説明

トイレ空調装置とそれを用いた温水局部洗浄便座

【課題】便座に着座した人体の腰周りを効率良く空調し、不快感を除去できるコンパクトなトイレ空調装置を提供する。
【解決手段】空気を送風する送風ファン4と、送風ファンの風を導くダクト6と、送風ファンにより送風された空気を加熱し温風とするため、ダクト内に配置されたヒータ5と、送風ファンの風量とヒータの発熱量を制御する制御部11と、送風ファンとダクトとヒータと制御部を収納する本体ケース2と、本体ケースの前方に配置された便座3と、ダクトと連通して本体ケース2の前側面の中央から外れた両側の一方である片側に開口し、便座3の内方向に温風または涼風を送風する吹き出し口8とを備えたトイレ空調装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ室の涼感・暖房用として用いられる空調装置において、人体に効率よく風を送風し、省エネルギーで快適なトイレ空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレ室の温度不快感を解消する装置として従来、暖房便座装置および温風式のトイレ暖房装置が提案されている。特に暖房便座装置は、使用者が便座に着座した時に冷たく感じるヒヤリ感を与えないようにしたもので、一般家庭に広く普及している。しかし、冬場の腰周りの冷えは解消されないものであった。
【0003】
一方、便座に接触する大腿部のヒヤリ感の解消だけでなく、温風によるトイレ暖房装置もあった(例えば、特許文献1参照)。図5(a)に示す本体ケース2は、その前側面の略両端もしくは図5(b)に示す本体ケース2は略中央から、便座3に着座している人体の露出している臀部に図示矢印で示すように温風を送風することで、冬場の室温低下時に便座表面だけでなく人体を昇温し、寒さを与えないような提案もなされている。
【特許文献1】特開2003−310486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の温風によるトイレ暖房装置において、本体ケース2の前側面の略中央に温風吹き出しの開口部7cがある場合では、使用者の衣服により開口部7cが閉塞され局所的に高温となる可能性があり危険である。また、一般的な温水洗浄便座においては中央部には人体局部の洗浄用のノズルユニットがあるため、温風吹き出しの開口部を配置するのにスペース的な問題も考えられる。
【0005】
一方、本体ケース2の前側面の略両端に温風吹き出しの開口部7a、7bがある場合では、人体の外側に温風が逃げやすく、またファンやヒータ(いずれも図示せず)を一つにするとダクトの構成が難しく、それぞれの開口部7a、7bに対してファンやヒータを一つずつ設けると広いスペースを必要とするという問題があった。
【0006】
上記従来の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、便座に着座した人体の腰周りを効率良く空調し、不快感を除去できるコンパクトなトイレ空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトイレ空調装置は上記課題を解決するために、空気を送風する送風ファンと、送風ファンの風を導くダクトと、前記送風ファンにより送風された空気を加熱し温風とするため前記ダクト内に配置されたヒータと、前記送風ファンの風量と前記ヒータの発熱量を制御する制御部と、前記送風ファンと前記ダクトと前記ヒータと前記制御部を収納する本体ケースと、前記本体ケースの前方に配置された便座と、前記ダクトと連通して前記本体ケースの前側面の中央から外れた両側の一方である片側に開口し、便座の内方向に向かって温風または涼風を送風する吹き出し口とで構成されたものである。
【0008】
上記手段によれば、便座の内方向に向かって送風される温風または涼風が人体の外側へ逃げにくくなって腰周りに当たり効率的に空調が行え、かつ片側のみの吹き出し口により省スペース化が図れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトイレ空調装置は、送風された温風または涼風が便座に着座した人体の外側へ逃げ難くなり腰全体を暖め、または涼しくしなくても充分暖かさ、または涼感を得ることができ、省エネルギーで快適なトイレ空調装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、空気を送風する送風ファンと、送風ファンの風を導くダクトと、前記送風ファンにより送風された空気を加熱し温風とするため前記ダクト内に配置されたヒータと、前記送風ファンの風量と前記ヒータの発熱量を制御する制御部と、前記送風ファンと前記ダクトと前記ヒータと前記制御部を収納する本体ケースと、前記本体ケースの前方に配置された便座と、前記ダクトと連通して前記本体ケースの前側面の中央から外れた両側の一方である片側に開口し、前記便座の内方向に向かって温風または涼風を送風する吹き出し口とを備えたものである。
【0011】
これにより、ヒータと送風ファンによる温風、または送風ファンだけによる涼風は本体ケースの前側面の中央から外れた両側の一方である片側に開口した吹き出し口から便座の内周部に向かって送風され、便座に着座した人体の腰部分の外側へ逃げにくくなり、便座に着座して皮膚を露出して最も寒さを感じる腰、すなわち人体の深部温に近い腰椎から仙椎を集中して暖める、または涼しくするため、腰全体を暖め、または涼しくしなくても充分暖かさと涼感を得ることができるとともに、吹き出し口は本体ケースの前側面の中央から外れた両側の一方である片側に位置させて省スペース化が図れ、一般的に狭いトイレ空間において効果的なトイレ空調装置にできる。
【0012】
第2の発明は、特に第1の発明における吹き出し口を、便座の内向きとし、前記内向き方向に向かう風量が外向きの風量より大きくなるように構成したもので、吹き出し口が本体ケースの前側面の中央になくとも、便座に着座し皮膚を露出して最も寒さを感じる人体の深部温に近い腰椎から仙椎に温風または涼風を集中させることができ、従って周辺に風が逃げるのを抑え、低電力で高い空調効果を上げることができる。
【0013】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の吹き出し口にはその内部に縦方向に配置した板状の風向指示板を設けたので、温風または涼風が風向指示板に案内されて便座内に送風され、便座内向きの複雑なダクトを構成することなく、使用者が着座する便座の中央方向に送風できる。
【0014】
第4の発明は第1〜第3のいずれかの発明における本体ケースの前側面に凹部を設け、前記凹部の一部に吹き出し口を臨ました構成とするもので、便座に着座した人の脱衣により前記吹き出し口近辺が閉塞されたとしても、前記凹部の吹き出し口のない脇部分を通じて風が逃げるため熱が籠もる心配もなくなる。
【0015】
第5の発明は、第1〜第4のいずれかの発明において、人体の有無を検知する人体検知手段または人体の便座への着座の有無を検知する着座センサーを有し、制御部は前記人体検知手段からの検知信号に基づき吹き出し口から温風または着座センサーの検知信号に基き涼風を送風させるもので、使用者がトイレ室に入ってきてから着座するまでの間で人体検知手段が使用者の存在を検知し、前記人体検知手段の検知信号に基づき制御部が送風を開始させるため、待機電力を必要としない省エネルギーで快適なトイレ空調装置を提供できる。
【0016】
また、温風送風時は、トイレ室に使用者が入ってきた瞬間に送風ファン、ヒータへの通電を開始し、着座するまでの時間で所定の温度に温風温度を保持するので、ヒータの熱容量による時間遅れで便座への着座瞬間にヒヤリ感を感じたりすることがなく、短時間で適温に昇温するために瞬間的に大電力を供給し、所定温度を超えて使用者に不快感を与えるだけでなく火傷をもたらす危険がなく安全なトイレ空調装置を提供できる。一方、涼風送風時においても人体検知手段による着座検知信号に基づいて制御部が送風を開始させるので、夏場の高温多湿時にはヒータへの通電を停止し、涼風を送風すると皮膚からの蒸泄によるベタツキを除去でき涼感を与え、かつ待機電力のない省エネルギーな装置を提供できる。
【0017】
第6の発明は、第1〜第5のいずれかの発明において、室温を検知または推測可能な温度検出素子を有し、制御部は吹き出し口から吹き出す温風または涼風を、前記室温検知素子による室温に応じて選択し送風するもので、温度検出素子と制御部により、トイレ室の温度に応じて使用者にとって快適な環境を自動的に認識し、温風または涼風を選択して送風するので、他の部屋からトイレに入室する際の室内温度差を低減でき人体の循環器系にストレスを与えない快適、かつ人体に優しいトイレ空調装置を提供できる。
【0018】
第7の発明は、第1〜第6のいずれかの発明において、吹き出し口を、便座の表面に対して鋭角に向けたトイレ空調装置で、便座に着座した人体の露出している腰周りに向かっているため、確実に人体の露出部に直接最適な風を送風できる。
【0019】
第8の発明は、第1〜第6のいずれかの発明におけるトイレ空調装置のヒータと送風ファンを、温水局部洗浄便座の乾燥ユニットに共用したもので、トイレ空調装置としての構成をコンパクトにできる。
【0020】
第9の発明は、第1〜第8の発明に記載したトイレ空調装置を搭載した温水局部洗浄便座で、第1〜第8の発明に記載したトイレ空調装置の作用効果が得られ、快適な環境のトイレ室を形成できる。
【0021】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって発明が限定されるものではない。また、各実施の形態の説明において、同一構成並びに作用効果を奏するところには同じ符号を付して重複した説明を行わないものとする。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるトイレ空調装置の概略構成図で、図2はトイレ空調装置の吹き出し口部を上方から見た断面図である。トイレ空調装置1は、便器1aの後端部に横方向に載せた横長の本体ケース2と本体ケース2に回動自在に取り付け、本体ケース2の前側にある便座3とで構成されている。この本体ケース2は、用便後の人体局部に温水を噴射して洗浄する局部洗浄ノズル(図示せず)を本体ケース2の前側面中央から便座3内に出没させる温水局部洗浄装置(図示せず)および洗浄後の局部を乾燥させる乾燥ユニット(図示せず)を内蔵したケースを利用している。
【0023】
本体ケース2内には、空気を送風する送風ファン4とその下流側に送風ファン4から送られてくる風を加熱する電気ヒータ等のヒータ5が風を導くダクト6内に配置されている。また、本体ケース2は便座3に対向する本体ケース2の前側面の略全域にわたり内部に向かって窪ませた横長の凹部7を形成し、その凹部7の底の一部に、本体ケース2の前側面中央から外れた両側の一方である片側に開口した温風または涼風を吹き出す吹き出し口8を開口し、かつダクト6に連通させている。
【0024】
吹き出し口8は、便座3に着座した使用者(人体ともいう)12の腰部分に相対する高さであって、かつ便座3の内方向に向かって温風または涼風を送風するように吹き出し口8の周壁8aを曲げて便座3の内向きとし、前記内向き方向に向かう風量が人体に対する外向きの風量より大きくなるように構成している。
【0025】
温度検出素子10は、吹き出し口8の上流側にダクト6を通る送風の温度およびダクト6を風が通らない時にはトイレ室の温度を測定するために配設されており、また、温度検出素子10の信号に基づいて便座3の表面温度を推定し、送風ファン4の回転数およびヒータ5の発熱量を制御するマイクロコンピュータおよび周辺回路からなる制御部11も本体ケース2内に配設している。
【0026】
そして、制御部11は、本体ケース2内に設け、使用者12のトイレ内における存在の有無を検知する人体検出手段13と、便座3に対する使用者12の着座の有無を検知する着座センサー14とも電気的に接続し、人体検出手段13が使用者12をトイレ室で検知した信号と温度検出素子10によるトイレ室の温度を取り込んで、トレ室が低温時にはヒータ5を適切な加熱量に加熱し、かつ送風ファン4を適切な回転数で回転させ、一方、トイレ室が高温時には便座3に着座した使用者12を着座センサー14が検知した信号を取り込んだ時から、ヒータ5は加熱させず、送風ファン4のみを、トイレ室温に対応した回転数で回転させる制御をする。
【0027】
また、制御部11は便座3に着座した使用者12による着座センサー14の検知信号が、使用者12の便座3からの立ち上がりで検知信号がなくなるとヒータ5の加熱を停止し、トイレ室から使用者12が出たことを検知した人体検出手段13による不検知信号に基き送風ファン4の回転を停止するように制御する。
【0028】
また、便座3の温度などを設定できるリモートコントローラ15は、本体ケース2と無線通信で信号の送受信を行えるように構成されており、リモートコントローラ15には、吹き出し口8から送風される温風または涼風の温度や風量を変更できる送風調節手段16が配設されている。
【0029】
また図2に示すように、吹き出し口8には縦方向の一つである垂直方向に掛け渡した2枚の風向指示板9a、9bが内蔵され、温風または涼風を便座3の内方向に案内している。なお、吹き出し口8のスペースによっては、この風向指示板9a、9bは増減させてもよい。従って、風向指示板9a、9bは吹き出し口8からの温風または涼風を、周壁8aとともに便座3の内側に向かうように案内する構成にしているため、吹き出し口8が本体ケース2の前側面中央から外れた両側の一方で、本体ケース2の前側面に向かって右片側に位置しておっても、使用者12が最も暖か感を必要とする腰周辺部を効果的に暖めることができる。
【0030】
また、図1に示すように吹き出し口8は、便座3と成す角度が鋭角になるように構成しており、便座3に着座して脱衣している使用者12の露出している腰周辺部に向かって、やや横方向から温風または涼風を送風できるように構成している。従って、確実に使用者12の露出部に直接最適な風を送風でき、トイレ内全体を快適な温度状態に設定しなくても、夏場は皮膚から蒸泄される水分を除去でき涼しく、冬場は暖か感を得ることができ、省エネルギーなトイレ空調装置になる。
【0031】
なお、本体ケース2内にスペースがあれば吹き出し口8の位置は、より下方向に配置しても良く、その際には吹き出し口8と使用者12の腰周辺部との相対位置関係により送風の方向を最適な位置に変更するのが望ましい。本実施の形態では、吹き出し口8の位置が本体ケース2前側面のやや上方に配設してあるため、便座に対し鋭角な角度で送風を行っているが、吹き出し口8の位置が本体ケースの下方に配置できるスペースがあれば、便座3と平行に送風しても良く、使用者12と吹き出し口8の相対位置により送風方向は様々変更するのが望ましい。
【0032】
以上の構成によって、使用者12の入室や着座を人体検出手段13や着座センサー14によって検知すると、直ちに温度検出素子10によってトイレ室の温度を測定し、室温に応じた最適の風を送風する。すなわち、トイレ室が高温時には涼風を、トイレ室が低温時には温風を制御部11で選択し送風する。涼風の送風時には、ヒータ5への通電を切って送風ファン4のみを回転させる。一般に風速が1m上昇するに従い体感温度は1℃下がると言われるため、制御部11は室温の増加にともない送風ファン4の回転数を増加させるように設定してある。
【0033】
特に本実施の形態において、ヒータ5と送風ファン4による温風、または送風ファン4だけによる涼風は、図2に示すように本体ケース2の前側面の中央から外れた両側の一方の片側の吹き出し口8から便座3の内周部に向かって点線矢印のように送風され、便座に着座した人体12の腰部分の外側へ逃げにくくなり、便座に着座して皮膚を露出して最も寒さを感じる腰、すなわち人体の深部温に近い腰椎から仙椎を集中して暖めるため、腰全体を暖めなくても充分暖かさを得ることができる。そして、吹き出し口8は本体ケース2の前側面の中央から外れた両側の一方である片側に位置しているので、本体ケース2の内部に、用便後の人体局部に温水を噴射して洗浄する局部洗浄ノズル(図示せず)を本体ケース2の前側面中央から便座3内に出没させる温水局部洗浄装置を有する場合においては、省スペース化が図れ、一般的に狭いトイレ空間において効果的なトイレ空調装置にできる。
【0034】
また、本実施の形態では、吹き出し口8から吹出される風量は、便座3の内側向き方向に向かう風量が、外側向きの風量より大きくなり、従って吹き出し口8が本体ケース2の前側面の中央になくとも、便座に着座し皮膚を露出して最も寒さを感じる人体の深部温に近い腰椎から仙椎に温風または涼風を集中させることができ、周辺に風が逃げるのを抑え、低電力で高い空調効果を上げることができる。
【0035】
また、本実施の形態では、吹き出し口8に板状の風向指示板9a、9bを縦に設け、温風または涼風を便座3の内側へ案内送風しているので、便座3の内周向きに送風するためにダクトを複雑に構成する必要がなくなり、使用者が着座する便座3の中央方向に送風できる。
【0036】
また、本実施の形態では吹き出し口8を、本体ケース2の前側面を窪ました凹部7の一部に臨ました構成にしているので、便座3に着座した使用者12の脱衣により吹き出し口8の近辺が仮に閉塞されたとしても、凹部7の吹き出し口8のない脇部分を通じて風が逃げるため熱が籠もる心配もなくなる。
【0037】
また、本実施の形態では、人体12の有無を検知する人体検知手段13または人体12の便座3への着座の有無を検知する着座センサー14を有し、使用者がトイレ室に入ってきてから着座するまでの間で人体検知手段または着座センサーが使用者の存在を検知し、人体検知手段または着座センサーの検知信号に基づき制御部11が送風を開始させるため、待機電力を必要としない省エネルギーで快適なトイレ空調装置を提供できる。
【0038】
また、本実施の形態では、室温を検知する温度検出素子10を有し、制御部11は吹き出し口8から吹き出す温風または涼風を、温度検出素子10による室温に応じて選択し送風するので、トイレ室の温度に応じて使用者にとって快適な環境を自動的に認識し、温風または涼風を選択して送風でき、他の部屋からトイレに入室する際の室内温度差を低減でき人体の循環器系にストレスを与えない快適、かつ人体に優しいトイレ空調装置を提供できる。
【0039】
なお、制御部11は温風の送風時は設定温度と室温との差により、差が増大するに従いヒータ5への通電量を増加させるよう制御する。そのため、夏場において高温高湿となりがちなトイレ室の空間において、コンプレッサー等の冷却手段を用いずにコンパクトな冷却装置を実現でき、冬場の低温時には入室直後から着座中最も寒さを感じる腰周りに直接温風が送風され、暖か感を提供できる。なお、温風の送風時に大風量で送風した場合、低温やけどや皮膚の乾燥からくる、かゆみの発生の可能性も考慮し、ファンの回転数は小さめに設定するのがよい。
【0040】
また、春や秋等で人体が快適に生活できる室温である略20〜25℃の範囲では送風を停止することで、使用者12が必要なときのみ温風もしくは涼風を制御部11が自動的に選択し送風する省エネルギーなトイレ空調装置が実現できる。さらに、人体検出手段13により使用者12が入室した時点から温風の送風を開始することで、脱衣直後の最も寒いタイミングに所定温度の温風を送風することができ、トイレ使用時、常に快適となる。そして、涼風の送風時は着座センサー14によって着座を検知したと同時に送風することでより省エネルギーとなる。
【0041】
また、使用者12によっては着座位置が異なったり、排泄時の姿勢等の違いから吹き出し口8から腰周辺部までの距離が異なる可能性があるが、本実施の形態では吹き出し口8から送風される温風の温度や風量を変更できる送風調節手段16が配設されているリモートコントローラ15を用いることで、使用者12の好みの風量、風温に調節できるように構成しているので快適である。この送風調節手段16はリモートコントローラ15に限定するものではなく、本体ケース2や便座3等の操作しやすい位置にあればどこでも良いとともに、さらに、温水洗浄便座への利用の際には他の部品との共用化も可能である。
【0042】
また、本実施の形態では温度検出素子10がトイレ室の温度を検知するようにしたが、推測可能な温度検出素子であっても良い。
【0043】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態1で説明した温水局部洗浄装置を有する便座3に、実施の形態1のトイレ空調装置を搭載した実施の形態2におけるトイレ空調装置の内部の構成図である。本実施の形態は、便座3に実施の形態1で説明したように局部洗浄装置と洗浄後の局部を乾燥させる乾燥ユニットを備えているので、実施の形態1の発明であるトイレ空調装置の送風ファンとヒータを前記乾燥ユニットにも共用化する構成にした点で実施の形態1の発明と異なり、それ以外の構成並びに作用効果は基本的に同じである。
【0044】
すなわち、トイレ空調装置1のダクト6はヒータ5に近い下流側で二つに分岐し、一方は腰周りを暖め、または涼しくするため温風または涼風を吹出す吹き出し口8と連通させ、他方は吹き出し口8の下方において、そのまま本体ケース2の前側面に開口し、洗浄した局部を乾かす温風を吹出す乾燥用の吹き出し口8bを構成する。吹き出し口8bには図2と同様の風向指示板9cが配置してある。また、ダクト6の分岐個所には、電動弁等の風路切替部17が設けられ、制御部11からの信号を受けそれぞれの吹き出し口8および吹き出し口8bへの風量を制御することが可能である。
【0045】
上記実施の形態において、トイレ室に入り脱衣して便座3に着座して用便する使用者12の腰周りに向って温風または涼風を吹出す吹き出し口8の作用は、実施の形態1で説明したと同様にして行われる。そして、特に本実施の形態では、排泄終了後の局部乾燥のため、使用者12がリモートコントローラ15に設けた乾燥スイッチ(図示せず)を押すことで制御部11が信号を受信して風路切替部17を吹き出し口8bに通じるダクトに切り替え、送風ファン4およびヒータ5による温風を乾燥用の吹き出し口8bから吹出せ、洗浄で濡れた局部を乾燥させる。
【0046】
このように局部乾燥用の乾燥ユニットとして、トイレ空調装置1の送風ファン4やヒータ5を共有することで、省スペース化および低コスト化が図れる。また、一般的な温水局部洗浄便座では、おしり洗浄用ノズルによって占められている本体ケース2の前側面の中央部から外れた両側の一方である片側に吹き出し口8および吹き出し口8bを構成するため、収まりがよい。
【0047】
なお、本実施の形態で脱臭材と送風ファンおよびダクトから構成される脱臭ユニットを温水局部洗浄便座に備えているものでは、前記脱臭ユニットにもトイレ空調装置の送風ファン4およびダクト6の共用化が考えられる。
【0048】
(実施の形態3)
図4は、実施の形態3におけるトイレ空調装置の内部の構成図である。本実施の形態は、実施の形態1で説明した吹き出し口を、さらに便座に対して鋭角を成して下方に向けた点で実施の形態1の発明と異なり、それ以外の構成並びに作用効果は基本的に同じである。
【0049】
トイレ空調装置1の本体ケース2は、吹き出し口8cを、便座3に着座した使用者(人体ともいう)12の腰部分に相対する高さであって、かつ便座3の内方向に向かって温風または涼風を送風するように吹き出し口8cの周壁8a(図2を参照)を曲げて便座3の内向きとし、前記内向き方向に向かう風量が人体に対する外向きの風量より大きくなるように構成し、更に便座3の表面に対して鋭角を成すように下方へ向けている。
【0050】
なお、本体ケース2には便器1aの洗浄水用の貯水タンク19も内蔵しているものである。
【0051】
上記実施の形態において、トイレ室に入り脱衣して便座3に着座して用便する使用者12の腰周りに向って温風または涼風を吹出す吹き出し口8cの作用は、実施の形態1で説明したと同様にして行われる。そして、特に本実施の形態では、図4に示すように吹き出し口8cが便座3と成す角度が鋭角になっており、人体12の露出している腰周辺部に向かっているため、確実に人体12の露出部に直接最適な風を送風でき、トイレ内全体を快適な温度状態に設定しなくても、夏場は皮膚から蒸泄される水分を除去でき涼しく、冬場は暖か感を得ることができ、省エネルギーなトイレ空調装置になる。また、貯水タンク19と一体化を図ることで省スペース化も実現される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明にかかるトイレ空調装置は、便座に着座した使用者の腰周辺部を効果的に暖めることができるので、温水洗浄便座に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態第1におけるトイレ空調装置の内部構成図
【図2】同実施の形態第1におけるトイレ空調装置の吹き出し口部分の上面の断面図
【図3】本発明の実施の形態2におけるトイレ空調装置を搭載した温水局部洗浄便座の内部構成図
【図4】本発明の実施の形態3におけるトイレ空調装置の内部構成図
【図5】(a)従来の暖房便座の上面図(b)他の従来の暖房便座の上面図
【符号の説明】
【0054】
1トイレ空調装置
2 本体ケース
3 便座
4 送風ファン
5 ヒータ
6 ダクト
7 凹部
8、8b、8c 吹き出し口
9a、9b、9c 風向指示板
10 温度検出素子
11 制御部
12 使用者
13 人体検出手段
14 着座センサー
15 リモートコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を送風する送風ファンと、前記送風ファンの風を導くダクトと、前記送風ファンにより送風された空気を加熱し温風とするため前記ダクト内に配置されたヒータと、前記送風ファンの風量と前記ヒータの発熱量を制御する制御部と、前記送風ファンと前記ダクトと前記ヒータと前記制御部を収納する本体ケースと、前記本体ケースの前方に配置された便座と、前記ダクトと連通して前記本体ケースの前側面の中央から外れた両側の一方である片側に開口し、前記便座の内方向に温風または涼風を送風する吹き出し口とを備えたトイレ空調装置。
【請求項2】
吹き出し口は、便座の内向きとし、前記内向き方向の風量が外向きの風量より大きくなるように構成した請求項1記載のトイレ空調装置。
【請求項3】
吹き出し口は、その内部に縦方向に配置した板状の風向指示板を設けてなる請求項1または請求項2に記載のトイレ空調装置。
【請求項4】
本体ケースの前側面に凹部を形成し、前記凹部の一部に吹き出し口を臨ましてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のトイレ空調装置。
【請求項5】
人体の有無を検知する人体検知手段または着座の有無を検知する着座センサーを有し、制御部は前記人体検知手段からの検知信号に基づき吹き出し口から温風または着座センサーの検知信号に基き吹き出し口から涼風を送風させる請求項1〜4のいずれか1項に記載のトイレ空調装置。
【請求項6】
室温を検知または推測可能な温度検出素子を有し、制御部は吹き出し口から吹き出す温風または涼風を、前記室温検出素子による室温に応じて選択し送風させる請求項1〜5のいずれか1項に記載のトイレ空調装置。
【請求項7】
吹き出し口は、便座の表面に対して鋭角に向けてなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のトイレ空調装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7に記載したものにあって、そのヒータと送風ファンを、温水局部洗浄便座の乾燥ユニットに共用してなるトイレ空調装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8に記載したトイレ空調装置を搭載した温水局部洗浄便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−109897(P2006−109897A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297406(P2004−297406)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】