デジタル無線システム
【課題】フレーム中のデータが遅延、欠落しても、それらを受信復調する端末装置で、聞き辛い音が出力されないようにしたデジタル無線システムを提供する。
【解決手段】
第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信するデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機は、IDLEフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、予め決められた複数フレーム以上IDLEが連続して続いた場合は、ミュート動作をする。
【解決手段】
第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信するデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機は、IDLEフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、予め決められた複数フレーム以上IDLEが連続して続いた場合は、ミュート動作をする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル無線システムに関し、特に、デジタル無線信号を中継処理する際の、フレームデータの欠落や遅延による、移動通信端末機側の復調音声歪みの発生を防止する手段を備えたデジタル無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル無線通信では、伝達すべきデータをフレーム単位で送受信するが、送信機側で各フレームの所定位置に特定の信号配列パターンを有する同期ワード(フレーム同期ワード:Frame Sync Word:以下「FSW」)を配置して送信し、受信機側では、検波出力信号中の上記同期ワードを検出することにより、同期を確立する。このようにデジタル無線通信では、フレーム構成とシンボルタイミングは、予め決められた通信プロトコルに基づいて構成されている。
デジタル無線通信では、送信側の音声信号や制御信号等の伝送すべき信号を、デジタル信号として搬送波に重畳して送信し、受信側では、それを元の音声信号や制御信号に復元する処理を行うが、これらの処理には、信号処理の高速化を図るため、全体を制御するCPUの他に、信号処理専用の信号演算部であるDSP(Digital Signal ProcessorあるいはProcessing;デジタル信号処理装置)を備えている。
また、移動通信システムでは、周波数の有効利用や移動通信端末機の小型化のために移動通信端末機側の送信電力を小さくし、随所に無線基地局装置や無線中継装置を配置すると共に、それらを通信ネットワーク網で接続するものが主流となっている。
【0003】
図7は、デジタル無線方式において用いられる無線基地局装置の一例を示すシステム概要図である。図7に示すように、移動通信端末機であるデジタル無線機Aから送信された電波を、最寄りの無線基地局装置であるデジタル無線基地局Aにおいて受信復調する。その際、フレームの先頭に付加されるFSWを検出し、それに続くデータフレームを復調した後、ネットワークを介して通信相手のデジタル無線機(移動通信端末機)Bの最寄りのデジタル無線基地局(基地局装置)Bに伝送する。デジタル無線基地局Bでは、受信した情報に基づいて、FSWを付加した所定のフレームに再構築し、無線電波に重畳してデジタル無線機Bに対して送信する。
また、デジタル無線基地局Aは、自局の周囲にいる移動機(図示せず)に対してデジタル無線機Aが送信した電波を再構築したフレームを送信する中継局の動作もできる。
なお、デジタル無線基地局A、Bは共に、少なくとも一つの制御チャネル用コントローラと、複数の通話チャネル用コントローラを備え、両デジタル無線基地局A、Bは、無線通信手段、有線通信手段、光通信ケーブル等の通信ネットワーク網により接続され、多くの場合、通信ネットワーク網には回線交換器を含み、目的とする相手方の無線通信端末機の最寄りのデジタル無線基地局同士が接続されるように構成されている。
【0004】
図9は、デジタル無線機A、Bの一般的な概要構成を示すブロック図であり、送信系として、音声を電気信号に変換するマイクロホン21、マイクアンプ22、音声信号をデジタル符号化するコーデック回路(CODEC)23、プレススイッチ又は音声信号を送信機に接続するリレースイッチ24、音声増幅器25、変調レベル調整器26、電圧制御発振器(変調器)27、等を備えている。また、受信系としては、アンテナで受信した高周波信号を中間周波信号に変換する、中間周波増幅器31、信号を所要レベルに増幅する増幅器32、アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータ33、デジタル変換した信号からデジタル信号を復調し、音声信号はボコーダとして機能するDSP34、装置全体の制御を行うマイクロコンピュータ(CPU)35、コーデック回路23を介して供給される音声信号を増幅する音声増幅器36、音声レベル調整器37、スピーカ38等を含んでいる。
このようなデジタル無線通信における音声符号化に関しては、例えば特許文献1に、デジタル無線基地局におけるチャネル間同期方法と、そのためのチャネル間同期プログラムに関する技術が開示されているので、参照することができる。
なお、デジタル無線システムにおけるフレーム構成としては、例えば図10に示すものが知られている。即ち、図10(a)は、音声フレームの構成例を示すもので、先頭に同期ワード(FSW)と、フレーム構造情報を示す、リンク情報チャネル(LICH)と、低速に制御情報を伝送する、低速付随チャネル(SACCH)が配置され、次に、圧縮された音声符号化データを伝送するための、音声チャネル(VCH)が続くように構成されている。また、図10(b)は、通常の音声フレーム伝送中に、音声符号化データの代わりに高速に制御情報を伝送するための構成となるスチールフレームで、同様に先頭に、同期ワード(FSW)と、リンク情報チャネル(LICH)と、低速付随チャネル(SACCH)が配置され、音声チャネル二つ分を一つのデータ構造とする高速付随チャネル(FACCH1)が続くように構成されている。
また、送信中の待機動作などの、特に通知する情報がない場合に用いられ、制御情報を伝送するための付随チャネル(SACCHおよびFACCH1)に適用されるデータとしてIDLEデータがある。IDLEデータは移動局、基地局の両方が使用しており、具体的には、移動局の送信時の先頭で、音声が処理されてデータ化される間の数十msecの間や、基地局で送信を継続したまま、中継動作が切り替わる間(音声が中断されてデータ通信になる場合や通話チャンネルを起動したまま、複数の無線機が交互に通話する場合のなど)に使用されるデータである。
【特許文献1】特開2007−235281公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように通信回線を介して伝送すると、ノイズ混入や位相遅延等、種々の理由によってフレーム中のデータが失われることがあり、無線回線や中継処理を含む場合は、データ欠損の割合が大きくなる。従って、上述したように、デジタル符号化された情報を含む無線信号を受信復調(又は受信復号)した後、再度デジタル符号化して再送信する場合、受信復号時や伝送によりフレーム中のデータ欠落や遅延が発生すると、それらのフレームの再構築が不可能になり、フレームが欠損したものとなってしまう。
【0006】
図11は、そのような従来の無線基地局装置や無線中継装置におけるフレーム中継処理に関連する不具合を説明するための図であり、図11(a)は、デジタル無線基地局Bがネットワークを介して受取ったフレーム構成例を示す図、図11(b)は、デジタル無線機Bに対して再送信するために再符号化、あるいは再フレーム化した際のフレーム構成の例を示したものである。
即ち、図11(a)に示すものは、デジタル無線基地局Bがネットワークを介して受取ったフレーム(Frame)のうち、フレーム1乃至フレーム4、及びフレーム8は正常にデータが復調されたが、フレーム4からフレーム5にかけて遅延し(FrameL)、フレーム5乃至フレーム7においてデータが欠落(Frame×)した場合を示している。このような受信復調したデータをフレーム信号に再構築すると、図11(b)に示すように、遅延又はデータ欠落したフレームについてはフレームの再構築が不可能となり、欠損(空白)したものとなる。
このようにフレームが欠損した信号をデジタル無線機Bが受信復号すると、受信機の復調器(Vocoder)において正常な音声復号が不可能となり、スピーカからは極めて聞き苦しい音が出力される。
【0007】
通常、デジタルの移動通信端末機においては、受信復調したフレーム中にデータの欠落や遅延が含まれる場合であっても、誤り訂正によるデータ修復が行われることによって正常に音声復調が可能である。また、万一修復ができない場合には誤り検出によって、そのデータが破棄されるが、一般的には、それ以前に受信復調した正常な音声信号を繰り返し出力することによって、音切れを防止し、更に長期間データが破棄される場合は、ミュート(消音)処理を行うことによって、聞き辛い音の発生を防止するようになっている。しかし、上述したように、フレームそのものが欠損すると、誤り訂正や、誤り検出が不可能となるので、音切れ防止や、ミュート処理が行われず、聞き辛い音の出力を防止できない。
このような不具合は無線基地局装置において発生するばかりでなく、同様に無線中継機能を含むレピータ装置や無線中継装置、マルチアクセス(セルラ)方式の携帯電話システムの無線基地局装置に類したものにおいても問題となる可能性がある。
本発明はこのような従来のデジタル無線システム、無線基地局装置及び無線中継装置の問題点を解決するためになされたものであって、より音質を向上したデジタル無線システム、無線基地局装置及び無線中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームがIDLEフレームの場合、IDLEフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上IDLEが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成した。
また、請求項2の発明は第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームが前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームの場合、前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成した
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上説明したように、第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームがIDLEフレームの場合、IDLEフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上IDLEが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成したものである。従って、より音質を向上したデジタル無線システム、無線基地局装置及び無線中継装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る無線基地局装置におけるデータフレームの中継処理の一実施例を示すフローチャート。
【図2】本発明に係る無線基地局装置におけるデータフレームの中継処理の一例を示すフレーム構成図。
【図3】本発明を適用した無線基地局装置におけるフレーム構成の具体例を示す図。
【図4】本発明を適用した無線基地局装置におけるデータフレームの中継処理の他の実施例を示すフローチャート。
【図5】本発明のデータフレームの中継方法の他の実施例におけるフレーム構成図。
【図6】本発明を適用した他の具体例を示すフレーム構成図。
【図7】本発明を適用するデジタル無線中継装置の一例を示す概要ブロック図。
【図8】本発明を適用するデジタル無線機の受信処理の一例を示すフローチャート。
【図9】本発明を適用するデジタル無線機の一例を示す概要ブロック図。
【図10】デジタル無線システムにおけるフレーム構成の一例を示す図。
【図11】従来の不具合を説明するための図で、(a)はデジタル無線基地局がネットワークを介して受信したフレーム図、(b)はデジタル無線基地局がフレームを再構築し、再送するフレームの図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明に係る無線基地局装置におけるデータフレームの中継処理(方法)の一例を示すフローチャートである。この例では、上述した図7に示すデジタル無線基地局B、即ち、通信相手方側である移動通信端末機(デジタル無線機B)の最寄りの無線基地局における処理を示したものである。
この時、デジタル無線基地局Bではネットワークからのデータを取得し、一定フレーム分データを確保してから送信を開始するものとする。フレームのデータの確保数が多いと音声の遅延につながり、フレームのデータ数が少なすぎるとデータの欠落が発生しやすくなるため、正常動作で問題ない基準でデータを確保するものとする。送信が開始された場合、送信が終了するまでフレームは連続で送信される。
【0012】
処理がスタートすると、先ず、ネットワークからデータを取得する(S1)。そして、デジタル無線機Bに対して再送信する際のフレーム送信開始であることを判断すると(S2)、送信すべきフレームについてのデータがネットワークから得られているか否かを判断する(S3)。フレームデータが得られた場合は「データあり」と判断して(S3、Yes)、処理S4に移行し、得られたデータをフレームデータとして設定すると共に(S4)フレーム送信を行う(S5)。また、フレームデータが欠落している場合は、上記処理S3における判断は「該当フレームのデータなし」となるので(S3、No)、そのフレームには「IDLEデータ」を設定し(S6)、フレームの送信を行う(S5)。
ネットワークから取得したデータをフレームとして再構築し、フレーム単位としてカウントを行う。フレームのカウント数が規定値に満たない場合、該当フレームデータ取得を出来なかったものとする。
【0013】
図2は、以上の処理を行った結果のIDLEフレームを示す図であり、FSW(フレーム同期ワード)、リンクチャネル情報(LICH)を設定した後、低速付随チャネル(SACCH)、高速付随チャネル(FACCH)に「IDLEデータ」を設定する。
図3は、図11に示した復調データについて、本発明を適用した場合のフレーム構成例を示したもので、フレーム1乃至フレーム4においては「データあり」と判断して(S3、Yes)、処理S4に移行し、得られているデータをフレームに設定すると共に(S4)フレーム送信を行う(S5)。また、フレーム5乃至フレーム7についてはデータが欠落しているので、上記処理S3における判断は「該当フレームのデータなし」となり(S3、No)、そのフレームには「IDLEデータ」を設定し(S6)、フレームの送信を行う(S5)。その結果、図3(a)に示すようにデジタル無線基地局Bにおいて、データの遅延や欠落を含むフレームが復調された場合であっても、図3(b)に示すように、空白(欠損)となるフレームがない状態で再送信されることになる。
従って、これらのデジタル信号を受信復調するデジタル無線機Bにおいては、「IDLEデータ」に対しては、以前に取得した正常な復調音声を繰返して出力する処理もしくは、ミュート処理を行う。なお、遅延フレームや欠落フレームが瞬間的に起こった場合、ミュート処理を選択してしまうと、音が途切れ途切れとなってしまうため、繰り返し処理の方が適している。ただし、遅延フレームや欠落フレームが比較的長く続いた場合、繰り返し処理は不自然となるため、具体的には受信しているフレームの状態を記憶しておき、「IDLEフレーム」が2つ以上続いた場合(すなわち1フレーム前と現在フレームの両方がIDLEの場合)ミュートを選択する。このようなデジタル無線機Bの制御フローを図8に示す。
【0014】
デジタル無線機Bは処理がスタートすると無線通信を介してデータを受信する(S21)。現在のフレームはIDLEであることを判定すると(S22Yes)、一つ前のフレームがIDLEであるか否かを判定する(S23)。一つ前のフレームもIDLEであった場合(S23Yes)、ミュート処理を行う(S24)。一方、一つ前のフレームがIDLEではなかった場合(S23No)、以前に取得した正常な復調音声を繰返して出力する処理を行う(S26)。現在のフレームがIDLEでなかった場合(S22No)や、ミュート処理(S24)、繰返し処理(S26)を終了した場合は現在のデータの状態を記憶して(S25)、処理を終了する。
なお、図8では1フレーム前のみを対象としているため、2フレーム連続でIDLEフレームだった場合にミュートをする場合の説明であるが、過去の数フレームを記憶することで複数フレームが連続した場合にミュートするように変更できる。また、連続したかどうかをカウンタを設けてIDLEフレームの場合+1とし、それ以外はクリアする方法で検出してもよい。
図3では、フレーム4の後の欠落と遅延によりIDLEフレームが設定されこれを受信した無線機は繰り返し処理の後に連続して消音状態になり、フレーム8においてフレームのデータが得られた時点で、音声の出力が再開されている。このように動作することで、意味不明や聞き辛い音声がスピーカ等から出力されると云った不具合が解消される。
本発明は、この例に限ることなく種々変形が可能である。図4は、本発明の他の実施例を示すフローチャートである。この例に示す無線基地局装置におけるデータフレームの中継方法では、フレームデータが得られない場合に、代わりに「FECエラー」データを挿入する場合を示している。
【0015】
図4においても、同様に上述した図7に示すデジタル無線基地局B、即ち、通信相手方側の無線基地局装置における処理を示したものである。処理がスタートすると、ネットワークからデータを取得する(S11)。デジタル無線機Bに対して再送信する際のフレーム送信開始であることを判断すると(S12)、送信すべきフレームについてデータが得られているか否かを判断する(S13)。フレームデータが得られた場合は「データあり」と判断して(S13、Yes)、処理S14に移行し、得られているデータをフレームに設定すると共に(S14)フレーム送信を行う(S15)。
一方、上記S13の判断において、フレームデータが欠落している場合は(S13、No)、そのフレームには「FSW」を設定し(S16)、次に、CRCエラーの低速付随チャネル(SACCH)とFECエラービット数が(デジタル無線機端末において)エラーと判断されるようなデータを、音声チャネル(VCH)に「エラー音声データ」として設定した後(S17、S18)、フレーム送信を実行する(S15)。なお、FEC(Forward Error Correction)は、データを伝送する前に誤り検出・訂正用の冗長データを付加しておき、誤りがあれば受信側で修正などを行う、順方向の誤り検出・訂正方式であるが、この例では、この機能を利用して、受信側で「FECエラー」と判断されるように選択したデータを挿入するものである。
図5は、以上の処理を行った結果の一例を示すフレーム図であり、FSW(フレーム同期ワード)、リンクチャネル情報(LICH)に続く、低速付随チャネル(SACCH)であってデータが得られないフレームには、「CRCエラー」を示すデータが挿入され、その後のデータが得られない音声チャネル(VCH)には、「FECエラー」を示すデータが挿入されることになる。
【0016】
図6は、上記図11に示した復調データについて、本発明の変形例を適用した場合のフレーム構成例を示したものである。即ち、フレーム1乃至フレーム4においては「データあり」と判断して(S13、Yes)、処理S14に移行し、得られているデータをフレームに設定すると共に(S14)、フレーム送信を行う(S15)。一方、フレーム5についてはデータが遅延しているので、上記処理S13における判断は「該当フレームのデータなし」となり(S13、No)、そのフレームには「CRCエラー」を示すデータを設定し(S17)、後続するVCHには、「FECエラー」となるようなエラービット数が大きな「エラーフレーム」データを挿入する。その結果、図6(a)に示すようにデジタル無線基地局Bにおいて、データの遅延や欠落を含むフレームが復調された場合であっても、図6(b)に示すように、空白(欠損)となるフレームがなく、その部分には「CRCエラー」、「FECエラー」を示すデータを埋め込んだ状態で再送信されることになる。
従って、これらのデジタル信号を受信復調するデジタル無線機Bにおいては、図1乃至図3及び図8を用いて説明した実施例と同様に、以前に取得した正常な復調音声を繰返して出力する処理、又は、ミュート処理によって消音状態に制御されるので、フレームが空白状態で送信された場合に発生する、意味不明や聞き辛い音声がスピーカ等から出力されると云った不具合が解消される。特にこの変形実施例では、データが得られないフレームを全てエラーとして処理させるようなデータで埋めているので汎用的に使用可能である。
【0017】
なお、上述した実施例では、再送するフレームのFSWとLICHは正しいシンボルデータを付加するようにしているので、受信側デジタル無線機においての同期は維持した状態でIDLE処理を行い、その他のデータ及び音声をエラーとさせることができる。
また、上述した実施例では図7におけるネットワークでつながれた無線基地局間の通信でデータの欠落や遅延が発生した場合を説明したが、この動作は移動局から送られてくるデータに関しても適用可能である。つまりデジタル無線機Aが送信してくるフレームデータが何らかの理由により欠落や遅延した場合(電波障害やマルチパス等が考えられる)、それを受信するデジタル無線基地局Aはこれまで説明してきた動作と同様に中継する送信データやデジタル基地局Bに伝送するデータを、IDLEデータやCRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータに置き換えることができる。
【0018】
以上、本発明の一例を説明したが、この例に限ることなく他のシステムへの適用や、種々変形が可能であることは云うまでもない。
また、本発明のフレーム中継処理手順をコンピュータが制御可能なOSに従ってプログラミングすることにより、そのOSを備えたコンピュータであれば同じ処理方法により制御することができる。更に、それらのプログラムを、CD−ROM等の記録媒体に書き込んでおき、コンピュータに搭載したCD−ROMドライブのような媒体駆動装置にこのCD−ROM等を装着して、これらのプログラムをコンピュータのメモリあるいは記憶装置に格納し、それを実行することによって、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
なお、プログラムを格納する記録媒体としては半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD等)、磁気媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0019】
10、11 デジタル無線機、12、13 デジタル無線基地局(装置)、23 コーデック回路、34 DSP、25 CPU(マイコン)、FSW フレーム同期ワード
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル無線システムに関し、特に、デジタル無線信号を中継処理する際の、フレームデータの欠落や遅延による、移動通信端末機側の復調音声歪みの発生を防止する手段を備えたデジタル無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル無線通信では、伝達すべきデータをフレーム単位で送受信するが、送信機側で各フレームの所定位置に特定の信号配列パターンを有する同期ワード(フレーム同期ワード:Frame Sync Word:以下「FSW」)を配置して送信し、受信機側では、検波出力信号中の上記同期ワードを検出することにより、同期を確立する。このようにデジタル無線通信では、フレーム構成とシンボルタイミングは、予め決められた通信プロトコルに基づいて構成されている。
デジタル無線通信では、送信側の音声信号や制御信号等の伝送すべき信号を、デジタル信号として搬送波に重畳して送信し、受信側では、それを元の音声信号や制御信号に復元する処理を行うが、これらの処理には、信号処理の高速化を図るため、全体を制御するCPUの他に、信号処理専用の信号演算部であるDSP(Digital Signal ProcessorあるいはProcessing;デジタル信号処理装置)を備えている。
また、移動通信システムでは、周波数の有効利用や移動通信端末機の小型化のために移動通信端末機側の送信電力を小さくし、随所に無線基地局装置や無線中継装置を配置すると共に、それらを通信ネットワーク網で接続するものが主流となっている。
【0003】
図7は、デジタル無線方式において用いられる無線基地局装置の一例を示すシステム概要図である。図7に示すように、移動通信端末機であるデジタル無線機Aから送信された電波を、最寄りの無線基地局装置であるデジタル無線基地局Aにおいて受信復調する。その際、フレームの先頭に付加されるFSWを検出し、それに続くデータフレームを復調した後、ネットワークを介して通信相手のデジタル無線機(移動通信端末機)Bの最寄りのデジタル無線基地局(基地局装置)Bに伝送する。デジタル無線基地局Bでは、受信した情報に基づいて、FSWを付加した所定のフレームに再構築し、無線電波に重畳してデジタル無線機Bに対して送信する。
また、デジタル無線基地局Aは、自局の周囲にいる移動機(図示せず)に対してデジタル無線機Aが送信した電波を再構築したフレームを送信する中継局の動作もできる。
なお、デジタル無線基地局A、Bは共に、少なくとも一つの制御チャネル用コントローラと、複数の通話チャネル用コントローラを備え、両デジタル無線基地局A、Bは、無線通信手段、有線通信手段、光通信ケーブル等の通信ネットワーク網により接続され、多くの場合、通信ネットワーク網には回線交換器を含み、目的とする相手方の無線通信端末機の最寄りのデジタル無線基地局同士が接続されるように構成されている。
【0004】
図9は、デジタル無線機A、Bの一般的な概要構成を示すブロック図であり、送信系として、音声を電気信号に変換するマイクロホン21、マイクアンプ22、音声信号をデジタル符号化するコーデック回路(CODEC)23、プレススイッチ又は音声信号を送信機に接続するリレースイッチ24、音声増幅器25、変調レベル調整器26、電圧制御発振器(変調器)27、等を備えている。また、受信系としては、アンテナで受信した高周波信号を中間周波信号に変換する、中間周波増幅器31、信号を所要レベルに増幅する増幅器32、アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータ33、デジタル変換した信号からデジタル信号を復調し、音声信号はボコーダとして機能するDSP34、装置全体の制御を行うマイクロコンピュータ(CPU)35、コーデック回路23を介して供給される音声信号を増幅する音声増幅器36、音声レベル調整器37、スピーカ38等を含んでいる。
このようなデジタル無線通信における音声符号化に関しては、例えば特許文献1に、デジタル無線基地局におけるチャネル間同期方法と、そのためのチャネル間同期プログラムに関する技術が開示されているので、参照することができる。
なお、デジタル無線システムにおけるフレーム構成としては、例えば図10に示すものが知られている。即ち、図10(a)は、音声フレームの構成例を示すもので、先頭に同期ワード(FSW)と、フレーム構造情報を示す、リンク情報チャネル(LICH)と、低速に制御情報を伝送する、低速付随チャネル(SACCH)が配置され、次に、圧縮された音声符号化データを伝送するための、音声チャネル(VCH)が続くように構成されている。また、図10(b)は、通常の音声フレーム伝送中に、音声符号化データの代わりに高速に制御情報を伝送するための構成となるスチールフレームで、同様に先頭に、同期ワード(FSW)と、リンク情報チャネル(LICH)と、低速付随チャネル(SACCH)が配置され、音声チャネル二つ分を一つのデータ構造とする高速付随チャネル(FACCH1)が続くように構成されている。
また、送信中の待機動作などの、特に通知する情報がない場合に用いられ、制御情報を伝送するための付随チャネル(SACCHおよびFACCH1)に適用されるデータとしてIDLEデータがある。IDLEデータは移動局、基地局の両方が使用しており、具体的には、移動局の送信時の先頭で、音声が処理されてデータ化される間の数十msecの間や、基地局で送信を継続したまま、中継動作が切り替わる間(音声が中断されてデータ通信になる場合や通話チャンネルを起動したまま、複数の無線機が交互に通話する場合のなど)に使用されるデータである。
【特許文献1】特開2007−235281公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように通信回線を介して伝送すると、ノイズ混入や位相遅延等、種々の理由によってフレーム中のデータが失われることがあり、無線回線や中継処理を含む場合は、データ欠損の割合が大きくなる。従って、上述したように、デジタル符号化された情報を含む無線信号を受信復調(又は受信復号)した後、再度デジタル符号化して再送信する場合、受信復号時や伝送によりフレーム中のデータ欠落や遅延が発生すると、それらのフレームの再構築が不可能になり、フレームが欠損したものとなってしまう。
【0006】
図11は、そのような従来の無線基地局装置や無線中継装置におけるフレーム中継処理に関連する不具合を説明するための図であり、図11(a)は、デジタル無線基地局Bがネットワークを介して受取ったフレーム構成例を示す図、図11(b)は、デジタル無線機Bに対して再送信するために再符号化、あるいは再フレーム化した際のフレーム構成の例を示したものである。
即ち、図11(a)に示すものは、デジタル無線基地局Bがネットワークを介して受取ったフレーム(Frame)のうち、フレーム1乃至フレーム4、及びフレーム8は正常にデータが復調されたが、フレーム4からフレーム5にかけて遅延し(FrameL)、フレーム5乃至フレーム7においてデータが欠落(Frame×)した場合を示している。このような受信復調したデータをフレーム信号に再構築すると、図11(b)に示すように、遅延又はデータ欠落したフレームについてはフレームの再構築が不可能となり、欠損(空白)したものとなる。
このようにフレームが欠損した信号をデジタル無線機Bが受信復号すると、受信機の復調器(Vocoder)において正常な音声復号が不可能となり、スピーカからは極めて聞き苦しい音が出力される。
【0007】
通常、デジタルの移動通信端末機においては、受信復調したフレーム中にデータの欠落や遅延が含まれる場合であっても、誤り訂正によるデータ修復が行われることによって正常に音声復調が可能である。また、万一修復ができない場合には誤り検出によって、そのデータが破棄されるが、一般的には、それ以前に受信復調した正常な音声信号を繰り返し出力することによって、音切れを防止し、更に長期間データが破棄される場合は、ミュート(消音)処理を行うことによって、聞き辛い音の発生を防止するようになっている。しかし、上述したように、フレームそのものが欠損すると、誤り訂正や、誤り検出が不可能となるので、音切れ防止や、ミュート処理が行われず、聞き辛い音の出力を防止できない。
このような不具合は無線基地局装置において発生するばかりでなく、同様に無線中継機能を含むレピータ装置や無線中継装置、マルチアクセス(セルラ)方式の携帯電話システムの無線基地局装置に類したものにおいても問題となる可能性がある。
本発明はこのような従来のデジタル無線システム、無線基地局装置及び無線中継装置の問題点を解決するためになされたものであって、より音質を向上したデジタル無線システム、無線基地局装置及び無線中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームがIDLEフレームの場合、IDLEフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上IDLEが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成した。
また、請求項2の発明は第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームが前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームの場合、前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成した
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上説明したように、第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームがIDLEフレームの場合、IDLEフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上IDLEが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成したものである。従って、より音質を向上したデジタル無線システム、無線基地局装置及び無線中継装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る無線基地局装置におけるデータフレームの中継処理の一実施例を示すフローチャート。
【図2】本発明に係る無線基地局装置におけるデータフレームの中継処理の一例を示すフレーム構成図。
【図3】本発明を適用した無線基地局装置におけるフレーム構成の具体例を示す図。
【図4】本発明を適用した無線基地局装置におけるデータフレームの中継処理の他の実施例を示すフローチャート。
【図5】本発明のデータフレームの中継方法の他の実施例におけるフレーム構成図。
【図6】本発明を適用した他の具体例を示すフレーム構成図。
【図7】本発明を適用するデジタル無線中継装置の一例を示す概要ブロック図。
【図8】本発明を適用するデジタル無線機の受信処理の一例を示すフローチャート。
【図9】本発明を適用するデジタル無線機の一例を示す概要ブロック図。
【図10】デジタル無線システムにおけるフレーム構成の一例を示す図。
【図11】従来の不具合を説明するための図で、(a)はデジタル無線基地局がネットワークを介して受信したフレーム図、(b)はデジタル無線基地局がフレームを再構築し、再送するフレームの図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明に係る無線基地局装置におけるデータフレームの中継処理(方法)の一例を示すフローチャートである。この例では、上述した図7に示すデジタル無線基地局B、即ち、通信相手方側である移動通信端末機(デジタル無線機B)の最寄りの無線基地局における処理を示したものである。
この時、デジタル無線基地局Bではネットワークからのデータを取得し、一定フレーム分データを確保してから送信を開始するものとする。フレームのデータの確保数が多いと音声の遅延につながり、フレームのデータ数が少なすぎるとデータの欠落が発生しやすくなるため、正常動作で問題ない基準でデータを確保するものとする。送信が開始された場合、送信が終了するまでフレームは連続で送信される。
【0012】
処理がスタートすると、先ず、ネットワークからデータを取得する(S1)。そして、デジタル無線機Bに対して再送信する際のフレーム送信開始であることを判断すると(S2)、送信すべきフレームについてのデータがネットワークから得られているか否かを判断する(S3)。フレームデータが得られた場合は「データあり」と判断して(S3、Yes)、処理S4に移行し、得られたデータをフレームデータとして設定すると共に(S4)フレーム送信を行う(S5)。また、フレームデータが欠落している場合は、上記処理S3における判断は「該当フレームのデータなし」となるので(S3、No)、そのフレームには「IDLEデータ」を設定し(S6)、フレームの送信を行う(S5)。
ネットワークから取得したデータをフレームとして再構築し、フレーム単位としてカウントを行う。フレームのカウント数が規定値に満たない場合、該当フレームデータ取得を出来なかったものとする。
【0013】
図2は、以上の処理を行った結果のIDLEフレームを示す図であり、FSW(フレーム同期ワード)、リンクチャネル情報(LICH)を設定した後、低速付随チャネル(SACCH)、高速付随チャネル(FACCH)に「IDLEデータ」を設定する。
図3は、図11に示した復調データについて、本発明を適用した場合のフレーム構成例を示したもので、フレーム1乃至フレーム4においては「データあり」と判断して(S3、Yes)、処理S4に移行し、得られているデータをフレームに設定すると共に(S4)フレーム送信を行う(S5)。また、フレーム5乃至フレーム7についてはデータが欠落しているので、上記処理S3における判断は「該当フレームのデータなし」となり(S3、No)、そのフレームには「IDLEデータ」を設定し(S6)、フレームの送信を行う(S5)。その結果、図3(a)に示すようにデジタル無線基地局Bにおいて、データの遅延や欠落を含むフレームが復調された場合であっても、図3(b)に示すように、空白(欠損)となるフレームがない状態で再送信されることになる。
従って、これらのデジタル信号を受信復調するデジタル無線機Bにおいては、「IDLEデータ」に対しては、以前に取得した正常な復調音声を繰返して出力する処理もしくは、ミュート処理を行う。なお、遅延フレームや欠落フレームが瞬間的に起こった場合、ミュート処理を選択してしまうと、音が途切れ途切れとなってしまうため、繰り返し処理の方が適している。ただし、遅延フレームや欠落フレームが比較的長く続いた場合、繰り返し処理は不自然となるため、具体的には受信しているフレームの状態を記憶しておき、「IDLEフレーム」が2つ以上続いた場合(すなわち1フレーム前と現在フレームの両方がIDLEの場合)ミュートを選択する。このようなデジタル無線機Bの制御フローを図8に示す。
【0014】
デジタル無線機Bは処理がスタートすると無線通信を介してデータを受信する(S21)。現在のフレームはIDLEであることを判定すると(S22Yes)、一つ前のフレームがIDLEであるか否かを判定する(S23)。一つ前のフレームもIDLEであった場合(S23Yes)、ミュート処理を行う(S24)。一方、一つ前のフレームがIDLEではなかった場合(S23No)、以前に取得した正常な復調音声を繰返して出力する処理を行う(S26)。現在のフレームがIDLEでなかった場合(S22No)や、ミュート処理(S24)、繰返し処理(S26)を終了した場合は現在のデータの状態を記憶して(S25)、処理を終了する。
なお、図8では1フレーム前のみを対象としているため、2フレーム連続でIDLEフレームだった場合にミュートをする場合の説明であるが、過去の数フレームを記憶することで複数フレームが連続した場合にミュートするように変更できる。また、連続したかどうかをカウンタを設けてIDLEフレームの場合+1とし、それ以外はクリアする方法で検出してもよい。
図3では、フレーム4の後の欠落と遅延によりIDLEフレームが設定されこれを受信した無線機は繰り返し処理の後に連続して消音状態になり、フレーム8においてフレームのデータが得られた時点で、音声の出力が再開されている。このように動作することで、意味不明や聞き辛い音声がスピーカ等から出力されると云った不具合が解消される。
本発明は、この例に限ることなく種々変形が可能である。図4は、本発明の他の実施例を示すフローチャートである。この例に示す無線基地局装置におけるデータフレームの中継方法では、フレームデータが得られない場合に、代わりに「FECエラー」データを挿入する場合を示している。
【0015】
図4においても、同様に上述した図7に示すデジタル無線基地局B、即ち、通信相手方側の無線基地局装置における処理を示したものである。処理がスタートすると、ネットワークからデータを取得する(S11)。デジタル無線機Bに対して再送信する際のフレーム送信開始であることを判断すると(S12)、送信すべきフレームについてデータが得られているか否かを判断する(S13)。フレームデータが得られた場合は「データあり」と判断して(S13、Yes)、処理S14に移行し、得られているデータをフレームに設定すると共に(S14)フレーム送信を行う(S15)。
一方、上記S13の判断において、フレームデータが欠落している場合は(S13、No)、そのフレームには「FSW」を設定し(S16)、次に、CRCエラーの低速付随チャネル(SACCH)とFECエラービット数が(デジタル無線機端末において)エラーと判断されるようなデータを、音声チャネル(VCH)に「エラー音声データ」として設定した後(S17、S18)、フレーム送信を実行する(S15)。なお、FEC(Forward Error Correction)は、データを伝送する前に誤り検出・訂正用の冗長データを付加しておき、誤りがあれば受信側で修正などを行う、順方向の誤り検出・訂正方式であるが、この例では、この機能を利用して、受信側で「FECエラー」と判断されるように選択したデータを挿入するものである。
図5は、以上の処理を行った結果の一例を示すフレーム図であり、FSW(フレーム同期ワード)、リンクチャネル情報(LICH)に続く、低速付随チャネル(SACCH)であってデータが得られないフレームには、「CRCエラー」を示すデータが挿入され、その後のデータが得られない音声チャネル(VCH)には、「FECエラー」を示すデータが挿入されることになる。
【0016】
図6は、上記図11に示した復調データについて、本発明の変形例を適用した場合のフレーム構成例を示したものである。即ち、フレーム1乃至フレーム4においては「データあり」と判断して(S13、Yes)、処理S14に移行し、得られているデータをフレームに設定すると共に(S14)、フレーム送信を行う(S15)。一方、フレーム5についてはデータが遅延しているので、上記処理S13における判断は「該当フレームのデータなし」となり(S13、No)、そのフレームには「CRCエラー」を示すデータを設定し(S17)、後続するVCHには、「FECエラー」となるようなエラービット数が大きな「エラーフレーム」データを挿入する。その結果、図6(a)に示すようにデジタル無線基地局Bにおいて、データの遅延や欠落を含むフレームが復調された場合であっても、図6(b)に示すように、空白(欠損)となるフレームがなく、その部分には「CRCエラー」、「FECエラー」を示すデータを埋め込んだ状態で再送信されることになる。
従って、これらのデジタル信号を受信復調するデジタル無線機Bにおいては、図1乃至図3及び図8を用いて説明した実施例と同様に、以前に取得した正常な復調音声を繰返して出力する処理、又は、ミュート処理によって消音状態に制御されるので、フレームが空白状態で送信された場合に発生する、意味不明や聞き辛い音声がスピーカ等から出力されると云った不具合が解消される。特にこの変形実施例では、データが得られないフレームを全てエラーとして処理させるようなデータで埋めているので汎用的に使用可能である。
【0017】
なお、上述した実施例では、再送するフレームのFSWとLICHは正しいシンボルデータを付加するようにしているので、受信側デジタル無線機においての同期は維持した状態でIDLE処理を行い、その他のデータ及び音声をエラーとさせることができる。
また、上述した実施例では図7におけるネットワークでつながれた無線基地局間の通信でデータの欠落や遅延が発生した場合を説明したが、この動作は移動局から送られてくるデータに関しても適用可能である。つまりデジタル無線機Aが送信してくるフレームデータが何らかの理由により欠落や遅延した場合(電波障害やマルチパス等が考えられる)、それを受信するデジタル無線基地局Aはこれまで説明してきた動作と同様に中継する送信データやデジタル基地局Bに伝送するデータを、IDLEデータやCRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータに置き換えることができる。
【0018】
以上、本発明の一例を説明したが、この例に限ることなく他のシステムへの適用や、種々変形が可能であることは云うまでもない。
また、本発明のフレーム中継処理手順をコンピュータが制御可能なOSに従ってプログラミングすることにより、そのOSを備えたコンピュータであれば同じ処理方法により制御することができる。更に、それらのプログラムを、CD−ROM等の記録媒体に書き込んでおき、コンピュータに搭載したCD−ROMドライブのような媒体駆動装置にこのCD−ROM等を装着して、これらのプログラムをコンピュータのメモリあるいは記憶装置に格納し、それを実行することによって、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
なお、プログラムを格納する記録媒体としては半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD等)、磁気媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0019】
10、11 デジタル無線機、12、13 デジタル無線基地局(装置)、23 コーデック回路、34 DSP、25 CPU(マイコン)、FSW フレーム同期ワード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームがIDLEフレームの場合、IDLEフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上IDLEが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成したデジタル無線システム。
【請求項2】
第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームが前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームの場合、前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上前記CRCエラーを設定されたフレームが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成したデジタル無線システム。
【請求項1】
第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームがIDLEフレームの場合、IDLEフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上IDLEが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成したデジタル無線システム。
【請求項2】
第一と第二の二つの無線基地局装置が通信回線を介して接続された無線中継装置を含むデジタル無線システムにおいて、これら無線基地局装置の一方は、第一の移動通信端末機が送信する同期ワードを含むフレーム信号として構成されたデジタル無線信号を受信復調すると共に、得られたデジタルデータを前記通信回線を介して、他方の無線基地局装置に転送する手段を備え、前記他方の無線基地局装置は、転送されたデジタル信号における送信すべきフレームのデータを送信前に取得したか否かを判断する手段と、データを取得した場合は、そのデータを当該フレームのデータとして再構築する手段と、データを取得できなかった場合は、当該フレームにIDLEデータ、CRCエラーを示すデータ、FECエラーを示すデータの何れかを設定してフレームを再構築する手段と、再構築した同期ワードを含むフレーム信号をデジタル無線信号として第二の移動通信端末機に対して再送信する手段とを備えた無線中継装置と、前記第二の移動通信端末機において、受信したフレームが前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームの場合、前記CRCエラー及びFECエラーを設定されたフレームを最初に受信した場合は以前に取得した正常な復調音声の繰り返し動作をし、あらかじめ決められた複数フレーム以上前記CRCエラーを設定されたフレームが連続して続いた場合は、ミュート動作をするように構成したデジタル無線システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−29970(P2011−29970A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174047(P2009−174047)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
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