説明

デュアルクラッチ式変速装置

【課題】従来のデュアルクラッチ式変速装置を搭載したUV車等の作業車両において、前後進を頻繁に繰り返す作業を行う場合には煩雑な操作が必要であり、この前後進切替操作に時間がかかり、作業効率が低下するだけでなく、作業に必要な空間も大きくなって狭い場所での作業ができない、という問題があった。
【解決手段】前進用の速度段のうちの一つの前進速度段と、後進速度段との間を自在に選択可能なリバースモードを備え、更に、各奇数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第一クラッチC1と、各偶数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第二クラッチC2とのうちで、前記後進速度段では切状態にある方のクラッチにより動力伝達を行う速度段の中から、最も低い車速を有する速度段を、前記リバースモードにおける前進速度段として選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、奇数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第一クラッチと、偶数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第二クラッチとを備えたデュアルクラッチ式変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の駆動列の中から、各奇数速度段に必要な駆動列群を選択するための第一クラッチと、各偶数速度段に必要な駆動列群を選択するための第二クラッチを設け、該第一クラッチ・第二クラッチの入切により、いずれかの駆動列群を自動選択し、エンジンからの動力を変速して車軸に伝達するデュアルクラッチ式変速装置が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
該デュアルクラッチ式変速装置によると、エンジンから車軸への動力伝達を途切れさせることなく、連続的に変速を行うことができ、更には、第一クラッチ及び第二クラッチのうちの、一方の離間作動と他方の接合作動とを時間的にオーバーラップさせることで、変速時の変速ショックを軽減させることができる。
【特許文献1】特開2003−269592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記デュアルクラッチ式変速装置を搭載したUV車(ユーティリティ・ビークル)等の作業車両において、ローダによる除雪作業等の如く前後進を頻繁に繰り返すような作業を行う場合、例えば前進から後進に切り替えるには、自動または手動によって連続的に徐々にシフトダウンして減速し中立状態に戻してから後進段に入れる、という操作が必要であり、この前後進切替操作に時間がかかるため、作業効率が低下するだけでなく、作業に必要な空間も大きくなって狭い場所での作業ができない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、各奇数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第一クラッチと、各偶数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第二クラッチとを備え、アクセル開度と車速に応じて、前記第一クラッチ・第二クラッチの入切で前記駆動列群を自動選択し、エンジンからの動力を変速して車軸に伝達すると共に、前記奇数速度段・偶数速度段間での速度段切替時には、前記第一クラッチと第二クラッチのうちの、一方の離間作動と他方の接合作動とを時間的にオーバーラップさせるデュアルクラッチ式変速装置において、前進用の前記速度段のうちの一つの前進速度段と、後進速度段との間を自在に選択可能なリバースモードを備える変速制御構成としたものである。
請求項2においては、前記第一クラッチと第二クラッチのうち前記後進速度段では切状態にある方のクラッチにより動力伝達を行う速度段の中から、最も低い車速を有する速度段を、前記リバースモードにおける前進速度段として選択するものである。
請求項3においては、前記前進速度段は、前進1速とするものである。
請求項4においては、前記前進速度段は、前進2速とするものである。
請求項5においては、前記リバースモードにおいては、前記第一クラッチと第二クラッチが前後進切替用のクラッチを兼ねるものである。
請求項6においては、前記リバースモードにおいては、前記第一クラッチまたは第二クラッチの一方を入状態とし他方を切状態とするだけで、前後進を切り替えるものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、各奇数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第一クラッチと、各偶数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第二クラッチとを備え、アクセル開度と車速に応じて、前記第一クラッチ・第二クラッチの入切で前記駆動列群を自動選択し、エンジンからの動力を変速して車軸に伝達すると共に、前記奇数速度段・偶数速度段間での速度段切替時には、前記第一クラッチと第二クラッチのうちの、一方の離間作動と他方の接合作動とを時間的にオーバーラップさせるデュアルクラッチ式変速装置において、前進用の前記速度段のうちの一つの前進速度段と、後進速度段との間を自在に選択可能なリバースモードを備える変速制御構成としたので、ローダによる除雪作業等のように前後進を頻繁に繰り返す作業を行う場合でも、レバーやペダル等のモード切替手段により通常走行モードをリバースモードに切り替えた後は、該リバースモードにおいて前進速度段または後進速度段のいずれか一方を直接選択して前後進切替操作を迅速に行うことができ、作業効率が向上するだけでなく、作業に必要な空間も小さくて済み、狭い場所でも確実に作業することができる。
請求項2においては、前記第一クラッチと第二クラッチのうち前記後進速度段では切状態にある方のクラッチにより動力伝達を行う速度段の中から、最も低い車速を有する速度段を、前記リバースモードにおける前進速度段として選択するので、該前進速度段の車速を低速の後進速度段の車速に近づけることができ、前後進切替時にあっても、進行方向が逆になるだけで急激な増減速が起こらないようにして、作業車両の作業者の操作性を良好に保つことができ、運転操作ミスの防止はもとより作業者の疲労等を軽減し、作業効率の更なる向上を図ることができる。
請求項3においては、前記前進速度段は、前進1速とするので、後進速度段では切状態にある方のクラッチにより動力伝達を行う速度段が各奇数速度段である場合に、複雑な制御を要することなく最低車速を選択することができ、制御システムを簡便化して制御コストの削減を図ることができる。
請求項4においては、前記前進速度段は、前進2速とするので、後進速度段では切状態にある方のクラッチにより動力伝達を行う速度段が各偶数速度段である場合に、複雑な制御を要することなく最低車速を選択することができ、制御システムを簡便化して制御コストの削減を図ることができる。
請求項5においては、前記リバースモードにおいては、前記第一クラッチと第二クラッチが前後進切替用のクラッチを兼ねるので、前後進切替用のクラッチを新たに設ける必要がなく、部品点数を減らして部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。更には、前記第一クラッチ・第二クラッチのうちの一方を前進速度段用、他方を後進速度段用とすることで、前後進切替時においても、前記第一クラッチと第二クラッチのうちの、一方の離間作動と他方の接合作動とを時間的にオーバーラップさせ、変速ショックを軽減することができる。
請求項6においては、前記リバースモードにおいては、前記第一クラッチまたは第二クラッチの一方を入状態とし他方を切状態とするだけで、前後進を切り替えるので、各駆動列群の選択状況等を変更しなくて済み、前後進切替時に必要な操作具やリンク機構を省くことができ、部品点数を減らして部品コストの低減やデュアルクラッチ式変速装置のコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に関わる作業車両1の全体構成を示す平面図、図2は後車軸駆動装置の動力伝達構成を示すスケルトン図、図3は後車軸駆動装置の側面図、図4は図3のA−A矢視断面図、図5は図4のB−B矢視断面図、図6はシフタ作動機構を示す後車軸駆動装置後部の背面断面図、図7は電磁弁支持体を示す図6のC−C矢視図、図8は作業車両1の油圧回路図、図9はデュアルクラッチ式変速装置の変速制御に関するブロック図、図10は変速操作パネルの平面図、図11は各走行モードにおける走行変速クラッチの入切とシフタ位置を示す説明図であって、図11(a)は通常走行モードにおける走行変速クラッチの入切とシフタの位置を示す説明図、図11(b)はリバースモードにおける走行変速クラッチの入切とシフタの位置を示す説明図、図12は変速制御手順を示す模式図、図13は変速点特性モデル図、図14は別形態の油圧ポンプ構成を示す部分油圧回路図、図15は別形態の作業車両210の全体構成を示す平面図、図16は別形態の作業車両211の全体構成を示す平面図、図17は別形態の作業車両224の全体構成を示す平面図、図18はブレーキアシスト制御の手順を示すフローチャート図、図19は切替ポイント制御の手順を示すフローチャート図、図20は走行負荷検出機構に関する部分ブロック図、図21は走行負荷検出制御の手順を示すフローチャート図である。
なお、図1の矢印71で示す方向を作業車両1の機体前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの機体前進方向71を基準としている。
【0007】
まず、本発明に係わるデュアルクラッチ式変速装置2を搭載した作業車両1の全体構成について、図1乃至図4により説明する。
該作業車両1の前部には、左右一対の前輪3・3を固定した前車軸4・4を支持して駆動する前車軸駆動装置5が配置され、中央から後部にかけては、左右一対の後輪6・6を固定した後車軸7・7を支持して駆動する後車軸駆動装置8が配置され、該後車軸駆動装置8の左側方にはエンジン9が配設されている。
【0008】
そして、該エンジン9からの動力は、入力軸11から後車軸駆動装置8内に入力され、該後車軸駆動装置8内に収納された本発明に係わるデュアルクラッチ式変速装置2によって変速された後、出力ギア27から出力されて中央差動装置28を介して分岐される。一方の分岐動力は、デフヨーク軸20、駆動取出部24から前方の前車軸駆動装置5内の前輪差動装置25に伝達され、前輪3・3を差動駆動すると共に、他方の分岐動力は、デフヨーク軸19、後輪差動装置26に伝達され、後輪6・6を差動駆動する構成としている。
【0009】
前記中央差動装置28においては、デフヨーク軸19・20と同一回転軸心を有するように後車軸駆動装置8内に支持された中空のデフケース30と、該デフケース30片側外周面にボルト31によって締結固設され前記出力ギア27と噛合されるリングギア29と、前記デフケース30内において前記デフヨーク軸19・20と直交配置されデフケース30と一体的に回転するピニオン軸32と、該ピニオン軸32の両端に回転自在に配置されるベベルギアであるピニオン33・33と、前記デフヨーク軸19・20の内端側に固定され前記ピニオン33・33に噛合されるベベルギアであるデフサイドギア34・34とにより構成されている。
【0010】
これにより、デュアルクラッチ式変速装置2から出力ギア27を介してリングギア29に入力された回転を、差動回転にして、デフヨーク軸19・20から前後に適切に分配することができる。
【0011】
なお、この中央差動装置28には、前記差動回転をロックするためのデフロック機構35が設けられている。該デフロック機構35は、前記デフヨーク軸19の外周に軸方向摺動自在に嵌設されるデフロックスライダ36と、該デフロックスライダ36でリングギア29側に形成された凸部36aを係止可能とすべくリングギア29に設けられた係合凹部29aより構成され、デフロックスライダ36の摺動操作により、凸部36aが係合凹部29aに係止されてデフケース30とデフヨーク軸19・20が一体的に連結され、中央差動装置28がロックされて左右のデフヨーク軸19・20が同一回転数で駆動されるよう構成している。このデフロックスライダ36は、図示せぬアームやリンク機構等を介して図外のデフロックレバーに連係されており、該デフロックレバーの傾動操作により、中央差動装置28に対してロック又はロック解除の操作を行えるようにして、作業車両1の直進性やぬかるみでの走行性を向上させるようにしている。
【0012】
前記駆動取出部24においては、前記デフヨーク軸20の一端がミッションケース38の機体左右一側へ延出され、該延出部分には、カップリング37を介して伝動軸39が連結されている。該伝動軸39は、ミッションケース38側面に凸状に設けられた駆動取出ケース40内に突入され、この突入部分の途中部にはベベルギア41が固定されると共に、前記駆動取出ケース40前部にて機体前後方向に支持された出力軸21にはベベルギア42が固設され、該ベベルギア42は前記ベベルギア41と噛合されている。
【0013】
そして、この出力軸21は、前記駆動取出ケース40から前方へ突出され、ユニバーサルジョイント22、伝動軸23、ユニバーサルジョイント43を介して、前記前車軸駆動装置5の入力軸44に連結されており、エンジン9からの動力を前輪3・3に伝達できるようにしている。
【0014】
前記前車軸駆動装置5においては、前記入力軸44の前端にベベルギア45が形成されている。そして、該ベベルギア45には、前輪差動装置25のリングギア46が噛合され、該リングギア46と一体のデフケース47内に、左右のデフヨーク軸48・49が嵌入されており、該デフヨーク軸48・49は、それぞれ、左右各外側にて操舵可能に配した各前輪3・3の中心軸である前輪軸50・50に対し、ユニバーサルジョイント53、ハーフシャフト52、ユニバーサルジョイント51を介して駆動連結されている。なお、前輪差動装置25にも、前記中央差動装置28のようなデフロック機構74が設けられている。
【0015】
前記後輪差動装置26においても、前記中央差動装置28と同様に、前記ヨーク軸19の外側に形成された後出力ギア54にリングギア55が噛合され、該リングギア55はデフケース56に一体的に締結固定され、該デフケース56には、両端にピニオン57を回転自在に配置したピニオン軸58が一体回転可能に設けられ、前記ピニオン57・57にはデフサイドギア59・59が噛合されている。該デフサイドギア59・59を内端側に固定するデフヨーク軸60・61は、それぞれ、左右各外側に配した各後輪6・6の中心軸である後輪軸65・65に対し、ユニバーサルジョイント62、ハーフシャフト63、ユニバーサルジョイント64を介して駆動連結されている。なお、後輪差動装置26にも、前記前輪差動装置25と同様にデフロック機構66が設けられている。
【0016】
次に、前記デュアルクラッチ式変速装置2の構造について、図2乃至図9により説明する。
該デュアルクラッチ式変速装置2を収納するミッションケース38は、機体左側から順に、左ケース68、中央ケース69、右ケース70から構成されており、このうちの左ケース68の上外側面にはシールケース67が装着され、右ケース70の上下略中央外側面には前記駆動取出ケース40が装着されている。そして、このようなミッションケース38内には、同一軸心上にある前記入力軸11と第二クラッチ出力軸13、中間軸18、変速軸15、走行出力軸17、同一軸心上にあるデフヨーク軸19とデフヨーク軸20、及び同一軸心上にあるデフヨーク軸60とデフヨーク軸61が、互いに平行、かつ機体左右方向に横架されている。
【0017】
このうちの入力軸11は、前記シールケース67を貫くようにして機体左方からミッションケース38内に貫入されると共に、その右部は更に延出されて、中央ケース69と右ケース70間に回動支持される第二クラッチ出力軸13の左端の回転支持部13aに、ベアリングを介して回動自在に支持されている。該入力軸11には、第一クラッチ出力軸12がベアリングを介して回動自在に外嵌され、更に、該第一クラッチ出力軸12と前記回転支持部13aとの間には、クラッチハウジング82aが入力軸11上に固設されている。
【0018】
そして、クラッチハウジング82aと第一クラッチ出力軸12の右端部との間、及びクラッチハウジング82aと第二クラッチ出力軸13の左端の回転支持部13aとの間には、複数枚の摩擦エレメントがそれぞれ摺動のみ可能に支持されており、これにより、断接可能な第一クラッチ部C1と第二クラッチ部C2から成る走行変速クラッチ82が形成されている。該走行変速クラッチ82は、油圧作動型のものに構成されており、戻しバネ85によってクラッチハウジング82aの左右中央の隔壁部82b側に向かって付勢されている第一ピストン86・第二ピストン87を、油圧の作用によって摩擦エレメント側に向かって移動させて該摩擦エレメント間を係合し、クラッチ作動を得るようにしている。
【0019】
そして、この走行変速クラッチ82に関しては、入力軸11に油路88・89・90が形成され、該油路88・89・90の左端は、いずれも入力軸11の左端部の外周面上に開口されており、それぞれ、第一クラッチ部C1への作動油の油圧を制御する電磁比例減圧弁91、第二クラッチ部C2への作動油の油圧を制御する電磁比例減圧弁92、第一クラッチ部C1・第二クラッチ部C2への潤滑油の給排を制御する切替弁93に連通されている。そして、このうちの油路88の右端は、前記隔壁部82bと第一ピストン86間のシリンダ室83に連通され、油路89の右端も同じく、隔壁部82bと第二ピストン87間のシリンダ室84と連通され、更に、油路90の右部は、二つに分岐されて両ピストン86・87の内周面と入力軸11の外周面との摺動面間の隙間に連通されている。
【0020】
このような構成において、変速操作具としての変速操作レバー95を操作すると、該変速操作レバー95に接続されたレバー位置検出センサ113からの位置信号がコントローラ94に送信され、該コントローラ94が、受信した位置信号に基づいて前記電磁比例減圧弁91に所定の変速指令信号を送信すると、該電磁比例減圧弁91のソレノイドが励磁され、油路88を通って第一クラッチ部C1のシリンダ室83内に作動油が供給され、第一ピストン86が戻しバネ85の付勢力に抗して摩擦エレメント間を押圧していき、第一クラッチ部C1を徐々に入状態に移行させる。逆に、シリンダ室83への作動油供給が遮断されていくと、第一ピストン86が戻しバネ85の付勢力によって摩擦エレメントから離間していき、第一クラッチ部C1を徐々に切状態に移行していく。第二クラッチ部C2についても同様であり、コントローラ94が位置信号に基づいて前記電磁比例減圧弁92に所定の変速指令信号を送信すると、該電磁比例減圧弁92のソレノイドが励磁され、油路89を通って第二クラッチ部C2のシリンダ室84内に作動油が供給され、第二ピストン87が戻しバネ85の付勢力に抗して摩擦エレメント間を押圧していき、第二クラッチ部C2を徐々に入状態に移行させる。逆に、シリンダ室84への作動油供給が遮断されていくと、第二ピストン87が戻しバネ85の付勢力によって摩擦エレメントから離間していき、第二クラッチ部C2を徐々に切状態に移行していく。
【0021】
また、前記第一クラッチ出力軸12の左外周には、小径のギア72が形成され、該ギア72は、前記変速軸15左端に固設された大径のギア96と噛合しており、第一クラッチ部C1が入状態の場合は、入力軸11からの動力を、第一クラッチ部C1、第一クラッチ出力軸12、ギア72、ギア96を介して変速軸15に伝達可能としている。
【0022】
該変速軸15の右半部には、左から順に減速ギア16、後進ギア78、ギア77が相対回転可能に嵌設され、前記第二クラッチ出力軸13には、減速ギア14が相対回転可能に環設され、該減速ギア14の右方にはギア73が固設され、更に、前記走行出力軸17には、前記出力ギア27と大径のギア81が固設されている。そして、前記減速ギア14と減速ギア16は、いずれも大径ギア・小径ギアを一体的に構成した二連ギアであって、減速ギア14は大径ギア14aと小径ギア14bにより構成され、減速ギア16は大径ギア16aと小径ギア16bにより構成されている。
【0023】
前述した小径のギア72は大径のギア96と噛合して第一減速ギア列を形成し、減速ギア14の小径ギア14bは減速ギア16の大径ギア16aと噛合して第二減速ギア列を形成し、減速ギア16の小径ギア16bを大径のギア81と噛合して第三減速ギア列を形成している。更に、後進ギア78は中間軸18上のアイドルギア75と噛合し、該アイドルギア75は減速ギア14の大径ギア14aと噛合して後進ギア列を形成し、ギア77はギア73と噛合して調整ギア列を形成しており、このような、種々のギア比・回転方向を有する各種ギア列を形成することで、各速度段を現出できるようにしている。
【0024】
更に、前記変速軸15上において、前記減速ギア16の左方にはシンクロメッシュ等の同期機構99bを介して第三スプラインハブ99が、前記後進ギア78とギア77との間には同期機構98bを介して第二スプラインハブ98が、いずれも相対回転不能に係合されている。また、前記第二クラッチ出力軸13上において、前記減速ギア14の左方には同期機構97bを介して第一スプラインハブ97が相対回転不能に係合されている。
【0025】
このうちの第一スプラインハブ97には第一シフタ97aが、第二スプラインハブ98には第二シフタ98aが、第三スプラインハブ99には第三シフタ99aが、それぞれ、軸芯方向摺動自在かつ相対回転不能に係合されている。そして、減速ギア14で第一スプラインハブ97側に向かう部分にはクラッチ歯部14cが形成され、減速ギア16で第三スプラインハブ99側に向かう部分にはクラッチ歯部16cが形成され、ギア77・78で第二スプラインハブ98側に向かう部分には、それぞれクラッチ歯部77a・78aが形成されている。
【0026】
そして、これらシフタ97a・98a・99aは次のようなシフタ作動機構143によって所定位置に移動される。
該シフタ97a・98a・99aは、それぞれフォーク125・126・127から連結アーム128・129・130を介して、それぞれ、第一油圧シリンダ100のロッド100a、第二油圧シリンダ101のロッド101a、第三油圧シリンダ102のロッド102aに連結されている。そして、該油圧シリンダ100・101・102は、いずれも前記中央ケース69の一部のシリンダケース142内に、ロッド100a・101a・102aの伸縮方向が互いに平行かつ左右方向となるように形成されると共に、油圧シリンダ100・101・102の左端は、電磁切替弁103乃至106が左方から嵌合固定された電磁弁支持体131の右側面131a上に形成されている。
【0027】
このうちの第一油圧シリンダ100において、シリンダ室100dは前記シリンダケース142に形成された筒状空間の左側開口を電磁弁支持体131の右側面131aで閉塞したものであって、該右側面131aと、前記ロッド100aの一端に設けたピストン100cとの間のシリンダ室100dには油室100bが形成されており、該油室100bは、前記電磁弁支持体131に穿孔された油路107を介して電磁切替弁103と接続されている。一方、ピストン100cの右側面とシリンダ室100dの右内壁との間には、戻しバネ132がロッド100aに巻装され、ピストン100cが油室100b側に付勢されると共に、シリンダ室100d内には、ストッパ134が嵌設固定されて、ピストン100cが、該ストッパ134との当接位置よりも左方には摺動できないようにしている。
【0028】
前記第三油圧シリンダ102においても同様に、シリンダ室102dは前記シリンダケース142に形成された筒状空間の左側開口を電磁弁支持体131の右側面131aで閉塞したものであって、該右側面131aと、前記ロッド102aの一端に設けたピストン102cとの間のシリンダ室102dには油室102bが形成されており、該油室102bは、前記電磁弁支持体131内に穿孔された油路110を介して電磁切替弁106と接続されている。一方、ピストン102cの右側面とシリンダ室102dの右内壁との間には、戻しバネ133がロッド102aに巻装され、ピストン102cが油室102b側に付勢されると共に、シリンダ室102d内には、ストッパ135が嵌設されて、ピストン102cが、該ストッパ135との当接位置よりも左方には摺動できないようにしている。
【0029】
このような構成において、図8に示すように、電磁切替弁103・106が非励磁位置にあり、油圧シリンダ100・102が中立状態にある場合は、前記戻しバネ132・133の弾性力によって、ピストン100c・102cはストッパ134・135の肩部に付勢された状態で当接保持されている。この当接位置を中立位置の位置Nとする。この際、前記油室100b・102bは、いずれも電磁切替弁103・106から共通の油路115を介して油溜まり136に連通され、ピストン100c・102cに余分な圧力がかからないようにしており、ピストン100c・102cを中立位置に精度良く位置決めすることができる。
【0030】
電磁切替弁103・106のソレノイドが励磁されて励磁位置に切り替わると、電磁弁支持体131内に穿孔された共通の油路114から電磁切替弁103・106を介して前記油室100b・102b内に作動油が供給される。すると、前記戻しバネ132・133の弾性力に抗して、ピストン100cは位置Aまで、ピストン102cは位置Dまでそれぞれ摺動し、前記シフタ97a・99aを移動させて、それぞれクラッチ歯部14c・16cに係合させることができる。なお、前記ロッド100a・102aは、シリンダケース142を貫通して突出して右ケース70の外壁によって支持されると共に、その途中部には前記連結アーム128・130が連結されているが、このようなロッド100a・102aとシリンダケース142との間には、隙間137・138がそれぞれ設けられており、戻しバネ132・133の弾性力に抗してピストン100c・102cが右方に摺動する際に圧縮された作動油が、該隙間137・138を通ってミッションケース38内に迅速に排出されるようにしている。
【0031】
すなわち、ピストン100c・102cの一側に油室100b・102bを設け、他側には弾性部材である戻しバネ132・133を設けるシリンダ構成とするので、従来の如く、ピストンの両側に油室を設け、該両油室に作動油を供給してピストンを摺動制御する場合に比べ、油室や該油室に作動油を供給するための油路を減らすことができ、油室の密閉性確保等に必要な高い加工精度や、油路用の外部配管等の部品が不要となり、更には、油圧制御に必要な切替弁等の装置も安価なものに切り替えることができ、製造コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0032】
前記第二油圧シリンダ101においても、前記油圧シリンダ100・102と同様に、シリンダ室101dは、前記シリンダケース142に形成された筒状空間の左側開口を電磁弁支持体131の右側面131aで閉塞したものである。そして、ロッド101aの一端には、大径部140aと小径部140bとからなるメインピストン140が固設され、該小径部140bには、前記大径部140aよりも大きな外径を有する円筒状のサブピストン141が、小径部140b上を軸芯方向に摺動可能に外嵌されている。これらメインピストン140とサブピストン141とからなるピストン139を挟んで左右に、油室101b・101cが形成され、該油室101b・101cは、それぞれ電磁切換弁104・105に接続されている。
【0033】
このような構成において、図8に示すように、電磁切替弁104・105が非励磁位置にあり、第二油圧シリンダ101が中立状態にある場合は、電磁切換弁104・105から油路108・109を介して両油室101b・101cに、圧油がそれぞれ供給されるが、ピストン139の油室101c側の受圧面積の方が油室101b側の受圧面積よりも大きいため、ピストン139は、油室101b側に押動され、サブピストン141の内側外周角部がシリンダケース142の肩部142aに当接した位置で保持される。この当接位置を中立位置の位置Nとする。これにより、ピストン139を位置Nに精度良く位置決めすることができる。
【0034】
電磁切替弁104・105のうち電磁切替弁104のソレノイドのみが励磁され、電磁切替弁104のみが励磁位置に切り替わると、電磁切替弁104による油室101bへの圧油の供給のみが停止され、ピストン139が油室101c内の油圧によって油室101b側(紙面右方)に押動され、前記肩部142aに阻まれて移動不能なサブピストン141を残した状態でメインピストン140だけが油室1101bの最外端に相当する位置Bまで摺動して保持される。逆に、電磁切替弁105のソレノイドのみが励磁され、電磁切替弁105のみが励磁位置に切り替わると、電磁切替弁105による油室101cへの圧油の供給のみが停止され、ピストン139が油室101b内の油圧によって油室101c側(紙面左方)に押動され、該油室101cの最外端に相当する位置Cに保持される。これにより、前記第二シフタ98aを移動させて前記クラッチ歯部77aまたは78aに係合させることができるのである。
【0035】
以上のようなシフタ作動機構143において、コントローラ94からの変速指令信号に基づき、電磁切替弁103乃至106のうちの所定の電磁切替弁のソレノイドが励磁されると、該当するピストンが作動油によって移動される。すると、該ピストンに連動連結されたシフタが、所定位置に移動し同期機構を介してクラッチ歯部と係合して、所定のギアを、第二クラッチ出力軸13または変速軸15に相対回転不能に係合させることができ、第一クラッチ出力軸12または第二クラッチ出力軸13からの動力を、前記各種ギア列を介して変速した後に前記走行出力軸17に円滑に伝達することができるのである。
【0036】
ここで、前述の如く、油圧シリンダ100・101・102のシリンダ室100d・101d・102dは、いずれも電磁弁支持体131の右側面131aにより閉塞されて構成されている。
【0037】
すなわち、油圧シリンダ100・101・102のシリンダ室100d・101d・102dは、電磁切替弁103乃至106を構成支持する電磁弁支持体131の一部を利用して構成されるので、油圧シリンダの形成に必要な部材を減らすことができ、部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0038】
更に、前記電磁切替弁103乃至106は、いずれも、ミッションケース38の左ケース68内に収納されると共に、該左ケース68の左開口68aに覆設される蓋体144と電磁弁支持体131との間に介設されており、これにより、従来のように電磁切替弁103乃至106をミッションケース38の外部に露出した状態で配設する場合と異なり、電磁切替弁103乃至106を保護するための大きな弁カバーケースが不要になる。また、電磁切替弁103乃至106は、すべて、単一の電磁弁支持体131に一端を貫入固定し、該電磁弁支持体131内に形成された給排ポートに接続されており、これにより、電磁弁支持体131と一緒に電磁切替弁103乃至106を着脱させることが可能となる。
【0039】
すなわち、電磁切替弁103乃至106は、ミッションケース38内に収納固定するので、電磁切替弁103乃至106を保護するための保護手段である弁カバーケースが不要となり、部品点数削減による部品コストの低減や、ミッションケース38のコンパクト化を図ることができる。また、複数の電磁切替弁103乃至106は、単一の支持部である電磁弁支持体131によって固定支持するので、電磁切替弁103乃至106を電磁弁支持体131と一緒に着脱することができ、製造時やメンテナンス時のミッションケース38の組立性が向上する。
【0040】
加えて、図7に示すように、電磁切替弁103乃至106は、前記油路114に沿うようにして、略直線状、かつ互いに平行となるように配設され、油圧シリンダ100・101・102も、前記油路114と略平行な直線145に沿うように、略直線状、かつ互いに平行になるように配設されている。
【0041】
これにより、電磁切替弁103乃至106を前記電磁弁支持体131のような支持部に取り付けたり、油圧シリンダ100・101・102をシリンダケース142に配設させる場合でも、配置する直線に対して垂直方向に十分な作業空間を確保することができ、しかも、電磁切替弁103乃至106と油圧シリンダ100・101・102を、互いに干渉しないように配置することができる。
【0042】
すなわち、複数の電磁切替弁103乃至106は、略直線状、かつ互いに平行になるように配設するので、電磁切替弁の取付作業に必要な作業空間を十分に確保しつつ、互いに近接させて配置に必要な配置空間をできるだけ小さくすることができ、取付作業性を悪化させることなく、電磁切替弁103乃至106を備えたシフタ作動機構143のコンパクト化を図ることができる。また、複数の油圧シリンダ100・101・102も、略直線状、かつ互いに平行になるように配設するので、油圧シリンダのシリンダケース142への配設作業に必要な作業空間を十分に確保しつつ、互いに近接させて配置に必要な配置空間をできるだけ小さくすることができ、配設作業性を悪化させることなく、油圧シリンダ100・101・102を備えたシフタ作動機構143のコンパクト化を図ることができる。また、複数の油圧シリンダ100・101・102から成るシリンダ列は、複数の電磁切替弁103乃至106から成る切替弁列に対し平行に配置するので、電磁切替弁と油圧シリンダとが互いに干渉することがなく、組立性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0043】
次に、以上のようなデュアルクラッチ式変速装置2における変速時の動力伝達経路と、それによる具体的な変速制御構成について、図2、図8乃至図13により説明する。
作業車両1の図示せぬ運転席近傍には、図10のような変速操作パネル111が設けられ、該変速操作パネル111に形成されたガイド溝112により、前記変速操作レバー95の前後左右への回動が規制されている。そして、該ガイド溝112には、前後方向、図10では上下方向に延出した3本の縦溝116・117・118が、左から順に互いに平行に並設され、このうちの縦溝116と縦溝117との間、縦溝117と縦溝118との間は、共通の横溝119によって連結されている。
【0044】
変速操作レバー95を操作してガイド溝112内を回動させると、前記レバー位置検出センサ113からコントローラ94に位置信号が送信され、該コントローラ94からは、電磁比例減圧弁91・92、電磁切替弁103・104・105・106に対して変速指令信号が、図示せぬ駐車ブレーキ機構に対してはブレーキ信号が送信される。そして、変速操作レバー95を前記縦溝117内に入れると、自動または手動で連続的にシフトアップまたはシフトダウンして所定の速度段に変速したり、中立状態や駐車ブレーキ状態に設定可能な通常の走行モード(以下、「通常走行モード」とする)に移行し、縦溝118内に入れると、前進速度段と後進速度段との間の切替を一操作で実行可能な走行モード(以下、「リバースモード」とする)に移行し、縦溝116内に入れると、手動のみで連続的にシフトアップまたはシフトダウンして所定の速度段に変速可能な走行モード(以下、「手動モード」とする)に移行することができ、これら各走行モードに応じた変速指令信号やブレーキ信号がコントローラ94から送信されるようにしている。
【0045】
このうちの通常走行モードにおける動力伝達経路構成について説明する。
変速操作レバー95が位置117Dにある場合(以下、「自動モード」とする)には、後述する変速制御に従って、アクセル開度に相当する図外のアクセルペダルの踏み込み量とそのときの車速との関係で、各速度段間で連続して自動変速される。
【0046】
図11に示すように、この際の前進1速時には、前述のようにして第一クラッチ部C1を入状態、第二クラッチ部C2を切状態とした上で、前記シフタ作動機構143により、第一シフタ97aを位置Aに移動させて減速ギア14に係合させ、第二シフタ98aを位置Bに移動させてギア77に係合させ、更に、第三シフタ99aを位置Nに移動させて減速ギア16と非係合状態にする。
【0047】
これにより、エンジン9からの動力は、入力軸11、第一クラッチ部C1、第一減速ギア列72・96を介して変速軸15に伝達された後、該変速軸15に係合する調整ギア列77・73を介して第二クラッチ出力軸13に伝達され、更に、該第二クラッチ出力軸13に係合する第二減速ギア列14b・16a、第三減速ギア列16b・81を介して走行出力軸17に伝達され、最も低速の前進1速の変速動力として、出力ギア27、中央差動装置28等を介して前車軸4・4と後車軸7・7を走行駆動するようにしている。
【0048】
前進1速から前進2速に変速するには、第一クラッチ部C1を切状態、第二クラッチ部C2を入状態とするだけで、シフタ97a・98a・99aの位置はそのままで変更しない。すると、エンジン9からの動力は、入力軸11、第二クラッチ部C2、第二減速ギア列14b・16a、第三減速ギア列16b・81を介して走行出力軸17に伝達され、前進2速の変速動力として前車軸4・4と後車軸7・7を走行駆動する。
【0049】
前進2速から前進3速に変速するには、前進2速の状態で、予め、シフタ作動機構143により、第二シフタ98aを位置Bから位置Nに、第三シフタ99aを位置Nから位置Dに移動させるが、第一クラッチ部C1の切状態、第二クラッチ部C2の入状態、第一シフタ97aの位置Aの係合状態はそのままで変更しない。この際、第一クラッチ部C1が切状態にあるため、該第一クラッチ部C1に連結された変速軸15上にあるシフタ98a・99aを、作業者が変速ショックを全く受けることなく減速ギア14・16から自在に係脱させ、所定位置に移動させることができる。
【0050】
続いて、第一クラッチ部C1を入状態、第二クラッチ部C2を切状態とし、シフタ97a・98a・99aの位置はそのままで変更しないようにする。すると、エンジン9からの動力は、入力軸11、第一クラッチ部C1、第一減速ギア列72・96を介して変速軸15に伝達された後、該変速軸15に係合する第三減速ギア列16b・81を介して走行出力軸17に伝達され、前進3速の変速動力として前車軸4・4と後車軸7・7を走行駆動する。
【0051】
前進3速から前進4速に変速するには、前進3速の状態で、予め、シフタ作動機構143により、第一シフタ97aを位置Aから位置Nに、第二シフタ98aを位置Nから位置Bに移動させるが、第一クラッチ部C1の入状態、第二クラッチ部C2の切状態、第三シフタ99aの位置Dの係合状態はそのままで変更しない。この際、第二クラッチ部C2が切状態にあるため、該第二クラッチ部C2に連結された第二クラッチ出力軸13上にある第一シフタ97aを、作業者が変速ショックを全く受けることなく減速ギア14から離間させて位置Nに移動することができ、更に、第二シフタ98aについても、同期機構98bにより変速ショックを大きく軽減した状態で、滑らかにギア77に係合させることができる。
【0052】
続いて、第一クラッチ部C1を切状態、第二クラッチ部C2を入状態とし、シフタ97a・98a・99aの位置はそのままで変更しないようにする。すると、エンジン9からの動力は、入力軸11、第二クラッチ部C2を介して第二クラッチ出力軸13に伝達された後、調整ギア列73・77を介して変速軸15に伝達され、更に、該変速軸15に係合する第三減速ギア列16b・81を介して走行出力軸17に伝達され、前進4速の変速動力として前車軸4・4と後車軸7・7を走行駆動する。
【0053】
なお、以上では、前進1速から前進4速までシフトアップする動力伝達経路構成の場合について説明したが、シフトダウンする場合も同様であって、現在の速度段において、予め、シフタ97a・98a・99aを次の速度段のシフトダウン位置に変更した後に、変速操作で、クラッチ部C1・C2の入切状態のみを第一クラッチ部C1と第二クラッチ部C2間で逆となるように切り替えるものである。
【0054】
後進時には、変速操作レバー95を位置117Rに入れる。
すると、コントローラ94から変速指令信号が送信され、第一クラッチ部C1を入状態、第二クラッチ部C2を切状態とした上で、第二シフタ98aを位置Cに移動させて後進ギア78に係合させ、更に、第三シフタ99aを位置Nに移動させて減速ギア16と非係合状態とする。この際、第二クラッチ部C2が切状態にあるため、該第二クラッチ部C2に連結された第二クラッチ出力軸13上にある第一シフタ97aは、位置Nで減速ギア14と非係合状態にあっても位置Aで減速ギア14と係合状態にあってもかまわない。
【0055】
これにより、エンジン9からの動力は、入力軸11、第一クラッチ部C1、第一減速ギア列72・96を介して変速軸15に伝達された後、該変速軸15に係合する後進ギア列78・75・14a、第二減速ギア列14b・16a、第三減速ギア列16b・81を介して走行出力軸17に伝達され、後進速の変速動力として前車軸4・4と後車軸7・7を走行駆動するのである。
【0056】
このように、前進1速時には、第一減速ギア列72・96、第二減速ギア列14b・16a、第三減速ギア列16b・81、及び調整ギア列77・73から成るギア列群、前進2速時には、第二減速ギア列14b・16aと第三減速ギア列16b・81から成るギア列群、前進3速時には、第一減速ギア列72・96、第三減速ギア列16b・81から成るギア列群、前進4速時には、第三減速ギア列16b・81と調整ギア列73・77から成るギア列群、後進速時には、第一減速ギア列72・96、第二減速ギア列14b・16a、第三減速ギア列16b・81、後進ギア列78・75・14aから成るギア列群を、それぞれ選択する動力伝達経路構成としている。
【0057】
そして、変速操作レバー95を位置117Lに入れると、最低速度段に変速できるようにしている。例えば、両クラッチ部C1・C2を一旦切状態とした上で、シフタ97a・98a・99aをそれぞれ位置A・位置B・位置Nに移動させ、その後、第一クラッチ部C1だけを入状態に移行させて、前述した前進1速に変速するのである。更に、変速操作レバー95を位置117Nに入れると、両クラッチ部C1・C2を非係合状態とし、位置117Pに入れると、図示せぬ駐車ブレーキ機構に対してブレーキ信号を送信し、前車軸4・4または後車軸7・7の少なくとも一方を制動できるようにしている。
【0058】
なお、前述の如く、前進1速時には、第一減速ギア列72・96、第二減速ギア列14b・16a、第三減速ギア列16b・81、及び調整ギア列77・73から成るギア列群より1速度段用ギアトレーンが形成され、前進4速時には、第三減速ギア列16b・81と調整ギア列73・77から成るギア列群より4速度段用ギアトレーンが形成され、いずれのギアトレーンも、一部に共通の調整ギア列77・73を有しており、該調整ギア列77・73の駆動側と従動側を逆にすることで両速度段を現出可能としている。これにより、比較的使用頻度の低い前進1速時に用いる調整ギア列77・73を、使用頻度の高い前進4速時に兼用することができる。
【0059】
すなわち、使用頻度の低い速度段である前進1速度段のギアトレーンの少なくとも一部を、該前進1速度段よりも使用頻度の高い速度段である前進4速度段のギアトレーンに適用可能な変速制御構成とするので、使用頻度の低い速度段と使用頻度の高い速度段でギアを兼用することができ、ギア数を減らすことができ、部品点数の減少、動力伝達構成の単純化、ギア配置空間の縮小を図ることができ、レイアウトの自由度が高くなり、機体のコンパクト化やコストダウンも図ることができる。
【0060】
また、前記リバースモードにおける動力伝達経路構成について説明する。
該リバースモードにおける前進速度段時には、変速操作レバー95を位置118Fに入れる。すると、コントローラ94から変速指令信号が送信され、第一クラッチ部C1を切状態、第二クラッチ部C2を入状態とした上で、第一シフタ97aを位置Aに移動させて減速ギア14に係合させ、第二シフタ98aを位置Cに移動させて後進ギア列78・75・14aに係合させ、更に、第三シフタ99aを位置Nに移動させて減速ギア16と非係合状態とする。
【0061】
これにより、エンジン9からの動力は、入力軸11、第二クラッチ部C2、第二クラッチ出力軸13に伝達された後、第二減速ギア列14b・16aと第三減速ギア列16b・81を介して走行出力軸17に伝達され、前進速度段の変速動力として前車軸4・4と後車軸7・7を走行駆動する。なお、この際、第二減速ギア列14b・16aと一緒に後進ギア列78・75・14aも回動するが、前記第一クラッチ部C1が切状態であるため、後進ギア列78・75・14aと第二シフタ98aを介して連結する変速軸15は空転するだけで、動力伝達経路としては機能しない。
【0062】
この前進速度段から後進速度段に変速するには、第一クラッチ部C1を入状態、第二クラッチ部C2を切状態とするだけで、シフタ97a・98a・99aの位置はそのままで変更しない。すると、エンジン9からの動力は、入力軸11、第一クラッチ部C1、第一減速ギア列72・96を介して変速軸15に伝達された後、該変速軸15に係合する後進ギア列78・75・14a、第二減速ギア列14b・16a、第三減速ギア列16b・81を介して走行出力軸17に伝達され、後進速度段の変速動力として前車軸4・4と後車軸7・7を走行駆動するのである。
【0063】
また、前記手動モードにおける動力伝達経路構成について説明する。
該手動モードでは、作業者が変速操作レバー95を位置116U側に繰り返し押し付けることにより、コントローラ94から電磁比例減圧弁91・92、電磁切替弁103・104・105・106に対してシフトアップするように変速指令信号が送信され、前進1速から前進4速まで一段ずつ順にシフトアップし、逆に、作業者が変速操作レバー95を位置116D側に繰り返し押し付けることにより、コントローラ94から、同様に電磁比例減圧弁91・92、電磁切替弁103・104・105・106に対してシフトダウンするように変速指令信号が送信され、前進4速から前進1速まで一段ずつ順にシフトダウンできるようにしている。この際の、各速度段設定時または各速度段間移行時のクラッチ部C1・C2、シフタ97a・98a・99aの係合状態や動力伝達経路については、前述した通常走行モードと同様である。
【0064】
以上のような動力伝達経路による変速制御構成について具体的に説明する。ここでは、現在の速度段が前進2速で、次の速度段が前進3速の場合の変速制御を例に説明する。
【0065】
図12に示すように、前進2速で走行中は、前述の如く、第二クラッチ部C2は接続されて入状態にある。この時、前記第一油圧シリンダ100のロッド100aは位置Aに、第二油圧シリンダ101のロッド101aは位置Bに、第三油圧シリンダ102のロッド102aは位置Nにそれぞれ保持されているため、該ロッド100a・101a・102aとアーム、フォーク等を介して連結されるシフタ97a、98a、99aも、前述の如く、それぞれ位置A、位置B、位置Nに保持されている。このため、第一シフタ97aは減速ギア14と係合状態に、第二シフタ98aはギア77と係合状態に、第三シフタ99aは中立状態に保持され、その結果、前述した動力伝達経路を介して前進1速の変速動力が走行出力軸17に伝達される。一方、前記第一クラッチ部C1は切断されて切状態にある。
【0066】
そして、X時点で、例えばアクセルペダルを踏み込んで前進2速から前進3速への変速指令信号がコントローラ94から発せられると、第一クラッチ部C1の切状態、第二クラッチ部C2の入状態、第一シフタ97aの位置Aの係合状態はそのままで、第二シフタ98aと第三シフタ99aのみが、それぞれ、位置Bから位置Nに、位置Nから位置Dに移動し、第二シフタ98aは中立状態、第三シフタ99aは位置Dの係合状態となる。なお、動力伝達経路は、入力軸11→第二クラッチ部C2→第二減速ギア列14b・16a→第三減速ギア列16b・81→走行出力軸17であって、変速指令前後で変わらない。
【0067】
変速指令信号が発せられてから若干時間が経過したY時点になると、第一クラッチ部C1は徐々に接続が進み、第二クラッチ部C2は徐々に切断が進む内容のクラッチ断接指令信号がコントローラ94から発せられる。すると、前記電磁比例減圧弁91・92が比例減圧制御されて、前記第一クラッチ部シリンダ79の第一ピストン86と第二クラッチ部シリンダ80の第二ピストン87が徐々に連続的に移動し、第一クラッチ部C1のクラッチ圧が増加して現在の切状態から入状態に接合作動が進み、第二クラッチ部C2のクラッチ圧は減少して現在の入状態から切状態に離間作動が進み、これら接合作動と離間作動とが並行して行われる。
【0068】
更に、前記Y時点から時間が経過したZ時点まではクラッチ断接指令信号が継続して発せられ続け、該Z時点に達すると、前記第一クラッチ部C1はクラッチ圧が規定圧に達して完全に入状態、第二クラッチ部C2はクラッチ圧が略ゼロとなって完全に切状態となり、変速が完了する。つまり、このクラッチ断接指令信号が発せられている間は、第一クラッチ部C1からの動力は、入力軸11→第一クラッチ部C1→第一減速ギア列72・96→第三減速ギア列16b・81を介して走行出力軸17に常時接続され、第二クラッチ部C2からの動力も、入力軸11→第二クラッチ部C2→第二減速ギア列14b・16a→第三減速ギア列16b・81を介して走行出力軸17に常時接続されていることから、第二クラッチ部C2からの変速動力は徐々に減少していく一方、第一クラッチ部C1からの変速動力は徐々に増加していくこととなる。
【0069】
これにより、走行変速クラッチ82から走行出力軸17への動力は、Y時点を境に徐々に前進2速から前進3速に切り替わっていき、Z時点で完全に前進3速に変速され、この間は、エンジン9からの動力は途切れることがない。他の変速段間の変速制御も上記と同様なプロセスで実施される。
【0070】
また、作業車両1において、アクセルペダルの踏み込み量とその時の車速で変速段が自動的に変速される前記自動モードにおいては、図13に示すような変速点特性モデル図と、アクセル開度センサ120、車速センサ121によって実際に検出されたエンジン9のアクセル開度及び車速とに基づいて、前記変速指令信号の発信時期であるX時点が決定される。なお、図中の変速点特性曲線を比較すると、減速時(例えば前進2速から前進1速への特性曲線123)の車速変化を増速時(例えば前進1速から前進2速への特性曲線122)よりも小さくし、更に、低速段(例えば前進1速から前進2速への特性曲線122)の車速変化を高速段(例えば前進3速から前進4速への特性曲線124)よりも小さくしている。これによりオペレータの意図的なシフトダウンや、走行負荷の増加に伴う車速低下に応じた自動減速をスムーズに行うことができるのである。
【0071】
すなわち、以上の如く、各奇数速度段に必要な駆動列群であるギア列群への動力断接用の第一クラッチである第一クラッチ部C1と、各偶数速度段に必要な駆動列群であるギア列群への動力断接用の第二クラッチである第二クラッチ部C2とを備え、アクセル開度と車速に応じて、前記第一クラッチ部C1・第二クラッチ部C2の入切で前記ギア列群を自動選択し、エンジン9からの動力を変速して車軸4・7に伝達すると共に、前記奇数速度段・偶数速度段間での速度段切替時には、前記第一クラッチ部C1と第二クラッチ部C2のうちの、一方の離間作動と他方の接合作動とを時間的にオーバーラップさせるデュアルクラッチ式変速装置2において、前進用の前記速度段のうちの一つの前進速度段と、後進速度段との間を自在に選択可能なリバースモードを備える変速制御構成としたので、ローダによる除雪作業等のように前後進を頻繁に繰り返す作業を行う場合でも、変速操作レバー95やペダル等のモード切替手段により通常走行モードをリバースモードに切り替えた後は、該リバースモードにおいて前進速度段または後進速度段のいずれか一方を直接選択して前後進切替操作を迅速に行うことができ、作業効率が向上するだけでなく、作業に必要な空間も小さくて済み、狭い場所でも確実に作業することができる。
【0072】
更に、本実施例では、リバースモードにおける前進速度段には、前述の如く、第二減速ギア列14b・16aと第三減速ギア列16b・81から成る駆動列群であるギア列群が選択されるが、該ギア列群は、偶数速度段の中で最も低速の前進2速時と同じであり、低速の後進速度段に近い速度段を選択するようにしている。
【0073】
すなわち、前記第一クラッチである第一クラッチ部C1と第二クラッチである第二クラッチ部C2のうち、前記後進速度段では切状態にある方のクラッチである第二クラッチ部C2により動力伝達を行う速度段の中から、最も低い車速を有する速度段である前進2速を、前記リバースモードにおける前進速度段として選択するので、該前進速度段の車速を低速の後進速度段の車速に近づけることができ、前後進切替時にあっても、進行方向が逆になるだけで急激な増減速が起こらないようにして、作業車両1の作業者の操作性を良好に保つことができ、運転操作ミスの防止はもとより作業者の疲労等を軽減し、作業効率の更なる向上を図ることができる。
【0074】
なお、本実施例のように、クラッチ部C1・C2の入切状態が後進速度段と逆になる速度段が全て偶数速度段である場合には、リバースモードにおける前進速度段を、偶数速度段では最低速の前進2速に初めから設定しておいてもよく、制御構成を容易なものにすることができる。すなわち、リバースモードにおける前進速度段は前進2速とするので、後進速度段では切状態にある方のクラッチにより動力伝達を行う速度段が各偶数速度段である場合に、複雑な制御を要することなく最低車速を選択することができ、制御システムを簡便化して制御コストの削減を図ることができる。
【0075】
反対に、本実施例とは異なり、後進速度段では第一クラッチ部C1を切状態、第二クラッチ部C2を入状態に設定してもよい。この場合、クラッチ部C1・C2の入切状態が後進速度段と逆になるのは奇数速度段であるが、本実施例の場合と同様、リバースモードにおける前進速度段を、奇数速度段では最低速の前進1速に初めから設定しておき、制御構成を容易なものにすることができる。すなわち、リバースモードにおける前進速度段は前進1速とするので、後進速度段では切状態にある方のクラッチにより動力伝達を行う速度段が各奇数速度段である場合に、複雑な制御を要することなく最低車速を選択することができ、制御システムを簡便化して制御コストの削減を図ることができるのである。
【0076】
加えて、リバースモードでは、前述の如く、第一クラッチ部C1・第二クラッチ部C2の入状態・切状態を逆にするだけで前後進を切り替えることができ、通常走行モードでは各速度段に必要な駆動列群であるギア列群の単なる選択手段として機能していた第一クラッチ部C1・第二クラッチ部C2を、前後進の直接選択手段としても機能させるようにしている。
【0077】
すなわち、前記リバースモードにおいては、前記第一クラッチである第一クラッチ部C1と第二クラッチである第二クラッチ部C2が前後進切替用のクラッチを兼ねるので、前後進切替用のクラッチを新たに設ける必要がなく、部品点数を減らして部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。更には、前記第一クラッチ部C1・第二クラッチ部C2のうちの一方を前進速度段用、他方を後進速度段用とすることで、前後進切替時においても、前記第一クラッチ部C1と第二クラッチ部C2のうちの、一方の離間作動と他方の接合作動とを時間的にオーバーラップさせ、変速ショックを軽減することができる。
【0078】
しかも、前記リバースモードにおいては、前記第一クラッチである第一クラッチ部C1または第二クラッチである第二クラッチ部C2の一方を入状態とし他方を切状態とするだけで、前後進を切り替えるので、各駆動列群であるギア列群の選択状況等を変更しなくて済み、前後進切替時に必要な操作具やリンク機構を省くことができ、部品点数を減らして部品コストの低減やデュアルクラッチ式変速装置2のコンパクト化を図ることができる。
【0079】
次に、前記デュアルクラッチ式変速装置2を収納するミッションケース38内の油潤滑を中心に、作業車両1の油圧回路構成について、図2乃至図8、図14により説明する。
図5に示すように、ミッションケース38の左ケース68の上外側面に装着されたシールケース67内には、油圧ポンプ145が収納され、該油圧ポンプ145のポンプ軸145aは、ミッションケース38内で前記左ケース68と中央ケース69の支壁部69aとによって囲まれた第一油室177内に延出されると共に、左ケース68の外壁部68bによって回動自在に支持され、更に、該ポンプ軸145aの延出端にはポンプギア146が固設されている。該ポンプギア146は、エンジン9からの入力軸11の途中部に固設されたギア147に噛合されており、油圧ポンプ145は、エンジン9からの動力で駆動するギアポンプとして構成されている。
【0080】
ここで、前記ギア147はポンプギア146よりも小径で歯数が少なく構成されており、ポンプ軸145aの回転数を入力軸11の回転数よりも低速に設定することができる。これにより、油圧ポンプ145には、高速回転に対応した特殊な油圧ポンプに比べて安価な通常の低速回転用の油圧ポンプを適用することができる。すなわち、前記油圧ポンプ145は、エンジン9からデュアルクラッチ式変速装置2への入力軸11よりも低回転数の回転軸であるポンプ軸145a上に設けるので、通常の低速回転用の安価な油圧ポンプを使用することができ、部品コストを低減することができる。
【0081】
図8に示すように、前記油圧ポンプ145の吸入ポートは、油路149からフィルタ148を介して油溜まり136に連通されており、該油溜まり136から油圧ポンプ145に油が供給されるようにしている。油圧ポンプ145の吐出ポートは、油路150に連通され、該油路150は、調圧用の絞り151a・151bを有する分岐部151において、外部作業機用の油路152とパワステや変速用の油路153に分岐される。このうちの油路152は、切替弁154に接続され、該切替弁154は配管155を介して油圧リフトシリンダ156に接続されており、油圧ポンプ145から切替弁154に圧油を供給することにより、油圧リフトシリンダ156の切り換え操作を行い、外部作業機用の昇降アーム157を駆動操作できるようにしている。一方、前記油路153は、途中部で、切替弁158に接続され、該切替弁158はパワーステアリングシリンダ159に接続されており、油圧ポンプ145から切替弁158に圧油を供給することにより、図示せぬステアリングホイールに連係したパワーステアリングシリンダ159の切り換え操作を行い、前輪3・3を操向自在としている。
【0082】
ここで、このように、前記油圧ポンプ145は、デュアルクラッチ式変速装置2以外に、外部作業機、パワステ等にも圧油を供給可能な構成としており、各油圧機器への圧油供給に必要な油圧ポンプの数を少なくすることができる。すなわち、ミッションケース38に設けた油圧ポンプ145は、デュアルクラッチ式変速装置2だけでなく、外部作業機、パワステ等の他の油圧機器への油圧源を兼用するので、油圧ポンプの数を減らすことができ、部品点数の減少、油路構成の単純化、配置空間の縮小を図ることができ、レイアウトの自由度が高くなり、機体のコンパクト化やコストダウンも図ることができる。
【0083】
更に、図14に示すように、単一の前記油圧ポンプ145の代わりに、共通のポンプ軸167を有する一対の油圧ポンプ165・166を設け、該油圧ポンプ165・166の各吐出ポートを、前記油路152・153にそれぞれ接続する構成としてもよい。この場合、ミッションケース38内に、外部作業機専用とデュアルクラッチ式変速装置2・パワステ専用の油圧ポンプを別個に設けるため、各油圧機器に対して十分な量の圧油を供給することができる。すなわち、ミッションケース38内に複数の油圧ポンプを設け、該複数の油圧ポンプの一つを外部作業機への専用油圧源とするので、外部作業機専用の油圧ポンプをミッションケース38外部に別途設ける必要がなく、しかも、外部作業機とデュアルクラッチ式変速装置2・パワステで単一の油圧ポンプ145を兼用する場合よりも多量の圧油を供給することができ、ミッションケース38外部に設けていた外部作業機専用の油圧ポンプを省略して機体のコンパクト化を図り、しかも、十分な量の圧油を供給して外部作業機の動作速度の高速化等を図ることができる。
【0084】
また、前記油路153は、更に、走行変速クラッチ82制御用の油路160と、油圧シリンダ100・101・102制御用の前記油路114とに分岐される。このうちの油路114は、電磁切替弁103乃至106に接続されており、前述の如く、該電磁切替弁103乃至106を介して油圧シリンダ100・101・102を作動し、シフタ97a・98a・99aを所定位置に移動させて、各種ギア列を自在に選択して変速できるようにしている。一方、油路160は、更に、油路161と油路162に分岐され、このうちの油路161は、逆止弁168・フィルタ169を介した後に二つに分岐し、前記電磁比例減圧弁91・92のポンプポートにそれぞれ接続される。該電磁比例減圧弁91・92の吐出ポートは前記油路88・89にそれぞれ接続されており、油圧ポンプ145からの圧油が、第一クラッチ部C1のシリンダ室83、第二クラッチ部C2のシリンダ室84に、作動油として供給される。
【0085】
一方、前記油路162は、調圧弁170を介して油路163と油路164とに分岐され、このうちの油路163は、前記第一クラッチ部C1・第二クラッチ部C2への潤滑油の給排を制御する前記切替弁93に接続されている。そして、該切替弁93のパイロット油路93a・93bは、それぞれ前記油路88・89に連通されており、第一クラッチ部C1または第二クラッチ部C2の作動時に、油路88または油路89に圧油が流れると、この圧油の油圧によって切替弁93が切り替わり、ポンプポートと吐出ポートとが連通される。すると、調圧弁171によって調圧された油路163内の圧油が、切替弁93から油路90を介して前記第一クラッチ部C1・第二クラッチ部C2に、潤滑油として供給されるのである。
【0086】
また、前記油路164は、更に、前記シールケース67下部に入力軸11と平行に穿設された油路172と連通されている。該油路172の途中部からは油路173が分岐し、該油路173は、前記入力軸11の左端部を支持するベアリング180やオイルシール181等から成る軸受け部179に連通されており、前記油圧ポンプ145からの圧油が、該軸受け部179に潤滑油として強制的に供給される。
【0087】
ここで、図5に示すように、シールケース67には、油路173や、入力軸11の軸受け部179に加え、前述した油圧ポンプ145を組み込むためのポンプケース部67aも一体的に構成されている。すなわち、潤滑用の油路173、入力軸11の軸受け部179、油圧ポンプ145のポンプケース部67a等をシールケース67として一体的に構成するので、油路用の配管、軸受け部、ポンプケースを別々に設ける必要がなく、部品点数削減による部品コストの低減や、ミッションケース38のコンパクト化を図ることができる。
【0088】
更に、図4に示すように、前記油路172は、左ケース68の外壁部68bを貫通する油路68cを介して、前記変速軸15の左軸受け部182と前記外壁部68bとの間に設けられた油室175に連通され、該油室175は、前記外壁部68bの厚み中央を上方に穿孔した油路176の下部に連通され、該油路176の上部には、前記第一油室177内の前記走行変速クラッチ82に向かって開口した吐出口176aが形成されており、前記油圧ポンプ145からの圧油が、該吐出口176aから走行変速クラッチ82に向かって潤滑油として強制的に噴射される。
【0089】
前記変速軸15の回転中心には油路(以下、「軸心部油路」とする)174が貫通して形成され、前記変速軸15の右軸受け部183より右方で、前記右ケース70の外壁部70aとの間に設けられた油路184に連通されている。該油路184は、前記第二クラッチ出力軸13の右軸受け部185のベアリング186と、前記変速軸15の右軸受け部183のベアリング187との間に橋設されたベアリングカバー188が、前記外壁部70a内面に上下方向に形成された縦溝70bを内側から塞ぐようにして構成されると共に、該油路184の上部には吐出口184aが形成され、該吐出口184aは、中央ケース69の支壁部69aと右ケース70の外壁部70aとによって囲まれた第二油室178に向かって開口されており、前記油圧ポンプ145からの圧油が、吐出口184aから、第二油室178内に配設された前記各種ギア列等に向かって、潤滑油として強制的に噴射される。
【0090】
前記第二クラッチ出力軸13の回転中心にも軸心部油路189が形成され、該軸心部油路189の一端は前記油路184に連通され、他端は第二クラッチ出力軸13の軸心方向略中央部まで延出され、その延出端には、第二クラッチ出力軸13外周上の減速ギア14取付位置まで、半径方向に延びる油孔189aが形成されている。同様に、前記軸心部油路174の途中部にも、半径方向に延びる油孔174a・174b・174cが形成され、該油孔174a・174b・174cは、それぞれ、変速軸15外周上の減速ギア16・後進ギア78・ギア77の各取付位置まで延設されている。
【0091】
これにより、前記油圧ポンプ145からの圧油は、軸心部油路174・189から前記油孔174a・174b・174c・189aを経由して、回転する第二クラッチ出力軸13・変速軸15から半径方向に激しく飛散し、変速用の各種ギア列の噛合部はもとより、スプラインハブ97・98・99のシンクロメッシュ等の同期機構97b・98b・99bや、軸受け部183・185等のベアリングにも、潤滑油として供給される。
【0092】
このようにして、デュアルクラッチ式変速装置2には、ミッションケース38の左ケース68に設けた油室175・油路176、右ケース70に設けた油路184、変速軸15に設けた軸心部油路174・油孔174a・油孔174b・油孔174c、及び第二クラッチ出力軸13に設けた軸心部油路189・油孔189a等から、潤滑回路190が形成されており、該潤滑油路190を用いることで、前記油圧ポンプ145から供給される圧油のみで、走行変速クラッチ82、前記各種ギア列、シンクロメッシュ等の同期機構97b・98b・99b、及び軸受け部183・185等のベアリングなどを、確実に潤滑することができる。
【0093】
すなわち、ミッションケース38、変速軸15・第二クラッチ出力軸13等の伝動軸に、走行変速クラッチ82、前記各種ギア列、シンクロメッシュ等の同期機構97b・98b・99b等に潤滑油を供給可能な潤滑回路190を形成するので、該潤滑回路190を介して、前記油圧ポンプ145からの圧油を潤滑に使用することができ、潤滑専用に油圧ポンプを新たに設ける必要がなく、油圧ポンプの数を減らすことができ、部品点数の減少、油路構成の単純化、配置空間の縮小を図ることができ、レイアウトの自由度が高くなり、機体のコンパクト化やコストダウンも図ることができるのである。
【0094】
また、前記潤滑回路190から吐出した潤滑油は、入力軸11、変速軸15、第二クラッチ出力軸13の回転によって周囲に霧状に飛散し、流下しながら、前記走行変速クラッチ82、前記各種ギア列、シンクロメッシュ等の同期機構97b・98b・99b等を潤滑した後、油溜まり136内に流入する。該油溜まり136の油面レベル191は、図3、図4に示すように、前記走行出力軸17よりも下方に設定し、前記走行変速クラッチ82、変速軸15、第二クラッチ出力軸13、各種ギア列、同期機構97b・98b・99b等が、油溜まり136内に浸漬されないようにしており、これら回転部材によって油溜まり136内の油が激しく撹拌されないようにしている。特に、走行変速クラッチ82、同期機構97b・98b・99bによる撹拌抵抗は大きく、未撹拌による、油温上昇等の抑制効果は大きい。
【0095】
すなわち、走行変速クラッチ82と同期機構97b・98b・99bの少なくとも一方は、ミッションケース38内の油溜まり136の油面レベル191よりも上方に配置するので、これら走行変速クラッチ82と同期機構97b・98b・99bによる油撹拌を防止して、油の撹拌抵抗による動力伝達効率の低下・油温の上昇を確実に抑制させることができる。
【0096】
次に、坂道で発進・走行する際の各種制御構成について、図2、図8、図9、図12、図18乃至図21により説明する。
図2、図9、図18により、上り坂発進時のブレーキアシスト制御について説明する。該ブレーキアシスト制御とは、上り坂で踏み込んでいたブレーキペダル196の踏み込みを解除する等の坂道発進操作を行うにあたり、ブレーキ装置195による制動力の保持・解除を、エンジン回転数等を基に自動的に切り替え、作業者の上り坂発進操作を補助するものである。
【0097】
前記コントローラ94には、ブレーキペダル196の踏み込み位置を検出するペダル位置センサ197と、前記デュアルクラッチ式変速装置2への入力軸11等に設けた、エンジン9からの出力回転数を検出するエンジン回転数センサ192と、作業車両1が停止している場所が上り坂か否かを判断すべく設けた、加速度センサ等から成る車両傾斜角センサ193が接続されており、前記ペダル位置センサ197からは、ブレーキペダル196の踏み込み位置を示すペダル位置信号が、エンジン回転数センサ192からはエンジン回転数信号が、車両傾斜角センサ193からは傾斜信号が、それぞれコントローラ94に送信される。
【0098】
更に、該コントローラ94には、電磁切替弁194を介して、前記エンジン9から前後車輪3・6までの動力伝達経路の途中部に設けた油圧作動型等のブレーキ装置195が接続されており、コントローラ94は、前記ペダル位置信号、エンジン回転数信号、傾斜信号に基づいて、前記電磁切替弁194に所定のブレーキ制御信号を送信すると、ブレーキ装置195によって制動力の保持・解除が行われるようにしている。
【0099】
このような構成において、作業車両1を上り坂に停止させた状態から、キースイッチをONにしたりブレーキペダル196の踏み込み解除等の坂道発進操作を行うと、エンジン制御回路やペダル位置センサ197等から、エンジン始動信号やペダル位置信号をコントローラ94が受信して、坂道発進操作が行われたものと判断する。
【0100】
すると、コントローラ94から前記車両傾斜角センサ193に検出指令信号が送信され、該車両傾斜角センサ193から折り返し送られてきた傾斜信号を基に、コントローラ94が、現在、作業車両1が停止している走行路が上り坂か否かを判断する(ステップS1)。走行路が上り坂でなければ(ステップS1、NO)、制動解除のブレーキ制御信号がコントローラ94から電磁切替弁194に送信されて切替制御され、該電磁切替弁194を介して、前記ブレーキ装置195に制動解除方向に作動油が供給され、制動力が自動的に解除される(ステップS5)。走行路が上り坂であると判断した場合には(ステップS1、YES)、制動保持のブレーキ制御信号がコントローラ94から電磁切替弁194に送信され、それまでの、ブレーキ装置195に対する制動方向の作動油の供給が持続され、制動力がそのまま自動的に保持される(ステップS2)。
【0101】
制動力を保持した状態で、コントローラ94は、前記エンジン回転数センサ192から送信されてくるエンジン回転数信号に基づいてエンジン回転数を検知し、該エンジン回転数が規定回転数以下か否かを判断する(ステップS3)。エンジン回転数が規定回転数を超えていれば(ステップS3、NO)、制動解除のブレーキ制御信号がコントローラ94から電磁切替弁194に送信されて、ブレーキ装置195による制動力が自動的に解除される(ステップS5)。
【0102】
エンジン回転数が規定回転数以下であっても(ステップS3、YES)、制動力保持時間が規定時間を過ぎていれば(ステップS4、NO)、エンジン回転数が規定回転数を超えている場合と同様に、制動解除のブレーキ制御信号がコントローラ94から電磁切替弁194に送信されて、ブレーキ装置195による制動力が自動的に解除される(ステップS5)。エンジン回転数が規定回転数以下で(ステップS3、YES)、かつ制動力保持時間が規定時間に至っていない場合には(ステップS4、YES)、制動力がそのまま自動的に保持される(ステップS2)、以上の手順を繰り返すことで、前記ブレーキアシスト制御を行うようにしている。
【0103】
なお、前記規定時間は、作業者が、ブレーキペダル196を離してから、アクセルペダルを踏み込むなどのアクセル操作を行うまでに必要な時間であって、通常は1秒程度の時間が設定されるが、作業者の技能や運転環境等の諸条件に応じて、別の時間に設定したり、あるいは、規定時間を自在に変更可能な構成としてもよい。
【0104】
このようなブレーキアシスト制御を行うことで、エンジン回転数が規定回転数に達する(ステップS3、NO)か、制動力保持時間が規定時間に達する(ステップS4、NO)までは、ブレーキ装置195による制動力を自動的に保持することができる。
【0105】
すなわち、上り坂発進時における制動力解除のタイミングを、エンジン回転数と制動力保持時間に応じて決定するので、坂道発進を、エンジン回転数がエンジン負荷に見合うまで十分に高まってから行うことができ、エンジン停止、伝達効率低下等の不具合を回避することができ、更には、例えエンジン回転数が十分でなくても、制動力は規定時間保持された後は自動的に解除され、作業車両1を後退させる等といった自由な走行操作が可能となり、作業者の意思を十分に反映させて坂道発進操作性を一層向上させることができる。
【0106】
また、図2、図9、図12、図19により、坂道走行等の際の走行変速クラッチ82における切替ポイント制御について説明する。
切替ポイント制御とは、坂道走行等の際における前記第一クラッチ部C1と第二クラッチ部C2の入状態と切状態を切り替えるにあたり、作業車両1の傾斜角等を基に、その切替時間を自動的に調整し、走行性能を向上させるものである。
【0107】
前記コントローラ94には、前述した車両傾斜角センサ193に加え、エンジン9からの出力軸11上などに設けた、走行時に前後車輪3・6にかかる負荷トルクを検出するトルクセンサ198と、第一クラッチ部C1のクラッチ圧を検出する第一クラッチ圧センサ199と、第二クラッチ部C2のクラッチ圧を検出する第二クラッチ圧センサ200が接続されており、前記トルクセンサ198からは、前後車輪3・6にかかる負荷トルクの大きさを示す負荷トルク信号が、クラッチ圧センサ199・200からは、各クラッチ部C1・C2のクラッチ圧信号が、それぞれコントローラ94に送信される。
【0108】
更に、該コントローラ94には、前述の如く、電磁比例減圧弁91を介して第一クラッチ部C1が接続され、電磁比例減圧弁92を介して第二クラッチ部C2が接続されており、コントローラ94は、前記傾斜角信号、負荷トルク信号に基づいて、前記電磁比例減圧弁91・92に所定のクラッチ制御信号を送信すると、クラッチ部C1・C2におけるクラッチ圧の増減が行われるようにしている。
【0109】
ここで、前述の如く、図12に示すように、変速指令信号が発せられてからY時点になると、第一クラッチ部C1は徐々に接続が進み、第二クラッチ部C2は徐々に切断が進む内容のクラッチ断接指令信号がコントローラ94から発せられ、第一クラッチ部C1のクラッチ圧が増加して現在の切状態から入状態に接合作動が進み、第二クラッチ部C2のクラッチ圧は減少して現在の入状態から切状態に離間作動が進み、これら接合作動と離間作動とが並行して行われるが、このように、変速中に、一方のクラッチのクラッチ圧低減と他方のクラッチ圧上昇とを示す経時曲線が交差するようなクラッチ圧制御をクロス波形制御とする。更に、該クロス波形制御において、両経時曲線が交差する点をエンゲージポイント201、両クラッチ部C1・C2で切状態と入状態が切り替わるのに必要な時間をクラッチ切替時間205とする。
【0110】
このような構成において、作業車両1が停止時または走行中に、コントローラ94から車両傾斜角センサ193に検出指令信号が送信され、該車両傾斜角センサ193から折り返し送られてきた傾斜信号を基に、コントローラ94が、作業車両1の傾斜角が規定角以上か否かを判断する(ステップS6)。傾斜角が規定角以上であれば(ステップS6、YES)、コントローラ94から電磁比例減圧弁91・92にクラッチ制御信号が送信され、該電磁比例減圧弁91・92を介して、前記クラッチ部C1・C2に作動油が供給されて各クラッチ圧が増減し、クロス波形202となるように前記エンゲージポイントが201aが調整される。なお、該クラッチ圧は、実圧を示す、前記クラッチ圧センサ199・200からのクラッチ圧信号と比較しながら、目標圧に到達するように調整される。
【0111】
傾斜角が規定角未満の場合は(ステップS6、NO)、前記トルクセンサ198から送信されてくる負荷トルク信号に基づいて、負荷トルクを検知し、該負荷トルクが規定トルク以上か否かを判断する(ステップS7)。負荷トルクが規定トルク以上であれば(ステップS7、YES)、傾斜角の場合と同様に、コントローラ94から電磁比例減圧弁91・92にクラッチ制御信号が送信され、該電磁比例減圧弁91・92を介して、前記クラッチ部C1・C2に作動油が供給されて各クラッチ圧が増減し、前記クロス波形202よりも長時間のクラッチ切替時間205bを有するクロス波形203に従うように、エンゲージポイントが201bに調整される。負荷トルクが規定トルク未満であれば(ステップS7、NO)、前記クロス波形203よりも更に長時間のクラッチ切替時間205cを有するクロス波形204に従うように、エンゲージポイントが201cに調整されるのである。
【0112】
このような切替ポイント制御を行うことで、車両傾斜角と負荷トルクの少なくとも一方が既定値より大きくなると、エンゲージポイントを201c→201b→201aのように変化させ、クラッチ切替時間を205c→205b→205aのように短くすることができる。
【0113】
すなわち、デュアルクラッチ式変速装置2において、クラッチ切替時のクロス波形制御におけるエンゲージポイントを、車両傾斜角と負荷トルクに応じて変更可能とするので、坂道のために車両傾斜角や負荷トルクが大きく、作業車両1がトルク不足でずり落ちるような場合であっても、エンゲージポイントをクラッチ切替開始時に近い位置に移動させることにより、クラッチ切替時間を短くして次の速度段に迅速に変速させることができ、作業車両の作業者の変速操作性を大きく向上させることができるのである。
【0114】
また、図2、図8、図9、図20、図21により、坂道走行等の際の負荷トルクを検出する走行負荷検出機構について説明する。
該走行負荷検出機構とは、坂道走行等の際に前後車輪3・6から受ける負荷トルクを、前述のトルクセンサ198等を用いずに、簡単かつ安価な構成で検出するものである。
【0115】
前記コントローラ94には、前述したトルクセンサ198の代わりに、前記クラッチハウジング82aに設けて走行変速クラッチ82におけるクラッチ部C1・C2の駆動側部材の回転数を検出する上手側回転数センサ206と、前記出力ギア27に設けてクラッチ部C1・C2の従動側部材の回転数を検出する下手側回転数センサ207が接続され、更に、前述した第一クラッチ圧センサ199・第二クラッチ圧センサ200の代わりに、前記第一クラッチ部シリンダ79に連通する油路88の途中に設けて第一クラッチ部C1への作動油の油圧を検出する第一クラッチ作動油圧センサ208と、前記第二クラッチ部シリンダ80に連通する油路89の途中に設けて第二クラッチ部C2への作動油の油圧を検出する第二クラッチ作動油圧センサ209が接続されている。そして、前記回転数センサ206・207からは、それぞれクラッチハウジング82a・出力ギア27の回転数信号が、クラッチ作動油圧センサ208・209からは、それぞれクラッチ部C1・C2への作動油圧信号が、コントローラ94に送信される。
【0116】
更に、該コントローラ94には、前述の如く、電磁比例減圧弁91・92を介してクラッチ部C1・C2がそれぞれ接続され、更に、電磁切替弁103・104と105・106を介してシフタ97a・98a・99aがそれぞれ接続されており、コントローラ94は、前記回転数信号に基づいて、前記電磁比例減圧弁91・92には所定のクラッチ制御信号を送信し、クラッチ部C1・C2におけるクラッチ作動油圧の増減が行われるようにしている。なお、該クラッチ作動油圧は、実油圧を示す、前記クラッチ作動油圧センサ208・209からの作動油圧信号と比較しながら、目標油圧に到達するように調整される。
【0117】
このような構成において、コントローラ94は、前記レバー位置検出センサ113からの位置信号や、前記アクセル開度センサ120・車速センサ121からのアクセル開度信号・車速信号から、現在の速度段を検出する(ステップS8)。更に、この現速度段で規定された変速比と、前記上手側回転数センサ206からの回転数信号より得た上手側の実回転数RUとから、クラッチ部C1・C2が完全に入状態にある場合の下手側の計算回転数rLを算出し、これら、上手側の実回転数RUと下手側の計算回転数rLとの差を基に、クラッチ作動油圧増減の判断基準値とする所定の回転数差(以下、「判定係数」とする)Kを求める。
【0118】
そして、上手側の実回転数RUと、前記下手側回転数センサ207からの回転数信号から得た下手側の実回転数RLとの差の絶対値(以下、「実回転数差の絶対値」とする)Dを求め、該実回転数差の絶対値Dが前記判定係数Kよりも小さいか否かを判断する(ステップS10)。実回転数差の絶対値Dが判定係数K以上であれば(ステップS10、NO)、クラッチ部C1・C2が著しく滑った状態にあるものと推定し、電磁比例減圧弁91・92には、クラッチ作動油圧を増加させる方向にクラッチ制御信号を送信する(ステップS12)。逆に、実回転数差の絶対値Dが判定係数Kよりも小さければ(ステップS10、YES)、クラッチ部C1・C2の摩擦エレメント間が互いに強く押圧された状態にあるものと推定し、電磁比例減圧弁91・92には、クラッチ作動油圧を減少させる方向にクラッチ制御信号を送信する(ステップS11)。
【0119】
以上の手順を繰り返すことで、摩擦エレメントが互いに滑るか滑らないかの限界状態で、クラッチ部C1・C2へのクラッチ作動油圧の圧力調整を常時行うことができる。このようにして求まるクラッチ作動油圧は、走行中に前後車輪3・6から受ける負荷トルクに対応するものであり、前記クラッチ作動油圧センサ208・209からの作動油圧信号から確認することができる。
【0120】
すなわち、デュアルクラッチ式変速装置2において、走行変速クラッチ82の駆動側部材であるクラッチハウジング82aの回転数と、走行変速クラッチ82の従動側部材である出力ギア27の回転数との差の絶対値である実回転数差の絶対値Dが、規定値である判定係数Kよりも小さい場合は、前記走行変速クラッチ82のクラッチ圧低下方向にクラッチ作動油圧を減少させ、実回転数差の絶対値Dが判定係数Kより大きい場合は、前記走行変速クラッチ82のクラッチ圧増加方向にクラッチ作動油圧を増加させるので、クラッチ作動油圧から、前後車輪3・6より受ける負荷トルクを把握することができ、上り坂をアクセル開度と車速のみで自動的に1速度段から2速度段に変速しようとするがトルク不足ですぐに1速度段に減速されるといった不具合も、クラッチ動作圧を予め確認して負荷トルクを把握し変速の可否を判断することにより防止することができ、高負荷走行中でも安定した変速性能を達成することができる。しかも、測定手段としては回転数とクラッチ作動圧を検出するセンサだけで済み、高価で複雑なトルクセンサが不要なため、部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができるのである。
【0121】
なお、前記クラッチ作動油圧センサ208・209の代わりに、前記電磁比例減圧弁91・92作動用の電流値を基にクラッチ作動油圧を推定してもよい。該電流値はクラッチ作動油圧に比例するものであり、専用の油圧センサが不要となるため、部品点数を減らして、部品コストの低減や、配置空間縮小によるデュアルクラッチ式変速装置2のコンパクト化を図ることができる。
【0122】
次に、以上のような作業車両1の別形態について、図15乃至図17により説明する。
図15に示す作業車両210は、前記作業車両1の後車軸駆動装置8における中央差動装置28を省いた上で、前車軸駆動装置5における通常の前輪差動装置25の代わりにツーウェイクラッチ式差動装置212を配設したものである。該ツーウェイクラッチ式差動装置212には、ローラータイプ、摩擦板タイプ等を適用することができ、後述するようにして二輪駆動・四輪駆動の切替が可能なものであればよく、その種類は特に限定されるものではない。
【0123】
作業車両210の後車軸駆動装置8aにおいては、前記走行出力軸17は、出力ギア27・ギア213を介して伝動軸214に接続され、該伝動軸214に前記駆動取出部24が直接接続されており、デュアルクラッチ式変速装置2からの変速動力が、そのまま前車軸駆動装置5aに出力されるようにしている。
【0124】
作業車両210の前車軸駆動装置5aにおいては、前記入力軸44の前端にベベルギア45が形成され、該ベベルギア45に、前記ツーウェイクラッチ式差動装置212のリングギア215が噛合されている。通常走行時には、該ツーウェイクラッチ式差動装置212のクラッチは切れており、リングギア215の回転を前車軸50・50に伝達しないようにして、後輪6のみの駆動力により、すなわち二輪駆動により、作業車両210が走行するようにしている。前輪3・後輪6のいずれかがスリップ状態になって前輪3の回転速度が下がり、リングギア215の回転速度に比べて遅くなると、ツーウェイクラッチ式差動装置212のクラッチが入り、前輪3・3に動力が伝達され、作業車両210を四輪駆動状態にする。このような二輪駆動・四輪駆動の切替を、前進時でも、後進時でも行えるように、ツーウェイクラッチとしている。
【0125】
すなわち、後車軸駆動装置8から前車軸駆動装置5に動力を作動伝達する差動装置である中央差動装置28を省くと共に、前車軸駆動装置5にツーウェイクラッチ式差動装置212設けたので、通常は後車軸駆動装置8のみによる二輪駆動とし、負荷トルクが増加して前輪3・後輪6のいずれかがスリップ状態になると前輪もクラッチが入って四輪駆動とすることができ、常時四輪駆動の場合に比べ、燃料消費が少なく経済的な走行を行うことができる。
【0126】
図16に示す作業車両211は、前記作業車両210の前車軸駆動装置5aはそのままで、後車軸駆動装置8aを、前後中央に配置したミッションケース8bと、後方に配置した後車軸駆動装置8cとに分割したものである。
【0127】
作業車両211のミッションケース8bには、前記デュアルクラッチ式変速装置2が、エンジン9が前方に来るように時計方向に90度回転した状態で収納されており、これに伴って前記伝動軸214は前後方向に延設されている。該伝動軸214の前端には、前記ユニバーサルジョイント22を介して伝動軸23が連結され、該伝動軸23は、前記作業車両210と同様に、前車軸駆動装置5a内のツーウェイクラッチ式差動装置212に連結されており、伝動軸214から前方に出力された変速動力が、ユニバーサルジョイント22、伝動軸23、ユニバーサルジョイント43、入力軸44、ベベルギア45、リングギア215を介してツーウェイクラッチ式差動装置212に入力され、該ツーウェイクラッチ式差動装置212により、前述のようにして前輪3・3に変速動力を差動伝達できるようにしている。
【0128】
一方、伝動軸214の後端には、ユニバーサルジョイント216を介して伝動軸217が連結され、該伝動軸217は、更にユニバーサルジョイント218を介して、後車軸駆動装置8c内で前記後輪差動装置26と略同じ構成の後輪差動装置219に連結されており、伝動軸214から後方に出力された変速動力が、ユニバーサルジョイント216、伝動軸217、ユニバーサルジョイント218、入力軸221、該入力軸221後端に固設したベベルギア222、該ベベルギア222に噛合するリングギア223を介して、後輪差動装置219に入力され、該後輪差動装置219により、後輪6・6に変速動力を差動伝達できるようにしている。なお、この後輪差動装置219には、前記作業車両1・210の後車軸駆動装置8・8aの場合と同様に、デフロック機構220が設けられている。
【0129】
更に、作業車両211では、出力用の前記伝動軸214を左部に有するミッションケース8bを機体幅方向で右寄りに配置するようにして、ユニバーサルジョイント43・22・216・218を介して前後の車軸駆動装置5a・8cを連結する前記伝動軸23・214・217が略直線状に配列するようにしている。
【0130】
すなわち、機体前方に前車軸駆動装置5aを配置し、機体後方に後車軸駆動装置8cを配置し、該前車軸駆動装置5aと後車軸駆動装置8cの間にミッションケース8bを配置し、該ミッションケース8bから前後方向への出力軸である伝動軸214と、該伝動軸214から前後の車軸駆動装置5a・8cへ動力伝達経路に、ユニバーサルジョイント43・22・216・218を介設した作業車両211において、前記伝動軸214と動力伝達経路が略同一直線上となるように、ミッションケース8bの機体左右位置を調整するので、ユニバーサルジョイント43・22・216・218で連結する軸間の角度を小さくすることができ、各軸間の速度差を小さくして動力伝達効率を向上させることができる。
【0131】
図17に示す作業車両224も、前記作業車両211と同様に、作業車両210の前車軸駆動装置5aはそのままで、後車軸駆動装置8aを、前後中央に配置したミッションケース8dと、後方に配置した後車軸駆動装置8eとに分割したものである。
【0132】
ただし、前記作業車両211とは異なり、前記デュアルクラッチ式変速装置2は回転されず、該デュアルクラッチ式変速装置2への入力軸11と前記エンジン9からのエンジン出力軸225との間にチェーン伝達機構235が介設されると共に、該エンジン9は、エンジン出力軸225が入力軸11に平行かつ左右方向と成るように配設されている。そして、前記チェーン伝達機構235は、入力軸11左端に固設したスプロケット228と、エンジン出力軸225左端に固設したスプロケット226と、これらスプロケット226・228間を前後方向に巻回するチェーン227とから構成されており、このようなチェーン伝達機構235を前記ミッションケース8dの左側に設けることにより、エンジン9をミッションケース8dの前側に配置することができ、エンジン9設置による車幅の増加を防止して、機体のコンパクト化を図ることができる。
【0133】
更に、前記デュアルクラッチ式変速装置2の伝動軸214の右端は右方に延設され、該延出部分には、カップリング235を介して伝動軸236が連結され、該伝動軸236は、前記作業車両1・210と同様に、ミッションケース8d側面に凸状に設けられた駆動取出ケース238内に突入されている。この突入部分の先端にはベベルギア237が固設されると共に、駆動取出ケース238の前部と後部にて機体前後方向に支持された出力軸21・230には、それぞれベベルギア229・231が固設され、該ベベルギア229・231は、いずれも前記ベベルギア237と噛合されている。
【0134】
そして、前記出力軸21の前端には、前記作業車両210・211と同様に、前車軸駆動装置5a内のツーウェイクラッチ式差動装置212に連結されており、伝動軸214から前方に出力された変速動力が、ユニバーサルジョイント22、伝動軸23、ユニバーサルジョイント43、入力軸44、ベベルギア45、リングギア215を介してツーウェイクラッチ式差動装置212に入力され、該ツーウェイクラッチ式差動装置212により、前述のようにして前輪3・3に変速動力を差動伝達できるようにしている。
【0135】
一方、前記出力軸230の後端には、前記作業車両211と同様に、ユニバーサルジョイント216を介して伝動軸217が連結され、該伝動軸217は、更にユニバーサルジョイント218を介して、後車軸駆動装置8e内のデフロック機構234付きの後輪差動装置233に連結されており、伝動軸214から後方に出力された変速動力が、ユニバーサルジョイント216、伝動軸217、ユニバーサルジョイント218、入力軸221、該入力軸221後端に固設したベベルギア222、該ベベルギア222に噛合するリングギア232を介して、後輪差動装置233に入力され、該後輪差動装置233により、後輪6・6に変速動力をロック可能に差動伝達するようにしている。
【0136】
なお、この後輪差動装置233は、前記作業車両211の後輪差動装置219の各要素を左右逆に配置した構成とし、後輪差動装置233の前部右側に配置した入力軸221から動力が入力されるようにしている。これにより、本作業車両224のように、前後の車軸駆動装置5a・8eへの動力取出位置が、作業車両211とは異なりミッションケース8dの右側にある場合であっても、ユニバーサルジョイント43・22・216・218を介して前後の車軸駆動装置5a・8eを連結する前記伝動軸23・21・230・217が略直線状に配列するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、各奇数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第一クラッチと、各偶数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第二クラッチとを備え、アクセル開度と車速に応じて、前記第一クラッチ・第二クラッチの入切で前記駆動列群を自動選択し、エンジンからの動力を変速して車軸に伝達すると共に、前記奇数速度段・偶数速度段間での速度段切替時には、前記第一クラッチと第二クラッチのうちの、一方の離間作動と他方の接合作動とを時間的にオーバーラップさせる、全てのデュアルクラッチ式変速装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明に関わる作業車両1の全体構成を示す平面図である。
【図2】後車軸駆動装置の動力伝達構成を示すスケルトン図である。
【図3】後車軸駆動装置の側面図である。
【図4】図3のA−A矢視断面図である。
【図5】図4のB−B矢視断面図である。
【図6】シフタ作動機構を示す後車軸駆動装置後部の背面断面図である。
【図7】電磁弁支持体を示す図6のC−C矢視図である。
【図8】作業車両1の油圧回路図である。
【図9】デュアルクラッチ式変速装置の変速制御に関するブロック図である。
【図10】変速操作パネルの平面図である。
【図11】各走行モードにおける走行変速クラッチの入切とシフタの位置を示す説明図であって、図11(a)は通常走行モードにおける走行変速クラッチの入切とシフタの位置を示す説明図、図11(b)はリバースモードにおける走行変速クラッチの入切とシフタの位置を示す説明図である。
【図12】変速制御手順を示す模式図である。
【図13】変速点特性モデル図である。
【図14】別形態の油圧ポンプ構成を示す部分油圧回路図である。
【図15】別形態の作業車両210の全体構成を示す平面図である。
【図16】別形態の作業車両211の全体構成を示す平面図である。
【図17】別形態の作業車両224の全体構成を示す平面図である。
【図18】ブレーキアシスト制御の手順を示すフローチャート図である。
【図19】切替ポイント制御の手順を示すフローチャート図である。
【図20】走行負荷検出機構に関する部分ブロック図である。
【図21】走行負荷検出制御の手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0139】
2 デュアルクラッチ式変速装置
4・7 車軸
9 エンジン
C1 第一クラッチ
C2 第二クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各奇数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第一クラッチと、各偶数速度段に必要な駆動列群への動力断接用の第二クラッチとを備え、アクセル開度と車速に応じて、前記第一クラッチ・第二クラッチの入切で前記駆動列群を自動選択し、エンジンからの動力を変速して車軸に伝達すると共に、前記奇数速度段・偶数速度段間での速度段切替時には、前記第一クラッチと第二クラッチのうちの、一方の離間作動と他方の接合作動とを時間的にオーバーラップさせるデュアルクラッチ式変速装置において、前進用の前記速度段のうちの一つの前進速度段と、後進速度段との間を自在に選択可能なリバースモードを備える変速制御構成としたことを特徴とするデュアルクラッチ式変速装置。
【請求項2】
前記第一クラッチと第二クラッチのうち前記後進速度段では切状態にある方のクラッチにより動力伝達を行う速度段の中から、最も低い車速を有する速度段を、前記リバースモードにおける前進速度段として選択することを特徴とする請求項1記載のデュアルクラッチ式変速装置。
【請求項3】
前記前進速度段は、前進1速とすることを特徴とする請求項2記載のデュアルクラッチ式変速装置。
【請求項4】
前記前進速度段は、前進2速とすることを特徴とする請求項2記載のデュアルクラッチ式変速装置。
【請求項5】
前記リバースモードにおいては、前記第一クラッチと第二クラッチが前後進切替用のクラッチを兼ねることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちのいずれか一項に記載のデュアルクラッチ式変速装置。
【請求項6】
前記リバースモードにおいては、前記第一クラッチまたは第二クラッチの一方を入状態とし他方を切状態とするだけで、前後進を切り替えることを特徴とする請求項5記載のデュアルクラッチ式変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−47223(P2009−47223A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212996(P2007−212996)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】