説明

トラクタの油圧システム

【課題】車体の前後に装着された前後のインプルメントで複合作業を行う場合の作業効率のアップを図ることができる油圧システムを提供する。
【解決手段】トラクタ1の車体5の後部に装着される後装インプルメントを昇降させるための後装インプル用油圧シリンダ15を制御する昇降制御弁20と、車体5の前部に装着される前装インプルメントに装備された油圧アクチュエータ25,26を操作する前装インプル用コントロールバルブ31,32とを備え、昇降制御弁20と前記前装インプル用コントロールバルブ31,32とに圧油を供給する油圧ポンプPを車体5に装備し、この油圧ポンプPから吐出されて前装インプル用コントロールバルブ31,32へと供給される圧油を確保した上で、該油圧ポンプPから吐出される圧油の残りを昇降制御弁20へと供給すべく油圧ポンプPの吐出油を分流するフローコントロールバルブ30Aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの油圧システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの車体の後部には、後装インプルメントを昇降自在に装着する三点リンク機構と、この後装インプルメントを昇降させるための後装インプル用油圧シリンダと、この後装インプル用油圧シリンダを制御する昇降制御弁と、トラクタ車体に装着されるインプルメントに装備された油圧アクチュエータを制御するための補助コントロールバルブとが設けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−146945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のトラクタにおいて、車体の前部に前装インプルメントを装着すると共に該車体の後部に三点リンク機構を介して後装インプルメントを昇降自在に装着し、前後のインプルメントで同時に作業(複合作業)を行う場合がある。
このとき、車体の前後に装着された各インプルメントに装備された油圧アクチュエータは、車体後部に装備された補助コントロールバルブに接続されて該補助コントロールバルブで制御されるが、従来のトラクタにあっては、補助コントロールバルブでインプルメントの油圧アクチュエータを制御しているときに、後装インプル用油圧シリンダによって後装インプルメントを昇降させることができないものであった。
【0005】
このため、例えば、前装インプルメントとして果樹園で枝を切断するブランチカッタを採用し、且つ後装インプルメントとして前記ブランチカッタによって切断した枝を回転するブラシによって収納部に収納するようにしたスイーパや切断した枝を粉砕して収納部に収納するようにしたチョッパを採用して複合作業をする場合において、作業中にトラクタを旋回させる際、ブランチカッタのカッタ部を回転させながらスイーパ又はチョッパを昇降させるということができず、作業効率が悪いという問題がある。
本発明は、前記問題点に鑑み、車体の前後にインプルメントを装着し、これら前後のインプルメントで複合作業を行う場合の作業効率のアップを図ることができるトラクタの油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、車体の後部に装着される後装インプルメントを昇降させるための後装インプル用油圧シリンダを制御する昇降制御弁と、前記車体の前部に装着される前装インプルメントに装備された油圧アクチュエータを操作する前装インプル用コントロールバルブとを備え、
前記昇降制御弁と前記前装インプル用コントロールバルブとに圧油を供給する油圧ポンプを前記車体に装備し、
この油圧ポンプから吐出されて前記前装インプル用コントロールバルブへと供給される圧油を確保した上で、該油圧ポンプから吐出される圧油の残りを前記昇降制御弁へと供給すべく前記油圧ポンプの吐出油を分流するフローコントロールバルブを設けたことを特徴とする。
【0007】
また、前装インプル用コントロールバルブとして、前装インプルメントに装備された油圧モータへの圧油の供給・停止を行う第1コントロールバルブと、前装インプルメントに装備された油圧シリンダの制御を行う第2コントロールバルブとが設けられ、
前記フローコントロールバルブから流出して前記第1コントロールバルブへと供給される圧油を確保した上で、該フローコントロールバルブから流出する圧油の残りを前記第2コントロールバルブへと供給すべく前記フローコントロールバルブから流出する圧油を分流する他のフローコントロールバルブを設けるのがよい。
【0008】
また、前記第2コントロールバルブを通過した圧油が前記昇降制御弁へと供給される圧油に合流するように構成されているのがよい。
また、前記第1コントロールバルブが前記油圧モータに対して圧油の供給を行わないときに前記他のフローコントロールバルブに流入する圧油の全流量が第2コントロールバルブへと流れるよう構成されているのがよい。
また、前記車体に装着されるインプルメントに装備された油圧アクチュエータを制御すべく前記車体に装備された補助コントロールバルブを備え、前記フローコントロールバルブから昇降制御弁へと供給される圧油が、前記補助コントロールバルブを経て昇降制御弁へと供給されるよう構成されているのがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油圧システムによれば、車体の前部に前装インプルメントを装着すると共に車体の後部に後装インプルメントを装着して複合作業を行場合において、トラクタを旋回させる際、前装インプルメントに装備した油圧アクチュエータを作動させながら後装インプルメントを昇降させることができ、作業の効率アップを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】油圧回路図である。
【図3】トラクタ前部の側面図である。
【図4】バルブユニットの正面図である。
【図5】バルブユニットの平面図である。
【図6】第1コントロールバルブの側面図である。
【図7】フローコントロールバルブ及び第2コントロールバルブの側面図である。
【図8】油圧ブロックの側面図である。
【図9】第1コントロールバルブの操作系の断面図及び側面図である。
【図10】第2コントロールバルブの操作系の側面図である。
【図11】第2コントロールバルブの操作系の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、1はトラクタであり、該トラクタ1は、エンジン2と該エンジン2の後部に連結されたフライホイールハウジング3と該フライホイールハウジング3の後部に連結された伝動ケース4とによって主構成された車体5を備えると共に、該車体5を左右一対の前後輪6,7で走行可能に支持してなる2軸4輪形のトラクタ1である。
前記車体5の一部を構成する前記伝動ケース4は、エンジン2からの動力をクラッチ,トランスミッション及び後輪差動装置等を介して左右の後輪7に伝達する走行系動力伝達機構と、エンジン2からの動力を車体5の後面から突出するPTO軸8に伝達するPTO系動力伝達機構とが収容されていると共に、該伝動ケース4は、本実施形態では、クラッチ及びトランスミッション等を収納した前部ケース4A(ミッションケース)と、後輪差動装置等を収容した後部ケース4B(後輪デフケース)とに分割されている。
【0012】
車体5の後部には運転席9が設けられ、該運転席9の前方には操向輪(前輪6)をステアリング操作するためのステアリングハンドル10が設けられている。
また、車体5の後部には、上部の1本のトップリンク11と下部の左右一対のロワーリンク12とからなる三点リンク機構13(作業機装着機構)が設けられ、該三点リンク機構13を介して車体5後部に後装インプルメントを昇降自在に装着可能としている。
また、車体5の後部には、後装インプルメントを昇降させるための作業機昇降装置14が設けられ、この作業機昇降装置14は、後装インプル用油圧シリンダ15と、この油圧シリンダ15のシリンダケースに基部側が左右軸廻り回動自在に支持された左右一対のリフトアーム16と、このリフトアーム16の先端側に上端側が枢支連結された左右一対のリフトロッド17を備え、前記各リフトロッド17の下端側は左右方向で同じ側にあるロワーリンク12の中途部に枢支連結されている。
【0013】
後装インプル用油圧シリンダ15は単動型の油圧シリンダによって構成され、該後装インプル用油圧シリンダ15のピストンロッドを突出させることにより左右のリフトアーム16が上方揺動するように該リフトアーム16の基部が回動され、左右のリフトアーム16が上方揺動すると左右のリフトロッド17が上方に引動されて左右のロワーリンク12が上方に揺動し、これによって後装インプルメントが上昇する。
なお、後装インプルメントを下降させる際には、後装インプル用油圧シリンダ15から圧油を抜くことにより、後装インプルメントが自重で下降する。
【0014】
前記油圧シリンダ15上には、トラクタ1の車体5に装着される後装インプルメント等のインプルメントに装備された油圧アクチュエータ18を制御する1又は複数の(本実施形態では2つの)補助コントロールバルブ19が設けられている。
また、車体5の後部(後装インプル用油圧シリンダ15のシリンダケースの下面側で且つ後部ケース4B内上部)には、後装インプル用油圧シリンダ15の昇降制御をするための昇降制御弁20が設けられている(図2参照)。
前記車体5の前後方向中途部には、車体5内に収納された動力伝達機構、例えばPTO系動力伝達機構の動力によって駆動されて伝動ケース4内の潤滑油を作動油として油圧機器に送る油圧ポンプPが設けられている。
【0015】
このトラクタ1には、ステアリングハンドル10の前方側に位置していて、エンジン2を覆うボンネット21の後部を跨ぐように下向き開放状の正面視コ字形に形成されたロプス22が設けられ、このロプス22の左右の下端側を支持する左右の支持部材23が、フライホイールハウジング3の側面等にボルト固定された板材からなる左右の支持ブラケット24に固着されている。
また、車体5の前部には、図示省略の作業機装着機構を介して前装インプルメントが装着可能とされると共に、車体5の前部側方(本実施形態では右側方)には、前装インプルメントに装備された油圧アクチュエータ25,26を操作するためのバルブ等を集約してなる前装インプル用バルブユニット28(以下、単にバルブユニットという)が設けられている。
【0016】
このバルブユニット28は、本実施形態では、図2〜図8に示すように、1つの油圧ブロック29と、2つのフローコントロールバルブ30と、1つの第1コントロールバルブ31(前装インプル用コントロールバルブ)と、2つの第2コントロールバルブ32(前装インプル用コントロールバルブ)とを有する。
前記油圧ブロック29は、バルブユニット28に油圧ポンプPの吐出油を導入したり、油圧アクチュエータ25,26からの戻りの油をタンク(伝動ケース4)に戻したりするためのものである。
【0017】
前記フローコントロールバルブ30は油圧ポンプPからの圧油を分流するためのものである。
前記第1コントロールバルブ31は前装インプルメントに装備された油圧モータ25を操作するためのものであり、第2コントロールバルブ32は前装インプルメントに装備された油圧シリンダ26を主として操作するためのものであり、前装インプルメントとして、例えば、果樹園で枝を刈るブランチカッタが採用される場合、前記バルブユニット28の第1コントロールバルブ31はカッタを回転駆動する油圧モータ25に接続され、一方の第2コントロールバルブ32は前記カッタの上下位置調整をする油圧シリンダ26に接続され、他方の第2コントロールバルブ32はカッタの左右位置調整をする油圧シリンダ26に接続される。
【0018】
なお、第1コントロールバルブ31は複数設けられていてもよく、また、第2コントロールバルブ32は1又は3つ以上設けられていてもよい。
前記油圧ブロック29とフローコントロールバルブ30と第1コントロールバルブ31と第2コントロールバルブ32とは左右方向に並べて配置されていて、隣り合うもの同士が左右方向で相互に重ね合わされて連結(直結)されている。
具体的には、油圧ブロック29が左右方向内端側に位置し、該油圧ブロック29の左右方向外側方に一方のフローコントロールバルブ30(これを第1のフローコントロールバルブ30Aという)が位置し、該第1のフローコントロールバルブ30Aの左右方向外側方に一方の第2コントロールバルブ32が位置し、この一方の第2コントロールバルブ32の左右方向外側方に他方の第2コントロールバルブ32が位置し、この他方の第2コントロールバルブ32の左右方向外側方に他方のフローコントロールバルブ30(これを第2のフローコントロールバルブ30Bという)が位置し、この第2のフローコントロールバルブ30Bの左右方向外側方に第1コントロールバルブ31が位置するように配置されている。
【0019】
なお、左右方向内方とは車体5の側面から左右方向中央に向かう方向をいい、左右方向外方とは車体5の左右方向中央から側面に向かう方向をいう。
前記支持ブラケット24の下部にはバルブステー33がボルト固定され、このバルブステー33に前記油圧ブロック29が取付固定されており、これによってバルブユニット28が車体5に取り付けられている。
なお、トラクタ1の前部にロプス22が設けられない場合には、前記バルブステー33はフライホイールハウジング3等に直接又は他のブラケットを介して取り付けられる。
【0020】
前記バルブステー33には、バルブユニット28を下方側から覆う保護カバー34が取り付けられている。
前記油圧ブロック29には、吐出管路aを介して前記油圧ポンプPの吐出口に連通するポンプポート36と、このポンプポート36に供給路bを介して連通していて油圧ポンプPからの圧油を第1のフローコントロールバルブ30Aへと流出する第1アウトポート37と、前装インプルメントに装備された油圧アクチュエータ25,26からの戻りの圧油を流入させる第1,2ドレンインポート38,39と、ドレン管路cを介してタンク4に連通するタンクポート40と、このタンクポート40と第1ドレンインポート38とを連通させる第1ドレン油路dと、この第1ドレン油路dと第2ドレンインポート39とを連通させる第2ドレン油路eと、一端側が前記第1ドレン油路dに接続され他端側が前記供給路bに接続されたリリーフ油路fと、このリリーフ油路fに介装されたリリーフ弁41と、第1のフローコントロールバルブ30Aからの圧油が流入するインポート42と、このインポート42と連通路gを介して連通する第2アウトポート43とが設けられている。
【0021】
この油圧ブロック29のポンプポート36には前記吐出管路aの一部を構成する接続パイプ44が接続され、第2アウトポート43及び第2ドレンインポート39にも接続パイプ45,46が接続されている。
また、一端が第2ドレンインポート39に接続された接続パイプ46の他端側には支持プレート47が設けられ、この支持プレートはバルブステー33に固定された支持ステー48に取り付けられている。
前記ドレン管路cは一端側がタンクポート40に接続され他端側が伝動ケース4に接続されたパイプによって構成されている。
【0022】
前記フローコントロールバルブ30には、油圧ポンプPからの圧油の流入口となるメインインポート49と、圧油の流出口となる第1,2アウトポート50,51と、圧油の戻り油の流入口となるドレンインポート52と、このドレンインポート52にドレン油路hを介して連通するドレンアウトポート53と、圧油の流入口であるサブインポート54と、メインインポート49から流入した圧油を第1アウトポート50へと流す第1経路iと第2アウトポート51へと流す第2経路jとに分流する優先弁55と、前記第1経路iに設けられた可変絞り56と、前記サブインポート54を前記第2経路jに連通する合流路kと、第2経路jからサブインポート54への圧油の逆流を阻止すべく前記合流路kに設けられたチェック弁57とが設けられている。
【0023】
このフローコントロールバルブ30にあっては、可変絞り56が全開の時にはメインインポート49から流入した圧油の全流量が優先弁55を介して第1経路iに流れて第1アウトポートから流出し、可変絞り56を絞ることにより、メインインポート49から流入した圧油のうち、必要流量が優先弁55を介して第1経路iに流れて優先的に第1アウトポート50から流出し、残りの圧油が優先弁55を介して第2経路jに流れて第2アウトポート51から流出するように構成されている。
なお、可変絞り56を全閉にすると、メインインポート49から流入した圧油の全流量が第2アウトポート51から流出する。
【0024】
また、前記可変絞り56は、各フローコントロールバルブ30の上部に設けられた操作ハンドル58によって絞り操作可能とされている。
前記第1のフローコントロールバルブ30Aのメインインポート49は油圧ブロック29の第1アウトポート37に連通していると共に該第1のフローコントロールバルブ30Aの第2アウトポート51は油圧ブロック29のインポート42に連通している。
また、第1のフローコントロールバルブ30Aの第1アウトポート50から流出した圧油は第1コントロールバルブ31及び第2コントロールバルブ32へと供給され、油圧ブロック29の第2アウトポート43から流出した圧油は前記補助コントロールバルブ19及び昇降制御弁20へと供給されるよう構成されている。
【0025】
したがって、前記第1のフローコントロールバルブ30Aは、油圧ポンプPから吐出されて前装インプルメントに装備された油圧アクチュエータ25,26を操作するコントロールバルブ31,32へと供給される圧油を確保した上で、該油圧ポンプPから吐出される圧油の残りを前記補助コントロールバルブ19及び昇降制御弁20へと供給すべく前記油圧ポンプPの吐出油を分流可能とされている。
なお、第1のフローコントロールバルブ30Aのドレンアウトポート53は油圧ブロック29の第1ドレンインポート38に連通している。
【0026】
前記第1コントロールバルブ31は、圧油を流入させるインポート59と、油圧モータ25へと圧油を流出させるアウトポート60と、インポート59とアウトポート60とを連通する連通路mに介装された切換弁61とを有する。
前記切換弁61は、前装インプルメントに装備された油圧モータ25に圧油を供給すべく連通路mを開通させる開通位置61aと、該油圧モータ25への圧油の供給を停止する遮断位置61bとに切り換え自在な回転スプール形の2ポート2位置切換弁からなる。
前記油圧モータ25からの戻りの油を案内する油圧ホースは前記油圧ブロック29の第2ドレンインポート39に接続された接続パイプ46に接続され、該油圧モータ25からの戻りの油は油圧ブロック29を介してタンク4に戻される。
【0027】
この第1コントロールバルブ31のインポート59は第2のフローコントロールバルブ30Bの第1アウトポート50に連通している。
なお、第2のフローコントロールバルブ30Bのドレンインポート52とサブインポート54とは閉塞されている。
第2コントロールバルブ32は、圧油の流入口である第1,2インポート62,63と、第1インポート62に連通路nを介して連通する第1アウトポート64と、中立時に第2インポート63に連通する第2アウトポート65と、戻りの圧油の流入口となるドレンインポート66と、このドレンインポート66にドレン油路oを介して連通するドレンアウトポート67と、前装インプルメントに装備された油圧シリンダ26(又は他の油圧アクチュエータ)に対して圧油の供給・排出をするための一対の圧油給排ポート68と、前装インプルメントに装備された油圧シリンダ25(又は他の油圧アクチュエータ)に対する圧油の流れの方向を切り換える方向切換弁69と、この方向切換弁69と一方の圧油給排ポート68との間の圧油の流路に介装されたロック弁70とを有する。
【0028】
前記方向切換弁69は、中立位置69aと第1切換位置69bと第2切換位置69cとに切り換え自在な直動スプール形の8ポート3位置切換弁からなり、中立位置69aでは第2インポート63を第2アウトポート65に連通させ、第1,2切換位置69b,69cでは第2インポート63から第2アウトポート65への圧油の流通を遮断する。
また、第2コントロールバルブ32を油圧シリンダ26に接続した場合、中立位置69aでは該油圧シリンダ26に対して圧油の供給・排出を行わなず、第1切換位置69bでは油圧シリンダ26のピストンロッドを進出させ、第2切換位置69cでは油圧シリンダ26のピストンロッドを退避させる。
【0029】
前記ロック弁70は、方向切換弁69が第1,2切換位置69b,69cであるときには方向切換弁69と圧油給排ポート68との間の圧油の流通を許容し、方向切換弁69が中立位置69aであるときには方向切換弁69と圧油給排ポート68との間の圧油の流通を遮断して油圧シリンダ26を停止保持する。
本実施形態では、ロック弁70は、油圧シリンダ26のボトム側油室に連通される圧油給排ポート68と方向切換弁69との間の圧油流通路に介装されている。
前記第1のフローコントロールバルブ30Aに隣接する第2コントロールバルブ32の第1インポート62は第1のフローコントロールバルブ30Aの第1アウトポート50に連通し、該第2コントロールバルブ32の第2アウトポート65は第1のフローコントロールバルブ30Aのサブインポート54に連通し、該第2コントロールバルブ32のドレンアウトポート67は第1のフローコントロールバルブ30Aのドレンインポート52に連通している。
【0030】
また、左右方向内方側の第2コントロールバルブ32の第1インポート62は左右方向外方側の第2コントロールバルブ32の第1アウトポート64に連通し、前記内方側の第2コントロールバルブ32の第2アウトポート65は前記外方側の第2コントロールバルブ32の第2インポート63に連通し、前記内方側の第2コントロールバルブ32のドレンアウトポート67は前記外方側の第2コントロールバルブ32のドレンインポート66に連通している。
また、第2のフローコントロールバルブ30Bのメインインポート49は該第2のフローコントロールバルブ30Bに隣接する第2コントロールバルブ32の第1アウトポート64に連通し、該第2コントロールバルブ32の第2インポート63は第2のフローコントロールバルブ30Bの第2アウトポート51に連通し、該第2コントロールバルブ32のドレンインポート66は第2のフローコントロールバルブ30Bのドレンアウトポート53に連通している。
【0031】
前記第1のフローコントロールバルブ30Aの第1アウトポート50から流出した圧油は、2つの第2コントロールバルブ32を経て第2のフローコントロールバルブ30Bにメインインポート49から流入し、この第2のフローコントロールバルブ30Bに流入した圧油は、必要流量が優先弁55を介して第1経路iに流れて優先的に第1アウトポート50から流出して第1コントロールバルブ31へと送られると共に、残りの圧油が優先弁55を介して第2経路jに流れて第2アウトポート51から流出して第2コントロールバルブ32へと送られる。
【0032】
したがって、第2のフローコントロールバルブ30Bは、第1のフローコントロールバルブ30Aから流出して第1コントロールバルブ31へと供給される圧油を確保した上で、該第1のフローコントロールバルブ30Aから流出する圧油の残りを前記第2コントロールバルブ32へと供給するように、第1のフローコントロールバルブ30Aから流出する圧油を分流可能とされている。
また、第1コントロールバルブ31の切換弁61が遮断位置61bに切り換えられているとき(第1コントロールバルブ31が前記油圧モータ25に対して圧油の供給を行わないとき)には、第2のフローコントロールバルブ30Bに流入した圧油の全流量が第2コントロールバルブ32へと流れるよう構成されている。
【0033】
また、第2コントロールバルブ32を通過した圧油は第1のフローコントロールバルブ30Aにサブインポート54から流入し、合流路kを介して第1のフローコントロールバルブ30Aの第2経路jに合流する。
前記油圧ブロック29の第2アウトポート43から流出された圧油は油圧管路qを介して補助コントロールバルブ19に供給される。
前記補助コントロールバルブ19は前記バルブユニット28の第2コントロールバルブ32と略同様に構成され、該補助コントロールバルブ19で車体5に装着されるインプルメントの油圧アクチュエータが制御可能とされている。
【0034】
なお、バルブユニット28の2つの第2コントロールバルブ32がダンデム回路を構成しているのに対し、2つの補助コントロールバルブ19はパラレル回路を構成している。
前記バルブユニット28の油圧ブロック29の第2アウトポート43から流出された圧油は、2つの補助コントロールバルブ19のバルブボディを通過してフロープライオリティバルブ71に送られ、該フロープライオリティバルブ71によって一定量が補助コントロールバルブ19の方向切換弁69に送られると共に余剰の油がタンク4へとドレンされる。
【0035】
補助コントロールバルブ19の方向切換弁69を通過した圧油は、後装インプル用油圧シリンダ15を制御する昇降制御弁20へと送られる。
この昇降制御弁20を動作と共に説明すると、該昇降制御弁20のスプール72が中立位置72aにあるときには、バルブユニット28(油圧ポンプP)からの圧油はアンロードバルブ73を押し開いて伝動ケース4に戻り、また、後装インプル用油圧シリンダ15内の油は排油弁74が閉じているので排油されず、後装インプルメントは一定の高さに保持される。
【0036】
また、操作レバー等の操作手段によって昇降制御弁20のスプール72を中立位置72aから上昇位置72bに切り換えると、排油弁74は閉じたままであると共に、バルブユニット28からの圧油がアンロードバルブ73の背面に作用して該アンロードバルブ73を閉じるので、バルブユニット28からの圧油は下降速度制御弁75のチェック弁76を押し開いて後装インプル用油圧シリンダ15内へと流れる。これにより、後装インプル用油圧シリンダ15のピストンロッドが突出してリフトアーム16が上方揺動する。
また、操作手段によって昇降制御弁20のスプール72を中立位置72aから下降位置72cに切り換えると、連動手段を介して排油弁74が動かされて該排油弁74が開き、後装インプル用油圧シリンダ15内の油が後装インプルメントの自重によって押し出されて排油弁74から伝動ケース4内に戻り、後装インプルメントが下降する。このとき、バルブユニット28からの圧油はアンロードバルブ73を押し開いて伝動ケース4内に戻る。
【0037】
77は、後装インプル用油圧シリンダ15用の安全弁である。
前記構成のトラクタ1にあっては、第1のフローコントロールバルブ30Aによって、油圧ポンプPから吐出されて前装インプルメントに装備された油圧アクチュエータ25,26を操作するコントロールバルブ31,32(前装インプル用コントロールバルブ)へと供給される圧油を確保した上で、該油圧ポンプPから吐出される圧油の残りを前記補助コントロールバルブ19及び昇降制御弁20へと供給できるように前記油圧ポンプPの吐出油を分流可能であるので、前装インプルメントに装備された油圧アクチュエータ25,26の駆動と、後装インプルメントの昇降とを同時に行うことができる。
【0038】
したがって、例えば、前装インプルメントとして前述したブランチカッタを採用し、後装インプルメントとして前記ブランチカッタによって切断した枝を回転するブラシによって収納部に収納するようにしたスイーパや切断した枝を粉砕して収納部に収納するようにしたチョッパを採用して複合作業をする場合において、作業中にトラクタ1を旋回させる際、ブランチカッタのカッタ部を回転させながらスイーパ又はチョッパを昇降させるということができ、作業の効率アップを図ることができる。
前記ステアリングハンドル10の近傍には、前記第1コントロールバルブ31を操作する1本の第1操作レバー77と、第2コントロールバルブ32を操作する2本の第2操作レバー78とが設けられている。
【0039】
これら操作レバー77,78は、本実施形態では、ステアリングハンドル10の右側に配置されている。
第1操作レバー77は、図9に示すように、ステアリングハンドル10を支持するステアリングサポートに取り付けられた支持ブラケット79に左右軸廻りに回動自在に支持されて、上下揺動操作自在とされている。
前記支持ブラケット79の後端側には左右方向内方側に向けて折曲された係止片80が設けられ、この係止片80には第1操作レバー77を位置決めする係止溝81が上下一対形成されている。
【0040】
この第1操作レバー77は左右方向に移動可能とされ、係止溝81に係合した位置から左右方向内方に移動させることにより係止溝81から外れ、復帰バネ82の付勢力によって係止溝81に係合した状態に保持されるよう構成されている。
前記バルブユニット28の第1コントロールバルブ31はロータリバルブによって構成され、この第1コントロールバルブ31のスプールに連結された操作アーム83と、前記第1操作レバー77とがボーデンケーブル84(又はリンク機構等の連動手段)を介して連動されている。
【0041】
前記第1コントロールバルブ31の操作アーム83は、該第1コントロールバルブ31のバルブボディの左右方向外面側に上下揺動自在に設けられ、戻しバネ85によって引き下げられる方向に付勢されている。
前記ボーデンケーブル84のアウタケーブル84aの一端側は前記支持ブラケット79に固定されたアウタ受けステー86に取り付けられ、該アウタケーブル84aの他端側は第1コントロールバルブ31のバルブボディの左右方向外面側に固定されたアウタ受けステー87に取り付けられている。
【0042】
前記ボーデンケーブル84のインナケーブル84bの一端側は第1操作レバー77と一体揺動する揺動アーム88に連結され、該インナケーブル84bの他端側は第1コントロールバルブ31の前記操作アーム83に連結されている。
本実施形態では、第1操作レバー77が下側の係止溝81に係合している状態で第1コントロールバルブ31の切換弁61が遮断位置61bとされ、この状態から第1操作レバー77を引き上げることにより第1コントロールバルブ31の切換弁61が開通位置61aに切り換えられる。
【0043】
第2操作レバー78は左右方向に並設されていて左右方向で同じ側にある第2コントロールバルブ32を操作可能であり、伝動ケース4に取り付けられた支持ブラケット89に取り付けられている。
この支持ブラケット89は、図10,図11に示すように、伝動ケース4の前端側上部の右側面にボルト固定された取付プレート90と、この取付プレート90に下端側が固着されたサポート91と、このサポート91の上端に固着された支持ステー92とから構成されている。
【0044】
前記サポート91は、パイプ材からなり、取付プレート90から左右方向外方に延出された後に上方に向かうに従って後方に移行する傾斜方向に延出されるようにL字形に折曲されてなる。
支持ステー92はサポート91の上端に固着された底壁92aとこの底壁92aの左右両側から上方側に延びる左右の側壁92bとからコ字形に形成されている。
この支持ステー92の左右の側壁92bにわたって左右方向の軸心を有する支軸93が設けられ、この支軸93に各第2操作レバー78の基部に設けられた円筒状のボス94が左右方向の軸芯回りに回動自在に外嵌されていて、各第2操作レバー78が前後揺動自在とされている。
【0045】
各第2操作レバー78のボス94には連動アーム95が前方側に延出状として固着され、各第2コントロールバルブ32には方向切換弁69のスプールを操作する操作アーム96が設けられ、これら連動アーム95と操作アーム96とがボーデンケーブル97(又はリンク機構等の連動手段)を介して連動されていて、第2操作レバー78の前後揺動操作によって第2コントロールバルブ32の方向切換弁69が切換操作されるよう構成されている。
第2コントロールバルブ32に設けられた操作アーム96は該第2コントロールバルブ32の下方側に配置されていて、前端側が第2コントロールバルブ32に左右軸廻りに回動自在に枢着され、後端側に前記ボーデンケーブル97のインナケーブル97aの一端側が枢支連結され、中途部が第2コントロールバルブ32の方向切換弁69のスプールに連動連結されている。
【0046】
また、第2コントロールバルブ32の背面には前記ボーデンケーブル97の一端側のアウタケーブル97bが取り付けられるアウタ受けステー98が取付固定されている。
また、前記ボーデンケーブル97のインナケーブル97aの他端側は前記連動アーム95の前端側に連結され、前記ボーデンケーブル97のアウタケーブル97bの他端側は、支持ブラケットのサポート91の上下方向中途部に固定されたアウタ受けステー99に取付固定されている。
また、第2操作レバー78を支持する前記支持ブラケット89には、連動アーム95及びボーデンケーブル97の他端側の、上面側及び前面側並びに外側面を覆う保護カバー100が取り付けられている。
【符号の説明】
【0047】
5 車体
15 後装インプル用油圧シリンダ
18 油圧アクチュエータ
19 補助コントロールバルブ
20 昇降制御弁
25 油圧モータ(油圧アクチュエータ)
26 油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)
30A フローコントロールバルブ
30B フローコントロールバルブ
31 第1コントロールバルブ(前装インプル用コントロールバルブ)
32 第2コントロールバルブ(前装インプル用コントロールバルブ)
P 油圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(5)の後部に装着される後装インプルメントを昇降させるための後装インプル用油圧シリンダ(15)を制御する昇降制御弁(20)と、前記車体(5)の前部に装着される前装インプルメントに装備された油圧アクチュエータ(25,26)を操作する前装インプル用コントロールバルブ(31,32)とを備え、
前記昇降制御弁(20)と前記前装インプル用コントロールバルブ(31,32)とに圧油を供給する油圧ポンプ(P)を前記車体(5)に装備し、
この油圧ポンプ(P)から吐出されて前記前装インプル用コントロールバルブ(31,32)へと供給される圧油を確保した上で、該油圧ポンプ(P)から吐出される圧油の残りを前記昇降制御弁(20)へと供給すべく前記油圧ポンプ(P)の吐出油を分流するフローコントロールバルブ(30A)を設けたことを特徴とするトラクタの油圧システム。
【請求項2】
前装インプル用コントロールバルブ(31,32)として、前装インプルメントに装備された油圧モータ(25)への圧油の供給・停止を行う第1コントロールバルブ(31)と、前装インプルメントに装備された油圧シリンダ(26)の制御を行う第2コントロールバルブ(32)とが設けられ、
前記フローコントロールバルブ(30A)から流出して前記第1コントロールバルブ(31)へと供給される圧油を確保した上で、該フローコントロールバルブ(30A)から流出する圧油の残りを前記第2コントロールバルブ(32)へと供給すべく前記フローコントロールバルブ(30A)から流出する圧油を分流する他のフローコントロールバルブ(30B)を設けたことを特徴とする請求項1に記載のトラクタの油圧システム。
【請求項3】
前記第2コントロールバルブ(32)を通過した圧油が前記昇降制御弁(20)へと供給される圧油に合流するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のトラクタの油圧システム。
【請求項4】
前記第1コントロールバルブ(31)が前記油圧モータ(25)に対して圧油の供給を行わないときに前記他のフローコントロールバルブ(30B)に流入する圧油の全流量が第2コントロールバルブ(32)へと流れるよう構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のトラクタの油圧システム。
【請求項5】
前記車体(5)に装着されるインプルメントに装備された油圧アクチュエータ(18)を制御すべく前記車体(5)に装備された補助コントロールバルブ(19)を備え、前記フローコントロールバルブ(30)から昇降制御弁(20)へと供給される圧油が、前記補助コントロールバルブ(19)を経て昇降制御弁(20)へと供給されるよう構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のトラクタの油圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−284136(P2010−284136A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142290(P2009−142290)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】