説明

デジタル角度出力信号の出力方法及び装置

【課題】本発明は、閉ループの負帰還制御型の回転信号処理器の閉ループ内で制御偏差演算による補正及び補正値テーブルを用いた補正を行って制御偏差を0とすることを目的とする。
【解決手段】本発明によるデジタル角度出力信号の出力方法及び装置は、回転角検出器(12)の角度誤差、回転信号処理器(14)における演算過程で生じる誤差信号に起因する角度誤差を閉ループ(200)内の制御偏差演算〔ε=K・sin(θ-φ)〕の段階でデジタル補正し、さらに、デジタル角度出力信号(φ)に角度依存の誤差〔△θ(θ)〕が存在した場合、誤差〔△θ(θ)〕を予め閉ループ(200)内の補正値テーブル(52a)に格納して用いる方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル角度出力信号の出力方法及び装置に関し、特に、閉ループの負帰還制御型の回転信号処理器の閉ループ内で制御偏差演算による補正及び補正値テーブルを用いた補正を行って制御偏差を0(零)とすることで閉ループの周波数特性に左右されない誤差補正を行うための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のデジタル角度出力信号の出力方法を示す回転角検出装置としては、例えば、特許文献1の構成を図5〜図7として挙げることができる。
すなわち、図5は、回転角度検出装置が適用されるモータ駆動システム100の構成を示すブロック図である。図5において、モータ駆動システム100は、インバータ装置2と、「回転機」であるモータジェネレータ4と、モータジェネレータ4のロータシャフトに機械的に連結されたレゾルバ12とを含む。
【0003】
前記レゾルバ12は、楕円等で偏心形状をしたロータシャフト(図示せず)と、ステータ(図示せず)に設けられた一次巻線15と、90°の位相差をもってステータに配置された二つの2次巻線16,17とを含む。ロータシャフトの外形は、ステータとのギャップが角度によって正弦波状に変化するような形状である。
【0004】
前記インバータ装置2は、モータ制御回路6と、IPM (Intelligent Power Module)7と、電流センサ8,9とを含む。IPM7は、モータジェネレータ4のステータコイル(図示せず)に流す電流を制御するためのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor) などのパワースイッチング素子を含む。モータジェネレータ4のステータコイルはU相、V相、W相のコイルを含む。U相、V相、W相のコイルはY結線されているので、V相、W相の電流を電流センサ8,9によって測定すればU相の電流は演算で求めることができる。
【0005】
前記モータ制御回路6は、マイコン部40とR/Dコンバータ部14が1チップに集積された制御IC10と、電流センサ8,9の出力をそれぞれ増幅するアンプA1,A2と、制御IC10からの励磁用参照信号Refに基づいてレゾルバ12の一次巻線15を励磁するアンプA3とをさらに含む。本発明の実施の形態による回転角検出装置は、図5では制御IC10によって構成される。
【0006】
前記R/Dコンバータ部14は、誤差補正回路110と、演算部120と、ロータ回転角θに対応してカウント値を増減するように構成されたR/D変換カウンタ(以下、単にカウンタとも称する)130とを含む。マイコン部40は、電気角カウンタ150と、補正値テーブル52aとを含む。誤差補正回路110は、補正値テーブル52aに記憶された複数ビットの補正値CBに応じて、カウンタ130によるカウント値の補正処理を実行するように構成される。マイコン部(CPU)40及びR/Dコンバータ部14の構成については、後ほど詳細に説明する。
【0007】
前記モータジェネレータ4にはレゾルバ12のロータシャフトが機械的に連結され、レゾルバ12の一次巻線15には、マイコン部40内のD/Aコンバータにより生成された、例えば10kHzの励磁正弦波信号(sinωt)である参照信号Refを電流増幅アンプA3で増幅した信号が印加される。
【0008】
前記レゾルバ12は、回転トランスであり、二次巻線16(Sin巻線)および二次巻線17(Cos巻線)には、モータジェネレータ4の回転に伴い、変調された10kHz正弦波が誘導される。この結果、90°の位相差をもって配置された二つの2次巻線16,17には、それぞれ回転角θに応じて変調されたSin信号(sinωtsin)、およびCos信号(sinωtcosθ)が得られる。これらSin信号およびCos信号は、レゾルバ12の「回転角信号」に対応する。
【0009】
前記SIN巻線16、COS巻線17からR/Dコンバータ部14に与えられたSin信号およびCos信号は、R/Dコンバータ部14での演算によってデジタル角度データに変換される。このデジタル角度データはカウンタ130のカウント値に相当する。なお、カウンタ130のカウント値には、誤差補正回路110による、補正値CBに応じた補正処理が施されている。
【0010】
補正処理されたカウンタ130のカウント値は、データバス等を介して、マイコン部40の電気角カウンタ150へ入力される。なお、実施の形態1では、カウンタ130と電気角カウンタ150とは、共通のカウンタによって構成されてもよい。マイコン部40は、電気角カウンタ150のカウント値に基づいて、モータジェネレータ4の回転角(電気角)を検知する。
さらに、IPM7のV相、W相電流値は電流センサ8,9で検出され、バッファアンプA1,A2を介しマイコン部40のA/D変換入力に印加される。
【0011】
前記マイコン部40は、上位のECU(たとえば、ハイブリッド車両では、ハイブリッドECU)より通信で送られてきたトルク指令と、電流センサ8,9による検出値から求められる電流値と、上記カウント値から求められる電気角とに基づいて、IPM7のパワースイッチング素子をオンオフ制御するためのU,V,W相の三相PWM信号を出力する。たとえば、トルク指令と、電流値と、電気角とを用いたdq軸演算を実行して、その演算結果とPWMタイマとの比較によって、U,V,W相の通電デューティー比が決定される。
【0012】
前記IPM7のパワースイッチング素子が、マイコン部40からの三相PWM信号に従ってオンオフ制御されることによって、モータジェネレータ4がトルク指令に従って動作するように、モータジェネレータ4の通電は制御される。
図6は、図5に示したマイコン部(CPU部)40およびR/Dコンバータ部14の構成を示すブロック図である。
【0013】
図6を参照して、制御IC10は、同一チップ上に形成されたR/Dコンバータ部14およびマイコン部40を含む。R/Dコンバータ部14は、カウンタ130と、レゾルバからの回転角信号を受け、カウンタ130のカウント値を回転角信号に対応するように増減させる演算部120とを含む。カウンタ130は、データバス56にカウント値を出力可能に構成される。
【0014】
前記マイコン部40は、カウンタ130のカウント値に基づいて、モータジェネレータ4の電気角を求めると共に、この電気角を用いてモータジェネレータ4の電流(単に、モータ電流とも称する)を制御する。すなわち、マイコン部40は、R/Dコンバータ部14によって検出されたロータ回転角θを用いて、モータジェネレータ4の動作を制御する。
前記マイコン部40は、中央処理装置(CPU)42と、CPU42にデータを転送するためのデータバス56とを含む。CPU42は、乗算器82と、算術・論理演算ユニット(ALU)84と、プログラムカウンタ(PC)86と、シフタ88と、システムレジスタ90と、汎用レジスタ92とを含む。
【0015】
前記マイコン部40は、さらに、タイマ回路44と、バスコントロールユニット(BCU)46と、メモリコントローラ(MEMC)48と、DMAC(Direct Memory Access Controller)50と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)54とを含む。タイマ回路44は、タイマTM0〜TM4を含む。
前記ROM52は、誤差補正回路110で用いる補正値CBを記憶する記憶領域に相当する補正値テーブル52aと、CPU42で用いるプログラムや定数を記憶する記憶領域52bとを含む。
【0016】
前記BCU46は、CPU42で得られた物理アドレスに基づいて必要な外部バスサイクルを起動する。MEMC48は、外部拡張時にメモリや各種入出力の制御を行う。DMAC50は、CPU42の代りにメモリ、I/O間でのデータ転送を行う。
前記マイコン部40は、さらに、割込コントローラ(INTC)58と、非同期シリアルインターフェース(UATTO〜UART2)60,62,64と、クロック同期シリアルインターフェース(CSI)66と、CAN(Controller Area Network)通信ユニット68と、汎用ポート70と、D/A変換器(DAC)71と、A/D変換器(ADC)72と、クロックジェネレータ(CKG)74と、システムコントローラ76とを含む。
【0017】
前記演算部120は、減算器18と、同期検波器20と、積分器22と、電圧制御発振器(VCO)24と、コサインROMテーブル27と、乗算型D/Aコンバータ28,29と、サインROMテーブル30とを含む。
前記R/Dコンバータ部14は、図5のレゾルバ12の二次巻線16(Sin側)の両端が接続される差動アンプ32と、二次巻線17(Cos側)の両端が接続される差動アンプ34と、差動アンプ32および34の出力に基づいて位相を検出して同期検波器20に検波用の参照信号sinωtを送信する位相検出部36とをさらに含む。
【0018】
前記差動アンプ32には、回転角θにより参照信号Refが変調されたアナログ信号である電圧sinωtsinθが回転角信号(図5に示したSin信号)として入力される。また差動アンプ34には、回転角θにより参照信号Refが変調されたアナログ信号である電圧Sinωtcosθが回転角信号(図5に示したCos信号)として入力される。
【0019】
前記演算部120は、回転角信号の示す値とカウンタ130のカウント値との差を検出するとともに、電圧制御発振器(VCO)24によって、検出された誤差に基づいてカウンタ130のカウントアップとカウントダウンの動作切換を行うアップダウン切換信号U/Dをカウンタに対して出力するとともにカウントアップまたはカウントダウンのためのクロック信号CLKを出力する。
【0020】
前記R/Dコンバータ部14は、レゾルバ出力に基づき得られる回転角θに対応するデジタル値に、カウンタ130のカウント値φを一致させる。カウント値φは、nビット(n:2以上の整数)のデジタル信号である。実施の形態1では、一例としてn=12とする。
【0021】
これにより、カウンタ130のカウント値φは、回転角θに相当することとなる。上述のように、カウンタ130は、CPU42からの指令に応答して、カウント値φをデータバス56に出力可能に構成されることにより、マイコン部40と共用される態様で電気角カウンタ150(図5)としても機能することができる。
なお、実施の形態1では、n=12ビットのうちの最上位の2ビットは、回転角θの1回転を4分割した4象限(1象限〜4象限)のいずれであるかを示すためのビットであり、残りの下位側10ビットにより、各象限内での角度値(0°〜90°)が10ビットの分解能で示されるものとする。
【0022】
次に、演算部120の動作を説明する。コサインROMテーブル27は、カウント値φをcosφに変換したmビットのデジタル信号を出力する。本実施の形態では、一例としてm=10とする。乗算型D/Aコンバータ28は、mビットのデジタル信号で与えられたcosφをアナログ値に変換するとともに、アンプ32の出力sinωtsinθをさらに乗算したアナログ電圧sinωtsinθcosφを出力する。
同様に、サインROMテーブル30は、カウント値φをsinφに変換したmビットのデジタル信号を出力する。乗算型D/Aコンバータ29は、mビットのデジタル信号で与えられたsinφをアナログ値に変換すると共に、アンプ34の出力sinωtcosθをさらに乗算したアナログ電圧sinωtcosθsinφを出力する。
【0023】
前記減算器18は、乗算型D/Åコンバータ28,29の出力電圧間の差を演算する。両出力電圧の差は、sinωtsinθcosφ−sinωtcosθsinφ=sinωt(sinθcosφ−cosθsinφ)と変形でき、結局、減算器18は、sinωtsin(θ−φ)に対応するアナログ電圧を出力する。
前記減算器18の出力電圧と、位相検出部36で再生された参照信号sinωtとが同期検波器20に入力され、同期検波器20は、変調成分sin(θ−φ)のみを出力する。積分器22は、同期検波器20の出力sin(θ−φ)を積分する。積分器22の積分値が正の所定値より高いと、VCO24はカウント値φを増加させる指示を行う。すなわち、カウンタ130がアップダウンカウンタであれば、VCO24はアップ信号UとクロックCLKとをカウンタ130に出力する。
【0024】
また、積分器22の出力が、正の所定値と絶対値が等しい負の所定値より低いと、VCO24はカウント値φを減少させる指示を行う。すなわちカウンタ130がアップダウンカウンタであれば、VCO24はダウン信号DとクロックCLKとをカウンタ130に出力する。
前記VCO24による増加、減少指示(U/D)により、nビット(12ビット)アップダウンカウンタ130のカウント値φが増加、減少する。このカウント値φと回転角θの差を小さくするように、減算部120による前述の演算が行われる。すなわち、サインROMテーブル30、コサインROMテーブル27、乗算型D/Aコンバータ28,29、減算器18、同期検波器20、積分器22、VCO24およびカウンタ130によってフィードバック回路が形成されて、位相(θ−φ)がほぼ0(所定値以下)となるまで、すなわち回転角θとカウンタ130のカウント値φがほぼ一致するまで、演算部120は、演算を繰返す。したがって、セットリングタイムが経過してフィードバックが収束した後は、カウンタ130のカウント値φは、回転角θを表すものとなる。
【0025】
なお、乗算型D/Aコンバータ28,29には、後ほど詳細に説明する誤差補正回路110が付加されている。誤差補正回路110には、補正値テーブル52aから補正値CBが入力される。補正値CBは、複数ビットデジタルデータで構成される。したがって、このデジタルデータの各ビットについては、以下補正値ビットとも称する。
図7は、誤差補正回路110の第1の構成例を説明する回路図である。
図5にも示したように、誤差補正回路110は、乗算型D/Aコンバータ28,29の各々に付加される。このため、図6には、乗算型D/Aコンバータ28,29と誤差補正回路110とを組合せた回路構成が記載されている。乗算型D/Aコンバータ28に誤差補正回路110を付加した回路構成は、乗算型D/Aコンバータ29に誤差補正回路110を負荷したものと共通なので、以下では、前者の構成を代表的に例示する。
【0026】
図7を参照して、乗算型D/Aコンバータ28は、ボルテージフォロア回路を構成するオペアンプ200と、変換抵抗230a,230b〜239a,239bと、変換トランジスタ210〜219と、反転増幅器を構成するためのオペアンプ220および帰還抵抗222とを含む。
前記オペアンプ200によって構成されるボルテージフォロア回路は、入力電圧INをインピーダンス変換してノードN1に出力する。なお、入力電圧INは、乗算型D/Aコンバータ28においては、アンプ32の出力sinωtsinθに相当し、乗算型D/Aコンバータ29においては、アンプ34の出力sinωtcosθに相当する。
【0027】
前記変換抵抗230a、230bおよび変換トランジスタ210は、mビット信号の最下位ビットB0に対応して設けられる。変換抵抗230aおよび230bは、ノードN1およびN2間に接続される。さらに、変換抵抗230aおよび230bの接続点は、変換トランジスタ210を介して、接地ノードと接続される。
以下、残りのビットB1〜B9のそれぞれに対応して、変換抵抗および変換トランジスタの組がビットB0と同様に構成されて、ノードN1およびN2間に並列に接続される。そして、変換トランジスタ210〜219のゲートには、デジタル/アナログ変換されるデジタル信号のビットB0〜B9を反転した、/B0〜/B9がそれぞれ入力される。さらに、各変換抵抗230a,230b〜239a,239bの抵抗値は、図7に例示するように、2の累乗に従って段階的に設定される。
【0028】
このようにすると、ビットB0〜B9の値に基づいて、ノードN1からN2へ伝達される電流量が変化することによって、変換抵抗230a,230b〜239a,239bによるノードN1およびN2間の抵抗値が変化する。したがって、この抵抗値の変化に応じて、ビットB0〜B9で構成されるデジタル信号のアナログ変換値を得ることができる。すなわち、変換抵抗230a,230b〜239a,239bおよび変換トランジスタ210〜219は、cosφを示すコサインROMテーブル27からのmビットのデジタル信号(ビットB0〜B9)の「デジタル/アナログ変換部」を構成する。
この結果、乗算型D/Aコンバータ28,29では、ノードN1に出力された入力電圧INと、ビットB0〜B9で表されるcosφまたはsinφ(0〜1.0)との乗算結果に従うアナログ電圧である出力電圧OUTが、オペアンプ220により出力ノードNoに出力される。出力電圧OUTは、アナログ電圧sinωtsinθcosφまたはsinωtcosθsinφに相当し、減算器18(図5)へ入力される。
【0029】
ここで、製造ばらつき等によって、各変換抵抗の抵抗値が2の累乗に従った設計値と異なると、デジタル/アナログ変換誤差要因となる。一般的に、R/Dコンバータ部14では、このようなデジタル/アナログ変換部での抵抗誤差が、誤差の主要因となる。
前記誤差補正回路110は、上記のような抵抗誤差を解消するようにノードN1,N2間の抵抗値を微調整するための調整抵抗と、当該調整抵抗をノードN1,N2間の経路に接続するか否かを選択するための調整トランジスタとの組を含む。
【0030】
図7の構成例によれば、ビットB6に対応して、変換トランジスタ216と並列に、調整抵抗266aおよび調整トランジスタ256aの組が接続される。そして、調整トランジスタ256aのゲートには、補正値ビットCB6が入力される。同様に、ビットB7に対応して、調整抵抗267aおよび調整トランジスタ257aの組と、調整抵抗267bと調整トランジスタ257bとの組が配置され、これらの組は、変換トランジスタ217と並列に接続される。調整トランジスタ257a,257bのゲートには、補正値ビットCB7a,CB7bがそれぞれ入力される。すなわち、補正値ビットCB7a,CB7bに応じて、ビットB7に対応する抵抗値の微調整を4段階に実行できる。
【0031】
同様に、ビットB8に対しては、調整抵抗268a〜268cおよび調整トランジスタ258a〜258cによって構成された、調整抵抗および調整トランジスタの3個の組が、変換トランジスタ218と並列に接続される。調整トランジスタ258a〜258cのゲートには、補正値ビットCB8a〜CB8cがそれぞれ入力される。これにより、補正値ビットCB8a〜CB8cに応じて、ビットB8に対応する抵抗の微調整を8段階に実行できる。
【0032】
また、最上位ビット(MSB)B9に対しては、調整抵抗269a〜269dおよび調整トランジスタ259a〜259dによって構成された、調整抵抗および調整トランジスタの4個の組が、変換トランジスタ219と並列に接続される。調整トランジスタ259a〜259dのゲートには、補正値ビットCB9a〜CB9dがそれぞれ入力される。これにより、補正値ビットCB9a〜CB9dに応じて、ビットB9に対応する抵抗値の微調整を16段階に実行できる。
これにより、誤差補正回路110は、補正値テーブル52aからの補正値CBを構成する各補正値ビットに対応して、デジタル/アナログ変換部の抵抗誤差を解消するような抵抗値の微調整を実行できる。特に、ハードウェア機構により誤差補正回路110による補正処理を実行できるので、R/Dコンバータ部14の出力(カウント値φ)に基づく複雑な補正処理を実行する場合と比較して、補正処理を高速化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2009−145124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
従来の回転角検出装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の従来構成においては、図示のように、閉ループを用いた回転信号処理器において、抵抗やスイッチング素子等のハードウェアにより誤差データに相当するアナログ的な信号を作り出し誤差補正をする方法であった。
前述の従来構成(2)の場合には、図7に示されるように、抵抗やスイッチ等のアナログ信号処理に必要な各種素子が増加するため、ハードウェア(回転素子)のコスト増大を招く恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明によるデジタル角度出力信号の出力方法は、回転角検出器から得られた第1相検出信号と第2相検出信号を閉ループの負帰還制御型の回転信号処理器に入力し、閉ループを介してデジタル角度出力信号を出力するようにしたデジタル角度出力信号の出力方法において、少なくとも、前記回転角検出器の角度誤差、前記回転信号処理器における演算過程で生じる誤差信号に起因する角度誤差を前記閉ループ内の制御偏差演算〔制御偏差ε=K・sin(θ−φ)〕の段階でデジタル補正すると共に、前記デジタル角度出力信号に角度依存の誤差〔△θ(θ)〕が存在した場合、前記誤差〔△θ(θ)〕を予め前記閉ループ内の補正テーブルに補正データとして格納しておき、前記デジタル角度出力信号を負帰還制御する際に、前記デジタル角度出力信号に前記補正データを加算し、制御偏差(ε)を0とする方法であり、また、本発明によるデジタル角度出力信号の出力装置は、回転角検出器から得られた第1相検出信号と第2相検出信号を閉ループの負帰還制御型の回転信号処理器に入力し、閉ループを介してデジタル角度出力信号を出力するようにしたデジタル角度出力信号の出力装置において、少なくとも、前記回転角検出器の角度誤差、前記回転信号処理器における演算過程で生じる誤差信号に起因する角度誤差を前記閉ループ内の制御偏差演算〔制御偏差ε=K・sin(θ−φ)〕の段階でデジタル補正すると共に、前記デジタル角度出力信号に角度依存の誤差〔△θ(θ)〕が存在した場合、前記誤差〔△θ(θ)〕を予め前記閉ループ内の補正値テーブルに補正データとして格納しておき、前記デジタル角度出力信号を負帰還制御する際に、前記デジタル角度出力信号に前記補正データを加算し、制御偏差(ε)を0とする構成である。
【発明の効果】
【0036】
本発明によるデジタル角度出力信号の出力方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、回転角検出器から得られた第1相検出信号と第2相検出信号を閉ループの負帰還制御型の回転信号処理器に入力し、閉ループを介してデジタル角度出力信号を出力するようにしたデジタル角度出力信号の出力方法及び装置において、少なくとも、前記回転角検出器の角度誤差、前記回転信号処理器における演算過程で生じる誤差信号に起因する角度誤差を前記閉ループ内の制御偏差演算〔制御偏差ε=K・sin(θ−φ)〕の段階でデジタル補正すると共に、前記デジタル角度出力信号に角度依存の誤差〔△θ(θ)〕が存在した場合、前記誤差〔△θ(θ)〕を予め前記閉ループ内の補正テーブルに補正データとして格納しておき、前記デジタル角度出力信号を負帰還制御する際に、前記デジタル角度出力信号に前記補正データを加算し、制御偏差(ε)を0とすることにより、回転信号処理器の周波数特性の影響を受けない誤差補正を実施することができる。
また、誤差補正の処理が、基本的にデジタル信号の処理のみであるため、微細化が進む半導体プロセスの恩恵を享受でき、小型化、低価格化となり、かつ、機能を追加したことによる製造コストの増加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるデジタル角度出力信号の出力方法及び装置を示す概略のブロック図である。
【図2】本発明の補正値テーブルを含む閉ループの応用例を示すブロック図である。
【図3】本発明の補正値テーブルを含む閉ループの応用例を示すブロック図である。
【図4】本発明の補正値テーブルを含む閉ループの応用例を示すブロック図である。
【図5】従来の回転角検出装置が適用されるモータ駆動システムを示す構成図である。
【図6】図5のR/Dコンバータを示す詳細構成図である。
【図7】図5の誤差補正回路を示す詳細回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、閉ループの負帰還制御型の回転信号処理器の閉ループ内で制御偏差演算による補正及び補正値テーブルを用いた補正を行って制御偏差を0(零)とするようにしたデジタル角度出力信号の出力方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0039】
以下、図面と共に本発明によるデジタル角度出力信号の出力方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同等又は同一部分については、同一符号を用いて説明する。
図1において符号12で示されるものは、レゾルバからなる回転角検出器であり、この回転角検出器12からは、二相の第1相検出信号K・sin(θ+△θ)・f(t)及び第2相検出信号K・cos(θ+△θ)・f(t)が出力されると共に、一点鎖線で示される周知のトラッキング方式の回転信号処理器14の第1、第2変換器100,101に入力される。
【0040】
前記各変換器100,101から出力される第1、第2検出信号cosφ,sinφは、減算器18に入力され、この減算器18の出力18aは、周知の同期検波器20、補償器21、電圧制御型発振器24及びカウンタ130を経てデジタル角度出力信号φとして前記回転信号処理器14の外部へ出力される。
【0041】
前記回転信号処理器14内には、加算器102が設けられており、この加算器102では、前記デジタル角度出力信号φ及び補正値テーブル52aからの補正データとしての誤差△φが加算され、補正後角度信号〔φ+△φ〕として前記第1、第2変換器100,101に入力されている。尚、励磁電源sinωtは、前記回転角検出器12及び同期検波器20に入力されている。
【0042】
次に、前述の構成において、本発明によるデジタル角度出力信号の出力方法の動作について述べる。
まず、図1の構成においては、周知の閉ループ200の構成による負帰還制御により、アナログ形式の第1、第2相検出信号K・sin(θ+△θ)・f(t),K・cos(θ+△θ)・f(t)を前述の構成によってデジタル角度出力信号φに変換している。
【0043】
前述の状態において、例えば、全体の系(回転角検出器12と回転信号処理器)において誤差がなく、かつ、誤差補正もしていない状態では、前記閉ループ200における制御偏差(ε)は、ε=K・sin(θ+φ)・f(t)によって常に零に維持することができるように、周知の負帰還制御系が機能している。すなわち、ここで、ε=0とすると、θ=φとなり、回転角検出器12のアナログ角度情報である第1、第2相検出信号K・sin(θ)・f(t),K・cos(θ)・f(t)がデジタル信号に変換されたことになる。
【0044】
また、前記回転信号処理器14より出力される前記デジタル角度出力信号φに、角度依存の誤差△θ(θ)が存在したと仮定すると、この時、前記補正値テーブル52aに予め誤差△φ(φ)が格納(記憶)されていれば、制御偏差εは次の通りとなる。
ε=K・sin(θ+△θ−φ−△φ)・f(t)
【0045】
前述の場合、△θ=△φであれば、θ=φとなり、誤差のないデジタル角度出力信号φを得ることができる。
尚、前述の信号出力方法では、誤差が補正された状態で制御偏差が0(零)であり、後段の回路(図示せず)の周波数特性の影響を受けようがなく、回転信号処理器14の周波数特性に影響のない誤差補正ができる。
【0046】
尚、本発明によるデジタル角度出力信号の出力方法及び装置の構成をまとめると、次の通りである。
回転角検出器12から得られた第1相検出信号K・sin(θ+△θ)・f(t)と第2相検出信号K・cos(θ+△θ)・f(t)を閉ループ200の負帰還制御型の回転信号処理器14に入力し、閉ループ200を介してデジタル角度出力信号φを出力するようにしたデジタル角度出力信号の出力方法において、少なくとも、前記回転角検出器12の角度誤差、前記回転信号処理器14における演算過程で生じる誤差信号に起因する角度誤差を前記閉ループ200内の制御偏差演算〔制御偏差ε=K・sin(θ−φ)の段階でデジタル補正すると共に、前記デジタル角度出力信号φに角度依存の誤差〔△θ(θ)〕が存在した場合、前記誤差〔△θ(θ)〕を予め前記閉ループ200内の補正値テーブル52aに補正データ△φとして格納しておき、前記デジタル角度出力信号φを負帰還制御する際に、前記デジタル角度出力信号φに前記補正データ△φを加算し、制御偏差(ε)を0とするデジタル角度出力信号の出力方法及び装置である。
尚、前述の閉ループ回路200については、前述の回転信号処理器14の同期検波器20、補償器21、電圧制御型発振器24及びカウンタ130を用いる構成について述べたが、閉ループ回路200としては、前述の図1の構成だけではなく、例えば、以下、参考として述べる各特許公報に記載の図2、図3、図4の構成にも適用可である。まず、図2で示される特開2009−168546号公報の図2の構成における閉ループ回路200を用いたアナログ信号のデジタル変換方法においても、本発明における補正値テーブル52aに誤差として補正データ△φを格納しておき、デジタル角度出力信号φに補正データ△φを加算し、制御偏差εを0とすることができる。
【0047】
図2の構成においては、前述の公報に開示された符号は元の公報記載の符号のままとし、図1と関連する部分のみ符号を付加している。
図2では、擬似正弦波発生部をPSG(Pseud Sinusoid Generator)と略記している。図において、制御偏差演算部4は、第1〜第6乗算器40〜45と、加算器46と、第1及び第2減算器47、48と、励磁成分抽出部49とにより構成されている。
【0048】
まず、回転検出器1の出力である前記第1及び第2振幅変調信号sin(θ+△θ)・sin(ωEt−α),cos(θ+△θ)・sin(ωEt‐α)は、前記第1〜第4乗算器40〜43に入力される。
【0049】
第1乗算器40において、第1振幅変調信号sin(θ+△θ)・sin(ωEt−α)と第1擬似正弦波発生部64からの第2擬似正弦波信号sinωtとが乗算される下記のアナログ演算が実施される。
sin(θ+△θ)・sin(ωEt-α)×sinωt
=sin(θ+△θ)・sin(ωEt-α)・sinωt ・・・・・(1)
【0050】
同様に、第2乗算器41において、第2振幅変調信号cos(θ+△θ)・sin(ωEt‐α)と第2擬似正弦波発生部64からの第2擬似正弦波信号sinωtとが乗算される下記のアナログ演算が実施される。
cos(θ+△θ)・sin(ωEt-α)×sinωt
=cos(θ+△θ)・sin(ωEt-α)・sinωt ・・・・・(2)
【0051】
同様に、第3乗算器43において、第1振幅変調信号sin(θ+△θ)・sin(ωEt−α)と第2擬似正弦波発生部64からの第2擬似正弦波信号cosωtとが乗算される下記のアナログ演算が実施される。
sin(θ+△θ)・sin(ωEt-α)×cosωt
=sin(θ+△θ)・sin(ωEt-α)・cosωt ・・・・・(3)
【0052】
同様に、第4乗算器43において、第2振幅変調信号cos(θ+△θ)・sin(ωEt‐α)と第2擬似正弦波発生部64からの第2擬似正弦波信号cosωtとが乗算される下記のアナログ得算が実施される。
cos(θ+△θ)・sin(ωEt-α)×cosωt
=cos(θ+△θ)・sin(ωEt-α)・cosωt ・・・・・(4)
【0053】
次に、加算器46において、前記(1)式で示される第1乗算器40の出力と、前記(4)式で示される第4乗算器43の出力とが加算される下記のアナログ演算が実施される。
(1)式+(4)式=sin(θ+△θ)・sin(ωEt-α)・sinωt
+cos(θ+△θ)・sin(ωEt-α)・cosωt
=cos(ωt-θ−△θ)・sin(ωEt-α) ・・・・・(5)
【0054】
同様に、第1演算器47において、前記(2)式で示される第2乗算器41の出力から、前記(3)式で示される第3乗算器42の出力が減算される下記のアナログ演算が実施される。
(2)式−(3)式=cos(θ+△θ)・sin(ωEt-α)・sinωt
−sin(θ+△θ)・sin(ωEt-α)・cosωt
=sin(ωt-θ−△θ)・sin(ωEt-α) ・・・・・(6)
【0055】
次に、第5乗算器44において、前記(5)式で示される加算器46の出力と、第1擬似正弦波発生部52からの第1擬似正弦波信号sinωRtとが乗算される下記のアナログ演算が実施される。
cos(ωt-θ−△θ)・sin(ωEt-α)×sinωt
=cos(ωt-θ−△θ)・sinωRt・sin(ωEt−α) ・・・・・(7)
【0056】
同様に、第6乗算器45において、前記(6)式で示される第1減算器47の出力と、第1擬似正弦波発生部52からの第1擬似正弦波信号cosωRtとが乗算される下記のアナログ演算が実施される。
sin(ωt-θ-△θ)・sin(ωEt-α)×cosωRt
=sin(ωt-θ-△θ)・cosωRt・sin(ωEt-α) ・・・・・(8)
【0057】
次に、第2減算器48において、前記(7)式で示される第5乗算器44の出力から、前記(8)式で示される第6乗算器45の出力が減算される下記のアナログ演算が実施される。
(7)式−(8)式=cos(ωt−θ−△θ)・sinωRt・sin(ωEt-α)
−sin(ωt−θ−△θ)・cosωRt・sin(ωEt-α)
=sin(θ+△θ-ωt+ωRt)・sin(ωEt-α)
=ε ・・・・・(9)
【0058】
すなわち、制御偏差演算部4において、上記(1)式〜(9)式で示されるアナログ信号処理が実施され、前記回転検出器1の出力である前記第1及び第2振幅変調信号sin(θ+△θ)・sin(ωEt-α),cos(θ+△θ)・sin(ωEt-α)は、制御偏差ε〔sin(θ+△θ−ωt+ωRt)・sin(ωEt-α)〕へと変換される。
【0059】
この実施の形態の回転信号処理手段3では、前記制御偏差εが常に零となるように制御される。この制御偏差εは、同期検波部60に入力されて、励磁成分抽出部49からの励磁位相基準ωEt−αにより同期検波される。すなわち、制御偏差εは、励磁成分であるsin(ωEt-α)が絶対値化されて、下記の式のように変換される。
E=sin(θ△θ−ωt+ωRt)・|sin(ωEt-α)| ・・・・・(10)
【0060】
なお、前記(10)式で示される同期検波後の制御偏差Eは、等価的に下式に示す信号とみなすことができる。
E≒sin(θ+△θ−ωt+ωRt) ・・・・・(11)
前述したように、この実施の形態の回転信号処理手段3では、前記(9)式で示される制御偏差εが常に零となるように制御される。制御偏差εは、等価的に前記(11)式で示される制御偏差Eに置き換えて考えることができるため、下記の式が成り立つ。
ε≒sin(θ+△θ−ωt+ωRt)=0 ・・・・・(12)
【0061】
前述の負帰還制御ループである閉ループ回路200において、前記デジタル角度出力φに接続された補正値テーブル52aを用い、前記デジタル角度出力信号φに角度依存の誤差△θ(θ)が存在した場合、前記閉ループ200内の補正値テーブル52aに補正データ△φとして格納しておき、前記デジタル角度出力φを負帰還制御する際に、前記デジタル角度出力信号φに加算器102を用いて前記補正データ△φを加算すれば周波数変調信号は下記式で表わされる。
ωt=ωRt+φ+△φ ・・・・・(13)
従って、△θ=△φであれば制御偏差εは式(12)、(13)より次の通りとなる。
ε=sin(θ+△θ−φ−△φ=sin(θ−φ)
従って、制御偏差εは、式(12)、(13)より次の通りとなる。
ε=sin〔θ−(ωRt+φ+△φ)+ωRt〕
=sin(θ−φ) ・・・・・(14)
従って、制御偏差εを0とすれば、θ=φとなり、誤差のないデジタル角度出力信号φを得ることができる。尚、他の部分は、前述の同公報に開示されているため、その説明は省略している。
【0062】
図3の構成においては、特開2000−353957号公報に開示されたアナログ信号のデジタル変換方法における閉ループ回路200に本発明の補正値テーブル52aを適用して、制御偏差εを0とするようにした参考例である。尚、符号は同公報に記載されている符号をそのまま用い、補正値テーブル52aのみ、図1と同一符号を用いている。
【0063】
図3は本発明における補正値テーブルを適用するデジタルトラッキング方式R/D変換器を参考として示す構成図である。図3において符号1で示されるものはレゾルバからなる回転検出器であり、この回転検出器1の図示しない励磁巻線には、デジタルトラッキング方式R/D(レゾルバ/デジタル)変換器100の励磁信号発生器50からの励磁信号(成分)f(t)が印加されており、回転子(図示せず)の回転に応じて2相の出力巻線(図示せず)から2相の回転検出信号sinθ・f(t),cosθ・f(t)がsin用10bit乗算型D/Aコンバータ51及びcos用10bit乗算型D/Aコンバータ52に入力されている。
【0064】
前記各10bit乗算型D/Aコンバータ51,52からの各出力(後述のようにデジタル角度出力φのsinφ及びcosφがsinROM60及びcosROM61を介して各コンバータ51,52に帰還入力されている)sinθ・f(t)・cosφ及びcosθ・f(t)・sinφは、減算器53で減算{〔sinθ・f(t)・cosφ〕−〔cosθ・f(t)・sinφ〕=sinθ(θ−φ)・f(t)}されて第1出力信号sin(θ-φ)・f(t)が得られる。この第1出力信号sin(θ-φ)・f(t)はコンパレータ54により正負判定されて同期検波部55に入力され、同期位相検出断線検出部62からのリファレンス信号f(t)により同期検波されて第2信号である制御偏差ε=sin(θ−φ)が補償器56を経て12bitのカウンタ57によりカウントされて前述のデジタル角度出力φがパラレルインターフェース58を介してパラレル出力58aとして出力される。前記デジタル角度出力φは、シリアルインターフェース59を介してシリアル出力59aとして出力され、パルス出力発生ロジック63によって周知のA,B,Z相およびU,V,W相当のモータ等を制御するために必要とするパルス出力63aが出力される。前述したように、予め所要の非線形特性が書き込まれたsinROM60及びcosROM61にデジタル角度出力φが入力されて各々sinφ及びcosφを出力している。尚、前述の各コンバータ51,52、減算器53および比較器54によりマルチブライヤ(制御偏差演算部)300を構成している。さらに、前記同期位相検出断線検出器62からの断線検出信号62aは自己診断部70で判別された後、システム制御部80に入力され、このシステム制御部80では分解能設定、U,V,W極数設定、自己診断出力、入出力制御信号、システム制御信号等の信号の設定又は出力を行うことができるように構成されている。
【0065】
前述の図3の構成において、前記12bitカウンタ57から出力されるデジタル角度出力φは前記補正値テーブル52aに入力されて、その誤差△θが存在した場合、予め格納された補正データ△φを加算器102でデジタル角度出力φと加算し、φ+△φを前記sinROM60及びcosROM61を経て前記sin用10bit乗算型D/Aコンバータ51及びcos用10bit乗算型D/Aコンバータ52へフィードバックするため制御偏差εを0にすべく制御された結果、図1同様、誤差のないデジタル角度出力信号φを得ることができる。
尚、前述の図3の構成においては、前述の特開2000−353957号公報の図1を援用しているため、必要以外の部分については説明を省略している。
【0066】
図4の構成は、本発明の補正値テーブル52aを特開2006−58232号公報の図1の構成に適用した場合として示すものである。
図4に示す角度検出信号処理装置は、信号処理部400と、第1の位相ロック部PLL1と、第2の位相ロック部PLL2と、位相差演算部500とを有する。
信号処理部400は、信号処理部の一実施形態である。
[信号処理部400]
信号処理部400は、角度検出信号VおよびVとに基づいて、周波数ωを有するとともに角度θ(t)に応じた位相差を有する複素信号 CPおよび CNを出力する。なお、複素信号の記号に下線‘ ’を付すことによって複素信号と実信号とを区別する。
【0067】
信号処理部400は、例えば図4に示すように、角度検出信号Vを実部成分、角度検出信号Vを虚部成分とする複素信号 CPと、角度検出信号Vを実部成分、角度検出信号Vの極性を反転した信号を虚部信号とする複素信号 CPとを出力する。
後で詳しく述べるように、複素信号 CPおよび CNは、正の周波数(ω)の成分と負の周波数(−ω)の成分をそれぞれ有しており、互いに同一極性の周波数成分同士を比較すると、その位相差は角度2×θ(t)になっている。
【0068】
信号処理部400に含まれる極性反転回路401は、角度検出信号Vの極性を反転する回路である。
【0069】
[PLL1,PLL2]
位相ロック部PLL1は、複素信号 CPに位相をロックさせた複素信号 UOを生成し、この複素信号 UOの位相角に応じたデータPA1を出力する。
位相ロック部PLL2は、複素信号 CNに位相をロックさせた複素信号 LOを生成し、この複素信号 LOの位相角に応じたデータPA2を出力する。
【0070】
通常の位相ロック回路が実信号の位相にロックするものであるのに対し、位相ロック部PLL1およびPLL2は、入力される複素信号に含まれる特定の極性を持つ周波数成分の位相にロックする。すなわち、入力される複素信号が正と負の周波数成分を有する場合に、例えば正の周波数成分に位相をロックさせた複素信号 UO LOを生成する。
【0071】
位相ロック部PLL1およびPLL2の詳細な構成について説明する。
【0072】
図4の例において、位相ロック部PLL1は、位相角データ生成部300−1と、複素信号処理部100−1と、帰還部200−1とを有する。
また、位相ロック部PLL2は、位相角データ生成部300−2と、複素信号処理部100−2と、機関部200−2とを有する。
位相角データ生成部300−1,300−2は、本発明の位相角データ生成部の一実施形態である。
複素信号処理部100−1,100−2は、複素信号処理部の一実施形態である。
帰還部200−1,200−2は、帰還部の一実施形態である。
【0073】
位相角データ生成部300−1は、帰還部200−1より入力される帰還制御信号Vf1に応じた周期で反復されるデータであって、当該周期内の位相角を示すデータを、上述した位相角のデータPA1として生成する。
【0074】
位相角データ生成部300−1は、例えば、信号生成部301とカウンタ302とを有する。
信号生成部301は、本発明の信号生成部の一実施形態である。
カウンタ302は、本発明のカウンタの一実施形態である。
【0075】
信号生成部301は、帰還制御信号Vf1に応じた周波数を有する信号を生成する回路であり、例えば電圧制御発振器(VCO)などを用いて構成される。
【0076】
カウンタ302は、信号生成部301において生成される信号を分周する回路であり、所定ビット長nの計数値を出力する。例えば、‘0’から‘2n−1’まで1ずつ増える計数値を反復して出力する。カウンタ302は、このカウンタ302の計数値を先に述べた位相角のデータPA1として出力する。
【0077】
位相角データ生成部300−2は、帰還部200−2より入力される帰還制御信号Vf2ら応じた周期で反復されるデータであって、当該周期内の位相角を示すデータを、上述した位相のデータPA2として生成する。
位相角データ生成部300−2も、例えは上述した信号生成部301とカウンタ302とを用いて構成されており、カウンタ302の計数値を位相角のデータPA2として出力する。
【0078】
複素信号処理部400−1は、信号処理部400から入力される複素信号 CPと、位相角データ生成部300−1において生成されるデータPA1に応じた位相角(ω0t+φ(t))を有し互いに直交する信号成分VUO−1およびVUO−Qを含み、周波数が所定の極性(例えば負)に設定される複素信号 UOと、を乗算した場合に得られる複素信号の偏角に応じた信号VUCを生成する。この偏角に応じた信号VUCとして、例えば、複素信号 CPと複素信号 UOとを複素乗算した場合に得られる複素信号の実部成分または虚部成分に応じた信号を生成する。
【0079】
前述の図4の構成においては、前述の他の構成と同様に、出力Doutが補正値テーブルに入力され、補正データ△φが各複素信号生成部107の手前の加算器102と減算器18に入力され、出力Doutの誤差補正が行われる。
尚、図4の構成は、フィードバック制御の最小限の説明をしたもので、他の部分は、前述の特開2006−58232号公報に開示されているため、省略するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によるデジタル角度出力信号の出力方法及び装置は、レゾルバの回転検出信号を回転信号処理器内の構成のみでデジタル信号処理でき、IC化において小型化を達成することができる。
【符号の説明】
【0081】
12 回転角検出器
14 回転信号処理器(トラッキング式)
18 減算器
20 同期検波器
21 補償器
24 電圧制御型発振器(VCO)
52a 補正値テーブル
100 第1変換器
101 第2変換器
102 加算器
130 カウンタ
K・sin(θ+△θ)・f(t) 第1相検出信号
K・cos(θ+△θ)・f(t) 第2相検出信号
sin ωt 励磁電源
ε 制御偏差
cos φ 第1検出信号
sin φ 第2検出信号
φ 誤差(補正データ)
φ デジタル角度出力信号
200 閉ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転角検出器(12)から得られた第1相検出信号〔K・sin(θ+△θ)・f(t)〕と第2相検出信号〔K・cos(θ+△θ)・f(t)〕を閉ループ(200)の負帰還制御型の回転信号処理器(14)に入力し、閉ループを介してデジタル角度出力信号(φ)を出力するようにしたデジタル角度出力信号の出力方法において、
少なくとも、前記回転角検出器(12)の角度誤差、前記回転信号処理器(14)における演算過程で生じる誤差信号に起因する角度誤差を前記閉ループ(200)内の制御偏差演算〔制御偏差ε=K・sin(θ−φ)〕の段階でデジタル補正すると共に、前記デジタル角度出力信号(φ)に角度依存の誤差〔△θ(θ)〕が存在した場合、前記誤差〔△θ(θ)〕を予め前記閉ループ(200)内の補正値テーブル(52a)に補正データ(△φ)として格納しておき、前記デジタル角度出力信号(φ)を負帰還制御する際に、前記デジタル角度出力信号(φ)に前記補正データ(△φ)を加算し、制御偏差(ε)を0とすることを特徴とするデジタル角度出力信号の出力方法。
【請求項2】
回転角検出器(12)から得られた第1相検出信号〔K・sin(θ+△θ)・f(t)〕と第2相検出信号〔K・cos(θ+△θ)・f(t)〕を閉ループ(200)の負帰還制御型の回転信号処理器(14)に入力し、閉ループを介してデジタル角度出力信号(φ)を出力するようにしたデジタル角度出力信号の出力装置において、
少なくとも、前記回転角検出器(12)の角度誤差、前記回転信号処理器(14)における演算過程で生じる誤差信号に起因する角度誤差を前記閉ループ(200)内の制御偏差演算〔制御偏差ε=K・sin(θ−φ)〕の段階でデジタル補正すると共に、前記デジタル角度出力信号(φ)に角度依存の誤差〔△θ(θ)〕が存在した場合、前記誤差〔△θ(θ)〕を予め前記閉ループ(200)内の補正値テーブル(52a)に補正データ(△φ)として格納しておき、前記デジタル角度出力信号(φ)を負帰還制御する際に、前記デジタル角度出力信号(φ)に前記補正データ(△φ)を加算し、制御偏差(ε)を0とすることを特徴とするデジタル角度出力信号の出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−47626(P2013−47626A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185725(P2011−185725)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】