説明

デバイス、薄膜トランジスタおよびその製造方法

【課題】塗布法により機能性薄膜を所望の領域に形成し、特性やその寿命が良好なデバイス、薄膜トランジスタおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】基板と、前記基板上に形成された第1電極と、前記第1電極の上方に形成された機能性薄膜と、前記機能性薄膜の上方に設けられた第2電極とを具備し、前記機能性薄膜の形成領域の周囲において、フッ素を含む基とパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されていることを特徴とするデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性薄膜を有するデバイス、薄膜トランジスタおよびその製造方法にかかわるものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタ素子、有機薄膜太陽電池、有機ELディスプレイなどの分野において、多くの機能性薄膜が検討されている。機能性薄膜は、様々な機能を発現する材料を含み、デバイス中において該機能の発現を必要とする場所に、該機能の発現のために必要とする精度で配置される、いわゆる微細パターニングを行なった薄膜である。パターニングによって発現させる機能としては、配線、電極、絶縁層、発光層、電荷輸送層などの機能が例示できる。これらのパターニングを行なう手法としては、インクジェット法やノズル法、あるいは種々のロール印刷法、例えばフレキソ印刷や反転印刷などを用いて、基板上に直接パターニングする方法が提案されている。これらの印刷法は、一般的に濃度及び粘度が比較的低いインクを用いている。
【0003】
高分子型の有機材料のインクを塗布し有機ELディスプレイを製造する場合、画素の分離のために、分離隔壁の役目を果たす、いわゆるバンクを設ける方法が知られている。これは、電荷注入層、中間層(インターレイヤ)、発光層などの機能性薄膜を、インクジェット法やその他の塗布方法でバンクの内側に塗布し、乾燥させて機能性薄膜を塗り分けるものであり、例えば、無機絶縁膜(SiO2)とこの上に形成した有機絶縁膜でバンクを形成する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では塗布したインクがバンクに這い上がって広がり十分な膜厚が確保できない、という課題が生じる。この課題を解決する方法として、バンク表面に撥液性加工を施し、インクのバンクへの這い上がりを抑制する方法が提案されている(特許文献2)。これは、フッ素系(CF)のプラズマ処理を行うことにより、バンクの表面張力を高めインクの保持力向上を図り、機能性薄膜として所望の膜厚を確保するものである。
【0004】
バンク表面等の基板表面に撥液性加工を施して親液性の領域と撥液性の領域とを形成する方法としては、具体的には、親液性の薄膜の表面に含フッ素シランカップリング剤等の撥液性物質を塗布して撥液性の薄膜を形成し、波長が200nm未満の光を撥液性の薄膜の一部に照射して該撥液性物質を分解し、次いで分解物を除去する方法が知られている。該方法で得られた基板は、光照射部位のみが親液性表面になる(特許文献3)。
【0005】
また、比較的長い波長の光を用いる方法としては、親液性の基板上に撥液性基を有する化合物と光重合開始剤とを含む撥液性組成物の薄膜を形成し、該薄膜の一部に光を照射することで、該撥液性の組成物を重合して溶媒に不溶化し、溶媒を用いて未重合部分を除去することで親液性領域をパターニングする方法が挙げられる(特許文献4)。
【0006】
さらに、比較的長い波長の紫外線を用いる方法としては、親液性の層上に酸化チタン等の光触媒を含む撥液性の薄膜を形成し、該薄膜の一部に光を照射し、撥液性の薄膜を分解して親液性の領域をパターニングする方法も知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号WO01/074121号明細書
【特許文献2】特開2003−257656号公報
【特許文献3】特開2000−282240号公報
【特許文献4】国際公開第2007−102487号
【特許文献5】特開平11−344804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術では以下のような問題があった。
【0009】
波長が200nm未満の光を照射する方法は、高エネルギー光を長時間照射する方法であり、該方法は大規模な設備、真空装置、高エネルギー光源などの特別な装置が必要になり製造コストが高くなるという問題がある。また、高エネルギーの照射によりバンク等の基板表面を撥液性加工した場合、基板または基板表面を構成する部材が分子レベルでダメージを受けることになる。その結果、ダメージを受けた基板表面の分子が前記基板上に塗布された機能性薄膜に拡散し、前記機能性薄膜の性質を劣化させ、前記機能性薄膜の特性や寿命を低下させるという問題があった。具体的には、バンク等の基板表面の一部分が損傷するため、製造工程中等の水分、酸素が、前記基板表面にも吸着、侵入しやすくなる。これにより、前記侵入した水分、酸素が、前記機能性薄膜へ時間とともに侵入し、前記機能性薄膜の特性に悪影響を及ぼす。
【0010】
また、比較的長い波長の光を用いる方法は、比較的エネルギーの低い光を用いるため、基板表面のダメージを軽減できるが、基板表面に光重合開始剤を塗布する必要がある。この場合、前記基板内に形成された機能性薄膜にも塗布され、該光重合開始剤の反応残基が前記機能性薄膜の特性を低下させるという問題がある。
【0011】
また、比較的長い波長の紫外線を用いる方法も、光触媒が、その上に成膜される機能性薄膜の特性を低下させるという問題がある。
【0012】
このように、機能性薄膜を印刷法により微細パターニングして製造した有機ELディスプレイや太陽電池などのデバイスでは、特性や寿命等に課題があった。
【0013】
本発明は上記課題を解決するものであり、塗布法により機能性薄膜を所望の領域に形成し、特性やその寿命が良好なデバイス、薄膜トランジスタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様のデバイスは、
基板と、
前記基板上に形成された第1電極と、
前記第1電極の上方に形成された機能性薄膜と、
前記機能性薄膜の上方に設けられた第2電極と、を具備し、
前記機能性薄膜の形成領域の周囲において、フッ素を含む基とパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によると、光重合開始剤や光触媒を塗布することなく、比較的エネルギーの低い光で撥液性加工ができるので、前記機能性薄膜を塗布する基板または基板表面を構成する部材にダメージを与えるのを防止し、ダメージを受けた部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮したデバイスを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1における有機EL素子の構成図。
【図2】実施の形態1における有機EL素子の製造方法。
【図3】実施の形態1の別の例における有機EL素子の構成図。
【図4】本発明のボトムゲート型薄膜トランジスタの構成図。
【図5】本発明のトップゲート型薄膜トランジスタの構成図。
【図6】実施の形態3における光電変換素子の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一態様によるデバイスは、基板と、前記基板上に形成された第1電極と、前記第1電極の上方に形成された機能性薄膜と、前記機能性薄膜の上方に設けられた第2電極と、を具備し、前記機能性薄膜の形成領域の周囲において、フッ素を含む基と前記パイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されているものである。
【0018】
これによると、光重合開始剤や光触媒を塗布することなく、比較的エネルギーの低い光で撥液性加工ができるので、前記機能性薄膜を塗布する基板または基板表面を構成する部材にダメージを与えるのを防止し、ダメージを受けた部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮したデバイスを構成することができる。
【0019】
ここで、前記機能性薄膜は、前記第1電極の一領域に形成され、前記化合物を含む膜は、前記第1電極の一領域の周囲に形成されていてもよい。
また、前記第1電極は、前記基板の第1領域に形成され、前記機能性薄膜は、前記第1電極の少なくとも一部を覆って、前記基板の前記第1領域を少なくとも一部に含む第2領域に形成され、前記化合物を含む膜は、前記第基板の前記第2領域の周囲に形成されていてもよい。
【0020】
また、前記機能性薄膜と第1電極との間にはパイ共役系を有する有機ケイ素化合物を有してもよい。
【0021】
また、前記第1電極と前記機能性薄膜との間に無機酸化物からなる電荷注入層を設け、該電荷注入層と前記機能性薄膜との間にパイ共役系を有する有機ケイ素化合物を有してもよい。
【0022】
また、前記第1電極の周囲の少なくとも一部を覆うように前記基板上に形成され、前記第1電極の上方に形成される機能性薄膜の有効領域を規制する規制層を設け、前記化合物を含む膜は、前記規制層の表面であって前記機能性薄膜が形成される領域の周辺領域に形成されていてもよい。
【0023】
また、前記第1電極と前記機能性薄膜との間に無機酸化物からなる電荷注入層を設け、該電荷注入層と前記機能性薄膜との間にパイ共役系を有する有機ケイ素化合物を有してもよい。
【0024】
また、前記機能性薄膜が電流注入型発光材料を含んでもよい。
【0025】
また、前記機能性薄膜が光電変換材料を含んでもよい。
【0026】
また、前記化合物は、パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を前記基板上に塗布し形成した第1の膜と、パイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を第1の膜上に塗布し形成した第2の膜を光照射することにより、前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物であってもよい。
【0027】
本発明の一態様である薄膜トランジスタは、基板と、前記基板上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されたソース電極と、前記ソース電極が形成された領域とは別の前記絶縁膜上の領域に形成されたドレイン電極と、前記絶縁膜上の前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域及び前記ソース電極及び前記ドレイン電極の端部を覆って形成された機能性薄膜と、を具備し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上の前記機能性薄膜の形成領域の周囲に、フッ素を含む基とパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されているものである。
【0028】
これによると、ボトムゲートタイプの薄膜トランジスタについても、光重合開始剤や光触媒を塗布することなく、比較的エネルギーの低い光で撥液性加工ができるので、前記機能性薄膜を塗布する基板または基板表面を構成する部材にダメージを与えるのを防止し、ダメージを受けた部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮した薄膜トランジスタを構成することができる。
【0029】
本発明の他の態様の薄膜トランジスタは、基板と、前記基板上に形成されたソース電極と、前記ソース電極が形成された領域とは別の前記基板上の領域に形成されたドレイン電極と、前記基板上の前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域及び前記ソース電極及び前記ドレイン電極の端部を覆って形成された機能性薄膜と、前記機能性薄膜を覆って形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されたゲート電極と、を具備し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上の前記機能性薄膜の形成領域の周囲に、フッ素を含む基とパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されているものである。
【0030】
これによると、トップゲートタイプの薄膜トランジスタについても、光重合開始剤や光触媒を塗布することなく、比較的エネルギーの低い光で撥液性加工ができるので、前記機能性薄膜を塗布する基板または基板表面を構成する部材にダメージを与えるのを防止し、ダメージを受けた部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮した薄膜トランジスタを構成することができる。
【0031】
ここで、前記化合物は、パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を前記基板上に塗布し形成した第1の膜と、パイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を第1の膜上に塗布し形成した第2の膜を光照射することにより、前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物であってもよい。
【0032】
また、前記ソース電極と前記機能性薄膜との間又は前記ドレイン電極と前記機能性薄膜との間にバッファー層が含まれていてもよい。
【0033】
本発明の一態様であるデバイスの製造方法は、第1電極を形成した基板の表面に、パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を塗布し第1の膜を形成する第1工程と、引き続きパイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を塗布し第1の膜上に第2の膜を形成する第2工程と、前記第1の膜と第2の膜を光照射し前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系をシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合する第3工程と、機能材料を含む溶液を塗布し機能性薄膜を形成する第4工程と、第2電極を前記機能性薄膜上に設ける第5工程と、を含むものである。
【0034】
本態様によると、比較的波長の長い光、例えば、200nm以上から380nm以下の波長光の光を用いて、基板表面に撥液性加工を行う場合に、重合開始剤や光触媒を用いることなく、前記撥液性加工を行うことができるので、前記機能性薄膜を塗布する基板または基板表面を構成する部材にダメージを与えるのを防止し、ダメージを受けた部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮したデバイスを構成することができる。
【0035】
本態様の一態様である薄膜トランジスタの製造方法は、基板上にゲート電極を形成し、前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にドレイン電極およびソース電極を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上および前記ドレイン電極上および前記ソース電極上にパイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を塗布し第1の膜を形成する工程と、引き続きパイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を塗布し第1の膜上に第2の膜を形成する工程と、前記第1の膜と第2の膜を光照射し前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系をシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合する工程と、前記ソース電極と前記ドレイン電極の間の領域に機能性薄膜を塗布形成する工程と、を含むものである。
【0036】
本態様によると、ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造方法についても、比較的波長の長い光、例えば、200nm以上から380nm以下の波長光の光を用いて、基板表面に撥液性加工を行う場合に、重合開始剤や光触媒を用いることなく、前記撥液性加工を行うことができる。そのため、前記機能性薄膜を塗布する基板または基板表面を構成する部材にダメージを与えるのを防止し、ダメージを受けた部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮した薄膜トランジスタを構成することができる。
【0037】
本態様の他の態様である薄膜トランジスタの製造方法は、ソース電極とドレイン電極を形成した基板上に、パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を塗布し第1の膜を形成する工程と、引き続きパイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を塗布し第1の膜上に第2の膜を形成する工程と、前記第1の膜と第2の膜を光照射し前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系をシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合する工程と、機能性薄膜を塗布形成する工程と、前記機能性薄膜上にゲート絶縁膜を形成し、引き続きゲート電極を形成する工程と、を含むものである。
【0038】
本態様によると、トップゲート構造の薄膜トランジスタの製造方法についても、比較的波長の長い光、例えば、200nm以上から380nm以下の波長光の光を用いて、基板表面に撥液性加工を行う場合に、重合開始剤や光触媒を用いることなく、前記撥液性加工を行うことができる。そのため、前記機能性薄膜を塗布する基板または基板表面を構成する部材にダメージを与えるのを防止し、ダメージを受けた部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮した薄膜トランジスタを構成することができる。
【0039】
ここで、光照射する光が200nm以上から380nm以下の波長であってもよい。
【0040】
これにより、下地に影響を与えることなく良好なデバイスを製造することができる。
【0041】
また本発明は、フッ素を含む基とパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物が、下記一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物の光二量化反応によって得られる化合物であるデバイスを提供する。
【0042】
【化1】

【0043】
ただし、Cは、下記一般式(2−1)または下記一般式(2−2)で表される基であり、Dは下記一般式(3)で表される基を表す
【0044】
【化2】

一般式(2−1)
【0045】
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はDとの結合を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、Dとの結合である。n1は0以上の整数を表す。)
【0046】
【化3】

一般式(2−2)
【0047】
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はDとの結合を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つはDとの結合である。p1及びm1は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)
【0048】
【化4】

一般式(3)
【0049】
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Arは(1+y1)価の芳香族炭化水素基又は(1+y1)価の複素環基を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Ra1は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。t1は0又は1を表し、x1は0又は1を表し、y1は1以上の整数を表す。複数個あるRa1は、同一でも相異なっていてもよい。Akが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0050】
【化5】

【0051】
ただし、Eは、下記一般式(5−1)または下記一般式(5−2)または下記一般式(5−3)で表される基であり、Fは下記一般式(6−1)または下記一般式(6−2)で表される基を表す。
【0052】
【化6】

一般式(5−1)
【0053】
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Arは(1+y2)価の芳香族炭化水素基又は(1+y2)価の複素環基を表し、Rb1はフッ素原子を含む1価の有機基を表し、t2は0又は1を表し、x2は0又は1を表し、y2は1以上の整数を表す。Rb1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0054】
【化7】

一般式(5−2)
【0055】
(式中、Ar、Rb1、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。))
【0056】
【化8】

一般式(5−3)
【0057】
(式中、Ar、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。Kは、−O−、−S−、−NH−又は−NR−を表す。Rはアルキル基又はアリール基を表す。kは0又は1を表し、rは0〜3の整数を表し、sは0〜15の整数を表す。kが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。sが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0058】
【化9】

一般式(6−1)
【0059】
(式中、Rは水素原子又は置換基又はEとの結合を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、Eとの結合である。n2は0以上の整数を表す。)
【0060】
【化10】

一般式(6−2)
【0061】
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はEとの結合を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つはEとの結合である。p2及びm2は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)
【0062】
また本発明は、パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)が下記一般式(1)で表される化合物であり、パイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)が下記一般式(4)で表される化合物であるデバイスの製造方法を提供する。
【0063】
【化11】

【0064】
ただし、Cは、下記一般式(2−1)または下記一般式(2−2)で表される基であり、Dは下記一般式(3)で表される基を表す
【0065】
【化12】

一般式(2−1)
【0066】
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はDとの結合を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、Dとの結合である。n1は0以上の整数を表す。)
【0067】
【化13】

一般式(2−2)
【0068】
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はDとの結合を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つはDとの結合である。p1及びm1は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)
【0069】
【化14】


一般式(3)
【0070】
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Arは(1+y1)価の芳香族炭化水素基又は(1+y1)価の複素環基を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Ra1は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。t1は0又は1を表し、x1は0又は1を表し、y1は1以上の整数を表す。複数個あるRa1は、同一でも相異なっていてもよい。Akが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0071】
【化15】

【0072】
ただし、Eは、下記一般式(5−1)または下記一般式(5−2)または下記一般式(5−3)で表される基であり、Fは下記一般式(6−1)または下記一般式(6−2)で表される基を表す。
【0073】
【化16】

一般式(5−1)
【0074】
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Arは(1+y2)価の芳香族炭化水素基又は(1+y2)価の複素環基を表し、Rb1はフッ素原子を含む1価の有機基を表し、t2は0又は1を表し、x2は0又は1を表し、y2は1以上の整数を表す。Rb1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0075】
【化17】

一般式(5−2)
【0076】
(式中、Ar、Rb1、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。))
【0077】
【化18】

一般式(5−3)
【0078】
(式中、Ar、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。Kは、−O−、−S−、−NH−又は−NR−を表す。Rはアルキル基又はアリール基を表す。kは0又は1を表し、rは0〜3の整数を表し、sは0〜15の整数を表す。kが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。sが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0079】
【化19】

一般式(6−1)
【0080】
(式中、Rは水素原子又は置換基又はEとの結合を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、Eとの結合である。n2は0以上の整数を表す。)
【0081】
【化20】

一般式(6−2)
【0082】
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はEとの結合を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つはEとの結合である。p2及びm2は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)
<用語の説明>
【0083】
以下、本明細書において共通して用いられる用語を説明する。本明細書において、<Cm〜Cn>(m、nはm<nを満たす正の整数である)という用語は、この用語とともに記載された基の炭素数がm〜nであることを表す。
【0084】
置換基とは、特に断りのない限り以下に示すハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、複素環チオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、水酸基、アルケニル基、アルキニル基を意味する。
【0085】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が例示される。
【0086】
アルキル基は、非置換のアルキル基及びハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基等で置換されたアルキル基を意味し、直鎖状アルキル基及び環状アルキル基(シクロアルキル基)の両方を含む。アルキル基は分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10程度である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、アミノプロピル基、アミノオクチル基、アミノデシル基、メルカプトプロピル基、メルカプトオクチル基、メルカプトデシル基等が例示される。C1〜C12アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0087】
アルコキシ基は、非置換のアルコキシ基及びハロゲン原子、アルコキシ基等で置換されたアルコキシ基を意味し、直鎖状アルコキシ基及び環状アルコキシ基(シクロアルコキシ基)の両方を含む。アルコキシ基は分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10程度である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基等が例示される。C1〜C12アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。
【0088】
アルキルチオ基は、非置換のアルキルチオ基及びハロゲン原子等で置換されたアルキルチオ基を意味し、直鎖状アルキルチオ基及び環状アルキルチオ基(シクロアルキルチオ基)の両方を含む。アルキルチオ基は分岐を有していてもよい。アルキルチオ基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10程度である。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等が例示される。C1〜C12アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基等が挙げられる。
【0089】
アリール基は、芳香族炭化水素から芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子1個を除いた残りの原子団であり、非置換のアリール基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリール基を意味する。アリール基には、ベンゼン環をもつもの、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が単結合又は2価の基、例えば、ビニレン基等のアルケニレン基を介して結合したものも含まれる。アリール基の炭素数は、通常6〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。アリール基としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基等が例示され、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
【0090】
C1〜C12アルコキシフェニル基として具体的には、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、i−プロピルオキシフェニル基、ブトキシフェニル基、i−ブトキシフェニル基、s−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、ラウリルオキシフェニル基等が例示される。
【0091】
C1〜C12アルキルフェニル基として具体的には、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、i−プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、i−ブチルフェニル基、s−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基等が例示される。
【0092】
アリールオキシ基は、非置換のアリールオキシ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールオキシ基を意味する。アリールオキシ基の炭素数は、通常6〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。その具体例としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0093】
C1〜C12アルコキシフェノキシ基として具体的には、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、i−プロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、i−ブトキシフェノキシ基、s−ブトキシフェノキシ基、t−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、ラウリルオキシフェノキシ基等が例示される。
【0094】
C1〜C12アルキルフェノキシ基として具体的には、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、i−プロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、i−ブチルフェノキシ基、s−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基等が例示される。
【0095】
アリールチオ基は、非置換のアリールチオ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールチオ基を意味する。アリールチオ基の炭素数は、通常6〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。具体的には、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基等が例示される。
【0096】
アリールアルキル基は、非置換のアリールアルキル基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキル基を意味する。アリールアルキル基の炭素数は、通常7〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。
具体的には、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基等が例示される。
【0097】
アリールアルコキシ基は、非置換のアリールアルコキシ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルコキシ基を意味する。アリールアルコキシ基の炭素数は、通常7〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。具体的には、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基等が例示される。
【0098】
アリールアルキルチオ基は、非置換のアリールアルキルチオ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキルチオ基を意味する。アリールアルキルチオ基の炭素数は、通常7〜60、好ましくは7〜48、より好ましくは7〜30程度である。具体的には、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基等が例示される。
【0099】
アリールアルケニル基は、非置換のアリールアルケニル基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルケニル基を意味する。アリールアルケニル基の炭素数は、通常8〜60、好ましくは8〜48、より好ましくは8〜30程度である。その具体例としては、フェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルケニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C2〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基が好ましい。
【0100】
C2〜C12アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。
【0101】
アリールアルキニル基は、非置換のアリールアルキニル基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキニル基を意味する。アリールアルキニル基の炭素数は、通常8〜60、好ましくは8〜48、より好ましくは8〜30程度である。その具体例としては、フェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルキニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0102】
C2〜C12アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−オクチニル基等が挙げられる。
【0103】
1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいい、非置換の1価の複素環基及びアルキル基等の置換基で置換された1価の複素環基を意味する。1価の複素環基の炭素数は、置換基の炭素数を含めないで、通常3〜60、好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20程度である。ここに複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素として、炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子、ヒ素原子等のヘテロ原子を含むものをいう。1価の複素環基の中でも、1価の芳香族複素環基が好ましい。1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられ、中でもチエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0104】
複素環チオ基は、メルカプト基の水素原子が1価の複素環基で置換された基を意味する。複素環チオ基としては、例えば、ピリジルチオ基、ピリダジニルチオ基、ピリミジルチオ基、ピラジニルチオ基、トリアジニルチオ基等のヘテロアリールチオ基等が挙げられる。
【0105】
アミノ基は、非置換のアミノ基並びにアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基から選ばれる1又は2個の置換基で置換されたアミノ基(以下、置換アミノ基という。)を意味する。置換基は更に置換基(以下、二次置換基という場合がある。)を有していてもよい。置換アミノ基の炭素数は、二次置換基の炭素数を含めないで、通常1〜60、好ましくは2〜48、より好ましくは2〜40程度である。置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、C1〜C12アルキルフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジニルアミノ基、トリアジニルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基等が挙げられる。
【0106】
シリル基は、非置換のシリル基並びにアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基から選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたシリル基(以下、置換シリル基という。)を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換シリル基の炭素数は、二次置換基の炭素数を含めないで、通常1〜60、好ましくは3〜48、より好ましくは3〜40程度である。置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が挙げられる。
【0107】
アシル基は、非置換のアシル基及びハロゲン原子等で置換されたアシル基を意味する。
アシル基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。
【0108】
アシルオキシ基は、非置換のアシルオキシ基及びハロゲン原子等で置換されたアシルオキシ基を意味する。アシルオキシ基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。アシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0109】
イミン残基は、式:H−N=C<及び式:−N=CH−の少なくとも一方で表される構造を有するイミン化合物から、この構造中の水素原子1個を除いた残基を意味する。このようなイミン化合物としては、例えば、アルジミン、ケチミン及びアルジミン中の窒素原子に結合した水素原子がアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等で置換された化合物が挙げられる。イミン残基の炭素数は、通常2〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。イミン残基としては、例えば、一般式:−CR'=N−R''又は一般式:−N=C(R'')(式中、R'は水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、R''は、同一又は相異なり、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、ただし、R''が2個存在する場合、2個のR''は相互に結合し一体となって2価の基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2〜18のアルキレン基として環を形成してもよい。)で表される基等が挙げられる。
【0110】
アミド基は、非置換のアミド基及びハロゲン原子等で置換されたアミド基を意味する。
アミド基の炭素数は、通常2〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。アミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基等が挙げられる。
【0111】
酸イミド基は、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基を意味する。酸イミド基の炭素数は、通常4〜20、好ましくは4〜18、より好ましくは4〜16程度である。
【0112】
カルボキシル基は、非置換のカルボキシル基並びにアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基等の置換基で置換されたカルボキシル基(以下、置換カルボキシル基という。)を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換カルボキシル基の炭素数は、二次置換基の炭素数を含めないで、通常1〜60、好ましくは2〜48、より好ましくは2〜45程度である。置換カルボキシル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0113】
X価の芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素から水素原子X個を除いてなる原子団を意味し、独立したベンゼン環又は縮合環を持つものを含む。前記芳香族炭化水素基は、炭素原子数が通常6〜60程度、好ましくは6〜48であり、より好ましくは6〜30であり、更に好ましくは6〜18である。該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば2価の芳香族炭化水素基(アリーレン基)であれば、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基等の非置換又は置換のフェニレン基;1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基等の非置換又は置換のナフタレンジイル基;1,4−アントラセンジイル基、1,5−アントラセンジイル基、2,6−アントラセンジイル基、9,10−アントラセンジイル基等の非置換又は置換のアントラセンジイル基;2,7−フェナントレンジイル基等の非置換又は置換のフェナントレンジイル基;1,7−ナフタセンジイル基、2,8−ナフタセンジイル基、5,12−ナフタセンジイル基等の非置換又は置換のナフタセンジイル基;2,7−フルオレンジイル基、3,6−フルオレンジイル基等の非置換又は置換のフルオレンジイル基;1,6−ピレンジイル基、1,8−ピレンジイル基、2,7−ピレンジイル基、4,9−ピレンジイル基等の非置換又は置換のピレンジイル基;3,9−ペリレンジイル基、3,10−ペリレンジイル基等の非置換又は置換のペリレンジイル基等が挙げられ、好ましくは、非置換又は置換のフェニレン基、非置換又は置換のフルオレンジイル基である。
【0114】
X価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子X個を除いた残りの原子団をいい、炭素原子数が通常4〜60程度、好ましくは4〜30であり、特に好ましくは6〜12である。該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。前記X価の複素環基の具体例としては、例えば2価の複素環基であれば、2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等の非置換又は置換のピリジンジイル基;2,5−チオフェンジイル基等の非置換又は置換のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等の非置換又は置換のフランジイル基;2,6−キノリンジイル基等の非置換又は置換のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等の非置換又は置換のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等の非置換又は置換のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等の非置換又は置換のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等の非置換又は置換のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等の非置換又は置換のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等の非置換又は置換のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等の非置換又は置換のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等の非置換又は置換のジベンゾシロールジイル基等が挙げられ、好ましくは、非置換又は置換のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基、非置換又は置換のフェノキサジンジイル基、非置換又は置換のフェノチアジンジイル基である。
【0115】
感光性を有する基であって光二量化反応をしうる基は、紫外線領域から可視光領域の光エネルギーを吸収して二量化反応を起こす官能基であれば、特に限定なく用いることができる。光エネルギーの吸収を要する理由は、いわゆる微細パターニングを行う際には、化合物の感光性(光官能性)が利用されるからである。官能基が吸収する光エネルギーは、高エネルギーであると、光照射に要するコストが高くなり、また、周辺の有機材料が高エネルギーに晒されて劣化する可能性が生じるために、好ましくない。官能基が吸収するのに好ましい光は、波長が200nm以上、好ましくは200〜380nmである。
【0116】
ここでいう二量化とは、有機化合物の分子2個が化学的に結合することをいう。結合する分子同士は同種でも異種でもよい。2個の分子中の官能基同士の化学構造も同一であっても異なっていてもよい。但し、当該官能基は、触媒及び開始剤等の反応助剤を用いることなく光二量化反応を生じる構造、および組合せであることが好ましい。反応助剤の残基に接触すると周辺の有機材料が劣化する可能性があるからである。
【0117】
これらの官能基としては、光二量化反応をしうる二重結合、あるいは光二量化反応をしうる部位を有する芳香族縮合環を有するものが好ましく用いられる。中でも、芳香族縮合環基は比較的低エネルギーの光を吸収するため、より好ましく用いられる。好ましく用いられる官能基の具体例としては、桂皮酸エステル構造を有する基、カルコン構造を有する基、スチリルピリジニウム構造を有する基、α−フェニルマレイミド構造を有する基、アントリル基、クマリン構造を有する基などが挙げられる。
【0118】
本発明において、撥液性を有する基および親液性を有する基は、相対的な意味で用いられる用語である。撥液性を有する基は親液性を有する基よりも撥液性の程度が高いものであれば足りる。撥液性を有する基は、該基を含む化合物からなる薄膜に撥液性を与える。例えば、撥液性を有する基を含む化合物からなる薄膜は、表面に水系インクの液滴を形成した場合に、接触角が80°以上であり、かつ、該基を含む化合物からなる薄膜に塗布した有機溶媒系インクの液滴の接触角が40°以上であることが好ましい。
【0119】
親液性を有する基は、該基を含む化合物からなる薄膜に親液性を与える。例えば、親液性を有する基を含む化合物からなる薄膜は、表面に有機溶媒系インクの液滴を形成した場合に、接触角が5°以下であることが好ましい。
【0120】
親液性を有する基を有する化合物(A)としては、下記式(2−1)または式(2−1)で表わされる部分構造を有するものが好適に用いられる。
【0121】
【化21】

式(2−1)
【0122】
(式中、Rは、水素原子又は置換基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、親液性を有する基である。n1は0以上の整数を表す。)
【0123】
【化22】

式(2−2)
【0124】
(式中、Rは、水素原子又は置換基を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは親液性を有する基である。p1及びm1は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)
【0125】
としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル酸エステル基が好ましい。n1としては、0〜4が好ましい。Xとしては、−C(R−、−N(R)−が好ましい。Yとしては、−C(R−、−N(R)−が好ましい。p1としては、0〜2が好ましい。m1としては、0〜2が好ましい。
【0126】
式(2−1)、式(2−2)で表わされる化合物の具体的な例示は、以下の化合物等が挙げられる。
【0127】
【化23】

【0128】
親液性を有する基中には、Wで表される基を含むことが好ましい。Wとしては、水酸基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロカルボニル基(式:−C(=O)−E(式中、Eはハロゲン原子を表す)で表される基を意味し、式:−C(=O)−Clで表される基及び式:−C(=O)−Brで表される基が好ましい。)、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、リン酸基(式:(HO)P(=O)−O−で表される基)、リン酸エステル構造を有する基(式:(RO)P(=O)−O−又は式:(RO)(HO)P(=O)−O−(式中、Rは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を表す)で表される基)、亜リン酸基(式:(HO)P−O−で表される基)、亜リン酸エステル構造を有する基(式:(RO)P−O−又は式:(RO)(HO)P−O−(式中、Rは前記のとおりである)で表される基)、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、複素環チオ基、アミノ基等が例示される。これらの中で、ハロゲン原子、アルコキシ基、リン酸基、アミノ基又は水酸基であることが好ましい。
【0129】
親液性を有する基は、周期表の4族、5族、6族、13族、14族、15族又は16族に属する原子を含む基であることが好ましい。4族、5族、6族、13族、14族、15族又は16族に属する原子としては、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子等の4族に属する原子;バナジウム原子、ニオブ原子、タンタル原子等の5族に属する原子;クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子等の6族に属する原子;ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、タリウム原子等の13族に属する原子;ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、鉛原子等の14族に属する原子;リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、ビスマス原子等の15族に属する原子;酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、ポロニウム原子等の16族に属する原子等が挙げられるが、スズ原子、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、ニオブ原子、ホウ素原子、ケイ素原子、リン原子又は硫黄原子であることが好ましく、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、チタン原子、ケイ素原子、リン原子又は硫黄原子であることがより好ましく、チタン原子又はケイ素原子であることがさらに好ましく、ケイ素原子であることが特に好ましい。
【0130】
親液性を有する基は、式(3’)で表わされる構造を含む基が好ましく、式(3’)で表わされる構造からなる基がより好ましい。
【0131】
【化24】

【0132】
(式中、Mは、周期表の4族、5族、6族、13族、14族又は15族に属する原子を表す。Wは、2価の有機基を表す。Wは前述と同じ意味を表す。Ra’は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を表す。v1は、1以上(u−1)以下の整数である。uはMの原子価を表す。Wが複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Ra’が複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0133】
式(3’)中、Ra’は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を表わし、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基又はアリールアルキル基である。Ra’で表される基は、置換基を有していてもよい。
【0134】
式(3’)中、uは、Mの原子価を表す。Mが、例えば、ケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子等である場合、uは4であり、Mが、ホウ素原子、アルミニウム原子等である場合、uは3である。
【0135】
式(3’)中、v1は1以上(u−1)以下の整数である。好ましくは2以上の整数であり、より好ましくは3以上の整数である。
【0136】
親液性を有する基のさらに好ましい態様としては、以下の式(3)で表わされる基が挙げられる。
【0137】
【化25】

式(3)
【0138】
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Arは(1+y1)価の芳香族炭化水素基又は(1+y1)価の複素環基を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Ra1は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。t1は0又は1を表し、x1は0又は1を表し、y1は1以上の整数を表す。複数個あるRa1は、同一でも相異なっていてもよい。Akが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0139】
a1としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。Akとしては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい。Zとしては、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−O−、−Ak−が好ましい。x1としては、1が好ましい。y1としては、1〜3が好ましい。
【0140】
親液性を有する基を含む化合物の具体的な例示は、以下の化合物等が挙げられる。
【0141】
【化26】

【0142】
【化27】

【0143】
【化28】

【0144】
【化29】

【0145】
撥液性を有する基を有する化合物(B)としては、下記式(6−1)で表わされる部分構造を有するものが好適に用いられる。
【0146】
【化30】

式(6−1)
【0147】
(式中、Rは水素原子又は置換基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、撥液性を有する基である。n2は0以上の整数を表す。)
【0148】
また、下記式で表わされる部分構造(6−2)を有するものも好適に用いられる。
【0149】
【化31】

式(6−2)
【0150】
(式中、Rは、水素原子又は置換基を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは撥液性を有する基である。p2及びm2は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)
【0151】
としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル酸エステル基が好ましい。n2としては、0〜4が好ましい。Xとしては、−C(R−、−N(R)−が好ましい。Yとしては、−C(R−、−N(R)−が好ましい。p2としては、0〜2が好ましい。m2としては、0〜2が好ましい。
【0152】
式(6−1)、式(6−2)で表わされる化合物の具体的な例示は、以下の化合物等が挙げられる。
【0153】
【化32】

【0154】
撥液性を有する基を有する化合物(B)としては、フッ素原子を含む以下の構造を含む基が例示される。
【0155】
【化33】

【0156】
ここで、Bはフッ素以外の原子からなる2価の基を表す。また、Rb1はフッ素原子を含む1価の有機基を表す。n3は0〜3の整数を表し、Bが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Bは−O−、芳香族炭化水素基、複素環基、アルキル基、又はアルキルオキシ基が好ましい。
【0157】
撥液性を有する基の好ましい態様としては、下記の式(5-1)、または式(5−2)で表される基が挙げられる。
【0158】
【化34】

式(5−1)
【0159】
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Arは(1+y2)価の芳香族炭化水素基又は(1+y2)価の複素環基を表し、Rb1はフッ素原子を含む1価の有機基を表し、t2は0又は1を表し、x2は0又は1を表し、y2は1以上の整数を表す。Rb1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0160】
【化35】

式(5−2)
【0161】
(式中、Ar、Rb1、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。)
【0162】
フッ素原子を含む1価の有機基であるRb1は、有機基の中の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された基である。特に、有機基としてはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数としては、撥液性の観点からは、1〜20個が好ましく、4〜18個がより好ましく、6〜17個がさらに好ましい。
【0163】
b1中のフッ素原子の数は、Rb1中のフッ素原子の数とRb1中の水素原子の数との和でRb1中のフッ素原子の数を割った値(置換率)が、撥液性の観点からは、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、特に、有機基がアルキル基である場合、その全ての水素原子がフッ素原子で置換された、いわゆるパーフルオロアルキル基が、撥液性の観点からは好ましい。
【0164】
Arとしては、フェニレン基、フェニルトリイル基、フェニルテトライル基、ナフタレンジイル基、ナフタレントリイル基、ナフタレンテトライル基、アントラセンジイル基、アントラセンテトライル基、フルオレンジイル基、フルオレントリイル基が好ましい。t2としては、1が好ましい。x2としては、1が好ましい。y2としては、1〜5が好ましい。
【0165】
撥液性を有する基のさらに好ましい態様としては、下記式(5−3)で表される基が挙げられる。
【0166】
【化36】


式(5−3)
【0167】
(式中、Ar、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。Kは、−O−、−S−、−NH−又は−NR−を表す。Rはアルキル基又はアリール基を表す。kは0又は1を表し、rは0〜6の整数を表し、sは0〜16の整数を表す。kが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。sが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0168】
Kとしては、−O−、−S−、−NR−が好ましい。kとしては、1が好ましい。rとしては、0〜3が好ましい。sとしては、1〜10が好ましい。
【0169】
撥液性を有する基を含む化合物の具体的な例示は、以下の化合物等が挙げられる。
【0170】
【化37】

【0171】
【化38】

【0172】
【化39】

【0173】
【化40】

【0174】
【化41】

【0175】
本発明において、化合物(A)と化合物(B)とを二量化反応させる方法は、光の照射による。光照射に用いる光は、当該化合物がその光エネルギーを吸収して二量化反応を起こす波長領域であれば特に限定されない。例示するならば、200nm以上かつ380nm以下の波長の光が好ましい。200nm未満の光は非常に強力なエネルギーを有するので、基板または基板表面を構成する部材や当該化合物の分解を引き起こす恐れがある。また380nmより長い波長の光は、当該化合物が吸収しにくい波長の光であるため、光反応が発生しにくくなり、製造上好ましくない。
【0176】
なお、光の照射時間は、光の波長、光の強度・光源の種類、当該化合物の種類等に応じて、適宜変更して用いられる。
【0177】
光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ、窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられる。また、単色光が得られるレーザー以外の光源としては、広帯域の線スペクトル、連続スペクトルをバンドパスフィルター、カットオフフィルター等の光学フィルターを使用して取出した特定波長の光を使用してもよい。一度に大きな面積を照射することができることから、光源としては高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプが好ましい。
【0178】
本発明において、化合物(A)と化合物(B)とを光の照射により二量化反応させる方法によって形成される化合物の一態様として、シクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物が挙げられる。
【0179】
例えば、化合物(A)のアントラセン骨格と化合物(B)のアントラセン骨格が光二量化すると、その構造は、5,12:6,11-ジ[1,2]ベンゼノ-5,6,11,12-テトラヒドロジベンゾ[a,e]シクロオクテンとなる。
【0180】
本発明において、シクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物の具体的な例示は、以下の化合物等が挙げられる。
【0181】
【化42】

【0182】
(式中、RAは化合物(A)に由来する基であり、RBは化合物(B)に由来する基である)
【0183】
【化43】

【0184】
(式中、R、Rは前述と同じ意味を表す。)
【0185】
【化44】

【0186】
(式中、R、Rは前述と同じ意味を表す。)
【0187】
本発明の化合物を用いて、親液性領域と撥液性領域とをパターニングする方法を以下に説明する。
【0188】
まず、ガラス、ITO(インジウム・スズ・オキサイド)つきの基板、シリコンウェハーなどの基板を、通常の湿式洗浄・乾式洗浄法を用いて洗浄する。次に化合物(A)を有機溶媒に溶解した溶液を該基板上に塗布する。用いる溶媒としては、化合物(A)が溶解するものであれば特に限定はないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン等の炭化水素類、トルエンやキシレンなどの芳香族類が好ましい。溶液中の化合物(A)の濃度は0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。
【0189】
塗布する方法としては特に限定はないが、スピンコート、ディップコート、ワイヤーバーコート、ブレードコート、ロールコートなどのコーティング、あるいはインクジェットやフレキソ印刷などの各種印刷方法などの方法が採用できる。塗布は、室温下で行なうことが好ましい。次に、膜を形成した基材を大気中、または窒素気流中で加熱乾燥する。この加熱乾燥により、化合物(A)がチタンやケイ素を有する基を有し、所謂チタンカップリング剤、あるいはシランカップリング剤として機能する基を有する場合には、該基と基板上のOH基が反応し、化合物(A)が基板上に固定されることとなる。
【0190】
基板の加熱乾燥後、化合物(A)を塗布し、膜を形成した面に、化合物(B)を有機溶媒に溶解した溶液を塗布する。用いる溶媒としては、化合物(B)が溶解するものであれば特に限定はないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン等の炭化水素類、トルエンやキシレンなどの芳香族類が好ましく、これらの中でもフッ素原子を有する溶媒を用いることがより好ましい。溶液中の化合物(B)の濃度は0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。
【0191】
化合物(B)を塗布後、基板を窒素気流中で加熱乾燥し、その後光照射を行なう。光照射に用いる光としては、前述した通りである。光の照射はフォトマスクを介して行うことが好ましい。この方法により、膜の表面の所望の領域でのみ光二量化反応を起こすことが可能であり、親液性領域と撥液性領域が所望のパターンを形成した処理基板を得ることができる。光照射する雰囲気は任意に選択することができるが、窒素ガス雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で光照射するのがより好ましい。その他の不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、キセノン、二酸化炭素等から選ばれるガスが挙げられ、安価に入手できるため窒素ガスが最も好ましい。
【0192】
光照射を行なった後、基板の表面に存在する未反応の化合物(B)を除去する。除去の方法としては、未反応の化合物(B)が溶解する溶媒で洗浄するのが好ましい。洗浄に用いる溶媒としては、化合物(A)を溶解せず、かつ、化合物(B)が溶解するものであれば特に限定はないが、フッ素原子を有する溶媒が好ましい。
【0193】
このようにして、光照射した領域には、化合物(A)と化合物(B)が二量化した化合物が存在するため、その領域は化合物(B)が有する撥液性の基の効果により、撥液性を示す。一方、光照射しなかった領域は、化合物(B)は洗浄によって除去されるため、化合物(A)が基板に結合した状態となり、撥液性を示さず、相対的に親液性となる。
【0194】
本発明の製造方法によって、大規模な装置や光源を用いることなく、親液性領域と撥液性領域とを光の照射によってパターニングすることができる。例えば該パターニング面に、スロットコート法やスプレイ法などで機能性材料を含む溶液を塗布した場合、撥液性領域では溶液は塗布されず、親液性領域のみに溶液が保持されるので、乾燥後には機能性材料が精緻にパターニングされた薄膜が得られる。このようにして得られるパターニングされた機能性薄膜は、有機薄膜トランジスタ素子、有機薄膜太陽電池、有機ELディスプレイなどの分野において有用に用いることができる。
【実施例】
【0195】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0196】
合成例1
化合物1の合成
【0197】
【化45】

(化合物1)
【0198】
200ml二口ナス型フラスコに9-Anthracenecarboxilic acid(9−アントラセンカルボン酸) 1.0 g (4.5 mmol)、DCC(N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド) 0.93 g (4.5 mmol)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)0.61 g (4.5 mmol)を入れ、脱気アルゴン置換した。dry CH2Cl2(脱水塩化メチレン)360 ml、APS(3−アミノプロピルトリメトキシシラン) 1.0 g (4.5 mmol)、Et3N(トリエチルアミン) 0.45 g (4.5 mmol)を加え、室温にて24時間磁気攪拌した。TLC (展開溶媒:クロロホルム)にて反応の進行を確認したため反応を停止し、溶媒を減圧留去したのち、カラムクロマトグラフィー (シリカゲル、展開溶媒:クロロホルム)にて精製した。 収量は 360 mg (0.85 mmol、 収率20 %) であった。
【0199】
1H NMR (CDCl3):δ= 8.46 (s, 1H), 8.07 (d, 2H), 7.99 (d, 2H), 7.48 (m, 4H), 6.42 (s, 1H), 3.75 (m, 6H), 1.90 (m, 2H), 1.25 (m, 2H), 1.12 (m, 9H), 0.77 (t, 2H)
【0200】
合成例2
化合物2−1の合成
【0201】
【化46】

(化合物2−1)
【0202】
ジムロート管、セプタムカバー付き三口丸底フラスコに没食子酸メチル268mg (1.5 mmol,1.0eq.)、ヘプタデカフルオロウンデシルアイオド3.0 g (0.51mmol、3.5eq.)、18−クラウン−6−エーテル115mg(0.043mmol、0.3eq.)、炭酸カリウム760mgを加え脱気アルゴン置換した。脱水アセトン20mlを加え3日間還流した。TLC(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)にて原料の消失を確認した後に、蒸留水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムによって乾燥後、溶媒を減圧留去した。精製は再結晶(アセトン)によって行った。化合物2−1の収量は 2.0 g(1.3 mmol、 収率89 %)であった。
【0203】
1H NMR (CDCl3):δ= 7.28 (s, 2H), 4.11 (t, 3H), 4.05 (t, 2H), 3.89 (s, 3H), 2.33 (m, 6H), 2.15 (m, 4H), 2.08 (m, 2H)
【0204】
合成例3
化合物2−2の合成
【0205】
【化47】

(化合物2−1) (化合物2−2)
【0206】
ジムロート管、セプタムカバー付き三100ml三口丸底フラスコにリチウムアルミニウムハイドライド49.5 mg (1.9 mmol、2.0eq.)を入れ脱気アルゴン置換した。そこへ脱水THF(テトラヒドロフラン)10ml、化合物2−1 1.5 g(1.0mmol)を入れ2時間還流した。TLC(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)にて原料の消失を確認した後に、溶媒を減圧留去した。精製は再結晶(アセトン)によって行った。化合物2−2の収量は 1.4 g(0.91 mmol, 収率91%)であった。
【0207】
1H NMR (CDCl3):δ= 6.59 (s, 2H), 4.60 (d, 2H), 4.06 (t, 4H), 3.97 (t, 2H), 2.33 (m, 6H), 2.15 (m, 4H), 2.08 (m, 2H)
【0208】
合成例4
化合物2の合成
【0209】
【化48】

(化合物2)
【0210】
ジムロート冷却管付き100 ml二口ナス型フラスコに9-Anthracenecarboxilic acid(9−アントラセンカルボン酸) 17.3 mg (0.078 mmol)を入れ、脱気アルゴン置換した。dry CH2Cl2(脱水ジクロロメタン)5 ml、DMF(N、N−ジメチルホルムアミド) 50 ml、塩化チオニル 13mg (16.7 mmol) を加え室温にて0.5時間、その後4時間還流した。攪拌後溶媒を減圧留去し、化合物2−2 100mg (0.065 mmol)、脱水トリフルオロトルエン 10 ml、ピリジン 0.5 mlを加え室温にて24時間磁気攪拌した。反応後蒸留水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥させたのち再結晶(アセトン)によって精製した。化合物2の収量は 31 mg (0.018 mmol、収率27 %)であった。
【0211】
実施の形態1
有機ELディスプレイ
【0212】
本発明の一実施の形態を、図面を用いて説明する。本発明の有機ELディスプレイは複数ピクセルからなる有機EL素子を含み、通常、複数の有機EL素子はマトリックス状に配置されている。
【0213】
図1(a)は、本発明の一態様である有機EL素子の断面を示した断面図である。図1(b)は、図1(a)で示した有機EL素子の平面図である。図1(a)は、図1(b)のA−A’の断面図である。
【0214】
図1に示す有機EL素子は、トップエミッション型の有機ELディスプレイを前提にしているため、スイッチング素子2の上に有機EL素子が積層されている。尚、ボトムエミッション型の有機ELディスプレイに本発明を適用してもよく、その場合にはスイッチング素子を有機EL素子と同一の平面に形成すればよい。
【0215】
図1において、基板1上には、スイッチング素子2が設けられ、スイッチング素子2上には、スイッチング素子2の凹凸を平坦化する平坦化膜3が設けられている。平坦化膜上には第1電極(画素電極)4が設けられ、スイッチング素子2の端子と電気的に接続されている。第1電極4上には、機能性薄膜である発光層7が設けられ、発光層7上に電子輸送層8、第2電極(共通電極)10とを有する。第2電極10の上には、有機EL素子を保護するための対向基板11が設けられている。スイッチング素子2の動作により、第1電極4と第2電極10との間に電圧を印加すると、第1電極4と第2電極10から発光層に注入された電荷が発光層7で再結合して発光し、ディスプレイの表示動作をする。
【0216】
ここで撥液性領域12aは、機能性薄膜である発光層7を印刷法により塗布する際に、微細な画素領域以外に発光層7が流動することを防止し、発光層7を所望の領域のみに保持、パターニングする役割を果たす。このようにして、発光層7が所望の領域のみに配置された有機EL素子を構成することができる。
【0217】
基板の材質は、特に限定されないが絶縁性を有するものが好ましい。基板の材質の例には、ガラスやPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)などが含まれる。もちろん、ボトムエミッション型の有機ELディスプレイとする場合には、可視光に対する透過性が高い材質とする必要がある。
【0218】
基板面には、複数の画素電極が配置されており、通常はマトリックス状に配置される。画素電極は、陽極であることが好ましいが、陰極としても良い。画素電極は、例えばスイッチング素子のソース電極またはドレイン電極に接続されていることが好ましい。
【0219】
トップエミッション型の有機ELディスプレイの場合には、画素電極に光反射性が求められる。光反射性を有する画素電極の材質としては、Ag、Al、Crなどの金属またはこれらの合金が好ましく、合金の例としては、AgPdCu合金やAgRbAu合金、MoCr合金、NiCr合金などが挙げられる。
【0220】
一方、ボトムエミッション型の有機ELディスプレイの場合には、基板および画素電極に光透過性が求められるので、ガラスやPET、PENなどで基板を作製し、ITOやIZO(インジウム・亜鉛・オキサイド)、酸化スズなどで陽極を作製することが好ましい。基板に複数の画素電極を形成するには、電極材料の蒸着または、スパッタリングにより形成するほか、もちろん、フォトリソグラフィー法を用いて形成することができる。このとき基板に、ライン状またはマトリックス状に電極を配置することが好ましい。
【0221】
本発明の一態様の有機ELディスプレイは、基板上の第1電極(画素電極)の一部または全部を覆う機能性薄膜を有する。実施の形態1では図1(b)に示すように、第1電極4の上面を覆って機能性薄膜である発光層7が設けられている。
【0222】
図1(c)は、図1(b)で示した平面図とは異なる別の一態様を示すものである。図1(c)においては、第1電極4の一部に発光層7が設けられている。機能性薄膜を構成する機能性材料は、低分子材料であっても高分子材料であってもあるいはこれらの組合せであっても良い。
【0223】
以上のように、本発明の一態様によると、前記機能性薄膜の形成領域の周囲において、フッ素を含む基と前記パイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されている。これにより、前記機能性薄膜の周囲に存在する部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮したデバイスを構成することができる。
【0224】
図2は、上記に示した一実施の形態の有機EL素子の製造方法を示す。図2において、基板1はスイッチング素子、平坦化膜(図示せず)を含むものである。
【0225】
まず、図2(a)のように基板1上に、第1電極4を設ける。次に図2(b)のように基板1上に本発明の化合物(A)を塗布・乾燥後して第1の膜121を設ける。次に図2(c)のように、化合物(B)を塗布・乾燥させた第2の膜122を設ける。次に図2(d)のように基板1上に選択的に光を照射するためのフォトマスク100を介して365nmのUV光を照射する。フォトマスク100は、撥液性を発現させたい領域に対応する部分が開口しており、この領域に光照射して、光照射した部分を撥液性に処理する。光照射されなかった領域は親液性である。このようにして図2(e)のように親液性領域12bの周辺に撥液性領域12aを設けることができる。親液性領域12bに図2(f)のように機能性材料を含むインクを塗布する。機能性材料を含むインクは、本発明の処理によって規定された撥液性領域の内側の領域に、インクジェット、ディスペンサー、ノズルコート、スピンコート、凹版印刷、凸版印刷などにより成膜される。
【0226】
これにより、親液性領域12bの外側の撥液性領域にインクが広がることなく、比較的容易に精度よく機能性薄膜である発光層7を形成できる。発光層7上には図2(g)のように、発光層7をまたがるように電子輸送層8、第2電極10を形成する。このようにして実施の形態の有機EL素子を製造することができる。
【0227】
塗布法で形成される機能性薄膜には、少なくとも発光層、正孔注入層、中間層、電子輸送層などが含まれうる。これらが画素電極上に積層されている。
【0228】
発光層を構成する有機発光材料の例には、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリアセチレンおよびその誘導体、ポリフェニレンおよびその誘導体、ポリパラフェニレンエチレンおよびその誘導体、ポリ3−ヘキシルチオフェンおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体、デンドリマーなどが含まれる。また、高分子材料に限らず溶解性および成膜性の良い低分子発光材料やオリゴマーであっても良い。
【0229】
正孔注入層とは、陽極側に設ける電荷注入層であり、画素電極からの正孔の注入効率を高める機能を有する。正孔注入層として用いられる無機酸化物の例としては、遷移金属酸化物が好ましく用いられる。例としては、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化チタン等がある。有機材料の例には、PEDOT:PSSやポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンおよびその誘導体などが含まれる。さらに注入性を向上させるために、最低空準位(LUMOレベル)の値が大きい、F4―TCNQやその誘導体を用いると更に注入性が向上する。(非特許文献Applied physical letter, vol94, p.359, 2003年)
【0230】
発光層もしくは電子注入層の上には、陰極が形成されている。ボトムエミッション型の有機ELディスプレイの陰極としては、光を反射させるものであれば特に限定されず、例えば、アルミニウム、銀などの金属層からなる。トップエミッション型の有機ELディスプレイの陰極としては、可視光が透過しやすい材質であればよく、例えばITO膜やIZO膜などが用いられる。また、陽極と陰極は逆転してもよく、基板上に画素電極として陰極を形成した場合は、ボトムエミッション型においては光反射性の金属層、トップエミッション型においては光透過性のITO膜やIZO膜を用いることができる。
【0231】
さらに有機EL素子は、陰極上もしくは陽極上に配置された封止膜を有していてもよい。封止膜は、有機EL素子の機能性薄膜などが水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する。
【0232】
また、塗布により形成する機能性薄膜は、中間層(インターレイヤ)と発光層との2層構成であってもよい。この場合、中間層は、第1電極上に発光層との間に設けられる。中間層は、発光層から正孔注入層に電子が輸送されるのをブロックする役割や、発光層に効率よく正孔を運ぶ役割などを有する。中間層の材質の例には、トリフェニルアミンおよびその誘導体やポリアニリンおよびその誘導体などが含まれる。
【0233】
電子注入層は、陰極側に設ける電荷注入層であり、陰極から注入された電子を発光層へ注入・輸送する層である。電子注入層の材質の例には、アルミキノリン、フタロシアニン等の有機物や、リチウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属および酸化バリウム等のそれらの酸化物、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム等のハロゲン化物、その他、酸化チタン、酸化マグネシウム等の酸化物およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0234】
さらに本発明の有機ELディスプレイの各有機EL素子は、電極または機能性薄膜の領域を規定する撥液性膜を有する。この撥液性膜は、本発明の化合物(A)と化合物(B)がシクロアルカン構造またはシクロアルケン構造により結合された化合物からなり、この化合物が存在する領域が撥液性領域12aとなる。一方化合物(A)のみが基板上に残った領域は親液性を有する親液性領域12bとなる。このうち親液性領域12bが機能性薄膜が設けられた画素となる。
【0235】
化合物(A)のみが基板上に残った親液性領域は、ピクセル状であってもライン状であってもよい。ピクセル状にした場合、1つの有機EL素子毎に、その機能性薄膜の領域が規定される。ライン状にした場合、マトリックス状に配置された有機EL素子のうちの、一列に配置された複数の有機EL素子の機能性薄膜の領域が規定される。したがって、隣接する有機EL素子の機能性薄膜は互いに連結している。
【0236】
ピクセル状の場合は、化合物(A)で規定される親液性領域に、インクジェット法などにより機能性薄膜の素材インクを滴下して塗布する。ライン状の場合は、化合物で規定される親液性領域に機能性薄膜の素材インクを連続的に塗布することができるので、塗布が容易である。さらに、機能性薄膜の膜厚均一性が向上するという特長も有する。
【0237】
従来、インクを画素領域に配置する液溜めとして用いられていたバンク(例えば特開2002−334782号公報参照)は、感光性樹脂材料をフォトリソグラフィーおよび現像によりパターニングしたものを用いることが知られているが、感光性樹脂材料のバンク中には水分や不純物が残存し機能性薄膜の発光効率や駆動寿命等に悪影響を及ぼしていた。本発明を適用しバンクを用いない構成にすることで、残存する水分や不純物による悪影響を排除することができ、本来の材料の持つ最大の性能を引き出すことが出来る。
【0238】
本発明の有機ELディスプレイを構成する有機EL素子の他の一例を図3に示す。図3(a)は、本発明の他の態様である有機EL素子の断面を示した断面図である。図3(b)は、図3(a)で示した有機EL素子の平面図である。図3(a)は、図3(b)のA−A’の断面図である。
【0239】
図3の態様に示す有機EL素子が、図1に示す態様の有機EL素子と異なる点は、第1電極4上に電荷注入層5を有することである。電荷注入層は、第1電極4が陽極の場合、正孔注入層である。電荷注入層は発光層に電荷を注入する役割を持っており、発光効率を向上させることができる。正孔注入層の場合、より好ましくは無機酸化物により電荷注入層5を構成することができる。
【0240】
さらに正孔注入層5上には、画素を規制するための規制層9が設けられている。規制層9は、機能性薄膜の有効領域13すなわち画素領域を規定するものであり、シリコン酸化膜などの無機絶縁層、感光性樹脂材料などの有機絶縁層などで構成できる。本発明の構成により、機能性薄膜を塗布した際に親液性領域の周縁部で膜厚が不均一になる場合があるが、規制層9で画素の領域を規定することにより、周縁部の膜厚が不均一な領域を画素領域として使用せず、均一な発光を得ることが可能となる。規制層9は、フォトリソグラフィーおよびエッチングまたは感光性樹脂材料によりパターニングして形成する。
【0241】
第1電極4、電荷注入層5を形成したのち、画素領域を開口した規制層9を形成する。この後、撥液性領域12aは化合物(A)からなる第1の膜と化合物(B)からなる第2の膜が結合した化合物、親液性領域12bには化合物(A)からなる第1の膜が形成されている。撥液性領域12aの一部は規制層9の一部に重なっている。親液性領域12bに、中間層6、発光層7が積層されている。これらは、塗布法で形成されていることが好ましい。さらに、陰極10と封止膜11が積層される。電子輸送層8、陰極10、封止膜11は、規制層9で規定された領域を超えて隣接する有機EL素子と接続していてもよい。また、陰極または陰極上の大気と接する側に封止膜を形成してもよい。封止膜は樹脂やシリコン窒化物、シリコン酸化物などで形成することができる。
【0242】
撥液性領域と親液性領域を規定するには、まず化合物(A)からなる第1の膜を形成し、その上に撥液性基が導入された化合物(B)からなる第2の膜を形成する。引き続き、所定の部分に紫外光を照射することで第1の膜と第2の膜の光反応を進行させ、撥液性の膜を得る。その後、フッ素系有機溶媒で洗浄することで未反応の第2の膜を除去する。第1の膜及び第2の膜の形成は、(a)材料の塗布、及び、(b)溶媒を乾燥させるためのベークの2ステップからなる。材料の塗布方法としては例えば浸漬法、スピンコート法及びスリットコート法などがある。紫外光照射の条件は光反応が十分進行する程度照射すればよい。
【0243】
以上のようなプロセスによって親液性と撥液性を示す化合物の膜が形成される。前述の通り親液性領域はライン状であってもピクセル状であってもよいが、好ましくはライン状である。化合物(A)からなる第1の膜、化合物(B)からなる第2の膜の一部に選択的に光を照射するには、マスクを介して光を照射すればよい。
【0244】
このようにして親液性領域と撥液性領域を設けたのち、親液性領域に機能性薄膜を塗布法により形成する。前述の通り、機能性材料を含むインクを、インクジェット法、ディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷法、凸版印刷法などにより塗布・乾燥して層とすることが好ましい。機能性薄膜を形成した後、陰極を積層して、さらに封止膜を形成することで、有機EL素子を作製することができる。
【0245】
次に具体的な実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0246】
実施例1
次に、実施例について説明する。先ず、ガラス基板を以下の手順にて洗浄した。即ち、アセトンによる30分間の超音波洗浄を行い、その後15分間のUVオゾン洗浄を行った。
【0247】
次に、(合成例1)で得た化合物1を脱水ジクロロエチレンと脱水トルエンの等量混合溶媒に対し、4mMの濃度で溶解した。この化合物1の溶液中に、洗浄が終了したガラス基板を20分間浸漬した。
【0248】
その後、ガラス基板を取り出し、ホットプレートによって、大気中、110℃、20分の条件で乾燥を行った。乾燥後、ガラス基板にクロロホルムをかけ流して、過剰の化合物1を除去し、化合物1を含む膜を形成した。
【0249】
次に、(合成例2)で得た化合物2を、クロロホルムに対し1mMの濃度で溶解した。この化合物2の溶液中に、前記の化合物1を塗布した基板を20分間浸漬した。その後取り出し、大気中にて自然乾燥させ、化合物1を含む膜上に化合物2を含む膜を形成した。
【0250】
次に、化合物2を含む膜に紫外線を照射した。紫外線照射は高圧水銀ランプを用い、波長365nmの光を51mW/cmの強度で20分間照射した。照射後、トリフルオロトルエンを基板全体にかけ流し、未反応の化合物2を除去した。
【0251】
光照射部において化合物1と化合物2が光二量化反応し、下記化合物が生成した。下記化合物は、撥液性を有する基を有するため、該反応領域は撥液性領域となる。
【0252】
【化49】

【0253】
このようにして得られた基板について、アニソールに対する接触角を接触角測定器(dataphysics社製 OCA−30)を用いて測定したところ、25度であった。
【0254】
実施例2
先ず、ガラス基板を以下の手順にて洗浄した。即ち、アセトンによる30分間の超音波洗浄を行い、その後15分間のUVオゾン洗浄を行った。
【0255】
次に、(合成例1)で得た化合物1を脱水ジクロロエチレンと脱水トルエンの等量混合溶媒に対し、4mMの濃度で溶解した。この化合物1の溶液中に、洗浄が終了したガラス基板を20分間浸漬した。
【0256】
その後、ガラス基板を取り出し、ホットプレートによって、大気中、110℃、20分の条件で乾燥を行った。乾燥後、ガラス基板にクロロホルムをかけ流して、過剰の化合物1を除去し、化合物1を含む膜を形成した。
【0257】
次に、(合成例2)で得た化合物2を、クロロホルムに対し1mMの濃度で溶解した。この化合物2の溶液中に、化合物1を塗布した基板を20分間浸漬した。その後取り出し、大気中にて自然乾燥させ、化合物1を含む膜上に化合物2を含む膜を形成した。
【0258】
次に、トリフルオロトルエンを基板全体にかけ流し、未反応の化合物2を除去した。光照射を行わない場合、化合物2を含む膜が除去され、該部の表面に化合物1を含む膜が存在するため、親液性領域となる。
【0259】
このようにして得られた基板について、アニソールに対する接触角を接触角測定器(dataphysics社製 OCA−30)を用いて測定したところ、5度であった。
【0260】
実施例3
ガラス基板に、第1の電極である画素電極(190μm×60μm、厚さ:50nm)をスパッタリング法でマトリックス状に配置した。第1の電極は陽極であり、材質はAgPdCu合金とした。
【0261】
次に陽極上に正孔注入層をスパッタリング法で、厚さ40nm形成した。正孔注入層の材質は反応性スパッタリングによって形成した酸化タングステン(WOx)とした。
【0262】
次に実施例1と同様の方法により、正孔注入層上に化合物1を形成し、正孔注入層上に親液性領域、陽極を囲むように化合物1と化合物2が結合した化合物を有する撥液性領域を形成した。ライン状の親液性領域(正孔注入層の表面)に、TFB(トリフェニルアミンを0.8wt%含む溶液(溶媒:アニソール))を塗布、乾燥して中間層(厚さ:20nm)を形成した。次に、ポリフルオレンを1.3wt%含む溶液(溶媒:シクロヘキシルベンゼン)を塗布乾燥して、発光層(厚さ:85nm)を形成した。塗布の方法はインクジェット法を用いた。
【0263】
次に、バリウムを真空蒸着させて、電子注入層(厚さ:5nm)を形成した。
【0264】
電子注入層の上に、陰極(材質:ITO、厚さ:100nm)を、対向ターゲットスパッタ法により形成した。最後に、封止膜を形成した。封止膜の材質は酸化シリコンであり、その形成方法はCVD(Chemical Vapor Deposition)法で厚さ1μm形成し、有機ELデバイスとした。
【0265】
また、リファレンスとして本発明の化合物を形成していない有機ELデバイスも同時に作製した。
【0266】
リファレンスデバイスの発光特性を測定したところ、駆動電圧が7.5Vで発光効率が14.7cd/Aであった。一方、本発明の製造方法によって形成した有機ELデバイスもほぼ同等の特性が得られた。
【0267】
実施の形態2
薄膜トランジスタ
【0268】
本発明は、以下に示す薄膜トランジスタも提供する。
【0269】
まず、ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの例に説明する。
【0270】
図4(a)は、本発明の一態様であるポトムゲート構造の薄膜トランジスタの断面を示した断面図である。図4(b)は、図1(a)で示した薄膜トランジスタの平面図である。図4(a)は、図41(b)のA−A’の断面図である。
【0271】
図4において、基板20上には、基板20に配置されたゲート電極21と、ゲート電極21を覆うゲート絶縁膜22と、ゲート絶縁膜22上に配置されたソース電極23およびドレイン電極24が設けられている。チャネル領域と、ソース電極23およびドレイン電極24の一部を覆うように、化合物(A)が設けられた親液性領域27bがあり、この上に機能性薄膜として半導体層25が設けられている。チャネル領域以外およびソース電極・ドレイン電極の一部以外には、化合物(A)と化合物(B)が結合し撥液性の膜が形成された撥液性領域27aが設けられている。撥液性の膜および半導体層25を覆うようにオーバーコート層28を有する。
【0272】
ここで撥液性領域27aは、機能性薄膜である半導体層25を印刷法により塗布する際に、微細なチャネル領域以外に半導体層25が流動することを防止し、半導体層25を所望の領域のみに保持、パターニングする役割を果たす。このようにして、半導体層25が所望の領域のみに配置された薄膜トランジスタを構成することができる。
【0273】
なお、図示するものではないが、ボトムゲート構造の別の薄膜トランジスタの例としては、次のものがある。基板と、基板に配置されたゲート電極と、ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上には、チャネル領域を親液性を規定する、化合物(A)が設けられた親液性領域と、チャネル領域以外を撥液性に規定する、化合物(A)と化合物(B)が結合し撥液性の膜が形成された撥液性領域とを有する。そして親液性領域に設けられた半導体層と、チャネル部分を介して半導体層およびゲート絶縁膜上に設けられたソース電極およびドレイン電極と、これらを覆うオーバーコート層を有する。
【0274】
以上のように、本発明の一態様によると、ボトムゲート構造の薄膜トランジスタにおいても、前記機能性薄膜の形成領域の周囲において、フッ素を含む基と前記パイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されている。これにより、前記機能性薄膜の周囲に存在する部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮したデバイスを構成することができる。
【0275】
次に、トップゲート構造の薄膜トランジスタの例に説明する。
【0276】
図5は、本発明の一態様であるトップゲート構造の薄膜トランジスタの断面を示すものである。
【0277】
図5において、基板20と、基板20上に配置されたソース電極23およびドレイン電極24と、ソース電極23およびドレイン電極24の間のチャネル領域を親液性領域27bに、それ以外の領域27aを撥液性に規定する膜と、親液性領域に設けられた半導体層25と、半導体層25上にゲート絶縁膜22を介して設けられたゲート電極21を備えた構成とすることができる。
【0278】
また、ソース電極23またはドレイン電極24と半導体層25の間には無機酸化物からなるバッファー層(図示せず)が設けられていることが好ましい。バッファー層は、遷移金属酸化物などの無機物からなる層であり、ソース電極23およびドレイン電極24と一括してパターニングされる。バッファー層により、ソース電極23またはドレイン電極24からの電荷の注入が容易になり、良好なトランジスタ特性を実現できる。
【0279】
以上のように、本発明の一態様によると、トップゲート構造の薄膜トランジスタにおいても、前記機能性薄膜の形成領域の周囲において、フッ素を含む基と前記パイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されている。これにより、前記機能性薄膜の周囲に存在する部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮したデバイスを構成することができる。
【0280】
上記した薄膜トランジスタは、ボトムゲート構造の薄膜トランジスタ又はトップゲート構造の薄膜トランジスタのいずれにおいても、上記有機EL素子の製造方法にて説明した方法(図2を参照)と同様の製造方法を用いて、撥液性領域と親液性領域とを規定し、親液性領域に半導体材料を溶解したインクを塗布、乾燥することで、所望の領域をチャネルとして形成した薄膜トランジスタを製造することができる。インクに半導体材料を溶解させて塗布、乾燥させて半導体層を得る場合の機能性材料としては、有機半導体材料や、In、Ga、Znなどから無機酸化物半導体を形成するための半導体材料を用いることができる。薄膜トランジスタにおいて、半導体層を形成する方法は、インクジェット法などの印刷工法やスピンコート、スリットコートなどの塗布方法を用いることができる。有機ELディスプレイにおける発光層塗布ではRGB三色を塗り分ける必要があるが、薄膜トランジスタでは塗り分けが不用であるため、より生産性の高いスリットコートなどの方法が適用可能である。
【0281】
実施例4
ガラス基板に、ゲート電極としてモリブデンを150nmの厚みで成膜し、フォトリソグラフィーおよびエッチングの工程により、パターニングする。次に、ゲート絶縁膜として窒化シリコン膜を50nmの厚みで成膜する。次にゲート絶縁膜上にアルミニウムを150nmの厚みで成膜、つづいて酸化モリブデンを20nmの厚みで成膜し、一括してフォトリソグラフィーおよびエッチングによりパターニングして、アルミニウム層からなるソース電極およびドレイン電極と酸化モリブデンからなるバッファー層を形成する。続いて、実施例1と同様の方法により、ソース電極とドレイン電極の間の領域を親液性領域、それ以外の部分を撥液性領域とする。親液性領域には、有機半導体材料のインクをインクジェット法により塗布し、乾燥させることができる。続いて有機材料からなるオーバーコート層を成膜し、薄膜トランジスタを完成することができる。
【0282】
実施の形態3
光電変換素子
【0283】
光電変換素子の機能性薄膜として塗布可能な材料を設ける実施の形態について説明する。
【0284】
図6は、本発明の一態様である光電変換素子の断面を示した断面図である。尚、機能性薄膜の材料は塗布できるものであれば特に限定されないが、いわゆるバルクヘテロジャンクション型の光電変換層であることが好ましい。これらは有機半導体およびフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ誘導体の混合物、あるいは、p型とn型の有機半導体材料や無機半導体のナノ粒子を混合することで得ることが可能である
【0285】
図6において、本態様の光電変換素子では、基板31上に陽極32が形成されている。陽極32上に撥液性領域34aと親液性領域34bとを規定する化合物の膜34が形成されている。化合物の膜34の親液性領域34bには陽極側の電荷輸送層33が形成され、電荷輸送層33上には機能性薄膜として有機光電変換層35が形成されている。有機光電変換層35上には、金属電極36aと陰極側の電子の取出効率を改善するための層36bが形成されている。
【0286】
ここで撥液性領域34aは、機能性薄膜である有機光電変換層35を印刷法により塗布する際に、光電変換する領域以外に有機光電変換層35が流動することを防止し、有機光電変換層35を所望の領域のみに配置、パターニングする役割を果たす。このようにして、有機光電変換層35が所望の領域のみに配置された光電変換素子を構成することができる。
【0287】
この構成により、本発明の一態様によると、光電変換素子においても、前記機能性薄膜の形成領域の周囲において、フッ素を含む基と前記パイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されている。これにより、前記機能性薄膜の周囲に存在する部材の分子が前記機能性薄膜に拡散するのを防止できる。その結果、前記機能性薄膜の特性劣化や寿命特性低下を防止でき、前記機能性薄膜の機能を十分に発揮したデバイスを構成することができる。
【0288】
有機光電変換層などをパターン形成させるためには、一般的に感光性樹脂などの材料をフォトリソグラフィーを用いてバンクと呼ばれる隔壁を形成する。しかし、バンクを用いた場合はアウトガスや残渣などの問題から特性が落ちるが、本発明の化合物を用いた場合はこれらの問題がなくなり高効率の特性が得られると考えられる。
【0289】
基板31としては、一般にガラスが用いられるが、有機材料の柔軟性を活かすためにプラスチックフィルム等の柔軟な素材を用いることも可能である。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂等の各種高分子材料、シリコンウェハー、ガリウム砒素、窒化ガリウムなどの化合物半導体基板等が適用可能である。
【0290】
陽極32としては、ITO、ATO(SbをドープしたSnO)、AZO( AlをドープしたZnO )等が適用可能であり、また陰極36としてはAl、Ag、Au等の金属材料が適用可能である。このとき、陽極32の材料は透光性を有するので、基板31からの光は有機光電変換層35に入射できるが、陰極36から光を入射させる場合には、透光性をもたせるように膜厚を設定する等の工夫が必要である。
【0291】
陰極36は、アルミニウムなどの金属電極36aと陰極側の電子の取出効率を改善するための層36b、例えばLiF等の無機誘電体薄膜や金属フッ化物や酸化物との2層構造で形成されている。なお、この層36bは本発明において必須ではなく、必要に応じて用いるようにすればよい。
【0292】
陽極側の電荷輸送層33としては、PEDOT:PSS層が適用可能である。なお、この電荷輸送層として、PEDOT に代えて、MoOxやWOxなどの遷移金属酸化物などの無機物を用いることにより、さらなる寿命の向上をはかることができる。
【0293】
有機光電変換層35は、電子供与性有機材料と電子受容性材料とを含む。
【0294】
電子供与性有機材料としては、メトキシーエチルヘキソシキーポリフェニレンビニレン(MEH−PPV) などのフェニレンビニレン、フルオレン、力ルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の誘導体を繰り返し単位として有する重合体及び他のモノマーとの共重合体、その誘導体、またデンドリマーとして総称される一群の高分子材料が用いられる。
【0295】
なお、高分子に限定されるものではなく、例えばポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、1,1−ビス{ 4−( ジーP−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン、4,4’, 4 ”−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(P−トリル)−P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリルアミノ)ナフタレン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−2−2’−ジメチルトリフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノピフェニル、N,N’−ジフェニル−N、N’−ジ−m−トリル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール等の芳香族第三級アミンや、4−ジ−P−トリルアミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン等のスチルベン化合物や、トリアゾール誘導体や、オキサジザゾール誘導体や、イミダゾール誘導体や、ポリアリールアルカン誘導体や、ピラゾリン誘導体や、ピラゾロン誘導体や、フェニレンジアミン誘電体や、アニールアミン誘導体や、アミノ置換カルコン誘導体や、オキサゾール誘導体や、スチリルアントラセン誘導体や、フルオレノン誘導体や、ヒドラゾン誘導体や、シラザン誘導体や、ポリシラン系アニリン系共重合体や、高分子オリゴマーや、スチリルアミン化合物や、芳香族ジメチリディン系化合物や、ポリ3 − メチルチオフェン等も適用可能である。
【0296】
また電子受容性材料としては、C60,C70をはじめとするフラーレン類やカーボンナノチューブ、およびこれらの誘導体や、1,3−ビス(4−t e r t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(0 X D−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフエニルキノン誘導体等を用いることができる。
【0297】
なお、有機光電変換層35 としては、上記材料に限定されるものではなく例えば膜中に、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基などの官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレンおよびテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体などのように電子を受容するアクセプターとなる材料や、たとえばアミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基などの官能基を有する材料、フェニレンジアミンなどの置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾールおよびその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体などのように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させ、いわゆるドーピング処理を施すようにしてもよい。
【0298】
なお、ドーピングとは電子受容性分子(アクセプター)または電子供与性分子(ドナー)をドーパントとして電子受容性材料からなる有機半導体膜に導入することを意味する。従って、ドーピングが施された有機半導体膜は、前記の縮合多環芳香族化合物とドーパントを含有する膜である。本発明に用いるドーパントとしては、アクセプター、ドナーのいずれも使用可能である。このアクセプターとしてCl、Br、I、ICl、ICl、IBr、IFなどのハロゲン、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SOなどのルイス酸、HF、HCl、HNO、HSO、HClO、FSOH、ClSOH、CFSOHなどのプロトン酸、酢酸、蟻酸、アミノ酸などの有機酸、FeCl、FeOCl、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、NbCl、TaCl、MoCl、WF、WCl、UF、LnCl(Ln=La、Ce、Nd、Pr、などのランタノイドとY)などの遷移金属化合物、Cl-、Br-、I-、ClO-、PF-、AsF-、SbF-、BF-、スルホン酸アニオンなどの電解質アニオンなどを挙げることができる。またドナーとしては、Li、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Ybなどの希土類金属、アンモニウムイオン、R、RAs、R、アセチルコリンなどをあげることができる。
【0299】
これらのドーパントの導入方法としては、予め有機半導体膜を成膜しておき、ドーパントを後で導入する方法、有機半導体膜の成膜時にドーパントを導入する方法のいずれも使用可能である。前者の方法におけるドーピング方法としては、ガス状態のドーパントを用いる気相ドーピング、溶液あるいは液体のドーパントを該薄膜に接触させてドーピングする液相ドーピング、固体の状態のドーパントを該薄膜に接触させてドーパントを拡散ドーピングする固相ドーピングなどの方法をあげることができる。また液相ドーピングにおいては電解を施すことによってドーピング効率を調整し、ドーパント濃度を調整することができる。後者の方法では、有機半導体化合物とドーパントの混合溶液あるいは分散液を同時に塗布、乾燥してもよい。たとえば真空蒸着法を用いる場合、有機半導体化合物とともにドーパントを共蒸着することによりドーパントを導入することができる。またスパッタリング法で薄膜を成膜する場合、有機半導体化合物とドーパントの二元ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、薄膜中にドーパントを導入させることも可能である。
【0300】
これら有機半導体膜の成膜方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、プラズマ重合法、電解重合法、化学重合法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法およびL B 法等が挙げられ、材料に応じて使用できる。ただし、この中で生産性の点で、有機半導体の溶液をもちいて簡単かつ精密に薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等が好ましい。これら有機半導体からなる薄膜の膜厚としては、特に制限はないが、得られた光電変換素子の特性は、有機半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、有機半導体の種類により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nm が好ましい。
【0301】
陰極としては、一般的に金属等の導電性の薄膜が用いられ、例えば金、銅、アルミニウム、白金、クロム、パラジウム、インジウム、ニッケル、マグネシウム、銀、ガリウム等の金属やこれらの合金、スズ・インジウム酸化物、ポリシリコン、アモルファスシリコン、スズ酸化物、酸化インジウム、酸化チタン等の酸化物半導体、ガリウム砒素、窒化ガリウム等の化合物半導体等が適用可能である
【0302】
実施例5
次に、実施例について説明する。先ず、スパッタリング法によりガラス基板31 上に膜厚150nmのITO膜32を成膜し、このITO膜の上部にレジスト材(東京応化製、OFPR−800)をスピンコート法により塗布して厚さ5μmのレジスト膜を形成した。そして、マスキング、光照射、現像を行いレジストを陽極32の形状にパターニングした。
【0303】
その後、このガラス基板31を60℃、18Nの塩酸水溶液中に浸潰し、レジスト膜が形成されていない部分のITO膜32をエッチングした後水洗し、最後にレジスト膜を除去して所定のパターン形状のITO膜からなる陽極32を形成した。
【0304】
次に、このガラス基板31を洗剤(フルウチ化学社製、セミコクリーン)による5分間の超音波洗浄、純水による10分間の超音波洗浄、アンモニア水1(体積比)に対して過酸化水素水1と水5を混合した溶液による5分間の超音波洗浄、70℃の純水による5分間の超音波洗浄の順に洗浄処理した後、窒素ブロアーでガラス基板31に付着した水分を除去し、さらに250℃で加熱して乾燥させた。
【0305】
次に、ITO膜32の形成されたガラス基板31上に、親液性、撥液性の領域を規定する化合物を形成する。第1の膜を形成し、その上に第2の膜を形成した。この積層膜の所定の部分に紫外光を照射することで第1の膜として(合成例1)で得た化合物1と第2の膜として(合成例2)で得た化合物2との光反応を進行させて化合物を得た。その後、フッ素系有機溶媒で洗浄することで未反応の第2の膜を除去した。第1の膜及び第2の膜の形成は、材料の塗布及び溶媒を乾燥させるためのベークからなる。材料の塗布は例えば浸漬法やスピンコート法などであり得る。紫外光照射の条件は光反応が十分進行する程度照射すればよい。例えば、波長:365nmの、照度10mW/cmの紫外光を1時間照射する。以上により、ITO膜32上に撥液性である化合物34aと親液性である化合物34bが形成され、ITO膜32上に親液性である領域を規定した。
【0306】
続いて、親液性に規定された領域に、PEDOT:PSSを形成する。これを200℃のクリーンオーブン中で10分間加熱することで厚さ60nmの電荷輸送層33を形成した。形成する方法は例えばインクジェット法により選択的に塗布形成した。
【0307】
そして、電子供与性有機材料として機能するMEH− PPV及び電子受容性材料として機能する[5、6]−フェニルC61ブチリックアシッドメチルエステル([5、6]−PCBM)とが重量比1:4からなるクロロベンゼン溶液をインクジェット法などで形成した後、100℃のクリーンオーブン中で30分間加熱処理し、約100nmの有機光電変換層35を形成した。
【0308】
なお、MEH−PPVはP型有機半導体であり、[5、6]−PCBMはn型有機半導体で、光吸収により発生した励起子の電子はコンダクションバンドを拡散して[5、6]−PCBMに、またホールはバレンスバンドを拡散してMEH−PPVに供与されて、これらを伝導して陰極36及び陽極32に伝導する。
【0309】
この[5、6]−PCBMは、修飾されたフラーレン類であり、電子移動度が非常に大きく、加えて電子供与材料であるMEH−PPVとの混合物が利用できることから、電子−ホール対の分離搬送を効率的に行うことができ、光電効率が高くなると共に低コストの作製が可能となるという利点がある。
【0310】
最後に、この有機光電変換層35の上部に0.27mPa(=2×10−6Torr)以下の真空度まで減圧した抵抗加熱蒸着装置内にて、LiF36bを約1nm、続いてAl36aを約10nmの膜厚で成膜して陰極36を形成した。
【0311】
その後、この上に図示しないパッシベーション膜を形成することにより有機光電変換素子を得た。
【0312】
なお、詳細な説明は省略するが、本発明の化合物をもちいた製造方法によって、基板上に親液性と撥液性のコントラストを形成し、R,G,Bのインクや金属ペーストなどの材料を塗布形成することで、カラーフィルターや金属配線の製造方法などにも用いることができる。
【符号の説明】
【0313】
1…基板、
2…スイッチング素子、
3…平坦化膜、
4…第1電極(画素電極)、
5…電荷注入層、
6…中間層、
7…発光層、
8…電子輸送層、
9…規制層、
10…第2電極(共通電極)、
11…封止膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極と、
前記第1電極の上方に形成された機能性薄膜と、
前記機能性薄膜の上方に設けられた第2電極とを具備し、
前記機能性薄膜の形成領域の周囲において、フッ素を含む基とパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記機能性薄膜は、前記第1電極の一領域に形成され、
前記化合物を含む膜は、前記第1電極の一領域の周囲に形成されている
請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1電極は、前記基板の第1領域に形成され、
前記機能性薄膜は、前記第1電極の少なくとも一部を覆って、前記基板の前記第1領域を少なくとも一部に含む第2領域に形成され、
前記化合物を含む膜は、前記第基板の前記第2領域の周囲に形成されている
請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記機能性薄膜と第1電極との間にはパイ共役系を有する有機ケイ素化合物を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1電極と前記機能性薄膜との間に無機酸化物からなる電荷注入層を設け、
該電荷注入層と前記機能性薄膜との間にパイ共役系を有する有機ケイ素化合物を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1電極の周囲の少なくとも一部を覆うように前記基板上に形成され、前記第1電極の上方に形成される機能性薄膜の有効領域を規制する規制層を設け、
前記化合物を含む膜は、前記規制層の表面であって前記機能性薄膜が形成される領域の周辺領域に形成されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1電極と前記機能性薄膜との間に無機酸化物からなる電荷注入層を設け、
該電荷注入層と前記機能性薄膜との間にパイ共役系を有する有機ケイ素化合物を有することを特徴とする請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
前記機能性薄膜が電流注入型発光材料を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載のデバイス。
【請求項9】
前記機能性薄膜が光電変換材料を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載のデバイス。
【請求項10】
前記化合物は、パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を前記基板上に塗布し形成した第1の膜と、パイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を第1の膜上に塗布し形成した第2の膜を光照射することにより、前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか記載のデバイス。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されたソース電極と、
前記ソース電極が形成された領域とは別の前記絶縁膜上の領域に形成されたドレイン電極と、
前記絶縁膜上の前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域及び前記ソース電極及び前記ドレイン電極の端部を覆って形成された機能性薄膜とを具備し、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上の前記機能性薄膜の形成領域の周囲に、フッ素を含む基とパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項12】
基板と、
前記基板上に形成されたソース電極と、
前記ソース電極が形成された領域とは別の前記基板上の領域に形成されたドレイン電極と、
前記基板上の前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域及び前記ソース電極及び前記ドレイン電極の端部を覆って形成された機能性薄膜と、
前記機能性薄膜を覆って形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されたゲート電極とを具備し、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上の前記機能性薄膜の形成領域の周囲に、フッ素を含む基とパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物を含む膜が形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項13】
前記化合物は、パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を前記基板上に塗布し形成した第1の膜と、パイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を第1の膜上に塗布し形成した第2の膜を光照射することにより、前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物であることを特徴とする請求項11乃至12のいずれか記載の薄膜トランジスタ。
【請求項14】
前記ソース電極と前記機能性薄膜との間又は前記ドレイン電極と前記機能性薄膜との間にバッファー層が含まれていることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか記載の薄膜トランジスタ。
【請求項15】
第1電極を形成した基板の表面に、パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を塗布し第1の膜を形成する第1工程と、
引き続きパイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を塗布し第1の膜上に第2の膜を形成する第2工程と、
前記第1の膜と第2の膜を光照射し前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系をシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合する第3工程と、
機能材料を含む溶液を塗布し機能性薄膜を形成する第4工程と、
第2電極を前記機能性薄膜上に設ける第5工程とを、
含むことを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項16】
光照射する光が200nm以上から380nm以下の波長であることを特徴とする請求項15記載のデバイスの製造方法。
【請求項17】
基板上にゲート電極を形成し、前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にドレイン電極およびソース電極を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上および前記ドレイン電極上および前記ソース電極上にパイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を塗布し第1の膜を形成する工程と、
引き続きパイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を塗布し第1の膜上に第2の膜を形成する工程と、
前記第1の膜と第2の膜を光照射し前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系をシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合する工程と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極の間の領域に機能性薄膜を塗布形成する工程とを、
含むことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項18】
ソース電極とドレイン電極を形成した基板上に、パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)を含む溶液を塗布し第1の膜を形成する工程と、
引き続きパイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)を含む溶液を塗布し第1の膜上に第2の膜を形成する工程と、
前記第1の膜と第2の膜を光照射し前記化合物(A)と化合物(B)のパイ共役系をシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合する工程と、
機能性薄膜を塗布形成する工程と、
前記機能性薄膜上にゲート絶縁膜を形成し、引き続きゲート電極を形成する工程とを、
含むことを有することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項19】
光照射する光が200nm以上から380nm以下の波長であることを特徴とする請求項17乃至18に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項20】
フッ素を含む基と前記パイ共役系がシクロアルケン構造またはシクロアルカン構造で結合された化合物が、下記一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物の光二量化反応によって得られる化合物であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のデバイス。
【化1】

ただし、Cは、下記一般式(2−1)または下記一般式(2−2)で表される基であり、Dは下記一般式(3)で表される基を表す。
【化2】

一般式(2−1)
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はDとの結合を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、Dとの結合である。n1は0以上の整数を表す。)
【化3】

一般式(2−2)
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はDとの結合を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つはDとの結合である。p1及びm1は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)
【化4】

一般式(3)
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Arは(1+y1)価の芳香族炭化水素基又は(1+y1)価の複素環基を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Ra1は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。t1は0又は1を表し、x1は0又は1を表し、y1は1以上の整数を表す。複数個あるRa1は、同一でも相異なっていてもよい。Akが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【化5】

ただし、Eは、下記一般式(5−1)または下記一般式(5−2)または下記一般式(5−3)で表される基であり、Fは下記一般式(6−1)または下記一般式(6−2)で表される基を表す。
【化6】

一般式(5−1)
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Arは(1+y2)価の芳香族炭化水素基又は(1+y2)価の複素環基を表し、Rb1はフッ素原子を含む1価の有機基を表し、t2は0又は1を表し、x2は0又は1を表し、y2は1以上の整数を表す。Rb1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【化7】

一般式(5−2)
(式中、Ar、Rb1、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。))
【化8】

一般式(5−3)
(式中、Ar、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。Kは、−O−、−S−、−NH−又は−NR−を表す。Rはアルキル基又はアリール基を表す。kは0又は1を表し、rは0〜3の整数を表し、sは0〜15の整数を表す。kが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。sが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【化9】

一般式(6−1)
(式中、Rは水素原子又は置換基又はEとの結合を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、Eとの結合である。n2は0以上の整数を表す。)
【化10】

一般式(6−2)
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はEとの結合を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つはEとの結合である。p2及びm2は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)
【請求項21】
パイ共役系を有する有機ケイ素化合物からなる化合物(A)が下記一般式(1)で表される化合物であり、パイ共役系およびフッ素を含む化合物(B)が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする、請求項15乃至16のいずれかに記載のデバイスの製造方法。
【化11】

ただし、Cは、下記一般式(2−1)または下記一般式(2−2)で表される基であり、Dは下記一般式(3)で表される基を表す。
【化12】

一般式(2−1)
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はDとの結合を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、Dとの結合である。n1は0以上の整数を表す。)
【化13】

一般式(2−2)
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はDとの結合を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また、隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つはDとの結合である。p1及びm1は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)
【化14】

一般式(3)
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Arは(1+y1)価の芳香族炭化水素基又は(1+y1)価の複素環基を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Ra1は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。t1は0又は1を表し、x1は0又は1を表し、y1は1以上の整数を表す。複数個あるRa1は、同一でも相異なっていてもよい。Akが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【化15】

ただし、Eは、下記一般式(5−1)または下記一般式(5−2)または下記一般式(5−3)で表される基であり、Fは下記一般式(6−1)または下記一般式(6−2)で表される基を表す。
【化16】

一般式(5−1)
(式中、Zは−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−Ak−C(=O)O−、−Ak−OC(=O)−、−Ak−OC(=O)O−、−Ak−C(=O)−、−Ak−N(R)−、−Ak−C(=O)N(R)−、−Ak−N(R)C(=O)−、−Ak−N(R)C(=O)N(R)−、−O−、−S−又は−Ak−を表し、Akは炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Arは(1+y2)価の芳香族炭化水素基又は(1+y2)価の複素環基を表し、Rb1はフッ素原子を含む1価の有機基を表し、t2は0又は1を表し、x2は0又は1を表し、y2は1以上の整数を表す。Rb1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【化17】

一般式(5−2)
(式中、Ar、Rb1、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。))
【化18】

一般式(5−3)
(式中、Ar、Ak、t2、x2、y2は前述と同じ意味を表す。Kは、−O−、−S−、−NH−又は−NR−を表す。Rはアルキル基又はアリール基を表す。kは0又は1を表し、rは0〜3の整数を表し、sは0〜15の整数を表す。kが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。sが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【化19】

一般式(6−1)
(式中、Rは水素原子又は置換基又はEとの結合を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つは、Eとの結合である。n2は0以上の整数を表す。)
【化20】

一般式(6−2)
(式中、Rは、水素原子又は置換基又はEとの結合を表す。X及びYは、同一でも相異なっていてもよく、−C(R−、−N(R)−、−O−、−S−、−Si(R−、−B(R)−又は−C(R)=C(R)−を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。また隣り合うRは、それぞれ連結して、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環又は複素環を形成していてもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。ただし、Rの少なくとも1つはEとの結合である。p2及びm2は、同一又は相異なり、0以上の整数を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−108527(P2011−108527A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263201(P2009−263201)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(596134367)財団法人九州先端科学技術研究所 (12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】