説明

デジタル放送システム、デジタル放送受信装置、放送装置、管理装置

【課題】デジタル放送受信装置に依存せずに、コンテンツの視聴可否を制御できるデジタル放送受信装置、デジタル放送システム及び放送装置を提供する。
【解決手段】デジタル放送受信装置10の無線通信機能の有効/無効や、内部の視聴設定によらず、放送装置20から送信するEMMに含まれる識別データに応じて、デジタル放送受信装置10の限定受信機能の有効/無効(視聴可能/視聴不可能)を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送に関し、特に限定受信方式の放送を行うデジタル放送システム、デジタル放送受信装置、放送装置、管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送受信装置としての携帯電話機に、テレビチューナを内蔵しているものが知られている(たとえば、下記特許文献1)。さらに、携帯電話機に対して、地上デジタル放送および衛星デジタル放送が予定され、これらのデジタル放送では、いわゆる限定受信システム(D−CAS)がサポートされる。限定受信システムは、放送波をスクランブルして放送することによって、たとえば番組(コンテンツ)単位で視聴料金を支払って(ペイパービュー;PPV)契約した契約者に対しては視聴を許可し、契約者以外に対しては受信機側で視聴を禁止するシステムである。
【0003】
この限定受信サービス(番組)をデスクランブルするか否かは受信機に挿入されているICカードが判断する。ICカードは視聴可否を判定する処理や、EMM (Entitlement Management Message)やECM(Entitlement Control Message)を復号化する処理を行う。
EMMやECMはTSパケットとして放送波によってブロードキャストされる。尚、TSパケットはコンテンツやECM,EMM、EPGなどのセクション情報をすべて含む。
EMMは限定受信機ごとに送信されるメッセージで、EMMセクションとして伝送される。EMMセクションは各受信機宛のEMM本体が複数個多重化されており、限定受信可能な受信機は、ICカードで保持するカードIDとEMM本体に記述されているカードIDとを比較することによって、自受信機向けのEMM本体を取り出す。
EMM本体にはカードID やECMを解除するワーク鍵やティア・PPV(Pay Per View)に関する機能情報などが記載されている。また、ECMは全限定受信機共通のメッセージで、スクランブルを解除するスクランブル鍵やPPVの視聴判定に必要な情報などが記載されている。EMM,ECMはスクランブルとは別の暗号方式で暗号化されている。
デスクランブルする場合、ICカードは放送波に記載される加入者毎のEMM 本体をICカードが保持するマスター鍵で復号して、EMM本体に含まれるカードIDとワーク鍵を取り出す。ワーク鍵はECMを復号するために使われる鍵である。EMM本体に含まれるカードIDがICカードの持つカードIDと照合すれば、放送波に記載されるECMをワーク鍵で復号してスクランブル鍵を取り出して受信機に渡す。受信機はスクランブルされた放送波をスクランブル鍵でデスクランブルする。
【0004】
また、限定受信システムの機能で、契約情報の管理と視聴情報の更新がある。契約情報の管理は現在受信しているチャンネルを契約しているかどうかを判断する機能で、PPV番組を購入したときにはその情報を視聴情報としてICカードに記憶する機能である。
視聴情報は、放送事業者の視聴情報収集センターに送信されるが、PPV購入時には視聴情報は送信されず、EMMで指定された所定の時間になった場合やカードが挿入された場合に視聴情報の送信(センターにおける契約者の情報の更新)が行われる(以下「後払いPPV」と表記する場合もある)。
【0005】
ところで、デジタル放送受信装置、特に携帯電話機では盗難や紛失があるため、携帯電話機を盗難・紛失した契約者は、通常、機種変更するか、携帯通信事業者との契約を解除するが、盗難・紛失した携帯電話機は、設定情報の変更や契約の解除ができない。
そこで、携帯通信事業者は、盗難・紛失した携帯電話機が発信しようとしても、通信できないような仕組みを設けている。例えばCDMAでは、基地局側で、基地局の持つESN・IMSIと装置のESN・IMSIが同じかどうかを監視しているため、盗難・紛失した携帯電話機が発信しようとしても、基地局が発信をキャンセルしている。
しかし、限定受信システムを搭載したデジタル放送受信装置が盗難・紛失した場合、盗難・紛失した携帯電話機には、マスター鍵やティア契約情報、あるいは前払いPPV契約情報などの情報が残っているために、限定受信機能が働いてしまい、スクランブルされた放送も視聴できてしまう問題がある。
また、後払いPPVの場合では、盗難・紛失した携帯電話機はPPV(Pay Per View)番組を不正に視聴できてしまい、通信機能が働かないために視聴契約会社の視聴情報収集センターに対して視聴情報の更新ができない問題がある。
その問題を解決する手段のひとつとして、下記特許文献2がある。下記特許文献2では、移動体の携帯記録媒体にスクランブル解除用の暗号キーが記録されていて、暗号キーを使用するとき、つまり限定受信を視聴しようとするときに、放送事業者と通信して、暗号キーの使用可能信号を受信した後、暗号キーを使ってスクランブルを解除する方法である。
【0006】
【特許文献1】特開2000−9920号公報
【特許文献2】特開2004−72454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献2では、契約者が視聴しようとする際に、たとえ放送信号が受信できても、暗号キーを取得するための無線通信ができなければ視聴することはできない。特に、携帯電話機では、通信不可能な位置に存在する(いわゆる「圏外」になる)ことが多く、かかる場合には契約した番組を視聴できないという問題がある。
【0008】
また、上述した特許文献2では、視聴する場合に常に放送事業者と通信しなければならず、その都度、通信料が発生するという問題もある。
【0009】
また、デジタル放送受信機は、無線通信機能が無いものもあり、このような受信機では上述した特許文献2の手法を用いることが出来ず、このような受信機が盗難・紛失された場合には、前払いしたサービス(番組)や後払いするサービス(番組)などが視聴できてしまい、契約者に意図しない課金がなされてしまという上記問題は解消されない。
【0010】
尚、無線通信機能が無いデジタル放送受信機が視聴するサービス(番組)への課金方法としては、必要なときに通信手段をデジタル放送受信機に装着することで通信手段を介して課金を行ったり、デジタル放送受信機に挿入した課金用カード分の視聴を許可したり、視聴情報を記憶している記憶媒体をデジタル放送受信機から取り出して別途通信装置から通信手段を介して課金処理を行ったりする方法などがあげられる。
【0011】
上述した観点に鑑み、本発明の目的は、デジタル放送受信装置に依存せずに、コンテンツの視聴可否を制御できるデジタル放送受信装置、デジタル放送システム及び放送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を克服するための第1の観点は、限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置毎又は限定受信方式の放送の視聴契約者毎に対応して固有の識別データを管理する管理装置と、限定受信方式の放送を行う放送装置と、前記限定受信放送を受信するデジタル放送受信装置と、からなるデジタル放送システムであって、前記放送装置は、前記限定受信方式の放送の視聴可能な受信装置又は契約者の前記識別データを前記管理装置から取得して放送し、前記デジタル放送受信装置は、前記放送波から自己の装置又は該装置を使用している契約者の識別データを受信した場合に前記限定受信方式の放送を視聴可能にすることを特徴とするデジタル放送システムである。
【0013】
上記課題を克服するための第2の観点は、デジタル放送を受信する放送受信手段と、自己の装置又は該装置を使用している契約者の識別データを記憶する記憶手段と、前記放送受信手段により受信した放送波に含まれる識別データと前記記憶手段が記憶する識別データとが一致することを条件として、前記放送受信手段により受信する限定受信方式の放送を視聴可能にする制御手段と、を備えたデジタル放送受信装置である。
【0014】
上記課題を克服するための第3の観点は、限定受信方式の放送の視聴可能な受信装置又は契約者の識別データを取得して該識別データを含むトランスポートパケットを生成する生成手段と、前記生成手段が生成したトランスポートパケットを送信する送信手段と、を備えた放送装置である。
【0015】
上記課題を克服するための第4の観点は、限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置毎又は限定受信方式の放送の視聴契約者毎に対応して固有の識別データを管理し、放送事業者に対して前記限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置又は限定受信方式の放送の視聴契約者の識別データを送信する管理手段、を備えた管理装置である。
【0016】
上記課題を克服するための第5の観点は、限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置毎又は限定受信方式の放送の視聴契約者毎に対応して固有の識別データを管理するとともに限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者を前記識別データに対応させて管理する管理装置と、限定受信方式の放送を行う放送装置と、前記限定受信放送を受信するデジタル放送受信装置と、からなるデジタル放送システムであって、前記放送装置は、前記限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者の前記識別データを前記管理装置から取得して放送し、前記デジタル放送受信装置は、前記放送波から自己の装置又は該装置を使用している契約者の識別データを受信した場合に前記限定受信方式の放送の受信又は視聴の停止をすることを特徴とするデジタル放送システムである。
【0017】
上記課題を克服するための第6の観点は、デジタル放送を受信する放送受信手段と、自己の装置又は該装置を使用している契約者の識別データを記憶する記憶手段と、前記放送受信手段により受信した放送波に含まれる識別データと前記記憶手段が記憶する識別データとが一致することを条件として、前記放送受信手段により受信する限定受信方式の放送の受信又は視聴を停止する制御手段と、を備えたデジタル放送受信装置である。
【0018】
上記課題を克服するための第7の観点は、限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者の識別データを取得して該識別データを含むトランスポートパケットを生成する生成手段と、前記生成手段が生成したトランスポートパケットを送信する送信手段と、を備えた放送装置である。
【0019】
上記課題を克服するための第8の観点は、限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置毎又は限定受信方式の放送の視聴契約者毎に対応して固有の識別データを管理するとともに限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者を前記識別データに対応させて管理し、放送事業者に対して前記限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者の識別データを送信する管理手段、を備えた管理装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、デジタル放送受信装置に依存せずに、コンテンツの視聴可否を制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
《第1の実施形態》
以下、本発明のデジタル放送システム、特に限定受信方式の放送を行う放送システムの一実施形態について述べる。
図1は、実施形態に係るデジタル放送システム1のシステム構成を示す図である。
【0022】
放送装置20は、デジタル放送を行う放送事業者の装置であり、コンテンツ(映像信号、音声信号、データ信号)やセクション情報などを多重化してTSパケット(トランスポートストリームパケット)を生成するTSパケット生成部201と、生成されたTSパケットを放送波によって送信する送信部200と、から構成される。また、送信部200は、限定受信方式の放送も行う。
【0023】
TSパケットは、スクランブルされたコンテンツ(たとえば、映画・音楽などの映像信号、音声信号)やECM(Entitlement Control Message)、EMM(Entitlement Management Message)、EPG(Electrical Program Guide)などのセクション情報を含む。ECM,EMMは、デジタル放送の限定受信機能を実現するためのメッセージである。
【0024】
EMMセクションには、限定受信対象のデジタル放送受信装置(以下、限定受信装置と称する)ごとのEMM本体が複数個多重化されている。EMM本体には、カードIDやECMを解除するワーク鍵、PPV(Pay Per View)に関する機能情報などが記載されている。
一方、ECMは、すべての限定受信装置に共通のメッセージであり、コンテンツのスクランブルを解除するスクランブル鍵や、PPVの視聴判定に必要な情報などが記載されている。なお、EMM,ECMは、コンテンツのスクランブルとは異なる暗号方式で暗号化されている。
【0025】
TSパケット生成部201は、TSパケットにEMMを書き込む際に、携帯通信事業者の管理装置30から、EMMの送信対象であるデジタル放送受信装置の識別データ(限定受信対象装置のデータ)を、公衆網900を介して要求して取得(入手)し、取得(入手)した識別データをEMMのEMM可変部に埋め込む(挿入する)。
そして、TSパケット生成部201で生成されたEMMのTSパケットが送信部200から放送アンテナ202を介して放送される。
【0026】
ここで、管理装置30は、デジタル放送受信装置を管理する事業者の装置であり、限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置毎又は限定受信方式の放送の視聴契約者毎に対応して固有の識別データを管理する管理サーバ300と、その識別データを暗号化する暗号化部301と、を含んで構成される。尚、通信事業者の場合、「限定受信放送の視聴契約者」が回線契約者(加入者)に関連付けて管理している場合もあるので、識別データを回線契約者(加入者)を特定する識別データとしても良い。
【0027】
また、管理装置30の暗号化部301では、識別データを例えば携帯通信事業者独自の暗号方式で暗号化することが出来る。これによって、識別データを、放送装置20を使用する放送事業者に対して秘匿にすることができる。
【0028】
暗号化された識別データは、管理装置30が公衆網900を介して放送装置20に送信し、放送装置20は受信した識別データをTSパケット生成部201に供給する。なお、管理装置30は、識別データを暗号化せずにそのまま放送装置20に送信し、放送装置20は受信した識別データをTSパケット生成部201に供給するように構成してもよい。
【0029】
次に、デジタル放送受信装置10について説明する。
デジタル放送受信装置10は、放送波受信用のアンテナ100と、チューナ101と、制御部102と、スクランブルを解除するためのデスクランブラ103と、デコーダ104と、無線通信用のアンテナ105および送受信部106と、ICカード107と、ディスプレイ108と、スピーカ109と、自装置に固有の識別データ(ID)若しくは回線契約者(加入者)を特定する自己の識別データを記憶するメモリ110と、復号化部111と、を含んで構成される。
制御部102は、マイクロコンピュータを主体として構成され、データ転送制御、タイミング制御などのデジタル放送受信装置10の制御を行う。
【0030】
デジタル放送受信装置10では、アンテナ100で放送波を受信し、指定された番組に周波数を合わせるためのチューナ101によりチャンネル選択を行う。
【0031】
制御部102は、チューナ101で抽出されたTSパケットから自装置宛のEMMを抽出するために、EMMに含まれるカードIDと、ICカード107に格納されているカードIDとを比較し、一致する場合に限り、ICカード107に格納されているマスター鍵によって、抽出したEMMの暗号化されている部分を復号する。尚、上述の通り、ICカード107には、カードIDとマスター鍵とが格納されている。カードIDは、限定受信装置であることを認証するためのIDである。
そして、復号したEMMからワーク鍵を取り出し、このワーク鍵によって、TSパケット内のECMを復号する。さらに、復号したECMからスクランブル鍵を抽出する。
【0032】
制御部102は、復号されたEMM(EMM本体)に含まれる識別データと、メモリ110に格納されている自己の識別データと比較する。このとき送信された識別データが暗号化されている場合には、復号化部111にて復号処理を行う。そして、両者が一致することを条件として、スクランブル鍵を、制御部102を介してデスクランブラ103に供給する。
【0033】
デスクランブラ103は、供給されたスクランブル鍵に基づいてTSパケットをデスクランブルする。
【0034】
デコーダ104では、TSパケットに含まれるコンテンツを映像信号と音声信号に分離するとともに、それぞれデコードする。デコードされた映像信号と音声信号は、それぞれ、ディスプレイ108とスピーカ109にて再生される。
【0035】
なお、ICカード107は、認証を行うためのハードウエア手段の一例であるが、同様の機能をソフトウエアによって実現することもできる。
【0036】
次に、デジタル放送システム1におけるデジタル放送受信装置10の動作について、図2のフローチャートに関連付けて説明する。
【0037】
図2において、先ず、放送装置20から放送波を受信し、チューナ101によって特定のチャンネルを選択し、そのチャンネルのTSパケットが制御部102に引き渡される(ステップST1)。制御部102では、TSパケットのEMMセクションのEMM本体のカードIDが、ICカード107に保持されるカードIDと同じ場合に自装置向けであると判断する(ステップST2)。カードIDが一致しなければ、例えば「視聴できません。」などのエラー画面の表示を行う(ステップST3)。
【0038】
カードIDが一致する場合には、受信したEMM本体の暗号化されている部分をICカード107が所持するマスター鍵で復号化・解析する(ステップST4)。復号できない場合には(ステップST5)、エラー画面の表示を行う(ステップST3)。
【0039】
次に、EMM本体に含まれる識別データが暗号化されている場合には、復号化部111にて復号処理を行う(ステップST6)。ただし、識別データが暗号化されていない場合はこの処理(ステップST6)をスキップする。そして、EMM本体に含まれる識別データと、メモリ110に格納される自己の識別データとを比較する(ステップST7)。
【0040】
その結果、識別データと自己の識別データとが一致しない場合には、例えば「視聴できません。」などのエラー画面の表示を行う(ステップST12)。かかる場合には、デジタル放送受信装置10が視聴契約の対象となっていないと考えられるため、制御部102は、限定受信機能を不能にする、あるいは放送受信そのものを不能にする処理を行ってもよい(ステップST13)。限定受信機能を不能にする処理あるいは放送受信そのものを不能にする処理は、例えばEMM、ECMを受信しないようにしたり、ICカード107の情報を消去したり、ICカード107を使用不能にするなどの処理である。
【0041】
ステップST7において、識別データと自己の識別データとが一致する場合には、ICカード107は、EMM本体に含まれるワーク鍵を使って、ECMを復号化・解析してスクランブル鍵を抽出し(ステップST8およびST9)、スクランブル鍵をデスクランブラ103に供給する。
デスクランブラ103は、供給されたスクランブル鍵を使ってTSパケットをデスクランブルする(ステップST10)。デスクランブルされたTSパケットは、デコーダ104において、映像信号と音声信号に分離され、それぞれデコードされてディスプレイ108に表示、またはスピーカ109に出力される。すなわち、コンテンツが出力される(ステップST11)。
【0042】
なお、以上で説明した自装置に固有のID若しくは回線契約者(加入者)を特定する識別データとしては、少なくとも電子シリアル番号(ESN)、移動加入者識別番号(IMSI)、国際携帯電話機識別番号(IMEI)、または携帯電話機識別番号(MIN)のいずれかとすることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るデジタル放送システム1では、デジタル放送受信装置10の無線通信機能の有効/無効や、内部の視聴設定によらず、放送装置20から送信するEMMに含まれる識別データに応じて、デジタル放送受信装置10の限定受信機能を有効/無効(視聴可能/視聴不可能)を制御できる。たとえば、デジタル放送受信装置10が圏外にある場合であっても、無線通信によってコンテンツのスクランブルを解除するスクランブル鍵を受信する(要求を送信する)構成としていないので、放送波が受信できる限り、契約者は限定受信放送を視聴できる。
また、本実施形態に係るデジタル放送システム1では、識別データと自己の識別データの一致という認証方法をとるため、限定受信に対するセキュリティを向上することができる。つまり、盗難・紛失した場合、その旨をデジタル放送受信装置を管理する通信事業者に連絡し、通信事業者が管理サーバ300のデータを変更する若しくは放送事業者へ送信しないようにすることにより、対象のデジタル放送受信装置は限定受信を視聴できなくなる。
【0044】
《第2の実施形態》
以下、本発明のデジタル放送システムの第2の実施形態について述べる。
図3は、本実施形態に係るデジタル放送システム2のシステム構成を示す図である。
【0045】
デジタル放送システム2は、デジタル放送受信装置11と、放送装置20と、管理装置31とから構成される。デジタル放送受信装置10は、第1の実施形態に係るデジタル放送受信装置10と比較して、メモリ110と復号化部111がない点で相違する。管理装置31は、第1の実施形態に係る管理装置30と比較して、管理サーバ302によって構成される点で相違する。
【0046】
また、放送装置20は、上記のESN,IMSI,IMEI,MINのいずれかを暗号鍵としてEMMを暗号化して送信するようにしている。これにより、放送装置20側で、各デジタル放送受信装置がデジタル放送を受信可能な否か判断する必要がなく、処理を高速化できる。
【0047】
デジタル放送システム2の動作が、第1の実施形態のデジタル放送システム1と比較して異なる点は、以下の通りである。
(1)放送装置20は、暗号鍵として識別データを用いてEMMを暗号化する。暗号化されたEMMを含むTSパケットがデジタル放送受信装置11に対して送信される。
(2)デジタル放送受信装置11では、ICカード107において自己の識別データを保持し、TSパケットのEMM本体を、保持する自己の識別データを暗号鍵として復号する。
なお、ここでのICカード107の例としては、SIM(Subscriber Identity Module)やUIM(User Identity Module)が好ましい。
【0048】
次に、デジタル放送システム2におけるデジタル放送受信装置11の動作について、図4のフローチャートに関連付けて説明する。
【0049】
図4において、先ず、放送装置20から放送波を受信し、チューナ101によって特定のチャンネルを選択し、そのチャンネルのTSパケットが制御部102に引き渡される(ステップST20)。制御部102では、TSパケットのEMMセクションのEMM本体のカードIDが、ICカード107に保持されるカードIDと同じ場合に自デジタル放送受信装置向けであると判断する(ステップST21)。カードIDが一致しなければ、例えば「視聴できません。」などのエラー画面の表示を行う(ステップST22)。
【0050】
カードIDが一致する場合、ICカード107は、自己が保持する自己の識別データを暗号鍵としてEMM本体の暗号化されている部分を復号・解析を試みる(ステップST23)。
【0051】
その結果、EMMが復号できない場合には(ステップST24)、例えば「視聴できません。」などのエラー画面の表示を行う(ステップST29)。かかる場合には、携帯受信装置10が視聴契約の対象となっていないと考えられるため、制御部102は、限定受信機能を不能にする、あるいは放送受信そのものを不能にする処理を行ってもよい(ステップST30)。限定受信機能を不能にする処理あるいは放送受信そのものを不能にする処理は、例えばEMM、ECMを受信しないようにしたり、ICカード107の情報を消去したり、ICカード107を使用不能にするなどの処理である。
【0052】
EMMの暗号化されている部分が復号できた場合には(ステップST24)、ICカード107は、EMM本体に含まれるワーク鍵を使って、ECMを復号化・解析してスクランブル鍵を抽出し(ステップST25およびST26)、スクランブル鍵をデスクランブラ103に供給する。
デスクランブラ103は、供給されたスクランブル鍵を使ってTSパケットをデスクランブルする(ステップST27)。デスクランブルされたTSパケットは、デコーダ104において、映像信号と音声信号に分離され、それぞれデコードされてディスプレイ108に表示、またはスピーカ109に出力される。すなわち、コンテンツが出力される(ステップST28)。
【0053】
第1の実施形態と同様に、識別データとしては、少なくとも電子シリアル番号(ESN)、移動加入者識別番号(IMSI)、国際携帯電話機識別番号(IMEI)、または携帯電話機識別番号(MIN)のいずれかとすることができる。
【0054】
本実施形態に係るデジタル放送システム2によれば、第1の実施形態に係るデジタル放送システム1と同様の効果が得られるうえ、デジタル放送システム2全体の構成を簡易な構成とすることができる。
【0055】
《第3の実施形態》
以下、本発明のデジタル放送システムの第3の実施形態について述べる。
本実施形態に係るデジタル放送システムのシステム構成は、図1に示したデジタル放送システム1と同一である。
【0056】
本実施形態では、第1の実施形態と比較して、放送装置20において、限定受信機能を停止させたい識別データをEMMに含ませる点で相違する。ここで、限定受信機能を停止(受信又は視聴の停止)させたい受信装置又は契約者を識別データに対応させて管理装置30が管理しているものとする。
【0057】
本実施形態に係るデジタル放送受信装置10の動作について、図5のフローチャートに関連付けて、以下説明する。
【0058】
図5において、先ず、放送装置20から放送波を受信し、チューナ101によって特定のチャンネルを選択し、そのチャンネルのTSパケットが制御部102に引き渡される(ステップST40)。制御部102では、TSパケットのEMMセクションのEMM本体のカードIDが、ICカード107に保持されるカードIDと同じ場合に自デジタル放送受信装置向けであると判断する(ステップST41)。カードIDが一致しなければ、例えば「視聴できません。」などのエラー画面の表示を行う(ステップST42)。
【0059】
カードIDが一致する場合には、受信したEMM本体の暗号化されている部分をICカード107が所持するマスター鍵で復号化・解析する(ステップST43)。復号できない場合には(ステップST44)、エラー画面の表示を行う(ステップST42)。
【0060】
次に、EMM本体に含まれる識別データが暗号化されている場合には、復号化部111にて復号処理を行う(ステップST45)。ただし、識別データが暗号化されていない場合はこの処理(ステップST45)をスキップする。そして、EMM本体に、識別データが含まれているか否かを確認する(ステップST46)。
【0061】
その結果、EMM本体に識別データが含まれており、かつ、その識別データとメモリ110に保持する自己の識別データとが一致する場合には(ステップST47)、例えば「視聴できません。」などのエラー画面の表示を行う(ステップST48)。かかる場合には、携帯受信装置10が視聴契約の対象となっていないと考えられるため、制御部102は、限定受信機能を不能にする、あるいは放送受信そのものを不能にする処理を行ってもよい(ステップST49)。限定受信機能を不能にする処理あるいは放送受信そのものを不能にする処理は、例えばEMM、ECMを受信しないようにしたり、ICカード107の情報を消去したり、ICカード107を使用不能にするなどの処理である。
【0062】
ステップST46においてEMMに識別データが含まれていないか、または、ステップST47において識別データと自己の識別データとが一致する場合には、ICカード107は、EMM本体に含まれるワーク鍵を使って、ECMを復号化・解析してスクランブル鍵を抽出し(ステップST50およびST51)、スクランブル鍵をデスクランブラ103に供給する。
デスクランブラ103は、供給されたスクランブル鍵を使ってTSパケットをデスクランブルする(ステップST52)。デスクランブルされたTSパケットは、デコーダ104において、映像信号と音声信号に分離され、それぞれデコードされてディスプレイ108に表示、またはスピーカ109に出力される。すなわち、コンテンツが出力される(ステップST53)。
【0063】
本実施形態に係るデジタル放送システムによれば、デジタル放送受信装置10は、受信したTSパケットのEMMに含まれる1または複数の識別データの中に、自己が所持する自己の識別データと一致するものがあるか否か確認して、限定受信機能の有効/無効を判断するため、第1の実施形態同様、デジタル放送受信装置10の無線通信機能の有効/無効や内部の視聴設定によらず、放送装置20から送信するEMMに含まれる識別データに応じて、デジタル放送受信装置10の限定受信機能を有効/無効(視聴可能/視聴不可能)を制御できる。
【0064】
本発明の実施に際しては、上述した各実施の形態を適宜組み合わせることができる。
また、上述した実施の形態は本発明の例示にすぎず、本発明が上述した実施の形態に限定されるわけではない。例えば、デジタル放送は、地上デジタルの他に、BSデジタル放送、CSデジタル放送などの衛星デジタル放送も含むものである。
【0065】
例えば、カードIDや自己の識別データの保持を、デジタル放送受信装置の内臓メモリやICカードに状況に応じて保持させている実施例を記載しているが、上記保持する箇所は実施例に限定するものでもなく、また、内臓メモリ又はICカードのいずれか一方に保持させる構成でも良い。
また、上述の「カードID」についても、システム設計によってはこれを使用しない場合もあるので、TSパケットから自装置宛のEMMを抽出するための識別子であれば、これに限定するものでもなく、またカードに限定するものでもない。
また、上述の「ICカード」についても、情報を記憶する記憶手段であれば、ICカードに限定するものでもない。
また、ICカードは、デジタル放送受信装置に装着されていない場合、デジタル放送が視聴できない構成のものであっても良い。
【0066】
また、本発明のデジタル放送受信装置は、デジタル放送を受信できる機能を有する装置に適用可能である。
また、携帯通信事業者が管理する携帯電話機や通信モジュールを内蔵する装置以外の装置の場合、デジタル放送の限定受信契約を管理している事業者の管理装置が放送事業者からの対応を行うことでデジタル放送受信装置の限定受信機能を有効/無効を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態に係るデジタル放送システムのシステム構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るデジタル放送受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施形態に係るデジタル放送システムのシステム構成を示す図である。
【図4】実施形態に係るデジタル放送受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施形態に係るデジタル放送受信装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1,2…デジタル放送システム、10,11…デジタル放送受信装置、20…放送装置、30…管理装置、90…基地局、900…公衆網、901…携帯通信網、200…送信部、201…TSパケット生成部、301…暗号化部、300,302…管理サーバ、100,105…アンテナ、101…チューナ、102…通信部、103…デスクランブラ、104…デコーダ、106…送受信部、107…ICカード、108…ディスプレイ、109…スピーカ、110…メモリ、111…復号化部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置毎又は限定受信方式の放送の視聴契約者毎に対応して固有の識別データを管理する管理装置と、限定受信方式の放送を行う放送装置と、前記限定受信放送を受信するデジタル放送受信装置と、からなるデジタル放送システムであって、
前記放送装置は、前記限定受信方式の放送の視聴可能な受信装置又は契約者の前記識別データを前記管理装置から取得して放送し、
前記デジタル放送受信装置は、前記放送波から自己の装置又は該装置を使用している契約者の識別データを受信した場合に前記限定受信方式の放送を視聴可能にする
ことを特徴とするデジタル放送システム。
【請求項2】
デジタル放送を受信する放送受信手段と、
自己の装置又は該装置を使用している契約者の識別データを記憶する記憶手段と、
前記放送受信手段により受信した放送波に含まれる識別データと前記記憶手段が記憶する識別データとが一致することを条件として、前記放送受信手段により受信する限定受信方式の放送を視聴可能にする制御手段と、
を備えたデジタル放送受信装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、デジタル放送受信装置に対して着脱可能であることを特徴とする請求項2記載のデジタル放送受信装置。
【請求項4】
前記識別データは、少なくとも電子シリアル番号(ESN)、移動加入者識別番号(IMSI)、国際携帯電話機識別番号(IMEI)、または携帯電話機識別番号(MIN)のいずれかであることを特徴とする請求項2記載のデジタル放送受信装置。
【請求項5】
前記識別データは、EMMの暗号化されている部分に含まれていることを特徴とする請求項2記載のデジタル放送受信装置。
【請求項6】
限定受信方式の放送の視聴可能な受信装置又は契約者の識別データを取得して該識別データを含むトランスポートパケットを生成する生成手段と、
前記生成手段が生成したトランスポートパケットを送信する送信手段と、
を備えた放送装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記識別データをEMMの暗号化されている部分に含めて生成することを特徴とする請求項6記載の放送装置。
【請求項8】
限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置毎又は限定受信方式の放送の視聴契約者毎に対応して固有の識別データを管理し、放送事業者に対して前記限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置又は限定受信方式の放送の視聴契約者の識別データを送信する管理手段、を備えた管理装置。
【請求項9】
前記限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置又は限定受信方式の放送の視聴契約者の識別データを暗号化する暗号化手段、を備えた請求項8記載の管理装置。
【請求項10】
限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置毎又は限定受信方式の放送の視聴契約者毎に対応して固有の識別データを管理するとともに限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者を前記識別データに対応させて管理する管理装置と、限定受信方式の放送を行う放送装置と、前記限定受信放送を受信するデジタル放送受信装置と、からなるデジタル放送システムであって、
前記放送装置は、前記限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者の前記識別データを前記管理装置から取得して放送し、
前記デジタル放送受信装置は、前記放送波から自己の装置又は該装置を使用している契約者の識別データを受信した場合に前記限定受信方式の放送の受信又は視聴の停止をする
ことを特徴とするデジタル放送システム。
【請求項11】
デジタル放送を受信する放送受信手段と、
自己の装置又は該装置を使用している契約者の識別データを記憶する記憶手段と、
前記放送受信手段により受信した放送波に含まれる識別データと前記記憶手段が記憶する識別データとが一致することを条件として、前記放送受信手段により受信する限定受信方式の放送の受信又は視聴を停止する制御手段と、
を備えたデジタル放送受信装置。
【請求項12】
前記記憶手段は、デジタル放送受信装置に対して着脱可能であることを特徴とする請求項11記載のデジタル放送受信装置。
【請求項13】
前記識別データは、少なくとも電子シリアル番号(ESN)、移動加入者識別番号(IMSI)、国際携帯電話機識別番号(IMEI)、または携帯電話機識別番号(MIN)のいずれかであることを特徴とする請求項11記載のデジタル放送受信装置。
【請求項14】
前記識別データは、EMMの暗号化されている部分に含まれていることを特徴とする請求項11記載のデジタル放送受信装置。
【請求項15】
限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者の識別データを取得して該識別データを含むトランスポートパケットを生成する生成手段と、
前記生成手段が生成したトランスポートパケットを送信する送信手段と、
を備えた放送装置。
【請求項16】
前記生成手段は、前記識別データをEMMの暗号化されている部分に含めて生成することを特徴とする請求項15記載の放送装置。
【請求項17】
限定受信方式の放送が視聴可能な受信装置毎又は限定受信方式の放送の視聴契約者毎に対応して固有の識別データを管理するとともに限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者を前記識別データに対応させて管理し、放送事業者に対して前記限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者の識別データを送信する管理手段、を備えた管理装置。
【請求項18】
前記限定受信方式の受信又は視聴の停止をする受信装置又は契約者の識別データを暗号化する暗号化手段、を備えた請求項17記載の管理装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−333350(P2006−333350A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157497(P2005−157497)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】