説明

トナー担持体、プロセスカ−トリッジ及び電子写真装置

【課題】 高い帯電付与性を有し、かつ高温高湿環境下と低温低湿環境下での帯電付与性の差が小さく、画像弊害が抑制された高品位のトナー担持体を提供する。さらに前記トナー担持体を用いたプロセスカ−トリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】 基体の表面に、導電性を有する表面層が形成されたトナー担持体であって、該表面層は、帯電付与セグメントからなる主鎖に、主鎖よりも重合度が小さく疎水性セグメントからなる側鎖が結合したグラフト共重合体と、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリエステル、ポリカ−ボネ−ト、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリルからなる群から選ばれる少なくとも1種からなるポリオ−ル成分を、ポリイソシアネ−ト及び/又はメラミンで架橋した樹脂、又はフェノ−ル樹脂と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられるトナー担持体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機やファクシミリやプリンタ−においては、感光体が帯電手段により帯電され、レ−ザ−により静電潜像を形成する。次に、現像容器の内部のトナーがトナー供給ロ−ラ及びトナー規制部材によりトナー担持体の上に塗布され、感光体とトナー担持体との接触部又は近接部でトナーによる現像が行われる。その後、感光体の上のトナーは、転写手段により記録紙に転写され、熱と圧力により定着され、感光体の上に残留したトナーはクリ−ニングブレ−ドによって除かれる。
【0003】
電子写真装置において、トナー担持体によるトナーへの帯電付与性は画質、画像安定性に対して大きく影響する。そのため、トナーに対する帯電付与性をコントロ−ルするために種々の帯電制御剤が用いられる。
例えば特許文献1では、メチルメタクリレ−トモノマ−と含窒素ビニルモノマ−の共重合体を含有するトナー担持体が報告されている。また特許文献2では、炭素数4以上のアルキル鎖を有するメタクリル酸エステルモノマ−とアミノ基を有するメタクリル酸エステルモノマ−との共重合体を含有するトナー担持体が報告されている。さらに特許文献3ではアミノ基を含有するモノマ−とフッ素基を含有するモノマ−、及びビニル基を有するカップリング剤とのブロック共重合体を含有するトナー担持体が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特登録第3740274号公報
【特許文献2】特開2005−31657号公報
【特許文献3】特開平10−55109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、複写機、プリンタ−あるいはファクシミリなど、電子写真方式を採用した装置に使用されるトナー担持体に必要とされる性能はより高度になっており、より安定した帯電付与性や、高画質と高い画像耐久性(画像安定性)の両立が要求されるようになっている。
しかし特許文献1及び2では、高温高湿環境下に長期間放置した際に、帯電付与性の不足が生じる可能性がある。また特許文献3では、高温高湿環境下と低温低湿環境下での帯電付与性の差が大きく、特に低温低湿環境下での過剰な帯電付与による画像不具合が起こる可能性があり、環境変動の点において改良の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、高温高湿環境下でも高い帯電付与性を有し、かつ高温高湿環境下と低温低湿環境下での帯電付与性の差が小さく、画像弊害が抑制された高品位のトナー担持体を提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像の安定的な提供に資するプロセスカ−トリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基体と、導電性を有する表面層とを有するトナー担持体であって、
該表面層は、
下記化学式(1)で示される構造と下記化学式(2)で示される構造から選ばれる少なくとも一方の構造を有する主鎖に、下記化学式(3)で示される構造を有しており、かつ、該主鎖よりも重合度が小さい重合体からなる側鎖が結合したグラフト共重合体、
および
ポリオールとイソシアネートとを反応させてなる樹脂、ポリオールとメラミンとを反応させてなる樹脂およびフェノール樹脂から選ばれる何れかの樹脂を含むことを特徴とするトナー担持体:
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

(上記化学式中、R〜Rは水素原子もしくはメチル基、R、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、R〜R10は各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、R11は炭素数1〜18の直鎖又は分岐を有するアルキル基又はシクロアルキル基、X−はハロゲンイオン又はパラトルエンスルホン酸イオンを表す。)。
【0011】
また本発明の他の態様によれば、少なくともトナー担持体が装着されてなり、電子写真装置に着脱可能なプロセスカ−トリッジにおいて、該トナー担持体が上記のトナー担持体であるプロセスカートリッジが提供される。
さらに本発明の他の態様によれば、潜像を担持する感光体に対向した状態でトナーを担持するトナー担持体を備え、該トナー担持体が前記感光体にトナーを付与することにより該潜像を現像する電子写真装置において、該トナー担持体が上記のトナー担持体である電子写真装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トナー担持体の表面層が、特定の構造を有するグラフト共重合体を含有することにより、高い帯電付与性を有し、かつ帯電付与性の環境依存性、画像弊害が抑制された高品位のトナー担持体が得られる。また前記のトナー担持体を用いることで高品位なプロセスカ−トリッジ、及び電子写真装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のトナー担持体の一例を示す概念図である。
【図2】本発明のプロセスカ−トリッジの一例を示す概略構成図である
【図3】本発明の電子写真装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】液循環型浸漬塗工装置の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るトナー担持体1は、図1に示すように、円柱状又は中空円筒状の導電性の基体2と、弾性層3と、表面層4とが順次積層されている。
<基体>
基体2は、トナー担持体1の電極及び支持部材として機能するもので、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属又は合金;クロム、又はニッケルで鍍金(めっき)処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。
【0015】
<弾性層>
非磁性一成分接触現像系プロセスでは、弾性層を有するトナー担持体が好適に用いられる。
【0016】
弾性層3は、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧されるような硬度や弾性を、トナー担持体に付与するものである。弾性層3は、通常、ゴム材の成型体により形成されることが好ましい。上記ゴム材としては、従来より導電性ゴムロ−ラに用いられている種々のゴム材を用いることができる。ゴム材に使用するゴムとしては、以下のものが挙げられる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコ−ンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム。これらは単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。この中でも、特にセット性能の観点からシリコ−ンゴムが好ましい。シリコ−ンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体が挙げられる。
【0017】
弾性層3の厚さは2.0〜6.0mmの範囲にあることが好ましく、3.0〜5.0mmの範囲にあることがより好ましい。
弾性層3中には、導電性付与剤、非導電性充填剤、架橋剤、触媒の如き各種添加剤が適宜配合される。導電性付与剤としては、カ−ボンブラック;アルミニウム、銅の如き導電性金属;酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタンの如き導電性金属酸化物の微粒子を用いることができる。このうち、カ−ボンブラックは比較的容易に入手でき、良好な導電性が得られるので特に好ましい。導電性付与剤としてカ−ボンブラックを用いる場合は、ゴム材中のゴム100質量部に対して10〜80質量部配合される。非導電性充填剤としては、シリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛又は炭酸カルシウムが挙げられる。架橋剤としては、ジ−t−ブチルパ−オキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサン又はジクミルパ−オキサイドが挙げられる。
【0018】
<表面層>
表面層4は、下記化学式(1)および下記化学式(2)で示される構造から選ばれる少なくとも一方の構造を有する重合体からなる主鎖と、該主鎖よりも重合度が小さく、かつ、下記化学式(3)で示される構造を有する重合体からなる側鎖が該主鎖に結合してなるグラフト共重合体を含有する。
【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

上記化学式(1)〜(3)中、R〜Rは水素原子もしくはメチル基、R、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、R〜R10は各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、R11は炭素数1〜18の直鎖又は分岐を有するアルキル基又はシクロアルキル基、X−はハロゲンイオン又はパラトルエンスルホン酸イオンを表す。
【0022】
トナー担持体は、その表面での摺擦のみによってトナーに帯電付与を行う。そのため、トナー担持体に帯電付与剤を添加することにより帯電付与性の向上を図る場合、帯電付与剤を表面に局在化させることが重要となる。帯電付与剤の表面局在化は、バインダ−樹脂と帯電付与剤との極性差により起こる現象であると考えられる。即ち、極性の高いバインダ−樹脂に対し、添加する帯電付与剤の極性が低い場合、この帯電付与剤は表面に局在する傾向が高くなる。
【0023】
アミノ基を含有するモノマ−とアルキルエステルモノマ−との共重合体は帯電付与剤として用いられるが、ランダム共重合体の場合、分子内に極性の分布がほとんどなく、分子全体が均一な極性を呈し、表面局在化傾向が充分でない場合がある。またABジブロック型の分子の場合、疎水性のセグメントのみが表面に配向し、帯電付与セグメント、すなわちアミノ基含有モノマ−からなるブロックは表面層の内部に配向する界面活性剤に類似した配向形態をとり、帯電付与が充分でなくなる場合がある。
【0024】
本発明に係るグラフト共重合体が特に良好な特性を示す理由は完全に明らかではないが、以下のように推測される。本発明に示すグラフト共重合体は帯電付与セグメント、すなわちアミノ基を含有するモノマ−からなる主鎖に、疎水性セグメント、すなわちアルキルエステルモノマ−からなる側鎖が結合した分子である。そのため帯電付与セグメント全体が表面近傍に効率的に局在化するため、高い帯電付与性を示すと考えられる。また、一般的に直線性の高い分子は分岐が少なく分子運動性が高いため、分子自体又は官能基の配向が周囲の温湿度環境に影響を受けやすいと考えられる。グラフト型分子は主鎖に複数の側鎖が結合し、分岐を多く有する構造であるため、分子運動が抑制され帯電付与性が温湿度により変化しにくいものと推測される。
【0025】
主鎖である帯電付与セグメントを構成する重合体は、前記した化学式(1)および化学式(2)で示される構造から選ばれる少なくとも一方の構造を有する。
当該重合体中に、化学式(1)で示される構造を与えるモノマ−の具体例を以下に挙げる。
N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−メチルラウリルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリレ−ト」はメタクリレ−トあるいはアクリレ−トを意味する(以下、同様)。
【0026】
また当該重合体に、化学式(2)の構造を与えるモノマ−の具体例を以下に挙げる。
(メタ)アクリル酸トリメチルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸トリメチルアミノメチルカチオン、(メタ)アクリル酸ジメチルブチルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸トリエチルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸ジメチルオクチルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸ジエチルオクチルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸ジメチルラウリルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸トリブチルアミノエチルカチオン等の臭化物、塩化物、パラトルエンスルホン酸塩、ナフチルスルホン酸塩等が挙げられる。
なお、「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸あるいはアクリル酸を意味する(以下、同様)。
上記の3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するモノマ−を主鎖成分とするグラフト共重合体は、高い帯電付与性を示し、またバインダ−樹脂に対し、適度な極性差を生じるため、トナー担持体として好適である。
【0027】
側鎖である疎水性セグメントを構成する重合体は、前記化学式(3)で示される構造を有する。当該重合体に化学式(3)で示される構造を与えるモノマーの具体例を以下に挙げる。
メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、tert−ブチル(メタ)アクリレ−ト、iso−ブチル(メタ)アクリレ−ト、n−アミル(メタ)アクリレ−ト、n−ヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト、n−オクチル(メタ)アクリレ−ト、iso−オクチル(メタ)アクリレ−ト、n−ノニル(メタ)アクリレ−ト、n−ラウリル(メタ)アクリレ−ト、n−トリデシル(メタ)アクリレ−ト、n−ステアリル(メタ)アクリレ−ト、イソボニル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト。
【0028】
特に好ましいモノマーの組合せは、帯電付与セグメントを構成するモノマ−が化学式(4)に示す構造を有し、かつ疎水性セグメントを構成するモノマ−が化学式(5)に示す構造を有する組合せとした場合である。上記の組合せとした場合、主鎖と側鎖の極性バランス、及びトナー担持体として用いられる中〜高極性のバインダ−との極性バランスが非常に良好となるため、特に好適な帯電付与特性を示す。
【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
(上記化学式中、R12、R13は水素原子もしくはメチル基、R14は炭素数2〜4のアルキレン基、R15は炭素数4〜8のアルキル基、R16は炭素数1〜4のアルキル基、X−はハロゲンイオン又はパラトルエンスルホン酸(PTSA)イオンを表す。)
本発明において、該グラフト共重合体の側鎖の重合度の合計は、主鎖の重合度より小さいことを特徴とする。側鎖の重合度の合計が、主鎖の重合度を超えると、帯電付与性の不足が起こり、画像に影響を及ぼす場合がある。
【0032】
該グラフト共重合体の側鎖の重合度の合計は、主鎖の重合度の5%以上60%以下であることが特に好ましい。側鎖の重合度の合計は、主鎖の重合度の5%以上60%以下である場合、高い帯電付与性と、帯電付与性の環境変化抑制が高いレベルで両立できる。
該グラフト共重合体の重量平均分子量は8000〜100000が好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、合成の際、主鎖、側鎖の比率制御が容易であり、バインダ−樹脂との相溶性が良好となる。
【0033】
該グラフト共重合体の含有量は、表面層4に含有されるバインダ−樹脂固形分100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましい。含有量が0.5質量部以上の場合、帯電付与効果に特に優れ、5.0質量部以下である場合、弊害抑制効果に特に優れる。
本発明において、表面層4に含有されるバインダ−樹脂成分は、ポリオールとイソシアネートとを反応させてなる樹脂、ポリオールとメラミンとを反応させてなる樹脂およびフェノール樹脂から選ばれる何れかの樹脂を含む。
ここで、ポリオールとしては、脂肪族ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオールおよびアクリルポリオールから選ばれる何れかを好適に用いることができる。
さらに具体的には、該脂肪族ポリエステルジオールとしては、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオール又は3−メチル−1,5−ペンタンジオールと、アジピン酸又はセバシン酸との縮合反応により得られるものが挙げられる。
また、ポリカーボネートジオールとしては、1,6−ヘキサンジオールまたは3−メチル−1,5−ペンタンと、アジピン酸とホスゲンとの縮合反応により得られるポリカーボネートジオールが挙げられる。
さらに、アクリルポリオールとしては、水酸基を含有する(メタ)アクリレートと炭素数が8以下であるアルキル基の(メタ)アクリル酸エステルとの二元共重合体、および、水酸基を含有する(メタ)アクリレートと炭素数が8以下であるアルキル基の(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとの三元共重合体が挙げられる。
【0034】
上記のバインダ−樹脂成分は、トナー担持体として必要な膜強度を有し、かつ中〜高極性を呈するため、前述のグラフト共重合体と適度な極性差を生じ、高い帯電付与性と帯電付与性の環境変化抑制が両立できる。
特にポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル系ポリウレタン樹脂及び/又は脂肪族系ポリエステルポリウレタン樹脂を用いた場合、トナー由来の付着物(いわゆるフィルミング)が特に少なく、帯電付与剤添加の効果が長期に渡って持続する。このため、これらの樹脂が好ましい。
【0035】
具体的にはポリエ−テルポリオ−ルとしては、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリ2−メチルテトラメチレングリコ−ルが挙げられる。ポリエーテルの中でも著しく極性の高いエチレングリコールでは該グラフト共重合体の表面局在性が十分でないため、所望の効果が得られない場合がある。
またポリエステルポリオ−ルとしては、1,4−ブタンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ルと、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸との縮合反応により得られる脂肪族ポリエステルポリオ−ルが挙げられる。これらのポリオ−ル成分は必要に応じてあらかじめ2,4−トリレンジイソシアネ−ト(TDI)、1,4ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI)、イソホロンジイソシアネ−ト(IPDI)の如きイソシアネ−トにより鎖延長したプレポリマ−としてもよい。
【0036】
上記のポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル系ジオール及び脂肪族系ポリエステルジオール以外のポリオール成分としては、ポリカーボネート系、ポリオレフィン系、及びアクリル系のポリオールが挙げられるが、比較的高極性であるポリカーボネート系であれば、1,6−ヘキサンジオール及び/又は3−メチル−1,5−ペンタンと、アジピン酸とホスゲンとの縮合反応により得られるポリカーボネートジオールとすることが好ましい。
【0037】
また比較的低極性であるポリオレフィン系であれば、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオールであることが好ましい。水添ブタジエン、水添イソプレンの如き著しく低極性となる材料は該グラフト共重合体との不相溶により、所望の効果が得られない場合がある。
さらにアクリル系であれば、水酸基を含有するメタクリレート又は水酸基を含有するアクリレート、炭素数が8以下であるアルキル基のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル及び/又はスチレンを共重合して得られるアクリルポリオールを用いると、該グラフト共重合体との極性差が適当となり、高い帯電付与性と帯電付与性の環境変化抑制が両立できる。
【0038】
これらのポリオ−ル成分と反応させるイソシアネ−ト化合物としては、特に限定されるものではないが、エチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネ−ト、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネ−トの如き脂環式ポリイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI)の如き芳香族イソシアネ−ト及びこれらの共重合物や、そのブロック体を用いることができる。
【0039】
またポリオ−ル成分と反応させるメラミンとしては特に限定されるものではないが、フルアルキル型、イミノ型、メチロール型の如きメラミンを用いることができる。メラミンとしては表面層の硬度上昇によるフィルミングの観点から、重合度が2.0以下のものを用いることが好ましい。
さらにフェノール樹脂も上記の如きポリウレタン樹脂、メラミン硬化樹脂と同程度の極性を呈するため、好ましく用いることが可能である。

【0040】
表面層4は導電性を有することが好ましい。導電性の付与手段としてはイオン導電剤や導電性微粒子の添加が挙げられるが、安価であり抵抗の環境変動が少ない導電性微粒子が好適に用いられ、また導電付与性と補強性の観点からカ−ボンブラックが特に好ましい。該導電性微粒子の性状としては、一次粒子径18nm以上50nm以下、かつDBP吸油量が50ml/100g以上160ml//100g以下であるカ−ボンブラックであると、導電性、硬度、分散性のバランスが良好であり好ましい。導電性微粒子の含有率は、表面層を形成する樹脂成分100質量部に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0041】
トナー担持体として表面粗度が必要な場合は、表面層4に粗さ制御のための微粒子を添加してもよい。粗さ制御用微粒子としては、体積平均粒径が3〜20μmであることが好ましい。また、表面層に添加する粒子添加量が、表面層の樹脂固形分100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。粗さ制御用微粒子には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエ−テル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、フェノ−ル樹脂の微粒子を用いることができる。
【0042】
表面層4の形成方法としては特に限定されるものではないが、塗料によるスプレ−、浸漬、又はロ−ルコ−トが挙げられる。浸漬塗工においては、特開昭57−5047号公報に記載されているような浸漬槽上端から塗料をオ−バ−フロ−させる方法が、表面層を形成する方法として簡便で生産安定性に優れている。
【0043】
図4は浸漬塗工装置の概略図である。円筒形の浸漬槽25は、トナー担持体外径よりわずかに大きな内径を有し、トナー担持体の軸方向の長さより大きな深さを有している。浸漬槽25の上縁外周には環状の液受け部が設けられており、撹拌タンク27と接続されている。また浸漬槽25の底部は撹拌タンク27と接続されている。撹拌タンク27の塗料は、液送ポンプ26によって浸漬槽25の底部に送り込まれる。浸漬槽25の上端部からは、塗料がオ−バ−フロ−しており、浸漬槽25の上縁外周の液受け部を介して撹拌タンク27に戻る。弾性層3を設けた芯体2は昇降装置28に垂直に固定され、浸漬槽25の中に浸漬し、引き上げることで表面層4を形成する。
【0044】
本発明のトナー担持体は、磁性一成分現像剤や非磁性一成分現像剤を用いた非接触型現像装置及び接触型現像装置や、二成分現像剤を用いた現像装置等いずれにも適用することができる。
本発明のプロセスカ−トリッジ及び電子写真装置は、上記本発明のトナー担持体を有するものであれば、複写機、ファクシミリ、又はプリンタ−に限定されるものではない。
【0045】
本発明のトナー担持体を搭載した本発明のプロセスカ−トリッジ及び電子写真装置の一例として、非磁性一成分現像系プロセスを用いたプリンタ−を以下に説明する。図2に示すように、プロセスカ−トリッジは、現像装置10、感光体5、帯電部材12、クリ−ニング装置13等を備えている。現像装置10は、一成分トナーとして非磁性トナー8を収容した現像容器と、現像容器の内部の長手方向に延在する開口部に位置し感光体5と対向設置されたトナー担持体1とを備え、感光体5の上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。プロセスカ−トリッジは電子写真装置に着脱可能である。
【0046】
図3に示すように、プリンタ−には図示しない回転機構により回転される感光体5が備えられる。感光体5の周りには、感光体5の表面を所定の極性・電位に帯電させる帯電部材12と、帯電された感光体5の表面に画像露光光11を照射して静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置とが配置される。更に感光体5の周りには、形成された静電潜像の上にトナーを付着させて現像する本発明のトナー担持体1を有する現像装置10が配置される。さらに、紙22にトナー像を転写した後、感光体5の上をクリ−ニングするクリ−ニング装置13が設けられる。
紙22の搬送経路上には、転写されたトナー像を紙22の上に定着させる定着装置15が配置される。
【実施例】
【0047】
本発明のグラフト共重合体の合成には公知の方法を用いることができる。
以下にグラフト共重合体合成の参考として合成例を示す。
【0048】
[合成例1]
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレ−ト/メチルアクリレ−ト グラフト共重合体(グラフト共重合体A−1)の合成;
1−1. 片末端にアクリロイル基を有するメチルアクリレ−トマクロモノマ−の合成;
アルゴン雰囲気下で、無水THF 400ml中に表1に記載の材料を加えた。
【0049】
【表1】

【0050】
次に、メチルアクリレ−ト172.0g(2.0mol)を滴下し、5℃で1時間反応させた。次いでこの重合物を5%塩酸を添加したメタノ−ル3L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、Mn=550
、Mw/Mn=1.10の片末端に水酸基を有するポリメチルアクリレ−トを得た。
更に、このポリメチルアクリレ−ト77.4gを無水THF
450mlに溶解し、トリエチルアミン 38.4g (0.38mol)、塩化アクリロイル
34.6g (0.38mol)を加え、室温で6時間反応させた。この反応物をメタノ−ル2L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した後、減圧下でメタノ−ルを留去し、片末端にアクリロイル基を有するメチルアクリレ−トマクロモノマ−を得た。
【0051】
1−2. N,N−ジメチルアミノエチルアクリレ−ト/メチルアクリレ−ト
グラフト共重合体の合成;
アルゴン雰囲気下で、表2に記載の材料を、メチルエチルケトン 873.5g に溶解させ、温度80℃で3時間反応させた。
【0052】
【表2】

この反応物を0℃に冷却し、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレ−ト/メチルアクリレ−ト
グラフト共重合体A−1(50%メチルエチルケトン溶液)を得た。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は88000であった。
【0053】
[合成例2]
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレ−ト/2−エチルヘキシルメタクリレ−ト
グラフト共重合体(グラフト共重合体A−7)の合成;
2−1. 片末端にアクリロイル基を有する2−エチルヘキシルメタクリレ−トマクロモノマ−の合成;
アルゴン雰囲気下で、無水THF400ml中に、表3に記載の材料を加えた。
【0054】
【表3】

【0055】
さらに2−エチルヘキシルメタクリレ−ト396.0g(2.0mol)を滴下し、温度5℃で2時間反応させた。次いでこの重合物を、5%塩酸を添加したメタノ−ル3L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、Mn=3000
、Mw/Mn =1.16の片末端に水酸基を有するポリ2−エチルヘキシルメタクリレ−トを得た。
さらに、このポリ2−エチルヘキシルメタクリレ−ト178.2g を無水THF 450mlに溶解し、トリエチルアミン 7.07g(70.0mmol)、塩化アクリロイル
6.37g(70.0mmol)を加え室温で6時間反応させた。この反応物をメタノ−ル2L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した後、減圧下でメタノ−ルを留去し、片末端にアクリロイル基を有する2−エチルヘキシルメタクリレ−トマクロモノマ−を得た。
【0056】
2−2. N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレ−ト/2−エチルヘキシルメタクリレ−ト
グラフト共重合体の合成;
アルゴン雰囲気下で 、上記2−1で合成した、片末端にアクリロイル基を有するポリ2−エチルヘキシルメタクリレ−トマクロモノマ−277.2g、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレ−ト370.0g、過酸化ベンゾイル1.90gをメチルエチルケトン647.2gに溶解した。そして、80℃で3時間反応させた。この反応物を0℃に冷却し、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト/2−エチルヘキシルメタクリレ−ト
グラフト共重合体A−7(50%メチルエチルケトン溶液)を得た。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は29000であった。
【0057】
[合成例3]
メタクリル酸ジエチルオクチルアミノエチルブロマイド/ブチルメタクリレ−ト グラフト共重合体(グラフト共重合体A−13)の合成;
3−1. 片末端にアクリロイル基を有するブチルメタクリレ−トマクロモノマ−の合成;
アルゴン雰囲気下で無水THF 400ml中に、表4に記載の材料を加え、さらにブチルメタクリレ−ト284.0g(2.0mol) を滴下し、5℃で1時間反応させた。
【0058】
【表4】

【0059】
次いでこの重合物を5%塩酸を添加したメタノ−ル3L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、Mn=550
、Mw/Mn =1.10の片末端に水酸基を有するポリブチルメタクリレ−トを得た。さらにこのポリブチルメタクリレ−ト127.8gを無水THF 450mlに溶解し、トリエチルアミン 38.4g(0.38mol)、塩化アクリロイル
34.6g(0.38mol)を加え室温で6時間反応させた。この反応物をメタノ−ル2L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した後、減圧下でメタノ−ルを留去し、片末端にアクリロイル基を有するブチルメタクリレ−トマクロモノマ−を得た。
【0060】
3−2. メタクリル酸ジエチルオクチルアミノエチルブロマイド/ブチルメタクリレ−ト
グラフト共重合体の合成;
回転機構付オ−トクレ−ブ中で乾燥エタノ−ル 600gにジエチルアミノエチルメタクリレ−ト
407.0g、臭化n−オクチル467.1gを加え、80℃の温度で3時間反応させた。次に反応混合物を5℃に冷却し、メタクリル酸ジエチルオクチルアミノエチルブロマイドを得た。
反応容器の内部をアルゴン置換した後、乾燥エタノ−ル 241.0g、前述の片末端にアクリロイル基を有するポリブチルメタクリレ−トマクロモノマ−9.37g
、過酸化ベンゾイル 2.50g を加え、80℃で3時間反応させた。この反応物を0℃に冷却し、メタクリル酸ジエチルオクチルアミノエチルブロマイド/ブチルメタクリレ−ト
グラフト共重合体A−13(50%エタノ−ル溶液)を得た。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は96000であった。
【0061】
[合成例4]
メタクリル酸ジメチルオクチルアミノエチルブロマイド/ブチルメタクリレ−ト グラフト共重合体(グラフト共重合体A−36)の合成;
4−1. 片末端にアクリロイル基を有するブチルメタクリレ−トマクロモノマ−の合成;
アルゴン雰囲気下で無水THF400ml中に、トリメチルシロキシエチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタ−ル4.48g(16.0mmol)とトリスジメチルアミノスルファ−トリメチルシリルビフルオライド0.048g(0.176mmol)を加えた。さらにブチルメタクリレ−ト284.0g(2.0mol)を滴下し、5℃で2時間反応させた。次いでこの重合物を5%塩酸を添加したメタノ−ル3L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、Mn=1050
、Mw/Mn =1.20の片末端に水酸基を有するポリブチルメタクリレ−トを得た。さらにこのポリブチルメタクリレ−ト127.8gを無水THF 450mlに溶解し、トリエチルアミン 19.2g(0.19mol)、塩化アクリロイル
17.3g(0.19mol)を加え室温で6時間反応させた。この反応物をメタノ−ル2L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した後、減圧下でメタノ−ルを留去し、片末端にアクリロイル基を有するブチルメタクリレ−トマクロモノマ−を得た。
【0062】
4−2. メタクリル酸ジメチルオクチルアミノエチルブロマイド/ブチルメタクリレ−ト
グラフト共重合体の合成
回転機構付オ−トクレ−ブ中で乾燥エタノ−ル 600gにジメチルアミノエチルメタクリレ−ト
314.0g、臭化n−オクチル424.6gを加え、80℃の温度で3時間反応させた。次に反応混合物を5℃に冷却し、メタクリル酸ジメチルオクチルアミノエチルブロマイドを得た。
反応容器の内部をアルゴン置換した後、乾燥エタノ−ル 227.8g、前述の片末端にアクリロイル基を有するポリブチルメタクリレ−トマクロモノマ−127.8g
、過酸化ベンゾイル 2.50g を加え、80℃で3時間反応させた。この反応物を0℃に冷却し、メタクリル酸ジメチルオクチルアミノエチルブロマイド/ブチルメタクリレ−ト
グラフト共重合体A−36(50%エタノ−ル溶液)を得た。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は41000であった。
【0063】
[合成例5] ランダム共重合体A−37の合成(比較例2);
アルゴン雰囲気下で、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト314.0g(2.0mol)、メチルメタクリレ−ト160.0g(1.6mol)、過酸化ベンゾイル 1.42gを乾燥MEK(メチルエチルケトン)474.0gに溶解し、80℃で3時間反応させた。この反応物を0℃に冷却し、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト/メチルメタクリレ−ト
ランダム共重合体A−37(50%メチルエチルケトン溶液)を得た。得られたランダム共重合体の重量平均分子量は38000であった。
【0064】
[合成例6] ABジブロック共重合体A−39の合成(比較例4);
アルゴン雰囲気下で、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト314.0g(2.0mol)、過酸化ベンゾイル 0.94gを乾燥MEK 474.0gに溶解し、80℃で3時間反応させた。ついで第二段階としてメチルメタクリレ−ト160.0g(1.6mol)を20分間かけて滴下し、再び80℃で2.5時間反応させた。この反応物を0℃に冷却し、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト/メチルメタクリレ−ト ABジブロック共重合体A−39(50%メチルエチルケトン溶液)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は46000であった。
【0065】
[合成例7]
メチルメタクリレ−ト/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−トグラフト共重合体(グラフト共重合体A−41)の合成(比較例6);
7−1. 片末端にアクリロイル基を有するN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−トマクロモノマ−の合成;
アルゴン雰囲気下で、無水THF 400ml中に、トリメチルシロキシエチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタ−ル4.48g(16.0mmol)とトリスジメチルアミノスルファ−トリメチルシリルビフルオライド0.048g(0.176mmol)を加えた。さらにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト314.0g(2.0mol)を滴下し、5℃で1.5時間反応させた。次いでこの重合物を5%塩酸を添加したメタノ−ル3L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、Mn=1600、Mw/Mn=1.28の片末端に水酸基を有するポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−トを得た。さらにこのポリメチルメタクリレ−ト141.3gを無水THF450mlに溶解し、トリエチルアミン13.1g(0.13mol)、塩化アクリロイル11.8g(0.13mol)を加え、室温で6時間反応させた。この反応物をメタノ−ル2L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した後、減圧下でメタノ−ルを留去し、片末端にアクリロイル基を有するN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−トマクロモノマ−を得た。
【0066】
7−2. メチルメタクリレ−ト/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−トグラフト共重合体の合成
アルゴン雰囲気下で 、メチルメタクリレ−ト160.0g(1.6mol)、前述の片末端にアクリロイル基を有するポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−トマクロモノマ−75.4g、過酸化ベンゾイル1.90gをメチルエチルケトン235.4gに溶解した。さらに、80℃で3時間反応させた。この反応物を0℃に冷却し、メチルメタクリレ−ト/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−トグラフト共重合体A−41(50%メチルエチルケトン溶液)を得た。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は33000であった。
【0067】
[合成例8] 1級アミン型共重合体(グラフト共重合体A−43)の合成(比較例8);
8−1. 片末端にアクリロイル基を有するメチルメタクリレ−トマクロモノマ−の合成;
アルゴン雰囲気下で、無水THF 400ml中に、表5に記載の材料を加えた。
【0068】
【表5】

【0069】
さらにメチルメタクリレ−ト200.0g(2.0mol)を滴下し、温度5℃で1時間反応させた。次いでこの重合物を5%塩酸を添加したメタノ−ル3L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、Mn=2000、Mw/Mn=1.10の片末端に水酸基を有するポリメチルメタクリレ−トを得た。
さらにこのポリメチルメタクリレ−ト90.0gを無水THF450mlに溶解し、トリエチルアミン11.1g(0.11mol)、塩化アクリロイル10.0g(0.11mol)を加え、室温で6時間反応させた。この反応物をメタノ−ル2L中に加え、沈殿物をメタノ−ルで洗浄した後、減圧下でメタノ−ルを留去し、片末端にアクリロイル基を有するメチルメタクリレ−トマクロモノマ−を得た。
【0070】
8−2. アミノエチルメタクリレ−ト/メチルメタクリレ−ト
グラフト共重合体の合成;
アルゴン雰囲気下で、乾燥エタノ−ル348.0g中に、アミノエチルメタクリレ−ト258.0g(2.0mol)、前述の片末端にアクリロイル基を有するポリメチルメタクリレ−トマクロモノマ−90.0g、過酸化ベンゾイル2.50gを加え、80℃で3時間反応させた。この反応物を0℃に冷却し、アミノエチルメタクリレ−ト/メチルメタクリレ−トグラフト共重合体A−43(50%エタノ−ル溶液)を得た。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は27000であった。
【0071】
以下同様の方法を用いて共重合体2〜6、8〜12、14〜35、38、40、42を合成した。得られた各共重合体を表6〜8に示す。
【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
以下に本発明に係る具体的な実施例及び比較例について示す。
(実施例1)
−軸芯体2の調製−
軸芯体2として、SUS304製の直径6mmの芯金にプライマ−(商品名:DY35−051;東レ・ダウコ−ニング社製)を塗布、焼付けしたものを用意した。
【0076】
−弾性層3の調製−
ついで、軸芯体2を金型に配置し、表9に記載の材料を混合した付加型シリコ−ンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。
【0077】
【表9】

続いて、金型を加熱してシリコ−ンゴムを150℃、15分間加硫硬化し、脱型した後、さらに180℃、1時間加熱し硬化反応を完結させ、軸芯体2の外周に直径12mmの弾性層3を設けた。
【0078】
−表面層4の調製 1−
表面層4の材料として、表10に記載の材料をを撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−1を得た。
【0079】
【表10】

【0080】
次に、3.35質量部のグラフト共重合体A−1を、撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モ−タ−により20分間混合撹拌した。ついで、この分散液を粘度10〜13cpsになるようMEKで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層の外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例1のトナー担持体を得た。
【0081】
(実施例2〜8)
グラフト共重合体A−1をA−2〜A−8に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜8のトナー担持体を得た。
【0082】
(実施例9)
表11に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−2を得た。
【0083】
【表11】

さらに、8.74質量部のグラフト共重合体A−8を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例1と同様にして実施例9のトナー担持体を得た。
【0084】
(実施例10)
表12に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−3を得た。その後は、実施例9と同様にして実施例10のトナー担持体を得た。
【0085】
【表12】

【0086】
(実施例11)
表13に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−4を得た。
【0087】
【表13】

さらに、4.90質量部のグラフト共重合体A−8を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例1と同様にして実施例11のトナー担持体を得た。
【0088】
(実施例12)
表14に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−5を得た。
【0089】
【表14】

さらに表1に記載のグラフト共重合体A−8、7.30質量部を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例1と同様にして実施例12のトナー担持体を得た。
【0090】
(実施例13)
表15に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにトルエンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−6を得た。
【0091】
【表15】

【0092】
さらに、6.70質量部のグラフト共重合体A−8を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モ−タ−により20分間混合撹拌した。ついで、この分散液を粘度10〜13cpsになるようトルエンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層の外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例13のトナー担持体を得た。
【0093】
(実施例14)
表16に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにトルエンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−7を得た。
【0094】
【表16】

さらに、7.07質量部のグラフト共重合体A−8を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例13と同様にして実施例14のトナー担持体を得た。
【0095】
(実施例15)
表17に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−8を得た。
【0096】
【表17】

さらに、7.80質量部のグラフト共重合体A−8を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例1と同様にして実施例15のトナー担持体を得た。
【0097】
(実施例16)
表18に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにトルエンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−9を得た。
【0098】
【表18】

さらに、7.80質量部のグラフト共重合体A−8を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例13と同様にして実施例16のトナー担持体を得た。
【0099】
(実施例17)
表19に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにメタノ−ルに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−10を得た。
【0100】
【表19】

【0101】
さらに、3.60質量部のグラフト共重合体A−8を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モ−タ−により20分間混合撹拌した。ついで、この分散液を粘度10〜13cpsになるようメタノ−ルで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層の外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例17のトナー担持体を得た。
【0102】
(実施例18〜25)
グラフト共重合体A−1をA−9〜A−16に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例18〜25のトナー担持体を得た。
【0103】
(実施例26〜35)
実施例8〜17において、グラフト共重合体A−8をA−17に変更した以外は実施例8〜17と同様にして実施例26〜35のトナー担持体を得た。
【0104】
(実施例36〜54)
グラフト共重合体A−8をA−18〜A−36に変更した以外は実施例11と同様にして、実施例36〜54のトナー担持体を得た。
【0105】
(実施例55)
グラフト共重合体A−8をA−20に変更した以外は実施例10と同様にして、実施例55のトナー担持体を得た。
【0106】
(実施例56)
表20に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−11を得た。
【0107】
【表20】

さらに、7.00質量部のグラフト共重合体A−20を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例1と同様にして実施例56のトナー担持体を得た。
【0108】
(実施例57)
表21に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−12を得た。
【0109】
【表21】

さらに、9.18質量部のグラフト共重合体A−20を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例1と同様にして実施例57のトナー担持体を得た。
【0110】
(実施例58)
グラフト共重合体A−8をA−36に変更した以外は実施例10と同様にして、実施例58のトナー担持体を得た。
(実施例59)
グラフト共重合体A−20をA−36に変更した以外は実施例56と同様にして、実施例59のトナー担持体を得た。
(実施例60)
グラフト共重合体A−20をA−36に変更した以外は実施例57と同様にして、実施例60のトナー担持体を得た。
【0111】
(比較例1)
実施例1の表面層形成用塗料B−1にグラフト共重合体を添加せず、それ以外は実施例1と同様にして、比較例1のトナー担持体を得た。
(比較例2〜8)
グラフト共重合体A−1をランダム共重合体A−37〜A−43に変更した以外は実施例1と同様にして比較例2〜8のトナー担持体を得た。
【0112】
(比較例9)
表22に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−13を得た。
【0113】
【表22】

さらに、3.90質量部のグラフト共重合体A−4を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例1と同様にして比較例9のトナー担持体を得た。
【0114】
(比較例10)
表23に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにトルエンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−14を得た。
【0115】
【表23】

さらに、1.80質量部のグラフト共重合体A−4を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例1と同様にして比較例10のトナー担持体を得た。
【0116】
(比較例11)
表24に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層形成用塗料B−15を得た。
【0117】
【表24】

さらに、10.1質量部のグラフト共重合体A−4を撹拌モ−タ−により撹拌しながら徐々に加えた。その後は、実施例1と同様にして比較例11のトナー担持体を得た。
以上のようにして得られた実施例1〜60及び比較例1〜11のトナー担持体について以下の項目を評価した。
【0118】
[摩擦帯電量測定]
トナー担持体の上に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルタ−により吸引捕集し、その際に金属円筒管を通じてコンデンサ−に蓄えられた電荷量Q、及び吸引したトナーの重量Mを測定した。これらの値から、単位面積当たりの電荷量Q/M(μC/g)を算出した。
【0119】
[共重合体の分子量測定]
本実施例中における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定に用いた装置、並びに条件は以下の通りである。
測定機器:HLC−8120GPC(東ソ−社製)
カラム:TSKgel SuperHZM−M(東ソ−社製)×2本
溶媒:THF(20mmol/L トリエチルアミン添加)
温度:40℃
THFの流速:0.6ml/分。
なお測定サンプルは0.1質量%のTHF溶液とした。更に検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いて測定を行った。
検量線作成用の標準試料として、TSK標準ポリスチレンA−1000、A−2500、A−5000、F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40、F−80、F−128(東ソ−社製)を用いて検量線の作成を行った。そして、これを基に得られた測定サンプルの保持時間から重量平均分子量を求めた。
【0120】
画像耐久性の評価は、図4のような構成を有するレ−ザ−プリンタ−(商品名:LBP5300;キヤノン社製)に本実施例及び比較例のトナー担持体を装填し、評価を行った。
低温低湿環境下における画像耐久性の評価は、以下の方法で行った。即ち、気温15℃、相対湿度10%RHの環境(以下、L/Lとも記す)下で、ブラックトナーで画像パタ−ンとして、1枚内で先端部に15mm角のベタ黒、その後に全面ハ−フト−ンの画像を印字した。次にハ−フト−ン部分に現れるトナー担持体周期の濃度ムラを目視評価し、以下の基準でゴ−ストの評価とした。
[L/Lゴ−スト評価]
A:ゴ−ストが全く認められない
B:極軽微なゴ−ストが認められる
C:顕著なゴ−ストが認められる
【0121】
画像耐久性の評価は、同様の条件で印字率1%にて10000枚連続印刷後、トナー担持体を取り出し、表面のトナーを除去した。その後、デジタルマイクロスコ−プ(商品名:VHX−600;キ−エンス社製)を用い、倍率1000倍でトナー担持体の表面のフィルミング状態を観察した。ロ−ラ(トナー担持体)の表面のフィルミング評価を以下の基準で行った。
[フィルミング評価]
A:ロ−ラの表面にフィルミングがほぼ認められない
B:ロ−ラの表面に軽微なフィルミングが認められる
C:ロ−ラの表面に顕著なフィルミングが認められる
【0122】
高温高湿環境下におけるカブリの評価は、以下の方法で行った。
気温30℃、相対湿度80%RHの環境(以下、H/Hとも記す)下で、ブラックトナーで印字率2%にて12000枚連続印刷後、白ベタ画像出力中にプリンタ−を停止した。このとき、感光体の上に付着したトナーをテ−プではがし取り、反射濃度計(商品名:TC−6DS/A;東京電色社製)にて基準に対する反射率の低下量(%)を測定し、カブリ値とした。
[H/Hカブリ評価]
A:3%未満
B:3%以上5%未満
C:5%以上
以上の結果を表25〜表27に示す。
【0123】
【表25】

【0124】
【表26】

【0125】
【表27】

【0126】
実施例1〜60は、本発明のグラフト共重合体を表面層4に含有するため高い帯電付与性を有し、かつ高温高湿環境下と低温低湿環境下での帯電付与性の差が小さく、両環境において画像弊害が抑制されている。
特にグラフト共重合体を構成するモノマ−が化学式(4)、(5)に示す構造を有する実施例51〜54、58〜60のトナー担持体は、帯電付与性と帯電付与性の環境依存性の低減が高いレベルで両立されている。さらに表面層4のバインダ−成分としてポリエ−テルポリウレタン樹脂及び/又は脂肪族系ポリエステルポリウレタン樹脂を含有する実施例55〜60は耐久後においても帯電付与性と帯電付与性の環境依存性の低減が高いレベルで両立されている。
【0127】
それに対し本発明のグラフト共重合体を含有しない比較例1、ランダム共重合体である比較例2、3はH/Hでの帯電量が低く、カブリが認められた。アミノ基含有モノマ−のホモポリマ−を含有する比較例5、主鎖と側鎖の成分が逆である比較例6、側鎖の重合度が主鎖よりも大きい比較例7、及びバインダ−とグラフト共重合体との極性差が適切でない比較例9〜11も同様にカブリが認められた。
またABジブロック型である比較例4、1級アミノ基を含有する比較例8はL/Lでの過剰な帯電付与性のため、画像弊害が認められた。
【符号の説明】
【0128】
1:トナー担持体
2:導電性軸芯体
3:弾性層
4:表面層
5:感光体
6:クリ−ニング部材
7:トナー供給ロ−ラ
8:トナー
9:規制ブレ−ド
10:現像装置
11:レ−ザ−光(画像露光光)
12:帯電部材
13:クリ−ニング装置
14:クリ−ニング用帯電装置
15:定着装置
16:駆動ロ−ラ
17:転写ロ−ラ
18:バイアス電源
19:テンションロ−ラ−
20:転写搬送ベルト
21:従動ロ−ラ
22:紙
23:給紙ロ−ラ
24:吸着ロ−ラ
25:浸漬槽
26:液送ポンプ
27:撹拌タンク
28:昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、導電性を有する表面層とを有するトナー担持体であって、
該表面層は、
下記化学式(1)で示される構造と下記化学式(2)で示される構造から選ばれる少なくとも一方の構造を有する主鎖に、下記化学式(3)で示される構造を有しており、かつ、該主鎖よりも重合度が小さい重合体からなる側鎖が結合したグラフト共重合体、
および
ポリオールとイソシアネートとを反応させてなる樹脂、ポリオールとメラミンとを反応させてなる樹脂およびフェノール樹脂から選ばれる何れかの樹脂を含むことを特徴とするトナー担持体:
【化1】

【化2】

【化3】

(上記化学式中、R〜Rは水素原子もしくはメチル基、R、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、R〜R10は各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、R11は炭素数1〜18の直鎖又は分岐を有するアルキル基又はシクロアルキル基、X−はハロゲンイオン又はパラトルエンスルホン酸イオンを表す。)。
【請求項2】
前記ポリオールが、
脂肪族ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオールおよびアクリルポリオールから選ばれる何れかである請求項1に記載のトナー担持体。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルジオールが、
ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオール又は3−メチル−1,5−ペンタンジオールと、アジピン酸又はセバシン酸との縮合反応により得られるものである請求項2に記載のトナー担持体。
【請求項4】
前記ポリカーボネートジオールが、
1,6−ヘキサンジオールまたは3−メチル−1,5−ペンタンと、アジピン酸と、ホスゲンとの縮合反応により得られるものである請求項2に記載のトナー担持体。
【請求項5】
前記アクリルポリオールが、
水酸基を含有する(メタ)アクリレートと、炭素数が8以下であるアルキル基の(メタ)アクリル酸エステルを共重合して得られるものであるアクリルポリオールである請求項2に記載のトナー担持体。
【請求項6】
前記グラフト共重合体の主鎖が化学式(4)で示す構造からなり、側鎖が化学式(5)で示す構造からなる重合体である請求項1乃至5のいずれか一項に2記載のトナー担持体:
【化4】

【化5】

(上記化学式中、R12、R13は水素原子もしくはメチル基、R14は炭素数2〜4のアルキレン基、R15は炭素数4〜8のアルキル基、R16は炭素数1〜4のアルキル基、X−はハロゲンイオン又はパラトルエンスルホン酸イオンを表す。)。
【請求項7】
少なくともトナー担持体を備え、電子写真装置に着脱可能なプロセスカ−トリッジにおいて、
前記トナー担持体が請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー担持体であることを特徴とするプロセスカ−トリッジ。
【請求項8】
潜像を担持する感光体に対向した状態でトナーを担持するトナー担持体を備え、該トナー担持体が前記感光体にトナーを付与することにより該潜像を現像する電子写真装置において、前記トナー担持体が請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー担持体であることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−128284(P2012−128284A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281045(P2010−281045)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】