説明

データ伝送システム及びサーバ

【課題】
パスワード無しで、近隣世帯間での情報共有を可能にする。
【解決手段】
電力線通信(PLC)モデム22Aは、電力線通信のプロトコルに従い認識できる他のPLCモデムの識別情報を記憶する。電子機器24Aは、共有すべき情報をサーバ44にアップロードする際に同時に、PLCモデム22A及び認識する他のPLCモデムの識別情報のリストをサーバ44に送信する。サーバ44は、電子機器24Aからの共有情報44Aと、PLCモデムの識別情報のリスト44Bを相互に関連付けて記憶する。ユーザBが電子機器28Bを使ってサーバ44に共有情報44Aを要求するとき、PLCモデム26Bの識別情報を送信する。サーバ44は、要求に含まれるPLCモデム26Bの識別情報が、要求された情報にリンクされた識別情報リストに含まれている場合、要求された情報を電子機器28Bに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ伝送システム及びサーバに関し、より具体的には、近距離のユーザ間で手軽にデータを要求できるデータ伝送システム及びサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電力線通信ネットワークの実用化が期待されている。例えば集合住宅の電力線通信システムでは、共通の電力線に接続されている複数の世帯間では、電力線信号が共有される。
【0003】
集合住宅などにおける情報共有手段として、WWW(World Wide Web)又は共有ファイルサーバ等による情報配信がある。しかし、通常、このような情報共有方式では、予めパスワード等を設定する必要がある。パスワード等の配布及び管理をする必要があるのと、機器等の操作に慣れていないユーザには取り扱いが難しい。
【0004】
特許文献1には、リモートアクセスによる異なるネットワークドメイン間の通信において、アプリケーションレベルの情報と、関連する物理層電力線搬送通信フレームとの間の双方向変換を行う方法が提案されている。
【特許文献1】特表2005−512387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物理的に近距離に所在する世帯間で、回覧板のように簡易に情報を共有したいとする要望がある。
【0006】
本発明は、電力線通信の特異性に注目し、ユーザによるパスワード入力無しでこのような要望を簡易に実現するデータ伝送システム及びサーバを提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るデータ伝送システムは、第1の電力線通信モデムを介して共有情報をサーバにアップロードする第1の電子機器と、第2の電力線通信モデムを介して当該サーバの当該共有情報を要求する第2の電子機器とを具備するデータ伝送システムであって、当該第1の電子機器が、当該共有情報を当該サーバにアップロードするとき、当該共有情報の関連情報として、当該第1の電力線通信モデムが電力線通信に従い認識可能な他の電力線通信モデムの識別情報のリストを当該サーバに送信する機能を具備し、当該サーバが、当該共有情報の要求に対し、当該要求に付加される電力線通信モデムの識別情報が、当該共有情報の当該関連情報に含まれる場合に、当該共有情報を要求元に送信する機能を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るデータ伝送システムは、第1の電力線通信モデムを介して共有情報をサーバにアップロードする第1の電子機器と、第2の電力線通信モデムを介して当該サーバの当該共有情報を要求する第2の電子機器とを具備するデータ伝送システムであって、当該第1の電子機器が、当該共有情報を当該サーバにアップロードするとき、当該共有情報の関連情報として、当該第1の電力線通信モデムの識別情報を当該サーバに送信する機能を具備し、当該第2の電子機器は、当該サーバに当該共有情報を要求する際に、当該第2の電力線通信モデムが電力線通信に従い認識可能な他の電力線通信モデムの識別情報のリストを当該サーバに送信し、当該サーバは、当該共有情報の要求に対し、当該関連情報の電力線通信モデムの識別情報が、当該識別情報のリストに含まれる場合に、当該共有情報を要求元に送信する機能を具備することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るサーバは、共有情報を配信するサーバであって、共有情報と、当該共有情報の関連情報として、当該共有情報の送信元に接続する電力線通信モデムが電力線通信に従い認識可能な他の電力線通信モデムの識別情報のリスト(44B)を記憶する手段と、当該共有情報の要求に対し、当該要求に付加される電力線通信モデムの識別情報が当該共有情報の当該リストに含まれる場合に、当該共有情報を要求元に送信する手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るサーバは、共有情報を配信するサーバであって、共有情報と、当該共有情報の関連情報として、当該共有情報の送信元に接続する電力線通信モデム(22A)の識別情報を記憶する手段と、当該共有情報の要求に対し、当該要求に付加される電力線通信モデムの識別情報のリストが当該共有情報の関連情報の識別情報を含む場合に、当該共有情報を要求元に送信する手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パスワード入力等の複雑な作業を必要とせず、必要な情報を電力線で接続されている対象者に送信することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。電力線10には、ユーザAの宅内ネットワーク20Aと、ユーザBの宅内ネットワーク20Bが接続する。ユーザA,Bは、例えば、同一マンション内の異なる住戸に居住する住民である。
【0014】
宅内ネットワーク20Aは、次のようになっている。電力線10から分岐した電力線12Aのコンセント14Aには電力線通信(PLC)モデム22Aを介して電子機器24Aが接続し、コンセント16AにはPLCモデム26Aを介して電子機器28Aが接続し、コンセント18AにはPLCモデム30Aを介してゲートウエイ32Aが接続する。電子機器24A,26A及びゲートウエイ32Aは、PLCモデム22A,26A,30A及び電力線12Aを介して、相互に通信可能なIPネットワークの宅内ネットワーク(LAN)を構成する。このLANを使ったデータ通信は、IPレイヤ又はアプリケーションレイヤでは、ゲートウエイ32Aを介する場合を除いて、ユーザAの宅内の機器に限定されている。
【0015】
同様に、宅内ネットワーク20Bは、次のようになっている。電力線10から分岐した電力線12Bのコンセント14BにはPLCモデム22Bを介して電子機器24Bが接続し、コンセント16BにはPLCモデム26Bを介して電子機器28Bが接続し、コンセント18BにはPLCモデム30Bを介してゲートウエイ32Bが接続する。電子機器24B,26B及びゲートウエイ32Bは、PLCモデム22B,26B,30B及び電力線12Bを介して、相互に通信可能なIPネットワークの宅内ネットワーク(LAN)を構成する。このLANを使ったデータ通信は、IPレイヤ又はアプリケーションレイヤでは、ゲートウエイ32Bを介する場合を除いて、ユーザAの宅内の機器に限定されている。
【0016】
電子機器24A,28A,24B,28Bは、例えば、コンピュータであり、サーバ又はクライアントである。
【0017】
ゲートウエイ32Aは、光ファイバ又はADSL回線、及びインターネットサービスプロバイダ(ISP)40Aの接続サービスを介してインターネット42に接続し、同様に、ゲートウエイ32Bは、光ファイバ又はADSL回線、及びインターネットサービスプロバイダ(ISP)40Bの接続サービスを介してインターネット42に接続する。インターネット42には、ユーザAが情報をアップロード可能なWWWサーバ44が接続されている。
【0018】
ユーザAの宅内ネットワーク20AとユーザBの宅内ネットワーク20Bが、物理的に近距離に位置する場合、より正確には、電力線10に沿った距離で近くに位置する場合、PLCモデム22A,26A,30A,22B,26B,30Bは、電力線通信の性能上、相互に他の存在を認識でき、その結果、ユーザAの宅内ネットワーク20AのPLCモデム22A,26A,30Aは、電力線通信のレイヤ上では、電力線10を介して、ユーザBの宅内ネットワーク20BのPLCモデム22B,26B,30Bとの間で制御信号を通信できる。本実施例では、この機能を利用して、物理的に近距離のユーザ間で情報を簡易に共有できるようにする。
【0019】
図2は、PLCモデム22A,26A,30A,22B,26B,30Bの概略構成ブロック図を示す。電力線プラグ50とLANポート52との間に、PLCインターフェース54が接続される。PLCインターフェース54は、電力線プラグ50からの電力線通信信号をLAN信号に変換してLANポート52に供給し、LANポート52からのLAN信号を電力線通信信号に変換して電力線プラグ50に供給する。制御装置56は、他のPLCモデムとの通信に使用する方式等を決定するが、本実施例では、特に、少なくとも制御信号を通信できる他のPLCモデムを特定する識別情報(例えば、MACアドレス等)をPLCインターフェース54から受け取り、メモリ58に格納する。制御回路56はまた、LANポート52に接続する電子機器からの要求に応じて、メモリ58に格納される他のPLCモデムの識別情報を、LANポート52に接続する電子機器に通知する。
【0020】
ここで、ユーザAの電子機器24Aが近隣世帯間で共有すべき情報をサーバ44にアップロードし、その情報をユーザBが、電子機器28Bにより閲覧するケースを例に、本実施例の動作を説明する。図3は、その動作フローを示す。
【0021】
ユーザAは、電子機器24Aを使って、近隣世帯で共有すべき情報をサーバ44にアップロードする。電子機器24Aは、アップロードの前に予め、接続するPLCモデム22Aの識別情報と、PLCモデム22Aが認識している他のPLCモデムの識別情報(図1に示す例では、PLCモデム26A,30A,24B,26B,30Bの識別情報)をPLCモデム22Aから取得しておく。そして、共有すべき情報をサーバ44にアップロードする際に同時に、電子機器24Aは、PLCモデム22Aの識別情報及び他のPLCモデムの識別情報のリストをサーバ44に送信する。
【0022】
WWWサーバ44は、ユーザAからの共有情報44Aと、PLCモデムの識別情報のリスト44Bを相互に関連付けて記憶する。
【0023】
この状態で、ユーザBが、例えば、電子機器28Bを使ってWWWサーバ44にアクセスに、共有情報の転送を要求したとする。この要求には、電子機器28Bが接続するPLCモデム26Bの識別情報を含める。
【0024】
WWWサーバ44は、ユーザBの電子機器28Bからの要求に含まれるPLCモデム26Bの識別情報が、要求された情報にリンクされた識別情報リスト44Bに含まれているかどうかを調べ、含まれている場合には、要求された情報を電子機器28Bに送信し、含まれていない場合には、要求された情報を電子機器28Bに送信しない。本実施例では、PLCモデム26Bの識別情報がリスト44Bに格納されているので、情報44Aが、電子機器28Bに送信される。即ち、ユーザBは、パスワードを入力することも、事前に設定することも無しに、近隣で共有する情報44Aに閲覧できる。
【0025】
PLCモデム26Aが認識できない程、遠くに位置するPLCモデムを使用するユーザが、WWWサーバ44にアクセスしても、WWWサーバ44は、情報44Aをこのユーザに送信しない。
【0026】
WWWサーバで説明したが、より一般的なFTPサーバ又は共有ファイルサーバでも、同様である。
【0027】
本実施例では、情報をアップロードする側が、周囲の認識可能なPLCモデムの識別情報をサーバ44に送信したが、この逆でもよい。即ち、情報をアップロードする側は、使用するPLCモデムの識別情報を、共有情報と一緒にサーバ44に送信する。情報を要求する側は、共有情報を要求する信号に、周囲の認識可能なPLCモデムの識別情報のリストを付加する。サーバは、要求信号に付加された識別情報リストに、情報発信元のPLCモデムの識別情報が含まれている場合にのみ、要求に応じて情報を送信する。
【0028】
異なるネットワークのユーザ間での情報共有の例を説明したが、本発明は、同一ネットワークにおける外部情報の共有に利用可能である。例えば、教室等内での外部サーバを用いた情報共有についても有用である。
【0029】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。
【図2】本実施例のPLCモデムの概略構成ブロック図である。
【図3】本実施例の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
10:電力線
12A,12B:電力線
14A,14B:コンセント
16A,16B:コンセント
18A,18B:コンセント
22A,22B:電力線通信(PLC)モデム
24A,24B:電子機器
26A,26B:電力線通信(PLC)モデム
28A,28B:電子機器
30A,30B:電力線通信(PLC)モデム
32A,32B:ゲートウエイ
40A,40B:インターネットサービスプロバイダ
42:インターネット
44:WWWサーバ
44A:共有情報
44B:識別情報リスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電力線通信モデム(22A)を介して共有情報をサーバにアップロードする第1の電子機器(24A)と、
第2の電力線通信モデム(26B)を介して当該サーバの当該共有情報を要求する第2の電子機器(28B)
とを具備するデータ伝送システムであって、
当該第1の電子機器が、当該共有情報を当該サーバにアップロードするとき、当該共有情報の関連情報として、当該第1の電力線通信モデム(22A)が電力線通信に従い認識可能な他の電力線通信モデムの識別情報のリストを当該サーバに送信する機能を具備し、
当該サーバが、当該共有情報の要求に対し、当該要求に付加される電力線通信モデムの識別情報が、当該共有情報の当該関連情報に含まれる場合に、当該共有情報を要求元に送信する機能を具備する
ことを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項2】
第1の電力線通信モデム(22A)を介して共有情報をサーバにアップロードする第1の電子機器(24A)と、
第2の電力線通信モデム(26B)を介して当該サーバの当該共有情報を要求する第2の電子機器(28B)
とを具備するデータ伝送システムであって、
当該第1の電子機器が、当該共有情報を当該サーバにアップロードするとき、当該共有情報の関連情報として、当該第1の電力線通信モデム(22A)の識別情報を当該サーバに送信する機能を具備し、
当該第2の電子機器は、当該サーバに当該共有情報を要求する際に、当該第2の電力線通信モデム(26B)が電力線通信に従い認識可能な他の電力線通信モデムの識別情報のリストを当該サーバに送信し、
当該サーバは、当該共有情報の要求に対し、当該関連情報の電力線通信モデムの識別情報が、当該識別情報のリストに含まれる場合に、当該共有情報を要求元に送信する機能を具備する
ことを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項3】
共有情報を配信するサーバであって、
共有情報(44A)と、当該共有情報の関連情報として、当該共有情報の送信元に接続する電力線通信モデムが電力線通信に従い認識可能な他の電力線通信モデムの識別情報のリスト(44B)を記憶する手段と、
当該共有情報の要求に対し、当該要求に付加される電力線通信モデムの識別情報が当該共有情報の当該リストに含まれる場合に、当該共有情報を要求元に送信する手段
とを具備することを特徴とするサーバ。
【請求項4】
共有情報を配信するサーバであって、
共有情報と、当該共有情報の関連情報として、当該共有情報の送信元に接続する電力線通信モデムの識別情報を記憶する手段と、
当該共有情報の要求に対し、当該要求に付加される電力線通信モデムの識別情報のリストが当該共有情報の関連情報の識別情報を含む場合に、当該共有情報を要求元に送信する手段
とを具備することを特徴とするサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−85763(P2008−85763A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264476(P2006−264476)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】