説明

デジタル放送送信装置、デジタル放送受信装置およびデジタル放送システム

【課題】EMMを用いる場合であっても、EMMを用いない場合であっても、番組コンテンツの権利保護が可能なデジタル放送受信装置を提供する。
【解決手段】デジタル放送受信装置2は、予めワーク鍵としての事前埋め込みワーク鍵とデバイス鍵とを記憶する鍵記憶手段20と、デジタル放送に多重化されている暗号化された番組コンテンツ、ECMおよびEMMを分離して抽出する多重化分離手段21と、EMMをデバイス鍵で復号して、送信側から送信されたワーク鍵である更新ワーク鍵を抽出するEMM復号手段22と、ECMに付加されているワーク鍵切り替え情報により事前埋め込みワーク鍵または更新ワーク鍵のいずれをワーク鍵として使用するかを切り替えるワーク鍵切り替え手段23と、ワーク鍵によりECMの暗号化領域を復号して、スクランブル鍵を抽出するECM復号手段24と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送における番組コンテンツの権利保護を行うデジタル放送送信装置、デジタル放送受信装置およびデジタル放送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本のデジタル放送の無料放送では、スクランブル(暗号化)された番組コンテンツ(放送番組)を放送し、併せてコピー制御の制御信号も重畳して送信することで、番組コンテンツの権利保護を実現している。
このデジタル放送で用いられているスクランブル技術は、元々、視聴者を識別して、有料放送を送信することを想定した限定受信方式で採用されている技術である。しかし、無料放送の場合、当該技術は、視聴者を識別するために用いられるのではなく、権利保護に対応した受信装置のみがデスクランブル(復号)を可能とすることで、番組コンテンツの権利保護を実現している(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
ここで、図12を参照して、限定受信方式について説明する。この図12に示した限定受信方式の構成は、無料放送の番組コンテンツの権利保護においても同様の構成が採られている。
すなわち、放送局(デジタル放送送信装置30)は、スクランブル手段31によって、スクランブル鍵Ksを用いて番組コンテンツをスクランブル(暗号化)する。また、デジタル放送送信装置30は、ECM生成手段32によって、適宜更新されるワーク鍵Kwを用いて、スクランブル鍵Ksを暗号化してECM(Entitlement Control Message:番組情報)を生成する。さらに、デジタル放送送信装置30は、EMM生成手段33によって、デジタル放送受信装置40の機種またはメーカごとに固有のデバイス鍵Kdを用いて、ワーク鍵Kwを暗号化して受信装置宛のEMM(Entitlement Management Message:個別情報)を生成する。なお、デバイス鍵Kdは、マスター鍵Kmと呼ばれることがあるが、名称の違いであって機能上の差異はない。そして、デジタル放送送信装置30は、多重化手段34によって、スクランブル化された番組コンテンツに、ECMおよびEMMを多重化して送信する。
【0004】
一方、デジタル放送受信装置40は、多重化分離手段41によって、スクランブル化された番組コンテンツから、多重化されているEMMおよびECMを分離する。そして、デジタル放送受信装置40は、EMM復号手段42によって、ICカード等のセキュリティモジュールに書き込まれているデジタル放送受信装置40の機種またはメーカごとに固有のデバイス鍵Kdを用いて、EMMからワーク鍵Kwを復号し抽出する。さらに、デジタル放送受信装置40は、ECM復号手段43によって、ワーク鍵Kwを用いて、ECMからスクランブル鍵Ksを復号し抽出する。そして、デジタル放送受信装置40は、デスクランブル手段44によって、スクランブル鍵Ksを用いて、スクランブル化された番組コンテンツをデスクランブルすることで、番組コンテンツを視聴可能なデータに復号する。
【0005】
なお、現在では、予め番組コンテンツを復号するために必要な鍵を書き込んだICカード等のセキュリティモジュールを、権利保護に対応した受信装置に対して発行している。この場合、放送局(デジタル放送送信装置30)は、ECM生成手段32によって、ワーク鍵Kwを用いて、スクランブル鍵Ksを暗号化してECMを生成するが、EMMは使用していない。一方、デジタル放送受信装置40は、ECM復号手段43によって、予めICカードに書き込まれているワーク鍵Kwを用いて、ECMからスクランブル鍵Ksを復号し抽出する。このように、現在のデジタル放送の無料放送では、EMMを用いずに、番組コンテンツの権利保護を行っている。
【0006】
一方、非特許文献1では、ICカード等のセキュリティモジュールを用いずにコンテンツの権利保護を行う手法も規格化されている。この規格では、ワーク鍵がハッキング等によって盗まれる可能性を軽減(セキュリティを維持)させるために、以下の手法を用いている。
【0007】
すなわち、この手法は、デジタル放送受信装置の製造時にデバイス鍵は組み込むが、ワーク鍵はEMMにより送信する。このとき、放送局は、デジタル放送送信装置において、複数のワーク鍵を生成する。そして、デジタル放送送信装置は、スクランブル鍵をそれぞれのワーク鍵で暗号化し、複数の暗号化されたスクランブル鍵をECMに埋め込んで送信する。さらに、デジタル放送送信装置は、個別のデジタル放送受信装置宛に、当該デジタル放送受信装置の機種またはメーカごとに固有のデバイス鍵で、当該受信装置に対応するワーク鍵を暗号化し、ECMで送信したどの暗号化スクランブル鍵を用いるのかを示すポインタとともにEMMに埋め込んで送信する。
このように、ワーク鍵がハッキング等によって盗まれる可能性を軽減させるためには、ECMとEMMとを用いて権利保護を行うことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−221935号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「デジタル放送におけるアクセス制御方式(ARIB STD−B25)」、5.1版、(社)電波産業会、平成21年3月18日改定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のICカードを用いた権利保護方式では、ワーク鍵はICカードに組み込まれており、放送局からは、EMMを送信せず、ECMのみを送信している。しかし、ICカードを用いない権利保護方式では、ハッキング等によりワーク鍵が盗まれる可能性を低減するため、ECMとともにEMMも送信する必要がある。
このように、ICカードを用いた権利保護方式と、ICカードを用いずに権利保護を行う方式とは、EMMの送出の有無によって大きくその仕様が異なるため、ICカードを用いない権利保護方式において、デジタル放送受信装置に対するハッキング等の対策を行い、かつ、EMMの送出を行わない運用を併用することが困難であった。また、放送事業者においては、ICカードを用いない権利保護方式が、権利保護およびデジタル放送受信装置の管理の面から望まれている。
【0011】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、EMMを用いてワーク鍵を配信する場合であっても、EMMを用いない場合であっても、番組コンテンツの権利保護が可能なデジタル放送送信装置、デジタル放送受信装置およびデジタル放送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載のデジタル放送送信装置は、番組コンテンツをデジタル放送で送信するデジタル放送送信装置であって、スクランブル手段と、番組情報生成手段と、個別情報生成手段と、多重化手段と、を備える構成とした。
【0013】
かかる構成において、デジタル放送送信装置は、スクランブル手段によって、映像、音声、データ等の番組コンテンツを予め定めた暗号アルゴリズムでスクランブル鍵により暗号化する。
【0014】
そして、デジタル放送送信装置は、番組情報生成手段によって、外部から入力されるワーク鍵切り替え制御信号の指示に基づいて、予めデジタル放送受信装置に埋め込まれている事前埋め込みワーク鍵とデジタル放送の送信側で更新する更新ワーク鍵とのいずれをワーク鍵として使用するかを示すワーク鍵切り替え情報を番組情報の非暗号化領域に書き込むとともに、指示されたワーク鍵によりスクランブル鍵を暗号化して番組情報の暗号化領域に書き込んで、デジタル放送受信装置に共通の番組情報を生成する。これによって、スクランブル鍵を暗号化したワーク鍵が、事前埋め込みワーク鍵であるのか、または、更新ワーク鍵であるのかが、番組情報に埋め込まれることになる。
【0015】
また、デジタル放送送信装置は、個別情報生成手段によって、更新ワーク鍵をデジタル放送受信装置に対応したデバイス鍵で暗号化してデジタル放送受信装置宛の個別情報を生成する。なお、このデバイス鍵は、当該デジタル放送受信装置の機種またはメーカによって固有の鍵である。これによって、適宜更新される更新ワーク鍵は、個別情報に埋め込まれることになる。
【0016】
そして、デジタル放送送信装置は、多重化手段によって、スクランブル手段で暗号化された番組コンテンツに番組情報生成手段で生成された番組情報を多重化する。これによって、番組情報はデジタル放送受信装置に送信され、スクランブル鍵が事前埋め込みワーク鍵で暗号化されたのか、あるいは、更新ワーク鍵で暗号化されたのかが通知されることになる。また、この多重化手段は、ワーク鍵切り替え制御信号の指示が更新ワーク鍵を使用する旨の指示である場合、さらに、暗号化された番組コンテンツに個別情報を多重化する。これによって、デジタル放送送信装置において、ワーク鍵として適宜更新される更新ワーク鍵を使用する場合、デジタル放送受信装置において、ワーク鍵が適宜更新されることになる。
【0017】
また、請求項2に記載のデジタル放送送信装置は、請求項1に記載のデジタル放送送信装置において、事前埋め込みワーク鍵がデジタル放送受信装置に複数記憶されており、番組情報生成手段は、ワーク鍵切り替え情報に当該複数の事前埋め込みワーク鍵のうちのいずれを使用したかを示す鍵識別情報を記述する構成とした。
【0018】
かかる構成において、デジタル放送送信装置は、番号等の鍵識別情報によって、複数の事前埋め込みワーク鍵のうち、どの事前埋め込みワーク鍵を使用したのかを、デジタル放送受信装置に通知する。
【0019】
さらに、請求項3に記載のデジタル放送受信装置は、スクランブル鍵を暗号化するワーク鍵として、予めデジタル放送受信装置に埋め込まれている事前埋め込みワーク鍵とデジタル放送の送信側で更新する更新ワーク鍵とのいずれを使用するかを示すワーク鍵切り替え情報を含んだ番組情報を、デジタル放送送信装置から受信して、前記デジタル放送で送信される暗号化された番組コンテンツを復号するデジタル放送受信装置であって、鍵記憶手段と、多重化分離手段と、個別情報復号手段と、ワーク鍵切り替え手段と、番組情報復号手段と、デスクランブル手段と、を備える構成とした。
【0020】
かかる構成において、デジタル放送受信装置は、鍵記憶手段に予めワーク鍵としての事前埋め込みワーク鍵と、送信側で当該デジタル放送受信装置宛の個別情報を生成する際に使用する当該デジタル放送受信装置の機種またはメーカに固有のデバイス鍵とを記憶しておく。
そして、デジタル放送受信装置は、多重化分離手段によって、デジタル放送を受信して、多重化されている暗号化された番組コンテンツ、番組情報および個別情報を分離して抽出する。
【0021】
そして、デジタル放送受信装置は、個別情報復号手段によって、多重化分離手段において個別情報が抽出された場合に、当該個別情報を鍵記憶手段に記憶されているデバイス鍵で復号して、更新ワーク鍵を抽出する。これによって、デジタル放送受信装置は、個別のデジタル放送受信装置ごとに送信される個別情報によって、適宜更新される更新ワーク鍵を取得する。
【0022】
また、デジタル放送受信装置は、ワーク鍵切り替え手段によって、多重化分離手段において番組情報が抽出された場合に、当該番組情報に付加されているワーク鍵切り替え情報により事前埋め込みワーク鍵または前記更新ワーク鍵のいずれをワーク鍵として使用するかを切り替える。なお、このワーク鍵切り替え手段は、入出力の経路を切り替えるスイッチで構成してもよいし、経路情報の内容を保持する記憶手段として構成してもよい。
【0023】
そして、デジタル放送受信装置は、番組情報復号手段によって、ワーク鍵切り替え手段で使用が切り替えられたワーク鍵により番組情報の暗号化領域を復号して、スクランブル鍵を抽出する。これによって、デジタル放送受信装置は、ワーク鍵として事前埋め込みワーク鍵を使用する場合であっても、更新ワーク鍵を使用する場合であっても、スクランブル鍵を抽出することができる。
そして、デジタル放送受信装置は、デスクランブル手段によって、番組情報復号手段で抽出されたスクランブル鍵で暗号化された番組コンテンツを復号する。
【0024】
また、請求項4に記載のデジタル放送受信装置は、スクランブル鍵を暗号化するワーク鍵として、予めデジタル放送受信装置に埋め込まれている複数の事前埋め込みワーク鍵の1つとデジタル放送の送信側で更新する更新ワーク鍵とのいずれを使用するかを示すワーク鍵切り替え情報を含んだ番組情報を、デジタル放送送信装置から受信して、前記デジタル放送で送信される暗号化された番組コンテンツを復号するデジタル放送受信装置であって、鍵記憶手段と、多重化分離手段と、個別情報復号手段と、ワーク鍵切り替え手段と、番組情報復号手段と、デスクランブル手段と、を備え、事前埋め込みワーク鍵を複数備える構成とした。
【0025】
かかる構成において、デジタル放送受信装置は、鍵記憶手段に予めワーク鍵としての複数の事前埋め込みワーク鍵と、送信側で当該デジタル放送受信装置宛の個別情報を生成する際に使用する当該デジタル放送受信装置の機種またはメーカに固有のデバイス鍵とを記憶しておく。そして、デジタル放送受信装置は、多重化分離手段によって、デジタル放送を受信して、多重化されている暗号化された番組コンテンツ、番組情報および個別情報を分離して抽出する。
【0026】
そして、デジタル放送受信装置は、個別情報復号手段によって、多重化分離手段において個別情報が抽出された場合に、当該個別情報を鍵記憶手段に記憶されているデバイス鍵で復号して、更新ワーク鍵を抽出する。
【0027】
また、デジタル放送受信装置は、ワーク鍵切り替え手段によって、多重化分離手段において番組情報が抽出された場合に、当該番組情報に付加されているワーク鍵切り替え情報に記述されている鍵識別情報により複数の事前埋め込みワーク鍵の中の1つまたは前記更新ワーク鍵のいずれをワーク鍵として使用するかを切り替える。
【0028】
そして、デジタル放送受信装置は、番組情報復号手段によって、ワーク鍵切り替え手段で使用が切り替えられたワーク鍵により番組情報の暗号化領域を復号して、スクランブル鍵を抽出する。
そして、デジタル放送受信装置は、デスクランブル手段によって、番組情報復号手段で抽出されたスクランブル鍵で暗号化された番組コンテンツを復号する。
【0029】
また、請求項5に記載のデジタル放送システムは、デジタル放送により番組コンテンツを放送するデジタル放送システムであって、スクランブル手段と、番組情報生成手段と、個別情報生成手段と、多重化手段と、を備えたデジタル放送送信装置と、鍵記憶手段と、多重化分離手段と、個別情報復号手段と、ワーク鍵切り替え手段と、番組情報復号手段と、デスクランブル手段と、を備えたデジタル放送受信装置とで構成した。
【0030】
かかる構成において、デジタル放送システムは、デジタル放送送信装置のスクランブル手段によって、映像、音声、データ等の番組コンテンツを予め定めた暗号アルゴリズムでスクランブル鍵により暗号化する。
【0031】
そして、デジタル放送システムは、デジタル放送送信装置の番組情報生成手段によって、外部から入力されるワーク鍵切り替え制御信号の指示に基づいて、予めデジタル放送受信装置に埋め込まれている事前埋め込みワーク鍵とデジタル放送の送信側で更新する更新ワーク鍵とのいずれをワーク鍵として使用するかを示すワーク鍵切り替え情報を番組情報の非暗号化領域に書き込むとともに、指示されたワーク鍵によりスクランブル鍵を暗号化して番組情報の暗号化領域に書き込んで、デジタル放送受信装置に共通の番組情報を生成する。
【0032】
また、デジタル放送システムは、デジタル放送送信装置の個別情報生成手段によって、更新ワーク鍵をデジタル放送受信装置に対応したデバイス鍵で暗号化してデジタル放送受信装置宛の個別情報を生成する。なお、このデバイス鍵は、当該デジタル放送受信装置の機種またはメーカによって固有の鍵である。
そして、デジタル放送システムは、デジタル放送送信装置の多重化手段によって、スクランブル手段で暗号化された番組コンテンツに番組情報生成手段で生成された番組情報を多重化する。また、この多重化手段は、ワーク鍵切り替え制御信号の指示が更新ワーク鍵を使用する旨の指示である場合、さらに、暗号化された番組コンテンツに個別情報を多重化する。
【0033】
また、デジタル放送システムは、デジタル放送受信装置の鍵記憶手段に予めワーク鍵としての事前埋め込みワーク鍵と当該デジタル放送受信装置の機種またはメーカに固有のデバイス鍵とを記憶しておく。
そして、デジタル放送システムは、デジタル放送受信装置の多重化分離手段によって、デジタル放送を受信して、多重化されている暗号化された番組コンテンツ、番組情報および個別情報を分離して抽出する。
【0034】
そして、デジタル放送システムは、デジタル放送受信装置の個別情報復号手段によって、多重化分離手段において個別情報が抽出された場合に、当該個別情報を鍵記憶手段に記憶されているデバイス鍵で復号して、更新ワーク鍵を抽出する。
【0035】
また、デジタル放送システムは、デジタル放送受信装置のワーク鍵切り替え手段によって、多重化分離手段において番組情報が抽出された場合に、当該番組情報に付加されているワーク鍵切り替え情報により事前埋め込みワーク鍵または前記更新ワーク鍵のいずれをワーク鍵として使用するかを切り替える。
【0036】
そして、デジタル放送システムは、デジタル放送受信装置の番組情報復号手段によって、ワーク鍵切り替え手段で使用が切り替えられたワーク鍵により番組情報の暗号化領域を復号して、スクランブル鍵を抽出する。
そして、デジタル放送システムは、デジタル放送受信装置のデスクランブル手段によって、番組情報復号手段で抽出されたスクランブル鍵で暗号化された番組コンテンツを復号する。
【0037】
これによって、デジタル放送システムは、個別情報により更新可能なワーク鍵を使用することも可能であるし、個別情報を使用せず、予めデジタル放送受信装置に埋め込まれているワーク鍵を使用することも可能になる。
【0038】
さらに、請求項6に記載のデジタル放送システムは、請求項5に記載のデジタル放送システムにおいて、鍵記憶手段に、事前埋め込みワーク鍵を複数記憶しておく構成とした。
【0039】
かかる構成において、デジタル放送システムは、デジタル放送送信装置の番組情報生成手段が、ワーク鍵切り替え情報に当該複数の事前埋め込みワーク鍵のうちのいずれを使用したかを示す鍵識別情報を記述することで、使用するワーク鍵を番組情報により、デジタル放送受信装置に通知する。そして、デジタル放送システムは、デジタル放送受信装置のワーク鍵切り替え手段が、多重化分離手段において番組情報が抽出された場合に、当該番組情報に付加されているワーク鍵切り替え情報に記述されている鍵識別情報により複数の事前埋め込みワーク鍵の中の1つまたは更新ワーク鍵のいずれをワーク鍵として使用するかを切り替える。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
請求項1,3,5に記載の発明によれば、デジタル放送送信装置から、個別情報(EMM)を用いてワーク鍵(更新ワーク鍵)を送信することで、番組コンテンツの権利保護を行うことも可能であり、個別情報(EMM)を用いず、デジタル放送受信装置に予め埋め込まれているワーク鍵(事前埋め込みワーク鍵)で、番組コンテンツの権利保護を行うことも可能である。このように、本発明は、複数の放送局からデジタル放送を受信する環境において、ICカードを用いずに権利保護を行う方式により個別情報(EMM)を送信する放送局と、個別情報(EMM)を送信しない放送局とを共存させることができる。
【0041】
請求項2,4,6に記載の発明によれば、事前埋め込みワーク鍵をデジタル放送受信装置に複数記憶し、指定された事前埋め込みワーク鍵を用いることで、使用するワーク鍵を変えることができ、番組コンテンツの権利保護の安全性を高めることができる。
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタル放送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るデジタル放送送信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るECMの構成例を示すデータ構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係るデジタル放送送信装置のワーク鍵切り替え制御動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係るデジタル放送送信装置のECM生成・多重化動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係るデジタル放送送信装置のEMM生成・多重化動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係るデジタル放送受信装置のワーク鍵切り替え制御動作およびECM復号動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係るデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るデジタル放送受信装置のワーク鍵切り替え制御動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係るデジタル放送受信装置のECM復号動作を示すフローチャートである。
【図12】デジタル放送における限定受信システムまたはコンテンツ保護システムの基本構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<デジタル放送システムの概要>
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係るデジタル放送システムSの概要について説明する。
【0044】
デジタル放送システムSは、放送局(放送事業者)のデジタル放送送信装置1と、各家庭等に設置されたデジタル放送受信装置2,2,…とで構成され、デジタル放送送信装置1からデジタル放送で送信される番組コンテンツ(放送番組)をデジタル放送受信装置2において受信し、視聴者が視聴するシステムである。なお、放送波Wは、地上デジタル放送、衛星放送、ケーブル放送等、無線、有線を問わない。
【0045】
このデジタル放送システムSは、デジタル放送送信装置1において、番組コンテンツのスクランブル(暗号化)を行い、デジタル放送受信装置2において、スクランブルされた番組コンテンツをデスクランブル(復号)することで、デジタル放送における番組コンテンツの権利保護を行う。
以下、デジタル放送システムSを構成するデジタル放送送信装置1およびデジタル放送受信装置2の構成および動作について説明を行う。
【0046】
[デジタル放送送信装置の構成]
まず、図2を参照(適宜図1参照)して、本発明の実施形態に係るデジタル放送送信装置の構成について説明する。
このデジタル放送送信装置1は、デジタル放送で送信する番組コンテンツ(トランスポートストリーム:TS)をスクランブル(暗号化)するものである。このデジタル放送送信装置1は、外部から入力されるワーク鍵切り替え制御信号に基づいて、番組コンテンツをスクランブルするためのスクランブル鍵Ksを、どのワーク鍵(事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kw)で暗号化するかを切り替える機能を有する。
【0047】
ここでは、デジタル放送送信装置1は、スクランブル手段11と、ECM生成手段12と、EMM生成手段13と、多重化手段14と、ワーク鍵切り替え手段15と、EMM切り替え手段16と、を備えている。
【0048】
なお、デジタル放送送信装置1は、スクランブル鍵Ks、事前埋め込みワーク鍵Kwp、更新ワーク鍵Kwおよびデバイス鍵Kdが予め図示を省略した記憶手段に記憶されているものとする。もちろん、これらの鍵は、適宜外部から入力される形態でも構わない。
ここで、デジタル放送送信装置1が使用する各種の鍵について説明する。
【0049】
スクランブル鍵Ksは、入力される番組コンテンツをスクランブル(暗号化)するための鍵である。このスクランブル鍵Ksは、スクランブル手段11において、番組コンテンツをスクランブルする際に使用される。なお、このスクランブル鍵Ksは、時間によって更新されるものであって、数秒に1回程度更新されるものである。
【0050】
事前埋め込みワーク鍵Kwpは、予めデジタル放送受信装置2に埋め込まれているワーク鍵である。この事前埋め込みワーク鍵Kwpは、固定の(変化しない)鍵であって、ECM生成手段12において、スクランブル鍵Ksを暗号化する際に使用される。この事前埋め込みワーク鍵Kwpは、1つである必要はなく、予め複数設けてもよい。なお、事前埋め込みワーク鍵Kwpを複数設ける場合、どの事前埋め込みワーク鍵Kwpを用いたのかをデジタル放送受信装置2と対応がとれるように、番号等(識別情報)によって予め対応付けておくこととする。
【0051】
更新ワーク鍵Kwは、EMM(個別情報)によって、所定の時間間隔(例えば、20秒)でデジタル放送受信装置2に送信されるワーク鍵である。この更新ワーク鍵Kwは、ECM生成手段12において、スクランブル鍵Ksを暗号化する際に使用される。この更新ワーク鍵Kwは、スクランブル鍵Ksに比べ、更新時間が長く、例えば、1ヶ月程度で更新されるものである。
なお、ECM生成手段12において、事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kwのいずれを使用するかは、外部から入力されるワーク鍵切り替え制御信号に基づいて切り替えられる。
【0052】
デバイス鍵Kdは、デジタル放送受信装置2の機種またはメーカに対応した固有の鍵である。このデバイス鍵Kdは、EMM生成手段13において、更新ワーク鍵Kwを暗号化する際に使用される。
【0053】
なお、スクランブル鍵Ksや更新ワーク鍵Kwは、従来の限定受信方式において使用されている鍵と同様、それぞれペアの鍵で構成されているものとする。すなわち、スクランブル鍵Ksは、奇鍵(Odd鍵)であるスクランブル鍵(Odd)と、偶鍵(Even鍵)であるスクランブル鍵(Even)とのペアで構成する。また、更新ワーク鍵Kwも、スクランブル鍵Ksと同様、奇鍵(Odd鍵)である更新ワーク鍵(Odd)と、偶鍵(Even鍵)である更新ワーク鍵(Even)とのペアで構成する。このペアの鍵のそれぞれを「現在使用中の」鍵、「次に使用する」鍵として交互に使用することで、鍵の連続性を保証する。
以下、これらの鍵を用いて送信用の番組コンテンツを生成する各手段について説明する。
【0054】
スクランブル手段11は、入力された番組コンテンツ(映像、音声、データ等)をスクランブル鍵Ksでスクランブル(暗号化)するものである。このスクランブル手段11の暗号化は、一般的な暗号化アルゴリズムを用いればよく、例えば、MULTI2暗号により暗号化する。このようにスクランブルされた番組コンテンツは、多重化手段14に出力される。
【0055】
ECM生成手段(番組情報生成手段)12は、スクランブル手段11でスクランブルに使用したスクランブル鍵Ksを、事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kwを用いて暗号化して、ECM(番組情報)を生成するものである。このECM生成手段12で生成されたECMは、多重化手段14に出力される。
【0056】
なお、このECM生成手段12は、事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kwのいずれを用いるかは、後記するワーク鍵切り替え手段15の接続元に応じて切り替えることとする。
【0057】
ここで、図4を参照(構成については、適宜図2参照)して、ECM生成手段12が生成するECMのデータ構造について説明する。
ECM生成手段12は、例えば、図4に示したデータ構成で各領域に値を設定する(書き込む)ことでECMを構成することとする。この構成例において、「プロトコル番号」の領域には、ECMのデータ構造を識別するための番号等を設定し、「事業体識別」の領域には、当該コンテンツ保護方式を運用する事業体を識別するコードを設定し、「暗号鍵識別」の領域には、ワーク鍵Kw(事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kw)のどちらの鍵(Odd鍵またはEven鍵)を使用しているのかを示す識別情報を設定する。これらの「プロトコル番号」、「事業体識別」および「暗号化識別」は、従来の非特許文献1で規定されているものを使用することができる。
【0058】
さらに、ここでは、「ワーク鍵切り替え制御フラグ」の領域を、ECMのデータ構造に付加している。この「ワーク鍵切り替え制御フラグ」の領域には、ECM生成手段12が、スクランブル鍵Ksを暗号化したワーク鍵が、事前埋め込みワーク鍵Kwpであるのか、あるいは、更新ワーク鍵Kwであるのかを示すフラグ(ワーク鍵切り替え情報)を設定する。
【0059】
例えば、ECM生成手段12は、ワーク鍵切り替え制御信号によって、ワーク鍵切り替え手段15の接続元が更新ワーク鍵Kwに設定されている場合、ワーク鍵切り替え制御フラグに値“0”を設定し、ワーク鍵切り替え手段15の接続元が事前埋め込みワーク鍵Kwpに設定されている場合、ワーク鍵切り替え制御フラグに値“1”を設定することとする。
【0060】
なお、このワーク鍵切り替え制御フラグによって、どのワーク鍵を使用するかは、デジタル放送受信装置2と間で予め既知の情報であることとする。
また、「スクランブル鍵(Ks)」の領域には、ECM生成手段12が、番組コンテンツをスクランブルした鍵を設定する。また、「年月日時分」の領域には、スクランブル鍵Ksを生成した時刻等を設定する。
【0061】
ここで、「プロトコル番号」、「事業体識別」、「ワーク鍵切り替え制御フラグ」および「暗号鍵識別」の領域は、暗号化を行わない非暗号化領域とする。また、「スクランブル鍵(Ks)」および「年月日時分」の領域は、ワーク鍵(事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kw)により暗号化を行う暗号化領域とする。
【0062】
なお、ここでは、ワーク鍵切り替え制御フラグを2値(“0”または“1”)の値としたが、複数の事前埋め込みワーク鍵Kwpから1つを選択する場合であれば、ワーク鍵切り替え制御フラグは、3値以上の値(個々の鍵を識別する鍵識別情報)とすればよい。なお、この場合、フラグの値によって、どの事前埋め込みワーク鍵Kwpを使用したのかは、デジタル放送受信装置2と間で予め既知の情報であることとする。
このように、ECMを構成することで、デジタル放送受信装置2に対して、どのワーク鍵を使用したのかを通知することができる。
図2に戻って、デジタル放送送信装置1の構成について説明を続ける。
【0063】
EMM生成手段(個別情報生成手段)13は、更新ワーク鍵Kwをデバイス鍵Kdで暗号化して、EMM(個別情報)を生成するものである。すなわち、EMM生成手段13は、デジタル放送受信装置2を識別する識別情報、暗号化した更新ワーク鍵Kw等をデータとして含んだEMMを生成する。このEMMのデータ構造については、従来の非特許文献1で規定されているものと同様である。このEMM生成手段13で生成されたEMMは、EMM切り替え手段16の切り替え状態に応じて多重化手段14に出力される。
【0064】
なお、ここでは、EMM生成手段13は、後記するEMM切り替え手段16において、EMMを使用するか否かの切り替え状態(EMM切り替え状態)で、EMMを使用する場合に、EMMを生成することとする。
【0065】
多重化手段14は、スクランブル手段11でスクランブルされた番組コンテンツに、ECM生成手段12で生成されたECMと、EMM生成手段13で生成されたEMMとを多重化するものである。なお、多重化手段14は、後記するEMM切り替え手段16において、EMMが使用されていない状態(スイッチ“OFF”)である場合には、EMMの多重化は行わない。
【0066】
ワーク鍵切り替え手段15は、外部から入力されるワーク鍵切り替え制御信号によって、使用するワーク鍵を、事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kwのいずれかに切り替えるものである。すなわち、ワーク鍵切り替え手段15は、ワーク鍵切り替え制御信号によって、事前埋め込みワーク鍵Kwpをワーク鍵として使用することを指示された場合、接続元を事前埋め込みワーク鍵Kwpに切り替え、更新ワーク鍵Kwをワーク鍵として使用することを指示された場合、接続元を更新ワーク鍵Kwに切り替える。このように、接続元が切り替えられたワーク鍵は、ECM生成手段12に出力される。
【0067】
これによって、ECM生成手段12において、スクランブル鍵Ksを暗号化するワーク鍵が、事前埋め込みワーク鍵Kwpか更新ワーク鍵Kwかに切り替えられることになる。
なお、事前埋め込みワーク鍵Kwpを複数使用する場合、ワーク鍵切り替え手段15は、多値の切り替えスイッチとして構成すればよい。
【0068】
また、ここでは、ワーク鍵切り替え手段15を、入出力の対応関係を切り替えるスイッチで構成したが、メモリによって構成し、メモリ内にその切り替え状態を記憶することとしてもよい。この場合、ECM生成手段12は、メモリ内に記憶される接続元を参照し、事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kwを入力する。
【0069】
EMM切り替え手段16は、外部から入力されるワーク鍵切り替え制御信号によって、EMMを使用するか否かを切り替えるものである。このEMM切り替え手段16は、スイッチで構成し、ワーク鍵切り替え制御信号によって、ワーク鍵として更新ワーク鍵Kwを使用することを指示された場合、EMMを使用することと判定し、スイッチを“ON”、すなわち、EMM生成手段13が生成するEMMを多重化手段14に出力する。一方、ワーク鍵切り替え制御信号によって、ワーク鍵として事前埋め込みワーク鍵Kwpを使用することを指示された場合、EMMを使用しないことと判定し、スイッチを“OFF”、すなわち、EMM生成手段13から多重化手段14への経路を遮断する。
これによって、多重化手段14において、EMMを多重化するか否かが切り替えられることになる。
【0070】
なお、ここでは、EMM切り替え手段16を、ON/OFFスイッチにより構成したが、メモリによって構成し、メモリ内にその切り替え状態を記憶することとしてもよい。この場合、EMM生成手段13が、メモリ内に記憶される切り替え状態を参照し、EMMを多重化手段14に出力する。
【0071】
このように構成することで、デジタル放送送信装置1は、ワーク鍵切り替え制御信号に基づいて、EMMを使用しない場合、デジタル放送受信装置2に予め埋め込まれているワーク鍵(事前埋め込みワーク鍵Kwp)を用いて番組コンテンツを保護することができる。また、EMMを使用する場合、デジタル放送送信装置1において順次更新されるワーク鍵(更新ワーク鍵Kw)を用いて番組コンテンツを保護することができる。
【0072】
[デジタル放送受信装置の構成]
次に、図3を参照(適宜図1参照)して、本発明の実施形態に係るデジタル放送受信装置の構成について説明する。
このデジタル放送受信装置2は、ICカードを用いずに、デジタル放送送信装置1から送信されるスクランブルされた番組コンテンツを受信して、視聴者に提示可能なデータに変換し提示するものである。また、このデジタル放送受信装置2は、デジタル放送送信装置1(図2参照)から、ECMを介して通知されるワーク鍵切り替え制御フラグに応じて、使用するワーク鍵を、デジタル放送送信装置1から通知されるワーク鍵(更新ワーク鍵Kw)か、予め当該受信装置に埋め込まれているワーク鍵(事前埋め込みワーク鍵Kwp)かを切り替えて動作するものである。
【0073】
ここでは、デジタル放送受信装置2は、鍵記憶手段20と、チューナ/多重化分離手段21と、EMM復号手段22と、ワーク鍵切り替え手段23と、ECM復号手段24と、デスクランブル手段25と、映像・音声デコード手段26と、表示手段27と、を備えている。
【0074】
鍵記憶手段20は、デジタル放送受信装置2で使用する各種の鍵を記憶するものであって、不揮発性メモリ等の一般的な記憶媒体である。
この鍵記憶手段20には、予めデバイス鍵Kdと、事前埋め込みワーク鍵Kwpとが記憶されている。このデバイス鍵Kdは、デジタル放送受信装置2の機種またはメーカによって固有の鍵であって、デジタル放送送信装置1から、EMMにより送信される暗号化されたワーク鍵(更新ワーク鍵Kw)を復号する鍵である。また、事前埋め込みワーク鍵Kwpは、EMMを使用しない場合に、デジタル放送送信装置1において、スクランブル鍵Ksを暗号化する際に使用するワーク鍵であって、当該暗号化されたスクランブル鍵を復号する鍵である。
【0075】
このデバイス鍵Kdおよび事前埋め込みワーク鍵Kwpは、デジタル放送受信装置2の製造時に鍵記憶手段20に予め書き込まれる。
なお、この事前埋め込みワーク鍵Kwpは、1つである必要はなく、予め複数記憶してもよい。また、この鍵記憶手段20は、後記するEMM復号手段22によって復号されたワーク鍵(更新ワーク鍵Kw)を随時記憶することとする。
【0076】
チューナ/多重化分離手段(多重化分離手段)21は、アンテナAを介して受信した放送波Wから、視聴者によって選局された放送信号をトランスポートストリーム(TS)のデータに復調し、当該TSに多重化されているEMM、ECMおよびスクランブルされた番組コンテンツを分離するものである。このチューナ/多重化分離手段21で分離されたEMMは、EMM復号手段22に出力され、ECMは、ECM復号手段24に出力され、スクランブルされた番組コンテンツ(TS)は、デスクランブル手段25に出力される。
【0077】
EMM復号手段(個別情報復号手段)22は、チューナ/多重化分離手段21で分離されたEMM(個別情報)を復号するものである。ここでは、EMM復号手段22は、分離されたEMMを、鍵記憶手段20に記憶されているデバイス鍵Kdを用いて復号し、EMM内のワーク鍵(更新ワーク鍵Kw)を抽出する。この抽出された更新ワーク鍵Kwは、鍵記憶手段20に書き込み記憶される。
【0078】
ワーク鍵切り替え手段23は、後記するECM復号手段24から出力されるワーク鍵切り替え制御信号によって、使用するワーク鍵を、事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kwのいずれかに切り替えるものである。すなわち、ワーク鍵切り替え手段23は、ワーク鍵切り替え制御信号によって、事前埋め込みワーク鍵Kwpをワーク鍵として使用することを指示された場合、接続元を事前埋め込みワーク鍵Kwpに切り替え、更新ワーク鍵Kwをワーク鍵として使用することを指示された場合、接続元を更新ワーク鍵Kwに切り替える。このように、接続元が切り替えられたワーク鍵は、ECM復号手段24に出力される。
【0079】
これによって、ECM復号手段24において、暗号化されたスクランブル鍵Ksを復号するワーク鍵が、事前埋め込みワーク鍵Kwpか更新ワーク鍵Kwかに切り替えられることになる。
なお、事前埋め込みワーク鍵Kwpを複数使用する場合、ワーク鍵切り替え手段23は、多値の切り替えスイッチとして構成すればよい。
【0080】
また、ここでは、ワーク鍵切り替え手段23を、入出力の対応関係を切り替えるスイッチで構成したが、メモリによって構成し、メモリ内にその切り替え状態を記憶することとしてもよい。この場合、ECM復号手段24は、メモリ内に記憶される接続元を参照し、事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kwを入力する。
【0081】
ECM復号手段(番組情報復号手段)24は、チューナ/多重化分離手段21で分離されたECM(番組情報)を復号するものである。このECM復号手段24は、ECMの非暗号化領域(図4参照)に記述されているワーク鍵切り替え制御フラグ(ワーク鍵切り替え情報)の値に基づいて、ワーク鍵切り替え手段23に対して、ワーク鍵の接続元を切り替えるワーク鍵切り替え制御信号を出力し、その接続元から、ワーク鍵(事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kw)を取得する。
【0082】
例えば、ワーク鍵切り替え制御フラグの値が、図2のECM生成手段12で説明したワーク鍵切り替え制御フラグの値であるとき、ECM復号手段24は、ワーク鍵切り替え制御フラグに値“0”が設定されている場合、更新ワーク鍵Kwを接続元とし、ワーク鍵切り替え制御フラグに値“1”が設定されている場合、事前埋め込みワーク鍵Kwpを接続元とする。なお、鍵記憶手段20に複数の事前埋め込みワーク鍵Kwpが記憶されているときは、ワーク鍵切り替え制御フラグに記述されている番号(識別情報)により指定される事前埋め込みワーク鍵Kwpを接続元とする。
【0083】
このECM復号手段24は、取得したワーク鍵を用いて、ECMの暗号化領域(図4参照)に記述されている暗号化されたスクランブル鍵Ksを復号し、デスクランブル手段25に出力する。
【0084】
デスクランブル手段25は、チューナ/多重化分離手段21で分離されたスクランブルされた番組コンテンツを、ECM復号手段24から出力されるスクランブル鍵Ksを用いてデスクランブル(復号)するものである。このデスクランブル手段25でデスクランブルされた番組コンテンツ(TS)は、映像・音声デコード手段26に出力される。
【0085】
映像・音声デコード手段26は、デスクランブル手段25でデスクランブルされた番組コンテンツ(TS)を、映像信号、音声信号にデコードするものである。例えば、番組コンテンツが、MPEG2−TSで構成されている場合、映像・音声デコード手段26は、MPEG2に準拠した復号を行うことで、番組コンテンツ(TS)を、映像信号、音声信号にデコードする。このデコードされた映像信号および音声信号は、表示手段27に出力される。
【0086】
表示手段27は、映像・音声デコード手段26によってデコードされた映像信号および音声信号を再生するものである。例えば、表示手段27は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のモニタや、ステレオ再生あるいは5.1ch再生等のスピーカである。なお、この表示手段27は、デジタル放送受信装置2に必ずしも内蔵する必要なく、別途外部に接続する形態であっても構わない。
【0087】
このように構成することで、デジタル放送受信装置2は、デジタル放送送信装置1からECMを介して通知されるワーク鍵切り替え制御フラグに基づいて、EMMを使用しない場合、予め埋め込まれているワーク鍵(事前埋め込みワーク鍵Kwp)を用いて番組コンテンツを保護することができる。また、EMMを使用する場合は、デジタル放送送信装置1において順次更新されるワーク鍵(更新ワーク鍵Kw)を用いて番組コンテンツを保護することができる。
【0088】
<デジタル放送システムの動作>
次に、図5〜図8を参照して、デジタル放送システムの動作について説明する。
[デジタル放送送信装置の動作]
最初にデジタル放送送信装置の動作について説明する。なお、ここでは、デジタル放送送信装置の動作のうち、ワーク鍵切り替え制御動作、ECM生成・多重化動作およびEMM生成・多重化動作について主に説明を行う。
【0089】
(ワーク鍵切り替え制御動作)
まず、図5を参照(構成については、適宜図2参照)して、デジタル放送送信装置1のワーク鍵切り替え制御信号に基づく動作(ワーク鍵切り替え制御動作)について説明する。
デジタル放送送信装置1は、外部からワーク鍵切り替え制御信号を取得すると(ステップS1)、ワーク鍵切り替え手段15によって、ワーク鍵切り替え制御信号が、ワーク鍵の接続元を更新ワーク鍵Kw側に切り替える信号か、事前埋め込みワーク鍵Kwp側に切り替える信号かを判定する(ステップS2)。
【0090】
ここで、ワーク鍵切り替え制御信号が、更新ワーク鍵Kw側に切り替える信号である場合(ステップS2で“Kw側”)、ワーク鍵切り替え手段15は、ワーク鍵の接続元を更新ワーク鍵Kw側に切り替える(ステップS3)。さらに、EMM切り替え手段16が、スイッチを“ON(EMM使用側)”に設定することで、EMMを使用する経路を確保する(ステップS4)。
【0091】
一方、ワーク鍵切り替え制御信号が、事前埋め込みワーク鍵Kwp側に切り替える信号である場合(ステップS2で“Kwp側”)、ワーク鍵切り替え手段15は、ワーク鍵の接続元を事前埋め込みワーク鍵Kwp側に切り替える(ステップS5)。さらに、EMM切り替え手段16が、スイッチを“OFF(EMM未使用側)”に設定することで、EMMを使用する経路を遮断する(ステップS6)。
【0092】
これによって、デジタル放送送信装置1は、ワーク鍵切り替え制御信号によって、EMMを使用せずに事前埋め込みワーク鍵Kwpを用いて番組コンテンツを保護する経路を設定したり、EMMを使用して更新ワーク鍵Kwを用いて番組コンテンツを保護する経路を設定したりすることができる。
【0093】
(ECM生成・多重化動作)
次に、図6を参照(構成については、適宜図2参照)して、デジタル放送送信装置1のECM生成・多重化動作について説明する。
【0094】
デジタル放送送信装置1は、ECM生成手段12によって、現在のワーク鍵切り替え手段15の切り替え状態を判定する(ステップS10)。
ここで、現在のワーク鍵切り替え手段15の切り替え状態、すなわち、ワーク鍵の接続元が、更新ワーク鍵Kw側である場合(ステップS10で“Kw側”)、ECM生成手段12は、スクランブル鍵Ksを更新ワーク鍵Kwで暗号化し、ワーク鍵切り替え制御フラグに値“0”を設定したECMを生成する(ステップS11)。
【0095】
一方、現在のワーク鍵切り替え手段15の切り替え状態、すなわち、ワーク鍵の接続元が、事前埋め込みワーク鍵Kwp側である場合(ステップS10で“Kwp側”)、ECM生成手段12は、スクランブル鍵Ksを事前埋め込みワーク鍵Kwpで暗号化し、ワーク鍵切り替え制御フラグに値“1”を設定したECMを生成する(ステップS12)。
【0096】
そして、デジタル放送送信装置1は、多重化手段14によって、ステップS11またはステップS12で生成されたECMを、スクランブルされた番組コンテンツに多重化する(ステップS13)。
これによって、デジタル放送送信装置1は、ECMに、ワーク鍵切り替え制御フラグを設定し、デジタル放送受信装置2に通知することができる。
【0097】
(EMM生成・多重化動作)
次に、図7を参照(構成については、適宜図2参照)して、デジタル放送送信装置1のEMM生成・多重化動作について説明する。
デジタル放送送信装置1は、EMM生成手段13によって、現在のEMM切り替え手段16の切り替え状態を判定する(ステップS20)。
【0098】
ここで、現在のEMM切り替え手段16の切り替え状態が“ON”、すなわち、EMMを使用する状態である場合(ステップS20でYes)、EMM生成手段13は、更新ワーク鍵Kwをデバイス鍵Kdで暗号化して、EMMを生成する(ステップS21)。そして、デジタル放送送信装置1は、多重化手段14によって、ステップS21で生成されたEMMを、スクランブルされた番組コンテンツに多重化する(ステップS22)。
【0099】
一方、現在のEMM切り替え手段16の切り替え状態が“OFF”、すなわち、EMMを使用しない状態である場合(ステップS20でNo)、EMM生成手段13は動作を行わない。
これによって、デジタル放送送信装置1は、EMMを使用する場合にのみ、更新ワーク鍵をEMMに埋め込んで、デジタル放送受信装置2に通知することができる。
【0100】
[デジタル放送受信装置の動作]
次に、図8を参照(構成については、適宜図3参照)して、デジタル放送受信装置の動作について説明する。ここでは、デジタル放送受信装置2のワーク鍵切り替え制御動作およびECM復号動作について主に説明を行う。
デジタル放送受信装置2は、ECMを受信すると(ステップS30)、ECM復号手段24によって、ECMの非暗号化領域(図4参照)に記述されているワーク鍵切り替え制御フラグの値を判定する(ステップS31)。
【0101】
ここで、ワーク鍵切り替え制御フラグの値が“0”である場合(ステップS31で“0”)、ECM復号手段24は、ワーク鍵切り替え手段23の接続元を更新ワーク鍵Kw側に切り替え(ステップS32)、鍵記憶手段20から更新ワーク鍵Kwをワーク鍵として読み出す(ステップS33)。
【0102】
一方、ワーク鍵切り替え制御フラグの値が“1”である場合(ステップS31で“1”)、ECM復号手段24は、ワーク鍵切り替え手段23の接続元を事前埋め込みワーク鍵Kwp側に切り替え(ステップS34)、鍵記憶手段20から事前埋め込みワーク鍵Kwpをワーク鍵として読み出す(ステップS35)。
【0103】
そして、デジタル放送受信装置2は、ECM復号手段24によって、ECMの暗号化領域(図4参照)を復号する(ステップS36)。そして、デジタル放送受信装置2は、ECM復号手段24によって、ステップS36で復号された領域からスクランブル鍵Ksを抽出し、デスクランブル手段25に出力する(ステップS37)。
【0104】
その後、番組コンテンツのTSが終了した場合(ステップS38でYes)、デジタル放送受信装置2は、ECM復号動作を終了する。一方、まだ、TSが継続して入力される場合(ステップS38でNo)、デジタル放送受信装置2は、ステップS30に戻って動作を継続する。
【0105】
以上の動作によって、デジタル放送受信装置2は、ECMで通知されるワーク鍵切り替え制御フラグに応じて、EMMを使用せず事前埋め込みワーク鍵Kwpによって動作するモードと、EMMを使用しデジタル放送送信装置1から通知される更新ワーク鍵Kwによって動作するモードとに切り替えて動作することができる。
【0106】
[デジタル放送受信装置の構成:第2実施形態]
次に、図9を参照して、第2実施形態に係るデジタル放送受信装置の構成について説明する。図3で説明したデジタル放送受信装置2は、デジタル放送送信装置1(図2参照)からECMを介して通知されるワーク鍵切り替え制御フラグによって、使用するワーク鍵を、デジタル放送送信装置1から通知されるワーク鍵か、予め当該受信装置に埋め込まれているワーク鍵かを切り替えて動作するものであった。しかし、図9に示すデジタル放送受信装置2Bは、ワーク鍵切り替え制御フラグを用いずに、EMMを受信した場合とEMMを受信しない場合とで、使用するワーク鍵を切り替えて動作するものである。
【0107】
すなわち、デジタル放送受信装置2Bは、スクランブル鍵で暗号化した番組コンテンツと、デジタル放送の送信側で生成したワーク鍵である更新ワーク鍵で当該スクランブル鍵を暗号化して生成した番組情報と、当該デジタル放送受信装置に対応したデバイス鍵で前記更新ワーク鍵を暗号化して生成した個別情報とを多重化して送信するデジタル放送送信装置、または、スクランブル鍵で暗号化した番組コンテンツと、当該デジタル放送受信装置に予め記憶しているワーク鍵である事前埋め込みワーク鍵で当該スクランブル鍵を暗号化して生成した番組情報とを多重化して送信するデジタル放送送信装置のいずれのデジタル放送送信装置からもデジタル放送の受信を可能とするものである。
【0108】
例えば、デジタル放送受信装置2Bは、図12で説明した従来のデジタル放送送信装置30から送信されるデジタル放送を受信する。なお、図12中、ワーク鍵Kwが更新ワーク鍵に対応する。また、デジタル放送受信装置2Bは、図12で説明した従来のデジタル放送送信装置30において、EMMを使用しない(EMM生成手段33を備えない)デジタル放送送信装置(図示せず)から送信されるデジタル放送を受信することも可能である。いずれの場合、EMC生成手段32は、図4で説明したECMの構成に「ワーク鍵切り替え制御フラグ」を設ける必要はない。
【0109】
以下、デジタル放送受信装置2Bの構成について具体的に説明する。
ここでは、デジタル放送受信装置2Bは、鍵記憶手段20と、チューナ/多重化分離手段21と、EMM復号手段22と、ワーク鍵切り替え手段23Bと、ECM復号手段24Bと、デスクランブル手段25と、映像・音声デコード手段26と、表示手段27と、EMM使用判定手段28と、を備えている。
【0110】
デジタル放送受信装置2Bは、図3で説明したデジタル放送受信装置2に対して、ワーク鍵切り替え手段23およびECM復号手段24の機能を変更し、ワーク鍵切り替え手段23BおよびECM復号手段24Bとし、さらにEMM使用判定手段28を付加して構成した。他の構成については、図3で説明したデジタル放送受信装置2と同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
ワーク鍵切り替え手段23Bは、後記するEMM使用判定手段28から出力されるワーク鍵切り替え制御信号によって、使用するワーク鍵を、事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kwのいずれかに切り替えるものである。すなわち、ワーク鍵切り替え手段23Bは、ワーク鍵切り替え制御信号によって、事前埋め込みワーク鍵Kwpをワーク鍵として使用することを指示された場合、接続元を事前埋め込みワーク鍵Kwpに切り替え、更新ワーク鍵Kwをワーク鍵として使用することを指示された場合、接続元を更新ワーク鍵Kwに切り替える。このように、接続元が切り替えられたワーク鍵は、ECM復号手段24Bに出力される。
【0112】
これによって、ECM復号手段24Bにおいて、暗号化されたスクランブル鍵Ksを復号するワーク鍵が、事前埋め込みワーク鍵Kwpか更新ワーク鍵Kwかに切り替えられることになる。
【0113】
ECM復号手段24Bは、チューナ/多重化分離手段21で分離されたECMを復号するものである。このECM復号手段24Bは、ワーク鍵切り替え手段23Bにおける現在の切り替え状態によって、鍵記憶手段20から事前埋め込みワーク鍵Kwpまたは更新ワーク鍵Kwをワーク鍵として読み出す。
【0114】
このECM復号手段24Bは、読み出したワーク鍵を用いて、ECMの暗号化領域に記述されている暗号化されたスクランブル鍵Ksを復号し、デスクランブル手段25に出力する。
【0115】
EMM使用判定手段(個別情報使用判定手段)28は、EMM(個別情報)を受信するか否かによって、使用するワーク鍵を切り替えるものでる。このEMM使用判定手段28は、計時手段28aを備えて構成している。計時手段28aは、EMMを受信するまでの時間を計時するものである。
【0116】
このEMM使用判定手段28は、EMMを受信するためのタイマ(EMM受信タイマ:例えば、20秒)を計時手段28aによって起動し、タイムアウトになった場合、すなわち、EMMを受信しなかった場合、選局したチャンネル(放送事業者)においてはEMMを使用しないと判定する。この場合、EMM使用判定手段28は、ワーク鍵として事前埋め込みワーク鍵Kwpを使用する旨の指示を、ワーク鍵切り替え制御信号としてワーク鍵切り替え手段23Bに出力する。
【0117】
一方、EMM受信タイマ起動中にEMMを受信した場合、EMM使用判定手段28は、選局したチャンネル(放送事業者)においてはEMMを使用すると判定する。この場合、EMM使用判定手段28は、ワーク鍵として更新ワーク鍵Kwを使用する旨の指示を、ワーク鍵切り替え制御信号としてワーク鍵切り替え手段23Bに出力する。
【0118】
このEMM使用判定手段28は、デジタル放送受信装置2Bの動作モードが、チャンネル選局等の初期設定モードである場合、あるいは、番組コンテンツの再生を行っているコンテンツ視聴モードのいずれにおいても、EMM受信タイマがタイムアウトになるか否かにより、ワーク鍵切り替え制御信号を生成し、ワーク鍵切り替え手段23Bに出力することとする。
【0119】
なお、すでに接続元が更新ワーク鍵Kwに設定されている状態で、EMM受信タイマがタイムアウトになった場合、EMM使用判定手段28は、EMMにより運用を行っているにもかかわらずEMMが受信できなかったと判定する。この場合、EMM使用判定手段28は、EMM受信エラーのメッセージを表示手段27に出力する。
【0120】
このように構成することで、デジタル放送受信装置2Bは、デジタル放送送信装置がEMMを送信せず、ECMのみで番組コンテンツの権利保護を行う場合であっても、EMMを送信し、ワーク鍵を変更することで番組コンテンツの権利保護を行う場合であっても、どちらにも対応することができる。
【0121】
これによって、EMMを用いずに番組コンテンツの権利保護を行うデジタル放送送信装置が、EMMを送出する設備を増設した場合であっても、デジタル放送受信装置2Bは、なんら変更を行わずに番組コンテンツの権利保護を行うことができる。
【0122】
[デジタル放送受信装置の動作:第2実施形態]
次に、図10および図11を参照して、第2実施形態に係るデジタル放送受信装置の動作について説明する。なお、ここでは、デジタル放送受信装置2Bの動作のうち、ワーク鍵切り替え制御動作およびECM復号動作について主に説明を行う。
【0123】
(ワーク鍵切り替え制御動作)
まず、図10を参照(構成については、適宜図9参照)して、デジタル放送受信装置2Bのワーク鍵切り替え制御動作について説明する。
【0124】
デジタル放送受信装置2Bは、EMM使用判定手段28において、現在の動作モードが、初期設定モードであるか否かを判定する(ステップS40)。
ここで、動作モードが初期設定モードである場合(ステップS40でYes)、EMM使用判定手段28は、計時手段28aによりEMM受信タイマ(例えば、20秒)を起動する(ステップS41)。
【0125】
そして、EMM受信タイマがタイムアウトになった場合(ステップS42でYes)、EMM使用判定手段28は、ワーク鍵切り替え手段23Bにワーク鍵の接続元を事前埋め込みワーク鍵Kwp側に切り替える旨のワーク鍵切り替え制御信号を出力し、接続元を切り替える(ステップS43)。そして、動作をステップS49に進める。
【0126】
一方、EMM受信タイマ内でEMMを受信した場合(ステップS42でNo)、EMM使用判定手段28は、ワーク鍵切り替え手段23Bにワーク鍵の接続元を更新ワーク鍵Kw側に切り替える旨のワーク鍵切り替え制御信号を出力し、接続元を切り替える(ステップS44)。そして、動作をステップS49に進める。
【0127】
また、現在の動作モードが初期設定モードではない場合、すなわち、番組コンテンツを再生しているコンテンツ視聴モードである場合(ステップS40でNo)、EMM使用判定手段28は、計時手段28aによりEMM受信タイマ(例えば、20秒)を起動する(ステップS45)。
【0128】
そして、EMM受信タイマ内でEMMを受信した場合(ステップS46でNo)、EMM使用判定手段28は、ワーク鍵切り替え手段23Bにワーク鍵の接続元を更新ワーク鍵Kw側に切り替える旨のワーク鍵切り替え制御信号を出力し、接続元を切り替える(ステップS44)。そして、動作をステップS49に進める。
【0129】
一方、EMM受信タイマがタイムアウトになった場合(ステップS46でYes)、EMM使用判定手段28は、ワーク鍵切り替え手段23Bにおけるワーク鍵の切り替え状態を判定する(ステップS47)。
ここで、ワーク鍵の接続元が事前埋め込みワーク鍵Kwp側である場合(ステップS47で“Kwp側”)、EMM使用判定手段28は、EMMによる運用を行っていない状態と判定し、ステップS49に動作を進める。
【0130】
一方、ワーク鍵の接続元が更新ワーク鍵Kw側である場合(ステップS47で“Kw側”)、EMM使用判定手段28は、EMMにより運用を行っている状態でEMMを受信できなかったものと判定し、エラーメッセージ表示等のEMM受信エラー処理を行う(ステップS48)。
【0131】
その後、番組コンテンツのTSが終了した場合(ステップS49でYes)、デジタル放送受信装置2Bは、ECM復号動作を終了する。一方、まだ、TSが継続して入力される場合(ステップS49でNo)、デジタル放送受信装置2Bは、ステップS40に戻って動作を継続する。
【0132】
以上の動作によって、デジタル放送受信装置2Bは、EMMを受信するか否かにより、EMMを使用せず事前埋め込みワーク鍵Kwpによって動作するモードと、EMMを使用し更新ワーク鍵Kwによって動作するモードとを切り替えて動作することができる。
【0133】
(ECM復号動作)
次に、図11を参照(構成については、適宜図9参照)して、デジタル放送受信装置2BのECM復号動作について説明する。
【0134】
デジタル放送受信装置2Bは、ECMを受信すると(ステップS50)、ECM復号手段24Bによって、ワーク鍵切り替え手段23Bにおける現在のワーク鍵の切り替え状態を判定する(ステップS51)。
【0135】
ここで、ワーク鍵の接続元が更新ワーク鍵Kwである場合(ステップS51で“Kw側”)、ECM復号手段24Bは、鍵記憶手段20から更新ワーク鍵Kwをワーク鍵として読み出す(ステップS52)。
一方、ワーク鍵の接続元が事前埋め込みワーク鍵Kwpである場合(ステップS51で“Kwp側”)、ECM復号手段24Bは、鍵記憶手段20から事前埋め込みワーク鍵Kwpをワーク鍵として読み出す(ステップS53)。
【0136】
そして、デジタル放送受信装置2Bは、ECM復号手段24Bによって、ECMの暗号化領域を復号する(ステップS54)。そして、デジタル放送受信装置2Bは、ECM復号手段24Bによって、ステップS54で復号された領域からスクランブル鍵Ksを抽出し、デスクランブル手段25に出力する(ステップS55)。
【0137】
その後、番組コンテンツのTSが終了した場合(ステップS56でYes)、デジタル放送受信装置2Bは、ECM復号動作を終了する。一方、まだ、TSが継続して入力される場合(ステップS56でNo)、デジタル放送受信装置2Bは、ステップS50に戻って動作を継続する。
【0138】
以上の動作によって、デジタル放送受信装置2Bは、ECMで通知されるワーク鍵切り替え制御フラグに応じて、EMMを使用せず事前埋め込みワーク鍵によって動作するモードと、EMMを使用しデジタル放送送信装置1から通知される更新ワーク鍵によって動作するモードとに切り替えて動作することができる。
【符号の説明】
【0139】
S デジタル放送システム
1 デジタル放送送信装置
11 スクランブル手段
12 ECM生成手段(番組情報生成手段)
13 EMM生成手段(個別情報復号手段)
14 多重化手段
15 ワーク鍵切り替え手段
16 EMM切り替え手段
2、2B デジタル放送受信手段
20 鍵記憶手段
21 チューナ/多重化分離手段
22 EMM復号手段(個別情報復号手段)
23 ワーク鍵切り替え手段
24 ECM復号手段(番組情報復号手段)
25 デスクランブル手段
26 映像・音声デコード手段
27 表示手段
28 EMM使用判定手段(個別情報使用判定手段)
28a 計時手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
番組コンテンツをデジタル放送で送信するデジタル放送送信装置であって、
前記番組コンテンツをスクランブル鍵により暗号化するスクランブル手段と、
外部から入力されるワーク鍵切り替え制御信号の指示に基づいて、予めデジタル放送受信装置に埋め込まれている事前埋め込みワーク鍵と前記デジタル放送の送信側で更新する更新ワーク鍵とのいずれをワーク鍵として使用するかを示すワーク鍵切り替え情報を番組情報の非暗号化領域に書き込むとともに、前記指示されたワーク鍵により前記スクランブル鍵を暗号化して前記番組情報の暗号化領域に書き込んで、前記デジタル放送受信装置に共通の前記番組情報を生成する番組情報生成手段と、
前記更新ワーク鍵を前記デジタル放送受信装置に対応したデバイス鍵で暗号化して前記デジタル放送受信装置宛の個別情報を生成する個別情報生成手段と、
前記スクランブル手段で暗号化された番組コンテンツに前記番組情報生成手段で生成された番組情報を多重化する多重化手段と、を備え、
前記ワーク鍵切り替え制御信号の指示が前記更新ワーク鍵を使用する旨の指示である場合、前記多重化手段は、さらに、前記個別情報を多重化することを特徴とするデジタル放送送信装置。
【請求項2】
前記事前埋め込みワーク鍵が前記デジタル放送受信装置に複数記憶されており、
前記番組情報生成手段は、前記ワーク鍵切り替え情報に当該複数の事前埋め込みワーク鍵のうちのいずれを使用したかを示す鍵識別情報を記述することを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送送信装置。
【請求項3】
スクランブル鍵を暗号化するワーク鍵として、予めデジタル放送受信装置に埋め込まれている事前埋め込みワーク鍵とデジタル放送の送信側で更新する更新ワーク鍵とのいずれを使用するかを示すワーク鍵切り替え情報を含んだ番組情報を、デジタル放送送信装置から受信して、前記デジタル放送で送信される暗号化された番組コンテンツを復号するデジタル放送受信装置であって、
予めワーク鍵としての事前埋め込みワーク鍵と、前記送信側で当該デジタル放送受信装置宛の個別情報を生成する際に使用するデバイス鍵とを記憶する鍵記憶手段と、
前記デジタル放送を受信して、多重化されている暗号化された番組コンテンツ、番組情報および個別情報を分離して抽出する多重化分離手段と、
この多重化分離手段において前記個別情報が抽出された場合に、当該個別情報を前記鍵記憶手段に記憶されているデバイス鍵で復号して、前記更新ワーク鍵を抽出する個別情報復号手段と、
前記多重化分離手段において前記番組情報が抽出された場合に、当該番組情報に付加されているワーク鍵切り替え情報により前記事前埋め込みワーク鍵または前記更新ワーク鍵のいずれをワーク鍵として使用するかを切り替えるワーク鍵切り替え手段と、
このワーク鍵切り替え手段で使用が切り替えられたワーク鍵により前記番組情報の暗号化領域を復号して、前記スクランブル鍵を抽出する番組情報復号手段と、
この番組情報復号手段で抽出されたスクランブル鍵で前記暗号化された番組コンテンツを復号するデスクランブル手段と、
を備えることを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項4】
スクランブル鍵を暗号化するワーク鍵として、予めデジタル放送受信装置に埋め込まれている複数の事前埋め込みワーク鍵の1つとデジタル放送の送信側で更新する更新ワーク鍵とのいずれを使用するかを示すワーク鍵切り替え情報を含んだ番組情報を、デジタル放送送信装置から受信して、前記デジタル放送で送信される暗号化された番組コンテンツを復号するデジタル放送受信装置であって、
予めワーク鍵としての複数の事前埋め込みワーク鍵と、前記送信側で当該デジタル放送受信装置宛の個別情報を生成する際に使用するデバイス鍵とを記憶する鍵記憶手段と、
前記デジタル放送を受信して、多重化されている暗号化された番組コンテンツ、番組情報および個別情報を分離して抽出する多重化分離手段と、
この多重化分離手段において前記個別情報が抽出された場合に、当該個別情報を前記鍵記憶手段に記憶されているデバイス鍵で復号して、前記更新ワーク鍵を抽出する個別情報復号手段と、
前記多重化分離手段において前記番組情報が抽出された場合に、当該番組情報に付加されているワーク鍵切り替え情報に記述されている鍵識別情報により前記複数の事前埋め込みワーク鍵の中の1つまたは前記更新ワーク鍵のいずれをワーク鍵として使用するかを切り替えるワーク鍵切り替え手段と、
このワーク鍵切り替え手段で使用が切り替えられたワーク鍵により前記番組情報の暗号化領域を復号して、前記スクランブル鍵を抽出する番組情報復号手段と、
この番組情報復号手段で抽出されたスクランブル鍵で前記暗号化された番組コンテンツを復号するデスクランブル手段と、
を備えることを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項5】
デジタル放送により番組コンテンツを放送するデジタル放送システムであって、
前記番組コンテンツをスクランブル鍵により暗号化するスクランブル手段と、
外部から入力されるワーク鍵切り替え制御信号の指示に基づいて、予めデジタル放送受信装置に埋め込まれている事前埋め込みワーク鍵と前記デジタル放送の送信側で更新する更新ワーク鍵とのいずれをワーク鍵として使用するかを示すワーク鍵切り替え情報を番組情報の非暗号化領域に書き込むとともに、前記指示されたワーク鍵により前記スクランブル鍵を暗号化して前記番組情報の暗号化領域に書き込んで、前記デジタル放送受信装置に共通の前記番組情報を生成する番組情報生成手段と、
前記更新ワーク鍵を前記デジタル放送受信装置に対応したデバイス鍵で暗号化して前記デジタル放送受信装置宛の個別情報を生成する個別情報生成手段と、
前記スクランブル手段で暗号化された番組コンテンツに前記番組情報生成手段で生成された番組情報を多重化するとともに、前記ワーク鍵切り替え制御信号の指示が前記更新ワーク鍵を使用する旨の指示である場合、さらに、前記個別情報を多重化する多重化手段と、を備えたデジタル放送送信装置と、
予めワーク鍵としての事前埋め込みワーク鍵と、前記デバイス鍵とを記憶する鍵記憶手段と、
前記デジタル放送を受信して、多重化されている暗号化された番組コンテンツ、番組情報および個別情報を分離して抽出する多重化分離手段と、
この多重化分離手段において前記個別情報が抽出された場合に、当該個別情報を前記鍵記憶手段に記憶されているデバイス鍵で復号して、前記更新ワーク鍵を抽出する個別情報復号手段と、
前記多重化分離手段において前記番組情報が抽出された場合に、当該番組情報に付加されているワーク鍵切り替え情報により前記事前埋め込みワーク鍵または前記更新ワーク鍵のいずれをワーク鍵として使用するかを切り替えるワーク鍵切り替え手段と、
このワーク鍵切り替え手段で使用が切り替えられたワーク鍵により前記番組情報の暗号化領域を復号して、前記スクランブル鍵を抽出する番組情報復号手段と、
この番組情報復号手段で抽出されたスクランブル鍵で前記暗号化された番組コンテンツを復号するデスクランブル手段と、を備えたデジタル放送受信装置と、
を備えることを特徴とするデジタル放送システム。
【請求項6】
前記鍵記憶手段に、前記事前埋め込みワーク鍵を複数記憶し、
前記番組情報生成手段は、前記ワーク鍵切り替え情報に当該複数の事前埋め込みワーク鍵のうちのいずれを使用したかを示す鍵識別情報を記述し、
前記ワーク鍵切り替え手段が、前記多重化分離手段において前記番組情報が抽出された場合に、当該番組情報に付加されているワーク鍵切り替え情報に記述されている鍵識別情報により前記複数の事前埋め込みワーク鍵の中の1つまたは前記更新ワーク鍵のいずれをワーク鍵として使用するかを切り替えることを特徴とする請求項5に記載のデジタル放送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−101236(P2011−101236A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255057(P2009−255057)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】