説明

データセンターのフロア構造およびデータセンター

【課題】ファシリティ管理者によるケーブル配線等のファシリティの管理を容易とし、サーバラックに対する効率的な空調を可能とし、ファシリティ管理者とIT管理者の動線を分離することでセキュリティを向上させるデータセンターのフロア構造を提供する。
【解決手段】床スラブ101から所定の高さの位置に格子状に配置した大引鉄骨111および根太鉄骨112からなる支持部材と、支持部材の上部に配置したフリーアクセスフロア120とを有し、サーバエリア20には、複数のサーバラック200が、間にメンテナンス通路を構成するように列状に配置され、床下エリア10は、データセンターの設備に係るメンテナンス作業を人が入って行うことが可能な高さを有し、さらに、床下エリア10には、メンテナンス通路に設けられた開口部を通してサーバエリア20に冷風を供給する給気ダクト310を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データセンターの構築技術に関し、特に、多数のサーバを収納する大規模データセンターのフロア構造およびデータセンターに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
データセンターでは、多数のサーバやルータ等のICT(Information and Communication Technology)機器(以下では単に「サーバ」と記載する場合がある)を、サーバラック等を利用して収納する。サーバラック等を設置するコンピュータ室のフロア構造は、一般的に、各階層における床スラブ等の床面の上に、いわゆるフリーアクセスフロアによって二重床を構成し、その上にサーバラック等が複数配置される構造となっている。
【0003】
ここで、サーバラックおよび収納されたサーバに対する電源や通信の供給のためのケーブルは、主に、本来の床面とフリーアクセスフロアによって上げ底にした床面との間の床下の空間を利用してサーバラックまで配線される。
【0004】
また、サーバラックに収納された多数のサーバは、それぞれが熱を発するため、これを排出して冷却する必要があるが、このための冷風は、床下の空間から供給する方式が主流である。空調装置等から床下の空間に供給された冷風は、フリーアクセスフロアに設けられた開口部から床上に流れ、サーバラックの前面(もしくは背面や側面)側からサーバに供給されて、サーバラックの背面(もしくは前面や側面)側から排気される。排気された熱風は、天井面の排気グリル等から天井裏に流れるなどにより、空調装置等に還流する。
【0005】
このような、フリーアクセスフロアによる二重床構造においては、床下のケーブルルートが煩雑化し、また、開口部以外は密閉されていて床下を直接視認できないことから、ケーブル等の敷設や管理には多大な負荷がかかっている。また、床下のケーブルルートが煩雑化することにより、煩雑化したケーブルが空調装置等から供給された冷風の風道を塞いで空調効率を低下させ、温度条件を悪化させる場合も生じている。このような状況は、例えばブレードサーバなど、近年のサーバ収納の高密度化によってさらに生じ易くなっている。
【0006】
このような課題点に対して、例えば、特開2002−155636号公報(特許文献1)には、建屋の階高に対して2〜3階層を吹抜けに構成し、この中に鉄骨等の架台にてサーバなどの機器を3〜4階層配置可能な通気性良好な積層ラック型架構を配し、当該架構フロア上に区画のメンテナンス通路プレートは通気性良好なグレーチング等で構成すると共に当該通路の設置機器寄りをグレーチングまたはエキスパンドメタルの通気性開閉蓋にて蓋された配線スペースとすることで、従来に比べ機器の設置に必要な建屋スペースを縮小し、かつ、機器排熱気流確保のもと配線の状態がそのまま確認できるので、メンテナンスが容易となるデータセンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−155636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
データセンターにおける、従来の二重床構造のコンピュータ室では、上述したように、サーバ収納の高密度化に伴って、床下空間におけるケーブルルートが煩雑化し、適切なケーブルルートおよび風道の確保が困難となっている。この床下空間は、本来であればデータセンターのファシリティ管理者等によって適切に管理されるべき領域であるが、二重床構造の床下高は、約30cm〜1mと低いため人が入って作業することは困難であり、また、開口部以外は密閉されており内部を視認することもできないため、実際は管理できていないのが現状である。
【0009】
また、ケーブルルートの煩雑化への対応と、空調のための風道の確保の要求に伴って、二重床の高さは高くなってきており、さらに、サーバ収納の高密度化による重量の増加に伴って、二重床の単位面積あたりの積載荷重が増加してきている。これらの状況は、フリーアクセスフロアの性能向上を要求し、コスト増につながっている。
【0010】
また、上述したように、床下空間から供給され、サーバラックに収納されたサーバを冷却して排気された熱風は、多くの場合、天井などのサーバラックの上部の空間を利用して回収されるが、サーバラックの配置や梁などの構造物が障害となり、効率よく排気できない場合が生じている。
【0011】
一方、特許文献1に記載されたデータセンターの構造では、二重床構造を廃し、通気性良好な積層ラック型架構にサーバを積層し、メンテナンス通路に配線スペースを設けることで、機器排熱気流を確保しつつ配線の状態を確認できるようにして、メンテナンス性を向上させている。
【0012】
しかしながら、近年のICT機器では電源・通信共に大量のケーブルが接続されるため、ある程度自由に敷設ルートを確保できることが必要であるが、特許文献1に記載されたデータセンターの構造における、メンテナンス通路に設けられた配線スペースでは、大量のケーブルを収容する際の容量の確保が困難であるとともに、頻繁に発生するサーバの更新やメンテナンスに柔軟性を持って対応することが困難となる可能性が高い。
【0013】
また、近年ではICT機器の発熱量は従来と比較して非常に大きく、さらに、サーバ収納の高密度化に伴い、データセンター内でも局所的に大きな空調容量を必要とする箇所が散在する状況が見られる。このような場合、特許文献1に記載されたデータセンターの構造のように、大部屋を空調するよりも、サーバの負荷に合わせてスポット的に空調を供給することが可能である方が望ましい。なお、特許文献1に記載されたデータセンターの構造では、下段のサーバラックからの排熱を上段に給気することになり、上段のサーバラックの冷却効率が大きく低下する可能性がある。
【0014】
また、従来の二重床構造のコンピュータ室、および特許文献1に記載されたデータセンターの構造ともに、サーバ機器の管理/メンテナンスを行うIT管理者等と、データセンターの設備の管理/メンテナンスを行うファシリティ管理者等との作業エリアが分離されておらず、セキュリティの観点からは問題のある構造となっている。
【0015】
そこで、本発明の目的は、ファシリティ管理者によるケーブル配線等のファシリティの管理/メンテナンスを容易とし、多数のサーバを収納したサーバラックに対する効率的な空調を可能とし、ファシリティ管理者とIT管理者の動線を分離することでセキュリティを向上させるデータセンターのフロア構造およびデータセンターを提供することにある。
【0016】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0018】
本発明の代表的な実施の形態によるデータセンターのフロア構造は、床スラブから所定の高さの位置に格子状に配置した鉄骨からなる支持部材と、前記支持部材の上部に配置したフリーアクセスフロアとを有し、前記フリーアクセスフロアの上部のサーバエリアには、前記フリーアクセスフロアの上に、前記サーバを収納する複数のサーバラックが、間にメンテナンス通路を構成するように列状に配置され、前記フリーアクセスフロアの下部の床下エリアは、前記サーバに接続されるケーブルの配線を含む前記データセンターの設備に係るメンテナンス作業を、人が入って行うことが可能な高さを有し、さらに、前記床下エリアには、1つ以上の前記メンテナンス通路の下部に、前記メンテナンス通路に沿って、前記メンテナンス通路の前記フリーアクセスフロアに設けられた開口部を通して前記サーバエリアに空調装置からの冷風を供給する給気ダクトを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
本発明の代表的な実施の形態によれば、データセンターのコンピュータ室のフロア構造を、床下空間にファシリティ管理者が入って作業を行うことが可能な高床式構造とし、各種配線・配管等のファシリティの管理や工事等は全て床下から行うようにすることで、ファシリティ管理者によるファシリティの管理/メンテナンスを容易とすることができるとともに、IT管理者との動線を分離してセキュリティを向上させることができる。また、サーバラックに対する給気/排気にはダクト等を用いることで、必要な部分に対して効率的な空調を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1であるデータセンターにおけるコンピュータ室のフロア構造の例について概要を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態2であるデータセンターにおけるコンピュータ室のフロア構造の例について概要を示した図である。
【図3】従来のデータセンターにおけるコンピュータ室のフロア構造の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下においては、本発明の特徴を分かり易くするために、従来の技術と比較して説明する。
【0023】
<概要>
図3は、従来のデータセンターにおけるコンピュータ室のフロア構造の例について概要を示した図である。従来のデータセンターにおけるコンピュータ室では、上述したように、一般的にはフリーアクセスフロア120(二重床)の上部(サーバエリア20)に複数のサーバラック200が、間にメンテナンス通路を構成するように列状に並べて配置される構造となっている。図3の例では、各列の奥行き方向に複数のサーバラック200が並べられているものとする。
【0024】
ここで、サーバラック200およびサーバラック200に収納された複数のサーバに対する電源を供給するための電源ケーブル410は、フリーアクセスフロア120の下部の床下エリア10を利用してサーバラック200まで配線される。
【0025】
図3の例では、電源ケーブル410は、サーバラック200の各列の下部の床下エリア10で、敷設用のラダー等を利用してまとめた状態で配線されているが、ラダー等を用いず床下エリア10で床スラブ101上に直接敷設して配線される場合もある。また、各サーバに対する通信を供給するための通信ケーブル420は、敷設用のラダー等を利用して、サーバラック200の各列の上部で配線されているが、電源ケーブル410と同様に床下エリア10に配線されている場合もある。
【0026】
また、サーバラック200に収納された多数のサーバは、それぞれが熱を発するため、これを排出して冷却する必要があるが、冷却のための冷風は、床下エリア10から供給する方式が主流である。空調装置(図示しない)等から床下エリア10に供給された冷風は、メンテナンス通路部分のフリーアクセスフロア120に設けられた開口部からサーバエリア20に供給され、サーバラック200の前面(もしくは背面や側面)側からサーバに供給されて、サーバラック200の背面(もしくは前面や側面)側から排気される。排気された熱風は、天井面150の排気グリル等から天井裏エリア30に流れるなどにより、空調装置等に還流する。
【0027】
ここで、床下エリア10には電源ケーブル410などの各種配線や配管などが敷設されており、本来であればデータセンターのファシリティ管理者520によって適切に管理されるべき領域である。しかし、床下エリア10は、高さが約30cm〜1mと低いため人が入って作業することは困難であり、また、冷風を通すための開口部以外はフリーアクセスフロア120によって密閉されており内部を視認できないため、実際は管理できていないのが現状である。
【0028】
また、近年のサーバ収納の高密度化によって、床下エリア10における電源ケーブル410などのケーブルルートが煩雑化することにより、煩雑化したケーブルが床下エリア10での冷風の風道を塞いで空調効率を低下させ、温度条件を悪化させる場合も生じている。また、サーバラック200から天井裏エリア30に排気された熱風についても、サーバラック200の配置や、天井スラブ102における梁などの構造物が障害となり、効率よく排気できない場合が生じている。
【0029】
さらに、サーバラック200に収納されたサーバの管理/メンテナンスを行うIT管理者510と、ファシリティ管理者520がともにサーバエリア20で作業を行う状態となることから、両者の作業エリアが物理的に分離されておらず、セキュリティの観点からは問題のある構造となっている。
【0030】
そこで、本発明の一実施の形態であるデータセンターのフロア構造は、床下エリア10を高くとってファシリティ管理者520が入って作業を行うことが可能な高床式構造とし、各種配線や配管等のファシリティの管理や工事等は全て床下エリア10において行うようにすることで、ファシリティ管理者520によるファシリティの管理/メンテナンスを容易とするものである。
【0031】
また、IT管理者510が作業を行う領域と、ファシリティ管理者520が作業を行う領域とを、サーバエリアと床下エリアとに分離することでセキュリティの向上を図り、さらに、サーバラック200に対する給気/排気にはダクトやアイルキャップなどを用いることで、必要な部分に対して効率的な空調を行うことを可能とするものである。
【0032】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1であるデータセンターにおけるコンピュータ室のフロア構造の例について概要を示した図である。本実施の形態のデータセンターのフロア構造では、図3に示した従来のデータセンターにおけるフロア構造の例と異なり、フリーアクセスフロア120を床スラブ101上に配置するのではなく、例えば、床スラブ101から所定の高さに格子状に配置した大引鉄骨111および根太鉄骨112からなる格子(以下では単に「支持部材」という場合がある)の上に配置することにより、床下エリア10として、ファシリティ管理者520が入って作業することが可能な領域を確保した高床式構造としている。
【0033】
なお、支持部材を配置する高さ(床スラブ101上面から大引鉄骨111(支持部材)の底面までの高さ)、および床下エリア10の高さは、ファシリティ管理者520が管理/メンテナンス作業を行うことが十分に可能な高さであれば、特に制限はされないが、例えば、図1の例に示すように、床スラブ101から1500mm以上の高さに支持部材を配置し、床下エリア10が2500mm以下(望ましくは2000mm程度)の高さとなるように、フリーアクセスフロア120の高さなどを調整するのが効果的である。
【0034】
このように床下エリア10を高くとった高床式構造とすることにより、床下エリア10に電源ケーブル410などの配線や配管などを敷設する場合であっても、これらを含むファシリティの管理や工事は、フリーアクセスフロア120を取り外したりすることなく、全て床下エリア10においてファシリティ管理者520が容易に行うことができる。
【0035】
なお、図1の例では、図3の例と同様に、フリーアクセスフロア120の上に複数のサーバラック200が、間にメンテナンス通路を構成するように列状に並べて配置される構造となっている。また、電源ケーブル410は、敷設用のラダー等を利用して床下エリア10に配線し、通信ケーブル420は、敷設用のラダー等を利用してサーバラック200の上部で配線する構成としている。通信ケーブル420については、電源ケーブル410と同様に床下エリア10に配線してもよい。
【0036】
本実施の形態のデータセンターのフロア構造では、さらに、床下エリア10において、1つ以上のメンテナンス通路の下部に、給気ダクト310をメンテナンス通路に沿って(図1における奥行き方向に)配置し、空調装置(図示しない)からの冷風を、メンテナンス通路部分のフリーアクセスフロア120に設けられた開口部を通してサーバエリア20に供給する。
【0037】
これにより、床下エリア10におけるケーブルルートや他の設置物・構造物等に風道を妨げられることなく、サーバラック200に対して効率的な冷風の供給を行うことが可能となる(支持部材は格子状であるため、給気ダクト310からの冷風を妨げることはない)。また、負荷の高いサーバラック200(の列)に対してスポット的に冷風を供給するよう制御することも可能となる。なお、フリーアクセスフロア120の開口部の下部の位置に、給気ダクト310ではなく空調装置本体を直接配置するようにしてもよい。
【0038】
また、サーバエリア20において、サーバラック200の列の上部(例えば、フリーアクセスフロア120による床面から3000mm程度の高さ)には、例えば、冷風が供給されるメンテナンス通路(コールドアイル)の上部を囲うようにアイルキャップ130を設けている。これにより、床下エリア10から供給された冷風と、サーバラック200から排気された熱風とが分離されるようにし、空調効率を向上させている。なお、床面にフリーアクセスフロア120を用いて開口部以外を密閉することにより、IT管理者510の歩行等を容易にするとともに、冷風と熱風との分離を維持することができる。
【0039】
サーバラック200から排気された熱風は、例えば、アイルキャップ130の上部の天井裏エリア30を排気チャンバーとして排気され、空調装置に還流する。なお、図1の例では、給気ダクト310から冷風を供給されるメンテナンス通路(コールドアイル)と、サーバラック200から熱風が排気されるメンテナンス通路(ホットアイル)とが1列おきに交互に構成されるように給気ダクト310等を配置しているが、このような配置パターンに限らず、他の配置パターンであってもよい。
【0040】
以上に説明したように、本実施の形態のデータセンターのフロア構造によれば、床下エリア10を高くとってファシリティ管理者520が入って作業を行うことが可能な高床式構造とし、各種配線や配管等のファシリティの管理や工事等は全て床下エリア10において行うようにすることで、ファシリティ管理者520によるファシリティの管理/メンテナンスの作業を容易とすることができる。
【0041】
また、IT管理者510が作業を行う領域と、ファシリティ管理者520が作業を行う領域とを、サーバエリア20と床下エリア10とに分離することで、セキュリティの向上を図ることができる。さらに、サーバラック200に対する冷風の給気に給気ダクト310を用い、サーバエリア20ではアイルキャップ130を用いることで、床下エリア10の配線や構造物等に影響されず、効率の高い空調を行うことが可能である。
【0042】
<実施の形態2>
図2は、本発明の実施の形態2であるデータセンターにおけるコンピュータ室のフロア構造の例について概要を示した図である。本実施の形態のデータセンターのフロア構造では、図1に示した実施の形態1のデータセンターにおけるフロア構造の例と異なり、天井スラブ102を廃し、天井裏エリアを、さらに上層のサーバエリア21に対する床下エリアと共通化して床下/天井裏エリア31としている。
【0043】
このような構成とするため、サーバエリア20において、ホットアイルとなるメンテナンス通路の上部に、メンテナンス通路に沿って(図2における奥行き方向に)、熱風を回収する排気ダクト320を設けている。これにより、排気ダクト320およびアイルキャップ131の上部に熱風が流れることがなくなるため、その上部(例えば、サーバエリア20の床面から3000mm程度の高さ)に、例えば、床部がエキスパンドメタルや、ぶどう棚状の鉄格子などの隙間を有する部材で構成されたキャットウォーク140(足場)を設けることで、床下/天井裏エリア31を構成することができる。
【0044】
なお、このとき例えば、アイルキャップ131を、図2に示すように通信ケーブル420等を囲わないような構成とすることで、ファシリティ管理者520が、床下/天井裏エリア31からキャットウォーク140の底面の隙間等を介して、通信ケーブル420等の配線や、サーバラック200の上部における管理/メンテナンス作業などを行うことが可能である。
【0045】
このキャットウォーク140の底面より上部の領域を床下/天井裏エリア31とし、この領域に床下エリア10と同様の構成を設ける。すなわち、キャットウォーク140の底面から、ファシリティ管理者520が作業可能な領域を確保できる所定の高さの位置に、大引鉄骨111および根太鉄骨112からなる格子(支持部材)を配置することで、この上部を上階層のサーバエリア21とする階層構造をとることが可能である。このとき、この床下/天井裏エリア31は、サーバエリア20に対する天井裏エリアであるとともに、その上階層のサーバエリア21に対する電源ケーブル410等の配線や各種配管などのファシリティに対する管理/メンテナンス作業を行う床下エリアを兼ねることになる。
【0046】
なお、近年のサーバ収納の高密度化による重量の増加に伴って、図1などにおけるフリーアクセスフロア120の性能向上が要求され、コスト増につながっているという点を考慮して、図2の例に示すように、フリーアクセスフロア120を廃し、支持部材(根太鉄骨112)の上面に直接サーバラック200を配置する構成とすることも可能である(この場合、支持部材の上面によってサーバエリア20と床下エリア10が画される)。
【0047】
このとき、実施の形態1と同様に、例えば、床スラブ101から1500mm以上の高さに支持部材を配置し、床下エリア10が2500mm以下(望ましくは2000mm程度)の高さとなるように、支持部材を配置するのが効果的である。また、格子状に組まれた支持部材の鉄骨の上にサーバラック200が配置可能となるように、必要に応じて、サーバラック200の各列をモジュール化したユニットとするなどの対応を行ってもよい。
【0048】
またこのとき、メンテナンス通路部分の支持部材(根太鉄骨112)の上面には、フリーアクセスフロア120と比べて安価であり、IT管理者510の歩行が容易となり、かつ、給気ダクト310からの冷風を遮らないよう、例えば、エキスパンドメタルなどの通気性を有するパネル状の部材からなる歩行部121を設ける。なお、ホットアイルとなるメンテナンス通路の上は、例えば、通気性を有さないパネル状の部材からなる歩行部122として、冷風と熱風の分離を図ってもよい。
【0049】
以上に説明したように、本実施の形態のデータセンターのフロア構造によれば、サーバラック200から排気された熱風の回収に排気ダクト320を用い、天井裏エリアを、キャットウォーク140を床部とした床下/天井裏エリア31とすることで、ファシリティ管理者520によるサーバエリア20の上部(天井裏エリア)の管理/メンテナンスを容易にすることができる。
【0050】
また、床下/天井裏エリア31によって、サーバエリア20の天井裏エリアと、その上階層のサーバエリア21の高床式構造の床下エリアとを共通化することで、天井スラブ102を廃し、コストを抑えて階層構造を有するデータセンターを構築することができる。また、大引鉄骨111および根太鉄骨112からなる格子(支持部材)の上に直接サーバラック200を配置する構成とすることで、フリーアクセスフロア120を廃し、さらにコストを抑えることができる。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0052】
例えば、実施の形態1および実施の形態2に示したフロア構造は、図1および図2に示した構造に限定されず、床下エリア10(もしくは床下/天井裏エリア31)により高床式構造を有する限り、例えば、実施の形態1におけるフロア構造に対して図2に示した排気ダクト320を適用したり、実施の形態2におけるフロア構造に対して図1に示したフリーアクセスフロア120を適用したりなど、空調効率やコスト等の各種要件に応じて適宜組み合わせたフロア構造とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、多数のサーバを収納する大規模データセンターのフロア構造およびデータセンターに利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…床下エリア、20、21…サーバエリア、30…天井裏エリア、31…床下/天井裏エリア、
101…床スラブ、102…天井スラブ、111…大引鉄骨、112…根太鉄骨、120…フリーアクセスフロア、121、122…歩行部、130、131…アイルキャップ、140…キャットウォーク、150…天井面、
200…サーバラック、
310…給気ダクト、320…排気ダクト、
410…電源ケーブル、420…通信ケーブル、
510…IT管理者、520…ファシリティ管理者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のサーバを収納するデータセンターのフロア構造であって、
床スラブから所定の高さの位置に格子状に配置した鉄骨からなる支持部材と、
前記支持部材の上部に配置したフリーアクセスフロアとを有し、
前記フリーアクセスフロアの上部のサーバエリアには、前記フリーアクセスフロアの上に、前記サーバを収納する複数のサーバラックが、間にメンテナンス通路を構成するように列状に配置され、
前記フリーアクセスフロアの下部の床下エリアは、前記サーバに接続されるケーブルの配線を含む前記データセンターの設備に係るメンテナンス作業を、人が入って行うことが可能な高さを有し、
さらに、前記床下エリアには、1つ以上の前記メンテナンス通路の下部に、前記メンテナンス通路に沿って、前記メンテナンス通路部分の前記フリーアクセスフロアに設けられた開口部を通して前記サーバエリアに空調装置からの冷風を供給する給気ダクトを有することを特徴とするデータセンターのフロア構造。
【請求項2】
多数のサーバを収納するデータセンターのフロア構造であって、
床スラブから所定の高さの位置に格子状に配置した鉄骨からなる支持部材を有し、
前記支持部材の上面より上部のサーバエリアには、前記支持部材の上面に、前記サーバを収納する複数のサーバラックが、間にメンテナンス通路を構成するように列状に配置され、
前記メンテナンス通路には、前記支持部材の上面に、通気性を有するパネル状の部材からなる歩行部を有し、
前記支持部材の上面より下部の床下エリアは、前記サーバに接続されるケーブルの配線を含む前記データセンターの設備に係るメンテナンス作業を、人が入って行うことが可能な高さを有し、
さらに、前記床下エリアには、1つ以上の前記メンテナンス通路の下部に、前記メンテナンス通路に沿って、前記サーバエリアに空調装置からの冷風を供給する給気ダクトを有することを特徴とするデータセンターのフロア構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデータセンターのフロア構造において、
前記支持部材は、底面が前記床スラブから1500mm以上の高さとなる位置に配置され、
前記床下エリアの高さが2500mm以下となるように構成されていることを特徴とするデータセンターのフロア構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のデータセンターのフロア構造において、
前記サーバエリアには、前記給気ダクトから冷風が供給される前記メンテナンス通路の上部を囲うアイルキャップを有することを特徴とするデータセンターのフロア構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のデータセンターのフロア構造において、
前記サーバエリアにおいて、前記サーバラックから熱風が排気される前記メンテナンス通路の上部に、前記メンテナンス通路に沿って、前記サーバラックから排気された熱風を回収して前記空調装置に還流する排気ダクトを有することを特徴とするデータセンターのフロア構造。
【請求項6】
請求項5に記載のデータセンターのフロア構造において、
前記排気ダクトの上部に、床部が隙間を有する部材によって構成された足場を有し、
前記足場から所定の高さの位置に、さらに上階層の前記サーバエリアおよび前記床下エリアを構成するための前記支持部材を有することを特徴とするデータセンターのフロア構造。
【請求項7】
多数のサーバを収納するデータセンターであって、
コンピュータ室が、請求項1〜6のいずれか1項に記載のデータセンターのフロア構造を有することを特徴とするデータセンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−69542(P2011−69542A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220534(P2009−220534)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】