説明

データ放送送信装置

【課題】本発明は、データ放送環境の悪化による影響を受けにくく、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて送信ファイルを送受信でき、簡易な構成のデータ放送送信装置を提供する。
【解決手段】データ放送送信装置1は、音声信号を予め設定された符号化レートで符号化して送信ファイルを順次生成する送信ファイル符号化手段11と、記憶手段12と、順次生成した送信ファイルからデータ放送として送受信可能なデータ放送信号を生成するデータ放送信号生成手段13と、伝送レートを符号化レートで除算した値に基づいて、送信回数を算出する送信回数算出手段14と、データ放送信号を、送信回数算出手段14が算出した送信回数ずつ順に、送信回数算出手段14から入力された伝送レートで送信する送信制御手段15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、送信ファイルを送信するデータ放送送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画面上に文字情報をテロップ表示し、ニュース速報等の情報を、一刻も早く視聴者に伝える発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このテロップ表示による文字情報では、視覚障害者が、その内容を知ることができない。そのため、多くの視覚障害者から、ニュース速報の文字情報を読み上げて音声で伝えて欲しいとの強い要望がある。
【0003】
ニュース速報の文字情報から音声合成によって自動的に読み上げ音声を生成してアナログ放送する場合、番組主音声がステレオもしくは二カ国語放送のときには、読み上げ音声を放送する音声チャンネルが足りず、実現できない。一方、デジタル放送では、音声チャンネルが、放送規格上、4ES(Elementary Stream)分あるため、より多くの種類の音声モードを送ることが可能である。また、BML(Broadcast Markup Language)による制御を使えば、自動的に音声チャンネルの切り替えが可能であり、文字情報の読み上げサービスのON/OFFが可能であることから、視覚障害者と健常者との両方を対象にしたサービスが実現可能である。しかし、音声ESによる伝送の場合では、送信装置の大幅な改修が必要な場合もあり、莫大なコストがかかる可能性がある。
また、例えば、音声信号を音声ファイル化してデータ放送で送る方法もある。このように、データ放送で送る場合には送信装置の改修がほとんど必要なく、コストは殆どかからない。
【0004】
そこで、視覚障害者の要望に応えるために、現行のデジタル放送規格内で実現可能な手法として、読み上げ合成音声を自動的に生成し、データ放送の音声ファイルとして伝送することが考えられる。この場合、BMLに音声ファイルの再生命令を記述することで、デジタル放送テレビの音声を制御すれば、視聴者が何も操作をしなくても自動的に読み上げ音声を聞くことができ、ニュース速報が終了すると、また元の主音声に戻るように制御することが可能である。
【特許文献1】特開2006−245652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、データ放送の伝送帯域幅は、放送中のデータ放送コンテンツでほぼ占有され、ほとんど新たな音声ファイルや映像ファイルを伝送できる余裕がないのが現状である。また、音声や映像ファイルを伝送する場合、再生時間が長くなるとファイルサイズも比例して大きくなるため、音声ファイルでは効果音程度のファイルサイズの小さいものでなければ現実的には伝送することができない。例えば、64Kbpsの品質の音声レート(符号化レート)で符号化された3分間の音声が収録されていた場合、そのファイルサイズは、約1.44MByteになる。仮に、これを8秒周期のデータカルーセルで伝送した場合、1.44Mbpsもの伝送レートが必要となり、現在放送中のコンテンツをすべて中止する必要がある。
【0006】
また、別音声ESで読み上げ音声を送信する場合では、送出設備がデジタル放送規格をすべて満足している必要があり、実際には、4ES全て使用するような放送サービスが行われていない。このため、送信装置を少しでも廉価に整備するため、最大音声ESの数が少ない場合も多々ある。さらに、新たに読み上げ音声サービスを実施するための音声モードを追加するためには、送信設備の改修に莫大な費用が必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、データ放送環境の悪化による影響を受けにくく、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて送信ファイルを送受信でき、簡易な構成のデータ放送送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、請求項1に係るデータ放送送信装置は、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、送信ファイルをデータ放送受信装置に送信するデータ放送送信装置であって、送信ファイル符号化手段と、データ放送信号生成手段と、送信制御手段とを備える構成とした。
【0009】
かかる構成によれば、データ放送送信装置は、送信ファイル符号化手段によって、データ放送において視聴可能な時系列信号を予め設定された符号化レートで符号化して、送信ファイルを順次生成する。また、データ放送送信装置は、データ放送信号生成手段によって、送信ファイル符号化手段が順次生成した送信ファイルからデータ放送として送受信可能なデータ放送信号を生成する。さらに、データ放送送信装置は、送信制御手段によって、余剰帯域を用いて、データ放送信号生成手段が生成したデータ放送信号を、所定の送信回数ずつ順に、符号化レートの2倍以上に予め設定した伝送レートで送信する。
【0010】
ここで、伝送レートが符号化レートの2倍以上であることから、送信ファイルの伝送時間と送信ファイルの再生時間との間にレート差が生じる。そこで、ある程度のサイズの送信ファイルであっても、例えば、送信ファイルが適当なサイズで予め順次生成されていたとすると、送信ファイルを順番に送信すれば、このレート差から、データ放送受信装置において、受信した送信ファイルの再生中に、次の送信ファイルを必ず受信でき、順次生成した送信ファイルを途切れることなく連続再生することが可能である。つまり、データ放送送信装置は、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、擬似的にストリーミング方式を実現していることになる。
【0011】
また、データ放送送信装置は、気象条件等のデータ放送環境が悪化し、順次生成した送信ファイルの一部が受信できなかった場合でも、所定の送信回数、同一の送信ファイルを送信し、送信ファイルが途切れる事態を防止する。つまり、データ放送送信装置は、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、擬似的にカルーセル方式をも実現していることになる。なお、余剰帯域とは、データ放送可能な伝送帯域のうち、他のデータ放送コンテンツの伝送に使用しておらず、他のコンテンツの伝送レートを一時的に下げて確保することが可能な伝送帯域である。
【0012】
請求項2に係るデータ放送送信装置は、請求項1に記載のデータ放送送信装置において、前記送信ファイル符号化手段は、任意のサイズで、複数の前記送信ファイルを順次生成することを特徴とする。かかる構成によれば、データ放送送信装置は、送信ファイルのサイズが大きいために、この送信ファイルをそのまま余剰帯域で送信することが難しい場合でも、送信ファイルを順次生成し、適切な送信回数で送信することで、サイズが大きい送信ファイルを送信できる。なお、個々の送信ファイルのサイズは、特に制限されず、現実的に扱いやすいサイズ(処理単位)で順次生成すれば良く、これらを異なるサイズにしても良く、これらを同一サイズにしても良い。例えば、速報テロップの場合、画面表示の2行分で1つの送信ファイルとなるサイズ(処理単位)でこの送信ファイルを生成すると、個々の送信ファイルのサイズが32Kbyte程度となり、個々の送信ファイルのサイズの変化が少なくなる。
【0013】
請求項3に係るデータ放送送信装置は、請求項1又は請求項2に記載のデータ放送送信装置において、前記伝送レートを前記符号化レートで除算した値に基づいて、前記送信回数を算出する送信回数算出手段、をさらに備え、前記送信制御手段は、前記送信回数算出手段が算出した送信回数ずつ順に、前記データ放送信号を送信することを特徴とする。かかる構成によれば、データ放送送信装置は、適切な値の送信回数を人手によらずに算出することができる。
【0014】
請求項4に係るデータ放送送信装置は、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のデータ放送送信装置において、前記データ放送信号生成手段は、順次生成した前記送信ファイルに含まれる前記時系列信号を前記データ放送受信装置に再生させる命令を含む前記データ放送信号を、生成することを特徴とする。かかる構成によれば、データ放送送信装置は、データ放送受信装置が送信ファイルを受信したときに、この送信ファイルに含まれる時系列信号を再生させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1に係る発明によれば、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、擬似的にストリーミング方式とデータカルーセル方式とを実現して送信ファイルを送信できるため、データ放送送信装置の構成を簡易にすることができ、データ放送環境の悪化の影響を受けにくくできる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、送信ファイルのサイズが大きいために、この送信ファイルをそのまま余剰帯域で送信することが難しい場合でも、個々に送信ファイルを順次生成し、適切な送信回数で送信することで、サイズが大きい送信ファイルを送信できる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、適切な値の送信回数を人手によらずに算出することができるため、送信ファイルの伝送効率を高くすることができ、利便性を良くすることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、追加設備をデータ放送受信装置に設けることなく、データ放送受信装置が送信ファイルを受信したときに、この送信ファイルに含まれる時系列信号を人手によらずに再生できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段及び同一の部材には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0020】
[データ放送送信装置の構成]
図1を参照して、本発明の本実施形態に係るデータ放送送信装置の構成について説明する。図1は、本発明の本実施形態に係るデータ放送送信装置のブロック図である。図1に示すように、データ放送送信装置1は、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、送信ファイルをデータ放送受信装置(不図示)に送信するものであって、送信ファイル符号化手段11と、記憶手段12と、データ放送信号生成手段13と、送信回数算出手段14と、送信制御手段15とを備える。
【0021】
送信ファイル符号化手段11は、データ放送において視聴される時系列信号(例えば、音声信号)を、予め設定された符号化レートで符号化して送信ファイルを順次生成するものである。このとき、送信ファイル符号化手段11は、任意のサイズで、複数の送信ファイルを順次生成しても良い。ここで、送信ファイル符号化手段11は、例えば、時系列信号を、AAC(Advanced Audio Coding)の形式で符号化し、記憶手段12に一時的に記憶しておく。符号化レートは、送信ファイルをデータ放送受信装置で再生する場合に要する時間を決定するものであり、例えば、32Kbpsの符号化品質で32Kbitの送信ファイルの再生には、1秒要することを示す。なお、この符号化レートは、後記する記憶手段12に予め記憶しておく。
【0022】
送信ファイル符号化手段11は、送信ファイルのそれぞれのサイズが等しくなるように送信ファイルを順次生成しても良く、送信ファイルのそれぞれのサイズが異なるように送信ファイルを順次生成しても良い。また、例えば、送信ファイル符号化手段11は、時系列信号が音声信号の場合、文章の句読点を区切りとして送信ファイルを生成し、時系列のデータが速報テロップの場合、同一画面上に表示される文章(例えば、2行)を処理単位としても良い。
【0023】
送信ファイルは、データ放送において視聴可能な時系列信号を符号化したものである。この時系列信号としては、例えば、ニュース速報又は緊急気象情報の内容を示す音声信号、動画像を撮影した映像信号、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)等の信号がある。なお、本実施形態では、時系列信号として音声信号を図示して説明するが、これに限定されないことは言うまでもない。
【0024】
記憶手段12は、符号化レート、伝送レート、後記するBML記述プログラム及び送信ファイルを記憶するHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置である。伝送レートは、データ放送の伝送容量を表すものであり、例えば、150Kbpsの帯域幅で150Kbitの送信ファイルを伝送するのに1秒要することを示す。なお、後記する理由により、伝送レートは、符号化レートの2倍以上の値で記憶手段12に予め記憶しておく。
【0025】
データ放送信号生成手段13は、送信ファイル符号化手段11が順次生成した送信ファイルからデータ放送として送受信可能なデータ放送信号を生成するものである。ここで、データ放送信号生成手段13は、送信ファイルが何番目に生成されたかを示すシーケンシャル番号を、データ放送信号に付加しても良い。
【0026】
次に、データ放送信号生成手段13は、例えば、順次生成した送信ファイルのモジュールと、BML形式のモジュールとを多重してデータ放送信号を生成する。このとき、データ放送信号生成手段13は、データ放送信号に、順次生成した送信ファイルに含まれる時系列信号をデータ放送受信装置に再生させる命令を含めることが好ましい。例えば、シーケンシャル番号の順に順次生成した送信ファイルに含まれる時系列信号を再生させる命令を、BML関数、ECMAScript等のスクリプト言語で記述したBML記述プログラムとして予め記憶手段12に記憶しておく。そして、データ放送信号生成手段13は、このBML記述プログラムをBMLのモジュールに埋め込んだデータ放送信号を生成する。
【0027】
送信回数算出手段14は、記憶手段12に記憶された伝送レートと符号化レートとを参照し、伝送レートを符号化レートで除算した値に基づいて、送信回数を算出するものである。例えば、伝送レートが150Kbpsで符号化レートが32Kbpsの場合、送信回数算出手段14は、150を32で除算して小数点以下を切り捨てした値を送信回数として算出する。
【0028】
なお、人手によって送信回数を算出しておき、この送信回数を予め記憶手段12に設定しておくことも可能である。この場合、データ放送送信装置1は、送信回数算出手段14を備える必要がなくなり、構成がより簡易になる。
【0029】
送信制御手段15は、余剰帯域を用いて、データ放送信号生成手段13が生成したデータ放送信号を、送信回数算出手段14が算出した送信回数ずつ順に、送信回数算出手段14から入力された伝送レートで送信するものである。なお、データ放送送信装置1は、データ放送を送信するためのアンテナ(不図示)を備えても良い。
【0030】
<送信ファイルの送受信>
以下、図2を参照し、本発明における送信ファイルの送受信について説明する(適宜図1参照)。図2は、本発明における送信ファイルの送受信を説明する図である。図2では、縦軸が送信ファイルのサイズであり、横軸が時間である。また、図2では、伝送レートの斜線は、送信ファイルのサイズと時間との関係、つまり、データ放送受信装置(不図示)が受信できる送信ファイルのサイズと時間との関係を示す。また、図2では、2本の符号化レートの斜線はそれぞれ、データ放送受信装置が再生できる送信ファイルのサイズと時間との関係を示す。
【0031】
なお、図2の例では、データ放送送信装置1は、1個目に生成した送信ファイルのサイズが32Kbyte、2個目に生成した送信ファイルのサイズが18Kbyte、及び、3個目に生成した送信ファイルのサイズが24Kbyteとなるように、3個の送信ファイルを順次生成している。ここで、例えば、時系列信号が速報テロップの場合、テレビ画面上では2行単位で文章が生成されるため、データ放送送信装置1は、音声合成された送信ファイルも2行単位で順番に生成する。また、図2では、説明のために、送信回数を3回としているが、データ放送送信装置1は、送信回数算出手段14によって求めた送信回数(例えば、4回)、順番に生成したうちの同一の送信ファイルを送信しても良い。
【0032】
例えば、送信ファイルの伝送レートが150Kbpsであり、送信ファイルの符号化レートが32Kbpsであるとする。このとき、図2に示すように、150:32のレート差から、送信ファイルの伝送時間と送信ファイルの再生時間の間に差が生じる。そこで、本発明のように、連続して送信する送信ファイルの合計サイズが数MByteになる場合や各送信ファイルのサイズが数百KByteになる場合、このような送信ファイルを連続して送信する場合、レート差から、現在の送信ファイルに含まれる時系列信号の再生中に、次ぎに送信する送信ファイルの伝送が必ず終了することになる。例えば、図2の例では、符号化レート1の斜線が示す1個目に送信された送信ファイルの再生終了時に、伝送レートの斜線が示す2個目に送信された送信ファイルの伝送が終了している(図2のt1参照)。このように、データ放送送信装置1は、順次生成した送信ファイルを途切れることなく連続再生させることが可能であり、擬似的にストリーミング方式を実現していることになる。
【0033】
ここで、気象条件等のデータ放送環境が悪化し、順次生成した送信ファイルの一部が受信できなかった場合、データ放送受信装置では、送信ファイルが途切れてしまうことが考えられる。そこで、データ放送送信装置1は、図2の例では、150:32のレート差から、次の送信ファイルに含まれる時系列信号の再生が終了するまでに、同一の送信ファイルを所定の送信回数(図2では、3回)送信し、データ放送受信装置で送信ファイルが途切れる事態を防止する。これによって、データ放送受信装置において、3回送信された送信ファイルのうちの1回でも受信できれば、送信ファイルに含まれる時系列信号を再生することができる。このように、データ放送送信装置1は、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、擬似的にデータカルーセル方式をも実現していることになる。
【0034】
なお、図2の符号化レート2の斜線に示すように、送信ファイルの伝送中に途中でチャンネルを合わせた場合やデータ放送受信装置の電源を投入した場合、順次生成した送信フィルに含まれる時系列信号の途中から再生されることになる。ここで、データ放送受信装置では、同一の送信ファイルを1回でも受信できれば、その受信中の送信ファイルから再生することができるため、再生する時系列信号が途切れることを最小限に抑えている。しかし、放送では、チャンネルを合わせる前の番組を視聴することはできないので、全ての時系列信号を再生できなくても問題はないと考えられる。
【0035】
[データ放送送信装置の動作]
以下、図3を参照し、図1のデータ放送送信装置の動作について説明する(適宜図1参照)。図3は、図1のデータ放送送信装置の動作を示すフローチャートである。
【0036】
データ放送送信装置1は、送信ファイル符号化手段11によって、時系列信号を予め設定された符号化レートで符号化して、送信ファイルを順次生成する(ステップS1)。このときデータ放送送信装置1は、送信ファイル符号化手段11によって、任意のサイズで、複数の送信ファイルを順次生成しても良い。
【0037】
ステップS1の処理に続いて、データ放送送信装置1は、データ放送信号生成手段13によって、順次生成した送信ファイルからデータ放送として送受信可能なデータ放送信号を生成する(ステップS2)。また、データ放送送信装置1は、送信回数算出手段14によって、伝送レートを符号化レートで除算した値に基づいて、送信回数を算出する(ステップS3)。また、データ放送送信装置1は、送信制御手段15によって、余剰帯域を用いて、データ放送信号生成手段13が生成したデータ放送信号を、送信回数算出手段14が算出した送信回数ずつ順に送信する(ステップS4)。
【0038】
[データ放送受信装置の構成]
以下、図4を参照して、本実施形態に係るデータ放送受信装置の構成について説明する。図4は、本実施形態に係るデータ放送受信装置のブロック図である。図4に示すように、データ放送受信装置2は、データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、送信ファイルをデータ放送送信装置(図1参照)から受信するものであり、データ放送受信手段21と、記憶手段22と、送信ファイル復号・再生手段(送信ファイル再生手段)23とを備える。
【0039】
データ放送受信手段21は、順次生成した送信ファイルと、この送信ファイルに含まれる時系列信号(例えば、音声信号)を再生させる命令とを含むデータ放送信号を受信すると共に、このデータ放送信号から順次生成した送信ファイルと命令とを分離するものである。データ放送受信手段21は、例えば、順次生成した送信データと命令(BML記述プログラム)とを分離して、記憶手段22に一時的に記憶させる。
【0040】
記憶手段22は、図1の記憶手段21と同様の、順次生成した送信ファイル及びBML記述プログラムを記憶するHDD、メモリ等の記憶装置である。
【0041】
送信ファイル復号・再生手段23は、データ放送受信手段21が分離して記憶手段22に一時的に記憶させた命令に基づいて、送信ファイルの伝送レートの半分以下の符号化レートで、順次生成した送信ファイルに含まれる時系列信号を順に再生する。送信ファイル復号・再生手段23は、例えば、順次生成した送信ファイルにシーケンシャル番号が付加されているため、このシーケンシャル番号の順にBML記述プログラムに基づいて、順次生成した送信ファイルに含まれる時系列信号を再生することができる。
【0042】
[データ放送受信装置の動作]
以下、図5を参照し、図2のデータ放送受信装置の動作について説明する(適宜図4参照)。図5は、図4のデータ放送受信装置の動作を示すフローチャートである。
【0043】
データ放送受信装置2は、データ放送受信手段21によって、順次生成した送信ファイルと、この送信ファイルに含まれる時系列信号を再生させる命令とを含むデータ放送信号を受信する(ステップS11)。また、データ放送受信装置2は、データ放送受信手段21によって、このデータ放送信号から送信ファイルと命令とを分離する(ステップ12)。また、データ放送受信装置2は、送信ファイル復号・再生手段23によって、データ放送受信手段21が分離した命令に基づいて、送信ファイルの伝送レートの半分以下の符号化レートで、順次生成した送信ファイルを順に再生する(ステップS13)。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るデータ放送送信装置1及びデータ放送受信装置2によれば、放送中のデータ放送コンテンツを中止することなく、残りのわずかなデータ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、サイズの大きな送信ファイルや再生時間が不確定な場合でも伝送することができる。
【0045】
例えば、従来のように、帯域幅を設定し、データカルーセル方式によって、データ放送で送信ファイルを繰り返し送信する場合、カルーセル周期及び帯域幅から伝送可能な送信ファイルのサイズに制限が生じ、長い再生時間の送信ファイルは送信することができない。一方、本実施形態に係るデータ放送送信装置1及びデータ放送受信装置2では、前記したデータカルーセル方式の問題は、発生しない。
【実施例】
【0046】
以下、図6を参照し、本発明の実施例について説明する(適宜図1,図4参照)。図6は、本発明の実施例を説明する概略図である。なお、図6では、視覚障害者向けの緊急気象情報の音声読み上げ放送サービスの実施例を示している。
【0047】
地震又は津波が発生すると、気象庁(不図示)より放送局に向けて、公衆回線等のネットワーク経由で、緊急気象情報が伝送される。この緊急気象情報では、震度、地名等の各情報は、数値化されたコードの電文フォーマットの形で伝送される。そして、音声合成装置が、予め用意されたテンプレート文章の読み上げ合成音声と数値コードに対応した合成音声波形データベースから取り出した音声とを合成することで、読み上げ音声が自動的に合成される。そして、この読み上げ音声が、画面上に表示される速報テロップ(例えば、2行毎に)の読み上げ音声信号(時系列信号)として、データ放送送信装置1に出力される。
【0048】
放送局側に配置されているデータ放送送信装置1は、前記したように、読み上げ音声信号を符号化して送信ファイルを順次生成し、データ放送信号として放送する。また、家庭のデジタル放送テレビ等のデータ放送受信装置2は、このデータ放送信号を受信する。そして、前記したように、データ放送送信装置1から放送されるデータ放送信号中のBMLに命令を記述しておくことで、データ放送受信装置2は、テレビのスピーカを介して、自動的に読み上げ音声を再生することができる。このため、視覚障害者が緊急気象情報の速報を聞き逃す心配がない。
【0049】
また、BMLとデータ放送受信装置2(デジタル放送テレビ)の標準内蔵のレジスタとによって、前記したサービス利用の有無をリモコン2aの操作によって視聴者に選択させ、データ放送受信装置2(デジタル放送テレビ)に内臓のレジスタに予め設定しておいても良い。これによって、前記したサービス利用を望まない視聴者に影響を与えること無く、緊急気象情報の速報サービスを視覚障害者に提供することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施例によれば、デジタル放送規格をすべて満足していない送出設備でも、読み上げ合成音声をデータ放送の音声ファイルとして送り、BMLに記述された命令によって再生の制御を行うことで、視覚障害者向けの音声読み上げサービスを実現することが可能である。読み上げ音声は、データ放送の送信ファイルとして伝送されるため、放送局のハードウェア設備を改修する必要がなく、どのようなデジタル放送設備でも実施が可能である。
【0051】
なお、緊急気象情報以外のニュース速報についても、既存のTEXT−TO−SPEECH技術による音声合成によって読み上げ音声を生成し、本発明に係るデータ放送送信装置1及びデータ放送受信装置2は、この読み上げ音声を緊急気象情報と同様に処理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の本実施形態に係るデータ放送送信装置のブロック図である。
【図2】本発明における送信ファイルの送受信を説明する図である。
【図3】図1のデータ放送送信装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係るデータ放送受信装置のブロック図である。
【図5】図4のデータ放送受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1 データ放送送信装置
11 送信ファイル符号化手段
12 記憶手段
13 データ放送信号生成手段
14 送信回数算出手段
15 送信制御手段
2 データ放送受信装置
21 データ放送受信手段
22 記憶手段
23 送信ファイル復号・再生手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ放送の伝送帯域における余剰帯域を用いて、送信ファイルをデータ放送受信装置に送信するデータ放送送信装置であって、
前記データ放送において視聴可能な時系列信号を予め設定された符号化レートで符号化して、前記送信ファイルを順次生成する送信ファイル符号化手段と、
前記送信ファイル符号化手段が順次生成した送信ファイルから前記データ放送として送受信可能なデータ放送信号を生成するデータ放送信号生成手段と、
前記余剰帯域を用いて、前記データ放送信号生成手段が生成したデータ放送信号を、所定の送信回数ずつ順に、前記符号化レートの2倍以上に予め設定した伝送レートで送信する送信制御手段と、
を備えることを特徴とするデータ放送送信装置。
【請求項2】
前記送信ファイル符号化手段は、任意のサイズで、複数の前記送信ファイルを順次生成することを特徴とする請求項1に記載のデータ放送送信装置。
【請求項3】
前記伝送レートを前記符号化レートで除算した値に基づいて、前記送信回数を算出する送信回数算出手段、をさらに備え、
前記送信制御手段は、前記送信回数算出手段が算出した送信回数ずつ順に、前記データ放送信号を送信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のデータ放送送信装置。
【請求項4】
前記データ放送信号生成手段は、順次生成した前記送信ファイルに含まれる前記時系列信号を前記データ放送受信装置に再生させる命令を含む前記データ放送信号を、生成することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のデータ放送送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−141624(P2010−141624A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316357(P2008−316357)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】