なくとも二つの道路が交差する角度である接続角度に応じて、前記対象道路区間が延伸される距離に相当する延伸距離を変動させる、位置情報送信方法である。
【0014】
上記構成により、送信装置は、なだらかな接続角度の交差点周辺において受信装置側で誤った位置特定が生じにくい座標列データを送信することが可能となるとともに、接続角度に応じて延伸距離を変更するため、不要な(受信装置側の位置特定の向上に寄与しない)延伸は防ぐ事ができ、送信データ量を最低限とすることが可能となり、位置情報の送信に際して送信装置、受信装置の負担を軽減することが可能となる。
【0015】
また、本発明は、送信装置が、第1のデジタル地図上の対象道路区間を含む座標列データを、第2のデジタル地図上で前記対象道路区間を特定する受信装置に送信する位置情報送信方法であって、前記送信装置は、前記座標列データを生成する際、前記座標列データの前記対象道路区間中に設定された参照点に交差する道路の接続角度を付与して送信する、位置情報送信方法である。
【0016】
上記構成により、送信装置は、受信装置に対し、参照点を検索すべきサーチエリアの大きさを暗示的に示すことができ、受信装置では参照点の誤判定を防ぐことが可能となる。
【0017】
更に本発明は、受信装置が、第1のデジタル地図上の対象道路区間を示す座標列データを受信して、第2のデジタル地図上で前記対象道路区間を特定する位置情報受信方法であって、前記受信装置は、前記座標列データを受信し、受信した前記座標列データ中に、交差点において交差する道路との接続角度情報が含まれている場合、前記接続角度情報の接続角度に応じて、前記第2のデジタル地図上における対応する交差点を検索する範囲を変更する、位置情報受信方法である。
【0018】
上記構成により、受信装置における位置特定の誤りを少なくすることが可能となるとともに、効率的に交差点を検索することが可能となる。
【0019】
前記受信装置は、前記交差点を検索する範囲を、前記対象道路区間の長手方向に沿って拡大することが好ましい。
【0020】
さらに、対象道路区間の中間で交差点位置を明示したい(交差点の位置を特定したい)場合、特定した道路区間の線分上で該当交差点を検索することになるが、交差道路の接続角度によって検索範囲を変更するため、位置が離れている可能性が高いなだらかな接続角度の交差点も確実に見つけ出すことができる一方、位置のズレが総じて小さい直角に近い交差点では、検索範囲を絞り込み、無駄な検索を避ける事ができる。
【0021】
上記構成により、受信装置がより効率的に交差点を検索することが可能となる。
【0022】
上記位置情報送信方法を用いて前記座標列データを送信する送信装置、上記位置情報受信方法を用いて、前記第2のデジタル地図上で対象道路区間を特定する受信装置も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明によれば、受信装置において特に交差点周辺での位置特定の誤りを少なくするとともに、効率的な位置特定を可能とし、かつ効率的な位置情報の送受信が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である位置情報送受信装置10,20を含む位置情報伝達システムのブロック図である。位置情報送受信装置10,20の各々は互いに位置情報を交換するため、いずれの装置とも、位置情報を送信する場合には(位置情報)送信装置として機能し、位置情報を受信する場合には(位置情報)受信装置として機能する。システムによっては、送信専用装置、受信専用装置となる構成も考えられ、例えば、位置情報送信装置は、交通情報の提供サービスを行うセンター装置であり、位置情報受信装置は車両に搭載されたカーナビゲーション装置である。
【0025】
本発明のデジタル地図の位置情報伝達(送受信)方法では、送信装置が、受信装置側での位置特定の誤り(誤マッチング)を防ぐため、所定の方法にて端点のノードの選択を行う。
【0026】
図1に示すように、位置情報送受信装置10,20は、位置情報送信部11,21と、位置情報受信部12,22と、デジタル地図データベース15,25と、位置特定部13,23と、デジタル地図表示部14,24と、事象情報入力部16,26と、位置情報変換部17,27とを備えている。位置情報送受信装置10と位置情報送受信装置20の間で対応する構成部分は全く同じなので、以下、位置情報送受信装置10のみの構成について説明する。
【0027】
位置情報受信部12は、位置情報送信装置として機能する位置情報送受信装置20の位置情報送信部21から座標列データおよび事象位置データを含む位置情報を受信する。デジタル地図データベース15は第1のデジタル地図を表現するデジタル地図データを蓄積する。位置特定部13は、位置情報受信部12が受信した位置情報の座標列データ及び事象位置データを用いて、第1のデジタル地図上における位置情報の位置特定(マッチング)を行う。デジタル地図表示部14は液晶表示装置等によって構成され、位置特定部13による位置特定の結果、位置情報と第1のデジタル地図が合成されて生成された表示情報を表示する。尚、デジタル地図表示部14は、後述する事象情報入力部16から入力された事象情報をも表示する。
【0028】
事象情報入力部16には、道路に配置された各種のセンサーや、プローブ車両などから収集した、渋滞や事故など発生した事象に関する事象情報が入力される。位置情報変換部17は、事象情報入力部16から入力された事象情報に基づき、座標列データおよび事象位置データを生成する。位置情報送信部11は、生成された座標列データ及び事象位置データを含む位置情報を、受信装置として機能する位置情報送受信装置20の位置情報受信部22に送信する。
【0029】
図2は、位置情報変換部17によって生成され、位置情報送信部11から送信される位置情報の一例を示す。図2(a)が道路区間特定用の座標列情報からなる座標列データであり、図2(b)が、対応する道路区間内に設けた基準点から事象位置までの相対位置(道なり距離や相対座標)を示す事象位置データである。そして、後述するように、図2(a)の座標列データには、交差点における二つの道路が交わる角度に関する情報である接続角度情報が含まれている。
【0030】
本発明での座標列データ(ポイントリスト)とは緯度・経度がペアになったポイントデータの配列であるが、ポイントデータの配列数や内容は特に限定されず、「動的な位置参照データ」として扱われる。
【0031】
道路に沿った座標ポイントの配列である場合、そのような座標ポイントの数が多くなるほど、道路形状を成して現実の道路の形状に近くなる。これは、道路形状表現またはGeometrey呼ばれる。
【0032】
また、座標の数が少なく、その形状が、現実の道路から離れたデータをも含む場合もあり、必ずしも現実の道路の形状を正確にトレースしている必要はない。
【0033】
すなわち、道路に沿って交差点や所定のルールに従って付与される互いのポイントが(位相的に)接続可能な状態であればよい。したがって、単一または複数のポイントで位置参照する場合もある(たとえば、2つの交差点ポイントがあれば、この間をパス接続して道路区間が表現できる)。
【0034】
さらに、これらを組み合わせる場合もあるが、本願発明では上述の形態の全てを含んだ意味で「座標列データ」としている。
【0035】
なお、接続角度情報は、ノード設定位置が交差点でない場合は「接続道路無し」となり、接続角度が直角に近く、したがって誤差が小さいと推定され、あえて明示する必要が無い場合には、省略して情報量を減らすこともできる。
【0036】
位置情報変換部17は、事象情報入力部16から入力された事象情報を基に、事象発生位置を含む道路区間のノードp1〜pnの座標(経度・緯度)をデジタル地図データベース15から取得して、座標列データを生成し、当該座標列データで表した対象道路区間内に基準点を設定して、当該基準点から事象発生位置までの相対距離データを含む交通情報を生成する。
【0037】
位置情報変換部17は、座標列情報を生成する際に、受信装置側での位置特定(マッチング)の開始点または終了点となる対象道路区間の端点に相当するノードp1またはノードpnを、誤マッチング(誤った位置特定)が発生しないように選択する。すなわち、送信装置として機能する位置情報送受信装置10は、当該装置10が有するデジタル地図データベース15中の第1のデジタル地図上の対象道路区間を示す座標列データを、受信装置として機能する位置情報送受信装置20に送信する。当該装置20はデジタル地図データベース25中の第2のデジタル地図上で対象道路区間を特定する。第1のデジタル地図と第2のデジタル地図は、図11(a)のデジタル地図と図11(b)のデジタル地図のように異なることもあるので、端点に相当するノードp1またはノードpnの選択には工夫を要するが、先述した特許文献3で開示された方法が存在する。そのような方法の中で代表的なものは、元々の対象道路区間の端点が交差点に近い場合、対象道路区間を近隣の交差点まで延伸し、端点を交差点にすることである。
【0038】
例えば、図3(a)に示すように、位置情報送受信装置10は、デジタル地図データベース15中の第1のデジタル地図上の対象道路区間を示す座標列データの端点(始点)として、二つの道路の交差点である参照点を選ぶ。このような選択は、元々の対象道路区間の端点が参照点上にない場合であっても、対象道路区間を当該参照点まで延伸することにより得られる。
【0039】
図3(b)に示すように、上記座標列データを受信した位置情報送受信装置20は、デジタル地図データベース25中の第2のデジタル地図上で対象道路区間を特定する。図3(b)の点線で示すように、第1のデジタル地図と第2のデジタル地図の間で絶対座標のずれが大きい場合、位置情報送受信装置20において事象発生点の誤マッチングが生じる場合がある。しかしながら、本例では、座標列データの端点(始点)として交差点である参照点が選ばれているため、位置情報送受信装置20は、当該参照点を基準として、事故発生地点の位置特定を正しく行うことができる。このとき、位置情報送受信装置10から予め得られる参照点からの事故発生地点までのオフセット量を用いて、位置情報送受信装置20は事故発生地点の位置特定を行う。
【0040】
すなわち、端点が交差点である場合、交差点はデジタル地図上でわかりやすい位置(複数の候補点が発生しにくい位置)なので、第1のデジタル地図と第2のデジタル地図が異なる場合であっても、一般的に、受信装置側で誤マッチングは生じにくい。
【0041】
しかしながら先に説明したように、図11(a)の領域Aと図11(b)の領域A’のように対応する位置にも拘らず、図11(c)に示すように二つのデジタル地図間で位置が大きくずれている場合、たとえ送信装置が端点として、領域A内の交差点を選んだとしても、受信装置が(b)のデジタル地図上の領域A’に存在する接続点をうまく発見することができない可能性がある。領域Aと領域A’の間の距離が大きすぎるため、位置情報送受信装置20が、領域Aに対応する領域A’の位置まで対応する交差点を探さない場合があるからである。
【0042】
上記のような二つのデジタル地図上での位置ずれ現象は、一般的に、図11の領域A,A’のような、ジャンクションやインターチェンジ、立体交差における連絡道路などの如く、二つ以上の道路がなだらかに接続する接続点(浅い接続角度をもって接続した道路の接続点)において生じやすい。一方、領域B,B’のような、二つの道路が直角に近い角度で交わる交差点では、位置ずれ現象は生じにくい。
【0043】
一方で、これまで説明した「送信対象となる道路区間の延伸」は、送信する対象道路区間が長くなり、従って、データ量や受信装置側の処理負荷を増大させることに繋がるため、受信装置側で誤判定を起こしやすいケースに絞り、必要最低限とすることが望ましい。
【0044】
そこで本発明においては、送信装置の位置情報変換部17は、対象道路区間の端部の近隣の交差点(近隣交差点)を検索する。さらに位置情報変換部17は、元々の対象道路区間の端部から近隣交差点までの距離(端部−交差点間距離)と、当該近隣交差点における少なくとも二つの道路が交差する角度である接続角度を調べる。そして、予め定められている接続角度と延伸距離の関係から、位置情報変換部17は当該近隣交差点を対象道路区間に含めるか否かを決定する、すなわち、対象道路区間を延伸させる距離に相当する延伸距離を接続角度に応じて変化させる。具体的には後に示すように(図9)、接続角度が90度に近い場合、延伸距離は短く設定され、0度または180度に近い場合、延伸距離は長く設定される。
【0045】
すなわち、近隣交差点の接続角度が90度に近い場合、二つの異なるデジタル地図間で対応する近隣交差点のずれは大きくない可能性が高い。従って、別の交差点を端点として選択する必要性は小さいと考えられるため、位置情報変換部17は延伸距離を小さく設定し、延伸する頻度および距離を減らす。このような処理により、送信するデータの量を削減することができる。
【0046】
一方、近隣交差点の接続角度が0度または180度に近い場合、二つの異なるデジタル地図間で対応する近隣交差点のずれは大きい可能性が高い。従って、交差点を端点として選択した方が好ましいと考えられるため、位置情報変換部17は延伸距離を大きく設定し、延伸する頻度および距離を大きくとる。このような処理により、二つの異なるデジタル地図間で位置のずれが比較的大きな場所において、端点を交差点と明示することによって受信装置側の誤判定を防ぐことができる。
【0047】
先述した端部−交差点間距離と延伸距離の関係の見地からは、特定の近隣交差点についての端部−交差点間距離が、当該近隣交差点における接続角度をもって規定する延伸距離より小さければ、当該近隣交差点は、対象道路区間の端部に設定される。
【0048】
接続角度情報を含む位置情報を受信した受信装置としての位置情報送受信装置20の位置特定部23は、当該接続角度に応じて、対象道路区間の端部を検索する検索範囲を変動させる。ここでの検索範囲の変動とは、位置情報送受信装置20側で端点を探す場合、対象道路区間の端部を検索する範囲は所定の距離(例えば150m)に決めてしまうのではなく、少なくとも二つの道路の接続角度に応じて、当所定の距離以上となるよう変動させることである。
【0049】
具体的な図3の例では、位置情報送受信装置10の位置情報変換部17は、図3(a)に示す二つの道路の交差点である参照点における接続角度を調べる。そして、位置情報変換部17は、図2(a)に示す座標列データの「接続角度情報」に当該接続角度及びその接続角度が付与された参照点のノード番号を記憶する。位置情報送信部11は、図2(a)の「接続角度情報」を含む座標列データと図2(b)の事象位置データを含む位置情報(図2)を位置情報送受信装置20に送信する。
【0050】
位置情報送受信装置20の位置情報受信部22が、上記位置情報を受信し、位置特定部23が、デジタル地図データベース25の第2のデジタル地図上で、位置情報中の座標列データの位置特定(マッチング)を行う。このとき、位置特定部23は、図4に示すように、送られてきた座標列データの端点の絶対座標から、所定の距離、すなわち所定の範囲のサーチエリア(SA;Search Area)を検索し、当該端点に対応する交差点を探す。
【0051】
ここで、サーチエリア、すなわち検索範囲の決定方法であるが、図5に示すように、受信した座標列データにおける二つの道路A,Bの交差点Pにおける二つの道路の接続角度情報の接続角度θをチェックする。または、道路Bの他方の道路Aに対する線対称の関係をもって引いた仮想道路B’と道路Aとの間の接続角度θ’をチェックする(180°<θ<360°の場合)。このとき|θ|=|θ’|である。0°≦θ≦90°の場合、検索範囲を決定する接続角度としては|θ|を用い、90°≦θ≦180°の場合、検索範囲を決定する接続角度としては(180°−|θ|)を用いる。
【0052】
上記接続角度に基づき、位置特定部23は後述するような対応表を用いて(図9)、検索範囲を決定する。すなわち、一般的に接続角度が浅い(|θ|、(180°−|θ|)が小さい)場合、検索範囲は拡大される。検索範囲の決定方法は適宜任意のものを用いてよく、例えば所定のデフォルト値を特定の接続角度によってはP倍するなどして検索範囲を決定することもできる。
【0053】
また、効率的な検索のため、検索範囲を拡大する際は対称道路区間の長手方向に沿って検索範囲を拡大するのが望ましい。図4の例では、デフォルトの検索範囲SAは円形形状であるが、接続角度が浅いため、SA×1.5の長さの検索範囲に関して、道路に沿っての前後二つの扇形形状で拡大されている。本例において扇形形状の半径はSA×1.5、中心角度は60°であり、中心点は送信された対象道路区間の端点である交差点IP(Intersection Point)である。拡大された検索範囲の形状(拡大検索範囲)は特に限定されるものではなく、楕円形状、長方形形状など、任意のものを採用することができる。
【0054】
また、この方法は、対象道路区間の端点の延伸、および端点の検索に限るものではなく、対象道路の途中に事象発生位置の参照点(例えば、事故発生位置や渋滞の先頭・末尾位置、道路路外のPOI(Point of Interest)の位置などを明示するための基準点)を明示したい場合にも、適用は可能である。
【0055】
すなわち送信装置は、前記の事象発生位置の参照点に、交差する道路の接続角度を付与することにより、受信装置側に参照点を検索すべきサーチエリアの大きさを暗示的に示すことができ、受信装置は参照点の誤判定を防ぐことができる。
【0056】
例えば、参照点に直角に近い接続角度が付与されていた場合、多少離れた位置に交差点を見つけた場合でも、受信装置は「該当の交差点ではなく、別の交差点である」と識別することができる。一方なだらかな接続角度が付与されていた場合は、多少距離が離れていたとしても、同一の交差点と識別できる
【0057】
またこの場合は、座標列データを用いて、対道道路区間の特定は完了しているため、特定した道路区間上で、参照点を道なりに検索することとなる。
【0058】
図6は、送信装置としての位置情報送受信装置10が、上述した参照点に接続角度情報を付与する手順を示すフロー図であり、特に位置情報変換部17の動作を示す。まず位置情報変換部17は、事象情報入力部16から入力された図2(b)に示す事象位置データの元である事象情報をデジタル地図データベース15の第1のデジタル地図に重ね合わせて複数の道路区間を含む位置情報を作成する。そして、位置情報変換部17は、当該位置情報から、送信対象となる対象道路区間を選出するとともに、対象区間中に接待された参照点を拾い上げる(ステップS301)。
【0059】
次に、位置情報変換部17は、番号が1の参照点から(ステップS302)、各参照点に交差道路が存在するか否かを調査する(ステップS303)。当該参照点に交差道路が存在する場合(ステップS303;YES)、位置情報変換部17は、接続角度(情報)を付与する(ステップS304)。さらに、位置情報変換部17は、全参照点についての調査が終了したか否かを確認し(ステップS305)、調査が終了していた場合は(ステップS305;YES)、動作を終了する。全参照点についての調査がしていない場合は(ステップS305;NO)、位置情報変換部17は、次の参照点番号の参照点について(ステップS306)、ステップS303移行の動作を行う。
【0060】
ステップS303において、位置情報変換部17が各参照点に交差道路が存在しないと判断した場合(ステップS303;NO)、当該交差道路に接続角度(情報)は付与されず、ステップS305以降の判断が行われる。
【0061】
図7は、送信装置としての位置情報送受信装置10の動作を示すフロー図であり、特に位置情報変換部17の動作を示す。まず位置情報変換部17は、事象情報入力部16から入力された図2(b)に示す事象位置データの元である事象情報をデジタル地図データベース15の第1のデジタル地図に重ね合わせて複数の道路区間を含む位置情報を作成する。そして、位置情報変換部17は、当該位置情報から、送信対象となる対象道路区間を選出する(ステップS101)。
【0062】
そして、位置情報変換部17は、第1のデジタル地図から、上記対象道路区間の端点(始点または終点)の外側に存在する交差点を拾い上げる(ステップS102)。さらに位置情報変換部17は、当該交差点までの距離と当該交差点において交差する少なくとも二つの交差道路の接続角度を算出する(ステップS103)。
【0063】
その後、位置情報変換部17は、上記距離と接続角度に応じて、交差点を対象道路区間に含めるか否かを決定する(ステップS104)。交差点を対象道路区間に含めない場合は(ステップS104;NO)、対象道路区間の端点はステップS101で選出された元の対象道路区間と同じままである(ステップS105)。交差点を対象道路区間に含める場合は(ステップS104;YES)、対象道路区間を交差点まで延伸し、新たな対象道路区間が設定される(ステップS106)。さらに、位置情報変換部17は、対象道路区間の座標列データに対応した位置情報(図2)を作成し、位置情報送信部11が当該位置情報を受信装置としての位置情報送受信装置20に送信する。
【0064】
図8は、受信装置としての位置情報送受信装置20の動作を示すフロー図であり、特に位置特定部23の動作を示す。まず位置情報受信部22が、位置情報送受信装置10から位置情報を受信した後(ステップS201)、位置特定部23が、位置情報の座標列データの対象道路区間に含まれるノード毎に、図2(a)で説明した接続角度情報が付与されているか否かを確認する。位置特定部23は、ノード番号=1から(ステップS202)順に、当該ノードに接続角度情報が付与されているか否かを判定する(ステップS203)。接続角度情報が付与されている場合(ステップS203;YES)、位置特定部23は、当該ノードに対応したデジタル地図データベース25の第2のデジタル地図上の位置(交差点)の検索範囲を、接続角度に応じて決定する(ステップS204)。接続角度情報が付与されていない場合(ステップS203;YES)、位置特定部23は、検索範囲として予め設定された値であるデフォルト値を用いる(ステップS205)。
【0065】
その後、位置特定部23は、ステップS204またはステップS205で決定された検索範囲内で第2のデジタル地図上の対応する交差点を検索する(ステップS206)。当該検索が総てのノードについて終了していない場合は(ステップS207;NO)、次の番号のノードに関して(ステップS208)、ステップS203からS206の動作を繰り返す。検索が総てのノードについて終了した後(ステップS207;YES)、位置特定部23は位置情報とデジタル地図データベース25の第2のデジタル地図を合成して表示情報を生成し、デジタル地図表示部24が、当該表示情報を表示する。
【0066】
図9は、図7のステップS104において、位置情報送受信装置10が交差点における接続角度に応じて、延伸距離を変更する際に用いる対応表を示す。接続角度が60度以上の場合は延伸距離は50m、接続角度が60度未満20度以上の場合は延伸距離は150m、接続角度が20度未満の場合は延伸距離は300mである。
【0067】
図10は、図8のステップS203において、位置情報送受信装置20が、座標列データ中の接続角度情報に応じて、交差点を検索する範囲を決定する際に用いる対応表を示す。接続角度情報がない場合は(図8のステップS205)、デフォルト値である150mを用いる。接続角度情報が存在する場合は(図7のステップS204)、表に従い検索範囲を決定する。接続角度が60度以上の場合は検索範囲は50m、接続角度が60度未満20度以上の場合は検索範囲は150m、接続角度が20度未満の場合は検索範囲は300mである。尚、図9と図10に示すように、延伸距離と検索範囲は、同じ接続角度で同じ値を採っているが、同じ接続角度で同じ値を採る必要は必ずしもない。
【0068】
以上述べたように、本発明によれば、交差点の接続角度に応じて、受信装置における端点の検索範囲が変更されるとともに、送信装置における延伸距離が変更される。従って、受信装置側における位置特定の誤りを少なくするとともに効率的な位置特定を可能とし、かつ送信装置と受信装置間の効率的な位置情報の送受信が可能となる。
【0069】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、デジタル地図上の位置情報を伝達するシステムにおいて、特にデジタル地図上の位置を正確に伝える技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】位置情報送受信装置を含む位置情報伝達システムのブロック図
【図2】位置情報のデータ構造図
【図3】対象道路区間の端点を交差点に選んだ場合のマッチングの概念図
【図4】端点の検索範囲を示す概念図
【図5】接続角度を説明する概念図
【図6】送信装置の動作を示すフローチャート
【図7】送信装置の動作を示すフローチャート
【図8】受信装置の動作を示すフローチャート
【図9】接続角度と延伸距離の関係を示す表
【図10】接続角度に応じた検索範囲を示す表
【図11】二つのデジタル地図間のノード位置の異なりを説明する概念図
【符号の説明】
【0072】
10,20 位置情報送受信装置
11,21 位置情報送信部
12,22 位置情報受信部
13,23 位置特定部
14,24 デジタル地図表示部
15,25 デジタル地図データベース
16,26 事象情報入力部
17,27 位置情報変換部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置が、第1のデジタル地図上の対象道路区間を含む道路形状データを、第2のデジタル地図上で前記対象道路区間を特定する受信装置に送信する位置情報送信方法であって、前記送信装置は、
前記道路形状データを生成する際、前記対象道路区間を近隣の交差点まで延伸し、
前記交差点において少なくとも前記対象道路を含む二つの道路が交差する角度である接続角度に応じて、前記対象道路区間が延伸される距離に相当する延伸距離を変動させる、
位置情報送信方法。
【請求項2】
送信装置が、第1のデジタル地図上の対象道路区間を含む道路形状データを、第2のデジタル地図上で前記対象道路区間を特定する受信装置に送信する位置情報送信方法であって、前記送信装置は、
前記道路形状データを生成する際、前記道路形状データの前記対象道路区間中に設定された参照点に交差する道路の接続角度を付与して送信する、
位置情報送信方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の位置情報送信方法を用いて前記道路形状データを送信する送信装置。
【請求項4】
受信装置が、第1のデジタル地図上の対象道路区間を示す道路形状データを受信して、第2のデジタル地図上で前記対象道路区間を特定する位置情報受信方法であって、前記受信装置は、
前記道路形状データを受信し、
受信した前記道路形状データ中に、交差点において交差する道路との接続角度情報が含まれている場合、前記接続角度情報の接続角度に応じて、前記第2のデジタル地図上における対応する交差点を検索する範囲を変更する、
位置情報受信方法。
【請求項5】
請求項4記載の位置情報受信方法であって、
前記受信装置は、前記交差点を検索する範囲を、前記対象道路区間の長手方向に沿って拡大する位置情報受信方法。
【請求項6】
請求項4記載の位置情報受信方法であって、
前記受信装置は、特定した前記道路区間上に存在する前記交差点の位置を検索する際、接続道路の接続角に応じて前記交差点の検索距離範囲を変更する位置情報受信方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項記載の位置情報受信方法を用いて、前記第2のデジタル地図上で対象道路区間を特定する受信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−204441(P2009−204441A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47003(P2008−47003)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省、「情報大航海プロジェクト」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】