説明

データスライス回路及びデータ復元回路

【課題】復調信号の最初のパルスから確実にデータを復元することが可能なデータスライ
ス回路を提供する。
【解決手段】データスライス回路3は、レベルシフト回路5と基準電圧生成回路6とコン
パレータ7とにより構成されている。レベルシフト回路5は、入力信号SIの電圧レベル
を一定電圧レベルだけシフトしたレベルシフト電圧SLを生成し、基準電圧生成回路6は
、入力信号のピーク電圧及びボトム電圧を分圧した基準電圧SBを生成する。コンパレー
タ7は、レベルシフト電圧SLと基準電圧SBとを比較した結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、無線信号を復調した復調信号を2値化してデータを復元するため
のデータスライス回路及びデータ復元回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線信号から情報(送信データ)を復元するデータ復元回路には、無線信号を復
調する復調回路と該復調回路で復調した復調信号を含む入力信号を2値化して出力信号を
出力するデータスライス回路とを備えたものがあり、このデータスライス回路による2値
化の手法として以下のようなものがある。
【0003】
(1)予め設定した一定の基準電圧と入力信号とを比較して2値化する。
(2)予め入力された入力信号を積分した基準電圧と入力信号とを比較して2値化する

【0004】
(3)予め入力された入力信号のピーク電圧及びボトム電圧の中間電圧と入力信号とを
比較して2値化する(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−86571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記(1)の手法は、予め設定した基準電圧と入力信号とを比較するた
め、復調信号の最初のパルスからデータを復元したり0或いは1のデータが連続する波形
の復調信号からデータを復元したりすることができるが、ノイズ等の影響により入力信号
が変動するとデータを復元することができない場合がある。上記(2)の手法は、入力信
号が変動した場合でも上記(1)の手法より精度よく復元することができるが、復調信号
が所定時間入力された後に基準電圧が設定されるため、復調信号が入力される前の状態に
おける出力信号のレベルを確定することができず、復調信号の最初のパルスからデータを
復元することができない。上記(3)の手法は、入力信号が変動したり、0或いは1のデ
ータが連続する場合でもデータを復元することができるが、上記(2)の手法と同様、復
調信号が所定時間入力された後に中間電圧が設定されるため、復調信号の最初のパルスか
らデータを復元することができない。
【0006】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、復調信号
の最初のパルスから確実にデータを復元することが可能なデータスライス回路及びデータ
復元回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデータスライス回路は、復調信号を含む入力信号を2値化して前記復調信号の
元となった送信データを復元するためのデータスライス回路であって、前記入力信号の電
圧レベルを一定電圧レベルだけシフトしたレベルシフト電圧を生成するレベルシフト回路
と、前記入力信号のピーク電圧とボトム電圧との間を分圧した基準電圧を生成する基準電
圧生成回路と、前記レベルシフト電圧と前記基準電圧とを比較してその比較結果を出力す
るコンパレータとを備える。
【0008】
この構成によれば、入力信号に復調信号が含まれる前の状態におけるコンパレータの出
力を確定することが可能となり、入力信号に含まれる復調信号の最初のパルスから確実に
データを復元することができる。
【0009】
また、このデータスライス回路において、前記レベルシフト回路は、前記入力信号の流
れに対して順方向に挿入され前記レベルシフト電圧を出力するダイオードと、前記ダイオ
ードに前記入力信号が常に流れるように接続された抵抗とを備えてもよい。
【0010】
この構成によれば、ダイオードを入力信号の流れに対して順方向に挿入し、ダイオード
に入力信号が常に流れるように抵抗を接続するだけで、入力信号の電圧レベルをダイオー
ドの順方向電圧分だけシフトしたレベルシフト電圧を生成することができる。よって、例
えば定電圧源が必要な他のレベルシフト回路を用いる場合と比較して、単純で安価な構成
とすることができる。
【0011】
また、このデータスライス回路において、前記基準電圧生成回路は、前記入力信号のピ
ーク電圧を保持するピークホールド回路と、前記入力信号のボトム電圧を保持するボトム
ホールド回路と、前記ピーク電圧及び前記ボトム電圧の中間電圧を生成し前記基準電圧と
して出力する分圧回路とを備えてもよい。
【0012】
この構成によれば、分圧回路により、入力信号の変動を加味した基準電圧が生成される
ため、確実にデータを復元することができる。
本発明のデータ復元回路は、信号を復調する復調回路と、該復調回路により復調された
復調信号を含む入力信号を2値化して前記復調信号の元となった送信データを復元するデ
ータスライス回路とを備えたデータ復元回路であって、前記データスライス回路は、前記
入力信号の電圧レベルを一定電圧レベルだけシフトしたレベルシフト電圧を生成するレベ
ルシフト回路と、前記入力信号のピーク電圧とボトム電圧との間を分圧した基準電圧を生
成する基準電圧生成回路と、前記レベルシフト電圧と前記基準電圧とを比較してその比較
結果を出力するコンパレータとを備える。
【0013】
この構成によれば、入力信号に復調信号が含まれる前の状態におけるコンパレータの出
力を確定することが可能となり、入力信号に含まれる復調信号の最初のパルスから確実に
データを復元することができる。
【0014】
また、このデータ復元回路において、前記レベルシフト回路は、前記入力信号の流れに
対して順方向に挿入され前記レベルシフト電圧を出力するダイオードと、前記ダイオード
に前記入力信号が常に流れるように接続された抵抗とを備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、ダイオードを入力信号の流れに対して順方向に挿入し、ダイオード
に入力信号が常に流れるように抵抗を接続するだけで、入力信号の電圧レベルをダイオー
ドの順方向電圧分だけシフトしたレベルシフト電圧を生成することができる。よって、例
えば定電圧源が必要な他のレベルシフト回路を用いる場合と比較して、単純で安価な構成
とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
本実施の形態のデータ復元回路1は、例えば電子ペーパーや液晶ディスプレイ等の表示
装置に内蔵され、ホストコンピュータ等の送信機から送信された無線信号を受信して該無
線信号の元となった画像データ等の送信データを含む送信信号SD(図2及び図3参照)
を復元するものである。
【0017】
図1に示すように、データ復元回路1の復調回路2には、ホストコンピュータ等の送信
機(図示略)から送信された無線信号を受信する受信アンテナ4が接続されている。復調
回路2は、該受信アンテナ4が受信した無線信号を復調し、この復調した復調信号を含む
入力信号SIをデータスライス回路3に出力する。
【0018】
入力信号SIは、データスライス回路3のレベルシフト回路5を構成するダイオードD
1のアノードに供給される。ダイオードD1は、例えばPN接合ダイオードやショットキ
ーバリアダイオードであり、カソードは抵抗R1を介して接地されている。ダイオードD
1のカソードと抵抗R1との間のノードには、コンパレータ7の入力端子が接続されてい
る。従って、レベルシフト回路5は、入力信号SIの電圧レベルをダイオードD1の順方
向電圧Vth分だけシフト(降下)したレベルシフト電圧SLを生成し、そのレベルシフ
ト電圧SLをダイオードD1のカソードと抵抗R1の第1端子との間のノードから出力す
る。このレベルシフト電圧SLは、コンパレータ7の非反転入力端子に供給される。
【0019】
また、入力信号SIは、基準電圧生成回路6のピークホールド回路8を構成するダイオ
ードD2のアノードに供給される。ダイオードD2は、例えばPN接合ダイオードやショ
ットキーバリアダイオードであり、カソードはコンデンサC1に接続されている。コンデ
ンサC1は、第1端子が前記ダイオードD2に接続され、第2端子が接地されている。従
って、ピークホールド回路8は、コンデンサC1に入力信号SIの最大電圧(ピーク電圧
)Vpを保持し、そのピーク電圧VpをダイオードD2のカソードとコンデンサC1の第
1端子との間のノードから出力する。
【0020】
また、入力信号SIは、基準電圧生成回路6のボトムホールド回路9を構成するダイオ
ードD3のカソードに供給される。ダイオードD3は、例えばPN接合ダイオードやショ
ットキーバリアダイオードであり、アノードはコンデンサC2に接続されている。コンデ
ンサC2は、第1端子が前記ダイオードD3に接続され、第2端子が接地されている。従
って、ボトムホールド回路9は、コンデンサC2に入力信号SIの最小電圧(ボトム電圧
)Vbを保持し、そのボトム電圧VbをダイオードD3のアノードとコンデンサC2の第
1端子との間のノードから出力する。
【0021】
上記ピーク電圧Vp及びボトム電圧Vbは、分圧回路10に供給される。ピーク電圧V
pは、分圧回路10を構成する第1分圧抵抗R2の第1端子に供給され、第1分圧抵抗R
2の第2端子は第2分圧抵抗R3の第1端子に接続され、第2分圧抵抗R3の第2端子に
はボトム電圧Vbが供給される。分圧回路10は、第1分圧抵抗R2と第2分圧抵抗R3
の抵抗値によりピーク電圧Vpとボトム電圧Vbとの間を分圧した分圧電圧を基準電圧S
Bとして出力する。尚、本実施の形態において、第1分圧抵抗R2の抵抗値と第2分圧抵
抗R3の抵抗値は同じ値に設定されているため、分圧回路10は、ピーク電圧Vpとボト
ム電圧Vbとの中間電圧を基準電圧SBとして出力する。この基準電圧SBは、コンパレ
ータ7の反転入力端子に供給される。
【0022】
尚、ピークホールド回路8は、第1及び第2分圧抵抗R2,R3の抵抗値及びコンデン
サC1,C2の容量により決定される時定数に応じた速さで、コンデンサC1に蓄積した
電荷を放電し、該コンデンサC1が放電した電荷は、ボトムホールド回路9のコンデンサ
C2に蓄積される。従って、ピークホールド回路8は、入力信号SIの最大電圧が変動す
る度に該最大電圧に応じた新たなピーク電圧Vpを出力し、ボトムホールド回路9は、入
力信号SIの最小電圧が変動する度に該最小電圧に応じた新たなボトム電圧Vbを出力す
る。
【0023】
このように構成されたデータ復元回路1の作用を図2及び図3を用いて説明する。
無線信号を受信する前(入力信号SIに復調信号が含まれる前)の状態において、レベ
ルシフト回路5は、入力信号SIの電圧レベルを一定電圧レベルVthだけシフト(降下
)したレベルシフト電圧SLを出力する。このとき、ピークホールド回路8のピーク電圧
Vp及びボトムホールド回路9のボトム電圧Vbは、入力信号SIの電圧レベルと略等し
くなり、分圧回路10は、入力信号SIの電圧レベルと略等しい分圧電圧を基準電圧SB
として出力する。従って、図2に示すように、受信アンテナ4が無線信号を受信する前の
期間T1において、コンパレータ7は、ロウレベルの出力信号SOを常に出力する。
【0024】
受信アンテナ4を介して無線信号を受信すると、復調回路2からデータスライス回路3
に復調信号が入力される。復調信号の最初のパルスの入力に伴い、入力信号SIの電圧レ
ベルが上昇すると、レベルシフト回路5は、入力信号SIの電圧レベルよりもダイオード
D1の順方向電圧Vth分だけ低いレベルシフト電圧SLを出力する。このとき、ピーク
ホールド回路8のダイオードD2に電流が流れ、コンデンサC1が保持するピーク電圧V
pは上昇する。一方、ボトムホールド回路9のダイオードD3に電流は流れないため、コ
ンデンサC2が保持するボトム電圧Vbは、復調信号が入力される前の状態に保持される
。従って、分圧回路10は、レベルシフト電圧SLよりも低い分圧電圧(ピーク電圧Vp
とボトム電圧Vbとの中間電圧)を基準電圧SBとして出力し、コンパレータ7は、ハイ
レベルの出力信号SOを出力する。よって、入力信号SIに含まれる復調信号の最初のパ
ルスからデータが復元される。
【0025】
また、ピークホールド回路8は、入力信号SIの最大電圧が変動する度に該最大電圧に
応じた新たなピーク電圧Vpを出力し、ボトムホールド回路9は、入力信号SIの最小電
圧が変動する度に該最小電圧に応じた新たなボトム電圧Vbを出力しており、分圧回路1
0は、入力信号SIの変動に応じた基準電圧SBを出力する。従って、図3に示すように
、ノイズの影響等により入力信号SIが変動した場合でもデータが復元される。
【0026】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)レベルシフト回路5は、入力信号SIの電圧レベルを一定電圧レベルだけシフト
したレベルシフト電圧SLを生成し、基準電圧生成回路6は、入力信号SIのピーク電圧
Vpとボトム電圧Vbとの間を分圧した基準電圧SBを生成する。そして、コンパレータ
7は、レベルシフト電圧SLと基準電圧SBとを比較してその比較結果を出力する。よっ
て、入力信号SIに復調信号が含まれる前の状態におけるコンパレータ7の出力を確定す
ることが可能となり、入力信号SIに含まれる復調信号の最初のパルスから確実にデータ
を復元することができる。
【0027】
(2)ダイオードD1を入力信号SIの流れに対して順方向に挿入し、ダイオードD1
に入力信号SIが常に流れるように抵抗R1を接続するだけで、入力信号SIの電圧レベ
ルをダイオードD1の順方向電圧Vth分だけシフトしたレベルシフト電圧SLを生成す
ることができる。よって、例えば定電圧源が必要な他のレベルシフト回路を用いる場合と
比較して、単純で安価な構成とすることができる。
【0028】
(3)分圧回路10により、入力信号SIの変動を加味した基準電圧SBが生成される
ため、入力信号SIに含まれる復調信号が変動した場合でも確実にデータを復元すること
ができる。
【0029】
(4)入力信号SIに含まれる復調信号の最初のパルスから確実にデータを復元するこ
とができるため、復調信号の元となる無線信号の送信時間を短くすることが可能となり、
通信に必要な時間を短くすることができる。
【0030】
なお、上記実施の形態では、以下の態様に変更した変形例を採用してもよい。
・上記実施の形態では、データ復元回路1は、電子ペーパ等の薄型の液晶ディスプレイ
に内蔵され、画像データ等の送信データを復元するものとしたが、このような態様に限定
されず、例えば、リモコン等から送信されるIDを受信するエンジンスターターの受信機
等、送受信されるデータが短い送受信機に搭載してもよい。また、通信頻度の高い送受信
機の受信機や、複数の送信機から送信される無線信号を受信する受信機に搭載され、デー
タを復元するものてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の形態のデータ復元回路のブロック図。
【図2】本実施の形態のデータスライス回路の効果を説明するための波形図。
【図3】本実施の形態のデータスライス回路の効果を説明するための波形図。
【符号の説明】
【0032】
1…データ復元回路、2…復調回路、3…データスライス回路、5…レベルシフト回路
、6…基準電圧生成回路、7…コンパレータ、8…ピークホールド回路、9…ボトムホー
ルド回路、10…分圧回路、D1…ダイオード、R1…抵抗、SB…基準電圧、SI…入
力信号、SL…レベルシフト電圧、SO…出力信号、Vb…ボトム電圧、Vp…ピーク電
圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
復調信号を含む入力信号を2値化して前記復調信号の元となった送信データを復元する
ためのデータスライス回路であって、
前記入力信号の電圧レベルを一定電圧レベルだけシフトしたレベルシフト電圧を生成す
るレベルシフト回路と、
前記入力信号のピーク電圧とボトム電圧との間を分圧した基準電圧を生成する基準電圧
生成回路と、
前記レベルシフト電圧と前記基準電圧とを比較してその比較結果を出力するコンパレー
タと
を備えたことを特徴とするデータスライス回路。
【請求項2】
請求項1に記載のデータスライス回路において、
前記レベルシフト回路は、
前記入力信号の流れに対して順方向に挿入され前記レベルシフト電圧を出力するダイオ
ードと、
前記ダイオードに前記入力信号が常に流れるように接続された抵抗と
を備えたことを特徴とするデータスライス回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデータスライス回路において、
前記基準電圧生成回路は、
前記入力信号のピーク電圧を保持するピークホールド回路と、
前記入力信号のボトム電圧を保持するボトムホールド回路と、
前記ピーク電圧及び前記ボトム電圧の中間電圧を生成し前記基準電圧として出力する分
圧回路と
を備えたことを特徴とするデータスライス回路。
【請求項4】
信号を復調する復調回路と、
該復調回路により復調された復調信号を含む入力信号を2値化して前記復調信号の元と
なった送信データを復元するデータスライス回路とを備えたデータ復元回路であって、
前記データスライス回路は、
前記入力信号の電圧レベルを一定電圧レベルだけシフトしたレベルシフト電圧を生成す
るレベルシフト回路と、
前記入力信号のピーク電圧とボトム電圧との間を分圧した基準電圧を生成する基準電圧
生成回路と、
前記レベルシフト電圧と前記基準電圧とを比較してその比較結果を出力するコンパレー
タと
を備えたことを特徴とするデータ復元回路。
【請求項5】
請求項4に記載のデータ復元回路において、
前記レベルシフト回路は、
前記入力信号の流れに対して順方向に挿入され前記レベルシフト電圧を出力するダイオ
ードと、
前記ダイオードに前記入力信号が常に流れるように接続された抵抗と
を備えたことを特徴とするデータ復元回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−236461(P2008−236461A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74127(P2007−74127)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】