説明

デジタル放送受信装置

【課題】宅内に構築されたネットワークの帯域を考慮し、QoSに応じて宅内ネットワークの帯域を有効利用する手段を有したデジタル放送受信機を提供することを目的とする。
【解決手段】TV18とTV20は、PLCアダプタ15b,15cを介して宅内ネットワークを構成している。TV20は、電波塔21からデジタル放送の番組を受信するとともに、NGN網13を介して、再送信サーバからデジタル放送の番組のIP再送信データを受信する。このように、TV20が、宅内ネットワークから外部のネットワークにIP接続することによってIP再送信データを受信する場合、宅内ネットワークの帯域状況から判断される空きの有無によって、番組のデータを、デジタル放送受信手段で取得するかIP受信手段で受信するかを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送受信装置に関し、特に、地上デジタルテレビ放送による番組の受信と、当該地上デジタルテレビ放送に対応したIP再送信による番組の受信が可能なデジタル放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送はアナログ方式からデジタル方式へと移行しつつあり、より高画質で高音質、さらに字幕やデータ放送などの付加情報をも楽しむことができるようになってきている。また、2011年には、地上アナログ放送が終了し、地上デジタル放送に完全に移行する予定になっており、その際、山間の地域やビルの谷間など、地上デジタル放送の電波の届きにくい地域に対しては、IP(Internet Protocol)網を利用した再送信方式(以下、IP再送信と呼称する)が検討されている。
【0003】
このようなIP再送信は、NGN(Next Generation Network)網などのアクセスネットワークを介して配信され、地上デジタル放送の電波が届きにくい地域に住んでいても、IP再送信を受信可能なテレビを用いれば、地上デジタル放送と同内容、同等画質、同様のサービスを享受することが可能となる。そのため、ユーザは地上デジタル放送の電波状況に応じて、通常の地上デジタル放送か、IP再送信かを選択して受信することが可能になる。
【0004】
また、地上デジタル放送のIP再送信以外にも、宅外のコンテンツサーバなどのコンテンツ提供装置から提供される映像や音声などのコンテンツを、NGN網などのアクセスネットワークを介して、宅内のテレビやSTB(セットトップボックス)にてストリーミング受信させるサービスが行われている。アクセスネットワークからのデータが宅内に伝送される場合、データは一旦ゲートウェイ(ルータ)で受信され、宅内で構築されたネットワークを経て、コンテンツの受信端末(テレビやSTB)に転送される。一般的に、ルータと受信端末との間の接続にはイーサネット(登録商標)(Ethernet(登録商標))が使用されるが、ルータと受信端末が別の部屋に設置されている場合は、各部屋にイーサネット(登録商標)ケーブルを敷設する必要がある。
【0005】
これに対し、PLC(Power Line Communication)は、電力線によってデータ伝送を行なうための技術であり、特別な工事を必要とせず、通常のコンセント同士の間で通信が可能である。PLCとイーサネット(登録商標)とのブリッジ装置(PLCアダプタ)をルータと受信端末とにそれぞれイーサネット(登録商標)で接続すれば、ルータと受信端末とが離れて配置されている場合にも、PLCアダプタを経由してルータと受信端末が通信可能となり、新たなケーブルを敷設することなく宅内ネットワークを構築できる。なお、無線LANとイーサネット(登録商標)とのブリッジ装置を用いても同様な宅内ネットワークを構築できる。
【0006】
このようなシステムでは、受信端末が、コンテンツ提供装置から、コンテンツ(特に動画像や音声のような即時性(リアルタイム性)や連続性を要求されるストリームデータ)を高速・高品質で受信するためには、各ネットワークにおいて、コンテンツに応じた必要にして十分な帯域が確保されなければならない。
【0007】
<QoS技術>
ところで、Webコンテンツ、メール、及びFTP等の非リアルタイムデータの伝送では、ある程度の伝送遅延やジッタ(伝送遅延のゆらぎ)が発生しても、使用者にとって大きな問題とならない、それに対して、映像や音声等のリアルタイムデータの伝送においては、伝送遅延やジッタは映像や音声の乱れにつながるので、ある範囲内に収める必要がある。
【0008】
このように伝送されるデータの種類に従って、適切な品質を確保しながら、複数のデータ伝送を同時かつ効率的に実現する技術を、QoS(Quality of Service)技術と呼ぶ。QoS技術は大きく分けて優先制御型QoS(Prioritized QoS)とパラメータ保証型QoS(Parameterized QoS)とに分類される。
【0009】
<優先制御型QoS>
優先制御型QoSでは、データを送信する通信装置が、データの種類やデータを送受信する通信装置の性質に応じた優先度をデータのパケットに付与し、パケットに付与された優先度に従い送信を優先制御することにより、QoSを実現する方式である。
【0010】
パケットのヘッダ部分に、優先度を格納するためのフィールドを設け、そこに数値として優先度を格納するのが一般的である。
【0011】
例えば、リアルタイムデータは非リアルタイムデータに比べて、より高い伝送品質が求められるので、リアルタイムデータのヘッダの優先度フィールドには、非リアルタイムデータのヘッダの優先度フィールドよりも、高い優先度を示す数値を格納し、その数値に応じた優先度で送信することにより、QoSを実現している。
【0012】
<パラメータ保証型QoS>
パラメータ保証型QoSは、ネットワーク全体の帯域を管理する親局を設け、親局が、子局から通知されたQoSのパラメータに従いネットワーク全体における帯域の使用スケジュールを管理し、すべての子局の送信回数や送信時間を集中管理することにより、QoSを実現する方法である。
【0013】
子局は、送信や受信しようとするデータのQoS保証が必要な場合、予め親局に対し、QoS伝送の要求信号を送信する。要求信号にはQoSパラメータが含まれており、親局は、このQoSパラメータを解釈し、現在のネットワークの利用状況からQoSが実現可能かどうかを判断する。実現可能であればQoS伝送を許可し、実現不可能であれば拒否する。
【0014】
例えば、既に他の子局がQoS伝送を行っており、十分な帯域が残っていない場合などには、親局はQoS伝送を拒否する。
【0015】
親局は、各子局に対するQoSが保証されるように、帯域割り当てのスケジュールを常に管理し、スケジュールに従って送信許可信号を各子局に送信する。子局は、送信許可信号で通知された期間のみにおいて、データの伝送を行なう。
【0016】
このような仕組みにより、ネットワーク全体におけるアクセス競合がなくなり、QoSが実現される。
【0017】
パラメータ保証型QoSでは、フローごとにQoSを管理する。フローとは、例えば、1つの映像コンテンツや音声コンテンツなど、連続的に伝送する必要のある一連のデータを指し、複数のパケットがこの一連のデータに属する。
【0018】
複数のコンテンツを同時に伝送する場合には、それぞれのコンテンツごとに異なるQoS制御を行なう必要がある。例えば、1つの通信装置に映像コンテンツ及び音声コンテンツを同時に送信する場合、それぞれのコンテンツに必要とされるQoSの要求事項が異なる。
【0019】
親局は、データ伝送の際に、フローごとに帯域利用のスケジュールを決定する必要があるので、パケットを送信する際にはそのパケットが所属するフローと、要求されるQoSのパラメータを知る必要がある。
【0020】
フローごとのQoSを実現するために、子局は親局にQoSパラメータを通知する際、フロー識別情報を添えて通知する。親局は、フローごとに帯域割り当てのスケジュールを管理し、送信許可信号を送信する際には、どのフローに対する送信許可であるかを示すために、フロー識別情報を含めて通知する。送信を行なう通信装置は、通知されたフロー識別情報に合致するパケットのみを通知された期間において送信することにより、フローごとのQoSが可能となる。
【0021】
[従来のIP再送信に関する技術]
ところで、地上デジタル放送を受信中に、電波状況が悪化したのを検知すると、自動的にIP網に接続し、IP再送信コンテンツの受信にシームレスに切替える技術が従来から開示されている。
【0022】
具体的には、たとえば、特許文献1には、地上デジタルテレビジョン受信機において、地上デジタルテレビジョン放送の電波を受信する地上デジタルTV受信手段と、携帯電話通信網との通信を行なうことで音声通話およびインターネットへのIP接続を行なう携帯電話網通信手段とを備え、地上デジタルTV受信手段からのデジタル信号復調時のデコードエラーの発生率や受信C/N比(アンテナからの信号の強度(Carrier)と総合雑音電力(Noise)との比)を用い、電波状態が悪化すると、地上デジタルテレビジョン放送による番組視聴からIPネットワークでの通信による番組視聴に切替える技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−158492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
なお、上記したようなテレビ放送のアナログ方式からデジタル方式への移行に伴い、家庭においてテレビ放送を受信する技術に関し、デジタル方式によるテレビ放送の受信に適した技術を検討する必要が生じてきている。
【0024】
しかしながら、上記した特許文献1では、携帯電話網を用いたIP再送信コンテンツの受信に関する技術が開示されているのみで、家庭におけるテレビ放送の受信に深く関連すると考えられる固定IPネットワークへの接続については考慮がなされていない。また、特許文献1では、上記したQoS技術に必要とされる、IP再送信コンテンツを受信するIPネットワークのネットワーク状態についても考慮がなされておらず、そして、IP再送信コンテンツを受信中にネットワーク状況が変化した場合についても考慮がなされていない。
【0025】
本発明は、かかる事情に鑑み考え出されたものであり、宅内に構築されたネットワークの帯域を考慮し、QoSに応じて宅内ネットワークの帯域を有効利用する手段を有したデジタル放送受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明のデジタル放送受信装置は、ネットワークを構成する、デジタル放送受信装置であって、デジタル放送の電波を受信するデジタル放送受信手段と、IP接続を行なって、前記ネットワークとは異なるネットワークからデータを受信するIP受信手段と、前記デジタル放送受信手段で受信した番組と前記IP受信手段で受信した番組のいずれかを、当該番組を出力させるために出力装置に送るかを切り替える番組切り替え手段と、前記ネットワークの帯域状況を監視する帯域状況監視手段とを備え、前記帯域状況監視手段によって取得した帯域状況に応じて、前記番組切り替え手段で前記デジタル放送受信手段と前記IP受信手段とを切り替えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に従ったデジタル放送受信装置では、前記IP受信手段が前記ネットワークへ接続する経路は、PLCによる通信経路を含むことが好ましい。
【0028】
また、本発明に従ったデジタル放送受信装置は、各チャネルごとに、番組の受信方法を、前記デジタル放送受信手段による電波の受信、または、前記IP受信手段によるデータの受信に決定する決定手段をさらに備え、前記決定手段は、各チャネルについて、地上デジタル放送の受信電界強度がある閾値以上である場合には当該チャネルの受信方法を前記デジタル放送受信手段による電波の受信に決定し、地上デジタル放送の受信電界強度がある閾値未満である場合には当該チャネルの受信方法を前記IP受信手段による電波の受信に決定することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、デジタル放送の番組を受信するとともに、宅内ネットワークから外部のネットワークにIP接続することによってIP再送信データを受信する場合、宅内ネットワークの帯域状況から判断される空きの有無によって、番組のデータを、デジタル放送受信手段で取得するかIP受信手段で受信するかを切り替える。
【0030】
これにより、宅内に構築されたネットワークの帯域状況に応じてデジタル放送とIP再送信を切り替えることにより、宅内に構築されたネットワークの帯域を無駄に使用することなく、デジタル放送、あるいはIP再送信を受信することが可能なデジタル放送受信装置を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を用いて本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明が適用されるシステムの基本的な構成例を示すブロック図である。
【0032】
図1を参照して、本発明のデジタル放送受信装置の一実施の形態であるデジタル放送受信装置6は、電波塔7からのデジタル放送を受信可能な受信アンテナと接続され、また、第2のネットワーク5と接続される。
【0033】
第2のネットワーク5には、ネットワーク管理装置4とデジタル放送受信装置6とネットワーク中継装置3が接続される。ネットワーク中継装置3は、第1のネットワーク2と第2のネットワーク5の間に接続され、第1のネットワーク2には、サーバ装置1が接続される。
【0034】
このような構成により、デジタル放送受信装置6は、電波塔7からのデジタル放送を受信して、番組を表示したり、サーバ装置1に記録されたコンテンツを第1のネットワーク2、ネットワーク中継装置3、第2のネットワーク5を通じて受信し、コンテンツを表示させたりできる。
【0035】
また、ネットワーク管理装置4は、例えば第2のネットワーク5における機器間の通信帯域を設定するなど、第2のネットワーク5における通信の管理を行なう。
【0036】
なお、本実施の形態では、サーバ装置1とデジタル放送受信装置6は、第1のネットワーク2と第2のネットワーク5との2つのネットワークを経由して通信を行なうものとしているが、サーバ装置1とデジタル放送受信装置6とが1つ以上の任意のネットワークを経由して通信するものであってもよい。
【0037】
次に、より具体的な構成について、図2を参照して説明する。
図2は、本発明が適用されるシステムの構成を示す概略図である。なお、図2を参照すると、図1の簡略化した基本構成が実際にどのように構成されているかが容易に理解できる。ただし、図2に示されたシステムの構成は一例であって、本発明と同様の効果を奏するものであれば、図2に示された構成に限定されず、他にも種々の構成が考えられる。
【0038】
図1および図2を参照して、サーバ装置1は再送信サーバ11および/またはVoD(Video On Demand)サーバ12に対応し、第1のネットワーク2はNGN網13に対応し、ネットワーク中継装置3はホームゲートウェイ14に対応し、第2のネットワーク5は電力線を介して通信を行なうPLCネットワーク16に対応する。本明細書では、以下、ホームゲートウェイを「HGW」と呼称する。なお、第1のネットワーク1は、NGN網13だけではなく、他のアクセスネットワークを用いても良い。例えば、他のアクセスネットワークとは、たとえばADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)やFTTH(Fiber to the Home)等でもよい。
【0039】
PLCネットワーク16と各種機器との間には、さらに、PLCアダプタ15が設けられている。PLCアダプタ15は、イーサネット(登録商標)の信号とPLCの信号を相互変換する機器である。HGW14、STB17、TV(Television)20は、それぞれ、イーサネット(登録商標)用の端子を備えており、PLCアダプタ15とイーサネット(登録商標)ケーブルで接続されることにより、PLCアダプタ15およびPLCネットワーク16を介して相互に通信することが可能となる。なお、以下では、図2において3箇所に記載されたPLCアダプタ15(HGW14に接続されたもの、STB17に接続されたもの、そして、TV20に接続されたもの)のそれぞれを区別する場合には、PLCアダプタ15a,15b,15cをそれぞれ使用することとする。
【0040】
また、TV20は、本発明のデジタル放送受信装置の一実施の形態である。
また、STB17には、映像コンテンツなどの各種データを表示する表示装置の一例として、TV18が接続されている。なお、TV18にSTB17の機能を内蔵させて、TV18とPLCアダプタ15とがイーサネット(登録商標)によって接続されるように構成されていてもよい。
【0041】
また、図2に示された例では、HGW14、PLC親局19、STB17、TV20はそれぞれ外付けのPLCアダプタ15を介してPLCネットワーク16に接続されているが、それぞれにPLCアダプタ15が内蔵されていてもよい。
【0042】
また、図2では、PLCアダプタ15cにPLC親局19が外部的に接続されているように図示されているが、実際にはPLCアダプタ15cがPLC親局19の機能を含んでいる。また、PLC親局19の機能は、PLCアダプタ15cだけではなく、他の全てのPLCアダプタ15にも含まれており、PLCネットワーク16の通信の状況に応じて複数のPLCアダプタ15の中の1台がPLC親局19として機能する。しかしながら、以下の実施形態では、本発明の理解を容易にするため、PLCアダプタ15から独立したPLC親局19が、特定のPLCアダプタ15cに接続されているものとする。
【0043】
また、TV20は地上デジタル放送の受信アンテナを持ち、電波塔21から発信される地上デジタル放送の電波を受信することができる。なお、ここでは地上デジタル放送としているが、衛星からの電波を受信可能な受信アンテナを持ち、衛星から発信されるBS(Broadcasting Satellite)デジタル放送や、CS(Communications Satellite)デジタル放送の電波を受信してもよい。なお、図2には特に記載していないが、TV18においても同等の機能を備えていてもよい。
【0044】
次に、図2における再送信サーバ11について説明する。再送信サーバ11は、地上デジタル放送の難視聴対策のため、IP網を利用した地上デジタル放送の再送信を行なうためのものである。再送信サーバ11は、アンテナ(図示せず)で受信した地上デジタル放送を再エンコードし、NGN網13に向けてIPマルチキャスト方式で送信する。再送信サーバ11によって送信されるIP再送信コンテンツは、2.5秒以下の遅延があるものの、地上デジタル放送のコンテンツと同等の画質、音質、サービスを備えており、その地域で受信可能な地上デジタル放送と同内容かつ同数のチャネルが選択可能である。使用者は、IP再送信におけるチャネル情報を取得し、所望のチャネルのマルチキャストアドレスに参加(JOIN)することにより、所望のチャネルのIP再送信コンテンツを受信できる。また、所望のチャネルのIP再送信コンテンツを停止する際は、所望のチャネルのマルチキャストアドレスに対して脱退(LEAVE)処理を行なうことによりコンテンツの受信を終了する。
【0045】
次に、図2におけるVoDサーバ12について説明する。VoDサーバ12は、使用者からの要求に基づいて、保存している映像などのコンテンツを配信するものである。VoDサーバ12には、使用者に提供する映像などのコンテンツデータと、当該映像コンテンツに付随したビットレート、伝送所要時間、提供価格などの関連情報のデータとを記憶部(図示せず)に記憶している。
【0046】
STB17は、使用者がある映像コンテンツの視聴を所望する旨を、リモートコントローラ、操作ボタン(図示せず)などを介して使用者から取得すると、PLCネットワーク16およびNGN網13を介して、VoDサーバ12に送信する。VoDサーバ12は、受信した伝送要求に対応する映像コンテンツをパケット形態でSTB17に伝送する。そして、STB17は、VoDサーバ12から受信した映像コンテンツのパケットを映像データとして再構築し、TV18において映像として使用者に提示する。
【0047】
また、同様にSTB17は、使用者があるIP再送信コンテンツの視聴を所望する旨を、リモートコントローラ、操作ボタン(図示せず)などを介して使用者から取得すると、PLCネットワーク16を介してNGN網13の所定のマルチキャストアドレスにJOINし、所望のチャネルのIP再送信コンテンツをパケット形態で受信し、STB17は、パケット形態で受信した映像コンテンツを映像データとして再構築し、TV18において映像として使用者に提示する。
【0048】
また、TV20は、使用者がある映像コンテンツの視聴を所望する旨を、リモートコントローラ、操作ボタン(図示せず)などを介して使用者から取得すると、PLCネットワーク16およびNGN網13を介して、VoDサーバ12に送信する。VoDサーバ12は、受信した伝送要求に対応する映像コンテンツをパケット形態でTV20に伝送する。そして、TV20は、VoDサーバ12から受信した映像コンテンツのパケットを映像データとして再構築し、映像として使用者に提示する。
【0049】
また、同様にTV20は、使用者があるIP再送信コンテンツの視聴を所望する旨を、リモートコントローラ、操作ボタン(図示せず)などを介して使用者から取得すると、PLCネットワーク16を介してNGN網13の所定のマルチキャストアドレスにJOINし、所望のチャネルのIP再送信コンテンツをパケット形態で受信し、TV20は、パケット形態で受信した映像コンテンツを映像データとして再構築し、映像として使用者に提示する。
【0050】
なお、図2においてはNGN網13に接続されているサーバは、再送信サーバ11とVoDサーバ12のみを示しているが、この他にも、映像や音声、テキストデータなどの種々のコンテンツを提供するサーバがNGN網13に接続され、STB17やTV20はこれらのサーバに蓄積されたコンテンツを、NGN網13とPLCネットワーク16を経由して受信することも可能である。
【0051】
図3は、本発明のデジタル放送受信装置の一実施の形態であるTV20のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【0052】
図3を参照して、TV20は、当該TV20の全体的な動作を制御する制御部201を含む。制御部201は、CPU(Central Processing Unit)を含む。
【0053】
また、TV20は、電波塔21から発信される地上デジタルTV放送の映像信号と音声信号を地上デジタルTV放送受信部203で受信する。また、TV20は、ネットワーク受信部202で、PLCアダプタ15cやHGW14やNGN網13を介して、再送信サーバ11に接続し、地上デジタルテレビジョン放送のIP再送信データを取得する。
【0054】
ネットワーク受信部202は、地上デジタルテレビジョン放送のIP再送信データを取得し、復調処理を行った後で、映像表示部206と音声出力部207へ、映像信号と音声信号の形式にして出力する。
【0055】
地上デジタルTV放送受信部203は、地上デジタルテレビジョン放送のデータを取得し、復調処理を行った後で、映像表示部206と音声出力部207へ、映像信号と音声信号の形式にして出力する。
【0056】
映像切替部204は、再送信サーバ11からの映像信号と地上デジタルTV受信部102からの映像信号を、制御部201からの切替制御信号を用いて切り換え、どちらか一方を出力する。音声切替部205は、再送信サーバ11からの音声信号と地上デジタルTV受信部102からの音声信号を、制御部109からの切替制御信号を用いて切り換え、どちらか一方を出力する。
【0057】
映像表示部206は、たとえば液晶ディスプレイからなる。音声再生部207は、音声切替部205からの音声信号を、スピーカなどの出力装置を用いて可聴音声として出力する。
【0058】
次に、図4のフローチャートを用いて、本実施形態における処理の流れを説明する。まず、TV20は電波塔21から送信される地上デジタル放送の電波を受信し、チャネルサーチ処理を行ない、その地域において送信されているチャネルごとに受信可能か否かを判定する。(ステップS001)また、TV20は再送信サーバ11が提供するチャネルサーチ用のマルチキャストアドレスに対しJOINし、チャネルサーチ処理を行ない、IP再送信で受信可能なチャネルの情報を取得する。(ステップS002)なお、地上デジタル放送においては、チャネルによっては電波の受信電界強度が弱く、正常に受信できないチャネルが存在する可能性があるが、IP再送信においては、再送信サーバ11がメンテナンス中である等、特殊な事情を除いては、その地域で提供されているチャネルは全て受信可能である。
【0059】
ステップS003において、TV20は地上デジタル放送のあるチャネル(チャネル1とする)における受信電界強度を調査し、ある閾値以上の場合は、チャネル1は地上デジタル放送として受信するよう割り当てる(ステップS004)。もし、チャネル1における受信電界強度が、ある閾値を下回る場合は、チャネル1はIP再送信として受信するように割り当てる(ステップS005)。続いて別のチャネル(チャネル2とする)についても同様に、受信電界強度がある閾値以上か否かで、地上デジタル放送で受信するか、IP再送信で受信するかを決定する。以下同様に、その地域で送信されているすべてのチャネルについて受信方法(地上デジタル方法またはIP再送信)の割り当てが完了したら(ステップS006)、処理を終了する。
【0060】
この処理によって各チャネルについての割り当ては、たとえば表1に示すような態様で、記憶部28に記憶される。
【0061】
【表1】

なお、図4を参照して説明した処理において最初に地上デジタル放送のチャネルサーチを行ない(ステップS001)、その後IP再送信のチャネルサーチを行なっているが(ステップS002)、この順序は逆になってもよいし、2つのチャネルサーチを同時に(並行して)行なってもよい。
【0062】
図5に、ステップS003における受信電界強度の閾値を示す。
図5では、縦軸に受信品質が定義され、横軸の受信電界強度が定義され、そして、受信電界強度についての閾値とTV20において映像および音声が再生可能な限界の受信品質とが破線で示されている。
【0063】
地上デジタル放送の特性として、ある程度の受信電界強度があれば良好に映像および音声の再生が可能であるが、あるレベルを下回ると急激に受信品質(再生する映像および音声の品質)が低下する特徴を持つ。そのため、周囲の環境の変化などで一時的に受信電界強度が低下しても、十分に再生可能な受信品質を保てるように閾値を設けることとする。
【0064】
ここで、TV20において、IP再送信によってチャネル1が視聴されていたとする。TV20は予め、チャネル1のコンテンツを視聴するのに必要かつ十分な帯域を確保するため、PLC親局19に帯域のQoS伝送の要求を出す。PLC親局19は現在のネットワークの利用状況を調べ、QoSが実現可能であればTV20のQoS伝送を許可する。
【0065】
ここで、図6を参照して、TV20において、IP再送信による番組が視聴されている状態から、当該番組であって地上デジタル放送で受信されたものが視聴される状態へと変更される際の処理の内容について説明する。なお、図6に示された処理は、表1を用いて説明したような各チャネルについての割り当てが「IP再送信」とされているチャネルが視聴される際に実行される処理である。また、図6では、PLC親局19、TV20、STB17の3つの機器について記載しており、同じ高さにある処理は、ほぼ同じ時間に(ほぼ並行して)行なわれるものとする。
【0066】
TV20において、IP再送信のチャネル1を受信し、視聴している(ステップS101)。このとき、STB17において、VoD視聴の要求があり、PLC親局19に対し帯域確保を要求する(ステップS301)。ここで、PLC親局19はTV20に対し、帯域情報を通知する(ステップS201)。ここで通知される帯域情報には、ネットワークに接続された各機器の帯域確保状況や、新たに要求された帯域確保についての情報が含まれる。なお、図6においては、PLC親局19から自発的に(TV20から情報が送信されることなくPLC親局19の内部における処理の結果として)TV20に対し、帯域情報を通知しているが、例えば、TV20から帯域情報の通知要求があったときのみ通知してもよい。また、PLC親局19から帯域情報を通知せずに、TV20がPLC親局19の保持している帯域情報を直接取得してもよい。PLC親局より帯域情報を取得したTV20は(ステップS102)、新たに要求された帯域確保を行えるだけの十分な帯域が、PLCネットワーク16に残されているかどうかを、PLC親局21より取得した帯域情報から判別する(ステップS103)。なお、十分な帯域が残されているか否かの判断は、たとえば、PLC親局19から取得した帯域情報に、PLCネットワーク16の総帯域情報と、自機器や他の機器が既に確保している帯域情報と、他の機器がこれから確保しようとしている帯域の情報が含まれるとした場合に、他の機器がこれから確保しようとしている帯域がPLCネットワーク16に残されているか否かの判断によりなされる。
【0067】
そして、帯域が十分残されていれば、TV20はPLC親局19より帯域情報の取得を繰り返す。また、PLC親局19においてもPLCネットワーク16の状況を調査し、十分な帯域が残されているかどうかを判別する(ステップS202)。十分な帯域が残されていればステップS205の処理へと移り、十分な帯域が残されていなければ、ステップS203の処理へと移る。
【0068】
ここで、十分な帯域が残されていない場合を考える。TV20においては、現在受信中のIP再送信のチャネル1を停止するため(ステップS104)、NGN網13のチャネル1に対応するマルチキャストアドレスに対してLEAVEを行ない、PLC親局19に対し、帯域の開放要求を行なう(ステップS105)。帯域の開放要求を受けたPLC親局19は、帯域を開放し(ステップS203)、TV20に対し、帯域の開放が完了した通知を送信する(ステップS204)。帯域の開放完了通知を受け取ったTV20は、地上デジタル放送のチャネル1を受信する。(ステップS106)
一方、ステップS301においてSTB17から帯域確保要求を受けていたPLC親局19は、要求に従い、帯域の確保を行ない(ステップS205)、STB17に対し、帯域の確保が完了した通知を送信する(ステップS206)。帯域の確保完了通知を受け取ったSTB17は、Vodサーバ12に対しコンテンツの送信要求を行ない(ステップS302)、所望のVoDコンテンツを受信する(ステップS303)。
【0069】
次に、図7を参照して、TV20において、地上デジタル放送で受信された番組が視聴されている状態から、当該番組であってIP再送信によるものが視聴される状態へと変更される際の処理の内容について説明する。
【0070】
上記したように、TV20では、地上デジタル放送のチャネル1を受信し、STB17ではVoDサーバ12からVoDコンテンツを受信している(図7のステップS401、S601)。このとき、STB17が、VoD視聴の終了要求をVoDサーバ12に対して行なったとする(ステップS602)。VoDコンテンツ視聴終了により、これまで確保していた帯域が不要になるので、STB17はPLC親局19に対し、帯域の開放要求を行なう(ステップS603)。帯域の開放要求を受けたPLC親局19は、帯域を開放し(ステップS501)、STB17に対し、帯域の開放が完了した通知を送信する(ステップS502)。ここで、PLC親局19は、TV20に対し、帯域情報を通知する(ステップS503)。ここで通知される帯域情報には、ネットワークに接続された各機器の帯域確保状況(STB17がVoDの視聴を終了し、帯域が開放された後の、PLCネットワーク16の総帯域情報と自機器や他の機器がすでに確保している帯域情報を含む)や、新たに要求された帯域確保についての情報が含まれる。なお、ステップS503では、PLC親局19から自発的にTV20に対し、帯域情報を通知しているが、例えば、TV20から帯域情報の通知要求があったときのみ通知してもよい。また、PLC親局19から帯域情報を通知せずに、TV20がPLC親局19の保持している帯域情報を直接取得してもよい。ステップS402でPLC親局より帯域情報を取得したTV20は、現在視聴中の地上デジタル放送のチャネル1をIP再送信として受信することが可能な帯域が、PLCネットワーク16に残されているかどうかを、PLC親局21より取得した帯域情報から判別する(ステップS403)。帯域が十分残っていなければ、TV20はPLC親局19より帯域情報の取得を繰り返す。また、PLC親局19においてもPLCネットワーク16の状況を調査し、十分な帯域が残されているかどうかを判別する(ステップS504)。十分な帯域が残されていれば、ステップS505の処理へと移り、十分な帯域が残されていなければ、処理を終了する。
【0071】
ここで、十分な帯域が残されている場合を考える。TV20においては、現在受信中の地上デジタル放送のチャネル1を停止し(ステップS404)、PLC親局19に対し、帯域の確保要求を行なう(ステップS405)。帯域の確保要求を受けたPLC親局19は、帯域を確保し(ステップS505)、TV20に対し、帯域の確保が完了した通知を送信する(ステップS506)。帯域の開放完了通知を受け取ったTV20は、IP再送信のチャネル1を受信するため(ステップ406)、NGN網13のチャネル1に対応するマルチキャストアドレスに対してJOINを行なう。
【0072】
以上説明した本実施の形態では、TV18とTV20は、PLCアダプタ15b,15cを介して宅内ネットワークを構成している。TV20は、電波塔21からデジタル放送の番組を受信するとともに、NGN網13を介して、再送信サーバからデジタル放送の番組のIP再送信データを受信する。このように、TV20が、宅内ネットワークから外部のネットワークにIP接続することによってIP再送信データを受信する場合、宅内ネットワークの帯域状況から判断される空きの有無によって、番組のデータを、デジタル放送受信手段で取得するかIP受信手段で受信するかを切り替える。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明は、宅内に構築されたネットワークの帯域状況に応じてデジタル放送とIP再送信を切り替えることにより、宅内に構築されたネットワークの帯域を無駄に使用することなく、デジタル放送、あるいはIP再送信を受信することが可能なデジタル放送受信装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明が適用されるシステムの基本的な構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明が適用されるシステムの構成を示す概略図である。
【図3】本発明のデジタル放送受信装置の一実施の形態であるTVのハードウェア構成を模式的に示す図である。
【図4】図2のTVにおいて、チャネルサーチを行ない、受信方式を選択するためのフローチャートである。
【図5】図4における閾値を示す図である。
【図6】図2に示されたシステムのTVとPLC親局とSTBにおいて実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図2に示されたシステムのTVとPLC親局とSTBにおいて実行される処理の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 サーバ装置、2 第1のネットワーク、3 ネットワーク中継装置、4 ネットワーク管理装置、5 第2のネットワーク、6 デジタル放送受信装置、7,21 電波塔、11 再送信サーバ、12 VoDサーバ、13 NGN網、14 HGW、15,15a〜15c PLCアダプタ、16 PLCネットワーク、17 STB、18,20 TV、19 PLC親局、201 制御部、202 ネットワーク受信部、203 地上デジタルTV放送受信部、204 映像切替部、205 音声切替部、206 映像表示部、207 音声出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを構成する、デジタル放送受信装置であって、
デジタル放送の電波を受信するデジタル放送受信手段と、
IP接続を行なって、前記ネットワークとは異なるネットワークを構成するサーバから前記デジタル放送受信手段が受信する電波のIP再送信データを受信するIP受信手段と、
前記デジタル放送受信手段で受信した番組と前記IP受信手段で受信した番組のいずれかを、当該番組を出力させるために出力装置に送るかを切り替える番組切り替え手段と、
前記ネットワークの帯域状況を監視する帯域状況監視手段とを備え、
前記帯域状況監視手段によって取得した帯域状況に応じて、前記番組切り替え手段で前記デジタル放送受信手段と前記IP受信手段とを切り替えることを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項2】
前記IP受信手段が前記ネットワークへ接続する経路は、PLCによる通信経路を含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項3】
各チャネルごとに、番組の受信方法を、前記デジタル放送受信手段による電波の受信、または、前記IP受信手段によるデータの受信に決定する決定手段をさらに備え、
前記決定手段は、各チャネルについて、地上デジタル放送の受信電界強度がある閾値以上である場合には当該チャネルの受信方法を前記デジタル放送受信手段による電波の受信に決定し、地上デジタル放送の受信電界強度がある閾値未満である場合には当該チャネルの受信方法を前記IP受信手段による電波の受信に決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデジタル放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−171038(P2009−171038A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4579(P2008−4579)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】